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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】ワイヤハーネス
(51)【国際特許分類】
   H02G 3/04 20060101AFI20241001BHJP
   H01B 7/00 20060101ALI20241001BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20241001BHJP
【FI】
H02G3/04
H02G3/04 037
H02G3/04 062
H01B7/00 301
B60R16/02 623T
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022112722
(22)【出願日】2022-07-13
(65)【公開番号】P2024011044
(43)【公開日】2024-01-25
【審査請求日】2023-11-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】長嶋 凌
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 晴健
【審査官】遠藤 尊志
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-305825(JP,A)
【文献】特開平08-317526(JP,A)
【文献】実開平03-106815(JP,U)
【文献】特開2022-019111(JP,A)
【文献】特開平08-196016(JP,A)
【文献】特開平10-080036(JP,A)
【文献】実開平06-066233(JP,U)
【文献】特開2016-013004(JP,A)
【文献】特開2007-143212(JP,A)
【文献】特開2003-272447(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/04
H01B 7/00
B60R 16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に配索される電線を保護する保護部材を備えたワイヤハーネスであって、
前記保護部材は、プロテクタおよびテープにより構成され、
前記保護部材は、前記電線の周囲が前記プロテクタおよび前記テープの少なくとも一方により覆われるよう配置され、
記テープは、当該テープの幅方向の半分以上が重なるように前記電線に巻き付けられ
前記プロテクタは、
前記電線の延伸方向に対する垂直断面において、2つの平板部のみからなるL字状部分を有し、
前記テープは、前記L字状部分及び前記L字状部分に覆われる前記電線を一括して覆うように、前記L字状部分及び前記電線に巻き付けられている、
ワイヤハーネス。
【請求項2】
記電線は、前記電線の延伸方向へ延在した少なくとも一方の前記平板部で前記テープに覆われる、
請求項1に記載のワイヤハーネス。
【請求項3】
車両に配索される電線を保護する保護部材を備えたワイヤハーネスであって、
前記保護部材は、プロテクタおよびテープにより構成され、
前記保護部材は、前記電線の周囲が前記プロテクタおよび前記テープの少なくとも一方により覆われるよう配置され、
前記テープは、当該テープの幅方向の半分以上が重なるように前記電線に巻き付けられ、
前記プロテクタは、
前記電線の延伸方向に対する垂直断面において、2つの平板部により構成されるL字状部分を有し、
前記電線は、前記電線の延伸方向へ延在した少なくとも一方の前記平板部で前記テープに覆われ、
前記ワイヤハーネスは、前記電線から分岐された分岐電線を有し、
前記分岐電線が、前記電線が前記テープにより覆われた箇所において、当該テープの外周側に前記電線の延伸方向へ延在するよう配索された状態で、追加の前記テープにより前記保護部材および前記分岐電線が覆われる、
イヤハーネス。
【請求項4】
前記電線の延伸方向へ延在した前記平板部には、端部に鍔部が形成されている、
請求項からのいずれか1項に記載のワイヤハーネス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等に搭載されるワイヤハーネスに係り、特に、外部干渉材との干渉から電線を保護するための保護部材を有するワイヤハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両に配索されるワイヤハーネスとして、他の部品や車体などの外部干渉材から保護すべく、電線をテープで覆い、必要箇所に保護材であるプロテクタをテープ巻き固定したワイヤハーネスが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-143212号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のワイヤハーネスでは、テープが巻かれた箇所においても、一律にプロテクタを設けて外部干渉材から保護する構造であるので、コストが嵩んでしまう。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、外部干渉材に対応して保護部材によって適切に電線を保護することのできるワイヤハーネスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の上記目的は、下記構成により達成される。
【0007】
車両に配索される電線を保護する保護部材を備えたワイヤハーネスであって、
前記保護部材は、プロテクタおよびテープにより構成され、
前記保護部材は、前記電線の周囲が前記プロテクタおよび前記テープの少なくとも一方により覆われるよう配置され、
記テープは、当該テープの幅方向の半分以上が重なるように前記電線に巻き付けられ
前記プロテクタは、
前記電線の延伸方向に対する垂直断面において、2つの平板部のみからなるL字状部分を有し、
前記テープは、前記L字状部分及び前記L字状部分に覆われる前記電線を一括して覆うように、前記L字状部分及び前記電線に巻き付けられている、
ワイヤハーネス。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、外部干渉材に対応して保護部材によって適切に電線を保護することのできるワイヤハーネスを提供できる。
【0009】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の第1実施形態に係るワイヤハーネスの概略平面図である。
図2図2は、本発明の第1実施形態に係るワイヤハーネスの概略側面図である。
図3図3は、本発明の第1実施形態に係るワイヤハーネスの電線の延伸方向に垂直な方向の概略断面図である。
図4図4は、本発明の第1実施形態に係るワイヤハーネスに用いられるプロテクタの斜視図である。
図5図5は、追加回路用の電線が並設された第1実施形態に係るワイヤハーネスの概略側面図である。
図6図6は、追加回路用の電線が並設された第1実施形態に係るワイヤハーネスの電線の延伸方向に垂直な方向の概略断面図である。
図7図7は、本発明の第2実施形態に係るワイヤハーネスの概略平面図である。
図8図8は、本発明の第2実施形態に係るワイヤハーネスの概略側面図である。
図9図9は、本発明の第2実施形態に係るワイヤハーネスの電線の延伸方向に垂直な方向の概略断面図である。
図10図10は、本発明の第2実施形態に係るワイヤハーネスに用いられるプロテクタの斜視図である。
図11図11は、本発明の第3実施形態に係るワイヤハーネスの概略平面図である。
図12図12は、本発明の第3実施形態に係るワイヤハーネスの概略側面図である。
図13図13は、本発明の第3実施形態に係るワイヤハーネスの電線の延伸方向に垂直な方向の概略断面図である。
図14図14は、本発明の第3実施形態に係るワイヤハーネスに用いられるプロテクタの斜視図である。
図15図15は、本発明の第4実施形態に係るワイヤハーネスの概略平面図である。
図16図16は、本発明の第4実施形態に係るワイヤハーネスの概略側面図である。
図17図17は、本発明の第4実施形態に係るワイヤハーネスの電線の延伸方向に垂直な方向の概略断面図である。
図18図18は、本発明の第4実施形態に係るワイヤハーネスに用いられるプロテクタの斜視図である。
図19図19は、本発明の第5実施形態に係るワイヤハーネスの概略平面図である。
図20図20は、本発明の第5実施形態に係るワイヤハーネスの概略側面図である。
図21図21は、本発明の第5実施形態に係るワイヤハーネスの電線の延伸方向に垂直な方向の概略断面図である。
図22図22は、本発明の第5実施形態に係るワイヤハーネスに用いられるプロテクタの斜視図である。
図23図23は、本発明の第6実施形態に係るワイヤハーネスの概略平面図である。
図24図24は、本発明の第6実施形態に係るワイヤハーネスの概略側面図である。
図25図25は、本発明の第6実施形態に係るワイヤハーネスの電線の延伸方向に垂直な方向の概略断面図である。
図26図26は、本発明の第6実施形態に係るワイヤハーネスに用いられるプロテクタの斜視図である。
図27図27は、本発明の第6実施形態に係るワイヤハーネスに用いられる他のプロテクタの斜視図である。
図28図28は、本発明の第7実施形態に係るワイヤハーネスの概略平面図である。
図29図29は、本発明の第7実施形態に係るワイヤハーネスの概略側面図である。
図30図30は、本発明の第7実施形態に係るワイヤハーネスの電線の延伸方向に垂直な方向の概略断面図である。
図31図31は、本発明の第7実施形態に係るワイヤハーネスに用いられるプロテクタの斜視図である。
図32図32は、本発明の第7実施形態に係るワイヤハーネスに用いられる他のプロテクタの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に関する具体的な実施形態について、各図を参照しながら以下に説明する。
【0012】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係るワイヤハーネスの概略平面図である。図2は、本発明の第1実施形態に係るワイヤハーネスの概略側面図である。図3は、本発明の第1実施形態に係るワイヤハーネスの電線の延伸方向に垂直な方向の概略断面図である。図4は、本発明の第1実施形態に係るワイヤハーネスに用いられるプロテクタの斜視図である。
【0013】
図1図3に示すように、第1実施形態に係るワイヤハーネスWH1は、電線Waの所定区間(外部干渉材による干渉を受ける可能性のある部分)に保護部材HP1を備えている。電線Waは、車両に配索されるもので、複数本が束ねられて電線束Wとされている。保護部材HP1は、プロテクタP1およびテープTAにより構成されており、電線Waは、その周囲が保護部材HP1によって覆われている。
【0014】
図3及び図4に示すように、保護部材HP1を構成するプロテクタP1は、電線Waの延伸方向に対する垂直断面において、矩形の2辺を構成するL字状部分10を有している。このL字状部分10は、2つの平板部11,12が互いに直交するように一体に成形されている。このプロテクタP1は、合成樹脂等から成形されている。電線Waは、プロテクタP1の平板部11,12により構成されるL字状部分10の隅部に配置されている。これにより、電線Waからなる電線束Wは、電線Waの延伸方向に対する垂直断面において架空の矩形の4辺S1~S4に囲われているとすると、架空の矩形のうち互いに隣接する2辺S1,S2がプロテクタP1によって覆われて外部干渉材による干渉から保護されている。
【0015】
テープTAは、電線Waからなる電線束WにおけるプロテクタP1が設けられた所定区間に、プロテクタP1とともに巻き付けられている。これにより、電線Waは、プロテクタP1とともに、外周がテープTAによって覆われている。したがって、電線Waは、プロテクタP1によって覆われた2辺S1,S2以外の2辺S3,S4がテープTAによって覆われて外部干渉材による干渉から保護されている。
【0016】
テープTAは、0.24mm以下の厚さで長手方向に200%以上の伸び率を有するPVCテープ(ポリ塩化ビニルテープ)である。なお、テープTAとしては、300%以上の伸び率を有するものがより好ましい。
【0017】
本実施形態では、テープTAは、その幅方向の一部である約半分をラップさせた状態で巻き付けられており、この状態をハーフラップという。テープTAの裏面には、予め全面に粘着材が塗布(貼付を含む)されており、この粘着材により、電線WaとテープTAとの間、プロテクタP1とテープTAとの間、および、テープTA同士の間(ラップ部分のテープ同士)が固着されている。そして、このテープTAをラップさせることにより、テープTAの巻き付け部分は、厚さが厚く(0.48mm)された2重巻きとなり、厚さ0.5mm程度のチューブによって覆われた場合と同等の保護機能が得られ、プロテクタP1に近い耐摩耗性を有する。つまり、ハーフラップで巻き付けられるテープTAは、樹脂製のプロテクタの代替としても使用可能な強度となる。
【0018】
そして、テープTAは、0.24mm以下の厚さで長手方向に200%以上の伸び率を有するため、確実な密着状態を維持したままプロテクタP1とともに電線Waに巻き付けることができる。
【0019】
このように、プロテクタP1およびテープTAから構成される保護部材HP1を備えたワイヤハーネスWH1では、テープTAだけで覆われた2辺S3,S4が、通常保護領域ANとされ、プロテクタP1で覆われた2辺S1,S2が、通常保護領域ANよりも高い保護強度で保護された高保護領域AHとされている。高保護領域AHは、例えば、通常保護領域ANよりも外部干渉材との距離が近かったり、通常保護領域ANに配置されている外部干渉材よりも硬い外部干渉材が配置されている領域である。
【0020】
そして、ワイヤハーネスWH1は、テープTAにより覆われる箇所と比較して、車両に設置された外部干渉材からの電線Waに対する干渉が大きい場所が、プロテクタP1によって覆われた高保護領域AHに配置されるように配索される。
【0021】
このように、第1実施形態に係るワイヤハーネスWH1によれば、テープTAが0.24mm以下の厚さで長手方向に200%以上の伸び率を有するので、浮き上がりによる剥離を抑えつつ電線Wa及びプロテクタP1に密着するようにテープ巻きできる。しかも、テープTAにより覆われる箇所と比較して、電線Waにおける外部干渉材からの干渉が大きい場所がプロテクタP1によって覆われているので、一律にプロテクタによって電線を覆って保護する構造と比べ、コストを抑えつつ外部干渉材に対して適切に電線Waを保護できる。
【0022】
また、ワイヤハーネスWH1に対する保護機能のみに着目した場合には、厚手の布テープによるテープ巻きも考えられる。しかしながら、このような布テープは、作業者の手によってテープをちぎる手切れができず、予め所定長に切断したテープを用意したり、作業者が巻き付けごとに毎回テープをカッターなどにより切断する必要が生じ、効率が大幅に低下する。これに対し、本実施形態のテープTAは、作業者による手切れが可能であるため、作業の効率化を保ちつつ、ワイヤハーネスWH1の保護部材として使用できる。
【0023】
次に、上記のワイヤハーネスWH1に追加回路用の電線を並設する場合について説明する。
図5は、追加回路用の電線が並設された第1実施形態に係るワイヤハーネスの概略側面図である。図6は、追加回路用の電線が並設された第1実施形態に係るワイヤハーネスの電線の延伸方向に垂直な方向の概略断面図である。
【0024】
図5及び図6に示すように、ワイヤハーネスWH1には、端部にコネクタCを備えた追加回路用の複数の電線Wbが並設される場合がある。このような場合、電線Wbは、ワイヤハーネスWH1の保護部材HP1で覆われた所定区間において、テープTAで電線Waが覆われた通常保護領域ANに沿わされる。そして、電線Wbは、保護部材HP1とともに、0.24mm以下の厚さで長手方向に200%以上の伸び率を有するテープTAによって巻き付けられてワイヤハーネスWH1に結束される。このように、テープTAを用いれば、追加回路用の電線Wbを容易に保護部材HP1に巻き付けてワイヤハーネスWH1に並設できる。
【0025】
次に、第2~第7実施形態に係るワイヤハーネスについて説明する。
なお、上記第1実施形態と同一構成部分は、同一符号を付して説明を省略する。
【0026】
(第2実施形態)
図7は、本発明の第2実施形態に係るワイヤハーネスの概略平面図である。図8は、本発明の第2実施形態に係るワイヤハーネスの概略側面図である。図9は、本発明の第2実施形態に係るワイヤハーネスの電線の延伸方向に垂直な方向の概略断面図である。図10は、本発明の第2実施形態に係るワイヤハーネスに用いられるプロテクタの斜視図である。
【0027】
図7図9に示すように、第2実施形態に係るワイヤハーネスWH2は、電線Waの所定区間(外部干渉材による干渉を受ける可能性のある部分)に保護部材HP2を備えている。保護部材HP2は、プロテクタP2およびテープTAにより構成されており、電線Waは、その周囲が保護部材HP2によって覆われている。
【0028】
図9及び図10に示すように、保護部材HP2を構成するプロテクタP2においても、電線Waの延伸方向に対する垂直断面において、矩形の2辺を構成するL字状部分10を有しており、このL字状部分10は、2つの平板部11,12が互いに直交するように一体に成形されている。このプロテクタP2では、一方の平板部11は、他方の平板部12よりも電線Waの延伸方向の両方向へそれぞれ延在する一対の延在部11aを有しており、それらの端部には、両側方へ突出する鍔部15が形成されている。
【0029】
ワイヤハーネスWH2の場合も、テープTAは、電線Waからなる電線束WにおけるプロテクタP2が設けられた所定区間に、プロテクタP2とともに巻き付けられている。これにより、電線Waは、プロテクタP2とともに、外周がテープTAによって覆われている。さらに、ワイヤハーネスWH2では、テープTAは、プロテクタP2の平板部11の延在部11aとともに電線Waに巻き付けられている。
【0030】
このように、プロテクタP2およびテープTAから構成される保護部材HP2を備えたワイヤハーネスWH2の場合も、テープTAだけで覆われた2辺S3,S4が、通常保護領域ANとされ、プロテクタP2で覆われた2辺S1,S2が、通常保護領域ANよりも高い保護強度で保護された高保護領域AHとされている。
【0031】
特に、ワイヤハーネスWH2では、プロテクタP2の平板部11の延在部11aとともに電線WaにテープTAが巻き付けられるので、電線WaをプロテクタP2へ強固に結束できる。また、テープTAが巻き付けられる平板部11の延在部11aの端部に、鍔部15を有しているので、平板部11の延在部11aとともに電線Waをテープ巻きする際に、鍔部15によってテープTAが外れ止めされる。これにより、テープTAを良好に巻き付けることができる。
【0032】
(第3実施形態)
図11は、本発明の第3実施形態に係るワイヤハーネスの概略平面図である。図12は、本発明の第3実施形態に係るワイヤハーネスの概略側面図である。図13は、本発明の第3実施形態に係るワイヤハーネスの電線の延伸方向に垂直な方向の概略断面図である。図14は、本発明の第3実施形態に係るワイヤハーネスに用いられるプロテクタの斜視図である。
【0033】
図11図13に示すように、第3実施形態に係るワイヤハーネスWH3は、電線Waの所定区間(外部干渉材による干渉を受ける可能性のある部分)に保護部材HP3を備えている。保護部材HP3は、プロテクタP3およびテープTAにより構成されており、電線Waは、その周囲が保護部材HP3によって覆われている。
【0034】
図13及び図14に示すように、保護部材HP3を構成するプロテクタP3においても、電線Waの延伸方向に対する垂直断面において、矩形の2辺を構成するL字状部分10を有しており、このL字状部分10は、2つの平板部11,12が互いに直交するように一体に成形されている。このプロテクタP3では、両方の平板部11,12が、電線Waの延伸方向へ延在する延在部11a,12aを有しており、その端部には、両側方へ突出する鍔部15が形成されている。延在部11a,12aには、平板部11,12の本体部分および鍔部15よりも幅が狭くなっている幅狭部11c,12cがそれぞれ形成されており、幅狭部11cと幅狭部12cとは、電線Waの延伸方向において同じ位置に設けられている。
【0035】
ワイヤハーネスWH3の場合も、テープTAは、電線Waからなる電線束WにおけるプロテクタP3が設けられた所定区間に、プロテクタP3とともに巻き付けられている。これにより、電線Waは、プロテクタP3とともに、外周がテープTAによって覆われている。さらに、ワイヤハーネスWH2では、テープTAは、プロテクタP3の平板部11,12の延在部11a,12aとともに電線Waに巻き付けられている。
【0036】
このように、プロテクタP3およびテープTAから構成される保護部材HP3を備えたワイヤハーネスWH3の場合も、テープTAだけで覆われた2辺S3,S4が、通常保護領域ANとされ、プロテクタP3で覆われた2辺S1,S2が、通常保護領域ANよりも高い保護強度で保護された高保護領域AHとされている。
【0037】
また、ワイヤハーネスWH3では、ワイヤハーネスWH2と同様に、プロテクタP3の平板部11,12の延在部11a,12aとともに電線WaにテープTAが巻き付けられるので、電線WaをプロテクタP3へ強固に結束できる。また、テープTAが巻き付けられる平板部11,12の延在部11a,12aの端部に、鍔部15を有しているので、平板部11,12の延在部11a,12aとともに電線Waをテープ巻きする際に、鍔部15によってテープTAが外れ止めされる。これにより、テープTAを良好に巻き付けることができる。
【0038】
(第4実施形態)
図15は、本発明の第4実施形態に係るワイヤハーネスの概略平面図である。図16は、本発明の第4実施形態に係るワイヤハーネスの概略側面図である。図17は、本発明の第4実施形態に係るワイヤハーネスの電線の延伸方向に垂直な方向の概略断面図である。図18は、本発明の第4実施形態に係るワイヤハーネスに用いられるプロテクタの斜視図である。
【0039】
図15図17に示すように、第4実施形態に係るワイヤハーネスWH4は、電線Waの所定区間(外部干渉材による干渉を受ける可能性のある部分)に保護部材HP4を備えている。保護部材HP4は、プロテクタP4およびテープTAにより構成されており、電線Waは、その周囲が保護部材HP4によって覆われている。
【0040】
図17及び図18に示すように、保護部材HP4を構成するプロテクタP4においても、電線Waの延伸方向に対する垂直断面において、矩形の2辺を構成するL字状部分10を有している。このプロテクタP4では、L字状部分10を構成する一方の平板部12に切欠き部12bが形成されている。これにより、平板部12は、電線Waの配索方向に分割されている。
【0041】
ワイヤハーネスWH4の場合も、テープTAは、電線Waからなる電線束WにおけるプロテクタP4が設けられた所定区間に、プロテクタP4とともに巻き付けられている。このテープTAは、平板部12の切欠き部12bにおいて巻き付けられており、これにより、電線Waは、プロテクタP4の平板部11とともに、外周がテープTAによって覆われて結束されている。
【0042】
このように、プロテクタP4およびテープTAから構成される保護部材HP4を備えたワイヤハーネスWH4の場合も、テープTAだけで覆われた2辺S3,S4が、通常保護領域ANとされ、プロテクタP4で覆われた2辺S1,S2が、通常保護領域ANよりも高い保護強度で保護された高保護領域AHとされている。なお、プロテクタP4の平板部12で覆われた高保護領域AHでは、切欠き部12bにおいてテープTAだけで覆われた箇所は、通常保護領域ANとなる(図15参照)。
【0043】
(第5実施形態)
図19は、本発明の第5実施形態に係るワイヤハーネスの概略平面図である。図20は、本発明の第5実施形態に係るワイヤハーネスの概略側面図である。図21は、本発明の第5実施形態に係るワイヤハーネスの電線の延伸方向に垂直な方向の概略断面図である。図22は、本発明の第5実施形態に係るワイヤハーネスに用いられるプロテクタの斜視図である。
【0044】
図19図21に示すように、第5実施形態に係るワイヤハーネスWH5は、電線Waの所定区間(外部干渉材による干渉を受ける可能性のある部分)に保護部材HP5を備えている。保護部材HP5は、プロテクタP5およびテープTAにより構成されており、電線Waは、その周囲が保護部材HP5によって覆われている。
【0045】
図21及び図22に示すように、保護部材HP5を構成するプロテクタP5は、1つの平板部11から構成されている。この平板部11は、その端部に、両側方へ突出する鍔部15を有している。
【0046】
ワイヤハーネスWH5では、テープTAは、電線Waからなる電線束WにおけるプロテクタP5が設けられた所定区間に、プロテクタP5とともに巻き付けられている。これにより、電線Waは、プロテクタP5の平板部11とともに、外周がテープTAによって覆われてプロテクタP5に結束されている。
【0047】
このように、プロテクタP5およびテープTAから構成される保護部材HP5を備えたワイヤハーネスWH5の場合、テープTAだけで覆われた3辺S2,S3,S4が、通常保護領域ANとされ、プロテクタP5で覆われた1辺S1が、通常保護領域ANよりも高い保護強度で保護された高保護領域AHとされている。
【0048】
(第6実施形態)
図23は、本発明の第6実施形態に係るワイヤハーネスの概略平面図である。図24は、本発明の第6実施形態に係るワイヤハーネスの概略側面図である。図25は、本発明の第6実施形態に係るワイヤハーネスの電線の延伸方向に垂直な方向の概略断面図である。図26は、本発明の第6実施形態に係るワイヤハーネスに用いられるプロテクタの斜視図である。
【0049】
図23図25に示すように、第6実施形態に係るワイヤハーネスWH6は、電線Waの所定区間(外部干渉材による干渉を受ける可能性のある部分)に保護部材HP6を備えている。保護部材HP6は、プロテクタP6およびテープTAにより構成されており、電線Waは、その周囲が保護部材HP6によって覆われている。
【0050】
図25及び図26に示すように、保護部材HP6を構成するプロテクタP6は、平板部11~14から構成された矩形状部分16を有している。平板部12,14は、平板部11の両側縁から立設されている。平板部13は、平板部12,14の上縁部にわたって設けられている。これにより、プロテクタP6は、電線Waの延伸方向に対する垂直断面において、平板部11~14によって矩形状に形成されている。平板部13は、一側縁が平板部12に回動可能に連結されている。また、平板部13の他側縁となる縁部と、平板部14の平板部13側の縁部には、ロック部17が設けられ、これらのロック部17によって平板部13,14の縁部同士がロックされる。また、平板部11は、電線Waの延伸方向へ延在する延在部11aを有しており、その端部には、両側方へ突出する鍔部15が形成されている。
【0051】
ワイヤハーネスWH6では、電線Waは、プロテクタP6における平板部11~14により構成される矩形状部分16に通されており、テープTAは、プロテクタP6の平板部11の延在部11aとともに、電線Waに巻き付けられている。なお、プロテクタP6では、ロック部17によるロックを解除して平板部13を平板部14から離間する方向へ回動させて矩形状部分16の上部を開いた状態で、矩形状部分16の内部へ電線Waを容易に配置できる。そして、電線Waを内部に配置した後に、平板部13を平板部14側へ回動させ、ロック部17によってロックすることにより、電線Waが矩形状部分16に通された状態にできる。
【0052】
また、テープTAが巻き付けられる平板部11の延在部11aの端部に、鍔部15を有しているので、平板部11の延在部11aとともに電線Waをテープ巻きする際に、鍔部15によってテープTAが外れ止めされる。これにより、テープTAを良好に巻き付けることができる。なお、図27に示すように、プロテクタP6の平板部11の端部に設ける鍔部15は、平板部11に対して、電線Waの配置側と反対側へ突出するように形成してもよい。
【0053】
このように、プロテクタP6およびテープTAから構成される保護部材HP6を備えたワイヤハーネスWH6では、プロテクタP6によって覆われた全周を、通常保護領域ANよりも高い保護強度で保護された高保護領域AHにできる。
【0054】
(第7実施形態)
図28は、本発明の第7実施形態に係るワイヤハーネスの概略平面図である。図29は、本発明の第7実施形態に係るワイヤハーネスの概略側面図である。図30は、本発明の第7実施形態に係るワイヤハーネスの電線の延伸方向に垂直な方向の概略断面図である。図31は、本発明の第7実施形態に係るワイヤハーネスに用いられるプロテクタの斜視図である。
【0055】
図28図30に示すように、第7実施形態に係るワイヤハーネスWH7は、電線Waの所定区間(外部干渉材による干渉を受ける可能性のある部分)に保護部材HP7を備えている。保護部材HP7は、プロテクタP7およびテープTAにより構成されており、電線Waは、その周囲が保護部材HP7によって覆われている。
【0056】
図30及び図31に示すように、保護部材HP7を構成するプロテクタP7は、第6実施形態のワイヤハーネスWH6のプロテクタP6と同様に、矩形状部分16を有している。プロテクタP7では、矩形状部分16に、平板部12,13および14を切欠くことにより形成された切欠き部16aを有している。これにより、矩形状部分16は、電線Waの配索方向に分割され一対形成されている。一対の矩形状部分16それぞれには、平板部13における平板部14側の縁部と、平板部14における平板部13側の縁部にロック部17が設けられ、これらのロック部17によって平板部13,14の縁部同士がロックされる。
【0057】
ワイヤハーネスWH7では、電線Waは、プロテクタP7における分割された矩形状部分16に通されており、テープTAは、プロテクタP7の切欠き部16aにおいて、平板部11とともに、電線Waに巻き付けられている。
【0058】
このように、プロテクタP7およびテープTAから構成される保護部材HP7を備えたワイヤハーネスWH7では、プロテクタP7によって覆われた全周を、通常保護領域ANよりも高い保護強度で保護された高保護領域AHにできる。なお、プロテクタP7の矩形状部分16で覆われた高保護領域AHでは、切欠き部16aにおいてテープTAだけで覆われた箇所は、通常保護領域ANとなる(図28参照)。
【0059】
なお、図32に示すように、プロテクタP7においても、平板部11に、鍔部15を有する延在部11aを設けてもよく、この場合、プロテクタP7の平板部11の延在部11aにおいて電線WaにテープTAを巻き付けることができ、より良好に電線WaをプロテクタP7へ結束できる。
【0060】
尚、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0061】
ここで、上述した本発明の実施形態に係るワイヤハーネスの特徴をそれぞれ以下[1]~[6]に簡潔に纏めて列記する。
[1] 車両に配索される電線(Wa)を保護する保護部材(HP1~HP7)を備えたワイヤハーネス(WH1~WH7)であって、
前記保護部材(HP1~HP7)は、プロテクタ(P1~P7)およびテープ(TA)により構成され、
前記保護部材(HP1~HP7)は、前記電線(Wa)の周囲が前記プロテクタ(P1~P7)および前記テープ(TA)の少なくとも一方により覆われるよう配置され、
前記電線(Wa)が前記プロテクタ(P1~P7)により覆われる箇所は、前記テープ(TA)により覆われる箇所と比較して、車両に設置された外部干渉材からの前記電線(Wa)に対する干渉が大きい場所であり、
前記テープ(TA)は、当該テープの幅方向の半分以上が重なるように前記電線に巻き付けられることによりチューブによって覆った場合と同等の保護機能を有する、
ワイヤハーネス。
【0062】
上記[1]の構成のワイヤハーネスによれば、チューブによって覆った場合と同等の保護機能を確保しつつ、浮き上がりによる剥離を抑えつつ電線及びプロテクタに密着するようにテープ巻きできる。しかも、テープにより覆われる箇所と比較して、電線における外部干渉材からの干渉が大きい場所がプロテクタによって覆われているので、一律にプロテクタによって電線を覆って保護する構造と比べ、コストを抑えつつ外部干渉材に対して適切に電線を保護できる。
【0063】
[2] 前記プロテクタ(P1~P4)は、
前記電線(Wa)の延伸方向に対する垂直断面において、2つの平板部(11,12)により構成されるL字状部分(10)を有し、
前記電線(Wa)は、前記電線(Wa)の延伸方向へ延在した少なくとも一方の前記平板部(11)で前記テープ(TA)に覆われる、
上記[1]に記載のワイヤハーネス。
【0064】
上記[2]の構成のワイヤハーネスによれば、プロテクタのL字状部分を構成する平板部によって電線を強固に保護でき、また、電線の延伸方向に延在する少なくとも一方の平板部において、電線をテープによって覆って保護でき、しかも、プロテクタへ電線を結束できる。
【0065】
[3] 前記ワイヤハーネスは、前記電線(Wa)から分岐された分岐電線(Wb)を有し、
前記分岐電線(Wb)が、前記電線(Wa)が前記テープ(TA)により覆われた箇所において、当該テープ(TA)の外周側に前記電線(Wa)の延伸方向へ延在するよう配索された状態で、追加の前記テープにより前記保護部材(HP1)および前記分岐電線(Wb)が覆われる、
上記[2]に記載のワイヤハーネス。
【0066】
上記[3]の構成のワイヤハーネスによれば、追加回路用の電線Wbを容易に保護部材HP1に巻き付けてワイヤハーネスWH1に並設できる。
【0067】
[4] 前記プロテクタ(P6,P7)は、
前記電線(Wa)の延伸方向に対する垂直断面において、4つの平板部(11~14)により構成される矩形状部分(16)を有し、
前記電線(Wa)は、前記電線(Wa)の延伸方向へ延在した少なくとも1つの前記平板部(11)で前記テープ(TA)に覆われる、
上記[1]に記載のワイヤハーネス。
【0068】
上記[4]の構成のワイヤハーネスによれば、プロテクタの矩形状部分を構成する平板部によって電線を強固に保護できる。また、電線の延伸方向に延在する少なくとも1つの平板部において、電線をテープによって覆って保護でき、しかも、プロテクタへ電線を結束できる。
【0069】
[5] 前記4つの平板部のうち3つの平板部を前記電線の延伸方向において同じ位置で切欠くことにより形成された切欠き部を有し、前記矩形状部分は、前記切欠き部を挟んで前記電線の延伸方向に一対形成されている、
上記[4]に記載のワイヤハーネス。
【0070】
上記[5]の構成のワイヤハーネスによれば、配索ルート上に、外部干渉材からの干渉が小さい箇所を挟んで一対の外部干渉材からの干渉が大きい箇所がある場合に、コストを抑えつつ外部干渉材に対して適切に電線を保護できる。
【0071】
[6] 前記電線(Wa)の延伸方向へ延在した前記平板部(11)には、端部に鍔部(15)が形成されている、
上記[2]から[5]のいずれかに記載のワイヤハーネス。
【0072】
上記[6]の構成のワイヤハーネスによれば、平板部の端部に鍔部が形成されているので、電線をテープ巻きする際に、鍔部によってテープが外れ止めされる。これにより、テープを良好に巻き付けることができる。
【符号の説明】
【0073】
10 L字状部分
11~14 平板部
11a、12a 延在部
12b、16a 切欠き部
15 鍔部
16 矩形状部分
17 ロック部
HP1~HP7 保護部材
P1~P7 プロテクタ
TA テープ
Wa、Wb 電線
W 電線束
WH1~WH7 ワイヤハーネス
AH 高保護領域
AN 通常保護領域
図1
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図6
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