(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】契約調停装置、方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 30/06 20230101AFI20241001BHJP
G06Q 30/015 20230101ALI20241001BHJP
【FI】
G06Q30/06
G06Q30/015
(21)【出願番号】P 2022019949
(22)【出願日】2022-02-10
【審査請求日】2024-03-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000279
【氏名又は名称】弁理士法人ウィルフォート国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊川 宏美
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 元伸
【審査官】庄司 琴美
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-056300(JP,A)
【文献】特開2019-061635(JP,A)
【文献】特開2011-008309(JP,A)
【文献】特開2001-357245(JP,A)
【文献】特開2002-099767(JP,A)
【文献】特開2004-145534(JP,A)
【文献】特開2001-222588(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品を製造して販売するサプライヤと前記物品を購入するバイヤとの間における前記物品の受発注契約を支援する契約調停装置であって、
ソフトウェアプログラムを格納するメモリと、
前記ソフトウェアプログラムを実行するプロセッサとを有し、
前記プロセッサが前記ソフトウェアプログラムを実行することにより、
前記サプライヤが前記物品の受注において希望する条件であって該物品を提供することによる環境への影響に関する指標である環境指標に関する環境指標条件を含む複数の条件項目に関する条件である受注希望条件を前記サプライヤから予め取得する利用者管理部と、
前記バイヤが前記物品の発注において希望する条件であって前記複数の条件項目に関する条件である発注希望条件を前記バイヤから受け付け、前記受注希望条件が前記発注希望条件を満たすサプライヤを前記バイヤの契約先として特定する契約調整部と、
を実現する、契約調停装置。
契約調停装置。
【請求項2】
前記契約調整部は、
前記発注希望条件における前記複数の条件項目の確保したい順位を示す発注優先順位を前記バイヤから更に受け付け、
前記発注希望条件を満たすサプライヤが複数ある場合、前記複数のサプライヤのうち、前記発注優先順位がより高い条件項目において、前記受注希望条件における値および前記発注希望条件における値に基づく契約内容と前記発注希望条件における値との差分が最も小さいサプライヤを前記契約先として特定する、
請求項1に記載の契約調停装置。
【請求項3】
前記契約調整部は、前記発注希望条件における前記環境指標条件を満たすサプライヤが無ければ、該環境指標条件を満たすサプライヤが見つかるまで該環境指標条件を緩和し、前記見つかったサプライヤを前記契約先とする、
請求項1に記載の契約調停装置。
【請求項4】
前記契約調整部は、
前記発注希望条件における前記環境指標条件を満たすサプライヤが無ければ該環境指標条件を緩和し、
前記発注希望条件における緩和された環境指標条件を受け入れ可能か否か前記サプライヤに問合せ、
前記発注希望条件における緩和された環境指標条件を受け入れ可能なサプライヤについては、前記受注希望条件における前記環境指標条件の値を、前記発注希望条件における緩和された環境指標条件の値に適合させることにより、該サプライヤに前記発注希望条件における前記環境指標条件を満たさせる、
請求項3に記載の契約調停装置。
【請求項5】
前記利用者管理部は、更に、前記受注希望条件における前記複数の条件項目の確保したい順位を示す受注優先順位を前記サプライヤから予め取得し、
前記契約調整部は、前記サプライヤの前記受注優先順位が所定の順位閾値以上の条件項目については前記受注希望条件における値を、前記受注優先順位が前記順位閾値より低い条件項目については前記発注希望条件における値を、前記契約内容として特定する、
請求項2に記載の契約調停装置。
【請求項6】
前記環境指標がCO
2排出量または資源消費量である、
請求項1に記載の契約調停装置。
【請求項7】
前記受注希望条件は、前記サプライヤが再生可能エネルギーを利用した場合の前記条件項目の値を更に含み、
前記発注希望条件には、前記サプライヤが再生可能エネルギーを利用するか否かを、前記バイヤが指定することができ、
前記契約調整部は、前記発注希望条件において前記再生可能エネルギーを利用することが指定されていれば、前記再生可能エネルギーを利用した場合の値を用いて前記契約先を特定する、
請求項6に記載の契約調停装置。
【請求項8】
再生可能エネルギーを利用する方法として、前記サプライヤ自身が再生可能エネルギーを利用する第1方法と、前記サプライヤがベンダから再生可能エネルギーの利用に相当する価値を証明する証書の提供を受ける第2方法とがあり、
前記受注希望条件は、前記サプライヤが前記第1方法と前記第2方法への対応の可否を更に設定することができ、
前記発注希望条件は、前記サプライヤが前記第1方法と前記第2方法のいずれの方法で再生可能エネルギーを利用するかを更に指定することができ、
前記契約調整部は、前記発注希望条件において指定された方法に前記サプライヤが対応できる場合に、前記再生可能エネルギーを利用した場合の値を用いて前記契約先を特定する、
請求項7に記載の契約調停装置。
【請求項9】
前記複数の条件項目には、前記物品の納期に関する条件である納期条件と、前記物品の価格に関する条件である価格条件とが更に含まれる、
請求項1に記載の契約調停装置。
【請求項10】
物品を製造して販売するサプライヤと前記物品を購入するバイヤとの間における前記物品の受発注契約を支援するための契約調停方法であって、
ソフトウェアプログラムを格納するメモリと、前記ソフトウェアプログラムを実行するプロセッサとを有し、前記プロセッサが前記ソフトウェアプログラムを実行するコンピュータが、
前記サプライヤが前記物品の受注において希望する条件であって該物品を提供することによる環境への影響に関する指標である環境指標に関する環境指標条件を含む複数の条件項目に関する条件である受注希望条件を前記サプライヤから予め取得し、
前記バイヤが前記物品の発注において希望する条件であって前記複数の条件項目に関する条件である発注希望条件を前記バイヤから受け付け、前記受注希望条件が前記発注希望条件を満たすサプライヤを前記バイヤの契約先として特定する、
契約調停方法。
【請求項11】
物品を製造して販売するサプライヤと前記物品を購入するバイヤとの間における前記物品の受発注契約を支援するための契約調停プログラムであって、
前記サプライヤが前記物品の受注において希望する条件であって該物品を提供することによる環境への影響に関する指標である環境指標に関する環境指標条件を含む複数の条件項目に関する条件である受注希望条件を前記サプライヤから予め取得し、
前記バイヤが前記物品の発注において希望する条件であって前記複数の条件項目に関する条件である発注希望条件を前記バイヤから受け付け、前記受注希望条件が前記発注希望条件を満たすサプライヤを前記バイヤの契約先として特定する、ことを、
ソフトウェアプログラムを格納するメモリと、前記ソフトウェアプログラムを実行するプロセッサとを有し、前記プロセッサが前記ソフトウェアプログラムを実行するコンピュータに実行させるための契約調停プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、製品の売買契約を調停する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ICTサービスに関する環境への影響を評価するシステムが開示されている。特許文献1に開示された環境影響評価システムでは、評価式セットに、項目変数の一部に関連付けた、当該項目変数の変数値を特定するための関係式を含み、当該関係式を、当該変数値を示す定数または当該項目変数以外の他の項目変数の変数値の引用を示す引用変数で定義し、項目変数に関係式が関連付けされている場合には、当該関係式が示す定数または引用変数に基づき引用した他の項目変数の変数値を、当該項目変数の変数値として用いる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
製造業を含む様々な企業には、CO2排出量などの環境指標を勘案した企業活動が求められている。企業のCO2排出量について、サプライチェーン全体でのCO2排出量を評価するためのサプライチェーン排出量という指標を用いる考え方がある。ある企業(バイヤ)のサプライチェーン排出量の中には、他の企業(サプライヤ)から製品を購入することによる間接的なCO2排出量が含まれる。そのため、バイヤがサプライヤから製品を調達する受発注契約において、価格や納期だけでなく、環境指標を勘案することが求められる。
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されたシステムは、ICTサービスに関する環境への影響を評価するものであるため売買契約を考慮しておらず、売買契約において環境指標を勘案するには不向きである。
【0006】
本開示のひとつの目的は、環境指標を勘案して受発注契約を調停する技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示のひとつの態様による契約調停装置は、物品を製造して販売するサプライヤと前記物品を購入するバイヤとの間における前記物品の受発注契約を支援する契約調停装置であって、ソフトウェアプログラムを格納するメモリと、前記ソフトウェアプログラムを実行するプロセッサとを有し、前記プロセッサが前記ソフトウェアプログラムを実行することにより、前記サプライヤが前記物品の受注において希望する条件であって該物品を提供することによる環境への影響に関する指標である環境指標に関する環境指標条件を含む複数の条件項目に関する条件である受注希望条件を前記サプライヤから予め取得する利用者管理部と、前記バイヤが前記物品の発注において希望する条件であって前記複数の条件項目に関する条件である発注希望条件を前記バイヤから受け付け、前記受注希望条件が前記発注希望条件を満たすサプライヤを前記バイヤの契約先として特定する契約調整部と、を実現する。
【発明の効果】
【0008】
本開示のひとつの態様によれば、環境指標を勘案して受発注契約を調停することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態の契約調停システムのブロック図である。
【
図2】契約調停装置のソフトウェア構成を示すブロック図である。
【
図6】契約調停装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図8】受注希望条件を入力するためのユーザインタフェースの一例を示す図である。
【
図9】発注希望条件を入力するためのユーザインタフェースの一例を示す図である。
【
図10】契約調停処理が実行された後にバイヤに提示されるユーザインタフェースの一例を示す図である。
【
図11】契約調停処理が実行された後にサプライヤに提示されるユーザインタフェースの一例を示す図である。
【
図12】品目毎の月間のCO
2排出量の合計値を一覧にした表を示す図である。
【
図13】契約毎に品目のCO
2排出量の内訳の表を示す図である。
【
図14】排出量実績を閲覧するためのユーザインタフェースの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0011】
図1は、本実施形態の契約調停システムのブロック図である。契約調停システムは、契約調停装置10と操作端末20とを有している。
【0012】
契約調停システムは、契約調停装置10と複数の操作端末20とを有している。操作端末20はネットワーク70経由で契約調停装置10に接続可能である。
【0013】
契約調停装置10は、サプライヤとバイヤとの間で交わされる受発注契約を支援する装置である。契約調停装置10は、物品の調達において、価格および納期に加え、環境指標を勘案した受発注契約を可能にする。なお、環境指標の具体例としては、CO2排出量や電力消費量などがある。
【0014】
サプライヤ31は、自社製品である物品を製造して販売する企業である。バイヤ21は、サプライヤ31から物品を購入し、それを自社製品に利用する企業である。例えば、バイヤ21は、サプライヤ31から購入した物品を自社製品に部品として組み込む。また、サプライヤ31の下位に更にサプライヤ(下位サプライヤ32)がいて、サプライヤ31は下位サプライヤ32から物品を購入し、自社の製品に利用する場合がある。これらのバイヤ21、サプライヤ31、および下位サプライヤ32が契約調停システムのシステム利用者となる。
【0015】
図1の例では、企業A~Nがバイヤ21としてのシステム利用者であり、企業AAがサプライヤ31としてのシステム利用者であり、企業NNが下位サプライヤとしてのシステム利用者である。操作端末20は、各システム利用者が利用する端末装置である。システム利用者であるバイヤ21、サプライヤ31、および下位サプライヤ32は操作端末20を介して契約調停装置10により提供されるサービスを利用し、受発注契約を結ぶことができる。
【0016】
図2は、契約調停装置のソフトウェア構成を示すブロック図である。契約調停装置10は利用者管理部101と契約調整部102とを有する。
【0017】
利用者管理部101は、契約調停システムを利用するシステム利用者に対して情報を入力するためのユーザインタフェースを提供し、入力された情報を利用者情報111として記録する。例えば、利用者管理部101は、サプライヤ31に対して事前に受注希望条件を入力するためのユーザインタフェースを提供し、入力された情報を利用者情報111として記録する。受注希望条件を入力するためのユーザインタフェースの詳細は後述する。
【0018】
利用者情報111には、バイヤ21、サプライヤ31、および下位サプライヤ32のそれぞれの情報が含まれている。サプライヤ31の利用者情報には、当該サプライヤ31が自社製品である物品の受注に際して希望する条件である受注希望条件が含まれる。受注希望条件は、当該物品をバイヤ21に提供することによる環境への影響に関する指標である環境指標を含む複数の条件項目に関する条件である。
【0019】
図3は、受注希望条件の情報の一例を示す図である。受注希望条件情報114には、「企業ID」、「品目」、「購入単位」、「納期」、「標準消費量」、「調整可能値」、「優先度情報」、「再生可能エネルギー利用情報」が登録される。
【0020】
「企業ID」は、サプライヤ31を識別する識別情報である。「品目」は、受発注契約の対象となる当該物品の品目である。「購入単位」は、当該物品を一括で購入すべき最小個数である。「納期」は、当該物品の納品に要する期間である。
【0021】
「標準消費量」は、当該物品を提供することにより生じる標準の資源消費量である。標準の資源消費量というのは、再生可能エネルギーを利用しなかった場合の資源消費量を意味する。資源消費量は、CO2排出量と同様に環境指標である。資源消費量とCO2排出量は相互に換算することができる。資源消費量については、後述する環境指標管理処理に利用するために、更に内訳を設定することにしてもよい。例えば、当該物品の製造による資源消費量、当該物品の配送による資源消費量、当該物品に部品等として用いられる物品の上流工程での資源消費量のそれぞれを設定することにしてもよい。
【0022】
「調整可能値」は、再生可能エネルギーを利用することにより調整可能な資源消費量である。
【0023】
「優先度情報」は、当該物品の受発注契約において当該サプライヤが優先する項目を示す情報である。図中の「>」は優先順位を示している。例えば、「消費量>納期>単価」は、当該サプライヤは、当該物品を受注するに際して、単価よりも納期を優先し、納期よりも資源消費量を優先することを意味している。例えば、単価よりも納期を優先するというのは、受発注契約を成立させるためにいずれかの項目で譲歩が必要な場合に、より優先順位の低い単価を納期よりも先に譲歩することを意味する。
【0024】
「再生可能エネルギー利用情報」は、当該物品の提供において再生可能エネルギーを利用することにより資源消費量を低減させることが可能か否かを示す。「可」は、当該サプライヤが当該物品の製造や輸送等において再生可能エネルギーを利用できることを意味する。「提供受入可」は、環境指標に関する権利の提供を受け、その権利を主張することにより当該物品の資源消費量を削減できることを示す。環境指標に関する権利の提供というのは、例えば、グリーン電力証書等の再生可能エネルギー証書の提供である。
【0025】
また、利用者管理部101は、バイヤ21およびサプライヤ31に対して、サプライチェーン排出量を確認するためのユーザインタフェースを提供する。例えば、バイヤ21のサプライチェーン排出量には、バイヤ21がサプライヤ31から調達して自社製品に組み込んだ部品のサプライヤ31におけるCO2排出量が含まれる。その関係性をユーザインタフェース画面上で確認することが可能となる。サプライチェーン排出量を確認するためのユーザインタフェースの詳細は後述する。
【0026】
契約調整部102は、契約調停処理を実行する。契約調停処理は、バイヤ21から提示された発注希望条件と、サプライヤ31が事前に登録した受注希望条件とに基づいて、当該バイヤ21の契約先となるサプライヤ31と、当該契約の契約内容とを特定する処理である。例えば、契約調整部102は、バイヤ21の発注希望条件を満たす受注希望条件を登録しているサプライヤ31を当該バイヤ21の契約先として特定する。
【0027】
図4は、発注希望条件の情報の一例を示す図である。発注希望条件情報113には、「発注番号」、「企業ID」、「品目」、「数量」、「納期」、「消費量」、「優先度情報」、「再生可能エネルギー提供情報」が登録される。
【0028】
「発注番号」は、受発注契約の対象となる発注を特定する番号である。「企業ID」は、受発注契約を結ぼうするバイヤ21の識別情報である。「品目」は、受発注契約の対象となる当該物品の品目である。「数量」は、受発注契約において購入する当該物品の個数である。
【0029】
「納期」は、当該物品の希望する納品日である。「消費量」は、サプライヤ31が当該物品を提供することにより生じる資源消費量の希望値である。サプライヤ31の希望は、資源消費量が希望値以下であることである。
【0030】
「優先度情報」は、当該物品の受発注契約において当該バイヤが優先する項目を示す情報である。図中の「>」は優先順位を示している。例えば、「消費量>納期>単価」は、当該バイヤは、当該物品を発注するに際して、単価よりも納期を優先し、納期よりも資源消費量を優先することを意味している。例えば、単価よりも納期を優先するというのは、受発注契約を成立させるためにいずれかの項目で譲歩が必要な場合に、より優先順位の低い単価を納期よりも先に譲歩することを意味する。
【0031】
「再生可能エネルギー提供情報」は、当該物品の提供を受けるに際し再生可能エネルギーを低減させるために、環境指標に関する権利を提供できるか否かを示す。環境指標に関する権利の提供というのは、例えば、グリーン電力証書等の再生可能エネルギー証書の提供である。「可 RE001」は、環境指標に関する権利を提供できること、その権利の識別情報、例えば証書番号がRE001であることを意味している。
【0032】
契約調整部102は、バイヤ21から発注希望条件情報113を受け付けると、予め登録されている各サプライヤ31の利用者情報111の受注希望条件を参照し、発注希望条件情報113に示された発注希望条件を満たす受注希望条件を登録しているサプライヤ31を探索し、それが見つかるとそのサプライヤ31を契約先として特定する。
【0033】
各条件項目の判断は、概略、以下のように行われる。
【0034】
発注希望条件情報113の「品目」と利用者情報111の「品目」が一致していれば、当該条件項目は満たされる。発注希望条件情報113における「数量」が利用者情報111における「購入単位」の倍数であれば当該条件項目は満たされる。発注希望条件情報113の「納期」が、現在日付に利用者情報111の「納期」を加算した日以前であれば、当該条件項目は満たされる。
【0035】
利用者情報111の「標準消費量」が、発注希望条件情報113の「消費量」以下であれば、当該条件項目は、再生可能エネルギーを利用しなくても満たされる。利用者情報111の「標準消費量」が、発注希望条件情報113の「消費量」を超えていても、利用者情報111の「再生可能エネルギー情報」が「可」であり、「標準消費量」から「調整可能値」を減算した値が、発注希望条件情報113の「消費量」以下であれば、再生可能エネルギーを利用することにより条件が満たされる。また、利用者情報111の「標準消費量」が、発注希望条件情報113の「消費量」を超えていても、発注希望条件情報113の「再生可能エネルギー提供」が「可」であり、利用者情報111の「再生可能エネルギー情報」が「提供受入可」であれば、環境指標に関する権利の提供により条件が満たされる。
契約調停処理の詳細は後述する。
【0036】
契約調整部102は、発注希望条件を満たす受注希望条件が見つかって契約先を特定すると、バイヤ21とサプライヤ31の間の受発注契約の内容を示す契約情報112を生成する。
【0037】
図5は、契約情報の一例を示す図である。契約情報112には、「契約ID」、「発注企業ID」、「受注企業ID」、「品目」、「数量」、「排出量」、「納期」、「証書番号」が登録される。
【0038】
「契約ID」は、当該受発注契約の識別情報である。「発注企業ID」は、当該受発注契約の発注元の企業となったバイヤ21の識別情報である。「受注企業ID」は、当該受発注契約の契約先の企業となったサプライヤ31の識別情報である。「品目」は、当該受発注契約の対象となった物品の品目である。「数量」は、当該受発注契約において購入される物品の個数である。「排出量」は、当該受発注契約によって売買される物品によるCO2排出量である。CO2排出量は、資源消費量から換算される。「納期」は、当該受発注契約によって売買される物品の納品予定日である。「証書番号」は、当該受発注契約において物品を発注する発注元の企業から、受注する契約先の企業へ提供される再生可能エネルギー証書の識別番号である。
【0039】
また、契約調整部102は、システム利用者の環境指標の管理を支援する処理(環境指標管理処理)を実行する。環境指標管理処理は、受発注契約の環境指標の値を一覧表示したり、集計表示したりする処理である。バイヤ21やサプライヤ31等のシステム利用者は自社のサプライチェーン排出量を容易に確認することができる。
【0040】
図6は、契約調停装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【0041】
契約調停装置10は、ハードウェアとしては、サーバ装置等の一般的なコンピュータであり、インターネット等のネットワーク70経由で操作端末20と接続する。
【0042】
契約調停装置10は、ハードウェアとして、主制御部231、主記憶部234、入力部235、出力部236、通信部237を有し、それらがバス238を介して相互に接続されている。
【0043】
主記憶部234は、書込みおよび読み出しが可能にデータを記憶する装置である。
【0044】
主制御部231は、ソフトウェアプログラムと、利用者情報111、契約情報112、および発注希望条件情報113の必要なデータとを主記憶部234に展開し、ソフトウェアプログラムを実行する処理装置である。主制御部231にはプロセッサ232およびRAM(Random Access Memory)を備え、プロセッサ232が適宜RAM233を利用しながらソフトウェアプログラムの処理を実行する。主制御部231がソフトウェアプログラムを実行することにより、
図2に示した利用者管理部101および契約調整部102が実現される。
【0045】
通信部237は、主制御部231にて処理された情報を有線または無線あるいはそれら両方を含むネットワーク70を介して送信し、またネットワーク70を介して受信した情報を主制御部231に伝達する。受信した情報は主制御部231にてソフトウェアプログラムの処理に利用される。
【0046】
入力部235は、キーボードやマウスなど操作者による操作入力による情報を受け付ける装置であり、入力された情報は主制御部231にてソフトウェアプログラムの処理に利用される。
【0047】
出力部236は、主制御部231による処理に伴って画像やテキストの情報をディスプレイ画面に表示する装置である。
【0048】
【0049】
ステップS101にて、利用者管理部101は、受注希望条件を入力するためのユーザインタフェースをサプライヤ31および下位サプライヤ32に提供し、サプライヤ31および下位サプライヤ32から受注希望条件を取得し、利用者情報111に設定する。
【0050】
図8は、受注希望条件を入力するためのユーザインタフェースの一例を示す図である。
【0051】
図8に示す受注希望条件設定画面は、サプライヤ31が自社の製品の受注希望条件を含む利用者情報111を登録する画面である。本画面から情報を入力すると、
図3に例示した利用者情報111が登録される。例えば、排出量(月間)の「通常」の値を設定すると、それが利用者情報111における「標準消費量」に登録される。更に、排出量(月間)の「再エネ」の値とを入力すると、「通常」に設定した値から「再エネ」に設定した値を減算した値が、利用者情報111における「調整可能値」に登録される。排出量削減率の欄には、「通常」と「再エネ」について、CO
2排出量の前年実績に比べてどの程度の削減されるかが計算され、表示される。また、納期の欄に「通常」の納期と「再エネ利用」の納期とを設定すると、利用者情報111の「納期」にはそれらの最小値と最大値で示された範囲が登録される。また、オプションの欄に設定した情報を基に、利用者情報111における「再生可能エネルギー情報」が登録される。例えば、「再エネはバイヤ提供の場合のみ対応」にチェックを設定すると、利用者情報111の「再生可能エネルギー情報」には「提供受入可」が登録される。また、単価の欄に標準値と変動幅とを設定すると、その単価の情報(不図示)が利用者情報111に登録される。
【0052】
図7に戻り、契約調整部102は、発注希望条件を入力するためのユーザインタフェースをバイヤに提供し、ステップS102にてバイヤ21が発注希望条件の情報を設定すると、ステップS103にて、契約調整部102がその発注希望条件の情報を取得する。
【0053】
図9は、発注希望条件を入力するためのユーザインタフェースの一例を示す図である。
【0054】
図9に示す発注希望条件設定画面は、バイヤ21がサプライヤ31から部品を購入する際の発注希望条件情報113を登録する画面である。本画面から情報を入力すると、
図4に例示した発注希望条件情報113が登録される。
【0055】
例えば、納期の欄に最先日から最後日までの範囲を設定すると、その最先日に設定した日付が、発注希望条件情報113の「納期」に登録される。最後日に設定した日付も、発注希望条件情報113に登録される(不図示)。また、単価の欄に標準値と変動幅とを設定すると、その単価の情報(不図示)が発注希望条件情報113に登録される。また、「サプライヤへの電力買取枠提供」における「あり」の欄にチェックを設定し「証書設定」に証書番号を設定すると、発注希望条件情報113には「再生可能エネルギー提供」の欄に「可」と証書番号が登録される。
【0056】
また、「排出量(年間)」の欄に、CO2排出量の年間の目標値を設定でき、また指定なしを選択することも可能である。目標値が設定されると、その目標値の情報(不図示)が発注希望条件情報113に登録される。また、「排出量削減率」の欄に、CO2排出量の年間の削減率の目標値を指定でき、また指定なしを選択することも可能である。目標値が指定されると、その目標値の情報(不図示)が発注希望条件情報113に登録される。また、「電力指定」の欄では、「再エネ」と「グリーン電力」にチェックを設定でき、また指定なしを選択することも可能である。「再エネ」が指定されると、発注希望条件情報113には、再生可能エネルギーの利用の希望する旨の情報(不図示)が発注希望条件情報113に登録される。「再エネ」にチェックが設定されると、発注希望条件情報113には、再生可能エネルギーの利用を希望する旨の情報(不図示)が発注希望条件情報113に登録される。「グリーン電力」にチェックが設定されると、発注希望条件情報113には、グリーン電力の利用を希望する旨の情報(不図示)が発注希望条件情報113に登録される。
【0057】
図7に戻り、ステップS104-105にて、契約調整部102は、各サプライヤ31の利用者情報111の受注希望条件と、バイヤ21の発注希望条件情報113の発注希望条件とを対比し、バイヤ21の資源消費量に関する条件を満たすサプライヤ31があるか否か判定する。なお、バイヤ21が発注希望条件情報113に資源消費量の条件を設定していなければ、当該品目を提供可能な全てのサプライヤ31が、資源消費量の条件を満たすものとして扱う。例えば、契約調整部102は、
図4に例示した発注希望条件情報113において「消費量」の項目に値が設定されていなければ、当該品目を提供可能な全てのサプライヤ31が、バイヤ21の発注希望条件における資源消費量に関する条件を満たすものとして扱えばよい。
【0058】
利用者情報111の「標準消費量」が、発注希望条件情報113の「消費量」を「数量」で正規化した値以下であるサプライヤ31が見つかったら、バイヤ21の資源消費量に関する条件を満たすサプライヤ31があると判定される。そのようなサプライヤ31が見つからなければ、バイヤ21の資源消費量に関する条件を満たすサプライヤ31がないと判定される。
【0059】
バイヤ21の資源消費量に関する条件を満たすサプライヤ31がないと判定されると、ステップS106にて、契約調整部102は、バイヤ21の発注希望条件情報113における資源消費量に関する条件を変更することが可能か否か判定する。例えば、発注希望条件情報113の優先度情報において「消費量」の優先順位が所定順位以下であり、「消費量」に加算した値が所定値以下であれば、バイヤ21の発注希望条件情報113における資源消費量に関する条件を変更することが可能と判定することにしてもよい。
【0060】
ステップS106にて、バイヤ21の発注希望条件情報113における資源消費量に関する条件を変更することが可能でなければ、契約不成立となるので、契約調整部102は、契約不成立となった旨と発注希望条件の見直しを促す旨の通知をバイヤ21に送信して、契約調停処理を終了する。
【0061】
ステップS106にて、バイヤ21の発注希望条件情報113における資源消費量に関する条件を変更することが可能であれば、契約調整部102は、ステップS107にて、バイヤ21の資源消費量に関する条件を緩和する。例えば、発注希望条件情報113における「消費量」の値に所定値を加算して得た値を、新たな「消費量」の値とすることにしてもよい。
【0062】
このとき、契約調整部102は、発注希望条件情報113における優先度情報を参照し、そこに設定されている情報に応じて、条件の緩和方法のオプションをバイヤ21に提示し、バイヤ21によって選択されたオプションの方法で条件を緩和することにしてもよい。
【0063】
続いて、契約調整部102は、ステップS108にて、サプライヤ31との契約条件に関する調整が要求されるか否か判定する。例えば、ステップS107で緩和された資源消費量に関する条件を満たすサプライヤ31が見つかれば、調整は不要と判定し、そのようなサプライヤ31が見つからなければ調整が要求されると判定することにしてもよい。
【0064】
ステップS108にて調整が要求されると判定されると、契約調整部102は、ステップS107にて緩和された資源消費量に関する条件を各サプライヤ31に通知し、ユーザインタフェースを介して、サプライヤ31にその条件の受け入れが可能であるか否かの判定を促す。
【0065】
ステップS109にて、サプライヤ31が、緩和された資源消費量に関する条件の受け入れが可能と判断すれば、ステップS112にて、そのサプライヤ31は、自身の利用者情報111に含まれる受注希望条件における資源消費量に関する条件項目の値を、緩和された資源消費量に関する条件を満たすように変更し、その旨を契約調停装置10に通知する。
【0066】
一方、ステップS109にて、サプライヤ31が、緩和された資源消費量に関する条件の受け入れが可能でないと判断すれば、ステップS110にて、サプライヤ31は、自社の製品に部品を提供する下位サプライヤ32に対して要求する資源消費量の条件を緩和し、緩和委した条件を下位サプライヤに通知する。下位サプライヤ32では、ステップS111にて、緩和された条件の受け入れが可能であるか否か判断する。条件の受け入れが可能であれば、受け入れが可能である旨をサプライヤ31に通知する。
【0067】
下位サプライヤ32から条件を受け入れ可能である旨の通知を受けたサプライヤ31は、ステップS112にて、下位サプライヤ32が受け入れた条件を基に、自身の利用者情報111における資源消費量に関する条件項目の値を、バイヤ21にて緩和された資源消費量に関する条件を満たすように変更し、その旨を契約調停装置10に通知する。
【0068】
ステップS109からステップS112の操作は全てのサプライヤ31および下位サプライヤ32が行う。その後、契約調整部102は、ステップS113にて、緩和した資源消費量に関する条件を満たすサプライヤ31があるか否か判定する。ステップS112にて、緩和された資源消費量に関する条件を満たすように変更し、その旨を契約調停装置10に通知したサプライヤ31があった場合には、緩和した資源消費量に関する条件を満たすサプライヤ31があると判定すればよい。
【0069】
ステップS113にて、緩和した資源消費量に関する条件を満たすサプライヤ31がないと判定された場合、契約調整部102は、ステップS106に戻る。
【0070】
一方、ステップS113にて、緩和した資源消費量に関する条件を満たすサプライヤ31があると判定された場合、契約調整部102は、ステップS114にて、緩和した資源消費量に関する条件を満たすサプライヤ31とバイヤ21との受発注契約の内容を特定し、特定した内容と、バイヤ21の当初の発注希望条件情報113との各条件項目における差分を算出する。ここでは一例として、受け入れた資源消費量に関する条件項目の値を含む、サプライヤ31の受注希望条件の内容を受発注契約の内容として特定する。差分は、資源消費量、納期、単価の各条件項目について算出する。発注希望条件情報113において、納期が最先日と最後日によって設定されている場合、差分の算出には最先日を用いる。また、発注希望条件情報113において、単価が標準値と変動幅とによって設定されている場合、差分の算出には標準値を用いる。緩和した資源消費量に関する条件を満たすサプライヤ31が複数あれば、それら全てのサプライヤ31について差分の算出を行う。
【0071】
続いて、ステップS115では、契約調整部102は、緩和した資源消費量に関する条件を満たすサプライヤ31が複数であった場合、資源消費量、納期、単価のうち、バイヤ21の発注希望条件情報113における優先度情報に示された優先順位が上位の項目における差分が最小のサプライヤ31を契約先として特定する。
【0072】
更に、ステップS116では、契約調整部102は、その特定したサプライヤ31とバイヤ21との受発注契約の内容を、そのサプライヤ31およびバイヤ21に通知する。
【0073】
なお、本実施形態では、ステップS108にて、発注希望条件の資源消費量に関する条件を緩和したときに、サプライヤ31にその旨およびその条件の内容を通知して条件の受け入れが可能か否かの判断を求めることとしているが、この例にされることはない。他の例として、ステップS107の後にステップS113に移行し、緩和された条件を満たすサプライヤがあるか否かの判定を行うこととしてもよい。
【0074】
図10は、契約調停処理が実行された後にバイヤに提示されるユーザインタフェースの一例を示す図である。
【0075】
図10には、バイヤ21がサプライヤ31から、品目XXXを、納期2021/11/10、単価100,000円で購入するという受発注契約の内容が示されている。その受発注契約では、バイヤ21からサプライヤ31に対して電力買取枠(証書RE0123)の提供があり、その電力の提供量が1000/kWhとなっている。納期はバイヤ21の希望に対して3日後である。単価はバイヤ21の希望に対して10,000円だけ高くなっている。「優先結果」には、発注希望条件の優先度情報にて優先順位を指定した各条件項目について、契約内容における値と、発注希望条件における値との異同が示されている。「排出量OK」は、CO
2排出量の条件項目については、バイヤ21の希望が満たされたことを意味している。「想定排出量(年間)」には、品目xxxに関連するCO
2排出量の本年度の予測値が表示される。「排出量削減率」には、昨年度の実績のCO2排出量から、上記想定排出量(年間)への削減率が表示される。
【0076】
図11は、契約調停処理が実行された後にサプライヤに提示されるユーザインタフェースの一例を示す図である。「優先結果」には、受注希望条件の優先度情報にて優先順位を指定した各条件項目について、契約内容における値と、受注希望条件における値との異同が示されている。「優先結果」を見ると、サプライヤ31の側では、受発注契約における単価はサプライヤ31の希望の金額に対して10,000円高い金額になっているが、納期とCO
2排出量は、サプライヤ31の希望の範囲内に収まっている。
【0077】
また、複数の契約調停処理が実行されると、それら受発注契約に関連するCO2排出量の情報が蓄積され、蓄積された情報は環境指標管理処理に供されることになる。契約調整部102は、蓄積されたCO2排出量の情報を基に環境指標管理処理を実行することにより、CO2排出量の情報を集計したり加工したりしユーザインタフェースによってシステム利用者に提示する。
【0078】
図12は、品目毎の月間のCO
2排出量の合計値を一覧にした表を示す図である。本表には、「企業ID」、「品目」、「月間排出量合計」、「加算元契約ID」が記載されている。「企業ID」は、参照する対象のバイヤ21やサプライヤ31等の企業の識別情報である。「品目」は、参照する対象の物品の品目である。「月間排出量合計」は、当該企業における当該品目に関する月間のCO
2排出量の合計値である。例えば、10000[21/10]は、2021年10月のCO
2排出量が1000であることを示している。「加算元契約ID」は、「月間排出量合計」の中にCO
2排出量が合算された各契約の識別情報である。
【0079】
図13は、契約毎に品目のCO
2排出量の内訳の表を示す図である。本表には、「契約ID」、「品目」、「合計排出量」、「製造排出量」、「配送排出量」、「上流排出量」が記載されている。
【0080】
「契約ID」は、当該契約の識別情報である。「品目」は、当該物品の品目である。「合計排出量」は、当該契約における当該品目の物品に関わるCO2排出量の合計値である。「製造排出量」は、当該契約における当該品目の物品の製造に関わるCO2排出量であり、当該物品の製造による資源消費量から換算される。「配送排出量」は、当該契約における当該品目の物品の配送に関わるCO2排出量であり、当該物品の配送による資源消費量から換算される。「上流排出量」は、当該契約における当該品目の物品に利用された部品等の上流工程でのCO2排出量であり、当該物品に部品等として用いられる物品の上流工程での資源消費量から換算される。製造排出量と配送排出量と上流排出量との合計が合計排出量となる。
【0081】
図14は、排出量実績を閲覧するためのユーザインタフェースの一例を示す図である。
図14には、ある企業が自社の製品に関するCO
2排出量を閲覧する画面の例が示されている。製品の品種として「YYY」を指定し、集計の時期的な範囲を「9月」とし、削減目標として「3%」を指定している。円グラフは、「YYY」を含む当該企業の製品のCO
2排出量の割合を示している。その下のサプライチェーン図には、自社の製品YYYに関するCO
2排出量が1000であり、その削減目標が3%であり、そのYYYに関するCO
2排出量のうち、サプライヤAAから調達した部品に関するCO
2排出量が100であり、サプライヤBBから調達した部品に関するCO
2排出量が20であり、サプライヤCCから調達した部品に関するCO
2排出量が80であることを示している。
【0082】
その下の折れ線グラフは、集計範囲として指定された9月を含む1年間の各部品に関する月間のCO2排出量の遷移を示している。現在時点以前については実績値が示され、将来については予測値が示される。
【0083】
以上説明した本実施形態には以下に示す各事項が含まれている。ただし、本実施形態に含まれる事項が以下に示すものに限定されることはない。
【0084】
(事項1)
物品を製造して販売するサプライヤと前記物品を購入するバイヤとの間における前記物品の受発注契約を支援する契約調停装置であって、
ソフトウェアプログラムを格納するメモリと、
前記ソフトウェアプログラムを実行するプロセッサとを有し、
前記プロセッサが前記ソフトウェアプログラムを実行することにより、
前記サプライヤが前記物品の受注において希望する条件であって該物品を提供することによる環境への影響に関する指標である環境指標に関する環境指標条件を含む複数の条件項目に関する条件である受注希望条件を前記サプライヤから予め取得する利用者管理部と、
前記バイヤが前記物品の発注において希望する条件であって前記複数の条件項目に関する条件である発注希望条件を前記バイヤから受け付け、前記受注希望条件が前記発注希望条件を満たすサプライヤを前記バイヤの契約先として特定する契約調整部と、
を実現する、契約調停装置。
本事項によれば、環境指標条件を他の条件項目とともに受注と発注の条件に含め契約先を特定するので、環境指標を勘案した受発注契約を好適に調停することが可能となる。また、バイヤがサプライヤから購入した物品を組み込んで自社の物品を生産する場合に、バイヤがサプライヤから購入した物品の分の環境指標(例えばCO2排出量)が明確となるので、バイヤにおけるサプライチェーン全体での環境指標(例えばサプライチェーン排出量)の算出が容易となる。
【0085】
(事項2)
上記事項1において、
前記契約調整部は、
前記発注希望条件における前記複数の条件項目の確保したい順位を示す発注優先順位を前記バイヤから更に受け付け、
前記発注希望条件を満たすサプライヤが複数ある場合、前記複数のサプライヤのうち、前記発注優先順位がより高い条件項目において、前記受注希望条件における値および前記発注希望条件における値に基づく契約内容と前記発注希望条件における値との差分が最も小さいサプライヤを前記契約先として特定する。
本事項によれば、バイヤの発注希望条件を満たすサプライヤが複数ある場合に、バイヤが重視する条件項目においてバイヤの希望値に近い値で受注可能なサプライヤを契約先とするので、バイヤの発注希望条件を満たすサプライヤが複数ある場合にバイヤの希望に合ったサプライヤを適切に契約先に選択することができる。
【0086】
(事項3)
上記事項1において、
前記契約調整部は、前記発注希望条件における前記環境指標条件を満たすサプライヤが無ければ、該環境指標条件を満たすサプライヤが見つかるまで該環境指標条件を緩和し、前記見つかったサプライヤを前記契約先とする。
本事項によれば、バイヤの環境指標条件を緩和することでバイヤの発注希望条件を満たすサプライヤを見つけるので、環境指標を勘案した受発注契約を好適に調停することが可能となる。
【0087】
(事項4)
上記事項3において、
前記契約調整部は、
前記発注希望条件における前記環境指標条件を満たすサプライヤが無ければ該環境指標条件を緩和し、
前記発注希望条件における緩和された環境指標条件を受け入れ可能か否か前記サプライヤに問合せ、
前記発注希望条件における緩和された環境指標条件を受け入れ可能なサプライヤについては、前記受注希望条件における前記環境指標条件の値を、前記発注希望条件における緩和された環境指標条件の値に適合させることにより、該サプライヤに前記発注希望条件における前記環境指標条件を満たさせる。
本事項によれば、バイヤによる条件の緩和とサプライヤによる条件の受け入れとによる相互の歩み寄りにより契約先を特定するので、環境指標を勘案した複雑な受発注契約を好適に調停することが可能となる。
【0088】
(事項5)
上記事項2において、
前記利用者管理部は、更に、前記受注希望条件における前記複数の条件項目の確保したい順位を示す受注優先順位を前記サプライヤから予め取得し、
前記契約調整部は、前記サプライヤの前記受注優先順位が所定の順位閾値以上の条件項目については前記受注希望条件における値を、前記受注優先順位が前記順位閾値より低い条件項目については前記発注希望条件における値を、前記契約内容として特定する。
本事項によれば、サプライヤが重視する条件項目をサプライヤの希望の値にし、比較的重視しない条件項目をバイヤの希望の値として契約内容を特定するので、バイヤとサプライヤの両方の希望を調整した契約内容を特定することができる。
【0089】
(事項6)
上記事項1において、
前記環境指標がCO2排出量または資源消費量である、
本事項によれば、CO2排出量または資源消費量を考量した複雑な受発注契約を好適に調停することができる。
【0090】
(事項7)
上記事項6において、
前記受注希望条件は、前記サプライヤが再生可能エネルギーを利用した場合の前記条件項目の値を更に含み、
前記発注希望条件には、前記サプライヤが再生可能エネルギーを利用するか否かを、前記バイヤが指定することができ、
前記契約調整部は、前記発注希望条件において前記再生可能エネルギーを利用することが指定されていれば、前記再生可能エネルギーを利用した場合の値を用いて前記契約先を特定する。
本事項によれば、サプライヤは再生可能エネルギーを利用した場合と利用しない場合の受注希望条件を設定でき、バイヤは再生可能エネルギーの利用を指定できるので、再生可能エネルギーを利用することによる環境価値を勘案した受発注契約が可能となる。
【0091】
(事項8)
上記事項7において、
再生可能エネルギーを利用する方法として、前記サプライヤ自身が再生可能エネルギーを利用する第1方法と、前記サプライヤがベンダから再生可能エネルギーの利用に相当する価値を証明する証書の提供を受ける第2方法とがあり、
前記受注希望条件は、前記サプライヤが前記第1方法と前記第2方法への対応の可否を更に設定することができ、
前記発注希望条件は、前記サプライヤが前記第1方法と前記第2方法のいずれの方法で再生可能エネルギーを利用するかを更に指定することができ、
前記契約調整部は、前記発注希望条件において指定された方法に前記サプライヤが対応できる場合に、前記再生可能エネルギーを利用した場合の値を用いて前記契約先を特定する。
本事項によれば、再生可能エネルギーの自社での利用と証書の提供とを勘案した複雑な受発注契約を好適に調停することができる。
【0092】
(事項9)
上記事項1において、
前記複数の条件項目には、前記物品の納期に関する条件である納期条件と、前記物品の価格に関する条件である価格条件とが更に含まれる。
本事項によれば、単価に関する価格指標と納期に関する納期指標とに加え環境指標を勘案した複雑な受発注契約を好適に調停することができる。
【0093】
また上述した本発明の実施形態は、本発明の説明のための例示であり、本発明の範囲をそれらの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。当業者は、本発明の範囲を逸脱することなしに、他の様々な態様で本発明を実施することができる。より具体的には、自動車や工作機械、食品やソフトウェアなどを対象とした場合においても適用可能である。
【符号の説明】
【0094】
10…契約調停装置、20…操作端末、21…バイヤ、31…サプライヤ、32…下位サプライヤ、70…ネットワーク、101…利用者管理部、102…契約調整部、111…利用者情報、112…契約情報、113…発注希望条件情報、114…受注希望条件情報、231…主制御部、232…プロセッサ、233…RAM、234…主記憶部、235…入力部、236…出力部、237…通信部、238…バス