(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】火力発電ユニット用高強度超合金及びその加工プロセス
(51)【国際特許分類】
C22C 30/00 20060101AFI20241001BHJP
C22F 1/16 20060101ALI20241001BHJP
C22C 1/02 20060101ALI20241001BHJP
C22F 1/00 20060101ALN20241001BHJP
【FI】
C22C30/00
C22F1/16 Z
C22C1/02 503N
C22F1/00 651B
C22F1/00 650A
C22F1/00 630K
C22F1/00 611
C22F1/00 624
C22F1/00 691B
C22F1/00 691C
C22F1/00 630A
C22F1/00 681
C22F1/00 683
C22F1/00 684C
C22F1/00 682
C22F1/00 694B
C22F1/00 694A
C22F1/00 692A
C22F1/00 692B
C22F1/00 691A
(21)【出願番号】P 2022564104
(86)(22)【出願日】2021-05-08
(86)【国際出願番号】 CN2021092505
(87)【国際公開番号】W WO2021223760
(87)【国際公開日】2021-11-11
【審査請求日】2022-10-20
(31)【優先権主張番号】202010383732.9
(32)【優先日】2020-05-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】522090095
【氏名又は名称】華能国際電力股分有限公司
【住所又は居所原語表記】Huaneng Building, NO.6 FuxingmenNei Street, Xicheng District Beijing 100031 (CN)
(73)【特許権者】
【識別番号】520455014
【氏名又は名称】西安熱工研究院有限公司
【氏名又は名称原語表記】Xi’an Thermal Power Research Institute CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】No.136 Xingqing Road,Beilin District,Xi’an City,Shaanxi Province,China
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】厳靖博
(72)【発明者】
【氏名】谷月峰
(72)【発明者】
【氏名】袁勇
(72)【発明者】
【氏名】楊征
(72)【発明者】
【氏名】張醒興
【審査官】河口 展明
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第110952016(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第103556073(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22C 30/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
質量%で0.05%~0.08%のC、14%~17%のCr、0.5%以下のMn、0.5%以下のSi、1.0%~2.5%のW、0.3%~2.0%のMo、2.0%~2.5%のTi、1.0%~1.5%のAl、0.003%以下のB、0.03%以下のZr、37%~48%のFe及び残部としてNiからなることを特徴とする、火力発電ユニット用高強度超合金。
【請求項2】
火力発電ユニット用高強度超合金の調製プロセスであって、以下のステップ、
製錬及び均質化処理:質量%で0.05%~0.08%のC、14%~17%のCr、0.5%以下のMn、0.5%以下のSi、1.0%~2.5%のW、0.3%~2.0%のMo、2.0%~2.5%のTi、1.0%~1.5%のAl、0.003%以下のB、0.03%以下のZr、37%~48%のFe及び残部としてNi
からなるように取り、真空下で、Cr、Ni、W、Si、Mn、Mo及びFeを溶融して精錬した後、アルゴンガスの保護下でAl、Ti、B、Zr及びCを添加して鋳造し、凝固後、最後に均質化処理を行った後、室温まで空冷する、ステップ(1)、
鍛造及びビレット:ステップ(1)で製錬及び均質化処理された合金を、γ'析出温度より200℃~250℃高い温度でビレット及び鍛造し、各パスの変形量が30%以上で、最終の総変形量が70%以上である、ステップ(2)、
高温圧延:ステップ(2)で鍛造及びビレットされた合金を、γ'析出温度より150℃~200℃高い温度で高温圧延し、各パスの変形量が35%以上で、最終の総変形量が80%以上である、ステップ(3)、及び
高温ソソロイド及び時効処理:ステップ(3)で高温圧延された合金を高温ソソロイド及び時効処理するステップ(4)を含むことを特徴とする、火力発電ユニット用高強度超合金の調製プロセス。
【請求項3】
ステップ(1)において、精錬時間が0.5~1時間であることを特徴とする、請求項2に記載の火力発電ユニット用高強度超合金の調製プロセス。
【請求項4】
ステップ(1)の具体的な過程は、真空度が0.3Pa~0.5Paに達した場合、Cr、Ni、W、Si、Mn、Mo及びFeを溶融させた後、脱酸のためにコークスを添加し、コークス脱酸の添加質量がCの質量の25%~50%を超えず、次に、Ni-Mg合金を添加して二次脱酸を行い、最後にAl、Ti、B、Zr及びCを添加し、5分~10分間攪拌した後、鋳造のために炉から取り出し、鋳造温度が1600℃以上であり、その後凝固させ、最後に均質化処理を行った後、室温まで空冷することを特徴とする、請求項2に記載の火力発電ユニット用高強度超合金の調製プロセス。
【請求項5】
ステップ(1)において、鋳造する際に金型を用い、凝固する際にアルミ発熱剤を用いて溶鋼表面を被覆することを特徴とする、請求項2に記載の火力発電ユニット用高強度超合金の調製プロセス。
【請求項6】
ステップ(1)における均質化処理は、具体的に、10℃/分~30℃/分の昇温速度で室温から1050℃~1120℃まで昇温させ、24時間保温することを特徴とする、請求項2に記載の火力発電ユニット用高強度超合金の調製プロセス。
【請求項7】
ステップ(1)において、凝固させた後、900℃~980℃で1.0~1.5時間保温し、その後、均質化処理を行うことを特徴とする、請求項2に記載の火力発電ユニット用高強度超合金の調製プロセス。
【請求項8】
ステップ(2)において、鍛造及びビレットの各パスが完了した後、保温のために炉に戻し、保温時間Tと炉外時間tは、5t≦T≦10tを満たすことを特徴とする、請求項2に記載の火力発電ユニット用高強度超合金の調製プロセス。
【請求項9】
ステップ(3)において、高温圧延の各パスが完了した後、保温のために炉に戻し、保温時間Tと炉外時間tは、5t≦T≦10tを満たすことを特徴とする、請求項2に記載の火力発電ユニット用高強度超合金の調製プロセス。
【請求項10】
ステップ(4)の具体的な過程は、まず1100℃~1125℃まで昇温させ3~5時間ソソロイドした後、室温まで空冷させ、次に、10℃/分~30℃/分の昇温速度で室温から630℃~680℃まで昇温させ、7~10時間保温した後に空冷し、最後に、10℃/分~30℃/分の昇温速度で室温から740℃~800℃まで昇温させ、1~3時間保温した後に空冷することを特徴とする、請求項2に記載の火力発電ユニット用高強度超合金の調製プロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、材料及び材料の調製分野に属し、具体的に、火力発電ユニット用高強度超合金及びその加工プロセスに関し、700℃レベルの先進超々臨界火力発電ユニットの主蒸気パイプ及びヘッダなどの肉厚部品の加工及び使用性能要件を満たすことができる。
【背景技術】
【0002】
中国では電力需要の増加に伴い、エネルギー不足及び環境汚染の問題が益々顕在化しており、高効率、省エネルギー及び環境に優しい発電方法の開発が急務になっている。火力発電は、中国で長い間最も重要な発電技術であり、ユニットの蒸気パラメータを改善することが、上記の問題を解決するための最も有効な方法と考えられている。従来の多数の実践により、重要部品材料のサービス性能が、ボイラユニットの蒸気パラメータの改善を制限する最も主要な原因であることが示されている。火力発電ユニットのボイラーにおいて、使用条件が最も厳しい重要部品の一つとして、主蒸気パイプ及びヘッダなどの大口径の厚肉パイプは、材料の使用性能に対して非常に高い要求を提出している。火力発電ユニットの主蒸気パラメータの大幅な改善に伴い、火力発電業界では、700℃レベルユニットの大口径厚肉パイプの性能要件を満たすことができ、加工性能に優れた超合金材料を開発することが急務となっている。
【0003】
現在、中国の国内外の600℃レベル以下の火力発電ユニットの大口径厚肉パイプには、フェライト系耐熱鋼(9~12wt.%のCr)及びオーステナイト系耐熱鋼が主に選択して使用されている。一般的に使用されているフェライト系耐熱鋼は、主にTP91、NF616、E911、HCM12Aなどである。これらの材料は、耐久性と耐食性に優れているため、600℃レベル以下ユニットの大口径厚肉パイプに広く使用されている。うち、TP91は完全に国産化され、中国の亜臨界及び超臨界火力発電ユニットで広く応用され、大量の使用性能データが蓄積されている。これらのデータと実践はすべて、フェライト系耐熱鋼が、大口径の厚肉パイプ材料の性能に対する高温パラメータの性能要件を満たすのが難しいことを示している。フェライト系耐熱鋼と比較して、粗結晶(TP304H、TP347H)、細結晶(Super304H、TP347HFG)及び高クロム(HR3C、NF709、SAVE25)などのオーステナイト系耐熱鋼は、耐久強度、抗酸化性及び腐食性能などにより優れている。しかし、これは適用過程においても伝熱効率が低く、熱膨張係数が高く、コストが高いなど多くの問題を露呈している。特に、主蒸気温度が700℃を超えると、オーステナイト系耐熱鋼の強度も同様に、材料に対する大口径厚肉パイプの使用性能要件を満たすことができない。
【0004】
700℃レベルの超々臨界ユニットボイラーの大口径厚肉パイプの材料使用性能に対する要求に対して、現在海外では、米国特殊金属会社が開発したInconel74H、米国のハステロイ社が開発したHaynes282、ドイツのティッセンクルップ社が開発したCCA617、英国のRolls-Royce社が開発したNimonic263及び日本の日立製作所が開発したUSC41など一連のニッケル基の異形超合金材料が開発されている。これらの材料は、優れた高温耐久強度と抗酸化性能を備えているが、高価で、溶接性能が低く、製錬や熱処理などの高度の技術的要件があり、迅速な普及と応用が制限されている。また、日本の住友社は、HR6W及びHR35などの鉄ニッケル基の超合金も開発しており、スウェーデンのサントウィック社は、Sanicro25鉄ニッケル基合金を開発しており、中国の中国科学院瀋陽金属研究所と鉄鋼研究総院でもGH2984及びGH110などの鉄ニッケル基の異変超合金を開発した。上記の幾つかの鉄ニッケル基の超合金は、ニッケル基の異形超合金に比べて原料コストの面で有利であるが、熱強度が低く、構造安定性と耐食性に劣っている。同時に、使用に必要な構造や性能を得るためには変形加工が必要であり、調製と加工プロセスが複雑で、全体の製造コストが高く、さらに性能を向上させることが困難である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、従来技術の課題を解決し、火力発電ユニット用高強度超合金及びその加工プロセスを提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の目的を実現するために、以下の技術的解決策を採用する。
火力発電ユニット用高強度超合金は、質量%で、0.05%~0.08%のC、14%~17%のCr、0.5%以下のMn、0.5%以下のSi、1.0%~2.5%のW、0.3%~2.0%のMo、2.0%~2.5%のTi、1.0%~1.5%のAl、0.003%以下のB、0.03%以下のZr、37%~48%のFe及び残部としてNiからなるものである。
【0007】
火力発電ユニット用高強度超合金の調製プロセスは、以下のステップを含む。
ステップ(1)-製錬及び均質化処理:質量%で、0.05%~0.08%のC、14%~17%のCr、0.5%以下のMn、0.5%以下のSi、1.0%~2.5%のW、0.3%~2.0%のMo、2.0%~2.5%のTi、1.0%~1.5%のAl、0.003%以下のB、0.03%以下のZr、37%~48%のFe及び残部としてNiを取り、真空下で、Cr、Ni、W、Si、Mn、Mo及びFeを溶融して精錬した後、アルゴンガスの保護下でAl、Ti、B、Zr及びCを添加して鋳造し、凝固させた後、最後に均質化処理を行った後、室温まで空冷する。
【0008】
ステップ(2)-鍛造及びビレット:ステップ(1)で製錬及び均質化処理された合金を、γ'析出温度より200℃~250℃高い温度でビレット及び鍛造し、各パスの変形量が30%以上で、最終の総変形量が70%以上である。
【0009】
ステップ(3)-高温圧延:ステップ(2)で鍛造及びビレットされた合金を、γ'析出温度より150℃~200℃高い温度で高温圧延し、各パスの変形量が35%以上で、最終の総変形量が80%以上である。
【0010】
ステップ(4)-高温ソソロイド及び時効処理:ステップ(3)で高温圧延された合金を高温ソソロイド及び時効処理する。
【0011】
本発明のさらなる改善は、ステップ(1)における精錬時間が0.5~1時間であることである。
【0012】
本発明のさらなる改善は、ステップ(1)の具体的な過程において、真空度が0.3Pa~0.5Paに達した場合、Cr、Ni、W、Si、Mn、Mo及びFeを溶融させ、脱酸のためにコークスを添加し、コークス脱酸の添加質量がCの質量の25%~50%を超えず、次に、二次脱酸のためにNi-Mg合金を添加し、最後にAl、Ti、B、Zr及びCを添加し、5分~10分間攪拌した後、鋳造のために炉から取り出し、鋳造温度が1600℃以上であり、その後凝固させ、最後に均質化処理を行った後、室温まで空冷することである。
【0013】
本発明のさらなる改善は、ステップ(1)において、鋳造する際に金型を用い、凝固する際にアルミ発熱剤を用いて溶鋼表面を被覆することである。
【0014】
本発明のさらなる改善は、ステップ(1)において、具体的な均質化処理は、10℃/分~30℃/分の昇温速度で室温から1050℃~1120℃まで昇温させ、24時間保温することである。
【0015】
本発明のさらなる改善は、ステップ(1)において、凝固させた後、900℃~980℃で1.0~1.5時間保温し、その後、均質化処理を行うことである。
【0016】
本発明のさらなる改善は、ステップ(2)において、鍛造及びビレットの各パスが完了した後、保温のために炉に戻し、保温時間Tと炉外時間tが5t≦T≦10tを満たすことである。
【0017】
本発明のさらなる改善は、ステップ(3)において、高温圧延の各パスが完了した後、保温のために炉に戻し、保温時間Tと炉外時間tが5t≦T≦10tを満たすことである。
【0018】
本発明のさらなる改善は、ステップ(4)における具体的な過程は、まず1100℃~1125℃まで昇温させて3~5時間ソソロイドさせた後、室温まで空冷し、次に、10℃/分~30℃/分の昇温速度で室温から630℃~680℃まで昇温させ、7~10時間保温した後に空冷し、最後に、10℃/分~30℃/分の昇温速度で室温から740℃~800℃まで昇温させ1~3時間保温した後、空冷することである。
【発明の効果】
【0019】
従来技術と比較して、本発明は次のような有益効果を有する。本発明の合金は、Fe元素の含有量が比較的に高く、W及びNbなどの貴重な元素の含有量が比較的に低いため、合金の原料コストが制限される。同時に、合金の調製プロセスでは、超合金の従来の3重溶解製錬プロセスを放棄し、電気アーク溶解製錬した後、直接ビレット圧延を採用することによって、合金の調製成分を減らす。うち、製錬過程において二次脱酸を行い、また鋳造後の溶融金属の凝固速度を低下させるために発熱剤を使用する。次に、合金に対して複数パスの大きな変形加工を行い、その鍛造及び圧延の温度はγ'析出温度よりそれぞれ200℃~250℃及び150℃~200℃高い範囲内に制御される。また、シングルパスの変形量はそれぞれ30%及び35%以上で、供給期間中に合金が十分な歪貯蔵エネルギーを蓄えることを保証する。最後に、熱処理後の合金は高温強度性能が優れており、700℃での降伏強度が540MPa以上で、延伸率が12%以上である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】実施例1におけるインゴット(表面酸化スケールが既に旋削された)の写真である。
【
図2】実施例1における鍛造完了後のスラブの写真である。
【
図3】実施例2におけるシングルパスの圧延が終了後の板材の写真である。
【
図4】実施例2における圧延後の板材の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明は実施例を参照してさらに詳細に説明する。
【0022】
本発明の火力発電ユニット用高強度超合金は、合金成分が以下の範囲(質量%で):0.05%~0.08%のC、14%~17%のCr、0.5%以下のMn、0.5%以下のSi、1.0%~2.5%のW、0.3%~2.0%のMo、2.0%~2.5%のTi、1.0%~1.5%のAl、0.003%以下のB、0.03%以下のZr、37%~48%のFe及び残部がNiであることに適合する。
【0023】
上記合金の調製プロセスは、具体的に以下の合金溶解製錬、変形及び熱処理の3つのステップを主に含む。
ステップ(1)-製錬及び均質化処理:上記の合金を誘導電気アーク炉で製錬し、誘導電気アーク炉は酸化マグネシウムアルカリ炉ライニングを用い、溶解製錬する前に、純ニッケル洗浄炉を採用し、合金原料を添加する前に、ショットブラスト処理を行う。真空度を0.3Pa~0.5Paの範囲内に制御し、合金中のCr、Ni、W、Si、Mn、Mo及びFeが完全に溶融された後、0.5~1時間精錬し、次に、高純度のアルゴンガスを入れて保護する環境下でAl、Ti、B、Zr及びCを添加して鋳造する。凝固させた後、インゴットを1050℃~1120℃の範囲内で24時間~72時間均質化処理した後、室温まで空冷する。
【0024】
ステップ(2)-鍛造及びビレット:ステップ(1)で製錬及び均質化処理された合金を、γ'析出温度より200℃~250℃高い温度でビレット及び鍛造し、各パスの変形量が30%以上で、最終の総変形量が70%以上である。
【0025】
ステップ(3)-高温圧延:ステップ(2)で鍛造及びビレットされた合金からインゴット表面の酸化スケールを、0.5mm~1mmの深さで旋削する。表面酸化スケールの旋削が完了した後、ロールを500℃以上に加熱し、γ'析出温度より150℃~200℃高い温度で高温圧延し、各パスの変形量が35%以上で、最終の総変形量が80%以上である。また、鍛造及び圧延の各パスが完了した後、保温のために炉に戻し、その保温時間Tと炉外時間tは、5t≦T≦10tを満たす。
【0026】
ステップ(4)-高温ソソロイド及び時効処理:ステップ(3)で高温圧延された合金を1100℃~1125℃まで昇温させ3~5時間ソソロイドした後、室温まで空冷し、次に、630℃~680℃まで加熱して7~10時間保温した後に空冷し、最後に740℃~800℃まで加熱し1~3時間保温した後、空冷する。
【0027】
好ましくは、Cr、Ni、W、Si、Mn、Mo及びFeが完全に溶融した後、脱酸のためにコークスを添加し、コークス脱酸の添加質量は、合金原料におけるC元素の質量の25%~50%を超えず、完了した後、二次脱酸のためにNi-Mg合金を添加する。最後に、Al、Ti、B、Zr及びCの焼損しやすい元素を添加し、5分~10分攪拌した後炉から取り出し、炉から取り出す際の鋳造温度が1600℃以上である。また、鋳造する際に金型を用い、凝固する際にアルミ発熱剤を用いて溶鋼表面を被覆することによって、凝固速度を低下させ溶融金属の候補縮小を促進する。
【0028】
均質化処理、ソソロイド及び時効処理の昇温段階における合金の昇温速度は、10℃/分~30℃/分の範囲内で制御する必要があり、うち、均質化処理温度に昇温させる前に、インゴットを900℃~980℃で1.0~1.5時間保温する必要がある。次に、温度を10℃/分~30℃/分の速度で1050℃~1120℃まで昇温させる。
【0029】
熱処理された合金は、優れた高温強度性能を有し、700℃での降伏強度が540MPa以上で、延伸率が12%以上である。
【0030】
実施例1
本実施例における火力発電ユニット用高強度超合金は、質量%で0.06%のC、16%のCr、0.2%のMn、0.15%のSi、1.6%のW、1.2%のMo、2.2%のTi、1.4%のAl、0.002%のB、0.02%のZr、37%のFe及び残部としてNiを含む。
【0031】
合金の溶解製錬は、酸化マグネシウムアルカリラ炉ライニングを用い、溶解製錬する前に純ニッケル洗浄炉を用い、合金原料を添加する前にショットブラスト処理を行う。合金は、誘導電気アーク炉を用いて製錬し、真空度を0.35Paに制御し、Cr、Ni及びWなどの元素が完全に溶融した後、40分間精錬し、Al、Ti、B、Zr及びCを添加する前に、高純度のアルゴンガスを入れて保護する。Cr、Ni及びWなどの合金原料が完全に溶融した後、脱酸のためにコークスを添加し、その添加質量が合金原料中のC元素質量の50%を超えないようにする。完了した後、二次脱酸のためにNi-Mg合金を添加し、最後に、Al、Ti、B、Zr及びCなどの焼損しやすい元素を添加し、5分間攪拌してから炉から取り出し、その鋳造温度は1630℃である。合金鋳造は金型を用い、鋳造した後、溶鋼表面を硝酸ナトリウム+酸化アルミ系発熱剤で被覆することによって、凝固速度を低下させ、溶融金属の候補縮小を促進する。
【0032】
溶鋼が凝固した後、インゴットを10℃/分の速度で1020℃まで昇温させ1.0時間保温し、次に、1160℃の範囲内に昇温させ24時間均質化処理した後、室温まで空冷する。表面酸化スケールの旋削が完了した後、合金をγ'析出温度より220℃高い温度でビレット及び鍛造し、各パスの変形量が30%で、最終の総変形量が70%である。その後、合金をγ'析出温度より160℃高い温度で高温圧延を行い、各パスの変形量が35%で、最終の総変形量が80%である。ロールは合金の圧延の前に500℃以上に加熱され、鍛造及び圧延の各パスが完了した後、炉に戻し30分間保温する。合金の圧延が完了した後、1120℃まで昇温させ4時間ソソロイドしてから室温まで空冷する。その後、650℃まで加熱して8時間保温してから空冷し、最後に、760℃まで加熱して2時間保温した後、空冷する。うち、均質化処理、ソソロイド及び時効処理の昇温段階における合金の昇温速度は10℃/分であり、均質化処理の温度まで昇温させる前に、インゴットを950℃で1.0時間保温する必要がある。
【0033】
図1及び
図2は、実施例1におけるインゴットと鍛造後の合金スラブの写真であり、その表面には明らかな亀裂がなく、これは、合金の製錬及び加工プロセス方案が合理的であることを示している。合金の性能試験結果は、合金の700℃での降伏強度が582MPaに分けられ、延伸率が14.2%であり、合金が優れた高温強度性能を有することを示している。
【0034】
実施例2
本実施例における高強度超合金は、質量%で0.07%のC、15%のCr、0.2%のMn、0.15%のSi、2.2%のW、0.4%のMo、2.2%のTi、1.4%のAl、0.002%のB、0.02%のZr、47%のFe及び残部としてNiを含む。合金の溶解製錬は、酸化マグネシウムアルカリラ炉ライニングを用い、溶解製錬する前に純ニッケル洗浄炉を用い、合金原料を添加する前にショットブラスト処理を行う。合金は、誘導電気アーク炉で溶解製錬し、真空度を0.35Paに制御し、Cr、Ni及びWなどの元素が完全に溶融した後、40分間精錬し、Al、Ti、B、Zr及びCを添加する前に、高純度のアルゴンガスを入れ保護する。Cr、Ni及びWなどの合金原料が完全に溶融した後、脱酸のためにコークスを添加し、その添加質量が合金原料中のC元素質量の40%を超えないようにする。完了した後、二次脱酸のためにNi-Mg合金を添加し、最後にAl、Ti、B、Zr及びCなど焼損しやすい元素を添加し、5分間攪拌した後に炉から取り出し、その鋳造温度は1650℃である。合金の鋳造は金型を用い、鋳造した後、硝酸ナトリウム+酸化アルミ発熱剤で溶鋼表面を被覆することによって、凝固速度を低下させ、溶融金属の候補縮小を促進する。硝酸ナトリウム対酸化アルミ発熱剤の比率は当業者に周知である。
【0035】
溶鋼が凝固した後、インゴットを10℃/分の速度で1020℃まで昇温させ1.0時間保温し、その後、1160℃の範囲内に昇温させ24時間均質化処理した後、室温まで空冷する。表面酸化スケールの旋削が完了した後、合金をγ'析出温度より240℃高い温度でビレット及び鍛造し、各パスの変形量が30%で、最終の総変形量が70%である。その後、合金をγ'析出温度より180℃高い温度で高温圧延し、各パスの変形量が35%で、最終の総変形量が80%である。ロールは合金を圧延する前に500℃以上に加熱され、鍛造及び圧延の各パスが完了した後、炉に戻して30分間保温する。合金の圧延が完了した後、1120℃まで昇温させ4時間ソソロイドしてから室温まで空冷する。その後、650℃まで加熱し8時間保温してから空冷し、最後に、760℃まで加熱して2時間保温した後、空冷する。うち、均質化処理、ソソロイド及び時効処理の昇温段階における合金の昇温速度は10℃/分であり、均質化処理温度まで昇温させる前に、インゴットを950℃で1.0時間保温する必要がある。
【0036】
図3及び
図4は、実施例2におけるシングルパスの圧延と圧延が完了した後の写真であり、その表面には明らかな亀裂がなく、これは、合金の加工プロセスが合理的であることを示している。合金性能試験結果は、合金の700℃での降伏強度が543MPaに分けられ、延伸率が16.1%であり、合金が優れた高温強度性能を有することを示している。
【0037】
実施例3
ステップ(1)-製錬及び均質化処理:質量%で0.05%のC、14%のCr、0.5%のMn、0.1%のSi、1.0%のW、2.0%のMo、2.0%のTi、1.0%のAl、0.003%のB、0.01%のZr、37%のFe及び残部としてNiを取る。
【0038】
真空度が0.3Pa~0.5Paに達した場合、Cr、Ni、W、Si、Mn、Mo及びFeが溶融した後、脱酸のためにコークスを添加し、コークス脱酸の添加質量はCの質量の25%を超えないようにする。次に、二次脱酸のためにNi-Mg合金を添加し、最後に、Al、Ti、B、Zr及びCを添加し、5分間攪拌した後、炉から取り出して鋳造する。鋳造する際に金型を用い、鋳造温度は1600℃以上であり、その後凝固させ、アルミ発熱剤で溶鋼表面を被覆する。次に、900℃で1.5時間保温し、最後に、10℃/minの昇温速度で室温から1120℃まで昇温させ、24時間均質化処理した後、室温まで空冷する。
【0039】
ステップ(2)-鍛造及びビレット:ステップ(1)で製錬及び均質化処理された合金を、γ'析出温度より200℃高い温度でビレット及び鍛造し、各パスの変形量が30%以上で、最終の総変形量が70%以上である。鍛造及びビレットの各パスが完了した後、炉に戻して保温し、保温時間Tと炉外時間tは5t≦T≦10tを満たす。
【0040】
ステップ(3)-高温圧延:ステップ(2)で鍛造及びビレットされた合金を、γ'析出温度より150℃高い温度で高温圧延し、各パスの変形量が35%以上で、最終の総変形量が80%以上である。高温圧延の各パスが完了した後、炉に戻して保温し、保温時間Tと炉外時間tは5t≦T≦10tを満たす。
【0041】
ステップ(4)-高温ソソロイド及び時効処理:まず1100℃まで昇温させ5時間ソソロイドした後、室温まで空冷する。その後、10℃/分の昇温速度で室温から630℃まで昇温させ10時間保温した後、空冷する。最後に、10℃/分の昇温速度で室温から740℃まで昇温させ3時間保温した後、空冷する。
【0042】
実施例4
ステップ(1)-製錬及び均質化処理:質量%で0.08%のC、15%のCr、0.2%のMn、0.5%のSi、2.5%のW、1.0%のMo、2.0%のTi、1.5%のAl、0.001%のB、0.02%のZr、48%のFe及び残部としてNiを取る。
【0043】
真空度が0.3Pa~0.5Paに達した場合、Cr、Ni、W、Si、Mn、Mo及びFeが溶融した後、脱酸のためにコークスを添加し、コークス脱酸の添加質量がCの質量の35%を超えないようにする。次に、二次脱酸のためにNi-Mg合金を添加し、最後に、Al、Ti、B、Zr及びCを添加し、7分間攪拌した後、炉から取り出して鋳造する。鋳造する際に金型を用い、鋳造温度は1600℃以上であり、その後凝固させ、アルミ発熱剤で溶鋼表面を被覆し、その後、980℃で1時間保温する。最後に、20℃/分の昇温速度で室温から1100℃まで昇温させ24時間均質化処理した後、室温まで空冷する。
【0044】
ステップ(2)-鍛造及びビレット:ステップ(1)で製錬及び均質化処理された合金を、γ'析出温度より220℃高い温度でビレット及び鍛造し、各パスの変形量が30%以上で、最終の総変形量が70%以上である。鍛造及びビレットの各パスが完了した後、炉に戻して保温し、保温時間Tと炉外時間tは5t≦T≦10tを満たす。
【0045】
ステップ(3)-高温圧延:ステップ(2)で鍛造及びビレットされた合金を、γ'析出温度より200℃高い温度で高温圧延し、各パスの変形量が35%以上で、最終の総変形量が80%以上である。高温圧延の各パスが完了した後、炉に戻して保温し、保温時間Tと炉外時間tは5t≦T≦10tを満たす。
【0046】
ステップ(4)-高温ソソロイド及び時効処理:まず1120℃まで昇温させ3時間ソソロイドした後、室温まで空冷する。その後、20℃/分の昇温速度で室温から650℃まで昇温させ8時間保温した後、空冷する。最後に、20℃/分の昇温速度で室温から800℃まで昇温させ1時間保温した後、空冷する。
【0047】
実施例5
ステップ(1)-製錬及び均質化処理:質量%で0.06%のC、17%のCr、0.1%のMn、0.3%のSi、2.0%のW、0.3%のMo、2.1%のTi、1.3%のAl、0.01%のZr、42%のFe及び残部としてNiを取る。
【0048】
真空度が0.3Pa~0.5Paに達した場合、Cr、Ni、W、Si、Mn、Mo及びFeが溶融した後、脱酸のためにコークスを添加し、コークス脱酸の添加質量はCの質量の50%を超えないようにする。次に、二次脱酸のためにNi-Mg合金を添加する。最後に、Al、Ti、B、Zr及びCを添加し、10分間攪拌した後、炉から取り出して鋳造する。鋳造する際に金型を用い、鋳造温度は1600℃以上である。その後凝固させ、アルミ発熱剤で溶鋼表面を被覆し、次に、950℃で1時間保温する。最後に、30℃/分の昇温速度で室温から1050℃まで昇温させ24時間均質化処理した後、室温まで空冷する。
【0049】
ステップ(2)-鍛造及びビレット:ステップ(1)で製錬及び均質化処理された合金を、γ'析出温度より250℃高い温度でビレット及び鍛造し、各パスの変形量が30%以上で、最終の総変形量が70%以上である。鍛造及びビレットの各パスが完了した後、炉に戻して保温し、保温時間Tと炉外時間tは5t≦T≦10tを満たす。
【0050】
ステップ(3)-高温圧延:ステップ(2)で鍛造及びビレットされた合金を、γ'析出温度より170℃高い温度で高温圧延し、各パスの変形量が35%以上で、最終の総変形量が80%以上である。高温圧延の各パスが完了した後、炉に戻して保温し、保温時間Tと炉外時間tは5t≦T≦10tを満たす。
【0051】
ステップ(4)-高温ソソロイド及び時効処理:まず1115℃まで昇温させ4時間ソソロイドした後、室温まで空冷する。その後、30℃/分の昇温速度で室温から680℃まで昇温させ7時間保温した後、空冷する。最後に、30℃/分の昇温速度で室温から770℃まで昇温させ2時間保温した後、空冷する。
【0052】
本発明の超合金の成分は、質量%で0.05%~0.08%のC、14%~17%のCr、0.5%以下のMn、0.5%以下のSi、1.0%~2.5%のW、0.3%~2.0%のMo、2.0%~2.5%のTi、1.0%~1.5%のAl、0.003%以下のB、0.03%以下のZr、37%~48%のFe及び残部としてNiを含む。電気アーク炉を用いて、最高0.3Paを超えない真空度で、事前に配合した合金の炉材料を製錬する。Ni3Al(γ')の析出温度より200℃~250℃高い温度範囲内で、合金に対して70%の変形量でビレット及び鍛造を行う。γ'析出温度より150℃~200℃高い温度で80%の変形量で高温圧延を行う。本発明の合金の加工プロセスは、調製コストが低く、この本発明の方法によって調製された合金は、650℃以上の条件下で、優れた高温力学性能を有する。