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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】光源システムおよびレーザ投影表示装置
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/37 20060101AFI20241001BHJP
   H01S 5/02325 20210101ALI20241001BHJP
   H01S 5/0239 20210101ALI20241001BHJP
【FI】
G02F1/37
H01S5/02325
H01S5/0239
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022574283
(86)(22)【出願日】2021-05-31
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-04
(86)【国際出願番号】 CN2021097365
(87)【国際公開番号】W WO2021244488
(87)【国際公開日】2021-12-09
【審査請求日】2023-01-11
(31)【優先権主張番号】202010491313.7
(32)【優先日】2020-06-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】503433420
【氏名又は名称】華為技術有限公司
【氏名又は名称原語表記】HUAWEI TECHNOLOGIES CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】Huawei Administration Building, Bantian, Longgang District, Shenzhen, Guangdong 518129, P.R. China
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133569
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 進
(72)【発明者】
【氏名】朱 定▲軍▼
(72)【発明者】
【氏名】▲謝▼ 振霖
【審査官】山本 元彦
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2007/013513(WO,A1)
【文献】国際公開第2008/114512(WO,A1)
【文献】特開2016-177057(JP,A)
【文献】特表2016-526699(JP,A)
【文献】国際公開第2006/006701(WO,A1)
【文献】特開2011-154275(JP,A)
【文献】米国特許第06480325(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/00-1/125
G02F 1/21-7/00
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ投影表示装置に適用される光源システムであって、
単一の赤外レーザ光源および非線形光学結晶アレイであって、前記非線形光学結晶アレイの入力端が前記赤外レーザ光源の出力端に接続され、前記非線形光学結晶アレイが、前記赤外レーザ光源によって生成された赤外レーザに対して周波数変換を行い、前記周波数変換後に得られたレーザを出力するように構成され、前記赤外レーザ光源がポンプ光源であり、前記非線形光学結晶アレイが直列に接続された複数の非線形光学結晶を備え、各非線形結晶が単一モードガウスビームを出力するように構成され、前記直列に接続された複数の非線形光学結晶がそれぞれ出力した複数の前記単一モードガウスビームが結合されて、前記非線形光学結晶アレイの出力端が同軸可視ガウスレーザビームを出力し、前記同軸可視ガウスレーザビームが可視結合平行RGBビームを提供する、赤外レーザ光源および非線形光学結晶アレイを備え、
前記赤外レーザ光源は、波長範囲が980nm~1064nmの赤外レーザを生成する広帯域赤外レーザ光源であり、
前記複数の非線形光学結晶は、赤色マルチ高調波発生結晶、緑色マルチ高調波発生結晶、及び、青色マルチ高調波発生結晶から成る、光源システム。
【請求項2】
前記光源システムはコリメータをさらに備え、前記コリメータの入力端が前記赤外レーザ光源の出力端に接続され、前記コリメータの出力端が前記非線形光学結晶アレイの前記入力端に接続され、前記コリメータが、前記赤外レーザ光源によって放射された赤外レーザをコリメートし、前記コリメートされた赤外レーザを前記非線形光学結晶アレイに伝送するように構成される、請求項に記載の光源システム。
【請求項3】
可変光減衰器が各非線形光学結晶の前に配置され、前記可変光減衰器が、前記非線形光学結晶に対応する波長の赤外レーザの電力を調整するように構成される、請求項1または2に記載の光源システム。
【請求項4】
前記光源システムはアクロマティックコリメータをさらに備え、前記アクロマティックコリメータの入力端が前記非線形光学結晶アレイの前記出力端に接続され、前記アクロマティックコリメータが、前記非線形光学結晶アレイによって出力されたビームをコリメートするように構成される、請求項1からのいずれか一項に記載の光源システム。
【請求項5】
前記光源システムはフィルタをさらに備え、前記フィルタが前記非線形光学結晶アレイの前記出力端に配置され、前記フィルタが、前記非線形光学結晶アレイによって出力された前記単一モードガウスビームにフィルタをかけるように構成される、請求項1からのいずれか一項に記載の光源システム。
【請求項6】
投影対物レンズおよび請求項1からのいずれか一項に記載の光源システムを備えるレーザ投影表示装置であって、前記光源システムの出力端が前記投影対物レンズに接続され、前記投影対物レンズが、前記光源システムによって出力された同軸可視ガウスレーザビームを投影表示スクリーンに伝送するように構成される、レーザ投影表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、2020年6月2日に中国国家知識産権局に提出され、「光源システムおよびレーザ投影表示装置」という名称の中国特許出願第202010491313.7号の優先権を主張するものである。
【0002】
本出願は、レーザ投影表示(laser projection display)の分野に関し、より詳細には、光源システム(light source system)およびレーザ投影表示装置(laser projection display device)に関する。
【背景技術】
【0003】
レーザ投影表示技術(laser projection display technology、LPDT)は、赤(red、R)、緑(green、G)、青(blue、B)の三原色(RGB)のレーザを光源として使用する表示技術であり、対象世界の色鮮やかで華やかな色を最も忠実に再現するとともに、よりショッキングな性能を提供することができる。
【0004】
現在、レーザ投影表示装置のレーザ光源としては、主に、端面発光レーザ(edge-emitting laser、EEL)および垂直共振器面発光レーザ(vertical cavity surface emitting laser、VCSEL)がある。しかしながら、この種のレーザ光源は、比較的複雑な構造、比較的高い消費電力、比較的大きな体積、および比較的複雑なパッケージングプロセス(packaging process)を有し、レーザ光源のビーム品質は比較的悪い、したがって、レーザ光源は、携帯装置やウェアラブル装置などのレーザ投影表示装置の実際の要件を満たすことが困難である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本出願は、光源システムおよびレーザ投影表示装置を提供する。光源システムは、単純な構造、小さい体積、および比較的低い消費電力を有し、パッケージにするのが容易であり、したがって、高いビーム品質、低い消費電力、単純化されたパッケージングアーキテクチャ、および低コストのパッケージングプロセスの要件を根本的に満たす。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様によれば、光源システムが提供される。光源システムは、赤外レーザ光源および非線形光学結晶アレイを含む。非線形光学結晶アレイの入力端が赤外レーザ光源の出力端に接続され、非線形光学結晶アレイは、赤外レーザ光源によって生成された赤外レーザに対して周波数変換を行い、周波数変換後に得られたレーザを出力するように構成され、赤外レーザ光源はポンプ光源であり、非線形光学結晶アレイは1つまたは複数の非線形光学結晶を含み、各非線形結晶は単一モードガウスビームを出力するように構成され、非線形光学結晶アレイの出力端が同軸可視ガウスレーザビームを出力し、同軸可視ガウスレーザビームはレーザ投影表示用の光源を提供する。
【0007】
第1の態様で提供される光源システムでは、赤外レーザがポンプ光源として使用されることができ、ポンプ光源は、非線形結晶の波長変換を励起することができる光源として理解され得る。赤外レーザ光源は、レーザ光源の消費電力を大幅に節減するために可視光半導体レーザ光源の代わりに使用される。複数の非線形光学結晶が、赤外レーザ光源によって生成された赤外レーザに対して周波数変換を行うために使用される。異なる非線形光学結晶が周波数変換を行うことができる赤外レーザの位相は異なる。非線形結晶は可視同軸ガウスビームを出力し、同軸可視ガウスビームは、円形スポットを有するとともに、比較的高いビーム品質を有し、したがって投影表示解像度を高めるのに役立ち、レーザ表示装置の光源として使用され得る。加えて、光源システムは、単純な構造および比較的小さい体積を有するので、高いビーム品質、低い消費電力、単純化されたパッケージング、および低コストのパッケージングプロセスの要件を根本的に満たす。
【0008】
本出願のこの実施形態では、随意に、赤外レーザ光源によって生成された赤外レーザは、非線形結晶内の電子を原子または分子内で低いエネルギー準位から高いエネルギー準位へ上昇させる(または「ポンピングされる」)ことができ、したがって、赤外レーザの波長または周波数が非線形結晶内で変換されることができる。
【0009】
随意に、赤外レーザ光源の消費電力は、20ミリワット(mW)以下とすることができる。
【0010】
随意に、各非線形光学結晶によって出力されるビームは可視ガウスビームであり、可視ガウスビームは円形スポットを有する。
【0011】
随意に、非線形光学結晶アレイが複数の非線形光学結晶を含む場合、任意の2つの非線形光学結晶が周波数変換を行う赤外レーザの波長が異なる。
【0012】
随意に、1つの赤外レーザ光源が存在し得る。1つの赤外レーザ光源が存在する場合、赤外レーザ光源によって生成される赤外レーザの波長範囲は、非線形光学結晶アレイに含まれる1つまたは複数の非線形光学結晶が周波数変換を行う前の波長を含む。換言すれば、赤外レーザ光源は、1つまたは複数の非線形光学結晶に整合する波長の赤外レーザまたは近赤外光を生成することができる。例えば、赤外レーザ光源は、広帯域幅ポンプ光源とすることができる(例えば、波長範囲がΔλ≧150nmである)。
【0013】
随意に、1つの赤外レーザ光源が存在する場合、赤外レーザ光源は、波長範囲が980nm~1280nmである赤外レーザを生成することができる、または赤外レーザ光源は、波長範囲が980nm~1064nmである赤外レーザを生成することができる。
【0014】
第1の態様の可能な実装形態では、非線形光学結晶アレイが複数の非線形光学結晶を含む場合、複数の非線形光学結晶は直列に接続される。直列接続態様は、複数の非線形光学結晶が一直線に配置されることを意味することができる。第1の非線形光学結晶の出力端が、第2の非線形光学結晶の入力端に接続され、第2の非線形光学結晶の出力端が、第3の非線形光学結晶の入力端に接続される。換言すれば、複数の非線形光学結晶は、ヘッドおよびテールを使用して別々に接続され、非線形光学結晶アレイは、全体として1つの入力端および1つの出力端のみを有する。この実装形態では、赤外レーザ光源によって生成された赤外レーザは、複数の非線形光学結晶へ順番に直接伝送されることができ、したがって、赤外レーザは、赤外光の伝送路を変えるための別の光学装置を必要とすることなく、すべての非線形光学結晶を通過することができる。加えて、伝送のために非線形光学結晶を使用することにより赤外レーザが1つの可視光に結合され、その結果、完全に同軸の可視ガウスレーザビームが生成されることができる。構造が単純でありかつ実装しやすいので、光源システムの複雑さはさらに軽減される。
【0015】
随意に、複数の非線形光学結晶は直列に接続されなくてもよい。この場合、レーザ光源によって生成された赤外レーザが非線形光学結晶を通過することができるように、赤外レーザ光源によって生成された赤外レーザを処理するために、光学装置が使用される必要がある。
【0016】
第1の態様の可能な実装形態では、非線形光学結晶アレイは、マルチ高調波発生結晶(multi-harmonic generation crystal)、和周波結晶、差周波結晶、光パラメトリック発生結晶、光パラメトリック増幅結晶、および光パラメトリック発振結晶のうちの1つまたは複数を含む。
【0017】
随意に、複数の非線形光学結晶は、赤色マルチ高調波発生結晶、青色マルチ高調波発生結晶、および緑色マルチ高調波発生結晶を含む。例えば、赤色マルチ高調波発生結晶は、波長1280nmのレーザの周波数を逓倍して、波長640nmの赤色レーザを生成することができる。緑色マルチ高調波発生結晶は、波長1064nmのレーザの周波数を逓倍して、波長532nmの緑色レーザを生成することができる。青色マルチ高調波発生結晶は、波長980nmのレーザの周波数を逓倍して、波長480nmの緑色レーザを生成することができる。
【0018】
第1の態様の可能な実装形態では、複数の赤外レーザ光源が存在する場合、異なる赤外レーザ光源によって生成される赤外レーザの波長は異なり、光源システムはマルチビーム結合モジュール(multi-beam combination module)をさらに含み、マルチビーム結合モジュールの入力端が複数の赤外レーザ光源の出力端に接続され、マルチビーム結合モジュールの出力端が非線形光学結晶アレイの入力端に接続され、マルチビーム結合モジュールは、複数の赤外レーザ光源によって放射された赤外レーザを1つの赤外レーザビームに結合し、赤外レーザビームを非線形光学結晶アレイに伝送するように構成される。この実装形態では、マルチビーム結合モジュールは、複数の赤外レーザ光源によって生成された赤外レーザが1つまたは複数の非線形光学結晶に伝送され得ることを確実にするために使用され、それにより、1つまたは複数の非線形光学結晶が、複数の赤外レーザ光源によって生成された赤外レーザを処理する効率を確保する。
【0019】
随意に、3つの赤外レーザ光源が存在する。第1の赤外レーザ光源は、波長1280nmの赤外レーザを生成することができ、第2の赤外レーザ光源は、波長1064nmの赤外レーザを生成することができ、第3の赤外レーザ光源は、波長980nmの赤外レーザを生成することができる。
【0020】
第1の態様の可能な実装形態では、1つの赤外レーザ光源が存在する場合、光源システムはコリメータをさらに含み、コリメータの入力端が赤外レーザ光源の出力端に接続され、コリメータの出力端が非線形光学結晶アレイの入力端に接続され、コリメータは、赤外レーザ光源によって放射された赤外レーザをコリメートし、コリメートされた赤外レーザを非線形光学結晶アレイに伝送するように構成される。この実装形態では、1つまたは複数の非線形光学結晶に入力される赤外レーザのコリメーション度が確保されることができ、その結果、赤外レーザの品質と1つまたは複数の非線形光学結晶による周波数変換を行う効率とが改善される。
【0021】
随意に、コリメータは高速軸コリメータとすることができる。
【0022】
第1の態様の可能な実装形態では、可変光減衰器が各非線形光学結晶の前に配置され、可変光減衰器は、非線形光学結晶に対応する波長の赤外レーザの電力を調整するように構成される。この実装形態では、赤外レーザの出力電力を制御するために、各非線形光学結晶に入力された赤外レーザに対して電力比変調が実行され得る(例えば、RGBレーザに対し電力比変調が実行される)。
【0023】
随意に、可変光減衰器は電気的可変光減衰器とすることができる。
【0024】
第1の態様の可能な実装形態では、光源システムはアクロマティックコリメータ(achromatic collimator)をさらに含み、アクロマティックコリメータの入力端が非線形光学結晶アレイの出力端に接続され、アクロマティックコリメータは、非線形光学結晶アレイによって出力されたビームをコリメートするように構成される。この実装形態では、アクロマティックコリメータは、1つまたは複数の非線形光学結晶によって出力されたビームをコリメートすることができ、その結果、光源システムによって出力されるビームの品質が改善されることができる。
【0025】
第1の態様の可能な実装形態では、光源システムはフィルタをさらに含み、フィルタは非線形光学結晶アレイの出力端に配置され、フィルタは、非線形光学結晶アレイによって出力されたビームにフィルタをかけるように構成される。この実装形態では、フィルタは、光源システムによって出力された赤外レーザの品質が改善され得るように接続される。
【0026】
第2の態様によれば、レーザ投影表示装置が提供される。レーザ投影表示装置は、第1の態様および第1の態様の可能な実装形態のどちらか一方で提供される光源システムを含む。
【0027】
例えば、本出願で提供されるレーザ投影表示装置は、投影対物レンズと第1の態様および第1の態様の可能な実装形態のいずれか1つで提供される光源システムとを含み、光源システムの出力端が投影対物レンズに接続され、投影対物レンズは、光源システムによって出力された同軸可視ガウスレーザビームを投影表示スクリーンに伝送するように構成される。
【0028】
例えば、本出願で提供されるレーザ表示装置は、AR装置、VR装置、HUD装置、携帯電話投影表示装置、レーザ投影表示装置、マイクロプロジェクション表示装置、またはニアアイ表示装置とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本出願の一実施形態によるARグラスの一例の構造の概略図である。
図2】本出願の一実施形態による光源システムの構造の概略図である。
図3】本出願による複数の赤外レーザ光源を含む光源システムの別の例の構造の概略図である。
図4】本出願による光源システムの別の例の構造の概略図である。
図5】本出願による光源システムの別の例の構造の概略図である。
図6】本出願による光源システムの別の例の構造の概略図である。
図7】本出願による光源システムの別の例の構造の概略図である。
図8】本出願による光源システムの別の例の構造の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下では、添付図面を参照して本出願の技術的解決策について説明する。
【0031】
本出願の実施形態の説明において、「/」は、特に断らない限り「または」を意味する。例えば、A/Bは、AまたはBを表すことができる。本明細書では、「および/または」は、関連する対象を説明するための関連関係のみを記述し、3つの関係が存在し得ることを示す。例えば、Aおよび/またはBは、以下の3つの場合を表す、すなわち、Aのみが存在する場合、AとBの両方が存在する場合、およびBのみが存在する場合を表すことができる加えて、本出願の諸実施形態の説明において、「複数の」は、2つまたは3つ以上を意味する。
【0032】
「第1の」および「第2の」という以下の用語は、単に説明を目的とするものであり、相対的な重要性の指示もしくは含意、または示された技術的特徴の数量の暗示的な指示として理解されるべきではない。したがって、「第1の」または「第2の」によって限定される特徴は、1つまたは複数の特徴を明示的または暗示的に含む場合がある。実施形態の説明では、特に断らない限り、「複数の」は2つ以上を意味する。
【0033】
レーザ投影表示技術は、レーザ投影技術またはレーザ表示技術と呼ばれることもあり、赤(red)、緑(green)、および青(blue)の三原色(RGB)のレーザを光源として使用する表示技術であり、対象世界の色鮮やかで華やかな色を最も忠実に再現するとともに、よりショッキングな性能を提供することができる。カラリメトリ(colorimetry)の観点から、レーザ投影表示の色域カバー率は、人間の目によって認識され得る色空間の90%超に達することができ、従来の色域カバー率の少なくとも2倍である。これは、以前の表示技術の色域空間の制限を完全に打ち破り、人類史の中で完璧な色復元を実現し、したがって、人々は表示端末を使用して最もリアルで最も美しい世界を見ることができる。表1は、レーザ投影表示技術と従来の発光ダイオード(light-emitting diode、LED)表示技術の関連パラメータとの比較を示す。
【0034】
【表1】
【0035】
表1から、レーザ投影表示技術は、従来のLED表示技術よりも大幅に優れていることが分かることができる。
【0036】
現在、物理的表示面が不要、焦点合わせを行う必要がない、低い消費電力、小さい体積、および長い耐用年数を特徴とする、レーザおよび微小電気機械システム(microelectro mechanical systems、MEMS)をベースとする走査および投影装置は、レーザマイクロプロジェクション、拡張現実(Augmented Reality、AR)、および仮想現実(Virtual Reality、VR)などの分野の業界によってますます評価されており、携帯およびウェアラブル表示アプリケーションシナリオやレーザマイクロプロジェクション分野などに極めて適している。例えば、MP-CL1Aと名付けられた現在の携帯プロジェクタは、15cm×7.6cm×1.3cmの寸法およびわずか210グラムの重量を有する。別の製造業者によって発売されているロボットROBOHONの投影システムは、約40mmの外形を有するヘッド内にのみ配置される。また、網膜医療検査用のARグラス、単色垂直共振器面発光レーザ(vertical cavity surface emitting laser、VCSEL)をベースとする簡略アーキテクチャを有するARグラス、RGBレーザ光源をベースとする3色簡略アーキテクチャを有するARグラスなども販売されている。
【0037】
現在、携帯およびウェアラブルレーザ投影表示に使用され得るレーザ光源としては、主に、端面発光レーザ(edge-emitting laser、EEL)および垂直共振器面発光レーザ(vertical cavity surface emitting laser、VCSEL)がある。端面発光レーザ(端面発光半導体レーザと呼ばれることもある)は端面発光を行うので、端面発光レーザの出力ビームは大きい発散角を有し、楕円形スポットを有する。さらに、端面発光半導体レーザの出力ビームは、結合され成形される必要がさらにある。したがって、端面発光半導体レーザの光路アーキテクチャは比較的複雑である。加えて、半導体材料の特性上、消費電力が比較的大きい。したがって、端面発光半導体レーザは、極めて高いコスト、サイズ、消費電力、およびビーム品質の要件を有するニアアイ表示分野で競争力が弱い。VCSEL光源は、低消費電力、高ビーム品質、円形スポットなどの多くの利点を有する。しかしながら、技術の限界のせいで、現段階では赤色VCSELだけが商業的に使用されており、青色VCSELおよび緑色VCSELは、短期間では商業的に使用されることができない、したがってカラーレーザ表示光源として使用されることができない。将来の製品用途におけるレーザ投影表示の競争力を高めるために、低コスト、小型、低消費電力、高ビーム品質、および高波長精度を有するRGBレーザ光源が必要とされる。
【0038】
現在、関連技術では、ファブリペロー(Fabry-Perot、F-P)端面伝送半導体レーザベアダイがRGBレーザ光源として使用されて、コリメータアレイを使用して3つのビームのコリメーションを実行し、次いで帯域通過フィルタを使用して光路ビーム結合を実施する。この解決策では、ベアダイはセラミックパッケージの内側に直接接合され、コリメータおよびパッケージは、装置の体積を圧縮するために直接一体化される。しかしながら、この解決策では、コリメータがレーザ光源のパッケージに固定されるため、ビームの能動的なコリメーション結合が実施されることができない。したがって、レーザダイ上でサブミクロンレベルの受動的実装が行われる必要があり、ビーム量は比較的高いコリメーション度要件をほとんど満たすことができない。加えて、F-P光源は、高速軸楕円スポットおよび低速軸楕円スポットによって特徴付けられ、したがって、コリメートされたビームは依然として楕円であり、レーザ投影表示解像度に影響を及ぼす。現在、当業界のダイ業界チェーンの能力のために、低消費電力のレーザ光源の出力が実施されることはできず、レーザダイ構造の制約のために、円形ガウススポットおよび小さいビーム発散角がコリメーションによって直接得られることができない。したがって、この解決策の効果は極めて劣る。
【0039】
あるいは、処理されたシリコン基板が異なる波長の複数の可視光ビームを1つのビーム結合チャネルに導くことができるように、シリコン基板が精密処理によって生産されてもよい。シリコン基板は、RGBレーザ光源のビーム結合を実施するために、レーザの狭帯域幅および高偏光特性を使用することにより、異なる波長に対応する異なる結合チャネルを設計する。ビームは単一モード導波路を使用して結合されるので、結合されたビームは完全に一貫した同軸性能を有し、ビーム品質はガウススポット分布を完全に満たすことができる。しかしながら、この解決策では、光源は依然として半導体レーザ光源に依存しており、現在の半導体R/G/Bレーザダイは依然として高消費電力を有しており、低消費電力に対するより高い要件を有するウェアラブル装置の要件をほとんど満たすことができない。
【0040】
加えて、赤色、緑色、および青色レーザダイは、レーザ光源のパッケージの内部に等間隔で取り付けられてもよく、ビームコリメーションを実行し、すべてのビームを、ビームの集束角が約2.75°になるように1点に集束させるためにレンズアレイ(lens array)が使用される。投影表示光源が生産されるとき、3つの光ビームの焦点に微小電気機械システム(microelectro mechanical systems、MEMS)が配置される。このようにして、投影スクリーン上に分離された3色のパターンが現れ、最終的に、ソフトウェアタイミング補正により実際の画像と一致する画像が得られる。レーザ光源モジュール全体がレーザダイおよびレンズアレイのみを含み、したがって、6mm×5mm×3.5mmのレーザモジュールパッケージングが実施されることができる。この解決策では、RGBレーザモジュールの小型化および簡略化されたアーキテクチャのパッケージングが実施される。しかしながら、ビーム集束中にビーム間の挟角を過度に大きくすることはできない(理論上、3°を超えることはできない)ので、この要件に基づいて、レーザダイが1.0mmの間隔で取り付けられ、コリメートされたビームがMEMSに到達する光路の長さがL=(1.0/tan3)=19mmであると仮定すると、光路システム全体は依然として非常に長く、レーザダイの消費電力は既存のレーザダイ性能によって依然として制限され、したがって、低い消費電力の光源モジュールが得られることができない。
【0041】
現在、小さい体積、単純な構造、低い消費電力、および高いビーム品質を有しており、パッケージするのが容易であるRGBレーザ光源はないことが分かることができる。
【0042】
これを考慮して、本出願は光源システムを提供する。低い消費電力の赤外レーザ光源がポンプ光源として使用され、赤外レーザ光源によって生成された赤外レーザに対して周波数変換を行って、異なる色の可視ガウスレーザビームを生成するために、単一モードガウス円形スポットを実現することができる非線形光学結晶がレーザ生成媒体として使用される。可視ガウスレーザビームは、レーザ表示装置用の光源を提供する。光源システムは、単純な構造、小さい体積、および比較的低い消費電力を有し、パッケージにするのが容易であり、したがって、高いビーム品質、低い消費電力、単純化されたパッケージングアーキテクチャ、および低コストのパッケージングプロセスの要件を根本的に満たす。
【0043】
本出願で提供される光源システムは、AR、VR、ヘッドアップディスプレイ(head up display、HUD)、携帯電話投影ディスプレイ、レーザ投影ディスプレイ、マイクロプロジェクションディスプレイ、ニアアイディスプレイおよび関連装置などの分野に適用され得る。
【0044】
まず、本出願の実施形態で提供されるレーザ投影表示装置について簡単に説明される。本出願の実施形態で提供されるレーザ投影表示装置は、本出願で提供される光源システムを含む。例えば、本出願で提供されるレーザ投影表示装置は、HUD装置、携帯電話投影表示装置、マイクロプロジェクション表示装置、またはニアアイ表示装置(AR装置またはVR装置)とすることができる。これは、本出願の実施形態では限定されない。本出願で提供されるレーザ投影表示装置では、光源システムは、単純な構造、小さい体積、および比較的低い消費電力を有しており、パッケージにするのが容易である。
【0045】
以下では、本出願で提供されるレーザ投影表示装置を説明するために、レーザ投影表示装置がARグラスである例を使用する。図1は、本出願の一実施形態によるARガラスの構造の概略図である。図1に示されるように、ARグラスは、ホルダ134、光源システム135、集束フォトニクス構成要素136、ならびに投影対物レンズ137および138を含む。光源システムは、本出願の実施形態で提供される以下の光源システムのうちのいずれか1つであり、光源システム135は、可視ガウスレーザビームを生成するように構成される。ホルダ134は、ARグラスを装着するためにユーザによって使用され、集束フォトニクス構成要素136は、可視ガウスレーザビームを屈折や反射などにより投影対物レンズ137および138に伝送するように構成され、投影対物レンズ137および138は、可視ガウスレーザビームを投影表示スクリーンまたは表示壁に伝送するように構成される。ユーザがARグラスを装着し、光源システム135のスイッチをオンにし、ARグラスを使用して、投影によって表示される必要がある画像またはパターンに関する情報を取得した後、ARグラスは、画像またはパターンを投影表示スクリーンまたは表示壁上に表示することができる。
【0046】
図1に示される例は、本出願で提供されるARグラスの一例の構造の概略図にすぎず、本出願で提供されるARグラスの構造に対するいかなる制限も構成しないことが理解されるべきである。例えば、本出願で提供されるARガラスの構造は、さらに多くの構造部分を含むことができる。これは、本出願のこの実施形態では限定されない。
【0047】
以下では、本出願の実施形態で提供される光源システムについて具体的に説明する。
【0048】
図2は、本出願による光源システムの一例の構造の概略図である。図2に示されるように、光源システムは、
赤外レーザを生成するように構成された1つまたは複数の赤外レーザ光源
を含む。図2に示される例は、1つの赤外レーザ光源の概略図を示す。図2に矢印で示されている方向は、赤外レーザの伝送方向である。赤外レーザ光源によって放射される赤外レーザは、ポンプ光源として使用されることができる。換言すれば、赤外レーザ光源は、ポンプ光源として理解され得る。光ポンピングは、光を使用して、電子を原子または分子内で低いエネルギー準位から高いエネルギー準位へ上昇させる(または「ポンピングされる」)プロセスとして理解され得る。ポンプ光源は、非線形結晶を励起するために光エネルギーを生成する光源として理解され得る、したがって、非線形結晶は、非線形結晶を励起する光に対して波長変換(または周波数変換)を行う。この光源は、ポンプ光源として理解され得る。本出願のこの実施形態では、赤外レーザ光源によって生成された赤外レーザは、非線形結晶内の電子を原子または分子内で低いエネルギー準位から高いエネルギー準位へ上昇させる(または「ポンピングされる」)ことができ、したがって、赤外レーザの波長または周波数が非線形結晶内で変換されることができる。赤外レーザ光源は非線形光学結晶アレイの入力端に接続され、非線形光学結晶アレイは1つまたは複数の非線形光学結晶を含み、各非線形結晶は、赤外レーザに対して周波数変換を行いかつ/または赤外レーザの波長を広げるように構成され、非線形光学結晶アレイの出力端は可視ガウスビームを出力する。
【0049】
随意に、本出願のこの実施形態では、使用される赤外レーザ光源の消費電力は、20ミリワット(mW)以下であり得る。
【0050】
本出願のこの実施形態では、非線形光学結晶アレイが複数の非線形光学結晶を含む場合、任意の2つの非線形光学結晶が周波数変換を行う赤外レーザの波長は異なる。換言すれば、異なる非線形光学結晶が周波数変換を行う赤外レーザの周波数(または周波数範囲)が異なり、換言すれば、異なる非線形光学結晶が周波数変換を行うことができる赤外レーザの位相が異なる。ある波長の赤外レーザが非線形光学結晶の位相要件に厳密に整合することができる場合、その波長の赤外レーザは周波数変換を受け、周波数変換後に得られる可視光を形成し、非線形光学結晶の位相要件に整合することができない別の赤外レーザは伝送され続け、波長に整合することができる非線形光学結晶で周波数変換を受ける。異なる非線形光学結晶が周波数変換を行うことができる赤外レーザの波長は異なり、各非線形光学結晶は単一モードガウス円形スポットを出力することができる。赤外レーザ光源は、周波数変換のために1つまたは複数の非線形光学結晶に整合する波長の赤外光を生成することができる。周波数変換を受けた複数のレーザビームは、非線形光学結晶アレイを使用して1つの同軸可視ガウスビームに結合され得る。
【0051】
本出願のこの実施形態では、非線形光学結晶アレイの出力端によって出力されるビームは同軸可視ガウスビームであり、同軸可視ガウスビームは、円形スポットを有するとともに、比較的高いビーム品質を有し、したがって投影表示解像度を高めるのに役立ち、レーザ表示装置の光源として使用され得る。光源システムでは、赤外レーザ光源は、レーザ光源の消費電力を大幅に節減するために可視光半導体レーザ光源の代わりに使用される。加えて、この光源は、従来技術のEELやVCSELなどに比べて、単純な構造および小さい体積を有する。ポンプ光源ダイ(赤外レーザを生成するように構成される)および非線形光学結晶アレイのマイクロメートル(μm)レベルの受動的パッケージングしか必要とされないので、プロセスが単純であり、パッケージングコストが大幅に節減され、パッケージング効率および歩留まりが高められ、したがって、高いビーム品質、低い消費電力、単純化されたパッケージング、および低コストのパッケージングプロセスの要件が基本的に満たされる。
【0052】
随意に、本出願のこの実施形態では、1つの赤外レーザ光源が存在する場合、図2に示されるように、赤外レーザ光源は、1つまたは複数の非線形光学結晶に整合する波長の赤外レーザまたは近赤外(near infra-red、NIR)光を生成することができる、換言すれば、赤外レーザ光源によって生成される赤外レーザの波長範囲は、1つまたは複数の非線形光学結晶が周波数変換を行う前の波長を含む。例えば、本出願のこの実施形態では、赤外レーザ光源は、広帯域幅ポンプ光源とすることができる(例えば、波長範囲がΔλ≧150nmである)。この場合、赤外レーザ光源は、非線形光学結晶アレイに含まれる複数の異なる非線形光学結晶に整合することができる。
【0053】
随意に、本出願のこの実施形態では、複数の赤外レーザ光源が存在することができ、各赤外レーザ光源は、特定の波長の赤外レーザまたは近赤外レーザを生成することができる。特定の波長の赤外レーザまたは近赤外レーザは、複数の非線形光学結晶のうちの1つに整合することができ、したがって、その波長に整合する非線形光学結晶は、その波長の赤外レーザまたは近赤外レーザに対して周波数変換を行うことができる。
【0054】
随意に、本出願のこの実施形態では、非線形光学結晶アレイは、マルチ高調波発生結晶、和周波結晶、差周波結晶、光パラメトリック発生結晶、光パラメトリック増幅結晶、および光パラメトリック発振結晶のうちの1つまたは複数を含む。
【0055】
マルチ高調波発生結晶は、第2高調波発生結晶、第3高調波発生結晶、和周波結晶、および差周波結晶のうちの1つまたは複数を含むことができる。第2高調波発生結晶は第2高調波発生(Second Harmonic generation、SHG)機能を有し、第3高調波発生結晶は第3高調波発生(Third Harmonic generation、THG)機能を有し、和周波結晶は和周波発生(Sum-Frequency Generation、SFG)機能を有し、差周波結晶は差周波発生(Difference-Frequency Generation、DFG)機能を有する。例えば、第2高調波発生結晶は、周波数を2倍にし、波長を半分にする機能を実現することができ、第3高調波発生結晶は、周波数を3倍にし、波長を元の波長の1/3にする機能を実現することができる。和周波結晶の入力は、2つ以上のレーザビームとすることができ、和周波結晶によって出力される1つのレーザ光の周波数は、2つ以上のレーザビームの周波数の和である。差周波結晶の入力は、2つ以上のレーザビームとすることができ、差周波結晶によって出力される1つのレーザ光の周波数は、2つ以上のレーザビームの周波数の間の差である。
【0056】
例えば、光パラメトリック発生結晶は、光パラメトリック発生(Optical Parametric Generation、OPG)機能を有する非線形光学結晶とすることができる。光パラメトリック発生結晶の入力は1つのレーザビームとすることができ、出力は複数のレーザビームとすることができ、複数のレーザビームの周波数の和は入力されたレーザビームの周波数である。光パラメトリック発振発生結晶は、光パラメトリック発振(optical parametric oscillation、OPO)機能を有する非線形光学結晶とすることができ、1つの周波数のレーザを信号のコヒーレント出力と空き周波数とに変換することができる。光パラメトリック増幅結晶は、光パラメトリック増幅(optical parametric amplification、OPA)機能を有する非線形光学結晶とすることができ、出力のために低周波光のビームの周波数を増幅することができる。
【0057】
例えば、本出願のこの実施形態では、複数の非線形光学結晶は、複数のマルチ高調波発生結晶を含む。複数のマルチ高調波発生結晶は、赤色マルチ高調波発生結晶、青色マルチ高調波発生結晶、および緑色マルチ高調波発生結晶のうちの少なくとも2つを含むことができる。随意に、赤色マルチ高調波発生結晶は、波長1280nmのレーザの周波数を逓倍して、波長640nmの赤色レーザを生成することができる。緑色マルチ高調波発生結晶は、波長1064nmのレーザの周波数を逓倍して、波長532nmの緑色レーザを生成することができる。青色マルチ高調波発生結晶は、波長980nmのレーザの周波数を逓倍して、波長480nmの緑色レーザを生成することができる。
【0058】
例えば、本開示のこの実施形態では、1つの赤外レーザ光源が存在する場合、赤外レーザ光源は、波長範囲が980nm~1280nmの赤外レーザを生成することができる、または、赤外レーザ光源は、波長範囲が980nm~1064nmの赤外レーザを生成することができる。
【0059】
複数の赤外レーザ光源が存在する場合、赤外レーザ光源は、異なる波長の赤外レーザを生成することができる。例えば、4つの赤外レーザ光源が存在すると仮定すると、第1の赤外レーザ光源は、波長λ=900nmの近赤外光を生成し、この近赤外光は、出力用の450nmの青色光を得るために青色マルチ高調波発生結晶を通過する。第2の赤外レーザ光源は、λ=1064nmの近赤外光を生成し、この近赤外光は、出力用の532nmの緑色光を得るために緑色マルチ高調波発生結晶を通過する。第3の赤外レーザ光源は、λ=1065nmの近赤外光を生成し、この近赤外光は、出力用の355nmの紫外線光を得るために紫色第3高調波発生結晶を通過して、第4の赤外レーザ光源は、λ=1276nmの近赤外光を生成し、この近赤外光は、出力用の638nmの赤色光を得るために赤色マルチ高調波発生結晶を通過する。
【0060】
随意に、本出願のこの実施形態では、非線形光学結晶の材料は、ニオブ酸リチウム(LiNbO3-LN)、リン酸二水素カリウム(KH2PO4-KDP)、リン酸二重水素カリウム(KD2PO4-DKDP)、ヨウ素酸リチウム(LiIO3-LI)、酸化チタンリン酸カリウム(KTiOPO4-KTP)、ベータホウ酸バリウム(β-BaB2O4-BBO)、三ホウ酸リチウム(LiB3O5-LBO)、ニオブ酸カリウム(KNbO3-KN)、三ホウ酸セシウム(CSB3O5-CBO)、ホウ酸リチウムセシウム(LiCSB6O10-CLBO)、フルオロホウ酸ベリリウムカリウム(KBe2BO3F2-KBBF)、硫化銀ガリウム(AgGaS2-AGS)、ヒ化カドミウムゲルマニウム(CdGeAs-CGA)、リン化亜鉛ゲルマニウム(ZnGeP2-ZGP)などの非線形光学結晶のうちの1つまたは複数とすることができる。これは、本出願のこの実施形態では限定されない。
【0061】
本出願で提供される光源システムでは、赤外レーザ光源は、レーザ光源の消費電力を大幅に節減するために可視光半導体レーザ光源の代わりに使用される。加えて、赤外レーザ光源によって生成された赤外レーザに対して周波数変換などを行って可視光を出力するために、複数の非線形光学結晶が使用され、出力ビームの品質がガウス分布を満たし、その結果、出力ビームの品質は大幅に改善される。光源は、単純な構造および小さい体積を有しており、パッケージにするのが容易でありかつ実装するのが容易である。
【0062】
随意に、本開示のこの実装形態では、非線形光学結晶アレイが複数の非線形光学結晶を含む場合、複数の非線形光学結晶は直列に接続される。直列接続態様は、複数の非線形光学結晶が一直線に配置されることを意味することができる。例えば、第1の非線形光学結晶の出力端が、第2の非線形光学結晶の入力端に接続され、第2の非線形光学結晶の出力端が、第3の非線形光学結晶の入力端に接続される。換言すれば、複数の非線形光学結晶は、ヘッドおよびテールを使用して別々に接続され、非線形光学結晶アレイは、全体として1つの入力端および1つの出力端のみを有する。あるいは、直列接続態様は、複数の非線形光学結晶がストリップ状に分散されることを意味することができる。図1に示される例は、複数の非線形光学結晶が直列に分散されている場合である。複数の非線形光学結晶は直列に接続され、その結果、赤外レーザ光源によって生成された赤外レーザは、複数の非線形光学結晶へ順番に直接伝送されることができ、したがって、赤外レーザは、赤外光の伝送路を変えるための別の光学装置を必要とすることなく、すべての非線形光学結晶を通過することができる。加えて、伝送のために非線形光学結晶を使用することにより赤外レーザが1つの可視光に結合され、その結果、完全に同軸の可視ガウスレーザビームが生成されることができる。構造が単純でありかつ実装しやすいので、光源システムの複雑さはさらに軽減される。
【0063】
随意に、本出願のこの実施形態では、非線形光学結晶アレイに含まれる複数の非線形光学結晶は、直列に接続されなくてもよい。この場合、赤外レーザ光源によって生成された赤外レーザを処理するために、コリメータや屈折器などの光学装置が使用される必要があり、その結果、レーザ光源によって生成された赤外レーザは非線形光学結晶を順に通過することができる。
【0064】
随意に、本出願のこの実施形態では、複数の赤外レーザ光源が存在する場合、異なる赤外レーザ光源によって生成される赤外レーザの波長は異なる。図3は、複数の赤外レーザ光源を含む光源システムを示す。図3に矢印で示されている方向は、赤外レーザの伝送方向である。光源システムは、マルチビーム結合モジュールをさらに含み、マルチビーム結合モジュールの入力端が複数の赤外レーザ光源の出力端に接続され、マルチビーム結合モジュールの出力端が非線形光学結晶アレイの入力端に接続される。マルチビーム結合モジュールは、複数の赤外レーザ光源によって放射された赤外レーザを1つの赤外レーザビームに結合し、この赤外レーザビームを非線形光学結晶アレイへ伝送するように構成される。随意に、本出願のこの実施形態では、マルチビーム結合モジュールは、マルチポンプビーム結合モジュール(システム)と呼ばれることもある。
【0065】
随意に、可能な実装形態では、1つの赤外レーザ光源が存在する場合、光源システムはコリメータをさらに含み、コリメータの入力端が赤外レーザ光源の出力端に接続され、コリメータの出力端が非線形光学結晶アレイの入力端に接続される。コリメータは、赤外レーザ光源によって放射された赤外レーザをコリメートし、コリメートされた赤外レーザを非線形光学結晶アレイに伝送するように構成される。図4に示されるように、図2をベースとして、コリメータが赤外レーザ光源の出力端に接続される。コリメータは、1つまたは複数の非線形光学結晶に入力される赤外レーザのコリメーション度を確保し、それによって赤外レーザの品質と1つまたは複数の非線形光学結晶による周波数変換を行う効率とを改善するために、赤外レーザ光源によって放射された赤外レーザに対して高速軸コリメーションを実行し、コリメートされた赤外レーザを非線形光学結晶アレイに入力するように構成される。例えば、本出願のこの実施形態では、コリメータは、高速軸コリメータ(fast axis collimator、FAC)とすることができる。
【0066】
随意に、可能な実装形態では、図5に示されるように、図2をベースとして、可変光減衰器が各非線形光学結晶の前に配置されることができ、可変光減衰器は、非線形光学結晶に対応する波長の赤外レーザの電力を調整するように構成される。換言すれば、赤外レーザの出力電力を制御するために、各非線形光学結晶に入力された赤外レーザに対して電力比変調が実行される(例えば、RGBレーザに対して電力比変調が実行される)。例えば、本出願のこの実施形態では、可変光減衰器は電気的可変光減衰器とすることができる。
【0067】
随意に、図3または図4に示される光源システムもまた、複数の可変光減衰器を含むことができる。
【0068】
随意に、本出願のこの実施形態では、非線形光学結晶に対応する波長範囲内のレーザが非線形光学結晶を完全に透過できるようにし、それによって赤外レーザの伝送品質および効率を改善するために、反射防止コーティングが各非線形光学結晶のレーザ入力端面およびレーザ出力端面上にさらに施されることができる。
【0069】
随意に、可能な実装形態では、図6に示されるように、図2をベースとして、レーザシステムはアクロマティックコリメータをさらに含み、アクロマティックコリメータの入力端が非線形光学結晶アレイの出力端に接続され、アクロマティックコリメータは、非線形光学結晶アレイによって出力されたビームをコリメートするように構成され、その結果、光源システムによって出力されるビームの品質が改善されることができる。
【0070】
随意に、図3図4、または図5に示される光源システムもまた、アクロマティックコリメータを含むことができる。
【0071】
随意に、可能な実装形態では、図7に示されるように、図2をベースとして、レーザシステムはフィルタをさらに含み、フィルタは非線形光学結晶アレイの出力端に配置され、フィルタは、非線形光学結晶アレイによって出力されたビームにフィルタをかけ、フィルタをかけられたビームを出力するように構成される。
【0072】
随意に、図3図6に示される光源システムもまたフィルタを含むことができる。例えば、フィルタは、アクロマティックコリメータの出力端に配置され得る。
【0073】
図8は、本出願による光源システムの別の例の構造の概略図である。図8に示されるように、光源システムは広帯域赤外半導体レーザダイ101を含み、広帯域赤外半導体レーザダイは赤外レーザ光源であり、広帯域赤外レーザを生成するように構成される。例えば、生成される赤外レーザの波長範囲は、980nm~1280nmである。赤外半導体レーザダイ101は、ボンディング(Die bonding)によってキャリア基板110に予め取り付けられることができる。FACコリメータ102が赤外半導体レーザダイ101の後に接続され、赤外レーザに対して高速軸コリメーションを行うように構成される。FACコリメータ102の出力端が赤色マルチ高調波発生結晶103の入力端に接続され、赤色マルチ高調波発生結晶103の出力端が緑色マルチ高調波発生結晶104の入力端に接続され、緑色マルチ高調波発生結晶104の出力端が青色マルチ高調波発生結晶105の入力端に接続される。換言すれば、3つのマルチ高調波発生結晶は非線形光学結晶アレイを構成し、3つのマルチ高調波発生結晶はキャリア基板110上に一列に配置される。電気的可変光減衰器107、108および109が、異なるマルチ高調波発生結晶の間に挟まれ、異なるマルチ高調波発生結晶に入力される赤外レーザを調整するように別々に構成される。アクロマティックコリメータ106が青色マルチ高調波発生結晶105の出力端に接続され、青色マルチ高調波発生結晶105によって出力されたビームをコリメートするように構成され、その結果、アクロマティックコリメータ106は平行ビーム112を出力することができる。アクロマティックコリメータ106の出力端がフィルタ113の入力端に接続される。フィルタ113は、平行ビーム112中の過剰な赤外ポンプ光を除去することができ、次いで、可視結合平行RGBビームが光源システムの光出口から出力される。随意に、光源システムは、パッケージ111内に受動的にパッケージにされ得る。
【0074】
図8に示される光源システムでは、FACコリメータ102が高速軸コリメーションを行う広帯域赤外レーザ光源101は、波長範囲が980nm~1280nmの赤外レーザ(ポンプレーザ)を出力する。赤外レーザが赤色マルチ高調波発生結晶103に伝送されると、赤色マルチ高調波発生結晶103は、波長1280nmの赤外レーザの周波数を逓倍して、波長640nmの赤色レーザを生成する。加えて、波長範囲980nm~1070nmの反射防止コーティングが赤色マルチ高調波発生結晶103の両端上に施されて、その波長範囲内の赤外レーザが赤色マルチ高調波発生結晶103を完全に透過できるようにすることができる。赤色マルチ高調波発生結晶103によって出力されたポンプレーザが緑色マルチ高調波発生結晶104に到達すると、波長1064nmの赤外レーザの周波数が逓倍されて、波長532nmの緑色レーザを生成する。加えて、波長640nmおよび980nmの反射防止コーティングが緑色マルチ高調波発生結晶104の両端上に施されて、その波長のレーザが緑色マルチ高調波発生結晶104を完全に透過できるようにすることができる。緑色マルチ高調波発生結晶104によって出力されたポンプレーザが青色マルチ高調波発生結晶105に到達すると、波長980nmのレーザの周波数が逓倍されて、波長490nmの青色レーザを生成する。加えて、波長640nmおよび532nmの反射防止コーティングが青色マルチ高調波発生結晶105の両端上に施されて、その波長のレーザが青色マルチ高調波発生結晶105を完全に透過できるようにすることができる。このようにして、周波数逓倍RGBレーザが青色マルチ高調波発生結晶105の出力端で出力されることができ、次いでアクロマティックコリメータ106が周波数逓倍RGBレーザビームをコリメートし、次いでフィルタ113が過剰な赤外ポンプ光を除去し、光源システムの光出口から可視結合RGBビームが出力される。
【0075】
図8に示されるように、表示に使用される光源システムは、RGBレーザに対して電力比変調を行う必要がある。この機能を実現するために、電気的可変光減衰器107、108、および109は、3つのマルチ高調波発生結晶の前に別々に追加されることができ、それぞれ波長1280nm、1064nm、および980nmの赤外レーザの出力電力を制御するために使用され、その結果、RGBレーザの出力電力が制御される。
【0076】
図8に示されるレーザ光源では、赤外レーザダイおよび複数のマルチ高調波発生結晶は、最初にキャリア基板に受動的に実装されることができ、次いでFACコリメータおよびアクロマティックコリメータはキャリア基板に能動的に組み付けられることができ、パッケージは最後に受動的にパッケージにされ、その結果、パッケージングアーキテクチャが大幅に単純化され、パッケージングは、マイクロメートル(μm)レベルの受動的実装(赤外レーザダイの実装およびマルチ高調波発生結晶の実装)プロセスおよびマイクロメートルレベルの受動的実装(FACコリメータおよびアクロマティックコリメータの実装)プロセスによってのみ完了され、それによってパッケージングコストを大幅に節減し、パッケージング効率および歩留まり率を高めることができる。1つの赤外レーザダイしか必要とされないので、レーザ光源の消費電力および体積が大幅に節減され、これはウェアラブル電子装置に使用される投影表示光源に非常に有用である。加えて、非線形マルチ高調波発生結晶は、単一モードガウスビームを出力することができ、出力スポットは円形である。これは、投影表示解像度を高めるのに非常に有用である。
【0077】
随意に、本出願のこの実施形態では、例えば、図8に示される例では、2つのマルチ高調波発生結晶のみが使用され得る。例えば、青色光マルチ高調波発生結晶および緑色マルチ高調波発生結晶のみが統合される。この場合、赤外半導体レーザダイによって出力される赤外レーザの波長範囲は、980nm~1064nmとすることができ、光源システムによって出力されるビームは、青色と緑色の結合ビームのみを含む。
【0078】
本出願のこの実施形態では、複数の赤外レーザ光源が存在する場合、異なる波長の複数の赤外レーザを生成するために複数の赤外半導体レーザダイが代替的に使用されることができ、異なる波長の複数の赤外レーザを結合し、次いで周波数変換のために1つの結合ビームを1つまたは複数の非線形結晶に伝送するためにビーム結合システムが使用されることができることが理解されるべきである。
【0079】
本出願のこの実施形態では、赤外レーザを生成する赤外レーザ光源に加えて、近赤外レーザ光源が、近赤外レーザを生成するために赤外レーザ光源の代わりに使用され得ることがさらに理解されるべきである。例えば、本出願のこの実施形態では、近赤外レーザを生成するために複数の近赤外ポンプ光源が使用されることができ、異なる波長の複数の近赤外レーザを結合し、次いで周波数変換のために1つの結合ビームを1つまたは複数の非線形結晶に送信するためにビーム結合システムが使用されることができる。
【0080】
前述の説明は、当業者が本出願の実施形態をよりよく理解するのを助けるよう意図されているに過ぎず、本出願の実施形態の範囲を限定することを意図されていないことが理解されるべきである。当業者であれば、前述の例に基づいて様々な同等の修正または変更を行うか、あるいは前述の複数の実施形態のうちの任意の2つ以上を組み合わせることができることは明らかである。修正された、変更された、または組み合わされた解決策も、本出願の実施形態の範囲内にある。
【0081】
本出願の実施形態の前述の説明は、実施形態間の違いに焦点を当てていることがさらに理解されるべきである。言及されていない同一または類似の部分については、実施形態を参照されたい。簡潔にするために、詳細はここでは再度説明されない。
【0082】
本出願の実施形態における方式、事例、タイプ、および実施形態の分割は、説明を容易にするためだけのものであり、いかなる特別な制限も構成するべきでなく、様々な方式、タイプ、事例、および実施形態における特徴は、特徴が互いに矛盾していないときに組み合わされ得ることが理解されるべきである。
【0083】
本出願の実施形態において、特に明記しない限り、または論理的な矛盾がない限り、異なる実施形態の間の用語および/または説明が一貫しており、相互に参照されることができ、異なる実施形態における技術的特徴が、その内部論理的関係に基づいて組み合わされて、新たな実施形態を形成できることがさらに理解されるべきである。
【0084】
前述の説明は、本出願の特定の実装形態にすぎず、本出願の保護範囲を限定することを意図されていない。本出願で開示されている技術的範囲内のいかなる変形または置換も、本出願の保護範囲内にあるものとする。したがって、本出願の保護範囲は、特許請求の範囲の保護範囲に従うものとする。
【符号の説明】
【0085】
101 広帯域赤外半導体レーザダイ、広帯域赤外レーザ光源
102 高速軸コリメータ(FAC)コリメータ
103 赤色マルチ高調波発生結晶
104 緑色マルチ高調波発生結晶
105 青色マルチ高調波発生結晶
106 アクロマティックコリメータ
107 電気的可変光減衰器
108 電気的可変光減衰器
109 電気的可変光減衰器
110 キャリア基板
111 パッケージ
112 平行ビーム
113 フィルタ
134 ホルダ
135 光源システム
136 集束フォトニクス構成要素
137 投影対物レンズ
138 投影対物レンズ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8