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特許7564270インターロイキン-1受容体アンタゴニスト融合タンパク質の送達による炎症状態の治療
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】インターロイキン-1受容体アンタゴニスト融合タンパク質の送達による炎症状態の治療
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/16 20060101AFI20241001BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20241001BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20241001BHJP
【FI】
A61K38/16 ZNA
A61P9/00
A61K39/395 Y
【請求項の数】 23
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023039474
(22)【出願日】2023-03-14
(62)【分割の表示】P 2020516827の分割
【原出願日】2018-09-26
(65)【公開番号】P2023063426
(43)【公開日】2023-05-09
【審査請求日】2023-03-14
(31)【優先権主張番号】62/691,552
(32)【優先日】2018-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/616,819
(32)【優先日】2018-01-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/639,425
(32)【優先日】2018-03-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/563,387
(32)【優先日】2017-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/716,331
(32)【優先日】2018-08-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/654,291
(32)【優先日】2018-04-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/625,075
(32)【優先日】2018-02-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】597160510
【氏名又は名称】リジェネロン・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】REGENERON PHARMACEUTICALS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】ジョン パオリーニ
(72)【発明者】
【氏名】エベン テッサリ
【審査官】大島 彰公
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2006/0171948(US,A1)
【文献】ANTONIO BRUCATO,JAMA / THE JOURNAL OF THE AMERICAN MEDICAL ASSOCIATION,米国,2016年11月08日,VOL:316, NR:18,,PAGE(S):1906-1912,http://dx.doi.org/10.1001/jama.2016.15826
【文献】BENJAMIN W VAN TASSELL,TARGETING INTERLEUKIN-1 IN HEART DISEASE,CIRCULATION,米国,2013年10月22日,VOL:128, NR:17,,PAGE(S):1910 - 1923,http://dx.doi.org/10.1161/CIRCULATIONAHA.113.003199
【文献】MARIA JAWORSKA-WILCZYNSKA,POST-CARDIAC INJURY SYNDROME,POLISH JOURNAL OF CARDIO-THORACIC SURGERY,2013年,VOL:10, NR:1,,PAGE(S):20 - 26,http://dx.doi.org/10.5114/kitp.2013.34299
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K、A61P、C07K
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
再発性心膜炎を治療する方法において使用するための組成物であって、インターロイキン-1受容体-Fc融合タンパク質を含み、
前記方法が、治療を必要とする対象に、前記組成物を治療上有効な用量で投与するステップを含み、
前記インターロイキン-1受容体-Fc融合タンパク質が、二量体であって、IL-1R1の細胞外ドメイン、IL-1Rアクセサリータンパク質(IL-1RAcP)の細胞外ドメイン、およびヒト免疫グロブリンのFc部分を含み、
IL-1R1の前記細胞外ドメインが、配列番号4と少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、
IL-1RAcPの前記細胞外ドメインが、配列番号3と少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、
組成物。
【請求項2】
IL-IR1の前記細胞外ドメインが、ヒト免疫グロブリンの前記Fc部分に融合している、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ヒト免疫グロブリンがIgG1である、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記治療上有効な用量が80mg以上である、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記治療上有効な用量が160mgである、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物が毎週1回投与される、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記組成物が1週間またはそれ以上にわたって投与される、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
治療を必要とする前記対象が、数値評価尺度(NRS)上の心膜炎の痛みの程度≧4およびC反応性タンパク質(CRP)レベル≧1mg/dLを伴う心膜炎の再発を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記インターロイキン-1受容体-Fc融合タンパク質の前記投与が、NRS上の心膜炎の痛み≦2およびCRP≦0.5mg/mLによって定義される治療応答をもたらす、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記NRSスコアが、前記インターロイキン-1受容体-Fc融合タンパク質の最初の投与から7日以内に2以下に低下する、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
CRPレベルが、前記インターロイキン-1受容体-Fc融合タンパク質の最初の投与から7日以内に<0.5mg/dLに低下する、請求項9に記載の組成物。
【請求項12】
前記組成物の投与により、前記対象における併用療法または標準治療の休止がもたらされる、請求項1~11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
前記併用療法または標準治療がNSAID、ステロイド、コルヒチン、コルチコステロイド、またはそれらの組み合わせである、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記組成物の投与により、前記対象におけるコルチコステロイド治療の休止がもたらされる、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記対象におけるコルチコステロイド治療の休止が、前記最初の投与から、約4週後、5週後、6週後、7週後、8週後、または9週後である、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
前記組成物の投与により、5%未満の心膜炎の再発のリスクの低減がもたらされる、請求項1~15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
前記インターロイキン-1受容体-Fc融合タンパク質がホモ二量体である、請求項1~16のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項18】
前記再発性心膜炎が特発性である、請求項1~17のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項19】
前記組成物の投与が皮下投与を含む、請求項1~18のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項20】
前記皮下投与が皮下注射を介する、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
IL-1R1の前記細胞外ドメインが、配列番号4と少なくとも96%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、
IL-1RAcPの前記細胞外ドメインが、配列番号3と少なくとも96%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、
請求項1~20のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項22】
IL-1R1の前記細胞外ドメインが、配列番号4と少なくとも97%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、
IL-1RAcPの前記細胞外ドメインが、配列番号3と少なくとも97%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、
請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
IL-1R1の前記細胞外ドメインが、配列番号4と少なくとも98%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、
IL-1RAcPの前記細胞外ドメインが、配列番号3と少なくとも98%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、
請求項22に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2017年9月26日出願の米国仮特許出願第62/563,387号、2018年1月12日出願の第62/616,819号;2018年2月1日出願の第62/625,075号;2018年3月6日出願の第62/639,425号;2018年4月6日出願の第62/654,291号;2018年6月28日出願の第62/691,552号;および2018年8月8日出願の第62/716,331号への優先権を主張し、その全ての開示は参照により本明細書に援用される。
【0002】
配列表
本明細書は、配列表(「KPL-010USWO_SL」という名称のテキスト(.txt)ファイルとして2018年9月26日に電子的に提出された)を参照する。この.txtファイルは、2018年9月25日に作成され、サイズは23,793バイトである。配列表の内容全体が、参照によって本明細書に援用される。
【背景技術】
【0003】
IL-1αおよびIL-1βは、IL-1αおよびIL-1β受容体を係合することによって強力な炎症促進性の事象を引き起こす。組織の侵襲に続いて、IL-1αの放出は、損傷範囲への免疫細胞の動員を調整するための主要な開始シグナルとして作用するのに対し、IL-1βは、大部分がマクロファージによって分泌され、正規のインフラマソームの原型のサイトカインである。IL-1αおよびIL-1βシグナル伝達は、損傷部位への貪食細胞の増殖およびリクルートメントを取り纏めるサイトカインの産生の劇的な増加をもたらし、その結果として炎症を生じる。さらに、IL-1αおよびIL-1βシグナル伝達は、T細胞およびB細胞などの他の免疫系細胞にも影響を及ぼす。
【0004】
炎症過程におけるIL-1βの役割が広範に研究されてきたのに引き比べ、疾患病理におけるIL-1αの独立した機能については、多くが依然として未知である。同様の免疫学的なアウトカムを駆るとはいえ、IL-1αとIL-1βは、その発現および調節において実質的に異なり、IL-1αとIL-1βの役割の重複がないことは、複数の炎症性疾患で実証されてきた。IL-1αの阻害がない場合にIL-1βの阻害のみでは疾患の緩解に充分ではないように思われる病状がある。公表された研究では、ある特定の自己炎症性疾患が実際にはIL-1αによって病理的に駆動されうることが示唆されている。
【0005】
心臓外傷後症候群(PCIS)は、心膜、心外膜、および心筋の炎症の自己免疫媒介性の状態の病因的に不均一な一群である。心膜炎は、心臓を取り囲む薄い2層の流体に満たされた嚢である心膜の炎症である。心膜炎は、多くの場合に胸痛を引き起こし、他の症状を生じることもある。心膜炎に伴う鋭い胸痛は、心膜の炎症層が相互に擦れ合う際に発生する。心膜炎の徴候および症状は、以下のうちのいくつかまたは全てを含むことがある:胸部の中央または左側にわたる鋭い刺すような胸痛であって、一般に息を吸うかもたれかかった際にさらに強くなるもの;もたれかかった際の息切れ;心悸亢進;微熱;全体的な衰弱感、疲労感、または嘔気感;咳;および腹部または脚部の腫脹。
【0006】
心膜炎の現在利用可能な治療としては、心膜炎に関連する炎症および腫脹を低減する薬物が挙げられる。これらの薬物としては、非ステロイド性抗炎症薬、例えばアスピリン、イブプロフェン、またはインドメタシン;炎症を低減しないコルヒチン;および患者が疼痛緩和剤に応答しない場合、または患者が電流での症状もしくは心膜炎を有する場合のコルチコステロイドが挙げられる。コルヒチンは、心膜炎の症状の持続時間を低減し、その状態が再発するリスクを減少させることができるが、この薬物は、肝疾患もしくは腎疾患のような健康状態に既にあった患者にとっては、またはある種の薬物を摂取している患者にとっては安全ではなく、悪心および下痢を含めて、治療の中断に繋がる可能性がある副作用を引き起こすことがある。ステロイドは、特に長期使用によって、著しい副作用を引き起こすことが知られている。難治性症状を有する患者は、管理することが特に困難である可能性があり、その結果、心膜炎を治療するために全身的に与えることのできる好ましいベネフィット/リスク比を有する新しい薬剤を特定することが、重大にかつ非常に長期にわたって必要である。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、特に、インターロイキン-1受容体-Fc融合タンパク質を用いた心臓外傷後症候群(PCIS)および心膜炎を治療する方法を提供する。具体的には、本発明は、組換えIL-1受容体/IL-1アクセサリータンパク質-Fc融合タンパク質(例えば、IL-1受容体-Fc融合タンパク質)を投与した後のヒト心膜炎患者、特に再発性心膜炎の患者において観察される治療有効性に基づく。いかなる理論に束縛されることも望むものではないが、本発明で使用される組換えIL-1-Fc融合タンパク質は、IL-1α/IL-1βを結合する可溶性デコイ受容体として作用し、IL-1細胞表面受容体とのそれらの相互作用を防止することが企図されている。下記の実施例において実証されるように、そのような組換えIL-1受容体-Fc融合タンパク質の投与は、心膜炎に関連する炎症および痛みの臨床的に有意な減少と、心臓病理に臨床的に有意な改善とをもたらした。さらに、本発明による組換えIL-1受容体-Fc融合タンパク質の使用は、正の安全性および忍容性のプロファイルをもたらした。ゆえに、本発明は、この疾患のための高度に安全かつ有効な薬剤を提供することにより、心膜炎治療におけるアンメットニーズに対処する。
【0008】
一態様では、本発明は、対照に比較して心臓外傷後症候群(PCIS)の一つまたは複数の症状を改善、安定化、または低減するのに十分な治療上有効な用量および治療期間にわたる投与間隔で、治療を必要とする対象にインターロイキン-1受容体-Fc融合タンパク質を投与するステップを含む、PCISを治療する方法を提供する。別の態様では、本発明は、対照に比較して心膜炎の一つまたは複数の症状を改善、安定化、または低減するのに十分な治療上有効な用量および治療期間にわたる投与間隔で、治療を必要とする対象にインターロイキン-1受容体-Fc融合タンパク質を投与するステップを含む、心膜炎を治療する方法を提供する。一実施形態では、心膜炎は再発性心膜炎である。別の実施形態では、心膜炎は難治性心膜炎である。一実施形態では、心膜炎は特発性心膜炎である。一実施形態では、特発性心膜炎は再発性特発性心膜炎である。別の実施形態では、心膜炎は非特発性心膜炎であり、そのようなものとしては、例えば、PCISに関連する心膜炎が挙げられる。いくつかの実施形態では、心膜炎は再発性非特発性心膜炎である。いくつかの実施形態では、特発性心膜炎は難治性特発性心膜炎である。いくつかの実施形態では、心膜炎は難治性非特発性心膜炎である。
【0009】
いくつかの実施形態では、PCISは、心筋梗塞心膜炎、心筋梗塞後心膜炎、心膜切開後症候群(PPS)、または外傷後心膜炎から選択される。特定の実施形態では、心筋梗塞後心膜炎は、早発性心筋梗塞後関連心膜炎(心外膜限局性心膜炎)または遅発性心筋梗塞後心膜炎(ドレスラー症候群)である。他の実施形態では、外傷後心膜炎は、非医原性外傷または医原性外傷である。一実施形態では、特発性心膜炎は、成人発症性スティル病に関連がある。一実施形態では、心膜炎は再発性非特発性心膜炎である。
【0010】
いくつかの実施形態では、治療を必要とする対象は再発性心膜炎を有する。いくつかの実施形態では、治療を必要とする対象は再発性特発性心膜炎を有する。いくつかの実施形態では、治療を必要とする対象は再発性非特発性心膜炎を有する。
【0011】
一実施形態では、対象は難治性心膜炎を有する。一実施形態では、対象は難治性の特発性または非特発性の心膜炎を有する。
【0012】
一実施形態では、対象は心臓外傷後症候群(PCIS)を有する。特定の実施形態では、対象は、心筋梗塞後心膜炎、心膜切開後症候群(PPS)、または外傷後心膜炎、早発性心筋梗塞後関連心膜炎(心外膜限局性心膜炎)、または遅発性心筋梗塞後心膜炎(ドレスラー症候群)を有する。他の実施形態では、外傷後心膜炎は、非医原性外傷または医原性外傷である。一実施形態では、対象は成人発症性スティル病に関連する心膜炎を有する。
【0013】
一実施形態では、対象は心膜炎を有する。一実施形態では、対象は、PCSIに伴う症状として、または関連して、心膜炎を有する。一実施形態では、対象は、再発性または難治性の心膜炎を有する。一実施形態では、対象は特発性心膜炎を有する。一実施形態では、対象は再発性特発性心膜炎を有する。
【0014】
一実施形態では、投与のステップは皮下投与を含む。一実施形態では、皮下投与は皮下注射を介する。一実施形態では、投与のステップは、初回負荷用量と、それに続く少なくとも1回の維持用量とを含む。一実施形態では、初回負荷用量は、少なくとも1回の維持用量よりも多い。一実施形態では、初回負荷用量は、少なくとも1回の維持用量の投薬量よりも2倍多い投薬量である。一実施形態では、初回負荷用量は、投薬量の等しい2回の注射として送達される。一実施形態では、治療上有効な用量は、初回負荷用量または維持用量を含む。一実施形態では、治療上有効な用量は320mg以上である。一実施形態では、治療上有効な用量は、320mg以上の初回負荷用量を含む。一実施形態では、初回負荷用量は、160mgの2回の注射として送達される。一実施形態では、治療上有効な用量は160mg以上である。一実施形態では、治療上有効な用量は、160mg以上の維持用量を含む。一実施形態では、治療上有効な用量は、160mg以上の初回負荷用量を含む。一実施形態では、初回負荷用量は80mgの2回の注射として送達される。一実施形態では、治療上有効な用量は80mg以上である。一実施形態では、治療上有効な用量は、80mg以上の維持用量を含む。
【0015】
一実施形態では、治療上有効な用量は4mg/kg以上である。一実施形態では、治療上有効な用量は、4mg/kg以上の初回負荷用量を含む。具体的な実施形態では、初回負荷用量は4.4mg/kg以上である。いくつかの実施形態では、初回負荷用量は、単回注射として送達される。いくつかの実施形態では、初回負荷用量は、2.2mg/kgの2回の注射として送達される。一実施形態では、治療上有効な用量は2mg/kg以上である。別の実施形態では、治療上有効な用量は、2mg/kg以上の維持用量を含む。具体的な実施形態では、維持用量は2.2mg/kg以上である。
【0016】
一実施形態では、治療上有効な用量は、2mL以下の体積として送達される。
【0017】
一実施形態では、投与間隔は週1回である。一実施形態では、投与間隔は少なくとも5日である。一実施形態では、投与間隔は2週間に1回である。一実施形態では、投与間隔は3週間に1回である。一実施形態では、投与間隔は4週間に1回である。一実施形態では、投与間隔は5週間に1回である。
【0018】
一実施形態では、治療を必要とする対象は18歳以上である。具体的な実施形態では、18歳以上の対象に、初回負荷用量が各160mgの2回の注射として送達され、維持用量が週当たり160mgで送達される。いくつかの実施形態では、対象は、320mgの負荷用量を再投与される。いくつかの実施形態では、対象は、320mgの負荷用量の倍量を投与される。いくつかの実施形態では、対象は、約720mgのIL-1受容体-Fc融合タンパク質を投与される。
【0019】
別の実施形態では、治療を必要とする対象は18歳未満である。一実施形態では、治療を必要とする対象は、6歳から<18歳である。具体的な実施形態では、6歳から<18歳の対象に、初回負荷用量が各2.2mg/kgの2回の注射として送達され、維持用量が週当たり2.2mg/kgで送達される。
【0020】
一実施形態では、心膜炎の一つまたは複数の症状は、心膜炎の痛みの評価のための数値評価尺度(NRS)によって評価される。一実施形態では、心膜炎の一つまたは複数の徴候は、心エコー図によって評価される。一実施形態では、心エコー図によって評価された心膜炎の一つまたは複数の徴候は、心膜液貯留を含む。一実施形態では、心膜炎の一つまたは複数の徴候は、心電図(ECG)によって評価される。一実施形態では、ECGによって評価された心膜炎の一つまたは複数の症状は、広範囲のST上昇および/またはPRの低下を含む。一実施形態では、心膜炎の一つまたは複数の徴候は、発熱および/または心膜摩擦音を含む。一実施形態では、心膜炎の一つまたは複数の徴候は、心臓磁気共鳴画像法(MRI)によって評価される。一実施形態では、心膜炎の一つまたは複数の症状は、C反応性タンパク質(CRP)の血中レベルを測定することによって評価される。一実施形態では、CRPの血中レベルを測定することは、初回負荷用量のインターロイキン-1受容体-Fc融合タンパク質の投与後のいくつかの時点でCRPの血中レベルを測定することを含み、その際に、線形回帰を実施して、ベースラインからのCRPレベルの変化、プラセボ効果について調整されたベースラインからのCRPレベルの変化、および/または経時的なCRPの血中レベルの傾きを決定する。いくつかの実施形態では、血中CRPレベルの変化は測定されない。一実施形態では、心膜炎の一つまたは複数の症状は、生活の質の質問票によって評価される。一実施形態では、インターロイキン-1受容体-Fc融合タンパク質の投与によって、心膜炎の痛みの評価のための数値評価尺度(NRS)に統計的に有意な低下がもたらされる。一実施形態では、対照は、治療前の対象における心膜炎の一つまたは複数の症状を標示する。一実施形態では、治療前の対象における心膜炎の一つまたは複数の症状は、1mg/dL超のCRP値を含む。
【0021】
一実施形態では、治療を必要とする対象は、心膜炎の指標エピソードを有してきた。本明細書で使用される場合、「指標」という用語は、「出来事」と互換的に使用され、各場合での対象における心膜炎の最初の出来事を表す。一実施形態では、心膜炎の指標エピソードは、急性心膜炎事象について少なくとも二つの基準を満たし、この基準は、心膜炎性の胸痛、心膜摩擦音、ECG上の新しい広範囲でのSTセグメントの上昇またはPRセグメントの低下、および新しいかまたは悪化した心膜液貯留を含む。一実施形態では、治療を必要とする対象は、心膜炎の少なくとも一つの再発エピソードを有してきた。一実施形態では、治療を必要とする対象は、心膜炎の進行中の症状エピソードを有している。一実施形態では、対照は、治療なく同じ病状を有する対照対象における心膜炎の一つまたは複数の症状を標示する。一実施形態では、対照は、経時的に心膜炎患者からの健康情報を評価することによって決定される心膜炎の一つまたは複数の症状を標示し、その情報は、例えば心膜炎の自然経過研究から得ることができる、その状態の自然の進展を実証するものである。いくつかの実施形態では、対照は、疾患を有する対象がIL-1受容体-Fc融合タンパク質の投与の非存在下で標準治療の療法を受けたときの病状を標示する。
【0022】
一実施形態では、投与は対象で重篤な有害事象をもたらさない。一実施形態では、投与は、特定の治療ベネフィットの観点から許容される重篤な有害事象をもたらす。一実施形態では、投与は、注射部位反応、上気道感染、頭痛、悪心、嘔吐、下痢、副鼻腔炎、関節痛、インフルエンザ様症状、腹痛、発熱、上咽頭炎、虚血性視神経症、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される有害作用をもたらさない。
【0023】
一実施形態では、インターロイキン-1受容体-Fc融合タンパク質は、配列番号1のアミノ酸配列を含む。一実施形態では、インターロイキン-1受容体-Fc融合タンパク質は、配列番号1と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む。一実施形態では、インターロイキン-1受容体-Fc融合タンパク質は、ヒトIgG1に由来するCH1ドメインおよびCH2ドメインを含む。
【0024】
一実施形態では、治療によって、NSAID、コルヒチン、コルチコステロイド、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される併用療法の休止または離脱が可能になる。
【0025】
一実施形態では、対象は再発性または難治性の心膜炎と診断される。一実施形態では、対象は特発性心膜炎と診断される。一実施形態では、対象は再発性特発性心膜炎と診断される。一実施形態では、対象は難治性特発性心膜炎と診断される。一実施形態では、対象は非特発性心膜炎と診断される。一実施形態では、対象は再発性非特発性心膜炎と診断される。一実施形態では、対象は難治性非特発性心膜炎と診断される。一実施形態では、対象は心臓外傷後症候群(PCIS)と診断される。特定の実施形態では、対象は、心筋梗塞後心膜炎、心膜切開後症候群(PPS)、または外傷後心膜炎と診断される。特定の実施形態では、心筋梗塞後心膜炎は、早発性心筋梗塞後関連心膜炎(心外膜限局性心膜炎)または遅発性心筋梗塞後心膜炎(ドレスラー症候群)である。他の実施形態では、外傷後心膜炎は、非医原性外傷または医原性外傷である。一実施形態では、対象は成人発症性スティル病と診断される。
【0026】
一実施形態では、インターロイキン-1受容体-Fc融合タンパク質はリロナセプトである。
【0027】
一実施形態では、対象はコルヒチン抵抗性、コルチコステロイド依存性、コルチコステロイド不耐性、コルチコステロイド不応性、およびそれらの組み合わせである。
【0028】
一実施形態では、対象は、全身性炎症のマーカーのレベルの上昇を伴う心膜炎を有する症候性対象であって、CRPレベルは≧1mg/dLであるか;または、炎症マーカーのレベルの上昇がない心膜炎およびイメージング手法を用いると心膜の炎症が存在する症候性対象であって;上記対象は、NSAID、コルチコステロイド、および/もしくはコルヒチンに抵抗性もしくは不耐性であるか;または、NSAID、コルチコステロイド、および/もしくはコルヒチンに依存性の心膜炎を有するが、心膜炎の再燃の診断基準を満たすものとなる症状を経験していない対象であるか;または、全身性炎症のマーカーの上昇を伴うもしくは伴わないPCISを有する症候性対象であって;上記対象は、NSAID、コルチコステロイド、および/もしくはコルヒチンに抵抗性もしくは不耐性であるか;ならびに/またはNSAID、コルチコステロイド、および/もしくはコルヒチンに依存性のPCISを有するがPCISの診断基準、例えば心膜炎の再燃の基準を満たすものとなる症状を経験していない。
【0029】
一実施形態では、インターロイキン-1受容体-Fc融合タンパク質の投与は、対象に、約2mg/dL未満、約1.5mg/dL未満、約1mg/dL未満、約0.8mg/dL未満、約0.6mg/dL未満、約0.5mg/dL未満、約0.4mg/dL未満、約0.3mg/dL未満、約0.2mg/dL未満、約0.1mg/dL未満から選択されるCRPレベルの低減をもたらす。いくつかの実施形態では、低減されたCRPレベルは約1mg/dL未満である。いくつかの実施形態では、低減されたCRPレベルは約0.3~1mg/dLの範囲である。いくつかの実施形態では、低減されたCRPレベルは0.3mg/dL未満である。
【0030】
一実施形態では、CRPレベルは、インターロイキン-1受容体-Fc融合タンパク質の最初の投与から2週間以内、1週間以内、6日以内、5日以内、4日以内、3日以内、2日以内、または1日以内に、1mg/dL未満に低減される。いくつかの実施形態では、CRPレベルは、インターロイキン-1受容体-Fc融合タンパク質の最初の投与から1週間以内に1mg/dL未満に低減される。いくつかの実施形態では、CRPレベルは、約2週間超、約4週間超、約1ヶ月超、約2ヶ月超、約3ヶ月超、約4ヶ月超、約5ヶ月超、約6ヶ月超、約7ヶ月超、約8ヶ月超、約10ヶ月超、または約1年超にわたって、1mg/dL未満に維持される。いくつかの実施形態では、患者が本発明による投与間隔および治療期間で治療用量のインターロイキン-1受容体-Fc融合タンパク質を受け続ける間に、CRPレベルは、約2週間超、約4週間超、約1ヶ月超、約2ヶ月超、約3ヶ月超、約4ヶ月超、約5ヶ月超、約6ヶ月超、約7ヶ月超、約8ヶ月超、約10ヶ月超、または約1年超にわたって、1mg/dL未満に維持される。いくつかの実施形態では、対象が併用療法を何も行わずインターロイキン-1受容体-Fc融合タンパク質を受ける間、CRPレベルは上記の期間にわたって1mg/dL未満で維持される。
【0031】
いくつかの実施形態では、CRPレベルは、インターロイキン-1受容体-Fc融合タンパク質の最初の投与から3週間以内に、0.3mg/dL未満に低減される。いくつかの実施形態では、CRPレベルは、約1週間超、約2週間超、約3週間超、約1ヶ月超、約2ヶ月超、約3ヶ月超、約4ヶ月超、約5ヶ月超、約6ヶ月超、約8ヶ月超、または約1年超にわたって、0.3mg/dLで維持される。いくつかの実施形態では、本発明による投与間隔および治療期間に治療用量のインターロイキン-1受容体-Fc融合タンパク質を受け続ける、CRPレベルは上記の期間にわたって0.3mg/dL未満に維持される。いくつかの実施形態では、対象が併用療法を何も行わずインターロイキン-1受容体-Fc融合タンパク質を受ける間、CRPレベルは上記の期間にわたって0.3mg/dL未満で維持される。
【0032】
一実施形態では、インターロイキン-1受容体-Fc融合タンパク質の投与により、NRSスコアが2以下に低減する。
【0033】
一実施形態では、NRSスコアは、インターロイキン-1受容体-Fc融合タンパク質の最初の投与から3週間以内、2週間以内、または1週間以内に、2以下に低減ずる。
【0034】
いくつかの実施形態では、NRSスコアは、約1週間超、約2週間超、約3週間超、約1ヶ月超、約2ヶ月超、約3ヶ月超、約4ヶ月超、約5ヶ月超、約6ヶ月超、約8ヶ月超、または約1年超にわたって、2以下に維持される。いくつかの実施形態では、患者が本発明による投与間隔および治療期間に治療用量のインターロイキン-1受容体Fc融合タンパク質を受け続ける間、NRSレベルは上記の期間にわたって2以下に維持される。いくつかの実施形態では、対象が併用療法を何も行わずインターロイキン-1受容体-Fc融合タンパク質を受ける間、NRSレベルは上記の期間にわたって2以下に維持される。
【0035】
いくつかの実施形態では、インターロイキン-1受容体-Fc融合タンパク質により、NRSスコアが1以下に低減する。
【0036】
いくつかの実施形態では、NRSスコアは、本発明による投与間隔および治療期間に、インターロイキン-1受容体Fc融合タンパク質の最初の投与から5週間以内、4週間以内、3週間以内、2週間以内、または1週間以内に、1以下に減少する。
【0037】
いくつかの実施形態では、NRSスコアは、約1週間超、約2週間超、約3週間超、約1ヶ月超、約2ヶ月超、約3ヶ月超、約4ヶ月超、約5ヶ月超、約6ヶ月超、約8ヶ月超、または約1年超にわたって、1以下に維持される。いくつかの実施形態では、対象が本発明による投与間隔および治療期間にインターロイキン-1受容体-Fc融合タンパク質を受ける間、NRSレベルは上記の期間にわたって1以下に維持される。いくつかの実施形態では、対象が併用療法を何も行わずインターロイキン-1受容体-Fc融合タンパク質を受ける間、NRSレベルは上記の期間にわたって1以下に維持される。
【0038】
いくつかの実施形態では、インターロイキン-1受容体-Fc融合タンパク質の投与は、対照と比較して心膜液貯留の減少をもたらす。いくつかの実施形態では、対照は、治療前に対象で測定されたベースライン心膜液貯留レベルである。いくつかの実施形態では、対照は、同等の病状を有するがプラセボで治療される対象において測定される心膜液貯留レベルである。いくつかの実施形態では、対照は、治療なく同等の病状を有する対象における心膜液貯留を標示する参照値である。いくつかの実施形態では、対照は、疾患を有する対象がIL-1受容体-Fc融合タンパク質の投与を行わず標準治療の療法を受けたときの病状を標示する。
【0039】
いくつかの実施形態では、インターロイキン-1受容体Fc-融合タンパク質の投与は、心膜液貯留の非存在をもたらす。
【0040】
いくつかの実施形態では、心膜液貯留の減少または非存在は、約2週間超、約4週間超、約1ヶ月超、約2ヶ月超、約3ヶ月超、約4ヶ月超、約5ヶ月超、約6ヶ月超、約8ヶ月超、または約1年超にわたって維持される。いくつかの実施形態では、対象が本発明による投与間隔および治療期間に治療用量のインターロイキン-1受容体-Fc融合タンパク質を受け続ける間、心膜液貯留の減少または非存在は上記の期間にわたって維持される。いくつかの実施形態では、対象が併用療法を何も行わずインターロイキン-1受容体-Fc融合タンパク質を受ける間、心膜液貯留の減少または非存在は上記の期間にわたって維持される。
【0041】
いくつかの実施形態では、インターロイキン-1受容体-Fc融合タンパク質の投与は、対照と比較して、ECGにより決定される際の対象における心臓導電率の改善をもたらす。いくつかの実施形態では、ECGにより決定される際の心臓導電率の改善は、ST上昇の低減および/またはSR低下の低減を含む。
【0042】
いくつかの実施形態では、インターロイキン-1受容体-Fc融合タンパク質の投与は、ECG評価により決定される際の対象における心臓導電率の正常化をもたらす。
【0043】
いくつかの実施形態では、インターロイキン-1受容体-Fc融合タンパク質の投与は、対照と比較して、心エコー評価(ECHO)によって決定される際の対象における心臓貯留の改善をもたらす。
【0044】
いくつかの実施形態では、インターロイキン-1受容体-Fc融合タンパク質の投与は、ECHO評価によって決定される際の対象における心臓機能の正常化をもたらす。
【0045】
いくつかの実施形態では、対照は、治療前に対象で測定されたベースライン心臓パラメータ(例えば、それぞれECGまたはECHOによって決定される)である。いくつかの実施形態では、対照は、同等の病状を有するがプラセボで治療される対象で測定される心臓パラメータ(例えば、それぞれECGまたはECHOによって決定される)である。いくつかの実施形態では、対照は、インターロイキン-1受容体-Fc融合タンパク質の治療を行わず同等の病状を有する対象における心臓パラメータを標示する参照である 。いくつかの実施形態では、対照は、インターロイキン-1受容体-Fc融合タンパク質の投与を行わず標準治療の療法を受けている同等の病状を有する対象における心臓パラメータを標示する参照である 。
【0046】
いくつかの実施形態では、心臓パラメータの改善または正常化は、約2週間超、約4週間超、約1ヶ月超、約2ヶ月超、約3ヶ月超、約4ヶ月超、約5ヶ月超、約6ヶ月超、約8ヶ月超、または1年超にわたって維持される。いくつかの実施形態では、対象が本発明による投与間隔および治療期間にインターロイキン-1受容体-Fc融合タンパク質を受ける間、心臓パラメータの正常化は上記の期間にわたって維持される。いくつかの実施形態では、対象が併用療法を何も行わずインターロイキン-1受容体-Fc融合タンパク質を受ける間、心臓パラメータの正常化は上記の期間にわたって維持される。
【0047】
いくつかの実施形態では、インターロイキン-1受容体-Fc融合タンパク質の投与は、対照と比較して、対象におけるQoLスコアの改善をもたらす。いくつかの実施形態では、対照は、治療前に対象で決定されたベースラインQoLスコアである。いくつかの実施形態では、対照は、同等の病状を有するがプラセボで治療された対象におけるQoLスコアである。いくつかの実施形態では、対照は、治療なく同等の病状を有する対象におけるQoLスコアを標示する参照である。いくつかの実施形態では、対照は、疾患を有する対象がIL-1受容体-Fc融合タンパク質の投与を行わず標準治療の療法を受けたときのQoLを標示する。
【0048】
いくつかの実施形態では、QoLスコアの改善は、以下から選択される一つまたは複数の評価を含む:心膜炎の重症度に関する患者の全般的印象(PGIPS);心膜炎の活性度に関する医師の全般的印象(PGA-PA);36項目短形式健康状態調査(SF-36);5レベルEuroQoL-5D(EQ-5D-5L)および不眠症重症度指標(ISI)。
【0049】
いくつかの実施形態において、QoLスコアの改善は、5点リッカート尺度において7未満のスコア値を有する、臨床的に有意ではない不眠症を標示するISIの低減を含む。
【0050】
いくつかの実施形態では、QoLスコアの改善は、最初の投与の日から2週間超、3週間超、1ヶ月超、2ヶ月超、3ヶ月超、4ヶ月超、5ヶ月超、6ヶ月超、8ヶ月超、または1年超にわたって維持される。いくつかの実施形態では、対象がインターロイキン-1受容体-Fc融合タンパク質を受ける間、QoLスコアの改善は上記の期間にわたって維持される。いくつかの実施形態では、対象が併用療法を何も行わずインターロイキン-1受容体-Fc融合タンパク質を受ける間、QoLスコアの改善は上記の期間にわたって維持される。
【0051】
いくつかの実施形態では、インターロイキン-1受容体Fc融合タンパク質の投与は、他の標準治療(SOC)薬剤の非存在下で対象の無再発生存の期間をもたらす。いくつかの実施形態では、無再発期間は、少なくとも1ヶ月、少なくとも5週間、少なくとも6週間、少なくとも7週間、少なくとも8週間、少なくとも3ヶ月、少なくとも4ヶ月、少なくとも5ヶ月、少なくとも6ヶ月、または少なくとも1年である。
【0052】
いくつかの実施形態では、インターロイキン-1受容体-Fc融合タンパク質を用いた治療期間は、1週間続く。いくつかの実施形態では、インターロイキン-1受容体-Fc融合タンパク質を用いた治療期間は、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、または10週間続く。いくつかの実施形態では、治療期間は、2ヶ月間、3ヶ月間、4ヶ月間、5ヶ月間、6ヶ月間、7ヶ月間、8ヶ月間、9ヶ月間、10ヶ月間、11ヶ月間、または1年間続く。いくつかの実施形態では、治療期間は1年間を超えて続く。いくつかの実施形態では、治療期間は、本発明による用量のおよび時間間隔での投与を包含する。
【0053】
一部の態様では、本発明は、心膜切開後症候群(PPS)を治療する方法を提供し、この方法は、対照に比較して心膜切開後心膜炎の一つまたは複数の症状を改善、安定化、または低減するのに十分な治療上有効な用量および治療期間にわたる投与間隔で、治療を必要とする対象にインターロイキン-1受容体-Fc融合タンパク質を投与するステップを含む。
【0054】
いくつかの実施形態では、本発明は、対照に比較して心膜切開後症候群の一つまたは複数の症状を改善、安定化、または低減するのに十分な治療上有効な用量および治療期間にわたる投与間隔で、インターロイキン-1(IL-1)アンタゴニストを投与することによって、心膜炎、PCIS、またはPPSを治療する方法を提供する。いくつかの実施形態では、インターロイキン-1アンタゴニストは、IL-1α、IL-1βまたはIL-1受容体結合タンパク質(例えば、抗IL-1α抗体またはその断片)、インターロイキン-1、IL-1ra、またはインターロイキン-1受容体融合タンパク質の可溶性受容体である。
【0055】
上記に記載の全ての実施形態は、本発明の全ての態様に適用可能であることが理解されるものとなる。
特定の実施形態では、例えば、以下が提供される:
(項目1)
対照に比較して心臓外傷後症候群(PCIS)の一つまたは複数の症状を改善、安定化、または低減するのに十分な治療上有効な用量および治療期間にわたる投与間隔で、治療を必要とする対象にインターロイキン-1受容体-Fc融合タンパク質を投与するステップを含む、PCISを治療する方法。
(項目2)
対照に比較して心膜炎の一つまたは複数の症状を改善、安定化、または低減するのに十分な治療上有効な用量および治療期間にわたる投与間隔で、治療を必要とする対象にインターロイキン-1受容体-Fc融合タンパク質を投与するステップを含む、心膜炎を治療する方法。
(項目3)
心膜炎が再発性心膜炎である、項目2に記載の方法。
(項目4)
心膜炎が難治性心膜炎である、項目2に記載の方法。
(項目5)
心膜炎が特発性心膜炎である、項目2に記載の方法。
(項目6)
心膜炎が非特発性心膜炎である、項目2に記載の方法。
(項目7)
心膜炎が再発性特発性心膜炎である、項目3に記載の方法。
(項目8)
治療を必要とする対象が、再発性心膜炎を有する、項目1または2に記載の方法。
(項目9)
治療を必要とする対象が、再発性特発性心膜炎を有する、項目2に記載の方法。
(項目10)
心膜炎が再発性非特発性心膜炎である、項目3に記載の方法。
(項目11)
治療を必要とする対象が、再発性非特発性心膜炎を有する、項目2に記載の方法。
(項目12)
対象が難治性特発性心膜炎を有する、項目2に記載の方法。
(項目13)
治療を必要とする対象が、難治性心膜炎を有する、項目1または2に記載の方法。
(項目14)
治療を必要とする対象が、難治性非特発性心膜炎を有する、項目13に記載の方法。
(項目15)
対象が、PCISまたは心膜炎のための併用療法を受けていない、項目1~14のいずれか一項に記載の方法。
(項目16)
心膜炎が心臓外傷後症候群(PCIS)に関連する、項目2に記載の方法。
(項目17)
PCISが、心筋梗塞心膜炎、心膜切開後症候群(PPS)、および外傷後心膜炎、早発性心筋梗塞後関連心膜炎、遅発性心筋梗塞後心膜炎、非医原性外傷および医原性外傷からなる群から選択される、項目16に記載の方法。
(項目18)
PCISが、心筋梗塞後心膜炎、心膜切開後症候群(PPS)、および外傷後心膜炎からなる群から選択される、項目1に記載の方法。
(項目19)
PCISが心筋梗塞後心膜炎である、項目18に記載の方法。
(項目20)
心筋梗塞後心膜炎が、早発性心筋梗塞後関連心膜炎である、項目18に記載の方法。
(項目21)
心筋梗塞後心膜炎が、遅発性心筋梗塞後心膜炎である、項目20に記載の方法。
(項目22)
PCISが外傷後心膜炎である、項目18に記載の方法。
(項目23)
外傷後心膜炎が、非医原性外傷または医原性外傷である、項目22に記載の方法。
(項目24)
対象が、心臓外傷後症候群(PCIS)に関連する心膜炎を有する、項目16~23のいずれか一項に記載の方法。
(項目25)
心膜炎が成人発症性スティル病に関連する、項目2に記載の方法。
(項目26)
治療を必要とする対象が成人発症性スティル病を有する、項目2に記載の方法。
(項目27)
対象が以下のいずれかから選択される、項目2または23に記載の方法:
(i)全身性炎症のマーカーのレベルの上昇を伴う症候性対象;
(ii)炎症性マーカーのレベルの非上昇を伴い、イメージング手法を用いると心膜の炎症が存在する、症候性対象;
(iii)NSAID、コルチコステロイド、および/もしくはコルヒチンに抵抗性もしくは不耐性である、(i)もしくは(ii)の対象;
(iv)NSAID、コルチコステロイド、および/もしくはコルヒチンに依存性の心膜炎を有し、心膜炎の再燃の診断基準を満たすものとなる症状を経験していない対象;
(v)全身性炎症のマーカーの上昇を伴うかもしくは伴わないPCISを有する症候性対象;
(vi)NSAID、コルチコステロイド、および/もしくはコルヒチンに抵抗性もしくは不耐性である、(v)の対象;ならびに/または
(vii)NSAID、コルチコステロイド、および/もしくはコルヒチンに依存性のPCISを有し、PCISの診断基準、例えば心膜炎の再燃の基準などを満たすものとなる症状を経験しない対象。
(項目28)
全身性炎症のマーカーのレベルの上昇が、CRP≧1mg/dLである、項目27に記載の方法。
(項目29)
炎症マーカーのレベルの非上昇が、CRP<1mg/dLによって示される、項目27に記載の方法。
(項目30)
イメージング手法が磁気共鳴画像法(MRI)である、項目27に記載の方法。
(項目31)
投与するステップが皮下投与を含む、項目1~30のいずれか一項に記載の方法。
(項目32)
皮下投与が皮下注射を介する、項目31に記載の方法。
(項目33)
投与するステップが、初回負荷用量と、それに続く少なくとも1回の維持用量とを含む、項目1~32のいずれか一項に記載の方法。
(項目34)
初回負荷用量が、少なくとも1回の維持用量よりも多い、項目33に記載の方法。
(項目35)
初回負荷用量が、少なくとも1回の維持用量の投薬量よりも2倍多い投薬量である、項目34に記載の方法。
(項目36)
初回負荷用量が、投薬量の等しい2回の注射として送達される、項目33~35のいずれか一項に記載の方法。
(項目37)
治療上有効な用量が、初回負荷用量または維持用量を含む、項目1~36のいずれか一項に記載の方法。
(項目38)
治療上有効な用量が320mg以上である、項目1~37のいずれか一項に記載の方法。
(項目39)
治療上有効な用量が、320mg以上の初回負荷用量を含む、項目38に記載の方法。
(項目40)
初回負荷用量が、各160mgの2回の注射として送達される、項目39に記載の方法。
(項目41)
治療上有効な用量が160mg以上である、項目1~37のいずれか一項に記載の方法。
(項目42)
治療上有効な用量が、160mg以上の維持用量を含む、項目41に記載の方法。
(項目43)
治療上有効な用量が、160mg以上の初回負荷用量を含む、項目41に記載の方法。
(項目44)
初回負荷用量が、各80mgの2回の注射として送達される、項目43に記載の方法。
(項目45)
治療上有効な用量が80mg以上である、項目1~37のいずれか一項に記載の方法。
(項目46)
治療上有効な用量が、80mg以上の維持用量を含む、項目45に記載の方法。
(項目47)
治療上有効な用量が4mg/kg以上である、項目1~41のいずれか一項に記載の方法。
(項目48)
治療上有効な用量が、4mg/kg以上の初回負荷用量を含む、項目46に記載の方法。
(項目49)
初回負荷用量が4.4mg/kg以上である、項目48に記載の方法。
(項目50)
初回負荷用量が、各2.2mg/kgの2回の注射として送達される、項目49に記載の方法。
(項目51)
治療上有効な用量は2mg/kg以上である、項目1~37のいずれか一項に記載の方法。
(項目52)
治療上有効な用量が、2mg/kg以上の維持用量を含む、項目51に記載の方法。
(項目53)
維持用量が2.2mg/kg以上である、項目52に記載の方法。
(項目54)
治療上有効な用量が、2mL以下の体積として送達される、項目1~53のいずれか一項に記載の方法。
(項目55)
投与間隔が週に1回である、項目1~54のいずれか一項に記載の方法。
(項目56)
投与間隔が少なくとも5日である、項目1~55のいずれか一項に記載の方法。
(項目57)
投与間隔が2週間に1回である、項目1~54のいずれか一項に記載の方法。
(項目58)
投与間隔が3週間に1回である、項目1~54のいずれか一項に記載の方法。
(項目59)
投与間隔が4週間に1回である、項目1~54のいずれか一項に記載の方法。
(項目60)
投与間隔が5週間に1回である、項目1~54のいずれか一項に記載の方法。
(項目61)
治療を必要とする対象が18歳以上である、項目38~54のいずれか一項に記載の方法。
(項目62)
初回負荷用量が、各160mgの2回の注射として送達され、維持用量が週当たり160mgで送達される、項目61に記載の方法。
(項目63)
治療を必要とする対象が18歳未満である、項目47~53のいずれか一項に記載の方法。
(項目64)
治療を必要とする対象が6歳から<18歳である、項目63に記載の方法。
(項目65)
初回負荷用量が各2.2mg/kgの2回の注射として送達され、維持用量が週当たり2.2mg/kgで送達される、項目64に記載の方法。
(項目66)
心膜炎の一つまたは複数の症状が、心膜炎の痛みを評価するための数値評価尺度(NRS)によって評価される、項目1~65のいずれか一項に記載の方法。
(項目67)
心膜炎の一つまたは複数の症状が心エコー図によって評価される、項目1~65のいずれか一項に記載の方法。
(項目68)
心エコー図によって評価された心膜炎の一つまたは複数の症状が、心膜液貯留を含む、項目67に記載の方法。
(項目69)
心膜炎の一つまたは複数の症状が、心電図(ECG)によって評価される、項目1~65のいずれか一項に記載の方法。
(項目70)
ECGによって評価される心膜炎の一つまたは複数の徴候が、広範囲でのST上昇および/またはPRの低下を含む、項目69に記載の方法。
(項目71)
心膜炎の一つまたは複数の徴候が、発熱および/または心膜摩擦音を含む、項目1~65のいずれか一項に記載の方法。
(項目72)
心膜炎の一つまたは複数の徴候および症状が、心臓磁気共鳴画像法(MRI)によって評価される、項目1~65のいずれか一項に記載の方法。
(項目73)
心膜炎の一つまたは複数の徴候が、C反応性タンパク質(CRP)の血中レベルを測定することによって評価される、項目1~65のいずれか一項に記載の方法。
(項目74)
CRPの血中レベルを測定することは、初回負荷用量のインターロイキン-1受容体-Fc融合タンパク質の投与後のいくつかの時点でCRPの血中レベルを測定することを含み、その際に、線形回帰を実施して、ベースラインからのCRPレベルの変化、プラセボ効果について調整されたベースラインからのCRPレベルの変化、または経時的なCRPの血中レベルの傾きを決定する、項目73に記載の方法。
(項目75)
心膜炎の一つまたは複数の症状が、生活の質の質問票によって評価される、項目1~65のいずれか一項に記載の方法。
(項目76)
インターロイキン-1受容体-Fc融合タンパク質を投与することが、心膜炎の痛みの評価のための数値評価尺度(NRS)に統計的に優位な低下をもたらす、項目1~75のいずれか一項に記載の方法。
(項目77)
対照が、前記治療前に対象における心膜炎の一つまたは複数の症状を標示する、項目1~76のいずれか一項に記載の方法。
(項目78)
前記治療前の対象における心膜炎の一つまたは複数の症状が、1mg/dL超のCRP値を含む、項目1~77のいずれか一項に記載の方法。
(項目79)
治療を必要とする対象が、心膜炎の指標エピソードを有してきた、項目1~78のいずれか一項に記載の方法。
(項目80)
心臓病の指標エピソードが、急性心膜炎事象に関する少なくとも二つの基準を満たし、前記基準が、心膜炎性の胸痛、心膜摩擦音、ECG上の新しい広範囲でのSTセグメントの上昇またはPRセグメントの低下、および新しいかまたは悪化した心膜液貯留を含む、項目79に記載の方法。
(項目81)
治療を必要とする対象が、心膜炎の少なくとも一つの再発エピソードを有してきた、項目1~80のいずれか一項に記載の方法。
(項目82)
治療を必要とする対象が、進行中の心膜炎の症状エピソードを有する、項目1~81のいずれか一項に記載の方法。
(項目83)
対照が、治療なく同じ病状を有する対照対象における心膜炎の一つまたは複数の症状を標示する、項目1~82のいずれか一項に記載の方法。
(項目84)
投与が、対象に重篤な有害事象をもたらさない、項目1~83のいずれか一項に記載の方法。
(項目85)
投与が、注射部位反応、上気道感染、頭痛、悪心、嘔吐、下痢、副鼻腔炎、関節痛、インフルエンザ様症状、腹痛、発熱、ヘルペス、トランスアミナーゼの上昇、上咽頭炎、虚血性視神経症およびそれらの組み合わせからなる群から選択される有害作用をもたらさない、項目1~84に記載の方法。
(項目86)
インターロイキン-1受容体-Fc融合タンパク質が、配列番号1のアミノ酸配列を含む、前記項目1~85のいずれか一項に記載の方法。
(項目87)
インターロイキン-1受容体-Fc融合タンパク質が、配列番号1に少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む、前記項目1~86のいずれか一項に記載の方法。
(項目88)
インターロイキン-1受容体-Fc融合タンパク質が、ヒトIgG1に由来するCH1ドメインおよびCH2ドメインを含む、項目82または83に記載の方法。
(項目89)
インターロイキン-1受容体-Fc融合タンパク質がリロナセプトである、項目1~88のいずれか一項に記載の方法。
(項目90)
治療によって、NSAID、コルヒチン、コルチコステロイド、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される併用療法の休止または離脱が可能になる、項目1~89のいずれか一項に記載の方法。
(項目91)
前記治療によって、1ヶ月超、2ヶ月超、3ヶ月超、4ヶ月超、5ヶ月超、6ヶ月超にわたる併用療法の休止が可能になる、項目90に記載の方法。
(項目92)
NSAIDがイブプロフェンである、項目90または91に記載の方法。
(項目93)
コルチコステロイドがプレドニゾンである、項目90または91に記載の方法。
(項目94)
対象が、コルヒチン抵抗性、コルチコステロイド依存性、コルチコステロイド不耐性、コルチコステロイド不応性、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、項目1~93のいずれか一項に記載の方法。
(項目95)
対象が以下のいずれかから選択される、項目94に記載の方法:
(i)全身性炎症のマーカーのレベルの上昇を伴う症候性対象;
(ii)炎症性マーカーのレベルの非上昇を伴い、イメージング手法を用いると心膜の炎症が存在する、症候性対象;
(iii)NSAID、コルチコステロイド、および/もしくはコルヒチンに抵抗性もしくは不耐性である、(i)もしくは(ii)の対象;
(iv)NSAID、コルチコステロイド、および/もしくはコルヒチンに依存性の心膜炎を有し、心膜炎の再燃の診断基準を満たすものとなる症状を経験していない対象;
(v)全身性炎症のマーカーの上昇を伴うかもしくは伴わないPCIS を有する症候性対象;
(vi)NSAID、コルチコステロイド、および/もしくはコルヒチンに抵抗性もしくは不耐性である、(v)の対象;ならびに/または
(vii)NSAID、コルチコステロイド、および/もしくはコルヒチンに依存性のPCISを有し、PCISの診断基準、例えば心膜炎の再燃の基準などを満たすものとなる症状を経験しない対象。
(項目96)
全身性炎症のマーカーのレベルの上昇が、CRP≧1mg/dLである、項目95に記載の方法。
(項目97)
炎症性マーカーのレベルの非上昇が、CRP <1mg/dLによって示される、項目95に記載の方法。
(項目98)
イメージング手法が磁気共鳴画像法(MRI)である、項目95に記載の方法。
(項目99)
心膜炎が再発性心膜炎である、項目95に記載の方法。
(項目100)
心膜炎が難治性心膜炎である、項目95に記載の方法。
(項目101)
心膜炎が特発性心膜炎である、項目95に記載の方法。
(項目102)
心膜炎が非特発性心膜炎である、項目95に記載の方法。
(項目103)
心膜炎が再発性特発性心膜炎である、項目95に記載の方法。
(項目104)
心膜炎が再発性非特発性心膜炎である、項目95に記載の方法。
(項目105)
心膜炎が難治性特発性心膜炎である、項目95に記載の方法。
(項目106)
心膜炎が難治性非特発性心膜炎である、項目95に記載の方法。
(項目107)
インターロイキン-1受容体-Fc融合タンパク質の投与が、対象に、約2mg/dL未満、約1.5mg/dL未満、約1mg/dL未満、約0.8mg/dL未満、約0.6mg/dL未満、約0.5mg/dL未満、約0.4mg/dL未満、約0.3mg/dL未満、約0.2mg/dL未満、約0.1mg/dL未満から選択されるCRPレベルの低減をもたらす、項目1~106のいずれか一項に記載の方法。
(項目108)
低減されたCRPレベルが約1mg/dL未満である、項目107に記載の方法。
(項目109)
低減されたCRPレベルが約0.3~1mg/dLに及ぶ、項目108に記載の方法。
(項目110)
低減されたCRPレベルが0.3mg/dL未満である、項目108に記載の方法。
(項目111)
CRPレベルが、インターロイキン-1受容体-Fc融合タンパク質の最初の投与から2週間以内、1週間以内、6日以内、5日以内、4日以内、3日以内、2日以内、または1日以内に、1mg/dL未満に低減される、項目1~110のいずれか一項に記載の方法。
(項目112)
CRPレベルが、インターロイキン-1受容体-Fc融合タンパク質の最初の投与から1週間以内に1mg/dL未満に低減される、項目111に記載の方法。
(項目113)
CRPレベルが、約2週間超、約4週間超、約1ヶ月超、約2ヶ月超、約3ヶ月超、約4ヶ月超、約5ヶ月超、約6ヶ月超、約8ヶ月超、または約1年超にわたって1mg/dL未満で維持される、項目112に記載の方法。
(項目114)
CRPレベルが、インターロイキン-1受容体-Fc融合タンパク質の最初の投与から3週間以内に0.3mg/dL未満に低減される、項目111に記載の方法。
(項目115)
CRPレベルが、約1週間超、約2週間超、約3週間超、約1ヶ月超、約2ヶ月超、約3ヶ月超、約4ヶ月超、約5ヶ月超、約6ヶ月超、約8ヶ月超、または約1年超にわたって0.3mg/dLで維持される、項目114に記載の方法。
(項目116)
インターロイキン-1受容体-Fc融合タンパク質の投与が、NRSスコア2以下の減少をもたらす、項目1~115のいずれか一項に記載の方法。
(項目117)
NRSスコアが、インターロイキン-1受容体-Fc融合タンパク質の最初の投与から3週間以内、2週間以内、または1週間以内に、2以下に低減される、項目116に記載の方法。
(項目118)
NRSスコアが、約1週間超、約2週間超、約3週間超、約1ヶ月超、約2ヶ月超、約3ヶ月超、約4ヶ月超、約5ヶ月超、約6ヶ月超、約8ヶ月超、または約1年超にわたって、2以下で維持される、項目117に記載の方法。
(項目119)
インターロイキン-1受容体-Fc融合タンパク質の投与が、NRSスコア1以下の減少をもたらす、項目116に記載の方法。
(項目120)
NRSスコアが、インターロイキン-1受容体-Fc融合タンパク質の最初の投与から5週間以内、4週間以内、3週間以内、2週間以内、または1週間以内に、1以下に低減される、項目119に記載の方法。
(項目121)
NRSスコアが、約1週間超、約2週間超、約3週間超、約1ヶ月超、約2ヶ月超、約3ヶ月超、約4ヶ月超、約5ヶ月超、約6ヶ月超、約8ヶ月超、または約1年超にわたって、1以下で維持される、項目119または120に記載の方法。
(項目122)
インターロイキン-1受容体-Fc融合タンパク質の投与が、対照と比較して心膜液貯留の減少をもたらす、項目1~121のいずれか一項に記載の方法。
(項目123)
対照が、前記治療前に対象で測定されたベースライン心膜液貯留レベルであるか、または同等の病状を有するがプラセボで治療される対象で測定される心膜液貯留レベルであるか、または治療なく同等の病状を有する対象における心膜液貯留を標示する参照値である、項目122に記載の方法。
(項目124)
インターロイキン-1受容体-Fc融合タンパク質の投与が、心膜液貯留の非存在をもたらす、項目1~123のいずれか一項に記載の方法。
(項目125)
心膜液貯留の減少または非存在が、約2週間超、約4週間超、約1ヶ月超、約2ヶ月超、約3ヶ月超、約4ヶ月超、約5ヶ月超、約6ヶ月超、約8ヶ月超、または約1年超にわたって維持される、項目119または120に記載の方法。
(項目126)
インターロイキン-1受容体-Fc融合タンパク質の投与が、対照と比較して、ECGにより決定される際の対象における心臓導電率の改善をもたらす、項目1~125のいずれか一項に記載の方法。
(項目127)
ECGにより決定される心機能の改善が、ST上昇および/またはSR低下の低減を含む、項目126に記載の方法。
(項目128)
インターロイキン-1受容体-Fc融合タンパク質の投与が、ECG評価により決定される際の対象における心臓導電率の正常化をもたらす、項目1~127のいずれか一項に記載の方法。
(項目129)
インターロイキン-1受容体-Fc融合タンパク質の投与が、対照と比較して、心エコー評価(ECHO)により決定される際の対象における心膜液貯留の改善をもたらす、項目1~128のいずれか一項に記載の方法。
(項目130)
インターロイキン-1受容体-Fc融合タンパク質の投与が、ECHO評価により決定される際の対象における心膜液貯留の正常化をもたらす、項目1~129のいずれか一項に記載の方法。
(項目131)
対照が、前記治療前に対象で測定されたベースライン心臓パラメータであるか、または同等の病状を有するがプラセボで治療される対象で測定される心臓機能であるか、または治療なく同等の病状を有する対象における心臓機能を標示する参照である、項目126~130のいずれか一項に記載の方法。
(項目132)
心臓パラメータの改善または正常化が、約2週間超、約4週間超、約1ヶ月超、約2ヶ月超、約3ヶ月超、約4ヶ月超、約5ヶ月超、約6ヶ月超、約8ヶ月超、または約1年超にわたって維持される、項目126~131のいずれか一項に記載の方法。
(項目133)
インターロイキン-1受容体-Fc融合タンパク質の投与が、対照と比較して対象におけるQoLスコアの改善をもたらす、項目1~132のいずれか一項に記載の方法。
(項目134)
QoLスコアの改善が、以下から選択される一つまたは複数の評価を含む、項目133に記載の方法:心膜炎の重症度に関する患者の全般的印象(PGIPS);心膜炎の活性度に関する医師の全般的評価(PGA-PA);36項目短形式健康調査(SF-36);5レベルEuroQoL-5D(EQ-5D-5L)、および不眠症重症度指標(ISI)。
(項目135)
対照が、前記治療前に対象において決定されるベースラインQoLスコアであるか、または同等の病状を有するがプラセボで治療される対象における参照QoLスコアであるか、または治療なく同等の病状を有する対象におけるQoLスコアを標示する参照である、項目133または134に記載の方法。
(項目136)
QoLスコアの改善が、5点リッカート尺度において7未満のスコア値を有する臨床的に有意ではない不眠症を標示するISIの低減を含む、項目133または135に記載の方法。
(項目137)
QoLスコアの改善が、最初の投与の日から約2週間超、約4週間超、約1ヶ月超、約2ヶ月超、約3ヶ月超、約4ヶ月超、約5ヶ月超、約6ヶ月超、約8ヶ月超、または約1年超にわたって維持される、項目133~136のいずれか一項に記載の方法。
(項目138)
インターロイキン-1受容体-Fc融合タンパク質の投与が、他の標準ケア(SOC)薬剤の非存在下で対象の無再燃生存の期間をもたらす、項目1~137のいずれか一項に記載の方法。
(項目139)
無再燃期間が、少なくとも1ヶ月、少なくとも5週間、少なくとも6週間、少なくとも7週間、少なくとも8週間、少なくとも3ヶ月、少なくとも4ヶ月、少なくとも5ヶ月、少なくとも6ヶ月、または少なくとも1年である、項目138に記載の方法。
(項目140)
対照に比較して心膜切開術後心膜症の一つまたは複数の症状を改善、安定化、または低減するのに十分な治療上有効な用量および治療期間にわたる投与間隔で、治療を必要とする対象にインターロイキン-1アンタゴニストを投与するステップを含む、心膜切開術後症候群(PPS)を治療する方法。
(項目141)
インターロイキン-1アンタゴニストが、インターロイキン-1結合タンパク質またはインターロイキン-1受容体結合タンパク質である、項目140に記載の方法。
(項目142)
結合タンパク質が抗体またはその断片である、項目141に記載の方法。
(項目143)
インターロイキン-1アンタゴニストが、インターロイキン-1またはインターロイキン-1受容体アンタゴニスト(IL-1ra)の可溶性受容体である、項目140に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0056】
図面は、説明を目的とするに過ぎず、限定を目的とはしない。
【0057】
図1A図1A~Iは、0日目に320mgの負荷用量のインターロイキン-1受容体-Fc融合タンパク質を投与され、続いて週1回160mgを投与された後の、それぞれ被験者A~Iと命名された患者9名における、血清CRPレベルおよびNRS単位での痛みを示す図である。X軸は、治療後の日数を示す。被験者A~Iは第1群に登録された。それぞれの併用治療および持続時間をX軸の下に図式的に示す。
図1B】同上。
図1C】同上。
図1D】同上。
図1E】同上。
図1F】同上。
図1G】同上。
図1H】同上。
図1I】同上。
【0058】
図2A図2A~Bは、0日目に320mgの負荷用量のインターロイキン-1受容体-Fc融合タンパクを投与され、続いて週1回160mgを投与された後の、被験者Aおよび被験者Bそれぞれにおける血清CRPレベルおよびNRS単位での痛みを示す図である。X軸は、治療後の日数を示す。この図における被験者Aおよび被験者Bは第2群に登録された。それぞれの併用治療および持続時間をX軸の下に図式的に示す。
図2B】同上。
【0059】
図3A図3A~Cは、0日目に320mgの負荷用量のインターロイキン-1受容体-Fc融合タンパク質を投与され、続いて週1回160mgを投与された後の、被験者A~Cにおける血清CRPレベルおよびNRS単位での痛みを示す図である。X軸は、治療後の日数を示す。この図における被験者A~Cは第3群に登録された。それぞれの併用治療および持続時間をX軸の下に図式的に示す。
図3B】同上。
図3C】同上。
【0060】
図4図4は、再発性心膜炎を有する対象におけるインターロイキン-1受容体-Fc融合タンパク質の長期有効性のための試験プロトコールの図解である。CS=コルチコステロイド;EOS=試験終了、LF=長期延長;NSAID=非ステロイド性抗炎症薬;RI=導入、RW=無作為化退薬、SC=皮下、TP=治療期間。a.与える最初の用量は、負荷用量のIL1R-FcFPである。≧18歳の成人被験者では、320mgを160mgの2回のSC用量として与える。≧12歳かつ<18歳の小児被験者では、4.4mg/kgを2.2mg/kgの2回のSC用量として与える。負荷用量投与の後、IL1R-FcFPを、160mg(成人)または2.2mg/kg(小児被験者)のSC用量投与として週1回投与するものとする。b.被験者の治療持続期間は、RWの終了に対し被験者が登録された時に依存するものとなる。c.成人用量は週1回160mg SCである。小児用量は週1回2.2mg/kg SCである。備考:図は比例尺を定めるために描かれたものではない。
【発明を実施するための形態】
【0061】
定義
本発明をより容易に理解するために、ある特定の用語を最初に以下に定義する。以下の用語および他の用語の追加の定義は、明細書全体を通して定められている。本発明の背景を説明し、その実施に関するさらなる詳細を提供するために本明細書で参照される刊行物及び他の参考資料は、参照によって本明細書に援用される。
【0062】
アミノ酸:本明細書で使用される際に、「アミノ酸」という用語は、その最も広い意味で、ポリペプチド鎖に組み込まれ得る任意の化合物および/または物質を指す。いくつかの実施形態では、アミノ酸は、一般構造HN-C(H)(R)-COOHを有する。いくつかの実施形態では、アミノ酸は、天然に発生したアミノ酸である。いくつかの実施形態では、アミノ酸は合成アミノ酸であり、いくつかの実施形態では、アミノ酸はD-アミノ酸であり、いくつかの実施形態では、アミノ酸はL-アミノ酸である。「標準アミノ酸」は、天然に発生したペプチドに通常見られる20個の標準L-アミノ酸のいずれかを意味する。「非標準アミノ酸」は、合成して調製されるか天然源から得られるかにかかわらず、標準アミノ酸以外の任意のアミノ酸を意味する。本明細書で使用される際に、「合成アミノ酸」は、化学修飾されたアミノ酸を包含し、そのようなものとしては、以下に限定されないが、塩、アミノ酸誘導体(例えばアミドなど)および/または置換体が挙げられる。アミノ酸は、ペプチド中のカルボキシ末端アミノ酸および/またはアミノ末端アミノ酸を含めて、メチル化、アミド化、アセチル化、保護基、および/または他の化学基との置換によって修飾することができ、それらの修飾は、その活性に不利な影響を及ぼすことなくペプチドの循環半減期を変更することができる。アミノ酸は、ジスルフィド結合に関与する場合がある。アミノ酸は、一つまたは複数の翻訳後修飾、例えば一つまたは複数の化学的実体(例えば、メチル基、アセテート基、アセチル基、リン酸基、ホルミル部分、イソプレノイド基、硫酸基、ポリエチレングリコール部分、脂質部分、炭水化物部分、ビオチン部分など)との会合などを含み得る。用語「アミノ酸」は、「アミノ酸残基」と互換的に使用され、遊離アミノ酸および/またはペプチドのアミノ酸残基を指す場合がある。この用語が遊離アミノ酸を指すのかまたはペプチドの残基を指すのかは、用語が使用される文脈から明らかになるものとなる。
【0063】
寛解:本明細書で使用される際に、用語「寛解」は、ある状態の予防、低減、もしくは緩和、または対象の状態の改善を意味する。寛解は、病状の完全な回復または完全な予防を含むが、これらを求めるものではない。いくつかの実施形態では、寛解は、関連する疾患組織に欠損した関連タンパク質またはその活性のレベルの増加を含む。いくつかの実施形態では、寛解は、関連する疾患組織で病理学的に上昇した関連タンパク質またはその活性のレベルの減少を含む。
【0064】
およそまたは約:本明細書で使用される際に、目的とする一つまたは複数の値に適用される「およそ」または「約」という用語は、記載された参照値に類似する値を指す。特定の実施形態では、「およそ」または「約」という用語は、特段の記述がない限り、または文脈から明らかでない限り(そのような数が可能値の100%を超える場合を除く)、記述された参照値のどちらかの方向で(より大きいかまたは小さい)25%、20%、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%またはそれ未満の値の範囲を指す。
【0065】
送達:本明細書で使用される際に、用語「送達」は、局所送達および全身送達の両方を包含する。
【0066】
半減期:本明細書で使用される際に、用語「半減期」は、核酸またはタンパク質の濃度または活性などの量が、ある期間の開始時に測定された値の半分まで下がるのに要する時間である。
【0067】
改善、増加または低減:本明細書で使用される際に、用語「改善」、「増加」、もしくは「低減」、または文法的等価物は、ベースライン測定値、例えば、本明細書に記載される治療の開始前の同一個体における測定値または本明細書に記載される治療を行わない対照対象(または複数の対照対象)における測定値などに対する、相対的な値を標示する。「対照対象」とは、処置されているが治療を受けなかったかまたはプラセボを受けた対象と同じ疾患を有する対象である。
【0068】
実質的同一性:「実質的同一性」という語句は、本明細書では、アミノ酸または核酸の配列間の比較を指すために使用される。当業者には理解されるものとなるように、二つの配列は、対応する位置に同一の残基を含有する場合、一般に「実質的に同一」であると考えられる。この技術分野でよく知られているように、アミノ酸配列または核酸配列は、ヌクレオチド配列のBLASTN、およびアミノ酸配列のBLASTP、ギャップドBLAST、およびPSI-BLASTなどの市販のコンピュータプログラムで利用可能なものを含めた、様々なアルゴリズムのいずれかを用いて比較することができる。そのような例示的なプログラムは、Altschul,et al.,Basic local alignment search tool,J.Mol.Biol.,215(3):403-410,1990;Altschul,et al.,Methods in Enzymology;Altschul et al.,Nucleic Acids Res.25:3389-3402,1997;Baxevanis et al.,Bioinformatics:A Practical Guide to the Analysis of Genes and Proteins,Wiley,1998;and Misener,et al.,(eds.),Bioinformatics Methods and Protocols(Methods in Molecular Biology,Vol.132),Humana Press,1999に記載されている。同一の配列を同定することに加えて、上述のプログラムは、典型的には、同一性の程度の指標を提供する。いくつかの実施形態では、二つの配列は、それらの対応する残基の少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上が関連ストレッチの残基にわたって同一である場合に、実質的に同一であるものと考えられる。いくつかの実施形態では、関連ストレッチは完全な配列である。いくつかの実施形態では、関連ストレッチは、少なくとも10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、125、150、175、200、225、250、275、300、325、350、375、400、425、450、475、500またはそれ以上の残基である。
【0069】
皮下送達に適する:本明細書で使用される際に、本発明の医薬組成物に関連するような「皮下送達に適する」または「皮下送達のための処方」という語句は、一般に、そのような組成物の安定性、粘性、忍容性、および溶解性、ならびにそれに含有される有効量の抗体を標的送達部位に送達するためのそのような組成物の能力を指す。
【0070】
患者:本明細書で使用される際に、用語「患者」とは、提供される組成物が、例えば、実験、診断、予防、美容、および/または治療の目的のために投与され得る、任意の生物を指す。典型的な患者としては、動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、非ヒト霊長類、および/またはヒトなどの哺乳類)が挙げられる。いくつかの実施形態では、患者はヒトである。ヒトには、出生前及び出生後の形態が含まれる。
【0071】
医薬的に許容される:本明細書で使用される際に、用語「医薬的に許容される」は、妥当な医学的判断の範囲内で、過度な毒性、炎症刺激、アレルギー応答、または他の問題もしくは合併症を伴うことなく、合理的なベネフィット/リスクの比率に相応で、ヒトおよび動物の組織に接触させて使用することに適した物質を指す。
【0072】
再発:本明細書で使用される際に、用語「再発」は、心膜炎を裏付ける客観的証拠に関連する典型的な心膜炎の痛みの再発として定義される。再発は、多くの場合「再燃(flare)」および「再燃(relapse)」と互換的に使用される。心膜炎の再発は、通常、以下のうちいずれか一つまたは複数によって標示される:末梢血中のCRPレベルの増加≧1mg/dL;またはNRSスケール≧4で決定される痛みの増加;または心膜液貯留の発生;心膜摩擦音;または熱もしくは心膜疾患の任意の他の症状の指標。
【0073】
対象:本明細書で使用される際に、用語「対象」は、ヒトまたは任意の非ヒト動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ウマ、または霊長類)を指す。ヒトには、出生前及び出生後の形態が含まれる。多くの実施形態では、対象はヒトである。対象は患者である場合があり、これは、疾患の診断または治療のために医療機関に来院するヒトを意味する。用語「対象」は、本明細書において「個体」または「患者」と互換的に使用される。対象は、疾患または障害に罹患している可能性があるか、またはそれに感受性を有するが、疾患または障害の症状を表していてもいなくてもよい。
【0074】
実質的に:本明細書で使用される際に、用語「実質的に」は、目的の特徴または特性の全てもしくはほぼ全ての範囲または程度を示す、定性的な状態を意味する。生物学分野の当業者であれば、生物学的および化学的な現象が、完了することおよび/もしくは完了の域に到達すること、または絶対的な結果を達成もしくは回避することが、仮にあったとしても稀であることを理解するであろう。したがって、用語「実質的に」は、本明細書において、多くの生物学的および化学的現象に固有の潜在的な完全性の欠如を捉えるのに用いられる。
【0075】
全身分布または全身送達:本明細書で使用される際に、用語「全身分布」、「全身送達」、または文法的等価物は、全身もしくは生物体全体に影響を及ぼす送達または分布のメカニズムまたはアプローチを意味する。典型的には、全身分布または全身送達は、身体の循環系、例えば、血流を介して成し遂げられる。「局所分布または局所送達」の定義と比較される。
【0076】
標的組織:本明細書で使用される際に、用語「標的組織」は、治療される疾患または障害の影響を受ける任意の組織を指す。いくつかの実施形態では、標的組織には、疾患に関連する病態、症状、または特徴を呈する組織が含まれる。
【0077】
治療有効量:本明細書で使用される際に、「治療有効量」の治療剤という用語は、疾患、障害、および/もしくは状態に罹患しているか、または感受性を有する対象に投与される場合に、その疾患、障害、および/または状態を治療する、診断する、予防する、および/またはその開始を遅延させるのに十分な量を意味する。当業者は、治療有効量が典型的には少なくとも一つの単位用量を含む投与レジメンによって投与されることを理解するものとなる。
【0078】
治療:本明細書で使用される際に、用語「治療する」、「治療」または「治療している」とは、ある特定の疾患、障害、および/または状態のうち一つまたは複数の症状または特徴を、部分的にまたは完全に軽減する、寛解させる、緩和する、抑制する、予防する、その開始を遅延させる、その重症度を低減する、および/またはその発症率を低減するために使用される任意の方法を指す。疾患の徴候を示していない対象、および/または疾患の初期の徴候のみを示している対象に対して、その疾患に関連する病態を発症させるリスクを減少させることを目的として、治療が行われる場合がある。
【0079】
(詳細な説明)
本発明は、特に、対照に比較して心膜症の一つまたは複数の症状を改善、安定化、または低減するのに十分な治療上有効な用量および治療期間にわたる投与間隔で、治療を必要とする対象にインターロイキン-1受容体-Fc融合タンパク質を投与するステップを含む、心膜炎を治療する方法を提供する。
【0080】
本発明の様々な態様は、以下のセクションで詳細に説明される。セクションの使用は、本発明を限定することを意味しない。各セクションは、本発明の任意の態様に適用することができる。本出願において、「または」の使用は、他に記載がない限り、「および/または」を意味する。
【0081】
心臓外傷後症候群
心臓外傷後症候群(PCIS)とは、心膜、心外膜、および心筋の炎症の自己免疫媒介性の状態の病因的な不均一な一群を指す。侵襲的な心臓の術式または偶発的な外傷は、心筋、心外膜、および心膜の損傷をもたらすことがある。心外膜および心膜の炎症は、痛み、滲出、および発熱などの明らかな症状に繋がる可能性がある。PCISに罹患している患者は、胸痛、微熱、および呼吸困難を呈することがある。臨床症状は、心膜と胸膜腔との両方における軽度から中等度の滲出を含み、またある場合には、聴診での心膜摩擦音を含む。実験室分析は、CRPおよび血中白血球の上昇を伴う全身性炎症を示す。
【0082】
いくつかの事例では、PCISは心膜炎の主因を表す。結果として生じる組織損傷は、心膜における細片および血液の蓄積につながりうる。この結果、免疫応答がもたらされるが、その場合、この状態に感受性を有する特定の患者において炎症が持続する。
【0083】
PCISの症状としては、非特発性心膜炎が挙げられる。グループとして、PCISは、特に先進国では心膜炎および心膜疾患の新興の原因であり、近年、急性心膜炎の任意抽出の症例の約10%に報告されている(Imazio、Int.J.Cardiol.2013;168:648-652)。PCISは、心臓、心膜の外傷またはその両方の後の何日かまたは何ヶ月か以内に発症し、心筋梗塞後症候群とは異なり、心臓外傷後症候群は、さらに大きな抗心臓抗体応答(抗筋細胞膜性および抗繊維性の)を急性的に引き起こすことがある。PCISとしては、梗塞後心膜炎(Maisch et al、Eur Heart J.2004;25:587-610)が挙げられる。心筋梗塞後心膜炎としては、二つの別個の型、すなわち「早期」型(心外膜限局性心膜炎)および「遅発」型(ドレスラー症候群)が挙げられる。直接的な浸出によって引き起こされる心外膜限局性心膜炎は、貫壁性心筋梗塞の5~20%で発生するが、臨床的には発見されることは稀であり、ドレスラー症候群は、心臓外傷後症候群(Maisch et al、2004;25:587-610)に類似した症状および症状発現を伴う心筋梗塞の臨床的開始の後、数週間から数ヵ月までに発生する。PCISとしてはまた、心膜切開後症候群(PPS)が挙げられる。PPSは、心臓手術を受けている患者では10~40%の発生率を有する、心臓外科手術の比較的高頻度の合併症であり、心臓外科手術の数週間後にしばしば発生する(Finkelstein et al,Herz.2002;27(8):791-794;Imazio et al,Eur.Heart.J.2010;31(22):2749-2754;Imazio et al,JAMA.2014;312(10):1016-1023)。PCISとしてはまた、外傷後心膜炎が挙げられ、そのようなものとしては、非医原性外傷(すなわち、偶発的な鈍的または穿通性の胸部外傷の後の)および医原性外傷(すなわち、ペースメーカーリードの挿入などの経皮的な冠動脈または心臓内への介入、ラジオ波焼灼)が挙げられる。いかなる理論にも束縛されることを望むものではないが、PCIS は、前述の臨床状態によって引き起こされた心膜細胞および/または胸膜中皮細胞の初期損傷によって誘発された自己免疫性の病態形成を有するものと推定される。
【0084】
心膜炎
心膜炎は、心臓を囲む薄い嚢状の膜である心膜の腫れおよび炎症刺激である。心膜炎は、多くの場合に胸痛を引き起こし、他の症状を生じることもある。心膜炎に伴う鋭い胸痛は、心膜の炎症層が相互に擦れ合う際に発生する。心膜炎の徴候および症状は、以下のうちのいくつかまたは全てを含むことがある:胸部の中央または左側にわたる鋭い刺すような胸痛であって、一般に息を吸うかもたれかかった際にさらに強くなるもの;もたれかかった際の息切れ;心悸亢進;微熱;全体的な衰弱感、疲労感、または嘔気感;咳;および腹部または脚部の腫脹。
【0085】
心膜炎は、心筋梗塞を除くと胸痛のための救急部門の訪問の5%を占める(Khandaker et al,Mayo Clin Proc.2010;85:572-593)。先進国の症例の80%では、心膜炎の原因は、ウイルス性または「特発性」のどちらかであり、後者では特定の条件に起因することができない(Imazio et al,Circulation.2010;121:916-928;Zayas et al,Am J Cardiol.1995;75:378-382)。診断は、発熱、心膜摩擦音、心電図変化(ECG)の変化、心電図の変化、心膜液貯留、または炎症のマーカー(白血球[WBC]数、C反応性タンパク質[CRP]、または赤血球沈降速度[ESR])の上昇を伴う、典型的な胸痛(起き上がることおよび前傾することによって高まる)の存在に基づく(Imazio,Revista Espanola de Cardiologia.2014;67(5):345-348)。欧州心臓病学会(ESC)の心膜疾患の診断および管理に関するガイドラインは、心膜炎のエピソードを、以下の4つの基準のうちの少なくとも2つの存在として定義している:心膜炎の胸痛、心膜摩擦音、ECG上の新しい広範囲でのST上昇またはPRの低下、および(新しいかまたは悪化した)心膜液貯留。炎症のマーカー(すなわちCRP、ESR、およびWBD)の上昇またはイメージング手法(例えば磁気共鳴画像法[MRI])による心膜の炎症のエビデンスが、支持的な所見(Adler et al,Eur Heart J.2015 Nov 7;36(42):2921-64)として使用される。再発性心膜炎は、急性心膜炎の一般的な合併症であり、患者の20~30%に影響を及ぼす(Imazio,Revista Espanola de Cardiologia.2014;67(5):345-348)。それは、症状のない少なくとも4~6週間の間隔の後に心膜炎の徴候および症状の再発があるという特徴を有する(Adler et al,Eur Heart J.2015 Nov 7;36(42):2921-64)。免疫媒介性の機構が病態形成に重要な役割を果たすと考えられているが、特発性再発性心膜炎(RIP)の根底にある病因は、依然として不明である(Imazio et al,American Journal of Cardiology,2005;96(5):736-739)。これらの免疫応答が自己免疫過程および自己炎症過程の両方からなることを示唆する証拠が増えつつある(Cantarini et al、Autoimmunity Reviews 2015;14:90-97;Doria et al、Autoimmunity Reviews 2012;12:22-30)。RIP患者の心膜液中の炎症促進性サイトカインの存在は、自己免疫性および/または自己炎症性の両方の疾病原因に直接的な裏付けを与える(Pankuwait et al,2000)。
【0086】
現在利用可能な心膜炎のための治療としては、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、コルヒチン、およびグルココルチコイド(Lilly,2013)が挙げられる。アスピリンおよび他のNSAIDは、第一選択アプローチである。一般的に使用されている他のいくつかのNSAIDは、数例を挙げれば、イブプロフェン、セレコキシブ、ジクロフェナク、ジフルニサル、インドメタシンである。高用量が多くの場合必要であるため、胃保護療法について考慮する必要がある。コルヒチンはRIPに対する別の主力の治療であり、一般にNSAIDと共に使用されるが、あるサブセットの患者は、重度の下痢を含めて難治性の症状および顕著な胃腸の副作用があり、不耐性のために中断に至る。グルココルチコイドは、NSAIDに加えてコルヒチンによる治療に対し不応性または不耐性を有する特発性心膜炎の患者に対して処方されるべきであり、それはなぜなら、長期のコルチコステロイド療法に関連する副作用があるため、ならびにコルチコステロイドが漸減または中止された際に(Maisch et al,Eur Heart J.2004;25:587-610;Imazio et al,Circulation.2005;112:2012-2016;Lotrionte et al,Am Heart J.2010;160:662-670)、特にコルヒチン治療を行わない場合に、高率で再燃するためである。難治性症状を有する患者は、特に管理が困難である可能性があり、一貫したベネフィットがなく複数の免疫抑制薬が使用されてきた(Baskar et al,Cardiol Res Pract.2016;2016:7840724)。
【0087】
心膜炎の原因は多くの場合、決定が困難である。ほとんどの場合、医師は原因を決定することができないか(特発性)、またはウイルス感染を疑う。特発性再発性心膜炎(RIP)(再発性特発性心膜炎と互換的に使用されることがある)の根底にある病因は依然として不明であるが、免疫媒介性の機構が病態形成に重要な役割を果たすと考えられている(Imazio et al,2005;96(5):736-739)。これらの免疫応答が自己免疫過程および自己炎症過程の両方からなることを示唆する証拠が増えつつある(Cantarini et al、Autoimmunity Reviews 2015;14:90-97;Doria et al、Autoimmunity Reviews 2012;12:22-30)。RIP患者の心膜液中の炎症促進性サイトカインの存在は、自己免疫性および/または自己炎症性の両方の疾病原因に直接的な裏付けを与える(Pankuwait et al,2000)。
【0088】
インターロイキン-1(IL-1)は、数多くの炎症過程の病態生理を駆動する主要なサイトカインである。それは様々な炎症性ヒト疾患の原因因子として関与する。自己炎症性疾患の発症機構は完全には理解されていないとはいえ、IL-1が症候学上の主要な駆動因である可能性があること、ならびにこのサイトカインを標的とすることが重要なベネフィットをもたらしうることの証拠が増えつつある(Hoffman&Patel,Arthritis and Rheum.2004 Feb;50(2):345-349)。実際に、1日1回のアナキンラ(KINERET(登録商標))、すなわち組換え型のヒトIL-1受容体アンタゴニスト(IL-1RA)の研究では、RIP患者においてコルヒチンが失敗しコルチコステロイド依存性(または不耐性)が発現した際に有望な効果を示し、その効果は、連続的に治療された21名の患者における平均7.1日以内のC反応性タンパク質(CRP)の正常化を伴うものであった(Brucato et al,JAMA.2016 Nov 8;316(18):1906-1912;Lazaros et al,J Cardiovasc Med 2016;17(4):256-62)。しかしながら、アナキンラは、1日1回の注射であり、他の有害事象の中でも注射部位反応を引き起こすことが知られている。ゆえに、一つまたは複数の患者の利便性をもたらす改善された製品プロファイルと;少ない治療上の不快感と;NSAID療法、コルヒチン療法、および/またはコルチコステロイド療法の効果的な休止および離脱と;医師によって処方される安全かつ効果的な離脱レジメンを推進する用量投与の頻度とを有するIL-1アンタゴニストであって、IL-1αおよびIL-1βの両方との結合に拮抗してIL-1細胞表面受容体とのそれらの相互作用を防ぐアンタゴニスト、例えば本明細書に記載のインターロイキン-1受容体-Fc融合タンパク質などは、PCISおよび心膜炎の治療のための治療機会を提供する。
【0089】
心膜炎の症状を評価するためのいくつかの異なる方法がある。一実施形態では、心膜炎の一つまたは複数の症状は、心膜炎の痛みの評価のための数値評価尺度(NRS)によって評価される。NRSスコアは、0から10の尺度での患者の経験する痛みのレベルの自己報告評価である。この11点NRS尺度では、スコア0は無痛として解釈され、スコア10は最も激しい痛みである。一実施形態では、心膜炎の一つまたは複数の徴候は、心エコー図によって評価される。一実施形態では、心エコー図によって評価された心膜炎の一つまたは複数の徴候は、心膜液貯留を含む。一実施形態では、心膜炎の一つまたは複数の徴候は、心電図によって評価される(ECG)。一実施形態では、ECGによって評価された心膜炎の一つまたは複数の徴候は、広範囲のST上昇および/またはPRの低下を含む。一実施形態では、心膜炎の一つまたは複数の徴候は、発熱および/または心膜摩擦音を含む。一実施形態では、心膜炎の一つまたは複数の徴候および/または症状は、心臓磁気共鳴画像法(MRI)によって評価される。一実施形態では、心膜炎の一つまたは複数の徴候は、C反応性タンパク質(CRP)の血中レベルを測定することによって評価される。一実施形態では、CRPの血中レベルを測定することは、初回負荷用量のインターロイキン-1受容体-Fc融合タンパク質の投与後のいくつかの時点でCRPの血中レベルを測定することを含み、その際に、線形回帰を実施して、ベースラインからのCRPレベルの変化、プラセボ効果について調整されたベースラインからのCRPレベルの変化、および/または経時的なCRPの血中レベルの傾きを決定する。いくつかの実施形態では、1mg/dL超のCRPレベルは、炎症について陽性であるものと考えられる。一実施形態では、心膜炎の一つまたは複数の症状は、生活の質の質問票によって評価される。
【0090】
治療
特に、本発明による方法は、治療有効量のIL-1受容体-Fc融合タンパク質を投与することによって、PCISまたは心膜炎を有する対象を治療することを含む。ある特定の場合では、心膜炎は、PCISと関連するかまたはその症状であることがあるのに対し、他の場合では、心膜炎の原因は、不明または未知の起源(すなわち特発性)であることがある。本発明のいくつかの実施形態では、PCISまたは心膜炎は、対照に比較して心膜症の一つまたは複数の徴候および/または症状を改善、安定化、または低減するのに十分な治療上有効な用量および治療期間にわたる投与間隔で、治療を必要とする対象にインターロイキン-1受容体-Fc融合タンパク質を投与することによって、治療される。いくつかの実施形態では、本発明は、心膜切開後症候群(PPS)を有する対象を治療する方法を提供する。心膜切開術は、心膜炎を引き起こすことが知られている。いくつかの実施形態では、PPSおよび/またはPPS関連心膜炎は、対照に比較して心膜症の一つまたは複数の徴候および/または症状を改善、安定化、または低減するのに十分な治療上有効な用量および治療期間にわたる投与間隔で、治療を必要とする対象にIL-1アンタゴニスト、例えばインターロイキン-1受容体-Fc融合タンパク質などを投与することによって、治療される。いくつかの実施形態では、治療有効量および治療期間にわたる投与間隔でインターロイキン-1受容体-Fc融合タンパク質を用いるPPSの治療は、結果として、心膜炎を予防するか、または心膜炎の一つもしくは複数の徴候および/もしくは症状の出現を遅延させることができる。「治療する」または「治療」という用語は、本明細書で使用される際には、疾患もしくは障害に関連する一つもしくは複数の徴候および/もしくは症状の寛解、疾患もしくは障害の一つもしくは複数の徴候および/もしくは症状の開始の予防もしくは遅延、ならびに/または疾患もしくは障害の一つもしくは複数の徴候および/もしくは症状の重症度もしくは頻度の低減を指す。
【0091】
本発明のいくつかの実施形態では、対象は、以下のうち一つまたは複数を有する:反復性または難治性の心膜炎、特発性心膜炎、再発性特発性心膜炎、難治性特発性心膜炎、非特発性心膜炎、再発性非特発性心膜炎、難治性非特発性心膜炎。他の実施形態では、対象はPCISを有する。特定の実施形態では、PCISを有する対象は心膜炎を有する。様々な実施形態では、PCISは、例えば、心筋梗塞後心膜炎、PPS、または外傷後心膜炎である。特定の実施形態では、心筋梗塞後心膜炎は、早発性心筋梗塞後関連心膜炎(心外膜限局性心膜炎)または遅発性心筋梗塞後心膜炎(ドレスラー症候群)である。他の実施形態では、外傷後心膜炎は、非医原性外傷または医原性外傷である。一実施形態では、PPS、例えば再発性PPSをを有する対象は、心膜炎を有する。特定の実施形態では、治療される対象は以下から選択される:
(i)全身性炎症のマーカーのレベルの上昇(例えば、CRP≧1mg/dL)を伴う心膜炎を有する症候性対象;
(ii)炎症性マーカーの非上昇レベル(例えばCRP<1mg/dL)を有し、イメージング手法(例えばMRI)を用いると心膜の炎症が存在する症候性対象;
(iii)NSAID、コルチコステロイド、および/またはコルヒチンに抵抗性または不耐性である、(i)または(ii)の対象;
(iv)NSAID、コルチコステロイド、および/またはコルヒチンに依存性の心膜炎を有し、心膜炎の再発の診断基準を満たすものとなる症状を経験していない対象;
(v)全身性炎症のマーカーの上昇を伴うかまたは伴わない(例えば、CRP≧1mg/dL)PCISを有する症候性対象;
(vi)NSAID、コルチコステロイド、および/またはコルヒチンに抵抗性または不耐性である、(v)の対象;ならびに
(vii)NSAID、コルチコステロイド、および/またはコルヒチンに依存性のPCISを有し、PCISの診断基準、例えば心膜炎の再発の基準などを満たすものとなる症状を経験しない対象。
【0092】
特定の実施形態では、治療有効量のIL-1受容体-Fc融合タンパク質を投与された対象は、NSAID、コルヒチン、またはコルチコステロイドなどの併用薬およびそれらの組み合わせを用いて治療され、任意選択的に、一つまたは複数のそのような併用薬から離脱した後にIL-1受容体-Fc融合タンパク質により治療されることがある。典型的には、例示的なNSAIDとしては、以下に限定されないが、イブプルフェン(ibuprufen)、アスピリン、インドメタキシン(indomethaxin)、セレコキシブ、ジクロフェナクが挙げられる。例示的なコルチコステロイドとしては、プレドニゾン、コルチゾン、メチルプレドニゾロン、およびその他が挙げられる。
【0093】
特定の実施形態では、治療有効量のIL-1受容体-Fc融合タンパク質を投与された対象はまた、NSAID、コルヒチン、またはコルチコステロイドなどの併用薬およびそれらの組み合わせを用いて治療され、任意選択的に、IL-1受容体-Fc融合タンパク質による治療の後にそのような併用薬から離脱することがある。
【0094】
いくつかの実施形態では、インターロイキン-1受容体-Fc融合タンパク質の投与は、心膜炎の痛みを評価するための数値評価尺度(NRS)に統計的に有意な低下をもたらす。いくつかの実施形態では、インターロイキン-1受容体-Fc融合タンパク質の投与は、以下のうち二つ以上を含む複合評価項目に統計的に有意な変化をもたらす:NRS、CRPの血中レベル、ECHO、心膜摩擦音、ECG、WBD、ESR、およびMRI。
【0095】
いくつかの実施形態では、投与のステップは皮下投与を含む。いくつかの実施形態では、皮下投与は、皮下注射を介する。いくつかの実施形態では、皮下投与は、皮下ポンプを介する。いくつかの実施形態では、インターロイキン-1受容体-Fc融合タンパク質の皮下注射は、上腕、大腿部の前面、腹部の下部分、上背部または上部範囲で実施されうる。いくつかの実施形態では、注射部位が交替される。
【0096】
いくつかの実施形態では、心膜炎へのインターロイキン-1受容体-Fc融合タンパク質の効果が、対照に比較して測定される。いくつかの実施形態では、対照は、治療前(ベースラインとも呼ばれる)の対象における心膜炎の一つまたは複数の症状を標示する。いくつかの実施形態では、対照は、経時的に心膜炎患者からの健康情報を評価することによって決定される心膜炎の一つまたは複数の症状を標示し、その情報は、例えば心膜炎の自然経過研究から得ることができる、上記状態の自然の進展を実証するものである。いくつかの実施形態では、対照は、治療なく同等の病状を有する対象における心膜炎の一つまたは複数の症状を標示する。いくつかの実施形態では、対照は、プラセボで治療される同等の病状を有する対象における心膜炎の一つまたは複数の症状を標示する。いくつかの実施形態では、対照は、IL-1受容体-Fc融合タンパク質の投与を行わずに標準治療の療法を受けている同等の病状を有する対象における病状を標示する。
【0097】
いくつかの実施形態では、治療前の対象における心膜炎の一つまたは複数の症状は、1mg/dL以上のCRP値を含む。いくつかの実施形態では、治療を必要とする対象は、心膜炎の指標エピソードを有していた。いくつかの実施形態では、心膜炎の指標エピソードは、急性心膜炎事象に関する少なくとも二つの基準を満たし、その基準は、心膜炎性の胸痛、心膜摩擦音、ECG上の新しい広範囲でのSTセグメントの上昇またはPRセグメントの低下、および新しいかまたは悪化した心膜液貯留を含む。いくつかの実施形態では、治療を必要とする対象は、心膜炎の少なくとも一つの再発エピソードを有してきた。いくつかの実施形態では、治療を必要とする対象は、心膜炎の少なくとも二つの再発エピソードを有してきた。いくつかの実施形態では、治療を必要とする対象は、心膜炎の少なくとも三つの再発エピソードを有してきた。いくつかの実施形態では、再発エピソードは、11点数値評価尺度(NRS)上の心膜炎の痛みの程度≧4および/またはC反応性タンパク質(CRP)レベル≧1mg/dLを伴う心膜炎の痛みがある、少なくとも1日として定義される。いくつかの実施形態では、心膜炎の痛み≧4およびCRP≧1mg/dLは同日に存在する。いくつかの実施形態では、心膜炎の痛み≧4およびCRP≧1mg/dLは同日には存在しない。いくつかの実施形態では、治療されている対象は、最初の投与の7日前以内に少なくとも一つの再発エピソードを有する。いくつかの実施形態では、治療を必要とする対象は、進行中の心膜炎の症状エピソードを有する。
【0098】
投薬量
心膜炎を治療するためのインターロイキン-1受容体-Fc融合タンパク質の治療上有効な用量は、様々な投薬量で存在し得る。本発明のいくつかの実施形態では、治療上有効な用量は、20mg以上、40mg以上、60mg以上、80mg以上、100mg以上、120mg以上、140mg以上、160mg以上、180mg以上、200mg以上、220mg以上、240mg以上、260mg以上、280mg以上、300mg以上、320mg以上、340mg以上、360mg以上、380mg以上、400mg以上、420mg以上、440mg以上、460mg以上、480mg以上、500mg以上、520mg以上、540mg以上、560mg以上、580mg以上、600mg以上、620mg以上、640mg以上、660mg以上、680mg以上、700mg以上、720mg以上、740mg以上、760mg以上、780mg以上、800mg以上、820mg以上、840mg以上、860mg以上、880mg以上、900mg以上、920mg以上、940mg以上、960mg以上、980mg以上、または1000mg以上である。
【0099】
いくつかの実施形態では、治療上有効な用量は、およそ20~800mg、およそ40~700mg、およそ60~600mg、およそ80~500mg、およそ100~400mg、または、およそ80~400mg、100~400mg、120~400mg、およそ140~400mg、およそ160~400mg、およそ180~400mg、およそ200~400mg、およそ220~400mg、およそ240~400mg、およそ260~400mg、およそ280~400mg、およそ300~400mg、およそ320~400mg、およそ340~400mg、およそ360~400mg、およそ380~400mg、およそ20~380mg、およそ20~360mg、およそ20~340mg、およそ20~320mg、およそ20~300mg、およそ20~280mg、およそ20~260mg、およそ20~240mg、およそ20~220mg、およそ20~200mg、およそ20~180mg、およそ20~160mg、およそ20~140mg、およそ20~120mg、およそ20~100mg、およそ20~80mg、およそ20~60mg、または、およそ20~40mgである。一実施形態では、治療上有効な用量はおよそ80~160mgである。
【0100】
いくつかの実施形態では、治療上有効な用量は320mg以上である。いくつかの実施形態では、治療上有効な用量は、320mg以上の初回負荷用量を含む。いくつかの実施形態では、初回負荷用量は、160mgの2回の注射として送達される。いくつかの実施形態では、治療上有効な用量は160mg以上である。いくつかの実施形態では、治療上有効な用量は、160mg以上の維持用量を含む。いくつかの実施形態では、治療上有効な用量は、160mg以上の初回負荷用量を含む。いくつかの実施形態では、初回負荷用量は、80mgの2回の注射として送達される。いくつかの実施形態では、治療上有効な用量は80mg以上である。いくつかの実施形態では、治療上有効な用量は、80mg以上の維持用量を含む。
【0101】
いくつかの実施形態では、治療上有効な用量は、各皮下注射について2.0mL以下の体積として送達される。いくつかの実施形態では、治療上有効な用量は、1.8mL以下の体積として送達される。いくつかの実施形態では、治療上有効な用量は、1.6mL以下の体積として送達される。いくつかの実施形態では、治療上有効な用量は、1.4mL以下の体積として送達される。いくつかの実施形態では、治療上有効な用量は、1.2mL以下の体積として送達される。いくつかの実施形態では、治療上有効な用量は、1.0mL以下の体積として送達される。いくつかの実施形態では、治療上有効な用量は、0.8mL以下の体積として送達される。いくつかの実施形態では、治療上有効な用量は、0.6mL以下の体積として送達される。
【0102】
一実施形態では、治療上有効な用量は、0.1mg/kg以上、0.5mg/kg以上、1mg/kg以上、2mg/kg以上、3mg/mg以上、4mg/kg以上、5mg/kg以上、6mg/kg以上、7mg/kg以上、8mg/kg以上、9mg/kg以上、または10mg/kg以上である。一実施形態では、治療上有効な用量は、およそ0.1~10mg/kg、およそ0.5~10mg/kg、およそ1~10mg/kg、およそ2~10mg/kg、およそ3~10mg/kg、およそ4~10mg/kg、およそ5~10mg/kg、およそ6~10mg/kg、およそ7~10mg/kg、およそ8~10mg/kg、およそ9~10mg/kg、およそ0.1~10mg/kg、およそ0.1~9mg/kg、およそ0.1~8mg/kg、およそ0.1~7mg/kg、およそ0.1~6mg/kg、およそ0.1~5mg/kg、およそ0.1~4mg/kg、およそ0.1~3mg/kg、およそ0.1~2mg/kg、およそ0.1~1mg/kg、およそ0.1~0.5mg/kgである。
【0103】
いくつかの実施形態では、小児対象(例えば、年齢2歳から17歳、年齢6歳から<18歳)のための治療上有効な用量は、およそ4mg/kg(例えば4.0mg/kg、4.1mg/kg、4.2mg/kg、4.3mg/kg、4.4mg/kg、または4.5mg/kg)の初回負荷用量を含み、この量は最大でおよそ320mgまでであり、例えば、最大単回注射体積2mLの1回または2回の皮下注射として送達される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される初回負荷用量(例えば4.4mg/kg)は、用量の等しい2回の注射(例えば2.2mg/kgの2回の注射)として送達される。いくつかの実施形態では、小児対象(例えば、年齢2歳から17歳、年齢6歳から<18歳)のための治療上有効な用量は、およそ2mg/kg(例えば2.0mg/kg、2.1mg/kg、2.2mg/kg、2.3mg/kg、2.4mg/kg、または2.5mg/kg)の維持用量を含み、この量は最大でおよそ160mgまでであり、例えば、単回皮下注射として最大で2mLの体積で送達される。いくつかの実施形態では、小児対象の治療用量は、週当たりおよそ1.5mg/kgから2.5mg/kg、または週当たり1.8mg/kgから2.4mg/kg、または週当たり2mg/kgから2.2mg/kgの維持用量を含む。
【0104】
いくつかの実施形態では、投与は、初回負荷用量と、それに続く少なくとも1回の維持用量とを含む。いくつかの実施形態では、初回負荷用量に続いて、複数回の維持用量が投与される。典型的には、維持用量は定期的に(例えば、毎週、2週間に1回、3週間に1回、4週間に1回、毎月、5週間に1回)投与される。いくつかの実施形態では、初回負荷用量は、少なくとも1回の維持用量よりも多い。いくつかの実施形態では、初回負荷用量は、少なくとも1回の維持用量の投薬量よりも少なくとも1倍、2倍、3倍、4倍、または5倍多い投薬量である。いくつかの実施形態では、初回負荷用量は、少なくとも1回の維持用量の投薬量よりも2倍多い投薬量である。
【0105】
投与間隔
心膜炎の治療におけるインターロイキン-1受容体-Fc融合タンパク質の投与間隔は、様々な持続期間で存在し得る。いくつかの実施形態では、投与間隔は隔日である。いくつかの実施形態では、投与間隔は1週間に複数回である。いくつかの実施形態では、投与間隔は少なくとも5日である。いくつかの実施形態では、投与間隔は週1回である。いくつかの実施形態では、投与間隔は2週間に1回である。いくつかの実施形態では、投与間隔は3週間に1回である。いくつかの実施形態では、投与間隔は4週間に1回である。いくつかの実施形態では、投与間隔は5週間に1回である。
【0106】
治療期間
インターロイキン-1受容体-Fc融合タンパク質を用いる心膜炎の治療期間は、持続期間が異なることがある。いくつかの実施形態では、治療期間は1週間である。いくつかの実施形態では、インターロイキン-1受容体-Fc融合タンパク質を用いた治療期間は、1週間超にわたって続く。いくつかの実施形態では、インターロイキン-1受容体-Fc融合タンパク質を用いた治療期間は、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、または10週間にわたって続く。いくつかの実施形態では、治療期間は、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月、12ヶ月、13ヶ月、14ヶ月、15ヶ月、16ヶ月、17ヶ月、または18ヶ月続く。いくつかの実施形態では、治療期間は18ヶ月超にわたって続く。いくつかの実施形態では、治療期間は2年間にわたって続く。治療期間は、本発明に従う用量および時間間隔でインターロイキン-1受容体-Fc融合タンパク質を投与することを包含する。
【0107】
いくつかの実施形態では、治療期間は少なくとも1ヶ月である。いくつかの実施形態では、治療期間は少なくとも2ヶ月である。いくつかの実施形態では、治療期間は少なくとも3ヶ月である。いくつかの実施形態では、治療期間は少なくとも6ヶ月である。いくつかの実施形態では、治療期間は少なくとも9ヶ月である。いくつかの実施形態では、治療期間は少なくとも1年である。いくつかの実施形態では、治療期間は少なくとも2年である。いくつかの実施形態では、治療期間は、対象の一生を通じて継続する。
【0108】
薬物動態および薬力学
心膜炎を有する対象の血清中のインターロイキン-1受容体-Fc融合タンパク質の濃度-時間プロファイルの評価は、全身の血清中インターロイキン-1受容体-Fc融合タンパク質の濃度-時間プロファイルを測定することによって、直接的に評価されうる。典型的には、インターロイキン-1受容体-Fc融合タンパク質の薬物動態および薬力学のプロファイルは、治療された対象の血液を定期的にサンプリングすることによって評価される。以下の標準的な略語は、関連する薬物動態パラメータを表すために使用される。
max 最大濃度
max 最大濃度までの時間
AUC0-t 時間ゼロから最終測定可能濃度までの濃度-時間曲線下の面積(AUC)であって、濃度を増加させるための線形台形規則および濃度を減少させるための対数規則を用いて計算される
AUC0-∞ 以下の式を用いて計算された時間ゼロから無限大までのAUC:
【数1】
式中、Cは最終測定可能濃度であり、λは見かけの末端排泄速度定数である
λ 見かけの末端排泄速度定数であり、ここでλは、排泄相の間のログ濃度対時間プロファイルの線形回帰の傾きの大きさである
1/2 見かけの末端排泄半減期(可能な場合)であり、ここで
1/2=自然対数(ln)(2)/λ
CL クリアランス
Vd 分布の体積(IV用量投与のみ)
Vd/F 見かけの分布の体積(SC用量投与のみ)
【0109】
典型的には、インターロイキン-1受容体-Fc融合タンパク質の投与の開始に対する実際の血液試料の採集時間が、PK解析に使用される。例えば、血液試料は、典型的には、例えばインターロイキン-1受容体-Fc融合タンパク質の投与前の15分または30分以内(注射前のベースラインまたは時間0)、および投与後の定期的な間隔で、例えば投与後1、4、8、もしくは12時間、または1日目(24時間)、2、3、4、5、6、7、10、14、17、21、24、28、31、38、45、52、60、70、または90日目に収集される。いくつかの実施形態では、血液試料は投与時点の前に収集される。
【0110】
様々な方法が、血清中のインターロイキン-1受容体-Fc融合タンパク質濃度を測定するために使用されうる。非限定的な例として、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)法が使用される。
【0111】
薬物動態パラメータは、治療中の任意の段階で、例えば、1日目、2日目、3日目、4日目、5日目、6日目、1週目、2週目、3週目、4週目、5週目、6週目、7週目、8週目、9週目、10週目、11週目、12週目、13週目、14週目、15週目、16週目、17週目、18週目、19週目、20週目、21週目、22週目、23週目、24週目、またはそれ以降に評価されうる。いくつかの実施形態では、薬物動態パラメータは、治療中の1ヶ月目、2ヶ月目、3ヶ月目、4ヶ月目、5ヶ月目、6ヶ月目、7ヶ月目、8ヶ月目、9ヶ月目、10ヶ月目、11ヶ月目、12ヶ月目、13ヶ月目、14ヶ月目、15ヶ月目、16ヶ月目、17ヶ月目、18ヶ月目、19ヶ月目、20ヶ月目、21ヶ月目、22ヶ月目、23ヶ月目、24ヶ月目、またはそれ以降に評価されてもよい。
実効性評価
【0112】
いくつかの実施形態では、インターロイキン-1受容体-Fc融合タンパク質を用いた治療の実効性は、末梢血中のCRPレベルの測定など、炎症を測定することによって決定される。いくつかの実施形態では、インターロイキン-1受容体-Fc融合タンパク質の投与は、投与前に観察されたスコアと比較して、CRPレベルの低減をもたらす。いくつかの実施形態では、CRPレベルは、対象において、2mg/dL以下、1.5mg/dI以下、1mg/dL以下、0.8mg/dL以下、0.6mg/dL以下、0.5mg/dL以下、0.4mg/dL以下、0.3mg/dL以下、0.2mg/dL以下、0.1mg/dL以下に減少される。いくつかの実施形態では、最初の投与から2週間以内に、CRPレベルの減少が観察される。いくつかの実施形態では、CRPレベルは、2mg/dL以下で2週間より長く維持される。いくつかの実施形態では、CRPレベルは、2mg/dL以下で、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月より長く、または1年より長く維持される。いくつかの実施形態では、CRPレベルは、1mg/dL以下で、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月よりも長く、または1年よりも長く維持される。いくつかの実施形態では、患者が治療用量のインターロイキン-1受容体-Fc融合タンパク質を受け続ける間、CRPレベルは1mg/dL以下で維持される。いくつかの実施形態では、対象が併用療法を何も行わずにインターロイキン-1受容体-Fc融合タンパク質を受ける間、CRPレベルは、上記の期間にわたって1mg/dL未満で維持される。
【0113】
いくつかの実施形態では、インターロイキン-1受容体-Fc融合タンパク質を使用した治療の実効性は、11点NRSスコアの決定などの対象の痛みの評価によって決定される。いくつかの実施形態では、インターロイキン-1受容体-Fc融合タンパク質の投与は、投与前に観察されたスコアと比較してNRSスコアの低減をもたらす。いくつかの実施形態では、3以下のNRSスコアは、痛みが軽度からないものまでとして解釈される。いくつかの実施形態では、投与前に観察された高いスコアからインターロイキン-1受容体-Fc融合タンパク質の投与後の2以下の値へのNRSスコアの低減は、患者の疾患の改善であるものと考えられる。いくつかの実施形態では、NRSスコアは、最初の投与の2週間以内に2以下に低減される。いくつかの実施形態では、NRSスコアは1以下に低減される。いくつかの実施形態では、NRSスコアは、2週間、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月よりも長く、または1年よりも長く、2以下に維持される。いくつかの実施形態では、対象は、試験の延長期間の持続期間にわたって、痛みのないままである。いくつかの実施形態では、患者が本発明による投与間隔および治療期間に治療用量のインターロイキン-1受容体Fc融合タンパク質を受け続ける間、NRSスコアは2以下に維持される。いくつかの実施形態では、患者が併用療法を何も行わずに治療用量のインターロイキン-1受容体-Fc融合タンパク質を受け続ける間、NRSスコアは2以下に維持される。
【0114】
いくつかの実施形態では、インターロイキン-1受容体-Fc融合タンパク質の投与は、対照と比較して、心臓機能の改善、例えば心膜液貯留の寛解などをもたらす。心膜液貯留(「心臓周囲の流体」としても知られる)とは、炎症を標示する囲心腔内の流体の異常な蓄積であり、それは心膜内圧の増加を導き、心臓機能に負の影響を及ぼす可能性がある。心臓の健康パラメータ、特に心膜液貯留は、心エコー法(ECHO)、心臓磁気共鳴画像法(MRI)、および/またはCTスキャンによって評価されうる。いくつかの実施形態では、インターロイキン-1受容体-Fc融合タンパク質の投与は、心膜液貯留の減少、非存在、または寛解をもたらす。
【0115】
対照は、同等の病状を有するが治療のない対象において測定される参照の心膜液貯留レベルなどの参照の心臓パラメータである。例えば、対照は、治療されている対象において治療前に測定されたベースライン心膜液貯留などのベースライン心臓機能であることがある。対照はまた、同等の病状を有するがプラセボで治療される対象において測定される参照の心膜液貯留レベルなどの参照の心臓パラメータであることもある。いくつかの実施形態では、対照は、履歴データに基づいて、治療なく同等の病状を有する対象における心膜液貯留などの心臓パラメータを標示する参照値またはグラフであることがある。いくつかの実施形態では、対照は、IL-1受容体-Fc融合タンパク質の投与なく標準治療の療法を受けている同等の病状を有する対象における心膜液貯留などの心臓パラメータを標示する参照値またはグラフであることがある。
【0116】
いくつかの実施形態では、インターロイキン-1受容体-Fc融合タンパク質の投与は、ECG測定により標示される心臓パラメータの改善をもたらす。インターロイキン-1受容体-Fc融合タンパク質の投与後のSTの上昇の低減および/または低下の低減は、心臓パラメータの改善と考えられる。
【0117】
いくつかの実施形態では、インターロイキン-1受容体-Fc融合タンパク質の投与は、心エコー法(ECHO)によって決定される心膜液貯留の改善をもたらす。
【0118】
いくつかの実施形態では、インターロイキン-1受容体-Fc融合タンパク質の投与は、CTスキャンによって決定される心臓パラメータの改善をもたらす。
【0119】
いくつかの実施形態では、インターロイキン-1受容体-Fc融合タンパク質の投与は、心臓磁気共鳴画像法(MRI)によって決定される心臓パラメータの改善をもたらす。
【0120】
いくつかの実施形態では、対象が本発明による投与間隔および治療期間でインターロイキン-1受容体-Fc融合タンパク質を受け続ける間、インターロイキン-1受容体-Fc融合の投与は、ステロイドおよび他の併用療法の漸減の成功をもたらす。いくつかの実施形態では、対象が本発明による投与間隔および治療期間でインターロイキン-1受容体-Fc融合タンパク質を受け続ける間、インターロイキン-1受容体-Fc融合タンパク質の投与は、最初の投与から約4週間、または5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間、11週間、12週間、14週間、16週間、18週間、20週間、22週間、または24週間に開始されるステロイドおよび/または他の併用療法から患者を離脱させる。いくつかの実施形態では、インターロイキン-1受容体-Fc融合体の投与は、ステロイドおよび/または他の併用療法の漸減の成功をもたらし、この漸減は少なくとも2週間続く。いくつかの実施形態では、インターロイキン-1受容体-Fc融合体の投与は、ステロイドおよび他の併用療法の漸減の成功をもたらし、この漸減は少なくとも3週間続く。いくつかの実施形態では、インターロイキン-1受容体-Fc融合体の投与は、ステロイドおよび他の併用療法の漸減の成功をもたらし、この漸減は少なくとも4週間続く。いくつかの実施形態では、インターロイキン-1受容体Fc融合体の投与は、ステロイドおよび他の併用療法の漸減の成功をもたらし、この漸減は少なくとも5週間続く。いくつかの実施形態では、インターロイキン-1受容体-Fc融合体の投与は、ステロイドおよび他の併用療法の漸減の成功をもたらし、この漸減は少なくとも6週間、7週間、8週間、9週間、10週間、11週間、12週間、13週間、14週間、15週間、16週間、17週間、18週間、19週間、20週間、21週間、22週間、23週間、または24週間続く。いくつかの実施形態では、インターロイキン-1受容体-Fc融合体の投与は、ステロイドおよび他の併用療法の漸減の成功をもたらし、この漸減は少なくとも6ヶ月間、7ヶ月間、8ヶ月間、9ヶ月間、10ヶ月間、11ヶ月間、または1年間続く。いくつかの実施形態では、インターロイキン-1受容体Fc-融合体の投与は、ステロイドおよび他の併用療法の漸減の成功を1年超にわたってもたらす。いくつかの実施形態では、インターロイキン-1受容体-Fc融合体の投与は、1年超にわたって対象のステロイドおよび他の併用療法のない状態をもたらす。いくつかの実施形態では、対象は、本発明に従う治療用量および投与間隔で、インターロイキン-1受容体-Fc融合タンパク質の投与を受け続ける。いくつかの実施形態では、対象は、併用療法を何も行わずにインターロイキン-1受容体-Fc融合タンパク質の投与を受け続ける。
【0121】
いくつかの実施形態では、インターロイキン-1受容体-Fc融合タンパク質の投与は、QoLスコアの改善をもたらす。典型的には、QoLスコアは、以下から選択される一つまたは複数の評価を含む:心膜炎の重症度に関する患者の全般的印象(PGIPS);心膜炎の活性度に関する医師の全般的評価(PGA-PA);36項目短形式健康調査(SF-36);5レベルEuroQoL-5D(EQ-5D-5L)および不眠症重症度(ISI)。
【0122】
いくつかの実施形態では、インターロイキン-1受容体-Fc融合タンパク質を使用した治療の実効性は、心膜炎の重症度に関する患者の全般的印象(PGIPS)、および/または心膜炎の活性度に関する医師の全般的評価(PGA-PA)によって決定される。PGIPSは、単一項目の患者報告アウトカム(PRO)測定であり、非存在(再発性心膜炎症状なし)から非常に重篤(再発性心膜炎症状を無視できない)までに及ぶ7点評価尺度を使用して、質問票を適用した時点での心膜炎症状の全体的な重症度に関する被験者の印象を評価するものである。PGA-PAは、単一項目の臨床医報告アウトカム測定であり、非存在から非常に重篤までに及ぶ7点評価尺度を使用して、治験責任医師がその評価を完了した時点での患者の全体的な心膜炎疾患の活性度に関する印象を採点するものである。いくつかの実施形態では、インターロイキン-1受容体-Fc融合タンパク質の投与は、対照と比較してPGIPSおよび/またはPGA-PAの改善をもたらす。
【0123】
いくつかの実施形態では、インターロイキン-1受容体-Fc融合タンパク質を用いた治療を受けている対象の少なくとも50%は、PGIPSによって決定される非存在または最小限の心膜炎症状を報告する。いくつかの実施形態では、インターロイキン-1受容体-Fc融合タンパク質を用いた治療を受けている対象の少なくとも75%は、PGIPSによって決定される非存在下または最小限の心膜炎症状を報告する。いくつかの実施形態では、インターロイキン-1受容体-Fc融合タンパク質を用いた治療を受けている対象の少なくとも80%は、PGIPSによって決定される非存在下または最小限の心膜炎症状を報告する。いくつかの実施形態では、インターロイキン-1受容体-Fc融合タンパク質を用いた治療を受けている対象の少なくとも90%は、PGIPSによって決定される非存在下または最小限の心膜炎症状を報告する。いくつかの実施形態では、インターロイキン-1受容体-Fc融合タンパク質を用いた治療を受けている対象の少なくとも95%は、PGIPSによって決定される非存在下または最小限の心膜炎症状を報告する。いくつかの実施形態では、インターロイキン-1受容体Fc融合タンパク質を用いた治療を受けている対象の97%、98%、99%、または100%は、PGIPSによって決定される非存在または最小限の心膜炎症状を報告する。
【0124】
いくつかの実施形態では、インターロイキン-1受容体-Fc融合タンパク質を受けている対象の少なくとも50%は、PGA-PAによって決定される非存在または最小限の心膜炎症状を示す。いくつかの実施形態では、インターロイキン-1受容体-Fc融合タンパク質を用いた治療を受けている対象の少なくとも75%は、PGA-PAによって決定される非存在または最小限の心膜炎症状を示す。いくつかの実施形態では、インターロイキン-1受容体-Fc融合タンパク質を用いた治療を受けている対象の少なくとも80%は、PGA-PAによって決定される非存在または最小限の心膜炎症状を示す。いくつかの実施形態では、インターロイキン-1受容体-Fc融合タンパク質を用いた治療を受けている対象の少なくとも90%は、PGA-PAによって決定される非存在または最小限の心膜炎症状を示す。いくつかの実施形態では、インターロイキン-1受容体-Fc融合タンパク質を用いた治療を受けている対象の少なくとも95%は、PGA-PAによって決定される非存在または最小限の心膜炎症状を示す。いくつかの実施形態では、インターロイキン-1受容体-Fc融合タンパク質を用いた治療を受けている対象の96%、97%、98%、99%、または100%は、PGA-PAによって決定される非存在または最小限の心膜炎症状を示す。
【0125】
いくつかの実施形態では、インターロイキン-1受容体-Fc融合タンパク質を用いた治療の有効性は、5レベルEuroQoL-5D(EQ-5D-5L)(追加情報:www.euroqol.org)によって決定される。EQ-5D-5Lは、広範な健康状態および治療の評価に使用できる健康関連の生活の質の尺度としてEuroQolグループによって開発された標準手段である。EQ-5D-5Lは、記述式システムおよびEQ
VASを含む。記述式システムは、5つの要素:移動の程度、身の回りの管理、普段の活動、痛み/不快感、および不安/塞ぎ込みを含む。評価尺度は、対象の自己評価した健康を、垂直視覚アナログ尺度(VAS)に記録する。これら5要素のスコアは、健康プロファイルとして提示することもでき、他の健康プロファイルに比べての望ましさを反映する単一の要約指数(有用性)に変換することもできる(euroqol.org/eq-5d-instruments)。
【0126】
いくつかの実施形態では、EQ-5D-5Lは、≧18歳以上の対象で採取される。
【0127】
いくつかの実施形態では、インターロイキン-1受容体-Fc融合タンパク質の投与は、EQ-5D-5Lの改善をもたらす。いくつかの実施形態では、インターロイキン-1受容体-Fc融合タンパク質を受けている対象の少なくとも50%は、臨床的に妥当なEQ-5D-5Lスコアの改善を示す。いくつかの実施形態では、インターロイキン-1受容体-Fc融合タンパク質を用いた治療を受けている対象の少なくとも75%は、臨床的に妥当なEQ-5D-5Lスコアの改善を示す。いくつかの実施形態では、インターロイキン-1受容体-Fc融合タンパク質を用いた治療を受けている対象の少なくとも80%は、臨床的に妥当なEQ-5D-5Lスコアの改善を示す。いくつかの実施形態では、インターロイキン-1受容体-Fc融合タンパク質を用いた治療を受けている対象の少なくとも90%は、臨床的に妥当なEQ-5D-5Lスコアの改善を示す。いくつかの実施形態では、インターロイキン-1受容体-Fc融合タンパク質を用いた治療を受けている対象の少なくとも95%は、臨床的に妥当なEQ-5D-5Lスコアの改善を示す。いくつかの実施形態では、インターロイキン-1受容体-Fc融合タンパク質を用いた治療を受けている対象の96%、97%、98%、99%、または100%は、臨床的に妥当なEQ-5D-5Lスコアの改善を示す。
【0128】
いくつかの実施形態では、前述のセクションで標示されたQoL測定値の対照は、治療前に対象において決定されたベースラインQoLスコアである。いくつかの実施形態では、対照は、同等の病状を有するがプラセボで治療される対象における参照QoLスコアである。いくつかの実施形態では、対照は、治療なく同等の病状を有する対象におけるQoLスコアを標示する参照である。いくつかの実施形態では、対照は、疾患を有する対象がIL-1受容体-Fc融合タンパク質の投与を行わず標準治療の療法を受けたときのQoLを標示する。
【0129】
いくつかの実施形態では、インターロイキン-1受容体-Fc融合体の投与は、不眠症重症度指数(ISI)の改善をもたらす。ISIは、不眠症の性質、重症度、および影響を評価する7項目の自己報告質問票である。通常の振り返りの期間は「最後の2週間」であり、評価される次元は、寝付きの過酷さ、睡眠の維持、早朝覚醒の問題、睡眠の不満足、日中の機能への睡眠困難の干渉、他者による睡眠問題の誘目性、および睡眠困難に起因する苦悩である。5点リッカート尺度を使用して、各項目(例えば、0=問題なし、4=非常に深刻な問題)を採点し、0から28までに及ぶ合計スコアを得る。合計スコアは、以下のように解釈される:臨床的に有意な不眠症(0~7);閾値下の不眠症(8~14);臨床的な(中等度の)不眠症(15~21);および臨床的な(重度の)不眠症(22~28)(Morin et al.Sleep.2011;34(5):601-608)。いくつかの実施形態では、ISIは、≧18歳以上の対象で収集される。いくつかの実施形態では、インターロイキン-1受容体-Fc融合体の投与後の対象におけるISIは、14未満、または8~14の間、または7未満に改善される。いくつかの実施形態では、インターロイキン-1受容体-Fc融合体の投与は、治療されている対象において7以下のISIをもたらす。いくつかの実施形態では、ISIスコアは、インターロイキン-1受容体-Fc融合タンパク質を受ける対象の少なくとも50%において、7以下である。いくつかの実施形態では、ISIスコアは、インターロイキン-1受容体-Fc融合タンパク質を受ける対象の少なくとも75%において、7以下である。いくつかの実施形態では、ISIスコアは、インターロイキン-1受容体-Fc融合タンパク質を受ける対象の少なくとも80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%において、7以下である。
【0130】
いくつかの実施形態では、インターロイキン-1受容体-Fc融合タンパク質を用いた治療の有効性は、無治療またはプラセボの対照と比較して心膜炎の再発のリスクが低減されることによって決定される。いくつかの実施形態では、インターロイキン-1受容体-Fc融合体の投与は、本発明によるインターロイキン-1受容体-Fc融合タンパク質で治療された患者集団の統計学的解析に基づき、50%未満、40%未満、30%未満、20%未満、10%未満、5%未満、2%未満、または1%未満もしくは0.5%未満もしくは0.25%未満もしくは0.1%未満の心膜炎の再発のリスクの低減をもたらす。
【0131】
いくつかの実施形態では、インターロイキン-1受容体-Fc融合タンパク質を用いた治療の有効性は、治療中または治療後の無再発期間によって決定される。無再発の生存期間は、典型的には、対象が、期間中に心膜炎の一つもしくは複数の症状または炎症の再燃のエピソードまたは発生を経験しないことを意味する。心膜炎の再発または再燃は、通常、以下のうちいずれか一つまたは複数によって標示される:末梢血中の≧1mg/dLのCRPレベルの増加;またはNRSスケール≧4で決定される痛みの増加;または心膜液貯留の発生(例えばECGもしくはECHOによって決定される);心膜摩擦音;または発熱もしくは任意の他の症候性指標(例えばPGIPS、PGA-PA、SF-36、EQ-5D-5L、またはISIによって決定される)。いくつかの実施形態では、対象は、無再発期間中に本発明に従う投与間隔および治療期間で、治療用量のインターロイキン-1受容体Fc融合タンパク質を受け続ける。いくつかの実施形態では、対象は、無再発期間中にインターロイキン-1受容体-Fc融合タンパク質の治療から次第に離脱することがある。
【0132】
いくつかの実施形態では、インターロイキン1受容体-Fc融合タンパク質を用いた治療の有効性は、無再発生存期間(例えば再燃までの日数)によって決定される。いくつかの実施形態では、無再発生存期間は、インターロイキン-1受容体Fc融合タンパク質の最初の投与から少なくとも30日、40日、50日、60日、70日、80日、または90日である。いくつかの実施形態では、無再発生存期間は、インターロイキン-1受容体-Fc融合タンパク質の最初の投与から少なくとも91日、92日、93日、94日、95日、96日、97日、98日、99日、100日である。いくつかの実施形態では、無再発生存期間は、少なくとも105日、または少なくとも110日、または少なくとも115日、または少なくとも120日、または少なくとも130日、または少なくとも140日、または少なくとも150日である。いくつかの実施形態では、インターロイキン1受容体-Fc融合タンパク質を本発明による投与間隔(例えば毎週の用量投与)および治療期間で受けている間、無再発生存期間は少なくとも200日以上である。
【0133】
いくつかの実施形態では、インターロイキン1受容体-Fc融合タンパク質の毎週の用量投与を受けている間、無再発生存期間は、鎮痛剤またはNSAIDの休止から少なくとも30日、40日、50日、60日、70日、または少なくとも80日である。いくつかの実施形態では、インターロイキン1受容体-Fc融合タンパク質を本発明による投与間隔(例えば毎週の用量投与)および治療期間で受けている間、NSAIDの休止からの無再発生存期間は、少なくとも81日、82日、83日、84日、85日、86日、87日、88日、89日、90日、91日、92日、93日、94日、95日、96日、97日、98日、99日、100日、110日、120日、130日、140日、150日、160日、170日、180日、190日、または200日以上である。
【0134】
いくつかの実施形態では、インターロイキン1受容体-Fc融合タンパク質の毎週の投与を受けている間、無再発生存期間は、コルチコステロイドの休止から少なくとも50日である。いくつかの実施形態では、本発明による投与間隔(例えば、毎週の用量投与)および治療期間でインターロイキン1受容体-Fc融合タンパク質を受けている間、NSAIDの休止からの無再燃生存期間は、少なくとも55日、60日、65日、70日、75日、80日、85日、90日、95日、100日、110日、120日、130日、140日、150日、160日、170日、180日、190日、または200日以上である。
有害作用
【0135】
心膜炎の治療に関連する有害作用としては、注射部位反応、上気道感染、頭痛、悪心、嘔吐、下痢、副鼻腔炎、関節痛、インフルエンザ様症状、腹痛、発熱、ヘルペス、トランスアミナーゼの上昇、虚血性視神経症、および上咽頭炎が挙げられる。
【0136】
いくつかの実施形態では、インターロイキン-1受容体-Fc融合タンパク質の投与は、対象に重篤な有害事象をもたらさない。いくつかの実施形態では、インターロイキン-1受容体-Fc融合タンパク質の投与は、注射部位反応、関節リウマチの悪化、上気道感染、頭痛、悪心、嘔吐、下痢、副鼻腔炎、虚血性視神経症、関節痛、インフルエンザ様症状、腹痛、発熱、ヘルペス、トランスアミナーゼの上昇、および上咽頭炎のうち一つまたは複数をもたらさない。
【0137】
いくつかの実施形態では、様々な安全性評価は、薬物動態的および薬力学的なモニタリングを含み、そのようなものとしては、以下に限定されないが、理学的検査、バイタルサインの測定、有害事象(AE)のモニタリング、胸部X線のモニタリング、および結核の徴候のスクリーニングが挙げられる。
【0138】
インターロイキン-1(IL-1)受容体-Fc融合タンパク質
いくつかの実施形態では、本発明により提供される発明の組成物および方法は、必要とする対象にインターロイキン-1受容体-Fc融合タンパク質を送達するために使用される。本発明の特定の実施形態では、インターロイキン-1受容体-Fc融合タンパク質は、IL-1αおよびIL-1β(すなわちIL-1トラップ)を結合してIL-1細胞表面受容体とのそれらの相互作用を防止する可溶性デコイ受容体としての役割を果たすことによってIL-1シグナル伝達を遮断する、組換え融合タンパク質である。特定の実施形態では、融合タンパク質はヒトサイトカイン受容体の細胞外ドメインとヒト免疫グロブリンのFc部分とを含む。いくつかの実施形態では、Fc部分は、ヒトのIgG1、IgG2、またはIgG4に由来する。いくつかの実施形態では、Fc部分は、ヒトのIgG1、IgG2、またはIgG4に由来するCH2ドメインおよびCH3ドメインを含む。一実施形態では、Fc部分は、ヒトIgG4に由来するCH2ドメインと、ヒトIgG1に由来するCH3ドメインとを含む。いくつかの実施形態では、Fc部分は、ヒトIgG1に由来するヒンジ領域の少なくとも一部分を含む。いくつかの実施形態では、融合タンパク質は、IL-1Rタイプ1およびIL-1Rアクセサリータンパク質(IL-1RAcP)の細胞外ドメインを含む。いくつかの実施形態では、IL1Rタイプ1およびIL-1RAcPの細胞外ドメインとヒトIgG1のFc部分とを含む二つの同一の融合タンパク質が、Fc領域におけるジスルフィド結合により共有結合してホモ二量体を形成する。一実施形態では、インターロイキン-1受容体-Fc融合タンパク質はリロナセプトである。
【0139】
インターロイキン-1受容体-Fc融合タンパク質の配列
SERCDDWGLDTMRQIQVFEDEPARIKCPLFEHFLKFNYSTAHSAGLTLIWYWTRQDRDLEEPINFRLPENRISKEKDVLWFRPTLLNDTGNYTCMLRNTTYCSKVAFPLEVVQKDSCFNSPMKLPVHKLYIEYGIQRITCPNVDGYFPSSVKPTITWYMGCYKIQNFNNVIPEGMNLSFLIALISNNGNYTCVVTYPENGRTFHLTRTLTVKVVGSPKNAVPPVIHSPNDHVVYEKEPGEELLIPCTVYFSFLMDSRNEVWWTIDGKKPDDITIDVTINESISHSRTEDETRTQILSIKKVTSEDLKRSYVCHARSAKGEVAKAAKVKQKVPAPRYTVEKCKEREEKIILVSSANEIDVRPCPLNPNEHKGTITWYKDDSKTPVSTEQASRIHQHKEKLWFVPAKVEDSGHYYCVVRNSSYCLRIKISAKFVENEPNLCYNAQAIFKQKLPVAGDGGLVCPYMEFFKNENNELPKLQWYKDCKPLLLDNIHFSGVKDRLIVMNVAEKHRGNYTCHASYTYLGKQYPITRVIEFITLEENKPTRPVIVSPANETMEVDLGSQIQLICNVTGQLSDIAYWKWNGSVIDEDDPVLGEDYYSVENPANKRRSTLITVLNISEIESRFYKHPFTCFAKNTHGIDAAYIQLIYPVTNSGDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(配列番号1)
【0140】
N末端シグナル配列を有するインターロイキン-1受容体-Fc融合タンパク質の配列
MVLLWCVVSLYFYGILQSDASERCDDWGLDTMRQIQVFEDEPARIKCPLFEHFLKFNYSTAHSAGLTLIWYWTRQDRDLEEPINFRLPENRISKEKDVLWFRPTLLNDTGNYTCMLRNTTYCSKVAFPLEVVQKDSCFNSPMKLPVHKLYIEYGIQRITCPNVDGYFPSSVKPTITWYMGCYKIQNFNNVIPEGMNLSFLIALISNNGNYTCVVTYPENGRTFHLTRTLTVKVVGSPKNAVPPVIHSPNDHVVYEKEPGEELLIPCTVYFSFLMDSRNEVWWTIDGKKPDDITIDVTINESISHSRTEDETRTQILSIKKVTSEDLKRSYVCHARSAKGEVAKAAKVKQKVPAPRYTVEKCKEREEKIILVSSANEIDVRPCPLNPNEHKGTITWYKDDSKTPVSTEQASRIHQHKEKLWFVPAKVEDSGHYYCVVRNSSYCLRIKISAKFVENEPNLCYNAQAIFKQKLPVAGDGGLVCPYMEFFKNENNELPKLQWYKDCKPLLLDNIHFSGVKDRLIVMNVAEKHRGNYTCHASYTYLGKQYPITRVIEFITLEENKPTRPVIVSPANETMEVDLGSQIQLICNVTGQLSDIAYWKWNGSVIDEDDPVLGEDYYSVENPANKRRSTLITVLNISEIESRFYKHPFTCFAKNTHGIDAAYIQLIYPVTNSGDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(配列番号2)
【0141】
IL-1RAcPの細胞外ドメインのアミノ酸配列
SERCDDWGLDTMRQIQVFEDEPARIKCPLFEHFLKFNYSTAHSAGLTLIWYWTRQDRDLEEPINFRLPENRISKEKDVLWFRPTLLNDTGNYTCMLRNTTYCSKVAFPLEVVQKDSCFNSPMKLPVHKLYIEYGIQRITCPNVDGYFPSSVKPTITWYMGCYKIQNFNNVIPEGMNLSFLIALISNNGNYTCVVTYPENGRTFHLTRTLTVKVVGSPKNAVPPVIHSPNDHVVYEKEPGEELLIPCTVYFSFLMDSRNEVWWTIDGKKPDDITIDVTINESISHSRTEDETRTQILSIKKVTSEDLKRSYVCHARSAKGEVAKAAKVKQKVPAPRYTVE(配列番号3)
【0142】
IL-1R1の細胞外ドメインのアミノ酸配列
KCKEREEKIILVSSANEIDVRPCPLNPNEHKGTITWYKDDSKTPVSTEQASRIHQHKEKLWFVPAKVEDSGHYYCVVRNSSYCLRIKISAKFVENEPNLCYNAQAIFKQKLPVAGDGGLVCPYMEFFKNENNELPKLQWYKDCKPLLLDNIHFSGVKDRLIVMNVAEKHRGNYTCHASYTYLGKQYPITRVIEFITLEENKPTRPVIVSPANETMEVDLGSQIQLICNVTGQLSDIAYWKWNGSVIDEDDPVLGEDYYSVENPANKRRSTLITVLNISEIESRFYKHPFTCFAKNTHGIDAAYIQLIYPVTN(配列番号4)
【0143】
Fc(IgG1)のアミノ酸配列
DKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(配列番号5)
【0144】
本発明のいくつかの実施形態では、インターロイキン-1受容体-Fc融合タンパク質は、配列番号1のアミノ酸配列を含む。本発明のいくつかの実施形態では、インターロイキン-1受容体-Fc融合タンパク質は、配列番号2のアミノ酸配列を含む。本発明のいくつかの実施形態では、インターロイキン-1受容体-Fc融合タンパク質は、配列番号1と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む。本発明のいくつかの実施形態では、インターロイキン-1受容体-Fc融合タンパク質は、配列番号1と少なくとも75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0145】
本発明のいくつかの実施形態では、インターロイキン-1受容体-Fc融合タンパク質は、配列番号3と少なくとも75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含む。本発明のいくつかの実施形態では、インターロイキン-1受容体-Fc融合タンパク質は、配列番号4と少なくとも75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含む。本発明のいくつかの実施形態では、インターロイキン-1受容体-Fc融合タンパク質は、配列番号5と少なくとも75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0146】
本発明は、インターロイキン1受容体の係合、活性または発現を低減することのできる薬剤を使用し、それによってインターロイキン-1受容体-Fc融合タンパク質治療に匹敵する生物学的効果を達成する、心膜炎の治療を想定する。いくつかの態様では、心膜炎はPCISに関連する。いくつかの態様では、心膜炎はPPSに関連する。いくつかの実施形態では、インターロイキン受容体の係合を低減することができる薬剤は、インターロイキン-1アンタゴニストである。いくつかの実施形態では、本発明は、PCISまたはPPS心膜炎を治療する方法を提供し、本方法は、上記疾患に関連する少なくとも一つまたは複数の症状を改善、安定化、または減少させるように、適切な投与間隔で治療有効量のインターロイキン-1アンタゴニストを投与することによるものである。いくつかの実施形態では、インターロイキン-1アンタゴニストは、インターロイキン-1結合タンパク質である。いくつかの実施形態では、インターロイキン-1アンタゴニストは、インターロイキン-1またはその断片に対する受容体である。いくつかの実施形態では、インターロイキン-1アンタゴニストは、抗体またはその断片である。いくつかの実施形態では、インターロイキン-1アンタゴニストは、インターロイキン-1受容体融合タンパク質である。いくつかの実施形態では、上記薬剤は、インターロイキン-1受容体アンタゴニスト(IL-1ra)である。
【0147】
当業者であれば容易に理解できるように、上記薬剤は、IL-1受容体遮断抗体またはその断片、IL-1抗原結合タンパク質、IL-1抗体またはその断片、IL-1受容体のアンタゴニスト、IL-1受容体の阻害物質、IL-1受容体活性化の阻害物質、IL-1受容体媒介性シグナル伝達の阻害物質、IL-1受容体シグナル伝達を遮断することのできる阻害性ペプチド、IL-1受容体とのIL-1の相互作用を遮断またはその他低減することのできる阻害性ペプチド、IL-1受容体リガンドまたはIL-1受容体の発現を低減する阻害性のRNAまたは核酸とすることができる。それゆえ、本開示は、心膜炎を治療するためにIL-1受容体活性化経路を標的とするべく、当業者に公知の一つまたは複数の従来の方法を使用して同じ目的を達成する、本発明の明白なバリアントを包含する。
【実施例
【0148】
本発明の特定の方法を、特定の実施形態に従って具体的に説明してきたが、以下の実施例は、本発明の方法を説明する役割を果たすに過ぎず、それを制限することを意図するものではない。
【0149】
実施例1:IL-1受容体-Fc融合タンパク質による心膜炎の治療
この実施例における研究は、心膜炎を有する対象における、リロナセプト、インターロイキン-1受容体-Fc融合タンパク質の安全性、忍容性、およびPKを評価するために設計された第II相臨床試験であった。本研究は、症候性患者における臨床効果評価に関する、インターロイキン-1受容体-Fc融合タンパク質の効果の探索的調査も含んでいた。
【0150】
リロナセプトは、ヒトIL-1サイトカイン受容体の細胞外ドメインとヒト免疫グロブリンG1(IgG1)のFc部分とを含む組換え融合タンパク質(配列番号1)である。これは、IL 1α/IL 1βを結合する可溶性デコイ受容体としての役割を果たし、IL 1細胞表面受容体との相互作用を阻止する。
【0151】
治験薬(リロナセプトまたはプラセボ)は、滅菌済の白色からオフホワイトの凍結乾燥粉末を含有する、使い捨ての20mLガラスバイアルで供給される。各バイアルは、注射用滅菌水(WFI)2.3mLで再構成されるものとなる。最大2mLの体積を抜き取ることができるが、これは、SC注射のみのために、最大160mgのリロナセプトまたは最大2mLのプラセボを送達するように指定されている。結果として得られた溶液は、透明かつ無色から淡黄色であり、本質的に微粒子を含まない。
【0152】
各リロナセプトのバイアルは、220mgのリロナセプト凍結乾燥粉末を含有する。2.3mLのWFIを用いた再構成の後、リロナセプトのバイアルは、80mg/mLのリロナセプト、40mMヒスチジン、50mMアルギニン、3.0%(w/v)ポリエチレングリコール3350、2.0%(w/v)スクロース、および1.0%(w/v)のグリシンをpH6.5で含有する。防腐剤は存在しない。
【0153】
試験デザイン
参加する被験者は、計6回の毎週用量のインターロイキン-1受容体-Fc融合タンパク質を受ける。用量投与は、負荷用量320mgを2回の160mg用量として皮下投与することにより開始し、続いて、160mgの維持用量を週1回皮下投与する。心膜炎の改善データおよび安全性情報を収集する。被験者が治療に応答していると考えられる場合には、任意選択の18週間の延長期間への参加が提案される。治療期間の持続期間にわたって、併用のNSAIDおよび/またはコルヒチンおよび/またはコルチコステロイドは、存在する場合には、6回の用量投与の治療期間が完結するまで試験前の用量レベルで継続されるべきであるが;NSAID、コルヒチン、および/またはコルチコステロイドの用量の低減/漸減が医学的に指示されることが決定された場合には、NSAID、コルヒチン、および/またはコルチコステロイドの用量を減量することができる。
【0154】
オピオイド鎮痛剤、非麻酔薬(例えばトラメドール)、およびアセトアミノフェンは、治療期間全体にわたって必要に応じて補助的な疼痛制御の救急薬として許容される。NSAID用量レベル(存在する場合)は活性治療期間中に一定に保たれるべきであることが推奨されるが、併用のNSAID用量は、必要と考えられる場合、補助的な疼痛制御のために一時的に増加される(またはNSAIDが開始される)ことがある。治験責任医師の裁量で、「治療応答者」(治験終了訪問時の、11点NRSを用いた心膜痛の臨床的に有意な低減、正常または正常に近いCRPレベル、および/または心エコーでの滲出液の非存在もしくは減少として、治験責任医師により定義される)は、任意選択の18週間の延長期間(EP)への参加を提案されるものとなり、その期間中、インターロイキン-1受容体-Fc融合タンパク質の毎週投与を、治療期間と同じ用量で、合計で最大24週間の治療の持続期間にわたって続けることができる。EPの間、治験責任医師は、標準治療のパラダイムに従い、併用のNSAID、コルヒチン、および/またはコルチコステロイドを離脱させることを選ぶことがある。
【0155】
試験治療
インターロイキン-1受容体-Fc融合タンパク質を、凍結乾燥製剤として調製した。皮下(SC)投与のために、インターロイキン-1受容体-Fc融合タンパク質を、バイアル当たり160mgを含有する剤形で製造した。凍結乾燥粉末を2.3mLの注射用滅菌水(WFI)で再構成し、薬剤を2mL中80mg/mLの濃度で送達した。用量投与は、負荷用量320mgを2回の160mg用量として皮下投与することにより開始し、続いて160mgの維持用量を週1回皮下に投与した。初回の被験者群が治療された後、観察された安全性プロファイルならびに治療応答の大きさおよびスピードに応じて(例えば、情報価値のある数の被験者が治療期間の早期に奏功した場合)、低用量での有効性を決定するため、プロトコールによって、以降の対象群に投与される用量を減少させて、負荷用量160mg(2×80mg)をSCで投与し、続いて80mgの維持用量を追加の5週間にわたって週1回SCで投与することが可能になる。
【0156】
被験者の選択基準
心膜疾患の診断および管理に関する2015年のESCガイドライン(Adler et al,European Heart Journal,Volume 36,Issue 42,7 November 2015,Pages 2921-2964)を参照の枠組みとして使用して、利用可能なデータに基づき急性心膜炎事象の基準を満たした、すなわち、以下の4つの基準のうち少なくとも2つを満たした、心膜炎の指標エピソードを有していた被験者:心膜炎性の胸痛、心膜摩擦音、ECG上の新しい広範囲でのSTセグメントの上昇またはPRセグメントの低下、および(新しいかまたは悪化した)心膜液貯留。追加的な支持所見には、炎症のマーカー(すなわち、CRP、赤血球沈降速度、および白血球数)の上昇、またはイメージング手法(例えばMRI)による心膜の炎症のエビデンスが含まれた。
【0157】
被験者はまた、心膜炎の少なくとも1回の事前の再発エピソードを有していなければならず、被験者は、進行中の心膜炎の症状エピソードを試験登録時に有していなければならず、どちらも利用可能な診断情報に基づくものとした。また、被験者が、NSAID、および/またはコルヒチンおよび/またはコルチコステロイドを(任意の組合せで)使用した場合、初回用量投与前に少なくとも7日間、インターロイキン-1受容体-Fc融合タンパク質を安定な用量レベルで受けていなければならず(尤も、ベースラインCRP値を変えるためにそれより短い安定性期間が予期されなかった場合、少なくとも3日間の安定な用量投与が許容されたが)、被験者は、積極的な治療期間の持続期間にわたって、これらの併用薬をこれらの用量投与レベルで続けることが予想された。
【0158】
第2相の非盲検パイロット試験は、6歳から75歳の合計で最大40名の被験者における24週間試験であり、以下の群として称される以下の分類の再発性心膜症の対象を含む。
第1群 全身性炎症のマーカーの上昇(C反応性タンパク質[CRP]≧1mg/dL)を伴う再発性特発性心膜炎(RIP)を有する症候性被験者を登録する;
第2群 治験責任医師の意見で併用薬(例えばコルチコステロイド)に起因するものと考えられ得るCRP<1mg/dLと、イメージングのコア実験室により確定された心臓磁気共鳴画像法(MRI)上に存在する心膜の炎症とを伴う、RIPを有する症候性被験者を登録する;
第3群 心膜炎の再燃の診断基準を満たすものとなる症状を経験していない、コルチコステロイド依存性RIPを有する被験者を登録する;
第4群 全身性炎症のマーカーの上昇(CRP≧1mg/dL)を伴う再発性心膜切開後症候群(PPS)を有する症候性被験者を登録する;ならびに
第5群 心膜炎の再燃の診断基準を満たすものとなる症状を経験していない、コルチコステロイド依存性再発性PPSを有する被験者を登録する。
【0159】
試験の評価
血液試料を収集し、C反応性タンパク質(CRP)レベルを、対象を含む前および試験中の両方で決定した。何人かの被験者は、試験登録時に≧1mg/dLのCRP値の上昇を呈した。CRPの変化と、正常値≦0.5mg/dLまでのCRPの減少および回復のタイムコースとを評価した。
【0160】
試験中に以下の臨床応答評価も実施した。
【0161】
心膜液貯留の評価を含む心エコー図(ECHO)は、スクリーニング(SCV1)時に;治療期間中の試験施設/診療所訪問(該当する場合に治療期間のおよそ第3~4週中に発生した間隔評価訪問および第7回訪問/治験終了)時に;EP中の間隔評価訪問時に[該当する場合];および最終試験訪問/第8回訪問(SCV8)時に実施した。心膜液貯留は、心臓を囲む囲心腔内の過剰な流体の蓄積という特徴を有し、心膜炎の共通の特徴の一つであった。心エコー法は、感度の高いツールであり、心膜の液貯留および/または肥厚の検出に最も広く使用されているイメージング手法である。試験終了時の全ての被験者における治療応答の解析を目的として、全てのECHO画像が中央判読者によって評価された。
【0162】
12誘導心電図法(ECG)は、スクリーニング(SCV1および任意選択のSCV2)時に、治療期間中の試験施設/診療所訪問(間隔評価訪問[該当する場合]および第7回訪問/治験終了)時に、延長期間(EP)中の間隔評価訪問時に[該当する場合];および最終試験訪問/第8回訪問時に実施した。心膜炎は一般的に、心臓の電気生理学的な変化を伴い、その結果、典型的なECG所見、すなわち広範囲でのST上昇またはPRの低下を生じる。ECG所見の変化は、被験者の心膜炎状態を決定するのに役立つ。試験終了時の全ての被験者における治療応答の解析を目的として、全てのECGトレーシングが中央判読者によって評価された。
【0163】
一般的な心膜炎の徴候としては、発熱および心膜摩擦音が挙げられる。これらの心膜炎の徴候を、バイタルサインおよび理学的検査の文書化を介して評価した。心膜炎の徴候の理学的検査およびバイタルサイン評価は、スクリーニング(SCV1および任意選択のSCV2)時に、治療期間中の試験施設/診療所訪問(間隔評価訪問[該当する場合]および第7回訪問/治験終了)時に、EP中の間隔評価訪問時に[該当する場合];および最終試験訪問/第8回訪問時に実施した。該当する場合、心膜炎の徴候の評価をスケジュール外の訪問時にも実施した。
【0164】
一般的な心膜炎の症状としては、胸部不快感(心膜炎の痛み)が挙げられる。検証済みの11点数値評価尺度(NRS)を使用して、被験者の心膜炎(胸部)の痛みの強度のレベルを測定した(Mannion et al,Nature Clinical Practice Rheumatology 2007;3(11):610-18)。評価は、試験施設/診療所訪問中に現場での全ての試験訪問時に、および外来患者訪問/治療週間中(治療期間中の毎週およびEP中の毎月)の電話/仮想訪問の一環として、実施した。
【0165】
心臓MRIは、任意選択の評価とし、心膜の炎症の何らかの変化を評価するために試験エントリー(SCV1)時および最終試験訪問(第8回訪問)時に実施することができた。治験終了時の全ての被験者における治療応答の解析を目的として、全ての心臓MRI画像が中央判読者によって評価された。
【0166】
検証済みの生活の質の質問票を使用して、被験者の全般的な幸福度の変化を評価した(Hays et al,Qual Life Res(2009)18:873-880)。患者の全般的評価は、スクリーニング(SCV1)時に、第1回訪問時(0日目)に、治療期間の終了(第7回訪問/治験終了)時に、EP中の間隔評価訪問時に、および最終訪問(第8回訪問)時に実施した。
【0167】
有害事象(AE)は、医薬製品を投与された対象または臨床治験の被験者における任意の不都合な医学的発生事である。AEは、必ずしもこの治療と因果関係を持つわけではない。したがって、AEは、薬用(治験)製品に関連するか否かにかかわらず、薬用(治験)製品の使用と一時的に関連付けられたあらゆる好ましくないおよび/または意図しない徴候(異常な臨床検査上の所見を含む)、症状、または疾患であり得る。
【0168】
AEとしてはまた:インターロイキン-1受容体Fc融合タンパク質の使用に一時的に関連した既存の状態の悪化(例えば、臨床的に有意な頻度および/または強度の変化);報告する治験責任医師により臨床的に有意であるものと考えられた異常な臨床検査上の所見;および任意の不都合な医学的発生事が挙げられる。
【0169】
この試験では、心膜炎の総体症状(痛みを含む)の個々の要素が、有効性パラメータとして捉えられる。心膜炎の痛みは、AEとして報告される必要はない。しかしながら、ベースライン時に記録された症状の群に以前に報告されていなかった新しい症状を被験者が経験する場合、これらの新しい症状は有害事象として報告されるべきである。
【0170】
主要有効性評価項目には、ベースライン時とインターロイキン-1受容体-Fc融合タンパク質治療中との両方でのRIPの症候性被験者における、被験者間および被験者内のCRPおよび11点NRS手段の推定変動性を含む。探索的評価項目としては、以下が挙げられる:心膜炎の痛み、CRP、ならびに/または心エコーおよびECGの異常の回復を含む、心膜炎の総体症状の程度の改善のタイムコース;異なるインターロイキン-1受容体-Fc融合タンパク質の用量(例えば160mgまたは80mgの維持用量)に対する差次的な応答;CRPの正常化(≦0.5mg/dL)までの時間;CRPレベルの経時変化;CRPを正常化された被験者の数(パーセンテージ);心膜炎の痛みに関する被験者の評価の経時変化;以降のRIPでの臨床試験に用いる適切な複合主要評価項目を策定するために、心膜炎の総体症状の臨床的な改善に関する患者報告アウトカム(PRO)、生化学(CRP)、およびイメージングの相関現象を探索すること;心膜炎の改善を伴う被験者の数(パーセンテージ)(治験責任医師の評価に基づく);全体的な幸福度に関する被験者の全般的評価の経時変化(QoL手段を使用);心臓MRIにより評価される心膜の炎症の変化;EP 終了時にNSAID、コルヒチン、および/または コルチコステロイドから離脱する被験者の数;心膜炎の再燃までの時間、心膜炎の再発を経験する患者の数、ならびに心膜炎の再発の数。
【0171】
実施例2:インターロイキン-1受容体-Fc融合タンパク質によるCRPレベルおよび痛みの低減
本実施例は、実施例1に記載された第II相臨床試験が、臨床的に意味のある有効性をもたらしたこと、特にCRPレベルおよび痛みの臨床的に有意な低下をもたらしたことを実証している。
【0172】
具体的には、心膜炎を有する14人の患者(被験者)を、0日目に320mgの負荷用量の皮下注射のインターロイキン-1受容体-Fc融合タンパク質(リロナセプト)により治療し、続いて週1回、160mgの維持用量の皮下注射のリロナセプトにより治療した。これらの患者に対するCRPレベルおよび痛みのスコア(11点数値評価尺度(NRS))を図1A図3Cに示す。9名の患者が、第1群(CRPの上昇した症候性特発性再発性心膜炎被験者)に登録され、6名の患者が、図1A図1C図1E、および図1H~Iに示されるように、単回用量の治療後でさえもCRP値およびNRS(痛み)値の減少を示した。被験者Dの例では、リロナセプトの初回投与の1週間後にCRPレベルを試験しなかったが、治療第2週では、CRP値はベースラインと比較して著しい減少を示した(図1D)。図1Fおよび図1Gに示されるように、被験者FおよびGはCRPレベルの減少を示した。各患者は、図1A図1Iに示される標示用量で、痛みおよび/または炎症のために事前の薬物で治療されていた。第1群の全ての患者が、図1A図1Iに示されるように、ベースラインに比較して、以降の用量投与期間の間、痛みおよびCRP値の持続的な低減の傾向を示した。図1Cに示されるように、リロナセプト療法の6週間後には、第1群の被験者Cはイブプロフェンの摂取を停止し、リロナセプトを用いて治療されていたおよそ8週間(55日)後には、この被験者は6週間のプレドニゾンの漸減を始めた。被験者の用量を隔週で2.5mgずつ低減した。被験者は、延長期間中にリロナセプト療法を続けながら、イブプロフェン非存在下かつステロイド離脱期間中、無症状のままであった。図1Cに示されるように、被験者は、次の77日間を通じて、イブプロフェンもプレドニゾンもなく、無再燃または無再発、CRPレベル<0.5mg/dL、および無痛を呈しながら進んだ。
【0173】
2名の患者が、第2群(CRP<1mg/dLを伴い、心臓MRIでは心膜の炎症が存在した症候性RIP被験者)に登録され、単回用量の治療後でさえCRPおよび痛みの低減を示し、図2Aおよび図2Bに示されるように、ベースラインと比較して、以降の用量投与期間の間にCRPおよび痛みの減少の傾向を示し続けた。これらの患者は、図に示される標示用量で痛みおよび炎症のための事前の薬物で治療されていた。3名の患者が、第3群(心膜炎の再燃の診断基準を満たすものとなる症状を経験していない、コルチコステロイド依存性RIPを有する被験者)に登録されたが、彼らは、治験責任医師によってコルチコステロイド依存性として、すなわち、コルチコステロイドを離脱させた場合に心膜炎の徴候および症状が戻るものとなるという事前の履歴および経験に基づいて判断された。これらの患者は、図3A図3Bおよび図3Cに示される標示用量で、痛みおよび炎症のための事前の薬物を用いて治療されていた。0日目および併用療法の離脱前にリロナセプト(320mg)を受けた後、患者は、7日目に観察されたように無症状のままであった。試験の延長期間中、プロトコールにより、第3群に登録された被験者はステロイドを含めて併用の心膜炎薬から離脱することが可能になるが、一方、医療実施者の裁量でリロナセプトを続ける。例えば、図3Bは、プレドニゾン用量を漸減してリロナセプトの初回用量投与の91日後に完全に離脱させた時でさえも、患者がCRPレベルおよびNRSスコアの減少を呈したことを示している。被験者Bは、図3Bに示されるように、次の28日間のプレドニゾン不在レジメンにわたって、CRPレベルおよびNRSスコアの減少を示し続けた。基礎治療期間の完了時に、第3群の被験者Aは、延長試験から脱退することを選んだ。第1~3群の被験者から得られた追加のアウトカムの程度、例えば貯留の存在、QoL、およびECGの変化などが、表1に報告されている。これらの被験者についての有害事象報告を表2に示す。
【0174】
リロナセプトで治療された12名の被験者は、いくつかの軽度の有害事象(AE)を報告している(表2)。重篤なものはなく、治験薬の中断に繋がるものはなかった。最もよく報告されたAEは注射部位反応であり、全てが事実上、中程度かつ一過性であった。これらの結果は、インターロイキン-1受容体-Fc融合タンパク質がヒトの治療に安全かつ有効であることを実証する。
表1
【表1-1】
表1続き
【表1-2】
表1続き
【表1-3】
表1続き
【表1-4】
表2
【表2-1】
【表2-2】
【表2-3】
【0175】
実施例3.再発性心膜炎を有する対象におけるインターロイキン-1 受容体-Fc融合タンパク質の長期有効性
再発性心膜炎を有する対象におけるリロナセプト治療の有効性および安全性を評価するために、非盲検の延長を伴う第III相の二重盲検プラセボ制御無作為化退薬試験を設計する。主要評価項目は、心膜炎の再発までの時間であり、各被験者の無作為化から最初の心膜炎の再発の日までの時間として定義される。CECにより確定された心膜炎の再発のみを、主要解析のための事象として考えるものとする。この試験の主要な解析は、最後(22番目)にCECにより確認された心膜炎の再発時に行い、RW期間中の全ての被験者は、24週間にわたって治療されている。心膜炎の再発を判定されなかった被験者は、データカットオフ前の最終有効評価日に打ち切られるものとする。
【0176】
疑いのある心膜炎の再発事象は全て、臨床評価項目委員会(CEC)によって正式に判定され、心膜炎の再発としてCECにより確定された事象のみが主要項目解析に使用される。以下のセクションに記載されるように、多数の他の評価項目を試験の様々な段階で解析する。この試験の概要を図4に図示する。
【0177】
試験に適格な被験者は、禁止された状態に続発する心膜炎を有さない、再発性心膜炎の被験者である。この試験集団は、(最初のエピソードと1回の再発とを含めて)少なくとも2回の事前の心膜炎エピソードの履歴を有する、≧18歳の成人被験者と≧12歳および<18歳の小児被験者との両方を含む。小児被験者の登録は、試験集団の最大20%に限定される。この試験に適格であるためには、被験者は、スクリーニング時に少なくとも3回目の心膜炎エピソードを呈していなければならず、このエピソードは、最初の治験薬投与前の7日以内に、11点数値評価尺度(NRS)における心膜炎の痛みの程度≧4とC反応性タンパク質(CRP)レベル≧1mg/dLとを伴う少なくとも1日として定義される。心膜炎の痛み≧4およびCRP≧1mg/dLは、同日に存在する必要はない。
【0178】
試験に含まれる被験者は、併用のNSAIDおよび/またはコルヒチンおよび/または経口CS治療を任意の組合せで受けていてもよい。但し、これらの薬物の投薬量は、治験薬の初回投与前の少なくとも3日間にわたって安定であり(増加されていない)、この期間内に行われる薬物の変更(例えば、NSAIDの1回使用)は、ベースラインの疾患活性度の評価を有意に変えることを、治験責任医師により予想されない。
【0179】
この試験には5つの期間がある:
【0180】
(1)スクリーニング期間であって、その間に、疾患の特徴の評価、ベースライン治療、および治療前の精密検査を完了する(最大4週間)。
【0181】
(2)単盲検導入(RI)期間(12週間)であって、その間に、盲検のリロナセプト(IL-1受容体-Fc融合タンパク質、IL1RFcFP)を、全ての被験者に週1回、SCで投与する。RI期間は以下を含む。
・1週間の安定化期間であって、その間に、盲検のリロナセプトを、標準治療(SOC)の心膜炎療法に加えて投与し、進行中の心膜炎エピソードを治療する。
・9週間の離脱期間であって、その間に、被験者をバックグラウンドのSOC心膜炎療法から離脱させる一方で、盲検のリロナセプトを用いた治療が継続する。コルチコステロイド(CS)、NSAID、およびコルヒチンの投薬量を、治験薬管理手順書の離脱プロトコールに従って漸減する(プロトコールを目的として、アスピリンをNSAIDであるものと考える)。概して、CS用量投与は、RI第1週に漸減を開始し、RI第10週までに休止する(計9週間にわたる)。NSAIDおよびコルヒチンの用量投与は、RI第4週に漸減を開始し、RI第10週までに休止する(計6週間にわたる)。
・2週間の単剤療法期間であって、その間に、バックグラウンドのSOC心膜炎治療を離脱することに成功した被験者は、盲検のリロナセプトを受け続ける。
【0182】
単盲検RI期間(被験者は単盲検から二重盲検期間への移行の時間に関して目隠しされる)では、≧18歳の成人被験者は、RIベースライン訪問時に初回負荷用量320mg(各160mgの2回のSC注射)としてリロナセプトを受け(2×2mL)、続いて、RI期間を通じて160mg(2mL)のSC用量投与を週1回受けるものとなる。小児対象(≧12歳および<18歳)は、RIベースライン訪問時に初回負荷用量のリロナセプト4.4mg/kg(各2.2mg/kgの2回のSC注射)を受け、次いでRI期間を通じて2.2mg/kg(最大2mL)のSCを週1回受ける。バックグラウンドの心膜炎薬を停止し、かつ臨床応答をRI第12週に達成した被験者は、二重盲検プラセボ制御無作為化離脱(RW)期間に進むが、この臨床応答は、RI第12週の無作為化日より前およびそれを含む7日以内の11点NRSでの毎日の心膜炎の痛みのスコアの週平均≦2.0と、RI第12週/RWベースライン訪問時のCRPレベル≦0.5mg/dLである。リロナセプト単剤療法のRI第12週で臨床応答を達成しない被験者は、治験薬を中断され、治験責任医師の裁量でSOC心膜炎療法に移行され、RW期間の終了まで追跡される。
【0183】
以下の副次的評価項目をこの期間に評価する:
・臨床応答を達成した被験者の割合。臨床応答は、無作為化に先立つ週の間の11点NRSでの毎日の心膜炎の痛みの週平均≦2.0と、RI第12週/RWベースライン訪問時のCRPレベル≦0.5mg/dLとして定義される。
・CRPの正常化までの時間(≦0.5mg/dL)
・RI第12週におけるCRPの正常化を伴う被験者の数(パーセント)
・RI第12週における心膜炎の痛みのベースラインからの変化
・RI第12週におけるCRPレベルのベースラインからの変化
・RI第12週におけるECHOおよびECGの異常の回復(あり/なし)
・無痛または最小限の痛みがある日数の割合
・PGIPSに基づく心膜炎症状が存在しないかまたは最小限である被験者の数(パーセンテージ)
・PGA-PAに基づく心膜炎の活性度が存在しないかまたは最小限である被験者の数(パーセンテージ)
・SF-36身体的要素スコアの経時変化
・SF-36精神的要素スコアの経時変化
・EQ-5D-5Lの変化
・ISIを用いて評価された被験者の睡眠の質の経時的変化
・ISI分類の経時変化
・RI第12週におけるバックグラウンドの心膜炎薬から離れた被験者の数(パーセンテージ)。
【0184】
(3)二重盲検プラセボ制御RW期間(心膜炎の再発事象駆動性の持続期間、最短24週間)。
主要な有効性評価項目は、各被験者の心膜炎の再発の時間であり、この段階で決定される。CECにより確定された心膜炎の再発のみを、主要解析のための事象として考える。
【0185】
RW期間の主要な副次性有効性評価項目には、以下が含まれる:
・RW期間の第24週に臨床応答を維持した被験者の割合
・RW期間の最初の24週間における無痛または最小限の痛みがある(11点NRSでの痛み≦1)日数のパーセンテージ
・RW期間の第24週における(PGIPSの7点評価尺度に基づき)心膜炎症状が存在しないかまたは最小限である対象の割合。
【0186】
RW期間の他の副次的評価項目には、以下が含まれる:
・RW期間の最初の24週間における心膜炎の再発のない被験者の割合
・NRS≧4までの時間
・CRPレベル≧1mg/dLまでの時間
・心膜摩擦音までの時間
・ECG上の広範囲でのSTセグメントの上昇またはPRセグメントの低下までの時間
・ECHO上の新しいかまたは悪化した心膜液貯留までの時間
・CRPレベルの経時変化
・心膜炎の痛みの被験者の評価の経時変化(週平均)
・PGA-PAに基づく心膜炎の活性度が存在しないかまたは最小限である被験者の数(パーセンテージ)
・SF-36身体的要素スコアの経時変化
・SF-36精神的要素スコアの経時変化
・EQ-5D-5Lの変化
・ISIを用いて評価された被験者の睡眠の質の経時変化
・ISI分類の経時変化
・RW期間における心膜炎の再発(鎮痛薬、NSAID、および/またはコルヒチン)に対しORT療法を受ける被験者の数(パーセンテージ)
【0187】
この段階の間に、バックグラウンドの心膜炎薬を停止することができ、かつRI第12週で臨床応答を達成する被験者は、二重盲検方式で1:1の比率で以下に無作為化される:
・リロナセプト160mg(小児被験者では2.2mg/kg)週1回SC注射
・競合のプラセボSC注射週1回
【0188】
被験者は、11点の心膜炎の痛みのNRSスコアリングに基づき、痛みに関連する心膜炎を報告する。感受性解析は、治験責任医師の事象の評価に基づいて行う。
【0189】
RW期間における有効性評価項目の治療比較のための全ての統計検定は、1片側α=0.025により設定された治療企図(ITT)解析に基づく。
【0190】
RW期間における心膜炎の再発
心膜炎の再発は、心膜炎を裏付ける客観的エビデンスに関連のある典型的な心膜炎の痛みの再発として定義される。心膜炎が再発すると、11点NRSでの心膜炎の痛みの程度≧4を伴う少なくとも1日を報告し、かつ≧1mg/dLのCRP値を1回(同じ日にまたは7日未満で区切るかのどちらかで)有する被験者は、無作為化治療の割り当てに関わらず、最後の治験薬の注射から少なくとも5日が過ぎたらすぐに、ベイルアウトされたリロナセプト(2回の非盲検のリロナセプト160mg[または小児被験者には4.4mg/kg]の注射の後、週1回の非盲検のリロナセプト160mg[または小児被験者には2.2mg/kg]のSC注射)を受ける。連続経口救急療法(ORT)、すなわち、まず鎮痛薬、次いでNSAID、次いでコルヒチンを、プロトコールおよび治験薬管理手順書に概説したように、治験責任医師の裁量で必要に応じて追加することができる。
【0191】
ベイルアウトされたリロナセプトのプロトコール基準を満たさない心膜炎の再発を有する被験者は、ベイルアウトされたリロナセプトのプロトコール基準が満たされるまで、またはRW期間の終了まで、盲検の治験薬を続ける。それらの対象については、プロトコールおよび治験薬管理手順書に概説したように、連続ORT を治験責任医師の裁量で盲検の治験薬に追加することができる。
【0192】
RW期間中の心膜炎の再発が疑われる事象は全て、臨床評価項目委員会(CEC)によって正式に判定され、CECにより心膜炎の再発として確定された事象のみが、主要評価項目解析に使用される。
【0193】
心膜炎の再発が疑われる被験者は、評価のため直ちに治験責任医師に連絡する必要がある。必要な評価は以下を含む:
・11点NRSでの心膜炎の痛みの評価。
・併用薬ならびに心膜炎併用薬の評価。
・CRP用の実験試料(現地および中央)を得る(Kiniksa Pharmaceuticalsにより提供されるPOCデバイスが、現地の実験室でのCRPの評価のために好適な方法である)。
・12誘導ECGの取得。
・コア実験室のイメージングパラメータによる心臓ECHOの取得;このECHOは、心膜炎の再発の評価を目的として現地で読み取ることができ、次いで、中央での再検討のためにECHOコア実験室に提出する必要がある。
・簡易式の理学的検査、身長および体重を実施する。
・≧18歳の被験者にSF-36、EQ-5D-5L、ISIを完了させる。
・被験者にPGIPSスコアを完了させる。
・治験責任医師はPGA-PAを完了する。
・PK、ADAおよびバイオマーカーに用いる中央実験室試料を得る。
・治験責任医師または委任施設担当者により必要であると考えられる他の手順。
【0194】
完了した評価に関して、治験責任医師は、被験者を心膜炎の再発事象を有しているものと考えた場合、PPDの医療モニタリング担当者に連絡して、全ての評価を実施し収集してきたことを確認するべきである。
【0195】
(4)長期延長治療期間(LF-TP)(24週間)であって、この間に、RW期間を完了している全ての被験者(心膜炎の再発時に非盲検のリロナセプトに移行した被験者を含む)は、LTEのインフォームドコンセントに署名した後、臨床状態に基づき、治験責任医師の裁量で、最大24週間の非盲検のリロナセプト160mg(または小児被験者には2.2mg/kg)のSC注射を週1回受ける選択肢を有する。治験責任医師の意見において非盲検のリロナセプトを続けるべきではないどの被験者も、治験薬から離れかつLTEのインフォームドコンセントに署名した後、LTEへの参加を提案される。
【0196】
この段階で評価される評価項目を以下に挙げる。各評価項目は、RW期間における心膜炎の再発を判定されるおよびされない被験者によりそれぞれ、および全体的に、第24週までまとめられる。
・心膜炎の再発を伴う被験者の数(パーセンテージ)
・臨床応答を伴う被験者の割合
・CRPレベルの経時変化
・心膜炎の痛みに関する対象の評価の経時的変化
・無痛または最小限の痛みがある日数のパーセンテージ
・PGIPS
・PGA-PA
・SF-36身体的要素スコアの経時変化
・SF-36精神的要素スコアの経時変化
・EQ-5D-5Lの変化
・ISIを用いて評価された被験者の睡眠の質の経時的変化
・ISI分類の経時変化
・SOC心膜炎療法の追加を必要とする被験者の数(パーセンテージ)。
【0197】
(5)長期延長フォローアップ期間(LF-FUP)(24週間)であって、その間に、LTE-TP中の全ての被験者が、安全性および心膜炎の再発の可能性についてLTE-FUP中に追跡される。
有効性および安全性の評価
【0198】
有効性評価は、対象の電子日記の11点NRSでの毎日の心膜炎の痛み、CRPレベル、心電図(ECG)、心エコー(ECHO)、心膜炎の重症度に関する患者の全般的な印象(PGIPS)、心膜炎の活性度に関する医師の全般的な評価(PGA-PA)、36項目の短形式健康調査(SF36)、5レベルEuroQoL-5D(EQ 5D 5L)、不眠症重症度指標(ISI)、心臓磁気共鳴画像法(およそ10名の被験者の下位試験内で)を含む。
【0199】
薬物動態または薬力学的評価は以下を含む:PK解析、抗リロナセプト抗体、バイオマーカー、および/または末梢血単核細胞の分離(薬理ゲノム評価のための別個のインフォームドコンセントに署名する被験者について)
【0200】
試験中の安全性評価は、理学的検査、バイタルサインの測定、有害事象(AE)のモニタリング、胸部X線、結核スクリーニングを含むものとする。
【0201】
全体的な1片側のタイプIエラー率を0.025レベルで制御するために、ホッホバーグ手順と組み合わせたゲートキーピング手順を適用して主要評価項目と主要有効性の副次的評価項目とを試験するものとする。
【0202】
均等物
当業者は、日常的な実験作業を越えない手法を使用して、本明細書に記載される本発明の特定の実施形態の多くの均等物を認識するか、または確認できるものとなる。本発明の範囲は、上記の記載に限定されることは意図されず、むしろ以下の特許請求の範囲に記述されるとおりである。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図1G
図1H
図1I
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図4
【配列表】
0007564270000001.app