(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】繊維系飲料ホルダーの製造方法および装置
(51)【国際特許分類】
B65D 71/50 20060101AFI20241001BHJP
D21J 3/00 20060101ALI20241001BHJP
D21J 7/00 20060101ALI20241001BHJP
【FI】
B65D71/50
D21J3/00
D21J7/00
(21)【出願番号】P 2021507976
(86)(22)【出願日】2019-08-15
(86)【国際出願番号】 US2019046718
(87)【国際公開番号】W WO2020037159
(87)【国際公開日】2020-02-20
【審査請求日】2022-07-26
(32)【優先日】2018-08-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519030833
【氏名又は名称】フットプリント インターナショナル, エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】チュン,ヨーク・ドウ
(72)【発明者】
【氏名】ムーア,ブランドン・マイケル
(72)【発明者】
【氏名】チャン,イーユン
(72)【発明者】
【氏名】レンベック,マイケル
【審査官】宮崎 基樹
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第09856608(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0016750(US,A1)
【文献】国際公開第2013/019834(WO,A1)
【文献】特開2015-086478(JP,A)
【文献】米国特許第04372598(US,A)
【文献】米国特許第04063771(US,A)
【文献】米国特許第04159841(US,A)
【文献】米国特許第04093295(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 71/50
D21J 3/00
D21J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
飲料缶を運ぶように構成されたヨークを製造する方法であって、
前記ヨークの形状で金網モールドを提供すること、
前記モールドを繊維系スラリーに浸漬すること、
前記金網モールド全体を真空引きし、繊維粒子を前記金網の表面に蓄積させること、および、
前記モールドと付着した繊維粒子を前記スラリーから除去すること、および、
次いで前記繊維粒子を乾燥させて前記ヨークを得ることを含み、
前記スラリーは吸湿防止剤を含み、
前記ヨークはウェブによって相互接続された複数の襟部を含み、前記ウェブの厚さは約0.03インチの均一な厚さを示し、
前記ヨークの襟部間には強度を高めるリブが設けられる、
方法。
【請求項2】
前記吸湿防止剤が、0.5重量%~10重量%の範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記吸湿防止剤が、アルキルケテンダイマー(AKD)を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記吸湿防止剤が、アルキルケテンダイマー(AKD)
80を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記スラリー
中の繊維系素材のうち、約70%の古い段ボール(OCC)
であり、他の繊維系素材が約30%
である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
円筒形容器用のキャリアの製造方法であって、
前記キャリアの形状でメッシュのモールドを提供すること、
前記モールドを繊維系スラリーに浸漬すること、
前記モールド全体を真空引きし、繊維粒子を前記メッシュの表面に蓄積させること、および、
前記モールドと蓄積した繊維粒子を前記スラリーから除去すること、および、
次いで前記繊維粒子を乾燥させて前記キャリアを得ることを含み、
前記スラリーは、
古い段ボール(OCC)および新聞用紙(NP)のうちの少なくとも1つを含む繊維系素材、
約4重量%の範囲の吸湿防止添加剤、
約4重量%の範囲の湿潤強度添加剤、および、
約4重量%の範囲の乾燥強度添加剤を含み、
前記キャリアは、ウェブによって相互接続された複数の襟部を含み、
各襟部が約1.95インチの
内径を示し、ウェブが約0.03インチの実質的に均一な厚さを示
し、
前記襟部間には強度を高めるリブが設けられる、
前記円筒形容器用キャリアの製造方法。
【請求項7】
前記吸湿防止添加剤がアルキルケテンダイマー(AKD)を含み、
前記湿潤強度添加剤がポリアミドアミン-エピクロロヒドリン(PAE)樹脂を含み、および、
前記乾燥強度添加剤が、カチオン変性ポリアミン水溶性ポリマーを含む、請求項6に記載の
前記円筒形容器用キャリア
の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全般として、飲料用ヨークの環境調和型製造方法および装置、特に、真空成形された繊維系飲料キャリア向けの新規成型ヨークの設計およびスラリー組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
使い捨てのプラスチック容器や飲料運搬船によって引き起こされる汚染が世界中に蔓延し景観を損ない、生態系とそこに生息する様々な生物の健康を維持する上での脅威となっている。6本パック用の輪またはヨークは、通常プラスチック製の輪が相互に結合したウェブを備えており、マルチパックの缶やボトルを運ぶのに使用される。米国では、1989年以来、6本パック用の輪は光分解するように作られているため、数週間以内で分解し始める。最近では、ヨークは#4プラスチック、またはLDPEからなる光分解性プラスチック(ポリエチレン)で作られている。こういった新材料からなる飲料用ヨークを使うと環境への悪影響は和らげられるが、さらなる悪影響の低減のためにはより一層の生体適合性が求められる。
【0003】
プラスチック汚染を減らすための持続可能な策が次々と打ち出されている。しかし、その策が取り入れられるためには、環境に適しているだけでなく、性能とコスト両面で対プラスチック優位性がある必要がある。本発明においては、従来プラスチック製であった飲料用ヨークを、コスト競争力がありかつ性能低下のない革新的な繊維系成型体に置き換える技術を提供する。
【0004】
背景として1930年代から紙パルプ成型品(繊維成型品)が容器、トレイや包装用に使用されてきたことがあるが、発泡プラスチック包装が導入されて以来、1970年代には減少に転じた。紙パルプは、古新聞、段ボール箱、その他の植物繊維を使って製造され、今日、パルプ成型包装は、電子機器、家庭用品、自動車部品、医療製品、および電子機器やその他の壊れやすい部品を輸送する際のエッジ/コーナー保護用またはパレットトレイとして広く使用されている。モールドは、完成品である繊維系製品の鏡像形に、金属具材を機械加工して造られる。具材に穴を開け、その表面にスクリーンを貼り付ける。パルプで穴が詰まるのをスクリーンで防ぎながら、その穴を通して系内を真空引きする。そして、パルプ微粒子をスクリーン表面に堆積させて成型部品を形成する。
【0005】
繊維系包装製品には生分解性があり堆肥化が可能であり、プラスチックとは異なり、海を回遊するようなことはない。しかしながら、現状の繊維技術でもって製造される飲料向けの繊維系ヨークでは持ち運び用の穴の周辺に応力が集中しすぎることや、繊維系製品は濡れるとすぐに劣化する傾向にあるため、飲料用ヨークにはあまり適しているとは言えない。
【0006】
よって、従来技術の限界を打破する方法および装置が必要となる。
【0007】
本発明の様々な特徴および特性が、添付の図面およびこの背景技術の内容と併せて、以下の詳細な説明および特許請求の範囲から明らかになる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の様々な実施形態は、真空成型された飲料キャリア用の繊維系ヨークを製造するための方法、化学式および装置に関するものである。とりわけ以下を含む。i)完成品としての繊維系ヨークの強度および構造的剛性を向上させるためのスラリー組成物、ii)完成品の維系ヨークへ水分が浸透するのを防ぐスラリー組成物、iii)後工程のダイ切削工程を必要とせず、飲料缶用の穴の周りに鋭利なエッジを形成するよう構成された真空用具材、iv)重量を最小限に抑えサイクルタイムを短縮し、スループットを向上させる形状設計、v)飲料容器をしっかりと保持しつつ、ヨークから各飲料容器を簡便に取り外せるようにする形状設計、およびvi)4%範囲のKymene 1500 LV、4%のAKD、および4%のHercobond 6950を含む繊維系スラリー組成物。
【0009】
尚、本明細書に記載の様々な発明は、従来のスラリーを使用した真空成形プロセスによって得られるものの範疇に限定されず、当業者によれば本明細書に記載の発明が、3D印刷技術を含む任意の繊維系の製造方式に適することは容易に理解される。
【0010】
その他の様々な実施形態、態様、および特徴を以下にて詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
以下、本発明の実施形態を添付の図面と併せて例示する。ここで、符号の数字は、それに対応する要素の番号を示す。
【0012】
【
図1】
図1は様々な実施形態に係る、6個の飲料缶を持ち運ぶための飲料向け繊維系ヨークを示す斜視図である。
【
図2】
図2は様々な実施形態に係る、飲料用ヨーク部分で固定される飲料缶の上部形状を示す概略図である。
【
図3】
図3は様々な実施形態に係る、6本パック飲料用の繊維系ヨークの例示斜視図である。
【
図4】
図4は、様々な実施形態に係る、
図3に示されたヨークの上面図、側面図、および正面図の各々を示す。
【
図5】
図5は、様々な実施形態に係る、交互に配置されたヨーク形態の上面図、側面図、および正面図の各々を示す。
【
図6】
図6は、様々な実施形態に係る、4本パック用の飲料向け繊維系ヨークの斜視図である。
【
図7】
図7は、様々な実施形態に係る、
図6に示されるヨークの上面図、側面図、および正面図の各々を示す。
【
図8】
図8は、様々な実施形態に係る、飲料向け繊維系ヨークを真空成形の際使用できるように構成された雄側ダイ構成要素の例示斜視図である。
【
図9】
図9は、様々な実施形態に係る、飲料向け繊維系ヨークを乾燥させる乾燥プレスの雄側構成要素の例示斜視図である。
【
図10】
図10は、様々な実施形態に係る、乾燥プレスの雌側構成要素の例示斜視図である。
【
図11】
図11は、様々な実施形態に係る、繊維系スラリーを使用する真空成形プロセスを表した例示概略ブロック図である。
【
図12】
図12は、様々な実施形態に係る、スラリーの化学組成を制御する閉循環スラリー系を表した例示概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の以下の詳細な説明は、本来は単なる例示であり、本発明または本発明の用途および使用を限定することを意図するものではない。さらに、前述の背景技術または以下の詳細な説明に示されている理論に拘束されるものではない。
【0014】
本発明の様々な実施形態は、消耗品および非消耗品の両方に使用されるボトル、缶、およびその他の容器を運ぶための繊維系またはパルプ系の輪付きのヨークに関する。非限定的な例として、本明細書において、飲料キャリア用ヨークに関する固有の課題に対処するのに適したスラリーの特定の形状および化学配合組成に関して開示される。さらに、本明細書においては、強度を高めるための構造的特徴を有する繊維系ヨークについても開示される。
【0015】
真空成形食品用キャリアのうち、キャリアの上部に飲料容器支持用の圧入カップホルダーを備えたトレイ付きのキャリアはよく知られている。しかしながら、現在知られている食品向けの繊維系キャリアを、飲料容器をヨーク平面下に吊すようにして使う「6本パック」用の輪またはヨークとして使用するにはあまり適していない。というのもその理由の一つとして、容器をヨーク中にしっかりと保持するに足る十分なグリップ力を出すのが課題となっているからである。一方で、このキャリアを使うと、ヨークから容器を簡単に取り外すことはできる。ただし、ヨークの材質が厚すぎると、缶をヨークから外し難い場合があり、逆にヨークの材料が薄すぎると、持ち運ぶ際に飲料容器をしっかりと支えられない場合があった。
【0016】
様々な実施形態によれば、持ち運び用のヨークは略均一な厚さを有する。その他の実施形態によれば、飲料容器を運ぶための指穴や襟部で高応力が集中する部分の厚みをより厚くする。さらにその他の実施形態として、強度を高めるリブおよび/または他の部位の形状を用いることができる。
【0017】
その他の実施形態によれば、パルプスラリーに湿潤強度添加剤(例えば、Kymene)、乾燥強度成分(例えば、Topcat(登録商標)カチオン性添加剤)、および/または吸湿防止剤(例えば、3%のAKD)が注入される。
【0018】
その他の実施形態によれば、容器の襟部近くにある穿孔または引き裂き線はヨークから容器を取り外し易くするように配置される。
【0019】
本発明によれば、繊維組成物は古い段ボール(OCC)を90%の範囲および軟材を10%の範囲含む。その他の実施形態によれば、スラリーは約30%の新聞用紙(NP)および約70%のOCCからなる。
【0020】
その他の実施形態によれば、ヨークの総重量は4~15グラムであり、特に6.5または10グラムであることが目標とされる。所与の材料の強度は、重量に比例する厚みに比例する。強度を最適化するための設計指標の一つとして、厚みを厚くするとサイクルタイムが長くなり、スループットが低下するため、厚みを不必要に厚くしないことで強度が最適化されることが挙げられる。
【0021】
様々な実施形態によれば、真空チャンバー内での滞留時間は20秒の範囲、および乾燥時間は200℃で40秒の範囲である。ここで、乾燥時間もヨークの厚さと重量に比例する。
【0022】
様々な実施形態によれば、不必要なダイの切削操作を回避するために、各缶を保持するため設けられた内側の輪に相当するダイの部分を、雄側と雌側ともに工具鋼で強化されたアルミニウム製のダイ形状にする。そうするとダイの寸法が許容誤差内に維持されて、きれいな内部エッジの缶ホルダーが得られる。
【0023】
図11および
図12を一時的に参照することにより、本発明の有用な真空成形プロセスの概要が例示される。
【0024】
図11では真空成形系および繊維系スラリーを使用したプロセス1100が例示され、そこには製造される製品の鏡像型をしたモールド(明瞭には示されていない)が、そのモールドの輪郭に合致するように細い金網形態1102の中に包まれる状態を示す第1段階1101が示されている。繊維系スラリー1104の供給1104は、圧力(P1)1106(通常は周辺圧力)によりなされる。モールド内をより低い圧力(P2)1108に維持することにより、そのスラリーはメッシュ形態内に引き込まれるが、繊維状粒子はモールド形態中に捕捉されつつ、過剰のスラリー1110は系内での再循環用に排出される。
【0025】
引き続き
図11において、第2の段階1103で、モールドの形をした金網の周りに繊維層1130を蓄積させる。層1130が所望の厚さに達すると、そのモールドを第3段階1105に進めて湿式または乾式硬化のいずれかを行う。湿式硬化プロセスでは、成形品を加熱プレス工程(図示せず)に移送し、層1130を圧縮乾燥して所望の厚さにし、そして滑らかに仕上げられた外面の完成部品を得る。乾式硬化プロセスでは、層1130の上部に直接乾燥空気を通すことにより水分を除去することができ、その結果、普通の卵用カートンのようなざらつきのある仕上がり面が得られる。
【0026】
本発明の種々の実施形態によれば、この真空成型プロセスにおける操作は、製品を成形する浴中で未使用のスラリーを再循環するという点で、閉循環系として行われる。そのため、添加剤の一部(以下で詳しく説明する)は個々の繊維に吸収されるか、なかには水系溶液に残存するものもある。真空成形の際、繊維(添加剤の一部を吸収したもの)のみが成形品に補足され、残りの添加剤はタンクに戻り再循環される。したがって、残りの添加剤は溶液中のスラリーとともに再循環されるため、成形品に捕捉された添加剤のみを補充する必要がある。後述するように、この再循環系においては、真空タンク内の化学的性状は定常状態にあり、スラリーを構成する構成成分の体積比は所定の比に維持される。
【0027】
図12では、スラリーの化学組成を制御する閉循環スラリー系1200が示される。図示する実施形態においては、タンク1202が、所望する特定の化学的性質を有する繊維系スラリー1204で満たされているところに、真空用モールド1206をスラリー浴に浸漬し成型品を成形する。成型品を所望の厚さに形成した後、モールド1206を後続の処理1208(例えば、成形、加熱、乾燥、トップコートなど)のために取り除く。
【0028】
引き続き
図12において、パルプおよび水を含む繊維系スラリーをスラリー投入箇所1210でタンク1202内に供給する。一つまたは複数の追加成分または添加剤を、各投入箇所1212~1214で供給してもよい。ここで、そのスラリーを閉循環系下、導管1218を使って再循環してもよいが、必要に応じてパルプおよび/または水を追加してもよい。所望の添加剤をバランスよく定常状態に維持するサンプリングモジュール1216の構成は、スラリーの構成成分を測定さもなければ監視し、各投入箇所1212~1214の制御により各添加剤レベルを動的または定期的に調整するようになっている。ここで、スラリー濃度は通常約0.1から1%である。一実施形態において、各種の構成成分は所望する所定の体積%に維持されるか、ないしはその化学的性状は、重量%または他の所望するあらゆる制御方法に基づいて維持される。
【0029】
次に、種々の飲料向け繊維系キャリアに関する化学式(本明細書では「化学」と称することもある。)および形状上の構成、ならびにそれらの製造方法を、
図1から
図10を使って説明する。
【0030】
図1は、複数の飲料缶102を安全に運ぶよう構成された6本パック用の輪付きのパレット104を含む飲料向け繊維系ヨークアセンブリ100を示している。
【0031】
図2は、缶本体202、缶キャップ204、缶ネック206、および缶ネックと缶本体との間に延びる缶ショルダー208を有する典型的な飲料缶200を示している。この図に示されているように、缶ネックの直径212は、缶キャップの直径210よりわずかに小さい。したがって、各缶をヨークの襟部に挿入して保持する際の襟部の寸法は、直径212と等しいかわずかに小さいところ、むしろこの襟部の寸法は寸法212と等しいかわずかに大きいほうが望ましい。また、ヨーク材料そのものは裂けることなく弾性変形するに足る十分な柔軟性を有するので、缶をヨークに挿入する際、缶のキャップ204が襟部の上に滑り込んで、缶は肩部208および/または首部206の周りにぴったりと保持される。後述するスラリー組成を用いて完成ヨーク品の厚みとすることによって、缶をしっかりと保持するに足る十分な強度を持つヨークを形成することができる。また必要に応じて、ヨークから缶を簡単に取り外すこともできる。
【0032】
図3では、飲料向け6本パック用の繊維系ヨーク300が例示されるが、図中、複数の襟部302は、持ち運び易いように設けられた1つまたは複数の指穴306を有するウェブ304により相互に接続される。
【0033】
図4では、複数の襟部402を有するヨーク400を例示する。ヨーク400の特徴は、1.95インチ(49.408mm)の範囲の襟部内径404、2.6インチ(66.091mm)の範囲の中心間寸法406、5.26インチ(133.72mm)の範囲の幅寸法408、7.87インチ(199.817mm)の範囲の長さ寸法403、0.66インチ(16.700mm)の範囲の高さ寸法412、そして、0.01から0.05インチの範囲、好ましくは約0.03インチ(0.8mm)の厚さ寸法414、である。
【0034】
図5は、複数の襟部502を有する薄い缶ヨーク500が例示される。ヨーク500は、1.91インチ(48.408mm)の範囲の襟部内径504、2.48インチ(63.09mm)の範囲の中心間寸法506、5.16インチ(131.0mm)の範囲の幅寸法508、7.64インチ(194.1mm)の範囲の長さ寸法503、0.66インチ(16.7mm)の範囲の高さ寸法512、および0.01から0.05インチの範囲、好ましくは約0.03インチ(0.8mm)の厚さ寸法414、で特徴付けられる。
【0035】
図6は、複数の襟部602および単一の指穴604を含む飲料向け4本パック用ヨーク600を示している。
【0036】
図7では、各襟部702を有する4缶用ヨーク700が例示される。ヨーク700は、1.91インチ(48.408mm)の範囲の襟部内径703、2.6インチ(66.09mm)の範囲の各中心間寸法704および706、5.28インチ(134.0mm)の範囲の幅寸法708、5.28インチ(134.0mm)の範囲の長さ寸法710、0.66インチ(16.7mm)の範囲の高さ寸法714、および0.01から0.05インチ、好ましくは約0.03インチ(0.8mm)の範囲の厚さ寸法715、により特徴付けられる。
【0037】
図8では、雄側の真空成形ダイの構成部802が例示され、図中、複数の襟部プラグ804、繊維粒子が完成ヨーク品の形状にそって集積するように構成された金網806、および各指穴プラグ808が示される。
【0038】
図9では、雄側の乾燥プレス構成部900が例示され、この図には、乾燥サイクル中に種々の実施形態に係る飲料向け繊維系ヨークを乾燥するのに用いられる襟部プラグで、完成ヨーク品904を押し付けて乾燥させる各襟部プラグ902も例示されている。
【0039】
図10では、雌側の乾燥プレス構成部1000が例示され、図中、完成ヨーク品を固定するのに用いられる、
図9の雄側プラグに対応する受け側の雌側レセプター1004が示され、さらに複数の通気孔1006も示されている。
【0040】
当業者であれば、レセプター1004(
図10)の内径とプラグ804(
図8)の外径との径差を許容範囲内に厳密に制御すれば、得られる襟部の内径部をきれいな切断面に仕上げることができ、その後のダイ切削は必要ないことが理解される。
【0041】
先に簡便に述べたように、本発明に係る持ち運び用ヨークを真空成型するのに用いられる種々のスラリーには、所望する性能特性を完成ヨーク品に付与するための化学成分とともに、パルプと水とを混合した繊維系混合物が含まれる。元繊維として、少なくとも、軟材(SW)、バガス、竹、古段ボール(OCC)、新聞紙(NP)のいずれか1つまたはそれらの組み合わせが挙げられる。あるいは、元繊維は、係る以下のリソースから選択することができる。その全内容は以下の文献に記載されており、その中から選択することができる。たとえば「リグノセルロース繊維および木材ハンドブック:最近の環境に適した再生可能材料」、Mohamed、Naceur BelgacemおよびAntonio Pizzi編(Scrivener Publishing、LLC版)、詳しくは下記参照のこと、
books.google.com/books?id=jTL8CwAAQBAJ&printsec=frontcover#v=onepage&q&f=false;また「ホワイトペーパーおよびボードの製造における蛍光増白剤および濃淡着色剤の効率的な使用」、Liisa Ohlsson、Robert Federe著、2002年10月8日のAfrican Pulp and Paper Weekにて発行、詳しくは下記参照のこと、
tappsa.co.za/archive/APPW2002/Title/Efficient use of fluorescent w/efficient use of fluorescent w.html;さらに、Cellulosic Pulps、Fibers and Materials:Cellucon’98予稿集、J F Kennedy、G O Phillips、P A Williams著、200 By Woodhead Publishing Ltd.版、詳しくは下記参照のこと、
books.google.com/books?id=xO2iAgAAQBAJ&printsec=frontcover#v=onepage&q&f=false;さらに、1992年12月8日発行の「製紙パルプの自由度を高めるための酵素および凝集剤の適用」と題された米国特許第5,169,497号。
【0042】
湿式または乾式プレスにより製造される真空成型容器の場合、OCCおよびNPといった繊維系素材を使用することができ、そのOCC成分量は50%~100%、好ましくはOCC約70%とNP30%であり、これに加えて水分/撥水剤は1重量%~10重量%、好ましくは約1.5%~4%、最も好ましくは約4%の範囲である。好ましい実施形態として、水分/吸湿防止剤には、アルキルケテンダイマー(AKD)(例えば、AKD 80)および/または長鎖ジケテンが含まれていてもよく、これらの化合物は、下記から入手可能である:
FOBCHEM(fobchem.com/html_products/Alkyl-Ketene-Dimer%EF%BC%88AKD-WAX%EF%BC%89.html#.VozozvkrKUk)及び
Yanzhou Tiancheng Chemical Co.,Ltd. (yztianchengchem.com/en/index.php?m=content&c=index&a=show&catid=38&id=124&gclid=CPbn65aUg8oCFRCOaQodoJUGRg)。
【0043】
成型された繊維系ヨークに特定の色を与えるために、カチオン染料または繊維反応性染料をパルプに添加することができる。Procion MXなどの繊維反応性染料は、分子レベルで繊維と結合し化学的に布の一部となる。また、塩、ソーダ灰を追加したりおよび/またはパルプの温度を上げたりすると、吸収された染料が生地にさらに固定され、色のにじみを防ぎ、かつ色の深みを増すのに役立つ。
【0044】
構造上の剛性を高めるために、デンプン成分、例えばTopcat(登録商標)L98カチオン性添加剤、Hercobond、およびTopcat(登録商標)L95カチオン性添加剤(アイオワ州Cedar RapidsにあるPenford Products Co.から入手可能)として市販されている液体デンプンをスラリーに添加することができる。あるいは、液体デンプンと、Penpond(登録商標)カチオン添加剤およびPAF 9137 BRカチオン添加剤(これもアイオワ州Cedar RapidsにあるPenford Products Co.から入手可能)などの低電荷液体カチオン澱粉とを組み合わせて使用することもできる。
【0045】
上記に加えてまたは上記の代替として、Topcat L95を重量%で0.5%~10%、好ましくは約1%~7%の範囲で添加することができるが、特に湿潤環境において強度を維持する必要がある製品の場合、その添加量は最も好ましくは約6.5%で、それ以外の場合の最も好ましい量は約1.5%~2.0%である。
【0046】
Topcat L95やHercobondなどの乾燥強度添加剤は、繊維や微粉と水素結合およびイオン結合の両方を形成する変性ポリアミンから作られる。乾燥強度添加剤は、乾燥強度、排水性、強度保持力を高めるのに役立ち、陰イオン、疎水性物質、サイジング剤を繊維製品に固定するのにも効果的である。前述の添加剤は重量%として、0.5%~10%、好ましくは約1%~6%、最も好ましくは約3.5%の範囲で添加することができる。さらに、ウェットプロセスとドライプロセスの両方において、湿潤強度添加剤、たとえばKeymene 577などのポリアミドーエピクロロヒドリン(PAE)樹脂を配合した溶液、またはAshland Speciality Chemical Products(ashland.com/products)から入手可能な類似の成分を配合した溶液を追加することで効果が得られる。好ましい実施形態として、Kymene 577を乾燥強度添加剤の投与と共に、体積%で0.5%~10%、好ましくは約1%~4%、最も好ましくは約2%または等量の範囲で添加することができる。Kymene 577は、一分子あたり平均2つ以上のアミノ基および/または第4級アンモニウム塩基を含むポリカチオン性材料のクラスに属する。このようなアミノ基は、酸性溶液中でプロトン化してカチオン種を生成する傾向がある。ポリカチオン性材料の他の例としては、アジピン酸とジメチレントリアミンとを縮合して得られるアミノ基含有ポリアミドのエピクロロヒドリンによって変性されたポリマーが含まれ、Hercules社からHercosett 57として、さらにCiba-Geigy社からCatalyst 3774として市販されている。
【0047】
完成ヨーク品の強度を上げるために、無機塩などの乾燥強度添加剤(たとえば下記から入手可能なHercobond 6950(solenis.com/en/industries/tissue-towel/innovations/hercobond-dry-strength-additives/)、さらに下記も参照のこと、http:/www.sfm.state.or.us/CR2K_SubDB/MSDS/HERCOBOND_69 50.PDF)を、0.5重量%~10重量%、好ましくは約1.5%~5%、最も好ましくは約4重量%の範囲で使用することができる。
【0048】
上記したように、スラリー組成と、襟部間にリブ等を設けるといった構造上の特長とを組み合わせることで、襟部をたとえ湿潤環境下、長時間使用してもその高剛性は維持される。
【0049】
本発明を前述したような実施形態により説明してきたが、本発明がそれらの実施形態に限定されないことは言うまでもない。例えば、本発明の様々な形状上の特徴および化学的特徴は本発明の知見に基づいて調整することができ、追加用途にも適応可能である。
【0050】
かくして、飲料向けヨークの製造方法が提供される。具体的には、ウェブによって相互接続された複数の襟部を有するヨークの鏡像を備えて構成されるモールド上で金網を形成すること、この金網を繊維系スラリー浴に浸漬すること、金網全体を真空引きし、繊維粒子を金網表面に蓄積させること、およびスラリー浴から金網を取り除く工程を含む方法であって、スラリーは、1.5重量%~4重量%の範囲の水分/吸湿防止成分を含む。
【0051】
一実施形態として、上記スラリーは約4%の範囲の吸湿防止成分を含む。
【0052】
一実施形態として、上記吸湿防止成分はアルキルケテンダイマー(AKD)を含む。
【0053】
一実施形態として、上記吸湿防止成分はアルキルケテンダイマー(AKD)80を含む。
【0054】
一実施形態として、上記スラリーはOCCとNPの繊維系素材をOCC/NPの比率が0.5/9.5の比率の範囲で含む。
【0055】
一実施形態として、上記スラリーは、1重量%~7重量%の範囲の乾燥強度成分をさらに含む。
【0056】
一実施形態として、上記デンプン成分は、カチオン性液状デンプンを含む。
【0057】
一実施形態として、上記スラリーは、1重量%~4重量%の範囲のKymene(例えば、Keymene 577)などの湿潤強度成分をさらに含む。
【0058】
一実施形態として、水分/吸湿防止剤は、AKDを約4%の範囲含み、AKDは希釈溶液(例えば、1:10 (ADK:水))としてパルプスラリーに添加してもよく、スラリーはカチオン性液状デンプン成分を1%~7%の範囲含む。
【0059】
一実施形態として、スラリーはさらに剛性成分を1重量%~5重量%の範囲含む。
【0060】
本明細書において、「例示的」という言葉は、単なる例または実例として、または例などを使って説明するのに役立つことを意味する。本明細書において「例示」として実施することは、必ずしも他の実施よりも好ましいまたは有利であると解釈されるべきものではなく、また文字通り複製されなければならないモデルとして解釈されるのを意図するものではない。
【0061】
前述の詳細な説明により、当業者には本発明の種々の実施形態を実施するための便利なロードマップが提供されるが、上記の特定の実施形態は単なる例であり、本発明の範囲、適用可能性、または構成がこれらの実施形態によって限定されることをなんら意図するものでないことが理解される。これに対し、本発明の範囲から逸脱することなく、記載された要素の機能および構成に様々な変更を加えることができる。