(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】内燃エンジン
(51)【国際特許分類】
F01L 1/344 20060101AFI20241001BHJP
F02B 67/06 20060101ALI20241001BHJP
【FI】
F01L1/344
F02B67/06 J
(21)【出願番号】P 2021552896
(86)(22)【出願日】2020-02-14
(86)【国際出願番号】 IN2020050146
(87)【国際公開番号】W WO2020183486
(87)【国際公開日】2020-09-17
【審査請求日】2021-09-17
【審判番号】
【審判請求日】2023-07-07
(31)【優先権主張番号】201941009700
(32)【優先日】2019-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521196110
【氏名又は名称】ティーヴィーエス モーター カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】TVS MOTOR COMPANY LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ラクシュミ ナラシミャン,バラダッハ イエンガー
(72)【発明者】
【氏名】バラスブラマニアン,シルバリュー ロガナサン
(72)【発明者】
【氏名】ヴィシリンガム,カルナハラン
【合議体】
【審判長】山本 信平
【審判官】倉橋 紀夫
【審判官】青木 良憲
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-218924(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01L 1/34 - 1/356
F01L 9/00 - 9/04
F01L 13/00 - 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃エンジン(100)であって、
シリンダブロック(102)と、
前記シリンダブロック(102)によって画定されたシリンダ部分内で摺動可能に可動な少なくとも1つのピストンと、
前記シリンダ部分の一端を形成し、1つまたは複数の吸気バルブおよび1つまたは複数の排気バルブを支持するシリンダヘッド(103)と、
連接棒を通じて前記ピストンに接続され、前記エンジン(100)のクランクケース(101)によって回転可能に支持されたクランクシャフト(110)と、
前記シリンダヘッド(103)によって回転可能に支持されたカムシャフトアセンブリ(200)とを備え、
前記カムシャフトアセンブリ(200)は、被駆動スプロケット(205)を含み、前記カムシャフトアセンブリ(200)は、前記被駆動スプロケット(205)を通じて前記クランクシャフト(110)に接続され、前記カムシャフトアセンブリ(200)は、
第1のカム部分(201)および第2のカム部分(202)と、
少なくとも1つの吸気フランジ(220)および少なくとも1つの排気フランジ(225)であって、前記少なくとも1つの吸気フランジ(220)は、前記第1のカム部分(201)および前記第2のカム部分(202)の一方に接続され、前記少なくとも1つの排気フランジ(225)は、前記第1のカム部分(201)および前記第2のカム部分(202)の他方に接続される、少なくとも1つの吸気フランジ(220)および少なくとも1つの排気フランジ(225)と、
前記少なくとも1つの吸気フランジ(220)および前記少なくとも1つの排気フランジ(225)の一方に隣接して配置された機械的フェージングアセンブリ(230)であって、少なくとも1つの径方向に予圧された質量部材(235)を含み、前記質量部材(235)は、前記カムシャフトアセンブリ(200)の回転スピードに応じて、前記被駆動スプロケット(205)に対して前記少なくとも1つの吸気フランジ(220)および前記少なくとも1つの前記排気フランジ(225)のうちの少なくとも1つの位相シフトを実施することが可能である、機械的フェージングアセンブリ(230)と、
軸方向荷重部材(245)であって、軸方向に予圧され、前記質量部材(235)の側方の表面に摩擦力(μ(FF))を加えることにより、軸方向荷重を前記カムシャフトアセンブリ(200)の軸(A-A’)方向に加えるために配置された
、軸方向荷重部材(245)とを備える、
内燃エンジン(100)。
【請求項2】
軸方向に予圧された前記軸方向荷重部材(245)は、前記質量部材(235)に隣接して配置され、そこに軸方向荷重を加える、請求項1に記載の内燃エンジン(100)。
【請求項3】
前記カムシャフトアセンブリ(200)は、前記カムシャフトアセンブリ(200)の軸方向端部に、前記被駆動スプロケット(205)に隣接して配置されたリテーナプレート(240)を備え、前記軸方向荷重部材(245)に力を加えることが可能な1つまたは複数の軸方向力弾性部材(242)が、前記被駆動スプロケット(205)の1つまたは複数の孔(206)を通過して前記軸方向荷重部材(245)と前記リテーナプレート(240)との間に配置される、請求項1に記載の内燃エンジン(100)。
【請求項4】
前記被駆動スプロケット(205)は、前記少なくとも1つの吸気フランジ(220)および前記少なくとも1つの排気フランジ(225)のうちの1つに固定される、請求項1に記載の内燃エンジン(100)。
【請求項5】
前記カムシャフトアセンブリ(200)は、対応する前記少なくとも1つの吸気フランジ(220)に接続された少なくとも1つの吸気ローブ(210)と、対応する前記少なくとも1つの排気フランジ(225)に接続された少なくとも1つの排気ローブ(211)とを含み、前記少なくとも1つの吸気ローブ(210)および前記少なくとも1つの排気ローブ(211)は、前記バルブの開閉を制御するように適合され、前記ローブ(210、
211)は、前記軸方向荷重部材(245)の一方の側に配置され、前記リテーナプレート(240)は、前記軸方向荷重部材(245)の他方の側に配置される、請求項3に記載の内燃エンジン(100)。
【請求項6】
前記軸方向荷重部材(245)は、前記被駆動スプロケット(205)に隣接して配置された円盤状の部材であり、前記被駆動スプロケット(205)は、前記軸方向荷重部材(245)を収容することが可能な円盤状の溝を備える、請求項1に記載の内燃エンジン(100)。
【請求項7】
前記軸方向荷重部材(245)は、第1の内向き軸方向面(246)を有しており、前記被駆動スプロケット(205)は、第2の内向き軸方向面(207)を有しており、前記第1の内向き軸方向面(246)および前記第2の内向き軸方向面(207)は、前記カムシャフトアセンブリ(200)の軸(A-A’)に対して直交する平面(P)に沿って配置される、請求項1に記載の内燃エンジン(100)。
【請求項8】
前記フェージングアセンブリ(230)は、1つまたは複数のピン(255)を含み、軸方向に延びる前記1つまたは複数のピン(255)は、前記被駆動スプロケット(205)上、前記吸気フランジ(220)上、前記排気フランジ(225)上、および前記軸方向荷重部材(245)上に設けられた1つまたは複数の細長いスロット(260、261、262、263)を通過して配置され、前記1つまたは複数の細長いスロット(260、261、262、263)は、
径方向に対して角度の付いた細長いスロット(261)を含む、請求項1に記載の内燃エンジン(100)。
【請求項9】
前記質量部材(235)は、1つまたは複数の引張弾性部材(238)を通じて互いに接続される2つ以上の弓形部材(236、237)によって形成され、前記弓形部材(236、237)は、前記軸方向荷重部材(245)と摩擦接触しており、所定の間隔を維持するために、スペーサ(275)が前記被駆動スプロケット(205)と少なくとも1つのフランジ(220、225)との間に配置される、請求項1に記載の内燃エンジン(100)。
【請求項10】
前記質量部材(235)は、2つ以上の弓形部材(236、337)を形成する第1の弓形部材(236)および第2の弓形部材(237)によって形成され、前記弓形部材(236、237)は、そこを通過する少なくとも1つのピン(255)を収容するための1つまたは複数の開口(270)を備え、前記ピン(255)は、少なくとも1つの吸気フランジ(220)および少なくとも1つの排気フランジ(225)上に設けられた複数の細長いスロット(261、262)を通過し、それらの間で可変バルブタイミング制御をもたらす位相シフトを引き起こす、請求項1に記載の内燃エンジン(100)。
【請求項11】
前記複数の細長いスロット(261、262)は、少なくとも1つの吸気フランジ(220)および少なくとも1つの排気フランジ(225)の一方に設けられ、径方向に弓形で延びる第1の細長いスロット(261)と、少なくとも1つの吸気フランジ(220)および少なくとも1つの排気フランジ(225)の他方に設けられ、実質的に直線径方向に延びる第2の細長いスロット(262)とを含む、請求項10に記載の内燃エンジン(100)。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか一項に記載の内燃エンジン(100)を備える動力車
。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に動力車用の内燃(IC)エンジンに関する。より詳細には、本発明は、機械式可変バルブタイミングを提供する内燃エンジンのためのカムシャフトアセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
内燃(IC)エンジンは、混合気の燃焼によって化学エネルギーを機械エネルギーに変換するために使用される。混合気の燃焼により生成される熱エネルギーが、シリンダ内側の1つまたは複数の往復ピストンのための運動を提供するために使用される。1つまたは複数の往復ピストンは、この往復運動を伝達し、スライダクランク機構を利用して連接棒を通じてそこに接続された1つまたは複数のクランクシャフトの回転運動を引き起こす。シリンダヘッドは、一般に、混合気の進入および燃焼室からの既燃ガスの退出をそれぞれ可能にする少なくとも1つの吸気ポートおよび少なくとも1つの出口を備える。この動作において、燃焼室への入口開口および出口開口の開閉の精密な動きおよびタイミングは、ICエンジンの正確なパフォーマンスにとって必須である。
【0003】
一般に、入口/出口開口のこの開閉は、シリンダヘッドおよびシリンダボア上にある様々な構成要素によって制御され、バルブの開閉は、カムシャフト伝動システムを通じて1つまたは複数のクランクシャフトによって駆動される1つまたは複数のカムシャフトによって作動される。カムシャフトは、開口開放および開口開放の持続時間を制御するカムローブを含む。多数の通勤通学用動力車エンジンに伴う最も大きな欠点の1つは、(バルブを通じて)開口を閉じたり開いたりするために固定タイミングを使用することであり、それにより、これらのエンジンは、最適未満で動作される。たとえば、より高速でのバルブの固定タイミングは、開時間を最適な設定に設定させるが、一方、より高速のバルブ開放が望ましい。吸気バルブは、入来する空気の慣性を使用するように遅れて閉じられることがある。しかし、より低いエンジンスピードでのそのような遅いバルブの開放は、エンジンの体積効率に影響を及ぼす。したがって、バルブ開放の固定タイミングは、最適な設定に設定されているにもかかわらず、ある速度範囲でエンジン性能に影響を及ぼす。当技術分野では、カムフェージングを達成するための様々な電気的手段、電気機械的手段、機械的手段、および液圧手段が知られている。たとえば、カムフェージング、カム変更などは、当技術分野で使用されている技法の一部である。たとえば、カムフェージングは、1つのカムローブの、別のカムローブとの位相差を提供し、それにより変化したバルブ開放を達成する技法の1つである。
【図面の簡単な説明】
【0004】
詳細な説明について、添付の図を参照して述べる。
【0005】
【
図1】本発明の一実施形態による例示的な内燃(IC)エンジンの側面図である。
【
図2】断面が軸W-W’に沿ってとられた、ICエンジンの例示的な断面図である。
【
図3(a)】本発明の一実施形態によるカムシャフトアセンブリの斜視図である。
【
図3(b)】
図3(a)の実施形態による、その一部が選択されたカムシャフトアセンブリの別の等角図である。
【
図3(c)】軸U-U’に沿ってとられたカムシャフトアセンブリ200の径方向断面図である。
【
図4】
図3の実施形態による、第1の状態および第2の状態にある質量部材の図である。
【
図5(a)】本発明の一実施形態によるカムシャフトアセンブリの断面図である。
【
図5(b)】本発明の一実施形態によるカムシャフトアセンブリの別の断面図である。
【
図6】本発明の一実施形態によるカムシャフトアセンブリの分解図である。
【
図7】本発明の一実施形態によるカムシャフトアセンブリの詳細断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
一般に、カムフェージング/変更は、エンジンがその最適未満の性能より上方で動作することを可能にする。たとえば、吸気バルブがより低い毎分回転数(RPM)中に進まされる場合には、吸気バルブは、より早期に閉じられ、それにより圧縮行程中の逆流を最小限に抑え、それにより、より低いRPMにおいて体積効率およびトルクが改善される。さらに、より高いRPMでは、フェージングを吸気バルブに対して実施することができ、これは、吸気バルブの閉鎖を遅らすこと/遅い閉鎖を引き起こし、それにより、掃気のために高速で吸気マニホルドに進入する空気の運動量を利用する。同様に、排気バルブの開閉をカムフェージングによって進ませる、または遅らすことができる。また、カムフェージングは、吸気バルブおよび排気バルブの両方に対して行うことができる。
【0007】
一般に、カムフェージング/変更を実施するためには、様々な電気的手段、電気機械的手段、および液圧手段が使用され、これらは複雑であり、コスト効果的でない。たとえば、ソレノイド、またはスライダピンなどが必要とされ、これは、すでにコンパクトなシリンダヘッド領域における大きな空間を必要とするカムシャフト部分近くに収容されることになる。さらに、鞍乗り型の2輪または3輪車両にとっては、小さな空間内でパッケージングを可能にするために、また、単純な工具で、パワートレインを車両から分解する必要なく、適時に保守および修理をするためにパワートレインの様々な部分へのアクセスを容易にするために、パワートレインが可能な限りコンパクトであることが重要な要件である。さらに、電気/電気機械的または液圧システムは、電気的駆動手段または液圧駆動手段を含み、これらは、車載バッテリによって給電され、制御ユニットによって制御される。さらに、コントローラのような制御モジュールの追加は、システムのコストを増し、フェージングを引き起こすためのモータ、たとえばステッパモータは、エンジン、特にシリンダヘッド部分をよりかさばるものにする。当技術分野で知られているいくつかの他の解決策では、速さに応じて様々なロッカアームを係合および係合解除するための摺動機構が提案されている。そのようなシステムにおいてさえ、外部制御のスライダが必要とされ、スライダの動きを制御するためにモータなどが使用されることになり、システムを高価でよりかさばるものにする。したがって、追加のシステムが必要になり、また、これらのシステムは、バッテリ電力を消費する。さらに、電気的および機械的システムの機能特性は、エンジンの温度変動により、たとえばコールドスタート中、または高温時に影響を受ける。
【0008】
さらに、当技術分野では、エンジンのスピード/RPMの変化に従ってカムフェージングを実施することが可能な機械的フェージングシステムが知られている。一般に、機械的フェージングシステムは、コンパクトなエンジンレイアウトを有する2輪車または3輪車のようなコンパクトな車両で使用されることがある。また、そのような機械的フェージングシステムは、電気的制御/液圧制御なしに機能することが可能であることにより、コスト的な利点をもたらす。しかし、そのようなシステムは、フールプルーフではなく、フェージング角が増大されたとき故障しがちである。たとえば、カムフェージングのために遠心力を使用する機械的システムでは、カムフェージングは、フェージング手段に作用する力成分、たとえば遠心力成分/慣性成分により、所望の速さ前でさえ、突然発生する。そのような問題は、カムシャフトのトルクがより高く、またカムシャフトの動作スピードがより高いとき、吸気バルブと排気バルブを共に制御するために単一のカムシャフトを使用する車両において顕著である。ユーザによって突然加速される場合を考えると、カムシャフトの速度/回転スピードの突然の増大が生じ、これは遠心力の突然の増大をもたらし、遠心成分を増大させ、それにより滑りを引き起こす。さらに、そのような時期尚早は、玉軸受を使用し遠心力により機能するシステムにおいてさえ発生し得る。したがって、そのようなシステムでは、カムフェージングは、望ましくない状態でのバルブの開/閉により、システムの性能に影響を及ぼす望ましくない速さで発生し、また、これは低質の排出物質をもたらす可能性がある。たとえば、中域の間におけるカムフェージングの発生は、エンジン性能に影響を及ぼす。なぜなら、吸気時間または望ましくない掃気が発生し、エンジン性能に影響を及ぼすからである。さらに、当技術分野で知られているシステムは、径方向で予圧が行われているにもかかわらず、可動部分があるために振動を引き起こすことがあり、これは、不必要な騒音を引き起こすことがある。
【0009】
したがって、コンパクトなICエンジン内にさえ実装することができる機械的カムフェージングシステムが求められており、このカムフェージングシステムは、所望のエンジンスピードでのみ、その機能を実施することが可能であるべきであり、従来技術の前述の、および他の問題を克服することが可能であるべきである。
【0010】
したがって、本発明は、機械的手段を使用し、外部制御を必要とせずにエンジンのスピード/RPMに依存する機械的フェージングシステム/アセンブリを備える内燃エンジンを提供する。
【0011】
本発明は、吸気ローブまたは排気ローブの一方の位相シフティングを他方に対して実施し、それによりバルブ開/閉を進ませる/遅らすことが可能な機械的フェージングアセンブリを含むカムシャフトアセンブリを提供する。
【0012】
本発明のカムシャフトアセンブリは、位相シフティングを提供する一体型部材を通じて吸気バルブおよび排気バルブを開/閉することが可能である。
【0013】
カムシャフトアセンブリは、一実施形態では、第1のカム部分および第2のカム部分を含み、1つまたは複数の軸受が第1のカム部分および第2のカム部分を回転可能に支持する。さらに、一実施形態では、別の軸受、たとえば、ころ軸受が、第1のカム部分と第2の部分との間にそれらの相対回転を可能にするように設けられる。
【0014】
吸気フランジは、第1のカム部分および第2のカム部分の一方に接続され、排気フランジは、第1のカム部分および第2のカム部分の他方に接続される。「吸気フランジ」および「排気フランジ」という用語は、単数の部材に限定されず、複数のフランジを含んでもよい。カムシャフトアセンブリは、フランジのそれぞれに対応する1つまたは複数のカムローブを含み、これらのカムローブは、エンジン要件に従ってバルブリフトを実施するように選択される。同様に、カムローブという語は、バルブ作動を実施する部材のプロファイルの任意の幾何形状を指す。
【0015】
カムシャフトアセンブリは、カム部分の1つにおいて支持された被駆動スプロケットを含む。換言すれば、被駆動スプロケットは、カム部分の1つに固定される。機械的フェージングアセンブリは、カムシャフトアセンブリの回転スピードに応じて径方向の位置を変化させることが可能な質量部材を含む。質量部材は、吸気フランジまたは排気フランジの一方に隣接して配置される。
【0016】
一実施形態では、質量部材は、周方向に分割され、引張弾性部材を通じて軸近くに保持される2つ以上の弓形部材によって形成され得る。2つ以上の弓形部材は、遠心力により径方向に動くことが可能である。
【0017】
一実施形態では、2つ以上の弓形部材は、1つまたは複数の開口を備え、1つまたは複数のピンがこれらの開口を通過するように構成され、1つまたは複数のピンは、弓形部材に沿って可動である。
【0018】
吸気フランジ、排気フランジ、および被駆動スプロケットは、一実装によれば、細長いスロットを備える。一実装によれば、吸気フランジおよび排気フランジの一方のフランジは、被駆動スプロケットに固定される。その一方のフランジおよび被駆動スプロケットは、フェージング角または弓形を有するそれぞれにおける細長いスロットを備える。細長いスロットを有する吸気フランジおよび排気フランジの他方のフランジは、実質的に径方向に延びている。したがって、被駆動スプロケットおよび被駆動スプロケットに接続された一方のフランジの角度の付いた細長いスロットに沿ってピンが移動するとき、ピンは、ピンの角運動により他方のフランジを位相シフトさせようとする。
【0019】
たとえば、(速さに応じて吸気バルブ開/閉を変えるように)吸気フランジを位相シフトするために、被駆動スプロケットおよび排気フランジは、弓形の細長いスロットを備え、吸気フランジは、実質的に径方向に延びる細長いスロットを備える。したがって、質量部材が径方向に伸長するとき、質量部材と共に移動するピンは、弓形の細長いスロットに沿って移動し、これにより、吸気フランジが位相シフトされる。
【0020】
位相シフティングアセンブリは、実質的にフランジの一方に隣接して配置された軸方向荷重部材を含む。軸方向荷重部材は、質量部材に摩擦力を加えるように軸方向に予圧される。
【0021】
一実施形態では、クランクシャフトによって駆動される被駆動スプロケットは、フランジの一方に接続され、他方のフランジは、被駆動スプロケットの向きに対して位相シフティングを実施するように適合される。別の実施形態では、両フランジが、一度に一方、または一度に両方、被駆動スプロケットに対して位相シフティングする(進ませる、または遅らす)ように適合される。
【0022】
一実施形態では、軸方向荷重部材は、被駆動スプロケットの一方の軸方向側に配置され、軸方向荷重部材は、質量部材に力を加えるように、軸方向に予圧を与えられる。一実装では、リテーナ部材が被駆動スプロケットの他方の側に設けられ、そのリテーナプレートは、軸方向荷重部材に当接する他方の側である予圧部材の一端を支持する。
【0023】
軸方向に力を加える軸方向荷重部材は、両側から質量部材に作用する摩擦力を引き起こす。この摩擦力は、細長いスロットに沿ったピンの移動方向において質量部材に作用する力成分を平衡させる。そうでない場合ピンを径方向外方に移動させようとするこの力成分は、軸方向荷重部材によって加えられた摩擦力によって平衡する。
【0024】
したがって、フェージング角が約20度に増大されたときでさえ、ピンは、(接線速度成分がピンに作用している場合でさえ)摩擦力により滑ろうとしない。本主題の特徴は、軸方向荷重部材に対する予圧を調整することによるだけで、カムシャフトアセンブリを、約5~25度の範囲でフェージングに使用されるように適合させることができることである。たとえば、アセンブリを同じまま保つことができ、ばねのような予圧部材だけを置き換えることができる。
【0025】
好ましくは、質量部材上の少なくとも2つの開口、フランジおよび被駆動スプロケット上の少なくとも2つの細長いスロットが設けられ、それに応じて2つのピンを使用し、1つの構成要素から別の構成要素に回転力を均一に伝達する。さらに、細長いスロットの使用は、システムの重量を削減し、構成要素の構造完全性が保持される。
【0026】
さらに、本主題は、軸方向にコンパクトに収容される。たとえば、一実施形態では、被駆動スプロケットは、円盤状の溝を備え、軸方向荷重部材は、その溝でコンパクトに収容される。したがって、特にカムローブおよび被駆動スプロケットに関して、レイアウトの修正は必要とされない。
【0027】
さらに、軸方向荷重部材は、引張ばねを通じて接続される下位部材によって形成される質量部材により発生し得る振動を抑制する。
【0028】
別の実施形態では、質量部材は、環状に配置された玉軸受の集まりとすることができ、玉軸受は、遠心力を加えることにより径方向に可動である。玉軸受の(接触部分の1つに角度を付けて設けられた経路に沿った)径方向の動きが位相シフティングを可能にする。軸方向荷重部材は、軸方向荷重を加え、質量部材に摩擦力を導入するように配置される。
【0029】
本明細書における本主題の様々な特徴および実施形態は、以下で述べる、以下のそのさらなる説明から識別可能であろう。一実施形態によれば、本明細書に記載の内燃エンジン(IC)は、動力車のための複数の原動機の1つまたは単独の原動機である。ICエンジンは、動力車に固定的に取り付けられた、または動力車に揺動可能に接続された前方傾斜型または実質的に水平型であってよい。ICエンジンは、シリンダヘッド当たり少なくとも2つのバルブ、すなわち1つの吸気バルブおよび1つの排気バルブを含む。
【0030】
本主題について、それに伴う実施形態およびそれらの他の利点と共に、以下の段落において、図と併せて、単シリンダICエンジンの一実施形態を用いて、より詳細に述べることになる。
【0031】
図1は、本主題の一実施形態によるICエンジン100の側面図を示す。ICエンジン100は、ICエンジンのクランクケース101によって支持されたシリンダブロック102を含む。シリンダブロック102は、ピストンが往復運動を実施することができるシリンダ部分を画定する。シリンダヘッド103はシリンダブロック102に取り付けられ、シリンダヘッド103は、前記シリンダ部分の一端として働く。シリンダブロック102は冷却フィン106を備え、シリンダヘッド103が冷却フィンを備えてもよい。ICエンジン100は、混合気の燃焼によって加えられる力によりシリンダ部分内で往復運動を実施するピストン(図示せず)を備える。この往復運動は、連接棒(図示せず)を通じてクランクシャフト110の回転運動に変換および伝達される。さらに、シリンダヘッドカバー104がシリンダヘッド103に取り付けられる。クランクケース101は、左側クランクケースおよび右側クランクケースから構成される。クランクケース101は、クランクシャフト110を回転可能に支持する。さらに、マグネトアセンブリ111または一体型スタータ発電機のような電気機械がクランクシャフト110に取り付けられる。マグネトアセンブリ111は、動作中、バッテリ(図示せず)を充電するために使用される。シリンダヘッド103は、シリンダヘッド103の第1の面および第2の面上に設けられた吸気ポート105および排気ポート(図示せず)を含む。本実施形態では、第1の面は上に面する側であり、第2の面は、その下に面する側である。さらに、シリンダヘッド103は、ICエンジン100の吸気バルブおよび排気バルブを動作させることが可能なカムシャフトアセンブリ200(
図2に部分的に図示)を支持する。
図2は、本主題の一実施形態による線W-W’に沿ってとられたICエンジン100の断面図を示す。
【0032】
ICエンジン100は、クランクシャフト110に接続され、それと一体に回転する駆動ギヤ113を含む。駆動ギヤ113は、一次ドライブとして働き、回転力を一次被駆動112に伝達することが可能である。したがって、一次被駆動ギヤ112は、クランクシャフト110に動作可能に接続される。シリンダヘッド103は、吸気バルブおよび排気バルブの開閉を制御し、それにより、混合気の吸気、および排気の出口を制御するバルブトレイン構成を備える。カムシャフトアセンブリ200(部分的に図示)は、シリンダヘッド103に回転可能に取り付けられる。カムチェイン114がクランクシャフト110およびカムシャフトアセンブリ200を動作可能に接続する。カムシャフトアセンブリ200の被駆動スプロケット205は、駆動ギヤ113と噛み合うように構成され、被駆動スプロケット205は、クランクシャフト110の回転運動をカムシャフトアセンブリ200に伝達する。一実施形態では、駆動ギヤ113に対する被駆動スプロケット205の比は2であり、それにより、クランクシャフト110の2回転毎に、カムシャフトアセンブリ200は1回転することになる。ICエンジン100は、調整部材116を通じてカムチェイン114の張力を調整することを可能にする1つまたは複数のチェインテンショナ115を備える。
【0033】
図3(a)は、本主題の一実施形態によるカムシャフトアセンブリの等角図を示す。
図3(b)は、
図3(a)の実施形態による、その一部が選択されたカムシャフトアセンブリの別の等角図を示す。
図3(c)は、軸U-U’に沿ってとられたカムシャフトアセンブリ200の径方向断面図を示す。カムシャフトアセンブリ200は、少なくとも1つの吸気ローブ210および少なくとも1つの排気ローブ211を含む。カムチェイン114は、駆動ギヤ113および被駆動スプロケット205にかけ回される。カムシャフトアセンブリ200は、1つまたは複数の軸受215、216によって回転可能に支持される。本実施形態では、カムシャフトアセンブリ200は、第1のカム部分201および第2のカム部分202を含む。さらに、被駆動スプロケット205は、前述の構成要素の回転軸周りに配置される。カムシャフトアセンブリ200は、機械的フェージングアセンブリ230を含む。カムシャフトアセンブリ200は、少なくとも1つの吸気ローブ210に対応する少なくとも1つの吸気フランジ220と、少なくとも1つの排気ローブ211に対応する少なくとも1つの排気フランジ225とを含む。本実施形態では、吸気フランジ220は、質量部材235と排気フランジ225との間に配置される。
【0034】
一実施形態ではカムシャフトアセンブリ200は、デコンプレッションシステム280をも備える。デコンプレッションシステム280は、一端で旋回し、可動の端部を有するデコンプレッションアームを含む。デコンプレッションアームは、予圧された弾性部材によって排気フランジ225上で支持される。デコンプレッションシステム280は、排気バルブがエンジン始動中の圧縮行程中、追加のリフトを有することを可能にし、追加のリフトは、エンジンスピードが予め定義された値を超えた後、終結される。
【0035】
図4は、
図3の実施形態による質量部材を示す。
図5(a)は、
図3(a)に示されている実施形態による、軸X-X’に沿ってとられた排気カムアセンブリ200の断面図を示す。
図5(b)は、
図3(b)に示されている実施形態による、軸V-V’に沿ってとられた排気カムアセンブリ200の別の断面図を示す。
図6は、本主題の一実施形態によるカムシャフトアセンブリの分解図を示す。第1のカム部分201は、第1の軸受215によって回転可能に支持され、一体形成された吸気ローブ210を有する。第1のカム部分201は、実質的にカムシャフトアセンブリ200の軸に沿って延び、吸気フランジ220に接続される。同様に、第2のカム部分202は、一体形成された排気ローブ211を有し、第2の軸受216によって回転可能に支持される。第2のカム部分202は、第1のカム部分201周りで少なくとも部分的に軸方向に配置される。一実施形態では、ころ軸受214が第1のカム部分201と第2のカム部分202との間に配置される。排気フランジ225は、第2のカム部分202によって支持される。カムシャフトアセンブリ200は、シリンダヘッド103(
図1に図示)上で回転可能に支持される。
【0036】
被駆動スプロケット205は、本実施形態では、第1のカム部分201上で支持される。被駆動スプロケット205は、締結具243を通じて第1のカム部分201に固定される。また、リテーナプレート240、被駆動スプロケット205、およびフランジ225を共に固定するために、ロック用締結具241(
図6に図示)が設けられる。機械的フェージングアセンブリ230は、軸方向荷重部材245を含む。質量部材235は、吸気フランジ220上で支持される。さらに、軸方向荷重部材245は、本実施形態によれば、吸気フランジ220に隣接して配置される。質量部材235は、フランジのうちの少なくとも一方に隣接して配置されてもよい。さらに、カムシャフトアセンブリ200は軸方向荷重部材245を含み、質量部材235は、軸方向荷重部材245と吸気フランジ220との間に挟まれる。
【0037】
軸方向荷重部材245は、実質的に被駆動スプロケット205の一方の側に配置され、被駆動スプロケット205の他方の側にリテーナプレート240が設けられる。被駆動スプロケット205は、1つまたは複数の貫通孔206を含み、軸方向荷重部材245とリテーナプレート240との間に、貫通孔206を通って1つまたは複数の軸方向力弾性部材242が設けられ、それにより、軸方向荷重部材245に予圧を提供する。
【0038】
被駆動スプロケット205は、1つまたは複数のピン255(
図3(b)に図示)を通じてクランクシャフト110から受け取られる回転力を提供する。1つまたは複数のピンは、機械的フェージングアセンブリ230の一部を形成する。被駆動スプロケット205、吸気フランジ220、排気フランジ225のそれぞれは、細長いスロット260、261、262を備え、1つまたは複数のピン255は、これらの細長いスロット260、261、262周りに配置され、それにより、被駆動スプロケット205からの回転力がフランジ220、225に伝達され、それにより、ローブ210、211の回転を可能にする。さらに、軸方向荷重部材245もまた、細長いスロット263を備える。
【0039】
質量部材235は、引張弾性部材238(
図4に図示)を通じて互いに接続される第1の弓形部材236および第2の弓形部材237によって形成される。質量部材235は、カムシャフトアセンブリ200の回転中、遠心力により、遠心力が剛性(k)を超えたとき径方向外方に伸長しようとする。弾性部材238は、カムシャフトアセンブリ200の所定のRPM後、遠心力が剛性(k)を超えることになるように選択される。フランジ220、225の一方は、弓形部分である角度の付いた細長い部分261を備える。
【0040】
第1の弓形部材236および第2の弓形部材237は、ピン255が通過している1つまたは複数の開口270を備える。弓形部材236、237の運動は、被駆動スプロケット205上に設けられた細長いスロット260によって案内される。径方向における遠心力による弓形部材236、337の運動は、ピン255が弓形部材236、237と共に移動することを可能にし、ピン255は、細長いスロット260、262、263を通って摺動する。しかし、少なくとも1つのフランジ225上に設けられた弓形の細長いスロットである第1の細長いスロット261は、ピン255の動きによりフランジ225を位相シフトさせ、それにより、所望のスピード/RPMにおいて、径方向に実質的に直線的に延びている他方のフランジ220に設けられた第2の細長いスロット262に対して位相シフトを引き起こす。
【0041】
本実施形態では、排気フランジ225は、被駆動スプロケット205に固定され、スペーサ275がそれらの間に設けられる。スペーサ275は、被駆動スプロケット205とフランジとの間で所定の間隔を維持することを可能にし、それにより、軸方向荷重部材245および質量部材235は、他の要素からの追加の軸方向荷重なく機能することができる。被駆動スプロケット205の回転は、排気フランジ261を回転させ、それにより同じ位相を維持する。さらに、排気フランジ225は、ある動きの度合い(角回転)を有している角度の付いた細長いスロット261を備え、ピン255が径方向外方に摺動しているとき吸気フランジ220を位相シフトさせる。したがって、吸気ローブ210もまた位相シフトし、吸気バルブ開/閉タイミングの変化を引き起こす。実施形態によれば、角度の付いた細長いスロットは、5~25度の範囲で位相シフトを提供する。軸方向荷重プレート245は、質量部材235に軸方向力を加え、それにより、径方向における弓形部材236、237の滑りが低減される。
【0042】
図7は、本主題の一実施形態によるカムシャフトアセンブリ200の断面の拡大/詳細図を示す。カムシャフトアセンブリ200が回転されたとき、質量部材235の弓形部材236、237は、弓形部材を径方向外方に引こうとする遠心力CFを受ける。弓形部材236、237は、弓形部材236、237を力KFで径方向内方に引こうとする、剛性kを有する弾性部材238を通じて互いに接続される。さらに、軸方向荷重部材245は、そこに作用する予圧により、弓形部材236、237に軸方向力を加える。したがって、フランジ220と軸方向荷重部材245との間に挟まれた弓形部材236、237は、質量部材235に対する摩擦力FFを受け、弾性部材238の剛性/張力により、時期尚早なフェージングが制御される。
【0043】
開口270を通過している機械的フェージングアセンブリ230の必須の構成要素の1つであるピン255もまた、質量部材235に作用する力を受ける。バルブトレイントルクである、カムシャフトアセンブリ200が受けるトルクにより、1つの力成分が、細長いスロットに沿って径方向に、ピン255の動きの方向に作用する。そうでない場合ピン255を径方向外方に動かそうとするこの力成分は、軸方向荷重部材245によって加えられた摩擦力によって平衡する。カムシャフトアセンブリ200のスピードと類似しているエンジン100のスピード/RPMがより高いときだけ、遠心力CFが、弾性部材238によって加えられる力KF、および弓形部材236、237に作用する摩擦力FFに取って代わり、それにより、弓形部材236、237は、径方向外方に動く。したがって、ピン255の動きは、フランジ220の向きを変化させ、位相シフティングを引き起こす。さらに、第2のカム部分202の内周と第1のカム部分201の外周との間に設けられたころ軸受214が、位相シフティング中、カム部分201、202間の相対回転を容易にすることができる。したがって、本主題による機械的フェージングアセンブリ230は、以下の式(1)によって定義される方法に従って発生する。本主題による、
図8に詳述されている機械的フェージングを引き起こす方法について、下記に詳述されている。
CF=KF+μ(FF) .....(1)
【0044】
カムシャフトアセンブリ200内に軸方向荷重を加えるために配置された、軸方向に予圧された軸方向荷重部材245は、一実施形態によれば、質量部材235の側方の表面に抵抗/摩擦力FFを加える。軸方向荷重部材245は、材料の固有の表面摩擦、または突然の加速などのようなある動作状態の間に質量部材235に作用する過大な遠心力に抗するために軸方向荷重部材245上に設けられる表面コーティングによる摩擦係数である、軸方向荷重部材245の摩擦係数μに依存する摩擦力FFを提供する。
【0045】
本方法は、ステップS301において、外部制御を必要とせずに動作状態である機械的フェージングシステムであるシステムが、クランクシャフトがカムシャフトアセンブリ200を回転させる動作状態にICエンジン100があることを必要とすることを規定する。カムシャフトアセンブリ200の回転により、径方向に予圧されている質量部材235に遠心力が作用する。さらに、ステップS302では、質量部材235に作用する遠心力CFが確認される。本明細書で使用される「確認される」という用語は、本方法を説明するための代表的なものにすぎず、機械的フェージングアセンブリ230が自動的に発生するとき実際に確認することを必要としない。さらに、質量部材235に作用する遠心力CFは、弾性部材によって加えられる力KF、および摩擦係数に依存する摩擦力FFに対して比較される。遠心力CFが剛性力KFと摩擦力(すなわち、FFのμ倍)との累積した力未満である場合には、システムは、ステップS302に戻って遠心力CFを引き続き確認する。ステップS303で、遠心力CFが力KFと摩擦力FFのμ倍との和を超える場合には、ステップS304で、システムは機械的フェージングを実施し、これは、外部制御を必要とせずに実施される。これは、バルブの開閉時間の変化を引き起こし、それにより、エンジンのすべての動作スピードにおいて吸気および排気要件を満たす。
【0046】
さらに、本実施形態によれば、軸方向荷重部材245は、被駆動スプロケット205に隣接して配置される円盤状の部材である。さらに、被駆動スプロケット205の軸方向面は、円盤状の溝を備え、これは、溝に軸方向荷重部材245を収容することが可能である。したがって、軸方向荷重部材245は第1の内向き軸方向面246を有しており、被駆動スプロケット205は、第2の内向き軸方向面207を有しており、第1の内向き軸方向面246および第2の内向き軸方向面207は、カムシャフトアセンブリ200の軸A-A’に対して直交する平面Pに沿って配置される。したがって、軸方向荷重部材245は、被駆動スプロケット205を収容するために必要とされる同じ量の空間内に収容される。これは、カムシャフトアセンブリ200上の追加の取付け空間、特に被駆動スプロケットとカムローブ210、211との間の空間の必要をなくする。クランクシャフトに接続されるカムチェイン114の位置、カムチェイン114の収容空間、およびカムローブ210、211が相互作用するバルブの位置は、本主題によれば変える必要がなく、それにより、ICエンジン、特にシリンダヘッドの使用可能なレイアウトを保持する。したがって、本主題は、レイアウト修正を必要としない改善されたバルブタイミングアセンブリ/機械的フェージングアセンブリを提供する。
【0047】
一実装では、質量部材235に面する軸方向荷重部材245の軸方向面およびフランジ220の軸方向面は、所望の摩擦係数を達成するために、機械加工されるか、または表面コーティングを備える。
【0048】
上記の開示に照らして、本主題の多数の修正および変形が可能である。したがって、本主題の特許請求の範囲内において、本開示は、具体的に記載されているもの以外で実施され得る。
【符号の説明】
【0049】
100 エンジン
101 クランクケース
102 シリンダブロック
103 シリンダヘッド
104 シリンダヘッドカバー
105 吸気ポート
110 クランクシャフト
111 マグネトアセンブリ
113 駆動ギヤ
114 カムチェイン
115 チェインテンショナ
116 調整部材
200カムシャフトアセンブリ
201 第1のカム部分
202 第2のカム部分
205 被駆動ギヤ/カムスプロケット
206 孔
207 第2の内向き軸方向面
210 吸気ローブ
211 排気ローブ
214
215/
216/ 軸受
220 吸気フランジ
225 排気フランジ
230 フェージングアセンブリ
235 質量部材
236 第1の弓形部材
237 第2の弓形部材
238 引張弾性部材
240 リテーナプレート
241 ロック用締結具
242 軸方向力弾性部材
243 締結具
245 軸方向荷重部材
246 第1の内向き軸方向面
255 ピン
260/
261/
262/
263 細長いスロット
270 開口
275 スペーサ
280 デコンプレッションシステム