(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】ロボットシステムおよびロボット制御装置
(51)【国際特許分類】
B25J 13/00 20060101AFI20241001BHJP
G05B 19/42 20060101ALI20241001BHJP
【FI】
B25J13/00 Z
G05B19/42 W
(21)【出願番号】P 2022543929
(86)(22)【出願日】2021-08-16
(86)【国際出願番号】 JP2021029851
(87)【国際公開番号】W WO2022039115
(87)【国際公開日】2022-02-24
【審査請求日】2023-03-08
(31)【優先権主張番号】P 2020139365
(32)【優先日】2020-08-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【氏名又は名称】上田 邦生
(72)【発明者】
【氏名】田中 基之
【審査官】松浦 陽
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-098455(JP,A)
【文献】特開2015-231640(JP,A)
【文献】特開2007-038334(JP,A)
【文献】特開2010-211726(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 - 21/02
G05B 19/18 - 19/416
G05B 19/42 - 19/427
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを把持して搬送する
単一のロボットと、
該ロボットを制御する制御装置とを備え、
該制御装置が、
前記ロボットと協働して前記ワークに対して作業を行う実作業者の体格情報を取得する体格情報取得部と、
基準作業者の体格情報を記憶する体格情報記憶部と、
前記基準作業者による作業に適した位置および姿勢に前記ワークを配置する複数の教示点を含む動作プログラムを記憶するプログラム記憶部と、
前記体格情報取得部により取得された前記実作業者の体格情報と、前記体格情報記憶部に記憶されている前記基準作業者の体格情報とに基づいて、前記プログラム記憶部に記憶されている前記動作プログラムの前記教示点を補正するプログラム補正部と、を備え、
前記プログラム記憶部が、前記教示点毎に補正の要否の情報を記憶可能であり、
前記プログラム補正部が、
前記補正の要否の情報に基づいて複数の前記教示点のうち一部の前記教示点に対して補正を実行するロボットシステム。
【請求項2】
前記プログラム補正部が、補正が必要であることが記憶されている前記教示点を補正し、補正が不要であることが記憶されている前記教示点については補正しない請求項1に記載のロボットシステム。
【請求項3】
前記プログラム記憶部が、前記教示点毎に上限値および下限値の少なくとも一方を記憶可能であり、
前記プログラム補正部が、前記上限値または前記下限値が記憶されている前記教示点については、前記教示点の鉛直方向座標を前記下限値以上前記上限値以下に補正する請求項1または請求項2に記載のロボットシステム。
【請求項4】
前記体格情報記憶部が、前記実作業者の識別情報と体格情報とを対応付けて記憶し、
前記プログラム記憶部が、前記教示点毎に、当該教示点において作業を行う前記実作業者の識別情報を記憶可能であり、
前記体格情報取得部が、前記教示点毎に、前記プログラム記憶部に記憶されている前記識別情報から前記体格情報記憶部に記憶されている前記実作業者の体格情報を取得する
、請求項1から請求項3のいずれかに記載のロボットシステム。
【請求項5】
前記体格情報取得部が、前記実作業者の体格情報または識別情報を検出するセンサを備える請求項1から請求項3のいずれかに記載のロボットシステム。
【請求項6】
ワークを把持して搬送する
単一のロボットを制御するロボット制御装置であって、
基準作業者の体格情報と、前記基準作業者による作業に適した複数の教示点を含む動作プログラムと、を記憶可能な少なくとも1つのメモリと、
少なくとも1つのプロセッサと、を備え、
該プロセッサが、
少なくとも1つの前記メモリが、前記教示点毎に補正の要否の情報を記憶可能であり、
前記ロボットと協働して前記ワークに対して作業を行う実作業者の体格情報を取得し、
前記基準作業者の体格情報
、前記実作業者の体格情報
、および前記補正の要否の情報に基づいて、複数の前記教示点のうちの一部の前記教示点を補正する処理を実行する、ロボット制御装置。
【請求項7】
前記メモリが、基準作業者の体格情報と前記基準作業者による作業に適した複数の教示点を含む動作プログラムとを記憶し、前記ロボットと協働して前記ワークに対して作業を行う実作業者の識別情報と体格情報とを対応付けて記憶するとともに、前記教示点毎に、当該教示点において作業を行う前記実作業者の前記識別情報を記憶可能であり、
前記プロセッサが、前記教示点毎に、記憶されている前記識別情報から、前記メモリに記憶されている前記実作業者の体格情報を取得し、取得された前記実作業者の体格情報
、前記基準作業者の体格情報
、および前記補正の要否の情報に基づいて、前記動作プログラムの前記教示点を補正する、
請求項6に記載のロボット制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ロボットシステムおよびロボット制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ロボットと作業者とが協働して組立作業を行うロボットシステムが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ロボットが支持するワークに対して一の作業者が作業を行う場合に、当該作業者にとってワークが作業し易い位置および姿勢となるようロボットが教示される。しかしながら、作業者が交代した場合には、一の作業者にとって作業し易いワークの高さや姿勢は、身長の異なる他の作業者にとっては、作業し難い高さや姿勢となる場合があり、他の作業者に負担がかかる。
【0005】
一方、作業者毎にロボットを教示すれば、全ての作業者に適した位置および姿勢にワークを配置することができるが、教示に要する工数が膨大となる。
したがって、ロボットの再教示を行うことなく、全ての作業者に適した位置および姿勢にワークを配置して、作業者にかかる負担を低減することが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、ワークを把持して搬送するロボットと、該ロボットを制御する制御装置とを備え、該制御装置が、前記ロボットと協働して前記ワークに対して作業を行う実作業者の体格情報を取得する体格情報取得部と、基準作業者の体格情報を記憶する体格情報記憶部と、前記基準作業者による作業に適した位置および姿勢に前記ワークを配置する1以上の教示点を含む動作プログラムを記憶するプログラム記憶部と、前記体格情報取得部により取得された前記実作業者の体格情報と、前記体格情報記憶部に記憶されている前記基準作業者の体格情報とに基づいて、前記プログラム記憶部に記憶されている前記動作プログラムの前記教示点を補正するプログラム補正部とを備えるロボットシステムである。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本開示の一実施形態に係るロボットシステムを示す全体構成図である。
【
図2】
図1のロボットシステムを示すブロック図である。
【
図3】
図2のメモリに対応付けて記憶された作業者の識別情報および身長を示す図である。
【
図4】
図1のメモリに記憶された動作プログラムに対応付けられた基準作業者の識別情報、および各教示点に対応付けられたフラグの一例を示す図である。
【
図5】
図4の動作プログラムの補正要のフラグが付された教示点に対応付けられた実作業者の識別情報の一例を示す図である。
【
図6】
図1のロボットシステムにおける動作プログラムの一例の教示点および基準作業者の関係を説明する図である。
【
図7】
図6の動作プログラムの実行時における教示点と実作業者との関係を説明する図である。
【
図8】
図6の動作プログラムの実行時における教示点と他の実作業者との関係を説明する図である。
【
図9】
図1のロボットシステムの変形例であって、2人の基準作業者と2人の実作業者とが関わる動作プログラムの一例の教示点を示す図である。
【
図10】
図9の動作プログラムの教示点に対応付けられた基準作業者および実作業者の識別情報、および各教示点に対応付けられたフラグの一例を示す図である。
【
図11】
図1のロボットシステムの他の変形例であって、2人の基準作業者を3箇所の教示点に対応付ける場合の一例を占めす図である。
【
図12】
図11のロボットシステムにおいて、3箇所の教示点に3人の実作業者を対応付ける場合の一例を示す図である。
【
図13】
図12の教示点に対応付けられた基準作業者および実作業者の識別情報、および各教示点に対応付けられたフラグの一例を示す図である。
【
図14】
図8の変形例であって、作業点の上下に物体が存在する場合の教示点の上限値および下限値を説明する図である。
【
図15】
図14の動作プログラムの補正要のフラグが付された教示点に対応付けられた実作業者の識別情報、上限値および下限値の一例を示す図である。
【
図16】
図2のロボットシステムの他の変形例であって、実作業者の体格情報あるいは識別情報を検出可能なセンサを備えるロボットシステムのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本開示の一実施形態に係るロボットシステム1について、図面を参照して以下に説明する。
本実施形態に係るロボットシステム1は、
図1に示されるように、6軸多関節型のロボット2と、ロボット2を制御する制御装置3とを備えている。
【0009】
ロボット2は、外部からの接触を検出する図示しない力センサ等のセンサを内蔵しており、センサによって接触が検出された場合に、停止あるいは減速させられる。したがって、ロボット2は、作業者と協働して作業を行うことができる協働ロボットである。
作業者が行う作業は、例えば、ワークWへの部品の組付け、ネジの締結、取付部品の位置調整等の任意の作業でよい。
ロボット2の手首4先端にはワークWを把持可能なハンド5が装着されている。
【0010】
制御装置3は、
図2に示されるように、少なくとも1つのプロセッサ(プログラム補正部)6と、少なくとも1つのメモリ(体格情報記憶部、プログラム記憶部)7と、入力装置(体格情報取得部)8とを備えている。
メモリ7は、
図3に示されるように、基準となる作業者である基準作業者の識別情報Sと基準作業者の身長(体格情報)L
Sとを対応付けて記憶している。また、メモリ7には、実際にロボット2と協働して作業を行う可能性のある作業者である実作業者の識別情報R1,R2,R3,R4と実作業者の身長(体格情報)L
R1,L
R2,L
R3,L
R4とが対応付けて記憶されている。
【0011】
また、メモリ7は、ロボット2を動作させる動作プログラムを記憶している。動作プログラムは、複数の教示点を含んでいる。少なくとも1つの教示点は、ロボット2が把持したワークWを当該教示点に移動させることにより、基準作業者が作業し易い位置および姿勢にワークWが配置される作業点である。
【0012】
本実施形態においては、動作プログラムに含まれる教示点毎に、作業者の身長に合わせた補正の要否を示すフラグ、すなわち、補正要または補正不要のフラグを記憶することができる。
プロセッサ6は、動作プログラムの実行に先立って、入力装置8により実作業者の識別情報R1,R2,R3,R4を入力させる。入力装置8としては、識別情報を入力可能な任意の装置、例えば、キーボード、タッチディスプレイ、マウスあるいはカードリーダー等を採用することができる。
【0013】
プロセッサ6は、実作業者の識別情報R1,R2,R3,R4が入力されたときには、入力された識別情報R1,R2,R3,R4をキーとしてメモリ7に記憶されている実作業者の身長LR1,LR2,LR3,LR4を読み出す。そして、プロセッサ6は、読み出された実作業者の身長LR1,LR2,LR3,LR4と、メモリ7に記憶されている基準作業者の身長LSとの差分ΔLを算出し、補正要のフラグが記憶されている教示点についてのみ、教示点の座標を補正する。
【0014】
具体的には、識別情報Sを入力した基準作業者が、自身の識別情報Sを入力して、図示しない教示操作盤等を用いてロボット2の複数の教示点を教示することにより、基準作業者が作業するのに適した位置および姿勢にワークWを配置可能な動作プログラムが作成される。作成された動作プログラムには、
図4に示されるように、基準作業者の識別情報Sが対応付けられてメモリ7に記憶される。
【0015】
あるいは、想定される基準作業者に適した位置および姿勢にワークWを配置するように、オフラインで作成された動作プログラムに基準作業者の識別情報Sを対応付けてメモリ7に記憶しておく。
動作プログラムの作成に際しては、複数の教示点P1~P4を教示するとともに、
図4に示されるように、各教示点P1~P4に実作業者の身長L
R1,L
R2,L
R3,L
R4に基づく補正要または補正不要のフラグを付ける。
図4は、動作プログラムに対応付けられる基準作業者の識別情報Sおよび動作プログラムにおける教示点P1~P4およびフラグのみを表示している。
【0016】
動作プログラムとして、例えば、
図6に示されるように、テーブル10上に配置されたワークWをロボット2が把持して持ち上げ、作業者が作業を行う作業位置まで移動させるものを想定する。この動作プログラムでは、テーブル10上のワークWを把持する位置の教示点P1、テーブル10からワークWを持ち上げた位置の教示点P2、テーブル10上方からワークWを持ち出した位置の教示点P3および作業者が作業を行う作業点である教示点P4を含む。
【0017】
この動作プログラムでは、教示点P1,P2,P3には、補正不要のフラグが付けられ、教示点P4のみに補正要のフラグが付されている。
プロセッサ6は、補正要のフラグがついている教示点P4が存在する場合には、入力装置8により実作業者の識別情報R1,R2,R3,R4を入力させる。入力された実作業者の識別情報R1,R2,R3,R4は、
図5に示されるように、教示点P4に対応付けられてメモリ7に記憶される。
図5も、動作プログラムに対応付けられる基準作業者の識別情報Sおよび動作プログラムにおける教示点P1,P2,P3,P4、フラグおよび実作業者の識別情報R1,R2,R3,R4のみを表示している。
【0018】
そして、プロセッサ6は、動作プログラムを実行する際に、補正要のフラグが付いている教示点P4に対して、以下の補正を行う。
例えば、補正要のフラグがついた教示点P4の座標が(x,y,z)であるものとする。プロセッサ6は、基準作業者Sの身長LSと実作業者R1の身長LR1とから、差分ΔL=LR1-LSを算出する。
【0019】
そして、教示点P4のz座標を下式により補正する。
z´=z+αΔL
ここで、αは正の定数であり、実験等により適当な値に設定されている。
一方、プロセッサ6は、補正不要のフラグがついている教示点P1,P2,P3については、補正を行わない。
【0020】
このように、本実施形態に係るロボットシステム1によれば、動作プログラムの教示を行った基準作業者Sと、基準作業者Sとは異なる実者業者R1とに身長差がある場合に、補正要の教示点P4のz座標が補正され、補正不要の教示点P1,P2,P3の座標は補正されずに維持される。
例えば、
図6および
図7に示されるように、実作業者R1の身長L
R1が基準作業者Sの身長L
Sよりも大きい場合に、基準作業者Sによって教示された教示点P4のz座標が身長差ΔLに比例する量だけ増大させられる。逆に、
図6および
図8に示されるように、実作業者R2の身長L
R2が基準作業者Sの身長L
Sよりも小さい場合に、基準作業者Sによって教示された教示点P4のz座標が身長差ΔLに比例する量だけ減少させられる。
【0021】
これにより、基準作業者SがワークWに対して作業し易い位置および姿勢となる教示点P4を含む動作プログラムが作成された場合に、基準作業者Sとは身長の異なる実作業者R1,R2が作業を実施する場合には、動作プログラムの教示点P4のz座標が増減させられる。
補正によるz座標の増加量あるいは減少量は、身長差ΔLに比例するので、基準作業者Sよりも高い身長の実作業者R1は、基準作業者Sに対するよりも高い位置に配置されたワークWに対して容易に作業を行うことができる。また、基準作業者Sよりも低い身長の実作業者R2は、基準作業者Sに対するよりも低い位置に配置されたワークWに対して容易に作業を行うことができる。
【0022】
これにより、基準作業者Sに対して大きな身長差ΔLを有する実作業者R1,R2が作業を行う場合であっても、実作業者R1,R2に適した位置および姿勢にワークWを配置して実作業者R1,R2にかかる負担を低減することができるという利点がある。
一方、補正不要のフラグがついている教示点P1,P2,P3については、補正を行わないので、テーブル10上においてワークWを把持する動作およびテーブル10上からワークWを離脱させる動作においてワークWがテーブル10に干渉することを防止できる。
【0023】
すなわち、本実施形態に係るロボットシステム1によれば、動作プログラムの教示点P1,P2,P3,P4毎に、補正の要否を設定でき、補正が必要な教示点P1,P2,P3,P4のみを実作業者R1,R2,R3,R4の身長LR1,LR2,LR3,LR4に合わせて補正することができる。これにより、動作プログラムの再教示を行わずに済むという利点がある。
【0024】
なお、本実施形態に係るロボットシステム1においては、1人の基準作業者Sに適した動作プログラムを用いて、基準作業者Sとは異なる他の1人の実作業者R1(または実作業者R2)がロボット2と協働して作業を行う場合を例示した。これに代えて、
図9に示されるように、異なる教示点P1,P2,P3,P4において異なる基準作業者S1,S2および異なる実作業者R1,R3がロボット2と協働して作業を行う場合に本実施形態に係るロボットシステム1を適用してもよい。
【0025】
図9に示される例は、2人の基準作業者S1,S2に好適に教示された動作プログラムを用いて、他の2人の実作業者R1,R3がロボット2と協働して作業を行う例である。
この場合に、動作プログラムの作成時に、
図10に示されるように、基準作業者S1が作業を行う教示点P1には基準作業者S1の識別情報S1、基準作業者S2が作業を行う教示点P4については基準作業者S2の識別情報S2をそれぞれ対応付けて記憶すればよい。また、これらの基準点P1,P4にはそれぞれ補正要のフラグを付けておき、それ以外の教示点P2,P3には補正不要のフラグを付けておく。
【0026】
そして、プロセッサ6は、動作プログラムの実行前に、補正要のフラグが付いている教示点P1,P4について、教示点P1,P4毎に、実作業者R1,R3の識別情報R1,R3を入力させればよい。これにより、動作プログラムの実行時には、補正要のフラグが付いた教示点P1,P4に、基準作業者S1,S2の識別情報S1,S2および実作業者R1,R3の識別情報R1,R3がそれぞれ対応付けて記憶されていることになる。したがって、プロセッサ6は、教示点P1,P4毎に、識別情報S1,S2,R1,R3をキーとしてメモリ7から基準作業者S1,S2および実作業者R1,R3の身長LS1,LS2,LR1,LR3を読み出し、その差分ΔLを求め、教示点のz座標を教示点毎に補正することができる。
【0027】
また、
図11および
図12に示される例は、
図11に示されるように、2人の基準作業者S1,S2に好適に教示された動作プログラムを用いて、
図12に示されるように、他の3人の実作業者R1,R2,R3がロボット2と協働して作業を行う例である。
図11および
図12においてハッチングを付した教示点P3,P5,P6が作業点である。
【0028】
この場合にも、動作プログラムの作成時に、基準作業者S1が作業を行う教示点P3,P6には基準作業者S1の識別情報S1、基準作業者S2が作業を行う教示点P5については基準作業者S2の識別情報S2をそれぞれ対応付けて記憶すればよい。これらの基準点P3,P5,P6にはそれぞれ補正要のフラグを付けておき、それ以外の教示点P1,P2,P4には補正不要のフラグを付けておく。
【0029】
そして、プロセッサ6は、動作プログラムの実行前に、補正要のフラグが付いている教示点P3,P5,P6について、教示点P3,P5,P6毎に、実作業者R1,R2,R3の識別情報R1,R2,R3を入力させればよい。これにより、
図13に示されるように、動作プログラムの実行時には、教示点P1,P5,P6に、基準作業者S1,S2の識別情報S1,S2および実作業者R1,R2,R3の識別情報R1,R2,R3がそれぞれ対応付けて記憶されていることになる。したがって、プロセッサ6は、教示点P1,P2,P3,P4,P5,P6毎に、識別情報S1,S2,R1,R2,R3をキーとしてメモリ7から基準作業者S1,S2および実作業者R1,R2,R3の身長L
S1,L
S2,L
R1,L
R2,L
R3を読み出し、その差分ΔLを求め、教示点P1,P2,P3,P4,P5,P6のz座標を教示点P1,P2,P3,P4,P5,P6毎に補正することができる。
【0030】
また、本実施形態においては、実作業者R1,R2,R3,R4の身長L
R1,L
R2,L
R3,L
R4による教示点P1,P2,P3,P4の補正の結果、発生する不都合を回避するために、教示点P1,P2,P3,P4毎に上限および下限の少なくとも一方を設定可能としてもよい。例えば、
図14に示されるように、実作業者R2がワークWに対して作業を行う作業点の上下に外部構造物等の物体30が存在する場合に、実作業者R2の身長L
R2に合わせて教示点P4を一律に上下させたのでは、ワークWあるいはロボット2が物体30と干渉する虞がある。
【0031】
そこで、
図15に示されるように、補正要のフラグが付されている教示点P4に上限値あるいは下限値を設定すればよい。そして、プロセッサ6が、身長差ΔLによる補正の結果、教示点P4が上限値よりも高い位置あるいは下限値よりも低い位置となる場合には、教示点P4のz座標を上限値または下限値に補正することにすればよい。
【0032】
また、本実施形態においては、動作プログラムの実行に先立って、実作業者R1,R2,R3,R4の識別情報R1,R2,R3,R4を教示点P1,P2,P3,P4毎に入力させることとしたが、これに代えて、
図16に示されるように、実作業者R1,R2,R3,R4の体格情報L
R1,L
R2,L
R3,L
R4または識別情報R1,R2,R3,R4を検出可能なセンサ20を配置してもよい。体格情報L
R1,L
R2,L
R3,L
R4を検出するセンサ20としては、例えば、作業点においてワークWに対して作業を行う作業者を撮影するカメラ等を挙げることができる。また、識別情報R1,R2,R3,R4を検出可能なセンサ20としては、顔認証装置あるいは指紋認証装置等を挙げることができる。
【0033】
センサ20によれば、実作業者R1,R2,R3,R4が識別情報R1,R2,R3,R4を入力しなくても、自動的に体格情報LR1,LR2,LR3,LR4を取得でき、入力漏れを防ぐことができる。
この場合に、センサ20により検出する体格情報LR1,LR2,LR3,LR4としては、身長あるいは肩の高さを採用することができる。肩の高さを採用することにより、実作業者R1,R2,R3,R4が頭部にヘルメットを被っていても、精度よく検出することができる。
【0034】
また、本実施形態においては、基準作業者Sと実作業者R1,R2,R3,R4との身長差ΔLに比例する量だけ教示点P1,P2,P3,P4のz座標を補正したが、これに代えて、身長差ΔLに応じて単調増加する任意の関数により算出される量だけ補正してもよい。
【0035】
また、本実施形態においては、補正要のフラグが設定されている教示点が基準作業者の作業点と一致するものを例示したが、これに代えて、基準作業者の作業点でない教示点において補正要のフラグが設定されていてもよい。例えば、
図9においてテーブル10が存在しない場合には、教示点P2,P3も適切に補正することにより、一連の動作にかかる時間を短縮することができる場合がある。
【0036】
例えば、複数の作業点を含む動作プログラムにおいて、作業点でない教示点P2,P3を補正する場合には、当該教示点P2,P3の前後の作業点における身長差の平均値によって補正すればよい。
具体的には、
図9を一例とすると、教示点P2,P3のz座標を下式により補正する。
ΔL1=L
R1-L
S1
ΔL4=L
R3-L
S2
z´=z+α(ΔL
1+ΔL
4)/2
である。
ここで、ΔL
1は教示点P1での差分、ΔL
4は教示点P4での差分、αは正の定数である。
【0037】
図9に示す例では、作業点である教示点P1,P4における補正がいずれもz座標を小さくする補正であるため、作業点ではない教示点P2,P3を補正しない場合には、補正後の経路長は補正前よりも長くなる。これに対して、作業点ではない教示点P2,P3についても、教示点である教示点P1,P4における補正に応じて補正することにより、教示点P1から教示点P4までの経路長を短縮して作業効率を向上することができる。
【符号の説明】
【0038】
1 ロボットシステム
2 ロボット
3 制御装置
6 プロセッサ(プログラム補正部)
7 メモリ(体格情報記憶部、プログラム記憶部)
8 入力装置(体格情報取得部)
LS,LS1,LS2 基準作業者の身長(体格情報)
LR1,LR2,LR3,LR4 実作業者の身長(体格情報)
P1,P2,P3,P4,P5,P6 教示点
R1,R2,R3,R4 実作業者の識別情報
S,S1,S2 基準作業者の識別情報
W ワーク