(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】表面除菌ボックス
(51)【国際特許分類】
A61L 2/10 20060101AFI20241001BHJP
【FI】
A61L2/10
(21)【出願番号】P 2022200617
(22)【出願日】2022-12-15
【審査請求日】2023-07-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000226242
【氏名又は名称】日機装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】弁理士法人平田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 稔和
(72)【発明者】
【氏名】杉山 博信
(72)【発明者】
【氏名】藤元 昭一
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 浩子
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 礼一郎
【審査官】大内 康裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-187121(JP,A)
【文献】中国実用新案第212880215(CN,U)
【文献】特表2013-506531(JP,A)
【文献】中国実用新案第212313765(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 2/08~ 2/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車に搭載され、
筐体と、
前記筐体内に収容され、除菌対象となる対象物を載置されるトレイと、
前記筐体内で前記対象物に紫外光を照射し、前記対象物の表面を除菌する
発光ダイオードからなる光源と、を備え、
前記トレイと前記光源の少なくとも一方が、前記筐体に対して
、前記自動車の走行中の振動によって揺動可能に設けられている、
表面除菌ボックス。
【請求項2】
前記トレイは、
揺動した際に前記筐体の内面に衝突するように構成されており、前記トレイの外面または前記筐体の内面に、前記衝突の際のクッションとなる部材を有する、
請求項1に記載の表面除菌ボックス。
【請求項3】
前記光源は、前記筐体の天井に吊り下げられることで、前記筐体に対して揺動可能に設
けられている、
請求項1に記載の表面除菌ボックス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面除菌ボックスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば手術用の器具等の除菌には、酸化エチレンガス(EOG)を用いて除菌を行う方法や、高圧蒸気を用いたオートクレーブにより除菌を行う方法等が用いられてきた。しかしながら、これらの方法では、装置が大がかりになるために、装置が設置された特定の場所でしか除菌を行うことができず、また除菌やその後処理に時間がかかってしまうという問題がある。
【0003】
これに対して、除菌対象となる対象物に紫外光を照射して除菌を行う方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
紫外光を用いて対象物の表面を除菌する場合、対象物の表面にまんべんなく紫外光を照射することが望まれる。このために、例えば、紫外光を照射する光源を多くすることが考えられるが、その場合、消費電力の増大やコストの増大が懸念される。よって、光源の数を増やさずとも、対象物にまんべんなく紫外光を照射可能とすることが望まれる。
【0006】
そこで、本発明は、光源の数を増やさずとも、対象物にまんべんなく紫外光を照射可能な表面除菌ボックスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施の形態に係る表面除菌ボックスは、筐体と、前記筐体内に収容され、除菌対象となる対象物を載置されるトレイと、前記筐体内で前記対象物に紫外光を照射し、前記対象物の表面を除菌する発光素子からなる光源と、を備え、前記トレイと前記光源の少なくとも一方が、前記筐体に対して揺動可能に設けられている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、光源の数を増やさずとも、対象物にまんべんなく紫外光を照射可能な表面除菌ボックスを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施の形態に係る表面除菌ボックスを示す図であり、(a)は斜視図、(b)は断面図である。
【
図2】トレイの揺動による対象物の重なりの解消を説明する図である。
【
図3】(a)~(c)は、本発明の一変形例に係る表面除菌ボックスの断面図である。
【
図4】(a)は、本発明の一変形例に係る表面除菌ボックスの断面図であり、(b)は、(a)のA-A線断面において光源4の揺動を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[実施の形態]
以下、本発明の実施の形態を添付図面にしたがって説明する。
【0011】
図1は、本実施の形態に係る表面除菌ボックス1を示す図であり、(a)は斜視図、(b)は断面図である。表面除菌ボックス1は、例えば自動車に搭載され、自動車の走行中の振動等を利用して、除菌対象となる対象物にまんべんなく紫外光を照射できるよう構成したものである。
【0012】
図1に示すように、表面除菌ボックス1は、筐体2と、筐体内に収容され、除菌対象となる対象物を載置するかご状のトレイ3と、筐体2内で対象物に紫外光を照射し、対象物の表面を除菌する光源4と、を備えている。
【0013】
(筐体2)
筐体2は、その上部が開閉可能に構成された箱状に形成されている。本実施の形態では、筐体2は、上方が開口した直方体形状の本体部21と、本体部21の開口を塞ぐ蓋部22と、本体部21と蓋部22とを開閉自在に連結するヒンジ23と、を有している。図示例では、筐体2が全体として直方体形状に形成されている場合を示しているが、筐体2の具体的な形状はこれに限定されない。また、ヒンジ23を省略し、本体部21に対して蓋部22が着脱可能に構成されていてもよい。
【0014】
表面除菌ボックス1では紫外光により除菌を行うため、筐体2は、紫外光を外部に漏らさないように、紫外光を透過しない部材で構成されるとよい。また、筐体2の内面は、紫外光を反射する金属等の部材で構成されるとよい。これにより、光源4の数を減らしても、対象物にまんべんなく紫外光を照射でき、除菌効率を向上できる。
【0015】
図示していないが、筐体2には蓋部22を閉じた状態でロックするロック機構が設けられているとよい。そして、ロック機構によるロックがなされているときのみ、光源4の駆動が可能となっているとよい。これにより、蓋部22を開けた状態で光源4が駆動されて紫外光が外部に漏れてしまうことが抑制され、安全性を向上できる。筐体2の幅/奥行き/高さは、例えば、400mm/100mm/50mm、あるいは350mm/150mm/120mm程度とすればよく、携帯可能な大きさとすることが望ましい。
【0016】
(トレイ3)
本実施の形態では、トレイ3は、上方が開口した直方体形状に形成されているが、トレイ3の形状はこれに限定されず、対象物を安定して保持できる形状であればよい。例えば、開口を閉じる蓋を取り付けて、対象物の上方への飛び出しや光源4への干渉を抑制してもよい。また、トレイ3は、対象物への紫外光の照射効率を高めるために、網状に形成されていることが望ましい。さらに、トレイ3は、紫外光により劣化しにくい材料から構成されるとよい。さらにまた、トレイ3は、対象物への紫外光の照射効率を高めるために、紫外光を透過する材料から構成されることがより望ましい。トレイ3の底面は、対象物を載置する載置面31となる。
【0017】
(光源4)
光源4は、発光素子からなる。本実施の形態では、光源4は、複数の発光ダイオード41から構成されている。除菌効率を高めるために、発光ダイオード41としては、中心波長が波長255nm以上350nm以下の深紫外光を照射するものを用いるとよい。本実施の形態では、8個の光源4を基板42上に一直線上に配置して光源4を構成すると共に、当該光源4を蓋部22の下面と、本体部21の一側面(上面視で長辺を構成する側面の一方)とに設けた。ただし、光源4の個数や配置は図示のものに限定されず、筐体2の大きさ等に応じて適宜変更可能である。より好ましくは、対象物の除菌に要する時間(例えば、載置面31において枯草菌芽胞を99.9%不活化するのに要する時間)が、移動時間以内または目的地に到着するまでの時間内(例えば、30分以内)となるように、光源4の個数や配置を適宜決定するとよい。また、移動時間以内または目的地に到着するまでの時間内に除菌が終了するように、光源3の出力を制御しても良い。
【0018】
光源4を駆動するための電源については、自動車で使用できるように、例えば、自動車のシガーソケットやUSBポートから給電されるように構成してもよい。また、筐体2内にバッテリーを搭載し、当該バッテリーから給電がなされるように構成してもよい。
【0019】
光源4として発光ダイオード41を用いることで、表面除菌ボックス1の小型化が可能になる。また、例えば、光源4として紫外光ランプを用いた場合には、衝撃により紫外光ランプが破損するおそれがあるが、光源4として発光ダイオード41を用いることで、光源4の破損のリスクを抑えることができる。
【0020】
また、光源4を駆動する際には、光源4を常時点灯させる他、光源4を点滅させてもよい。つまり、点灯と消灯を所定時間毎に繰り返すように光源4を制御してもよい。
【0021】
(効率よく紫外光を照射するための構造)
本実施の形態に係る表面除菌ボックス1では、トレイ3と光源4の少なくとも一方が、筐体2に対して揺動可能に設けられている。
図2の例では、トレイ3が筐体2に対して揺動可能に設けられている。これにより、自動車の振動やカーブ時にかかる慣性力など、外部から付与される力に応じてトレイ3(または光源4)が揺れ動き、対象物に対する紫外光の照射角度や照射距離を変動させることが可能になる。消費電力やコストを低減するために光源4の数を少なくすると、トレイ3の載置面31の一部(例えば端の部分)において紫外光の照射強度が比較的弱くなる場合がある。このような場合であっても、トレイ3(または光源4)を揺動させることで、対象物に対する紫外光の照射角度や照射距離を変動させ、対象物にまんべんなく紫外光を照射して、効率よく対象物の除菌を行うことが可能になる。
【0022】
さらに、
図2に示すように、トレイ3を揺動させることによって、対象物(図示例ではハサミ5)が重なり合ってしまっている場合であっても、トレイ3の揺動により対象物を動かして、対象物に重なりが無い状態にすることが可能になる。これにより、より効率よく対象物の除菌を行うことが可能になる。
【0023】
トレイ3は、筐体2に振動等の外力が加わった際に、対象物の載置面31が傾くように揺動するよう設けられているとよい。以下、トレイ3を揺動可能に筐体2に固定する機構を揺動機構6と呼称する。本実施の形態では、揺動機構6は、筐体2における本体部21の対向する側面(上面視で短辺を構成する2つの側面)と、トレイ3とをそれぞれ中心軸が共通する回動軸61によりそれぞれ連結し、かつ、当該回動軸61に対して回動可能にトレイ3を設けて構成されている。これにより、トレイ3は、外部の振動等に応じて、回動軸61周りに回動(揺動)する。このように構成することで、トレイ3を揺動させるためのアクチュエータ等の機構を省略でき、表面除菌ボックス1の小型化、軽量化、及び省電力化が可能になる。
【0024】
また、図示していないが、トレイ3が揺動した際にトレイ3が筐体2の内面に衝突する場合、ゴム等のクッションとなる部材を、トレイ3の外面または筐体2の内面に設けてもよい。これにより、トレイ3や筐体2の損傷を抑制できると共に、トレイ3が筐体2に衝突する際の音を小さくできる。
【0025】
(変形例)
本実施の形態では、回動軸61周りにトレイ3を回動させるように揺動機構6を構成したが、揺動機構6の具体的な構造はこれに限定されない。例えば、
図3(a)に示すように、本体部21の底面とトレイ3とをコイルバネ62により接続した構造としてもよい。この場合、コイルバネ62としては、トレイ3側で直径が大きく、本体部21の底面側で直径が小さくなる側面視で台形状のバネを用いることで、筐体2に加わった振動を増幅して、トレイ3をより強く揺動させることが可能になる。なお、コイルバネ62を2つ以上用いると、逆に振動を吸収してしまう場合があるため、コイルバネ62は、本体部21の底面の中央部に1つ設けることが望ましいといえる。
【0026】
また、
図3(b)に示すように、本体部21の底面の中央部に半球状(あるいは上面が湾曲した棒状)のスペーサ63を設け、当該スペーサ63上にトレイ3を載置することで、筐体2に対して揺動可能にトレイ3を設けてもよい。さらに、
図3(c)に示すように、筐体2の天井(蓋部22の下面)にトレイ3を吊り下げる構造としてもよい。
図3(c)の例では、トレイ3に設けられた紐65をフック64で吊り下げた構造としている。ここでは、ばね付きのフック64を用いた場合を示しているが、ばねは省略してもよい。この場合も、複数個所で吊り下げる構造とすると振動を吸収してしまうおそれがあるため、平面視における略中央部において1か所で吊り下げる構造とすることが望ましいといえる。
【0027】
また、本実施の形態では、トレイ3が筐体2に対して揺動可能に設けられている場合について説明したが、光源4が筐体2に対して揺動可能に設けられていてもよい。この場合、例えば、
図4(a),(b)に示すように、光源4は、筐体2の天井(蓋部22の下面)に吊り下げられることで、筐体2に対して揺動可能に設けられていてもよい。ここでは、ワイヤ7により光源4を吊り下げた場合を示しているが、これに限らず、紐状の部材やゴム、ばね等を介して光源4を吊り下げてもよい。なお、光源4を筐体2に揺動可能に設ける具体的な構造は、図示のものに限定されない。
【0028】
これにより、筐体2に振動等の外力が加えられると、光源4が振り子のように揺れ動き、対象物にまんべんなく紫外光が照射される。また、蓋部22の下面に凹部22aを形成し、その凹部22a内に光源4を収容することで、凹部22aの内壁への干渉により光源4の可動範囲を制限することが可能となり、光源4が動き過ぎて対象物に紫外光が十分に照射されないといった不具合を抑制することができる(
図4(b)参照)。なお、光源4とトレイ3の両方を、筐体2に対して揺動可能に設けることも当然に可能である。
【0029】
本実施の形態では、一例として、除菌対象となる対象物がハサミ5である場合を示したが、対象物はこれに限らず、例えば、医療器具、マスク、サングラス、ルアー、小銭、スマホ、タブレット、おもちゃ、包丁、はし、スプーン、本、マイク、リモコン等、様々な物品を対象物として用いることができる。また、筐体2やトレイ3の大きさを調整することで、郵便物や宅配物を対象物とすることも可能である。なお、表面除菌ボックス1を配送車や救急車等の専用の自動車に搭載する場合、表面除菌ボックス1を当該自動車に一体に設けてもよい。この場合、表面除菌ボックス1は携帯されなくなるため小型化、軽量化は不要となるので、例えば、停車中等にトレイ3や光源4を揺動させるためのアクチュエータ等をさらに備えてもよい。
【0030】
また、本実施の形態では、表面除菌ボックス1を自動車に搭載する場合について説明したが、これに限らず、例えば、自動二輪車、自転車、電車、航空機など、他の乗り物に搭載されてもよい。また、筐体2やトレイ3を小型とし携帯可能とすることで、徒歩により持ち運ぶことも可能である。この場合、光源4はバッテリーにより駆動するとよい。本実施形態では、トレイ3として、かご状のものを使用する場合について説明したが、除菌対象となる対象物を載置できればよく、トレイ3の形状はかご状に限定されない。例えば、トレイ3をかご状以外の形状にする場合には、紫外線を透過する材質(例えば、フッ素系樹脂、耐紫外線剤を含んだプラスチック)を用いてトレイ3を形成しても良い。
【0031】
(実施の形態の作用及び効果)
以上説明したように、本実施の形態に係る表面除菌ボックス1では、トレイ3と光源4の少なくとも一方が、筐体2に対して揺動可能に設けられている。これにより、自動車の揺れなど表面除菌ボックス1に与えられた振動等によって、光源4やトレイ3を揺動させることが可能になる。そして、光源4やトレイ3の揺動によって、光源4と対象物との位置関係を変化させて、紫外光があたらない陰になる部分を減らして、対象物にまんべんなく紫外光を照射することが可能になる。その結果、光源4の数を必要最低限として、表面除菌ボックス1の小型化、軽量化、省電力化、コスト低減といった効果が得られる。
【0032】
例えば、牛や馬等の大型の動物の治療や診察等を行う場合、獣医が現地に赴き治療や診察が行われる。このような場合において、治療や診察に使用する器具、あるいは使用済の器具を除菌するために、表面除菌ボックス1を用いることができる。例えば、治療後の自動車での移動中に表面除菌ボックス1を用いて器具を除菌することで、治療や診察のために持ち運ぶ器具を少なくすることができ、急に器具が必要になった場合等にも対応可能となる。
【0033】
(実施の形態のまとめ)
次に、以上説明した実施の形態から把握される技術思想について、実施の形態における符号等を援用して記載する。ただし、以下の記載における各符号等は、特許請求の範囲における構成要素を実施の形態に具体的に示した部材等に限定するものではない。
【0034】
[1]筐体(2)と、前記筐体(2)内に収容され、除菌対象となる対象物を載置されるトレイ(3)と、前記筐体(2)内で前記対象物に紫外光を照射し、前記対象物の表面を除菌する発光素子(41)からなる光源(4)と、を備え、前記トレイ(3)と前記光源(4)の少なくとも一方が、前記筐体(2)に対して揺動可能に設けられている、表面除菌ボックス(1)。
【0035】
[2]前記トレイ(3)は、前記筐体(2)に外力が加わった際に、前記対象物の載置面(31)が傾くように揺動するように設けられている、[1]に記載の表面除菌ボックス(1)。
【0036】
[3]前記光源(4)は、前記筐体(2)の天井に吊り下げられることで、前記筐体(2)に対して揺動可能に設けられている、[1]に記載の表面除菌ボックス(1)。
【0037】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上記に記載した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。また、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変形して実施することが可能である。
【符号の説明】
【0038】
1…表面除菌ボックス
2…筐体
3…トレイ
31…載置面
4…光源
41…発光ダイオード(発光素子)
6…揺動機構