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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】レンズユニットおよびカメラモジュール
(51)【国際特許分類】
   G02B 7/02 20210101AFI20241001BHJP
   G03B 30/00 20210101ALI20241001BHJP
【FI】
G02B7/02 D
G03B30/00
G02B7/02 A
G02B7/02 B
G02B7/02 H
G02B7/02 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023043719
(22)【出願日】2023-03-20
(62)【分割の表示】P 2018247018の分割
【原出願日】2018-12-28
(65)【公開番号】P2023068056
(43)【公開日】2023-05-16
【審査請求日】2023-03-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000005810
【氏名又は名称】マクセル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104547
【弁理士】
【氏名又は名称】栗林 三男
(74)【代理人】
【識別番号】100206612
【弁理士】
【氏名又は名称】新田 修博
(74)【代理人】
【識別番号】100209749
【弁理士】
【氏名又は名称】栗林 和輝
(72)【発明者】
【氏名】平田 弘之
【審査官】藏田 敦之
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-060098(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0187340(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2011-0062779(KR,A)
【文献】韓国登録特許第10-1414826(KR,B1)
【文献】韓国登録特許第10-1436529(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/02 - 7/16
G03B 9/00 - 9/07
G03B 11/00 -11/06
G03B 30/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鏡筒と、当該鏡筒の内周側に配置されるレンズと、前記鏡筒の内周側に配置される遮光板とを備えたレンズユニットであって、
前記鏡筒の内周側に前記遮光板が複数配置され、
複数の前記遮光板のうちの一部は第1の遮光板であり、
前記第1の遮光板は、外縁が前記遮光板の中心に対して同一半径で、かつ、周方向の長さが等しく、かつ周方向に同一間隔で配置された複数の円弧線と、周方向に隣り合う前記円弧線の端どうしを連結する複数の連結線とを備え、
前記連結線が前記円弧線と同心同径の仮想円の内側に配置され、
前記複数の円弧線と前記複数の連結線は同一平面内に配置され、
前記複数の連結線は、周方向に隣り合う前記円弧線の一端と他端を、前記一端から前記他端の方向に向かう直線あるいは曲線から構成されており、
複数の前記遮光板のうちの他の一部は外周縁が円形状の第2の遮光板であり、
前記第1の遮光板と前記第2の遮光板は外形形状により識別可能であることを特徴とするレンズユニット。
【請求項2】
前記第1の遮光板の前記複数の円弧線は周方向に同一間隔で配置された3以上、6以下の円弧線からなり、
前記円弧線の長さは、当該円弧線の両端と前記仮想円の中心を結ぶ線分間の角度が30度から50度になるように、設定されていることを特徴とする請求項1に記載のレンズユニット。
【請求項3】
前記連結線は、当該連結線の長さ方向の中央部側ほど、前記仮想円の中心側に寄っており、
前記連結線は、2つの直線によって構成され、2つの前記直線は、前記連結線の中央点と前記仮想円の中心とを通る線分に対して線対称に配置され、
前記直線と前記円弧線との接続部には曲率半径が付与され、前記直線どうしの接続部には曲率半径が付与されていることを特徴とする請求項1または2に記載のレンズユニット。
【請求項4】
前記連結線は、1つの直線、複数の直線、1つの曲線、複数の曲線または前記直線と前記曲線の組み合わせによって構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のレンズユニット。
【請求項5】
前記鏡筒の内周側に複数種の前記第1の遮光板が配置されていることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載のレンズユニット。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載のレンズユニットと、当該レンズユニットで結像された画像を撮像する撮像素子とを備えることを特徴とするカメラモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遮光板、レンズユニットおよびこのレンズユニットを備えるカメラモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車に車載カメラを搭載し、駐車をサポートしたり、画像認識により衝突防止を図ったりすることが行われており、さらに自動運転への応用が試みられている。このような車載カメラ等に用いられるレンズユニットの一例として、特許文献1に記載のものが知られている。このレンズユニットにおいては、4枚のレンズが、鏡筒に光軸方向をそれぞれ揃えて一列に並べられた状態に保持されている。また、レンズとレンズとの間に、絞り部材(遮光板)が備えられている。
遮光板は中央部に円形状の開口(内径孔)を備えた円環板状に形成されて、通過する光の範囲を制限するものであり、絞り部材を適切な位置に配置することでフレアやゴーストを適切に抑えることができ、レンズユニットの光学性能を向上させることができる。このため、レンズユニットの光学性能を向上させるためには、遮光板を適切な位置に配置することが重要となる。
【0003】
レンズとレンズとの間に配置された遮光板は、それぞれのレンズのレンズ機能を有する部分の外周部に設けられたフランジ部に挟まれることで、鏡筒の軸方向における位置が決まる。また、遮光板は、両面がレンズに当接するのではなく、一方の面がレンズのフランジ部に当接し、他方の面がレンズ以外の部材に当接することで、鏡筒の軸方向における位置決めがされることもある。
また、遮光板はその外周縁がレンズユニットの鏡筒の内周面に当接することによって鏡筒の径方向における位置が決まる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-233512号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述したような遮光板は、1品種のレンズユニットの鏡筒に複数枚設けられていることが多い。この場合、同一形状、同一大きさの一種類の遮光板が複数枚設けられることもあるが、形状、大きさ等が異なる複数種の遮光板が設けられることが多い。
従来の遮光板は外周縁が円形状といった単純形状であり、外径は殆ど等しく、内径孔の径が近ければ、複数種の遮光板の見分けが付き難いことから、鏡筒に複数種の遮光板を設ける際に、遮光板の種類を間違えたり、他の品種のレンズユニットの鏡筒に設けるべき遮光板が間違って混入するという問題を抱えていた。特に手組み作業では遮光板の種類を作業者の目視によって判別しなければならず、その対策が求められていた。
【0006】
また、従来の複数種の遮光板の外周縁にそれぞれ異なる形状や大きさの切欠きを設けることにより、複数種の遮光板を作業者の目視や画像処理によって見分けることは可能である一方、切欠きの存在によって遮光板の鏡筒径方向における位置決めを行い難くなるばかりか、近年ではバイブレーション式のパーツフィーダを用いて、遮光板をレンズユニットの組立ラインに供給することもあり、この場合、遮光板どうしがそれらの切欠きによって絡まって、互いに遮光板を傷付け、遮光性能に悪影響を及ぼす虞があった。遮光板は通過する光の範囲を制限するものであるから、上述したような傷が大きくなったり、切欠きが大きくなると、遮光板の外周部から光が抜けてゴースト・フレアの問題を引き起こしかねない。
【0007】
本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであり、レンズユニットの鏡筒に複数種の遮光板を間違いなく設けることができるとともに、鏡筒径方向(光軸と直交方向)の位置決めを確実に行え、外周部からの光の抜けを抑制できる遮光板、当該遮光板を備えたレンズユニットおよびこのレンズユニットを備えるカメラモジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明の遮光板は、レンズユニットに備えられる遮光板であって、
前記遮光板の外縁が、
前記遮光板の中心に対して同一半径で、かつ、周方向の長さが等しく、かつ周方向に同一間隔で配置された複数の円弧線と、
周方向に隣り合う前記円弧線の端どうしを連結する連結線とを備え、
前記連結線が前記円弧線と同心同径の仮想円の内側に配置されていることを特徴とする。
【0009】
本発明においては、遮光板の外縁が複数の円弧線と、周方向に隣り合う前記円弧線の端どうしを連結する連結線とを備えているので、円弧線および/または連結線の数、周方向の長さ、周方向の間隔を遮光板の種類ごとに変えることによって、複数種の遮光板を確実に見分けることができる。したがって、レンズユニットの鏡筒に複数種類の遮光板を間違いなく設けることができる。
また、遮光板の外縁は、遮光板の中心に対して同一半径で、かつ、周方向の長さが等しく、かつ周方向に同一間隔で配置された複数の円弧線を有しているので、これら円弧線で形成された外縁部分を鏡筒の内周面に当接させることによって、鏡筒径方向(光軸と直交方向)の位置決めを確実に行える。
さらに、遮光板の外縁は複数の円弧線と周方向に隣り合う円弧線の端どうしを連結する連結線とを備えているので、遮光板の外周縁に切欠きを設ける場合に比して、遮光板をレンズユニットの組立ラインに供給する際に、遮光板どうしが絡まり難くなって、互いに遮光板を傷付けたり、遮光性能に悪影響を及ぼすことが少ない。したがって、遮光板の外周縁に切欠きを設ける場合に比して、遮光板の外周部からの光の抜けを抑制できる。
【0010】
また、本発明の前記構成において、前記円弧線の数が3以上、6以下であってもよく、さらに、前記円弧線の数は5または6が好ましい。
【0011】
円弧線の数が2以下となると、円弧線の周方向の長さが長くなるにつれて、遮光板の外縁が従来の遮光板の外縁の円に近付き、7以上となっても遮光板の外縁が従来の遮光板の外縁の円に近付くため、複数種の遮光板を見分け難くなるからである。
したがって、円弧線の数を3以上、6以下とすることによって、複数種の遮光板を確実に見分けることができ、また、円弧線の数を5または6にすることによって、遮光板をレンズユニットの組立ラインに供給する際に、遮光板どうしが絡まり難くなるとともに、遮光板の外周部からの光の抜けをさらに抑制できる。
【0012】
また、本発明の前記構成において、前記連結線は、1つの直線、複数の直線、1つの曲線、複数の曲線または前記直線と前記曲線の組み合わせによって構成されていてもよい。
ここで、前記直線と曲線の組み合わせとは、1つの直線と1つの曲線の組み合わせ、1つの直線と複数の曲線の組み合わせ、複数の直線と1つの曲線の組み合わせ、および複数の直線と複数の曲線の組み合わせを含む。
【0013】
このような構成によれば、連結線の種類が多くなるため、鏡筒に多数種の遮光板を設ける場合に、多数種の遮光板を見分け易くなる。
【0014】
また、本発明の遮光板は、平板からのエッチング加工によって形成されていてもよいし、平板からの打ち抜きによって形成されていてもよい。
遮光板がエッチング加工によって形成されると、打ち抜きによって形成される場合に比して、遮光板の外縁を構成する複数の円弧線と、周方向に隣り合う円弧線の端どうしを連結する連結線とを容易かつ精度よく形成できる。
【0015】
本発明のレンズユニットは、鏡筒と、当該鏡筒の内周側に配置されるレンズと、前記鏡筒の内周側に配置される遮光板とを備え、前記鏡筒の内周側に前記遮光板が複数配置され、複数の前記遮光板のうちの一部は上述した遮光板であることを特徴とする。
【0016】
本発明においては、鏡筒の内周側に配置される複数の遮光板のうちの一部は上述した遮光板であるので、鏡筒の内周側に当該遮光板を間違いなく配置でき、また、残りは外周縁が円形状の従来の遮光板を配置できる。また、遮光板の円弧線で形成された外縁部分を鏡筒の内周面に当接させることによって、遮光板の鏡筒径方向(光軸と直交方向)の位置決めを確実に行える。さらに、遮光板の外周部からの光の抜けを抑制できる。
【0017】
また、本発明の他のレンズユニットは、鏡筒と、当該鏡筒の内周側に配置されるレンズと、前記鏡筒の内周側に配置される遮光板とを備え、前記鏡筒の内周側に複数種の上述した遮光板が配置されていることを特徴とする。
【0018】
本発明においては、鏡筒の内周側に複数種の上述した遮光板が配置されているので、鏡筒の内周側に複数種の遮光板を間違いなく配置できる。また、遮光板の円弧線で形成された外縁部分を鏡筒の内周面に当接させることによって、遮光板の鏡筒径方向(光軸と直交方向)の位置決めを確実に行える。さらに、遮光板の外周部からの光の抜けを抑制できる。
【0019】
本発明のカメラモジュールは、上述したレンズユニットと、当該レンズユニットで結像された画像を撮像する撮像素子とを備えることを特徴とする。
【0020】
本発明においては、前記レンズユニットと同様の作用効果を奏することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、レンズユニットの鏡筒に複数種の遮光板を間違いなく設けることができるとともに、鏡筒径方向(光軸と直交方向)の位置決めを確実に行え、外周部からの光の抜けを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明のレンズユニットの実施の形態を示すもので、その概略断面図である。
図2】同、レンズユニットの鏡筒に設けられる異形の遮光板を示す平面図である。
図3】同、レンズユニットの鏡筒に設けられる円形の遮光板を示す平面図である。
図4】同、図2における要部の拡大図である。
図5】同、異形の遮光板の変形を示すもので、(a)は連結線が直線の場合の遮光板の要部の平面図、(b)は連結線が曲線である場合の遮光板の要部の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明の実施の形態のレンズユニットを示す断面図である。
本実施の形態のレンズユニット10は、例えば、車載カメラ等に用いることができるが、車載カメラ用に限定されるものではなく、その他のカメラに用いることもできる。
また、レンズユニット10は、撮像素子、配線基板、信号処理回路、フレキシブル配線シートおよびコネクタ等とともに、カメラモジュールを構成する。なお、カメラモジュールとは、少なくともレンズユニットと撮像素子とを備えたものを言う。本実施の形態のカメラモジュールにおいては、レンズユニット10の結像側(レンズユニット10が像を結ぶ側)に図示しない撮像素子が配置され、レンズユニット10で結像される画像を撮影することが可能となっている。
【0024】
図1に示すように、本実施の形態のレンズユニット10は、円筒状の鏡筒11と、5つのレンズ12,13,14,15,16と、2つの遮光板(絞り部材)18,19と、3つのスペーサ20,21,22と、光学フィルタ23と、環状の押さえ部材24と、を備えている。
【0025】
鏡筒11は、結像側の端部である、一方の端部の内周側に、内径が小さくなるように内側に突出して形成された係止部11aを備えている。また、鏡筒11は、物体側の端部である、他方の端部の外周に雄ネジ部が形成されている。当該雄ネジ部は、押さえ部材24の内周に形成された雌ネジ部と螺合する形状となっており、当該雄ネジ部と当該雌ネジ部とが螺合することで、押さえ部材24が鏡筒11の物体側の端部に固定されている。また、押さえ部材24は、内径が小さくなるように内側に突出して形成された係止部24aを備えている。
【0026】
鏡筒11の内周側には、レンズ12、スペーサ20、遮光板18、レンズ13、スペーサ21、遮光板19、レンズ14、レンズ15、スペーサ22およびレンズ16が、物体側から結像側に向かって、この順に配置されている。また、隣接する各部材は互いに当接している。また、レンズ12の物体側の面の周縁部は、押さえ部材24の係止部24aに当接しており、レンズ16の結像側の面の周縁部は、係止部11aに当接している。換言すると、5つのレンズ12,13,14,15,16と、2つの遮光板18,19と、3つのスペーサ20,21,22とは、係止部24aと係止部11aとに挟まれた状態で配置されている。
また、鏡筒11の係止部11aの光軸方向外側には、光学フィルタ23が配置されている。
【0027】
5つのレンズ12,13,14,15,16は、それぞれの光軸を一致させた状態で鏡筒11の内周側に配置され、鏡筒11に固定され支持されている。すなわち、各レンズ12,13,14,15,16は、1つの光軸に沿って並べられた状態となっており、これにより撮像に用いられる1群のレンズ群25が構成されている。以下に単に光軸と記載した場合には、各レンズ12,13,14,15,16の光軸を示すとともにレンズ群25の光軸を示すものとする。
なお、レンズ群25のうち、物体側から1番目および2番目のレンズ12,13はガラスレンズ(ガラス製のレンズ)であり、3番目、4番目および5番目のレンズ14,15,16は樹脂レンズ(樹脂製のレンズ)である。また、各レンズ12,13,14,15,16は、ガラスレンズであっても、樹脂レンズであっても構わない。
【0028】
遮光板18,19は、それぞれオーステナイト系ステンレス鋼(SUS304等)等の金属により薄板状に形成されるとともに、黒染め処理が施されており、フレアやゴーストの抑制効果が高められている。
遮光板18は、図2に示すように、外縁が円形でなく異形の環状に形成され、径方向中央部に光を通過させるための内径孔18aを有している。
遮光板19は、図3に示すように、外周縁が円形の円環状に形成され、径方向中央部に光を通過させるための内径孔19aを有している。
内径孔18aは内径孔19aより若干直径が長くなっている。このため、遮光板18,19は内径孔18a,19aの直径の長さの違いによって見分けることは困難である。
また、遮光板18,19の外縁(外周縁)は双方とも鏡筒11の同一内周面に当接または近接しているため、遮光板18,19の双方の外周縁を円形とすると、遮光板18,19の見分けることは困難となる。
【0029】
このため本実施の形態では、遮光板18の外縁が円形ではなく以下のような異形に形成されている。
すなわち、図2に示すように、遮光板18の平面視(軸方向視)における外縁31は、遮光板18の中心Oに対して同一半径rで、かつ、周方向の長さが等しく、かつ周方向に同一間隔で配置された6つの円弧線32と、周方向に隣り合う円弧線32,32の端32a,32aどうしを連結する連結線33とを備えている。円弧線32の半径rは、図2に示す遮光板19の半径rと等しくなっている。
【0030】
6つの円弧線32は、周方向に60°おきに配置され、同様に6つの連結線33も周方向に60°おきに配置されている。したがって、遮光板18はその中心Oの回りに点対称となっている。
また、円弧線32の周方向の長さは、当該円弧線32の両端32a,32aと中心Oを結ぶ線分間の角度が30度から50度、好ましくは35度から48度になるように設定されている。50度を超えると円弧線32が短く径方向の位置決めに支障になるからであり、30度未満では外周が円形の遮光板19と見分けが困難となるからである。
【0031】
本実施の形態では、円弧線32の数が6であるが、円弧線の数は3以上、6以下であることが好ましい。
円弧線32の数が2以下となると、円弧線32の周方向の長さが長くなるにつれて、遮光板18の外縁31が従来の遮光板、例えば図2に示すような遮光板19の外縁の円に近付き、7以上となっても遮光板31の外縁が従来の遮光板、例えば図2に示すような遮光板19の外縁の円に近付くため、複数種の遮光板18,19を見分け難くなるからである。
【0032】
また、遮光板18の外径、つまり、径方向に対向する円弧線32,32間の、径方向の距離(2r)は、鏡筒11の内径と略一致しており、遮光板18の外周面は、鏡筒11の内周面11bと近接または当接した状態となっている。換言すると、遮光板18の外周面と鏡筒11の内周面11bとの間には、他の部材が挟まれておらず、また、ごくわずかな隙間しか設けられておらず、遮光板は、鏡筒11内に嵌入された状態となっている。そして、これにより、遮光板18は、光軸に直交する方向(鏡筒11の径方向)における位置決めがされている。
【0033】
図2に示すように、6つの連結線33は全て円弧線32と同心同径の仮想円40の内側に配置されており、各連結線33はその長さの中央部側ほど仮想円40の中心O側に寄っている。
図4に示すように、連結線33は2つの直線33a,33aによって構成されている。2つの直線33a,33aは、連結線33の中央点33dと仮想円40の中心とを通る線分Lに対して線対称に配置されている。
また、直線33aと円弧線32との接続部には所定の曲率半径のRが付与され、直線33a,33aどうしの接続部にも所定の曲率半径のRが付与されている。
また、連結線33は上記に限ることはない。例えば、図4(a)に示すように、連結線33を1つの直線33aによって構成してもよい。この場合、直線33aとその両側の円弧線32との接続部には所定の曲率半径のRが付与されている。また、図4(b)に示すように、連結線33を1つの曲線33bによって構成してもよい。この場合も曲線33bとその両側の円弧線32との接続部には所定の曲率半径のRが付与されている。
【0034】
さらに、図示は省略するが、連結線を複数の直線、複数の曲線、または直線と曲線の組み合わせによって構成してもよい。なお、直線と曲線の組み合わせとは、1つの直線と1つの曲線の組み合わせ、1つの直線と複数の曲線の組み合わせ、複数の直線と1つの曲線の組み合わせ、および複数の直線と複数の曲線の組み合わせを含む。
このように連結線を構成する場合、直線どうしの接続部、曲線どうしの接続部、直線と曲線との接続部には所定の曲率半径のRを付与するのが好ましい。
また、遮光板の周方向に等しい間隔で配置される各連結線は、全て等しい形状であってもよいし、一部が異なる形状であってもよいし、さらに全てが異なる形状であってもよい。
【0035】
遮光板18は、エッチング加工により成形される。なお、本実施の形態の遮光板18は、ウェットエッチングを利用して成形されている。
遮光板18は、当該遮光板18のもととなる、中心部に孔が設けられた両面が平坦なドーナツ板状(平板状)の金属板の両面をエッチングすることで作られる。具体的には、当該金属板の外周側のうち、上述した外縁31より外側部分をエッチングすることにより、遮光板18が形成される。
【0036】
エッチング加工により遮光板18を成形することで、遮光板18の板厚や、遮光板18の外縁31を構成する複数の円弧線32と、周方向に隣り合う円弧線32,32の端32a,32aどうしを連結する連結線33とを容易かつ、マイクロメートル単位で精度よく形成できる。
また、エッチング加工によれば、加工の際に、遮光板18の表面の粗さをある程度自由に設定することが可能となる。そして、表面の粗さを調整することで遮光板18の表面の反射率を下げることができる。
また、エッチング加工では複数の遮光板18をブリッジで連結して一度にエッチング加工を施す。
ブリッジは遮光板18の形状に影響のない小さな連結部で最終的にはこの部分を切断して一つの製品に分離される。ブリッジを設ける位置は連結線33の中心が好ましく、一つの遮光板18で2から3箇所設けることが好ましい。
なお、遮光板18は、エッチング加工によらず、打ち抜きによって形成してもよい。
【0037】
このような遮光板18と、外周縁が円形の遮光板19を備えたレンズユニットでは、図1に示すように、鏡筒11の内周側に複数(2枚)の遮光板18,19が配置されている。つまり、2枚の遮光板18,19のうち、一部の遮光板18は上述したように外縁が異形に形成されている。
【0038】
したがって、本実施の形態によれば、遮光板18が異形となっている、つまり遮光板18の外縁31が複数の円弧線32と、周方向に隣り合う円弧線32,32の端32a,32aどうしを連結する連結線33とを備えている一方、遮光板19は外周縁が円形に形成されているので、2種類の遮光板18,19を容易かつ確実に見分けることができる。したがって、レンズユニットの鏡筒11に複数種類の遮光板18,19を間違いなく設けることができる。
【0039】
また、遮光板18の外縁31は、遮光板18の中心Oに対して同一半径rで、かつ、周方向の長さが等しく、かつ周方向に同一間隔で配置された複数(6つ)の円弧線32を有しているので、これら円弧線32で形成された外縁部分を鏡筒11の内周面11bに当接させることによって、鏡筒径方向(光軸と直交方向)の位置決めを確実に行える。
さらに、遮光板18の外縁31は複数の円弧線32と周方向に隣り合う円弧線32,32の端32a,32aどうしを連結する連結線33とを備えているので、遮光板の外周縁に比較的大きな切欠きを設ける場合に比して、遮光板18をレンズユニット10の組立ラインに供給する際に、遮光板18どうしが絡まり難くなって、互いに遮光板18を傷付けたり、遮光性能に悪影響を及ぼすことが少ない。したがって、遮光板の外周縁に比較的大きな切欠きを設ける場合に比して、遮光板18の外周部からの光の抜けを抑制できる。
【0040】
なお、本実施の形態では、鏡筒11に2つの遮光板18,19を設ける場合を例にとって説明したが、本発明ではこれに限ることはない。例えば、鏡筒11に前記遮光板18,19に加えて、または代えて、他の複数または複数種の遮光板を設けてもよい。この場合、上述したような異形の遮光板と、円形の遮光板とを併用して鏡筒11に設けてもよいし、複数種の異形の遮光板を鏡筒11に設けてもよい。
複数種の異形の遮光板を鏡筒11に設ける場合、円弧線の数、円弧線の周方向の長さ、連結線の数、連結線の長さ、連結線を構成する直線および/または曲線の数、形状等を適宜、遮光板間で見分けがつくように変更すればよい。
【符号の説明】
【0041】
10 レンズユニット
11 鏡筒
11b 内周面(鏡筒の内周面)
12,13,14,16 レンズ
18 遮光板
31 外縁
32 円弧線
32a 円弧線の端
33 連結線
40 仮想円
図1
図2
図3
図4
図5