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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】パワーモジュール
(51)【国際特許分類】
   H01L 25/07 20060101AFI20241001BHJP
   H01L 25/18 20230101ALI20241001BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20241001BHJP
   H03K 17/16 20060101ALI20241001BHJP
   H01L 23/48 20060101ALI20241001BHJP
【FI】
H01L25/04 C
H02M7/48 Z
H03K17/16 M
H01L23/48 R
H01L23/48 G
【請求項の数】 10
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022184262
(22)【出願日】2022-11-17
(65)【公開番号】P2023083224
(43)【公開日】2023-06-15
【審査請求日】2023-02-10
(31)【優先権主張番号】17/541,543
(32)【優先日】2021-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504162361
【氏名又は名称】台達電子工業股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】DELTA ELECTRONICS, INC.
【住所又は居所原語表記】186 Ruey Kuang Road, Neihu, Taipei 114, Taiwan
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】桂盈盈
(72)【発明者】
【氏名】周彦
(72)【発明者】
【氏名】林才勝
(72)【発明者】
【氏名】ヒメネス オロスコ、ヘラルド
(72)【発明者】
【氏名】王澤
(72)【発明者】
【氏名】ハンポ、リチャード ジョセフ
(72)【発明者】
【氏名】パトワルダン、アジェイ ヴァスデオ
(72)【発明者】
【氏名】李忠樹
【審査官】安田 雅彦
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/015050(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/067835(WO,A1)
【文献】特開2013-165578(JP,A)
【文献】特表2018-510502(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 25/00 -25/18
H01L 23/48 -23/50
H01L 21/60
H01L 29/78
H01L 29/739
H01L 27/04 -27/098
H03K 17/00 -17/98
H02M 3/155- 3/158
H02M 7/42 - 7/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源に電気的に接続するように適合された第1の電極端子及び第2の電極端子と、
前記第1の電極端子に電気的に接続された第1のスイッチ素子と、
前記第1のスイッチ素子と前記第2の電極端子との間に電気的に接続され、前記第1のスイッチ素子及び前記第2の電極端子にそれぞれ電気的に接続されたドレイン及びソースを含む、第2のスイッチ素子と、
前記第2のスイッチ素子の前記ソースに電気的に接続され、前記第2のスイッチ素子を駆動するためのゲート駆動信号を受信するように適合された、第1のKelvinソースピンと、
前記第2のスイッチ素子の前記ソースに電気的に接続され、スナバ回路に電気的に接続されるように構成された、第2のKelvinソースピンと、
を含み、
前記第1のKelvinソースピンを介して送信される前記ゲート駆動信号と、前記第2のKelvinソースピンを介して伝達される電力とは、互いにデカップリングされ、
前記第1のKelvinソースピン及び前記第2のKelvinソースピンは、異なるタイプの接続によって前記第2のスイッチ素子のソースに電気的に接続され、
前記第2のKelvinソースピンと前記第2のスイッチ素子のソースとの間のインダクタンスは、前記第1のKelvinソースピンと前記第2のスイッチ素子のソースとの間のインダクタンスと異なる、パワーモジュール。
【請求項2】
回路基板、第1のソースピン、第1のゲートピン、第1のドレインピン、第2のゲートピン、及び第2のドレインピンをさらに含み、
前記パワーモジュールは、複数の前記第1のスイッチ素子と複数の前記第2のスイッチ素子とを含み、前記パワーモジュールの全てのスイッチ素子とピンは、前記回路基板に配置され、前記第1のソースピン、前記第1のゲートピン、及び前記第1のドレインピンは、それぞれ前記複数の第1のスイッチ素子のソース、ゲート、及びドレインに電気的に接続され、前記第2のゲートピン及び前記第2のドレインピンは、それぞれ前記複数の第2のスイッチ素子のゲート及びドレインに電気的に接続され、前記第1及び第2のKelvinソースピンは、それぞれ前記複数の第2のスイッチ素子のソースに電気的に接続される、請求項1に記載のパワーモジュール。
【請求項3】
前記回路基板は、第1の辺と、前記第1の辺に対向する第2の辺とを有し、前記第1のソースピン、前記第1のゲートピン、前記第1のドレインピン、及び前記複数の第1のスイッチ素子は、前記第1の辺に隣接して配置され、前記第1のKelvinソースピン、前記第2のKelvinソースピン、前記第2のゲートピン、前記第2のドレインピン、及び前記複数の第2のスイッチ素子は、前記第2の辺に隣接して配置される、請求項に記載のパワーモジュール。
【請求項4】
前記回路基板は、第1の辺、第2の辺、第3の辺、及び第4の辺を有し、前記第1の辺は前記第2の辺に対向し、前記第3の辺は前記第4の辺に対向し、前記パワーモジュールの全てのピンは、前記第2の辺に隣接して配置され、前記複数の第1のスイッチ素子は、前記第3の辺と第4の辺との間の中心線に沿って配置され、前記複数の第2のスイッチ素子は、前記複数の第1のスイッチ素子と前記第3及び第4の辺との間に配置される、請求項に記載のパワーモジュール。
【請求項5】
前記第1のスイッチ素子はダイオードを含み、前記第2のスイッチ素子は電界効果トランジスタを含む、請求項1に記載のパワーモジュール。
【請求項6】
前記第1のスイッチ素子及び第2のスイッチ素子は、電界効果トランジスタを含む、請求項1に記載のパワーモジュール。
【請求項7】
前記第1のスイッチ素子は、前記第1の電極端子及び前記第2のスイッチ素子のドレインにそれぞれ電気的に接続されたドレイン及びソースを含み、前記パワーモジュールは、前記第1のスイッチ素子のドレインにそれぞれ電気的に接続された第1のKelvinコレクタピン及び第2のKelvinコレクタピンをさらに含み、前記第1のKelvinコレクタピンは、不飽和保護のために検出回路に電気的に接続されるように構成され、前記第2のKelvinコレクタピンは、前記スナバ回路に電気的に接続されるように構成され、
前記第1のKelvinコレクタピンを介して送信される検出信号と、前記第2のKelvinコレクタピンを介して伝達される電力とは、互いにデカップリングされ、
前記第1のKelvinコレクタピン及び前記第2のKelvinコレクタピンは、異なるタイプの接続によって前記第1のスイッチ素子のドレインに電気的に接続され、
前記第2のKelvinコレクタピンと前記第1のスイッチ素子のドレインとの間のインダクタンスは、前記第1のKelvinコレクタピンと前記第1のスイッチ素子のドレインとの間のインダクタンスと異なる、請求項に記載のパワーモジュール。
【請求項8】
回路基板、第1のソースピン、第1のゲートピン、第2のゲートピン、及び第2のドレインピンをさらに含み、
前記パワーモジュールは、複数の前記第1のスイッチ素子と複数の前記第2のスイッチ素子とを含み、前記パワーモジュールの全てのスイッチ素子とピンは、前記回路基板に配置され、前記第1のソースピン及び前記第1のゲートピンは、それぞれ前記複数の第1のスイッチ素子のソース及びゲートに電気的に接続され、前記第1及び第2のKelvinコレクタピンは、前記複数の第1のスイッチ素子のドレインに電気的に接続され、前記第2のゲートピン及び前記第2のドレインピンは、それぞれ前記複数の第2のスイッチ素子のゲート及びドレインに電気的に接続され、前記第1及び第2のKelvinソースピンは、前記複数の第2のスイッチ素子のソースに電気的に接続される、請求項に記載のパワーモジュール。
【請求項9】
前記回路基板は、第1の辺と、前記第1の辺に対向する第2の辺とを有し、前記第1のソースピン、前記第1のゲートピン、前記第1及び第2のKelvinコレクタピン、及び前記複数の第1のスイッチ素子は、前記第1の辺に隣接して配置され、前記第1及び第2のKelvinソースピン、前記第2のゲートピン、前記第2のドレインピン、及び前記複数の第2のスイッチ素子は、前記第2の辺に隣接して配置される、請求項に記載のパワーモジュール。
【請求項10】
前記回路基板は、第1の辺、第2の辺、第3の辺、及び第4の辺を有し、前記第1の辺は前記第2の辺に対向し、前記第3の辺は前記第4の辺に対向し、前記パワーモジュールの全てのピンは、前記第2の辺に隣接して配置され、前記複数の第1のスイッチ素子は、前記第3の辺と第4の辺との間の中心線に沿って配置され、前記複数の第2のスイッチ素子は、前記複数の第1のスイッチ素子と前記第3及び第4の辺との間に配置される、請求項に記載のパワーモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、パワーモジュール、特にKelvinピンを利用してパワーループとゲート駆動ループをデカップリングすることができるパワーモジュールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
SiCパワーモジュールは、自動車用トラクションインバータ用途において新しい話題となっている。スイッチング損失が大幅に改善されたにもかかわらず、図1に示すスイッチングリンギングは、EMC(電磁両立性)テストの失敗につながる可能性がある。図1において、3つの波形はローサイドMOSFET(金属酸化物半導体電界効果トランジスタ)のターンオン過渡を表す。Vds_HはハイサイドMOSFETのダイオード電圧、Ids_HはハイサイドMOSFETを流れるフリーホイーリング電流、Vge_terminalはオンになっているローサイドMOSFETのゲート信号である。図1に示すように、ローサイドMOSFETがオンになると、ハイサイドダイオードのスイッチング波形にスイッチングリンギングが観測される。従来、電圧スパイクやリンギングを抑えるために、システムにスナバ回路を導入することが一般的である。
【0003】
一方、インバータ用途でのより大きな出力電流に対する要求の高まりを満たすために、パワーモジュールには多くのダイが並列に接続されている。しかし、ほとんどのパワーモジュールには、スナバ設計用の専用ピンがない。その結果、回路に追加されたスナバ回路は、スイッチのソース及びドレイン信号ピンに直接接続される必要がある。スナバとゲート駆動ループは、パワーモジュール内の寄生の一部を共有する。このような特定の接続は、パワーループのノイズをゲート駆動ループにカップリングし、ゲート発振の問題を引き起こす可能性がある。図2に示すように、スナバの実装により、スナバ回路からのノイズは、ゲート信号に大きな電圧スパイクを引き起こす。ローサイドMOSFETのゲート発振により、ゲートの故障が発生し、パワーモジュールの信頼性が低下する可能性がある。
【0004】
従って、従来技術の欠点を解消するためのパワーモジュールを提供する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示の目的は、Kelvinピンを利用してパワーループとゲート駆動ループをデカップリングすることができるパワーモジュールを提供することである。特に、前記パワーモジュールは、それぞれゲート駆動目的及びスナバ設計専用の2本のKelvinピンを含む。従って、パワーループのリンギングがゲート駆動信号を汚染することが防止される。その結果、パワーループのリンギングが抑制され、ゲート駆動ループのノイズが低減され、パワーモジュールの信頼性が向上する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様によれば、第1の電極端子、第2の電極端子、第1のスイッチ素子、第2のスイッチ素子、第1のKelvinソースピン、及び第2のKelvinソースピンを含むパワーモジュールを提供する。前記第1のスイッチ素子は前記第1の電極端子に電気的に接続される。前記第2のスイッチ素子は、前記第1のスイッチ素子と前記第2の電極端子との間に電気的に接続され、前記第1のスイッチ素子及び前記第2の電極端子にそれぞれ電気的に接続されたドレイン及びソースを含む。前記第1のKelvinソースピンは、前記第2のスイッチ素子のソースに電気的に接続され、前記第2のスイッチ素子を駆動するためのゲート駆動信号を受信するように適合される。前記第2のKelvinソースピンは、前記第2のスイッチ素子のソースに電気的に接続され、スナバ回路に電気的に接続されるように構成される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】ローサイドMOSFETのターンオン過渡時のハイサイドMOSFETのダイオード電圧及び電流、並びにローサイドMOSFETのゲート信号の波形を示す概略オシログラムである。
図2】ローサイドMOSFETのターンオン過渡時のハイサイドMOSFETのダイオード電圧及び電流、並びにローサイドMOSFETのゲート信号の波形を示す概略オシログラムである。
図3】本開示の第1の実施形態に係るパワーモジュールを示す概略回路図である。
図4A】本開示の第1の実施形態に係るパワーモジュールのパッケージング・実装を示す概略斜視図である。
図4B図4Aのパワーモジュールのパッケージング・実装の上面図である。
図5A】本開示の第1の実施形態に係るパワーモジュールの別のパッケージング・実装を示す概略斜視図である。
図5B図5Aのパワーモジュールのパッケージング・実装の上面図である。
図6】本開示の第2の実施形態に係るパワーモジュールを示す概略回路図である。
図7A】本開示の第2の実施形態に係るパワーモジュールのパッケージング・実装を示す概略斜視図である。
図7B図7Aのパワーモジュールのパッケージング・実装の上面図である。
図8A】本開示の第2の実施形態に係るパワーモジュールの別のパッケージング・実装を示す概略斜視図である。
図8B図8Aのパワーモジュールのパッケージング・実装の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態を参照して、本開示をより具体的に説明する。なお、本開示の好ましい実施形態に関する以下の説明は、例示及び説明のみを目的として提示されており、網羅的であること、または開示された正確な形式に限定されることを意図するものではない。
【0009】
以下、実施形態を参照して、本発明をより具体的に説明する。なお、本発明の好ましい実施形態に関する以下の説明は、例示及び説明のみを目的として提示されており、網羅的であること、または開示された正確な形式に限定されることを意図するものではない。例えば、以下の説明において、第2の特徴の上方に、または第2の特徴の上に第1の特徴を形成することは、第1の特徴と第2の特徴とが直接接触して形成される実施形態を含んでもよく、第1の特徴と第2の特徴とが直接接触しないように、第1の特徴と第2の特徴との間に追加の特徴が形成され得る実施形態を含んでもよい。さらに、本開示は、様々な例において参照番号及び/または文字を繰り返すことがある。この繰り返しは、単純かつ明確にするためであり、記載される様々な実施形態及び/または構成の間の関係をそれ自体規定するものではない。更に、「下方(beneath)」、「下(below)」、「下方(lower)」、「上(above)」、「上方(upper)」などの空間的に相対的な用語は、図面に示される、ある要素または特徴の別の要素(複数可)または特徴(複数可)に対する関係を記述するための説明を容易にするために本明細書で使用され得る。空間的に相対的な用語は、図面に示された方向に加えて、使用中または動作中のデバイスの種々の方向を包含するように意図される。装置は、他の方向を向いていてもよく(90度回転または他の方向)、本明細書で使用される空間的に相対的な記述語もそれに従って解釈され得る。ある要素が別の要素に「接続されている」または「カップリングされている」と呼ばれる場合、その要素は他の要素に直接接続またはカップリングされていてもよく、介在する要素が存在していてもよい。本開示の広い数値範囲及びパラメータは近似値であるが、特定の例で数値は可能な限り正確に記載されている。さらに、請求項における「第1」、「第2」、「第3」などの用語は、様々な要素を説明するために使用されるが、これらの要素は、これらの用語によって限定されるべきではなく、これらの要素は、それぞれの実施形態で異なる参照番号を使用して説明されるが、これらの用語は、ある要素を別の要素から区別するためにのみ使用される。例えば、例示的な実施形態の範囲から逸脱することなく、第1の要素は第2の要素と呼ばれることができ、同様に、第2の要素は第1の要素と呼ばれることができる。さらに、「及び/または」などは、関連する列挙された項目のうちの1つまたは複数の任意またはすべての組み合わせを含むために本明細書で使用され得る。本発明の広い範囲に記載された数値範囲及びパラメータは近似値であるが、具体的な例に報告される数値は、可能な限り正確に記載されている。ただし、すべての数値は、それぞれの試験測定の標準偏差により生じるある程度の誤差を本質的に有する。また、本明細書で使用されるように、「約」という用語は、一般に、所定の値から離れ、または10%、5%、1%または0.5%の範囲内であることを意味する。あるいは、「約」という用語は、当業者が認める平均の許容可能な標準誤差内であることを意味する。操作/実施例に加えて、特に記載がない限り、すべての場合において、本明細書に開示されている材料の数、持続時間、温度、操作条件、量の割合などの数値範囲、量、値、及びパーセンテージのすべては、「約」という用語で修飾されているものと理解されたい。従って、特に明示がない限り、本発明の数値パラメータ及び添付の特許請求の範囲は、所望の近似値の変化に従うことである。少なくとも、各数値パラメータの有効桁数は、従来の四捨五入技術を適用することによって報告・解釈されるべきである。ここで、一つの端点からもう一つの端点まで、または二つの端点間の範囲として表すことができる。本明細書に開示されるすべての範囲は、特に断りのない限り、端点を含む。
【0010】
図3は、本開示の第1の実施形態に係るパワーモジュールを示す概略回路図である。図3に示すように、パワーモジュール1は、第1の電極端子、第2の電極端子、第1のスイッチ素子11、第2のスイッチ素子12、第1のKelvinソースピンS2-1、及び第2のKelvinソースピンS2-2を含む。第1及び第2の電極端子は、電源2に電気的に接続するように適合され、パワーモジュール1の第1及び第2の電極端子は、電源2の異なる端子にそれぞれ電気的に接続するように構成される。本実施形態では、パワーモジュール1の第1及び第2の電極端子は、それぞれ電源2の正極端子及び負極端子に電気的に接続される。第1のスイッチ素子11は第1の電極端子と第2のスイッチ素子12との間に電気的に接続される。第2のスイッチ素子12は、第1のスイッチ素子11と第2の電極端子との間に電気的に接続され、ソース、ゲート、及びドレインを含み、第2のスイッチ素子12のドレイン及びソースは、それぞれ第1のスイッチ素子11及び第2の電極端子に電気的に接続される。第1のKelvinソースピンS2-1は、第2のスイッチ素子12のソースに電気的に接続され、第2のスイッチ素子12を駆動するように構成されたゲート駆動信号を受信するように適合される。第2のKelvinソースピンS2-2は、第2のスイッチ素子12のソースに電気的に接続され、スナバ回路3に電気的に接続されるように構成される。一例として、スナバ回路3は、電源2の正極端子と第2のKelvinソースピンS2-2との間に直列に接続されたインダクタ、コンデンサ、及び抵抗を含むが、これに限定されない。一実施形態では、スナバ回路3は、パワーループのリンギングを吸収するように適合される。一実施形態では、RLは、インダクタ負荷であり、すべてのインダクタは、寄生インダクタである。一実施形態では、寄生インダクタを実インダクタに置き換えることができる。
【0011】
なお、パワーモジュール1の第1及び第2のKelvinソースピンS2-1及びS2-2は、それぞれゲート駆動目的及びスナバ設計専用である。従って、いくつかの実施形態では、第1のKelvinソースピンS2-1を介して送信されるゲート駆動信号と、第2のKelvinソースピンS2-2を介して伝達される電力とは、互いにデカップリングされ得る。本実施形態では、第1のKelvinソースピンS2-1を介して送信されるゲート駆動信号と、第2のKelvinソースピンS2-2を介して伝達される電力とが互いにデカップリングされることにより、パワーループのリンギングがゲート駆動信号を汚染することが防止される。その結果、パワーループのリンギングは、スナバ回路によって抑制され、ゲート駆動ループのノイズは、第1及び第2のKelvinソースピンS2-1及びS2-2によって実現されるデカップリングにより低減されるため、パワーモジュール1の信頼性が向上する。
【0012】
出力電流を増加させるために、パワーモジュール1は、並列に接続された多くのスイッチ素子を含むことができ、実際のスイッチ素子の数は、実際の要件に応じて決定される。いくつかの実施形態では、第1のスイッチ素子11及び第2のスイッチ素子12は、ダイオードまたは電界効果トランジスタ、例えばMOSFETまたはIGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)を含み得るパワー半導体デバイスであってもよいが、これらに限定されない。一実施形態では、第1のスイッチ素子11は、ダイオードまたは電界効果トランジスタ、例えばMOSFETまたはIGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)を含み得、第2のスイッチ素子12は、MOSFETまたはIGBTのような電界効果トランジスタを含み得る。以下に、パワーモジュール1の2つのパッケージング・実装形態を例示する。
【0013】
図4Aは本開示の第1の実施形態に係るパワーモジュールのパッケージング・実装を示す概略斜視図であり、図4B図4Aのパワーモジュールのパッケージング・実装の上面図である。図4A及び図4Bのパッケージング・実装では、第1及び第2のスイッチ素子11及び12はIGBTである。図4A及び図4Bに示すように、パワーモジュール1は、並列に接続された複数の第1のスイッチ素子11と、並列に接続された複数の第2のスイッチ素子12とを含む。また、パワーモジュール1は、回路基板13、第1のソースピンS1、第1のゲートピンG1、第1のドレインピンD1、第2のゲートピンG2、及び第2のドレインピンD2をさらに含む。第1及び第2のスイッチ素子11及び12、第1のソースピンS1、第1のゲートピンG1、第1のドレインピンD1、第1及び第2のKelvinソースピンS2-1及びS2-2、第2のゲートピンG2、及び第2のドレインピンD2はすべて、回路基板13に配置される。第1のソースピンS1、第1のゲートピンG1、及び第1のドレインピンD1は、それぞれ複数の第1のスイッチ素子11のソース、ゲート、及びドレインに電気的に接続される。第1及び第2のKelvinソースピンS2-1及びS2-2は、それぞれ複数の第2のスイッチ素子12のソースに電気的に接続される。第2のゲートピンG2及び第2のドレインピンD2は、それぞれ複数の第2のスイッチ素子12のゲート及びドレインに電気的に接続される。ピンとスイッチ素子との電気的接続関係は図3にも示される。各ピンは、回路基板13上でボンディングワイヤ、クリップまたは導電性パターンを介して、スイッチ素子の対応するソース、ゲートまたはドレインに電気的に接続される。なお、第1のKelvinソースピンS2-1及び第2のKelvinソースピンS2-2は、干渉を回避しデカップリングを実現するために、異なるワイヤ、クリップまたは導電性パターンを介して第2のスイッチ素子12のソースに電気的に接続される。さらに、第1及び第2のKelvinソースピンS2-1及びS2-2が別々に配置されているため、ゲート駆動ループは、スナバループと同じソースインダクタンス(すなわち、図3に示されるインダクタンスL2)を共有しない。
【0014】
回路基板13は長方形であり、第1の辺131、第2の辺132、第3の辺133、及び第4の辺134を有する。第1の辺131は第2の辺132に対向し、第3の辺133は第4の辺134に対向する。第1のソースピンS1、第1のゲートピンG1、第1のドレインピンD1、及び複数の第1のスイッチ素子11は、第1の辺131に隣接して配置される。第1及び第2のKelvinソースピンS2-1及びS2-2、第2のゲートピンG2、第2のドレインピンD2、及び複数の第2のスイッチ素子12は、第2の辺132に隣接して配置される。さらに、パワーモジュール1は、電源に電気的に接続されるように適合された受電及び出力用の電極端子14、15を含む。一実施形態では、パワーモジュール1は、サーミスタに接続されるように構成されたピンT1、T2をさらに含む。
【0015】
図5Aは本開示の第1の実施形態に係るパワーモジュールの別のパッケージング・実装を示す概略斜視図であり、図5B図5Aのパワーモジュールのパッケージング・実装の上面図である。図5A及び図5Bのパッケージング・実装では、第1及び第2のスイッチ素子11及び12はMOSFETである。図5A及び図5Bにおいて、図4A及び図4Bの構成部品及び要素に対応するものは同一の参照番号によって示され、それらの詳細な説明はここでは省略される。図4A及び図4Bと比較すると、図5A及び図5Bにおけるピンとスイッチ素子の配置位置が異なる。特に、図5A及び図5Bに示すように、パワーモジュール1の全てのピンは第2の辺132に隣接して配置され、複数の第1のスイッチ素子11は、第3の辺133と第4の辺134との間の中心線に沿って配置され、複数の第2のスイッチ素子12は、複数の第1のスイッチ素子11と第3及び第4の辺133及び134との間に配置される。すなわち、複数の第2のスイッチ素子12は、第1のスイッチ素子11と第3の辺133との間の領域、及び第1のスイッチ素子11と第4の辺134との間の領域に配置される。一実施形態では、第2のスイッチ素子12に電気的に接続された全てのピンにおいて、第1及び第2のKelvinソースピンS2-1及びS2-2間の距離が最も長い。
【0016】
また、図4A~5Bに示す第1のスイッチ素子11は、IGBTまたはMOSFETによって実装されるが、これに限定されない。第1のスイッチ素子11は、接合ゲート電界効果トランジスタやバイポーラ接合トランジスタなどの他のタイプのトランジスタによって実装されてもよい。いくつかの実施形態では、第1のスイッチ素子11はダイオードによって実装されてもよい。
【0017】
図6は本開示の第2の実施形態に係るパワーモジュールを示す概略回路図であり、図3の構成部品及び要素に対応するものは同一の参照番号によって示され、それらの詳細な説明はここでは省略される。第2の実施形態では、第1及び第2のスイッチ素子11及び12は共に電界効果トランジスタである。図6に示すように、第2の実施形態に係るパワーモジュール1aは、第1のKelvinコレクタピンD1-1及び第2のKelvinコレクタピンD1-2をさらに含む。第1のスイッチ素子11のドレイン及びソースは、それぞれ電源2及び第2のスイッチ素子12のドレインに電気的に接続される。前記第1及び第2のKelvinコレクタピンD1-1及びD1-2は、それぞれ第1のスイッチ素子11のドレインに電気的に接続される。第1のKelvinコレクタピンD1-1は、不飽和保護のために検出回路(図示せず)に電気的に接続されるように構成される。具体的には、検出回路は、第1のスイッチ素子11を短絡故障から保護するように適合される。第1のKelvinコレクタピンD1-1により、パワーループが不飽和感知経路から分離されることで、第1のスイッチ素子11のスイッチングリンギングが過渡時の不飽和感度に影響を与えることが防止される。第2のKelvinコレクタピンD1-2は、スナバ回路3に電気的に接続されるように構成される。第1のKelvinコレクタピンD1-1を介して送信される不飽和感知のための検出信号と、第2のKelvinコレクタピンD1-2を介して伝達される電力とは、互いにデカップリングされる。
【0018】
パワーモジュール1aは、第1の実施形態のパワーモジュール1と同様に、出力電流を増加させるために、並列に接続された多くのスイッチ素子を含むことができ、実際のスイッチ素子の数は、実際の要件に応じて決定される。以下に、パワーモジュール1aの2つのパッケージング・実装形態を例示する。
【0019】
図7Aは本開示の第2の実施形態に係るパワーモジュールのパッケージング・実装を示す概略斜視図であり、図7B図7Aのパワーモジュールのパッケージング・実装の上面図である。図7A及び図7Bにおいて、図4A及び図4Bの構成部品及び要素に対応するものは同一の参照番号によって示され、それらの詳細な説明はここでは省略される。さらに、図7A及び図7Bにおいて、第1及び第2のスイッチ素子11及び12はIGBTである。図7A及び図7Bに示すように、第1及び第2のKelvinコレクタピンD1-1及びD1-2は、回路基板13に配置され、第1の辺131に隣接している。第1及び第2のKelvinコレクタピンD1-1及びD1-2は、回路基板13上でボンディングワイヤまたは導電性パターンを介して、複数の第1のスイッチ素子11のドレインにそれぞれ電気的に接続される。
【0020】
図8Aは本開示の第2の実施形態に係るパワーモジュールの別のパッケージング・実装を示す概略斜視図であり、図8B図8Aのパワーモジュールのパッケージング・実装の上面図である。図8A及び図8Bにおいて、図5A及び図5Bの構成部品及び要素に対応するものは同一の参照番号によって示され、それらの詳細な説明はここでは省略される。さらに、図8A及び図8Bにおいて、第1及び第2のスイッチ素子11及び12はMOSFETである。図8A及び図8Bに示すように、第1及び第2のKelvinコレクタピンD1-1及びD1-2は、回路基板13に配置され、第2の辺132に隣接している。第1及び第2のKelvinコレクタピンD1-1及びD1-2は、回路基板13上でボンディングワイヤまたは導電性パターンを介して、複数の第1のスイッチ素子11のドレインにそれぞれ電気的に接続される。
【0021】
上記のように、本開示は、Kelvinピンを利用してパワーループとゲート駆動ループをデカップリングすることができるパワーモジュールを提供する。特に、前記パワーモジュールは、それぞれゲート駆動目的及びスナバ設計専用の2本のKelvinピンを含む。従って、パワーループのリンギングがゲート駆動信号を汚染することが防止される。その結果、パワーループのリンギングが抑制され、ゲート駆動ループのノイズが低減され、パワーモジュールの信頼性が向上する。
【0022】
本開示は、現在最も実用的で好ましい実施形態であると考えられるものについて説明されてきたが、本開示は、記載された実施形態に限定される必要はないことを理解されたい。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図6
図7A
図7B
図8A
図8B