(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】希土類酸化物で被覆された金属酸化物粒子、及び火炎噴霧熱分解によるその調製方法
(51)【国際特許分類】
C01G 9/02 20060101AFI20241001BHJP
A61K 8/27 20060101ALI20241001BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20241001BHJP
A61Q 17/04 20060101ALI20241001BHJP
C09C 3/06 20060101ALI20241001BHJP
C23C 4/129 20160101ALI20241001BHJP
【FI】
C01G9/02 B
A61K8/27
A61K9/14
A61Q17/04
C09C3/06
C23C4/129
(21)【出願番号】P 2022539239
(86)(22)【出願日】2020-12-24
(86)【国際出願番号】 EP2020087876
(87)【国際公開番号】W WO2021130371
(87)【国際公開日】2021-07-01
【審査請求日】2022-06-24
(32)【優先日】2019-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】391023932
【氏名又は名称】ロレアル
【氏名又は名称原語表記】L’OREAL
【住所又は居所原語表記】14 Rue Royale,75008 PARIS,France
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133086
【氏名又は名称】堀江 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】ヴァレリー・ジャンヌ-ローズ
(72)【発明者】
【氏名】アンリ・サマン
(72)【発明者】
【氏名】イアニス・デリギアンナキス
(72)【発明者】
【氏名】マリア・ロウロウディ
【審査官】小川 武
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-161578(JP,A)
【文献】特開2010-053019(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第1772375(CN,A)
【文献】再公表特許第2015/098945(JP,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0126604(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01G 9/00-9/02
C09C 1/36、3/06
A61K 8/02、8/19,8/27,8/29、9/14
A61Q 17/04
A61Q 15/00
C23C 4/129
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア(1)と、前記コア(1)を被覆する1つ以上の上部コーティング層(2)とを含む、金属酸化物粒子であって、
(i)前記コア(1)が、亜鉛酸化物から構成され;
(ii)前記上部コーティング層(2)が、前記コア(1)の表面の少なくとも90%を被覆し、
セリウムと1つ以上の酸素原子とを含む1種以上の無機化合物を含み
;
前記金属酸化物粒子のBET比表面積が30m
2/gから200m
2/gであ
り、
透過型電子顕微鏡法(TEM)によって決定される前記コア(1)の数平均径Dmが、3~1000nmの範囲内であり、
透過型電子顕微鏡法(TEM)によって決定される前記上部コーティング層(2)の数平均厚さd
m
が、1~30nmの範囲内である、粒子。
【請求項2】
前記上部コーティング層(2)が、
セリウムの1種以上の酸化物から構成されることを特徴とする、請求項
1に記載の粒子。
【請求項3】
亜鉛酸化物の含有量と
セリウムの酸化物の含有量の合計が、前記コア(1)と前記上部コーティング層(2)の総質量に対して少なくとも99質量%であることを特徴とする、請求項
2に記載の粒子。
【請求項4】
透過型電子顕微鏡法(TEM)によって決定される前記コア(1)の数平均径Dmが、
6~
50nmの範囲内であることを特徴とする、請求項1~
3のいずれか一項に記載の粒子。
【請求項5】
透過型電子顕微鏡法(TEM)によって決定される前記上部コーティング層(2)の数平均厚さd
mが、1~
15nmの範囲内であることを特徴とする、請求項1~
4のいずれか一項に記載の粒子。
【請求項6】
透過型電子顕微鏡法(TEM)によって決定される前記粒子の数平均径が、3~5000nmの範囲内であることを特徴とする、請求項1~
5のいずれか一項に記載の粒子。
【請求項7】
a.1種以上の亜鉛前駆体を、可燃性溶媒又は可燃性溶媒の混合物に添加することによって、組成物(A)を調製する工程;その後
b.火炎噴霧熱分解装置において、亜鉛酸化物の凝集体が得られるまで、前記組成物(A)及び酸素含有ガスを噴射することによって火炎を形成する工程;並びに
c.
セリウムと1つ以上の酸素原子とを含むコーティング層が前記亜鉛酸化物の凝集体の表面上に得られるまで、1つ以上の
セリウムの前駆体を含む組成物(B)を火炎に噴射する工
程;
を少なくとも含むことを特徴とする、請求項1~
6のいずれか一項に記載の金属酸化物粒子の調製方法。
【請求項8】
前記亜鉛前駆体が、少なくとも1つの炭素原子を含む1つ以上の配位子と錯体を形成している1つ以上の亜鉛原子を含むことを特徴とする、請求項
7に記載の方法。
【請求項9】
前記可燃性溶媒が、プロトン性可燃性溶媒、非プロトン性可燃性溶媒、及びこれらの混合物から選択されることを特徴とする、請求項
7又は
8に記載の方法。
【請求項10】
前記
セリウム前駆体が、1つ以上の配位子と錯体を形成している1つ以上の
セリウム原子を含むことを特徴とする、請求項
7~
9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記組成物(B)が、1種以上の溶媒を含有し、前記溶媒が、水以外の極性プロトン性溶媒から選択されることを特徴とする、請求項
7~
10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
工程c.の後に、100℃~600℃の範囲内の温度で焼成する工程(d)を更に含むことを特徴とする、請求項
7~
11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
請求項1~
6のいずれか一項に記載の1種以上の金属酸化物粒子を含む、組成物。
【請求項14】
皮膚を、可視光並びに/又はUV-A及び/若しくはUV-B紫外線から保護するために使用するための、請求項
13に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被覆された金属酸化物粒子、火炎噴霧熱分解技術によるそのような被覆された粒子の調製方法、そのような方法により得られる金属酸化物粒子、そのような粒子を含む組成物、及びそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
金属酸化物は、特にそれらの光学特性のため、多くの用途(化粧品、塗料、ステイン、電子機器、ゴムなど)で使用されている。特に、紫外線から表面を保護するために、及び/又は周囲光を電気に変換するために、それらの光吸収特性及び/又は光散乱特性が利用されている。
【0003】
しかしながら、金属酸化物は、経時的に特に不安定になるという欠点を抱えている。例として、酸化亜鉛は、それを含む組成物又は大気の水分に由来する水の存在下で、水酸化亜鉛に、更にはZn2+イオンに分解する可能性がある。そのような分解は、水中へ酸化亜鉛を部分的に、更には完全に溶解させ、酸化亜鉛の望まれる特性を大幅に低下させる、更にはなくす作用を有する。
【0004】
この不安定性は、金属酸化物が光防護性の化粧用組成物中で使用される場合に特に問題となる。実際、金属酸化物が分解するのに伴い、紫外線保護は低下する。
【0005】
金属酸化物を、特にゾル-ゲルプロセスを使用してシリカで被覆すること、或いは金属酸化物上にフルオロ化合物をグラフトすることが考えられてきた。しかしながら、これらの解決手段は完全に満足のいくものではない。ゾル-ゲルプロセスによってシリカで被覆された金属酸化物は、一般的に、被覆されていない粒子よりも悪い光学特性を有する。グラフト技術に関しては、フルオロ化合物の使用は環境に有害であり、使用者に危険な場合がある。
【0006】
金属酸化物粒子を調製するために火炎噴霧熱分解法(FSP法)を使用することも知られている。
【0007】
火炎噴霧熱分解又はFSPは、最近よく知られている方法であり、これは、制御された形態を有する様々な金属の単一酸化物若しくは混合酸化物(例えばSiO2、Al2O3、B2O3、ZrO2、GeO2、WO3、Nb2O5、SnO2、MgO、ZnO)の超微細粉末を合成するために、及び/又は通常有機若しくは無機の、好ましくは不燃性の噴霧可能な液体の形態の多様な金属前駆体から出発することによって様々な基材上へ堆積させるために、本質的に開発された。炎の中に噴霧された液体は、燃焼によって、特に炎自体によってこれらの様々な基材上に噴霧される金属酸化物のナノ粒子が放出される。この方法の原理は、例えばJohnson Mattheyによる最近(2011)の刊行物である(非特許文献1)において想起される。FSPプロセス及び反応器の多数の変形形態も、例えば以下の特許又は特許出願に記載されている:(特許文献1)、(特許文献2)、(特許文献3)又は(特許文献4)、(特許文献5)又は(特許文献6)、(特許文献7)、(特許文献8)、(特許文献9)又は(特許文献10)、(特許文献11)又は(特許文献12)、(特許文献13)、(特許文献14)、(特許文献15)、(特許文献16)、(特許文献17)。
【0008】
しかしながら、金属酸化物の調製に利用されるこの方法は、特に、金属酸化物粒子の経時的な安定性、より具体的にはその耐水性を改善するために、依然として完全なものにする余地がある。
【0009】
更に、Han Gaoらによる科学論文には、TiO2と、光と、外部環境との間の相互作用により生じるラジカルの形成を減らすために、TiO2粒子上にCeO2の層を配置することを含む粒子について記載されている。ただし、このタイプの粒子は、酸化セリウムの非常に薄い層で被覆されており、TiO2コアを完全には覆っていない(非特許文献2)。これらの粒子は、酸化セリウム層がTiO2コアを被覆せず、酸化チタンが外部環境と接触するのを防止できず、また特に粒子コアでみられるチタン原子の放出を防止できないため、適切ではない。別の科学論文は、酸化鉄コアと、酸化セリウム及びアクリレートポリマーから形成されたコーティングと、が組み合わせた、炎症性疾患用治療材料としての粒子に関する(非特許文献3)。酸化鉄コアの上にあるコーティング層は、アクリルモノマーに基づくポリマーマトリックスによって互いに接続された酸化セリウムナノ粒子のクラスターである。このタイプのコーティング層は、アクリルポリマーが可溶化され、酸化セリウムナノ粒子がコアの表面から剥離し、その後水が酸化鉄に自由に接近できるようになるため、特に水中ではあまり安定ではない。
【0010】
そのため、光、より具体的には紫外線の吸収及び/又は散乱の点で良好な光学特性を維持しながらも、経時的に良好な安定性、特に良好な耐水性を有する金属酸化物粒子を開発すること;並びにそのような粒子の調製を可能にする方法を開発することが真に必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】米国特許第5958361号明細書
【文献】米国特許第2268337号明細書
【文献】国際公開第01/36332号パンフレット
【文献】米国特許第6887566号明細書
【文献】国際公開第2004/005184号パンフレット
【文献】米国特許第7211236号明細書
【文献】国際公開第2004/056927号パンフレット
【文献】国際公開第2005/103900号パンフレット
【文献】国際公開第2007/028267号パンフレット
【文献】米国特許第8182573号明細書
【文献】国際公開第2008/049954号パンフレット
【文献】米国特許第8231369号明細書
【文献】国際公開第2008/019905号パンフレット
【文献】米国特許出願公開第2009/0123357号明細書
【文献】米国特許出願公開第2009/0126604明細書
【文献】米国特許出願公開第2010/0055340号明細書
【文献】国際公開第2011/020204号パンフレット
【非特許文献】
【0012】
【文献】“Flame Spray Pyrolysis:a Unique Facility for the Production of Nanopowders”,Platinum Metals Rev.,2011,55,(2),149-151
【文献】Ind.Eng.Chem.Res.2014,53(1),189-197
【文献】Y.Wu et al.Journal of Materials Chemistry B.2018,6,pp 4937-4951
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
これらの目的は本発明によって達成され、その1つの主題は、特に、コア1と前記コア1を被覆する1つ以上の上部コーティング層2とを含む金属酸化物粒子、特にM1-M2酸化物タイプのコア/シェル構造の金属酸化物粒子であり、
(i)コア1は、好ましくは結晶状態にある少なくとも1種の金属M1の酸化物から構成され;
(ii)前記上部コーティング層2は、コア1の表面の少なくとも90%を被覆し、好ましくはコア1の表面全体を被覆し、1つ以上の元素M2と1つ以上の酸素原子とを含む1種以上の無機化合物を含み;
(iii)前記元素M2は金属M1とは異なり、スカンジウム、イットリウム、ランタン、セリウム、プラセオジム、プロメチウム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、及びルテチウム、並びにこれらの混合物から選択され;
但し、
- コア1が酸化チタンから構成されており、且つ前記上部コーティング層2が酸化セリウムから構成されている場合、前記上部コーティング層2は、粒子の総質量に対して1質量%を超える量であり;
- 粒子は、酸化鉄Fe3O4から構成されているコア1と酸化セリウムCeO2から構成されている上部コーティング層2とを含む粒子とは異なる;
ことが理解される。
【0014】
本発明による被覆された金属酸化物粒子は、それらが水性組成物中に配合されても、水の存在下で経時的にほとんど分解されないことが観察された。
【0015】
本発明による金属酸化物粒子は、光吸収及び/又は光散乱に関する良好な光学特性を有することも観察された。より具体的には、これらは、高いUV吸収と、低い可視光散乱又は高い可視光散乱とを有し、そのため、水の存在下での耐性の利益を得ながらも、日光からの保護及び/又は視覚的外観の修正などの用途を可能にする。
【0016】
更に、本発明による被覆された金属酸化物粒子を含む組成物は、特に長い及び短いUV-A放射に関して、良好な遮蔽力を示した。
【0017】
更に、本発明の被覆された金属酸化物粒子を含む組成物は、特に高い透明性を有しており、これは、組成物が塗布されてからコーティング上で、特に皮膚上で乾燥されるときに有利であることが証明され得る。
【0018】
加えて、本発明による被覆された金属酸化物粒子は、疎水性コーティングを必要としないため、それらを広い配合スペクトルにわたって(例えば完全に水性の配合物及び/又は界面活性剤フリーの配合物において)、使用することが可能である。このようにして得られた配合物が最終的に水(洗面台の排水路、湖、又は海)に入ったときに、不適切な堆積物(洗面台の端、配管の壁、又は岩の上)のリスクが更に低減される。
【0019】
本発明の別の主題は、少なくとも、
a.1種以上の金属M1の前駆体を可燃性溶媒又は可燃性溶媒の混合物に添加することによって組成物(A)を調製する工程;その後
b.火炎噴霧熱分解装置において、金属M1の酸化物の凝集体が得られるまで、組成物(A)及び酸素含有ガスを噴射することによって火炎を形成する工程;並びに
c.1つ以上の元素M2と1つ以上の酸素原子とを含むコーティング層が前記金属M1の酸化物の凝集体の表面上に得られるまで、1つ以上の元素M2の前駆体を含む組成物(B)を火炎に噴射する工程であって、前記元素M2が、スカンジウム、イットリウム、ランタン、セリウム、プラセオジム、プロメチウム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、及びルテチウム、並びにこれらの混合物から、好ましくはセリウム、イットリウム、ランタン、及びこれらの混合物から選択される工程;
を含む、そのような金属酸化物粒子、特にM1-M2酸化物タイプのコア/シェル構造の金属酸化物粒の調製方法に関する。
【0020】
本発明による方法は、元素M2に基づく無機材料の層で被覆された金属酸化物粒子を得ることが可能であり、これは、特に経時的に安定であり、良好な耐水性を有することが観察された。
【0021】
更に、従来の被覆方法とは異なり、本発明による方法は、コーティングが存在するにもかかわらず、中心の良好な固有の特性を保持するという利点を有する。実際、コーティング層の特定の性質のため、所定の粒子質量で、前記金属酸化物の特性を低下させること及び/又は前記金属酸化物の特性に悪影響を与えることなしに、金属酸化物の割合を減少させることが可能である。
【0022】
したがって、本発明の方法は、安定な金属酸化物粒子を生成することを可能にする一方で、金属酸化物の良好な光学特性を維持するために従来必要とされる粒子の量の増加による不都合を回避する。
【0023】
添付の図面は概略図である。図面は、必ずしも一定の比率ではなく、特に本発明の原理を示すように意図される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の一実施形態による金属酸化物粒子の断面図を表す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の他の主題、特徴、態様及び利点は、以下の説明及び実施例を読むことにより、更に明らかとなるであろう。
【0026】
本明細書中、別途指定されない限り、
- 「少なくとも1つ」という表現は、「1つ又は複数」という表現と均等であり、それに置き換えられ得;
- 「~(between)」という表現は、「の範囲」という表現と均等であり、それに置き換えられ得、且つ限界が含まれることを示唆し、
- 「ケラチン物質」という表現は、特に皮膚、及び毛髪などのヒトのケラチン繊維を表し;
- コア(1)は「中心」とも呼ばれ;
- 上部コーティング層(2)は、「外層」、「シェル」、又は「コーティング」とも呼ばれ;
- 「アルキル」は、「アルキル基」、すなわち、C1~C10、特にはC1~C8、より具体的にはC1~C6、優先的にはC1~C4の、直鎖又は分岐の炭化水素系基、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、又はtert-ブチルを意味し;
- 「アリール」基は、6~22個の炭素原子を含む単環式の又は縮合若しくは非縮合多環式の炭素に基づく基であって、その少なくとも1つの環が芳香族である基を意味すると理解され、優先的には、アリール基は、フェニル、ビフェニル、ナフチル、インデニル、アントラセニル、又はテトラヒドロナフチル、好ましくはフェニルであり;
- 「アリレート」基は、ナフタレート又はナフテネートなどの、1つ以上の-C(O)O-カルボキシレート基を含むアリール基を意味すると理解され;
- 「錯体化金属」は、金属原子が「金属錯体」又は「配位化合物」を形成し、中心原子に対応する金属イオン、すなわちM1が1つ以上の電子供与体(配位子)に化学的に結合していることを意味すると理解され;
- 「配位子」は、配位する有機化学基又は化合物を意味すると理解される。すなわち、これは少なくとも1つの炭素原子を含み、金属M1に配位することができ、一旦配位又は錯体化すると、所定の数の電子を持つ配位球の原理に対応する金属化合物(固有の錯体又はキレート)になる-Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry,“Metal complex dyes“,2005,p.1-42を参照のこと。より具体的には、配位子は、誘起効果及び/又はメソメリー効果により電子供与性である少なくとも1つの基を含む有機基であり、より具体的には、少なくとも1つのアミノ、ホスフィノ、ヒドロキシ、又はチオールである電子供与基を有する、或いは配位子は、特に「アルジェンゴ」型(イミダゾール-2-イリデン)の持続性カルベンであるか、少なくとも1つのカルボニル基を含む。配位子としては、より具体的には以下のものを挙げることができる:i)少なくとも1つのリン原子を含むもの-P<、すなわちトリフェニルホスフィンなどのホスフィン;ii)アセチルアセトン又はβ-ジケトンなどの、式R-C(X)-CR’R’’-C(X)-R’’’(式中、R及びR’’’’は、互いに同じであるか異なり、直鎖又は分岐(C1~C6)アルキル基を表し、R’及びR’’は、互いに同じであるか異なり、水素原子であるか直鎖若しくは分岐(C1~C6)アルキル基を表し、優先的にはR’及びR’’は水素原子を表し、Xは酸素原子、硫黄原子、又はN(R)基(式中のRは水素原子又は直鎖若しくは分岐C1~C6)アルキル基を表す)を表す)の二座配位子;iii)乳酸、グリコール酸、酒石酸、クエン酸、及びマレイン酸、並びにアリーレート(ナフタレートなど)などの、式[[HO-C(O)]n-A-C(O)-OHの(ポリ)ヒドロキシカルボン酸配位子及びその脱プロトン化形態(式中のAは、nの値がゼロの場合には一価の基を表し、或いはnが1以上の場合は多価の基を表し、これは、任意選択的に1個以上のヘテロ原子が挟まれていてもよい、及び/若しくは任意選択的に置換されていてもよい、特に1つ以上のヒドロキシル基で置換されていてもよい1~20個の炭素原子を含む炭化水素に基づく、飽和若しくは不飽和の、環状若しくは非環状の、芳香族若しくは非芳香族であり;好ましくは、Aは、1つ以上のヒドロキシル基で任意選択的に置換されていてもよい一価(C1~C6)アルキル基又は多価(C1~C6)アルキレン基を表し;nは0~10の整数(両端含む)を表し;好ましくは、nは0~5、例えば0、1、又は2の間である);並びにiv)2~5個のヒドロキシル基を含むC2~C10ポリオール配位子、特にエチレングリコール、グリセロール、より具体的には、更にカルボキシ、カルボキシレート、又はアミノ基を有する配位子、特に、アセテート、(C1~C6)アルコキシレート、(ジ)(C1~C6)アルキルアミノ、及びアリーレート(ナフタレート又はナフテネートなど)基から選択される配位子。
【0027】
「燃料」という用語は、二酸素とエネルギーを用いて、熱:燃焼を生じる化学反応で燃焼する液体化合物を意味すると理解される。特に、液体燃料は、プロトン性溶媒、特にメタノール、エタノール、イソプロパノール(ispropanol)、n-ブタノールなどのアルコール;メチルエステル及びアセテートから誘導されるもの(2-エチルヘキシルアセテートなど)などのエステル、酸(2-エチルヘキサン酸(EHA)など)、非環状エーテル(エチルエーテル、メチルtert-ブチルエーテル(MTBE)、メチルtert-アミルエーテル(TAME)、メチルtert-ヘキシルエーテル(THEME)、エチルtert-ブチルエーテル(ETBE)、エーテルtert-アミルエーテル(TAEE)、ジイソプロピルエーテル(DIPE)など)、環状エーテル(テトラヒドロフラン(THF)など)、芳香族炭化水素又はアレーン(キシレンなど)、非芳香族炭化水素から特に選択される非プロトン性溶媒;並びにこれらの混合物から選択される。燃料は、任意選択的には、アセチレン、メタン、プロパン、又はブタンなどの液化炭化水素;及びこれらの混合物から選択することができる。
【0028】
金属酸化物粒子
本発明による金属酸化物粒子、特にM1-M2酸化物タイプのコア/シェル構造の金属酸化物粒子は、好ましくは結晶状態にある少なくとも1つの金属M1の酸化物から構成されるコア1を含む。
【0029】
好ましくは、金属M1は、元素の周期表の2列目の元素、チタン、亜鉛、銅、スカンジウム、イットリウム、ランタン、セリウム、プラセオジム、プロメチウム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、及びルテチウムから;より優先的には、マグネシウム、カルシウム、チタン、亜鉛、銅、セリウム、及びイットリウムから選択される。
【0030】
本発明によれば、金属M1は、元素M2とは異なる。
【0031】
コア1の結晶状態及びその組成は、例えば従来のX線回折法によって決定することができる。
【0032】
有利には、本発明による粒子のコア1は、少なくとも1つの金属M1の酸化物の結晶性一次粒子の1つ以上の凝集体から構成される。言い換えると、コア1は、少なくとも1つの金属M1の酸化物の複数の微結晶から構成される。
【0033】
図1による金属酸化物粒子は、結晶状態の少なくとも1つの金属M
1の酸化物から構成されており、且つ少なくとも1つの金属M
1の酸化物の一次粒子の1つ以上の凝集体を含む、平均径D
mのコア1を含む。
【0034】
図1による金属酸化物粒子は、コア1の表面を完全に被覆し、且つ平均厚さd
mを有する上部コーティング層2も含む。
【0035】
コア1の数平均径Dmは、例えば透過型電子顕微鏡法(TEMと略される)によって決定することができる。好ましくは、本発明による粒子のコア1の数平均径Dmは、3~1000nm、より優先的には6~50nm、更に優先的には10~30nmの範囲内である。
【0036】
本発明による金属酸化物粒子は、コア1の表面の少なくとも90%を被覆する1つ以上の上部コーティング層2を含む。
【0037】
上部コーティング層によるコアの被覆の程度は、例えば、STEM-EDX分析と組み合わされた、TEM-BF又はSTEM-HAADFタイプの視覚分析によって決定することができる。
【0038】
各分析は、統計的な数の粒子、特に少なくとも20個の粒子について行われる。粒子は、コアと上部コーティング層のいずれにあるかにかかわらず粒子の一部を形成する金属とは異なる金属から作られた金属グリッド上に堆積される。例えばグリッドは銅製である(粒子の製造で銅を使用することが望まれる場合を除く)。
【0039】
TEM-BF及びSTEM-HAADF画像の視覚分析により、コントラストに基づいて、コーティングが粒子のコアを完全に取り囲んでいるか否かを推測することができる。20個(又はそれ以上)の画像のそれぞれを分析してコアの被覆度を推定し、次いで平均を取ることによって、平均の被覆度を決定することができる。
【0040】
STEM-EDX分析により、コーティングが実際に主に元素M2を或いは元素M2のみを含むことを確認することができる。そのためには、粒子の端部で(少なくとも20個の粒子について)測定を行う必要がある。その後、これらの測定から、元素M2が明らかになる。
【0041】
STEM-EDX分析では、コアが金属M1を実際に含まないことを確認することもできる。そのためには、粒子の中心で(少なくとも20個の粒子について)測定を行う必要がある。その後、これらの測定から金属M1及び元素M2が明らかになる。
【0042】
好ましくは、上部コーティング層2はコア1の表面を完全に被覆する。
【0043】
上部コーティング層2は、1つ以上の元素M2と1つ以上の酸素原子とを含む1種以上の無機化合物を含む。
【0044】
前記元素M2は、金属M1とは異なる。
【0045】
前記元素M2は、+III酸化状態の希土類元素の群に属し、これは、スカンジウム、イットリウム、ランタン、セリウム、プラセオジム、プロメチウム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、及びルテチウム、並びにこれらの混合物からなる群から選択される。
【0046】
好ましくは、元素M2は、セリウム、イットリウム、ランタン、及びこれらの混合物から選択される。
【0047】
本発明の第1の特定の実施形態によれば、元素M2は好ましくはセリウムである。
【0048】
本発明の別の特定の実施形態によれば、元素M2は好ましくはイットリウムである。
【0049】
本発明の更に別の特定の実施形態によれば、元素M2はランタンである。
【0050】
本発明の更に別の特定の実施形態によれば、金属酸化物粒子は、酸化イットリウムから構成されるコア1と、酸化セリウムを含む上部コーティング層2とを含む。
【0051】
上部コーティング層の数平均厚さdmも、透過型電子顕微鏡法によって決定することができる。
【0052】
好ましくは、数平均厚さdmは、1~30nm、より優先的には1~15nm、更に優先的には1~6nmの範囲内である。
【0053】
有利には、上部コーティング層2はアモルファスである。
【0054】
好ましくは、上部コーティング層2は、少なくとも1つの元素M2の1種以上の酸化物から構成され;少なくとも1つの元素M2の前記酸化物は、少なくとも1つの金属M1の前記酸化物とは異なる。
【0055】
より優先的には、上部コーティング層2は、酸化セリウムCeO2、酸化イットリウムY2O3、及び/又は酸化ランタンLa2O3、並びにこれらの酸化物の混合物から構成される。
【0056】
特に好ましくは、本発明による粒子は、酸化セリウムCeO2、酸化イットリウムY2O3、及び/又は酸化ランタンLa2O3から選択される元素M2の酸化物から構成される上部コーティング層2を含む。
【0057】
有利には、本発明による金属酸化物粒子は、本発明による粒子について特定の(M1/M2)粒子モル原子比で金属M1及び元素M2を含む。
【0058】
この比率は、一方の本発明による粒子中に存在する元素M2のモル量に対する、他方の本発明による粒子中に存在する金属M1原子のモル量に対応する。
【0059】
この比率は、以下の2つの方法のいずれかに従って分光分析によって決定することができる。第1の方法によれば、粉末が広げられ、X線分光計を用いてX線蛍光測定調査が行われ、そこから金属比が推定される。別の方法によれば、本発明の粒子は予め酸に溶解される。次いで、得られた材料に対してICP-MS(誘導結合プラズマ質量分析)によって元素分析が行われ、そこから金属比が推定される。
【0060】
好ましくは、(M1/M2)粒子モル原子比は、0.25以上、より優先的には0.25~99の範囲内、より優先的には1~80の範囲内、更には3~20の範囲内である。
【0061】
好ましくは、金属M1の酸化物の含有量と元素M2の酸化物の含有量の合計は、コア1と上部コーティング層2の総質量に対して少なくとも99質量%である。
【0062】
本発明による粒子の数平均径は、透過型電子顕微鏡法によって決定することもできる。好ましくは、本発明による粒子の数平均径は、3~5000nm、より優先的には4~3000nm、更に優先的には5~1000nmの範囲内である。
【0063】
好ましくは、本発明による粒子のBET比表面積は、1m2/g~350m2/g;より優先的には1m2/g~200m2/g;更に優先的には30~100m2/gである。
【0064】
本発明の特定の実施形態によれば、本発明による金属酸化物粒子は、上部コーティング層2を被覆し、少なくとも1種の疎水性有機化合物を含む追加のコーティング層を任意選択的に更に含み得る。
【0065】
追加のコーティング層に含まれる疎水性有機化合物は、より優先的には、シリコーン、特に少なくとも1つの脂肪鎖を含むシリコーン;少なくとも6個の炭素原子を含む炭素ベースの誘導体、特に脂肪酸エステル;及びこれらの混合物から選択される。
【0066】
追加のコーティング層は、液体法又は固体法によって製造することができる。液体法により、ヒドロキシル官能基は、コーティングを形成する化合物の反応性官能基(典型的には、シリコーンのシラノール官能基又は炭素ベースの脂肪物質の酸官能基)と反応する。固体法により、粒子は疎水性物質を含む液体又はペースト状の化合物と接触する。
【0067】
好ましくは、本発明による金属酸化物粒子は、以下に記載される本発明の調製方法によって得られる。
【0068】
被覆された金属酸化物粒子の調製方法
本発明の別の主題は、組成物(A)を調製する少なくとも1つの工程a.と、その後の炎を形成する工程b.と、組成物(B)を噴射する工程c.とを含む、金属酸化物粒子の、特にM1-M2酸化物タイプのコア/シェル構造の金属酸化物粒子の調製方法に関する。
【0069】
本発明による方法の工程a.は、1つ以上の金属M1前駆体を可燃性溶媒又は可燃性溶媒の混合物に添加することによって組成物(A)を調製することからなる。
【0070】
好ましくは、金属M1は、元素の周期表の2列目の元素、チタン、亜鉛、銅、スカンジウム、イットリウム、ランタン、セリウム、プラセオジム、プロメチウム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、及びルテチウムから;より優先的には、マグネシウム、カルシウム、チタン、亜鉛、銅、セリウム、及びイットリウムから選択される。
【0071】
本発明によれば、金属M1は、元素M2とは異なる。
【0072】
本発明に従って使用することができる金属M1前駆体及び可燃性溶媒は、火炎噴霧熱分解で従来使用されている金属M1前駆体及び可燃性溶媒から選択することができる。
【0073】
好ましくは、組成物(A)に含まれる金属M1前駆体は、少なくとも1つの炭素原子を含む1つ以上の配位子と任意選択的に錯体を形成している1つ以上の金属M1原子を含む。
【0074】
より優先的には、前記配位子は、アセテート、(C1~C6)アルコキシレート、(C2~C10)アルキルカルボキシレート、(ジ)(C1~C6)アルキルアミノ、及びアリーレート(ナフタレート又はナフテネートなど)基から選択される。
【0075】
好ましくは、可燃性溶媒は、プロトン性可燃性溶媒、非プロトン性可燃性溶媒、及びこれらの混合物から選択され;より優先的には、アルコール、エステル、酸、非環状エーテル、環状エーテル、芳香族炭化水素又はアレーン、非芳香族炭化水素、及びこれらの混合物から選択され;更に好ましくは、2-エチルヘキシルアセテート、2-エチルヘキサン酸(EHA)、エチルエーテル、メチルtert-ブチルエーテル(MTBE)、メチルtert-アミルエーテル(TAME)、メチルtert-ヘキシルエーテル(THEME)、エチルtert-ブチルエーテル(ETBE)、エーテルtert-アミルエーテル(TAEE)、ジイソプロピルエーテル(DIPE)、テトラヒドロフラン(THF)、キシレン、及びこれらの混合物から選択される。
【0076】
特に好ましくは、可燃性溶媒は、少なくとも3つの炭素原子を含む非プロトン性可燃性溶媒及びその混合物から;更に好ましくは、キシレン、テトラヒドロフラン、2-エチルヘキシルアセテート、2-エチルヘキサン酸(EHA)、及びこれらの混合物から選択される。
【0077】
有利には、組成物(A)中の金属M1の前駆体の含有量は、組成物(A)の総質量に対して1質量%~60質量%、好ましくは15質量%~30質量%である。
【0078】
本発明による調製方法は、組成物(A)と酸素含有ガスとを火炎噴霧熱分解(FSP)装置へ噴射して火炎を形成する工程b.を更に含む。
【0079】
この工程b.の間に、組成物(A)及び酸素含有ガスは、互いに分離された2回の噴射によって、火炎噴霧熱分解装置に有利に噴射される。言い換えると、組成物(A)と酸素含有ガスは別々に噴射される。すなわち、組成物(A)と酸素含有ガスは単一のノズルによって噴射されない。
【0080】
より具体的には、組成物(A)は1本の管によって移送される一方で、酸素含有ガス(「分散酸素」とも呼ばれる)は別の管によって移送される。2本の管の入口は、酸素含有ガスが負圧を生成し、ベンチュリー効果によって組成物(A)が吸い上げられて液滴に変換されるように配置される。
【0081】
工程b.は、任意選択的に、酸素と1種以上の可燃性ガスとを含む「プレミックス」混合物の追加の噴射を更に含み得る。この「プレミックス」混合物(「支持火炎酸素」とも呼ばれる)は、組成物A及び酸素含有ガス(すなわち「分散酸素」)から生じる火炎を点火及び維持することを目的とした支持火炎の生成を可能にする。
【0082】
好ましくは、工程b.の間に、組成物(A)、酸素含有ガス、及び任意選択的な「プレミックス」混合物(存在する場合)が、反応管(「封入管」とも呼ばれる)の中に噴射される。好ましくは、この反応管は金属又は石英製である。有利には、反応管は、30cm以上、好ましくは40cm以上、より優先的には50cm以上の高さを有する。優先的には、前記反応管の長さは、30cm~300cm、特には40cm~200cm、より具体的には45cm~100cmであり、例えば50cmである。
【0083】
一方の組成物(A)中に存在する溶媒の質量と、他方の酸素含有ガスの質量との質量比は、以下の通りに定義される:
最初に、酸素含有ガス(酸化剤化合物とも呼ばれる)の量が、組成物(A)によって形成される集合体(すなわち一方の可燃性溶媒及び金属M1の前駆体と、他方の酸素含有ガス)のために計算されることで、化学量論比で(したがって酸化剤化合物の過不足なしに)燃焼反応において一緒に反応することができる。この計算された酸素含有ガスの量(「計算された酸化剤」とも呼ばれる)から始めて、噴射される酸素含有ガス(「噴射される酸化剤」とも呼ばれる)の量をこれから導くために新しい計算が以下の式に従って実行される:噴射される酸化剤=計算された酸化剤/φ
(φは、好ましくは0.3~0.9、より優先的には0.4~0.65である)。
【0084】
この方法は、特にAn Introduction to Combustion: Concepts and Applications,3rd ed.;McGraw-Hill:New York,2012において、Turns,S.R.によって定義されている。
【0085】
本発明による調製方法は、工程b.の間に形成された火炎に、1種以上の元素M2前駆体を含む組成物(B)を噴射することを含む工程c.を更に含む。
【0086】
組成物(A)の噴射と組成物(B)の噴射は好ましくは同時である。言い換えると、本発明の方法は連続的であり、工程b.で形成された火炎は維持される。
【0087】
好ましくは、工程(b)の間に形成される火炎は、火炎の少なくとも一部において、2000℃以上の温度である。
【0088】
工程b.で形成されてから工程c.で維持される火炎への組成物(B)の噴射の位置で、すなわち工程c.の間、温度は好ましくは200℃~800℃、より優先的には400℃~500℃である。
【0089】
有利には、工程c.の間に、組成物(B)は、上述した前記反応管の上に配置された噴霧リングから噴射され、ここで特に組成物(A)の噴射が行われる。より優先的には、追加の管が前記反応管及び前記噴霧リングの連続体に配置され、追加の管が次に噴霧リングの上に配置され、噴霧リング自体が前記反応管の上に配置される。
【0090】
この優先形態によれば、この追加の管は金属又は石英製である。有利には、この追加の管は、前記反応管と同じ直径を有し、30cm以上、好ましくは40cm以上、より優先的には50cm以上の高さを有する。優先的には、前記追加の管の長さは、30cm~300cm、特には40cm~200cm、より具体的には45cm~100cm、例えば50cmである。
【0091】
上で示したように、前記元素M2は+III酸化状態の希土類元素の群に属し、これは、スカンジウム、イットリウム、ランタン、セリウム、プラセオジム、プロメチウム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、及びルテチウム、並びにこれらの混合物からなる群から選択される。
【0092】
好ましくは、元素M2は、セリウム、イットリウム、ランタン、及びこれらの混合物から選択される。
【0093】
本発明の第1の特定の実施形態によれば、元素M2は好ましくはセリウムである。
【0094】
本発明の別の特定の実施形態によれば、元素M2は好ましくはイットリウムである。
【0095】
本発明の更に別の特定の実施形態によれば、元素M2はランタンである。
【0096】
好ましくは、元素M2前駆体は、任意選択的には、1つ以上の配位子と錯体を形成している元素M2の1つ以上の原子を含む。
【0097】
好ましくは、配位子は、アセテート、ナイトレート、(C1~C6)アルコキシレート、(C2~C10)アルキルカルボキシレート、(ジ)(C1~C6)アルキルアミノ、及びアリーレート(ナフタレート又はナフテネートなど)基から選択される。
【0098】
元素M2前駆体は、元素M2のハロゲン化物から選択することができる。
【0099】
本発明による方法の間に、(M1/M2)噴射モル原子比を計算することができる。この比率は、一方の工程c.の間に噴射された元素M2のモル量に対する、他方の工程b.の間に噴射された金属M1原子のモル量に対応する。
【0100】
好ましくは、(M1/M2)噴射モル原子比は、0.25以上;より優先的には0.25~120の範囲内;更に優先的には0.25~99;更には1~80の範囲内;更には3~20の範囲内である。
【0101】
好ましくは、工程c.の間の噴射の前に、上述した組成物(B)の中に窒素(N2)が吹き込まれる。その際、組成物(B)の噴射速度は、温度の制御及びバブラーの流量の制御によって制御することができる。
【0102】
本発明の特定の一実施形態によれば、上記組成物(B)は、工程c.中のその噴射の前に、25℃~70℃、より優先的には30℃~60℃の範囲内の温度にされる。
【0103】
好ましくは、本発明による方法の工程c.中に噴射される組成物(B)中の元素M2前駆体の含有量は、組成物(B)の総質量に対して1質量%~60質量%、より優先的には5質量%~30質量%である。
【0104】
有利には、組成物(B)は1種以上の溶媒も含み得る。好ましくは、組成物(B)中に存在する溶媒は、水以外の極性プロトン性溶媒から選択され、より優先的には、(C1~C8)アルカノールから選択される。より優先的には、組成物(B)はエタノールを含む。
【0105】
本発明の好ましい実施形態によれば、組成物(B)中に存在する溶媒は、工程c.の火炎温度で可燃性であり、且つ好ましくは200℃~800℃、より優先的には400℃~500℃の温度で可燃性である溶媒から選択される。更に好ましくは、組成物(B)中に存在する溶媒は、室温(25℃)以上、更には50℃~120℃の範囲内の沸点を有する。
【0106】
好ましくは、本発明による方法の工程c.の間に噴射される組成物(B)中に存在する溶媒の含有量は、組成物(B)の総質量に対して40質量%~99質量%、より優先的には50質量%~98質量%、更には70質量%~95質量%である。
【0107】
本発明の好ましい実施形態によれば、この調製方法は、工程c.の後に得られる金属酸化物粒子を焼成する工程d.を更に含み得る。
【0108】
この実施形態によれば、焼成工程d.の間に、
(i)焼成は、好ましくは60~400分、より優先的には60~180分間継続される;及び/又は
(ii)温度範囲は、好ましくは100℃~600℃、より優先的には300℃~600℃である。
【0109】
本発明の特定の一実施形態によれば、本発明による調製方法によって得られた粒子はドープされる。この実施形態によれば、組成物(A)は、金属M1とも元素M2とも異なる元素Dの1種以上の前駆体を更に含み、Dは、フッ素、バナジウム、ジルコニウム、ハフニウム、鉄、及びタングステンから選択される。
【0110】
本発明の別の主題は、上述した1種以上の金属酸化物粒子を含む、且つ/又は好ましくは本発明による方法によって得られる、組成物、好ましくは化粧用組成物に関する。
【0111】
本発明の組成物は、種々のガレノス型であり得る。したがって、本発明の組成物は、粉末(粉状)組成物、又は液体組成物の形態、或いはミルク、クリーム、ペースト、又はエアロゾル組成物の形態であり得る。
【0112】
本発明による組成物は、特に化粧用組成物である。すなわち、本発明の材料は化粧媒体である。「化粧媒体」という用語は、ケラチン物質、特に皮膚などのヒトケラチン物質への適用に関して適切である媒体を意味し、前記化粧媒体は、一般に水からなるか、或いは水と、1つ又はそれ以上の有機溶媒との混合物、又は有機溶媒の混合物からなる。
【0113】
本発明による組成物は、有利には水性組成物である。
【0114】
好ましくは、組成物は、特に組成物の総質量に対して両端を含む5%~95%の含有量で水を含む。
【0115】
「有機溶媒」という用語は、化学的に変性することなく別の物質を溶解することができる有機物質を意味する。
【0116】
有機溶媒の例として、低級C2~C6アルカノール、例えば、エタノール及びイソプロパノール;ポリオール及びポリオールエーテル、例えば、2-ブトキシエタノール、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、並びにジエチレングリコールモノエチルエーテル及びモノメチルエーテルに加えて、芳香族アルコール、例えば、ベンジルアルコール又はフェノキシエタノール並びにこれらの混合物を挙げることができる。
【0117】
好ましくは、有機溶媒は、本発明による組成物中に、組成物の総質量に対して約0.1質量%~40質量%(両端含む)、より優先的には約1質量%~30質量%、更に具体的には組成物の総質量に対して5質量%~25質量%(両端含む)の含有量で存在する。
【0118】
本発明の組成物は、脂肪相を含み得、直接又は逆エマルジョンの形態であり得る。
【0119】
本発明による組成物は、クリーム、乳状又はクリーム状のゲルなどの単純又は複合的なエマルジョン(水中油型又はO/Wと略記されるもの、油中水型又はW/O、油中水中油型又はO/W/O、又は水中油中水型又はW/O/W)の形態で、当業者に周知の技術に従って調製することができる。
【0120】
本発明の特定の一実施形態によれば、本発明による組成物は、無水組成物の形態、例えば油の形態であってよい。用語「無水組成物」は、組成物の総質量に対して、2質量%未満の水、好ましくは1質量%未満の水、及び、更により優先的には0.5質量%未満の水を含有する組成物、又は、更には、水を含まない組成物を意味することが意図されている。この種の組成物において、存在する可能性がある水は、組成物の調製中に加えられたものではなく、混合された成分によってもたらされる残存水に相当する。
【0121】
本発明による金属酸化物粒子は、乾燥形態(粉末、フレーク、プレート)、分散液として、又は液体懸濁液として、又はエアロゾルとしてであってもよい。本発明の金属酸化物粒子は、そのまま使用することも、他の成分と混合して使用することもできる。
【0122】
好ましくは、本発明の組成物は、組成物の総質量に対して0.1質量%~40質量%、より優先的には0.5質量%~20質量%、更に優先的には1質量%~10質量%、更には1.5質量%~5質量%の金属酸化物粒子を含む。
【0123】
本発明の別の主題は、皮膚、特にヒトの皮膚を可視光線(すなわち400nm~800nmの波長)及び/又は紫外線(すなわち100nm~400nmの波長)、UV-A放射(すなわち320nm~400nmの波長)及び/又はUV-B放射(すなわち280nm~320nmの波長)から保護するために使用するための、本発明による組成物、好ましくは化粧用組成物である。本発明による組成物は、太陽放射を効率的に遮蔽することを可能にし、これらは、特にUV-A放射(長波UV-A放射を含む)に対して広いスペクトルである一方で、UV曝露下で経時的に特に安定である。
【0124】
本発明による組成物は、親水性、親油性、若しくは不溶性の有機UV遮蔽剤、及び/又は1種以上の無機顔料から選択される1種以上の追加のUV遮蔽剤を本発明による金属酸化物粒子以外に任意選択的に含有してもよい。これは、優先的には、少なくとも1種の親水性、親油性、又は不溶性有機UV遮蔽剤から構成されるであろう。
【0125】
本発明の組成物は、単回適用で、又は複数回適用で使用され得る。本発明の組成物が複数回適用を目的とする場合、本発明の元素Mの酸化物の粒子の含有量は、単回適用を目的とした組成物におけるものよりも通常低い。
【0126】
本発明の目的に関して、「単回適用」という用語は、組成物の単回適用を意味し、この適用は、場合によっては1日に数回繰り返され、各適用は、必要に応じて、次の適用から1時間以上離れているか、又は1日に1回の適用である。
【0127】
本発明の目的に関して、「複数回適用」という用語は、複数回、通常2~5回繰り返される組成物の適用を意味し、各適用は、次の適用から数秒間から数分間離される。それぞれの複数回適用は、必要に応じて、次の適用から1時間以上離して1日に複数回、又は1日に1回繰り返すことができる。
【0128】
適用プロセス
本発明の金属酸化物粒子は、UVA及びUVB放射から保護するための薬剤である。これらは、可視範囲での良好な全体的な透過及び可視範囲(400~780nm)での優れた透明性を維持しながらも、UV放射の全体的な遮蔽を特に改善する。
【0129】
本発明の金属酸化物粒子は、特にケラチン物質、特に皮膚などのヒトケラチン物質への適用のための化粧用組成物中で、好ましくはそれらを含む組成物の全質量に対して0.1質量%~40質量%、より優先的にはそれらを含む組成物の全質量に対して0.5質量%~20質量%の濃度で特に使用される。
【0130】
組成物は、任意のガレノス型であってよい。
【0131】
本発明の金属酸化物粒子は、単回適用として、又は複数回適用として、ケラチン物質に適用され得る。例えば、本発明の金属酸化物粒子を含む化粧用組成物は、一回で適用され得る。
【0132】
別の変形形態によれば、適用プロセスは、本発明による1種以上の金属酸化物粒子を含む化粧用組成物をケラチン物質上に複数回連続適用することを含む。
【0133】
それらは、飽和単回適用、すなわち本発明による金属酸化物粒子を高濃度で含む化粧用組成物の単回適用、或いは本発明の1種以上の金属酸化物粒子を含む(より濃度が低い)化粧用組成物の複数回適用などの接続された適用方法であってもよい。複数回適用の場合、本発明の1種以上の金属酸化物粒子を含む化粧用組成物の複数回の連続した適用は、適用間の遅延の有無にかかわらず繰り返され得る。
【0134】
本発明の別の主題は、好ましくは1~5回の連続適用によって、上記で定義された組成物を材料に適用し、層の間を乾燥させることによる、ケラチン物質、特に皮膚などのヒトケラチン物質を処理するためのプロセスであって、適用は噴霧又は他の様式であるプロセスである。
【0135】
本発明の一実施形態によれば、複数回の適用は、本発明の金属酸化物粒子を含む化粧用組成物の連続適用の合間に乾燥工程を伴い、ケラチン物質に対して行われる。本発明の1種以上の金属酸化物粒子を含む化粧用組成物の連続適用の合間の乾燥工程は、屋外で、又は人工的に、例えばヘアドライヤーなどの熱風乾燥システムを用いて実施することができる。
【0136】
本発明の別の主題は、化粧用又は医薬用組成物を処方するための、特に皮膚に対する制汗作用若しくはpH調節作用を有する、或いは可視光及び/若しくは紫外線から皮膚を保護することを目的とした、又は皮膚の外観を修正することを目的とした、上述した及び/又は上述した調製方法によって得られる金属酸化物粒子の使用である。
【0137】
本発明の別の主題は、上で定義した本発明の1種以上の金属酸化物粒子を、ケラチン物質、特に皮膚を保護するために、UV-A及びUV-B遮蔽剤として使用することである。
【0138】
以下の実施例は、性質を制限することなく、本発明を説明するために有用である。
【実施例】
【0139】
実施例1:
1.1 最初に、キシレン中のナフテン酸亜鉛(550mM)の組成物(A)を調製した。
【0140】
次いで、予め調製した組成物(A)を用いて、従来のFSP調製プロセスPrep1を使用して、被覆されていない酸化亜鉛粒子P1を調製した(本発明外)。
【0141】
次に、同じ組成物(A)と、硝酸セリウム(III)六水和物(500mM)及びエタノールを含む組成物(B)とを用いて、本発明による調製プロセスPrep2を使用して、二酸化セリウムで被覆された酸化亜鉛粒子P2を調製した(本発明)。
【0142】
Prep1プロセスのパラメータは以下の通りである:
- 比率(組成物(A)/O2)=5mL/分の組成物(A)と7L/分の気体(O2)。酸素流量を調整するために、φ=0.45を使用する。
【0143】
Prep2プロセスのパラメータは以下の通りである:
- 比率(組成物(A)/O2)=5mL/分の組成物(A)と7L/分の気体(O2)。酸素流量を調整するために、φ=0.45を使用する。
【0144】
このPrep2プロセスでは、組成物(A)を噴射するために高さ40cmの石英管を使用する。組成物(B)を噴射するために、噴霧リングが石英管の上に配置される。石英管と噴霧リングの直径は10cmである。
【0145】
更に、窒素が最初に組成物(B)に吹き込まれる。組成物(B)が噴射される際、硝酸セリウム(III)六水和物の蒸発を可能にし、(Zn/Ce)噴射モル原子比が5.7になるように、30~40℃に加熱された窒素の流れが調整される。
【0146】
1.2 粒子を調製した後、得られた酸化亜鉛粒子が結晶性であることが観察された。
【0147】
更に、本発明によるプロセスPrep2に従って得られた粒子は、二酸化セリウムで被覆されており、(Zn/Ce)粒子のモル原子比は5.7である。
【0148】
プロセスPrep2による粒子のBET比表面積は50m2/gである。プロセスPrep2による粒子は、22nmの数平均径を有する。
【0149】
1.3 耐水性の評価:
第1の水性懸濁液S1(水酸化ナトリウムの添加によりpH=8)を、水1リットルあたり1gのP1の含有量で、粒子P1と水から調製した。同様に、第2の水性懸濁液S2(水酸化ナトリウムの添加によりpH=8)を、水1リットルあたり1gのP2の含有量で、粒子P2と水から調製した。
【0150】
次に、各懸濁液S1及びS2を、20Wの出力で10分間超音波浴に入れた。
【0151】
その後、時間の関数として、懸濁液の中に存在するZn2+イオンの含有量を、各懸濁液について従来の陽極溶出ボルタンメトリー法によって測定する。
【0152】
結果は以下の表に列挙されている:
【0153】
【0154】
本発明による調製プロセスPrep2に従って得られた被覆された酸化亜鉛粒子P2が、比較調製プロセスPrep1に従って得られた被覆されていない酸化亜鉛粒子P1よりもはるかに優れた耐水性を有することに注目される。
【0155】
特に、懸濁液S2中の被覆された酸化亜鉛粒子P2(本発明)では、選択的な沈降(Ce対Zn)又は選択的な溶解は観察されなかった。
【0156】
実施例2:
2.1 最初に、キシレン中のナフテン酸亜鉛(550mM)の組成物(A)を調製した。
【0157】
次いで、予め調製した組成物(A)を用いて、FSP調製プロセスPrep3を使用して、二酸化セリウムで被覆された酸化亜鉛粒子P3を調製した(本発明)。
【0158】
Prep3プロセスのパラメータは以下の通りである:
- 比率(組成物(A)/O2)=5mL/分の組成物(A)と7L/分の気体(O2)。酸素流量を調整するために、φ=0.45を使用する。
【0159】
Prep3プロセスでは、組成物(A)を噴射するために高さ40cmの石英管を使用する。組成物(B)を噴射するために、噴霧リングが石英管の上に配置される。更に、噴霧リングの上に高さ30cmの追加の金属管を配置する。石英管、追加の金属管、及び噴霧リングは全て直径10cmである。
【0160】
更に、窒素が最初に組成物(B)に吹き込まれる。組成物(B)が噴射される際、硝酸セリウム(III)六水和物の蒸発を可能にし、(Zn/Ce)噴射モル原子比が5.7になるように、30~40℃に加熱された窒素の流れが調整される。
【0161】
次に、調製した粒子P3の一部を取り出して、500℃で1時間の追加の焼成工程を行い、二酸化セリウムで被覆された酸化亜鉛粒子P4を得た(本発明)。
【0162】
2.2 粒子を調製した後、得られた酸化亜鉛粒子P3及びP4が結晶性であることが観察された。
【0163】
更に、本発明による粒子P3及びP4は、二酸化セリウムで被覆されており、(Zn/Ce)粒子のモル原子比は5.7である。
粒子P3のBET比表面積は44m2/gである。
粒子P4のBET比表面積は40m2/gである。
粒子P3の数平均径は23nmである。
粒子P4の数平均径は26nmである。
【0164】
2.3 耐水性の評価
第3の水性懸濁液S3(水酸化ナトリウムの添加によりpH=8)を、水1リットルあたり1gの粒子P3の含有量で、粒子P3と水から調製した。
【0165】
同様に、第4の水性懸濁液S4(水酸化ナトリウムの添加によりpH=8)を、水1リットルあたり1gの粒子P4の含有量で、粒子P4と水から調製した。
【0166】
次に、各懸濁液S3及びS4を、20Wの出力で10分間超音波浴に入れた。
【0167】
その後、懸濁液S3及びS4の中及び上の実施例1の懸濁液S1の中に存在するZ2+イオンの含有量を、時間の関数として、及び導入された亜鉛の量と比較して、各懸濁液についての従来の陽極溶出ボルタンメトリー法によって測定した。
【0168】
結果は以下の表に列挙されている。
【0169】
【0170】
本発明による被覆された酸化亜鉛粒子P3及びP4が、比較の被覆されていない酸化亜鉛粒子P1よりも優れた耐水性を有することに注目される。
【0171】
特に、それぞれ懸濁液S3及びS4中の被覆された酸化亜鉛粒子P3及びP4(本発明)では、選択的な沈降(Ce対Zn)又は選択的な溶解は観察されなかった。
【0172】
実施例3
前の2つの実施例からの粒子P1、P2、P3、及びP4を使用する。
【0173】
200mgの1種類の粒子P1~P4を1Lの水に入れ、配合物F1(粒子P1に基づく)、F2(粒子P2に基づく)、F3(粒子P3に基づく)、及びF4(粒子に基づく)を生成する。次いで、これら配合物F1~F4のUV域及び可視域でスペクトルを生成した。
【0174】
以下の吸光度が注目される。
【0175】
【0176】
本発明による配合物F2及びF3は、配合物F1(比較)よりも少ないUV放射を吸収することに注目される。
【0177】
本発明による配合物F4は、配合物F1(比較)よりも多くのUV放射を吸収することが観察される。
【0178】
粒子P1~P4のRAMAN調査を行った。粒子P4のZnOのラマンピークは、参照ZnOのラマンピークよりもはるかに強い(約3倍以上)。
【0179】
粒子P2及びP3のZnOのラマンピークも観察される。
【0180】
したがって、本発明は、全ての場合において、水中で良好な安定性を有しながらも、組成物の遮蔽力を調整することを可能にする。