(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】ソフトウェアの更新方法、そのプログラム、情報端末、システム、及び車両
(51)【国際特許分類】
G06F 8/65 20180101AFI20241001BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20241001BHJP
【FI】
G06F8/65
B60R16/02 660U
(21)【出願番号】P 2021205855
(22)【出願日】2021-12-20
(62)【分割の表示】P 2019198783の分割
【原出願日】2019-10-31
【審査請求日】2021-12-20
【審判番号】
【審判請求日】2023-09-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001276
【氏名又は名称】弁理士法人小笠原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石川 智康
(72)【発明者】
【氏名】有我 崇徳
【合議体】
【審判長】須田 勝巳
【審判官】山崎 慎一
【審判官】吉田 美彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-086894(JP,A)
【文献】特開2017-134506(JP,A)
【文献】特開2018-037059(JP,A)
【文献】特開2019-020866(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F8/65
B60R16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の制御を実行する
制御装置の制御部によって実行されるソフトウェアの更新方法であって、
前記ソフトウェアの新しいバージョンのインストールパッケージのダウンロードが完了すると、前記車両のシフトポジションがパーキングの位置であるか否かに拘わらず、前記ソフトウェアの更新処理
の準備が完了したことの通知を前記車両のユーザの情報端末に行わせ、
前記ダウンロードされた前記インストールパッケージに基づく前記ソフトウェアによる前記更新処理の開始から完了までに掛かると予想される時間である更新時間を、前記車両の制御の実行を制限する所定の処置を施すことを前提として前記ダウンロードされた前記インストールパッケージのサイズに基づいて導出し、
前記更新時間が導出された場合に、前記更新時間を前記情報端末に表示させ、
少なくとも、前記ユーザによる所定操作を受け付け、かつ、前記車両のシフトポジションがパーキングの位置である場合に、前記更新処理を開始
し、
前記更新処理が完了するまでは、前記更新処理が途中で中断することを避けるための所定の処置を施す、更新方法。
【請求項2】
前記ユーザによる前記所定操作は、前記更新処理を開始することを許諾する操作であり、前記更新時間は、前記許諾を要求する許諾要求と共に前記情報端末に表示させる、請求項1に記載の更新方法。
【請求項3】
車両の制御を実行する
制御装置のコンピューターに実行させるソフトウェアの更
新のプログラムであって、
前記ソフトウェアの新しいバージョンのインストールパッケージのダウンロードが完了すると、前記車両のシフトポジションがパーキングの位置であるか否かに拘わらず、前記ソフトウェアの更新処理
の準備が完了したことの通知を前記車両のユーザの情報端末に行わせるステップと、
前記ダウンロードされた前記インストールパッケージに基づく前記ソフトウェアによる前記更新処理の開始から完了までに掛かると予想される時間である更新時間を、前記車両の制御の実行を制限する所定の処置を施すことを前提として前記ダウンロードされた前記インストールパッケージのサイズに基づいて導出するステップと、
前記更新時間が導出された場合に、前記更新時間を前記情報端末に表示させるステップと、
少なくとも、前記ユーザによる所定操作を受け付け、かつ、前記車両のシフトポジションがパーキングの位置である場合に、前記更新処理を開始するステップと
、
前記更新処理が完了するまでは、前記更新処理が途中で中断することを避けるための所定の処置を施すステップと、を含む、プログラム。
【請求項4】
車両の制御を実行するソフトウェアの更新を行う
前記車両の制御装置であって、
前記ソフトウェアの新しいバージョンのインストールパッケージのダウンロードが完了すると、前記車両のシフトポジションがパーキングの位置であるか否かに拘わらず、前記ソフトウェアの更新処理
の準備が完了したことの通知を前記車両のユーザの情報端末に行わせる第1
制御部と、
前記ダウンロードされた前記インストールパッケージに基づく前記ソフトウェアによる前記更新処理の開始から完了までに掛かると予想される時間である更新時間を、前記車両の制御の実行を制限する所定の処置を施すことを前提として前記ダウンロードされた前記インストールパッケージのサイズに基づいて導出する第2
制御部と、
前記更新時間が導出された場合に、前記更新時間を前記情報端末に表示させる第3
制御部と、
少なくとも、前記ユーザによる所定操作を受け付け、かつ、前記車両のシフトポジションがパーキングの位置である場合に、前記更新処理を開始する第4
制御部と
、
前記更新処理が完了するまでは、前記更新処理が途中で中断することを避けるための所定の処置を施す第5制御部と、を備える、
制御装置。
【請求項5】
請求項
4に記載の
制御装置を搭載した、車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両などに搭載された制御装置、その制御装置が実行するプログラム(ソフトウェア)更新の方法、及びその制御装置を含んだプログラム更新システムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両には、ECU(Electronic Control Unit)と呼ばれる制御装置が複数搭載されている。ECUのような制御装置は、それぞれ1つ以上のCPUなどの制御部が実行する1つ以上のプログラムを格納した記憶部を備え、それぞれの機能を実行する。制御装置の機能向上のため、記憶部が格納するプログラムをより新しいバージョンに書き変えて更新することが提案されている。特に、整備工場などに行かなくてもプログラムの更新ができるよう、プログラム更新用のデータを車両が無線通信によって外部のサーバーから受信することが提案されている。
【0003】
特許文献1は、車両に搭載されたECUに実装されているプログラムを更新するためのプログラム更新システムが開示されている。このシステムでは、管理装置が、車両ID毎にバージョン情報及び更新ファイルを管理しているため、ECUから送られてくる車両IDに基づいて、ECUに実装されているプログラムが最新のバージョンでない場合に限り、ECUに更新ファイルを送信することで配信効率を良くしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
プログラム更新用のデータを用いて既存プログラムを更新している最中に、既存プログラムの実行が必要となった場合、実行中の更新処理の一時中断が要求されることがある。このような処理の中断が発生した場合には、プログラム更新処理の開始から完了までの時間が長くなる。
【0006】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、プログラム更新処理の中断が発生することを抑制できる車両用制御装置、プログラム更新方法、及びプログラム更新システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、車両制御に関するプログラムを記憶する第1記憶領域及びプログラムを更新するための更新プログラムを記憶する第2記憶領域を有する記憶部を備えた、車両用制御装置であって、車両が停車状態であるか否かを判定する判定制御部と、判定制御部において車両が停車状態であると判定された場合に、第1記憶領域に記憶されたプログラムを第2記憶領域に記憶された更新プログラムで更新する更新処理を開始する更新制御部と、を備える。
【0008】
また、本発明の他の態様は、車両制御に関するプログラムを記憶する第1記憶領域及びプログラムを更新するための更新プログラムを記憶する第2記憶領域を有する記憶部を備えた車両用制御装置が実行する、プログラム更新方法であって、車両が停車状態であるか否かを判定するステップと、判定するステップにおいて車両が停車状態であると判定された場合に、第1記憶領域に記憶されたプログラムを第2記憶領域に記憶された更新プログラムで更新する更新処理を開始するステップと、を備える。
【0009】
さらに、本発明の他の態様は、車両に搭載され、車両制御に関するプログラムを記憶する第1記憶領域及びプログラムを更新するための更新プログラムを記憶する第2記憶領域を有する記憶部を備えた車両用制御装置と、更新プログラムを管理し、車両と通信して車両用制御装置の第2記憶領域に更新プログラムをダウンロードさせる管理サーバーと、を含むプログラム更新システムであって、車両用制御装置は、車両の情報を取得し、取得した情報に基づいて車両が停車状態であるか否かを判定し、車両が停車状態であると判定した場合、第1記憶領域に記憶されたプログラムを第2記憶領域に記憶された更新プログラムで更新する更新処理を開始する。
【発明の効果】
【0010】
上記本発明の車両用制御装置、プログラム更新方法、及びプログラム更新システムによれば、既存プログラムの実行が要求されるまでに時間的猶予があると想定される車両が停車したタイミングでプログラム更新処理を開始するので、プログラム更新処理の中断が発生することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態に係る制御装置を適用したプログラム更新システムの構成例を示す図
【
図3】制御装置で実行される第1実施例によるプログラム更新処理のフローチャート
【
図4A】第1実施例における車両状態の遷移と更新処理開始のタイミング例
【
図4B】第1実施例における車両状態の遷移と更新処理開始のタイミング例
【
図5A】制御装置で実行される第2実施例によるプログラム更新処理のフローチャート
【
図5B】制御装置で実行される第2実施例によるプログラム更新処理のフローチャート
【
図6A】第2実施例における車両状態の遷移と更新処理開始のタイミング例
【
図6B】第2実施例における車両状態の遷移と更新処理開始のタイミング例
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の制御装置は、車両制御の際に実行される既存プログラムを記憶する領域とは異なる領域に更新プログラムを記憶し、車両が停車状態であるタイミングで既存プログラムを更新プログラムで更新する処理を開始する。これにより、既存プログラムの実行が次に要求されるまでの時間的猶予を期待でき、プログラム更新処理の中断が発生することを抑制できる。
【0013】
(実施形態)
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0014】
[構成]
図1は、本発明の一実施形態に係る制御装置を適用したプログラム更新システムの構成例を示す図である。
図1に例示したプログラム更新システム10は、車両100と、車両管理サーバー200と、モバイル機器300と、を備える。車両100は、通信デバイス110と、複数の制御装置120と、ディスプレイ装置130と、を含む。通信デバイス110、複数の制御装置120、及びディスプレイ装置130は、CAN(Controller Area Network)などの車内ネットワークを介して、通信可能に接続されている。なお、制御装置120の個数は限定されない。
【0015】
通信デバイス110は、データ通信モジュール(DCM)などであって、4GやWi-Fiなどの無線ネットワークを介して、車両管理サーバー200やモバイル機器300などの車外機器と通信可能に接続されている。
【0016】
制御装置120は、一例として、ECUと呼ばれる車両100の各種制御を行う装置である。この制御装置120は、
図2に例示するように、通信部121、制御部122、及び記憶部123を含む。
【0017】
通信部121は、車両100の通信デバイス110を介して車両管理サーバー200と通信を行い、車両管理サーバー200への更新の問い合わせや車両管理サーバー200からの更新プログラムのダウンロードなどを行う。制御部122は、車両状態判定、プログラム更新、更新時間導出、及び更新状況表示の各処理(後述する)を含む制御装置120の制御を行う。記憶部123は、制御部122によって実行される1つ以上のプログラムを記憶している。また、記憶部123は、車両制御に関するプログラム(既存プログラム)を記憶する第1記憶領域1231と、この既存プログラムの更新に必要なデータである更新プログラムを記憶する第2記憶領域1232とを、独立して有している。
【0018】
なお、記憶部123の第1記憶領域1231と第2記憶領域1232とは、
図2に示した構成に限られず、物理的に分かれた2つの記憶部として設けられてもよい。また、車両100の全ての制御装置120が、このような第1記憶領域1231と第2記憶領域1232とを有するプログラム更新可能な機器でなくてもよい。
【0019】
車両管理サーバー200は、車両100に搭載された制御装置120の既存プログラムを更新するために用いられるデータである更新プログラムを管理するサーバーである。この車両管理サーバー200は、制御装置120の既存プログラムの更新プログラムを記憶部(図示せず)記憶しており、車両100の通信デバイス110と無線通信を行って、車両100からの更新の問い合わせの受付や更新プログラムの車両100へのダウンロードなどを行う。
【0020】
ディスプレイ装置130は、制御装置120におけるプログラム更新処理の状況に関する情報(更新状況情報)を表示する表示画面を備えた情報端末である。ディスプレイ装置130は、制御装置120から車内ネットワークを介して送信される更新状況情報に対応する表示を行う指示、又は車両管理サーバー200から無線ネットワークを介して送信される更新状況情報に対応する表示を行う指示に基づいて、所定の通知や許諾要求の画面を表示させる。このディスプレイ装置130としては、車両100に搭載されるマルチインフォメーションディスプレイやカーナビゲーション装置が例示できる。
【0021】
モバイル機器300は、制御装置120におけるプログラム更新処理の状況に関する更新状況情報を、通信デバイス110を介して受信して表示する表示画面を備えた情報端末である。モバイル機器300は、制御装置120から無線ネットワークを介して送信される更新状況情報に対応する表示を行う指示、又は車両管理サーバー200から無線ネットワークを介して送信される更新状況情報に対応する表示を行う指示に基づいて、所定の通知や許諾要求の画面を表示させる。このモバイル機器300としては、車両100の車両利用者が所有するスマートフォン、タブレット型機器、又はパーソナルコンピューターのような汎用的な装置を例示できる。
【0022】
なお、
図1のプログラム更新システム10では、制御装置120におけるプログラム更新処理の状況に関する更新状況情報を表示する情報端末として、ディスプレイ装置130及びモバイル機器300を構成に含めたが、いずれか一方の構成だけであってもよい。また、更新状況情報を表示して車両利用者に提示することができれば、ディスプレイ装置130及びモバイル機器300以外の構成を情報端末として含めてもよい。また、ディスプレイ装置130及びモバイル機器300に対する更新状況情報の表示指示は、更新を実施している制御装置120が行ってもよいし、更新を実施している制御装置120から更新状況を適宜受信して車両管理サーバー200が行ってもよい。
【0023】
<第1実施例>
図3は、制御装置120によって実行可能な第1実施例によるプログラム更新処理の手順を説明するフローチャートである。
図4A及び
図4Bは、この第1実施例によるプログラム更新処理のタイミングチャートの一例である。
【0024】
図3に示す処理は、例えば、車両100の電源がオンされると開始される。
【0025】
ステップS301:制御装置120の制御部122は、記憶部123の第1記憶領域1231に記憶する既存プログラムについて更新があるかないかを、通信部121を介して車両管理サーバー200に問い合わせる。
【0026】
ステップS302:制御装置120の制御部122は、車両管理サーバー200から問い合わせに対する回答を、通信部121を介して受信する。制御部122が車両管理サーバー200から、更新があるとの回答を受信した場合には(ステップS302、はい)、ステップS303に処理が進み、更新がないとの回答を受信した場合には(ステップS302、いいえ)、本処理が終了する。
【0027】
ステップS303:制御装置120の制御部122は、通信部121を介して車両管理サーバー200から更新プログラムをダウンロードする。ダウンロードされた更新プログラムは、記憶部123の第2記憶領域1232に記憶される。この更新プログラムのダウンロードは、車両制御に影響しないため、車両制御を制限することなくバックグラウンドで実行される。
【0028】
ステップS304:制御装置120の制御部122は、車両100が停車状態か否かを判断する。この停車状態としては、一例として、車両100の電源がオフ(例えばイグニッションスイッチがオフ)であること、シフトポジションがパーキング(P)の位置であること、車両100の速度がゼロであることなどが挙げられ、これらの状態は車両100に搭載された各種機器から取得できる各種の車両情報に基づいて容易に判断可能である。車両100が停車状態である場合には(ステップS304、はい)、ステップS305に処理が進む。
【0029】
ステップS305:制御装置120の制御部122は、記憶部123の第1記憶領域1231に記憶する既存プログラムを、記憶部123の第2記憶領域1232に記憶された更新プログラムで更新する処理を開始する。
【0030】
ステップS306:制御装置120の制御部122は、プログラムの更新処理が完了したか否かを判断する。更新処理が完了すると(ステップS306、はい)、本処理が終了する。
【0031】
図4Aは、車両100が非停車状態である期間において更新プログラムのダウンロードが完了し、その後に車両100が停車状態に遷移する場合である。この場合には、車両100が停車状態になるのを待ってからプログラムの更新処理が開始される。このタイミングで更新処理を開始することにより、既存プログラムの実行が要求されるまでの時間的猶予が期待できるので、プログラム更新処理の中断が発生することを抑制できる。
【0032】
図4Bは、車両100が非停車状態である期間において更新プログラムのダウンロードが開始され、ダウンロードの完了までに車両100が停車状態に遷移する場合である。この場合には、更新プログラムのダウンロード完了に続いてプログラムの更新処理が開始される。このタイミングで更新処理を開始する場合も、既存プログラムの実行が要求されるまでの時間的猶予が期待できるので、プログラム更新処理の中断が発生することを抑制できる。
【0033】
なお、プログラムの更新処理を開始した後は、更新処理が途中で中断することを避けるため、この更新が完了するまでは、更新しているプログラムに関する車両制御に所定の処置を施すことが望ましい。所定の処置とは、例えば、プログラムがエンジン制御プログラムである場合には、エンジンの回転数の上昇を制限させる処置が挙げられる。このような処置により、プログラムの更新処理の途中で車両100が停車状態に遷移した場合であっても、更新処理を中断させることなく更新を完了させることができる。よって、更新処理の時間が長くなることを抑制できる。
【0034】
<第2実施例>
図5A及び
図5Bは、制御装置120によって実行可能な第2実施例によるプログラム更新処理の手順を説明するフローチャートである。
図5Aの処理と
図5Bの処理とは、結合子X及びYでそれぞれ結ばれる。
図6A及び
図6Bは、この第2実施例によるプログラム更新処理のタイミングチャートの一例である。
【0035】
この第2実施例は、上述した第1実施例の処理に加えて、更新処理の進捗状況に関する情報をディスプレイ装置130やモバイル機器300などの画面に表示させる処理を追加した内容である。
【0036】
更新処理の進捗状況に関する情報の一例としては、更新プログラムがあることを示す更新通知、車両管理サーバー200から制御装置120への更新プログラムのダウンロードについて車両利用者に許諾を求めるDL許諾要求、車両管理サーバー200から制御装置120へ更新プログラムのダウンロードが完了したことを示すDL完了通知、更新プログラムを用いた既存プログラムの更新処理の起動準備が完了したことを示す更新起動準備完了通知、更新プログラムを用いた既存プログラムの更新処理を起動すること(つまり制御内容が切り替わること)について車両利用者に許諾を求める更新起動許諾要求、及び更新プログラムを用いた既存プログラムの更新処理が完了したことを示す更新完了通知を、例示できる。また、自動車基準調和世界フォーラム(WP29)の法規において通知要件とされたOTA(On The Air)による更新処理に掛かる時間を例示できる。
【0037】
図5Aに示す処理は、例えば、車両の電源がオンされると開始される。
【0038】
ステップS501:制御装置120の制御部122は、記憶部123の第1記憶領域1231に記憶する既存プログラムについて更新があるかないかを、通信部121を介して車両管理サーバー200に問い合わせる。
【0039】
ステップS502:制御装置120の制御部122は、車両管理サーバー200から問い合わせに対する回答を、通信部121を介して受信する。制御部122が車両管理サーバー200から、更新があるとの回答を受信した場合には(ステップS502、はい)、ステップS503に処理が進み、更新がないとの回答を受信した場合には(ステップS502、いいえ)、本処理が終了する。
【0040】
ステップS503:制御装置120の制御部122は、通信部121、通信デバイス110、及び車両管理サーバー200を介して、ディスプレイ装置130やモバイル機器300の画面に更新通知を表示させる。
【0041】
ステップS504:制御装置120の制御部122は、通信部121、通信デバイス110、及び車両管理サーバー200を介して、ディスプレイ装置130やモバイル機器300の画面にDL許諾要求を表示させる。
【0042】
ステップS505:制御装置120の制御部122は、ディスプレイ装置130又はモバイル機器300から更新プログラムのダウンロードを許諾する回答を受けたか否かを判断する。許諾があった場合には(ステップS505、はい)、ステップS506に処理が進み、許諾がない場合には(ステップS505、いいえ)、本処理が終了する。
【0043】
ステップS506:制御装置120の制御部122は、通信部121を介して車両管理サーバー200から更新プログラムをダウンロードする。ダウンロードされた更新プログラムは、記憶部123の第2記憶領域1232に記憶される。この更新プログラムのダウンロードは、車両制御に影響しないため、車両制御を制限することなくバックグラウンドで実行される。
【0044】
ステップS507:制御装置120の制御部122は、更新処理の開始から完了までに掛かると予測される時間である更新時間を導出する。この更新時間は、典型的には、更新しているプログラムに関する車両制御に所定の処置を施すことを前提として、開始した更新処理が途中で中断することなく完了するまでの時間であり、ダウンロードした更新プログラムのサイズなどに基づいて導出される。
【0045】
ステップS508:制御装置120の制御部122は、通信部121、通信デバイス110、及び車両管理サーバー200を介して、ディスプレイ装置130やモバイル機器300の画面にDL完了通知を表示させる。
【0046】
ステップS509:制御装置120の制御部122は、通信部121、通信デバイス110、及び車両管理サーバー200を介して、ディスプレイ装置130やモバイル機器300の画面に更新起動準備完了通知を表示させる。
【0047】
ステップS510:制御装置120の制御部122は、車両100が停車状態か否かを判断する。この停車状態としては、一例として、車両100のイグニッションスイッチがオフ(IG-OFF)であること、シフトポジションがパーキング(P)の位置であること、車両100の速度がゼロであることなどが挙げられ、これらの状態は車両100に搭載された各種機器から取得できる情報に基づいて容易に判断可能である。車両100が停車状態である場合には(ステップS510、はい)、ステップS511に処理が進む。
【0048】
ステップS511:制御装置120の制御部122は、通信部121、通信デバイス110、及び車両管理サーバー200を介して、ディスプレイ装置130やモバイル機器300の画面に更新起動許諾要求及び更新時間を表示させる。
【0049】
ステップS512:制御装置120の制御部122は、ディスプレイ装置130又はモバイル機器300から更新処理の起動を許諾する回答を受けたか否かを判断する。許諾があった場合には(ステップS512、はい)、ステップS513に処理が進み、許諾がない場合には(ステップS512、いいえ)、本処理が終了する。
【0050】
ステップS513:制御装置120の制御部122は、記憶部123の第1記憶領域1231に記憶する既存プログラムを、記憶部123の第2記憶領域1232に記憶された更新プログラムで更新する処理を開始する。
【0051】
ステップS514:制御装置120の制御部122は、プログラムの更新処理が完了したか否かを判断する。更新処理が完了すると(ステップS514、はい)、ステップS515に処理が進む。
【0052】
ステップS515:制御装置120の制御部122は、通信部121、通信デバイス110、及び車両管理サーバー200を介して、ディスプレイ装置130やモバイル機器300の画面に更新完了通知を表示させる。表示が終わると本処理が終了する。
【0053】
図6Aは、車両100が非停車状態である期間において更新プログラムのダウンロードが完了し、その後DL完了通知及び更新起動準備完了通知を終わっても車両100が停車状態に遷移しない場合である。この場合には、車両100が停車状態になるのを待ってから更新起動許諾要求及び更新時間が表示される。そして、更新起動が許諾された後、プログラムの更新処理が開始される。このタイミングで更新処理を開始することにより、既存プログラムの実行が要求されるまでの時間的猶予が期待できるので、プログラム更新処理の中断が発生することを抑制できる。
【0054】
図6Bは、車両100が非停車状態である期間において更新プログラムのダウンロードが完了し、その後の更新起動準備完了通知において車両100が停車状態に遷移した場合である。この場合には、更新起動準備完了通知後に続けて更新起動許諾要求及び更新時間が表示される。そして、更新起動が許諾された後、プログラムの更新処理が開始される。このタイミングで更新処理を開始する場合も、既存プログラムの実行が要求されるまでの時間的猶予が期待できるので、プログラム更新処理の中断が発生することを抑制できる。なお、
図6Bの例では、プログラムの更新処理が完了する前に車両100が非停車状態に遷移した場合を示しており、この場合には、車両100が非停車状態に遷移した後からプログラムの更新処理が完了する(更新完了通知が表示される)まで、更新しているプログラムに関する車両制御に所定の処置が施されることとなる。
【0055】
なお、この第2実施例では、更新通知、DL許諾要求、DL完了通知、更新起動準備完了通知、更新時間、更新起動許諾要求、及び更新完了通知を全て表示する場合を説明したが、少なくとも更新時間を表示して、他の通知及び要求は一部又は全部を省略しても構わない。
【0056】
[作用・効果]
以上のように、本発明の一実施形態に係る車両用制御装置、プログラム更新方法、及びプログラム更新システムによれば、記憶部に車両制御に関するプログラムを記憶する第1記憶領域とプログラムを更新するための更新プログラムを記憶する第2記憶領域を有し、車両制御に影響を与えることなく車両管理サーバーから更新プログラムを第2記憶領域へダウンロードする。そして、車両が停車状態(車両電源がオフ、パーキングブレーキが作動、車両速度がゼロなど)であると判定された場合に、第1記憶領域に記憶されたプログラムを第2記憶領域に記憶された更新プログラムで更新する更新処理を開始する。
【0057】
このように、既存プログラムの実行が要求されるまでに時間的猶予があると想定される車両が停車したタイミングでプログラム更新処理を開始するので、プログラム更新処理の中断が発生することを抑制できる。
【0058】
また、本発明の一実施形態に係る車両用制御装置、プログラム更新方法、及びプログラム更新システムによれば、車両管理サーバーから第2記憶領域へ更新プログラムがダウンロードされた後、更新プログラムに基づいて更新処理の開始から完了までに掛かると予測される時間である更新時間を導出して情報端末に表示させる。従って、車両利用者に対して精度の高い更新時間を提示することが可能となる。
【0059】
このように精度の高い更新時間を提示することができれば、例えば、外出先の駐車場で更新時間が提示された車両利用者は、その更新時間が経過した以後に車両に戻ってくれば更新処理が完了しているため、直ちに車両を操作することができる。よって、更新の完了までの正確な時間がわからず、車両内で待機しなければならないといった煩わしさを軽減することができる。
【0060】
また、本発明の一実施形態に係る車両用制御装置、プログラム更新方法、及びプログラム更新システムによれば、更新処理の起動の許諾要求を情報端末に表示させるような場合に、その許諾要求と共に精度の高い更新時間を提示することが可能である。よって、車両利用者は、プログラム更新に掛かる時間を把握した上でプログラムの更新を許諾することができる。
【0061】
以上、本発明の一実施形態を説明したが、本発明は、車両用制御装置及びプログラム更新システムだけでなく、プログラム更新方法、その方法の制御プログラム、その制御プログラムを記憶したコンピューター読み取り可能な非一時的記憶媒体、プログラム更新システムを備えた車両などとして捉えることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は、車両などに搭載された制御装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0063】
10 プログラム更新システム
100 車両
110 通信デバイス
120 制御装置
130 ディスプレイ装置
121 通信部
122 制御部
123 記憶部
1231 第1記憶領域
1232 第2記憶領域
200 車両管理サーバー
300 モバイル機器