(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】タイヤ空気圧監視システム、タイヤ空気圧監視プログラム及びタイヤ空気圧監視方法
(51)【国際特許分類】
B60C 23/04 20060101AFI20241001BHJP
【FI】
B60C23/04 160A
(21)【出願番号】P 2021067132
(22)【出願日】2021-04-12
【審査請求日】2023-12-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼澤 侑也
(72)【発明者】
【氏名】ジャキーセヴィク ティエリ
【審査官】池田 晃一
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-087957(JP,A)
【文献】特開2005-321315(JP,A)
【文献】特表2011-526560(JP,A)
【文献】特開2017-194412(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0144639(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 23/00 - 23/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気入りタイヤの内圧値を繰り返し取得する取得部と、
前記内圧値が注意閾値以下となった場合、タイマーを起動するタイマー制御部と、
前記内圧値が前記注意閾値以下となった場合、前記タイマーが満了するまで注意情報を出力し、前記内圧値が前記注意閾値よりも低い危険閾値となった場合、前記タイマーが満了するまで危険情報を出力する警報部と
を備え、
前記タイマー制御部は、前記タイマーが満了するまでの期間において、前記内圧値が前記注意閾値または前記危険閾値以下となった後、前記注意閾値を上回った場合、新たに前記タイマーを起動するタイヤ空気圧監視システム。
【請求項2】
前記タイマー制御部は、新たに起動した前記タイマーが満了するまでに、前記内圧値が、前記注意閾値又は前記危険閾値以下となっても、前記タイマーを再起動しない請求項1に記載のタイヤ空気圧監視システム。
【請求項3】
前記警報部は、前記内圧値が前記危険閾値以下となった後、前記危険閾値よりも高く、前記注意閾値以下となった場合、前記注意情報を出力せず、
前記タイマー制御部は、前記タイマーを継続する請求項1または2に記載のタイヤ空気圧監視システム。
【請求項4】
空気入りタイヤの内圧値を繰り返し取得する取得処理と、
前記内圧値が注意閾値以下となった場合、タイマーを起動するタイマー制御処理と、
前記内圧値が前記注意閾値以下となった場合、前記タイマーが満了するまで注意情報を出力し、前記内圧値が前記注意閾値よりも低い危険閾値となった場合、前記タイマーが満了するまで危険情報を出力する警報処理と
をコンピュータに実行させ、
前記タイマー制御処理では、前記タイマーが満了するまでの期間において、前記内圧値が前記注意閾値または前記危険閾値以下となった後、前記注意閾値を上回った場合、新たに前記タイマーを起動するタイヤ空気圧監視プログラム。
【請求項5】
空気入りタイヤの内圧値を繰り返し取得する取得ステップと、
前記内圧値が注意閾値以下となった場合、タイマーを起動するステップと、
前記内圧値が前記注意閾値以下となった場合、前記タイマーが満了するまで注意情報を出力し、前記内圧値が前記注意閾値よりも低い危険閾値となった場合、前記タイマーが満了するまで危険情報を出力するステップと
を含み、
前記タイマーを起動するステップでは、前記タイマーが満了するまでの期間において、前記内圧値が前記注意閾値または前記危険閾値以下となった後、前記注意閾値を上回った場合、新たに前記タイマーを起動するタイヤ空気圧監視方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両に装着されるタイヤの空気圧を監視するタイヤ空気圧監視システム、タイヤ空気圧監視プログラム及びタイヤ空気圧監視方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に装着された空気入りタイヤ(以下、タイヤと適宜省略する)の空気圧(内圧)を監視するタイヤ空気圧監視システムが広く用いられている。
【0003】
センサによって測定される空気入りタイヤの内圧値は、リムホイールに組み付けられた空気入りタイヤ内の気室の温度、及びセンサの測定誤差などによって変動し得る。そこで、測定回数のカウンタを用いて、内圧低下の警報の発生タイミングを制御する技術が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、内圧値が、警報の基準となる閾値付近で変動する場合、警報の発生と停止とが頻発し、タイヤ空気圧監視システムに大きな負荷が掛かるとともに、ユーザが煩わしさを感じることも懸念される。
【0006】
そこで、以下の開示は、このような状況に鑑みてなされたものであり、警報の発生と停止との頻発を防止しつつ、内圧低下の警報を適切なタイミングで出力できるタイヤ空気圧監視システム、タイヤ空気圧監視方法、及びタイヤ空気圧監視プログラムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様は、空気入りタイヤ(タイヤ30)の内圧値を繰り返し取得する取得部(タイヤデータ取得部110)と、前記内圧値が注意閾値以下となった場合、タイマーを起動するタイマー制御部(タイマー制御部130)と、前記内圧値が前記注意閾値以下となった場合、前記タイマーが満了するまで注意情報を出力し、前記内圧値が前記注意閾値よりも低い危険閾値となった場合、前記タイマーが満了するまで危険情報を出力する警報部(警報部150)とを備え、前記タイマー制御部は、前記タイマーが満了するまでの期間において、前記内圧値が前記注意閾値または前記危険閾値以下となった後、前記注意閾値を上回った場合、新たに前記タイマーを起動するタイヤ空気圧監視システム(タイヤ空気圧監視システム10)である。
【0008】
本開示の一態様は、空気入りタイヤの内圧値を繰り返し取得する取得処理と、前記内圧値が注意閾値以下となった場合、タイマーを起動するタイマー制御処理と、前記内圧値が前記注意閾値以下となった場合、前記タイマーが満了するまで注意情報を出力し、前記内圧値が前記注意閾値よりも低い危険閾値となった場合、前記タイマーが満了するまで危険情報を出力する警報処理とをコンピュータに実行させ、前記タイマー制御処理では、前記タイマーが満了するまでの期間において、前記内圧値が前記注意閾値または前記危険閾値以下となった後、前記注意閾値を上回った場合、新たに前記タイマーを起動するタイヤ空気圧監視プログラムである。
【0009】
本開示の一態様は、空気入りタイヤの内圧値を繰り返し取得する取得ステップと、前記内圧値が注意閾値以下となった場合、タイマーを起動するステップと、前記内圧値が前記注意閾値以下となった場合、前記タイマーが満了するまで注意情報を出力し、前記内圧値が前記注意閾値よりも低い危険閾値となった場合、前記タイマーが満了するまで危険情報を出力するステップとを含み、前記タイマーを起動するステップでは、前記タイマーが満了するまでの期間において、前記内圧値が前記注意閾値または前記危険閾値以下となった後、前記注意閾値を上回った場合、新たに前記タイマーを起動するタイヤ空気圧監視方法である。
【発明の効果】
【0010】
上述したタイヤ空気圧監視システム、タイヤ空気圧監視プログラム及びタイヤ空気圧監視方法によれば、警報の発生と停止との頻発を防止しつつ、内圧低下の警報を適切なタイミングで出力できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、タイヤ空気圧監視システム10の全体概略構成図である。
【
図3】
図3は、センサユニット40の機能ブロック構成図である。
【
図4】
図4は、タイヤ状態監視サーバ100の機能ブロック構成図である。
【
図5】
図5は、タイヤ状態監視サーバ100による内圧値の警報出力の概略動作フローを示す図である。
【
図6】
図6は、従来の内圧値の警報出力の動作例を示す図である。
【
図7】
図7は、本実施形態に係る内圧値の警報出力の動作例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施形態を図面に基づいて説明する。なお、同一の機能や構成には、同一または類似の符号を付して、その説明を適宜省略する。
【0013】
(1)タイヤ空気圧監視システムの全体概略構成
図1は、本実施形態に係るタイヤ空気圧監視システム10の全体概略構成図である。
図1に示すように、タイヤ空気圧監視システム10は、トラックなど、複数の車両20を含むフリートに対する監視サービスを提供する。タイヤ空気圧監視システム10は、基本的には、複数の車両20が駐車するユーザ80の拠点(ヤード)内など定点において、個々の車両20の状態を監視する。
【0014】
本実施形態では、タイヤ空気圧監視システム10は、車両20の状態、具体的には、車両20に装着されている空気入りタイヤ、具体的には、タイヤ30(
図1において不図示、
図2参照)の状態を監視する。
【0015】
タイヤ空気圧監視システム10は、車両20に装着される複数のタイヤ30の状態を、当該複数のタイヤ30それぞれ対応付けられた複数のセンサを用いて、車両20から離隔された場所、例えば、ユーザ80のヤード内において監視するタイヤ状態監視サーバ100を含む。
【0016】
車両20は、本実施形態では、トラックなど、企業などにおいて事業に用いられる自動車を対象とする。従って、車両20は、トラック以外、例えば、バスやタクシーなどであっても構わない。複数の車両20は、企業などのユーザ80によって運用される。但し、ユーザ80は、必ずしも企業(事業体)でなくてもよく、営利を目的としない団体或いは個人でもよい。
【0017】
タイヤ状態監視サーバ100は、通信ネットワーク70と接続される。通信ネットワーク70は、有線または無線通信方式を用いた通信ネットワークであり、インターネットが含まれてもよい。
【0018】
また、通信ネットワーク70には、いわゆる小電力広域ネットワーク(LPWA:Low Power Wide AreaまたはLPWAN:Low Power Wide Area Network、以下、適宜LPWAと省略する)と呼ばれる無線アクセスネットワークが含まれる。
【0019】
LPWAは、Bluetooth(登録商標)などの近距離無線方式(~数十メートル程度)では満たせないカバレッジを有する無線アクセス方式であり、低消費電力、低ビットレート、及び広いカバレッジを有することが特徴である。
【0020】
LPWAを用いたサービスとしては、例えば、Sigfox(登録商標)、LoRa(登録商標)及びWi-Fi HaLowなどが挙げられる。本実施形態ででは、タイヤ空気圧監視システム10は、LPWAを用いたサービスの利用を前提とする。但し、LPWAは、別の名称で呼ばれてもよく、Bluetooth(登録商標)などの近距離無線方式よりも広いカバレッジを有し、4G/LTE(Long Term Evolution)などの移動通信方式を用いる場合よりも低消費電力が実現される無線通信方式であればよい。
【0021】
基地局60は、LPWAに従った無線基地局であり、通信ネットワーク70に含まれる小電力広域ネットワークの構成要素である。小電力広域ネットワークによる通信可能範囲を確保するため、複数の基地局60が、地理的に分散して配置される。
【0022】
(2)車両の構成
図2は、車両20の概略平面図である。上述したように、本実施形態では、車両20は、トラックであることを想定する。
【0023】
図2に示すように、車両20は、前輪車軸21及び後輪車軸22を有する。前輪車軸21は、操舵軸であり、車両20の前側に位置する。後輪車軸22は、駆動軸であり、車両20の後ろ側、つまり、荷室(荷台)側に位置する。後輪車軸22は、いわゆるダブルタイヤであり、左右それぞれに2本のタイヤ30が装着される。
【0024】
このような車軸構成を有する車両20には、合計6本のタイヤ30が装着される。それぞれのタイヤ30には、センサユニット40が取り付けられる。具体的には、センサユニット40は、タイヤ30が組み付けられるリムホイール(不図示)に内面に取り付けられる。なお、センサユニット40の取付位置は、必ずしもリムホイールの内面(ウエル部分)でなくてもよく、タイヤ30の内面でもよいし、リムホイールのエアバルブの基部側でもよい。
【0025】
センサユニット40は、タイヤ30の状態を感知する。具体的には、センサユニット40は、リムホイールに組み付けられたタイヤ30の空気圧(内圧)及び温度を測定する。なお、センサユニット40は、内圧及び温度以外に、例えば、歪みなどを測定できてもよい。
【0026】
また、センサユニット40は、無線通信機能、具体的には、LPWAに従った無線通信機能を有し、基地局60と無線通信を実行できる。
【0027】
(3)センサユニット及びタイヤ空気圧監視システムの機能ブロック構成
次に、上述したセンサユニット40及びタイヤ状態監視サーバ100の機能ブロック構成について説明する。
【0028】
(3.1)センサユニット40
図3は、センサユニット40の機能ブロック構成図である。
図3に示すように、センサユニット40は、温度センサ41、圧力センサ43、センサID設定部45、無線通信部47及びバッテリ49を備える。
【0029】
温度センサ41は、リムホイールに組み付けられたタイヤ30の気室内の温度を測定する。温度センサ41としては、例えば、半導体式を用いることができる。
【0030】
圧力センサ43は、タイヤ30の気室内の圧力(内圧)を測定する。圧力センサ43としては、例えば、静電容量式を用いることができる。
【0031】
加速度センサ44は、タイヤ30の所定方向の加速度を検出する。本実施形態では、加速度センサ44は、タイヤ30のタイヤ径方向における加速度、具体的には、遠心加速度(遠心力と言い換えてもよい)を検出できる。なお、加速度センサ44は、タイヤ径方向以外に、タイヤ幅方向などにおける加速度を検出してもよい。加速度センサ44としては、3軸加速度センサなど、汎用的な加速度センサを用い得る。
【0032】
センサID設定部45は、センサユニット40を識別するセンサID(センサ識別情報)を設定する。具体的には、センサID設定部45は、センサユニット40の識別情報を記憶し、記憶した識別情報を無線通信部47に提供する。また、さらに多くの情報(タイヤ種別など)を含めてもよい。センサ識別情報は、無線通信部47から送信される無線信号に多重される。
【0033】
無線通信部47は、LPWAに従った無線通信機能を有する。具体的には、無線通信部47は、温度センサ41から出力された測定温度を示すデータ、及び圧力センサ43から出力された測定圧力(内圧)を示すデータが多重された無線信号(電波)を基地局60に向けて送信する。
【0034】
なお、センサユニット40が加速度を検出している期間、つまり、タイヤ30が転動している期間については、温度センサ41、圧力センサ43は、温度及び内圧を測定しないようにしてもよい。
【0035】
バッテリ49は、センサユニット40を構成する各機能ブロックに必要な電力を供給する。具体的には、バッテリ49の種類は特に限定されないが、センサユニット40を長時間(例えば、1年以上)に亘って連続駆動可能な一次電池などによって構成されることが好ましい。
【0036】
(3.2)タイヤ状態監視サーバ100
図4は、タイヤ状態監視サーバ100の機能ブロック構成図である。
図4に示すように、タイヤ状態監視サーバ100は、タイヤデータ取得部110、タイマー制御部130及び警報部150を備える。
【0037】
これらの機能ブロックは、サーバコンピュータなどのハードウェア上においてコンピュータプログラム(ソフトウェア)を実行することによって実現される。
【0038】
具体的には、タイヤ状態監視サーバ100は、ハードウェア要素として、プロセッサ、メモリ、入力デバイス、ディスプレイ及び外部インターフェースを備える。また、当該コンピュータプログラム(ソフトウェア)は、通信ネットワーク70を介して提供されてもよいし、光ディスク、ハードディスクドライブまたはフラッシュメモリなどのコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されていてもよい。
【0039】
タイヤデータ取得部110は、センサユニット40(
図2,3参照)からタイヤ30の状態を示すタイヤデータを取得する。具体的には、タイヤデータ取得部110は、複数のタイヤ30と対応付けられている、つまり、タイヤ30(具体的には、リムホイール、以下同)に取り付けられているセンサユニット40を構成する温度センサ41及び圧力センサ43などの複数のセンサのそれぞれから、無線通信を介してタイヤデータを直接取得する。
【0040】
タイヤデータには、少なくとも圧力センサ43によって測定された内圧データが含まれる。内圧データとは、タイヤ30の内圧値が判定できるデータであればよい。内圧値が直接示されてもよいし、直接示すよりもビット数が少ないインデックスなどであってもよい。
【0041】
また、タイヤデータには、温度センサ41によって測定された温度データが含まれてもよい。さらに、センサユニット40が他のセンサ(例えば、加速度センサ)を備える場合には、当該センサが測定したデータがタイヤデータに含まれてもよい。
【0042】
タイヤデータ取得部110は、センサユニット40から基地局60及び通信ネットワーク70を介してタイヤデータを繰り返し取得する。本実施形態において、タイヤデータ取得部110は、空気入りタイヤの内圧値を繰り返し取得する取得部を構成する。
【0043】
本実施形態では、タイヤデータ取得部110は、小電力広域ネットワーク(LPWA)による無線通信を介してタイヤデータを取得する。つまり、タイヤデータ取得部110は、センサユニット40から近距離無線方式を用いて車両20を経由する形態ではなく、センサユニット40からLPWAを用い、無線通信を介してタイヤデータを直接取得する。
【0044】
タイヤデータの取得タイミング(繰り返し周期)は、特に限定されないが、例えば、1分~10分程度とすることが一般的である。なお、LPWAの特性を考慮し、取得タイミング(繰り返し周期)は、さらに長くても構わない。
【0045】
タイマー制御部130は、タイヤデータの異常を示す情報を出力するタイミングの決定に用いられるタイマーを制御する。具体的には、タイマー制御部130は、注意情報及び危険情報を出力するタイミングの決定に用いられるタイマーを制御できる。
【0046】
注意情報は、Warningと呼ばれてもよい。Warningは、ユーザ80(及び/または車両20のドライバー、以下同)に対して内圧低下の注意を喚起する情報と解釈されてよい。Warningは、ユーザ80に対して内圧低下の注意を喚起するが、至急の対応を要しない警報として位置付けられてもよい。
【0047】
危険情報は、Criticalと呼ばれてもよい。Criticalは、ユーザ80に対して至急の対応、例えば、車両20の走行を停止し、タイヤ状態を点検することを要請する情報と解釈されてよい。
【0048】
注意情報は、内圧値の閾値(注意閾値と呼ぶ)と対応付けられ、危険情報は、注意閾値よりも低い内圧値の閾値(危険閾値と呼ぶ)と対応付けられてよい。
【0049】
例えば、注意閾値は、推奨内圧値の5~10%低下値とし、危険閾値は、推奨内圧値の20%程度の低下値としてよい。推奨内圧値は、車両20の製造者によって指定された内圧値でもよいし、JATMA(日本自動車タイヤ協会)のYearBookにおける最大負荷能力に対応する空気圧(正規内圧と呼ばれてもよい)でもよい。なお、欧州ではETRTO、米国ではTRA、その他各国のタイヤ規格が対応する。
【0050】
タイマー制御部130は、内圧値が注意閾値以下となった場合、タイマーを起動する。具体的には、タイマー制御部130は、タイヤデータ取得部110によって取得されたタイヤデータに基づく内圧値が注意閾値以下となった場合、タイマーを起動(start)してよい。
【0051】
一方、タイマー制御部130は、タイヤデータ取得部110によって取得された内圧値が、注意閾値または危険閾値以下となった後、注意閾値を上回った場合、新たにタイマーを起動してよい。また、タイマー制御部130は、新たに起動したタイマーが満了するまでに、内圧値が、注意閾値または危険閾値以下となっても、タイマーを再起動(restart)しなくてよい。
【0052】
さらに、タイマー制御部130は、内圧値が危険閾値以下となった後、当該危険閾値よりも高く、注意閾値以下となった場合、タイマーを再起動せず、継続してよい。つまり、タイマー制御部130は、危険閾値を下回った内圧値が、危険閾値を上回ったが、注意閾値は下回っている場合、タイマーを停止、再起動(リセット)せずに継続してよい。
【0053】
警報部150は、注意閾値または危険閾値に基づく内圧値の警報に関する処理を実行する。具体的には、警報部150は、注意閾値と対応付けられた注意情報(Warning)、または危険閾値と対応付けられた危険情報(Critical)を出力できる。
【0054】
警報部150は、注意情報または危険情報をユーザ80と対応付けられている所定の宛先に通知できる。所定の宛先は、ユーザ80または車両20のドライバーの電子メールアドレスなどでもよいし、車両20に搭載されているECU(Electronic Control Unit)などであってもよい。
【0055】
警報部150は、タイヤデータ取得部110によって取得された内圧値が注意閾値以下の場合、注意情報を出力する。また、警報部150は、内圧値が危険閾値以下の場合、危険情報を出力する。
【0056】
具体的には、警報部150は、内圧値が注意閾値以下となった場合、タイマー制御部130によって起動されたタイマーが満了するまで注意情報を出力してよい。また、警報部150は、内圧値が危険閾値となった場合、タイマーが満了するまで危険情報を出力してよい。つまり、警報部150は、タイマーが満了するまで注意情報または危険情報の出力を継続してよい。
【0057】
さらに、警報部150は、タイヤデータ取得部110によって取得された内圧値が危険閾値以下となった後、危険閾値よりも高く、注意閾値以下となった場合、注意情報を出力しなくてもよい。この場合、上述したように、危険閾値を下回ったことによって起動(再起動)されたタイマーは、リセットされずに継続されてよい。
【0058】
(4)タイヤ空気圧監視システムの動作
次に、タイヤ空気圧監視システム10の動作について説明する。具体的には、タイヤ状態監視サーバ100による内圧値の注意情報(Warning)及び危険情報(Critical)の出力に関する動作について説明する。
【0059】
(4.1)概略動作フロー
図5は、タイヤ状態監視サーバ100による内圧値の警報出力の概略動作フローを示す。
図5に示すように、タイヤ状態監視サーバ100は、タイヤ30の内圧値を取得する(S10)。具体的には、タイヤ状態監視サーバ100は、センサユニット40から送信されたタイヤデータに基づいて内圧値を所得する。
【0060】
タイヤ状態監視サーバ100は、取得した内圧値に基づいて、Warning/Critical判定を実行する(S20)。具体的には、タイヤ状態監視サーバ100は、取得した内圧値が注意閾値または危険閾値よりも低いか否かを判定する。上述したように、注意閾値は、推奨内圧値の5~10%低下値とし、危険閾値は、推奨内圧値の20%程度の低下値とすることができる。以下では、注意閾値が推奨内圧値の10%低下値、危険閾値が推奨内圧値の20%低下値である例を示す。
【0061】
タイヤ状態監視サーバ100は、内圧値のWarning/Critical判定結果に基づいて、タイマーを起動または再起動する(S30)。例えば、タイヤ状態監視サーバ100は、内圧値が注意閾値以下となった場合、タイマーを起動(start)する。また、タイヤ状態監視サーバ100は、起動したタイマーが満了するまでの期間において、内圧値が、注意閾値よりも低い危険閾値以下となった場合、タイマーを再起動(restart)してよい。
【0062】
さらに、タイヤ状態監視サーバ100は、内圧値が注意閾値または危険閾値以下となった後、注意閾値を上回った場合、つまり、内圧値が正常に復帰した場合、新たにタイマーを起動してよい。
【0063】
なお、タイマーの再起動とは、内圧値が注意閾値を下回ったことによって起動したタイマーを、さらに内圧値が危険閾値を下回った場合にタイマーを改めて起動することを意味してよい。広義には、内圧値が注意閾値よりも低い状態において、重要度(severity)が変化、具体的には、注意閾値未満から危険閾値未満に変化、或いは危険閾値未満から危険閾値以上、注意閾値未満に変化した場合、タイマーが再起動される。
【0064】
一方、新たにタイマーを起動とは、一度、注意閾値または危険閾値以下となった内圧値が注意閾値を上回った場合に、タイマーを起動することを意味してよい。
【0065】
タイヤ状態監視サーバ100は、内圧値に応じて警報を出力する(S40)。具体的には、タイヤ状態監視サーバ100は、内圧値に応じて、注意情報または危険情報を出力する。
【0066】
なお、タイマーの起動から満了までの時間は、車両20及び/またはタイヤ30の種類、使用環境などに応じて適宜設定されてよい。
【0067】
(4.2)動作例
以下では、タイヤ状態監視サーバ100による内圧値の警報出力の具体的な動作例について説明する。
【0068】
図6は、従来の内圧値の警報出力の動作例を示す。本動作例では、推奨内圧値(規定内圧)は、120psi(pound per square inch)である。また、本動作例では、注意閾値(Warning)は、推奨内圧値の10%低下値(108psi)、危険閾値(Critical)が推奨内圧値の20%低下値(96psi)に設定される。また、内圧値は、例えば、5分周期で繰り返し取得されてよい。
【0069】
なお、psiでなく、barまたはkPaが単位として用いられてもよい。また、危険閾値よりも低い内圧値と対応付けられた壊滅閾値(catastrophic)が、さらにもうけられてもよい。これらの内圧値に関する値は、ユーザ80が適宜設定してよい。
【0070】
図6に示すように、タイマーを適用せずに、取得された内圧値が、注意閾値または危険閾値以下となったか否かを判定し、注意情報または危険情報を出力すると、注意情報または危険情報の発生と停止とが、頻繁に繰り返される場合がある。
【0071】
このような事象は、主に、センサユニット40(圧力センサ43)の精度(測定誤差)、及びタイヤ30内の気室の温度の変動の少なくとも何れかによって、内圧値が当該閾値付近で上下に変動するために引き起こされる。
【0072】
このように、取得された内圧値に応じて注意情報または危険情報(警報)をそのまま出力する動作では、注意情報または危険情報の発生と停止との頻度が高いと、特に問題となり易い。
【0073】
具体的には、警報の発生と停止とが頻発し、タイヤ状態監視サーバ100に大きな負荷が掛かる。また、警報の発生と停止とが頻発すると、ユーザ80が煩わしさを感じる恐れもある。なお、非特許文献1に開示されているカウンタを用いる場合でも、警報の発生と停止とが頻発する場合には、上述した問題を解決するために充分でないと考えられる。
【0074】
図7は、本実施形態に係る内圧値の警報出力の動作例を示す。上述したような問題をより確実に解決するため、内圧値に関する注意情報及び危険情報(警報)の出力に対する時間的な制限が適用される。
【0075】
具体的には、注意情報または危険情報に相当する事象、つまり、内圧値が注意閾値以下となった、或いは内圧値が危険閾値以下となった場合でも、所定時間内、つまり、タイマーの設定時間が経過するまでの間においては、当該事象は無視されてよい。
【0076】
タイマーは、上述したように、注意情報または危険情報に相当する事象(open issueと呼ばれてもよい)が発生(create)する度に起動(または再起動)されてよい。当該事象がWarningからCriticalに変化した場合、つまり、事象の重要度(severity)が高くなると、タイマーは、再起動されてよい。
【0077】
なお、issueは、1つの空気圧に関する上述した不具合の事象が発生してから解決するまでのイベント(内部処理上の識別記号)を意味してよい。
【0078】
再起動されたタイマーの設定時間は、注意閾値以下となったタイミングで起動されたタイマーと異なって(例えば、短い時間)いてもよい。また、危険閾値以下となった場合に起動されるタイマーの設定時間は、注意閾値以下となった場合に起動されるタイマーの設定時間と異なっていてもよい。
【0079】
一方、内圧値が、危険情報から注意情報のレベルに戻った場合、つまり、危険閾値を下回った内圧値が、危険閾値を上回ったが、注意閾値は下回っている場合、タイヤ状態監視サーバ100は、このような事象の変更を無視し、タイマーを停止、再起動(リセット)せずに継続してよい。
【0080】
また、内圧値が、注意閾値または危険閾値以下となった後、注意閾値を上回った場合(つまり、内圧低下の問題が解決した場合)、新たにタイマーを起動してよい。この場合、タイマーの設定時間は、過去に注意閾値以下となった場合に起動されるタイマーと同じでよいが、変更されても構わない。
【0081】
このため、内圧低下の問題が解決してから当該タイマーが満了するまでに発生した注意情報または危険情報に相当する事象は、無視されてよい(当該事象がWarningからCriticalに変化したことを含む)。
【0082】
このように、タイヤ状態監視サーバ100は、タイマー(第1タイマーと呼んでもよい)を、注意情報または危険情報に相当する事象の発生時に起動(start)し、別のタイマー(第2タイマーと呼んでもよい)を、注意情報に相当する事象の消滅(Close)時に起動してよい。
【0083】
なお、タイマーの設定時間は、事象の発生・停止回数(繰り返し回数)に応じて動的に変更されてもよい。例えば、当該繰り返し回数が所定回数(第1所定回数)を上回る場合、タイマーの設定時間は、延長されてもよい。逆に、当該繰り返し回数が所定回数(第2所定回数)を下回る場合、タイマーの設定時間は、短縮されてもよい。
【0084】
また、注意情報を出力中に、危険情報を出力する場合、注意情報は停止されてもよい。さらに、所定回数連続して注意情報または危険情報に相当する内圧値が取得された場合、タイマーが満了しているか否かに関わらず、注意情報または危険情報と対応する警報を出力するようにしてもよい。一方、所定回数連続して注意閾値を上回る正常な内圧値が取得された場合、タイマーが満了しているか否かに関わらず、注意情報または危険情報と対応する警報を中止してもよい。
【0085】
(5)作用・効果
上述した実施形態によれば、以下の作用効果が得られる。具体的には、タイヤ空気圧監視システム10は、タイマーが満了するまでの期間において、内圧値が注意閾値または危険閾値以下となった後、注意閾値を上回った場合、新たにタイマーを起動できる。
【0086】
このため、タイヤ30の内圧値が正常に戻ったと判定される場合には、新たなタイマーの設定時間に基づいて注意情報または危険情報の出力を制御でき、注意情報または危険情報を適切なタイミング及び期間で報知し得る。
【0087】
特に、内圧値が、警報の基準となる閾値付近で変動する場合でも、警報(注意情報または危険情報)の発生と停止の頻発、いわゆる「疑陽性」(false positive)の警報の発生リスクを低減できる。これにより、タイヤ空気圧監視システム10の負荷を低減できるとともに、ユーザが煩わしさを感じることも回避し得る。すなわち、タイヤ空気圧監視システム10によれば、警報の発生と停止との頻発を防止しつつ、内圧低下の警報を適切なタイミングで出力できる。
【0088】
本実施形態では、タイヤ空気圧監視システム10は、注意閾値を上回ったことに伴って新たに起動したタイマーが満了するまでに、内圧値が、注意閾値または危険閾値以下となっても、タイマーを再起動しない。このため、注意情報または危険情報をさらに適切なタイミング及び期間で報知し得る。
【0089】
本実施形態では、タイヤ空気圧監視システム10は、内圧値が危険閾値以下となった後、危険閾値よりも高く、注意閾値以下となった場合、注意情報を出力せず、タイマーを継続してよい。このため、報知の必要性が低い警報の出力を回避でき、タイヤ空気圧監視システム10の負荷のさらなる低減、及びユーザが煩わしさをより確実に回避し得る。
【0090】
(6)その他の実施形態
以上、実施形態について説明したが、当該実施形態の記載に限定されるものではなく、種々の変形及び改良が可能であることは、当業者には自明である。
【0091】
例えば、上述した実施形態では、タイヤ状態監視サーバ100が通信ネットワーク70と接続され、サーバコンピュータなどのハードウェア上においてコンピュータプログラム(ソフトウェア)を実行することによって実現されるものとして説明したが、タイヤ状態監視サーバ100の機能の一部または全部は、ネットワーククラウド(不図示)上で提供されるサービスの組合せなどによって、仮想的に提供されても構わない。
【0092】
また、上述した実施形態では、センサユニット40は、LPWAに従って基地局60と無線通信を実行する機能を有していたが、従来と同様に、近距離無線方式も用いて車両20と無線通信を実行する機能をさらに有していてもよい。
【0093】
上記のように、本発明の実施形態を記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【符号の説明】
【0094】
10 タイヤ空気圧監視システム
20 車両
21 前輪車軸
22 後輪車軸
30 タイヤ
40 センサユニット
41 温度センサ
43 圧力センサ
44 加速度センサ
45 センサID設定部
47 無線通信部
49 バッテリ
60 基地局
70 通信ネットワーク
80 ユーザ
100 タイヤ状態監視サーバ
110 タイヤデータ取得部
130 タイマー制御部
150 警報部