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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】建設機械
(51)【国際特許分類】
   E02F 3/815 20060101AFI20241001BHJP
   E02F 9/00 20060101ALI20241001BHJP
【FI】
E02F3/815 L
E02F9/00 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021060723
(22)【出願日】2021-03-31
(65)【公開番号】P2022156836
(43)【公開日】2022-10-14
【審査請求日】2023-12-01
(73)【特許権者】
【識別番号】398071668
【氏名又は名称】株式会社日立建機ティエラ
(74)【代理人】
【識別番号】110002457
【氏名又は名称】弁理士法人広和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田渕 剛
(72)【発明者】
【氏名】中谷 賢一郎
【審査官】松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-050426(JP,A)
【文献】特開2006-220179(JP,A)
【文献】特開2016-056561(JP,A)
【文献】実開昭60-144662(JP,U)
【文献】特開平06-136781(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0217047(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 3/815
E02F 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自走可能な車体と、前記車体に設けられた排土装置とからなり、
前記排土装置は、前記車体に上下方向に回動可能に設けられた昇降アームと、前記昇降アームの先端に取付けられたブレードと、前記昇降アームと前記ブレードとの間に設けられ、前記昇降アームに対して前記ブレードを揺動させるブレード揺動シリンダとを備えてなる建設機械において、
前記ブレード揺動シリンダに設けられ前記ブレード揺動シリンダの伸縮に応じて移動する押上部材と、
目標とする前記ブレード揺動シリンダの伸縮位置に対応する位置に取付けられ、前記ブレード揺動シリンダが目標とする伸縮位置に達したときに前記押上部材によって起伏する位置表示機構とが設けられ
前記ブレード揺動シリンダには、前記位置表示機構が取付けられる取付部材が設けられ、
前記位置表示機構は、前記取付部材に着脱可能に取付けられるベース部材と、
前記ベース部材に設けられ、前記ブレード揺動シリンダが目標とする伸縮位置に達したときに前記押上部材に押圧されることにより目視可能な位置へと突出する起伏部材とにより構成されていることを特徴とする建設機械。
【請求項2】
前記ベース部材は、前記取付部材に取付けられ、前記押上部材の移動経路に開口する第1ピン孔が設けられた基板と、前記基板に取付けられ前記第1ピン孔と同心上に第2ピン孔が設けられたピン支持板とを含んで構成され、
前記起伏部材は、軸方向の一端側が前記第1ピン孔に挿通されると共に軸方向の他端側が前記第2ピン孔に挿通されたピンにより構成され、
前記ピンは、軸方向の一端が前記押上部材によって押圧されることにより軸方向の他端が前記ピン支持板から突出することを特徴とする請求項に記載の建設機械。
【請求項3】
前記ピン支持板と前記ピンとの間には、前記ピンの軸方向の一端側が前記基板の前記第1ピン孔を通じて前記押上部材の移動経路に突出する方向に前記ピンを付勢するばね部材が設けられていることを特徴とする請求項に記載の建設機械。
【請求項4】
前記取付部材には、前記ブレード揺動シリンダの伸縮位置に応じた複数の取付位置が設けられ、
前記位置表示機構は、前記複数の取付位置のうち目標とする前記ブレード揺動シリンダの伸縮位置に対応する取付位置に選択的に取付けられることを特徴とする請求項に記載の建設機械。
【請求項5】
前記ブレード揺動シリンダは、チューブと、前記チューブに軸方向に移動可能内に取付けられたロッドと、前記チューブに取付けられ前記チューブを外側から覆うチューブカバーと、前記ロッドに取付けられ前記ロッドを外側から覆うロッドカバーとを含んで構成され、
前記押上部材は、前記チューブカバーと前記ロッドカバーのうち一方に設けられ、前記位置表示機構は、前記チューブカバーと前記ロッドカバーのうち他方に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、例えば油圧ショベル等の建設機械に関し、特に、排土装置を備えた建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、建設機械の代表例である油圧ショベルは、自走可能な下部走行体と、下部走行体上に旋回可能に搭載された上部旋回体とによって車体が構成されている。上部旋回体の前側には作業装置が設けられ、この作業装置を用いて掘削作業等が行われる。また、小型の油圧ショベルは、下部走行体に排土装置が設けられ、この排土装置を用いて整地作業、排土業等が行われる。
【0003】
油圧ショベルの排土装置は、下部走行体に上下方向に回動可能に設けられた昇降アームと、昇降アームの先端に取付けられたブレードと、昇降アームとブレードとの間に設けられ、昇降アームに対してブレードを揺動させるブレード揺動シリンダとを備えている。ブレード揺動シリンダは、昇降アームに対するブレードの姿勢を変化させるもので、通常、アングルシリンダとチルトシリンダが知られている。
【0004】
アングルシリンダは、昇降アームとブレードとの取付部を中心として、ブレードの長さ方向の両端を前後方向に揺動させる。これにより、ブレードによって押出される土砂を、下部走行体の左側方または右側方にまとめて排出することができる。チルトシリンダは、昇降アームに対するブレードの取付部を中心として、ブレードの長さ方向の両端を上下方向に揺動させる。これにより、ブレードによって整地される地面に上下方向の勾配を形成することができる。
【0005】
ブレード揺動シリンダは、油圧ショベルのオペレータが操作レバーを操作することにより伸縮し、このブレード揺動シリンダの伸縮位置(伸縮量)に応じて、昇降アームに対するブレードの姿勢が変化する。しかし、オペレータは、運転席に座った状態でブレードを後方から目視するため、ブレードの姿勢の変化(昇降アームとの取付部を中心としたブレードの揺動角度)を把握することが困難である。これに対し、従来技術では、昇降アームの先端側に棒状の目印部材を設け、ブレードの姿勢が所定の基準姿勢となったときに、昇降アームとブレードとの取付部を覆うカバーの外縁部と目印部材とが並行となるように設定された建設機械が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2016-56561号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、従来技術による建設機械では、目印部材とカバーの外縁部とが並行となることで、ブレードの姿勢が所定の基準姿勢となったことは確認できるものの、例えば作業内容に応じてブレードの姿勢を基準姿勢以外の所望の姿勢に移行させる場合には、オペレータの補助にならないという問題がある。また、運転席に座ったオペレータが、目印部材とカバーの外縁部とを目視して両者が並行であるか否かを判断する構造であるため、オペレータが目印を目視するときの角度、カバーの外縁部と目印部材とが並行であるか否かの感覚の差により、仮にブレードを基準姿勢にした場合でも、この基準姿勢がオペレータによって必ずしも一定しないという問題がある。
【0008】
本発明の目的は、昇降アームに対するブレードの姿勢が所望の姿勢となったことを的確に判断できるようにした建設機械を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、自走可能な車体と、前記車体に設けられた排土装置とからなり、前記排土装置は、前記車体に上下方向に回動可能に設けられた昇降アームと、前記昇降アームの先端に取付けられたブレードと、前記昇降アームと前記ブレードとの間に設けられ、前記昇降アームに対して前記ブレードを揺動させるブレード揺動シリンダとを備えてなる建設機械において、前記ブレード揺動シリンダに設けられ前記ブレード揺動シリンダの伸縮に応じて移動する押上部材と、目標とする前記ブレード揺動シリンダの伸縮位置に対応する位置に取付けられ、前記ブレード揺動シリンダが目標とする伸縮位置に達したときに前記押上部材によって起伏する位置表示機構とが設けられ、前記ブレード揺動シリンダには、前記位置表示機構が取付けられる取付部材が設けられ、前記位置表示機構は、前記取付部材に着脱可能に取付けられるベース部材と、前記ベース部材に設けられ、前記ブレード揺動シリンダが目標とする伸縮位置に達したときに前記押上部材に押圧されることにより目視可能な位置へと突出する起伏部材とにより構成されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、目標とするブレード揺動シリンダの伸縮位置に対応する位置に、予め位置表示機構を取付けた状態でブレード揺動シリンダを伸縮させると、ブレード揺動シリンダが目標とする伸縮位置となったときに、押上部材が位置表示機構を起伏させる。従って、オペレータは、位置表示機構を目視することにより、ブレード揺動シリンダが目標とする伸縮位置に達したことを認識し、ブレードが所望の姿勢になったことを明確に判断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態による油圧ショベルを示す左側面図である。
図2】作業装置を取外した油圧ショベルを上方から見た平面図である。
図3】ブレードが基準姿勢となった状態の排土装置を示す平面図である。
図4】ブレードが基準姿勢となった状態の排土装置を示す斜視図である。
図5】アングルシリンダから位置表示機構を取外した状態を示す分解斜視図である。
図6】アングルシリンダ、移動突起、位置表示機構等を図3中の矢示VI-VI方向から見た断面図である。
図7】位置表示機構のプッシュピンが引込んだ状態を示す図6と同様位置の断面図である。
図8】ブレードの長さ方向の両端を前後方向に揺動させた状態の排土装置を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る建設機械の実施形態について、後方小旋回型の油圧ショベルを例に挙げ、図1ないし図8を参照しつつ詳細に説明する。
【0013】
建設機械の代表例である油圧ショベル1は、自走可能なクローラ式の下部走行体2と、下部走行体2上に旋回可能に搭載された上部旋回体3とを備えている。下部走行体2と上部旋回体3とは、油圧ショベル1の車体を構成している。上部旋回体3の前側には、土砂の掘削作業等を行うスイング式の作業装置4が設けられている。
【0014】
下部走行体2は、ベースとなるトラックフレーム2Aを備え、トラックフレーム2Aは、左右のサイドフレーム2B(左側のみ図示)を有している。サイドフレーム2Bには、遊動輪2Cと駆動輪2Dが設けられ、これら遊動輪2Cと駆動輪2Dには履帯2Eが巻装されている。また、下部走行体2のトラックフレーム2Aには、後述する排土装置10が設けられている。
【0015】
作業装置4は、後述する旋回フレーム5の前端に左右方向に揺動可能に取付けられたスイングポスト4Aと、スイングポスト4Aに俯仰動可能に取付けられたブーム4Bと、ブーム4Bの先端に回動可能に取付けられたアーム4Cと、アーム4Cの先端に回動可能に取付けられたバケット4Dと、ブームシリンダ4E、アームシリンダ4F、バケットシリンダ4Gを備えて構成されている。また、旋回フレーム5とスイングポスト4Aとの間には、スイングポスト4Aを左,右方向に揺動させるスイングシリンダ(図示せず)が設けられている。
【0016】
上部旋回体3は、旋回フレーム5、カウンタウエイト6、エンジン7、油圧ポンプ8、キャブ9等を含んで構成されている。
【0017】
旋回フレーム5は、上部旋回体3のベースとなるもので、旋回装置を介して下部走行体2上に取付けられている。旋回フレーム5の前部側には、前方に突出する支持ブラケット5Aが設けられ、支持ブラケット5Aには、作業装置4のスイングポスト4Aが左右方向に揺動可能に支持されている。旋回フレーム5の後部側にはカウンタウエイト6が設けられ、このカウンタウエイト6によって作業装置4との重量バランスが保たれている。カウンタウエイト6は、左,右方向の中央部が後方に突出した円弧状の重量物として形成されている。
【0018】
原動機としてのエンジン7は、カウンタウエイト6の前側に位置して旋回フレーム5に搭載されている。エンジン7は、クランク軸(図示せず)が左,右方向に延在する横置き状態で旋回フレーム5に搭載され、油圧ポンプ8を駆動する。油圧ポンプ8は、エンジン7によって駆動されることにより作動油を吸込んで加圧し、この作動油(圧油)を、油圧ショベル1に搭載された各種の油圧アクチュエータに供給する。なお、原動機としては、電動モータ、あるいはエンジンと電動モータとを組合せたハイブリッド式の原動機を用いることができる。
【0019】
キャブ9は、カウンタウエイト6の前側に位置して旋回フレーム5に搭載されている。キャブ9は運転室を画成するもので、キャブ9内には運転席、走行レバー・ペダル装置、操作レバー装置、ブレード操作装置等(いずれも図示せず)が配置されている。走行レバー・ペダル装置は、油圧ショベル1の走行動作を制御するために操作され、操作レバー装置は、作業装置4および上部旋回体3の旋回動作を制御するために操作され、ブレード操作装置は、後述するブレード12の動作を制御するために操作される。
【0020】
次に、下部走行体2に設けられた排土装置10について説明する。
【0021】
排土装置10は、下部走行体2のトラックフレーム2Aに設けられている。図3および図4に示すように、排土装置10は、昇降アーム11と、ブレード12と、ブレード昇降シリンダ13と、アングルシリンダ14と、チルトシリンダ17と、移動突起20と、位置表示機構21とを含んで構成されている。
【0022】
昇降アーム11は、下部走行体2のトラックフレーム2Aに取付けられている。昇降アーム11は、左アーム部11Aおよび右アーム部11Bを有するV字状に形成され、二又状に分岐した昇降アームの基端11C側は、下部走行体2のトラックフレーム2Aに上下方向に回動可能に取付けられている。昇降アーム11の先端11Dには、ブレード12が取付けられている。昇降アーム11の長さ方向(前後方向)の中間部には、中間ブラケット11Eが設けられ、左アーム部11Aの外側面には、左ブラケット11Fが設けられている。
【0023】
ブレード12は、昇降アーム11の先端11Dに取付けられている。ブレード12は、例えば鋼板等を用いて長方形の板状に形成され、左右方向(下部走行体2の車幅方向)に延びている。排土装置10は、ブレード12の前端縁12Aを接地させた状態で油圧ショベル1が走行することにより、整地作業等を行う。ブレード12の後面12Bには、長さ方向(左右方向)の中央部に位置する中間ブラケット12Cと、中間ブラケット12Cの左側に位置する左ブラケット12Dと、中間ブラケット12Cの右側に位置する右ブラケット12Eとが設けられている。
【0024】
昇降アーム11の先端11Dとブレード12の中間ブラケット12Cとは、自在ピン等を用いた連結部12Fを介して連結されている。これにより、ブレード12の長さ方向の両端は、ブレード12と昇降アーム11との連結部12Fを中心として、前後方向および上下方向に揺動可能となっている。
【0025】
ブレード昇降シリンダ13は、昇降アーム11の中間ブラケット11Eとトラックフレーム2Aとの間に設けられている。ブレード昇降シリンダ13を伸縮させることにより、ブレード12は、昇降アーム11の基端11Cを中心として上下方向に回動(昇降)する。
【0026】
揺動シリンダとしてのアングルシリンダ14は、昇降アーム11の左ブラケット11Fとブレード12の左ブラケット12Dとの間に設けられ、昇降アーム11の左側を前後方向に延びている。アングルシリンダ14は、チューブ14Aと、チューブ14A内に摺動可能に設けられたピストン(図示せず)と、一端がピストンに取付けられ他端がチューブ14Aの外部に突出したロッド14Bとを有している。
【0027】
アングルシリンダ14の基端側(チューブ14A側)は、昇降アーム11の左ブラケット11Fに取付けられ、アングルシリンダ14の先端側(ロッド14B側)は、ブレード12の左ブラケット12Dに取付けられている。アングルシリンダ14を伸縮させることにより、ブレード12の長さ方向の両端は、昇降アーム11との連結部12Fを中心として、前後方向に揺動(アングル動作)する。これにより、例えば整地作業時にブレード12によって押出される土砂を、下部走行体2の左側方または右側方にまとめて排出することができる。また、チューブ14Aの外周面には、溶接等の手段を用いてねじ座14Cが設けられ、このねじ座14Cには、2個のボルト孔(雌ねじ孔)14Dが形成されている。
【0028】
ここで、油圧ショベル1の走行方向と直交する方向(左右方向)に延びる仮想線とブレード12の前端縁12Aとがなす角度を、ブレード12のアングル角度θとすると、図3に示すブレード12の姿勢、即ち、θ=0の状態がアングル動作の基準姿勢となっている。一方、ブレード12が図8中の実線で示す姿勢に移行したときには、アングル角度θがθ≒20°となり、図8中の二点鎖線で示す姿勢に移行したときには、アングル角度θがθ≒-20°となる。アングルシリンダ14の伸縮量は、ブレード12がアングル動作を行うときのアングル角度θに対応している。
【0029】
ロッドカバー15は、アングルシリンダ14のロッド14Bに設けられている。図5および図6に示すように、ロッドカバー15は、鋼板等をC字型に折曲げることにより形成され、前後方向に延びている。ロッドカバー15の長さ方向(前後方向)の一端15A側は、アングルシリンダ14のロッド14Bの先端側にボルト15Cを用いて固定された固定端となり、長さ方向の他端15B側は自由端となっている。従って、ロッドカバー15は、アングルシリンダ14の伸縮動作に応じて前後方向に移動しつつロッド14Bを常に外側(上側)から覆っている。ロッドカバー15の上面には、後述する移動突起20が設けられている。
【0030】
チューブカバー16は、アングルシリンダ14のチューブ14Aに取付けられている。チューブカバー16は、後述する位置表示機構21の取付部材を構成している。図5および図6に示すように、チューブカバー16は、鋼板等をL字型に折曲げることにより形成され、ロッドカバー15と上下方向で対面する上板16Aと、上板16Aの左端から下向きに折曲げられた側板16Bとを有している。側板16Bの長さ方向(前後方向)の中間部には、チューブ14Aに固定されたねじ座14Cと対面する張出し部16Cが設けられている。チューブカバー16は、張出し部16Cに挿通したボルト16Dをねじ座14C(ボルト孔14D)に螺着することによりチューブ14Aに固定され、チューブ14Aを外側(上方)から覆っている。
【0031】
他の揺動シリンダとしてのチルトシリンダ17は、ブレード12の中間ブラケット12Cと右ブラケット12Eとの間に設けられ、ブレード12の後面12B側を左右方向に延びている。チルトシリンダ17は、チューブ17Aと、チューブ17A内に摺動可能に設けられたピストン(図示せず)と、一端がピストンに取付けられ他端がチューブ17Aの外部に突出したロッド17Bとを有している。
【0032】
チルトシリンダ17の基端側(チューブ17A側)は、ブレード12の右ブラケット12Eに取付けられ、チルトシリンダ17の先端側(ロッド17B側)は、昇降アーム11とブレード12との連結部12Fよりも上側で、ブレード12の中間ブラケット12Cに取付けられている。
【0033】
従って、チルトシリンダ17を伸縮させることにより、ブレード12の長さ方向の両端は、昇降アーム11との連結部12Fを中心として、上下方向に揺動(チルト動作)する。このとき、ブレード12の前端縁12Aと地面(水平面)とがなす角度を、ブレード12チルト角度とすると、このチルト角度を適宜に設定することにより、整地作業時にブレード12によって整地される地面に、上下方向の勾配を形成することができる。
【0034】
チルトシリンダ17のチューブ17Aには、チューブ17Aを外側から覆うチューブカバー18が設けられ、ロッド17Bには、ロッド17Bを外側から覆うロッドカバー19が設けられている。チューブカバー18には、アングルシリンダ14のチューブカバー16と同様に、後述する位置表示機構21が設けられ、ロッドカバー19には、アングルシリンダ14のロッドカバー15に設けられた移動突起20と同様の移動突起(図示せず)が設けられている。
【0035】
アングルシリンダ14のロッドカバー15、およびチルトシリンダ17のロッドカバー19には、それぞれ押上部材としての移動突起が設けられている。これらアングルシリンダ14側の移動突起20とチルトシリンダ17側の移動突起(図示せず)とは同一の構成を有している。このため、以下、アングルシリンダ14のロッドカバー15に設けられた移動突起20について説明し、チルトシリンダ17側の移動突起の説明は省略する。
【0036】
押上部材としての移動突起20は、ロッドカバー15の他端15B側の上面に設けられている。図5および図6に示すように、移動突起20は山型の突起物からなり、ロッドカバー15の幅方向(左右方向)の中央部に、例えば溶接等の手段を用いて固定されている。従って、移動突起20は、アングルシリンダ14の伸縮に応じてロッドカバー15と一緒に前後方向に移動する。
【0037】
次に、本実施形態に用いられる位置表示機構21について、図4ないし図7を参照して説明する。ここで、位置表示機構21は、アングルシリンダ14のチューブカバー16、およびチルトシリンダ17のチューブカバー18にそれぞれ設けられている。これらアングルシリンダ14側の位置表示機構21とチルトシリンダ17側の位置表示機構21とは同一の構成を有している。このため、以下、アングルシリンダ14のチューブカバー16に設けられた位置表示機構21について説明し、チルトシリンダ17側の位置表示機構21の説明は省略する。
【0038】
位置表示機構21は、アングルシリンダ14のチューブカバー16に設けられている。位置表示機構21は、整地作業時においてブレード12をアングル動作させて所望の姿勢とするためにアングルシリンダ14を伸縮させるときに、アングルシリンダ14が、目標とするブレード12のアングル角度θに対応した伸縮位置に達したことをオペレータに表示する。位置表示機構21は、チューブカバー16、ベース部材25、プッシュピン28、ばね部材31等を含んで構成されている。
【0039】
取付部材としてのチューブカバー16は、アングルシリンダ14のチューブ14Aにボルト16Dを用いて取付けられている。チューブカバー16の上板16Aには、幅方向の中央部を長さ方向(前後方向)に延びる長溝孔22が形成されている。長溝孔22は、上板16Aを上下方向に貫通し、上板16Aの前端16A1側から後端16A2側へと直線状に延びている。長溝孔22は、ロッドカバー15に設けられた移動突起20と上下方向で正対している。これにより、長溝孔22の下側は移動突起20の移動経路23となり、アングルシリンダ14が伸縮動作を行うときには、移動突起20は常に移動経路23(長溝孔22の下側)に沿って前後方向に移動する(図5図6参照)。
【0040】
チューブカバー16の上板16Aには、複数の取付位置としての取付孔24が設けられている。取付孔24は、長溝孔22を挟んで左右に配置された2個の雌ねじ孔24A(例えば、上板16Aの下面に溶接されたナット)からなり、長溝孔22の長さ方向に均等な間隔をもって複数箇所(例えば9箇所)に設けられている。上板16Aの前端16A1側に配置された最前部の取付孔24と後端16A2側に配置された最後部の取付孔24との間隔は、アングルシリンダ14の伸縮量(ストローク量)に対応している。
【0041】
ここで、本実施形態では、ブレード12が基準姿勢(図3の姿勢)にあるときのアングル角度θをθ=0とすると、アングルシリンダ14が最伸長してブレード12の左端が前方に突出したときのアングル角度θは、θ≒20°となる(図8参照)。一方、アングルシリンダ14が最縮小してブレード12の左端が後方に引込んだときのアングル角度θは、θ≒-20°となる。このように、アングルシリンダ14の伸縮動作によってブレード12がアングル動作を行うときのアングル角度θは、θ≒20°からθ≒-20°の約40°に設定されている。このため、長溝孔22の長さ方向で隣合う2つの取付孔の間隔は、アングル角度θの約5°に相当している。
【0042】
ベース部材25は、チューブカバー16の上板16Aに着脱可能に取付けられている。ベース部材25は、上板16Aに当接する基板26と、基板26上に立設されたピン支持板27とを含んで構成されている。
【0043】
基板26は、上板16A上を左右方向に延びる長方形の板体として形成されている。基板26長さ方向の両端側には、上下方向に貫通する2個のボルト挿通孔26Aが形成され、これら2個のボルト挿通孔26Aの間隔は、上板16Aに設けられた取付孔24に対応している。基板26の長さ方向の中央部には、上下方向に貫通する第1ピン孔26Bが形成されている。ベース部材25は、基板26のボルト挿通孔26Aに挿通したボルト25Aを上板16Aの取付孔24に螺着することにより、長溝孔22を跨いで上板16Aに取付けられる。この状態で、第1ピン孔26Bは、長溝孔22の真上に配置され、移動突起20の移動経路23に開口する。
【0044】
ピン支持板27は、基板26に立設されている。ピン支持板27は、左右の脚部27Aと、左右の脚部27Aの上端間を連結する連結部27Bとを有する逆U字型の枠体として形成されている。ピン支持板27は、左右の脚部27Aの下端を溶接等の手段を用いて基板26に固定することにより、基板26の上面から上方に突出し、連結部27Bは基板26と上下方向で対面している。連結部27Bには、上下方向に貫通する第2ピン孔27Cが形成され、この第2ピン孔27Cは、基板26に形成された第1ピン孔26Bと同心上に配置されている。
【0045】
起伏部材としてのプッシュピン28は、ベース部材25に上下方向に移動可能に設けられている。図6および図7に示すように、プッシュピン28は、小径部28Aと大径部28Bとを有する段付き円柱状に形成されている。小径部28Aは上下方向の上側に配置され、ピン支持板27の第2ピン孔27Cに摺動可能に挿通されている。大径部28Bは上下方向の下側に配置され、基板26の第1ピン孔26Bに摺動可能に挿通されている。大径部28Bの下端(軸方向の一端)には、円錐状に先細りした当接部28Cが形成され、この当接部28Cが、ロッドカバー15に設けられた移動突起20に当接する構成となっている。また、小径部28Aの上端側には全周に亘って環状溝28Dが形成され、この環状溝28Dよりも上側となる小径部28Aの上端部28Eには、キャブ9内のオペレータが認識し易いカラー塗装が施されている。
【0046】
大径部28Bの先端側には、径方向に貫通する貫通孔が形成され、この貫通孔内には、棒状のストッパ29が挿嵌されている。ストッパ29の長さ寸法は、基板26の第1ピン孔26Bの孔径よりも大きく設定され、ストッパ29が基板26に当接した位置がプッシュピン28の下限位置となっている(図7参照)。プッシュピン28が下限位置となったときに、プッシュピン28の当接部28Cは、基板26の第1ピン孔26B、チューブカバー16(上板16A)の長溝孔22を通じて、移動突起20の移動経路23内に突出する。また、大径部28Bの外周側には、円板状のばね受け板30が挿通されている。ばね受け板30は、ストッパ29に当接した位置でプッシュピン28に支持され、ばね部材31の下端が当接している。
【0047】
ばね部材31は、ピン支持板27とプッシュピン28との間に設けられている。ばね部材31は圧縮ばねからなり、プッシュピン28の外周側に挿通された状態で、ピン支持板27の連結部27Bとばね受け板30との間に縮装されている。これにより、ばね部材31は、プッシュピン28の当接部28Cが基板26の第1ピン孔26B、チューブカバー16の長溝孔22を通じて移動突起20の移動経路23内に突出する方向に、プッシュピン28を付勢している。
【0048】
このように、プッシュピン28は、当接部28Cがロッドカバー15の移動突起20から離間しているときには、図7に示すように、ばね部材31に付勢されて下限位置を保持し、プッシュピン28の当接部28Cは、移動突起20の移動経路23内に突出している。この状態では、プッシュピン28はピン支持板27内に引込み、小径部28Aの上端部28Eは第2ピン孔27C内に埋没している。一方、アングルシリンダ14の伸縮動作により、ロッドカバー15の移動突起20がプッシュピン28の当接部28Cに当接したときには、図6に示すように、プッシュピン28が移動突起20によって押上げられる。これにより、プッシュピン28の上端部28Eが、ピン支持板27の上方(目視可能な位置)に突出し、キャブ9内のオペレータから容易に認識される構成となっている。
【0049】
ここで、本実施形態では、アングルシリンダ14の伸縮動作によってブレード12がアングル動作を行うときのアングル角度θは、ブレード12が基準姿勢(図3の姿勢)の状態でθ=0となり、アングルシリンダ14が最伸長してブレード12の左端が前方に突出した状態(図8中の実線の状態)でθ≒20°、アングルシリンダ14が最縮小してブレード12の左端が後方に引込んだ状態(図8中の二点鎖線の状態)でθ≒-20°となる。
【0050】
従って、図3に示すように、チューブカバー16に設けられた9個の取付孔24のうち、最前部の取付孔24と最後部の取付孔24との中間に位置する取付孔24に位置表示機構21を取付けた場合には、アングルシリンダ14が、ブレード12のアングル角度をθ=0とする伸縮位置に達したときに、ロッドカバー15の移動突起20が、位置表示機構21のプッシュピン28を押上げる。これにより、プッシュピン28の上端部28Eが、ピン支持板27の第2ピン孔27Cから突出し、この上端部28Eをオペレータが目視することにより、ブレード12が基準姿勢に移行したと判断することができる。
【0051】
一方、最前部の取付孔24に位置表示機構21を取付けた場合には、アングルシリンダ14が、ブレード12のアングル角度をθ≒20°とする伸縮位置に達すると、ロッドカバー15の移動突起20が、位置表示機構21のプッシュピン28を押上げる。このとき、プッシュピン28の上端部28Eが、ピン支持板27の第2ピン孔27Cから突出することにより、オペレータはブレード12のアングル角度がθ≒20°となったと判断することができる。同様に、最後部の取付孔24に位置表示機構21を取付けた場合には、アングルシリンダ14が、ブレード12のアングル角度をθ≒-20°とする伸縮位置に達すると、ロッドカバー15の移動突起20が、位置表示機構21のプッシュピン28を押上げる。このとき、プッシュピン28の上端部28Eが、ピン支持板27の第2ピン孔27Cから突出することにより、オペレータはブレード12のアングル角度がθ≒-20°となったと判断することができる。
【0052】
このように、アングルシリンダ14のチューブカバー16に設けられた9個の取付孔24のうち1個に、選択的に位置表示機構21を取付けることにより、オペレータが目標とするブレード12のアングル角度θを、θ≒20°からθ≒-20°の範囲で5°間隔で予め設定することができる。そして、位置表示機構21は、整地作業時においてブレード12をアングル動作させるためにアングルシリンダ14を伸縮させるときに、アングルシリンダ14が、目標とするブレード12のアングル角度θに対応した伸縮位置に達したことをオペレータに表示する。
【0053】
これと同様に、チルトシリンダ17のチューブカバー18に設けられた複数の取付孔24のうち1個に、選択的に位置表示機構21を取付けることにより、オペレータが目標とするブレード12のチルト角度を、チルトシリンダ17の伸縮量の範囲で予め設定することができる。そして、チューブカバー18に取付けられた位置表示機構21は、整地作業時にブレード12をチルト動作させるためにチルトシリンダ17を伸縮させるときに、チルトシリンダ17が、目標とするブレード12のチルト角度に対応した伸縮位置に達したことをオペレータに表示する。
【0054】
本実施形態による油圧ショベル1は、上述の如き構成を有するもので、油圧ショベル1を用いて土砂の掘削作業を行う場合には、オペレータは、キャブ9内に乗込み、走行レバー・ペダル装置(図示せず)を操作することにより、油圧ショベル1を所望の作業場所まで自走させる。そして、オペレータは、操作レバー装置(図示せず)を操作することにより、上部旋回体3を旋回させつつ作業装置4を俯仰動させ、土砂の掘削作業等を行うことができる。
【0055】
次に、油圧ショベル1の排土装置10を用いて整地作業等を行う場合には、オペレータは、ブレード操作装置(図示せず)を操作してブレード昇降シリンダ13を伸長させ、ブレード12の前端縁12を地面に接地させる。この状態で、油圧ショベル1を走行させ、走行方向の土砂をブレード12によって押出すことにより、整地作業等を行うことができる。
【0056】
この整地作業において、ブレード12の姿勢(アングル角度θ)を、図3に示す基準姿勢(θ=0)から図8中の実線で示す姿勢(θ≒20°)に移行させる場合には、オペレータは、ブレード12のアングル角度θをθ≒20°とするため、目標とするアングルシリンダ14の伸縮位置を、予め位置表示機構21によって設定する。
【0057】
即ち、ブレード12が基準姿勢である場合には、位置表示機構21は、チューブカバー16に設けられた9個の取付孔24のうち、最前部と最後部との中間にある取付孔24に取付けられている。このため、オペレータは位置表示機構21を移動させ、予め位置表示機構21を、最前部の取付孔24にボルト25Aによって取付ける。このとき、ロッドカバー15に設けられた移動突起20は、最前部の取付孔24から離間した位置にある。このため、プッシュピン28は下限位置(図7の位置)を保持し、プッシュピン28の上端部28Eは、第2ピン孔27C内に埋没し、プッシュピン28の当接部28Cは、移動突起20の移動経路23内に突出している。
【0058】
この状態で、オペレータがキャブ9内でブレード操作装置(図示せず)を操作し、アングルシリンダ14を伸長させる。これにより、ブレード12は、昇降アーム11との連結部12Fを中心として揺動し、ブレード12の左端は前方に移動する。このアングルシリンダ14の伸長動作に応じて、ロッドカバー15に設けられた移動突起20は前方に移動する。そして、アングルシリンダ14が目標とする伸縮位置に達すると、移動突起20がプッシュピン28の当接部28Cに当接し、図6に示すように、プッシュピン28が移動突起20によって押上げられる。
【0059】
これにより、プッシュピン28の上端部28Eが、ピン支持板27から上方に突出し、キャブ9内のオペレータは、プッシュピン28の上端部28Eを容易に認識することができる。この結果、オペレータは、アングルシリンダ14が目標とする伸縮位置に達し、ブレード12が、目標とするアングル角度θ(θ≒20°)に移行したことを的確に判断することができる。このようにして、アングルシリンダ14を伸長させてブレード12のアングル動作を行った後、油圧ショベル1を走行させることにより、ブレード12によって押出される土砂を、下部走行体2の右側方に排出することができる。
【0060】
このように、本実施形態では、アングルシリンダ14のチューブカバー16に設けられた複数の取付孔24のうち、ブレード12の所望の姿勢(アングル角度θ)に対応するアングルシリンダ14の伸縮位置に、予め位置表示機構21を取付けることができる。そして、ロッドカバー15に設けられた移動突起20が、目標とするアングルシリンダ14の伸縮位置に達すると、位置表示機構21のプッシュピン28が移動突起20に押上げられ、プッシュピン28の上端部28Eがピン支持板27の上方に突出する。従って、ブレード操作装置を操作するオペレータは、プッシュピン28の上端部28Eを目視することにより、アングルシリンダ14が目標とする伸縮位置に達し、ブレード12が所望のアングル角度θに移行したことを的確に判断することができる。
【0061】
一方、ブレード12のアングル角度θを、図8中の二点鎖線で示す位置(θ≒-20°)に変更する場合には、オペレータは、予め位置表示機構21を、チューブカバー16に設けられた最後部の取付孔24に取付ける。この状態で、アングルシリンダ14を縮小させることにより、ロッドカバー15に設けられた移動突起20が後方に移動する。そして、目標とするアングルシリンダ14の伸縮位置に達した移動突起20が、プッシュピン28の当接部28Cに当接してこれを押上げる。
【0062】
従って、キャブ9内のオペレータは、ピン支持板27から上方に突出したプッシュピン28の上端部28Eを認識し、ブレード12が、目標とするアングル角度θ(θ≒-20°)に移行したことを的確に判断することができる。このようにして、アングルシリンダ14を縮小させてブレード12のアングル動作を行った後、油圧ショベル1を走行させることにより、ブレード12によって押出される土砂を、下部走行体2の左側方に排出することができる。
【0063】
さらに、整地作業時にブレード12のチルト角度を設定する場合には、チルトシリンダ17のチューブカバー18に設けられた複数の取付孔24のうち、所望のチルト角度に対応するチルトシリンダ17の伸縮位置に、予め位置表示機構21を取付ける。この状態で、チルトシリンダ17を伸縮させることにより、ロッドカバー19に設けられた移動突起(図示せず)が移動し、目標とするチルトシリンダ17の伸縮位置に達した突起部が、プッシュピン28を押上げる。
【0064】
これにより、キャブ9内のオペレータは、ピン支持板27から上方に突出したプッシュピン28の上端部28Eを認識し、ブレード12が目標とするチルト角度に移行したことを的確に判断することができる。このようにして、チルトシリンダ17を伸縮させてブレード12のチルト動作を行った後、油圧ショベル1を走行させることにより、ブレード12によって整地される地面に、ブレード12のチルト角度に応じた上下方向の勾配を形成することができる。
【0065】
かくして、本実施形態によれば、排土装置10は、下部走行体2に上下方向に回動可能に設けられた昇降アーム11と、昇降アーム11の先端11Dに取付けられたブレード12と、昇降アーム11とブレード12との間に設けられ、昇降アーム11に対してブレード12を揺動させるブレード揺動シリンダ(アングルシリンダ14およびチルトシリンダ17)とを備えている。そして、前記ブレード揺動シリンダには、前記ブレード揺動シリンダの伸縮に応じて移動する移動突起20と、目標とする前記ブレード揺動シリンダの伸縮位置に対応する位置に取付けられ、前記ブレード揺動シリンダが目標とする伸縮位置に達したときに移動突起20によって起伏する位置表示機構21が設けられている。
【0066】
この構成によれば、目標とするブレード揺動シリンダの伸縮位置に対応する位置に、予め位置表示機構21を取付けた状態でブレード揺動シリンダを伸縮させると、ブレード揺動シリンダが目標とする伸縮位置となったときに、移動突起20が位置表示機構21を起伏させる。従って、オペレータは、位置表示機構21を目視することにより、ブレード揺動シリンダが目標とする伸縮位置に達したことを明確に判断することができる。
【0067】
実施形態では、ブレード揺動シリンダを構成するアングルシリンダ14,チルトシリンダ17には、位置表示機構21が取付けられるチューブカバー16,18が設けられ、位置表示機構21は、チューブカバー16,18に着脱可能に取付けられるベース部材25と、ベース部材25に設けられ、アングルシリンダ14,チルトシリンダ17が目標とする伸縮位置に達したときに移動突起20に押圧されることにより目視可能な位置へと突出する起伏部材とにより構成している。この構成によれば、目視可能な位置へと突出した起伏部材により、アングルシリンダ14,チルトシリンダ17が目標とする伸縮位置に達したことを確実に認識することができる。
【0068】
実施形態では、ベース部材25は、チューブカバー16,18に取付けられ、移動突起20の移動経路23に開口する第1ピン孔26Bが設けられた基板26と、基板26に取付けられ第1ピン孔26Bと同心上に第2ピン孔27Cが設けられたピン支持板27とを含んで構成され、前記起伏部材は、軸方向の一端側が第1ピン孔26Bに挿通されると共に軸方向の他端側が第2ピン孔27Cに挿通されたプッシュピン28により構成され、プッシュピン28は、軸方向の一端が移動突起20によって押圧されることにより軸方向の他端がピン支持板27から突出する。この構成によれば、ピン支持板27から突出したプッシュピン28の軸方向の他端を目視することにより、アングルシリンダ14,チルトシリンダ17が目標とする伸縮位置に達したことを確実に認識することができる。
【0069】
実施形態では、ピン支持板27とプッシュピン28との間には、プッシュピン28の軸方向の一端側が基板26の第1ピン孔26Bを通じて移動突起20の移動経路23に突出する方向にプッシュピン28を付勢するばね部材31が設けられている。この構成によれば、プッシュピン28の軸方向の一端側を、ばね部材31によって移動突起20の移動経路23に確実に突出させておくことができる。
【0070】
実施形態では、チューブカバー16,18には、アングルシリンダ14,チルトシリンダ17の伸縮位置に応じた複数の取付孔24が設けられ、位置表示機構21は、複数の取付孔24のうち目標とするアングルシリンダ14,チルトシリンダ17の伸縮位置に対応する取付孔24に選択的に取付けられる。この構成によれば、目標とするアングルシリンダ14,チルトシリンダ17の伸縮位置を、取付孔24の数に応じて細かく設定することができる。
【0071】
実施形態では、アングルシリンダ14,チルトシリンダ17は、チューブ14A,17Aと、チューブ14A,17Aに軸方向に移動可能内に取付けられたロッド14B,17Bと、チューブ14A,17Aに取付けられチューブ14A,17Aを外側から覆うチューブカバー16,18と、ロッド14B,17Bに取付けられロッド14B,17Bを外側から覆うロッドカバー15,19とを含んで構成され、移動突起20は、チューブカバー16,18とロッドカバー15,19のうち一方に設けられ、位置表示機構21は、チューブカバー16,18とロッドカバー15,19のうち他方に設けられている。この構成によれば、アングルシリンダ14,チルトシリンダ17に設けられた既存のチューブカバー16,18およびロッドカバー15,19を利用して、移動突起20および位置表示機構21を設けることができる。
【0072】
なお、実施形態では、アングルシリンダ14のロッドカバー15に移動突起20を設け、チューブカバー16に位置表示機構21を設けた場合を例示している。しかし、本発明はこれに限らず、例えばチューブカバー16に移動突起20を設け、ロッドカバー15に位置表示機構21を設ける構成としてもよい。このことは、チルトシリンダ17についても同様である。
【0073】
また、実施形態では、アングルシリンダ14のロッドカバー15に山型の突起物からなる移動突起20を設け、アングルシリンダ14が目標とする伸縮位置に達したときに、チューブカバー16に設けられた位置表示機構21のプッシュピン28が、移動突起20に押上げられてピン支持板27から突出する構成を例示している。しかし、本発明はこれに限らず、例えばロッドカバーに凹陥部を設け、アングルシリンダが目標とする伸縮位置に達したときに凹陥部にプッシュピンが没入することにより、ピン支持板から突出していたプッシュピンの上端部が、ピン支持板内に引込む構成としてもよい。
【0074】
さらに、実施形態では、アングルシリンダ14のチューブカバー16を構成する上板16Aに位置表示機構21を設け、プッシュピン28がピン支持板27の上方に突出する構成を例示している。しかし、本発明はこれに限らず、例えばチューブカバー16の側板16Bに位置表示機構を設け、プッシュピンがピン支持板の側方に突出する構成としてもよい。
【符号の説明】
【0075】
1 油圧ショベル
2 下部走行体(車体)
3 上部旋回体(車体)
10 排土装置
11 昇降アーム
12 ブレード
14 アングルシリンダ(ブレード揺動シリンダ)
14A,17A チューブ
14B,17B ロッド
15,19 ロッドカバー
16,18 チューブカバー(取付部材)
20 移動突起(押上部材)
21 位置表示機構
23 移動経路
24 取付孔(取付位置)
25 ベース部材
26 基板
26B 第1ピン孔
27 ピン支持板
27C 第2ピン孔
28 プッシュピン(起伏部材)
31 ばね部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8