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特許7564056浮体構造物及び浮体構造物の組み立て方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】浮体構造物及び浮体構造物の組み立て方法
(51)【国際特許分類】
   B63B 35/00 20200101AFI20241001BHJP
   B63B 35/44 20060101ALI20241001BHJP
   B63B 73/00 20200101ALI20241001BHJP
   F03D 13/25 20160101ALI20241001BHJP
【FI】
B63B35/00 T
B63B35/44 Z
B63B73/00
F03D13/25
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021082392
(22)【出願日】2021-05-14
(65)【公開番号】P2022175735
(43)【公開日】2022-11-25
【審査請求日】2024-01-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】加藤 基規
(72)【発明者】
【氏名】刈込 界
(72)【発明者】
【氏名】杉村 忠士
(72)【発明者】
【氏名】太田 真
(72)【発明者】
【氏名】紙谷 洋一
(72)【発明者】
【氏名】森下 邦宏
(72)【発明者】
【氏名】湯下 篤
【審査官】高瀬 智史
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-141857(JP,A)
【文献】国際公開第2011/057940(WO,A2)
【文献】特開2002-285951(JP,A)
【文献】特表2014-535022(JP,A)
【文献】特開2005-180351(JP,A)
【文献】特開2009-085167(JP,A)
【文献】特開2015-155655(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63B 35/00
B63B 73/00
F03D 13/25
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物の周囲に設けられる1以上の浮力体を含む浮体と、
前記構造物と前記浮体との間に設けられ、前記構造物の自重を前記浮体に伝えるように構成された複数本の第1支持ワイヤと、
を備え、
各々の前記第1支持ワイヤは、
前記浮体と接続される一端と、
前記一端よりも下方において前記構造物に接続される他端と、
を含み、
前記一端よりも上方において前記構造物に接続され、前記構造物の転倒を防止するように構成された複数本の第2支持ワイヤ
を備え、
前記1以上の浮力体は、少なくとも第1浮力体と、第2浮力体とを含み、
前記浮体は、前記第1浮力体と前記第2浮力体とを連結して固定する連結部材を有し、
前記複数本の第2支持ワイヤは、それぞれ基端と先端とを含み、
前記基端のそれぞれは、前記一端よりも上方において前記連結部材と接続され、
前記先端のそれぞれは、前記一端よりも上方において前記構造物に接続される
浮体構造物。
【請求項2】
前記先端の高さ位置は、前記基端の高さ位置と実質的に同じである
請求項1に記載の浮体構造物。
【請求項3】
前記先端の高さ位置は、前記基端の高さ位置よりも高い
請求項1に記載の浮体構造物。
【請求項4】
前記複数本の第2支持ワイヤは、張力が付与されている
請求項1乃至の何れか一項に記載の浮体構造物。
【請求項5】
前記構造物の周囲を囲み、前記構造物と非接触となるように前記連結部材に取り付けられている環状部材
を備える
請求項1乃至の何れか一項に記載の浮体構造物。
【請求項6】
前記構造物の周囲を囲み、前記構造物と非接触となるように前記浮体に取り付けられている環状部材
を備える
請求項1乃至の何れか一項に記載の浮体構造物。
【請求項7】
構造物の周囲に設けられる1以上の浮力体を含む浮体と、
前記構造物と前記浮体との間に設けられ、前記構造物の自重を前記浮体に伝えるように構成された複数本の第1支持ワイヤと、
を備え、
各々の前記第1支持ワイヤは、
前記浮体と接続される一端と、
前記一端よりも下方において前記構造物に接続される他端と、
を含み、
前記一端よりも上方において前記構造物に接続され、前記構造物の転倒を防止するように構成された複数本の第2支持ワイヤ
を備え、
前記1以上の浮力体は、少なくとも第1浮力体と、第2浮力体とを含み、
前記浮体は、前記第1浮力体と前記第2浮力体とを連結して固定する連結部材を有し、
前記構造物の周囲を囲み、前記構造物と非接触となるように前記連結部材に取り付けられている環状部材
を備える
浮体構造物。
【請求項8】
前記構造物は、海洋構造物の支柱である
請求項1乃至の何れか一項に記載の浮体構造物。
【請求項9】
構造物の周囲に設けられる1以上の浮力体を含む浮体と前記構造物との間に、前記構造物の自重を前記浮体に伝えるように、複数本の第1支持ワイヤを配置する工程
を備え、
前記複数本の第1支持ワイヤを配置する工程では、各々の前記第1支持ワイヤの一端を前記浮体と接続し、他端を前記一端よりも下方において前記構造物に接続し、
前記構造物の転倒を防止するように前記一端よりも上方において複数本の第2支持ワイヤを前記構造物に接続する工程と、
前記複数本の第2支持ワイヤを前記構造物に接続する工程に先立って、前記構造物と前記浮体との相対的な移動を禁止する工程と、
前記複数本の第2支持ワイヤを前記構造物に接続する工程の後で、前記構造物と前記浮体との相対的な移動の禁止を解除する工程と、
を備える
浮体構造物の組み立て方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、浮体構造物及び浮体構造物の組み立て方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、洋上で海底の資源を掘削する際のプラットフォームや、洋上風力発電装置のタワーのような構造物を支持するためのプラットフォームとして、浮体構造物が利用される。
このような浮体構造物として、例えばセミサブ型の浮体構造物がある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6336436号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば特許文献1に記載された浮体構造物では、例えば1つのセンターカラムと、センターカラムの周囲に配置された3つのアウターカラムとを備えている。この浮体構造物では、センターカラムとアウターカラムとは、下部同士がボトムビームで連結され、上部同士がトップビームで連結され、センターカラムの上部とアウターカラムの下部とが支柱で連結されている。
例えば特許文献1に記載された浮体構造物では、上述したボトムビームやトップビーム、支柱が剛体であり、センターカラムやアウターカラムに剛接合されている。そのため、ボトムビームやトップビーム、支柱は、センターカラムとアウターカラムとの間で曲げモーメントを伝達する。また、ボトムビームやトップビームには、軸圧縮力も作用するため、座屈をしないように強度を持たせておく必要があり、ビーム断面が大きくなり、コスト増を招いてしまう。
【0005】
本開示の少なくとも一実施形態は、上述の事情に鑑みて、浮体構造物のコストを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本開示の少なくとも一実施形態に係る浮体構造物は、
構造物の周囲に設けられる1以上の浮力体を含む浮体と、
前記構造物と前記浮体との間に設けられ、前記構造物の自重を前記浮体に伝えるように構成された複数本の第1支持ワイヤと、
を備え、
各々の前記第1支持ワイヤは、
前記浮体と接続される一端と、
前記一端よりも下方において前記構造物に接続される他端と、
を含む。
【0007】
(2)本開示の少なくとも一実施形態に係る浮体構造物の組み立て方法は、
構造物の周囲に設けられる1以上の浮力体を含む浮体と前記構造物との間に、前記構造物の自重を前記浮体に伝えるように、複数本の第1支持ワイヤを配置する工程
を備え、
前記複数本の第1支持ワイヤを配置する工程では、各々の前記第1支持ワイヤの一端を前記浮体と接続し、他端を前記一端よりも下方において前記構造物に接続する。
【発明の効果】
【0008】
本開示の少なくとも一実施形態によれば、浮体構造物のコストを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一実施形態に係る海洋構造物を示す側面図である。
図2A】幾つかの実施形態に係る浮体構造物の一例を示す斜視図である。
図2B】幾つかの実施形態に係る浮体構造物の一例を示す側面図であり、説明の便宜上、紙面手前側の連結部材を除いて表している。
図2C】、幾つかの実施形態に係る浮体構造物の他の一例を示す側面図であり、説明の便宜上、紙面手前側の連結部材を除いて表している。
図3A】3つの浮力体を有する浮体構造物の一例を示す平面図であり、図2A及び図2Bに示した浮体構造物の平面図である。
図3B】4つの浮力体を有する浮体構造物の一例を示す平面図である。
図3C】5つの浮力体を有する浮体構造物の一例を示す平面図である。
図3D】5つの浮力体を有する浮体構造物の他の一例を示す平面図である。
図4A】3つの浮力体を有する浮体構造物の他の一例を示す平面図である。
図4B】4つの浮力体を有する浮体構造物の他の一例を示す平面図である。
図4C】5つの浮力体を有する浮体構造物のさらに他の一例を示す平面図である。
図4D】5つの浮力体を有する浮体構造物のさらに他の一例を示す平面図である。
図5】幾つかの実施形態に係る浮体構造物による支柱の支持について説明するための模式図である。
図6A】第2支持ワイヤの延在方向についての他の一例を示す斜視図である。
図6B図6Aに示した浮体構造物の側面図であり、説明の便宜上、紙面手前側の連結部材を除いて表している。
図7A】支柱の下端位置と第1支持ワイヤの他端の位置との位置関係についての他の一例を示す斜視図である。
図7B図7Aに示した浮体構造物の側面図であり、説明の便宜上、紙面手前側の連結部材を除いて表している。
図8A】第2支持ワイヤの配置数について他の一例を示す斜視図である。
図8B】図Aに示した浮体構造物の側面図であり、説明の便宜上、紙面手前側の連結部材を除いて表している。
図9】第2支持ワイヤの配置数についてさらに他の一例を示す斜視図である。
図10A】後述する環状部材を備える浮体構造物の一例を示す斜視図である。
図10B図10Aに示した浮体構造物の側面図であり、説明の便宜上、紙面手前側の連結部材を除いて表している。
図10C図10Aに示した浮体構造物の平面図である。
図10D】後述する環状部材を備える浮体構造物の他の一例を示す斜視図である。
図11】幾つかの実施形態に係る浮体構造物の組み立て方法における処理手順を示すフローチャートである
図12A】幾つかの実施形態に係る浮体構造物の組み立て方法における処理手順を説明するための斜視図である。
図12B】幾つかの実施形態に係る浮体構造物の組み立て方法における処理手順を説明するための斜視図である。
図12C】幾つかの実施形態に係る浮体構造物の組み立て方法における処理手順を説明するための斜視図である。
図12D】幾つかの実施形態に係る浮体構造物の組み立て方法における処理手順を説明するための斜視図である。
図12E】幾つかの実施形態に係る浮体構造物の組み立て方法における処理手順を説明するための斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して本開示の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本開示の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0011】
以下に、本開示の幾つかの実施形態に係る浮体構造物について、図面を参照して説明する。
幾つかの実施形態に係る浮体構造物10は、例えば、石油プラットフォームのように洋上で海底の資源を掘削する際のプラットフォームや、洋上風力発電装置のタワーのような構造物を支持するためのプラットフォームにおいて利用可能なものである。以下、これらの海洋構造物における幾つかの実施形態に係る浮体構造物について説明する。
【0012】
図1は、一実施形態に係る海洋構造物を示す側面図である。
本開示の一実施形態に係る海洋構造物1は、図1に示すように、1つの支柱2と、支柱2に設置された洋上設備3と、支柱2を洋上で支持する浮体構造物10などを備える。洋上設備3は、例えば掘削設備や石油の生産設備、洋上変電所、作業員のための設備等、及び、これらの設備を設置するデッキであってもよい。また、洋上設備3は、風力発電装置の風車部であってもよい。
海洋構造物1は、浮体式であり、水面又は水中に浮かばされた浮体構造物10によって洋上に設置される。浮体構造物10は、アンカーケーブル8によって海底と係留される。アンカーケーブル8は、一端が海底に固定され、他端が浮体構造物10に接続されている。
【0013】
支柱2は、一方向に長い構造を有し、軸方向が設置面に対して垂直方向となるように支柱2の基礎部4が浮体構造物10に設けられる。支柱2は、例えば1本の円柱状部材でもよいし、複数の長尺状部材が組み合わされて構成されてもよい。
【0014】
一実施形態に係る海洋構造物1では、アンカーケーブル8の全体、及び、支柱2の内の少なくとも基礎部4は、浮体構造物10の喫水線よりも下方、すなわち水中に位置している。
【0015】
支柱2は、上端側において洋上設備3を支持する。支柱2は、圧縮力及び曲げを主に負担する長尺状部材などから構成される。
【0016】
一実施形態に係る海洋構造物1は、例えば図1に示すように、1つの洋上設備3を1つの支柱2及び1つの浮体構造物10で支持するように構成されていてもよい。また、一実施形態に係る海洋構造物1は、例えば1つの洋上設備3を複数の支柱2及び複数の浮体構造物10で支持するように構成されていてもよい。この場合、複数の支柱2のそれぞれは、1つの浮体構造物10が1つの支柱2を支持するようにそれぞれの浮体構造物10が構成されているとよい。また、複数の浮体構造物10は、それぞれ独立していてもよく、複数の浮体構造物10の少なくとも一部が互いに連結されていてもよい。
【0017】
(浮体構造物10)
次に、本実施形態に係る海洋構造物1の浮体構造物10について説明する。
図2Aは、幾つかの実施形態に係る浮体構造物の一例を示す斜視図である。
図2Bは、幾つかの実施形態に係る浮体構造物の一例を示す側面図であり、説明の便宜上、紙面手前側の連結部材を除いて表している。
図2Cは、幾つかの実施形態に係る浮体構造物の他の一例を示す側面図であり、説明の便宜上、紙面手前側の連結部材を除いて表している。
図3Aは、3つの浮力体を有する浮体構造物の一例を示す平面図であり、図2A及び図2Bに示した浮体構造物の平面図である。
図3Bは、4つの浮力体を有する浮体構造物の一例を示す平面図である。
図3Cは、5つの浮力体を有する浮体構造物の一例を示す平面図である。
図3Dは、5つの浮力体を有する浮体構造物の他の一例を示す平面図である。
図4Aは、3つの浮力体を有する浮体構造物の他の一例を示す平面図である。
図4Bは、4つの浮力体を有する浮体構造物の他の一例を示す平面図である。
図4Cは、5つの浮力体を有する浮体構造物のさらに他の一例を示す平面図である。
図4Dは、5つの浮力体を有する浮体構造物のさらに他の一例を示す平面図である。
【0018】
幾つかの実施形態に係る浮体構造物10は、図2Aから図2C図3Aから図3D、及び図4Aから図4Dに示すように、浮体20と、支持台13と、複数本の第1支持ワイヤ14と、複数本の第2支持ワイヤ15等を備える。
【0019】
幾つかの実施形態に係る浮体構造物10では、浮体20は、図2Aから図4Dに示すように、浮体構造物10による支持の対象である構造物としての支柱2の周囲に設けられる1以上の浮力体21を含む。
浮力体21のそれぞれは、水面又は水中に浮くことが可能な構成を有しており、支柱2の径方向外側において、支柱2を囲むように周方向に設置される。浮力体21は、バランス良く支柱2を支持できればよく、三つ設置されてもよいし、三つ以上設置されてもよい。図2Aから図2C図3A、及び図4Aには、浮力体21が三つ設置される場合を示し、図3B及び図4Bには、浮力体21が四つ設置される場合を示し、図3C図3D図4C、及び図4Dには、浮力体21が五つ設置される場合を示す。
【0020】
なお、幾つかの実施形態に係る浮体構造物10では、浮体20は、例えば、平面視において中空円柱形状や中空多角形状を有する一つの浮力体を備えていてもよく、中空円柱形状や中空多角形状を有する浮力体を平面視における周方向の複数の位置で分割したような形状を有する浮力体を複数備えていてもよい。
【0021】
以下、幾つかの実施形態に係る浮体構造物10に関して、図2Aから図2C図3A、及び図4Aに示すように、浮力体21が三つ設置される場合を中心に説明する。
【0022】
(浮体20)
幾つかの実施形態に係る浮体構造物10では、浮体20は、複数の浮力体21同士を連結して固定する連結部材22を有する。連結部材22は、一端が複数の浮力体21のうち一の浮力体21(第1浮力体21とも称する)と剛接合され、他端が複数の浮力体21のうち他の浮力体21(第2浮力体21とも称する)と剛接合されている。連結部材22は、浮力体間に作用する力(曲げ、圧縮、引張など)を主に負担する。
連結部材22は、図示はしないが、浮力体間に作用する力によって浮力体21同士の相対位置が変化しないように、トラス構造やラーメン構造を有する部材であってもよく、型鋼であってもよい。
幾つかの実施形態に係る浮体構造物10によれば、複数の浮力体21によって支柱2を安定して支持できる。
【0023】
幾つかの実施形態に係る浮体20では、図2Aから図2C図3Aから図3C、及び図4Aから図4Cに示すように、平面視において支柱2を中心として周方向に間隔を空けて配置された複数の浮力体21のそれぞれについて、周方向で隣り合う浮力体21同士を連結部材22で連結してもよい。また、幾つかの実施形態に係る浮体20では、図3D及び図4Dに示すように、ある一つの浮力体と、該浮力体と周方向で隣りに位置する浮力体21ではなく、さらにその隣りに位置する浮力体21とを連結部材22で連結してもよい。すなわち、幾つかの実施形態に係る浮体20では、複数の浮力体21が一体的に固定されるのであれば、ある浮力体21をその他の浮力体21の何れか一つ以上と連結してもよい。
【0024】
(支持台13)
支持台13は、複数の浮力体21の中間に設けられ、支柱2の下端に設けられた基礎部4を支持する。支持台13は、浮力体21の下端よりも下方において支柱2の下端を支持する。すなわち、支柱2が複数の浮力体21及び連結部材22で周囲を囲まれた領域を貫通して、支柱2の下部が連結部材22よりも下方に延設されており、支柱2の重心位置が下方に下がる。これにより、浮力体21自体の高さを小さくしても揺動に対する安定性を確保できる。したがって、浮力体21の製造にかかる時間やコストを低減できる。
【0025】
(第1支持ワイヤ14)
複数本の第1支持ワイヤ14のそれぞれは、支柱2と浮体20との間に設けられ、支柱2の自重を浮体20に伝えるように構成された線状部材であり、それぞれの一端14aが浮体20に接続される。
【0026】
なお、第1支持ワイヤ14は、図2Aから図2Cに示すように、一端14a側において、浮体20のうち、浮力体21の下部に接続されているとよい。
また、第1支持ワイヤ14は、図2A及び図2Bに示すように、一端14aよりも下方において他端14bが支持台13にそれぞれ接続されていてもよい。すなわち、第1支持ワイヤ14は、他端14bが支持台13を介して支柱2の下部にそれぞれ接続されていてもよい。第1支持ワイヤ14は、図2Cに示すように、一端14aよりも下方において他端14bが支柱2の基礎部4にそれぞれ直接接続されていてもよい。
このように、第1支持ワイヤ14は、一端14aよりも下方において他端14bが支柱2に直接または間接的に接続されているとよい。
【0027】
第1支持ワイヤ14は、引張力を主に負担する。第1支持ワイヤ14は、より線構造を有するものが適用されてもよい。これにより、第1支持ワイヤ14の伸縮による変形で、支柱2と浮体20には減衰が負荷される。その結果、支柱2と浮体20に生じる揺動を抑制する効果が発揮される。
【0028】
第1支持ワイヤ14は、浮力体21又は連結部材22と支柱2の間で、図2Aに示すように、例えば、2本ずつ設置される。なお、各位置において設置される第1支持ワイヤ14の本数は、この例に限定されず、1本ずつでもよいし、3本以上ずつでもよい。また、フェールセーフのため、第1支持ワイヤ14に沿って予備の第1支持ワイヤ(図示せず。)が併設されてもよい。
【0029】
幾つかの実施形態に係る浮体構造物10によれば、構造物としての支柱2の自重を第1支持ワイヤ14の引張の軸力で浮体に伝えることとなり、第1支持ワイヤ14の圧縮の軸力や曲げモーメントによる第1支持ワイヤ14の破損等を考慮しなくてよくなる。これにより、支柱2の自重を浮体に伝えるための部材の構成を簡素化できるとともに、第1支持ワイヤ14の断面積を不必要に大きくしなくてもよくなるので、浮体構造物10のコストを抑制できる。
【0030】
幾つかの実施形態に係る浮体構造物10では、海洋構造物1の支柱2を支持するように構成されているので、海洋構造物1における浮体構造物10のコストを抑制できる。
【0031】
一実施形態に係る海洋構造物1では、幾つかの実施形態に係る浮体構造物10を備えるので、海洋構造物1のコストを抑制できる。
【0032】
(第2支持ワイヤ15)
複数本の第2支持ワイヤ15のぞれぞれは、第1支持ワイヤ14の一端14aよりも上方において支柱2に接続され、支柱2の転倒を防止するように構成された線状部材である。
幾つかの実施形態に係る浮体20では、複数本の第2支持ワイヤ15は、それぞれ基端15aと先端15bとを含む。上記基端15aのそれぞれは、第1支持ワイヤ14の一端14aよりも上方において浮体20と接続され、上記先端15bのそれぞれは、第1支持ワイヤ14の一端14aよりも上方において支柱2に接続される。
【0033】
なお、第2支持ワイヤ15は、図3Aから図3Dに示すように、基端15a側において、浮体20のうち、連結部材22に接続されていてもよい。
また、第2支持ワイヤ15は、図4Aから図4Dに示すように、基端15a側において、浮体20のうち、浮力体21に接続されていてもよい。
【0034】
第2支持ワイヤ15は、図3Aから図3D、及び図4Aから図4Dに示すように、先端15b側において、支柱2に直接接続されていてもよい。第2支持ワイヤ15は、後述する図12Aから図12Eに示すように、先端15b側において、支柱2の外周に設けられた取付部2aを介して支柱2に接続されていてもよい。
このように、第2支持ワイヤ15は、第1支持ワイヤ14の一端14aよりも上方において支柱2に直接または間接的に接続されているとよい。
【0035】
第2支持ワイヤ15は、引張力を主に負担する。第2支持ワイヤ15は、より線構造を有するものが適用されてもよい。これにより、第2支持ワイヤ15は支柱2の転倒等の水平方向の動きに抵抗するため、支柱2と浮体20に生じる揺動を抑制する。
【0036】
幾つかの実施形態に係る浮体構造物10によれば、第2支持ワイヤ15の引張の軸力で構造物としての支柱2の転倒を防止するように構成することで、第2支持ワイヤ15の圧縮の軸力や曲げモーメントによる第2支持ワイヤ15の破損等を考慮しなくてよくなる。これにより、第1支持ワイヤ14の一端14aにおいて支柱2に柱状の部材等を接続することで支柱2の転倒を防止するように構成した場合と比べ、支柱の転倒を防止するための部材の構成を簡素化できるとともに、第2支持ワイヤ15の断面積を不必要に大きくしなくてもよくなるので、浮体構造物10のコストを抑制できる。
【0037】
幾つかの実施形態に係る浮体20では、図3Aから図3D、及び図4Aから図4Dに示すように、平面視において、複数本の第2支持ワイヤ15は、支柱2を中心として放射状に延在するようにそれぞれ配置されているとよい。これにより、複数本の第2支持ワイヤ15によって支柱2が転倒しないように支持できる。
【0038】
図5は、幾つかの実施形態に係る浮体構造物による支柱の支持について説明するための模式図である。
図5に示すように、幾つかの実施形態に係る浮体構造物10では、支柱2は、軸力部材であって両端がピン接合される複数本の第1支持ワイヤ14と、複数本の第2支持ワイヤ15とによって浮体20に連結される。
幾つかの実施形態に係る浮体構造物10では、複数の浮力体21同士が連結部材22で連結されているので、浮力体21同士、及び浮力体21と連結部材22との相対位置の変化が比較的小さくなる。
すなわち、幾つかの実施形態に係る浮体構造物10では、支柱2と、複数本の第1支持ワイヤ14と、複数本の第2支持ワイヤ15とによって図5において破線の三角形Trで示すようなトラス構造を常に形成するため、支柱2の上下を両端ともピン接合となる第1支持ワイヤ14及び第2支持ワイヤ15で連結しても支柱2は安定する。
【0039】
(第2支持ワイヤ15の初期張力について)
幾つかの実施形態に係る浮体構造物10では、第2支持ワイヤ15には、初期張力、すなわち、予め張力が付与されているとよい。
これにより、第2支持ワイヤ15は圧縮力が作用してもワイヤたわみによる軸力抜けが発生しない。つまり、支柱2が転倒する方向にある第2支持ワイヤ15も支柱2の転倒に抵抗するため、支柱2を浮体20によって安定的に支持できる。
【0040】
(第2支持ワイヤ15の延在方向について)
幾つかの実施形態に係る浮体構造物10では、図2Aから図2Cに示すように、第2支持ワイヤ15の先端15bの高さ位置は、第2支持ワイヤ15の基端15aの高さ位置と実質的に同じであってもよい。
これにより、第2支持ワイヤ15の張力が支柱2に対して上下方向に作用し難くなるので、支柱2に対する負担を軽減できる。
【0041】
図6Aは、第2支持ワイヤの延在方向についての他の一例を示す斜視図である。
図6Bは、図6Aに示した浮体構造物の側面図であり、説明の便宜上、紙面手前側の連結部材を除いて表している。
図6A及び図6Bに示すように、第2支持ワイヤ15の先端15bの高さ位置は、第2支持ワイヤ15の基端15aの高さ位置よりも高くてもよい。
これにより、第2支持ワイヤ15の張力が支柱2に対して下向きに作用するので、浮体20に対して支柱2が上方に移動し難くなり、浮体20に対する支柱2の上下方向の揺動を抑制できる。
【0042】
(支柱の下端位置と第1支持ワイヤの他端の位置との位置関係について)
幾つかの実施形態に係る浮体構造物10では、図2Aから図2C図6A、及び図6Bに示すように、第1支持ワイヤ14の他端14bの位置は、支柱2の下端2dの近傍であってもよい。すなわち、幾つかの実施形態に係る浮体構造物10では、支柱2の下端2dの位置と第1支持ワイヤ14の他端14bの位置とは、実質的に同じであってもよい。
【0043】
図7Aは、支柱の下端位置と第1支持ワイヤの他端の位置との位置関係についての他の一例を示す斜視図である。
図7Bは、図7Aに示した浮体構造物の側面図であり、説明の便宜上、紙面手前側の連結部材を除いて表している。
幾つかの実施形態に係る浮体構造物10では、図7A及び図7Bに示すように、第1支持ワイヤ14の他端14bの位置は、支柱2の基礎部4よりも上方であってもよい。
例えば、図7A及び図7Bに示す浮体構造物10では、支持台13よりも下方に基礎部4が位置していてもよい。
このように、図2Aから図2C図6A、及び図6Bに示した実施形態よりも支柱2の下端2dの位置を下方に設定することで、支柱2の重心位置が下がるので、支柱2の揺動を抑制できる。
【0044】
(第2支持ワイヤ15の配置数について)
幾つかの実施形態に係る浮体構造物10では、図3Aから図3D、及び図4Aから図4Dに示すように、1つの連結部材22又は1つの浮力体21と支柱2とを連結する第2支持ワイヤ15は、それぞれ1本ずつであってもよい。
【0045】
図8Aは、第2支持ワイヤの配置数について他の一例を示す斜視図である。
図8Bは、図Aに示した浮体構造物の側面図であり、説明の便宜上、紙面手前側の連結部材を除いて表している。
図9は、第2支持ワイヤの配置数についてさらに他の一例を示す斜視図である。
幾つかの実施形態に係る浮体構造物10では、図8A及び図8Bに示すように、1つの連結部材22と支柱2とを連結する第2支持ワイヤ15は、複数本であってもよい。そして、これら複数本の第2支持ワイヤ15のそれぞれを、支柱2を中心として放射状に延在するように配置してもよい。なお、図示はしていないが、1つの浮力体21と支柱2とを連結する第2支持ワイヤ15は、複数本であってもよい。
【0046】
図8A及び図8Bに示すように、1つの連結部材22と支柱2とを連結する第2支持ワイヤ15を複数本とし、各第2支持ワイヤ15の基端15aの位置を連結部材22の延在方向に沿って間隔が空くように設定することで、各第2支持ワイヤ15からの引張力が連結部材22に作用する位置が連結部材22の延在方向に沿って分散されるので、連結部材22に要求される強度が不必要に大きくなることを抑制できる。
また、個々の第2支持ワイヤ15の線径を比較的小さくすることができるので、連結部材22や支柱2に第2支持ワイヤ15を接続する作業が容易となる。
さらに、1つの浮力体21と支柱2とを連結する第2支持ワイヤ15を複数本とすることで、万が一、一部の第2支持ワイヤ15に損傷が生じても、他の第2支持ワイヤ15によって浮力体21と支柱2との結合を保つことができる。
【0047】
また、幾つかの実施形態に係る浮体構造物10では、図9に示すように、1つの連結部材22と支柱2とを連結する第2支持ワイヤ15を多重化してもよい。なお、図9では、1つの連結部材22と支柱2とを連結する第2支持ワイヤ15が二重化された場合の例を示している。すなわち、幾つかの実施形態に係る浮体構造物10では、図9に示すように、連結部材22と第2支持ワイヤ15との接続箇所1カ所当たりに複数本の第2支持ワイヤ15を接続し、支柱2と第2支持ワイヤ15との接続箇所1カ所当たりに複数本の第2支持ワイヤ15を接続してもよい。
これにより、万が一、一部の第2支持ワイヤ15に損傷が生じても、他の第2支持ワイヤ15によって浮力体21と支柱2との結合を保つことができる。
【0048】
(環状部材について)
図10Aは、後述する環状部材を備える浮体構造物の一例を示す斜視図である。
図10Bは、図10Aに示した浮体構造物の側面図であり、説明の便宜上、紙面手前側の連結部材を除いて表している。
図10Cは、図10Aに示した浮体構造物の平面図である。
図10Dは、後述する環状部材を備える浮体構造物の他の一例を示す斜視図である。
幾つかの実施形態に係る浮体構造物10は、図10Aから図10Dに示すように、支柱2の周囲を囲み、支柱2と非接触となるように浮体20に取り付けられている環状部材25を備えていてもよい。
具体的には、幾つかの実施形態に係る環状部材25は、支柱2の外周よりも大きな内周を有する環状の部材である。例えば支柱2が水平方向に切断したときに外周の断面形状が円形であれば、幾つかの実施形態に係る環状部材25は、支柱2の外径よりも大きな内径を有する環状の部材である。なお、幾つかの実施形態に係る環状部材25は、平面視において外形が円形状を有していてもよい。以下の説明では、幾つかの実施形態に係る環状部材25は、円環形状を有するものとして説明する。
【0049】
図10Aから図10Cに示す環状部材25は、その外周面と、連結部材22において支柱2側を向いた側面とを接続する接続部材27によって、連結部材22に剛接合されている。
図10Dに示す環状部材25では、接続部材27は、連結部材22ではなく各浮力体21の側面に剛接合されている。
幾つかの実施形態に係る環状部材25は、例えば想定を超える荒天のように設計時の想定を超える荷重が作用するようなことがなければ支柱2の外周と接触しないように、その内周の大きさが設定されている。
【0050】
図10Aから図10Cに示す浮体構造物10では、環状部材25が連結部材22に取り付けられることで、連結部材22が内側にたわむ挙動に対し補強できるので、連結部材22の設計強度を抑制できる。
また、図10Aから図10Cに示す浮体構造物10では、支柱2が揺動しても支柱2と環状部材25との接触を抑制できる。また、仮に想定以上の荷重が支柱2に作用するなどして支柱2と環状部材25とが接触すると、環状部材25も支柱2を支持するようになるので、想定以上の荷重が支柱2に作用しても、支柱2の揺動を抑制できる。
【0051】
図10Dに示す浮体構造物10では、支柱2が揺動しても支柱2と環状部材25との接触を抑制できる。また、仮に想定以上の荷重が支柱2に作用して支柱2と環状部材25とが接触すると、環状部材25も支柱2を支持するようになるので、想定以上の荷重が支柱2に作用しても、支柱2の揺動を抑制できる。
また、図10Dに示す浮体構造物10では、浮体構造物10が例えば2つ以上の浮力体21を備えていれば、環状部材25を介して浮力体21同士を連結できる。また、2つ以上の浮力体21同士が連結部材22で連結されて固定されているのであれば、環状部材25によって連結部材22の負担を低減できるので、連結部材22の設計強度を抑制できる。
【0052】
(浮体構造物の組み立て方法について)
以下、浮体構造物の組み立て方法について説明する。
図11は、幾つかの実施形態に係る浮体構造物の組み立て方法における処理手順を示すフローチャートである。
図12Aから図12Eは、幾つかの実施形態に係る浮体構造物の組み立て方法における処理手順を説明するための斜視図である。
【0053】
幾つかの実施形態に係る浮体構造物の組み立て方法は、第1支持ワイヤを配置する工程S1と、支柱を配置する工程S3と、仮固定工程S5と、第2支持ワイヤを配置する工程S7と、仮固定解除工程S9と、張力設定工程S11とを備える。
【0054】
なお、以下の説明では、図10Aから図10Cに示すように、連結部材22に剛接合される環状部材25を備えた浮体構造物10の組み立て方法を例に挙げて説明する。
また、以下の説明では、図12Aから図12Eに示すように、第2支持ワイヤ15の先端15bを取り付けるための取付部2aが支柱2の外周に設けられているものとする。
【0055】
(第1支持ワイヤを配置する工程S1)
第1支持ワイヤを配置する工程S1は、支柱2の周囲に設けられる1以上の浮力体21を含む浮体20と支柱2との間に、支柱2の自重を浮体20に伝えるように、複数本の第1支持ワイヤ14を配置する工程である。
第1支持ワイヤを配置する工程S1では、各々の第1支持ワイヤ14の一端14aを浮体20と接続し、他端14bを一端14aよりも下方において支柱2に接続する。
なお、浮体20には、予め、環状部材25が連結部材22に剛接合されているものとする。
第1支持ワイヤを配置する工程S1では、上述したように、例えば第1支持ワイヤ14の一端14aを浮力体21の下部に接続し、第1支持ワイヤ14の他端14bを支持台13に接続してもよい。
幾つかの実施形態に係る浮体構造物の組み立て方法では、第1支持ワイヤを配置する工程S1を実施することで、比較的実施が容易な工程によって浮体構造物10を組み立てられるので、浮体構造物10の設置コストを抑制できる。
【0056】
(支柱を配置する工程S3)
支柱を配置する工程S3は、第1支持ワイヤを配置する工程S1を実施することで第1支持ワイヤ14が配置された浮体構造物10に対して、支柱2を配置する工程である。
例えば図12Aに示すように、支柱を配置する工程S3では、浮体20の上方から環状部材25の内周に支柱2を挿入して、支持台13で支持させる。
【0057】
(仮固定工程S5)
仮固定工程S5は、第2支持ワイヤを配置する工程S7に先立って、支柱2と浮体20との相対的な移動を禁止する工程である。
仮固定工程S5では、環状部材25の内周と支柱2の外周と間の隙間にくさび等を挿入することで、浮体20と支柱2とを仮固定する。
例えば図12Bに示すように、仮固定工程S5では、支持台13で支柱2を支持させた状態で、環状部材25の内周と支柱2の外周と間の隙間にくさび28等を挿入する。
これにより、支柱2の芯出しを行うことができるとともに、以降の工程で浮体20と支柱2との位置ずれ防止できるので、第2支持ワイヤ15を支柱2に接続し易くなる。
【0058】
(第2支持ワイヤを配置する工程S7)
第2支持ワイヤを配置する工程S7は、支柱2の転倒を防止するように第1支持ワイヤ14の一端14aよりも上方において複数本の第2支持ワイヤ15を支柱2に接続する工程である。
例えば図12Cに示すように、第2支持ワイヤを配置する工程S7では、1つの連結部材22と支柱2とを連結する第2支持ワイヤ15を複数本とし、各第2支持ワイヤ15の基端15aの位置が連結部材22の延在方向に沿って間隔が空くように各第2支持ワイヤを配置する。
第2支持ワイヤを配置することで、支柱2が転倒するおそれが少なくなる。
【0059】
なお、第2支持ワイヤを配置する工程S7では、例えば図12Dに示すように、連結部材22の延在方向に沿って間隔が空くように配置された複数の第2支持ワイヤ15の内、図12Dにおいて破線の楕円で囲んでいる、連結部材22の延在方向に沿った長さの中心位置の近傍に配置された1つの第2支持ワイヤ15に初期張力を与える。この初期張力の付与は、例えば図示された3つの連結部材22のそれぞれにおいて実施する。この時付与する初期張力の大きさは、浮体構造物10の組立て完了時において、連結部材22と環状部材25との間で作用する引張力に相当する大きさとする。
【0060】
(仮固定解除工程S9)
仮固定解除工程S9は、第2支持ワイヤを配置する工程S7の後で、支柱2と浮体20との相対的な移動の禁止を解除する工程である。
例えば図12Eに示すように、仮固定解除工程S9では、仮固定工程S5で環状部材25の内周と支柱2の外周と間の隙間に挿入したくさび28等を除去する。
【0061】
(張力設定工程S11)
張力設定工程S11は、複数の第2支持ワイヤ15の全てに張力を設定(付与)する工程である。
張力設定工程S11では、第2支持ワイヤを配置する工程S7において初期張力を付与した第2支持ワイヤ15の張力を低下させつつ、その他の第2支持ワイヤ15に張力を付与する作業を適宜繰り返すことで、全ての第2支持ワイヤ15の張力を適切な張力に調節する。
【0062】
本開示は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
【0063】
上記各実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
(1)本開示の少なくとも一実施形態に係る浮体構造物10は、構造物としての支柱2の周囲に設けられる1以上の浮力体21を含む浮体20と、構造物としての支柱2と浮体20との間に設けられ、構造物としての支柱2の自重を浮体20に伝えるように構成された複数本の第1支持ワイヤ14と、を備える。各々の第1支持ワイヤ14は、浮体20と接続される一端14aと、一端14aよりも下方において構造物としての支柱2に接続される他端14bと、を含む。
【0064】
上記(1)の構成によれば、構造物としての支柱2の自重を第1支持ワイヤ14の引張の軸力で浮体20に伝えることとなり、第1支持ワイヤ14の圧縮の軸力や曲げモーメントによる第1支持ワイヤ14の破損等を考慮しなくてよくなる。これにより、支柱2の自重を浮体に伝えるための部材の構成を簡素化できるとともに、第1支持ワイヤ14の断面積を不必要に大きくしなくてもよくなるので、浮体構造物10のコストを抑制できる。
【0065】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)の構成において、上記一端14aよりも上方において構造物としての支柱2に接続され、構造物としての支柱2の転倒を防止するように構成された複数本の第2支持ワイヤ15を備えるとよい。
【0066】
上記(2)の構成によれば、第2支持ワイヤ15の引張の軸力で構造物としての支柱2の転倒を防止するように構成することで、第2支持ワイヤ15の圧縮の軸力や曲げモーメントによる第2支持ワイヤ15の破損等を考慮しなくてよくなる。これにより、上記一端14aよりも上方において支柱2に柱状の部材等を接続することで支柱2の転倒を防止するように構成した場合と比べ、支柱2の転倒を防止するための部材の構成を簡素化できるとともに、第2支持ワイヤ15の断面積を不必要に大きくしなくてもよくなるので、浮体構造物10のコストを抑制できる。
【0067】
(3)幾つかの実施形態では、上記(2)の構成において、上記1以上の浮力体21は、少なくとも第1浮力体21と、第2浮力体21とを含んでいてもよい。浮体20は、第1浮力体21と第2浮力体21とを連結して固定する連結部材22を有するとよい。
【0068】
上記(3)の構成によれば、複数の浮力体21によって構造物としての支柱2を安定して支持できる。
【0069】
(4)幾つかの実施形態では、上記(2)又は(3)の構成において、複数本の第2支持ワイヤ15は、それぞれ基端15aと先端15bとを含む。上記基端15aのそれぞれは、上記一端14aよりも上方において浮力体21と接続され、上記先端15bのそれぞれは、上記一端14aよりも上方において構造物としての支柱2に接続されるとよい。
【0070】
上記(4)の構成によれば、構造物としての支柱2を中心として複数本の第2支持ワイヤ15を放射状に延在するように配置して浮力体21に接続することで、支柱2が転倒しないように支持できる。
【0071】
(5)幾つかの実施形態では、上記(3)の構成において、複数本の第2支持ワイヤ15は、それぞれ基端15aと先端15bとを含む。上記基端15aのそれぞれは、上記一端14aよりも上方において連結部材22と接続され、上記先端15bのそれぞれは、上記一端14aよりも上方において構造物としての支柱2に接続されるとよい。
【0072】
上記(5)の構成によれば、構造物としての支柱2を中心として複数本の第2支持ワイヤ15を放射状に延在するように配置して連結部材22に接続することで、支柱2が転倒しないように支持できる。
【0073】
(6)幾つかの実施形態では、上記(4)又は(5)の構成において、上記先端15bの高さ位置は、上記基端15aの高さ位置と実質的に同じであってもよい。
【0074】
上記(6)の構成によれば、第2支持ワイヤ15の張力が構造物としての支柱2に対して上下方向に作用し難くなるので、支柱2に対する負担を軽減できる。
【0075】
(7)幾つかの実施形態では、上記(4)又は(5)の構成において、上記先端15bの高さ位置は、上記基端15aの高さ位置よりも高くてもよい。
【0076】
上記(7)の構成によれば、第2支持ワイヤ15の張力が構造物としての支柱2に対して下向きに作用するので、浮体20に対して支柱2が上方に移動し難くなり、浮体20に対する支柱2の上下方向の揺動を抑制できる。
【0077】
(8)幾つかの実施形態では、上記(4)乃至(7)の何れかの構成において、複数本の第2支持ワイヤ15は、張力が付与されているとよい。
【0078】
上記(8)の構成によれば、浮体20に対して構造物としての支柱2が転倒する方向へ移動し難くなり、支柱2を浮体20によって安定的に支持できる。
【0079】
(9)幾つかの実施形態では、上記(3)の構成において、構造物としての支柱2の周囲を囲み、構造物としての支柱2と非接触となるように連結部材22に取り付けられている環状部材25を備えていてもよい。
【0080】
上記(9)の構成によれば、環状部材25が連結部材22に取り付けられることで、連結部材22を補強できるので、連結部材22の設計強度を抑制できる。
上記(9)の構成によれば、構造物としての支柱2が揺動しても支柱2と環状部材25との接触を抑制できる。また、仮に想定以上の荷重が支柱2に作用して支柱2と環状部材25とが接触すると、環状部材25も支柱2を支持するようになるので、想定以上の荷重が支柱2に作用しても、支柱2の揺動を抑制できる。
【0081】
(10)幾つかの実施形態では、上記(2)乃至(9)の何れかの構成において、構造物としての支柱2の周囲を囲み、構造物としての支柱2と非接触となるように浮体20に取り付けられている環状部材25を備えていてもよい。
【0082】
上記(10)の構成によれば、構造物としての支柱2が揺動しても支柱2と環状部材25との接触を抑制できる。また、仮に想定以上の荷重が支柱2に作用して支柱2と環状部材25とが接触すると、環状部材25も支柱2を支持するようになるので、想定以上の荷重が支柱2に作用しても、支柱2の揺動を抑制できる。
上記(10)の構成によれば、浮体構造物10が例えば2つ以上の浮力体21を備えていれば、環状部材25を介して浮力体21同士を連結できる。また、2つ以上の浮力体21同士が連結部材22で連結されて固定されているのであれば、環状部材25によって連結部材22の負担を低減できるので、連結部材22の設計強度を抑制できる。
【0083】
(11)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(10)の何れかの構成において、構造物は、海洋構造物1の支柱2であってもよい。
【0084】
上記(11)の構成によれば、海洋構造物1における浮体構造物10のコストを抑制できる。
【0085】
(12)本開示の少なくとも一実施形態に係る浮体構造物の組み立て方法は、構造物としての支柱2の周囲に設けられる1以上の浮力体21を含む浮体20と構造物としての支柱2との間に、構造物としての支柱2の自重を浮体に伝えるように、複数本の第1支持ワイヤ14を配置する工程S1を備える。複数本の第1支持ワイヤ14を配置する工程S1では、各々の第1支持ワイヤ14の一端14aを浮体20と接続し、他端14bを一端14aよりも下方において構造物としての支柱2に接続する。
【0086】
上記(12)の方法によれば、比較的実施が容易な工程によって浮体構造物10を組み立てられるので、浮体構造物10の設置コストを抑制できる。
【0087】
(13)幾つかの実施形態では、上記(12)の方法において、構造物としての支柱2の転倒を防止するように上記一端14aよりも上方において複数本の第2支持ワイヤ15を構造物としての支柱2に接続する工程S7を備えるとよい。
【0088】
上記(13)の方法によれば、構造物としての支柱2が転倒するおそれが少なくなる。
【0089】
(14)幾つかの実施形態では、上記(13)の方法において、複数本の第2支持ワイヤ15を構造物としての支柱2に接続する工程S7に先立って、構造物としての支柱2と浮体20との相対的な移動を禁止する工程S5と、複数本の第2支持ワイヤ15を構造物としての支柱2に接続する工程S7の後で、構造物としての支柱2と浮体20との相対的な移動の禁止を解除する工程S9と、を備えるとよい。
【0090】
上記(14)の方法によれば、第2支持ワイヤ15を構造物としての支柱2に接続し易くなる。
【符号の説明】
【0091】
1 海洋構造物
2 支柱
10 浮体構造物
13 支持台
14 第1支持ワイヤ
14a 一端
14b 他端
15 第2支持ワイヤ
15a 基端
15b 先端
20 浮体
21 浮力体
22 連結部材
25 環状部材
27 接続部材
図1
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C
図3D
図4A
図4B
図4C
図4D
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
図9
図10A
図10B
図10C
図10D
図11
図12A
図12B
図12C
図12D
図12E