(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】非接触給電モジュール及び非接触給電システム
(51)【国際特許分類】
H02J 50/10 20160101AFI20241001BHJP
【FI】
H02J50/10
(21)【出願番号】P 2022059743
(22)【出願日】2022-03-31
【審査請求日】2022-10-04
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (1)ウェブサイトの掲載アドレス https://www.jstage.jst.go.jp/article/jscas/23/4/23_152/_pdf/-char/ja https://www.jstage.jst.go.jp/article/jscas/23/4/23_209/_pdf/-char/ja 掲載日 令和3年11月11日 (2)日本コンピュータ外科学会誌 第23巻第4号にて公開 発行日 令和3年11月12日 (3)第30回日本コンピュータ外科学会にて公開 開催日 令和3年11月21日~23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002255
【氏名又は名称】SWCC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 顯
(72)【発明者】
【氏名】三浦 聖
(72)【発明者】
【氏名】野内 健太郎
【審査官】井上 弘亘
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-192761(JP,A)
【文献】特開2014-039437(JP,A)
【文献】特表2012-530481(JP,A)
【文献】国際公開第2019/189138(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 50/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非接触給電システムの給電側に設けられる非接触給電モジュールであって、
電力の伝送に用いられる複数のコイルと、
複数の前記コイルを収容する筐体と、
接地線に接続され、表面が露出する状態で配置される
複数の接地部と、を備え、
複数の前記コイルは、
互いに同心円状に配置され、個別に通電制御可能に構成され、
複数の前記接地部は、複数の前記コイル
のうち径方向に隣り合う2つの前記コイルの間、及び、最外周に配置された前記コイルの外側に、複数の前記コイルと同心円状に配置されている、
非接触給電モジュール。
【請求項2】
前記筐体は、導電性を有し、
前記接地部は、少なくとも前記筐体の開口端に配置され、前記筐体と物理的かつ電気的に接続されている、
請求項1に記載の非接触給電モジュール。
【請求項3】
複数の前記コイルへの通電を制御する給電ユニットを備え、
複数の前記コイルは、前記給電ユニットに対してそれぞれ独立して接続されている、
請求項1に記載の非接触給電モジュール。
【請求項4】
請求項1に記載の非接触給電モジュールからなる給電モジュールと、
受電モジュールと、
を備える非接触給電システムであって、
前記受電モジュールは、
電力の伝送に用いられるコイルと、
表面が露出する状態で配置される接地部と、を有し、
前記給電モジュールの前記接地部と前記受電モジュールの前記接地部とが接触した状態で、電力の伝送が行われる、
非接触給電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触で給電を行うための非接触給電モジュール及び非接触給電システムに関し、特に、保護接地が必要な電気機器(例えば、医用電気機器)への給電に好適な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、病院等の医療施設においては、安全な手術環境の実現のため、手術室等に設置される医用電気機器のケーブルレス化が進められており、非接触給電システムの利用が検討されている。非接触給電システムは、例えば、交流電源から電圧が供給される給電コイルを有する給電モジュールと、給電コイルに対向して配置され給電コイルと磁気的に結合する受電コイルを有する受電モジュールとを備え、電磁誘導又は磁界共振を利用して非接触で給電を行う(例えば、特許文献1、2参照)。本明細書では、給電モジュールと受電モジュールを合わせて「非接触給電モジュール」と総称する。
【0003】
手術室等においては、手術台や医用電気機器などの重量物の移動のしやすさ、医療従事者のつまずき防止、床面の清掃のしやすさの観点から、床面は平坦であることが好ましい。また、手術室等の床面には、消毒液や血液等の液体が飛散することもある。そのため、電気接点となる端子が外部に露出している従来の電源コンセントを床面に設置することは、作業性及び安全性の面で適さない。これに対して、非接触給電システムの場合、給電コイル及び受電コイルが外部に露出している必要はないので、床面の平坦性を維持しつつ給電モジュールを設置することができ、医用電気機器のケーブル配線を簡素化することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2021-61706号公報
【文献】国際公開第2019/189138号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、医用電気機器に非接触給電システムを適用するに際し、医用電気機器の安全規格(JIS T 0601-1)「医療機器-第1部:安全に関する一般要求事項」に適合する必要がある。具体的には、クラスIに属する医用電気機器には、施設の医用接地端子に接続する手段を備えることが求められている。
【0006】
特許文献1に開示の非接触給電システムでは、給電コイル(20)と受電コイル(50)を対向させて給電を行う際に、給電側の接地された透過板(16)に受電側の透過板(46)が接触して、電気機器(100)が保護接地されるようになっている。しかしながら、給電コイル(20)と透過板(16)とが並置され、また、受電コイル(50)と透過板(46)とが並置されており、医用電気機器の配置が固定されてしまう為、様々なシーンへの対応に課題がある。具体的には、患者の手術部位や術者の対応しやすい位置や角度に応じて、医用電気機器の配置を柔軟に変更することができず、利便性の面で改善の余地がある。
【0007】
本発明の目的は、電気機器の保護接地を容易に実現できるとともに、電気機器の消費電力に応じて給電を行うことができる非接触給電モジュール及び非接触給電システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る非接触給電モジュールは、
非接触給電システムの給電側に設けられる非接触給電モジュールであって、
電力の伝送に用いられる複数のコイルと、
複数の前記コイルを収容する筐体と、
接地線に接続され、表面が露出する状態で配置される複数の接地部と、を備え、
複数の前記コイルは、互いに同心円状に配置され、個別に通電制御可能に構成され、
複数の前記接地部は、複数の前記コイルのうち径方向に隣り合う2つの前記コイルの間、及び、最外周に配置された前記コイルの外側に、複数の前記コイルと同心円状に配置されている。
【0009】
本発明に係る非接触給電システムは、
上記の非接触給電モジュールからなる給電モジュールと、
受電モジュールと、
を備える非接触給電システムであって、
前記受電モジュールは、
電力の伝送に用いられるコイルと、
表面が露出する状態で配置される接地部と、を有し、
前記給電モジュールの前記接地部と前記受電モジュールの前記接地部とが接触した状態で、電力の伝送が行われる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、電気機器の保護接地を容易に実現できるとともに、電気機器の消費電力に応じて給電を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、実施の形態に係る非接触給電システムの概略構成を示す図である。
【
図2A】
図2Aは、給電モジュールの構成を模式的に示す断面図である。
【
図2B】
図2Bは、給電モジュールの構成を模式的に示す平面図である。
【
図3】
図3は、給電回路の一例を示す回路図である。
【
図4A】
図4Aは、受電モジュールの一例を示す断面図である。
【
図4B】
図4Bは、受電モジュールの一例を示す断面図である。
【
図6A】
図6Aは、非接触給電システムの使用状態を示す図である。
【
図6B】
図6Bは、非接触給電システムの使用状態を示す図である。
【
図7】
図7は、受電回路の他の一例を示す回路図である。
【
図8】
図8は、受電回路の他の一例を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、実施の形態に係る非接触給電システム1の概略構成を示す図である。非接触給電システム1は、例えば、医用電気機器45の装置電源44への給電に用いられる。医用電気機器45は、JIS T 0601-1で規定されている保護接地が必要なクラスIに属する電気機器である。
【0013】
図1に示すように、非接触給電システム1は、給電コイル11を備える給電モジュール10と、受電コイル21を備える受電モジュール20と、で構成される。給電モジュール10は、例えば、消費電力が100W、600W及び1500Wである医用電気機器45に対応可能である。
【0014】
給電モジュール10は、手術室等の床Fに、例えば、手術台を取り囲むように埋設される。受電モジュール20は、受電ケーブル41及び受電回路42を介して、医用電気機器45の3ピンプラグ付き電源ケーブル43に接続される。給電時には、給電モジュール10の上に受電モジュール20が載置され、給電コイル11と受電コイル21とが離間した状態で対向して配置されることとなる。
【0015】
本実施の形態では、給電コイル11は、給電ケーブル31を介して、給電回路32に接続されている。同様に、受電コイル21は、受電ケーブル41を介して、受電回路42に接続されている。また、受電回路42は、3ピンプラグ付き電源ケーブル43を介して、医用電気機器45の装置電源44に接続されている。なお、受電回路42は、3ピンプラグ付き電源ケーブル43に着脱可能なソケット構造を有している。
【0016】
例えば、交流電源33から供給された商用電源は、給電回路32(給電ユニット321)で高周波数の交流電圧に変換され、給電コイル11に印加される。給電コイル11に交流電流が流れると、給電コイル11の周囲に磁界が発生し、給電コイル11及び受電コイル21の双方と鎖交する磁束により、受電コイル21に電位差(電圧)が生じる。そして、受電コイル21に誘導電流が流れ、受電ケーブル41、受電回路42及び3ピンプラグ付き電源ケーブル43を介して医用電気機器45の装置電源44に電力が供給される。
【0017】
図2Aは、給電モジュール10の断面図であり、
図2Bは、給電モジュール10を給電側筐体13の開口端側から見た平面図である。
【0018】
図2A、
図2Bに示すように、給電モジュール10は、給電コイル11、給電側接地リング12、給電側筐体13、給電側磁気シールド14、及び給電側保護体15等を備える。
【0019】
給電コイル11は、第1給電コイル11A、第2給電コイル11B及び第3給電コイル11Cを含む。第1~第3給電コイル11A~11Cは、それぞれ、電線を同一平面上に所定の巻数で巻線した環状の渦巻き型コイル(パンケーキ型コイルとも呼ばれる)である。第1~第3給電コイル11A~11Cは、内側から順に、同心円状に配置される。
【0020】
給電コイル11及び受電コイル21を円環形状とした場合、受電モジュール20が回転してもコイル同士の対向姿勢は変わらないので、容易に位置合わせを行うことができる。なお、給電コイル11の形状は円環形状に限定されず、例えば、長円形状(小判形状やレーストラック形状)であってもよい。給電コイル11及び受電コイル21を長円形状とした場合、コイルの直線部分同士が対向していれば、直線部分に沿う長手方向に位置ずれが生じても、電力伝送効率の低下を抑制することができる。
【0021】
給電コイル11を形成する電線には、例えば、導体に絶縁被膜を焼き付けたエナメル線(素線)を複数本撚り合わせたリッツ線が適用される。給電コイル11の両端部には、例えば、半田付けなどにより給電ケーブル31の電力線の端子金具(図示略)が接続される。
【0022】
給電側筐体13は、凹部13aを有する有底筒体であり、例えば、円筒形状を有する。給電側筐体13は、凹部13aに、給電コイル11及び給電側磁気シールド14を収容する。
【0023】
給電側筐体13は、例えば、アルミニウム等の金属材料で形成される。給電側筐体13は、例えば、給電ケーブル31の接地線の端子金具(図示略)に接続され、接地される。この場合、給電側筐体13は、外部への電磁波の放射及び外部からの電磁波の入射を防止する電磁シールドとしても機能する。
【0024】
なお、給電側筐体13は、給電ケーブル31とは別に設けられた給電側接地線を介して接地されてもよい。また、給電モジュール10の磁気シールドを給電側筐体13とは別に設ける場合、給電側筐体13は、例えば、エポキシ樹脂にフィラー(ガラス繊維など)を混入させた繊維強化プラスチック(FRP:Fiber Reinforced Plastic)などの樹脂材料で形成されてもよい。この場合、誘導加熱による給電側筐体13の発熱を防止することができ、さらには、FRPのフィラーとして熱伝導性のよいものを採用して、給電側筐体13の放熱性を向上させることもできる。
【0025】
給電側接地リング12は、第1給電側接地リング12A、第2給電側接地リング12B及び第3給電側接地リング12Cを含む。第1~第3給電側接地リング12A~12Cは、導電性の材料で形成される。第1~第3給電側接地リング12A~12Cは、それぞれ、第1~第3給電コイル11A~11Cの外形に対応する環形状(例えば、円環形状)を有し、表面が露出する状態で配置される。
【0026】
第1給電側接地リング12Aは、平面視において、第1給電コイル11Aと第2給電コイル11Bとの間に配置される。第2給電側接地リング12Bは、平面視において、第2給電コイル11Bと第3給電コイル11Cとの間に配置される。第3給電側接地リング12Cは、平面視において、第3給電コイル11Cの外側に配置される。第3給電側接地リング12Cは、例えば、給電側筐体13の凹部13aの開口端に配置される。
【0027】
給電側接地リング12は、給電側接地線を介して接地される。第1給電側接地リング12A及び第2給電側接地リング12Bは、例えば、金属製の給電側筐体13から引き出された接地引出し線(符号略)と接続され、接地引出し線及び給電側筐体13を介して接地される。また、第3給電側接地リング12Cは、給電側筐体13と接合され、給電側筐体13を介して接地される。なお、第3給電側接地リング12Cは、全体として環形状を呈していればよく、部分的に分断されていてもよい。
【0028】
第1給電側接地リング12A及び第2給電側接地リング12Bは、例えば、ハステロイ(登録商標)などのニッケル合金で形成される。これにより、床面として露出する第1給電側接地リング12A及び第2給電側接地リング12Bの耐食性を向上することができる。
【0029】
第3給電側接地リング12Cは、給電側筐体13と同種材料で形成されてもよいし、異種材料で形成されてもよい。第3給電側接地リング12Cと給電側筐体13とを同種材料で形成する場合、すなわち、給電側筐体13の一部が第3給電側接地リング12Cとなる場合、部品点数が少なくなるので、給電モジュール10の製造工程が簡素化され、製造コストを低減することができる。
【0030】
第3給電側接地リング12Cと給電側筐体13とを異種材料で形成する場合、それぞれの機能を実現するために適した材料を選定することができる。例えば、給電側筐体13にアルミニウム、第3給電側接地リング12Cにハステロイ(登録商標)などのニッケル合金を適用することで、給電側筐体13の軽量化を図りつつ、床面として露出する第3給電側接地リング12Cの耐食性を向上することができる。
【0031】
第1~第3給電側接地リング12A~12Cの表面は、後述する受電側接地リング22のように凹凸構造を有していてもよいが、床面の掃除のしやすさや、つまずき防止の観点から、平坦であることが好ましい。
【0032】
給電側磁気シールド14は、給電コイル11の外面(受電コイル21に対向する面を除く)を覆うように配置される。給電側磁気シールド14は、例えば、隔壁14aによって同心円状に区画された4つの凹室(符号略)を有する。内側の凹室から順に、例えば、通信コイル(図示略)、第1給電コイル11A、第2給電コイル11B及び第3給電コイル11Cが配置される。
【0033】
給電側磁気シールド14は、例えば、フェライト等の磁性材料で形成される。給電側磁気シールド14を設けることにより、磁気抵抗の低い通路が形成されるので、結果として給電コイル11の性能(Q値)が高まり、漏れ磁束が少なくなる。したがって、効率よく磁力線を集束して電力伝送効率を向上できるとともに、ノイズの発生を抑制することができる。また、給電側磁気シールド14を設けることにより、金属製の給電側筐体13の発熱を抑制することができる。
【0034】
給電側保護体15は、給電側筐体13の凹部13aに給電コイル11及び給電側磁気シールド14を固定する。給電側保護体15は、絶縁性媒体151(例えば、エポキシ樹脂)及び表面保護層152を含む。
【0035】
給電側筐体13の凹部13aに給電コイル11及び給電側磁気シールド14を配置した状態で、絶縁性媒体151(例えば、エポキシ樹脂)を充填し、硬化させることで、給電コイル11及び給電側磁気シールド14は、凹部13aに固定される。絶縁性媒体151は、表面保護層152の厚み分(例えば、2mm)だけ、第3給電側接地リング12Cの端面よりも凹んで形成される。表面保護層152には、第1給電側接地リング12A及び第2給電側接地リング12Bが埋設される。
【0036】
表面保護層152は、絶縁性媒体151の開放面に、給電側接地リング12と面一となるように形成される。表面保護層152は、絶縁性媒体151の表面を保護するとともに、給電モジュール10が設置される床Fの床面を形成する。表面保護層152は、例えば、手術室等に使用されるクッション性を有する樹脂性床材(例えば、塩化ビニル樹脂製床材)で形成される。表面保護層152は、給電モジュール10が設置される床に使用されている床材と同一材料で形成されることが好ましい。
【0037】
給電モジュール10は、手術室等の床Fに、給電モジュール10の給電側接地リング12及び表面保護層152と床Fとが面一となるように設置される。給電側接地リング12は、表面に露出しているが、床面の平坦性は確保されているので、医用電気機器45等の重量物の移動を妨げない。
【0038】
図3は、給電回路32の一例を示す回路図である。
図3に示すように、給電回路32は、給電ユニット321及び共振用コンデンサー322等を含む。
【0039】
給電ユニット321は、通信部323を有する。給電ユニット321は、通信部323によって受電モジュール20からの制御信号が検出された場合に、対応する給電コイル11に対して通電する。
【0040】
給電回路32において、第1~第3給電コイル11A~11Cの電流経路は、給電ユニット321に対して、それぞれ独立して設けられる。共振用コンデンサー322は、第1~第3給電コイル11A~11Cに対して並列に接続される。給電ユニット321は、第1~第3給電コイル11A~11Cへの通電を、個別に制御可能である。
【0041】
図4A、
図4Bは、受電モジュール20の一例を示す断面図である。
図4Aに示す第1受電モジュール20-1は、例えば、消費電力が100Wである医用電気機器45の受電ヘッドに用いられる。
図4Bに示す第2受電モジュール20-2は、例えば、消費電力が1500Wである医用電気機器45の受電ヘッドに用いられる。
【0042】
図4A、
図4Bに示すように、第1受電モジュール20-1及び第2受電モジュール20-2は、構成自体は給電モジュール10とほぼ同様である。第1受電モジュール20-1及び第2受電モジュール20-2の説明のうち、給電モジュール10と同一又は対応する構成要素については、簡単に説明する。
【0043】
第1受電モジュール20-1及び第2受電モジュール20-2は、それぞれ、受電コイル21、受電側接地リング22、受電側筐体23及び受電側磁気シールド24等を備える。
【0044】
受電コイル21は、電線を同一平面上に所定の巻数で巻線した円環状の渦巻き型コイルである。受電コイル21の形状は、基本的には、給電コイル11の形状と同じである。受電コイル21の両端部には、例えば、半田付けにより受電ケーブル41の電力線の端子金具(図示略)が接続される。
【0045】
第1受電モジュール20-1の受電コイル21は、給電モジュール10の第1給電コイル11Aに対応する第1受電コイル21Aで構成される。第2受電モジュール20-2の受電コイル21は、給電モジュール10の第1~第3給電コイル11A~11Cに対応する第1~第3受電コイル21A~21Cで構成される。
【0046】
受電側筐体23は、凹部23aを有する有底筒体であり、例えば、円筒形状を有する。受電側筐体23は、凹部23aに、受電コイル21及び受電側磁気シールド24を収容する。
【0047】
受電側筐体23は、例えば、アルミニウム等の金属材料で形成される。受電側筐体23は、例えば、受電ケーブル41の接地線の端子金具(図示略)に接続される。この場合、受電側筐体23は、外部への電磁波の放射及び外部からの電磁波の入射を防止する電磁シールドとして機能する。
【0048】
なお、受電モジュール20の電磁シールドを別途設ける場合、受電側筐体23は、繊維強化プラスチック(FRP)などの樹脂材料で形成されてもよい。この場合、誘導加熱による受電側筐体23の発熱を防止することができ、さらには、FRPのフィラーとして熱伝導性のよいものを採用して、受電側筐体23の放熱性を向上させることもできる。
【0049】
受電側接地リング22は、導電性の材料で形成され、受電側筐体23の凹部23aの開口に対応する環形状(例えば、円環形状)を有する。受電側接地リング22は、表面が露出する状態で、凹部23aの開口に沿って配置される。受電側接地リング22は、給電モジュール10の上に受電モジュール20を載置したとき、給電側接地リング12と接触し、接地される。本実施の形態では、金属製の受電側筐体23と接合されており、受電側筐体23を介して受電ケーブル41の接地線が接地される。この場合、受電側接地リング22は、全体として環形状を呈していればよく、部分的に分断されていてもよい。
【0050】
具体的には、第1受電モジュール20-1の受電側接地リング22は、給電モジュール10の第1給電側接地リング12Aと接触する(
図6A参照)。第2受電モジュール20-2の受電側接地リング22は、給電モジュール10の第3給電側接地リング12Cと接触する(
図6B参照)。
【0051】
受電側接地リング22と受電側筐体23は、同種材料で形成されてもよいし、異種材料で形成されてもよい。受電側接地リング22と受電側筐体23とを同種材料で形成する場合、すなわち、受電側筐体23の一部が受電側接地リング22となる場合、部品点数が少なくなるので、受電モジュール20の製造工程が簡素化され、製造コストを低減することができる。
【0052】
受電側接地リング22と受電側筐体23とを異種材料で形成する場合、それぞれの機能を実現するために適した材料を選定することができる。例えば、受電側筐体23にアルミニウム、受電側接地リング22に導電性とばね性の高い銅合金(例えば、ベリリウム銅)を適用することで、受電側筐体23の軽量化を図りつつ、接地抵抗を効率よく低減することができる。また、受電側接地リング22の表面には、耐食性を高めるためにNi等からなるめっき層を形成してもよい。
【0053】
受電側接地リング22は、表面に凹凸構造を有していることが好ましい。給電モジュール10は床面に設置され、給電側接地リング12は外気に曝されるので、給電側接地リング12の表面に経時的に酸化皮膜が形成される虞がある。受電側接地リング22の表面に凹凸構造が形成されている場合、給電側接地リング12と受電側接地リング22が接触するときに、給電側接地リング12に形成された酸化皮膜が受電側接地リング22の凹凸構造によって破壊されるので、良好な電気的導通を確保する上で有用である。なお、受電側接地リング22における接触面積は、受電側接地リング22を含む接地経路における接地抵抗が10Ω以下となるように確保される。
【0054】
また、受電側接地リング22は、表面に、バネ構造を有することが好ましい。この場合、給電モジュール10の上に受電モジュール20を載置するときに、受電モジュール20の自重によってバネ構造が加圧変形する。これにより、給電側接地リング12と受電側接地リング22とが確実に接触し、接地不良が防止されるので、電気的導通を確保する上で有用である。バネ構造には、例えば、受電側接地リング22の周方向において等間隔で配置される板バネ(いわゆるシールドフィンガー(商品名))を適用することができる。
【0055】
受電側磁気シールド24は、受電コイル21の外面(給電コイル11に対向する面を除く)を覆うように配置される。第1受電モジュール20-1の受電側磁気シールド24は、例えば、隔壁24aによって同心円状に区画された2つの凹室(符号略)を有する。内側の凹室から順に、例えば、通信コイル(図示略)及び第1受電コイル21Aが配置される。第2受電モジュール20-2の受電側磁気シールド24は、例えば、隔壁24aによって同心円状に区画された4つの凹室(符号略)を有する。内側の凹室から順に、例えば、通信コイル(図示略)、第1受電コイル21A、第2受電コイル21B及び第3受電コイル21Cが配置される。
【0056】
受電側磁気シールド24は、例えば、フェライト等の磁性材料で形成される。受電側磁気シールド24を設けることにより、磁気抵抗の低い通路が形成されるので、結果として受電コイル21の性能(Q値)が高まり、漏れ磁束が少なくなる。したがって、効率よく磁力線を集束して電力伝送効率を向上できるとともに、ノイズの発生を抑制することができる。また、金属製の受電側筐体23の発熱を抑制することができる。
【0057】
受電側保護体25は、受電側筐体23の凹部23aに受電コイル21及び受電側磁気シールド24を固定する。受電側保護体25は、例えば、エポキシ樹脂等の絶縁性材料で形成される。
【0058】
受電側筐体23の凹部23aに受電コイル21及び受電側磁気シールド24を配置した状態で、絶縁性材料を充填し、硬化させて受電側保護体25を形成することで、受電コイル21及び受電側磁気シールド24は、凹部23aに固定される。受電側保護体25は、受電側接地リング22の端面よりも凹んで形成される。
【0059】
なお、図示を省略するが、例えば、消費電力が600Wである医用電気機45の受電ヘッドに用いられる受電モジュール20は、第1受電コイル21A及び第2受電コイル21Bを有する構成となる。
【0060】
図5A、
図5Bは、受電回路42の一例を示す回路図である。
図5Aは、第1受電モジュール20-1の受電回路42を示し、
図5Bは、第2受電モジュール20-2の受電回路42を示す。
【0061】
図5A、
図5Bに示すように、受電回路42は、受電ユニット421及び共振用コンデンサー422等を含む。
【0062】
受電ユニット421は、通信部423を有する。受電ユニット421は、例えば、通信部423を介して、給電モジュール10に制御信号を送信する。また、受電ユニット421は、受電コイル21からの電流を装置電源44に出力する。
【0063】
第1受電モジュール20-1の受電回路42において、共振用コンデンサー422は、第1受電コイル21Aに対して並列に接続される。
【0064】
第2受電モジュール20-2の受電回路42において、第1~第3受電コイル21A~21Cの電流経路は、受電ユニット421に対して、直列に接続される。共振用コンデンサー422は、第1~第3受電コイル21A~21Cのそれぞれに対して並列に接続される。なお、共振用コンデンサー422は、第1~第3受電コイル21A~21Cの電流経路に、直列に接続されてもよい。第1~第3受電コイル21A~21Cを直列に接続することで、第1~第3受電コイル21A~21Cと受電ユニット421とを接続する電源線を2本で構成することができる。
【0065】
図6A、
図6Bは、非接触給電システム1の使用状態を示す図である。
図6Aは、第1受電モジュール20-1に給電する場合について示し、
図6Bは、第2受電モジュール20-2に給電する場合について示している。
【0066】
図6Aに示すように、給電モジュール10から第1受電モジュール20-1に給電を行う場合、第1給電コイル11Aと第1受電コイル21Aが対向するように、給電モジュール10の上に第1受電モジュール20-1が載置される。
【0067】
給電モジュール10の上に第1受電モジュール20-1が載置されると、第1給電側接地リング12Aと受電側接地リング22が接触し、第1給電側接地リング12A及び給電側筐体13を介して、受電側接地リング22は接地される。受電側接地リング22は、受電側筐体23を介して受電ケーブル41の接地線に接続されており、受電ケーブル41の接地線は、受電回路42を介して3ピンプラグ付き電源ケーブル43の接地線に接続されているので、医用電気機器45は保護接地される。
【0068】
第1受電モジュール20-1の通信部423と給電モジュール10の通信部323との間で制御信号の送受信が行われ、給電モジュール10上に第1受電モジュール20-1が載置されたことが検出されると、給電ユニット321は第1給電コイル11Aへの通電を開始する。第1受電コイル21Aに誘導電流が流れ、受電ケーブル41、受電回路42及び3ピンプラグ付き電源ケーブル43を介して医用電気機器45の装置電源44に100Wの電力が供給される。
【0069】
図6Bに示すように、給電モジュール10から第2受電モジュール20-2に給電を行う場合、第1~第3給電コイル11A~11Cと第1~第3受電コイル21A~21Cが対向するように、給電モジュール10の上に第2受電モジュール20-2が載置される。
【0070】
給電モジュール10の上に第2受電モジュール20-2が載置されると、第3給電側接地リング12Cと受電側接地リング22が接触し、第3給電側接地リング12C及び給電側筐体13を介して、受電側接地リング22は接地される。受電側接地リング22は、受電側筐体23を介して受電ケーブル41の接地線に接続されており、受電ケーブル41の接地線は、受電回路42を介して3ピンプラグ付き電源ケーブル43の接地線に接続されているので、医用電気機器45は保護接地される。
【0071】
第2受電モジュール20-2の通信部423と給電モジュール10の通信部323との間で制御信号の送受信が行われ、給電モジュール10上に第2受電モジュール20-2が載置されたことが検出されると、給電ユニット31は第1~第3給電コイル11A~11Cへの通電を開始する。第1~第3受電コイル21A~21Cに誘導電流が流れ、受電ケーブル41、受電回路42及び3ピンプラグ付き電源ケーブル43を介して医用電気機器45の装置電源44に1500Wの電力が供給される。
【0072】
このように、実施の形態に係る給電モジュール10(非接触給電モジュール)は、非接触給電システムの給電側に設けられる非接触給電モジュールであって、電力の伝送に用いられる第1~第3給電コイル11A~11C(複数のコイル)と、第1~第3給電コイル11A~11Cを収容する給電側筐体13と、接地線に接続され表面が露出する状態で配置される給電側接地リング12(接地部)と、を備え、第1~第3給電コイル11A~11Cは、個別に通電制御可能に構成され、給電側接地リング12は、第1~第3給電コイル11A~11Cを取り囲むように配置されている。
【0073】
また、非接触給電システム1は、給電モジュール10と、受電モジュール20と、を備える。受電モジュール20は、電力の伝送に用いられる受電コイル21と、表面が露出する状態で配置される受電側接地リング22(接地部)と、を有する。非接触給電システム1では、給電モジュール10の給電側接地リング12と受電モジュール20の受電側接地リング22とが接触した状態で、電力の伝送が行われる。
【0074】
給電モジュール10及び非接触給電システム1によれば、給電モジュール10の上に受電モジュール20を載置したときに、給電側接地リング12と受電側接地リング22が接触することにより、受電ケーブル41等を介して受電モジュール20に接続されている3ピンプラグ付き電源ケーブル43の接地線が接地される。また、第1~第3給電コイル11A~11Cは、個別に通電制御可能に構成されているので、受電モジュール20が接続されている医用電気機器45の消費電力に応じて電力を供給することができる。したがって、医用電気機器45等のクラスI機器の保護接地を容易に実現することができるとともに、非接触給電システム1の利便性が格段に向上する。また、給電側接地リング12及び受電側接地リング22を配置するために筐体を大きくする必要はないので、給電モジュール10及び受電モジュール20の小型化を図ることができる。
【0075】
また、給電モジュール10は、給電側接地リング12(接地部)として、第1~第3給電側接地リング12A~12Cを備え、第1~第3給電側接地リング12A~12Cは、第1~第3給電コイル11A~11C(複数のコイル)のそれぞれを取り囲むように配置されている。これにより、医用電気機器45の保護接地を実現するための受電側接地リング22を、受電コイル21に近接して設けることでできるので、受電モジュール20の小型化を図ることができる。
【0076】
また、給電モジュール10において、第1~第3給電コイル11A~11C及び第1~第3給電側接地リング12A~12Cは、同心円状に配置されている。これにより、給電モジュール10に対して受電モジュール20を載置する際に、給電側接地リング12の中心を目安とすることができ、対向させるべき給電コイル11と受電コイル21の位置合わせを容易に行うことができる。
【0077】
また、給電モジュール10において、筐体13は、導電性を有し、給電側接地リング12(接地部)は、少なくとも筐体13の開口端に配置され筐体13と物理的かつ電気的に接続されている。これにより、給電側筐体13を利用して容易に保護接地を実現することができるとともに、給電モジュール10における電磁シールドを形成することができる。
【0078】
また、給電モジュール10は、第1~第3給電コイル11A~11Cへの通電を制御する給電ユニット321を備え、第1~第3給電コイル11A~11Cは、給電ユニット321に対してそれぞれ独立して接続されている。これにより、第1~第3給電コイル11A~11Cに対して個別に通電制御を行うことができ、給電対象である受電モジュール20の受電コイル21の数、すなわち、医用電気機器45の商品電力に応じて、効率よく給電を行うことができる。
【0079】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づいて具体的に説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
【0080】
例えば、給電モジュール10に設けられる給電コイル11は、複数であればよく、2つの給電コイル11(例えば、第1給電コイル11A及び第2給電コイル11B)で構成されてもよいし、4つ以上の給電コイル11で構成されてもよい。給電コイル11の数を増やした場合、消費電力が異なる多様な医用電気機器45に対して給電することができる。また、対応可能な消費電力の区分を細分化(例えば、100W刻み)して給電効率を高めることもできる。
【0081】
また、実施の形態では、複数の給電コイル11を同心円状に配置した場合について説明したが、複数の給電コイル11を、例えば、直線状に配列したり、縦横に2次元的に配列したりしてもよい。
【0082】
また、
図7に示すように、第2受電モジュール20-2の受電回路42は、整流平滑回路424を含んでいてもよい。整流平滑回路424は、ダイオードブリッジと平滑用のコンデンサーC1’~C3’を備える。これにより、第1~第3受電コイル21A~21Cからの直流出力を合成して取り出すことができる。この場合、実施の形態と同様に、第1~第3受電コイル21A~21Cと受電ユニット421とを接続する電源線を2本で構成することができる。
【0083】
また、
図8に示すように、第2受電モジュール20-2の受電回路42において、第1~第3受電コイル21A~21Cは、受電ユニット421に対して個別に接続されてもよい。この場合、第1~第3受電コイル21A~21Cの電流経路における共振が互いに干渉することはないので、第1~第3受電コイル21A~21Cからの出力を効率よく取り出すことができる。
【0084】
また例えば、受電モジュール20の受電側接地リング22の表面には、ワイヤーブラシ等のブラシ部を設けてもよい。これにより、給電モジュール10の上に受電モジュール20を載置する際に、給電側接地リング12の表面の汚れや酸化被膜が除去されるので、接地不良を効率よく防止することができる。
【0085】
また、給電側保護体15の絶縁性媒体151及び受電側保護体25の絶縁性材料は、給電コイル11及び受電コイル21を固定できればよく、その構成材料は特に限定されない。例えば、給電側保護体15の絶縁性媒体151及び受電側保護体25の絶縁性材料を、エポキシ樹脂にフィラーを添加した樹脂材料で形成してもよい。この場合、エポキシ樹脂による防水効果が得られる上、給電モジュール10及び受電モジュール20の強度を高めることができる。さらに、放熱性の高いフィラーを採用した場合、給電コイル11及び受電コイル21の放熱性を高めることができる。
【0086】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0087】
1 非接触給電システム
10 給電モジュール
11、11A~11C 給電コイル
12、12A~12C 給電側接地リング(接地部)
13 給電側筐体
14 給電側磁気シールド
15 給電側保護体
20、20-1、20-2 受電モジュール
21、21A~21C 受電コイル
22、22A~22C 受電側接地リング(接地部)
23 受電側筐体
24 受電側磁気シールド
25 受電側保護体
31 給電ケーブル
43 3ピンプラグ付き電源ケーブル