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特許7564199ブロック共重合体、組成物、熱収縮性フィルム、シート及びシートの成形品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】ブロック共重合体、組成物、熱収縮性フィルム、シート及びシートの成形品
(51)【国際特許分類】
   C08F 293/00 20060101AFI20241001BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20241001BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20241001BHJP
   C08L 53/02 20060101ALI20241001BHJP
【FI】
C08F293/00
B32B27/30 B
C08J5/18 CET
C08L53/02
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022522070
(86)(22)【出願日】2022-03-18
(86)【国際出願番号】 JP2022012791
(87)【国際公開番号】W WO2023105810
(87)【国際公開日】2023-06-15
【審査請求日】2022-04-12
【審判番号】
【審判請求日】2022-12-28
(31)【優先権主張番号】P 2021198110
(32)【優先日】2021-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】中村 友哉
(72)【発明者】
【氏名】澤里 正
(72)【発明者】
【氏名】吉田 準
【合議体】
【審判長】藤原 浩子
【審判官】藤井 勲
【審判官】岡谷 祐哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-094073(JP,A)
【文献】特開2010-235666(JP,A)
【文献】特開2010-174166(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F293/00-297/08
C08L 53/00- 53/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ビニル芳香族系ブロック(S1)と、第2ビニル芳香族系ブロック(S2)と、共重合ブロック(B/S)と、を有するブロック共重合体であって、
前記第1ビニル芳香族系ブロック(S1)は、
実質的にビニル芳香族系単量体単位のみで構成され、
前記第2ビニル芳香族系ブロック(S2)は、
実質的にビニル芳香族系単量体単位のみで構成され、
重量平均分子量が前記第1ビニル芳香族系ブロック以下であり、
前記共重合ブロック(B/S)は、
実質的にビニル芳香族系単量体単位及び共役ジエン系単量体単位のみで構成され、
前記共重合ブロック中の共役ジエン系単量体単位の含有率は、55質量%以上82質量%以下であり、
前記第1ビニル芳香族系ブロックと前記第2ビニル芳香族系ブロックの質量の合計を100質量%とした場合に、前記第1ビニル芳香族系ブロックの比率は、50質量%以上85質量%以下であり、
前記ブロック共重合体中の前記共重合ブロックの含有率は、40質量%以上60質量%以下であり、
前記ブロック共重合体中のビニル芳香族系単量体単位と共役ジエン系単量体単位の合計質量を100質量%とした場合に、前記ブロック共重合体中のビニル芳香族系単量体単位の比率は64質量%以上75質量%以下であり、
前記第1ビニル芳香族系ブロック(S1)の、重量平均分子量が30000以上100000以下であり、
ISO6721-1に従い、昇温速度4℃/分、周波数1Hz、歪み0.02%の条件で動的粘弾性測定を行った場合の損失正接値(tanδ)が、-70℃以上-35℃以下の範囲に少なくとも1つのピークを有する
ブロック共重合体(但し、ビニル芳香族系ブロックの分子量分布曲線の半値幅が3.1~4.5であるブロック共重合体を除く)
【請求項2】
前記共重合ブロック(B/S)が、ビニル芳香族系単量体単位と共役ジエン系単量体単位のランダム共重合ブロックである、請求項1に記載のブロック共重合体。
【請求項3】
直鎖状であり、重合ブロックの配列が(S1)-(B/S)-(S2)または(S2)-(B/S)-(S1)である、請求項1又は請求項2に記載のブロック共重合体。
【請求項4】
請求項1~請求項の何れか1項に記載のブロック共重合体を含み、前記ブロック共重合体とは異なる重合体をさらに含む、組成物。
【請求項5】
前記ブロック共重合体の含有率は15質量%以上85質量%以下である、請求項に記載の組成物。
【請求項6】
請求項又は請求項に記載の組成物により構成される層を備える熱収縮性フィルム。
【請求項7】
請求項又は請求項に記載の組成物により構成される層を備えるシート。
【請求項8】
請求項に記載のシートを成形してなる成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブロック共重合体、組成物、熱収縮性フィルム、シート及びシートの成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
ビニル芳香族系化合物と共役ジエン系化合物を重合してなるブロック共重合体を用いた熱収縮性フィルムは、熱収縮性や収縮後の仕上がりに優れ、被包装体の様々な形状および装着方式に対応できることから、収縮包装用として広く用いられている。また、廃棄の際にポリ塩化ビニルのような環境汚染問題のない点も優れている。例えば特許文献1には、スチレンとブタジエンからブロック共重合体を含む組成物を用いる熱収縮性フィルムが開示されている。
【0003】
また、前記ブロック共重合体はシート及びその成形品にも用いられ、例えば、食品容器などの成形品においても、落下時の耐衝撃性を向上させる目的で、ポリスチレン樹脂やポリ(スチレン-メタクリル酸メチル)共重合樹脂などに対して前記ブロック共重合体を添加する手法が広く用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平11-158241
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
熱収縮性フィルムやシート、及びその成形品において、耐衝撃性や耐破断性は重要な特性であり、原料であるブロック共重合体或いは該ブロック共重合体を含む組成物の引張伸びがそれらの指標として用いられる。しかし、引張伸びの良好なブロック共重合体及びその組成物においてはゲル異物が発生しやすい(フィルムやシート等にした場合にフィッシュアイが発生しやすい)という課題があり、良好な引張伸びと少ないゲル異物の両立が望まれていた。
【0006】
本発明はこのような問題に鑑みてなされたものであり、機械的強度や外観良否の指標となる、引張伸び値が高く、またゲル異物の少ないブロック共重合体を提供することを課題とした発明である。さらに当該ブロック共重合体を含む組成物の提供、及び当該組成物を原材料とした、高いインパクト強度や引張伸びを有し、フィッシュアイが少なく外観に優れた、シートやフィルム、熱収縮性フィルムを提供することを課題とした発明である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、第1ビニル芳香族系ブロック(S1)と、第2ビニル芳香族系ブロック(S2)と、共重合ブロック(B/S)と、を有するブロック共重合体であって、前記第1ビニル芳香族系ブロック(S1)は、実質的にビニル芳香族系単量体単位のみで構成され、前記第2ビニル芳香族系ブロック(S2)は、実質的にビニル芳香族系単量体単位のみで構成され、重量平均分子量が前記第1ビニル芳香族系ブロック以下であり、前記共重合ブロック(B/S)は、実質的にビニル芳香族系単量体単位及び共役ジエン系単量体単位のみで構成され、前記共重合ブロック中の共役ジエン系単量体単位の含有率は、55質量%以上82質量%以下であり、前記第1ビニル芳香族系ブロックと前記第2ビニル芳香族系ブロックの質量の合計を100質量%とした場合に、前記第1ビニル芳香族系ブロックの比率は、50質量%以上85質量%以下であり、前記ブロック共重合体中の前記共重合ブロックの含有率は、38質量%以上60質量%以下であり、ISO6721-1に従い、昇温速度4℃/分、周波数1Hz、歪み0.02%の条件で動的粘弾性測定を行った場合の損失正接値(tanδ)が、-70℃以上-35℃以下の範囲に少なくとも1つのピークを有するブロック共重合体が提供される
【0008】
前記第1ビニル芳香族系ブロック(S1)の重量平均分子量は、30000以上100000以下であることが好ましい。
【0009】
前記ブロック共重合体中のビニル芳香族系単量体単位と共役ジエン系単量体単位の合計質量を100質量%とした場合に、前記ブロック共重合体中のビニル芳香族系単量体単位の比率は64質量%以上75質量%以下であることが好ましい。
【0010】
以下、本発明の種々の実施形態を例示する。以下に示す実施形態は互いに組み合わせ可能である。
好ましくは、前記共重合ブロック(B/S)が、ビニル芳香族系単量体単位と共役ジエン系単量体単位のランダム共重合ブロックである。
好ましくは、直鎖状であり、重合ブロックの配列が(S1)-(B/S)-(S2)または(S2)-(B/S)-(S1)である。
【0011】
本発明の別の観点によれば、前記ブロック共重合体を含み、前記ブロック共重合体とは異なる重合体をさらに含む、組成物が提供される。
好ましくは、前記ブロック共重合体の含有率は15質量%以上85質量%以下である。
【0012】
本発明の別の観点によれば、前記組成物により構成される層を備える熱収縮性フィルムが提供される。
【0013】
本発明の別の観点によれば、前記組成物により構成される層を備えるシートが提供される。
【0014】
本発明の別の観点によれば、前記シートを成形してなる成形品が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。また、各特徴事項について独立して発明が成立する。
【0016】
1-1.ブロック共重合体
本発明の一実施形態に係るブロック共重合体は、第1ビニル芳香族系ブロック(S1)と、第2ビニル芳香族系ブロック(S2)と、共重合ブロック(B/S)と、を有する。
【0017】
ブロック共重合体は、好ましくは直鎖状のブロック共重合体である。直鎖状のブロック共重合体は、好ましくは、一方の末端が第1ビニル芳香族系ブロック(S1)であり、他方の末端が第2ビニル芳香族系ブロック(S2)である。直鎖状のブロック共重合体は、好ましくは、第1ビニル芳香族系ブロック-共重合ブロック-第2ビニル芳香族系ブロックの順又は逆順にブロックが結合した、(S1)-(B/S)-(S2)または(S2)-(B/S)-(S1)で表される重合ブロックの配列を有する。
【0018】
ブロック共重合体中に含まれる第1ビニル芳香族系ブロックと第2ビニル芳香族系ブロックの質量の合計を100質量%とした場合に、第1ビニル芳香族系ブロックの比率(第1ビニル芳香族系ブロックの質量/(第1ビニル芳香族系ブロックの質量+第2ビニル芳香族系ブロックの質量)×100)は、50~85質量%である。言い換えれば、第2ビニル芳香族系ブロックの比率(第2ビニル芳香族系ブロックの質量/(第1ビニル芳香族系ブロックの質量+第2ビニル芳香族系ブロックの質量)×100)は、15~50質量%である。第1ビニル芳香族系ブロックの割合がこのような範囲にある場合に、引張伸びが良好となりやすく、また熱収縮性フィルムの原料として使用した際の耐衝撃性や熱収縮率が良好となりやすい。なお、2つのビニル芳香族系ブロックの重量平均分子量が同じである(ブロック共重合体の共重合ブロックを分解してブロックを分けた後に区別ができない)場合には、50質量%(2つのブロックの質量比が50/50)であるとして取り扱うことができる。
【0019】
ブロック共重合体中の共重合ブロックの含有率は、38質量%以上60質量%以下であり、好ましくは40質量%以上55質量%以下である。共重合ブロックの含有率がこのような範囲にある場合に、引張伸びとゲル異物発生(フィッシュアイ)抑制のバランスが良好となりやすく、また熱収縮性フィルムの原料として使用した際の耐衝撃性が良好となりやすい。
【0020】
ブロック共重合体中のビニル芳香族系単量体単位と共役ジエン系単量体単位の合計質量を100質量%とした場合に、好ましくはブロック共重合体中のビニル芳香族系単量体単位の比率は64~75質量%であり、より好ましくは68~72質量%である。ブロック共重合体中のビニル芳香族系単量体単位の比率がこのような範囲にある場合に、引張伸びとゲル異物発生(フィッシュアイ)抑制のバランスが良好となりやすく、また熱収縮性フィルムの原料として使用した際の耐衝撃性や耐ブロッキング性が良好となりやすい。
【0021】
ブロック共重合体の重量平均分子量は、100000以上200000以下であることが好ましい。これにより、引張伸び等の物性を担保しつつ、フィルムやシートを成形する際の成形加工性が良好となりやすい。
【0022】
ブロック共重合体は、前記の要件を満たす2種類以上のブロック共重合体の混合物であってもよく、本発明の効果を損なわない範囲であれば、その他の成分を含んでもよい。その他の成分は、例えば、上記ブロック共重合体の製造時に発生する熱失活物やカップリング物、又は添加剤等である。
【0023】
1-2.第1ビニル芳香族系ブロック
第1ビニル芳香族系ブロックは、実質的にビニル芳香族系単量体単位のみで構成される。「実質的にビニル芳香族系単量体単位のみで構成される」とは、第1ビニル芳香族系ブロックの重量を100質量%とした際に、その98質量%以上がビニル芳香族系単量体単位であり、2質量%以下の意図しない単量体単位が存在してもよいことを意味する。以下、「実質的に~のみで構成される」と表記した場合は同様の意味をあらわすものとする。第1ビニル芳香族系ブロックは、第1ビニル芳香族系ブロックの重量を100質量%とした際に、より好ましくはその99質量%以上がビニル芳香族系単量体単位であり、さらに好ましくは100質量%がビニル芳香族系単量体単位である。
【0024】
ビニル芳香族系単量体単位は、重合に用いたビニル芳香族系単量体に由来する単位である。ビニル芳香族系単量体は、芳香環にビニル基が結合した単量体である。ビニル芳香族系単量体は、例えば、スチレン、o-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、2,5-ジメチルスチレン、α-メチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン等のビニル芳香族炭化水素単量体が挙げられる。一態様においては、ビニル芳香族系単量体は、好ましくはスチレンである。これらの単量体は、単独で使用しても2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0025】
第1ビニル芳香族系ブロックの重量平均分子量は、30000以上100000以下であることが好ましく、好ましくは35000以上70000以下である。また、第1ビニル芳香族系ブロックの重量平均分子量は、第2ビニル芳香族系ブロック以上の重量平均分子量を有する。これにより、熱収縮性フィルムやシートの原料として使用した際の透明性が良好となりやすい。
【0026】
1-3.第2ビニル芳香族系ブロック
第2ビニル芳香族系ブロックは、実質的にビニル芳香族系単量体単位のみで構成される。第2ビニル芳香族系ブロックは、第2ビニル芳香族系ブロックの重量を100質量%とした際に、より好ましくはその99質量%以上がビニル芳香族系単量体単位であり、さらに好ましくは100質量%がビニル芳香族系単量体単位である。ビニル芳香族系単量体単位については、第1芳香族ビニル系ブロックと同様である。また、第2ビニル芳香族系ブロックの重量平均分子量は、第1ビニル芳香族系ブロック以下の重量平均分子量を有する。
【0027】
1-4.共重合ブロック
共重合ブロックは、実質的にビニル芳香族系単量体単位及び共役ジエン系単量体単位のみで構成される。共重合ブロックは、共重合ブロックの重量を100質量%とした際に、より好ましくはその99質量%以上がビニル芳香族系単量体単位及び共役ジエン系単量体単位であり、さらに好ましくは100質量%がビニル芳香族系単量体単位及び共役ジエン系単量体単位である。
【0028】
共重合ブロック中の共役ジエン系単量体単位の含有率は、共重合ブロックを構成する単量体単位の質量合計を100質量%とした場合に、55質量%以上82質量%以下であり、好ましくは60質量%以上80質量%以下である。共役ジエン系単量体単位の含有率がこのような範囲にある場合に、引張伸びとゲル異物発生(フィッシュアイ)抑制のバランスが良好となりやすく、また熱収縮性フィルムの原料として使用した際の耐衝撃性や耐ブロッキング性が良好となりやすい。
【0029】
共重合ブロックは、ビニル芳香族系単量体単位と共役ジエン系単量体単位の組成が連続的に変化するテーパー型や、ビニル芳香族系単量体単位と共役ジエン系単量体単位の組成がほぼ一定であるランダム型が存在するが、本発明ではランダム共重合ブロックであることが好ましい。ランダム共重合ブロックは、例えばビニル芳香族系単量体単位と共役ジエン系単量体単位を一定の重量比で連続的に重合系に添加することで形成される。ランダム共重合ブロックは、ビニル芳香族系単量体単位と共役ジエン系単量体単位の組成がほぼ一定であるため、共役ジエン系単量体単位の組成比が局所的に高い領域が存在せず、テーパー型よりもフィッシュアイの生成を抑制することができる。また、共役ジエン系単量体単位の組成比が局所的に低い領域が存在しないため、共役ジエン系単量体単位が効率よく耐衝撃性や耐破断性に寄与することができ、これらの物性バランスが良好となる。
【0030】
共役ジエン系単量体単位は、重合に用いた共役ジエン系単量体に由来する単位である。共役ジエン系単量体は、C=C-C=Cで表される化学構造を有する単量体である。共役ジエン系単量体は、例えば、1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ブタジエン(イソプレン)、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン等の共役ジエン系単量体が挙げられる。一態様においては、共役ジエン系単量体は、好ましくは1,3-ブタジエンである。これらの単量体は、単独で使用しても2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0031】
なお、各ブロックの分子量は、ブロック共重合体の重量平均分子量の測定と各単量体の仕込み量に基づき算出可能である。また、ブロック共重合体の重量平均分子量の測定とブロック共重合体の分解後の重量平均分子量の測定に基づいて算出されてもよい。
【0032】
ブロック共重合体の分解は、例えば公知文献(Y.TANAKA,et.al.,「RUBBER CHEMISTRY AND TECHNOLOGY(ラバー ケミストリー アンド テクノロジー)」,p16(1985))に記載のオゾン分解法を用いることができる。ビニル芳香族系単量体のみから構成される第1ビニル芳香族系ブロック及び第2ビニル芳香族系ブロックは分解されず、分解後に第1ビニル芳香族系ブロック及び第2ビニル芳香族系ブロックの分子量をそれぞれ測定可能になり、またこれらの含有率を算出することができる。そして、分解前のブロック共重合体の重量平均分子量から第1ビニル芳香族系ブロック及び第2ビニル芳香族系ブロックの重量平均分子量を差し引くことにより、共重合ブロックの重量平均分子量及び含有率を算出することができる。
【0033】
1-5.組成物
本発明の一実施形態に係る組成物は、上記ブロック共重合体に加え、上記ブロック共重合体とは異なる重合体(樹脂)をさらに含むことが好ましい。上記ブロック共重合体とは異なる重合体としては、例えば上記ブロック共重合体とは異なるスチレンーブタジエンブロック共重合体、ポリスチレン、ポリ(スチレンーメタクリル酸メチル)共重合体等が挙げられる。本発明のブロック共重合体は、熱収縮性フィルムやシートの原料に使用した際の耐衝撃性や耐破断性、及びフィッシュアイ抑制のバランスに優れており、例えば熱収縮性フィルムの熱収縮率に優れるスチレンーブタジエンブロック共重合体、剛性に優れるポリスチレン等との組成物とすることで、それらの物性バランスがさらに良好な熱収縮性フィルムやシートを得ることができる。
【0034】
組成物中の上記ブロック共重合体の含有率は、好ましくは15質量%以上85質量%以下であり、より好ましく30質量%以上70質量%以下である。組成物中の上記ブロック共重合体とは異なる重合体の含有率は特に限定しないが、例えば15質量%以上85質量%以下であり、好ましくは30質量%以上70質量%以下である。
【0035】
1-6.ブロック共重合体及び組成物の物性
ISO6721-1に従い、昇温速度4℃/分、周波数1Hz、歪み0.02%の条件で、ブロック共重合体の動的粘弾性測定を行った場合の損失正接値(tanδ)が-70~-35℃の範囲に少なくとも1つのピークを有する。共重合ブロックがランダム共重合ブロックであり、共重合ブロック中の共役ジエン系単量体単位の含有率が前記の範囲内である場合にtanδが前記の範囲となりやすく、耐衝撃性や耐破断性、耐ブロッキング性のバランスが良好でフィッシュアイの発生が抑制されやすい。また、ブロック共重合体を含む上記組成物も同様の範囲に少なくとも1つのピークを有することが好ましい。
【0036】
1-7.製造方法
【0037】
本発明の一実施形態に係るブロック共重合体は、種々の方法により合成可能であるが、有機溶剤中で有機リチウム化合物を重合開始剤としたリビングアニオン重合反応により得ることができる。
【0038】
有機溶媒としては、例えば、ブタン、ペンタン、ヘキサン、イソペンタン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン等の脂肪族炭化水素、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素、あるいはベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン等の芳香族炭化水素等が挙げられる。特にシクロヘキサンの使用が好ましい。
【0039】
有機リチウム化合物は、分子中に1個以上のリチウム原子が結合した化合物である。有機リチウム化合物としては、例えば、エチルリチウム、n-プロピルリチウム、イソプロピルリチウム、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、tert-ブチルリチウムのような単官能有機リチウム化合物、ヘキサメチレンジリチウム、ブタジエニルジリチウム、イソプレニルジリチウムのような多官能有機リチウム化合物等が挙げられる。特にn-ブチルリチウムの使用が好ましい。
【0040】
リビングアニオン重合では、モノマー(ビニル芳香族系単量体、及び共役ジエン系単量体)の添加量や添加方法を変えることで任意の一次構造を持つブロック共重合体を得ることができる。例えば、ビニル芳香族系単量体のみを加え、当該ビニル芳香族系単量体が完全に消費された後、ビニル芳香族系単量体と共役ジエン系単量体を所定の速度で同時に添加し、これらが完全に消費された後、再びビニル芳香族系単量体のみを加えて重合させる方法等がある。
【0041】
このような添加量・添加方法の変更によりブロック共重合体の物性を制御することが可能である。例えば、有機リチウム化合物とモノマーの比率により分子量を、各ブロック鎖のビニル芳香族系単量体単位と共役ジエン系単量体単位の比率により貯蔵弾性率や損失正接(tanδ)を制御することができる。
【0042】
このようにして得られたブロック共重合体は、水、アルコール、二酸化炭素などの重合停止剤を、活性末端を不活性化させるのに充分な量を添加することにより、不活性化される。得られたブロック共重合体溶液より共重合体を回収する方法としては、(A)メタノール等の貧溶媒により析出させる方法、(B)加熱ロール等により溶媒を蒸発させて析出させる方法(ドラムドライヤー法)、(C)濃縮器により溶液を濃縮した後にベント式押出機で溶媒を除去する方法(脱揮押出法)、(D)溶液を水に分散させ、水蒸気を吹き込んで溶媒を加熱除去して共重合体を回収する方法(スチームストリッピング法)等、任意の方法が採用できる。特に脱揮押出法が好ましい。
【0043】
本発明の一実施形態に係る組成物は、上記の製造方法等により得られたブロック共重合体と、必要に応じて他のブロック共重合体、重合体、又は添加剤を混合することにより得られる。
【0044】
その他の添加剤としては、例えば、各種安定剤、滑剤、加工助剤、ブロッキング防止剤、帯電防止剤、防曇剤、耐光性向上剤、軟化剤、可塑剤、顔料等が挙げられる。各添加剤はブロック共重合体溶液に添加しても良いし、回収した共重合体とブレンドし、溶融混合しても良い。
【0045】
安定剤としては、例えば、2-tert-ブチル-6-(3-tert-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)-4-メチルフェニルアクリレート、2-[1-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ペンチルフェニル)エチル]-4,6-ジ-tert-ペンチルフェニルアクリレート、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートや2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール等のフェノール系酸化防止剤、トリスノニルフェニルフォスファイト等の燐系酸化防止剤などが挙げられる。ブロッキング防止剤、帯電防止剤、滑剤としては、例えば、脂肪酸アマイド、エチレンビスステアリン酸アマイド、ソルビタンモノステアレート、脂肪族アルコールの飽和脂肪酸エステル、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル等が挙げられる。これらの添加剤はブロック共重合体に対して5質量%以下の範囲で使用することが好ましい。
【0046】
本発明の一実施形態に係る組成物は、上記ブロック共重合体と他の重合体等複数種類の重合体を含む場合があるが、これらの重合体の混合方法としては公知の方法を採用することができる。例えば、ヘンシェルミキサー、リボンブレンダー、スーパーミキサー及びVブレンダー等でドライブレンドしても良く、更に押出機で溶融してペレット化しても良い。一態様においては、溶融混合が好ましい。また、重合体溶液同士を混合した後、溶剤を除去する方法も用いることができる。
【0047】
2.熱収縮性フィルム/シート/シートの成形品
本発明の一実施形態に係る熱収縮性フィルム又はシートは、上記組成物により構成される層を備える。
【0048】
シート(「シート」は「フィルム」とも称することができるが、以下「熱収縮性フィルム」と区別するため「シート」とする)は、上記組成物を用い公知の方法、例えば、Tダイ法、チューブラ法で押し出しすることにより得ることができる。
【0049】
熱収縮性フィルムは、押出したシートを一軸、二軸あるいは多軸に延伸することによって得ることができる。特にTダイ法にて押出して二軸延伸する方法が好ましい。
【0050】
本発明の一実施形態に係る熱収縮性フィルム又はシートは、上記組成物により構成される層のみを含む構造であってもよいが、その少なくとも一方の面に他の樹脂層を積層させることで多層構造の熱収縮性フィルム又はシートとすることができる。熱収縮性フィルムを多層構造とするためには、延伸後の上記組成物により構成される層に他の樹脂層を積層させてもよく、上記組成物を製膜して得た未延伸フィルムに他の樹脂層を積層させて延伸してもよく、上記組成物と他の樹脂を多層押出成形により積層させた多層フィルムを延伸してもよい。他の樹脂層に用いる樹脂としては、スチレン系樹脂が好ましい。
【0051】
一軸延伸の例としては、例えば、押出されたシートをテンターで押出方向と直交する方向(TD)に延伸する方法、押出されたチューブ状フィルムを円周方向に延伸する方法等が挙げられる。
【0052】
二軸延伸の例としては、例えば、押し出されたシートをロールで押し出し方向(MD)に延伸した後、テンター等で押出方向と直交する方向(TD)に延伸する方法、押出されたチューブ状シートを押出方向及び円周方向に同時または別々に延伸する方法等が挙げられる。
【0053】
延伸温度は、例えば、60~120℃が好ましい。60℃以上とすることで延伸時にシートが破断しにくくなり、また120℃以下とすることで、得られたフィルムの熱収縮率や厚み精度が良好となりやすい。延伸倍率は、特に制限はないが、1.5~8倍が好ましい。1.5倍以上とすることで熱収縮性が良好となりやすく、また8倍以下とすることで、延伸時にシートが破断しにくくなる。熱収縮性フィルムを熱収縮性ラベルや包装材料として使用する場合、熱収縮率は80℃において20%以上必要であることが好ましい。20%未満では収縮時に高温が必要となるため、被覆される物品に悪影響を与えてしまい好ましくない。フィルムの厚さは10~300μmが好適である。
【0054】
熱収縮性フィルムは、熱収縮性ラベル、熱収縮性キャップシール等として用いることができる。その他、包装フィルム等として用いることができる。このような、熱収縮性フィルムをラベルとして用いることにより、ラベルが装着されたペットボトルなどの容器が得られる。
【0055】
また、本発明の一実施形態に係る成形品は、シートを任意の形状に成形してなる成形品である。
【実施例
【0056】
以下に実施例をあげて本発明を更に詳細に説明する。また、これらはいずれも例示的なものであって、本発明の内容を限定するものではない。
【0057】
[ブロック共重合体の製造]
以下の操作により、実施例1~4及び比較例1~4としてブロック共重合体P1~P8を製造した(表1)。
【0058】
<ブロック共重合体P1の重合>
(1)反応容器中にシクロヘキサン500.0kg、テトラヒドロフラン(THF)75.0gを入れた。
(2)この中に重合開始剤溶液としてn-ブチルリチウムの10質量%シクロヘキサン溶液2000mLを加え、30℃に保った。
(3)スチレン20kgを加え、スチレンをアニオン重合させた。内温は42℃まで上昇した。
(4)スチレンが完全に消費された後、反応系の内温を80℃に上げ、内温を保持しながら、総量40kgのスチレン、および総量60kgの1,3-ブタジエンを、それぞれ40kg/h、60kg/hの一定添加速度で同時に添加した。
(5)スチレンと1,3-ブタジエンが完全に消費された後、反応系の内温を55℃に下げ、80kgのスチレンを一括添加し、スチレンをアニオン重合させた。内温は93℃まで上昇した。
(6)最後に全ての重合活性末端を水により失活させて、ポリスチレンブロック、およびスチレンとブタジエンのランダムブロックを持つブロック共重合体を含む重合液を得た。
(7)この重合液を脱揮して、押出機で溶融ペレット化することによりブロック共重合体P1を得た。
【0059】
<ブロック共重合体P2の重合>
(1)反応容器中にシクロヘキサン500.0kg、テトラヒドロフラン(THF)75.0gを入れた。
(2)この中に重合開始剤溶液としてn-ブチルリチウムの10質量%シクロヘキサン溶液2000mLを加え、30℃に保った。
(3)スチレン25.6kgを加え、スチレンをアニオン重合させた。内温は45℃まで上昇した。
(4)スチレンが完全に消費された後、反応系の内温を80℃に上げ、内温を保持しながら、総量34.4kgのスチレン、および総量60kgの1,3-ブタジエンを、それぞれ34.4kg/h、60kg/hの一定添加速度で同時に添加した。
(5)スチレンと1,3-ブタジエンが完全に消費された後、反応系の内温を55℃に下げ、80kgのスチレンを一括添加し、スチレンをアニオン重合させた。内温は93℃まで上昇した。
(6)最後に全ての重合活性末端を水により失活させて、ポリスチレンブロック、およびスチレンとブタジエンのランダムブロックを持つブロック共重合体を含む重合液を得た。
(7)この重合液を脱揮して、押出機で溶融ペレット化することによりブロック共重合体P2を得た。
【0060】
<ブロック共重合体P3の重合>
(1)反応容器中にシクロヘキサン500.0kg、テトラヒドロフラン(THF)75.0gを入れた。
(2)この中に重合開始剤溶液としてn-ブチルリチウムの10質量%シクロヘキサン溶液2000mLを加え、30℃に保った。
(3)スチレン50kgを加え、スチレンをアニオン重合させた。内温は49℃まで上昇した。
(4)スチレンが完全に消費された後、反応系の内温を80℃に上げ、内温を保持しながら、総量40kgのスチレン、および総量60kgの1,3-ブタジエンを、それぞれ40kg/h、60kg/hの一定添加速度で同時に添加した。
(5)スチレンと1,3-ブタジエンが完全に消費された後、反応系の内温を60℃に下げ、50kgのスチレンを一括添加し、スチレンをアニオン重合させた。内温は81℃まで上昇した。
(6)最後に全ての重合活性末端を水により失活させて、ポリスチレンブロック、およびスチレンとブタジエンのランダムブロックを持つブロック共重合体を含む重合液を得た。
(7)この重合液を脱揮して、押出機で溶融ペレット化することによりブロック共重合体P3を得た。
【0061】
<ブロック共重合体P4の重合>
(1)反応容器中にシクロヘキサン500.0kg、テトラヒドロフラン(THF)75.0gを入れた。
(2)この中に重合開始剤溶液としてn-ブチルリチウムの10質量%シクロヘキサン溶液2000mLを加え、30℃に保った。
(3)スチレン60kgを加え、スチレンをアニオン重合させた。内温は56℃まで上昇した。
(4)スチレンが完全に消費された後、反応系の内温を80℃に上げ、内温を保持しながら、総量16kgのスチレン、および総量64kgの1,3-ブタジエンを、それぞれ16kg/h、64kg/hの一定添加速度で同時に添加した。
(5)スチレンと1,3-ブタジエンが完全に消費された後、反応系の内温を60℃に下げ、60kgのスチレンを一括添加し、スチレンをアニオン重合させた。内温は81℃まで上昇した。
(6)最後に全ての重合活性末端を水により失活させて、ポリスチレンブロック、およびスチレンとブタジエンのランダムブロックを持つブロック共重合体を含む重合液を得た。
(7)この重合液を脱揮して、押出機で溶融ペレット化することによりブロック共重合体P4を得た。
【0062】
<ブロック共重合体P5の重合>
(1)反応容器中にシクロヘキサン500.0kg、テトラヒドロフラン(THF)75.0gを入れた。
(2)この中に重合開始剤溶液としてn-ブチルリチウムの10質量%シクロヘキサン溶液2000mLを加え、30℃に保った。
(3)スチレン4kgを加え、スチレンをアニオン重合させた。内温は35℃まで上昇した。
(4)スチレンが完全に消費された後、反応系の内温を80℃に上げ、内温を保持しながら、総量51kgのスチレン、および総量7kgの1,3-ブタジエンを、それぞれ153kg/h、21kg/hの一定添加速度で同時に添加した。
(5)スチレンと1,3-ブタジエンが完全に消費された後、反応系の内温を60℃に下げ、46kgの1,3-ブタジエンを一括添加し、1,3-ブタジエンをアニオン重合させた。内温は94℃まで上昇した。
(6)1,3-ブタジエンが完全に消費された後、反応系の内温を65℃に下げ、34kgのスチレンを一括添加し、スチレンをアニオン重合させた。内温は79℃まで上昇した。
(7)最後に全ての重合活性末端を水により失活させて、ポリスチレンブロック、ポリブタジエンブロック、およびスチレンとブタジエンのランダムブロックを持つブロック共重合体を含む重合液を得た。
(8)この重合液を脱揮して、押出機で溶融ペレット化することによりブロック共重合体P5を得た。
【0063】
<ブロック共重合体P6の重合>
(1)反応容器中にシクロヘキサン500.0kg、テトラヒドロフラン(THF)75.0gを入れた。
(2)この中に重合開始剤溶液としてn-ブチルリチウムの10質量%シクロヘキサン溶液2000mLを加え、30℃に保った。
(3)スチレン74kgを加え、スチレンをアニオン重合させた。内温は66℃まで上昇した。
(4)スチレンが完全に消費された後、反応系の内温を45℃に下げ、100kgの1,3-ブタジエンを一括添加し、1,3-ブタジエンをアニオン重合させた。内温は112℃まで上昇した。
(5)1,3-ブタジエンが完全に消費された後、反応系の内温を70℃に下げ、26kgのスチレンを一括添加し、スチレンをアニオン重合させた。内温は78℃まで上昇した。
(6)最後に全ての重合活性末端を水により失活させて、ポリスチレンブロック、およびポリブタジエンブロックを持つブロック共重合体を含む重合液を得た。
(7)この重合液を脱揮して、押出機で溶融ペレット化することによりブロック共重合体P6を得た。
【0064】
<ブロック共重合体P7の重合>
(1)反応容器中にシクロヘキサン500.0kg、テトラヒドロフラン(THF)75.0gを入れた。
(2)この中に重合開始剤溶液としてn-ブチルリチウムの10質量%シクロヘキサン溶液2000mLを加え、30℃に保った。
(3)スチレン65kgを加え、スチレンをアニオン重合させた。内温は54℃まで上昇した。
(4)スチレンが完全に消費された後、反応系の内温を80℃に上げ、内温を保持しながら、総量22kgのスチレン、および総量48kgの1,3-ブタジエンを、それぞれ22kg/h、48kg/hの一定添加速度で同時に添加した。
(5)スチレンと1,3-ブタジエンが完全に消費された後、反応系の内温を60℃に下げ、65kgのスチレンを一括添加し、スチレンをアニオン重合させた。内温は86℃まで上昇した。
(6)最後に全ての重合活性末端を水により失活させて、ポリスチレンブロック、およびスチレンとブタジエンのランダムブロックを持つブロック共重合体を含む重合液を得た。
(7)この重合液を脱揮して、押出機で溶融ペレット化することによりブロック共重合体7を得た。
【0065】
<ブロック共重合体P8の重合>
(1)反応容器中にシクロヘキサン500.0kg、テトラヒドロフラン(THF)75.0gを入れた。
(2)この中に重合開始剤溶液としてn-ブチルリチウムの10質量%シクロヘキサン溶液2000mLを加え、30℃に保った。
(3)スチレン10kgを加え、スチレンをアニオン重合させた。内温は36℃まで上昇した。
(4)スチレンが完全に消費された後、反応系の内温を80℃に上げ、内温を保持しながら、総量16kgのスチレン、および総量64kgの1,3-ブタジエンを、それぞれ16kg/h、64kg/hの一定添加速度で同時に添加した。
(5)スチレンと1,3-ブタジエンが完全に消費された後、反応系の内温を50℃に下げ、110kgのスチレンを一括添加し、スチレンをアニオン重合させた。内温は103℃まで上昇した。
(6)最後に全ての重合活性末端を水により失活させて、ポリスチレンブロック、およびスチレンとブタジエンのランダムブロックを持つブロック共重合体を含む重合液を得た。
(7)この重合液を脱揮して、押出機で溶融ペレット化することによりブロック共重合体P8を得た。
【0066】
[ブロック共重合体の分析]
<ビニル芳香族系単量体単位・共役ジエン系単量体単位の含有率>
ブロック共重合体中のビニル芳香族系単量体単位(スチレン)・共役ジエン系単量体単位(ブタジエン)の含有率、は、下記のハロゲン付加法により測定、算出した。
(A1)試料を完全に溶解することが可能な溶媒(四塩化炭素等)に溶解させた後、過剰量の一塩化よう素/四塩化炭素溶液を添加し十分反応させ、未反応の一塩化よう素をチオ硫酸ナトリウム/エタノール溶液で滴定し、二重結合量を算出した。
(A2)(A1)の方法により得られた二重結合量に基づき、ブタジエンの含有率(ゴム分)を算出した。
スチレンの含有率については、試料全体からブタジエンの含有率を差し引いた値をスチレンの含有率として算出した。
【0067】
<各ブロックの重量平均分子量及び含有率>
各ブロックの重量平均分子量は、GPC測定により測定されるブロック共重合体の重量平均分子量(M)と、各ブロックの重合時に仕込んだモノマーの重量(W)[kg]を用い、以下の式(1)~(3)により求めた。また、各ブロックの含有率は以下の式(B4)~(B6)により求めた。
(B1)(第1ビニル芳香族系ブロックの重量平均分子量)=M×W1/(W1+W2+W3)
(B2)(第2ビニル芳香族系ブロックの重量平均分子量)=M×W2/(W1+W2+W3)
(B3)(共重合ブロックの重量平均分子量)=M×W3/(W1+W2+W3)
(B4)(第1ビニル芳香族系ブロックの含有率)=W1/(W1+W2+W3)×100[%]
(B5)(第2ビニル芳香族系ブロックの含有率)=W2/(W1+W2+W3)×100[%]
(B6)(共重合ブロックの含有率)=W3/(W1+W2+W3)×100[%]
(W1:第1ビニル芳香族系ブロックの仕込みモノマー重量[kg]、W2:第2ビニル芳香族系ブロックの仕込みモノマー重量[kg]、W3:共重合ブロックの仕込みモノマー重量[kg])
【0068】
また、第1ビニル芳香族系ブロックおよび第2ビニル芳香族系ブロックの重量平均分子量は、公知文献(Y.TANAKA,et.al.,「RUBBER CHEMISTRY AND TECHNOLOGY(ラバー ケミストリー アンド テクノロジー)」,p16(1985))に記載のオゾン分解法により共役ジエン系単量体単位を分解した後、GPC測定を行うことで測定することもできる。その場合、共重合ブロックの重量平均分子量は、GPC測定により測定される分解前のブロック共重合体の重量平均分子量から第1ビニル芳香族系ブロックおよび第2ビニル芳香族系ブロックの重量平均分子量を引くことで計算される。
<GPC測定>
ブロック共重合体の分子量は、下記のGPC測定装置、および条件で測定を実施し、標準ポリスチレンを用いた検量線によるポリスチレン換算分子量として計算した。
装置名:HLC-8220GPC(東ソー社製)
カラム:ShodexGPCKF-404(昭和電工社製)を直列に4本接続
温度:40℃
検出:示差屈折率
溶媒:テトラヒドロフラン
濃度:2質量%
検量線:標準ポリスチレン(VARIAN社製)を用いて作製した。
【0069】
<共重合ブロック中の共役ジエン系単量体単位の比率>
共重合ブロック中の共役ジエン系単量体単位(ブタジエン)の比率は、前記の式(B6)で求めた「共重合ブロックの含有率」、及び上記(A2)の「共役ジエン系単量体単位の含有率」を用い、以下の式(B7)で計算した
(B7)(共重合ブロック中の共役ジエン系単量体単位の比率)=(共役ジエン系単量体単位の含有率)/(共重合ブロックの含有率)×100[%]
【0070】
<第1ビニル芳香族系ブロックの比率:S1/(S1+S2)>
ブロック共重合体中に含まれる第1ビニル芳香族系ブロックと第2ビニル芳香族系ブロックの質量の合計を100質量%とした場合の、第1ビニル芳香族系ブロック(S1)の比率及び第2ビニル芳香族系ブロック(S2)の比率「S1/(S1+S2)」は、上記式(B4)の「第1ビニル芳香族系ブロックの含有率」及び上記式(B5)の「第2ビニル芳香族系ブロックの含有率」を用い、それぞれ算出した。
第1ビニル芳香族系ブロックの比率=第1ビニル芳香族系ブロックの質量/(第1ビニル芳香族系ブロックの質量+第2ビニル芳香族系ブロックの質量)×100[質量%]
【0071】
<損失正接値の測定>
ブロック共重合体の損失正接値(tanδ)は、以下の手順の動的粘弾性測定法により測定した。
(1)ブロック共重合体のペレットを用いて、射出成形により厚さ4mm、幅10mmの成形品を作製し、この成形品から適当な大きさの試験片を切り出し、23℃、50%RH室内に48時間保管して養生処理を施した。
(2)TA Instruments社製 動的粘弾性測定装置 RSAIIIを使用し、ISO6721-1に従い、昇温速度4℃/分、測定周波数1Hz、歪み0.02%、固定式3点曲げモードにて-120~120℃の温度範囲における貯蔵弾性率(E')、および損失弾性率(E")を測定し、次式により上記温度範囲におけるtanδを算出した。
tanδ=E"/E'
【0072】
<引張伸び>
JIS K 7161に準拠し、ペレットを用いて射出成形したダンベル形の成形片に対して、島津製作所オートグラフAG-Xplusを用い、引張速度50mm/minにて引張破壊時呼びひずみを測定し、引張伸びの値とした。
【0073】
<フィッシュアイレベル>
ブロック共重合体におけるゲル異物発生をフィッシュアイレベルとして評価した。フィッシュアイレベルは、各ブロック共重合体のペレットを、Tダイを備えたシート押出機にて厚さ約50μmの無延伸シートを作成し、3.3m中に存在する0.2mm以上の異物の点数を画像認識装置により計測することで評価した。異物の個数が300個以上を「否」、50個以上300個未満を「可」、50個未満を「良」と判定した。各実施例及び比較例の評価結果を表1に示す。なお、比較例2については、無延伸シートを作成したもののその成形作業は困難であり、成形性に問題があった。
【0074】
【表1】
【0075】
[熱収縮性フィルムの作製]
熱収縮性フィルムの製造には、ブロック共重合体P1~P8のペレット50質量%に対し、特許第6000939号の実施例4に記載の樹脂組成物(DP)50質量%をドライブレンドし、単軸押出機を用い200℃の条件で溶融混錬した組成物を使用した。また比較例9として、DPのペレットのみを使用した熱収縮性フィルムも作製した。
【0076】
各種測定及び評価用の熱収縮性フィルムの作製には、Tダイ法による二軸延伸装置を用いた。前記ブロック共重合体組成物のペレットを、Tダイを備えたシート押出機により温度210℃で厚さ約0.3mmのシートを押出成形し、10m/minのラインスピードで、縦延伸機により85℃で流れ方向(MD)に1.1倍に延伸し、その後、横延伸機により95℃で流れ方向と直交する方向(TD)に4.5倍に延伸することによって、平均厚み約50μmの熱収縮性フィルムを作製し、実施例5~8及び比較例5~9とした。なお、比較例2においてはブロック共重合体P6のペレットを用いてフィルムへの成形を試みたが、成形できなかった。
【0077】
以下、作製した熱収縮性フィルムについて分析・評価した。
<熱収縮率の測定>
フィルムの熱収縮率は、下記の方法で測定した。
(1)熱収縮性フィルムから、MD幅が100mm、TD幅が100mmの試験片を切り出した。
(2)この試験片を80℃または100℃の温水中に、10秒間、完全に浸漬させた後、取り出し、水分を十分に拭き取り、TDの長さL(mm)を測定した。
(3)次式により熱収縮率を算出した。
熱収縮率(%)={(100-L)/100}×100
【0078】
<引張伸びの測定>
フィルムの引張伸びは、下記の方法で測定した。
(1)熱収縮性フィルムから、MD幅が200mm、TD幅が10mmの短冊状の試料片を切り出した。
(2)株式会社オリエンテック製 テンシロン万能材料試験機を使用し、切り出した試料片を、測定温度23℃、引張速度200mm/minでMDに引張りを与え、引張伸びを測定した。
【0079】
<自然収縮率の測定>
熱収縮性フィルムの自然収縮率は、下記の方法で測定した。
(1)熱収縮性フィルムから、MD幅100mm、TD幅350mmの試料片を切り出した。
(2)試験片の中央部に、TDの標線間隔が300mmとなるよう標線を入れ、40℃の環境試験機に保管し、7日保管後の標線間隔N(mm)を測定した。
(3)次式により自然収縮率を測定した。
自然収縮率(%)={(300-N)/300}×100
【0080】
<インパクト強度の測定>
熱収縮性フィルムのインパクト強度は、インパクトテスター(テスター産業社製)を用い、R25の先端を使用してASTM D3420に従い測定した。
【0081】
<フィッシュアイレベル>
熱収縮性フィルムのフィッシュアイレベルは、延伸フィルムからMD方向に50cm、TD方向に30cmのフィルムを22枚切り出し、長径が0.2mm以上であるフィッシュアイの個数をスケール付ルーペを用いて目視により測定した。3.3mあたりのフィッシュアイの個数が300個以上を「否」、50個以上300個未満を「可」、50個未満を「良」と判定した。
【0082】
【表2】