(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】MT型ストラドルドビークル
(51)【国際特許分類】
F02D 29/02 20060101AFI20241001BHJP
【FI】
F02D29/02 321A
(21)【出願番号】P 2022544016
(86)(22)【出願日】2021-08-20
(86)【国際出願番号】 JP2021030533
(87)【国際公開番号】W WO2022039253
(87)【国際公開日】2022-02-24
【審査請求日】2023-02-09
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2020/031439
(32)【優先日】2020-08-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001531
【氏名又は名称】弁理士法人タス・マイスター
(72)【発明者】
【氏名】小杉 誠
(72)【発明者】
【氏名】神馬 孝俊
(72)【発明者】
【氏名】日野 陽至
【審査官】戸田 耕太郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/169034(WO,A1)
【文献】特開2013-072427(JP,A)
【文献】国際公開第2012/164700(WO,A1)
【文献】特開2018-035760(JP,A)
【文献】国際公開第2020/141571(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/141594(WO,A1)
【文献】特開2010-047958(JP,A)
【文献】特開2018-030523(JP,A)
【文献】特開2018-052267(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 29/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
MT型鞍乗型車両であって、
クランク軸を有し、燃焼により生じる動力を、回転する前記クランク軸を介して出力するエンジンと、
前記エンジンから出力される動力を受け、前記MT型鞍乗型車両を駆動する駆動輪と、
運転者の操作に応じて、前記エンジンと前記駆動輪の間の変速比を、ニュートラル状態を含む多段階に、前記運転者の操作を受ける毎に順に遷移するように変更するシーケンシャル式多段変速機と、
前記運転者の接続操作又は切断操作を受けるクラッチレバーと、
前記エンジンと前記シーケンシャル式多段変速機の間の動力伝達経路上に設けられ、前記運転者による前記クラッチレバーへの接続操作又は切断操作に応じて、前記エンジンと前記シーケンシャル式多段変速機の間での動力伝達又はその遮断を行うクラッチと、
前記エンジンの始動及び燃焼を制御する制御装置と
を備え、
前記制御装置は、下記(a)から(c)のすべての条件を満たした場合に、前記エンジンの燃焼動作の停止をし、前記燃焼動作の停止の後に、前記運転者によるクラッチレバーの切断操作を検出した場合に、前記MT型鞍乗型車両が停止しているか否かに関わらず前記エンジンを始動させるように構成され、前記(a)から(c)の条件は、
(a)前記MT型鞍乗型車両が、同歩可能車速範囲の速度で走行中であること、
(b)前記シーケンシャル式多段変速機がニュートラル状態であること、及び、
(c)前記運転者の前記クラッチレバーへの接続操作に応じて、前記クラッチが前記動力伝達経路を接続すること、であり
前記同歩可能車速範囲は、5km/hから、前記ニュートラル状態から少なくとも2回以内の前記シーケンシャル式多段変速機の変速操作により到達するギア段のアイドリング速度までの区間の少なくとも一部に相当するように設定される
、MT型鞍乗型車両。
【請求項2】
請求項1に記載のMT型鞍乗型車両であって、
前記制御装置は、
前記(a)から(c)のすべての条件を満たした場合に、前記エンジンの燃焼動作の停止をし、前記燃焼動作の停止の後に、前記MT型鞍乗型車両が走行中及び停止中双方の状態で、前記クラッチレバーの切断操作を検出した場合に、前記エンジンを始動させるように構成される
、MT型鞍乗型車両。
【請求項3】
請求項1
又は2に記載のMT型鞍乗型車両であって、
前記MT型鞍乗型車両は、前記クランク軸との間でクラッチを介さず動力が伝達されるように前記クランク軸に接続され、前記エンジンの始動時に前記クランク軸を駆動することで前記エンジンを始動させ、前記エンジンの燃焼動作時に前記クランク軸に駆動され発電する始動発電機を備える
、MT型鞍乗型車両。
【請求項4】
請求項
3に記載のMT型鞍乗型車両であって、
前記始動発電機は、前記クラッチが前記エンジンから前記シーケンシャル式多段変速機へ動力を伝達する期間の一部で前記クランク軸を駆動する
、MT型鞍乗型車両。
【請求項5】
請求項
3又は
4に記載のMT型鞍乗型車両であって、
前記始動発電機は、前記クランク軸を収容する前記エンジンのクランクケース内にエンジンオイルで潤滑されるよう設けられている
、MT型鞍乗型車両。
【請求項6】
請求項
3から
5の何れか1項に記載のMT型鞍乗型車両であって、
前記始動発電機は、スロットと周方向で交互に設けられた複数の歯部を備えるステータコア、及び前記歯部に巻回される複数相の巻線を有するステータと、前記ステータと空隙を空けて前記周方向に並び且つ前記スロットの数の2/3より多い磁極部を有するロータとを備える
、MT型鞍乗型車両。
【請求項7】
請求項
3から
6の何れか1項に記載のMT型鞍乗型車両であって、
前記始動発電機は、前記エンジンに対し位置が固定され巻線を有するステータと、前記ステータに対し空隙を介して設けられた永久磁石を有し前記クランク軸の回転と連動するように前記クランク軸に設けられたロータとを備え、
前記エンジンは、前記クラッチレバーの切断操作に基づいて前記エンジンが始動する時に前記ロータの位置の検出を表す信号を前記制御装置に出力する、前記ステータの前記巻線とは異なる検出巻線を有するロータ位置検出装置を更に備える
、MT型鞍乗型車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、MT型鞍乗型車両に関する。
【背景技術】
【0002】
MT型鞍乗型車両として、例えばアイドリングストップを行う自動二輪車が知られている(例えば特許文献1)。例えば、特許文献1に示す自動二輪車は、アイドリングストップモードに遷移した時に、アイドリングストップ要求スイッチを操作することによりアイドリングストップを開始させる。エンジンのアイドリング中にエンジンを停止することで、燃料消費量を低減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6582441号公報
【文献】出願公開第2013-072427号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
MT型鞍乗型車両では、アイドリングストップの適用範囲を拡大しつつ、エンジン再始動時の操作を簡潔にすることが求められている。本発明の目的は、アイドリングストップの適用範囲を拡大しつつ、エンジン再始動時の操作を簡潔にするMT型鞍乗型車両を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、MT型鞍乗型車両のアイドリングストップの適用範囲を拡大することについて検討した。ここで、アイドリングストップを行う範囲をMT型鞍乗型車両の走行中に広げたものとして特許文献2がある。特許文献2のMT型鞍乗型車両は、走行中であっても多段変速機がニュートラル状態であれば、クラッチの接続操作によりエンジン停止する。
【0006】
ここで、本発明者は、MT型の車両のアイドリングストップの範囲を走行中にまで適用することについて、MT型自動車と比較しつつ、更に検討した。例えば、MT型の車両の走行中にアイドリングストップによりエンジンが停止している状態で、加速が求められる場合がある。この状態からMT型鞍乗型車両を加速させる場合、運転者は、多段変速機を操作してニュートラル状態からインギア状態にし、クラッチを操作して接続状態にする。加速を滑らかに行なうために、クラッチが接続状態に遷移する直前の多段変速機のギア段は、車速と、エンジンの回転速度に適合していることが好ましい。
【0007】
例えば、MT型自動車は、通常Hパターンの多段変速機を備える。この場合、多段変速機は、1回の操作によってニュートラル状態から任意のギア段に変速することができる。MT型自動車の運転者は、多段変速機を1回操作して車速に適合するギア段に変速して、クラッチを接続させる。これによりアイドリングストップによるエンジン停止状態から滑らかに加速に移行することができる。
【0008】
これに対し、MT型鞍乗型車両は、シーケンシャル式多段変速機を有している。MT型鞍乗型車両が有するシーケンシャル式多段変速機は、運転者の操作毎にギア段が順送りに変化するように構成されている。このため、MT型鞍乗型車両の走行中において、エンジンが停止している状態で加速が求められると、シーケンシャル式多段変速機がニュートラル状態から、車速及び回転速度に適合するギア段へ変化し、クラッチが接続するまで操作が煩雑になる場合がある。シーケンシャル式の多段変速機では、MT型鞍乗型車両の車速に適合する変速段が高ギア段である場合、目的のギア段まで変速するのに多くの操作を有するからである。
【0009】
そこで、本発明者は、MT型鞍乗型車両が走行中にアイドリングストップできる車速として、同歩可能(synchronizable)車速範囲を設定することを考えた。つまり、MT型鞍乗型車両は、多段変速機がニュートラル状態でクラッチを接続したときに、同歩可能車速範囲であればエンジンを停止する。同歩可能車速範囲は、5km/hから、ニュートラル状態から少なくとも2回以内のシーケンシャル式多段変速機の変速操作により到達するギア段のアイドリング速度までの区間の少なくとも一部に相当する速度に設定される。
【0010】
MT型鞍乗型車両の制御装置を、このように構成することにより、走行中で、シーケンシャル式多段変速機のギア段がニュートラルで、そしてエンジンが停止している状態で、加速が求められる場合クラッチの接続の前のシーケンシャル式多段変速機の操作を簡潔にできる。これにより、シーケンシャル式多段変速機を有するMT型鞍乗型車両のアイドリングストップの適用範囲を拡大しつつ、エンジン再始動時の操作を簡潔にすることができる。
【0011】
以上の目的を達成するために、本発明の一つの観点によれば、MT型鞍乗型車両は、次の構成を備える。
(1) MT型鞍乗型車両であって、
クランク軸を有し、燃焼により生じる動力を、回転する前記クランク軸を介して出力するエンジンと、
前記エンジンから出力される動力を受け、前記MT型鞍乗型車両を駆動する駆動輪と、
運転者の操作に応じて、前記エンジンと前記駆動輪の間の変速比を、ニュートラル状態を含む多段階に、前記運転者の操作を受ける毎に順に遷移するように変更するシーケンシャル式多段変速機と、
前記運転者の接続操作又は切断操作を受けるクラッチレバーと、
前記エンジンと前記シーケンシャル式多段変速機の間の動力伝達経路上に設けられ、前記運転者による前記クラッチレバーへの接続操作又は切断操作に応じて、前記エンジンと前記シーケンシャル式多段変速機の間での動力伝達又はその遮断を行うクラッチと、
前記エンジンの始動及び燃焼を制御する制御装置と
を備え、
前記制御装置は、下記(a)から(c)のすべての条件を満たした場合に、前記エンジンの燃焼動作の停止をし、前記燃焼動作の停止の後に、前記運転者によるクラッチレバーの切断操作を検出した場合に、前記MT型鞍乗型車両が停止しているか否かに関わらず前記エンジンを始動させるように構成され、前記(a)から(c)の条件は、
(a)前記MT型鞍乗型車両が、同歩可能車速範囲の速度で走行中であること、
(b)前記シーケンシャル式多段変速機がニュートラル状態であること、及び、
(c)前記運転者の前記クラッチレバーへの接続操作に応じて、前記クラッチが前記動力伝達経路を接続すること、であり
前記同歩可能車速範囲は、5km/hから、前記ニュートラル状態から少なくとも2回以内の前記シーケンシャル式多段変速機の変速操作により到達するギア段のアイドリング速度までの区間の少なくとも一部に相当するように設定される。
【0012】
(1)のMT型鞍乗型車両は、エンジンと、駆動輪と、シーケンシャル式多段変速機と、クラッチレバーと、クラッチと、制御装置とを備える。
エンジンは、クランク軸を有し、燃焼により生じる動力を、回転するクランク軸を介して出力する。
駆動輪は、エンジンから出力される動力を受け、MT型鞍乗型車両を駆動する。
シーケンシャル式多段変速機は、運転者の操作に応じて、エンジンと駆動輪の間の変速比を、ニュートラル状態を含む多段階に、運転者の操作を受ける毎に順に遷移するように変更する。
クラッチレバーは、運転者の接続操作又は切断操作を受ける。
クラッチは、エンジンとシーケンシャル式多段変速機の間の動力伝達経路上に設けられる。クラッチは、運転者によるクラッチレバーへの接続操作又は切断操作に応じて、エンジンとシーケンシャル式多段変速機の間での動力伝達又はその遮断を行う。
制御装置は、エンジンの始動及び燃焼を制御する。
【0013】
制御装置は、下記(a)から(c)のすべての条件を満たした場合に、エンジンの燃焼動作の停止をし、燃焼動作の停止の後に、運転者によるクラッチレバーの切断操作を検出した場合に、MT型鞍乗型車両が停止しているか否かに関わらずエンジンを始動させるように構成される。ここで、(a)から(c)の条件は、
(a)MT型鞍乗型車両が、同歩可能車速範囲の速度で走行中であること、
(b)シーケンシャル式多段変速機がニュートラル状態であること、及び
(c)運転者のクラッチレバーへの接続操作に応じて、クラッチが動力伝達経路を接続すること、
である。
同歩可能車速範囲は、5km/hから、ニュートラル状態から少なくとも2回以内のシーケンシャル式多段変速機の変速操作により到達するギア段のアイドリング速度までの区間の少なくとも一部に相当するように設定される。
【0014】
(1)のMT型鞍乗型車両は、アイドリングストップによるエンジン停止の条件として、上記条件(b)及び(c)を設定している。上記条件(b)及び(c)は、運転者の停止の意思の表れと言える。従って、(1)のMT型鞍乗型車両は、上記条件(b)及び(c)により、運転者の停止の意思を確認しているといえる。また、(1)のMT型鞍乗型車両は、上記条件(a)により、MT型鞍乗型車両が走行中であることをアイドリングストップのエンジン停止の条件としている。従って、(1)のMT型鞍乗型車両は、アイドリングストップを適用する範囲を走行中にも広げている。
【0015】
シーケンシャル式の多段変速機で例えば運転者がニュートラル状態から4速に変速しようとすると、リターンタイプのシーケンシャル式の多段変速機は、3回もの変速操作を要し、ボトムニュートラルのシーケンシャル式の多段変速機は、4回もの変速操作を要する。
【0016】
(1)のMT型鞍乗型車両では、MT型鞍乗型車両が同歩可能車速範囲の速度で走行中であることが、アイドリングストップによるエンジン停止を行う条件の1つとして、設定されている。これにより、(1)のMT型鞍乗型車両では、走行中において、シーケンシャル式多段変速機のギア段がニュートラルでエンジンが停止している状態で加速が求められる場合であっても、クラッチの接続の前のシーケンシャル式多段変速機の操作を簡潔にできる。MT型鞍乗型車両の運転者は、クラッチの接続までのシーケンシャル式多段変速機の操作を、2回以内の変速操作で行うことができ、素早く加速操作に移行することができるからである。これにより、シーケンシャル式多段変速機を有するMT型鞍乗型車両のアイドリングストップの適用範囲を拡大しつつ、エンジン再始動時の操作を簡潔にすることができる。
【0017】
本発明の一つの観点によれば、MT型鞍乗型車両は、以下の構成を採用できる。
(2) (1)のMT型鞍乗型車両であって、
前記制御装置は、前記MT型鞍乗型車両が走行中及び停止中双方の状態で、前記クラッチレバーの切断操作を検出した場合に、前記エンジンを始動させるように構成される。
【0018】
(2)のMT型鞍乗型車両の制御装置は、走行中及び停止中双方の状態で運転者によるクラッチレバーの切断操作を検出した場合に、エンジンを始動させるように構成される。これにより、(2)のMT型鞍乗型車両では、アイドリングストップ状態において、クラッチレバーの操作のみですぐにエンジンを始動できる。特にエンジンが停止している状態で加速が求められた場合であっても、すぐエンジン始動できる。そのため、シーケンシャル式多段変速機を有するMT型鞍乗型車両のアイドリングストップの適用範囲を拡大しつつ、エンジン再始動時の操作を簡潔にすることができる。
【0019】
本発明の一つの観点によれば、MT型鞍乗型車両は、以下の構成を採用できる。
(3) (1)又は(2)のMT型鞍乗型車両であって、
前記制御装置は、前記シーケンシャル式多段変速機が非ニュートラル状態の場合は、前記エンジンの燃焼動作を停止しない。
【0020】
(3)のMT型鞍乗型車両の制御装置は、シーケンシャル式多段変速機が非ニュートラル状態の場合は、アイドリングストップによるエンジンの燃焼動作を停止しない。従って、(3)のMT型鞍乗型車両は、アイドリングストップによるエンジン停止を行うための操作を単純化することができる。これにより、(3)のMT型鞍乗型車両は、シーケンシャル式多段変速機を有するMT型鞍乗型車両のアイドリングストップの適用範囲を拡大しつつ、エンジン再始動時の操作を簡潔にすることができる。
【0021】
本発明の一つの観点によれば、MT型鞍乗型車両は、以下の構成を採用できる。
(4) (1)から(3)の何れか1つのMT型鞍乗型車両であって、
前記MT型鞍乗型車両は、前記クランク軸との間でクラッチを介さず動力が伝達されるように前記クランク軸に接続され、前記エンジンの始動時に前記クランク軸を駆動することで前記エンジンを始動させ、前記エンジンの燃焼動作時に前記クランク軸に駆動され発電する始動発電機を備える。
【0022】
(4)のMT型鞍乗型車両は、エンジンの始動時にクランク軸を駆動することでエンジンを始動させ、エンジンの燃焼動作時にクランク軸に駆動され発電する始動発電機を備える。これにより、(4)のMT型鞍乗型車両は、始動専用のスタータモータを排除することができ、車体が大型化するのを抑制できる。従って、(4)のMT型鞍乗型車両によれば、シーケンシャル式多段変速機を有するMT型鞍乗型車両のアイドリングストップの適用範囲を拡大しつつ車体の大型化を抑制し、エンジン再始動時の操作を簡潔にすることができる。
【0023】
本発明の一つの観点によれば、MT型鞍乗型車両は、以下の構成を採用できる。
(5) (4)のMT型鞍乗型車両であって、
前記始動発電機は、前記クラッチが前記エンジンから前記シーケンシャル式多段変速機へ動力を伝達する期間の一部で前記クランク軸を駆動する。
【0024】
(5)のMT型鞍乗型車両の始動発電機は、クラッチがエンジンからシーケンシャル式多段変速機へ動力を伝達する期間の一部でクランク軸を駆動する。これにより、(5)のMT型鞍乗型車両では、走行中であってもエンジン再始動時に始動アシストでエンジン回転数を合わせることができるため、滑らかなクラッチ接続を可能とし、操作が煩雑になることを抑制できる。従って、(5)のMT型鞍乗型車両によれば、シーケンシャル式多段変速機を有するMT型鞍乗型車両のアイドリングストップの適用範囲を拡大しつつ、操作をより簡潔にすることができる。
【0025】
本発明の一つの観点によれば、MT型鞍乗型車両は、以下の構成を採用できる。
(6) (4)又は(5)のMT型鞍乗型車両であって、
前記始動発電機は、前記クランク軸を収容する前記エンジンのクランクケース内にエンジンオイルで潤滑されるよう設けられている。
【0026】
(6)のMT型鞍乗型車両の始動発電機は、クランク軸を収容するエンジンのクランクケース内にエンジンオイルで潤滑されるよう設けられている。このため、(6)のMT型鞍乗型車両は、始動発電機に対する冷却用のファンやフィンの取付けを省略することができる。また、(6)のMT型鞍乗型車両では、始動発電機の配置空間とクランク軸の配置空間とを仕切るための壁を省略することができる。始動発電機は、エンジンの始動時にクランク軸を駆動する機能のため、発電専用の発電機と比べて大型化しやすい。しかし、(6)のMT型鞍乗型車両によれば、発電機とエンジンを含むユニットの大型化が抑制される。従って、(6)のMT型鞍乗型車両によれば、シーケンシャル式多段変速機を有するMT型鞍乗型車両のアイドリングストップの適用範囲を拡大しつつ車体の大型化を抑制し、エンジン再始動時の操作を簡潔にすることができる。
【0027】
本発明の一つの観点によれば、MT型鞍乗型車両は、以下の構成を採用できる。
(7) (4)から(6)の何れか1つのMT型鞍乗型車両であって、
前記始動発電機は、スロットと周方向で交互に設けられた複数の歯部を備えるステータコア、及び前記歯部に巻回される複数相の巻線を有するステータと、前記ステータと空隙を空けて前記周方向に並び且つ前記スロットの数の2/3より多い磁極部を有するロータとを備える。
【0028】
(7)のMT型鞍乗型車両によれば、磁極部で形成される極対を歯部が通過する電気角周期に基づく角速度が、例えばスロットの数の2/3と等しい又はそれより少ない磁極部を有する構成の場合と比べて大きい。このため、巻線のインピーダンスは、例えばスロットの数の2/3と等しい又はそれより少ない磁極部を有する構成の場合と比べて大きい。このため、エンジンが再始動した後、始動発電機が発電機として機能する回転速度の領域において、より大きな巻線のインピーダンスによって発電電流が抑制される。従って、発電時においてスイッチング素子への供給電流が抑制される。このため、(7)のMT型鞍乗型車両によれば、制御装置における放熱のための構造をより簡潔にして小型化することができる。従って、(7)のMT型鞍乗型車両によれば、シーケンシャル式多段変速機を有するMT型鞍乗型車両のアイドリングストップの適用範囲を拡大しつつ車体の大型化を抑制し、エンジン再始動時の操作を簡潔にすることができる。
【0029】
本発明の一つの観点によれば、MT型鞍乗型車両は、以下の構成を採用できる。
(8) (4)から(7)の何れか1つのMT型鞍乗型車両であって、
前記始動発電機は、前記エンジンに対し位置が固定され巻線を有するステータと、前記ステータに対し空隙を介して設けられた永久磁石を有し前記クランク軸の回転と連動するように前記クランク軸に設けられたロータとを備え、
前記エンジンは、前記クラッチレバーの切断操作に基づいて前記エンジンが始動する時に前記ロータの位置の検出を表す信号を前記制御装置に出力する、前記ステータの前記巻線とは異なる検出巻線を有するロータ位置検出装置を更に備える。
【0030】
(8)のMT型鞍乗型車両によれば、ロータ位置検出装置は検出巻線によってロータの位置の検出を表す信号を出力する。このため、ロータ位置検出装置は、例えばホール素子と比べて高い温度で動作できる。従って、始動発電機とエンジンを含むユニットにおける断熱のための構造を簡潔にして小型化することができる。従って、(8)のMT型鞍乗型車両によれば、シーケンシャル式多段変速機を有するMT型鞍乗型車両のアイドリングストップの適用範囲を拡大しつつ車体の大型化を抑制し、エンジン再始動時の操作を簡潔にすることができる。
【0031】
本明細書にて使用される専門用語は特定の実施例のみを定義する目的であって発明を制限する意図を有しない。本明細書にて使用される用語「及び/又は」は一つの、又は複数の関連した列挙された構成物のあらゆる又は全ての組み合わせを含む。本明細書中で使用される場合、用語「含む、備える(including)」「含む、備える(comprising)」又は「有する(having)」及びその変形の使用は、記載された特徴、工程、操作、要素、成分及び/又はそれらの等価物の存在を特定するが、ステップ、動作、要素、コンポーネント、及び/又はそれらのグループのうちの1つ又は複数を含むことができる。本明細書中で使用される場合、用語「取り付けられた」、「接続された」、「結合された」及び/又はそれらの等価物は広く使用され、直接的及び間接的な取り付け、接続及び結合の両方を包含する。更に、「接続された」及び「結合された」は、物理的又は機械的な接続又は結合に限定されず、直接的又は間接的な電気的接続又は結合を含むことができる。他に定義されない限り、本明細書で使用される全ての用語(技術用語および科学用語を含む)は、本発明が属する当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。一般的に使用される辞書に定義された用語のような用語は、関連する技術及び本開示の文脈における意味と一致する意味を有すると解釈されるべきであり、本明細書で明示的に定義されていない限り、理想的又は過度に形式的な意味で解釈されることはない。本発明の説明においては、多数の技術及び工程が開示されていると理解される。これらの各々は個別の利益を有し、それぞれは、他の開示された技術の1つ以上、又は、場合によっては全てと共に使用することもできる。従って、明確にするために、この説明は、不要に個々のステップの可能な組み合わせを全て繰り返すことを控える。それにもかかわらず、明細書及び特許請求の範囲は、そのような組み合わせが全て本発明及び請求項の範囲内にあることを理解して読まれるべきである。
【0032】
本明細書では、新しいMT型鞍乗型車両について説明する。以下の説明では、説明の目的で、本発明の完全な理解を提供するために多数の具体的な詳細を述べる。しかしながら、当業者には、これらの特定の詳細無しに本発明を実施できることが明らかである。本開示は、本発明の例示として考慮されるべきであり、本発明を以下の図面または説明によって示される特定の実施形態に限定することを意図するものではない。
【0033】
MT型鞍乗型車両は、マニュアル多段変速機を有する鞍乗型車両である。鞍乗型車両(straddled vehicle)とは、運転者がサドルに跨って着座する形式のビークルをいう。鞍乗型車両としては、例えば、モペット型、オフロード型、オンロード型の自動二輪車が挙げられる。また、鞍乗型車両としては、自動二輪車に限定されず、例えば、自動三輪車、ATV(All-Terrain Vehicle)等であってもよい。自動三輪車は、2つの前輪と1つの後輪とを備えていてもよく、1つの前輪と2つの後輪とを備えていてもよい。鞍乗型車両の駆動輪は、後輪であってもよく、前輪であってもよい。また、鞍乗型車両の駆動輪は、後輪及び前輪の双方であってもよい。また、鞍乗型車両は、リーン姿勢で旋回可能に構成されていることが好ましい。リーン姿勢で旋回可能に構成された鞍乗型車両は、カーブの中心に傾いた姿勢で旋回するように構成される。これにより、リーン姿勢で旋回可能に構成された鞍乗型車両は、旋回時にビークルに加わる遠心力に対抗する。リーン姿勢で旋回可能に構成された鞍乗型車両では、軽快性が求められるため、加速の操作に対する応答性が重要視される。MT型鞍乗型車両では、例えば、エンジンから駆動輪までの動力伝達経路に、流体の力学的作用を利用したトルクコンバータが設けられていない。
【0034】
エンジンは、例えば、高負荷領域と低負荷領域とを有するエンジンである。エンジンは、例えば、4ストロークエンジンである。4ストロークエンジンは、4ストロークの間に、高負荷領域と低負荷領域とを有する。高負荷領域と低負荷領域とを有する4ストロークエンジンは、例えば、単気筒エンジンである。高負荷領域と低負荷領域とを有する4ストロークエンジンは、例えば、2気筒エンジン、不等間隔燃焼型3気筒エンジン、又は、不等間隔燃焼型4気筒エンジンである。高負荷領域と低負荷領域とを有する4ストロークエンジンは、1サイクル720度の間に180度以上の連続不燃焼区間を含む。高負荷領域と低負荷領域とを有する4ストロークエンジンは、例えば、気筒数が3以上の等間隔燃焼型エンジンは含まない。4ストロークエンジンは、例えば、3つより少ない気筒を有するエンジンである。本開示の一実施形態において、4ストロークエンジンは、例えば、単気筒エンジン又は2気筒エンジンである。2気筒エンジンは、2つの気筒を有する不等間隔燃焼エンジンであってもよい。2つの気筒を有する不等間隔燃焼エンジンとして、例えばV型エンジンが挙げられる。
高負荷領域と低負荷領域とを有する4ストロークエンジンでは、低い回転速度における回転の変動が、他のタイプのエンジンと比べ大きい。高負荷領域とは、エンジンの1燃焼サイクルのうち、負荷トルクが1燃焼サイクルにおける負荷トルクの平均値よりも高い領域をいう。低負荷領域とは、1燃焼サイクルにおける高負荷領域以外の領域をいう。クランク軸の回転角度を基準として見ると、エンジンでの低負荷領域は、例えば、高負荷領域より広い。圧縮行程は、高負荷領域と重なりを有する。但し、エンジンは、例えば、高負荷領域と低負荷領域とを有していなくてもよい。エンジンは、例えば、気筒数が3以上の等間隔燃焼型エンジンでもよい。
【0035】
始動発電機は、例えば永久磁石式の始動発電機である。始動発電機は、例えば永久磁石を使用しない始動発電機であってもよい。永久磁石式の始動発電機は、例えば、ブラシレスモータである。ブラシレスモータは、整流子を有さないモータである。始動発電機はエンジンを始動する始動モータとして機能する。また、始動発電機は、エンジンによって駆動され発電するモータジェネレータである。永久磁石式の始動発電機は、例えば、ブラシ付き直流モータでもよい。また、始動発電機は、例えばロータに永久磁石を有さないタイプでもよい。
【0036】
始動発電機は、例えばクランク軸と直結される。但し、始動発電機は、これに限られず、クランク軸と連動するように設けられていればよい。始動発電機は、例えば、クランク軸と常時連動する。始動発電機は、例えば、クラッチを介することなくクランク軸と接続されていればよい。例えば、始動発電機は、クランク軸とギア又はベルトを介して接続されていてもよい。
【0037】
クラッチは、クラッチレバーに対する運転者による操作に応じて作動するように構成されている。クラッチは、車両の発進時及び変速段の変更の両方の場面で、接続又は切断の状態が変化するように動作する発進・変速用クラッチである。クラッチとしては、湿式又は乾式の多板又は単板のクラッチが挙げられる。一実施形態において、クラッチは、湿式多板クラッチである。但し、遠心クラッチは、本発明におけるクラッチに該当しない。
クラッチレバーは、接続操作及び切断操作を受ける。接続操作は、例えば、クラッチを遮断状態から伝達状態へ遷移させるための操作をいう。接続操作は、クラッチの伝達状態を維持するようにクラッチレバーの状態を保つことを含んでもよい。切断操作は、クラッチを伝達状態から遮断状態へ遷移させるための操作をいう。切断操作は、クラッチの遮断状態を維持するようにクラッチレバーの状態を保つことを含んでもよい。クラッチレバーの操作状態は、例えば、クラッチの部材の位置として検出されてもよい。クラッチレバーの操作状態は、例えばクラッチレバー位置センサによって検出される。このようなクラッチレバー位置センサは、例えば、クラッチレバーの操作位置又は非操作位置を検出するスイッチで構成される。但し、クラッチレバー位置センサは、これに限られず、例えば、クラッチレバーの操作位置をアナログレベルで表す信号を出力するセンサで構成されてもよい。また、クラッチの状態は、例えば、クラッチの部品の位置、又は、クラッチレバーからクラッチに作動力を伝達する部材の位置として検出されてもよい。
【0038】
動力伝達経路は、エンジンのクランク軸から駆動輪までの、エンジンの動力を伝える経路における機械的な要素の総称である。動力伝達経路は、駆動軸、非駆動軸、駆動ギア、被駆動ギア、チェーンスプロケット、チェーン、駆動ベルトの少なくとも何れかを含む。
【0039】
多段変速機は、運転者の操作により、変速比を変更する。多段変速機は、シフトペダルの操作に応じて変速比を多段階に変更するように構成されている。多段変速機は、ニュートラル状態を含む複数のギア段を有する。つまり、多段変速機は、ニュートラル状態を含む多段階に変速比を変更することができる。多段変速機は、例えば、ニュートラル状態と非ニュートラル状態とを有する。非ニュートラル状態は、4段以上の段階を含む。非ニュートラル状態は、例えば1速から4速までの変速段を含む。ニュートラル状態は、入力軸から出力軸に動力が伝達されない状態である。多段変速機は、非ニュートラル状態時に、入力軸から入力された回転動力を、シフトペダルの操作に応じた変速比に変更して、出力軸に伝達する。無段変速機は、多段変速機に該当しない。
【0040】
シーケンシャル式多段変速機は、少なくとも1速以外の変速段を飛び越して遷移しない多段変速機である。シーケンシャル式多段変速機は、ニュートラル状態から、操作を受ける毎に、途中の変速段を飛び越すこと無く順に遷移するように構成される。シーケンシャル式多段変速機には、例えば、ボトムニュートラルタイプ、リターンタイプ及びロータリータイプがある。ボトムニュートラルタイプは、ニュートラル状態でシフトアップ操作を受けると状態が1速に遷移する。1速でシフトアップ操作を受けると状態が2速に遷移する。2速でシフトアップ操作を受けると状態が3速に遷移する。3速でシフトアップ操作を受けると状態が4速に遷移する。4速でシフトアップ操作を受けると状態が5速に遷移する。リターンタイプでは、1速と2速の間にニュートラルが配置される。リターンタイプでは、ニュートラル状態でシフトアップ操作を受けると操作の向きに応じて状態が1速又は2速に遷移する。1速及び2速以降の遷移については、ボトムニュートラルタイプと同じである。ロータリータイプは、2速と1速との間にニュートラルが配置される。ロータリータイプは、トップギア(最高段のギア段)でシフトアップ操作を受けるとニュートラル状態に遷移する。ニュートラル状態でシフトダウン操作を受けるとトップギアに遷移する。ニュートラル以降の遷移については、ボトムニュートラルタイプと同じである。つまり、シーケンシャルタイプの多段変速機は、少なくとも1速以外の変速段について、途中の変速段を飛び越すこと無く、操作を受ける毎に順に遷移するように構成される。
多段変速機のギア段は、例えば、多段変速機に設けられたギアポジションセンサによって検出される。ギアポジションセンサは、多段変速機のニュートラルを含む現在のギア段を検出して、制御装置に信号として送信する。
【0041】
制御装置は、エンジンの燃焼動作を制御する。また、制御装置は、例えば、始動発電機の駆動及び発電動作を制御する。制御装置は、例えば互いに離れた位置に構築された複数の制御ブロックで構成されてもよく、また、一体に設けられた複数の制御ブロックで構成されていてもよい。制御装置は、プログラムを実行するプロセッサを有していてもよく、また、プロセッサを有しない電子回路でもよい。
【0042】
アイドリングストップ機能は、所定のアイドリングストップ条件を満たすことによりエンジンを停止する機能である。所定のアイドリングストップ条件は、エンジンキーをOFFにすること以外の条件から選択される。
【0043】
MT型鞍乗型車両の走行中の状態は、MT型鞍乗型車両が停止していない状態又は実質的に停止していない状態のことである。MT型鞍乗型車両が停止している状態は、MT型鞍乗型車両の速度が0の状態である。MT型鞍乗型車両が実質的に停止している状態は、MT型鞍乗型車両の速度が0に近い状態である。MT型鞍乗型車両が停止している状態又は実質的に停止している状態は、例えば、車速センサによる速度の検出がされにくい状態である。車速センサにより速度が検出されない状態は、検出精度を考慮すると、例えば、MT型鞍乗型車両の速度が5km/h以下の状態である。即ち、MT型鞍乗型車両の走行中とは、MT型鞍乗型車両の速度が5km/hよりも速い速度で走行している状態である。
【0044】
同歩可能車速範囲は、5km/hから、ニュートラル状態から少なくとも2回以内のシーケンシャル式多段変速機の変速操作により到達するギア段のアイドリング速度までの区間に相当する範囲である。ただし、同歩可能車速範囲は、特に限られず、5km/hから、ニュートラル状態から少なくとも2回以内のシーケンシャル式多段変速機の変速操作により到達するギア段のアイドリング速度までの区間に相当する範囲よりも狭い範囲でもよい。「ニュートラル状態から2回以内のシーケンシャル式多段変速装置の変速操作により到達するギア段」は、例えばボトムニュートラルタイプであれば、1~2速であり、リターンタイプであれば1~3速である。「(K速)のギア段のアイドリング速度(Kは自然数)」は、アイドリング時におけるエンジンの回転速度及び多段変速装置におけるK速のギア段の変速比に対応するMT型鞍乗型車両の速度である。例えば、クラッチが接続されアクセルグリップにおける開度が0である場合に、MT型鞍乗型車両の速度が定常状態となった場合の車速である。
例えば「K速アイドリング速度」は、アイドリング時におけるエンジンの回転速度及び多段変速機におけるK速の変速比に対応するMT型鞍乗型車両の速度である。但し、「K速アイドリング速度」は、これに限られず、例えば、アイドリング時におけるエンジンの回転速度及び多段変速機におけるK速の変速比に対応するMT型鞍乗型車両の速度、又はK速での実際の走行速度のいずれか遅い方であってもよい。
K速での実際の走行速度は、例えば、クラッチが接続されアクセルグリップにおける開度が0である場合に、MT型鞍乗型車両の速度が定常状態となった場合の走行速度である。また、例えば1速での実際の走行速度は、MT型鞍乗型車両が停止状態から発進後の加速状態の速度ではない。
【0045】
エンジンのアイドリングとは、例えばクラッチを切断している場合のようにエンジンからの動力が駆動輪に伝達されていない状態で、アクセルグリップにおける開度が0である場合のエンジンの動作である。アイドリング時におけるエンジンの回転速度とは、アイドリング時におけるエンジンのクランク軸の回転速度である。なお、暖機運転時と非暖機運転時とでアイドリング時の回転速度が異なる車両において、「アイドリング時におけるエンジンの回転速度」とは、非暖機運転時における回転速度をいう。
変速比は、エンジンの回転速度とMT型鞍乗型車両の速度との比を表す。変速比は、多段変速機の各変速段(1速、2速、…)に対応して設定される。但し、変速比は、エンジンの回転速度とMT型鞍乗型車両の速度との比そのものでなくともよく、例えば上記比に対し定数を乗じた値でもよい。例えば、変速比は、多段変速機の入力軸の回転速度と出力軸の回転速度の比でもよい。この場合、多段変速機の比に対し定数を乗じることで、エンジンの回転速度に対するMT型鞍乗型車両の走行の速度が得られる。例えば、「アイドリング時におけるエンジンの回転速度及び多段変速機におけるN速の変速比に対応するMT型鞍乗型車両の速度」とは、例えば、上述したアイドリング時の回転速度に、変速段毎に設定された比及び定数を乗じた値である。
【0046】
アイドリング時におけるエンジンの回転速度及び多段変速機における1速の変速比に対応するMT型鞍乗型車両の速度は、MT型鞍乗型車両の種類に応じて異なる。アイドリング時におけるエンジンの回転速度及び多段変速機における1速の変速比に対応する速度は、例えば、5km/hよりも大きい速度である。また、アクセルグリップにおける開度が0である場合1速での実際の走行速度は、例えば、5km/hよりも大きい速度である。例えば、MT型鞍乗型車両に一般的に備えられる速度検出器は、停止状態と極低速状態を区別することが容易でない。5km/h以下の速度は、MT型鞍乗型車両における走行中の速度に該当しない。
アイドリング時におけるエンジンの回転速度及び多段変速機における2速の変速比に対応するMT型鞍乗型車両の速度は、MT型鞍乗型車両の種類に応じて異なる。アイドリング時におけるエンジンの回転速度及び多段変速機における2速の変速比に対応する速度は、例えば、18km/hよりも小さい速度である。
【0047】
エンジンの燃焼動作を停止する条件として、条件(a)~(c)に加え、他の条件が設定されているMT型鞍乗型車両も、本発明のMT型鞍乗型車両に該当する。即ち、条件(a)~(c)に加え、他の条件も成立した場合に、エンジンの燃焼動作を停止してもよい。条件(d)は、当該他の条件の一例である。当該他の条件は、この例に限定されない。
【発明の効果】
【0048】
本発明によれば、アイドリングストップの適用範囲を拡大しつつ、エンジン再始動時の操作を簡潔にするMT型鞍乗型車両を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るMT型鞍乗型車両の構成を示す図である。
【
図2】第1実施形態のMT型鞍乗型車両の適用例に係るエンジン、始動発電機及びシーケンシャル式多段変速機の構成を示す図である。
【
図3】本発明の第2実施形態に係るMT型鞍乗型車両の制御装置の動作を示す図である。
【
図4】本発明の第3実施形態に係るMT型鞍乗型車両の制御装置の動作を示す図である。
【
図5】本発明の第4実施形態に係るMT型鞍乗型車両の制御装置の動作を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
以下、本発明を、図面を参照しつつ説明する。
【0051】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態に係るMT型鞍乗型車両1の構成を示す図である。ここで、
図1(a)は、MT型鞍乗型車両1の構成を簡略化して示す側面図である。
図1(b)は、MT型鞍乗型車両1の制御装置41の動作を示すフローチャートである。
本明細書及び図面で、Fは、MT型鞍乗型車両1における前方を示す。Bは、MT型鞍乗型車両1における後方を示す。FBは、MT型鞍乗型車両1における前後方向を示す。Uは、MT型鞍乗型車両1における上方を示す。Dは、MT型鞍乗型車両1における下方を示す。UDは、MT型鞍乗型車両1における上下方向を示す。
【0052】
MT型鞍乗型車両1は、エンジン10と、駆動輪15と、シーケンシャル式多段変速機30と、クラッチレバー36と、クラッチ35と、制御装置41とを備える。
エンジン10は、クランク軸11を有し、燃焼により生じる動力を、回転するクランク軸11を介して出力する。
駆動輪15は、エンジン10から出力される動力を受け、MT型鞍乗型車両1を駆動する。
シーケンシャル式多段変速機30は、運転者の操作に応じて、エンジン10と駆動輪15の間の変速比を、ニュートラル状態を含む多段階に、運転者の操作を受ける毎に順に遷移するように変更する。
クラッチレバー36は、運転者の接続操作又は切断操作を受ける。
クラッチ35は、エンジン10とシーケンシャル式多段変速機30の間の動力伝達経路25上に設けられる。クラッチ35は、運転者によるクラッチレバー36への接続操作又は切断操作に応じて、エンジン10とシーケンシャル式多段変速機30の間での動力伝達又はその遮断を行う。
制御装置41は、エンジン10の始動及び燃焼を制御する。
【0053】
制御装置41は、下記(a)から(c)のすべての条件を満たした場合に(ステップS101~S103)、エンジン10の燃焼動作の停止をする(ステップS104)ように構成される。制御装置41は、燃焼動作の停止(ステップS104)の後に、運転者によるクラッチレバー36の切断操作を検出した場合に(ステップS105)、MT型鞍乗型車両1が停止しているか否かに関わらずエンジン10を始動させる(ステップS106)ように構成される。ここで、(a)から(c)の条件は、
(a)MT型鞍乗型車両1が、同歩可能車速範囲の速度で走行中であること(ステップS101でYes)、
(b)シーケンシャル式多段変速機30がニュートラル状態であること(ステップS102でYes)、及び
(c)運転者のクラッチレバー36への接続操作に応じて、クラッチ35が動力伝達経路25を接続すること(ステップS103でYes)、
である。
同歩可能車速範囲は、5km/hから、ニュートラル状態から少なくとも2回以内のシーケンシャル式多段変速機の変速操作により到達するギア段のアイドリング速度までの区間の少なくとも一部に相当するように設定される。
【0054】
本実施形態のMT型鞍乗型車両1は、アイドリングストップによるエンジン停止の条件として、上記条件(b)及び(c)を設定している。上記条件(b)及び(c)は、運転者の停止の意思の表れと言える。従って、MT型鞍乗型車両1は、上記条件(b)及び(c)により、運転者の停止の意思を確認しているといえる。また、MT型鞍乗型車両1は、上記条件(a)により、MT型鞍乗型車両1が走行中であることをアイドリングストップのエンジン停止の条件としている。従って、MT型鞍乗型車両1は、アイドリングストップを適用する範囲を走行中にも広げている。
【0055】
シーケンシャル式多段変速機30では、例えば、ニュートラル状態から4速に変速する場合、リターンタイプのシーケンシャル式多段変速機は、3回の変速操作を要し、ボトムニュートラルのシーケンシャル式多段変速機は、4回の変速操作を要する。
【0056】
MT型鞍乗型車両1では、MT型鞍乗型車両1が同歩可能車速範囲の速度で走行中であることが、アイドリングストップによるエンジン停止を行う条件の1つとして、設定されている。これにより、MT型鞍乗型車両1では、走行中、シーケンシャル式多段変速機30のギア段がニュートラルでエンジン10が停止している状態で加速が求められる場合であっても、クラッチ35の接続の前のシーケンシャル式多段変速機30の操作を簡潔にできる。この時、MT型鞍乗型車両1の運転者は、クラッチ35の接続までのシーケンシャル式多段変速機30の操作を、2回以内の変速操作で行うことができ、素早く加速操作に移行することができるからである。これにより、シーケンシャル式多段変速機30を有するMT型鞍乗型車両1のアイドリングストップの適用範囲を拡大しつつ、エンジン再始動時の操作を簡潔にすることができる。
【0057】
[適用例]
MT型鞍乗型車両1の適用例について説明する。本適用例において、MT型鞍乗型車両は、以下のように構成することができる。ここで、
図2は、MT型鞍乗型車両1の適用例に係るエンジン10、始動発電機20及びシーケンシャル式多段変速機30の構成を示す図である。
図2(a)は、MT型鞍乗型車両1のエンジン10、始動発電機20、及びシーケンシャル式多段変速機30の左側面図である。
図2(b)は、
図2(a)のX-X′における断面図である。
図2(c)は、始動発電機20の断面図である。
【0058】
MT型鞍乗型車両1は、始動発電機20を備える。始動発電機20は、クランク軸11との間でクラッチ35を介さず動力が伝達されるようにクランク軸11に接続される。始動発電機20は、エンジン10の始動時にクランク軸11を駆動することでエンジン10を始動させ、エンジン10の燃焼動作時にクランク軸に駆動され発電する。
【0059】
本適用例のMT型鞍乗型車両1は、エンジン10の始動時にクランク軸11を駆動することでエンジン10を始動させ、エンジン10の燃焼動作時にクランク軸11に駆動され発電する始動発電機20を備える。これにより、本適用例では、始動専用のスタータモータを排除することができ、車体が大型化するのを抑制できる。従って、本適用例によれば、シーケンシャル式多段変速機30を有するMT型鞍乗型車両1のアイドリングストップの適用範囲を拡大しつつ車体の大型化を抑制し、エンジン再始動時の操作を簡潔にすることができる。
【0060】
MT型鞍乗型車両の始動発電機20は、クランク軸11を収容するエンジン10のクランクケース17内にエンジンオイル18で潤滑されるよう設けられる。
【0061】
本適用例のMT型鞍乗型車両1において、始動発電機20は、クランク軸11を収容するエンジン10のクランクケース17内にエンジンオイル18で潤滑されるよう設けられている。このため、MT型鞍乗型車両1は、始動発電機20に対する冷却用のファンやフィンの取付けを省略することができる。また、本適用例では、始動発電機20の配置空間とクランク軸11の配置空間とを仕切るための壁を省略することができる。始動発電機20は、エンジン10の始動時にクランク軸11を駆動する機能のため、発電専用の発電機と比べて大型化しやすい。しかし、本適用例によれば、発電機とエンジンを含むユニットの大型化が抑制される。従って、本適用例のMT型鞍乗型車両1によれば、シーケンシャル式多段変速機30を有するMT型鞍乗型車両1のアイドリングストップの適用範囲を拡大しつつ車体の大型化を抑制し、エンジン再始動時の操作を簡潔にすることができる。
【0062】
また、MT型鞍乗型車両1の始動発電機20は、ステータ22と、ロータ23とを有する。ステータ22は、スロット221と周方向で交互に設けられた複数の歯部222とを備えるステータコア223、及び歯部222に巻回される複数相の巻線224を有する。ステータ22は、エンジン10に対し位置が固定される。ロータ23は、ステータ22と空隙を空けて周方向に並び且つスロット221の数の2/3より多い磁極部232を有する。磁極部232は、永久磁石231により構成される。ロータ23は、クランク軸11の回転と連動するようにクランク軸11に設けられる。
【0063】
本適用例のMT型鞍乗型車両1によれば、磁極部232で形成される極対を歯部222が通過する電気角周期に基づく角速度が、例えばスロット221の数の2/3と等しい又はそれより少ない磁極部232を有する構成の場合と比べて大きい。このため、巻線224のインピーダンスは、例えばスロット221の数の2/3と等しい又はそれより少ない磁極部232を有する構成の場合と比べて大きい。このため、エンジン10が再始動した後、始動発電機20が発電機として機能する回転速度の領域において、より大きな巻線224のインピーダンスによって発電電流が抑制される。従って、発電時においてスイッチング素子への供給電流が抑制される。このため、本適用例によれば、制御装置41における放熱のための構造をより簡潔にして小型化することができる。従って、本適用例によれば、シーケンシャル式多段変速機30を有するMT型鞍乗型車両1のアイドリングストップの適用範囲を拡大しつつ車体の大型化を抑制し、エンジン再始動時の操作を簡潔にすることができる。
【0064】
また、エンジン10は、クラッチレバー36の切断操作に基づいてエンジン10が再始動する時にロータ23の位置の検出を表す信号を制御装置41に出力する、ステータ22の巻線224とは異なる検出巻線を有するロータ位置検出装置24を更に備える。
【0065】
本適用例のMT型鞍乗型車両1によれば、ロータ位置検出装置24は検出巻線によってロータ23の位置の検出を表す信号を出力する。このため、ロータ位置検出装置24は、例えばホール素子と比べて高い温度で動作できる。従って、始動発電機20とエンジン10を含むユニットにおける断熱のための構造を簡潔にして小型化することができる。従って、本適用例によれば、シーケンシャル式多段変速機30を有するMT型鞍乗型車両1のアイドリングストップの適用範囲を拡大しつつ車体の大型化を抑制し、エンジン再始動時の操作を簡潔にすることができる。
【0066】
[変形例]
本実施形態のMT型鞍乗型車両1は、更に、以下のように構成してもよい。例えば、制御装置41は、第1実施形態で説明した(a)から(c)の条件(ステップS101~S103)に加え、更に下記(d)の条件を満たした場合に、エンジン10の燃焼動作を停止する(ステップS104)ように構成してもよい。ここで、条件(d)は、スロットル弁12が実質的に最小開度の状態である。スロットル弁12は、運転者の操作に応じてエンジン10に送る混合気の量を調整する。
【0067】
(a)から(d)の条件が充足する場合、運転者がMT型鞍乗型車両1を停止させる予定である可能性が更に高い。スロットル弁12が実質的に最小開度であることも条件に含まれることにより、燃焼動作の停止が車両の停止に関連して実施される可能性がより高い。つまり、MT型鞍乗型車両1の運転者がMT型鞍乗型車両1の停止を行う可能性が高い場合に、エンジン10の燃焼動作の停止を行うことができる。
【0068】
本実施形態のMT型鞍乗型車両1は、制御装置41を、運転者の操作により、クラッチ35が、動力伝達経路25を接続してから感応基準時間Tが経過した場合に、エンジン10の燃焼動作を停止する様に構成してもよい。感応基準時間Tは、ゼロよりも大きい時間である。感応基準時間Tは、例えば予め設定された時間である。但し、感応基準時間Tは、MT型鞍乗型車両1の各部の状態又は車速に応じて設定されてもよい。
【0069】
MT型鞍乗型車両1の運転者は、例えば停止する予定がない時に、シーケンシャル式多段変速装置30をニュートラルの状態とし、一時的にクラッチ35を接続の状態にする場合がある。上記変形例によれば、クラッチ35によって動力伝達経路が一旦接続されても、感応基準時間Tが経過する前に、エンジン10の燃焼動作を継続したまま動力伝達経路の切断状態に戻ることができる。これにより、MT型鞍乗型車両1では、クラッチ35を接続状態にする操作の後、感応基準時間Tの経過前に、上記クラッチ35についての操作を戻す操作を行なえば、燃焼動作の停止を阻止できる。このため、エンジン10の再始動の操作を省略できる。
【0070】
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態について説明する。
図3は、本発明の第2実施形態に係るMT型鞍乗型車両2の制御装置42の動作を示す図である。本実施形態では、制御装置42が、
図3に示す動作を行なうように構成される。この他の構成は、第1実施形態と同一であり、
図1に示すMT型鞍乗型車両1と同じ符号を付し、一部の説明を省略する。また、本実施形態の構成及び制御は、第1実施形態に組み合わせてもよい。
【0071】
本実施形態のMT型鞍乗型車両2の制御装置42は、
図3に示すように、MT型鞍乗型車両2が走行中及び停止中双方の状態で(ステップS201)、クラッチレバー36の切断操作を検出した場合に、エンジン10を始動させるように構成される(ステップS105-1、S106-1、S105-2、及びS106-2)。
【0072】
本実施形態のMT型鞍乗型車両2の制御装置42は、走行中及び停止中双方の状態で運転者によるクラッチレバー36の切断操作を検出した場合に、エンジン10を始動させるように構成される。これにより、MT型鞍乗型車両2は、アイドリングストップ状態において、クラッチレバー36の操作のみですぐにエンジン10を始動できる。特にエンジン10が停止している状態で加速が求められた場合であっても、すぐエンジン始動できる。そのため、シーケンシャル式多段変速機30を有するMT型鞍乗型車両2のアイドリングストップの適用範囲を拡大しつつ、エンジン再始動時の操作を簡潔にすることができる。
【0073】
なお、ステップS105-1とS105-2は同一の動作であり、ステップS106-1とS106-2は同一の動作である。このため、
図3に示すステップS201におけるフローの分岐は行わなくてもよい。
【0074】
[第3実施形態]
本発明の第3実施形態について説明する。
図4は、本発明の第3実施形態に係るMT型鞍乗型車両3の制御装置43の動作を示す図である。本実施形態では、制御装置43が、
図4に示す動作を行なうように構成される。この他の構成は、第1実施形態と同一であり、
図1に示すMT型鞍乗型車両1と同じ符号を付し、一部の説明を省略する。また、本実施形態の構成及び制御は、第1実施形態又は第2実施形態に組み合わせてもよい。
【0075】
本実施形態のMT型鞍乗型車両3の制御装置43は、
図4に示すように、シーケンシャル式多段変速機30が非ニュートラル状態の場合は(ステップS301でYes)、エンジン10の燃焼動作を停止しない。
【0076】
本実施形態のMT型鞍乗型車両3の制御装置43は、シーケンシャル式多段変速機30が非ニュートラル状態の場合は、アイドリングストップによるエンジン10の燃焼動作を停止しない。従って、MT型鞍乗型車両3は、アイドリングストップによるエンジン停止を行うための操作を単純化することができる。これにより、MT型鞍乗型車両3は、シーケンシャル式多段変速機30を有するMT型鞍乗型車両3のアイドリングストップの適用範囲を拡大しつつ、エンジン再始動時の操作を簡潔にすることができる。
【0077】
[第4実施形態]
本発明の第4実施形態について説明する。
図5は、本発明の第4実施形態に係るMT型鞍乗型車両4の制御装置44の動作を示す図である。本実施形態では、制御装置44が、
図5に示す動作を行なうように構成される。この他の構成は、第1実施形態と同一であり、
図1に示すMT型鞍乗型車両1と同じ符号を付し、一部の説明を省略する。また、本実施形態の構成及び制御は、第1実施形態から第3実施形態の何れかに組み合わせてもよい。
【0078】
本実施形態のMT型鞍乗型車両4の始動発電機20は、クラッチ35がエンジン10からシーケンシャル式多段変速機30へ動力を伝達する期間の一部でクランク軸11を駆動する(ステップS403)。例えば、
図5に示すように、制御装置44は、エンジン10の始動(ステップS106)後、シーケンシャル式多段変速機30がインギア状態になり(ステップS401でYes)、クラッチ接続が接続された時(ステップS402でYes)に始動発電機20にクランク軸11を駆動させるように制御する(ステップS403)。
【0079】
本実施形態のMT型鞍乗型車両4の始動発電機20は、クラッチ35がエンジン10からシーケンシャル式多段変速機30へ動力を伝達する期間の一部でクランク軸11を駆動する。これにより、MT型鞍乗型車両4では、走行中であってもエンジン再始動時に始動アシストでエンジン回転数を合わせることができるため、滑らかなクラッチ接続を可能とし、操作が煩雑になることを抑制できる。従って、MT型鞍乗型車両4によれば、シーケンシャル式多段変速機30を有するMT型鞍乗型車両のアイドリングストップの適用範囲を拡大しつつ、操作をより簡潔にすることができる。
【0080】
1~4 MT型鞍乗型車両
10 エンジン
11 クランク軸
20 始動発電機
25 動力伝達経路
30 シーケンシャル式多段変速機
35 クラッチ
36 クラッチレバー
41~44 制御装置