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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】集合継手
(51)【国際特許分類】
   E03C 1/12 20060101AFI20241001BHJP
【FI】
E03C1/12 E
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023004925
(22)【出願日】2023-01-17
(62)【分割の表示】P 2018163593の分割
【原出願日】2018-08-31
(65)【公開番号】P2023033458
(43)【公開日】2023-03-10
【審査請求日】2023-01-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】木村 英治
(72)【発明者】
【氏名】渕上 斉太
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 総
(72)【発明者】
【氏名】徳丸 武司
【審査官】七字 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-179823(JP,A)
【文献】特開2014-058849(JP,A)
【文献】特開2015-175187(JP,A)
【文献】特開2006-097408(JP,A)
【文献】特開2016-204837(JP,A)
【文献】特開2016-142292(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03C 1/12-1/33
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上階の縦管と接続される上部接続管と、下階の縦管と接続される下部接続管と、を備え、床スラブの貫通孔に設置される集合継手であって、
前記上部接続管の下端部および前記下部接続管の上端部は、前記床スラブの貫通孔内に配置され、
前記上部接続管は、縦管に接続可能な縦管接続部と、横管を接続可能な複数の横管接続部と、を有し、
前記横管接続部には、横ブッシュが接着され、
前記縦管接続部には、縦ブッシュが接着され、
前記横ブッシュまたは前記縦ブッシュが透明材料または半透明材料から形成され
前記上部接続管の外周における、前記横管接続部よりも下方の外周に熱膨張性耐火材料からなる耐火層が設けられていることを特徴とする集合継手。
【請求項2】
上階の縦管と接続される上部接続管と、下階の縦管と接続される下部接続管と、を備え、床スラブの貫通孔に設置される集合継手であって、
前記上部接続管の下端部および前記下部接続管の上端部は、前記床スラブの貫通孔内に配置され、
前記上部接続管は、縦管に接続可能な縦管接続部と、横管を接続可能な複数の横管接続部と、を有し、
前記横管接続部には、横ブッシュが接着され、
前記縦管接続部には、縦ブッシュが接着され、
前記横ブッシュまたは前記縦ブッシュが透明材料または半透明材料から形成され
前記上部接続管に接続された中間管を備え、
前記中間管の全体が熱膨張性黒鉛を含む樹脂組成物からなる単層構造、または、前記中間管が表層と熱膨張性黒鉛を含む中間層と内層とが積層された3層構造であり、
前記中間管の高さが30mm以上150mm以下である集合継手。
【請求項3】
上階の縦管と接続される上部接続管と、下階の縦管と接続される下部接続管と、を備え、床スラブの貫通孔に設置される集合継手であって、
前記上部接続管の下端部および前記下部接続管の上端部は、前記床スラブの貫通孔内に配置され、
前記上部接続管は、縦管に接続可能な縦管接続部と、横管を接続可能な複数の横管接続部と、を有し、
前記横管接続部には、横ブッシュが接着され、
前記縦管接続部には、縦ブッシュが接着され、
前記横ブッシュまたは前記縦ブッシュが透明材料または半透明材料から形成され
前記上部接続管に接続された熱膨張性黒鉛を含まない中間管を備え、
前記中間管の外方に熱膨張性耐火材料を含む耐火層が設けられている集合継手。
【請求項4】
前記上部接続管の外面に設けられた遮音カバーを有し、
前記横管接続部は前記遮音カバーに覆われない突出部を有する、請求項1から3のいずれか1項に記載の集合継手。
【請求項5】
前記上部接続管の外面に設けられた遮音カバーを有し、
前記遮音カバーは着脱可能である、請求項1から3のいずれか1項に記載の集合継手。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集合継手に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物の上の階の排水管と下の階の排水管を接続する集合継手には、排水の流れを制御するための旋回羽根が内接されている。この旋回羽根の作用により排水を旋回流として高い排水性能を得ることができる。
この種の集合継手は、床スラブに設けた貫通孔を上下に通過するように設けられ、設置された各階の縦管または横枝管が接続される。集合継手には、これらの排水管から排水が流れ込むため、集合継手を流下する排水音が床スラブを伝わって居住空間に漏れるおそれがある。
【0003】
特許文献1には、樹脂製集合継手の遮音構造として、スポンジ材からなる第1の吸音層と、無機繊維の集合体からなる第2の吸音層と、防水性と遮音性を兼ね備えた表皮層とを備えた構造が開示されている。
【0004】
特許文献2には、排水ガイド部以外の部分を第1の硬質塩化ビニルから構成し、旋回羽根を有する排水ガイド部を第1の硬質塩化ビニルよりも強度が大きい第2の硬質塩化ビニルから形成した構造が開示されている。この構造では、流下する排水が衝突する排水受け部の強度を向上させ、耐久性を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-014769号公報
【文献】特開2017-119960号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の排水集合継手において、内部に旋回羽根を設けていると、タオルなどの想定外の雑物を排水管に流してしまった場合、継手詰まりによる排水障害を引き起こすおそれがあった。
従来、排水管に排水障害などの不具合を生じた場合、管内カメラなどの特別の機器を使用し、詰まり部分を特定する必要がある。
ところが、特許文献1と特許文献2に記載の構造では、上述の雑物を排水管に流した場合のように管内に異常を生じた場合、管内カメラを挿入して内部を観察するしか対策手段がなく、簡単に管内を確認することができなかった。
【0007】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、管内に異常が生じた場合、大掛かりな装置や器具を用いることなく、簡単に管内の状態を確認することができる継手を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明は以下の形態を提案している。
「1」本形態に係る継手は、上部接続管と、この上部接続管に接続された中間管と、この中間管に接続された下部接続管と、を備える集合継手であって、前記上部接続管と前記下部接続管のうち、少なくとも前記上部接続管を透明材料または半透明材料から形成したことを特徴とする。
【0009】
上部接続管と下部接続管のうち、少なくとも上部接続管を透明材料または半透明材料から形成することにより、少なくとも上部接続管の内部側を外部側から肉眼で視認することができる。このため、タオルなどの雑物が排水集合継手に流れ込んで排水詰まりを生じたとしても、詰まり部分を外側から確認することができ、排水詰まりに対する対策を容易に実施できる。上部接続管に加え、下部接続管も透明材料または半透明材料から形成するならば、排水集合継手の大部分を外側から視認することができるようになり、排水集合継手のどの部分に詰まりを生じても詰まり部分を容易に把握することができる。
【0010】
「2」本形態に係る継手において、前記上部接続管と前記下部接続管のうち、少なくとも前記上部接続管の外周に取り外し可能な遮音カバーを取り付けたことが好ましい。
【0011】
遮音カバーを取り付けることにより、排水集合継手の内部を流れる排水音が外部に大きく漏洩することを抑制できる。例えば、床スラブを伝わって居室側に排水音が漏れることを防止できる。遮音カバーを取り外し自在とすることにより、排水詰まりを生じた場合に遮音カバーを除去することで、排水集合継手の内部を視認可能となり、排水集合継手のどこに詰まりを生じているのか、容易に把握できるようになる。
【0012】
「3」本形態において、前記中間管に熱膨張性耐火材料を含み、前記中間管の高さを150mm以下とすることが好ましい。
【0013】
中間管の高さが150mm以下であれば、床スラブ厚が150~300mmの範囲で種々多彩な厚みであり、異なる設置環境であっても、中間管を床スラブの貫通孔内に確実に配置でき、火災延焼防止効果を確実に発現できる。このため、本形態の構造は、一般的なスラブ厚の建物であればいずれの建物にも広く適用でき、汎用性に優れている。
【0014】
火災時に火炎や煙によって床スラブと貫通孔周りが加熱された場合、貫通孔に埋設されている下部接続管は溶け落ちることを前提とし、仮に溶け落ちたとしても中間管が膨張して貫通孔を閉塞できる。このため、火災時に貫通孔Hを確実に閉塞でき、延焼防止効果を発現する。
【0015】
「4」本形態において、前記上部接続管または前記下部接続管に難燃剤を含ませることができる。
【0016】
上部接続管または下部接続管に難燃剤を含むことで火災時等に加熱された際、難燃剤が吸熱作用を有して上部接続管または下部接続管とそれらの周囲の温度上昇を抑制する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、異物等により目詰まりを生じても外部から容易に視認できる継手を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の第1実施形態に係る集合継手を示す断面図である。
図2】同集合継手を示す断面図である。
図3図1に示す集合継手の部品構成を示す展開図である。
図4】本発明の第2実施形態に係る集合継手を示す断面図である。
図5】本発明の第3実施形態に係る集合継手を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図1図3を参照し、本発明の一実施形態に係る集合継手について説明する。 本実施形態に係る集合継手を備えた排水集合継手の構造1は、建物排水用として用いられ、床スラブSに形成された貫通孔Hの部分に適用されている。
図1に示す実施形態では、床スラブSに形成されている貫通孔Hに対し、その上方に上の階の第1の縦管P1が設けられ、下方に下の階の第2の縦管P2が設けられている。 図1および図2に示すように、本実施形態に係る排水集合継手の構造1は、排水集合継手10を備えている。
【0020】
排水集合継手10は、上部接続管11と、上部接続管11に中間管15を介し接続された下部接続管12と、を備えている。上部接続管11は、第1の縦管P1に接続可能な縦管接続部13と、縦管接続部13の側面に突設されて横管P3を接続可能な横管接続部14と、貫通孔Hに挿入された下端部9を有している。
本実施形態の排水集合継手10は、樹脂製継手構成部材である上部接続管11と下部接続管12と中間管15とから構成されている。
【0021】
以下の説明において、縦管接続部13の中心軸線Oに沿う縦管接続部13の上部接続管11側を上方、下部接続管12側を下方と適宜称して説明する。
【0022】
縦管接続部13は、堰止め板13aを内面に備えている。堰止め板13aは、その設置角度を鉛直方向から-30°~20°としている。設置角度が20°より傾くと、傾斜板によって旋回された排水の旋回流が十分に堰き止められずに、横枝管への逆流を発生するおそれが生じる。また、設置角度が-30°よりも傾くと受け止めた排水の跳ね返りが大きくなり、排水の流れを乱すおそれがあり、管内の圧力変動が大きくなるおそれがある。
【0023】
横管接続部14は、縦管接続部13の周壁から中心軸線Oに直交する径方向の外側に向けて筒状に延在されている。本実施形態において、横管接続部14は縦管接続部13の周方向に3つ配置されている。
3つの横管接続部14のうちの2つが中心軸線Oを径方向に挟む位置に個々に配置されている。残りの横管接続部14は、中心軸線Oに直交する径方向のうち、前記2つの横管接続部14のそれぞれが延在する方向と、平面視で90°をなす方向に延在されている。 なお、横管接続部14の数量および延在方向は、このような態様に限られず、任意に変更することができる。図1に示すように、各横管接続部14の先端側には、横管(横枝管)P3が接続されている。
【0024】
上部接続管11は、例えば、ポリ塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、非膨張性黒鉛を0.1~1.0重量部の割合で含むポリ塩化ビニル系樹脂組成物からなる。上部接続管11は、例えば、ポリ塩化ビニル系樹脂組成物を成形機のキャビティ内に射出充填されて得られる。
上部接続管11は透明あるいは半透明のポリ塩化ビニル系樹脂からなることが必要である。ここで透明または半透明とは、上部接続管11の外側から肉眼で上部接続管11の内部を視認できる状態を示す。
ポリ塩化ビニル系樹脂を透明あるいは半透明とするため、ポリ塩化ビニル系樹脂に添加する安定剤としては、スズ系安定剤またはCa-Zn系安定剤が好ましい。スズ系安定剤としてはマレート類、カルボキシレート類などの硫黄を含まないものがさらに好ましい。Ca-Zn系安定剤としては成形加工時の滑性とプレートアウトのバランスからステアリン酸塩であるものがさらに好ましい。
なお、上部接続管11の目詰まり対策などで内部目視点検を可能とする程度の透明度を要するため、半透明とは可視光の透過率30%以上のもの、あるいは、透過率50%以上のもの、更には透過率70%以上のものを用いることができる。
【0025】
上部接続管11の下端部9に中間管15が接続される。中間管15の外径は、上部接続管11における縦管接続部13の外径よりも小さくなっている。中間管15の周壁上部が、縦管接続部13の下端部9の内側に嵌合されている。
【0026】
中間管15は、例えば、ポリ塩化ビニル系樹脂と熱膨張性耐火材料である熱膨張性黒鉛とを含有する樹脂組成物からなる。すなわち、中間管15は、熱膨張性耐火材料を含む樹脂組成物を成形することによって作製される。中間管15は、例えば、樹脂組成物を押出成形することによって作製される。
【0027】
また、中間管15は、中間管15の全体が熱膨張性耐火材料を含む樹脂組成物からなる単層構造でもよいし、複数の層からなる複層構造でもよい。複層構造の場合、いずれかの層が熱膨張性耐火材料を含む樹脂組成物から形成されていればよい。例えば、中間管15が、表層と中間層と内層とからなる3層構造である場合、熱膨張性耐火材料を含む樹脂組成物から形成した中間層を例示することができ、表層、中間層、内層は樹脂組成物に吸熱剤を含有していてもよい。
【0028】
一例として、ポリ塩化ビニル系樹脂100重量部に対し、熱膨張性黒鉛を1~20重量部の割合で含む樹脂組成物からなる単層構造を採用できる。あるいは、ポリ塩化ビニル系樹脂100重量部に対し、熱膨張性黒鉛を1~20重量部の割合で含む樹脂組成物からなる熱膨張性耐火層と、この熱膨張性耐火層の内外面を覆う熱膨張性黒鉛非含有のポリ塩化ビニル系樹脂組成物の被覆層とからなる3層構造であるものを採用できる。
【0029】
中間筒15が単層構造の場合、熱膨張性黒鉛が1重量部未満であると、燃焼時に、十分な熱膨張性が得られず、所望の耐火性が得られないおそれがあり、20重量部を超えると、加熱により熱膨張しすぎて、その形状を保持できずに残渣が貫通孔Hから脱落し、耐火性が低下してしまうおそれがある。
【0030】
中間筒15が複層構造の場合、熱膨張性耐火材料を含む樹脂組成物としては、特に限定されないが、ポリ塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、熱膨張性黒鉛を1~20重量部の割合で含むものが好ましい。熱膨張性黒鉛の含有量は、4~18重量部の割合がより好ましく、6~16重量部の割合がさらに好ましい。
すなわち、熱膨張性黒鉛が1重量部未満であると、燃焼時に、十分な熱膨張性が得られず、所望の耐火性が得られないおそれがある。熱膨張性黒鉛が20重量部を超えると、加熱により熱膨張しすぎて、その形状を保持できずに残渣が貫通孔Hから脱落し、耐火性が低下してしまうおそれがある。
後述するように中間管15の高さを一般的なスラブ厚さよりも小さな高さとした場合には、熱膨張性黒鉛の含有量が比較的多く、例えば15重量部以上含有し残渣がもろい場合であっても、スラブ内に熱膨張後の残渣を保持し、脱落しにくくすることができる。
【0031】
上記ポリ塩化ビニル系樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニル単独体;塩化ビニルモノマーと、該塩化ビニルモノマーと共重合可能な不飽和結合を有するモノマーとの共重合体;塩化ビニル以外の(共)重合体に塩化ビニルをグラフト共重合したグラフト共重合体等が挙げられ、これらは単独で使用されてもよく、2種以上が併用されてもよい。
また、必要に応じて上記ポリ塩化ビニル系樹脂を塩素化してもよい。
【0032】
熱膨張性黒鉛を含有する中間層は黒色を呈する。そのため、表層と内層は黒色以外の着色剤を含有させ、中間層と区別可能にしておくことが好ましい。
表層および内層の厚みとしては、それぞれ0.3mm以上3.0mm以下であることが好ましく、0.6mm以上1.5mm以下が好ましい。被覆層の厚みが0.3mm以上であれば、管としての機械的強度を充分に確保でき、3.0mm以下であれば、耐火性の低下を抑制できる。
また、中間管15は、JIS K6741に記載の性能を満たすものであることが好ましい。
なお、中間管15が熱膨張性黒鉛を含有しない場合には、熱膨張性黒鉛を含有するシート状の耐火材を中間管15の外面または中間管15を覆う遮音材の外面に巻きつけ、耐火材をスラブ貫通部に埋設するようにしてもよい。
【0033】
本実施形態で用いる熱膨張性黒鉛は、一例として、天然鱗状グラファイト、熱分解グラファイト、キッシュグラファイト等の粉末を無機酸と強酸化剤とで黒鉛の層間に無機酸を挿入する酸処理をした後、pH調整して得られる結晶化合物を用いることができる。
無機酸として、濃硫酸、硝酸、セレン酸等を用いることができる。強酸化剤として、濃硝酸、過塩素酸、過塩素酸塩、過マンガン酸塩、重クロム酸塩、過酸化水素等を用いることができる。
【0034】
前記pH調整により、炭素の層状構造を維持したままの結晶化合物であって、pH1.5~4.0に調整された熱膨張性黒鉛、および、1.3倍膨張温度が180℃~280℃の熱膨張性黒鉛を用いることができる。
【0035】
熱膨張性黒鉛のpHが1.5未満であると、酸性が強すぎて、成形装置の腐食などを引き起こしやすく、pHが7.0を超えると、ポリ塩化ビニル系樹脂の炭化促進効果が薄れ、十分な耐火性能が得られなくなるおそれがある。
熱膨張性黒鉛の粒径は、特に限定されないが、例えば100~400μmの範囲、好ましくは120~350μmの範囲のものを使用することができる。
【0036】
中間管15を構成する樹脂組成物には、本実施形態の目的を阻害しない範囲で、必要に応じて安定剤、無機充填剤、難燃剤、滑剤、加工助剤、衝撃改質剤、耐熱向上剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、顔料、可塑剤、熱可塑性エラストマーなどの添加剤が添加されていてもよい。
【0037】
中間管15の高さは、30mm以上150mm以下であることが好ましく、30mm以上100mm以下であることがより好ましく、30mm以上80mm以下であることが最も好ましい。中間管15の高さが30mm未満である場合は、上部接続管11と下部接続管12を接合する場合の接合強度を確保することが難しく、また、加熱されて膨張した場合に管路を閉塞するための体積が不足する。中間管15の高さが150mmを超えるようでは床スラブSが薄い場合に中間管15の上端または下端が床スラブSの上方か下方に突出することとなり、横管P3を床近くに配置することが難しくなる。中間管15の下端が貫通孔Hの下方に位置すると、膨張時に貫通孔Hの下方まで膨らむ量が多くなり、貫通孔Hから脱落するおそれが高くなる。
中間管15の高さが30mm以上150mm以下の範囲であるならば、一般的な床スラブ厚が150~300mmであり、いずれの厚さの床スラブに対し適用したとして、火災等による加熱時に熱膨張して管路を閉塞する目的を達成可能な高さとなる。また、この範囲の高さであれば、一般的な厚さの床スラブであれば、接合強度を確保でき、貫通孔H内に中間管15を収容できる高さとなる。
【0038】
下部接続管12は、上方よりも下方が縮径された管体からなる。下部接続管12は、その上端部に位置し、中間管15の下端部に接続される接続管部16と、接続管部16の下方に接続された下窄まり状の傾斜管部17と、傾斜管部17の下端部に接続され、第2の縦管P2が接続される下側管部18を備えている。接続管部16、傾斜管部17、下側管部18は、例えば合成樹脂材料の射出成形により一体に形成されている。
【0039】
接続管部16の内径は、中間管15の外径よりも大きくなっている。中間管15の周壁下部が接続管部16の内側に嵌合されている。傾斜管部17の上端における外径は、接続管部16の外径よりも小さくなっている。このため、接続管部16の下端部と傾斜管部17の上端部の境界部分に周段部16aが形成されている。
傾斜管部17の下端部における外径は、傾斜管部17の上端部の外径よりも小さくされている。
【0040】
下側管部18の外径は、接続管部16の外径よりも小さく、かつ傾斜管部17における下端部の外径よりも大きくなっている。下側管部18の中心軸線O方向の大きさは、接続管部16の中心軸線O方向の大きさよりも小さくなっている。下側管部18の内側に、下側の階の第2の縦管P2が下方から嵌合されることにより、第2の縦管P2が下部接続管12に接続されている。
【0041】
なお、上部接続管11に加えて下部接続管12も透明材料または半透明材料から形成されている。これにより、上部接続管11および下部接続管12の接続状態を外部から視認することができる。また、上部接続管11および下部接続管12に、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどの難燃剤を配合しておくことが望ましく、透明性を維持するため、難燃剤の体積平均粒子径は0.01μm以上500μm以下であることが好ましく、0.1μm以上100μm以下であることがより好ましく、0.5μm以上10μm以下であることがさらに好ましい。体積平均粒子径は、レーザー回折散乱法粒子径分布測定装置を用いて測定した値である。
難燃剤は、加熱された際に吸熱作用を有して温度上昇を抑制する化合物が好ましく、例えば、加熱された際に脱水反応等の吸熱反応が生じる化合物を難燃剤として使用できる。 このような難燃剤としては、例えば、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、カオリン系鉱物(カオリナイト、ハロイサイト、ディッカイト)やハイドロタルサルサイト等の無機水酸化物、セピオライト、ベントナイト、モンモリロナイト、タルク、マイカ、石英、ゼオライト、ワラストナイト、ネフェリンサイアナイト等の吸水作用のある無機化合物が挙げられる。
下部接続管12を透明または半透明とする場合は、上部接続管11を形成する樹脂と同等の樹脂を適用することができる。なお、本実施形態では上部接続管11と下部接続管12の両方を透明または半透明としたが、下部接続管12の方は不透明材料から形成されていても良い。
【0042】
第1の縦管P1が接続されている上部接続管11の上端部には、縦ブッシュ21と、縦パッキン22と、縦リング23と、が設けられている。
縦ブッシュ21は、嵌合部21aと、旋回羽根21bと、旋回羽根支持脚部21cと、を備えている。嵌合部21aは、縦ブッシュ21の上端部より小径で上部接続管11の縦管接続部13内に嵌合する筒状である。
【0043】
旋回羽根21bは、管軸方向にみた旋回羽根21bの投影面積が第1の縦管P1の内部横断面積に対して5%~30%の大きさで、傾斜角が20°~50°となるように旋回羽根支持脚部21cに支持されている。旋回羽根支持脚部21cは、旋回羽根21bの水平方向の幅と略同じ幅で嵌合部21aの下端からほぼ延出し、下端縁が旋回羽根21bの傾斜に沿うように傾斜されている。旋回羽根支持脚部21cは、旋回羽根支持面が断面円弧状に形成され、旋回羽根21bを下端縁から少し上側で支持している。
なお、旋回羽根21bは建築物の規模や排水器具数に応じ高排水性能が要求される場合に適用されるので、高排水性能が要求されない建築物の場合は省略しても良い。
【0044】
縦パッキン22は、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)等の通常排水設備に使用されているゴム材料からなるパッキンである。縦パッキン22は、上端部に第1の縦管P1の外周面に水密に密着するリップ部22aを有し、その上端面が、縦ブッシュ21の上端面とほぼ一致するように縦ブッシュ21に嵌合されている。
また、リップ部22aは、図2に示すように第1の縦管P1が挿入されていない状態では下端側に向かって徐々に小径となるように設けられている。リップ部22aは、上端側が第1の縦管P1の外径と略同径または少し大径とされ、下端側が第1の縦管P1の外径より小径となっている。リップ部22aの下端部には、径方向内側に突出する段部22bが形成されている。この段部22bには、第1の縦管P1の管端部が突き当たり、第1の縦管P1の熱伸縮を吸収するようになっている。
【0045】
縦リング23は、縦ブッシュ21の上端部に外嵌され、一端に設けられたフランジ部23aによって、縦パッキン22の縦ブッシュ21からの離脱を防止する。
縦ブッシュ21~縦リング23は、予め組み立てて一体化したのち、縦ブッシュ21の嵌合部21aを上部接続管11の縦管接続部13に嵌合し、接着することができる。
【0046】
横管P3を接続する横管接続部14の先端部には、横ブッシュ31と、横パッキン32と、横リング33と、が設けられている。
横ブッシュ31の一端部が上部接続管11の横管接続部14に嵌合接着されるとともに、他端部に拡径部が形成されている。
【0047】
横パッキン32は、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)等の通常排水設備に使用されているゴム材料からなる。横パッキン32は、横ブッシュ31の拡径した他端部に嵌合され、横管P3の外周面に水密に密着する。
【0048】
横リング33は、横ブッシュ31の拡径部に外嵌され、一端に設けられたフランジ部33aによって、横パッキン32の縦リング23からの離脱を防止する。
また、縦ブッシュ21、縦リング23、及び横ブッシュ31、横リング33は、いずれもポリ塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、非膨張性黒鉛を0.1~1.0重量部の割合で含むポリ塩化ビニル系樹脂組成物を射出成形して得られる。
なお、縦ブッシュ21、縦リング23、及び横ブッシュ31、横リング33は上部接続管11と同じ透明あるいは半透明のポリ塩化ビニル系樹脂を用いて透明あるいは半透明としてもよい。この場合、縦管P1や横管P3が適切な位置まで挿入されているか確認することができる。
【0049】
なお、横パッキン32を設けず、横ブッシュ31の内面と横管P3の外面とを接着剤で接着しても良く、さらに縦ブッシュ21、縦リング23、及び横ブッシュ31、横リング33を透明にした場合、接着剤の塗布の有無を外部から確認することができる。
【0050】
「排水集合継手の設置」
上述のような排水集合継手10は、図1に示すように、多層階建築物の排水立管路の各階の横枝管合流部に用いられ、以下のように施工される。
すなわち、下部接続管12と中間管15と上部接続管11の嵌合接続部を含む部分を床スラブSの貫通孔Hに臨ませた状態で設置し、下側の階の第2の縦管P2(例えば、市販品である積水化学工業社製のエスロン耐火VPパイプが使用できる)を下部接続管12の下側管部18に嵌合させて接着する。この設置の際、下部接続管12の上端部と中間管15と上部接続管11の下端部が貫通孔Hの内側に収容される。
また、縦リング23を介して上側の階の第1の縦管P1の下端部を縦パッキン22に嵌合する。
【0051】
つぎに、床スラブSの貫通孔Hにモルタルやロックウールなどの遮音材Mを充填し、下部接続管12の上端部と中間管15と上部接続管11の下端部を含む部分を遮音材M内に埋設する。下部接続管12は傾斜管部17の上端部と接続管部16が遮音材Mに埋設される。上部接続管11は横管接続部14の下端部より下側の部分(下端部9)が遮音材Mに埋設される。火災時等の残渣保持性を考慮するとモルタルの遮音材Mを用いることが好ましい。
そして、横リング33、横パッキン32を介して横管P3の端部を横ブッシュ31内に挿入して横管P3を接続する。
【0052】
本実施形態の排水集合継手10は、以上説明した構造になっており、中間管15が遮音材Mに囲まれた状態で床スラブSの貫通孔Hの内部に埋設されている。また、中間管15の外側に位置する上部接続管11の下端部9と傾斜管部17の上端部と接続管部16も遮音材Mに囲まれた状態で床スラブSの貫通孔Hの内部に埋設されている。
【0053】
この構造であるならば、上部接続管11を透明または半透明としたため、排水集合継手10にタオルなどの雑物が流入し、詰まりや異常を生じた場合であっても、詰まりを生じた部分、異常な部分を外部から容易に視認できる。また、上部接続管11に加え、下部接続管12も透明または半透明としたので、排水集合継手10の大部分を外部から視認可能とすることができ、雑物の詰まり部分、異常発生部分を容易に視認できるようになる。この構造であれば、管内カメラなどの大がかりな装置や器具を用いることなく排水集合継手10の詰まりなどの内部異常を確認できるようになる。このため、内部異常を生じた場合に迅速に対策をとることができるようになる。
また、中間管15を150mm以下とした場合、中間管15の側面が上部接続管11の下端部9と下部接続管12の接続管部16に覆われてしまい外部に露出しない可能性があるが、上部接続管11を透明または半透明としたため、中間管15の存在を外部から上部接続管11を通して確認することができる。
【0054】
また、上述の構造であるならば、下の階で火災が発生し、貫通孔Hとその周囲部分が炎によって加熱されると、中間管15に含まれている熱膨張性黒鉛が膨張する。そして、膨張した中間管15が上部接続管11の下端部あるいは下部接続管12の上端部を閉塞状態とする。このため、下の階から上の階への火炎や煙の流入を阻止し、延焼防止効果を発揮する。
【0055】
火災時の熱によって下部接続管12は溶け落ちることを前提とし、仮に溶け落ちたとしても中間管15が膨張して貫通孔Hを閉塞できる。このため、火災時に貫通孔Hを確実に閉塞でき、延焼防止効果を発現する。
【0056】
図1に示す排水集合継手10を備えた構造であれば、150~300mmのいずれの厚さの床スラブSであったとしても、30mm以上150mm以下の高さの中間管15を貫通孔H内に確実に配置できる。このため、いずれの厚さの床スラブSに対しても図1に示す構造を適用できることとなる。このため、本実施形態の構造は、一般的なスラブ厚の建築物であればいずれの建築物にも広く適用でき、汎用性に優れている。
【0057】
図1に示す構造であれば接続管部16の下方に下窄まり状の傾斜管部17を設けているので、この傾斜管部17が遮音材Mに確実に把持される結果、火炎等で加熱された場合であっても接続管部16の落下を確実に防止できる。
また、接続管部16の下端に周段部16aを設けているので、火災時に中間管15が膨張する場合、周段部16aが遮音材Mに確実に引っ掛かる。このため、下部接続管12の溶け落ち落下を防止でき、中間管15の膨張により貫通孔Hを確実に閉塞でき、耐火性を確実に発現できる。
【0058】
「第2実施形態」
図4は、本発明の第2実施形態に係る排水集合継手の一例を示す断面図である。
第2実施形態では、第1実施形態に適用された中間管15と異なる構造の中間管50を設ける。この実施形態の中間管50は、先の中間管15と内外径、高さ、厚さ、形状等は同等であるが、熱膨張性黒鉛を含まない樹脂、例えば、ポリ塩化ビニル系樹脂からなる。あるいは、ポリ塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、非膨張性黒鉛を0.1~1.0重量部程度の割合で含むポリ塩化ビニル系樹脂組成物からなる。
【0059】
更に、中間管50の外方に位置する上部接続管11の下端部9の外周と、中間管50の外方に位置する接続管部16の外周にかけて、熱膨張性黒鉛等の熱膨張性耐火材料からなる耐火層51を設けた点に特徴を有する。耐火層51は、熱膨張性黒鉛を含む熱膨張性耐火シートやテープを巻き付けて構成した多層構造を採用できる。
【0060】
耐火層51は、第1実施形態の中間管15と同等の材料からなる。
即ち、全体が熱膨張性耐火材料を含む樹脂組成物からなる単層構造でもよいし、複数の層からなる複層構造でもよい。複層構造の場合、いずれかの層が熱膨張性耐火材料を含む樹脂組成物から形成されていればよい。あるいは、熱膨張性耐火材料を含む樹脂組成物からなる単層構造の耐火シートを巻き付けて複層構造とした耐火層であっても良い。これらの中でも、耐火シートを巻き付けた構造が施工現場での実施がし易く、望ましい。
【0061】
本実施形態の耐火層51は、先の実施例の中間管15と同等高さに形成されている。 即ち、耐火層51が30mm以上150mm以下の高さに形成されている。
その他の構造は先の第1実施形態の構造と同等であるので、その他の構造の説明は省略する。
【0062】
第2実施形態の構造を図1に示す構造の床スラブSに適用すると、貫通孔Hの内部に耐火層15が埋設される。火災時に加熱されても中間管50は膨張しないが、耐火層51に含まれている熱膨張性黒鉛が膨張する。
火災時に加熱された耐火層15は、熱により軟化した上部接続管11の下端部9と接続管部16と中間管15を押し潰すように膨張して貫通孔Hを閉塞する。このため、耐火性を発現できる。
【0063】
第2実施形態の構造においても、外部から上部接続管11の内部と下部接続管12の内部を視認できる作用効果については同等である。
【0064】
図5は本発明の第3実施形態に係る排水集合継手の一例を示す断面図である。
この第3実施形態の構造は、排水集合継手10の外周面に吸音層55と遮音層56からなる遮音カバー57を設けた点に特徴を有する。具体的には、上部接続管11において縦リング23の取り付け部分の下方位置外周から、上部接続管11の下端部9の外周にかけて遮音カバー57が形成されている。図5の形態では、横管接続部14の突出部分は除くように吸音層55と遮音層56が形成されている。
遮音カバー57は、例えば、取付け現場において吸音層55の外周に遮音テープを巻き付けて遮音層56を形成した構成を採用できる。あるいは、排水集合継手10を工場生産した後、工場出荷前に遮音カバー57を予め取り付けた構成を採用しても良い。
【0065】
遮音層56は、軟質塩化ビニルやブチルゴムあるいはポリプロピレン(PP)のシート(厚さ0.8~2.2mm)を巻き付けて形成できる。吸音層55は、ポリエステル繊維やウレタン発泡体、あるいは、グラスウール(厚さ5~20mm)を適用できる。
【0066】
図5に示す構造では、排水集合継手10の外周面に吸音層55と遮音層56を設けたため、排水集合継手10の内部を流れる排水音が外部に大きく漏洩することを抑制できる。例えば、床スラブSを伝わって居室側に排水音が漏れることを防止できる。
この構成の場合、遮音テープを除去することで遮音層56を除去できるので、遮音層56を除去することで吸音層55も除去できる。
【0067】
第3実施形態の構造であれば、排水集合継手10に排水詰まりを生じた場合に遮音カバー57を除去することで、排水集合継手10の内部を視認可能となり、排水集合継手10のどこに詰まりを生じているのか、容易に把握できるようになる。このため、必要な位置に詰まり解消のための対策を講じることができる。
【0068】
なお、以上説明した本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した実施形態を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0069】
1…排水集合継手の構造、
10…排水集合継手、
11…上部接続管、
12…下部接続管、
13…縦管接続部、
15…中間管、
16…接続管部、
17…傾斜管部、
21b…旋回羽根、
50…中間管、
51…耐火層、
55…吸音層、
56…遮音層
57…遮音カバー、
H…貫通孔、
M…遮音材(モルタル)、
S…床スラブ。
図1
図2
図3
図4
図5