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特許7564235レオロジー挙動を高めるための添加剤としてのアリール基含有オルガノポリシロキサンガムの使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】レオロジー挙動を高めるための添加剤としてのアリール基含有オルガノポリシロキサンガムの使用
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/106 20170101AFI20241001BHJP
   C08L 83/05 20060101ALI20241001BHJP
   C08L 83/07 20060101ALI20241001BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20241001BHJP
   B33Y 70/00 20200101ALI20241001BHJP
【FI】
B29C64/106
C08L83/05
C08L83/07
B33Y10/00
B33Y70/00
【請求項の数】 29
(21)【出願番号】P 2022562576
(86)(22)【出願日】2021-04-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-25
(86)【国際出願番号】 US2021027345
(87)【国際公開番号】W WO2021211752
(87)【国際公開日】2021-10-21
【審査請求日】2022-12-13
(31)【優先権主張番号】63/010,510
(32)【優先日】2020-04-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519289224
【氏名又は名称】エルケム・シリコーンズ・ユーエスエイ・コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】ELKEM SILICONES USA CORP.
【住所又は居所原語表記】Two Tower Center Boulevard,Suite 1601,East Brunswick,NJ 08816 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】レミ・ティリア
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル・ヘス
【審査官】小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0100626(US,A1)
【文献】特表2019-504919(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第110128833(CN,A)
【文献】特開昭60-088069(JP,A)
【文献】特開昭56-041252(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 83/00-83/16
B29C 64/106
B33Y 10/00
B33Y 70/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコーンエラストマー物品を付加製造する方法であって、以下のステップ:
1)押出3Dプリンター又は材料噴射3Dプリンターから選択される3Dプリンターを用いて、基板上に第1の付加硬化性液状シリコーン組成物を印刷して、第1の層を形成すること;
2)前記3Dプリンターで、第2の硬化性シリコーン組成物を前記第1の層又は前の層上に印刷して、後続の層を形成すること;
3)任意選択で、必要な追加の層のために、独立して選択された付加硬化性液状シリコーン組成物を用いて、ステップ2)を繰り返すこと;
4)任意選択で加熱することにより、硬化シリコーンエラストマー物品を得るために、前記第1層及び後続の層を架橋させること
を含み;
前記付加硬化性液状シリコーン組成物の少なくとも1つの層は、付加硬化性液状シリコーン組成物Xであり、前記硬化性シリコーン組成物Xは:
(A)1分子当たり少なくとも2つのケイ素結合C2~C20アルケニル基を有する、少なくとも1つのオルガノポリシロキサンA;
(B)1分子当たり少なくとも2つのケイ素結合水素原子を含有する少なくとも1つの有機ケイ素架橋剤B;
(C)25℃で200~900の稠度を有する少なくとも1つのオルガノポリシロキサンガムCであって、1分子当たり少なくとも1つのケイ素結合C2~C20アルケニル基及び1分子当たり少なくとも1つのケイ素結合C6~C12アリール基を含有する、少なくとも1つのオルガノポリシロキサンガムC;
(D)少なくとも1つの付加反応触媒D;
(E)少なくとも1つの充填剤E;
(F)任意選択で、少なくとも1つのジオルガノハイドロジェンシロキシ末端ジオルガノポリシロキサン連鎖延長剤F;
(G)任意選択で、少なくとも1つの硬化速度調整剤G;
(H)任意選択で、少なくとも1つのシリコーン樹脂H;及び
(I)任意選択で、少なくとも1つの添加剤I
を含む、方法。
【請求項2】
1分子当たり少なくとも2つのケイ素結合C2~C20アルケニル基を有する、前記少なくとも1つのオルガノポリシロキサンAは、以下の式(1)である、請求項1に記載の方法:
【化1】
式中、
-nは1~1000の範囲の整数であり、
-Rは独立して、C1~C20アルキル基、又はC6~C12アリール基、又はC2~C20アルケニル基から選択され、
-R’は独立して、C2~C20アルケニル基から選択され、
-R”は、C1~C20アルキル基、又はC6~C12アリール基から独立して選択される。
【請求項3】
1分子当たり少なくとも2つのケイ素結合C2~C20アルケニル基を有する、前記少なくとも1つのオルガノポリシロキサンAは、以下の式(1)である、請求項1又は2に記載の方法:
【化2】
式中、
-nは1~1000の範囲の整数であり、
-Rはメチル基であり、
-R’がビニル基であり、
-R”はメチル基である。
【請求項4】
1分子当たり少なくとも2つのケイ素結合水素原子を含有する、前記少なくとも1つの有機ケイ素架橋剤Bは、
(i)同一又は異なる式(XL-1)の少なくとも2つのシロキシ単位:
(H)(Z)eSiO(3-e)/2 (XL-1)
式中、
-記号Hは水素原子を表し、
-記号Zは、1~8個の炭素原子を含むアルキルを表し、
-記号eは、0、1、又は2に等しい;及び
(ii)少なくとも1つの式(XL-2)のシロキシ単位:
(Z)gSiO(4-g)/2 (XL-2)
式中、
-記号Zは、炭素原子数1~8のアルキル基、又はC6~C12アリール基を表し、
-記号gは、0、1、2、又は3に等しい;
を含み、
XL-1とXL-2のZは同じでも異なっていてもよい、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも1つの有機ケイ素架橋剤Bは、3~60個の式(XL-1)のシロキシ単位、及び1~250個の式(XL-2)のシロキシ単位を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
1分子当たり少なくとも1つのケイ素結合C2~C20アルケニル基及び1分子当たり少なくとも1つのケイ素結合C6~C12アリール基を含有する、前記少なくとも1つのオルガノポリシロキサンガムCが以下を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法:
・式(A-3)の少なくとも1つのシロキシ単位:
(Alk)(R)hSiO(3-h)/2 (A-3)
式中、記号「Alk」は、C2~C20アルケニル基を表し、記号Rは、C1~C20アルキル、又はC6~C12アリール基を表し、各場合において「Alk」及びRは同じでも異なっていてもよく、
h=1又は2である;
・式(A-4)の少なくとも1つのシロキシ単位:
(Ar)k(R1hSiO(4-h-k)/2 (A-4)
式中、記号「Ar」は、C6~C12アリール基(任意選択でC2~C20アルキレン基によって置換される)、又はC1~C20アラルキル(任意選択でC2~C20アルキレン基によって置換される)、又はナフチル基(任意選択でC1~C20アルキル基及び/又はC2~C20アルキレン基で置換される)、又はアントラセニル基(任意選択でC1~C20アルキル基及び/又はC2~C20アルキレン基で置換される)を表し、記号R1は、C1~C20アルキル基、又はC2~C20アルケニル基を表し、各場合において「Ar」及びR1は同じでも異なっていてもよく、
h=0、1又は2であり、
k=1又は2、かつh+k=1、2、又は3である;
・式(A-2)の他のシロキシ単位:
(L)gSiO(4-g)/2 (A-2)
式中、記号LはC1~C20のアルキル基を表し、記号gは0、1、2、又は3に等しく、各場合においてLは同じでも異なっていてもよい。
【請求項7】
1分子当たり少なくとも1つのケイ素結合C2~C20アルケニル基及び1分子当たり少なくとも1つのケイ素結合C6~C12アリール基を含有する、前記少なくとも1つのオルガノポリシロキサンガムCが以下を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法:
・式(A-3)の少なくとも1つのシロキシ単位:
(Alk)(R)hSiO(3-h)/2 (A-3)
式中、記号「Alk」はビニル基を表し、記号RはC1~C20アルキル基を表し、各場合において「Alk」及びRは同じでも異なっていてもよく、
h=1又は2である;
・式(A-4)の少なくとも1つのシロキシ単位:
(Ar)k(R1hSiO(4-h-k)/2 (A-4)
式中、記号「Ar」はフェニル基を表し、記号R1は、C1~C20アルキル基、又はC2~C20アルケニル基を表し、各場合において「Ar」及びR1は同じでも異なっていてもよく、
h=0又は1であり、
k=2である;
・式(A-2)の他のシロキシ単位:
(L)gSiO(4-g)/2 (A-2)
式中、記号LはC1~C20のアルキル基を表し、記号gは0、1、2、又は3に等しく、各場合においてLは同じでも異なっていてもよい。
【請求項8】
1分子当たり少なくとも1つのケイ素結合C2~C20アルケニル基及び1分子当たり少なくとも1つのケイ素結合C6~C12アリール基を含有する、前記少なくとも1つのオルガノポリシロキサンガムCは、ジフェニルシロキサン-ジメチルシロキサン-ビニルメチルシロキサン共重合体ガムである、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
1分子当たり少なくとも1つのケイ素結合C2~C20アルケニル基及び1分子当たり少なくとも1つのケイ素結合C6~C12アリール基を含有する、前記少なくとも1つのオルガノポリシロキサンガムCは、ビニル末端を有する、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
1分子当たり少なくとも1つのケイ素結合C2~C20アルケニル基及び1分子当たり少なくとも1つのケイ素結合C6~C12アリール基を含有する、前記少なくとも1つのオルガノポリシロキサンガムCは、30モル%未満のアリール基を含有する、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
1分子当たり少なくとも1つのケイ素結合C2~C20アルケニル基及び1分子当たり少なくとも1つのケイ素結合C6~C12アリール基を含有する、前記少なくとも1つのオルガノポリシロキサンガムCは、約10モル%~約20モル%のアリール基を含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記触媒Dは、白金族金属含有触媒である、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記少なくとも1つの充填剤Eは、アルケニル基を有する前記少なくとも1つのオルガノポリシロキサンAの少なくとも一部の存在下で、少なくとも1つの相溶化剤を使用して処理されたヒュームドシリカである、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記3Dプリンターは押出3Dプリンターである、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
シリコーンエラストマー物品を付加製造するための付加硬化型液状シリコーン組成物Xであって、以下を含む、付加硬化型液状シリコーン組成物X:
(A)1分子当たり少なくとも2つのケイ素結合C2~C20アルケニル基を有する、少なくとも1つのオルガノポリシロキサンA;
(B)1分子当たり少なくとも2つのケイ素結合水素原子を含有する、少なくとも1つの有機ケイ素架橋剤B;
(C)25℃で200~900の稠度を有する少なくとも1つのオルガノポリシロキサンガムCであって、1分子当たり少なくとも1つのケイ素結合C2~C20アルケニル基及び1分子当たり少なくとも1つのケイ素結合C6~C12アリール基を含有する、少なくとも1つのオルガノポリシロキサンガムC;
(D)少なくとも1つの付加反応触媒D;
(E)少なくとも1つの充填剤E;
(F)任意選択で、少なくとも1つのジオルガノハイドロジェンシロキシ末端ジオルガノポリシロキサン連鎖延長剤F;
(G)任意選択で、少なくとも1つの硬化速度調整剤G;
(H)任意選択で、少なくとも1つのシリコーン樹脂H;及び
(I)任意選択で、少なくとも1つの添加剤I。
【請求項16】
1分子当たり少なくとも2つのケイ素結合C2~C20アルケニル基を有する、前記少なくとも1つのオルガノポリシロキサンAは、以下の式(1)である、請求項15に記載の付加硬化型液状シリコーン組成物X:
【化3】
式中、
-nは1~1000の範囲の整数であり、
-Rは独立して、C1~C20アルキル基、又はC6~C12アリール基、又はC2~C20アルケニル基から選択され、
-R’は独立して、C2~C20アルケニル基から選択され、
-R”は独立して、C1~C20アルキル基、又はC6~C12アリール基から選択される。
【請求項17】
1分子当たり少なくとも2つのケイ素結合C2~C20アルケニル基を有する、前記少なくとも1つのオルガノポリシロキサンAは、以下の式(1)である、請求項15又は16に記載の付加硬化型液状シリコーン組成物X:
【化4】
式中、
-nは1~1000の範囲の整数であり、
-Rはメチル基であり、
-R’がビニル基であり、
-R”はメチル基である。
【請求項18】
1分子当たり少なくとも2つのケイ素結合水素原子を含有する、前記少なくとも1つの有機ケイ素架橋剤Bは、
(i)同一又は異なる式(XL-1)の少なくとも2つのシロキシ単位:
(H)(Z)eSiO(3-e)/2 (XL-1)
式中、
-記号Hは水素原子を表し、
-記号Zは、1~8個の炭素原子を含むアルキルを表し、
-記号eは、0、1、又は2に等しい;及び
(ii)少なくとも1つの式(XL-2)のシロキシ単位:
(Z)gSiO(4-g)/2 (XL-2)
式中、
-記号Zは、炭素原子数1~8のアルキル基、又はC6~C12アリール基を表し、
-記号gは、0、1、2、又は3に等しい;
を含み、
XL-1とXL-2のZは同じでも異なっていてもよい、請求項1517のいずれか1項に記載の付加硬化型液状シリコーン組成物X。
【請求項19】
前記少なくとも1つの有機ケイ素架橋剤Bは、3~60個の式(XL-1)のシロキシ単位、及び1~250個の式(XL-2)のシロキシ単位を含む、請求項18に記載の付加硬化型液状シリコーン組成物X。
【請求項20】
1分子当たり少なくとも1つのケイ素結合C2~C20アルケニル基及び1分子当たり少なくとも1つのケイ素結合C6~C12アリール基を含有する、前記少なくとも1つのオルガノポリシロキサンガムCが以下を含む、請求項1519のいずれか1項に記載の付加硬化型液状シリコーン組成物X:
・式(A-3)の少なくとも1つのシロキシ単位:
(Alk)(R)hSiO(3-h)/2 (A-3)
式中、記号「Alk」は、C2~C20アルケニル基を表し、記号Rは、C1~C20アルキル基、又はC6~C12アリール基を表し、各場合において「Alk」及びRは同じでも異なっていてもよく、
h=1又は2である;
・式(A-4)の少なくとも1つのシロキシ単位:
(Ar)k(R1hSiO(4-h-k)/2 (A-4)
式中、記号「Ar」は、C6~C12アリール基(任意選択でC2~C20アルキレン基によって置換される)、又はC1~C20アラルキル(任意選択でC2~C20アルキレン基によって置換される)、又はナフチル基(任意選択でC1~C20アルキル基及び/又はC2~C20アルキレン基で置換される)、又はアントラセニル基(任意選択でC1~C20アルキル基及び/又はC2~C20アルキレン基で置換される)を表し、記号R1は、C1~C20アルキル基、又はC2~C20アルケニル基を表し、各場合において「Ar」及びR1は同じでも異なっていてもよく、
h=0、1又は2であり、
k=1又は2、かつh+k=1、2、又は3である;
・式(A-2)の他のシロキシ単位:
(L)gSiO(4-g)/2 (A-2)
式中、記号LはC1~C20のアルキル基を表し、記号gは0、1、2、又は3に等しく、各場合においてLは同じでも異なっていてもよい。
【請求項21】
1分子当たり少なくとも1つのケイ素結合C2~C20アルケニル基及び1分子当たり少なくとも1つのケイ素結合C6~C12アリール基を含有する、前記少なくとも1つのオルガノポリシロキサンガムCが以下を含む、請求項1520のいずれか1項に記載の付加硬化型液状シリコーン組成物X:
・式(A-3)の少なくとも1つのシロキシ単位:
(Alk)(R)hSiO(3-h)/2 (A-3)
式中、記号「Alk」はビニル基を表し、記号RはC1~C20アルキル基又はC6~C12アリール基を表し、各場合において「Alk」及びRは同じでも異なっていてもよく、
h=1又は2である;
・式(A-4)の少なくとも1つのシロキシ単位:
(Ar)k(R1hSiO(4-h-k)/2 (A-4)
式中、記号「Ar」はフェニル基を表し、記号R1は、C1~C20アルキル基、又はC2~C20アルケニル基を表し、各場合において「Ar」及びR1は同じでも異なっていてもよく、
h=0又は1であり、
k=2である;
・式(A-2)の他のシロキシ単位:
(L)gSiO(4-g)/2 (A-2)
式中、記号LはC1~C20のアルキル基を表し、記号gは0、1、2、又は3に等しく、各場合においてLは同じでも異なっていてもよい。
【請求項22】
1分子当たり少なくとも1つのケイ素結合C2~C20アルケニル基及び1分子当たり少なくとも1つのケイ素結合C6~C12アリール基を含有する、前記少なくとも1つのオルガノポリシロキサンガムCは、ジフェニルシロキサン-ジメチルシロキサン-ビニルメチルシロキサン共重合体ガムである、請求項1521のいずれか1項に記載の付加硬化型液状シリコーン組成物X。
【請求項23】
1分子当たり少なくとも1つのケイ素結合C2~C20アルケニル基及び1分子当たり少なくとも1つのケイ素結合C6~C12アリール基を含有する、前記少なくとも1つのオルガノポリシロキサンガムCは、ビニル末端を有する、請求項1522のいずれか1項に記載の付加硬化型液状シリコーン組成物X。
【請求項24】
1分子当たり少なくとも1つのケイ素結合C2~C20アルケニル基及び1分子当たり少なくとも1つのケイ素結合C6~C12アリール基を含有する、前記少なくとも1つのオルガノポリシロキサンガムCは、30モル%未満のアリール基を含有する、請求項1523のいずれか1項に記載の付加硬化型液状シリコーン組成物X。
【請求項25】
1分子当たり少なくとも1つのケイ素結合C2~C20アルケニル基及び1分子当たり少なくとも1つのケイ素結合C6~C12アリール基を含有する、前記少なくとも1つのオルガノポリシロキサンガムCは、約10モル%~約20モル%のアリール基を含む、請求項1524のいずれか1項に記載の付加硬化型液状シリコーン組成物X。
【請求項26】
前記触媒Dは、白金族金属含有触媒である、請求項1525のいずれか1項に記載の付加硬化型液状シリコーン組成物X。
【請求項27】
前記少なくとも1つの充填剤Eは、アルケニル基を有する前記少なくとも1つのオルガノポリシロキサンAの少なくとも一部の存在下で、少なくとも1つの相溶化剤を使用して処理されたヒュームドシリカである、請求項1526のいずれか1項に記載の付加硬化型液状シリコーン組成物X。
【請求項28】
請求項1527のいずれか1項に記載の付加硬化型液状シリコーン組成物Xの3Dプリンターへの使用。
【請求項29】
前記3Dプリンターは、押出3Dプリンター又は材料噴射3Dプリンターから選択される、請求項28に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2020年4月15日に出願された米国仮特許出願第63/010,510号の優先権を主張する、特許協力条約に基づく国際出願であり、その内容を参照により全体として本明細書において援用する。
本発明は、硬化性シリコーン組成物、及び3次元シリコーンエラストマー物品を付加製造する方法におけるそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
付加製造、特に押出印刷用の材料を選択するには、レオロジー特性を考慮する必要がある。これは、これらの特性が押出圧力、押出後の形状保持、及び印刷解像度を決定するためである。粘弾性材料のせん断減粘としてのレオロジー挙動、又はより具体的には降伏応力特性は、3次元(3D)堆積技術をうまく使用するための重要なパラメータであることがよく知られている。したがって、降伏応力が十分に高い値に達すると、印刷された物体の形状は、堆積中及び堆積後だけでなく、印刷後の重合プロセス中にも保持される。
【0003】
せん断減粘特性は押出に特に望ましく、押出に伴う高せん断速度下での粘度の低下と、形状保持のための押出後の粘度の上昇を可能にする。せん断減粘は通常、多くが市販されているレオロジー調整剤を追加することで実現される。
【0004】
シロキサンベースのエラストマー組成物で3D印刷された部品を製造するための付加製造法を提供するために、国際公開第2017/081028号及び国際公開第2017/121733号は、極性基を含み、エポキシ基、ポリエーテル基又はポリエステル基官能性化合物から選択されるレオロジー剤の使用を開示している。カプロラクトン、ヒドロキシカプロン酸、及びポリカーボネートポリオールなどの追加のレオロジー調整剤も言及されている。
【0005】
米国特許第5036131号は、空気に触れるとエラストマーに硬化する、改善された靭性及びチキソトロピック特性を有するシリコーン分散液を開示している。そこで使用されているシリコーン分散液は、末端がヒドロキシルでブロックされたポリジオルガノシロキサン、アルミニウム三水和物、及び水分活性化硬化系に基づいている。コーティングのチキソトロピー性を得るために、未処理のヒュームドシリカと組み合わせて、ヒドロキシル末端ブロック及びフェニル若しくは3,3,3-トリフルオロプロピルラジカルを有するシロキサン(2)をシリコーン分散液に含める必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
3D印刷可能なシリコーンエラストマー組成物の降伏応力と機械的特性の両方を改善する必要性が依然として存在する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは鋭意研究の結果、稠度が200~900であって、アリール基を含有するオルガノポリシロキサンガムをレオロジー調整剤として用いることにより、上記問題を解決できることを見出した。
【0008】
シリコーンエラストマー物品を付加製造する方法が提供され、前記方法は、以下のステップ:
1)押出3Dプリンター又は材料噴射3Dプリンターから選択される3Dプリンターを用いて、基板上に第1の硬化性シリコーン組成物を印刷して、第1の層を形成すること;
2)前記3Dプリンターで、第2の硬化性シリコーン組成物を前記第1の層又は前の層上に印刷して、後続の層を形成すること;
3)任意選択で、必要な追加の層のために、独立して選択された硬化性シリコーン組成物を用いて、ステップ2)を繰り返すこと;
4)任意選択で加熱することにより、硬化シリコーンエラストマー物品を得るために、前記第1層及び後続の層を架橋させること
を含み;
前記硬化性シリコーン組成物の少なくとも1つの層は、硬化性シリコーン組成物Xであり、前記硬化性シリコーン組成物Xは:
(A)付加硬化、縮合硬化又は過酸化物硬化反応によりそれぞれ硬化する有機ケイ素成分を含むシリコーンベース;
(D)それぞれ付加触媒、縮合触媒又は過酸化物硬化化合物である、シリコーンベースを硬化することができる硬化剤;
(C)25℃で200~900の稠度を有する少なくとも1つのオルガノポリシロキサンガムCであって、1分子あたり少なくとも1つのケイ素結合C6~C12アリール基を含有し、以下からなる群から選択される分子当たり少なくとも1つの官能基を含有する、オルガノポリシロキサンガムC:ケイ素結合C2~C20アルケニル基、ケイ素結合水素原子、ケイ素結合ヒドロキシル基、ケイ素結合アルコキシ基、ケイ素結合オキシム基、ケイ素結合アミノ基、ケイ素結合アミド基、ケイ素結合アミノキシ基、ケイ素結合アシルオキシ基、ケイ素結合ケチミノキシ基及びケイ素結合エノキシ基;及び
(E)少なくとも1つの充填剤E
を含む。
【0009】
いくつかの実施形態において、シリコーンエラストマー物品を付加製造する方法が提供され、前記方法において、硬化性シリコーン組成物Xは付加硬化型液状シリコーン組成物Xであり、前記付加硬化型液状シリコーン組成物Xは以下を含む:
(A)1分子当たり少なくとも2つのケイ素結合C2~C20アルケニル基を有する、少なくとも1つのオルガノポリシロキサンA;
(B)1分子当たり少なくとも2つのケイ素結合水素原子を含有する、少なくとも1つの有機ケイ素架橋剤B;
(C)25℃で200~900の稠度を有する少なくとも1つのオルガノポリシロキサンガムCであって、1分子当たり少なくとも1つのケイ素結合C2~C20アルケニル基及び1分子当たり少なくとも1つのケイ素結合C6~C12アリール基を含有する、少なくとも1つのオルガノポリシロキサンガムC;
(D)少なくとも1つの付加反応触媒D;
(E)少なくとも1つの充填剤E;
(F)任意選択で、少なくとも1つのジオルガノハイドロジェンシロキシ末端ジオルガノポリシロキサン連鎖延長剤F;
(G)任意選択で、少なくとも1つの硬化速度調整剤G;
(H)任意選択で、少なくとも1つのシリコーン樹脂H;及び
(I)任意選択で、少なくとも1つの添加剤I。
【0010】
いくつかの実施形態において、3Dプリンターが押出3Dプリンターである、シリコーンエラストマー物品を付加製造する方法が提供される。
【0011】
本発明の方法によって製造されたシリコーンエラストマー物品も提供される。
【0012】
また、シリコーンエラストマー物品を付加製造するための付加硬化性液状シリコーン組成物Xも提供され、前記付加硬化型液状シリコーン組成物Xは以下を含む:
(A)1分子当たり少なくとも2つのケイ素結合C2~C20アルケニル基を有する、少なくとも1つのオルガノポリシロキサンA;
(B)1分子当たり少なくとも2つのケイ素結合水素原子を含有する、少なくとも1つの有機ケイ素架橋剤B;
(C)25℃で200~900の稠度を有する少なくとも1つのオルガノポリシロキサンガムCであって、1分子当たり少なくとも1つのケイ素結合C2~C20アルケニル基及び1分子当たり少なくとも1つのケイ素結合C6~C12アリール基を含有する、少なくとも1つのオルガノポリシロキサンガムC;
(D)少なくとも1つの付加反応触媒D;
(E)少なくとも1つの充填剤E;
(F)任意選択で、少なくとも1つのジオルガノハイドロジェンシロキシ末端ジオルガノポリシロキサン連鎖延長剤F;
(G)任意選択で、少なくとも1つの硬化速度調整剤G;
(H)任意選択で、少なくとも1つのシリコーン樹脂H;及び
(I)任意選択で、少なくとも1つの添加剤I。
【0013】
いくつかの実施形態において、1分子当たり少なくとも2つのケイ素結合C2~C20アルケニル基を有する、前記少なくとも1つのオルガノポリシロキサンAは、以下の式(1)である:
【化1】
式中、
-nは1~1000の範囲の整数であり、
-Rは独立して、メチル、エチル、プロピルなどのC1~C20アルキル基、又はキシリル、トリル、若しくはフェニル基などのC6~C12アリール基、又はビニル、アリル、ヘキセニル、デセニル、若しくはテトラデセニル基などのC2~C20アルケニル基から選択され、好ましくはメチル基であり、
-R’は独立して、ビニル、アリル、ヘキセニル、デセニル、又はテトラデセニル基などのC2~C20アルケニル基から選択され、好ましくはビニル基であり、
-R”は独立して、メチル、エチル、プロピルなどのC1~C20アルキル基、又はキシリル、トリル、若しくはフェニル基などのC6~C12アリール基から独立して選択され、好ましくはメチル基である。
【0014】
いくつかの実施形態において、1分子当たり少なくとも2つのケイ素結合水素原子を含有する、前記少なくとも1つの有機ケイ素架橋剤Bは、
(i)同一又は異なる式(XL-1)の少なくとも2個、好ましくは3~60個のシロキシ単位:
(H)(Z)eSiO(3-e)/2 (XL-1)
式中、
-記号Hは水素原子を表し、
-記号Zは、1~8個の炭素原子を含むアルキルを表し、
-記号eは、0、1、又は2に等しい;及び
(ii)少なくとも1つ、好ましくは1~550個の、より好ましくは1~250個の、式(XL-2)のシロキシ単位:
(Z)gSiO(4-g)/2 (XL-2)
式中、
-記号Zは、炭素原子数1~8のアルキル、又はキシリル、トリル、若しくはフェニル基などのC6~C12アリール基を表し、
-記号gは、0、1、2、又は3に等しい;
を含み、
XL-1とXL-2のZは同じでも異なっていてもよい。
【0015】
いくつかの実施形態において、1分子当たり少なくとも1つのケイ素結合C2~C20アルケニル基及び1分子当たり少なくとも1つのケイ素結合C6~C12アリール基を含有する、前記少なくとも1つのオルガノポリシロキサンガムCは、以下を含む:
・式(A-3)の少なくとも1つのシロキシ単位:
(Alk)(R)hSiO(3-h)/2 (A-3)
式中、記号「Alk」は、ビニル、アリル、ヘキセニル、デセニル、又はテトラデセニル基などのC2~C20アルケニル基を表し、記号Rは、メチル、エチル、プロピル、若しくはなどのC1~C20アルキル、又はキシリル、トリル、若しくはフェニル基などのC6~C12アリール基を表し、各場合において「Alk」及びRは同じでも異なっていてもよく、
h=1又は2である;
・式(A-4)の少なくとも1つのシロキシ単位:
(Ar)k(R1hSiO(4-h-k)/2 (A-4)
式中、記号「Ar」は、C6~C12アリール基(任意選択でキシリル、トリル、キシレン、若しくはフェニル基などのC2~C20アルキレン基によって置換される)、又はC1~C20アラルキル(任意選択でC2~C20アルキレン基によって置換される)、又はナフチル基(任意選択でC1~C20アルキル基及び/又はC2~C20アルキレン基で置換される)、又はアントラセニル基(任意選択でC1~C20アルキル基及び/又はC2~C20アルキレン基で置換される)を表し、好ましくはフェニル基を表し、記号R1は、メチル、エチル、若しくはプロピル基などのC1~C20アルキル基、又はビニル、アリル、ヘキセニル、デセニル、若しくはテトラデセニル基などのC2~C20アルケニル基を表し、各場合において「Ar」及びR1は同じでも異なっていてもよく、
h=0、1又は2であり、
k=1又は2、かつh+k=1、2、又は3である;
・式(A-2)の他のシロキシ単位:
(L)gSiO(4-g)/2 (A-2)
式中、記号Lはメチル、エチル、プロピルなどのC1~C20のアルキル基を表し、記号gは0、1、2、又は3に等しく、各場合においてLは同じでも異なっていてもよい。
【0016】
いくつかの実施形態において、前記少なくとも1つのオルガノポリシロキサンガムCは、ジフェニルシロキサン-ジメチルシロキサン-ビニルメチルシロキサン共重合体ガムである。
【0017】
いくつかの実施形態において、前記少なくとも1つのオルガノポリシロキサンガムCはビニル末端を有する。
【0018】
いくつかの実施形態において、前記少なくとも1つのオルガノポリシロキサンガムCは、30モル%未満のアリール基を含む。例えば、前記少なくとも1つのオルガノポリシロキサンガムCは、約10モル%~約20モル%のアリール基を含み得る。
【0019】
いくつかの実施形態において、前記触媒Dは白金族金属含有触媒である。
【0020】
いくつかの実施形態では、前記少なくとも1つの充填剤Eは、アルケニル基を有する前記少なくとも1つのオルガノポリシロキサンAの少なくとも一部の存在下で、少なくとも1つの相溶化剤を使用して処理されたヒュームドシリカである。
【0021】
押出3Dプリンター又は材料噴射3Dプリンターなどの3Dプリンターでの付加硬化性液状シリコーン組成物Xの使用も提供される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1A~1Fは、3D印刷されたシリコーンエラストマーの代表的な写真を提供する。図1Aは、オルガノポリシロキサンガムを含まない、3D印刷された比較用シリコーンエラストマーの写真である。図1B~1Fは、硬化性液体シリコーン組成物中のアリール基含有オルガノポリシロキサンガムの量を減らすことによる3D印刷適性の影響を示す。図1B~1Fは、20%(図1B)、15%(図1C)、10%(図1D)、5%(図1E)、及び0%(図1F)のアリール基含有オルガノポリシロキサンガムを含む、3D印刷されたシリコーンエラストマーの写真である。
図2図2は、様々なオルガノポリシロキサンガムを含有する付加硬化性液状シリコーン組成物のレオロジー特性を表すグラフを示す。
図3図3は、様々な濃度のアリール含有オルガノポリシロキサンガムを含有する付加硬化性液状シリコーン組成物のレオロジー特性を表すグラフを示す。
図4図4は、様々なタイプのアリール含有オルガノポリシロキサンを含有する付加硬化性液状シリコーン組成物のレオロジー特性を表すグラフを示す。
図5図5A~5Cは、3D印刷されたシリコーンエラストマーの代表的な写真を提供する。図5Aは、アリール基含有低粘度オルガノポリシロキサンオイルを含む、3D印刷された比較用シリコーンエラストマーの写真である。図5B及び5Cは、アリール基含有オルガノポリシロキサンガムを含む、例示的な3D印刷されたシリコーンエラストマーの写真である。
図6図6A及び6Bは、線形(図6A)及び対数(図6B)スケールの両方でオルガノポリシロキサンガムのチキソトロピック特性を示すグラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本開示をさらに説明する前に、本開示は、以下に説明する本開示の特定の実施形態に限定されないことを理解されたい。特定の実施形態の変形がなされてもよく、それらは依然として添付の特許請求の範囲内にある。使用される用語は、特定の実施形態を説明するためのものであり、限定することを意図していないことも理解されたい。代わりに、本開示の範囲は、添付の特許請求の範囲によって確立される。
【0024】
本明細書及び添付の特許請求の範囲において、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈が明確に別の指示をしない限り、複数の参照を含む。別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者に一般的に理解されるものと同じ意味を有する。
【0025】
本明細書で使用するとき、「シリコーンゴム」という用語は、任意の架橋可能なシリコーン組成物の架橋生成物を含む。「シリコーンゴム」及び「シリコーンエラストマー」という用語は、交換可能に使用することができる。
【0026】
本明細書で使用するとき、「架橋した」及び「硬化した」という用語は互換的に使用することができ、硬化性シリコーン組成物の成分を組み合わせて反応させ、硬化したシリコーンエラストマーをもたらすときに起こる反応を指す。
【0027】
本明細書で使用される「アルケニル」という用語は、少なくとも1つのオレフィン二重結合、より好ましくは単一の二重結合を有する、置換又は非置換の、不飽和の直鎖又は分岐の炭化水素鎖を意味すると理解される。好ましくは、「アルケニル」基は、2~10個の炭素原子、より好ましくは2~6個の炭素原子を有する。この炭化水素鎖は、任意選択で、O、N、Sなどの少なくとも1つのヘテロ原子を含む。「アルケニル」基の好ましい例は、ビニル、アリル及びホモアリル基であり、ビニルが特に好ましい。
【0028】
本明細書で使用される場合、「アルキル」は、好ましくは1~10個の炭素原子、例えば1~8個の炭素原子、より好ましくは1~4個の炭素原子を有する、(例えば、1つ以上のアルキルで)置換可能な、飽和の直鎖状又は分岐の炭化水素鎖を意味する。アルキル基の例は、特にメチル、エチル、イソプロピル、n-プロピル、tert-ブチル、イソブチル、n-ブチル、n-ペンチル、イソアミル及び1,1-ジメチルプロピルである。
【0029】
本明細書で使用される場合、「アリール」は、6~12個の炭素原子を有するアリール基を意味し、炭素数1~30のアルキルで置換されていてもよい。
【0030】
一態様では、本発明は、シリコーンエラストマー物品を付加製造する方法であり、前記方法は、以下のステップ:
以下のステップ:
1)押出3Dプリンター又は材料噴射3Dプリンターから選択される3Dプリンターを用いて、基板上に第1の硬化性シリコーン組成物を印刷して、第1の層を形成すること;
2)前記3Dプリンターで、第2の硬化性シリコーン組成物を前記第1の層又は前の層上に印刷して、後続の層を形成すること;
3)任意選択で、必要な追加の層のために、独立して選択された硬化性シリコーン組成物を用いて、ステップ2)を繰り返すこと;
4)任意選択で加熱することにより、硬化シリコーンエラストマー物品を得るために、前記第1層及び後続の層を架橋させること
を含み;
前記硬化性シリコーン組成物の少なくとも1つの層は、硬化性シリコーン組成物Xであり、前記硬化性シリコーン組成物Xは:
(A)付加硬化、縮合硬化又は過酸化物硬化反応によりそれぞれ硬化する有機ケイ素成分を含むシリコーンベース;
(D)それぞれ付加触媒、縮合触媒又は過酸化物硬化化合物である、シリコーンベースを硬化することができる硬化剤;
(C)25℃で200~900の稠度を有する少なくとも1つのオルガノポリシロキサンガムCであって、1分子あたり少なくとも1つのケイ素結合C6~C12アリール基を含有し、以下からなる群から選択される分子当たり少なくとも1つの官能基を含有する、オルガノポリシロキサンガムC:ケイ素結合C2~C20アルケニル基、ケイ素結合水素原子、ケイ素結合ヒドロキシル基、ケイ素結合アルコキシ基、ケイ素結合オキシム基、ケイ素結合アミノ基、ケイ素結合アミド基、ケイ素結合アミノキシ基、ケイ素結合アシルオキシ基、ケイ素結合ケチミノキシ基及びケイ素結合エノキシ基;
(E)少なくとも1つの充填剤E
を含む。
【0031】
本発明者らは、驚くべきことに、本明細書で定義される硬化性シリコーン組成物Xの使用が、3D印刷部品の製造のための効率的な付加製造法を提供することを見出した。特に、3D印刷用途における本発明の硬化性シリコーン組成物Xの使用は、以下の利点を提供する:
-押出に伴う高せん断速度下での粘度の低下と、形状保持のための押出後の高粘度を可能にすること、
-レオロジーが時間の経過とともに変化しない安定した組成を提供すること(極性添加剤とシリカ表面の間に生成される水素結合によるチキソトロピー効果は蓄積されない)。
-組成物の経過時間に関係なく、入力3Dプロセスパラメータを変更しない能力を提供すること、
-硬化前に室温で層の崩壊や変形なしに、優れた精度でシリコーンエラストマー部品の3D印刷を可能にすること、
-特に高デュロメーター範囲で機械的特性が改善された3Dエラストマー部品が得られること。
【0032】
硬化性シリコーン組成物は当技術分野で周知であり、過酸化物硬化、付加硬化又は縮合硬化反応の3種類の反応によって硬化するシリコーン組成物が含まれる。
【0033】
好ましい実施形態において、オルガノポリシロキサンガムCの官能基の選択は、以下のように行うことができる:
-ケイ素結合C2~C20アルケニル基及びケイ素結合水素原子は、好ましくは、付加硬化によって硬化する組成物のために選択され、
-ケイ素結合C2~C20のアルケニル基は、好ましくは、過酸化物硬化によって硬化する組成物のために選択され、
-ケイ素結合ヒドロキシル基、ケイ素結合アルコキシ基、ケイ素結合オキシム基、ケイ素結合アミノ基、ケイ素結合アミド基、ケイ素結合アミノキシ基、ケイ素結合アシルオキシ基、ケイ素結合ケチミノキシ基及びケイ素結合エノキシ基は、好ましくは、縮合硬化反応によって硬化する組成物のために選択される。
【0034】
硬化性シリコーン組成物は、使用される硬化方法、硬化温度条件、及び硬化性シリコーン組成物の稠度又は粘度に従って、以下に示すように分類される:
・HCR(High Consistency Silicone Rubbers、高稠度シリコーンゴム)は、付加硬化又は過酸化物硬化反応によって成分が硬化する熱硬化性シリコーン組成物(High Temperature Vulcanizing silicone composition(高温加硫シリコーン組成物)の頭字語であるHTV)である。それらは、様々な反応基を含む高分子量高分子を含む反応性シリコーンガムから調製される。
・LSR(Liquid Silicone Rubbers、液状シリコーンゴム)は、付加硬化触媒を使用する熱硬化性シリコーン組成物(又は高温加硫、HTV)であり、2成分系として販売されている。液状シリコーンゴム(LSR)と高稠度ゴム(HCR)の主な違いは、LSR材料の「流動性」又は「液体」の性質である。
・RTV(Room Temperature Vulcanizing、室温加硫)は、付加硬化触媒又は縮合硬化触媒のいずれかを使用する硬化性シリコーン組成物である。それらは、縮合硬化触媒を使用する場合の室温から、付加硬化触媒を使用する場合の最高200℃まで硬化する単一又は2成分系として販売されている。
【0035】
過酸化物硬化によって硬化する硬化性組成物は、、高温で分解する有機過酸化物を使用してアルケニル(ビニルなど)又はアルキル基を含むシリコーンポリマーと反応する高ペルオキソ反応性のラジカルを形成することで達成される。硬化に使用される有機過酸化物は、アルケニル基特異的過酸化物(I)とアルケニル基非特異的過酸化物(II)に分類される。第1のクラスは、アルケニル基を持たないポリジメチルシロキサン(PDMS)を架橋できないが、第2のクラスは、あらゆるタイプのPDMSを架橋できる。次のグループの過酸化物が利用可能である:
・アルケニル基特異的過酸化物:ジアロイルペルオキシド、
・アルケニル基非特異的過酸化物:過酸化ジアルキル、過酸化ジアラルキル)、過酸化アルキルアロイル及び過酸化アルキルアリール、又は異なる基の混合物。
有用な過酸化物は、ジ(2,4-ジクロロベンゾイル)ペルオキシド(ジアロイルペルオキシドのグループに属する)。ジクミルペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ-t-ブチルペルオキシヘキサン及びビス(ジクロロベンゾイル)ペルオキシドである。
【0036】
縮合硬化反応により硬化する硬化性組成物とは、硬化性シリコーン組成物として参照される。ここで、水分の存在下で、シロキサンポリマー又はシランのシラノール基(Si-OH)及び/又は加水分解可能なSi-X基(Xは加水分解可能な基)の間の反応によって硬化が達成され、これはシロキサン(Si-O-Si)結合と水素ガス又は水の形成につながる。通常、縮合硬化シリコーン系は、有機スズ化合物及び/又はチタン酸塩で硬化される。亜鉛、ジルコニウム、アルミニウム、又はグアニジン誘導体などのアミンに基づく触媒など、他の触媒を挙げることもある。古典的に、これらの製剤は、ヒドロキシル末端シリコーン油、例えばα,ω-(ヒドロキシジメチルシリル)-ポリジメチルシロキサン(任意選択で、加水分解性及び縮合性末端を有するようにシランで事前に官能化されたもの)、架橋剤、重縮合触媒、古典的にはスズ塩又はチタン酸アルキル、並びに目的の最終用途に応じて任意に様々な充填剤及び添加剤を含有する。
【0037】
これらのシリコーン組成物は、周囲温度(地域によって5°~30℃の間で変化し得る)で重合及び/又は架橋によって硬化し、当業者によく知られているように、2つの別個のグループに分類される:
・「単一成分」組成物(RTV-1)として包装された組成物。これは、気密包装された単一の部品(又は成分)の形態である;及び
・「二成分」組成物(RTV-2)として包装された組成物。これは、2つの別個の部分の形態であり(したがって「2成分」と呼ばれる)、触媒を含む包装は気密である。
【0038】
気密包装の目的は、触媒を含有するシリコーン組成物が使用前の貯蔵中に大気中の水分と接触するのを防ぐことである。これらのシリコーン組成物の重合及び/又は架橋によって行われる硬化の間、RTV-1組成物の場合、水は大気水分によって供給される。RTV-2組成物の場合、ジメチルスズジカルボキシレートが触媒として一般的に使用されるが、2つの部分の内容物が周囲の空気と混合されて、組成物の硬化につながるエラストマーネットワークを形成するときに、触媒を活性化し、重縮合反応を可能にするために、部分の1つにいくらかの水を追加する必要がある場合がある。
【0039】
例えば、マスチック又は接着剤として使用される単一成分のシリコーン組成物(RTV-1)は、2つの主な反応を含むメカニズムによって低温架橋を受け、これらは順次又は同時であり得る:
1.シラノール官能基を有するシリコーン油、例えばヒドロキシル末端シリコーン油(α,ω-(ヒドロキシジメチルシリル)-ポリジメチルシロキサンなど)を架橋剤(SiX4型のシランなど)(例えばケイ酸塩)又は次の官能基-SiX3を有する化合物(Xはほとんどの場合、アルコキシ、アシルオキシ、アミノ、アミド、エノキシ、アミノキシ、ケチミノキシ又はオキシム官能基である)と接触させることから生じる官能化反応。これらの官能基は、シラノール官能基と反応することでよく知られている。得られた製品は、ほとんどの場合「官能化オイル」と呼ばれる。この反応は、組成物の調製中(現場での官能化)に直接、又は任意選択で組成物の他の成分を添加する前の予備ステップとして、望ましい場合がある。この予備ステップでは、単一成分組成物に良好な保存安定性を与えるために、リチア(又は水酸化リチウム)又はカリなどの官能化触媒を使用するのが一般的である。この目的のために、当業者は、特定の官能化触媒を選択することができ、官能化されるシラノール官能基に対してモル過剰の架橋剤を有するように反応物の量を調整することができる。
2.一般に、大気にさらされた表面から材料に拡散する水蒸気による官能化油の加水分解による架橋、及び形成されたシラノール基と他の残留反応官能基との間の縮合。
【0040】
2成分組成物(RTV-2)の形態で包装された組成物に関しては、第1の成分(又は部分)は重縮合性ポリオルガノシロキサンを含み、気密性である第2の成分(又は部分)は触媒及び1つ以上の架橋剤を含む。2つの成分(又は部分)は使用時に混合され、特に組成物が補強充填剤を含む場合、混合物は比較的硬質のエラストマーの形態で架橋反応によって硬化する。2成分系にパッケージ化されたこれらの組成物はよく知られており、特にWalter Nollの著作「Chemistry and Technology of Silicones」(1968年、第2版、第395~398ページ)に記載されている。これらの組成物は、ほとんどの場合、次の成分を含む:
・鎖の末端(例えばα,ω-ジ(ヒドロキシジメチルシリル)(ポリジメチルシロキサン))、鎖中、又は鎖の末端と鎖中の両方に、シラノール基を有する反応性ポリオルガノシロキサン;
・架橋剤;
・縮合触媒;及び
・任意選択で水は、ジアルキルスズジカルボキシレートが触媒として使用される場合にしばしば存在し、水は前記触媒の活性化剤として働く。
【0041】
適切な触媒は、ジブチルスズジラウレート(DBTDL)などのアルキルスズに基づく化合物のようなスズ誘導体である。代替触媒、特にチタン系触媒が先行技術で知られている(例えば、国際公開第2013/036546号を参照)。他の触媒、例えば、亜鉛、スカンジウム、イッテルビウム、銅、銀、セリウム、モリブデン、ビスマス、ハフニウム又はグアニジン誘導体に基づく触媒が挙げられている。ジルコニウム又はチタンのキレートの使用は、特に国際公開第01/49789号に記載されている。触媒として使用できる他の代替物は、フランス特許出願第2856694号又は米国特許出願第2017/022325号に記載されている。
【0042】
付加硬化反応により硬化する硬化性シリコーン組成物は、硬化が、シロキサンポリマーのシリコンヒドリド基(Si-H)と、シロキサンポリマーのシリコンアルケニル(Si-アルケニル)基又はシリコンアルキニル(Si-アルキニル)基との「付加反応」(又はヒドロシル化反応)と呼ばれる反応で達成され、2つのシロキサンポリマー間にアルキルブリッジを生成する組成物を指す。白金族に属する金属は、付加硬化反応の触媒として適している。適切な触媒の例は、国際公開第2016/075414号に記載されるような、白金又はロジウム化合物、ゲルマニウム化合物、又は国際公開第2016/071651号、国際公開第2016/071652号及び国際公開第2016/071654号に記載されているような、ニッケル、コバルト又は鉄の錯体である。最もよく使用される触媒は通常、アルコール、キシレン、ジビニルシロキサン、又は環状ビニルシロキサン中の白金の錯体である。付加硬化型シリコーン組成物の利点の1つは、反応に副生成物がなく、反応が迅速に進行することである。
【0043】
当業者によく知られている上記の標準的な硬化性組成物のすべては、以下を追加することを考慮して、本発明に従って適切である:
(A)25℃で200~900の稠度を有する少なくとも1つのオルガノポリシロキサンガムCであって、1分子あたり少なくとも1つのケイ素結合C6~C12アリール基を含有し、以下からなる群から選択される分子当たり少なくとも1つの官能基を含有する、オルガノポリシロキサンガムC:ケイ素結合C2~C20アルケニル基、ケイ素結合水素原子、ケイ素結合ヒドロキシル基、ケイ素結合アルコキシ基、ケイ素結合オキシム基、ケイ素結合アミノ基、ケイ素結合アミド基、ケイ素結合アミノキシ基、ケイ素結合アシルオキシ基、ケイ素結合ケチミノキシ基及びケイ素結合エノキシ基;
(E)以下で定義される、少なくとも1つの充填剤E。
【0044】
縮合硬化型シリコーン組成物の官能基の例は次のとおりである。
・アルコキシタイプの加水分解性及び縮合性基を使用することができる。例えば、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、n-ブトキシ、イソブトキシ、sec-ブトキシ、tert-ブトキシ、2-メトキシエトキシ、ヘキシルオキシ又はオクチルオキシ基などの1~8個の炭素原子を有する基が挙げられる。
・アルコキシアルキレンオキシ型の加水分解性及び縮合性基を使用することができる。例えば、メトキシ-エチレン-オキシ基が挙げられる。
・アミノ型の加水分解性及び縮合性基を使用できる。例えば、メチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、n-ブチルアミノ、sec-ブチルアミノ又はシクロヘキシルアミノ基が挙げられる。
・N-メチルアセトアミド基の加水分解性及び縮合性基。
・アシルアミノ型の加水分解性及び縮合性基を使用することができる。例えば、ベンゾイルアミノ基が挙げられる。
・アミノキシ型の加水分解性及び縮合性基を使用できる。例えば、ジメチルアミノキシ、ジエチルアミノキシ、ジオクチルアミノキシ又はジフェニルアミノキシ基が含まれる。
・イミノキシ、特にケチミノキシタイプの加水分解性及び縮合性基を使用することができる。例には、以下のオキシムから誘導される基が含まれる:アセトフェノンオキシム、アセトンオキシム、ベンゾフェノンオキシム、メチルエチルケトキシム、ジイソプロピルケトキシム又はメチルイソブチルケトキシム。
・アシルオキシ型の加水分解性及び縮合性基を使用することができる。例えば、アセトキシ基が挙げられる。
・エノキシ型の加水分解性及び縮合性基を使用できる。例えば、2-プロペノキシ基が挙げられる。
【0045】
ガムCの稠度は、25℃で200~900、好ましくは25℃で300~900、又は25℃で450~750である。
【0046】
稠度は、例えば、AFNOR標準NFT60119又はNFT60123の1つに従って針入度計を使用して針入度を測定することによって決定することができる。標準NFT60123は、この説明に特に適している。
【0047】
「ガム」という用語は、通常、粘度が600,000mPa・sを超える(これは、200,000g/モル以上の分子量に相当する)有機ケイ酸化合物に使用される。ガム硬度は、標準化された条件下でサンプルに円筒形ヘッドを適用できるPNR12又は同等モデルの針入度計によって25℃で測定される。ガムの硬さは形状記憶円筒体が1分間にサンプルに侵入する深さ(mm)の10倍の値で表される。これを行うために、直径40mm、高さ60mmのアルミニウム容器にガムサンプルを入れる。直径6.35mm、高さ4.76mmのブロンズ又は真鍮の円筒形のヘッドが、針入度計に適した長さ51mm、直径3mmの金属棒に取り付けられる。この棒には100gの荷重が取り付けられる。アセンブリの総重量は151.8gである。ガムサンプル容器を25℃±0.5℃に設定された浴に最低30秒間入れる。製造元の指示に従って測定を実行する。
【0048】
ガムCの粘度は、25℃で0.01s-1のせん断速度で測定して1000万mPa・sより大きい。いくつかの実施形態では、ガムCの粘度は、25℃で0.01s-1のせん断速度で測定して、2000万mPa・sを超える。いくつかの実施形態では、ガムCの粘度は、25℃で0.01s-1のせん断速度で測定して4000万mPa・sより大きい。いくつかの実施形態では、ガムCの粘度は、25℃で0.01s-1のせん断速度で測定して6000万mPa・sより大きい。
【0049】
ガムの粘度は、Anton Paarタイプのレオメーター、又は0.300mmの2つのプラトー間に設定されたゼロギャップと、25.0℃で0.01s-1~100s-1の間のせん断速度範囲を備えた同等のレオメーターを使用して測定できる。好ましくは、ガムの粘度は、25℃で0.01s-1のせん断速度で測定される。
【0050】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのオルガノポリシロキサンガムCは、以下を含む:
式(A-3)の少なくとも1つのシロキシ単位:
(Alk)(R)hSiO(3-h)/2 (A-3)
式中、記号「Alk」は、ビニル、アリル、ヘキセニル、デセニル、又はテトラデセニル基などのC2~C20アルケニル基を表し、記号Rは、メチル、エチル、プロピル、若しくはなどのC1~C20アルキル基、又はキシリル、トリル、若しくはフェニル基などのC6~C12アリール基を表し、各場合において「Alk」及びRは同じでも異なっていてもよく、
h=1又は2である;
式(A-4)の少なくとも1つのシロキシ単位:
(Ar)k(R1hSiO(4-h-k)/2 (A-4)
式中、記号「Ar」は、C6~C12アリール基(任意選択でキシリル、トリル、キシレン、若しくはフェニル基などのC2~C20アルキレン基によって置換される)、又はC1~C20アラルキル(任意選択でC2~C20アルキレン基によって置換される)、又はナフチル基(任意選択でC1~C20アルキル基及び/又はC2~C20アルキレン基で置換される)、又はアントラセニル基(任意選択でC1~C20アルキル基及び/又はC2~C20アルキレン基で置換される)を表し、好ましくはフェニル基を表し、記号R1は、メチル、エチル、若しくはプロピル基などのC1~C20アルキル基、又はビニル、アリル、ヘキセニル、デセニル、若しくはテトラデセニル基などのC2~C20アルケニル基を表し、各場合において「Ar」及びR1は同じでも異なっていてもよく、
h=0、1又は2であり、
k=1又は2、かつh+k=1、2、又は3である;
式(A-2)の他のシロキシ単位:
(L)gSiO(4-g)/2 (A-2)
式中、記号Lはメチル、エチル、プロピルなどのC1~C20のアルキル基を表し、記号gは0、1、2、又は3に等しく、各場合においてLは同じでも異なっていてもよい。
【0051】
好ましい実施形態では、少なくとも1つのオルガノポリシロキサンガムCは、以下を含む:
式(A-3)の少なくとも1つのシロキシ単位:
(Alk)(R)hSiO(3-h)/2 (A-3)
式中、記号「Alk」はビニル基を表し、記号Rはメチル、エチル、プロピルなどのC1~C20アルキル基を表し、各場合において「Alk」及びRは同じでも異なっていてもよく、
h=1又は2である;
式(A-4)の少なくとも1つのシロキシ単位:
(Ar)k(R1hSiO(4-h-k)/2 (A-4)
式中、記号「Ar」はフェニル基を表し、記号R1は、メチル、エチル、若しくはプロピル基などのC1~C20アルキル基、又はビニル、アリル、ヘキセニル、デセニル、若しくはテトラデセニル基などのC2~C20アルケニル基を表し、各場合において「Ar」及びR1は同じでも異なっていてもよく、
h=0又は1であり、
k=2である;
式(A-2)の他のシロキシ単位:
(L)gSiO(4-g)/2 (A-2)
式中、記号Lはメチル、エチル、プロピルなどのC1~C20のアルキル基を表し、記号gは0、1、2、又は3に等しく、各場合においてLは同じでも異なっていてもよい。
【0052】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのオルガノポリシロキサンガムCは、ジフェニルシロキサン-ジメチルシロキサン-ビニルメチルシロキサン共重合体ガムである。
【0053】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのオルガノポリシロキサンガムCはビニル末端を有する。
【0054】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのオルガノポリシロキサンガムCは、30モル%未満のアリール基を含む。例えば、少なくとも1つのオルガノポリシロキサンガムCは、28モル%未満のアリール基、26モル%未満のアリール基、24モル%未満のアリール基、22モル%未満のアリール基、20モル%未満のアリール基、19モル%未満のアリール基、18モル%未満のアリール基、17モル%未満のアリール基、16モル%未満のアリール基、15モル%未満のアリール基、14モル%未満のアリール基、13モル%未満のアリール基、12モル%未満のアリール基、11モル%未満のアリール基、10モル%未満のアリール基、9モル%未満のアリール基、8モル%未満のアリール基、7モル%未満のアリール基、6モル%未満のアリール基、5モル%未満のアリール基、4モル%未満のアリール基、3モル%未満のアリール基、2モル%未満のアリール基、又は1モル%未満のアリール基を含むことができる。
【0055】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのオルガノポリシロキサンガムCは、約1モル%~約28モル%のアリール基を含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのオルガノポリシロキサンガムCは、約2モル%~約28モル%のアリール基、約3モル%~約28モル%のアリール基、約4モル%~約28モル%のアリール基、約5モル%~約28モル%のアリール基、約6モル%~約28モル%のアリール基、約7モル%~約28モル%のアリール基、約8モル%~約28モル%のアリール基、約9モル%~約28モル%のアリール基、約10モル%~約28モル%のアリール基、約11モル%~約28モル%のアリール基、約12モル%~約28モル%のアリール基、約13モル%~約28モル%のアリール基、約14モル%~約28モル%のアリール基、約15モル%~約28モル%のアリール基、約16モル%~約28モル%のアリール基、約17モル%~約28モル%のアリール基、約18モル%~約28モル%のアリール基、約19モル%~約28モル%のアリール基、約20モル%~約28モル%のアリール基、約21モル%~約28モル%のアリール基、約22モル%~約28モル%のアリール基、約23モル%~約28モル%のアリール基、約24モル%~約28モル%のアリール基、又は約25モル%~約28モル%のアリール基を含む。
【0056】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのオルガノポリシロキサンガムCは、約1モル%~約26モル%のアリール基、約1モル%~約24モル%のアリール基、約1モル%~約22モル%のアリール基、約1モル%~約20モル%のアリール基、約1モル%~約19モル%のアリール基、約1モル%~約18モル%のアリール基、約1モル%~約17モル%のアリール基、約1モル%~約16モル%のアリール基、約1モル%~約15モル%のアリール基、約1モル%~約14モル%のアリール基、約1モル%~約13モル%のアリール基、約1モル%~約12モル%のアリール基、又は約1モル%~約11モル%のアリール基、約1モル%からのアリール基、約1モル%~約9モル%のアリール基、約1モル%~約8モル%のアリール基、約1モル%~約7モル%のアリール基、約1モル%~約6モル%のアリール基、約1モル%~約5モル%アリール基、約1モル%~約4モル%のアリール基、約1モル%~約3モル%のアリール基、又は約1モル%~約2モル%のアリール基を含む。
【0057】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのオルガノポリシロキサンガムCは、約10モル%~約20モル%のアリール基、約10モル%~約19モル%のアリール基、約10モル%~約18モル%のアリール基、約10モル%~約17モル%のアリール基、約10モル%~約16モル%のアリール基、約10モル%~約15モル%のアリール基、約10モル%~約14モル%のアリール基、約10モル%~約13モル%のアリール基、又は約10モル%~約12モル%のアリール基を含む。
【0058】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのオルガノポリシロキサンガムCは、約2モル%~約14モル%のアリール基、約3モル%~約14モル%のアリール基、約4モル%~約14モル%のアリール基、約5モル%~約14モル%のアリール基、約6モル%~約14モル%のアリール基、約7モル%~約14モル%のアリール基、約8モル%~約14モル%のアリール基、約8モル%~約12モル%のアリール基、又は約10モル%~約14モル%のアリール基を含む。
【0059】
少なくとも1つの充填剤Eは、補強充填剤、半補強充填剤、非補強充填剤、充填鉱物充填剤、熱伝導性充填剤、導電性充填剤のうちの1つ以上、及びそれらの混合物であり得る。
【0060】
いくつかの実施形態では、補強充填剤は、シリカ及び/又はアルミナから選択され、好ましくはシリカから選択される。
【0061】
使用できるシリカとして、多くの場合0.1μm以下の微細な粒子サイズと重量に対する比表面積の比が高いこと(一般に、1グラムあたり約50平方メートルから1グラムあたり300平方メートル以上の範囲内)を特徴とする充填剤が想定される。このタイプのシリカは商業的に入手可能な製品であり、接着性シリコーン組成物の製造の分野でよく知られている。これらのシリカは、コロイダルシリカ、熱分解法(燃焼又はヒュームドシリカと呼ばれるシリカ)又はこれらのシリカの混合物の湿式法(沈降シリカ)によって調製されたシリカであり得る。
【0062】
充填剤Eを形成できるシリカの化学的性質及び製造方法は、シリカが最終組成物に補強作用を及ぼすことができる限り、本発明の目的にとって重要ではない。もちろん、様々なシリカのカットも使用できる。
【0063】
これらのシリカ粉末は、一般に0.1μmに近いか又は等しい平均粒子サイズ、及び50m2/gより大きい、好ましくは50~400m2/gの間、特に150~350m2/gの間のBET比表面積を有する。
【0064】
これらのシリカは任意選択で:
少なくとも2つの基準を満たす分子の群から選択される少なくとも1つの相溶化剤の助けで前処理される:
それ自体及び周囲のシリコーンオイルとの水素結合の領域でシリカとの高い相互作用を持つ;
それ自体、又はそれらの分解生成物は、ガス流中で真空下で加熱することによって最終混合物から容易に除去される;低分子量の化合物が好ましい;
及び/又は
少なくとも1つの未処理シリカの助けで特定の方法により、
及び/又は前処理で使用することができ、上記で定義したものと同様の性質の少なくとも1つの相溶化剤を使用することによる補完的な方法により、
現場で処理される。
【0065】
シリカ充填剤の現場処理は、充填剤及び相溶化剤を、上記で言及された優勢なシリコーンポリマーの少なくとも一部の存在下に置くことを意味すると理解される。
【0066】
相溶化剤は、処理方法(前処理又は現場)に従って選択され、例えば、以下を含む群から選択され得る:
クロロシラン、
オクタメチルシクロシロキサン(D4)などのポリオルガノシクロシロキサン、
シラザン、好ましくはジシラザン、又はそれらの混合物、ヘキサメチルジシラザン(HMDZ)が好ましいシラザンであり、これは、ジビニルテトラメチルジシラザンと結合し得る、
1分子あたりケイ素に結合した1つ又は複数のヒドロキシル基を有するポリオルガノシロキサン、
アンモニアなどのアミン又はジエチルアミンなどの低分子量のアルキルアミン、
ギ酸や酢酸などの低分子量の有機酸、
及びそれらの混合物。
【0067】
現場処理の場合、相溶化剤は、好ましくは水の存在下で使用される。
【0068】
この点に関する詳細については、例えばフランス特許第2764894号を参照することができる。
【0069】
変形として、シラザンによる早期処理(例えば、フランス特許出願公開第2320324号)又は遅延処理(例えば、欧州特許出願公開第462032号)を提供する従来技術の相溶化方法を使用することが可能である。
【0070】
充填剤Eとして使用することができる強化アルミナとして、高分散性アルミナが有利に使用され、公知の方法でドープされてもされなくてもよい。もちろん、様々なアルミナのカットを使用することも可能である。そのようなアルミナの非限定的な例として、Baikowski CompanyのアルミナA125、CR125、D65CRを参照することができる。好ましくは、使用される補強充填剤は燃焼シリカであり、単独又はアルミナと混合される。
【0071】
半強化又は充填鉱物充填剤として含まれ得る非珪質鉱物は、以下からなる群から選択できる:カーボンブラック、二酸化チタン、酸化アルミニウム、アルミナ水和物、炭酸カルシウム、微粉石英、珪藻土、酸化亜鉛、マイカ、タルク、酸化鉄、硫酸バリウム、消石灰、石膏、ガラス、中空ガラスビーズ、中空プラスチックビーズ、プラスチック粉末、ケイ酸カルシウム、クリストバライト、ゼオライト、ベントナイト。
【0072】
重量に関しては、組成物の全成分に基づいて5~40重量%、好ましくは10~35重量%、より好ましくは15~30重量%の充填剤Eの量を使用することが好ましい。
【0073】
好ましい実施形態において、本発明は、以下のステップを含む、シリコーンエラストマー物品を付加製造する方法である:
1)押出3Dプリンター又は材料噴射3Dプリンターから選択される3Dプリンターを用いて、基板上に第1の付加硬化性液状シリコーン組成物を印刷して、第1の層を形成すること;
2)前記3Dプリンターで、第2の付加硬化性液状シリコーン組成物を前記第1の層又は前の層上に印刷して、後続の層を形成すること;
3)任意選択で、必要な追加の層のために、独立して選択された付加硬化性液状シリコーン組成物を用いて、ステップ2)を繰り返すこと;
4)任意選択で加熱することにより、シリコーンエラストマー物品を得るために、前記第1層及び後続の層を架橋させること。
ここで、前記付加硬化性液状シリコーン組成物の少なくとも1つの層は、以下に定義される本発明の付加硬化型液状シリコーン組成物Xである。
【0074】
特に、付加硬化型液状シリコーン組成物Xは、以下を含む:
(A)1分子当たり少なくとも2つのケイ素結合C2~C20アルケニル基を有する、少なくとも1つのオルガノポリシロキサンA;
(B)1分子当たり少なくとも3つのケイ素結合水素原子を含有する少なくとも1つの有機ケイ素架橋剤B;
(C)25℃で200~900の稠度を有する少なくとも1つのオルガノポリシロキサンガムCであって、1分子当たり少なくとも1つのケイ素結合C2~C20アルケニル基及び1分子当たり少なくとも1つのケイ素結合C6~C12アリール基を含有する、少なくとも1つのオルガノポリシロキサンガムC;
(D)少なくとも1つの付加反応触媒D;
(E)少なくとも1つの充填剤E;
(F)任意選択で、少なくとも1つのジオルガノハイドロジェンシロキシ末端ジオルガノポリシロキサン連鎖延長剤F;
(G)任意選択で、少なくとも1つの硬化速度調整剤G;
(H)任意選択で、少なくとも1つのシリコーン樹脂H;及び
(I)任意選択で、少なくとも1つの添加剤I。
【0075】
特に、本発明の付加硬化性液状シリコーン組成物Xは、従来の組成物と比較して改善された緩和時間を示す。本明細書で定義される緩和時間(又は回復時間)は、粘性物質がせん断力を加えなくなった後、せん断応力から回復するのに必要な時間である。緩和時間を測定する1つの方法は、貯蔵弾性率曲線の最初の部分と最後の部分に接する線の間の交点を考慮することである。したがって、緩和時間は、3D印刷中に組成物が印刷ノズルから押し出されるときに経験するような、せん断後に組成物が開始時の粘度に戻る速さの指標を提供する。緩和時間の値が大きいほど、粘度の回復が遅くなる。緩和時間の値が小さいほど、緩和は速くなる。組成物が最初の粘度に戻るのが早ければ早いほど、3D印刷中に組成物がその形状をよりよく保持する。
【0076】
いくつかの実施形態では、本発明の付加硬化性液状シリコーン組成物Xは、1rads-1のせん断速度を加えた後、100秒以下の緩和時間を示す。好ましい実施形態では、本発明の付加硬化性液状シリコーン組成物Xは、1rads-1の適用せん断速度への曝露後、≦80秒、≦70秒、≦65秒、又は≦60秒の緩和時間を示す。
【0077】
この方法の第1のステップでは、第1の付加硬化性液状シリコーン組成物の層が基板上に印刷され、層が基板上に形成される。基板は限定されず、任意の基板であってもよい。基板は、例えば、3Dプリンターの基板プレートなど、その製造方法中に3D物品を支持できるように選択される。基板は剛性又は可撓性であり、連続的又は不連続的あり得る。基板自体は、例えば、基板テーブル又はプレートによって支持されてもよく、これにより基板が剛性である必要はない。また、それは3D物品から除去することもできる。あるいは、基材は、物理的又は化学的に3D物品に結合することができる。一実施形態では、基板はシリコーンであってもよい。
【0078】
第1の付加硬化型液状シリコーン組成物を印刷することによって形成される層は、任意の形状及び任意の寸法を有することができる。層は連続又は不連続であり得る。
【0079】
第2のステップでは、第1のステップで形成した前の層の上に、第2の付加硬化型液状シリコーン組成物を押出3Dプリンター又は材料3Dジェットプリンターで印刷して、後続の層を形成する。押出3Dプリンター及び材料3D噴射プリンターは、工程1)で利用される押出3Dプリンター又は材料3D噴射プリンターと同じであっても異なっていてもよい。
【0080】
第2の付加硬化型液状シリコーン組成物は、第1の付加硬化型液状シリコーン組成物と同じであっても異なっていてもよい。
【0081】
第2の付加硬化性液状シリコーン組成物を印刷することによって形成される後続の層は、任意の形状及び任意の寸法を有し得る。後続の層は、連続又は不連続であり得る。
【0082】
第3のステップでは、第2のステップを繰り返して、必要な数の層を得る。
【0083】
第4のステップでは、層を硬化させることにより(任意選択で加熱することにより)、シリコーンエラストマー物品が得られる。硬化又は架橋は、周囲温度で完了できる。通常、周囲温度又は室温とは、20℃~25℃の温度を指す。
【0084】
層の架橋又は硬化を促進するために、加熱を使用することができる。印刷後の熱硬化は、完全な硬化又は架橋をより速く達成するために、50℃~200℃、好ましくは100℃~150℃の温度で行うことができる。
【0085】
本明細書では、「層」という用語は、方法の任意の段階の層(最初の層、前の層、又は後続の層)に関するものである。層は、厚さや幅など、様々な寸法にすることができる。層の厚さは、均一であっても異なっていてもよい。平均厚さは、印刷直後の層の厚さに関するものである。
【0086】
一実施形態では、層は独立して、10~3000μm、好ましくは50~2000μm、より好ましくは100~800μm、最も好ましくは100~600μmの厚さを有する。
【0087】
特定の実施形態では、少なくとも10層、好ましくは20層の印刷前では、ステップ1)~3)の間に、熱又は放射線などのエネルギー源は適用されない。
【0088】
3D印刷は、一般に、コンピュータで生成された、例えばコンピュータ支援設計(CAD)のデータソースから物理的な物体を製造するために使用される多くの関連技術に関連付けられる。
【0089】
この開示は、一般に、ASTM指定F2792-12a、付加製造技術の標準用語を取り入れている。このASTM規格では、次のようなものである。
【0090】
「3Dプリンター」は「3D印刷に使用される機械」と定義され、「3D印刷」は「プリントヘッド、ノズル、又は別のプリンター技術を使用した材料の堆積による物体の製造」と定義される。
【0091】
「付加製造(Additive manufacturing、AM)」は、「減法製造方法論とは対照的に、材料を結合して3Dモデルデータから物体を作成するプロセスであり、通常は層を重ねるプロセスである。3D印刷に関連し、含まれる同義語には、付加造形、付加プロセス、プロセス技術、技術層製造、層製造、フリーフォーム造形などがある。」と定義される。付加製造(AM)は、ラピッドプロトタイピング(rapid prototyping、RP)とも呼ばれる。本明細書で使用される「3D印刷」は、一般に「付加製造」と交換可能であり、その逆も同様である。
【0092】
「印刷」は、印刷ヘッド、ノズル、又は別のプリンター技術を使用して、材料、ここでは液体シリコーン組成物を堆積することとして定義される。
【0093】
本開示において、「3D又は3次元の物品、物体又は部品」は、本明細書に開示される付加製造又は3D印刷によって得られる物品、物体又は部品を意味する。
【0094】
一般に、すべての3D印刷プロセスには共通の開始点がある。開始点とは、物体を記述するコンピュータ生成データソース又はプログラムである。コンピュータで生成されたデータソース又はプログラムは、実際の物体又は仮想物体に基づくことができる。例えば、3Dスキャナーを使用して実際の物体をスキャンし、スキャンデータを使用してコンピュータ生成データソース又はプログラムを作成できる。あるいは、コンピュータ生成データソース又はプログラムをゼロから設計することもできる。
【0095】
コンピュータ生成データソース又はプログラムは、通常、標準テッセレーション言語(STL)ファイル形式に変換される。ただし、他のファイル形式も、又は追加で使用できる。ファイルは通常、3D印刷ソフトウェアに読み込まれ、これは、ファイルと任意のユーザー入力を受け取り、ユーザー定義の厚さの個別の「スライス」に分割する。3D印刷ソフトウェアは通常、機械命令を出力する。これは、Gコードの形式である場合があり、3Dプリンターによって読み取られて各スライスが作成される。機械命令は3Dプリンターに転送され、3Dプリンターは機械命令の形式のこのスライス情報に基づいて、層ごとに物体を構築する。これらのスライスの厚さは異なる場合がある。
【0096】
押出3Dプリンターは、積層造形プロセス中にノズル、シリンジ、又はオリフィスから材料が押し出される3Dプリンターである。材料の押し出しは、一般に、ノズル、シリンジ、又はオリフィスを通して材料を押し出し、物体の1つの断面を印刷することによって機能する。これは、後続の各層に対して繰り返され得る。押し出された材料は、材料の硬化中にその下の層に結合する。
【0097】
好ましい実施形態では、三次元シリコーンエラストマー物品を付加製造する方法は、押出3Dプリンターを使用する。付加硬化性液状シリコーン組成物は、ノズルから押し出される。付加硬化性液状シリコーン組成物のディスペンスを助けるために、ノズルを加熱することができる。
【0098】
ノズルの平均直径が層の厚さを定義する。一実施形態では、層の径は50μm~3000μm、好ましくは100μm~800μm、最も好ましくは100μm~500μmである。
【0099】
ノズルと基板の間の距離は、得られるシリコーンエラストマーの適切な形状を確保するための重要なパラメータである。好ましくは、ノズルと基板との間の距離は、ノズルの平均直径の60~150%、より好ましくは80~120%である。
【0100】
ノズルから分配される付加硬化型液状シリコーン組成物は、カートリッジ状のシステムから供給されてもよい。カートリッジは、関連付けられた流体リザーバ又は複数の流体リザーバを有するノズル又は複数のノズルを含むことができる。スタティックミキサーと1つのみのノズルを有する同軸2カートリッジシステムを使用することもできる。圧力は、ディスペンスされる流体、関連するノズルの平均直径、及び印刷速度に適応する。
【0101】
ノズル押し出し中に発生する高いせん断速度のために、付加硬化性液体シリコーン組成物の粘度が大幅に低下し、微細層の印刷が可能になる。
【0102】
カートリッジ圧力は、1~20バール、好ましくは2~10バール、最も好ましくは4~8バールで変化し得る。100μm未満のノズル径を使用する場合、良好な材料押し出しを得るには、カートリッジ圧力を20バールより高くする必要がある。そのような圧力に耐えるために、アルミニウムカートリッジを使用する適合した機器を使用する必要がある。
【0103】
ノズル及び/又はビルドプラットフォームは、X、Y(水平面)で移動して物体の断面を完成させてから、1つの層が完成するとZ軸(垂直)平面で移動する。ノズルのXYZ移動精度は10μm程度と高い。各層が(X,Y)作業平面に印刷された後、ノズルは、次の層が(X,Y)作業平面に適用されるのに十分な距離だけZ方向に移動される。このように、3次元物品となる物体を下から上に向かって1層ずつ構築していく。
【0104】
有利には、印刷速度は、精度と製造速度との間の最良のバランスを得るために、1~50mm/秒、好ましくは5~30mm/秒である。
【0105】
「マテリアルジェッティング」(Material jetting)は、「構築材料の液滴が選択的に堆積される付加製造プロセス」と定義される。材料は、印刷ヘッドを使用して個々の液滴の形で不連続に、作業面の目的の位置に塗布される(ジェッティング)。少なくとも1つ、好ましくは2~200個の印刷ヘッドノズルを含む印刷ヘッド配列を使用して3D構造を段階的に製造するための3D装置及びプロセスは、適切な場合、複数の材料の部位選択的適用を可能にする。インクジェット印刷による材料の適用は、材料の粘度に特定の要件を課す。
【0106】
材料3D噴射プリンターでは、1つ又は複数のリザーバが圧力を受け、計量ラインを介して計量ノズルに接続される。リザーバの上流又は下流に、多成分付加硬化性液状シリコーン組成物を均一に混合及び/又は溶解ガスを排出することを可能にする装置があってもよい。異なる付加硬化性液状シリコーン組成物からシリコーンエラストマー物品を構築するため、又は、より複雑な構造の場合、互いに独立して作動する1つ又は複数の噴射装置が存在し得、これによりシリコーンエラストマーと他のプラスチックから作られた複合部品を可能にする。
【0107】
噴射計量手順中に計量バルブで発生する高いせん断速度のために、そのような付加硬化性液状シリコーン組成物の粘度は大幅に低下し、非常に微細な液滴の噴射計量が可能になる。微細な液滴が基板に付着した後、せん断速度が急激に低下するため、粘度が再び上昇する。このため、堆積した液滴は再び急速に高粘度になり、3次元構造の正確な形状の構築を可能にする。
【0108】
個々の計量ノズルをx、y、及びz方向に正確に配置して、基板上に(又はその後の成形品の成形過程において、既に配置された付加硬化型液状シリコーン組成物(これは任意選択ですでに硬化されている)の上に)付加硬化型液体シリコーン組成物を正確にターゲットを絞って堆積させることができる。
【0109】
他の付加製造法とは対照的に、構造の崩壊を避けるために、各層が印刷された後に硬化を開始するために照射環境又は加熱環境で本発明の方法を実行する必要はない。したがって、照射及び加熱工程は任意であり得る。
【0110】
通常、3Dプリンターは、特定の付加硬化性液状シリコーン組成物を印刷するためにディスペンサー、例えばノズル又はプリントヘッドを利用する。任意選択で、ディスペンサーは、付加硬化性液状シリコーン組成物をディスペンスする前、ディスペンス中、ディスペンス後に加熱することができる。各ディスペンサーが独立して選択された特性を有する複数のディスペンサーを利用することができる。
【0111】
一実施形態では、この方法はサポート材を使用して物体を構築することができる。物体がサポート材又はラフトを使用して印刷されている場合、印刷プロセスが完了した後、それらは通常取り除かれ、完成した物体を残す。
【0112】
任意選択で、結果として得られる物品は、異なる後処理レジメンを受けることができる。一実施形態では、この方法は、三次元シリコーン物品を加熱するステップをさらに含む。加熱することで硬化を早めることができる。別の実施形態では、この方法は、三次元シリコーン物品をさらに照射するステップをさらに含む。硬化を促進するために、さらなる照射を使用することができる。別の実施形態では、この方法は、三次元シリコーン物品を加熱するステップと照射するステップの両方をさらに含む。
【0113】
任意選択で、後処理ステップにより、印刷物の表面品質を大幅に向上させることができる。やすりがけは、モデルの目に見えて異なる層を削減又は除去する一般的な方法である。エラストマー物品の表面のスプレー又はコーティングは、モデルの目に見える異なる層を減らし、表面の外観と特性を変更することのためにも使用できる。
【0114】
レーザーによる表面処理も可能である。
【0115】
医療用途の場合、最終的なエラストマー物品の滅菌は、対象物を100℃以上又はUVオーブンで加熱することによって行うことができる。
【0116】
第1及び第2の付加硬化型液状シリコーン組成物は、互いに同じであっても異なっていてもよく、ステップ3)が繰り返される場合、独立して選択された付加硬化型液状シリコーン組成物が利用され得る。本発明の方法において、付加硬化型液状シリコーン組成物の少なくとも1つの層は、本発明の付加硬化型液状シリコーン組成物Xであり、これは、例えば、第1又は第2の付加硬化性液状シリコーン組成物、又は付加硬化性液状シリコーン組成物の任意の他の追加層であり得る。一実施形態では、付加硬化性液状シリコーン組成物のすべての印刷層は、本発明の付加硬化性液状シリコーン組成物Xである。
【0117】
簡潔にするために、第1及び第2の付加硬化性液状シリコーン組成物は、ステップ3)が繰り返される場合に任意に利用される任意の他の付加硬化性液状シリコーン組成物と共に、単に「付加硬化型液状シリコーン組成物」又は「シリコーン組成物」と総称する。
【0118】
本発明の付加硬化型液状シリコーン組成物Xは、成分を所望の比率で混合するだけで調製することができる。しかしながら、貯蔵安定性及び浴寿命の理由から、基材への組成物の塗布前又は塗布中、水素置換基を有する有機ケイ素架橋剤(B)及び/又はジオルガノポリシロキサン(F)から硬化触媒(D)を分離することにより、組成物Xを2つの部分A及びBで貯蔵することが有利である。組成物Xの他の成分は、適用直前に2つの部分を容易に混合できる比率で両方の部分に分散されることが多い。そのような容易な混合比率は、例えば、1/10又は1/1の比率であり得る。
【0119】
好ましくは、本発明の2液型付加硬化性液状シリコーン組成物Xは、成分A及びDを含むが、B及びFを含まない第1の液体組成物と、成分A、B、C、及び任意選択でFを含むが、Dを含まない第2の液体組成物を含む。
【0120】
本発明の付加硬化型液状シリコーン組成物Xは、少なくとも1つのオルガノポリシロキサンガムC及び少なくとも1つの充填剤Eを含み、これらは上述の通りである。
【0121】
本発明の付加硬化型液状シリコーン組成物Xは、1分子当たり2つのケイ素結合アルケニル基を有する、少なくとも1つのアルケニル基含有オルガノポリシロキサンAを含む。いくつかの実施形態において、本発明の付加硬化性液状シリコーン組成物Xは、1分子当たり2つのケイ素結合アルケニル基を有する、1つを超えるアルケニル基含有オルガノポリシロキサンAを含む。例えば、本発明の硬化性液状シリコーンゴム組成物は、1分子当たり2個のケイ素結合アルケニル基を有する、2つ以上のアルケニル基含有オルガノポリシロキサンA(A1、A2、A3等)を含んでもよい。
【0122】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのアルケニル基含有オルガノポリシロキサンAは、以下を含む:
・式(A-1)の2つのシロキシ単位:
(Alk)(R)2SiO1/2 (A-1)
式中、記号「Alk」は、ビニル基、アリル基、ヘキセニル基、デセニル基、テトラデセニル基などのC2~C20のアルケニル基を表し、好ましくはビニル基の水素原子であり、記号Rは、メチル、エチル、プロピル、トリフルオロプロピル、又はアリール基などのC1~C20のアルキル基、好ましくはメチル基を表し、
・式(A-2)の他のシロキシ単位:
(L)gSiO(4-g)/2 (A-2)
式中、記号Lはメチル、エチル、プロピル、トリフルオロプロピルなどのC1~C20のアルキル基、又はアリール基、好ましくはメチルを表し、記号gは0、1、2、又は3に等しく、各場合においてLは同じでも異なっていてもよい。
【0123】
いくつかの好ましい実施形態において、少なくとも1つのアルケニル基含有オルガノポリシロキサンAは、以下の式(1)である:
【化2】
(1)
式中、
nは1~1000、好ましくは50~1000の範囲の整数であり、
Rは、メチル、エチル、プロピル、トリフルオロプロピル、又はアリール基などのC1~C20アルキル基、好ましくはメチル基であり、
R’は、ビニル基、アリル基、ヘキセニル基、デセニル基、テトラデセニル基などのC2~C20アルケニル基であり、好ましくはビニル基であり、
R”は、メチル、エチル、プロピル、トリフルオロプロピル、又はアリール基などのC1~C20のアルキル基であり、好ましくはメチル基である。
【0124】
好ましい実施形態において、少なくとも1つのアルケニル基含有オルガノポリシロキサンAは、1つ以上のα,ω-ビニルポリジメチルシロキサンであり、より好ましくは、1つ以上の直鎖α,ω-ビニルポリジメチルシロキサンである。
【0125】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つのアルケニル基含有オルガノポリシロキサンAの粘度は、約50~約100,000mPa・s、好ましくは約100~約50,000mPa・s、より好ましくは約150~約25,000mPa・sである。いくつかの実施形態では、本発明の硬化性液状シリコーンゴム組成物は、約50~約10,000mPa・sの粘度を有する少なくとも1つのアルケニル基含有オルガノポリシロキサンA1と、約5,000~約100,000mPa・sの粘度を有する少なくとも1つのアルケニル基含有オルガノポリシロキサンA2を含む。好ましい実施形態では、少なくとも1つのアルケニル基含有オルガノポリシロキサンA1の粘度は、約100~約7,500mPa・s、より好ましくは約150~約5,000mPa・sである。好ましい実施形態において、少なくとも1つのアルケニル基含有オルガノポリシロキサンA2の粘度は、約7,500~約50,000mPa・s、より好ましくは約10,000~約25,000mPa・sである。
【0126】
本明細書に記載のシリコーン組成物及びそれらの個々の成分(上記のオルガノシロキサンガムCを除く)の粘度は、25℃での「ニュートン」動的粘度(すなわち、測定された粘度が速度勾配に依存しないように十分に低いせん断速度勾配でブルックフィールド粘度計を用いて、それ自体既知の方法で測定される動粘度)の大きさに相当する。
【0127】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つのアルケニル基含有オルガノポリシロキサンAの分子量は、約500g/モル~約90,000g/モル、好ましくは約1,000g/モル~約70,000g/モル、より好ましくは約5,000g/モル~約60,000g/モルである。いくつかの実施形態では、本発明の硬化性液状シリコーンゴム組成物は、約1,000~約50,000g/モルの分子量を有する少なくとも1つのアルケニル基含有オルガノポリシロキサンA1と、約5,000~約80,000g/モルの分子量を有する少なくとも1つのアルケニル基含有オルガノポリシロキサンA2を含む。好ましい実施形態において、少なくとも1つのアルケニル基含有オルガノポリシロキサンA1の分子量は、約5,000~約40,000g/mol、より好ましくは約7,000~約30,000g/molである。好ましい実施形態において、少なくとも1つのアルケニル基含有オルガノポリシロキサンA2の分子量は、約15,000~約75,000g/mol、より好ましくは約30,000~約60,000g/molである。
【0128】
少なくとも1つのアルケニル基含有オルガノポリシロキサンAは、直鎖状であることが好ましい。
【0129】
本発明の付加硬化性液状シリコーン組成物Xは、1分子当たり少なくとも2つ、好ましくは少なくとも3つのケイ素結合水素原子を含む、少なくとも1つの有機ケイ素架橋剤Bをさらに含む。いくつかの実施形態では、1分子当たり少なくとも2つのケイ素結合水素原子を含む有機ケイ素架橋剤Bは、各分子内に10~500個のケイ素原子、好ましくは各分子内に10~250個のケイ素原子を含むオルガノハイドロジェンポリシロキサンである。
【0130】
分岐ポリマーである場合、1分子あたり少なくとも2つのケイ素結合水素原子を含む、適切な有機ケイ素架橋剤Bの例には、式(I)の分岐ポリマーが含まれる。
(R2HSiO1/2x(R3SiO1/2y(RHSiO22z(R2SiO2/2p(RSiO3/2q(HSiO3/2v(SiO4/2r (I)
-式中、Hは水素であり、Rは、1~40個の炭素原子の一価炭化水素ラジカル、好ましくは1~20個の炭素原子の一価炭化水素ラジカルであり、より好ましくは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、フェニル、ベンジル、及びメシチルからなる群から選択され;最も好ましくは、メチル及びフェニルからなる群から選択され、
-式中、x≧2、y≧0、z≧0、p≧0、v≧0、かつq又はrの少なくとも1つが≧1;あるいは、x≧2、y≧0、z≧0、p≧0、q≧0;v≧0、r≧1;あるいは、x≧2、y≧0、r≧1(但し、r=1の場合、x+y=4とする)、かつ、z、p、q、v=0。あるいは、x>2、y>0、r>1、かつz、p、q、v=0。
【0131】
分岐ポリマーである場合、分子当たり少なくとも2つのケイ素結合水素原子を含有する特定の架橋剤Bには、以下が含まれるが、これらに限定されない:(H)(CH32SiO1/2シロキシ単位(MH)及びSiO4/2シロキシ単位(Q単位)を含むシリコーン樹脂MHQ、(CH33SiO1/2シロキシ単位(M)、(CH32HSiO1/2シロキシ単位(MH)及びSiO4/2(Q)を含むシリコーン樹脂MMHQ、(CH32HSiO1/2シロキシ単位(MH)、(CH3)HSiO2/2(DH)及びSiO4/2シロキシ単位(Q)を含むシリコーン樹脂MHHQ、(CH33SiO1/2単位(M単位)、(CH32HSiO1/2(MH)、(CH3)HSiO2/2(DH)及びSiO4/2単位(Q)を含むシリコーン樹脂MMHHQ。
【0132】
いくつかの実施形態では、架橋剤Bは、式R2HSiO1/2の少なくとも2つのMHシロキシ単位及び式SiO4/2のQシロキシ単位を含むMHQシリコーン樹脂であり、式中、Hは水素原子であり、Rは、1~40個の炭素原子の一価炭化水素ラジカル、好ましくは1~20個の炭素原子の一価炭化水素ラジカルであり、より好ましくは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、フェニル、ベンジル、及びメシチルからなる群から選択され;最も好ましくは、メチル及びフェニルからなる群から選択される。
【0133】
好ましい実施形態では、架橋剤Bは、次の式を有するMHQシリコーン樹脂である:
MHwz
式中、Qは式SiO4/2を有し、MHは式R2HSiO1/2を有し、式中、Hは水素原子であり、Rは、1~40個の炭素原子の一価炭化水素ラジカル、好ましくは1~20個の炭素原子の一価炭化水素ラジカルであり、より好ましくは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、フェニル、ベンジル、及びメシチルからなる群から選択され;最も好ましくは、メチル及びフェニルからなる群から選択され、下付き文字w及びzは、それぞれ0.5~4.0、好ましくは0.6~3.5、より好ましくは0.75~3.0、最も好ましくは1.0~3.0の比を有する。
【0134】
別の好ましい実施形態では、架橋剤Bは、次の式を有するMHQシリコーン樹脂である:
(MHwzj
式中、Qは式SiO4/2を有し、MHは式R2HSiO1/2を有し、Rは、1~40個の炭素原子の一価炭化水素ラジカル、好ましくは1~20個の炭素原子の一価炭化水素ラジカルであり、より好ましくは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、フェニル、ベンジル、及びメシチルからなる群から選択され;最も好ましくは、メチル及びフェニルからなる群から選択され、下付き文字w及びzは、それぞれ0.5~4.0、好ましくは0.6~3.5、より好ましくは0.75~3.0、最も好ましくは1.0~3.0の比を有し、下付き文字jは、約2.0~約100、好ましくは約2.0~約30、より好ましくは約2.0~約10、最も好ましくは約3.0~約5.0の範囲である。
【0135】
別の好ましい実施形態では、架橋剤Bは、SiHとして0.10重量%~2.00重量%のHを有し、式R2HSiO1/2のMHシロキシ単位及び式SiO4/2のQシロキシ単位を含むシリコーン樹脂であり、ここで、Hは水素原子であり、Rは1~40個の炭素原子の一価炭化水素ラジカル、好ましくは1~20個の炭素原子の一価炭化水素ラジカルであり、より好ましくは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、フェニル、ベンジル、及びメシチルからなる群から選択され;最も好ましくは、メチル及びフェニルからなる群から選択される。
【0136】
少なくとも1つの有機ケイ素架橋剤Bは、組成物全体の重量に対して、約0.01%~約5%、好ましくは約0.05%~約2%、好ましくは約0.1%~約1%の量で付加硬化性液体シリコーン組成物Xに含まれ得る。
【0137】
有機ケイ素架橋剤Bは、好ましくは0.45重量%~50重量%のSiH、より好ましくは1重量%~35重量%のSiH、より好ましくは5重量%~30重量%のSiH、又は15重量%~25重量%のSiHを含有する。
【0138】
いくつかの実施形態では、有機ケイ素架橋剤Bは、以下を含む:
(i)同一又は異なる式(XL-1)の少なくとも2つ、好ましくは3つのシロキシ単位:
(H)(Z)eSiO(3-e)/2 (XL-1)
式中、
-記号Hは水素原子を表し、
-記号Zは、1~8個の炭素原子を含むアルキルを表し、
-記号eは、0、1、又は2に等しい;
及び/又は
(ii)少なくとも1つ、好ましくは1~550個の、式(XL-2)のシロキシ単位:
(Z)gSiO(4-g)/2 (XL-2)
式中、
-記号Zは、炭素原子数1~8のアルキルを表し、
-記号gは、0、1、2、又は3に等しい。
【0139】
いくつかの実施形態において、XL-1及び/又はXL-2におけるZは、メチル、エチル、プロピル及び3,3,3-トリフルオロプロピル基、シクロアルキル基(シクロヘキシル、シクロヘプチル又はシクロオクチル基など)、及びアリール基(キシリル、トリル、フェニル基など)から選択される。
【0140】
好ましくは、Zはメチル基である。ただし、XL-1及びXL-2におけるZは、同じであっても異なっていてもよい。
【0141】
好ましい実施形態において、XL-1におけるeは、1又は2である。
【0142】
好ましい実施形態において、XL-2におけるgは、2である。
【0143】
好ましい実施形態において、有機ケイ素架橋剤Bは、式(XL-1)の3~60個のシロキシ単位及び式(XL-2)の1~250個のシロキシ単位を含む。
【0144】
本発明の付加硬化性液状シリコーン組成物Xは、1分子当たり少なくとも1つのケイ素結合C2~C20アルケニル基及び1分子当たり少なくとも1つのケイ素結合C6~C12アリール基を含む、上記の少なくとも1つのオルガノポリシロキサンガムCをさらに含む。
【0145】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つのオルガノポリシロキサンガムCは、組成物全体の重量に対して、約0.1~約40%、好ましくは約1%~約40%、好ましくは約3%~約30%、好ましくは約5%~約25%の量で付加硬化性液体シリコーン組成物Xに含まれ得る。
【0146】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのオルガノポリシロキサンガムCは、付加硬化型液状シリコーン組成物X全体の重量に対して、付加硬化性液体シリコーン組成物Xに、少なくとも5重量部、少なくとも8重量部、少なくとも10重量部、少なくとも15重量部、又は少なくとも20重量部含まれ得る。
【0147】
いくつかの実施形態では、少なくとも1種のオルガノポリシロキサンガムCは、付加硬化性液体シリコーン組成物X中に、モル%での総アリール基含有量が少なくとも0.5モル%となる量で含まれることができる。例えば、少なくとも1種のオルガノポリシロキサンガムCは、付加硬化性液状シリコーン組成物X中にモル%での総アリール基含有量が少なくとも0.6モル%、少なくとも0.7モル%、少なくとも0.8モル%、少なくとも0.9モル%、少なくとも1.0モル%、少なくとも1.1モル%、少なくとも1.2モル%、少なくとも1.3モル%、少なくとも1.4モル%、少なくとも1.5モル%、少なくとも1.6モル%、少なくとも1.7モル%、少なくとも1.8モル%、少なくとも1.9モル%、又は少なくとも2.0モル%となる量で含まれることができる。
【0148】
いくつかの実施形態では、少なくとも1種のオルガノポリシロキサンガムCは、付加硬化性液体シリコーン組成物X中に、モル%での総アリール基含有量が、約0.5モル%~約10モル%、約0.5モル%~約9モル%、約0.5モル%~約8モル%、約0.5モル%~約7モル%、約0.5モル%~約6モル%、約0.5モル%~約5.5モル%、約0.5モル%~約5モル%、約0.5モル%~約4.5モル%、約0.5モル%~約4モル%、約0.5モル%~約3.5モル%、約0.5モル%~約3モル%、約0.5モル%~約2.5モル%、約0.5モル%~約2モル%、約0.5モル%~約1.5モル%、約0.5モル%~約1.4モル%、約0.5モル%~約1.3モル%、約0.5モル%~約1.2モル%、約0.5モル%~約1.1モル%、0.5モル%~約1.0モル%、約0.5モル%~約0.9モル%、約0.5モル%~約0.8モル%、又は約0.5モル%~約0.7モル%となる量で含まれることができる。
【0149】
いくつかの実施形態では、少なくとも1種のオルガノポリシロキサンガムCは、付加硬化性液体シリコーン組成物X中に、モル%での総アリール基含有量が、約1モル%~約10モル%、約1.2モル%~約10モル%、約1.4モル%~約10モル%、約1.6モル%~約10モル%、約1.8モル%~約10モル%、約2モル%~約10モル%、約2.2モル%~約10モル%、約2.4モル%~約10モル%、約2.6モル%~約10モル%、約2.8モル%~約10モル%、約3モル%~約10モル%、約3.5モル%~約10モル%、約4モル%~約10モル%、約5モル%~約10モル%、約6モル%~約10モル%、約7モル%~約10モル%、約8モル%~約10モル%、又は約9モル%~約10モル%となる量で含まれることができる。
【0150】
いくつかの実施形態では、少なくとも1種のオルガノポリシロキサンガムCは、付加硬化性液体シリコーン組成物X中に、モル%での総アリール基含有量が、約1.2モル%~約7モル%、約1.4モル%~約6モル%、約1.6モル%~約6モル%、約1.8モル%~約6モル%、約2モル%~約6モル%、約2.2モル%~約6モル%、約2.4モル%~約6モル%、約2.6モル%~約6モル%、約2.8モル%~約6モル%、約3モル%~約6モル%、又は約4モル%~約6モル%、約1.2モル%~約5モル%、約1.2モル%~約4モル%、約1.2モル%~約3モル%、約1.2モル%~約2.8モル%、約1.2モル%~約2.6モル%、約1.2モル%~約2.4モル%、約1.4モル%~約4モル%、約1.4モル%~約3モル%、約1.4モル%~約2.8モル%、約1.4モル%~約2.6モル%、約1.4モル%~約2.4モル%、約1.6モル%~約4モル%、約1.6モル%~約3モル%、約1.6モル%~約2.8モル%、約1.6モル%~約2.6モル%、約1.6モル%~約2.4モル%、約1.8モル%~約4モル%、約1.8モル%~約3モル%、約1.8モル%~約2.8モル%、約1.8モル%~約2.6モル%、又は約1.8モル%~約2.4モル%となる量で含まれることができる。
【0151】
本発明の付加硬化型液状シリコーン組成物Xは、少なくとも1種の付加反応触媒Dをさらに含む。付加反応触媒Dは、組成物を硬化させることができる任意の量で含まれ得る。例えば、付加反応触媒Dは、アルケニル基含有オルガノポリシロキサンA100万重量部に対して、触媒D中の白金族金属の量が0.01~500重量部となる量で含まれることができる。
【0152】
触媒Dは、特に、白金及びロジウムの化合物から選択することができる。特に、白金錯体及び有機生成物(米国特許第3,159,601号、米国特許第3,159,602号、米国特許第3,220,972号、及び欧州特許出願公開第0057459号、第0118978号、第0190530号に記載されている)、白金とビニルオルガノシロキサンの錯体(米国特許第3,419,593号、米国特許第3,715,334号、米国特許第3,377,432号及び米国特許第3,814,730号に記載されている)を使用することが可能である。好ましい実施形態において、付加反応触媒Dは、白金族金属含有触媒である。
【0153】
付加硬化性液状シリコーン組成物Xは、上で定義した少なくとも1つの充填剤Eをさらに含む。
【0154】
本発明の付加硬化性液状シリコーン組成物Xはまた、少なくとも1つのジオルガノハイドロジェンシロキシ末端ジオルガノポリシロキサン連鎖延長剤Fを含有してもよい。少なくとも1つのジオルガノハイドロジェンシロキシ末端ジオルガノポリシロキサン連鎖延長剤Fは、組成物全体の重量に対して、0%~約20%、好ましくは約0.5%~約15%、好ましくは約0.5%~約10%の量で、付加硬化性液体シリコーン組成物Xに含まれ得る。
【0155】
いくつかの実施形態では、ジオルガノハイドロジェンシロキシ末端ジオルガノポリシロキサンFは、以下の式(2):
【化3】
であり、式中:
Rは独立して、C1~C20のアルキル基、又はキシリル、トリル、若しくはフェニル基などのC6~C12のアリール基から選択され、好ましくは、Rは独立して、メチル、エチル、プロピル、及びアリールからなる群から選択され、最も好ましくは、Rはメチルであり、
nは1~500、好ましくは2~100、より好ましくは3~50の範囲の整数である。
【0156】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つのジオルガノハイドロゲンシロキシ末端ジオルガノポリシロキサンFの粘度は、約1~約500mPa・s、好ましくは約2~約100mPa・s、より好ましくは約4~約50mPa・s又は約5~約20mPa・sである。
【0157】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つのジオルガノハイドロゲンシロキシ末端ジオルガノポリシロキサンFの分子量は、約100~約5,000g/モル、好ましくは約250~約2,500g/モル、より好ましくは約500から約1,000g/モルである。
【0158】
本発明の付加硬化性液状シリコーン組成物Xはまた、少なくとも1つの硬化速度調整剤Gを含有してもよい。硬化速度調整剤Gは、例えば、架橋阻害剤G1及び/又は架橋遅延剤G2であってもよい。
【0159】
架橋阻害剤もよく知られている。硬化速度調整剤Gとして使用できる架橋阻害剤G1の例には、以下が含まれる:
ポリオルガノシロキサン、有利には環状であり、少なくとも1つのアルケニル基で置換され、テトラメチルビニルテトラシロキサンが特に好ましい、
ピリジン、
ホスフィン及び有機ホスファイト、
不飽和アミド、
アルキル化マレイン酸塩、
アセチレンアルコール。
【0160】
これらのアセチレンアルコール(フランス特許第1528464号及びフランス特許出願第2372874号を参照)は、ヒドロシリル化反応の好ましい熱ブロッカーの一部を形成し、次の式を有する:
(R)(R’)C(OH)-C≡CH
式中:
Rは、直鎖又は分岐アルキルラジカル、又はフェニルラジカルであり;
R’はH又は直鎖若しくは分岐アルキルラジカル、又はフェニルラジカルであり;
ラジカルR、R’、及び三重結合のアルファ位置にある炭素原子は、環を形成することが可能であり;
R及びR’に含まれる炭素原子の総数は、少なくとも5、好ましくは9~20である。
【0161】
前記アルコールは、好ましくは、沸点が約250℃のものから選択される。例として、以下を挙げることができる:
1-エチニル-1-シクロヘキサノール(ECH);
メチル-3ドデシン-1オール-3;
トリメチル-3,7,11ドデシン-1オール-3;
ジフェニル-1,1プロピン-2オール-1
エチル-3エチル-6ノニンオール-3;
メチル-3ペンタデシン-1オール-3。
【0162】
これらのα-アセチレンアルコールは市販品である。
【0163】
このような調整剤は、オルガノポリシロキサンA、B、C、及び任意選択でFの総重量に基づいて、最大2,000ppm、好ましくは20~50ppmの量で存在する。
【0164】
硬化速度調整剤Gとして使用できる架橋遅延剤G2の例は、架橋反応を制御し、シリコーン組成物のポットライフを延長するためのいわゆる阻害剤を含む。硬化速度調整剤Gとして使用できる有利な架橋遅延剤G2の例には、例えば、ビニルシロキサン、1,3-ジビニルテトラメチルジシロキサン、又はテトラビニル-テトラメチル-テトラシクロシロキサンが含まれる。他の既知の阻害剤、例えば、エチニルシクロヘキサノール、3-メチルブチノール、又はマレイン酸ジメチルを使用することも可能である。
【0165】
本発明の付加硬化型液状シリコーン組成物Xは、シリコーン樹脂Hを含有することもできる。シリコーン樹脂は、よく知られており、市販されている分岐オルガノポリシロキサンオリゴマー又はポリマーである。それらは、構造において、式R3SiO1/2(単位M)、R2SiO2/2(単位D)、RSiO3/2(単位T)及びSiO4/2(単位Q)のものから選択される少なくとも2つの異なる単位を示し、これらの単位の少なくとも1つは、単位T又はQである。ラジカルRは、同一又は異なるものであり、直鎖又は分岐のC1~C8アルキル、ヒドロキシル、アリール又はアルキルアリールラジカルから選択される。例えば、アルキルラジカルとして、メチル、エチル、イソプロピル、tert-ブチル及びn-ヘキシル基を挙げることができる。分岐オルガノポリシロキサンオリゴマー又はポリマーの例として、MQ樹脂、MDQ樹脂、TD樹脂及びMDT樹脂を挙げることができ、ヒドロキシル官能基が単位M、D及び/又はTによって担持されることが可能である。
【0166】
本発明の付加硬化性液状シリコーン組成物Xはまた、少なくとも1つの発泡剤Jを含有することができ、好ましくは、前記発泡剤Jは化学発泡剤であり、最も好ましくは、前記発泡剤Jは、重炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、アルカリ金属炭酸水素塩及びそれらの混合物からなる群から選択される。適用及び製造を容易にするために、発泡剤Jは、ポリジメチルシロキサン中に、又は1分子当たり少なくとも2つのケイ素結合C2~C20アルケニル基を有するオルガノポリシロキサンA中に、例えば30%~60重量%のレベルで、予め分散させることができる。結果として得られる組成物の貯蔵寿命を安定させるのに役立ち得るある任意の添加剤を最終的に組み込む。別の好ましい実施形態において、発泡剤Jは、重炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、アルカリ金属炭酸水素塩及びそれらの混合物からなる群から選択され得る。ここで、前記発泡剤Jは、≦50μm、さらにより好ましくは≦10μmのメジアン径(D50)を有するメジアン粒子を有する。
【0167】
本発明の付加硬化性液状シリコーン組成物Xはまた、本発明の分野で通常使用される少なくとも1つの添加剤Iを含有することができる。
【0168】
レオロジー特性を改善し、より高い流動性と成形品の滑らかな表面を提供するために、レオロジー調整剤を任意に追加することができる。そのようなレオロジー調整剤は、PTFE粉末、酸化ホウ素誘導体、脂肪酸脂肪アルコール誘導体又は誘導体、エステル及びその塩、又はフルオロアルキル界面活性剤などの流動添加剤であり得る。使用できるレオロジー調整剤の例としては、例えば、エポキシ官能性シラン、ポリ(アリール)シロキサン、ポリアルキレングリコール、ポリエステルポリオール、多価アルコール、ジカルボン酸、ポリエステルジオール、及びシリコーン-ポリエーテルブロック共重合体、遊離ポリエーテル、及びそれらの混合物などのシリコーンポリエーテル、例えば、BLUESIL SP-3300(シロキサン及びシリコーン、ジ-Me、3-ヒドロキシプロピルMe、エトキシル化プロポキシル化;Elkem Silicones)などがある。
【0169】
使用できる添加剤Iの例には、以下が含まれるが、これらに限定されない:有機染料又は顔料、熱安定性、高温空気に対する耐性、逆戻り、高温での微量の酸又は水の攻撃下での解重合を改善するためにシリコーンゴムに導入された安定剤。可塑剤、リリースオイル、又はポリジメチルシロキサンオイルなど、反応性アルケニル又はSiH基のない疎水化オイル。脂肪酸誘導体や脂肪族アルコール誘導体、フルオロアルキルなどの離型剤。ヒドロキシル化シリコーンオイルなどの相溶化剤。有機シランなどの接着促進剤及び接着調整剤。
【0170】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの添加剤Iは、例えば、Mevopur(登録商標)又はRemafin(登録商標)濃縮物(Clariant)などの医療分野での使用が承認された着色剤又は機能性添加剤などの添加剤である。
【0171】
本発明の付加硬化性液状シリコーン組成物Xを硬化することによって得られる硬化シリコーンエラストマーは、長期埋め込み型/薬物デリバリーデバイスシステムなどの医療用途に使用できると考えられる。そのようなシステムでは、少なくとも1つの添加剤Iは、末端アルケン、アルキン、又はカルボニル官能基を有する活性医薬成分などの活性医薬成分であり得る。活性医薬成分の非限定的な例は、レボノルゲストレル、エチニルエストラジオール、ノルエチステロン、二酢酸エチノジオール、デソゲストレル、リネストレノール、プロゲステロン及びそれらの混合物などのホルモン、ビマトプロストなどの合成ホルモン、デキサメタゾンなどのコルチコステロイド、プリテリビルなどの抗ウイルス化合物、ダピリビンなどの殺菌剤、及びそれらの任意の組み合わせである。
【0172】
本発明はまた、本明細書で定義される付加硬化性液状シリコーン組成物Xを硬化することによって得られる硬化シリコーンエラストマーにも関する。
【0173】
本発明の付加硬化性液状シリコーン組成物Xを硬化することにより得られる硬化シリコーンエラストマーが改善された機械的特性を示すことが有利に実証された。
【0174】
いくつかの実施形態では、付加硬化性液体シリコーン組成物Xを硬化することによって得られる硬化シリコーンエラストマーの引張強度は、オルガノシロキサンガムCが存在しない硬化シリコーンエラストマーと比較して増加する。例えば、付加硬化型液状シリコーン組成物Xを硬化させて得られる硬化シリコーンエラストマーの引張強度は、オルガノシロキサンガムCが存在しない硬化シリコーンエラストマーの引張強度より、少なくとも5%大きい、少なくとも10%大きい、少なくとも15%大きい、又は少なくとも20%大きい。いくつかの実施形態では、付加硬化性液体シリコーン組成物Xを硬化することによって得られる硬化シリコーンエラストマーの引張強度は、オルガノシロキサンガムCが存在しない硬化シリコーンエラストマーの引張強度と比較して、少なくとも21%増加する。
【0175】
いくつかの実施形態では、付加硬化性液体シリコーン組成物Xを硬化することによって得られる硬化シリコーンエラストマーの破断伸びは、オルガノシロキサンガムCが存在しない硬化シリコーンエラストマーと比較して増加する。例えば、付加硬化型液状シリコーン組成物Xを硬化させて得られる硬化シリコーンエラストマーの破断伸びは、オルガノシロキサンガムCが存在しない硬化シリコーンエラストマーの破断伸びより、少なくとも5%大きい、少なくとも10%大きい、少なくとも15%大きい、少なくとも20%大きい、少なくとも25%大きい、少なくとも30%大きい、少なくとも35%大きい、少なくとも40%大きい、少なくとも45%大きい、少なくとも50%大きい、少なくとも55%大きい、少なくとも60%大きい、少なくとも65%大きい、少なくとも70%大きい、少なくとも75%大きい、少なくとも80%大きい、又は少なくとも85%大きい。いくつかの実施形態では、付加硬化性液体シリコーン組成物Xを硬化することによって得られる硬化シリコーンエラストマーの破断伸びは、オルガノシロキサンガムCが存在しない硬化シリコーンエラストマーの破断伸びと比較して、少なくとも87%増加する。
【0176】
いくつかの実施形態では、付加硬化性液体シリコーン組成物Xを硬化することによって得られる硬化シリコーンエラストマーの引裂強度は、オルガノシロキサンガムCが存在しない硬化シリコーンエラストマーと比較して増加する。例えば、付加硬化型液状シリコーン組成物Xを硬化させて得られる硬化シリコーンエラストマーの引裂強度は、オルガノシロキサンガムCが存在しない硬化シリコーンエラストマーの引裂強度より、少なくとも5%大きい、少なくとも10%大きい、少なくとも15%大きい、少なくとも20%大きい、少なくとも25%大きい、少なくとも30%大きい、少なくとも35%大きい、少なくとも40%大きい、少なくとも45%大きい、少なくとも50%大きい、少なくとも55%大きい、少なくとも60%大きい、少なくとも65%大きい、少なくとも70%大きい、又は少なくとも75%大きい。いくつかの実施形態では、付加硬化性液体シリコーン組成物Xを硬化することによって得られる硬化シリコーンエラストマーの引裂強さは、オルガノシロキサンガムCが存在しない硬化シリコーンエラストマーの引裂強さと比較して、少なくとも79%増加する。
【0177】
本発明による付加硬化性液状シリコーン組成物Xの、押出3Dプリンター又は材料噴射3Dプリンターなどの3Dプリンターでの使用も、本明細書で提供される。
【0178】
いくつかの実施形態では、本発明による付加硬化型液状シリコーン組成物Xは、医療材料及び/又はデバイスの分野で使用することができる。例えば、本発明の付加硬化型液状シリコーン組成物Xを含む硬化製品も提供され、これは、薬物デリバリーデバイス、インプラントデバイス、医療用チューブ、胃カテーテル、医療用バルーン、カテーテルバルーン、人工透析機、血液透析機、インプラント部品、化学ストッパー、Oリング、蠕動薬物デリバリーポンプのチューブ、逆止弁、蘇生器バルブ、手足を取り付けるためのダイヤフラムとプロテーゼの吸盤といった、様々な用途に使用するのに適し得る。
【0179】
本明細書に記載の医療機器又は電子機器などの物品及び/又は製品における本発明の硬化シリコーンエラストマーの使用も提供される。
【0180】
本発明によって提供される他の利点は、以下の例示的な実施例から明らかになる。
【実施例
【0181】
材料及び方法
シリコーン組成物の調製
以下の例では、次の成分を使用した。
A1:直鎖α,ω-ビニルポリジメチルシロキサン(平均粘度20000mPa・s;Mn≒49,000g/mol)
A2:直鎖α,ω-ビニルポリジメチルシロキサン(平均粘度4000mPa・s;Mn≒31,000g/mol)
A3:直鎖α,ω-ビニルポリジメチルシロキサン(平均粘度1000mPa・s;Mn≒18,000g/mol)
A4:直鎖α,ω-ビニルポリジメチルシロキサン(平均粘度200mPa・s;Mn≒7,500g/mol)
B1:トリメチル末端(ジメチルシロキサン-メチル水素シロキサン)-ジメチルシロキサン共重合体(粘度18~26mPa・s;SiH17~23重量%)
B2:MH4Qシリコーン樹脂
Phガム1:ジフェニルシロキサン-ジメチルシロキサン-ビニルメチルシロキサン共重合体ガム(総フェニル含有量≒12mol%;総ビニル含有量≒0.072重量%;0.01s-1での粘度63,578,000mPa・s;Mn≒180,000g/mol);粘度(consistency)=540(範囲450~750)
Phガム2:ビニルジメチル末端ジフェニルシロキサン-ジメチルシロキサン共重合体ガム(総フェニル含有量≒10mol%;総ビニル含有量≒0.015重量%;粘度≒64,000,000mPa・s;Mn≒180,000g/mol);粘度(consistency)=範囲450~750
Phガム3:ビニルジメチル末端ジフェニルシロキサン-ジメチルシロキサン共重合体ガム(総フェニル含有量≒30mol%;総ビニル含有量≒0.015重量%;粘度≒64,000,000mPa・s;Mn≒180,000g/mol);粘度(consistency)=範囲450~750
Phガム4:ジフェニルシロキサン-ジメチルシロキサン-ビニルメチルシロキサン共重合体ガム(総フェニル含有量≒12mol%;総ビニル含有量≒0.036重量%;0.01s-1での粘度59,700,000mPa・s;Mn≒180,000g/mol);粘度(consistency)=672(範囲450~750)
Ph油:ビニルジメチル末端ジフェニルシロキサン-ジメチルシロキサンコポリマーオイル(総フェニル含有量≒39mol%;総ビニル含有量≒0.70重量%;粘度800mPa・s;Mn≒7,400g/mol)
ガム1:末端ビニルジメチル(ビニルメチルシロキサン)-ジメチルシロキサン共重合体ガム(総ビニル含有量0.04~0.06重量%、粘度>10,000,000mPa・s、Mn≒220,000g/mol)
粘度(consistency)=648(範囲600~900)
ガム2:トリメチル末端(ビニルメチルシロキサン)-ジメチルシロキサンコポリマーガム(総ビニル含有量0.0675~0.0825重量%、0.01s-1での粘度19,290,000mPa・s、Mn≒220,000g/mol)
粘度(consistency)=692(範囲600~900)
OHガム:ヒドロキシ末端ポリジメチルシロキサンガム(総ヒドロキシ含有量≒0.01重量%;粘度>10,000,000mPa・s;Mn≒220,000g/mol)
D1:白金触媒溶液:短い直鎖α,ω-ビニルポリジメチルシロキサンオイルで希釈した白金金属(白金中の重量%=3.38)
D2:白金触媒溶液:短い直鎖α,ω-ビニルポリジメチルシロキサンオイルで希釈した白金金属(白金中の重量%=10)
E1:その場で処理された親水性ヒュームドシリカ(ヘキサメチルジシラザンで処理されたAEROSIL(登録商標)300)
E2:その場で処理された親水性ヒュームドシリカ(ヘキサメチルジシラザン及びジビニルテトラメチルジシラザンで処理されたAEROSIL(登録商標)300)
F:α,ω-ヒドリドポリジメチルシロキサン(H-PDMS-H)(粘度7~10mPa.s;Mn≒750g/mol)
G1:ECH(1-エチニル-1-シクロヘキサノール)
G2:テトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサン
【0182】
方法
1)3DジオメトリとSTLファイル
-寸法が20mm×20mm×20mmの50%充填された立方格子。STLファイルはCura2.0で作成、スライスされ、SDカードに保存される。
-印刷パラメータ(全体で変更なし)は、速度、押出速度、層の高さなどに組み込まれている。
【0183】
2)プリンターとディスペンサー
-Ultimaker2+3Dプリンターと、Structur3dのDiscov3ry Paste Extruderを組み合わせたもの
-Genesis Instrumentsの標準プランジャー付き60ccPEルアーロックシリンジ。ルアーロック接続と直径.41mmのコニカルノズル(どちらもNordson EFD製)。
【0184】
3)3D印刷適性測定
硬化後、3D印刷されたシリコーンエラストマーを視覚的に検査し、次の基準に従って特徴付けた:
-「優」:3D印刷された物品は、未硬化状態と硬化状態の両方で、CADファイルのレンダリングに関して、すべての構造的完全性と高忠実度を維持している。
-「良」:3D印刷された物品は、ほとんどの構造的完全性を維持しているが、未硬化状態と硬化状態の両方で、スランピング、崩壊、又は反りにより、CADファイルのレンダリングに関して、ある程度の忠実度を失っている可能性がある。
-「可」:3D印刷された物品は、ある程度の構造的完全性を維持しているが、未硬化状態と硬化状態の両方で、スランピング、崩壊、又は反りにより、CADファイルのレンダリングに関して、ある程度の忠実度を失っている可能性がある。
-「不可」:3D印刷された物品は、構造的完全性をほとんど又はまったく維持しておらず、CADファイルのレンダリングに関してほとんど又はまったく忠実ではない。
【0185】
4)レオロジー挙動-緩和時間
-レオロジー測定は、Anton Paar社、スイープ解析ギャップ=0.300mm、温度=25.0℃、適用せん断速度=1rads-1、移動プロファイル=粘弾性で実施された。
-貯蔵弾性率は、変形が加えられた(「適用されたせん断速度」)材料に蓄えられるエネルギーの尺度である。
-配合のチキソトロピー挙動は、回復時間又は緩和時間の決定によって特徴付けられた。これは、せん断前処理後の経時的な貯蔵弾性率の成長の測定から得られた。このせん断前処理の目的は、プリンターノズル内の流れの影響をシミュレートすることである。次に、回復時間は、貯蔵弾性率曲線の最初の部分と最後の部分に接する線の間の交点によって定義された。
【0186】
5)機械的特性
-標準ASTM D412に記載された方法に従って、次の機械的特性を評価した:デュロメーターショアA/ショアOO、引張強度、破断伸び、引裂強度、硬度、及び弾性率。
【0187】
例1-本発明の例示的な組成物。
以下の表1に定義されるシリコーン組成物は、上記のように室温で3D印刷され、続いて150℃に30分間加熱された。レオロジー測定は、上記のように別々に行った。
【0188】
【表1】
【0189】
表1及び図1に示すように、フェニル含有ガム(Phガム1)の導入により、液状シリコーン組成物の3D印刷適性が大幅に向上し、加熱下での液状シリコーン組成物の硬化能力が維持された。主鎖にフェニル基が存在すると、急速な緩和時間によって示されるようにチキソトロピー挙動が誘導される(表1)。
【0190】
ヒドロキシル(OHガム)又はビニル官能基(ガム1及びガム2)などの他の官能基を含有するガムによるフェニル含有ガムの置換は、上記の表1及び図2の比較例である比較2~4によって示されるように、同じチキソトロピー効果をもたらさなかった。
【0191】
3D印刷された組成物の代表的な写真は、比較例1(Comp1、ガムなし、図1A)、例示的組成物1(例1、フェニルガム(Phガム1)、図1B)、及び比較組成物2(比較2、ビニルガム(Gum2)、図1E)について図1に提供される。例1(図1B)のみが崩壊することなくその形状を保持していた。
【0192】
例2-様々な量のフェニル含有ガムの効果
異なる量のPhガム1を含むデュロメーターの低いシリコーン組成物を調合し、評価した。最終的に100%にするために、Phガム1の減少を補うためにガム2が追加された。
【0193】
以下の表2に定義されるシリコーン組成物は、上記のように室温で3D印刷され、続いて150℃に30分間加熱された。レオロジー測定は、上記のように別々に行った。150℃で30分間、続いて115℃で30分間硬化した後、機械的特性を上記のように測定した。結果を表2に示す。チキソトロピー特性を図3に示す。
【0194】
【表2】
【0195】
表2、図1、及び図3に示されるように、液体シリコーン組成物の3D印刷適性及びチキソトロピー挙動は、組成物中のフェニル含有ガムの割合が減少するにつれて悪化した。特に、図1Bは、例1の3D印刷された組成物の代表的な写真を示し、図1Cは、例2の3D印刷された組成物の代表的な写真を示し、図1Dは、例3の3D印刷された組成物の代表的な写真を示し、図1Eは、例4の3D印刷された組成物の代表的な写真を示し、図1Fは、比較2の3D印刷された組成物の代表的な写真を示す。
【0196】
例3-様々なフェニル含有ガムと油の効果
以下の表3に定義されるシリコーン組成物は、上記のように室温で3D印刷され、続いて150℃に30分間加熱された。レオロジー測定は、上記のように別々に行った。
【0197】
【表3】
【0198】
表3及び図4に示されるように、組成物中のフェニルの総モル%が2.4%に維持されているにもかかわらず、フェニル含有量が少ない(30モル%未満)オルガノシロキサンを含む液状シリコーン組成物は、フェニル含有量が高い(30モル%以上)オルガノシロキサンを含む液状シリコーン組成物よりも良好に機能した。具体的には、例1及び例5はそれぞれ、フェニル含有量が12モル%(Phガム1)又は10モル%(Phガム2)のガムを含み、好ましい緩和時間及びLog10(貯蔵弾性率)を示した。対照的に、フェニル含有量が30モル%のガム(Phガム3)を含む例6は、組成物中のフェニルの総モル%が2.4%に維持されているにもかかわらず、より長い緩和時間とより低いLog10(貯蔵弾性率)を示した。ガム2(ビニルガム)の添加により総ガム%が20%に維持されたので、これは粘度の変化によるものではないようである。Phガム3の量を20%に増やすと(例7)、結果が改善され、組成物内のフェニルガムの量とガムのフェニル含有量の両方が組成物の全体的な特性にとって重要であることを示唆している。
【0199】
より高いフェニル含有量を有するフェニル含有オルガノシロキサンオイル(比較5)の使用もまた、より長い緩和時間及びより低いLog10(貯蔵弾性率)をもたらした。
【0200】
例4-高硬度シリコーンエラストマー
以下の表4に定義されるシリコーン組成物は、上記のように室温で3D印刷され、続いて150℃に30分間加熱された。レオロジー測定は、上記のように別々に行った。機械的特性は、150℃で30分間硬化させ、さらに115℃で30分間硬化させた後、上記のように測定された。
【0201】
【表4】
【0202】
表4及び図5に示すように、フェニル含有オルガノシロキサンオイル(Ph油3)の代わりにフェニル含有オルガノシロキサンガム(Phガム1)を使用すると、得られる液体シリコーン組成物の3D印刷適性が向上した。図5Aは、比較6の3D印刷された組成物の代表的な写真を示し、図5Bは、例8の3D印刷された組成物の代表的な写真を示し、図5Cは、例9の3D印刷された組成物の代表的な写真を示す。例8は、図5Bからは明らかではないいくつかの内部崩壊を示したため、表4では、「可」の3D印刷適性を有するものとして特徴付けられている。
【0203】
さらに、フェニル含有オルガノシロキサンガムを含む硬化シリコーンエラストマーは、フェニル含有オルガノシロキサンオイルを含む硬化シリコーンエラストマーと比較して、より優れた機械的特性(例えば、より高い引張強度、破断点伸び、及び引裂強さ)を示した。特に、本発明のフェニル含有オルガノシロキサンガムを含む硬化シリコーンエラストマーは、フェニル含有オルガノシロキサンオイルを含む硬化シリコーンエラストマーと比較して、引張強度は少なくとも21%増加し、破断伸びは少なくとも87%増加し、引裂強さは少なくとも79%増加した。
【0204】
例5-Phガム1とガム2のチキソトロピー特性の比較
上記の例に示されるように、フェニル含有ガムを含む低デュロメーター及び高デュロメーターシリコーン組成物の両方が、フェニル基を含まない同様のガムを含むシリコーン組成物よりも優れていた。したがって、上記の例で使用したガムのうちの3つ(Phガム1、ガム1、及びガム2)を比較して、それらのチキソトロピー特性がこの効果に寄与できるかどうかを決定した。Phガム1と同様の特性を持つ追加のフェニルガムも研究された(Phガム4;ビニルジメチル末端ジフェニルシロキサン-ジメチルシロキサン共重合体ガム(全フェニル含有量≒30モル%;総ビニル含有量≒0.036重量%;粘度≒64,000,000mPa・s;Mn≒180,000g/mol))。
【0205】
稠度は、PNR12又は標準化された条件下でサンプルに円筒形ヘッドを適用できる同等のモデルの針入度計によって25℃で測定される。ガムの硬さは形状記憶円筒体が1分間にサンプルに侵入する深さ(mm)の10倍の値で表される。これを行うために、直径40mm、高さ60mmのアルミニウム容器にガムサンプルを入れる。直径6.35mm、高さ4.76mmのブロンズ又は真鍮の円筒形のヘッドが、針入度計に適した長さ51mm、直径3mmの金属棒に取り付けられた。この棒には100gの荷重が取り付けられた。アセンブリの総重量は151.8gである。ガムサンプル容器を25℃±0.5℃に設定された浴に最低30秒間入れる。製造元の指示に従って測定を実行する。
【0206】
ガムの粘度は、Anton Paarタイプのレオメーター、又は0.300mmの2つのプラトー間に設定されたゼロギャップと、25.0℃で0.01s-1~100s-1の間のせん断速度範囲を備えた同等のレオメーターを使用して測定した。
【0207】
表5に、これらのガムのそれぞれの粘度と稠度の値を示す。図6は、線形(図6A)及び対数(図6B)スケールの両方でチキソトロピー特性を提供する。両方のフェニルガム(Phガム1及びPhガム4)は、低せん断速度(例えば、0.01s-1)でビニルガム(ガム1及びガム2)よりも粘性が高かった。しかし、より高いせん断速度(例えば、0.3s-1以上)では、4つのガムすべての粘度は同様であった。
【0208】
【表5】
【0209】
例6-充填剤の効果
フェニルガム(Phガム1)、充填剤(HMDZ処理シリカ(E1))、及び直鎖α,ω-ビニルポリジメチルシロキサン(平均粘度60000;PDMS流体)を含む一連のサンプルを、4つの組み合わせ(フェニルガムなし/充填剤なし、フェニルガムなし/充填剤なし、フェニルガム/充填剤なし、フェニルガム/充填剤なし)で作成した。フェニルガムを20%、充填剤を1%添加した。目的は、単に粘度の増加ではなく、チキソトロピー効果がどこから来たのかを特定することであった。4つのサンプルすべてで粘度が大幅に増加したが、チキソトロピー特性は示さなかったことがわかった。フィラー含有量が1重量%では不十分であった。50%のフェニルガム及び50%のPDMS流体のさらなるサンプルを作製したところ、再び粘度が増加したが、チキソトロピー特性は増加しなかった。PDMS流体と濃縮フィラー(>25%)の典型的な組み合わせもチキソトロピー特性を示さないことを考えると、これらの要因だけでは、組成物を3D印刷可能にすることはできないが、ガムのフェニル含有量とフィラーの相乗効果が必要であるといえる。
【0210】
本明細書で引用されるすべての参考文献は、各参考文献が参照により組み込まれることが具体的かつ個別に示されているかのように、参照により本明細書に組み込まれる。参考文献の引用は、出願日の前のその開示のためのものであり、本開示が先行発明のためにそのような参考文献に先行する権利がないことを認めるものと解釈されるべきではない。
【0211】
上記要素のそれぞれ、又は2つ以上の集まりが、上記のタイプとは異なる他のタイプの方法においても有用な用途が見出される可能性があることが理解される。さらなる分析なしに、前述のことは、本開示の要旨を完全に明らかにするので、他の者は、現在の知識を適用することにより、先行技術の観点から、添付の特許請求の範囲に記載される本開示の一般的又は特定の態様の本質的な特徴を公正に構成する特徴を省略せずに、それを様々な用途に容易に適合させることができる。前述の実施形態は、例としてのみ提示されている。本開示の範囲は、特許請求の範囲によってのみ限定されるべきである。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6