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特許7564070超音波トランスデューサおよび超音波検査システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】超音波トランスデューサおよび超音波検査システム
(51)【国際特許分類】
   H04R 3/00 20060101AFI20241001BHJP
   A61B 8/00 20060101ALI20241001BHJP
   G01N 29/22 20060101ALI20241001BHJP
   G01S 7/526 20060101ALI20241001BHJP
   H04R 17/00 20060101ALI20241001BHJP
【FI】
H04R3/00 330
A61B8/00
G01N29/22
G01S7/526 J
H04R17/00 332B
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021143298
(22)【出願日】2021-09-02
(65)【公開番号】P2023036312
(43)【公開日】2023-03-14
【審査請求日】2024-05-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000219314
【氏名又は名称】東レエンジニアリング株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】520167645
【氏名又は名称】東レエンジニアリングDソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(74)【代理人】
【識別番号】100202728
【弁理士】
【氏名又は名称】三森 智裕
(72)【発明者】
【氏名】小野寺 晃
(72)【発明者】
【氏名】竜口 広嗣
【審査官】▲高▼橋 真之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/171219(WO,A1)
【文献】特開2001-86587(JP,A)
【文献】特開2021-19927(JP,A)
【文献】特表2020-500048(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 3/00
H04R 17/00
A61B 8/00
G01N 29/22
G01S 7/526
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波送受信装置から入力された入力波に基づいて超音波を発生するとともに、検査対象からの反射波を検出することによって、前記超音波送受信装置に対して検出信号を出力する圧電素子と、
互いに並列に接続されている抵抗素子およびインダクタを含み、前記圧電素子の入力側に接続されている並列回路部と、を備え、
前記圧電素子と前記並列回路部とを少なくとも含む定抵抗回路が構成されており、
前記超音波送受信装置から入力用伝送路を介して入力された前記入力波が前記並列回路部を介して前記圧電素子に入力されることによって超音波を発生するとともに、前記圧電素子から前記並列回路部を介さずに前記入力用伝送路とは異なる出力用伝送路を介して前記超音波送受信装置に対して前記検出信号を出力するように構成されている、超音波トランスデューサ。
【請求項2】
前記圧電素子と前記並列回路部との間に接続される遮断回路部をさらに備え、
前記遮断回路部は、前記超音波送受信装置からの前記入力波が前記並列回路部を介して前記圧電素子に入力されるように導通させるとともに、前記圧電素子からの前記検出信号が前記並列回路部を介さずに前記超音波送受信装置に出力されるように導通を遮断するように構成されている、請求項1に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項3】
前記遮断回路部は、互いに逆極性となるように並列に接続された一対のダイオードによって構成されており、
前記一対のダイオードの各々は、順方向電圧が互いに略等しい大きさとなるように構成されている、請求項2に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項4】
前記圧電素子は、前記出力用伝送路のインピーダンス整合を行うために前記超音波送受信装置側に設けられた終端抵抗に対して互いに並列に接続されるように、前記出力用伝送路を介して前記超音波送受信装置に対して前記検出信号を出力するように構成されており、
前記圧電素子のインピーダンスと前記並列回路部の前記インダクタのインピーダンスとの積は、前記入力用伝送路の特性インピーダンスの2乗と略同一となるように構成されている、請求項1~3のいずれか1項に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項5】
前記圧電素子は、前記入力用伝送路の特性インピーダンスと略等しい大きさの特性インピーダンスを有する前記出力用伝送路を介して、前記超音波送受信装置に対して前記検出信号を出力するように構成されており、
前記圧電素子および前記並列回路部を少なくとも含む前記定抵抗回路は、前記入力用伝送路の特性インピーダンスと略同一の合成インピーダンスを有する、請求項1~4のいずれか1項に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項6】
前記圧電素子と並列に接続され、前記圧電素子および前記並列回路部と共に前記定抵抗回路を構成する合成用抵抗素子をさらに備え、
前記圧電素子は、前記入力用伝送路の特性インピーダンスよりも大きい特性インピーダンスを有する前記出力用伝送路を介して、前記超音波送受信装置に対して前記検出信号を出力するように構成されており、
前記圧電素子と、前記並列回路部と、前記合成用抵抗素子とを含む前記定抵抗回路は、前記入力用伝送路の特性インピーダンスと略同一の合成インピーダンスを有する、請求項1~4のいずれか1項に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項7】
複数の前記圧電素子を備え、
前記並列回路部は、前記複数の圧電素子の各々の入力側に接続されるように複数設けられており、
前記超音波送受信装置から前記複数の圧電素子に対応するように設けられた複数の前記入力用伝送路の各々を介して入力された前記入力波が複数の前記並列回路部の各々を介して前記複数の圧電素子の各々に入力されることによって超音波を発生するとともに、前記複数の圧電素子の各々から前記複数の並列回路部の各々を介さずに前記複数の圧電素子に対応するように設けられた複数の前記出力用伝送路の各々を介して前記超音波送受信装置に対して前記検出信号を出力するように構成されている、請求項1~6のいずれか1項に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項8】
入力された入力波に基づいて超音波を発生するとともに、検査対象からの反射波を検出することによって検出信号を出力する圧電素子を含む超音波トランスデューサと、
前記入力波を前記超音波トランスデューサに対して送信するための入力用伝送路と、
前記入力用伝送路とは別個に、前記超音波トランスデューサからの前記検出信号を出力するための出力用伝送路と、
前記入力用伝送路を介して前記超音波トランスデューサに対して前記入力波を出力するとともに、前記出力用伝送路を介して前記超音波トランスデューサからの前記検出信号を取得する超音波送受信装置と、を備え、
前記超音波トランスデューサの前記圧電素子と、互いに並列に接続されている抵抗素子およびインダクタを含み、前記圧電素子の入力側に接続されている並列回路部とを少なくとも含む定抵抗回路が構成されており、
前記超音波トランスデューサは、前記超音波送受信装置から前記入力用伝送路を介して入力された前記入力波が前記並列回路部を介して前記圧電素子に入力されることによって超音波を発生するとともに、前記圧電素子から前記並列回路部を介さずに前記入力用伝送路とは異なる前記出力用伝送路を介して前記超音波送受信装置に対して前記検出信号を出力するように構成されている、超音波検査システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、超音波トランスデューサおよび超音波検査システムに関し、特に、圧電素子を備える超音波トランスデューサおよび超音波検査システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、圧電素子を備える超音波トランスデューサが知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1に記載の超音波トランスデューサは、圧電素子を備えている。この圧電素子は、超音波を発生するとともに被検体(検査対象)からの反射波を受信して出力する。また、上記特許文献1に記載の超音波トランスデューサは、インダクタ、および、2つの抵抗素子を備えている。そして、この超音波トランスデューサでは、伝送路とのインピーダンス整合を行うために、圧電素子、インダクタ、および、2つの抵抗素子によって定抵抗回路が構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許6259584号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、上記特許文献1には明記されていないが、上記特許文献1に記載のような超音波トランスデューサでは、圧電素子を振動させるためのパルス波が、同軸ケーブルなどの伝送路を介して入力される。そして、圧電素子によって受信された反射波に基づく出力信号が入力と同じ伝送路を介して出力される。このため、圧電素子に対する入力信号と、圧電素子から出力される出力信号との両方が、定抵抗回路を構成するインダクタおよび2つの抵抗素子を介して入出力される。したがって、定抵抗回路を構成するインダクタおよび2つの抵抗素子において、入力と出力との2回分の挿入損失が発生する。この2回分の挿入損失に起因して、超音波トランスデューサから出力される検出信号の強度が低下する。そのため、インピーダンス整合を行うために定抵抗回路を設ける場合にも、検出信号の強度の低下を抑制することが望まれている。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、インピーダンス整合を行うために定抵抗回路を設ける場合にも、検出信号の強度の低下を抑制することが可能な超音波トランスデューサおよび超音波検査システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、この発明の第1の局面による超音波トランスデューサは、超音波送受信装置から入力された入力波に基づいて超音波を発生するとともに、検査対象からの反射波を検出することによって、超音波送受信装置に対して検出信号を出力する圧電素子と、互いに並列に接続されている抵抗素子およびインダクタを含み、圧電素子の入力側に接続されている並列回路部と、を備え、圧電素子と並列回路部とを少なくとも含む定抵抗回路が構成されており、超音波送受信装置から入力用伝送路を介して入力された入力波が並列回路部を介して圧電素子に入力されることによって超音波を発生するとともに、圧電素子から並列回路部を介さずに入力用伝送路とは異なる出力用伝送路を介して超音波送受信装置に対して検出信号を出力するように構成されている。
【0008】
この第1の局面による超音波トランスデューサでは、上記のように、超音波送受信装置から入力用伝送路を介して入力された入力波が並列回路部を介して圧電素子に入力されることによって超音波を発生するように構成する。そして、圧電素子から並列回路部を介さずに入力用伝送路とは異なる出力用伝送路を介して超音波送受信装置に対して検出信号を出力するように構成する。これにより、入力波を、インピーダンス整合を行うための定抵抗回路を構成する並列回路部を介して圧電素子に入力させる一方で、検出信号を、抵抗素子およびインダクタを含む並列回路部を介さずに出力させることができる。そのため、入力と出力との両方において並列回路部を介して信号の送受信を行う場合に比べて、挿入損失の発生を入力時のみにすることができるので、出力される検出信号の強度が低下することを抑制することができる。その結果、インピーダンス整合を行うために定抵抗回路を設ける場合にも、検出信号の強度の低下を抑制することができる。
【0009】
上記第1の局面による超音波トランスデューサにおいて、好ましくは、圧電素子と並列回路部との間に接続される遮断回路部をさらに備え、遮断回路部は、超音波送受信装置からの入力波が並列回路部を介して圧電素子に入力されるように導通させるとともに、圧電素子からの検出信号が並列回路部を介さずに超音波送受信装置に出力されるように導通を遮断するように構成されている。このように構成すれば、遮断回路部によって導通を遮断することによって、圧電素子からの検出信号を、定抵抗回路を構成する並列回路部を介さずに出力させることができるので、圧電素子からの検出信号の強度が低下することを容易に抑制することができる。
【0010】
この場合、好ましくは、遮断回路部は、互いに逆極性となるように並列に接続された一対のダイオードによって構成されており、一対のダイオードの各々は、順方向電圧が互いに略等しい大きさとなるように構成されている。このように構成すれば、順方向電圧よりも大きい電圧が印加された場合に、電圧の極性によらず遮断回路部を導通させることができるとともに、順方向電圧よりも小さい電圧が印加された場合には、電圧の極性によらず遮断回路部を遮断することができる。そのため、一対のダイオードによって、順方向電圧よりも大きい電圧値を有する入力波を圧電素子に入力させるように導通させることができるとともに、順方向電圧よりも小さい電圧値を有する検出信号を遮断することができる。その結果、遮断回路部の導通および遮断を切り替える制御を実行するスイッチング回路などの構成を設けることなく、一対のダイオードを設ける簡易な構成によって、圧電素子からの検出信号が定抵抗回路を構成する並列回路部の影響を受けることなく出力用伝送路だけに出力されるように構成することができるので、圧電素子からの検出信号の強度が低下することをより容易に抑制することができる。
【0011】
上記第1の局面による超音波トランスデューサにおいて、好ましくは、圧電素子は、出力用伝送路のインピーダンス整合を行うために超音波送受信装置側に設けられた終端抵抗に対して互いに並列に接続されるように、出力用伝送路を介して超音波送受信装置に対して検出信号を出力するように構成されており、圧電素子のインピーダンスと並列回路部のインダクタのインピーダンスとの積は、入力用伝送路の特性インピーダンスの2乗と略同一となるように構成されている。このように構成すれば、超音波送信時(入力時)において、並列回路部の抵抗素子およびインダクタと、圧電素子と、出力用伝送路の終端抵抗とによって、定抵抗回路を構成するとともに、超音波受信時(出力時)において、抵抗素子およびインダクタを含む並列回路部を介さずに、終端抵抗により終端された出力用伝送路を介して検出信号を出力することができる。そのため、並列回路部の抵抗素子およびインダクタと、圧電素子と、出力用伝送路の終端抵抗とによって、入力時と出力時との両方のインピーダンス整合を行うことができる。その結果、入力時と出力時との両方のインピーダンス整合を行いながら、並列回路部を介さずに検出信号を出力させることにより検出信号の強度の低下を抑制することができる。
【0012】
上記第1の局面による超音波トランスデューサにおいて、好ましくは、圧電素子は、入力用伝送路の特性インピーダンスと略等しい大きさの特性インピーダンスを有する出力用伝送路を介して、超音波送受信装置に対して検出信号を出力するように構成されており、圧電素子および並列回路部を少なくとも含む定抵抗回路は、入力用伝送路の特性インピーダンスと略同一の合成インピーダンスを有する。このように構成すれば、入力用伝送路の特性インピーダンスと、出力用伝送路の特性インピーダンスとが略等しい大きさであるため、共通の種類の同軸ケーブルなどを用いて、入力用伝送路と出力用伝送路とを構成することができる。そのため、接続される入力用伝送路と出力用伝送路との保守管理を容易に行うことができる。また、出力用伝送路のインピーダンス整合を行うための終端抵抗を用いて、並列回路部と圧電素子と共に定抵抗回路を構成する場合には、入力用伝送路の特性インピーダンスと、出力用伝送路の特性インピーダンスとが略等しい大きさであるため、入力用伝送路とのインピーダンス整合を行うための定抵抗回路を容易に構成することができる。
【0013】
上記第1の局面による超音波トランスデューサにおいて、好ましくは、圧電素子と並列に接続され、圧電素子および並列回路部と共に定抵抗回路を構成する合成用抵抗素子をさらに備え、圧電素子は、入力用伝送路の特性インピーダンスよりも大きい特性インピーダンスを有する出力用伝送路を介して、超音波送受信装置に対して検出信号を出力するように構成されており、圧電素子と、並列回路部と、合成用抵抗素子とを含む定抵抗回路は、入力用伝送路の特性インピーダンスと略同一の合成インピーダンスを有する。このように構成すれば、超音波送信時(入力時)において、圧電素子と、並列回路部と、合成用抵抗素子とを用いた定抵抗回路を構成することによってインピーダンス整合を行いながら、超音波受信時(出力時)において、並列回路部を介さずに入力用伝送路よりも特性インピーダンスの大きい出力用伝送路を介して検出信号を出力することができる。そのため、並列回路部における挿入損失の発生を入力時のみにすることができることに加えて、出力用伝送路の特性インピーダンスが入力用伝送路の特性インピーダンスよりも大きいことにより、出力用伝送路による圧電素子からの検出信号の強度の低下を抑制することができる。その結果、圧電素子からの検出信号の検出感度をより一層高くすることができるので、検出信号の強度の低下をより一層抑制することができる。
【0014】
上記第1の局面による超音波トランスデューサにおいて、好ましくは、複数の圧電素子を備え、並列回路部は、複数の圧電素子の各々の入力側に接続されるように複数設けられており、超音波送受信装置から複数の圧電素子に対応するように設けられた複数の入力用伝送路の各々を介して入力された入力波が複数の並列回路部の各々を介して複数の圧電素子の各々に入力されることによって超音波を発生するとともに、複数の圧電素子の各々から複数の並列回路部の各々を介さずに複数の圧電素子に対応するように設けられた複数の出力用伝送路の各々を介して超音波送受信装置に対して検出信号を出力するように構成されている。このように構成すれば、複数の圧電素子を備える場合にも、入力波を、インピーダンス整合を行うための定抵抗回路を構成する複数の並列回路部の各々を介して複数の圧電素子の各々に入力させる一方で、複数の圧電素子の各々からの検出信号を、抵抗素子およびインダクタを含む複数の並列回路部の各々を介さずに出力させることができる。その結果、複数の圧電素子を備えることによって検査対象を広範囲に亘って一括して検査することができるとともに、複数の圧電素子の各々から出力される検出信号の強度の低下を抑制することができる。
【0015】
この発明の第2の局面による超音波検査システムは、入力された入力波に基づいて超音波を発生するとともに、検査対象からの反射波を検出することによって検出信号を出力する圧電素子を含む超音波トランスデューサと、入力波を超音波トランスデューサに対して送信するための入力用伝送路と、入力用伝送路とは別個に、超音波トランスデューサからの検出信号を出力するための出力用伝送路と、入力用伝送路を介して超音波トランスデューサに対して入力波を出力するとともに、出力用伝送路を介して超音波トランスデューサからの検出信号を取得する超音波送受信装置と、を備え、超音波トランスデューサの圧電素子と、互いに並列に接続されている抵抗素子およびインダクタを含み、圧電素子の入力側に接続されている並列回路部とを少なくとも含む定抵抗回路が構成されており、超音波トランスデューサは、超音波送受信装置から入力用伝送路を介して入力された入力波が並列回路部を介して圧電素子に入力されることによって超音波を発生するとともに、圧電素子から並列回路部を介さずに入力用伝送路とは異なる出力用伝送路を介して超音波送受信装置に対して検出信号を出力するように構成されている。
【0016】
この発明の第2の局面による超音波検査システムは、上記のように、超音波送受信装置から入力用伝送路を介して入力された入力波が並列回路部を介して圧電素子に入力されることによって超音波を発生するように構成する。そして、圧電素子から並列回路部を介さずに入力用伝送路とは異なる出力用伝送路を介して超音波送受信装置に対して検出信号を出力するように構成する。これにより、入力波を、インピーダンス整合を行うための定抵抗回路を構成する並列回路部を介して圧電素子に入力させる一方で、検出信号を、抵抗素子およびインダクタを含む並列回路部を介さずに出力させることができる。そのため、入力と出力との両方において並列回路部を介して信号の送受信を行う場合に比べて、挿入損失の発生を入力時のみにすることができるので、出力される検出信号の強度が低下することを抑制することができる。その結果、インピーダンス整合を行うために定抵抗回路を設ける場合にも、検出信号の強度の低下を抑制することが可能な超音波検査システムを提供することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、上記のように、インピーダンス整合を行うために定抵抗回路を設ける場合にも、検出信号の強度の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の第1実施形態による超音波検査システムの構成を示した模式図である。
図2】第1実施形態による超音波検査システムの回路図である。
図3】超音波送信時における図2の等価回路を示す図である。
図4】超音波受信時における図2の等価回路を示す図である。
図5】本発明の第2実施形態による超音波検査システムの構成を示した模式図である。
図6】第2実施形態による超音波検査システムの回路図である。
図7】超音波送信時における図6の等価回路を示す図である。
図8】本発明の第3実施形態による超音波検査システムの構成を示した模式図である。
図9】第3実施形態による超音波検査システムの回路図である。
図10】第1~第3実施形態の変形例による超音波トランスデューサの構成を示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0020】
[第1実施形態]
図1図4を参照して、第1実施形態による超音波検査システム100および超音波トランスデューサ101の構成について説明する。超音波検査システム100では、検査対象Pに対して超音波を放射するとともに、検査対象Pからの反射波を検出することによって、検査対象Pの検査が行われる。超音波検査システム100は、たとえば、超音波診断、および、非破壊超音波検査などに用いられる。
【0021】
図1に示すように、第1実施形態による超音波検査システム100は、超音波トランスデューサ101、パルサーレシーバ102、ケーブル103、ケーブル104、および、解析装置105を備える。なお、パルサーレシーバ102は、特許請求の範囲における「超音波送受信装置」の一例である。また、ケーブル103およびケーブル104は、それぞれ、特許請求の範囲における「入力用伝送路」および「出力用伝送路」の一例である。
【0022】
パルサーレシーバ102は、ケーブル103を介して超音波トランスデューサ101に対して入力波(送信パルス)を出力(送信)する。そして、パルサーレシーバ102は、ケーブル104を介して超音波トランスデューサ101からの検出信号(受信パルス)を取得(受信)する。また、パルサーレシーバ102は、増幅器などを含む図示しない送受信回路を含んでおり、取得された検出信号を増幅して、解析装置105に対して出力する。解析装置105は、パルサーレシーバ102からの検出信号を解析することによって、検査対象Pの検査結果を生成するように構成されている。解析装置105は、たとえば、検査を行う検査作業者に用いられるPC(パーソナルコンピュータ)などである。
【0023】
ケーブル103は、パルサーレシーバ102からの入力波を超音波トランスデューサ101に対して入力するための伝送路である。また、ケーブル104は、ケーブル103とは別個に設けられ、超音波トランスデューサ101からの検出信号を出力(受信)するための伝送路である。ケーブル103およびケーブル104は、たとえば、同軸ケーブルである。また、第1実施形態では、ケーブル103およびケーブル104の特性インピーダンスは略等しい大きさである。たとえば、ケーブル103およびケーブル104の特性インピーダンスは、約50[Ω]である。
【0024】
図2に示すように、超音波トランスデューサ101は、圧電素子10、並列回路部20、および、遮断回路部30を備えている。超音波トランスデューサ101は、図示しないコネクタ部を有しており、コネクタ部を介して、ケーブル103およびケーブル104のそれぞれに接続されている。
【0025】
圧電素子10は、パルサーレシーバ102から入力された入力波(送信パルス)に基づいて、超音波を発生する。また、圧電素子10は、検査対象Pからの反射波(超音波エコー)を検出することによって検出信号を出力する。具体的には、圧電素子10は、圧電体(圧電材料)を一対の電極によって挟み込んだ構造を有する。そして、圧電素子10は、一対の電極に対して入力波としての交流電圧またはパルス電圧が印加されることによって超音波を放射(発生)するように構成されている。また、圧電素子10は、圧電体に対して超音波振動が伝播されることによって、電気信号を検出信号として出力するように構成されている。圧電体(圧電材料)は、たとえば、ポリフッ化ビニリデン-三フッ化エチレン共重合体(P(VDF-TrFE))などの高分子材料である。また、圧電素子10は、所定の静電容量を有しており、電気素子としてコンデンサとほぼ等価の働きを有する。なお、図2では、圧電素子10をコンデンサ(キャパシタ)として記載している。
【0026】
並列回路部20は、互いに並列に接続されている抵抗素子21およびインダクタ22を含む。また、並列回路部20は、圧電素子10の入力側(ケーブル103側)に接続されている。抵抗素子21の抵抗値は、たとえば、約50[Ω]である。そして、第1実施形態の超音波トランスデューサ101では、圧電素子10と並列回路部20とを少なくとも含む定抵抗回路が構成されている。定抵抗回路の詳細については後述する。
【0027】
超音波トランスデューサ101の遮断回路部30は、一対のダイオード31およびダイオード32によって構成されている。また、遮断回路部30は、圧電素子10と並列回路部20との間に接続される。一対のダイオード31および32は、互いに逆極性となるように並列に接続されている。具体的には、ダイオード31は、アノードが入力側(ケーブル103側)、カソードが出力側(ケーブル104側)となるように接続されている。そして、ダイオード32は、ダイオード31とは逆方向に、アノードが出力側、カソードが入力側となるように接続されている。
【0028】
(超音波送信時と超音波受信時との信号経路)
ここで、第1実施形態の超音波トランスデューサ101は、パルサーレシーバ102からケーブル103を介して入力された入力波が並列回路部20および遮断回路部30を介して圧電素子10に入力されることによって超音波を発生するように構成されている。そして、第1実施形態の超音波トランスデューサ101は、圧電素子10から並列回路部20を介さずに、ケーブル103とは異なるケーブル104を介してパルサーレシーバ102に対して検出信号を出力するように構成されている。
【0029】
具体的には、超音波トランスデューサ101の遮断回路部30は、パルサーレシーバ102からの入力波が並列回路部20を介して圧電素子10に入力されるように導通させるように構成されている。そして、遮断回路部30は、圧電素子10からの検出信号が並列回路部20を介さずにパルサーレシーバ102に出力されるように導通を遮断するように構成されている。
【0030】
ここで、ダイオード31および32は、それぞれ順方向特性として、所定の順方向電圧よりも大きい電圧が順方向(アノード側からカソード側)に印加された場合に、電流が流れる(導通させる)ように構成されている。そして、ダイオード31および32は、入力波の電圧値よりも非常に小さく、かつ、互いに略等しい大きさの順方向電圧を有するように構成されている。そして、圧電素子10から出力される検出信号の電圧値は、通常の場合順方向電圧よりさらに小さくなるように構成されている。したがって、ダイオード31および32は、入力波が入力された場合には導通させ、一方で、検出信号が出力された場合には遮断するように構成されている。また、ダイオード31および32は、互いに逆極性となるように並列に接続されているので、入力波の極性によらず電力を圧電素子10に流すことが可能となるように構成されている。
【0031】
なお、圧電素子10は数百kHz~数百MHzの比較的高い周波数の超音波を送受信できるように構成されている。そして、圧電素子10に伝達される入力波は、高い周波数成分を有するパルス電圧または交流電圧であって、そのような高い周波数成分においても圧電素子10への伝達損失を抑制するために、ダイオード31およびダイオード32のスイッチング時間(逆回復時間)はできるだけ早い(短い)方が好ましい。また、検出信号の感度を向上させるためには、ダイオード31および32の端子間容量および直列抵抗は、できるだけ小さい方が好ましい。
【0032】
また、パルサーレシーバ102側には、終端抵抗40が設けられている。終端抵抗40は、ケーブル104のインピーダンス整合を行うために設けられている。すなわち、終端抵抗40は、ケーブル104の特性インピーダンスと略等しい大きさの抵抗値を有する。たとえば、ケーブル104の特性インピーダンスが約50[Ω]である場合には、終端抵抗40の抵抗値は、約50[Ω]である。第1実施形態では、圧電素子10は、終端抵抗40に対して互いに並列に接続されるように、ケーブル104を介してパルサーレシーバ102に対して検出信号を出力するように構成されている。
【0033】
図3に示すように、超音波送信時(入力波の入力時)では、入力波がダイオード31および32の順方向電圧よりも大きい電圧値を有していることにより、ダイオード31および32の抵抗値(インピーダンス)が極めて低くなる。そのため、遮断回路部30は、導線と見なすことができる。また、ケーブル104は、終端抵抗40により終端されている。したがって、超音波トランスデューサ101から観た出力側は、圧電素子10に対して並列に終端抵抗40と同等の純抵抗が接続されていることと等価となるので、超音波送信時における図2の等価回路を、図3のように表すことができる。
【0034】
ここで、第1実施形態では、圧電素子10と、並列回路部20の抵抗素子21およびインダクタ22と、出力インピーダンス(終端抵抗40)とによって、定抵抗回路が構成されている。ここで言う「出力インピーダンス」は、圧電素子10(コンデンサ)に並列に接続される出力側の抵抗(終端抵抗40およびケーブル104のインピーダンス)を意味する。なお、第1実施形態では、出力インピーダンスは、上記のとおり並列に接続された終端抵抗40と等価である。
【0035】
詳細には、第1実施形態では、並列回路部20の抵抗素子21の抵抗値と、終端抵抗40の抵抗値とは、ともにケーブル103の特性インピーダンスと略等しい大きさ(約50[Ω])となるように構成されている。また、第1実施形態では、圧電素子10のインピーダンスZcと並列回路部20のインダクタ22のインピーダンスZlの積Zc・Zlが、ケーブル103の特性インピーダンスの2乗と略同一となるように構成されている。したがって、抵抗素子21および終端抵抗40の抵抗値をRとおくと、圧電素子10のインピーダンスZcとインダクタ22のインピーダンスZlの積Zc・Zlは、抵抗素子21の抵抗値Rと終端抵抗40の抵抗値Rとの積と略同一になるように(Zc・Zl=Rの関係を満たすように)構成されている。
【0036】
そして、Zc・Zl=Rの関係が満たされる場合には、圧電素子10、並列回路部20(抵抗素子21およびインダクタ22)、および、終端抵抗40によって定抵抗回路が構成される。そして、この定抵抗回路の合成インピーダンスは、R(50[Ω])となる。なお、定抵抗回路は、合成インピーダンスが周波数に依存せず、純抵抗と等価になる。また、圧電素子10と並列回路部20のインダクタ22とは、互いに抵抗値R(50[Ω])における逆回路となる。具体的には、圧電素子10の所定の静電容量(キャパシタンス)をC、インダクタ22のインダクタンスをLとすると、Zc=1/jωC、Zl=jωLと表される。なお、ω=2πfであり、fは周波数である。したがって、Zc・Zl=L/Cとなるため、L/C=Rが満たされる場合に、定抵抗回路が構成される。たとえば、圧電素子10の所定の静電容量Cが、約11[pF]であり、インダクタ22のインダクタンスLが、約27[nH]である場合には、L(27[nH])×1/C(1/11[pF])≒50[Ω]×50[Ω]の関係が成立する。したがって、超音波送信時において、超音波トランスデューサ101では、並列に接続された抵抗素子21およびインダクタ22と、並列に接続された圧電素子10および終端抵抗40とによって、定抵抗回路(図3の点線R100の領域)が構成される。そして、この定抵抗回路の合成インピーダンスは、ケーブル103の特性インピーダンスと略同一の約50[Ω]となる。
【0037】
したがって、パルサーレシーバ102側(ケーブル103側)から観た場合には、超音波トランスデューサ101側は50[Ω]の純抵抗と略同等なる。すなわち、超音波検査システム100は、ケーブル103とのインピーダンス整合が行われた状態で、ケーブル103を介して入力波が超音波トランスデューサ101に入力されるように構成されている。
【0038】
また、超音波受信時(検出信号の出力時)では、反射波(超音波エコー)による圧電素子10からの起電力は小さい。そして、圧電素子10からの検出信号がダイオード31および32の順方向電圧よりも小さい電圧値を有している場合には、ダイオード31および32の抵抗値(インピーダンス)は極めて大きくなる。そのため、前述のとおり、遮断回路部30によって導通が遮断され、遮断回路部30よりも入力側は、電気的に切り離される。したがって、超音波受信時における図2の等価回路を、図4のように表すことができる。
【0039】
したがって、図4に示すように、圧電素子10側から観た場合には、パルサーレシーバ102側は、50[Ω]の純抵抗(終端抵抗40)が接続されているだけの回路と等価となる。すなわち、超音波検査システム100は、ケーブル104とインピーダンス整合が行われた状態で、並列回路部20を介さず検出信号を超音波トランスデューサ101からパルサーレシーバ102に対して出力するように構成されている。
【0040】
[第1実施形態の効果]
第1実施形態による超音波検査システム100および超音波トランスデューサ101では、以下のような効果を得ることができる。
【0041】
第1実施形態では、上記のように、パルサーレシーバ102(超音波送受信装置)からケーブル103(入力用伝送路)を介して入力された入力波が並列回路部20を介して圧電素子10に入力されることによって超音波を発生するように構成する。そして、圧電素子10から並列回路部20を介さずにケーブル103とは異なるケーブル104(出力用伝送路)を介してパルサーレシーバ102に対して検出信号を出力するように構成する。これにより、入力波を、インピーダンス整合を行うための定抵抗回路を構成する並列回路部20を介して圧電素子10に入力させる一方で、検出信号を、抵抗素子21およびインダクタ22を含む並列回路部20を介さずに出力させることができる。そのため、入力と出力との両方において並列回路部20を介して信号の送受信を行う場合に比べて、挿入損失の発生を入力時のみにすることができるので、出力される検出信号の強度が低下することを抑制することができる。その結果、インピーダンス整合を行うために定抵抗回路を設ける場合にも、検出信号の強度の低下を抑制することができる。
【0042】
また、第1実施形態では、上記のように、圧電素子10と並列回路部20との間に接続される遮断回路部30を備え、遮断回路部30は、パルサーレシーバ102(超音波送受信装置)からの入力波が並列回路部20を介して圧電素子10に入力されるように導通させるとともに、圧電素子10からの検出信号が並列回路部20を介さずにパルサーレシーバ102に出力されるように導通を遮断するように構成されている。これにより、遮断回路部30によって導通を遮断することによって、圧電素子10からの検出信号を、定抵抗回路を構成する並列回路部20を介さずに出力させることができるので、圧電素子10からの検出信号の強度が低下することを容易に抑制することができる。
【0043】
また、第1実施形態では、上記のように、遮断回路部30は、互いに逆極性となるように並列に接続された一対のダイオード31および32によって構成されており、一対のダイオード31および32の各々は、順方向電圧が互いに略等しい大きさとなるように構成されている。これにより、順方向電圧よりも大きい電圧が印加された場合に、電圧の極性によらず遮断回路部30を導通させることができるとともに、順方向電圧よりも小さい電圧が印加された場合には、電圧の極性によらず遮断回路部30を遮断することができる。そのため、一対のダイオード31および32によって、順方向電圧よりも大きい電圧値を有する入力波を圧電素子10に入力させるように導通させることができるとともに、順方向電圧よりも小さい電圧値を有する検出信号を遮断することができる。その結果、遮断回路部30の導通および遮断を切り替える制御を実行するスイッチング回路などの構成を設けることなく、一対のダイオード31および32を設ける簡易な構成によって、圧電素子10からの検出信号が定抵抗回路を構成する並列回路部20の影響を受けることなくケーブル104(出力用伝送路)だけに出力されるように構成することができるので、圧電素子10からの検出信号の強度が低下することをより容易に抑制することができる。
【0044】
また、第1実施形態では、上記のように、圧電素子10は、ケーブル104(出力用伝送路)のインピーダンス整合を行うためにパルサーレシーバ102(超音波送受信装置)側に設けられた終端抵抗40に対して互いに並列に接続されるように、ケーブル104を介してパルサーレシーバ102に対して検出信号を出力するように構成されている。そして、圧電素子10のインピーダンスZcと並列回路部20のインダクタ22のインピーダンスZlとの積は、ケーブル103(入力用伝送路)の特性インピーダンスの2乗と略同一となるように構成されている。これにより、超音波送信時(入力時)において、並列回路部20の抵抗素子21およびインダクタ22と、圧電素子10と、ケーブル104の終端抵抗40とによって、定抵抗回路を構成するとともに、超音波受信時(出力時)において、抵抗素子21およびインダクタ22を含む並列回路部20を介さずに、終端抵抗40により終端されたケーブル104を介して検出信号を出力することができる。そのため、並列回路部20の抵抗素子21およびインダクタ22と、圧電素子10と、ケーブル104の終端抵抗40とによって、入力時と出力時との両方のインピーダンス整合を行うことができる。その結果、入力時と出力時との両方のインピーダンス整合を行いながら、並列回路部20を介さずに検出信号を出力させることにより検出信号の強度の低下を抑制することができる。
【0045】
また、第1実施形態では、上記のように、圧電素子10は、ケーブル103(入力用伝送路)の特性インピーダンスと略等しい大きさの特性インピーダンスを有するケーブル104(出力用伝送路)を介して、パルサーレシーバ102(超音波送受信装置)に対して検出信号を出力するように構成されている。そして、圧電素子10および並列回路部20を少なくとも含む定抵抗回路は、ケーブル103の特性インピーダンスと略同一の合成インピーダンスを有する。これにより、ケーブル103の特性インピーダンスと、ケーブル104の特性インピーダンスとが略等しい大きさであるため、共通の種類の同軸ケーブルなどを用いて、ケーブル103とケーブル104とを構成することができる。そのため、接続されるケーブル103とケーブル104との保守管理を容易に行うことができる。また、ケーブル104のインピーダンス整合を行うための終端抵抗40を用いて、並列回路部20と圧電素子10と共に定抵抗回路を構成する場合には、ケーブル103の特性インピーダンスと、ケーブル104の特性インピーダンスとが略等しい大きさであるため、ケーブル103とのインピーダンス整合を行うための定抵抗回路を容易に構成することができる。
【0046】
[第2実施形態]
次に、図5図7を参照して、第2実施形態による超音波検査システム200および超音波トランスデューサ201の構成について説明する。第2実施形態では、ケーブル103とケーブル104とが互いに略等しい大きさの特性インピーダンスを有するように構成した第1実施形態とは異なり、ケーブル203とケーブル204との特性インピーダンスが互いに異なる大きさを有する。なお、第1実施形態と同様の構成については、同一の符号を付して、説明を省略する。
【0047】
図5に示すように、第2実施形態による超音波検査システム200は、超音波トランスデューサ201、パルサーレシーバ202、ケーブル203、および、ケーブル204を備える。なお、パルサーレシーバ202は、特許請求の範囲における「超音波送受信装置」の一例である。また、ケーブル203およびケーブル204は、それぞれ、特許請求の範囲における「入力用伝送路」および「出力用伝送路」の一例である。
【0048】
ケーブル203およびケーブル204は、第1実施形態のケーブル103およびケーブル104と同様に、たとえば、同軸ケーブルである。また、ケーブル203は、パルサーレシーバ202からの入力波を超音波トランスデューサ201に対して送信するための伝送路である。そして、ケーブル204は、ケーブル203とは別個に設けられ、超音波トランスデューサ201からの検出信号を出力(受信)するための伝送路である。そして、第2実施形態では、ケーブル204の特性インピーダンスは、ケーブル203の特性インピーダンスよりも大きい。たとえば、ケーブル203の特性インピーダンスは、約50[Ω]である。そして、ケーブル204の特性インピーダンスは、約75[Ω]である。
【0049】
パルサーレシーバ202は、第1実施形態のパルサーレシーバ102と同様に、ケーブル203を介して超音波トランスデューサ201に対して入力波(送信パルス)を出力(送信)するとともに、ケーブル204を介して超音波トランスデューサ201からの検出信号(受信パルス)を取得(受信)する。また、パルサーレシーバ202は、取得された検出信号を解析装置105に対して出力する。
【0050】
そして、図6に示すように、パルサーレシーバ202は、終端抵抗240を有する。終端抵抗240は、第1実施形態の終端抵抗40と同様に、ケーブル204とパルサーレシーバ202とのインピーダンス整合を行うために設けられている。すなわち、終端抵抗240は、ケーブル204の特性インピーダンスと、略等しい大きさの抵抗値を有する。したがって、ケーブル204の特性インピーダンスが約75[Ω]である場合には、終端抵抗240の抵抗値は、同様に、約75[Ω]である。
【0051】
また、第2実施形態の超音波トランスデューサ201は、圧電素子10、並列回路部20、および、遮断回路部30に加えて、抵抗素子250を有する。なお、圧電素子10、並列回路部20、および、遮断回路部30の構成は、第1実施形態と同様である。なお、抵抗素子250は、特許請求の範囲における「合成用抵抗素子」の一例である。
【0052】
第2実施形態では、抵抗素子250は、圧電素子10の入力側において、圧電素子10と並列に接続される。詳細には、抵抗素子250は、遮断回路部30よりも入力側において、圧電素子10と並列に接続されている。そして、第2実施形態では、超音波送信時において、抵抗素子250と出力インピーダンス(終端抵抗240)との合成抵抗は、圧電素子10および並列回路部20と共に定抵抗回路(図7の点線R200の領域)を構成する。
【0053】
図7に示すように、超音波送信時(入力波の入力時)では、第1実施形態と同様に、遮断回路部30は、導線と見なすことができる。また、ケーブル204は、終端抵抗240により終端されている。したがって、超音波送信時における図6の等価回路を、図7のように表すことができる。
【0054】
ここで、超音波送信時において遮断回路部30が導通していることにより、第2実施形態の終端抵抗240と、抵抗素子250とは、互いに並列に接続されている状態と等価になり、図7の点線R200の領域のような等価回路となる。そして、図7の点線R200の領域における互いに並列に接続されている終端抵抗240と抵抗素子250との合成抵抗は、ケーブル203の特性インピーダンス(約50[Ω])と略同等の大きさとなるように構成されている。具体的には、終端抵抗240の抵抗値がケーブル204の特性インピーダンスと略等しい約75[Ω]であるため、終端抵抗240と抵抗素子250との合成抵抗が約50[Ω]となるように、抵抗素子250は、約150[Ω]の抵抗値を有するように構成される。そして、並列回路部20における抵抗素子21の抵抗値が、約50[Ω]であるため、終端抵抗240と抵抗素子250との合成抵抗を同様に約50[Ω]とすることで、圧電素子10とインダクタ22とは、第1実施形態と同様に、互いに抵抗値50[Ω]における逆回路となる。このようにして、図7の点線R200の領域において、第1実施形態の図3の点線R100の領域と同様の定抵抗回路が構成される。すなわち、第2実施形態の超音波トランスデューサ201では、圧電素子10と、並列回路部20と、抵抗素子250と、出力インピーダンス(終端抵抗240)とによって、ケーブル203の特性インピーダンスと略同一の合成インピーダンスを有する定抵抗回路が構成される。
【0055】
したがって、パルサーレシーバ202側(ケーブル203側)から観た場合には、超音波トランスデューサ201側は50[Ω]の純抵抗と略同等となる。すなわち、超音波検査システム200は、第1実施形態の超音波検査システム100と同様に、ケーブル203とのインピーダンス整合が行われた状態で、ケーブル203を介して入力波が超音波トランスデューサ201に入力されるように構成されている。
【0056】
なお、超音波受信時(検出信号の出力時)では、第1実施形態と同様に、遮断回路部30によって導通が遮断され、遮断回路部30よりも入力側は、電気的に切り離される。したがって、圧電素子10側から観た場合には、パルサーレシーバ202側は、75[Ω]の純抵抗(終端抵抗240)が接続されているだけの回路と略同等となる。すなわち、超音波検査システム200は、第1実施形態の超音波検査システム100と同様に、ケーブル204とインピーダンス整合が行われた状態で、並列回路部20を介さず検出信号を超音波トランスデューサ201からパルサーレシーバ202に対して出力するように構成されている。
【0057】
また、第2実施形態によるその他の構成は、第1実施形態と同様である。
【0058】
[第2実施形態の効果]
第2実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0059】
第2実施形態では、上記のように、圧電素子10と並列に接続され、圧電素子10および並列回路部20と共に定抵抗回路を構成する抵抗素子250(合成用抵抗素子)を備える。そして、圧電素子10は、ケーブル203(入力用伝送路)の特性インピーダンスよりも大きい特性インピーダンスを有するケーブル204(出力用伝送路)を介して、パルサーレシーバ202(超音波送受信装置)に対して検出信号を出力するように構成されている。そして、圧電素子10と、並列回路部20と、抵抗素子250とを含む定抵抗回路は、ケーブル203の特性インピーダンスと略同一の合成インピーダンスを有する。これにより、超音波送信時(入力時)において、圧電素子10と、並列回路部20と、抵抗素子250とを用いた定抵抗回路を構成することによってインピーダンス整合を行いながら、超音波受信時(出力時)において、並列回路部20を介さずにケーブル203よりも特性インピーダンスの大きいケーブル204を介して検出信号を出力することができる。そのため、並列回路部20における挿入損失の発生を入力時のみにすることができることに加えて、ケーブル204の特性インピーダンスがケーブル203の特性インピーダンスよりも大きいことにより、ケーブル204による圧電素子10からの検出信号の強度の低下を抑制することができる。その結果、圧電素子10からの検出信号の検出感度をより一層高くすることができるので、検出信号の強度の低下をより一層抑制することができる。
【0060】
また、第2実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
【0061】
[第3実施形態]
次に、図8および図9を参照して、第3実施形態による超音波検査システム300および超音波トランスデューサ301の構成について説明する。第3実施形態では、超音波トランスデューサ101が1つの圧電素子10を備えるように構成した第1実施形態とは異なり、超音波トランスデューサ301が複数の圧電素子310を備えるように構成されている。なお、第1実施形態と同様の構成については、同一の符号を付して、説明を省略する。
【0062】
図8に示すように、第3実施形態による超音波検査システム300は、超音波トランスデューサ301、パルサーレシーバ302、ケーブル303、ケーブル304、および、解析装置305を備える。なお、パルサーレシーバ302は、特許請求の範囲における「超音波送受信装置」の一例である。また、ケーブル303およびケーブル304は、それぞれ、特許請求の範囲における「複数の入力用伝送路」および「複数の出力用伝送路」の一例である。
【0063】
図9に示すように、第3実施形態では、超音波トランスデューサ301は、複数の圧電素子310を備えている。具体的には、超音波トランスデューサ301は、複数の圧電素子310として、圧電素子310a、310b、310c、・・・、310xを備える。圧電素子310の個数は、たとえば、64個である。複数の圧電素子310の各々は、パルサーレシーバ302から入力された入力波(送信パルス)に基づいて、超音波を発生する。また、複数の圧電素子310の各々は、検査対象Pからの反射波(超音波エコー)を検出することによって検出信号を出力する。なお、複数の圧電素子310の各々は、略同等の静電容量を有する。また、超音波トランスデューサ301では、複数の圧電素子310は、直線状に1列に並べて配置されている。すなわち、超音波トランスデューサ301は、検査対象Pを直線状に走査するリニアアレイ探触子である。
【0064】
第3実施形態による超音波検査システム300および超音波トランスデューサ301では、複数の圧電素子310の各々に対して、第1および第2実施形態と同様に、インピーダンス整合を行いながら検出信号の感度の低下を抑制するための構成がそれぞれ設けられている。すなわち、超音波検査システム300は、複数の圧電素子310の各々における同様の構成を組み合わせることによって、検査対象Pを直線状に走査可能に構成されている。
【0065】
具体的には、図8に示すように、第3実施形態のパルサーレシーバ302は、複数の圧電素子310の各々に対応するように複数(64個)のチャンネルを有している。そして、パルサーレシーバ302は、複数のチャンネルの各々によって、ケーブル303を介して超音波トランスデューサ301の複数の圧電素子310の各々に対して入力波(送信パルス)を出力(送信)する。そして、パルサーレシーバ302は、複数のチャンネルの各々によって、ケーブル303とは別個のケーブル304を介して超音波トランスデューサ301の複数の圧電素子310の各々からの検出信号(受信パルス)を取得(受信)する。すなわち、パルサーレシーバ302は、複数の圧電素子310の各々を独立して動作させることによって、複数の圧電素子310の各々からの検出信号を別個に取得するように構成されている。また、超音波トランスデューサ301は、図示しないコネクタ部を有しており、コネクタ部を介して、ケーブル303およびケーブル304のそれぞれに接続されている。そして、パルサーレシーバ302は、取得された複数の圧電素子310からの検出信号を解析装置305に対して出力する。解析装置305は、パルサーレシーバ302からの検出信号を解析することによって、検査対象Pの検査結果を生成するように構成されている。
【0066】
図9に示すように、ケーブル303およびケーブル304は、圧電素子310a、310b、310c、・・・、310xの各々に対応するように、それぞれ、ケーブル303a、303b、303c、・・・、303xおよびケーブル304a、304b、304c、・・・、304xを、複数の圧電素子310の各々に対応する伝送路(信号線)として有する。たとえば、ケーブル303および304は、複数(64本)の同軸ケーブルを束ねた構造を有する。また、ケーブル303およびケーブル304の両方において、複数の同軸ケーブルの各々の特性インピーダンスは略等しく約50[Ω]である。
【0067】
また、パルサーレシーバ302は、ケーブル304の複数のケーブル304a、304b、304c、・・・、304xの各々とのインピーダンス整合を行うための終端抵抗340(終端抵抗340a、340b、340c、・・・、340x)を有する。終端抵抗340の各々は、第1実施形態の終端抵抗40と同様に、それぞれ、ケーブル304の各々の特性インピーダンスと略等しい大きさの抵抗値(約50[Ω])を有する。
【0068】
そして、第3実施形態では、超音波トランスデューサ301は、複数の圧電素子310の各々に対応するように、複数の並列回路部320と、複数の遮断回路部330と、複数のコンデンサ360とを備える。具体的には、超音波トランスデューサ301は、圧電素子310a、310b、310c、・・・、310xの各々に対応するように、並列回路部320a、320b、320c、・・・、320xと、遮断回路部330a、330b、330c、・・・、330xと、コンデンサ360a、360b、360c、・・・、360xとを備える。
【0069】
複数の並列回路部320の各々は、複数の圧電素子310の各々の入力側に接続される。また、複数の並列回路部320の各々は、互いに同様の構成を有している。具体的には、複数の並列回路部320の各々は、第1実施形態における並列回路部20と同様に、互いに並列に接続されている抵抗素子21およびインダクタ322を含む。また、並列回路部320は、圧電素子310の入力側(ケーブル303側)に接続されている。抵抗素子21の抵抗値は、たとえば、約50[Ω]である。そして、第3実施形態の超音波トランスデューサ301では、圧電素子310の各々およびコンデンサ360の各々と、並列回路部320の各々とを含む定抵抗回路がそれぞれ構成されている。定抵抗回路の詳細は後述する。
【0070】
複数の遮断回路部330の各々は、第1実施形態と同様に互いに逆極性となるように並列に接続された一対のダイオードによって構成されている。また、遮断回路部330は、圧電素子310および並列回路部320の間に接続されている。そして、遮断回路部330の各々は、互いに同様の構成を有している。遮断回路部330は、第1実施形態の遮断回路部30と同様に、一対のダイオードの順方向電圧よりも大きい入力波が入力された場合には導通させ、一方で、順方向電圧よりも小さい検出信号が入力された場合には遮断するように構成されている。
【0071】
複数のコンデンサ360の各々は、それぞれ複数の圧電素子310の各々と並列に接続されている。リニアアレイ探触子では、圧電素子310の1つ1つの面積が小さくなるため、圧電素子310のインピーダンスが高くなりやすい。そのため、圧電素子310から出力される検出信号に対する周囲からの電磁ノイズの影響が大きくなる。これに対して、圧電素子310と並列にコンデンサ360を接続することによって、感度が低くなるものの、インピーダンスが小さくなるように調整することができる。
【0072】
コンデンサ360の各々の静電容量は、圧電素子310の静電容量、出力側のケーブル304の特性インピーダンス、および、入力波の周波数に基づいて設定される。たとえば、複数の圧電素子310のうちの1つである圧電素子310xに対して並列に接続されるコンデンサ360xでは、圧電素子310xとコンデンサ360xとの合成容量Cが、次の式(1)によって表されるように、コンデンサ360xの容量が設定される。
【数1】
なお、Z304は、ケーブル304の特性インピーダンスを示す。また、角周波数ωは、2πfによって表される値である。そして、周波数fは、好ましくは、対応する圧電素子310のうちの1つの要素から出力される超音波の周波数帯域の中心の値から周波数帯域の上限の値までの範囲のうちから選択される。なお、複数のコンデンサ360の各々は、互いに同様の静電容量を有する。すなわち、複数のコンデンサ360の各々においても、対応する圧電素子310のうちの1つの要素との合成容量が上記の式(1)と同様の式によって表されるように、静電容量が定められる。
【0073】
(超音波送信時と超音波受信時との信号経路)
第3実施形態では、第1実施形態と同様に、超音波トランスデューサ301は、超音波送信時(入力時)において、パルサーレシーバ302からケーブル303の各々を介して入力された入力波が複数の並列回路部320の各々を介して複数の圧電素子310の各々に入力されることによって超音波を発生するように構成されている。そして、超音波トランスデューサ301は、超音波受信時(出力時)において、複数の圧電素子310の各々から複数の並列回路部320の各々を介さずにケーブル304の各々を介してパルサーレシーバ302に対して検出信号を出力するように構成されている。
【0074】
具体的には、超音波送信時(入力波の入力時)では、第1実施形態と同様に、遮断回路部330の各々は、導線と見なすことができる。そして、並列回路部320と、圧電素子310およびコンデンサ360と、出力インピーダンス(終端抵抗340)とによって、ケーブル303の特性インピーダンスと略等しいインピーダンス(約50[Ω])を有する定抵抗回路が構成される。すなわち、複数の圧電素子310およびコンデンサ360の合成回路とインダクタ322とは、互いに抵抗値50[Ω]における逆回路となるように構成されている。
【0075】
詳細には、超音波送信時において、超音波トランスデューサ301は、圧電素子310およびコンデンサ360の合成インピーダンスとインダクタ322のインピーダンスとの積が、ケーブル303の特性インピーダンスの2乗(抵抗素子21の抵抗値と終端抵抗340の抵抗値との積)となるように構成されている。したがって、超音波検査システム300は、第1実施形態の超音波検査システム100と同様に、ケーブル303の各々とのインピーダンス整合がそれぞれ行われた状態で、ケーブル303の各々を介して入力波が超音波トランスデューサ301の圧電素子310の各々に別個に入力されるように構成されている。
【0076】
また、超音波受信時(検出信号の出力時)では、第1実施形態と同様に、遮断回路部330の各々によって導通が遮断され、遮断回路部330よりも入力側は、電気的に切り離される。したがって、超音波検査システム300は、第1実施形態の超音波検査システム100と同様に、終端抵抗340の各々によりケーブル304の各々とインピーダンス整合が行われた状態で、並列回路部320を介さず検出信号を超音波トランスデューサ301の圧電素子310の各々からパルサーレシーバ302に対して別個に出力するように構成されている。
【0077】
また、第3実施形態によるその他の構成は、第1実施形態と同様である。
【0078】
[第3実施形態の効果]
第3実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0079】
第3実施形態では、上記のように、複数の圧電素子310を備え、並列回路部320は、複数の圧電素子310の各々の入力側に接続されるように複数設けられており、パルサーレシーバ302(超音波送受信装置)から複数の圧電素子310に対応するように設けられたケーブル303(複数の入力用伝送路)の各々を介して入力された入力波が複数の並列回路部320の各々を介して複数の圧電素子310の各々に入力されることによって超音波を発生するとともに、複数の圧電素子310の各々から複数の並列回路部320の各々を介さずに複数の圧電素子310に対応するように設けられたケーブル304(複数の出力用伝送路)の各々を介してパルサーレシーバ302に対して検出信号を出力するように構成されている。これにより、複数の圧電素子310を備える場合にも、入力波を、インピーダンス整合を行うための定抵抗回路を構成する複数の並列回路部320の各々を介して複数の圧電素子310の各々に入力させる一方で、複数の圧電素子310の各々からの検出信号を、抵抗素子21およびインダクタ322を含む複数の並列回路部320の各々を介さずに出力させることができる。その結果、複数の圧電素子310を備えることによって検査対象Pを広範囲に亘って一括して検査することができるとともに、複数の圧電素子310の各々から出力される検出信号の強度の低下を抑制することができる。
【0080】
また、第3実施形態では、複数の圧電素子310の各々と並列に接続された複数のコンデンサ360を備える。これにより、複数の圧電素子310の面積が小さくインピーダンスが比較的大きい場合にも、圧電素子310と並列に接続されたコンデンサ360によって、合成インピーダンスを小さくすることができるので、圧電素子310から出力される検出信号に対する周囲からの電磁ノイズの影響を小さくすることができる。また、第3実施形態のその他の効果は、上記第1および第2実施形態と同様である。
【0081】
[変形例]
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0082】
たとえば、上記第1および第3実施形態では、終端抵抗40(340)と並列回路部20(320)の抵抗素子21との抵抗値が、ともにケーブル103、303(入力用伝送路)の特性インピーダンスと等しい値であり、圧電素子10(310)のインピーダンスと並列回路部20(320)のインダクタ22(322)のインピーダンスとの積が、ケーブル103、303の特性インピーダンスの2乗と略同一となるように構成することによって、定抵抗回路が構成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、圧電素子に対して、直列または並列にキャパシタまたはインダクタをさらに接続することによって、定抵抗回路を構成するようにしてもよい。すなわち、圧電素子を、キャパシタおよび直列共振回路を含む等価回路として表す場合には、圧電素子を構成する直列共振回路と互いに逆回路となる構成をさらに設けることによって定抵抗回路を構成するようにしてもよい。
【0083】
また、上記第1~第2実施形態では、ケーブル103、203(入力用伝送路)と、ケーブル104、204(出力用伝送路)とが、別個の同軸ケーブルである例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、入力用伝送路と出力用伝送路とが、1つのケーブルに含まれるように構成されていてもよい。すなわち、1つのケーブルの中に2つの信号線が入力用伝送路および出力用伝送路として含まれるように構成されていてもよい。同様に、上記第3実施形態では、ケーブル303(複数の入力用伝送路)と、ケーブル304(複数の出力用伝送路)とが、別個のケーブルである例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、複数の入力用伝送路である信号線と複数の出力用伝送路である信号線とを、1つのケーブルの中にまとめて含まれるように構成してもよい。
【0084】
また、上記第1~第3実施形態では、超音波トランスデューサ101(201、301)と、ケーブル103、203、303(入力用伝送路、複数の入力用伝送路)およびケーブル104、204、304(出力用伝送路、複数の出力用伝送路)とが、別個に構成されており、コネクタ部を介して互いに接続されるように構成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、超音波トランスデューサと、ケーブル(入力用伝送路および出力用伝送路)とが、一体的に構成されていてもよい。
【0085】
また、上記第1~第3実施形態では、圧電素子10(310)が高分子材料である圧電体(圧電材料)を含む構造である例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、圧電素子の圧電体を、セラミックス材料によって構成してもよい。
【0086】
また、上記第1~第3実施形態では、超音波トランスデューサ101(201、301)を、圧電素子10(310)および並列回路部20(320)の両方を備えるように構成する例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、圧電素子と共に定抵抗回路を構成する並列回路部を超音波トランスデューサとは別個に設けるとともに、入力用伝送路と超音波トランスデューサとの間にコネクタなどを介して並列回路部を接続することによって、入力用伝送路とのインピーダンス整合を行うように構成してもよい。また、同様に、遮断回路部30を、超音波トランスデューサと別個に設けるようにしてもよい。
【0087】
また、上記第1~第3実施形態では、遮断回路部30を一対のダイオード31および32によって構成する例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、遮断回路部を、ソリッドステートリレー、ヒ化ガリウムを用いた半導体スイッチ、または、高速高電圧半導体スイッチなどを用いて構成してもよい。その場合には、超音波送信時(入力時)と超音波受信時(出力時)との接続状態を切り替えるために別途制御信号を設けることにより、入力時と出力時との導通を切り替えるように構成する。
【0088】
また、図10に示す変形例による超音波トランスデューサ401のように、遮断回路部430を、一対のFET431およびFET432(Field Effect Transistor:電界効果トランジスタ)によって構成するようにしてもよい。この場合には、遮断回路部430では、一対のFET431および432は、互いに逆極性となるように並列に接続されている。そして、一対のFET431および432は、各々のドレイン端子とゲート端子とが接続されること(ダイオード接続)によって、第1実施形態による一対のダイオード31および32と同様の動作をするように構成されている。同様に、遮断回路部を、コレクタ端子とベース端子とを接続したトランジスタ(または、ダーリントン接続のトランジスタ)によって構成するようにしてもよい。
【0089】
また、上記第3実施形態では、超音波トランスデューサ301は、直線状に配置された複数の圧電素子310を備えるリニアアレイ探触子である例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、超音波トランスデューサは、複数の圧電素子が格子状(平面状)に配置されているマルチアレイトランスデューサであってもよい。
【0090】
また、上記第3実施形態では、超音波トランスデューサ301を、複数の圧電素子310の各々に並列に接続された複数のコンデンサ360を備えるように構成する例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、複数の圧電素子を備える場合に、圧電素子と並列するコンデンサを備えないようにしてもよい。また、第1および第2実施形態のように圧電素子を1つだけ備える場合に、圧電素子に対して並列にコンデンサを接続するように構成してもよい。
【0091】
また、上記第3実施形態では、複数の圧電素子310の各々が略等しい静電容量を有している例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、複数の圧電素子310が互いに異なる静電容量を有していてもよい。その場合には、複数の圧電素子の各々の入力側に接続される並列回路部についても、複数の並列回路部の各々の構成が互いに異なるように構成される。具体的には、複数の圧電素子の異なる静電容量に応じて定抵抗回路を構成するように、複数の並列回路部の各々のインダクタのインピーダンスがそれぞれ設定される。また、同様に、上記第3実施形態では、ケーブル303(複数の入力用伝送路)の各々の伝送路(同軸ケーブル)の特性インピーダンスが略等しい例を示したが、複数の入力用伝送路の各々の特性インピーダンスも、互いに異なる値であってもよい。その場合にも、同様に、異なる特性インピーダンスの各々に応じて、インピーダンス整合を行うように、並列回路部の抵抗素子の抵抗値を設定する。また、ケーブル304(複数の出力用伝送路)についても同様である。
【符号の説明】
【0092】
10、310 圧電素子
20、320 並列回路部
21 抵抗素子
22、322 インダクタ
30、330、430 遮断回路部
31、32 ダイオード
40、240、340 終端抵抗
100、200、300 超音波検査システム
101、201、301、401 超音波トランスデューサ
102、202、302 パルサーレシーバ(超音波送受信装置)
103、203 ケーブル(入力用伝送路)
104、204 ケーブル(出力用伝送路)
250 抵抗素子(合成用抵抗素子)
303 ケーブル(複数の入力用伝送路)
304 ケーブル(複数の出力用伝送路)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10