(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】ラビリンスピストン圧縮機
(51)【国際特許分類】
F04B 25/00 20060101AFI20241001BHJP
F04B 39/10 20060101ALI20241001BHJP
【FI】
F04B25/00
F04B39/10 M
(21)【出願番号】P 2021516583
(86)(22)【出願日】2019-09-24
(86)【国際出願番号】 EP2019075774
(87)【国際公開番号】W WO2020064781
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2022-09-05
(32)【優先日】2018-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】592229502
【氏名又は名称】ブルクハルト コンプレッション アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100116322
【氏名又は名称】桑垣 衛
(72)【発明者】
【氏名】フォーザー、アレクサンドル
(72)【発明者】
【氏名】シュルツ、ライナー
(72)【発明者】
【氏名】ブルンナー、サンドロ
【審査官】丹治 和幸
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第03632237(US,A)
【文献】特開2011-153563(JP,A)
【文献】特表2017-522499(JP,A)
【文献】米国特許第04627795(US,A)
【文献】米国特許第05239551(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0148430(US,A1)
【文献】特開2016-153637(JP,A)
【文献】特表2011-517749(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 1/00- 7/06、
25/00-37/20、
39/00-39/16、
41/00-41/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダ(10)と、前記シリンダ(10)内に配置されたピストン(20)と、ピストンロッド(24)とを備えるラビリンスピストン圧縮機(1)であって、
前記ピストンロッド(24)は長手方向(L)に延びて前記ピストン(20)に接続されており、
前記ピストン(20)は前記シリンダ(10)内で前記長手方向(L)に往復動可能であり、
前記シリンダ(10)は第1シリンダカバー(11)を備えており、
前記第1シリンダカバー(11)には入口弁(90)および出口弁(91)が配置されており、
前記入口弁(90)および前記出口弁(91)は、前記ピストンロッド(24)に沿って前記長手方向(L)に延びる対称面(S)に対して対称に配置されており、
前記入口弁(90)および前記出口弁(91)は、前記対称面(S)に対して傾斜して延びるように前記第1シリンダカバー(11)に配置されており、
外部から前記シリンダ(10)に流体を供給するために、または前記シリンダ(10)から外部に流体を吐出するために、外部につながる
とともに前記ラビリンスピストン圧縮機の入口または出口を構成するフランジ(14)は、搬送される流体の流体流れ方向(F)において前記入口弁(90)の
直接上流に、または前記流体流れ方向(F)において前記出口弁(91)の
直接下流に配置されている、
ラビリンスピストン圧縮機。
【請求項2】
前記シリンダ(10)は第2シリンダカバー(12)を備えており、
前記第2シリンダカバー(12)には、前記入口弁(90)および前記出口弁(91)が前記対称面(S)に対して対称に配置されており、
前記シリンダ(10)および前記ピストン(20)はこのようにして複動式に設計されている、
請求項1に記載のラビリンスピストン圧縮機。
【請求項3】
前記シリンダ(10)と前記ピストン(20)とのうちの少なくとも一方は、熱伝導率が100~300W/m・Kの範囲にある金属製である、
請求項1または2に記載のラビリンスピストン圧縮機。
【請求項4】
第2シリンダカバー(12)はスペーサ(40)を介してキャリアハウジング(60)に接続されており、前記第2シリンダカバー(12)は前記スペーサ(40)によって前記キャリアハウジング(60)から距離を置いて保持されており、
前記スペーサ(40)は、前記対称面(S)に対して対称に配置されている少なくとも2つの支持アーム(42,43)を備えており、前記支持アーム(42,43)は前記長手方向(L)に延びて前記第2シリンダカバー(12)に接続されている、
請求項1~3のいずれか一項に記載のラビリンスピストン圧縮機。
【請求項5】
前記第2シリンダカバー(12)は、前記第2シリンダカバー(12)の外縁(12i)に配置された取付点(12e,12f)を有しており、前記取付点に前記支持アーム(42,43)が取り付けられており、
前記取付点(12e,12f)は、前記対称面(S)に対して対称に配置されている、
請求項4に記載のラビリンスピストン圧縮機。
【請求項6】
前記スペーサ(40)はU字型であり、前記スペーサ(40)は前記長手方向(L)に延びる2つの前記支持アーム(42,43)を有しており、
前記第2シリンダカバー(12)は2つの前記取付点(12e,12f)を有している、
請求項5に記載のラビリンスピストン圧縮機。
【請求項7】
前記取付点(12e,12f)のそれぞれは、10°~30°の範囲で前記第2シリンダカバー(12)の周方向の幅(C)を有する、
請求項5または6に記載のラビリンスピストン圧縮機。
【請求項8】
前記シリンダ(10)は、前記第1シリンダカバー(11)、第2シリンダカバー(12)、およびシリンダジャケット(13)、を含む少なくとも3つの部分を備えており、
前記シリンダジャケット(13)は、前記第1シリンダカバー(11)と前記第2シリンダカバー(12)との間に配置されている、
請求項1~7のいずれか一項に記載のラビリンスピストン圧縮機。
【請求項9】
前記ピストン(20)は、第1ピストンカバー(21)、第2ピストンカバー(22)、および前記第1ピストンカバー(21)と前記第2ピストンカバー(22)との間に配置されたピストンスカート(23)とを含む少なくとも3つの部分を備えており、
前記ピストンスカート(23)は、少なくとも部分的にラビリンス状の外面(23a)を有している、
請求項1~8のいずれか一項に記載のラビリンスピストン圧縮機。
【請求項10】
2つのピストンカバー(21,22)である前記第1ピストンカバー(21)および前記第2ピストンカバー(22)のうちの少なくとも1つは、関連するシリンダカバー(11,12)に向かって突出する凸状のピストン端面(21a,22a)を有し、
関連する前記シリンダカバー(11,12)は、対応して突出したシリンダカバー外側面(11c,12c)を有しており、または前記ピストン端面(21a,22a)に対して対応して後退するシリンダカバー内側面(11d,12d)を有している、
請求項9に記載のラビリンスピストン圧縮機。
【請求項11】
第2シリンダカバー(12)は、前記第2シリンダカバー(12)の中心に、前記長手方向(L)に延び、前記ピストンロッド(24)が沿って延びる通路開口部(12g)を有し、
少なくとも1つのスタッフィングボックス室(50)は、前記第2シリンダカバー(12)の外側で前記通路開口部(12g)の下流の前記長手方向(L)に配置されている、
請求項1~10のいずれか一項に記載のラビリンスピストン圧縮機。
【請求項12】
前記入口弁(90)、前記出口弁(91)、および前記フランジ(14)のうちの少なくとも1つは、前記入口弁(90)、前記出口弁(91)、前記フランジ(14)と、前記第1シリンダカバー(11)または第2シリンダカバー(12)との間の熱抵抗を増加させるために、前記第1シリンダカバー(11)または前記第2シリンダカバー(12)上に部分的にのみ載っている、
請求項1~11のいずれか一項に記載のラビリンスピストン圧縮機。
【請求項13】
前記ピストン(20)が配置された複数のシリンダ(10)は、共通のキャリアハウジング(60)上に配置され、前記キャリアハウジング(60)内に配置された共通のクランクシャフト(61)によって駆動される、
請求項4~12のいずれか一項に記載のラビリンスピストン圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラビリンスピストン圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
液化天然ガスは、英語で「Liquefied Natural Gas」、略して「LNG」とも呼ばれ、少なくとも-160℃の温度まで冷却された天然ガスであり、このような低温では液体の凝集した状態である。特許文献1には、天然ガス燃料を供給するためのピストン圧縮機が開示されており、この天然ガス燃料は、液体天然ガスから放出される蒸発ガスを往復動圧縮機で圧縮することによって得られる。このようなピストン圧縮機は、それ自体が非常に確立されたものであり、典型的には1バール(0.1MPa)の圧力で約-160℃の温度を持つ液体天然ガスの放出蒸気ガスを、好ましくは100バール(10MPa)~500バール(50MPa)の間の範囲の可変の最終圧力、好ましくは210バール(21MPa)~350バール(35MPa)の間の範囲の最終圧力に圧縮することができる。このような往復動圧縮機は、天然ガスを好ましくは-160℃~+100℃の広い温度範囲で、吸入および圧縮することができるという利点がある。圧縮機は、天然ガスを広い適用範囲で圧縮するように使用されることができる。例えば、このような往復動圧縮機は、-160℃の温度を持つ入口流体を、-40℃の温度を持つ圧縮流体に圧縮することができる。このアプリケーションでは、ピストン圧縮機の入口と出口の間に120℃の範囲の温度差がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
今日まで、入口流体と出口流体との間に高い温度差がある流体を圧縮するのに適した、コスト効率の良い往復動圧縮機、特にラビリンスピストン圧縮機を作ることは、大きな技術的課題となっていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の課題は、入口と出口の間に高い温度差があるにもかかわらず流体を圧縮するのに適しており、経済的にも有利な往復動圧縮機を設計することにある。
この課題は、請求項1の特徴を有するラビリンスピストン圧縮機によって解決される。従属請求項2~13は、さらに有利な実施形態に関する。
【0006】
この問題は、特に、シリンダと、シリンダ内に配置されたピストンと、ピストンロッドとを備えているラビリンスピストン圧縮機であって、ピストンロッドは長手方向に延びてピストンに接続され、ピストンはシリンダ内で長手方向に往復移動可能であり、シリンダは第1シリンダカバーを備えており、第1シリンダカバー内には入口弁と出口弁が配置され、入口弁と出口弁はピストンロッドに沿って長手方向に延びる対称面に対して対称に配置されているラビリンスピストン圧縮機によって解決される。
【0007】
ラビリンスピストン圧縮機は、ピストンとシリンダを備えており、少なくともピストンとシリンダのシリンダ壁とはラビリンスシールで形成されている。ラビリンスシールは、非接触型のシールである。密封効果は、密封される隙間を通る流路の延長に基づいており、それによって流れの抵抗が実質的に増加する。この経路延長は、ピストンの表面構造によって、および必要に応じてシリンダ壁の表面構造によって実現される。好ましくは、ピストンの表面には、ピストンの長手方向に互いに間隔をあけて配置された複数の周方向の凹部が設けられている。非接触式であるので、絶対的な締め付けはできない。一方、ラビリンスシールを備えているラビリンスピストン圧縮機では、ピストンとシリンダ壁とが互いに接触しないため、ラビリンスシールが非接触であり、ピストンとシリンダ壁との間に潤滑油を必要としないという利点がある。このようなラビリンスピストン圧縮機では、流体を圧縮するための潤滑剤が不要であり、特にオイルが不要なため、流体のいわゆるオイルフリー圧縮が可能である。このようなラビリンスピストン圧縮機のピストンでは、ラビリンスシールがシール効果を発揮するので、シールリングが無い。
【0008】
本発明によるラビリンスピストン圧縮機は、吸い込まれる流体の温度と吐出される圧縮流体の温度が、例えば100℃~120℃あるいはそれ以上の大きな温度差があっても、安全に運転できるという利点がある。本発明によるピストン圧縮機は、適用された温度差によってピストン圧縮機の構成要素に実質的な熱応力や歪みが発生しないように設計されている。または、ピストン圧縮機は、適用された温度差によって引き起こされるピストン圧縮機の構成要素の膨張が、個々の構成要素が温度差によって相対的にほとんど変位しないような方法で行われるように設計されていることであり、このことは、ラビリンスピストンの外周面と、ラビリンスピストンの外周面に面するシリンダの内周面との間のギャップが特に小さいため、ラビリンスピストン圧縮機にとって特に重要である。本発明によるラビリンスピストン圧縮機は、好ましくは、温度差にかかわらず、安全かつ確実に運転することができる。
【0009】
本発明による往復動圧縮機は、少なくとも1つの入口弁と少なくとも1つの出口弁とがシリンダカバー内に配置されているので、圧縮されるべき流体が入口弁を通って流れた後にシリンダ内部に直接流入するという利点があり、それぞれ圧縮された流体が出口弁を通ってシリンダ内部からすぐに出ていく。よって、ピストン圧縮機には、流体とピストン圧縮機の間で温度伝達が行われる可能性のあるガスデッドスペースやダメージスペースが極めて小さいか、あるいは全くないので、ピストン圧縮機には流体と熱交換する可能性のある接触面が比較的少なくなる。したがって、本発明によるピストン圧縮機では、圧縮されることになる流体の流入、圧縮されることになる流体の圧縮、および圧縮された流体の吐出に必須の接触面を除いて、ピストン圧縮機と搬送される流体との間の追加の接触面および接触点が無視できるか、または全くないことが好ましい。これによって、流体とピストン圧縮機との間の熱伝達が制限される。さらに、往復動圧縮機のシリンダおよび/またはピストンは、有利なことに、100~300W/m・Kの範囲の熱伝導率を有する金属製、好ましくはアルミニウムまたはアルミニウム合金製である。比較的高い熱伝導率は、往復動圧縮機の運転中に往復動圧縮機の構成要素において温度平衡が確立され、その温度差が、流入する流体と、圧縮されて流出する流体との間の温度差よりも大幅に小さくなるという結果をもたらす。特に有利なのは、シリンダとピストンが同じ材料製であることである。
【0010】
入口弁と出口弁は、シリンダの中心線に沿って延びる対称面に対して、シリンダ内で対称に配置されていることがさらに好ましい。その結果、対称面の領域で往復動圧縮機を動作させると、流入する流体の温度と、流出する流体の温度との間に存在する平均温度が確立され、シリンダ内で発生する可能性のある最大の温度差が減少することになる。
【0011】
さらに有利な実施形態では、流体を供給または吐出する役割を果たす入口弁または出口弁に配置されたフランジまたはホースは、シリンダに対する接触面が小さく、これによって、フランジまたはホースとシリンダとの間の熱伝達が低減される。
【0012】
往復動圧縮機は、クランクシャフトと少なくとも1つのクロスヘッドとが好ましく配置されたキャリアハウジングを備えている。本発明によるピストン圧縮機は、キャリアハウジングとシリンダとに順に接続されたスペーサを備えており、これは、一方ではシリンダをキャリアハウジングに対して規定の位置に保持し、他方ではシリンダとキャリアハウジングとの間のあらゆる温度の流れを低減するためのものである。特に有利な実施形態では、スペーサは、平均温度または実質的に平均温度が適用されるような領域でシリンダに接続されている。その結果、往復動圧縮機の運転中にシリンダとキャリアハウジングとの間のスペーサで発生する温度差は制限内に保たれ、スペーサは好ましくは対称面に対して対称な熱分布を持つように配置され、これはスペーサに印加される温度によるスペーサの歪みがほとんどないことを意味している。したがって、ピストン式圧縮機の運転中には、特に非対称な熱膨張または変形は起こらないか、または無視できるほど小さいが、有利にはせいぜい印加された温度による対称面に対して対称な熱膨張または変形が起こり、この効果は特にシリンダ、ピストン、およびスペーサで発生する。したがって、キャリアハウジングとシリンダの間を延びているピストンロッドも変形しない。
【0013】
有利な実施形態では、シリンダおよび/またはピストンは、アルミニウムまたはアルミニウム合金製であるが、これらの金属は、熱伝導性が非常に優れている。また、熱伝導が非常に良いため、往復動圧縮機の連続運転中に、圧縮機の個々の部品の平均温度または平均動作温度が非常に早く確立され、それによって温度のピークが回避されるという利点がある。
【0014】
本発明によるピストン圧縮機は、好ましい実施形態では、比較的少ない部品しか必要とせず、可動部品を比較的低質量になるように選択できるという利点がある。これによって、本発明によるピストン圧縮機を、例えば毎分1800回転までの高速で動作させることができるという利点もある。
【0015】
以下、本発明によるピストン圧縮機を、実施形態の例を参照して詳細に説明する。
実施形態の説明に使用した図面を示す。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】断面線A-Aに沿ったピストン圧縮機の縦断面図。
【
図2】
図1のピストン圧縮機の詳細図で、特にシリンダとピストンを示す。
【
図6】断面線A-Aに沿ったピストン付きシリンダの縦断面図。
【
図7】交差線B-Bに沿った、ピストン付きシリンダのさらなる縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
一般的に、同じ部品には同じ参照符号を付けて図面に記載している。
図1は、シリンダ10と、シリンダ10の中に配置されたピストン20とを備えているピストン圧縮機(往復動圧縮機)1を通る縦断面を示している。ピストン圧縮機1は、軸受部63aを有するクロスヘッド63が中に配置されたキャリアハウジング60を備えており、クロスヘッド63はクランクシャフト61およびコネクティングロッド62を介して駆動可能である。ピストン圧縮機1は、支持部41を有するスペーサ40を備えており、スペーサ40は、シリンダ10とキャリアハウジング60とを接続し、
図1に示すようにピストン圧縮機1が直立して配置されたときにシリンダ10を支持するようになっている。ピストン圧縮機1は、クロスヘッド63とピストン20とを接続してピストン20を駆動するピストンロッド24を備えている。ピストン圧縮機1は、ピストンロッド24の中心に、ピストンロッド24に沿って延びる長手方向Lの軸線を有している。シリンダ10は、第1シリンダカバー11と、第2シリンダカバー12と、およびその間に配置されたシリンダジャケット13とを備えている。第1シリンダカバー11には、入口弁90および出口弁91がそれぞれ配置された第1入口弁受入れ開口部11aおよび第1出口弁受入れ開口部11bが形成されている。さらに、第1入口弁受入れ開口部11aおよび第1出口弁受入れ開口部11bのそれぞれには、フランジ14が接続されており、このフランジ14は、シリンダ10の外部と、シリンダ10の内部空間(10a)との間で流体を供給または吐出する役割を果たしている。流体の供給や吐出は、例えば、それぞれのフランジ14に接続されたホース(15)を介して行うことができる。また、第2シリンダカバー12は、入口弁90および出口弁91がそれぞれ配置された第2入口弁受入れ開口部12aおよび第2出口弁受入れ開口部12bを有している。また、第2シリンダカバー12は、ピストンロッド24がその長手方向Lに移動可能に配置される通路開口部12gを有する中央部12hを有している。
【0018】
シリンダ10またはピストン20は、ピストン20が第1シリンダ内部空間10aと第2シリンダ内部空間10bとを区画する複動式である。さらなる実施形態では、第1シリンダカバー11および第2シリンダカバー12を長手方向Lに長くなるように構成することで、シリンダジャケット13を省略することができる。
【0019】
中央部12hの長手方向Lの下流側には、第1、第2、および第3スタッフィングボックス室50,51,52が配置されている。第1、第2、および第3スタッフィングボックス室50,51,52は、中央部12hに配置されている。スペーサ40はスペーサ内部40aを有しており、スペーサ内部40aには、好ましくはガイドを備えていて概略的にしか示されていないオイルスクレーパパッキン55が配置されており、このオイルスクレーパパッキン55は、ピストンロッド24を取り囲んでいる。また、ピストンロッド24には、オイルシールド54が配置されている。キャリアハウジング(サポートハウジング)60には、クロスヘッド63の摺動面を形成するボア60aが設けられており、よってクロスヘッド63と、クロスヘッド63に接続されたピストンロッド24と、およびピストンロッド24に接続されたピストン20とを、長手方向Lに往復動可能になっている。好ましくは、クロスヘッド63のための摺動面は潤滑されており、この潤滑は詳細には示されていないが、好ましくは油である。
【0020】
シリンダ10および/またはピストン20、さらに好ましくはキャリアハウジング(サポートハウジング)60およびクロスヘッド63は、好ましくは100~300W/m・Kの範囲の熱伝導率を有する金属製、好ましくはアルミニウムまたはアルミニウム合金製である。有利なことに、シリンダ10とピストン20、さらに好ましくはキャリアハウジング(サポートハウジング)60とクロスヘッド63も同じ材料製であるので、熱膨張の点で同じ特性を持つことができる。
【0021】
図2は、
図1によるピストン圧縮機1の詳細図であり、本質的には、シリンダ10、ピストン20、フランジ14、および入口弁90および出口弁91を示している。可能な一実施形態では、シリンダ10およびピストン20は、例えば、1つの入口弁90および1つの出口弁91のみが第1シリンダカバー11に配置されているという点で、単動式であるように設計されている。しかしながら、特に有利には、シリンダ10およびピストン20は、
図2に示すように、第1シリンダ内部空間10a、第2シリンダ内部空間10b、および2つの入口弁90および2つの出口弁91を備えた複動式設計である。本発明によれば、入口弁90および出口弁91は、このように、少なくとも第1シリンダカバー11または第2シリンダカバー12に配置されており、好ましくは、
図2に示すように、入口弁90および出口弁91は、2つのシリンダカバーである第1シリンダカバー11および第2シリンダカバー12のそれぞれに配置されている。第1シリンダカバー11および第2シリンダカバー12のそれぞれにおいて、入口弁90および出口弁91は、ピストンロッド24に沿って長手方向Lに延びる対称面Sに対して対称に配置されていることが好ましい。好ましくは、両入口弁90だけでなく、両出口弁(吐出弁)91もそれぞれ、
図2に示すように、シリンダ10の同じ側、つまり、対称面Sの左側に両方、そして対称面Sの右側に両方にそれぞれ配置されている。
【0022】
本発明による往復動圧縮機は、入口弁90を介して流入する入口流体FEと、出口弁91を介して流出する出口流体FAとが例えば100℃~150℃の間の高い温度差を有する流体を、圧縮するのに特に適している。例えば、入口流体FE、例えば液化天然ガスの放出ガスは、-160℃の温度を有し、出口流体FAは-40℃の温度を有し、120℃の温度差を有するようにしてもよい。入口弁90および出口弁91が対称面Sに対して対称的に配置されていることは、シリンダ10およびピストン20が、対称面Sの領域またはピストンロッド24に沿って延びる長手方向Lの軸線の領域のそれぞれで動作中に平均的な温度を想定するという利点があり、シリンダ10およびピストン20の長手方向Lの軸線に対して垂直な温度は、通常、入口弁90に向かって減少し、出口弁91に向かって増加する。好ましくは、長手方向Lの軸線の方向において、シリンダ10は小さな温度差しか示さない。シリンダ10およびピストン20が動作中に長手方向Lの軸線の領域で平均的な温度を有することの結果、シリンダ10、ピストン20、およびピストンロッド24は、これらの部分に存在する温度差に起因する歪みや、温度差に起因する長さの変化を、全く無いとするか無視することができる。有利な実施形態では、シリンダ10および/またはピストン20は、例えばアルミニウムのような熱伝導性の良い材料製であり、これによって、動作中にシリンダ10およびピストン20にかかる温度差を低減できるという利点がある。
【0023】
有利なことに、本発明によるピストン圧縮機は、周囲温度で運転される。本発明による往復動圧縮機が液体天然ガスの放出ガスを圧縮するために使用される場合、シリンダ10の外面は周囲温度の空気で加熱され、これによって、特にシリンダ10または少なくとも第1シリンダカバー11および第2シリンダカバー12が熱の良導体の材料製である場合には、シリンダ10に加わる温度差がさらに小さくなる。
【0024】
ピストン圧縮機(往復動圧縮機)1において、ガス空間とは、流体供給ライン15と入口弁90との間の空間、または出口弁91と流体吐出ライン16との間の空間であると理解される。有利には、外部からシリンダ10に流体が供給されるために介される流体供給ライン15またはフランジ14が、流体流れ方向Fで入口弁90のすぐ上流に配置されているか、またはシリンダ10から外部に流体が吐出されるために介される流体吐出ライン16またはフランジ14が、流体流れ方向Fで出口弁91のすぐ下流に配置されているため、本発明によるピストン圧縮機1にはガス空間が無いか、または非常に小さい。このように、入口弁90のすぐ上流や出口弁91のすぐ下流までは、搬送される流体は、シリンダ10と直接に熱伝導するように接触することがなくなる。これによって、シリンダ10が冷やされる深さが少なくなるという効果がある。
【0025】
さらなる有利な実施形態では、構成要素である入口弁90、出口弁91、およびフランジ14のうちの少なくとも1つは、入口弁90、出口弁91、および/またはフランジ14を通って流れる冷たい流体によって第1シリンダカバー11および第2シリンダカバー12から低減された程度でしか熱を取り出さないように、第1シリンダカバー11および第2シリンダカバー12に対する熱抵抗が増加するように設計されている。
図3は、熱抵抗を増加させるための実施形態の詳細図である。出口弁(吐出弁)91は、第1シリンダカバー11に完全には接触せず、弁部分面91aを介して部分的に接触しているだけなので、出口弁(吐出弁)91と第1シリンダカバー11との間の熱抵抗が大きくなっている。同様に、入口弁90を第1シリンダカバー11または第2シリンダカバー12に配置することも可能である。熱抵抗を増加させる別の可能性として、
図3に示すように、フランジ14も第1シリンダカバー11に完全に接触せず、フランジ部分面14aを介して第1シリンダカバー11に部分的に接触するだけで、フランジ14と第1シリンダカバー11の間の熱抵抗を増加させることができる。同様に、フランジ14を第2シリンダカバー12に配置することも可能である。有利には、本発明によるピストン圧縮機(往復動圧縮機)1は、周囲温度で運転されるので、シリンダ10は、例えば放出蒸気ガスの搬送および圧縮中に周囲空気によって加熱され、それによって、上述した熱抵抗の増加は、シリンダ10が、シリンダ10を流れる流体(F)に起因して低減された範囲で冷却されるという利点をもたらす。よって、シリンダ10は、動作中にさらに高い温度を有し、また好ましくは、より均一な温度分布を有し、これによって、例えば、印加される温度差に起因するピストン圧縮機(往復動圧縮機)1の構成要素の反り、特に、シリンダ10、ピストン20、ピストンロッド24、またはスペーサ40の反りのリスクが低減される。
【0026】
有利な実施形態では、第1シリンダカバー11または第2シリンダカバー12の内面と、第1ピストンカバー21または第2ピストンカバー22の外面とは、いわゆるダメージスペースが可能な限り小さく保たれるように、互いに適合するように設計されている。
【0027】
図2および
図3に示すように、有利な実施形態では、2つのピストンカバーである第1ピストンカバー21および第2ピストンカバー22のうちの少なくとも1つは、関連する第1シリンダカバー11、第2シリンダカバー12に向かって突出する特に凸状の第1ピストン端面21aおよび第2ピストン端面22aを有している。関連する第1シリンダカバー11、第2シリンダカバー12は、対応して突出した第1シリンダカバー外側面11cおよび第2シリンダカバー外側面12cを有しているか、または第1ピストン端面21aおよび第2ピストン端面22aに対して対応して後退する第1シリンダカバー内側面11dおよび第2シリンダカバー内側面12dを有している。ピストン20の最上位置では、第1シリンダ内部空間10aがダメージスペースに相当するが、
図3から分かるように、このダメージスペースは非常に小さい。
【0028】
可能な実施形態では、第1シリンダカバー11および/または第2シリンダカバー12は、長手方向Lの軸線に対して垂直に延びる端面を有し得、この端面には、入口弁90および出口弁91が配置されている。しかし、特に有利なことに、第1シリンダカバー11および/または第2シリンダカバー12は、
図2に示すように、第1シリンダカバー11,第2シリンダカバー12内に、入口弁90および出口弁91が対称面Sに対して傾斜して配置されるように設計されている。入口弁90および出口弁91は、対称面Sに対して傾斜するように第1シリンダカバー11,第2シリンダカバー12内に配置されている。これによって、入口弁90,出口弁91を大径化して使用することが可能となり、入口弁90,出口弁91の流路抵抗を低減することができる。
【0029】
図4および
図5は、
図2と同じシリンダ10を示しているが、断面図ではなく、2つの異なる側面図である。シリンダ10は、第1シリンダカバー11、シリンダジャケット13、第2シリンダカバー12を備えている。第1シリンダカバー11および第2シリンダカバー12には複数のフランジ14が配置されている。シリンダ10は、スペーサ40を介してキャリアハウジング(サポートハウジング)60に固定的に接続されており、キャリアハウジング(サポートハウジング)60に対して間隔を空けて配置されている。図示の実施形態例では、スペーサ40は、対称面Sに対して対称的に配置された2つの第1および第2支持アーム42,43を備えており、第2シリンダカバー12は、それぞれの第1および第2支持アーム42,43に固定的に接続された2つの第1および第2取付点12e,12fを備えている。2つの第1および第2取付点12e,12fのそれぞれは、好ましくは周方向に同一形状であり、
図4に示すように、好ましくは10°以上30°以下の範囲の周方向の幅Cを有している。また、
図4には交差線B-Bの軌跡と、対称面Sの軌跡とが示されている。また、
図5には、断面線A-Aの軌跡と、第2対称面S
2の軌跡とを示している。第1および第2取付点12e,12fは、好ましくは、
図4に第2取付点12fを示すように、対称面Sに対して実質的に垂直に延びており、対称面Sに対して対称に延びるように配置される。点S
3は、第2取付点12fと対称面Sとの交点を示している。好ましくは、第2取付点12fは、点S
3に対して対称的に、また対称面Sに対して対称的に延びている。既に説明したように、ピストン圧縮機(往復動圧縮機)1の動作中、シリンダ10は、対称面Sの領域または点S
3の領域で平均温度を有している。対称的な配置によって、両方の第1および第2取付点12e,12fに同じ温度が存在するか、またはシリンダ10が同じ温度を有しているので、第1支持アーム42および第2支持アーム43も2つの第1および第2取付点12e,12fで同じ温度を有していることになる。シリンダ10と、シリンダ10に取り付けられたフランジ14とが対称的に設計されていることに加えて、2つの第1および第2取付点12e,12fが対称的に配置されていること、およびスペーサ40の第1および第2支持アーム42,43が対称的に設計されていることで、2つの第1および第2取付点12e,12fにおいて第1および第2支持アーム42,43が同じ温度になり、2つの第1および第2支持アーム42,43で互いに熱歪みが発生しないという利点がある。既に説明したように、入口流体FEと出口流体FAは、対応するフランジ14、さらにはシリンダ10、場合によってはピストン20が流体流れ方向Fに温度差を持つように、大きな温度差を持つ可能性があり、これによって、特に流体流れ方向Fに、シリンダの歪みやその構成要素の歪みが生じる可能性がある。しかし、このような歪みは、点S
3や第1および第2支持アーム42,43には全く、あるいは無視できるほど影響を与えないので、ピストン圧縮機(往復動圧縮機)1の運転中に、シリンダ10はスペーサ40によって規定の位置に保持される。特に重要なのは、ピストンロッド24が、対称面Sの領域である第2シリンダカバー(第2弁カバー)12の通路開口部12gを通過するという特徴であり、第2シリンダカバー(第2弁カバー)12の領域が平均的な温度も有しているので、通路開口部12gとピストンロッド24との間には熱的に誘発された歪みも発生しないか、ごくわずかしか発生しないはずである。
【0030】
図5では、スペーサ40は、第1支持アーム42と第2支持アーム43とを備えているU字型であるが、スペーサ40は、第2シリンダカバー12に接続され、好ましくは対称面Sに対して対称的に配置された、例えば4つ、6つ、または8つのようにより多くの支持アームを有することも可能である。より良く説明するために、
図5では第2スタッフィングボックス室51と第3スタッフィングボックス室52は示されていない。
【0031】
図6は、フランジ14のないシリンダ10とピストン20を、断面線A-Aに沿った断面で実質的に示している。
図7は、交差線B-Bに沿った断面において、フランジ14のないシリンダ10とピストン20を実質的に示している。
【0032】
シリンダ10は、第1シリンダカバー11、第2シリンダカバー12、および好ましくは筒状のシリンダジャケット13の少なくとも3つの部分を備えており、シリンダジャケット13は、第1シリンダカバー11と第2シリンダカバー12との間に配置されている。
【0033】
ピストン20は、第1ピストンカバー21と、第2ピストンカバー22と、および第1ピストンカバー21と第2ピストンカバー22の間に配置されたピストンスカート23との、少なくとも3つの部品を備えている。シリンダおよび/またはピストンのこのような層構造は、メンテナンスの際に、例えばシリンダジャケット(シリンダスカート)13およびピストンスカート23のような、かなりの摩耗が見られる部品のみを交換する必要があるため、特に有利なメンテナンスを可能にするものである。有利には、ピストンスカート23は、少なくとも部分的にラビリンス状の外面23aを有しており、これによって、ピストン圧縮機1は、ラビリンスピストン圧縮機として構成されている。さらに有利な実施形態では、ラビリンス状の外面23aの代わりに、ピストンスカート23上に少なくとも1つのシールリングが配置され、ピストンスカート23は、好ましくは、シールリングが配置される少なくとも1つの周方向の溝を有しており、これによって、ピストン圧縮機1は、リングシールされたピストン圧縮機1として構成される。
【0034】
第2シリンダカバー12は、好ましくは第2シリンダカバー12の外縁12iに、図示しない取付手段、好ましくはネジを介して第1および第2支持アーム42,43が取り付けられる第1および第2取付点12e,12fを配置している。第1および第2取付点12e,12fは、対称面Sに対して互いに対称であることが好ましい。
【0035】
有利な実施形態では、2つのピストンカバーである第1ピストンカバー21および第2ピストンカバー22のうちの少なくとも1つは、関連する第1シリンダカバー11,第2シリンダカバー12に向かって突出する特に凸状の第1ピストン端面21aおよび第2ピストン端面22aを有し、関連する第1シリンダカバー11,第2シリンダカバー12は、例えば
図2に示すように、対応して突出した第1シリンダカバー外側面11cおよび第2シリンダカバー外側面12cを有しており、または第1ピストン端面21aおよび第2ピストン端面22aに対して対応して後退する第1シリンダカバー内側面11dおよび第2シリンダカバー内側面12dを有している。
【0036】
第2シリンダカバー12は、第2シリンダカバー12の中心に、長手方向Lに延びる通路開口部12gを有し、これに沿ってピストンロッド24が延びており、好ましくは、通路開口部12gの下流の長手方向Lにおいて、第2シリンダカバー12の外側に、少なくとも1つのスタッフィングボックス室(50)が配置されており、好ましくは、複数のスタッフィングボックス室が配置されている。
【0037】
往復動圧縮機の有利な実施形態では、入口弁90、出口弁91、およびフランジ14のうちの少なくとも1つは、可能な表面積全体で第1シリンダカバー11または第2シリンダカバー12に接しておらず、入口弁90、出口弁91、フランジ14と、第1シリンダカバー11または第2シリンダカバー12との間の熱抵抗を増大させるために、部分的な表面積、すなわち可能な全表面積の一部でのみ第1シリンダカバー11または第2シリンダカバー12に接している。
【0038】
図8は、ピストン圧縮機1を側面から見た図である。これは、ピストン20が配置された2つのシリンダ10を備えており、各ピストン20はスペーサ40を介してキャリアハウジング60に接続されており、各ピストンロッド24は共通のクランクシャフト61によって駆動されている。キャリアハウジング60の下方には、オイルドレンパン64が配置されている。さらに有利な実施形態では、ピストン圧縮機(往復動圧縮機)1は、ピストン20を備えた単一のシリンダ10のみを備えているか、または対応するピストン20を備えた複数のシリンダ10、例えば3~10個のシリンダ10を備えていることもできる。
【0039】
図9は、ピストン圧縮機(往復動圧縮機)1と、電動機81と、流体供給ライン15に接続された供給マニホルド85と、流体吐出ライン16に接続された吐出マニホルド86とを備えている圧縮機ユニット80を示す。流体供給ライン15だけでなく、流体吐出ライン16も、好ましくは、温度に関連する膨張を補償するように弾性的に構成されており、これらの流体供給ライン15および流体吐出ライン16は、例えば、金属メッシュで構成されている。
【0040】
有利な実施形態では、ピストン圧縮機(往復動圧縮機)1はシリンダ10と、シリンダ10の中に配置されたピストン20と、キャリアハウジング60に搭載されたクロスヘッド63を備えたキャリアハウジング60と、シリンダ10をキャリアハウジング60に接続するスペーサ40と、長手方向Lに延びてクロスヘッド63をピストン20に接続するピストンロッド24とを備えている。スペーサ40は複数の第1および第2支持アーム42,43を備えており、第1および第2支持アーム42,43はシリンダ10に接続され、シリンダ10を支持している。有利には、シリンダ10は、長手方向Lの軸線に対して互いに対称に配置された複数の第1および第2取付点12e,12fを備えており、この第1および第2取付点12e,12fに第1および第2支持アーム42,43が取り付けられている。ピストン圧縮機は、ピストンロッド24に沿って長手方向Lに延びる対称面Sを有しており、第1および第2取付点12e,12fおよび第1および第2支持アーム42,43は、対称面Sに対して対称に配置されている。有利には、スペーサ40は、長手方向Lに延びる2つの第1および第2支持アーム42,43を有するU字型であり、シリンダ10は、第1および第2支持アーム42,43が取り付けられる2つの第1および第2取付点12e,12fを有する。有利には、各第1および第2取付点12e,12fは、シリンダ10の周方向における幅Cが10°~30°の範囲内にある。有利なことに、シリンダ10は入口弁90と出口弁91を備えており、入口弁90と出口弁91は、対称面Sに対して互いに対称である。有利には、シリンダ10は、第1シリンダカバー11だけでなく、第2シリンダカバー12も備えており、第1シリンダカバー11および第2シリンダカバー12の両方は、シリンダ10およびピストン20が複動式であるように、入口弁90だけでなく、出口弁91も備えている。
【0041】
有利には、中にピストン20が配置された複数のシリンダ10は、キャリアハウジング60上に互いに間隔を空けて配置され、それぞれが別個のスペーサ40を介してキャリアハウジング60に接続されている。製有利には、ピストンロッド24が各ピストン20に関連付けられており、キャリアハウジング60はモノブロックの形態であり、モノブロックは、ピストンロッド24の数に対応する数のボアを有し、ボアのそれぞれにクロスヘッド63が変位可能に搭載されており、各ピストン20は、それぞれのピストンロッド24を介して関連するクロスヘッド63に接続されている。有利には、モノブロックとクロスヘッド63は、100~300W/m・Kの範囲の熱伝導率を有する金属製、好ましくはアルミニウムまたはアルミニウム合金製である。好ましくは、シリンダ10および/またはピストン20は、100~300W/m・Kの範囲の熱伝導率を有する金属製、好ましくはアルミニウムまたはアルミニウム合金製である。
【0042】
シリンダ10だけでなく、シリンダ10の中に配置されたピストン20と、キャリアハウジング60に搭載されたクロスヘッド63を有するキャリアハウジング60と、シリンダ10をキャリアハウジング60に接続するスペーサ40と、長手方向Lに延びてクロスヘッド63をピストン20に接続するピストンロッド24とを備えるピストン圧縮機1は、シリンダ10とキャリアハウジング60との間に存在する熱差に起因する熱エネルギーが複数の第1および第2支持アーム42,43を介して交換されるように、有利に動作する。有利には、入口弁90を介してシリンダ10に入口流体FEが供給され、シリンダ10内に位置する流体が出口弁91を介してシリンダ10から出口流体FAとして吐出され、入口弁90と出口弁91は、ピストンロッド24の長手方向Lに沿って延びる対称面Sに対して対称に配置されている。よってシリンダ10は、対称面Sの領域で流体を送出する間に、入口流体FEの温度と出口流体FAの温度の間にある平均温度に加熱され、第1および第2支持アーム42,43は、第1および第2取付点12e,12fを介して対称面Sの領域でシリンダ10に接続されている。有利なことに、第1および第2取付点12e,12fの間の2つの中心点である点S3は、流体の送出の間、実質的に同じ温度に温められる。有利なことに、ピストンロッド24は、対称面Sの領域に延びており、これは、流体の送出の間、第1および第2取付点12e,12fと実質的に同じ温度に調温される。
【0043】
図1に示すピストン圧縮機1は、シリンダ10と、シリンダ10の内部に配置されたピストン20と、キャリアハウジング60に搭載されたクロスヘッド63を有するキャリアハウジング60と、シリンダ10とキャリアハウジング60とを接続するスペーサ40と、長手方向Lに延びてクロスヘッド63とピストン20とを接続するピストンロッド24とを備えている。スペーサ40は、長手方向Lに延びる複数の第1および第2支持アーム42,43を有し、第1および第2支持アーム42,43は、それぞれシリンダ10に向かって個別にシリンダ10に接続されている。
【0044】
シリンダ10は複数の第1および第2取付点12e,12fを有しており、それぞれの第1および第2取付点12e,12fにはそれぞれの第1および第2支持アーム42,43が取り付けられている。
【0045】
第1および第2取付点12e,12fは、長手方向Lに対して互いに対称的に配置されている。
【0046】
ピストン圧縮機1の動作方法であって、ピストン圧縮機1はシリンダ10と、シリンダ10の中に配置されたピストン20と、キャリアハウジング60によって支持されたクロスヘッド63を有するキャリアハウジング60と、シリンダ10とキャリアハウジング60とを接続するスペーサ40と、長手方向Lに延びてクロスヘッド63とピストン20とを接続するピストンロッド24とを備えており、スペーサ40は、複数の第1および第2支持アーム42,43を備えている。第1および第2支持アーム42,43はそれぞれ個別に第1および第2取付点12e,12fを介してシリンダ10に接続されている。第1および第2取付点12e,12fの間に存在する熱差による熱エネルギーは、第1および第2取付点12e,12fの間で長手方向Lに対して周方向に直接交換されず、長手方向Lに延びる第1および第2支持アーム42,43を介して交換されるようになっている。
【0047】
本方法では、入口流体FEは好ましくは-162℃と-40℃の間の範囲の温度で供給され、出口流体FAは好ましくは圧縮によって100℃と150℃の間の範囲の温度差で加熱される。
【0048】
本方法では、第1および第2取付点12e,12fはそれぞれ、対称面Sの領域に中心点としの点S3を有しており、流体の搬送中に実質的に同じ温度に調整される。
この方法では、スペーサ40は、支持部41と、長手方向Lに延びる2つの第1および第2支持アーム42,43とを備えたU字型であり、第1および第2支持アーム42,43および支持部41を介して、シリンダ10とキャリアハウジング60との間で熱エネルギーが交換される。
【0049】
本方法では、各第1および第2取付点12e,12fは、シリンダ10の周方向における幅Cが10°~30°の範囲にあり、各第1および第2取付点12e,12fは、中心点としての点S3に対して対称的に配置されているので、熱エネルギーは、第1および第2取付点12e,12fに沿って各第1および第2支持アーム42,43から周方向に伝達される。