(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】乗客コンベア
(51)【国際特許分類】
B66B 23/12 20060101AFI20241001BHJP
B66B 29/02 20060101ALI20241001BHJP
B66B 29/04 20060101ALN20241001BHJP
【FI】
B66B23/12 Z
B66B29/02 E
B66B29/04 A
(21)【出願番号】P 2022017624
(22)【出願日】2022-02-08
【審査請求日】2022-02-08
【審判番号】
【審判請求日】2024-04-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000112705
【氏名又は名称】フジテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114421
【氏名又は名称】薬丸 誠一
(72)【発明者】
【氏名】物部 愛
(72)【発明者】
【氏名】濱口 萌子
(72)【発明者】
【氏名】藤田 捺未
【合議体】
【審判長】小川 恭司
【審判官】平城 俊雅
【審判官】尾崎 和寛
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-199588(JP,A)
【文献】特開2021-123481(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 23/12,31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トラス内にトラスの長手方向に沿って配置され、通路に沿って循環移動する無端搬送体と、
無端搬送体の側方に通路に沿って配置され、ハンドレールを循環移動可能に支持する欄干と、
トラス内に配置される空調装置と、
空調装置が生成した空調空気の吹出口であって、無端搬送体の幅方向において中央部と端部又は端部寄りの箇所とに横並びにかつそれぞれが無端搬送体の幅方向に長尺に形成されるとともに、無端搬送体の全長に亘って所定間隔を有して形成される吹出口
であり、端部又は端部寄りの箇所の吹出口の風向を無端搬送体の幅方向中心側に向ける風向
部を備える
ことにより、空調空気を無端搬送体の幅方向の中央部に集めて無端搬送体の幅方向の端部よりも中央部で空調空気が密となるように構成される吹出口とを備える
乗客コンベア。
【請求項2】
無端搬送体は、複数の踏段が無端状に連結されて構成され、
吹出口は、踏段のライザ部に形成される
請求項1に記載の乗客コンベア。
【請求項3】
空調装置は、トラス内に固定配置されるとともに、空調空気を無端搬送体の裏面側に向けて送風する送風部を備える
請求項1又は請求項2に記載の乗客コンベア。
【請求項4】
無端搬送体は、裏面側に、空調空気を取り込んで吹出口に誘導するダクトを備える
請求項3に記載の乗客コンベア。
【請求項5】
風向部は、無端搬送体の裏面側に配置される風向板である
請求項3又は請求項4に記載の乗客コンベア。
【請求項6】
空調装置は、トラス内に固定配置され、
無端搬送体は、裏面側に、空調空気を吹出口に向けて送風する送風部を備える
請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の乗客コンベア。
【請求項7】
風向部は、軸線が無端搬送体の幅方向中心側に向くように斜めに配置される送風部である
請求項6に記載の乗客コンベア。
【請求項8】
空調装置は、トラス内のうち、無端搬送体の乗客受け入れ部の近傍箇所に配置される
請求項3ないし請求項7のいずれか1項に記載の乗客コンベア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通路に沿って循環移動する無端搬送体により乗客を搬送する乗客コンベアに関する。
【背景技術】
【0002】
エスカレータや動く歩道といった乗客コンベアは、ブラシや長尺な樹脂シェープ等のアタッチメントをスカートガードに取り付けることがある(特許文献1)。これは、無端搬送体への乗り込み時や無端搬送体による搬送中において、無端搬送体の側縁部及び欄干の下部(スカートガード)間の隙間への巻き込みを防止する観点である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、乗客によっては、衛生面や自分の衣服が汚れることを気にして、スカートやズボンの裾がアタッチメントに接触することを不快に感じる者がいる。あるいは、アタッチメントの有無に関わらず、乗客のスカートやズボンの裾が欄干の下部に接触する場合も同様である。
【0005】
そこで、本発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、乗客が欄干に接触しにくい乗客コンベアを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る乗客コンベアは、
トラス内にトラスの長手方向に沿って配置され、通路に沿って循環移動する無端搬送体と、
無端搬送体の側方に通路に沿って配置され、ハンドレールを循環移動可能に支持する欄干と、
トラス内に配置される空調装置と、
空調装置が生成した空調空気の吹出口であって、無端搬送体の幅方向において中央部と端部又は端部寄りの箇所とに横並びにかつそれぞれが無端搬送体の幅方向に長尺に形成されるとともに、無端搬送体の全長に亘って所定間隔を有して形成される吹出口であり、端部又は端部寄りの箇所の吹出口の風向を無端搬送体の幅方向中心側に向ける風向部を備えることにより、空調空気を無端搬送体の幅方向の中央部に集めて無端搬送体の幅方向の端部よりも中央部で空調空気が密となるように構成される吹出口とを備える
乗客コンベアである。
【0009】
また、本発明に係る乗客コンベアの別の態様として、
無端搬送体は、複数の踏段が無端状に連結されて構成され、
吹出口は、踏段のライザ部に形成される
との構成を採用することができる。
【0010】
また、本発明に係る乗客コンベアのさらに別の態様として、
空調装置は、トラス内に固定配置されるとともに、空調空気を無端搬送体の裏面側に向けて送風する送風部を備える
との構成を採用することができる。
【0011】
また、この場合、
無端搬送体は、裏面側に、空調空気を取り込んで吹出口に誘導するダクトを備える
との構成を採用することができる。
また、これらの場合、
風向部は、無端搬送体の裏面側に配置される風向板である
との構成を採用することができる。
【0012】
また、本発明に係る乗客コンベアのさらに別の態様として、
空調装置は、トラス内に固定配置され、
無端搬送体は、裏面側に、空調空気を吹出口に向けて送風する送風部を備える
との構成を採用することができる。
また、この場合、
風向部は、軸線が無端搬送体の幅方向中心側に向くように斜めに配置される送風部である
との構成を採用することができる。
【0013】
また、本発明に係る乗客コンベアのさらに別の態様として、
空調装置は、トラス内のうち、無端搬送体の乗客受け入れ部の近傍箇所に配置される
との構成を採用することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、無端搬送体の上に立つ乗客は、足元に空調空気を感知するとともに、より快適感を得ようとして、空調空気が密となっている無端搬送体の幅方向の中央部に近づこうとする。これにより、乗客は、欄干から離れて通路の中心側に寄る立ち位置を取ることとなる。このため、本発明によれば、乗客が欄干に接触しにくい乗客コンベアを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本実施形態に係るエスカレータの概略断面側面図である。
【
図3】
図3(a)は、実施形態1に係るエスカレータの空調装置付近の概略断面側面図である。
図3(b)は、実施形態1に係るエスカレータの乗り口付近の斜視図である。
【
図4】
図4(a)は、実施形態2に係るエスカレータの空調装置付近の概略断面側面図である。
図4(b)は、
図4(a)のA-A線断面図である。
【
図5】
図5(a)は、実施形態3に係るエスカレータの空調装置付近の概略断面側面図である。
図5(b)は、
図5(a)の縦断面図である。
【
図6】
図6(a)は、実施形態1の変形例1に係るエスカレータの乗り口付近の斜視図である。
図6(b)は、実施形態1の変形例1に係るエスカレータの、
図4(a)のA-A線に相当する箇所の断面図である。
【
図7】
図7(a)は、実施形態2の変形例1に係るエスカレータの、
図4(a)のA-A線に相当する箇所の断面図である。
図7(b)は、実施形態3の変形例1に係るエスカレータの、
図4(a)のA-A線に相当する箇所の断面図である。
【
図8】
図8(a)は、実施形態1~3の変形例2に係るエスカレータの乗り口付近の斜視図である。
図8(b)は、実施形態1~3の変形例2に係るエスカレータの踏段の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<全体構成>
以下、本発明に係る実施形態として、乗客コンベアの一つであるエスカレータの各実施形態について説明するが、まずはこれに先立ち、エスカレータの全体構成について説明する。
【0017】
図1に示すように、エスカレータ1は、トラス2と、乗降口3と、搬送部4と、ハンドレール部5とを備える。トラス2は、エスカレータ1の自重及び積載荷重を支える構造体である。乗降口3は、トラス2の両端部の上部に設けられる。搬送部4は、トラス2に支持され、踏面が通路に沿って移動することにより、乗客をその位置に立たせたまま歩かせることなく搬送する。ハンドレール部5も、トラス2に支持され、通路の両側に通路に沿って設けられる。なお、本実施形態においては、エスカレータ1は、左から右(階下から階上)に乗客を搬送する設定となっている。このため、エスカレータ1は、左から右に、乗り口3A、搬送部4、降り口3Bを備える。設定が逆に切り替えられると、乗り口3Aは降り口に、降り口3Bは乗り口に切り替わる。
【0018】
トラス2は、等辺山形鋼(等辺アングル)、不等辺山形鋼(不等辺アングル)、角形鋼管(角パイプ)、平鋼、溝形鋼、I鋼、H鋼、又はこれらの組合せからなる上弦材20、下弦材21、縦材22、斜材23及び横桁(図示しない)を適宜組み合わせた骨組構造である。
【0019】
トラス2は、2つの水平端部2a,2aと、傾斜部2bとを備える。水平端部2aは、上端に沿ってアングルからなる支持部材24を備える。上端部側の水平端部2aの支持部材24は、建築物における階上の支持架台に掛けられ、下端部側の水平端部2aの支持部材24は、階下の支持架台に掛けられる。これにより、トラス2、ひいては、エスカレータ1は、建築物に設置される。
【0020】
乗降口3は、トラス2の水平端部2aの上方に設けられる。乗降口3は、フロアプレート30を備える。フロアプレート30は、乗降口3の床を構成し、通路の端部(始端部、終端部)を構成する。フロアプレート30の先端は、乗降口3と搬送部4との境界を画する。
【0021】
搬送部4は、無端搬送体40を備える。無端搬送体40は、トラス2内にトラス2の長手方向に沿って循環移動可能に配置される。無端搬送体40は、複数の踏段(ステップ)41,…が踏段チェーン42を介して無端状に連結されたもので、循環駆動される。無端搬送体40は、駆動モータ43の駆動に伴って踏段チェーン42が循環駆動されることにより、一方向又は反対方向に循環駆動される。
【0022】
ハンドレール部5は、ハンドレール50と、欄干51とを備える。ハンドレール50は、移動手摺とも呼ばれ、可撓性を有する無端状で、無端搬送体40と連動して循環駆動される。欄干51は、無端搬送体40の側方に無端搬送体40の長手方向に沿って配置される。欄干51は、下辺部がトラス2に支持され、ハンドレール50を循環移動可能に支持する。ハンドレール50及び欄干51は、通路の両側に通路に沿って一対設けられる。
【0023】
ところで、トラス2の両側部及び下部は、トラス2の両側部及び下部に沿って外装材(外装板)が配置されることにより、外装材に取り囲まれる。あるいは、エスカレータ1がコンクリートピット内に設置される場合は、トラス2の両側部及び下部は、トラス2の両側部及び下部に沿ってピットの壁面が位置することにより、ピットの壁面に取り囲まれる。また、トラス2の上部は、無端搬送体40(の往路部分)により塞がれる。このため、トラス2内は、密閉空間となっている。
【0024】
この密閉空間であるトラス2内には、空調システムの主構成である空調装置6が配置される。空調装置6は、3箇所に配置される。1つの空調装置6Aは、トラス2の下端部側に固定配置される。もう1つの空調装置6Bは、トラス2の上端部側に固定配置される。もう1つの空調装置6Cは、追加的に設けられ、トラス2の中間部に固定配置される。空調装置6Cは、エスカレータ1の長さに応じて、すなわち、トラス2内の密閉空間の容量に応じて、適宜間隔で複数台を設置するようにしてもよい。あるいは、空調装置6Cはなくてもよい。空調装置6A~6Cは、無端搬送体40の傾斜部の傾斜に応じて、傾斜して配置される。
【0025】
図2に示すように、空調装置6Aは、トラス2内のうち、無端搬送体40の乗客受け入れ部(乗り口3Aに接続される端部領域)の近傍箇所に配置される。より詳しくは、無端搬送体40がトラス2の水平端部2aから傾斜部2bに移行することにより、前後の踏段41,41に段差が生じるが、空調装置6Aは、水平移動から傾斜移動に移行した数個の踏段41,…(本実施形態においては、3個の踏段41,…)の位置に対応して配置される。図示しないが、空調装置6Bも同様であり、傾斜移動から水平移動に移行する前の数個の踏段41,…(本実施形態においては、3個の踏段41,…)の位置に対応して配置される。なお、エスカレータ1が下りの設定となる場合は、空調装置6Bは、水平移動から傾斜移動に移行した数個の踏段41,…の位置に対応して配置される、という言い方になる。
【0026】
<実施形態1>
以下、実施形態1に係る空調システムを備えるエスカレータ1について説明する。
【0027】
図3に示すように、空調装置6は、筐体60と、本体61と、送風部としての送風ファン62とを備える。筐体60は、上部が開放されて吹出口となる有底の箱型である。本体61は、筐体60の底側に配置され、熱交換機能を有し、空調空気(暖気又は冷気)を生成する。送風ファン62は、空調空気を筐体60の吹出口から送風する。筐体60の吹出口は、上述した数個の踏段41,…に対面する。これにより、空調空気は、これら数個の踏段41,…の裏面側に向けて送風される。なお、図示しないが、空調装置6は、平面視にて矩形状を有し、筐体60の吹出口も矩形状を有する。一例として矩形状は正方形状である。また、熱交換により副生成された冷気又は暖気は、トラス2内の密閉空間から外部に排気されるようになっている。
【0028】
踏段41には、吹出口41cが形成される。より詳しくは、踏段41は、踏板部41aと、ライザ部(縦板部)41bとを備え、踏板部41aは、水平面に沿った板状であり、上面が踏面となり、ライザ部41bは、踏板部41aの後端から垂下する板状であり、円弧面状に湾曲しつつ下方に延びるものであるが、吹出口41cは、ライザ部41bに形成される。より詳しくは、吹出口41cは、ライザ部41bのうち、踏板部41aに近接する箇所に形成される。吹出口41cは、ライザ部41bの内外を貫通して形成され、空調装置6が生成した空調空気(空調風)の吹出口であり、空調装置6とともに空調システムを構成する。
【0029】
吹出口41cは、踏段41の幅方向に沿って長尺で所定の幅を有する長方形状を有する。吹出口41cの幅は、踏段41の側縁部及び欄干51の下部(スカートガード)間の隙間に比べて十分に大きい。このため、吹出口41cは、流路抵抗が小さく、トラス2内の密閉空間の局所的な開放部となる。これにより、空調装置6が生成した空調空気は、トラス2内に充満し、トラス2内で陽圧となり、一部が複数の吹出口41c,…から外部に排出される。特に、空調装置6の吹出口と対面する上述した数個の踏段41,…の吹出口41c,…については、空調装置6からの風圧が働き、吹き出される風量が多くなる。
【0030】
吹出口41cは、踏段41の幅方向の中央部に形成される。より詳しくは、吹出口41cは、ライザ部41bの幅方向の中央部に形成される。これにより、空調空気は、後続する踏段41の踏板部41aの上方において、踏板部41aの幅方向の端部よりも中央部で密となる。
【0031】
そうすると、乗り口3Aから踏段41に乗り込んだ乗客は、足元に空調空気を感知するとともに、より快適感を得ようとして、空調空気が密となっている踏板部41aの幅方向の中央部に近づこうとする。これにより、乗客は、欄干51から離れて通路の中心側に寄る立ち位置を取ることとなる。このため、本実施形態に係るエスカレータ1によれば、乗客が欄干51に接触しにくいエスカレータを提供することができる。そして、これにより、本実施形態に係るエスカレータ1によれば、踏段41の側縁部及び欄干51の下部(スカートガード)間の隙間への(衣服や靴紐等の)巻き込みを防止することができたり、乗客のスカートやズボンの裾が欄干51の下部に接触することの不快感を解消することができる。
【0032】
また、本実施形態に係るエスカレータ1によれば、踏段41の上に立つ乗客に対し、1つないし2つ先の踏段41の吹出口41cから足元に空調空気が送風され、2つないし3つ先の踏段41の吹出口41cから下半身に空調空気が送風される。また、通路全体的に空調空気が行き渡る。このため、本実施形態に係るエスカレータ1によれば、乗客は、冬季や夏季であっても快適に過ごすことができる。これは、エスカレータ1が屋外設置型や半屋外設置型の場合は特に有効である。
【0033】
また、本実施形態に係るエスカレータ1によれば、空調システムは、無端搬送体40の乗客受け入れ部の近傍箇所、無端搬送体40の乗客送り出し部の近傍箇所及び無端搬送体40の途中部の近傍箇所のうち、少なくとも乗客受け入れ部の近傍箇所に配置される空調装置6と、各踏段41に形成される吹出口41cとで構成される。このため、本実施形態に係るエスカレータ1によれば、空調システムを安価で提供することができる。
【0034】
<実施形態2>
次に、実施形態2に係る空調システムを備えるエスカレータ1について説明する。なお、以下においては、実施形態1と異なる点について記載し、同じ点については、実施形態1についての記載と同様であるとして、記載を省略する。
【0035】
図4に示すように、踏段41は、送風部としての送風ファン63を備える。送風ファン63は、踏段41の裏面側に配置される。より詳しくは、送風ファン63は、踏板部41aの裏面側であって、吹出口41cの中心線上又はこの近傍に配置される。これにより、空調空気は、吹出口41cに向けて送風される。踏段41に送風ファン63が設けられるため、空調装置6の送風ファン62は、あってもなくてもよい。
【0036】
なお、送風ファン63は、踏段41という可動部に配置される。そこで、送風ファン63への給電方法としては、ワイヤレス給電、摺動式給電、バッテリ、発電機(ダイナモ)等が採用可能である。ワイヤレス給電では、トラス2側に送電コイルが配置され、踏段41に受電コイルが配置される。摺動式給電では、トラス2側に踏段41の移動方向に沿って給電線が配置され、踏段41に給電線に摺接する受電体が配置される。バッテリは、踏段41に配置される。発電機は、たとえば踏段41の後輪の回転により発電するもので、踏段41に配置される。
【0037】
このように、実施形態2に係るエスカレータ1によっても、実施形態1に係るエスカレータ1が奏する作用効果と同様の作用効果を奏する。
【0038】
<実施形態3>
次に、実施形態3に係る空調システムを備えるエスカレータ1について説明する。実施形態3に係る空調システムは、実施形態1に係る空調システムの変形例である。なお、以下においては、実施形態1と異なる点について記載し、同じ点については、実施形態1についての記載と同様であるとして、記載を省略する。
【0039】
図5に示すように、踏段41は、ダクト64を備える。ダクト64は、踏段41の裏面側に配置される。より詳しくは、ダクト64は、踏板部41aの裏面側であって、吹出口41cの中心線上又はこの近傍に配置されるとともに、途中で斜め下方ないし下方に曲がり、入口が斜め下方ないし下方に向き、出口が吹出口41cに接続される。図示しないが、ダクト64は、吹出口41cと同じ横長の長方形状の断面形状を有する。ダクト64の入口側は、開口面積が大きくなるよう、テーパ状に形成される。これにより、空調空気は、ダクト64の入口から内部に取り込まれ、吹出口41cに誘導される。
【0040】
空調装置6は、フード65を備える。フード65は、筐体60の吹出口からダクト64の入口まで延長されるように形成され、ダクト64がより多くの空調空気を取り込むこと、ひいては、吹出口41cから吹き出される風量を上げることを可能にする。なお、踏段41の移動に伴ってダクト64も移動するが、ダクト64の入口とフード65の吹出口とが干渉しないよう、フード65の吹出口のエッジ形状が適宜設定される。言い換えれば、ダクト64は、踏段41の移動に伴い、ダクト64の入口がフード65の吹出口(空調装置6の吹出口)を掠めるように、移動する。図示しないが、フード65の吹出口も矩形状を有する。一例として矩形状は正方形状である。
【0041】
このように、実施形態3に係るエスカレータ1によっても、実施形態1に係るエスカレータ1が奏する作用効果と同様の作用効果を奏する。
【0042】
<その他の実施形態>
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0043】
上記実施形態1~3においては、吹出口41cは、無端搬送体40の幅方向の中央部のみに形成されることにより、無端搬送体40の幅方向の端部よりも中央部で空調空気が密となるように構成される。しかし、本発明は、これに限定されるものではない。たとえば、
図6(a)に示すように、無端搬送体40の幅方向の端部又は端部寄りに吹出口41dが形成されるものであってもよい。
【0044】
この場合、端部又は端部寄りの吹出口41dについては、中央部の吹出口41cと異なり、風向を無端搬送体40の幅方向中心側に向ける必要がある。そこで、上記実施形態1に係る構成であれば、
図6(b)に示すように、端部又は端部寄りの吹出口41dは、風向部としての1つ又は複数の風向板66を備える。風向板66は、踏段41の裏面側に配置される。より詳しくは、風向板66は、踏板部41aの裏面側であって、一部が回転自在に取り付けられ、風向を調整することができる。
【0045】
また、上記実施形態2に係る構成であれば、
図7(a)に示すように、端部又は端部寄りの吹出口41dに対応する送風ファン63は、軸線が無端搬送体40の幅方向中心側に向くように斜めに配置される。また、上記実施形態3に係る構成であれば、
図7(b)に示すように、端部又は端部寄りの吹出口41dは、風向部として同様の1つ又は複数の風向板66を備える。風向板66は、ダクト64内のうち、端部又は端部寄りの吹出口41dに対応する部分に配置される。
【0046】
端部又は端部寄りの吹出口41dを両端部又は両端部寄りに設けるか又は一方の端部又は端部寄りに設けるか、そして、中央部の吹出口41c及び端部又は端部寄りの吹出口41dの両方を設けるか又はいずれか一方のみを設けるかは、任意である。
【0047】
また、上記実施形態1~3においては、吹出口41cは、踏段41のライザ部41bに形成される。しかし、本発明は、これに限定されるものではない。たとえば、
図8(a)に示すように、吹出口41cは、踏段41の踏板部41a(の幅方向の中央部)に形成されるものであってもよい。一例として、吹出口41cは、
図8(b)に示すように、踏板部41aの内外を貫通し、二次元配列で形成される複数の孔である。なお、空調システムは、上記実施形態1~3のいずれであってもよい。
【0048】
また、上記実施形態1~3においては、空調装置6は、トラス2内に固定配置される。しかし、本発明は、これに限定されるものではない。たとえば、空調装置は、各踏段41に設けられ、各踏段41の裏面側に配置されるものであってもよい。この場合も、踏段41はトラス2内に配置されるため、各踏段41の裏面側に配置される空調装置もまたトラス2内に配置されるものである。
【0049】
また、上記実施形態1~3においては、空調装置6は、トラス2内に配置され、吹出口41cは、踏段41に形成される。しかし、別の発明として、空調装置は、無端搬送体の乗客受け入れ部における幅方向の中央部の上方の天井箇所に配置され、ここから空調空気を無端搬送体の幅方向の中央部に向けて送風するものであってもよい。
【0050】
また、上記実施形態1~3においては、乗客コンベアは、エスカレータである。しかし、
図8に示すように、送風口41cが踏面に形成される形態であれば、動く歩道にも適用できることは言うまでもない。なお、動く歩道には、踏段式の無端搬送体を備えるものと、ベルト式の無端搬送体(無端帯状搬送体)を備えるものとがある。
【0051】
また、物理的に干渉するものでない限り、以上に記載した技術要素を他の実施形態ないし例に適用すること、以上に記載した技術要素を他の実施形態ないし例に係る技術要素と置換すること、以上に記載した技術要素同士を組み合わせること等は、当然に可能であり、これは、本発明が当然に意図するところである。
【符号の説明】
【0052】
1…エスカレータ、2…トラス、2a…水平端部、2b…傾斜部、20…上弦材、21…下弦材、22…縦材、23…斜材、24…支持部材、3…乗降口、3A…乗り口、3B…降り口、30…フロアプレート、4…搬送部、40…無端搬送体、41…踏段、41a…踏板部、41b…ライザ部、41c,41d…吹出口、42…踏段チェーン、43…駆動モータ、5…ハンドレール部、50…ハンドレール、51…欄干、6…空調装置、6A…下端部側の空調装置、6B…上端部側の空調装置、6C…中間部の空調装置、60…筐体、61…本体、62…送風ファン(送風部)、63…送風ファン(送風部)、64…ダクト、65…フード、66…風向板