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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】内部バルーンシース
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/06 20060101AFI20241001BHJP
   A61M 25/10 20130101ALI20241001BHJP
   A61M 39/06 20060101ALI20241001BHJP
【FI】
A61M25/06 556
A61M25/10
A61M39/06 110
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2023075918
(22)【出願日】2023-05-02
(62)【分割の表示】P 2021543362の分割
【原出願日】2020-01-28
(65)【公開番号】P2023099160
(43)【公開日】2023-07-11
【審査請求日】2023-05-30
(31)【優先権主張番号】62/797,527
(32)【優先日】2019-01-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510121444
【氏名又は名称】アビオメド インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ファントゥッツィ グレン アール.
【審査官】上石 大
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-104179(JP,A)
【文献】米国特許第05403274(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0276611(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0197063(US,A1)
【文献】米国特許第05792118(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/06
A61M 25/10
A61M 39/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
近位端と、遠位端と、外面と、カテーテルデバイスが通過するための管腔を前記近位端と前記遠位端との間で画定する内面とを有する、管状シースボディ、および、
膨張可能バルーンを有するバルーンスリーブ
を具備する、イントロデューサシースアセンブリであって、
前記膨張可能バルーンの膨張時に、前記膨張可能バルーンが前記管状シースボディの内面と前記カテーテルデバイスとの間に流体密封を形成するように、前記バルーンスリーブは、前記管状シースボディの管腔への挿入のために、前記カテーテルデバイスの一部分を囲み、前記一部分上でスライドするように構成され、
前記流体密封は、前記管状シースボディと前記カテーテルデバイスとの間の流体の流れが防がれる領域を形成するように構成される、
前記イントロデューサシースアセンブリ。
【請求項2】
前記バルーンは、膨張時に、前記カテーテルデバイスと前記管状シースボディの内面との間で締まりばめを形成することにより、前記管状シースボディに対する前記カテーテルデバイスの軸方向の動きを防ぐように構成されている、請求項1記載のイントロデューサシースアセンブリ。
【請求項3】
前記膨張可能バルーンの長さは、前記バルーンスリーブが前記管状シースボディの管腔に挿入され、かつ、前記膨張可能バルーンの遠位端が前記管状シースボディの遠位端とアライメントされるとき、前記膨張可能バルーンの近位端が前記管状シースボディの近位端とアライメントされるように構成されている、請求項1記載のイントロデューサシースアセンブリ。
【請求項4】
前記バルーンスリーブの近位端は、前記バルーンスリーブが前記管状シースボディの管腔に挿入され、かつ、前記膨張可能バルーンの遠位端が前記管状シースボディの遠位端とアライメントされるとき、前記管状シースボディの近位端の近位にとどまるように構成されている、請求項1記載のイントロデューサシースアセンブリ。
【請求項5】
前記バルーンスリーブは、前記バルーンスリーブの近位端から前記膨張可能バルーン内に位置する膨張用開口部まで直線状または曲線状に延在する膨張用管腔を具備し、前記膨張用管腔は、前記膨張用開口部と流体連絡している、請求項1記載のイントロデューサシースアセンブリ。
【請求項6】
前記バルーンは、膨張時に前記バルーンスリーブの縦軸に対して放射対称である、請求項1記載のイントロデューサシースアセンブリ。
【請求項7】
前記バルーンは、膨張時にリング形状である、請求項1記載のイントロデューサシースアセンブリ。
【請求項8】
前記バルーンは、膨張時に前記カテーテルデバイス上に放射方向の力を印加することにより、前記カテーテルデバイスを前記管状シースボディに対するポジションにロックするように構成されている、請求項1記載のイントロデューサシースアセンブリ。
【請求項9】
前記バルーンは、膨張時に前記バルーンスリーブの縦軸に対して非対称である、請求項1記載のイントロデューサシースアセンブリ。
【請求項10】
前記バルーンは、膨張時に前記カテーテルデバイスを前記管状シースボディの内面の一部分に向かって押すように前記カテーテルデバイス上に力を及ぼすことにより、前記カテーテルデバイスを前記管状シースボディに対するポジションにロックするように構成されている、請求項9記載のイントロデューサシースアセンブリ。
【請求項11】
前記管状シースボディの遠位端は、前記管状シースボディの残りの部分の材料よりも柔らかい弾性材料を含む、請求項1記載のイントロデューサシースアセンブリ。
【請求項12】
前記バルーンスリーブは、前記バルーンスリーブの近位端にハブを具備する、請求項1記載のイントロデューサシースアセンブリ。
【請求項13】
前記ハブは止血弁を具備する、請求項12記載のイントロデューサシースアセンブリ。
【請求項14】
前記ハブは、前記カテーテルデバイスと前記バルーンスリーブの内面との間の空間と流体連絡するように構成されることにより前記バルーンの膨張前に前記空間を流体でフラッシングすることを可能にする、灌注用ポートを具備する、請求項13記載のイントロデューサシースアセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、参照によりその全内容が本明細書に組み入れられる、2019年1月28日に提出された米国特許仮出願第62/797,527号による恩典を、35 U.S.C. § 119(e)の下に主張する。
【背景技術】
【0002】
背景
脈管内医療デバイスは、非限定的に、Impella(登録商標)ポンプ、体外膜型酸素化(ECMO)ポンプ、およびバルーンポンプを具備しうる。Impella(登録商標)ポンプはさらに、いずれもDanvers, MAのAbiomed, Inc.による、Impella 2.5(登録商標)ポンプ、Impella 5.0(登録商標)ポンプ、Impella CP(登録商標)ポンプ、およびImpella LD(登録商標)ポンプを具備しうる。大多数の脈管内医療デバイスは、ポンプヘッドなどの稼動ユニットをカテーテルの遠位端に有するカテーテルデバイスである。そうした稼動ユニットは、それらを支持するカテーテルボディと比較して、より大きい直径を有する。これらのデバイスは、稼動される前に患者の動脈切開部内の望ましい位置にポジショニングするため、イントロデューサシースを必要とすることが多い。イントロデューサシースは通常、ポンプヘッドが損傷されることなくシースを容易に通り抜けることができるように寸法決定される;すなわち、イントロデューサシースの内径はポンプヘッドの外径より大きいことが多い。
【0003】
イントロデューサシースの内径とカテーテルボディの外径とに差があることによって、ポンプヘッドがイントロデューサシースの遠位端から配置された後に、イントロデューサシースとカテーテルボディとの間に空間が生じる。このことは、イントロデューサシースとカテーテルボディとの間の空間内でシース内に血液が進入および停滞することにつながり、それは最終的に凝血につながる。シースと脈管内医療デバイスとの間で血餅が形成されると複数の課題が生じうる。シースの遠位先端で血餅が形成されると、それが偶然に離れて自由になり、下流を塞栓させる可能性がある(例えば遠位の肢に入り込む、右心および肺に到達する、など)。これら臨床シナリオの発生率は、数時間より長い時間にわたってデバイスおよびシースを所定の位置に残すことが手技において必要とされる場合、または抗凝固が制限された場合に、増大する。
【0004】
現在のところ、イントロデューサシースの内面と脈管内医療デバイスのカテーテルの外面との間に空間がある場合、医師は、生理食塩水またはヘパリン化生理食塩水の連続フローが、多くの場合は例えば3 cc/hrの流量で、その空間を通ってフラッシングするようにセットアップする。典型的にはこれによって血餅の形成が防がれるが、追加的なセットアップおよび患者への流体送達が必要であり、臨床的合併症につながる管理ミスのリスクも伴う。イントロデューサシースなどは長期使用用ではないと想定されているゆえに、この課題はシース製造業者による対処がなされていない。いくつかのケースにおいて、シース製造業者は、好適な技術的解決を見いだせていないか、臨床上の課題に気づいていないか、または脈管内デバイスの製造業者によって問題が解決されるべきだと考えている。
【0005】
加えて、大動脈弁をまたいで左心室内に座する脈管内医療デバイスは、ポジショニングの点について非常に感受性が高い可能性がある。例えば、デバイスが心臓内に入りすぎるかまたは心臓から出すぎていると、血行力学的支持が損なわれて患者の害につながる可能性がある。イントロデューサシースを、それに通された脈管内医療デバイスとともに長期的に使用すると、患者が動いた際にデバイスが最初のポジションからずれてしまうリスクがある。現在のところ、医師は、ハブのシースの近位端を連結することによって、または、デバイスの遠位端を患者の体外に(例えばテープを用いて患者の皮膚に)直接固定することによって、患者に対する脈管内医療デバイスのポジションを固定することを試みている。これは、かさばる可能性がある追加的な幾何学形状またはデザインを必要とすることが多い。いくつかのシナリオにおいて、これがユーザーによって忘れられて、取り付けが後に外れてしまう可能性もある。
【発明の概要】
【0006】
概要
上述したような技術的現状のさまざまな問題点および欠点に対処するためのアプローチを本明細書に開示する。より具体的には、内部バルーン付きシースを用いて患者の動脈切開部にカテーテルデバイスを送達するためのデバイスを本明細書に開示する。1つの態様において、シースは、縦軸と、開口近位端と、開口遠位端と、外面と、カテーテルデバイスが通過するための管腔を近位端と遠位端との間で画定する内面とを有する管状シースボディを具備する。シースはまた、カテーテルデバイスがシース内に配されバルーンが膨張した時にシースボディの内面とカテーテルデバイスとの間で管腔内の縦方向の空間を占有するよう、かつ、管腔を流体的に密封するよう構成されている、膨張可能バルーンも具備する。
【0007】
いくつかの実施形態において、バルーンは膨張時にカテーテルデバイスとシースボディの内面との間で締まりばめを形成してもよい。ある一定の実施形態において、バルーンは少なくともシースボディの遠位端にポジショニングされてもよい。他の実施形態において、バルーンはシースボディの全長に沿ってポジショニングされてもよい。さらなる実施形態において、バルーンはシースボディの内面に取り付けられてもよい。いくつかの実施形態において、バルーンは少なくともシースボディの内面の遠位端に取り付けられてもよい。ある一定の実施形態において、バルーンはシースボディの内面の全長に沿って取り付けられてもよい。他の実施形態において、バルーンはシースボディの円周の少なくとも一部分に沿って取り付けられてもよい。さらなる実施形態において、バルーンは、シースボディの以下の部分、すなわちシースボディの内周の約25%、約50%、約75%、約100%、の少なくともいずれかに沿って取り付けられてもよい。
【0008】
いくつかの実施形態において、シースボディの内面は、シースボディの内面へのバルーンの取り付けを向上させるために前処理されてもよい。ある一定の実施形態において、バルーンは、熱結合または溶剤結合を介してシースボディの内面に取り付けられてもよい。他の実施形態において、シースボディの内面は、プラズマ活性化およびコロナ処理のいずれか1つを介して前処理されてもよい。さらなる実施形態において、バルーンは、シースボディの遠位端の内面上に位置する膨張用開口部を介して膨張されてもよい。いくつかの実施形態において、シースボディは、シースボディの近位端から膨張用開口部まで延在する膨張用管腔を具備してもよい。ある一定の実施形態において、膨張用管腔は膨張用開口部と流体連絡していてもよい。膨張用管腔はシースボディの長さに沿って直線状または曲線状に延在してもよい。
【0009】
いくつかの実施形態において、シースは、膨張可能バルーンがその上に取り付けられるバルーンスリーブをさらに具備してもよい;同スリーブはカテーテルデバイスとインラインにアライメントされ、かつ、シースボディの管腔を通り抜けるよう構成される。バルーンスリーブの近位端は、カテーテルデバイスとともに密封する止血弁を具備してもよい。ある一定の実施形態において、バルーンスリーブは、膨張のためバルーンと流体連絡した膨張用管腔を具備してもよい。他の実施形態において、バルーンスリーブの近位端は、膨張のため膨張用管腔と流体連絡した膨張用ポートを具備してもよい。さらなる実施形態において、シースボディの近位端は、膨張のためバルーンと流体連絡した膨張用ポートに連結されてもよい。いくつかの実施形態において、膨張用管腔は、バルーンを膨張させるためシースボディの近位端で定容積シリンジと連絡していてもよい。ある一定の実施形態において、バルーンは膨張用ポートを介して、水、生理食塩水、および空気のいずれか1つで膨張されてもよい。
【0010】
いくつかの実施形態において、バルーンはカテーテルデバイスとインラインにポジショニングされてもよい。他の実施形態において、バルーンはシースボディの縦軸に対して放射対称であってもよい。さらなる実施形態において、バルーンは、それを通じてカテーテルデバイスが通り抜ける、リング形状であってもよい。ある一定の実施形態において、バルーンは膨張時に、カテーテルデバイス上に放射方向の力を印加してもよく、それによってカテーテルデバイスを所定のポジションにロックする。いくつかの実施形態において、バルーンはシースボディの縦軸に対して非対称であってもよい。バルーンは、膨張時にカテーテルデバイスをシースボディの内面の一部分に向かって押すようにカテーテルデバイス上に力を及ぼしてもよく、それによってカテーテルデバイスを所定のポジションにロックする。
【0011】
ある一定の実施形態において、シースボディは、縦軸の周りで互いに同軸上にアレンジされた複数のポリマー層の積層を具備してもよい。他の実施形態において、シースボディは、シースボディの近位端から遠位端まで連続的にアレンジされた複数の管状ポリマー層部分の組み合わせを含んでもよい。各ポリマー層は異なるポリマー材料タイプを含んでもよい。いくつかの実施形態において、ポリマー材料タイプは、PEBAX(登録商標)7233SA、PEBAX(登録商標)7033SA、PEBAX(登録商標)6333SA、PEBAX(登録商標)5533SA、PEBAX(登録商標)3533SA、およびPEBAX(登録商標)2533SAのいずれか1つを含んでもよい。
【0012】
さらなる実施形態において、シースボディは、キンクを防ぐための補強構造を具備してもよい。他の実施形態において、補強構造は、組紐、コイル、およびレーザー加工フィーチャの、いずれか1つを含んでもよい。いくつかの実施形態において、バルーンは、ウレタン、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレン、架橋ポリエチレン、ポリエーテルブロックアミド(PEBA)、およびナイロンのいずれか1つから作製されてもよい。ある一定の実施形態において、シースボディは、ポリエーテルブロックアミド(PEBAX(登録商標)またはPebaSlix(登録商標)など)、ポリエチレン材料、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)材料、高密度ポリエチレン(HDPE)材料、中密度ポリエチレン(MDPE)材料、および低密度ポリエチレン(LDPE)材料のいずれか1つから作製されてもよい。他の実施形態において、シースボディの遠位端は、シースボディの残りの部分に用いられるものよりも柔らかい弾性材料から作製されてもよい。
【0013】
さらなる実施形態において、シースボディの遠位端は、カテーテルデバイス上に密封をもたらすようなより小さな直径を含んでもよい。いくつかの実施形態において、バルーンスリーブは、ウレタン、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレン、架橋ポリエチレン、ポリエーテルブロックアミド(PEBA)、およびナイロンのいずれか1つから作製されてもよい。
【0014】
ある一定の実施形態において、バルーンはコンプライアント(compliant)であってもよく、そして脱膨張時にシースボディの内面に対して面一に保たれてもよい。他の実施形態において、バルーンは非コンプライアントであってもよく、そして脱膨張時にシースボディの内面に対して面一に保たれなくてもよい。さらなる実施形態において、バルーンは親水性コーティングまたは疎水性コーティングのいずれかでコーティングされてもよい。コーティングは、バルーンの適切な膨張特性を確実にする厚さであってもよい。いくつかの実施形態において、シースボディはバルーンの膨張時に変形してもよく、それによって患者の動脈切開部内でシースのポジションを固定する。
【0015】
いくつかの実施形態において、患者の動脈切開部内にポジショニングされる際にシースを操作するためのハブに、シースの近位端が連結されてもよい。ある一定の実施形態において、ハブは流体用管腔と流体連絡した膨張用サイドポートを具備してもよく、それによってバルーン膨張用流体の供給源の取り付けを可能にする。他の実施形態において、ハブは、カテーテルデバイスとシースボディの内面との間の空間と流体連絡した灌注用ポートを具備してもよく、それによってバルーンの膨張前にその空間を流体でフラッシングすることを可能にする。
【0016】
別の態様においてシースキットが提供される。シースキットは、シースと、シースに連結された膨張用デバイスとを具備する。シースは、縦軸と、開口近位端と、開口遠位端と、外面と、カテーテルデバイスが通過するための管腔を近位端と遠位端との間で画定する内面とを有する管状シースボディを具備する。シースはまた、カテーテルデバイスがシース内に配されバルーンが膨張した時にシースボディの内面とカテーテルデバイスとの間で管腔内の縦方向の空間を占有するよう、かつ、管腔を流体的に密封するよう構成されている、膨張可能バルーンも具備する。膨張用デバイスは、膨張可能バルーン用の流体で満たされた定容積シリンジを、流体とともに具備する。
【0017】
さらに別の態様において、内部バルーン付きシースを作製する方法が提供される。同方法は、縦軸と、開口近位端と、開口遠位端と、外面と、カテーテルデバイスが通過するための管腔を近位端と遠位端との間で画定する内面とを有する管状シースボディを提供する段階を含む。同方法は次に、管腔内にポジショニングされた膨張可能バルーンを提供する段階であって、バルーンが、膨張された時にシースボディの内面とカテーテルデバイスとの間で管腔内の空間を占有し、それによって管腔を流体的に密封するよう構成されている、段階を含む。
【0018】
いくつかの実施形態において、同方法は、膨張可能バルーンをシースボディの内面の少なくとも一部分に取り付ける段階をさらに含んでもよい。ある一定の実施形態において、同方法は、バルーンとシースボディの内面との間の接着を向上させるためにシースボディの内面を前処理する段階を含んでもよい。他の実施形態において、前処理はプラズマ活性化およびコロナ処理のいずれか1つを含んでもよい。さらなる実施形態において、同方法は、シースボディの管腔内に挿入するためのバルーンスリーブを提供する段階であって、スリーブが、カテーテルデバイスとインラインにアライメントされている、段階;および、膨張可能バルーンをスリーブの少なくとも一部分に取り付ける段階を含んでもよい。いくつかの実施形態において、バルーンの取り付けは熱結合または溶剤結合を介して行われる。
【0019】
さらなる実施形態において、同方法は、(i)親水性コーティングまたは疎水性コーティングのいずれかでバルーンの表面をコーティングする段階;(ii)バルーンの特定の膨張特性を実現するため既定のコーティング厚さまでバルーンの表面をコーティングする段階;および、(iii)カテーテル式医療デバイスをコーティングする段階の少なくとも1つを追加的に含んでもよい。いくつかの実施形態において、同方法は、シースボディの近位端をハブに連結する段階をさらに含んでもよい。
【0020】
さらなる態様において、患者をカテーテルデバイスで処置するために内部バルーン付きシースを用いる方法が提供される。同方法は、シースを患者の動脈切開部内にポジショニングする段階を含む。同方法は次に、カテーテルデバイスの遠位端を患者の動脈切開部内にポジショニングするためカテーテルデバイスを管腔内に挿入する段階を含む。次に同方法は、空間を灌注用流体でフラッシングする段階、および、管腔を流体的に密封するようにバルーンを膨張用流体で膨張させる段階を含む。
【0021】
いくつかの実施形態において、同方法は、膨張可能バルーンがその上に取り付けられたバルーンスリーブを管腔内に挿入する段階であって、スリーブがカテーテルデバイスとインラインにアライメントされている、段階を含んでもよい。
【0022】
別の態様において、患者をカテーテルデバイスで処置するため、内部バルーン付きシースを用いる方法が提供される。同方法は、それを通って走行する管腔を有するシースを、患者の動脈切開部内に挿入する段階を含む。同方法はまた、カテーテル式デバイスを管腔内に挿入する段階も含む。同方法は次に、管腔を流体的に密封するように、シースとカテーテル式デバイスとの間の管腔内でバルーンを膨張させる段階を含む。
【0023】
いくつかの実施形態において、同方法は、バルーンを膨張させる前に管腔をフラッシングする段階を含んでもよい。ある一定の実施形態において、シースを挿入する段階は、シースを患者の動脈切開部内にポジショニングするためシースの管腔内に拡張器を挿入する段階を含んでもよい。いくつかの実施形態において、バルーンはシースに取り付けられてもよい。他の実施形態において、同方法は、バルーンがその上に取り付けられるバルーンスリーブを、バルーンを膨張させる前に、シースとカテーテル式デバイスとの間でシースの管腔内に挿入する段階をさらに含んでもよい。さらなる実施形態において、バルーンスリーブは、カテーテル式デバイスの周りでタイトに同軸上にアレンジされてもよい。
[本発明1001]
縦軸と、開口近位端と、開口遠位端と、外面と、カテーテルデバイスが通過するための管腔を該近位端と該遠位端との間で画定する内面とを有する、管状シースボディ;および
該管腔内に配された膨張可能バルーンであって、
該カテーテルデバイスが該シース内に配され該バルーンが膨張した時に該シースボディの該内面と該カテーテルデバイスとの間で該管腔内の縦方向の空間を占有するよう、かつ
該管腔を流体的に密封するよう
構成されている、膨張可能バルーンと
を具備する、患者の動脈切開部を通してカテーテルデバイスを送達するためのシース。
[本発明1002]
バルーンが膨張時に、カテーテルデバイスとシースボディの内面との間で締まりばめを形成する、前記本発明のいずれかのシース。
[本発明1003]
バルーンが少なくともシースボディの遠位端にポジショニングされる、前記本発明のいずれかのシース。
[本発明1004]
バルーンがシースボディの全長に沿ってポジショニングされる、前記本発明のいずれかのシース。
[本発明1005]
バルーンがシースボディの内面に取り付けられる、前記本発明のいずれかのシース。
[本発明1006]
バルーンが少なくともシースボディの内面の遠位端に取り付けられる、本発明1005のシース。
[本発明1007]
バルーンがシースボディの内面の全長に沿って取り付けられる、本発明1004のシース。
[本発明1008]
バルーンがシースボディの円周の少なくとも一部分に沿って取り付けられる、本発明1005~1007のいずれかのシース。
[本発明1009]
バルーンが、シースボディの以下の部分、すなわち、シースボディの内周の約25%、約50%、約75%、約100%の少なくともいずれか、に沿って取り付けられる、本発明1005~1008のいずれかのシース。
[本発明1010]
シースボディの内面へのバルーンの取り付けを向上させるために該シースボディの該内面が前処理される、本発明1005~1009のいずれかのシース。
[本発明1011]
バルーンが熱結合または溶剤結合を介してシースボディの内面に取り付けられる、本発明1005~1010のいずれかのシース。
[本発明1012]
シースボディの内面が、プラズマ活性化およびコロナ処理のいずれか1つを介して前処理される、本発明1010のシース。
[本発明1013]
バルーンが、シースボディの遠位端の内面上に位置する膨張用開口部を介して膨張される、前記本発明のいずれかのシース。
[本発明1014]
シースボディが、該シースボディの近位端から膨張用開口部まで延在する膨張用管腔を具備する、本発明1013のシース。
[本発明1015]
膨張用管腔が膨張用開口部と流体連絡している、本発明1014のシース。
[本発明1016]
膨張用管腔がシースボディの長さに沿って直線状または曲線状に延在する、本発明1014~1022のいずれかのシース。
[本発明1017]
膨張可能バルーンがその上に取り付けられるバルーンスリーブであって、該スリーブが、カテーテルデバイスとインラインにアライメントされ、かつ、シースボディの管腔を通り抜けるよう構成されている、バルーンスリーブ
をさらに具備する、本発明1001~1004のいずれかのシース。
[本発明1018]
バルーンスリーブの近位端が、カテーテルデバイスとともに密封する止血弁を具備する、本発明1017のシース。
[本発明1019]
バルーンスリーブが、膨張のためバルーンと流体連絡した膨張用管腔を具備する、本発明1017~1018のいずれかのシース。
[本発明1020]
バルーンスリーブの近位端が、膨張のため膨張用管腔と流体連絡した膨張用ポートを具備する、本発明1019のシース。
[本発明1021]
シースボディの近位端が、膨張のためバルーンと流体連絡した膨張用ポートに連結される、本発明1001~1016のいずれかのシース。
[本発明1022]
膨張用管腔が、バルーンを膨張させるためシースボディの近位端で定容積シリンジと連絡している、本発明1019~1021のいずれかのシース。
[本発明1023]
バルーンが、膨張用ポートを介して、水、生理食塩水、および空気のいずれか1つで膨張される、本発明1021~1022のいずれかのシース。
[本発明1024]
バルーンがカテーテルデバイスとインラインにポジショニングされる、前記本発明のいずれかのシース。
[本発明1025]
バルーンがシースボディの縦軸に対して放射対称である、前記本発明のいずれかのシース。
[本発明1026]
バルーンがリング形状であり、それを通じてカテーテルデバイスが通り抜ける、前記本発明のいずれかのシース。
[本発明1027]
バルーンが膨張時に、カテーテルデバイス上に放射方向の力を印加し、それによって該カテーテルデバイスを所定のポジションにロックする、前記本発明のいずれかのシース。
[本発明1028]
バルーンがシースボディの縦軸に対して非対称である、本発明1001~1018のいずれかのシース。
[本発明1029]
バルーンが膨張時に、カテーテルデバイスをシースボディの内面の一部分に向かって押すように該カテーテルデバイス上に力を及ぼし、それによって該カテーテルデバイスを所定のポジションにロックする、本発明1028のシース。
[本発明1030]
シースボディが、縦軸の周りで互いに同軸上にアレンジされた複数のポリマー層の積層を具備する、前記本発明のいずれかのシース。
[本発明1031]
シースボディが、該シースボディの近位端から遠位端まで連続的にアレンジされた複数の管状ポリマー層部分の組み合わせを具備する、本発明1001~1029のいずれかのシース。
[本発明1032]
各ポリマー層が、異なるポリマー材料タイプを含む、本発明1030~1031のいずれかのシース。
[本発明1033]
ポリマー材料タイプが、PEBAX(登録商標)7233SA、PEBAX(登録商標)7033SA、PEBAX(登録商標)6333SA、PEBAX(登録商標)5533SA、PEBAX(登録商標)3533SA、およびPEBAX(登録商標)2533SAのいずれか1つを含む、本発明1032のシース。
[本発明1034]
シースボディが、キンクを防ぐための補強構造を具備する、前記本発明のいずれかのシース。
[本発明1035]
補強構造が、組紐、コイル、およびレーザー加工フィーチャのいずれか1つを含む、本発明1034のシース。
[本発明1036]
バルーンが、ウレタン、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレン、架橋ポリエチレン、ポリエーテルブロックアミド(PEBA)、およびナイロンのいずれか1つから作製される、前記本発明のいずれかのシース。
[本発明1037]
シースボディが、ポリエーテルブロックアミド(PEBAX(登録商標)またはPebaSlix(登録商標)など)、ポリエチレン材料、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)材料、高密度ポリエチレン(HDPE)材料、中密度ポリエチレン(MDPE)材料、および低密度ポリエチレン(LDPE)材料のいずれか1つから作製される、前記本発明のいずれかのシース。
[本発明1038]
シースボディの遠位端が、該シースボディの残りの部分に用いられるものよりも柔らかい弾性材料から作製される、前記本発明のいずれかのシース。
[本発明1039]
シースボディの遠位端が、カテーテルデバイス上に密封をもたらすようなより小さな直径を含む、本発明1038のシース。
[本発明1040]
バルーンスリーブが、ウレタン、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレン、架橋ポリエチレン、ポリエーテルブロックアミド(PEBA)、およびナイロンのいずれか1つから作製される、本発明1017~1019のいずれかのシース。
[本発明1041]
バルーンがコンプライアント(compliant)であり、そして脱膨張時にシースボディの内面に対して面一に保たれる、前記本発明のいずれかのシース。
[本発明1042]
バルーンが非コンプライアントであり、そして脱膨張時にシースボディの内面に対して面一に保たれない、本発明1001のシース。
[本発明1043]
バルーンが親水性コーティングでコーティングされる、前記本発明のいずれかのシース。
[本発明1044]
バルーンが疎水性コーティングでコーティングされる、本発明1001~1042のいずれかのシース。
[本発明1045]
コーティングが、バルーンの適切な膨張特性を確実にする厚さである、前記本発明のいずれかのシース。
[本発明1046]
シースボディがバルーンの膨張時に変形し、それによって患者の動脈切開部内でシースのポジションを固定する、前記本発明のいずれかのシース。
[本発明1047]
患者の動脈切開部内にポジショニングされる際にシースを操作するためのハブに、該シースの近位端が連結される、前記本発明のいずれかのシース。
[本発明1048]
ハブが、流体用管腔と流体連絡した膨張用サイドポートを具備し、それによってバルーン膨張用流体の供給源の取り付けを可能にする、本発明1014~1016および1019~1022のいずれかのシース。
[本発明1049]
ハブが、カテーテルデバイスとシースボディの内面との間の空間と流体連絡した灌注用ポートを具備し、それによってバルーンの膨張前に該空間を流体でフラッシングすることを可能にする、本発明1047~1048のいずれかのシース。
[本発明1050]
1001~1049のいずれかに基づくシースと;
バルーンを流体で膨張させるための、流体で満たされかつ該シースに連結された、定容積シリンジと
を具備する、患者の動脈切開部にカテーテルデバイスを送達するためのシースキット。
[本発明1051]
以下の段階を含む、内部バルーン付きシースを作製する方法:
縦軸と、開口近位端と、開口遠位端と、外面と、カテーテルデバイスが通過するための管腔を該近位端と該遠位端との間で画定する内面とを有する管状シースボディを提供する段階;および
該管腔内にポジショニングされた膨張可能バルーンを提供する段階であって、該バルーンが、膨張された時に該シースボディの内面と該カテーテルデバイスとの間で該管腔内の空間を占有し、それによって該空間を動脈切開部から密封するよう構成されている、段階。
[本発明1052]
膨張可能バルーンをシースボディの内面の少なくとも一部分に取り付ける段階
をさらに含む、本発明1051の方法。
[本発明1053]
バルーンとシースボディの内面との間の接着を向上させるために該シースボディの該内面を前処理する段階
をさらに含む、本発明1051~1052のいずれかの方法。
[本発明1054]
前処理が、プラズマ活性化およびコロナ処理のいずれか1つを含む、本発明1053の方法。
[本発明1055]
シースボディの管腔内に挿入するためのバルーンスリーブを提供する段階であって、該スリーブが、カテーテルデバイスとインラインにアライメントされている、段階;および
膨張可能バルーンを該スリーブの少なくとも一部分に取り付ける段階
をさらに含む、本発明1051の方法。
[本発明1056]
バルーンの取り付けが熱結合または溶剤結合を介して行われる、本発明1052~1055のいずれかの方法。
[本発明1057]
親水性コーティングまたは疎水性コーティングのいずれかでバルーンの表面をコーティングする段階
をさらに含む、本発明1051~1056のいずれかの方法。
[本発明1058]
バルーンの特定の膨張特性を実現するため既定のコーティング厚さまで該バルーンの表面をコーティングする段階
をさらに含む、本発明1057の方法。
[本発明1059]
シースボディの近位端をハブに連結する段階
をさらに含む、本発明1051~1058のいずれかの方法。
[本発明1060]
本発明1001~1049のいずれかの内部バルーン付きシースを作製する方法。
[本発明1061]
以下の段階を含む、患者をカテーテルデバイスで処置するために内部バルーン付きシースを用いる方法:
本発明1001~1049のいずれかのシースを該患者の動脈切開部内にポジショニングする段階;
該カテーテルデバイスの遠位端を該患者の該動脈切開部内にポジショニングするため該カテーテルデバイスを前記管腔内に挿入する段階;
前記空間を灌注用流体でフラッシングする段階;および
該空間を該動脈切開部から密封するように該バルーンを膨張用流体で膨張させる段階。
[本発明1062]
以下の段階をさらに含む、本発明1061のシースを用いる方法:
膨張可能バルーンがその上に取り付けられたバルーンスリーブを管腔内に挿入する段階であって、該スリーブがカテーテルデバイスとインラインにアライメントされている、段階。
[本発明1063]
以下の段階を含む、患者の動脈切開部を通してカテーテル式デバイスを挿入する方法:
それを通って走行する管腔を有するシースを、該患者の該動脈切開部内に挿入する段階;
該カテーテル式デバイスを該管腔内に挿入する段階;および
該管腔を流体的に密封するように、該シースと該カテーテル式デバイスとの間の該管腔内でバルーンを膨張させる段階。
[本発明1064]
バルーンを膨張させる前に管腔をフラッシングする段階をさらに含む、本発明1063の方法。
[本発明1065]
シースを挿入する段階が、該シースを患者の動脈切開部内にポジショニングするため該シースの管腔内に拡張器を挿入する段階を含む、本発明1063~1064のいずれかの方法。
[本発明1066]
バルーンがシースに取り付けられる、本発明1063~1065のいずれかの方法。
[本発明1067]
バルーンがその上に取り付けられるバルーンスリーブを、該バルーンを膨張させる前に、シースとカテーテル式デバイスとの間で該シースの管腔内に挿入する段階をさらに含む、本発明1063~1065のいずれかの方法。
[本発明1068]
バルーンスリーブが、カテーテル式デバイスの周りでタイトに同軸上にアレンジされる、本発明1067の方法。
【図面の簡単な説明】
【0024】
以上および他の目的と利点とは、以下の詳細な説明を添付の図面と併せて検討することによって明らかになるであろう;添付の図面全体にわたって、同様の参照符号は同様の部品を参照する。
【0025】
図1】患者の動脈切開部内にカテーテル式デバイスを送達するために用いられる、先行技術において公知である例示的なシース送達システムを示す。
図2図1のシース送達システムの例示的な断面を示す。
図3図1のシース送達システムが患者体内に挿入された後の流体および血餅の進入を示す。
図4】本開示の1つの態様に基づく例示的な内部バルーンシースを示す。
図5図5Aは、バルーンがシースの遠位端にポジショニングされている、本開示の1つの態様に基づく例示的な内部バルーンシースを示す。図5Bは、バルーンがシースの全長に沿ってポジショニングされている、本開示の1つの態様に基づく例示的な内部バルーンシースを示す。
図6】本開示の1つの態様に基づく、内部バルーンを膨張させるためにシースボディ内に形成された例示的な膨張用管腔と膨張用ポートとを示す。
図7図6の内部バルーンシースの半径断面を示す。
図8】膨張前の図6の内部バルーンシースを示す。
図9図9Aは、本開示の1つの態様に基づく、インラインのバルーンスリーブを伴う例示的な内部バルーンシースの拡大図を示す。図9Bは、インラインのバルーンスリーブが内部バルーンシース内に挿入されている、図9Aの内部バルーンシースを示す。
図10図10Aは、膨張前の図9A~9Bの内部バルーンシースの半径断面を示す。図10Bは、膨張後の図9A~9Bの内部バルーンシースの半径断面を示す。
図11図11Aは、本開示の1つの態様に基づく、非インラインのバルーンスリーブを伴う例示的な内部バルーンシースを示す。図11Bは、図11Aの内部バルーンシースの近位端の等角図を示す。
図12図12Aは、膨張前の図11A~11Bの内部バルーンシースの半径断面を示す。図12Bは、膨張後の図11A~11Bの内部バルーンシースの半径断面を示す。
図13】本開示の1つの態様に基づく、シースの局所的伸展を可能にするようバルーンおよびシースが特に設計されている、インラインのバルーンスリーブを伴う例示的な伸展可能内部バルーンシースを示す。
図14】本開示の1つの態様に基づき内部バルーンシースを作製する方法の例示的なフローチャートを示す。
図15】本開示の1つの態様に基づき内部バルーンシースを使用する方法の例示的なフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
詳細な説明
本明細書に説明するデバイスおよび方法が全体的に理解されうるよう、ある一定の例示的態様を説明する。本明細書に説明する態様および特徴は、カテーテル式心室補助デバイスを伴う脈管内手技において使用するための内部バルーンシースと関係した使用について特に説明するが、理解されるであろう点として、以下に概説するすべてのコンポーネントおよび他の特徴は、任意の好適な様式において互いに組み合わせられてもよく、かつ、内部バルーンシースを必要とする他のタイプの手技に適合および適用されてもよい。
【0027】
本明細書に説明するデバイスおよび方法は、管状シースボディと膨張可能バルーンとを具備する内部バルーンシースに関する。管状シースボディは、縦軸と、開口近位端と、開口遠位端と、外面と、カテーテルデバイスが通過するための管腔を近位端と遠位端との間で画定する内面とを具備する。膨張可能バルーンは管腔内に配される;かつ膨張可能バルーンは、カテーテルデバイスがシース内に配されバルーンが膨張した時にシースボディの内面とカテーテルデバイスとの間で管腔内の縦方向の空間を占有して、管腔を流体的に密封するよう構成される。
【0028】
そのようなシースはバルーンの膨張後に流体の進入を防ぎ、それにより、シースが患者の脈管構造内にポジショニングされた時にシースの管腔内における血液の停滞および凝血を防ぐ。シース内の管腔がシースの動脈切開部から密封されるので、シースの管腔を通して灌注用流体のフローを提供する必要がなく、それによりシース送達システムがシンプルになる。さらに、膨張したバルーンがカテーテルデバイスの外面とシースの内面との間で締まりばめを形成し、それにより使用中のカテーテルデバイスのポジションを固定またはロックする。これは、患者の皮膚の表面に取り付けるという、かさばりかつ煩雑な固定技法を伴わない。加えて、カテーテルボディとシースとの間に空間があっても膨張可能バルーンがその空間をふさいで、シース内に寸法の差があってもバルーンがその差を妥当に占有するので、本発明の内部バルーンシースは任意のサイズのカテーテルとともに用いることができる。
【0029】
いくつかの態様において、内部バルーンはシースボディの内面の少なくとも一部分に取り付けられてもよい。ここで内部バルーンはシースボディの遠位端の内面に取り付けられてもよい。代替的に、内部バルーンはシースボディの全長にわたってもよく、そしてシースボディの内面上の複数の取り付けポイントに取り付けられてもよい。ある一定の態様において、カテーテルデバイスがバルーンを通り抜けるよう、バルーンは、シースボディと同軸上にアレンジされたインラインの放射対称バルーンであってもよい。他の態様において、バルーンは非対称バルーンであってもよい。バルーンは膨張時にシースおよびカテーテルボディと締まりばめを形成し、その際にバルーンがカテーテルをグリップし、それによりカテーテルを所定のポジションにロックする。
【0030】
他の態様において、内部バルーンは、シースボディの外部のバルーンスリーブに取り付けられてもよい。スリーブは、医療デバイス上のカテーテル上でタイトなフィットを有しながらその上でスライド可能であるようにアレンジされてもよい。スリーブは、カテーテルの周りでスライドさせてシースの管腔内にポジショニングできるように構成されてもよい。バルーンはスリーブの遠位端の外面に取り付けられてもよい。代替的に、バルーンはスリーブの全長にわたってもよく、そしてスリーブの外面上の複数の取り付けポイントに取り付けられてもよい。ある一定の態様において、カテーテルデバイスがスリーブを通り抜けるよう、バルーンは、スリーブと同軸上にアレンジされたインラインの放射対称バルーンであってもよい。他の態様において、バルーンは非対称バルーンであってもよい。バルーンは膨張時にシースおよびカテーテルボディと締まりばめを形成し、その際にバルーンがカテーテルをグリップし、それによりカテーテルを所定のポジションにロックする。他の態様において、バルーンスリーブは医療デバイスのカテーテルと平行にポジショニングされ、それにより医療デバイスはバルーンスリーブに通される必要がなくなる。
【0031】
図1に、カテーテルデバイス140を患者の血管内にポジショニングするための従来のシース送達システム100を示す。図1には、患者の皮膚110を通って動脈切開部112内に挿入された後のシース120が描写されている。シース120は大腿動脈114などの脈管内にポジショニングされる;その脈管を通って血液が流れている116。シース120は動脈114内へのカテーテルデバイス140の挿入を容易にする。カテーテルデバイス140は経皮ポンプなどの心室補助デバイスを具備してもよい。そうした経皮ポンプの1例はマサチューセッツ州DanversのAbiomed, Inc.によるImpella 2.5(商標)ポンプシステムである。そうしたポンプは概してカテーテルボディを具備し、カテーテルボディの遠位端にポンプヘッド(図示せず)を、カテーテルボディの近位端にハンドル(図示せず)を備える。大多数の状況において、ポンプヘッドは、カテーテルボディの直径より大きい直径を有する。理解されるであろう点として、本明細書には経皮的心臓ポンプを説明するが、他の任意の経皮的医療デバイスまたは脈管内医療デバイスが本開示と併せて用いられてもよい。シース140の近位端がハブ130に連結されてもよい。
【0032】
カテーテルデバイスがシース100を通り抜けることを容易にするため、シース120の内径 dshi はカテーテルデバイスの最大部分の外径 dcatho に等しいかまたはそれより大きくなるよう、すなわち dshi ≧ dcatho となるよう構成される。上記に例示したImeplla 2.5(商標)ポンプシステムの場合、デバイスの最大部分はポンプヘッドである。図2に描写されているように、ポンプヘッドがシースボディ120を通過した後、シース120の内面126とカテーテルデバイス140の外面との間に空間128が存在する。この空間128は、図2に示すように、シースの内径 dshi とカテーテルボディの外径 dcatbo との差のゆえに存在する。そうした空間は、シースボディがまだ患者の動脈切開部内にある間に、シース120内への血液の進入を容易にしてしまう。その空間内は流体が流れていない場合もあるので、血液の停滞が生じる可能性が高く、その結果として、図3に図示するようにシースボディ120の空間128内に血餅118、119が形成される。
【0033】
そうした血餅が形成されると、それらは偶発的にシースから外れて血液とともに脈管内を自由に動き、下流を塞栓する(例えば遠位の肢に入り込む、右心および肺に到達する、など)可能性があるので、脈管内医療手技が複雑になる。加えて、いくつかの事例において、血餅形成は、脈管を通る血流がブロックされる見込みを増大させうる。さらに、血餅はいったん形成され始めると、サイズが大きくなり続けて脈管の管腔をブロックする可能性がある。いくつかのケースにおいて、血餅形成を最少にするため、シース120の管腔内に送り込まれる灌注用流体のフローがシース送達システムに提供される。このフローは持続的にまたは既定の頻度で管腔に提供されてもよいが、そうした灌注のためには追加的な制御およびモニター用機構を利用する必要があるので、シース送達システムが複雑になる。さらに、カテーテルデバイス140が配置された時に、デバイスの近位端がテープまたは縫合糸によってハブ130に取り付けられる可能性がある。そうした固定は、患者の動脈切開部内にあるデバイスの部分が動かないことを確実にできない可能性がある。加えて、そうした外部固定はかさばりかつ煩雑である可能性があるうえ、患者が動いたときに緩む可能性もある。
【0034】
図4に、本開示の1つの態様に基づく内部バルーンシース400の拡大図を示す。シース400は、大腿動脈など患者の動脈切開部内への挿入に好適である。シース400は、内面404を有し縦軸406に沿って延在するシースボディ402を具備する。シースボディ402は、縦軸406に沿って延在する直径 d の管腔408を具備する。ある一定の態様においてシースボディ402は円形の断面を備えた管状であってもよいが、シースボディ402は任意の形状および構成であってよい。シースボディ402は内径 dshi を有し、そして脈管内医療デバイス420を患者の脈管内に導入するのに好適である。先に言及したように、医療デバイス420は経皮ポンプなどのカテーテル式デバイスであってもよい。そうした経皮ポンプの1例はマサチューセッツ州DanversのAbiomed, Inc.によるImpella 2.5(商標)ポンプシステムである。そうしたポンプは概してカテーテルボディ422を具備し、カテーテルボディの遠位端にポンプヘッド424を備える。大多数の状況において、ポンプヘッド424は、カテーテルボディの直径 dcatbo より大きい直径 dcatho を有する。理解されるであろう点として、本明細書には経皮的心臓ポンプを説明するが、他の任意の経皮的医療デバイスまたは脈管内医療デバイスが本開示と併せて用いられてもよい。
【0035】
シース400が脈管内で正しいポジションになったら、シースボディ402の遠位端403から医療デバイス420が配置される。医療デバイス420がシース400から出られるようにするため、シースボディ402の内径がポンプヘッド424の直径に少なくとも等しくなるよう、すなわち dshi ≧ dcatho となるよう構成される。しかしこのことは、医療デバイス420が脈管内に配置されると、シースボディ402の内径 dshi とカテーテルボディの外径 dcatbo との差が空間の発生につながることを意味し、それは上記に説明したように血餅の形成をもたらす可能性がある。
【0036】
本開示の1つの態様に基づき、シースボディ402の管腔408内に膨張可能バルーン410がポジショニングされる。いくつかの態様において、バルーン410はシースボディ402の遠位端403にポジショニングされてもよい。その態様においてバルーン410はシースボディ402に沿った他の場所にポジショニングされてもよい。さらなる態様において、バルーン410はシースボディ402の全長に沿って延在してもよい。
【0037】
バルーン410は、脱膨張した第一状態、および膨張した第二状態という、2つの状態を取ることができ、かつそれらの間で移行できるよう、構成される。第一状態においてバルーン410は医療デバイス420のカテーテルボディ422と接触せず、一方、第二状態においてバルーン420は医療デバイス420のカテーテルボディ433に接触する。バルーン410が脱膨張した第一状態からバルーン410が膨張した第二状態に移行するには、バルーン410に流体が供給される。いくつかの態様において、流体は例えば空気、生理食塩水、または水であってもよいが、バルーン410を膨張させるために任意の生体適合性の流体が用いられてよい。そうした流体は、以下のセクションにおいて詳述する流体用管腔を介してバルーンに供給されてもよい。バルーン410は、膨張時に、シースボディ402における開口部が医療デバイス420のカテーテルボディ422の直径より小さくなるよう、管腔408の直径を減少させる;すなわち、第二状態において d < dcatbo である。バルーンは、(生理食塩水または水で)膨張される際に、カテーテルボディ422とシースの内面404との間の空隙/空間を満たし、それによって血液の進入、停滞、および凝固を取り除く。留意されるべき点として、使用中、カテーテルデバイスが患者の動脈切開部内にポジショニングされた後、バルーン410の膨張前にまずシース400の管腔408が灌注用流体でフラッシングされてもよい。これにより、シース400またはカテーテルデバイスのポジショニング中に血液が蓄積していてもその進入が防がれる。
【0038】
第二状態において、膨張したバルーン410は医療デバイス420のカテーテルボディ422と接触して、医療デバイス420に圧縮力をかける。加えて、第二状態において、カテーテルとバルーンとのインターフェイス部の長さに沿った、バルーン410とカテーテルボディ422との間の摩擦力が、シース400に対するカテーテルボディ422のポジションを固定することを補助する。いくつかの態様において(後述するようにバルーン410がシース400に取り付けられていない場合)、バルーンとシースとのインターフェイス部に沿った、バルーン410とシースボディ402の内面404との間の摩擦力もまた、シース400に対するカテーテルボディ422の位置を固定することを補助する。
【0039】
図4には軸対称のバルーン410を示しているが、バルーン410は任意の形状または構成であってよいことが認識されるであろう。例えば、バルーン410は、シース400の縦軸406の周りにアライメントされた円形のリング形状を有する、(図4に描写するような)軸対称であってもよい。そうした構成において、バルーン410は膨張時に、縦軸406の周りの全方向からカテーテルボディ422に放射方向の圧縮力をかけ、それによってカテーテルボディ422を効果的にグリップして所定のポジションにロックする。他の態様において、バルーン410はシース400の縦軸406の周りで非対称であってもよい。例えば、バルーン410がシース400の縦軸406の1つの側にポジショニングされてもよい。そうした構成において、バルーン410は膨張して第二状態を取った時に、概ね1つの方向からカテーテルボディ422に圧縮力をかける。それが起こると、バルーン410からの圧縮力がカテーテルボディ422をシースボディ402の内面404に効果的に押さえ付けて、そのポジションをロックする。理解されるであろう点として、バルーン410が第二状態にある時、バルーン410は医療デバイス420の軸方向または放射方向の移動を防ぎ、それによって医療デバイス420を固定ポジションにロックする。
【0040】
図5Aに、本開示の1つの態様に基づく例示的な内部バルーンシース500を図示する。理解されるであろう点として、内部バルーンシース500は、上記に説明した図4のシース400と同様の特徴を有する。シース500は脈管内医療デバイスが通過するための管腔を有し、図5Aにはそのデバイスのカテーテル端部505が示されている。シース500は、遠位端512と近位端514とを有するシースボディ510を具備する。シース500はまた、シース500の管腔内にポジショニングされかつシースボディ510の遠位端512に位置する膨張可能バルーン515も具備する。図5Aにおいて、膨張可能バルーン515は固定された長さを有し、シースボディ510の全長にはわたっていない。いくつかの態様において、バルーン515はシースボディ510に沿った他の位置にポジショニングされてもよい。さらに、本開示のある一定の態様において、以下のセクションで説明するように、バルーン515はシースボディ510の内壁に取り付けられてもよい。代替的に、以下のセクションで説明するように、バルーンスリーブをシースボディ510の管腔内に挿入することによってバルーン510がシース500内にポジショニングされてもよい。
【0041】
図5Bに、本開示の1つの態様に基づく別の例示的な内部バルーンシース550を図示する。理解されるであろう点として、内部バルーンシース550は、上記に説明した図5Aのシース500と同様の特徴を有する。シース550は脈管内医療デバイスが通過するための管腔を有し、図5Bにはそのデバイスのカテーテル端部555が示されている。シース500と同様に、シース550は、遠位端562と近位端564とを有するシースボディ560を具備する。しかし図5Bにおいて、シース550は、シースボディ560の全長にわたる、シース500の管腔内にポジショニングされた膨張可能バルーン565を具備する。本開示のある一定の態様において、以下のセクションで説明するように、バルーン565はシースボディ560の内壁に取り付けられてもよい。代替的に、以下のセクションで説明するように、バルーンスリーブをシースボディ560の管腔内に挿入することによってバルーン560がシース550内にポジショニングされてもよい。
【0042】
本開示のいくつかの態様において、図5Aおよび5Bにおけるバルーン510, 560は軸対称であってもよい。他の態様において、バルーン510, 560はシースボディの縦軸の周りで非対称であってもよい。
【0043】
図5Aに示すように、シースボディ510の近位端514がハブ520に連結されてもよい。ハブ520は、シース500を患者の脈管構造内にポジショニングする際に医師がグリップできるハンドルとして役立つ。ハブはまた、シース500が患者の脈管構造内にポジショニングされたらハブを患者の皮膚に固定することを容易にするための特徴も有してもよい。そうした固定は縫合糸またはテープを介したものであってもよい。加えて、ハブ520は少なくとも1つのサイドポート525、530を有してもよい。各サイドポートは図5Aに示すように可撓性チューブ526、531に接続されてもよく、そして任意で二方活栓または三方活栓に接続されてもよい。各サイドポートはシースボディ510の管腔と流体連絡していてもよい。いくつかの態様において、サイドポートは、以下のセクションで説明するように、例えば膨張用管腔など、シースボディ510内の追加的な管腔と流体連絡していてもよい。図5Aの態様において、サイドポート525はシースボディ510の管腔と流体連絡しており、サイドポート530は膨張可能バルーン515と流体連絡している。サイドポート520は、バルーン515の膨張前に灌注用流体を用いてシースボディ510の管腔をフラッシングできるようにチューブ526に接続されてもよい。
【0044】
バルーン515の膨張前に管腔をフラッシングすることにより、患者の動脈切開部内にシースを挿入する際に集まった血液の停滞が取り除かれる。サイドポート530は、膨張用流体を用いてバルーン515を膨張させることができるように(後述)、チューブ531に接続されてもよい。いくつかの態様において、サイドポート530は、シースボディ510内に形成された流体用管腔を介して、または、膨張用流体の供給源をバルーン515に接続する内部チュービングを介して、バルーン515と流体連絡していてもよい。留意されるべき点として、バルーン565がシースボディ560の長さにわたっている図5Bの場合は、バルーン565の近位端がハブ上の膨張用ポートと直接流体連絡しうるので、シースボディの壁の内部に膨張用管腔がある必要はない。
【0045】
シース500およびハブ520が所定のポジションになったら、医師は、サイドポートを通りシースのシャフトを(以下のセクションで説明するように例えばシースボディの壁内を)進んでバルーン内部に入るよう流体を送達するため、サイドポート525、530に生理食塩水のシリンジを取り付けかつ/または真空を引いてもよい。バルーン515が膨張したら、医師は、体積をそこでロックするためサイドポート上の活栓を遮断してもよい。
【0046】
図4の態様に戻ると、バルーン410は、シースボディ402の内面404に取り付けられてそこから膨張および脱膨張されてもよい。そうした取り付けは熱結合または溶剤結合を介して実施される。この結合は、例えば膨張中などにバルーン410が破裂しないようにするために極めて重要である。ある一定の態様において、バルーン410がシースボディ402に結合する見込みを向上させるため、シースボディ402の内面404がプラズマ活性化またはコロナ処理で前処理されてもよい。いくつかの態様において、バルーン410はシースボディ402上の特有のポジションに位置してもよい。そうした態様において、バルーン410の取り付けポイントはシース400内のバルーンのポジションに局在してもよい。例えば、シースボディ402の遠位端403にポジショニングされたバルーン410の場合、シースボディ402の内面404へのバルーン410の取り付けポイントがシースボディ402の遠位端403にあってもよい。
【0047】
他の態様において、バルーン410はシースボディ402の長さに沿って延在してもよい。そうした構成において、バルーン410は、バルーン410の全長に沿ってシースボディ402の内面404に取り付けられてもよい。他の構成において、バルーン410は、例えばシースボディ402の近位端および/または遠位端など、ある一定のポイントでのみシースボディ402の内面404に取り付けられてもよい。他の態様において、バルーン410がシースボディ402の内面404に取り付けられなくてもよい。代わりに、以下のセクションで説明するバルーンスリーブを用いて、バルーン410がシースボディ402の管腔408内にポジショニングされてもよい。
【0048】
上記において、かつ図4に描写した態様に関して言及したように、第一状態においてバルーン410は流体で膨張されてはおらず、かつカテーテルボディ422と接触していない。本開示の1つの態様において、バルーン410はコンプライアントであるよう構成されてもよく、それによってバルーン410は、第一状態にある時にシース400内の表面に対して面一かつタイトに座する。いくつかの態様において、この表面はシースボディ402の内壁404であってもよい。他の態様において、コンプライアントなバルーンが取り付けられる表面は、(以下のセクションで詳述するように)追加的なバルーンスリーブであってもよい。コンプライアントなバルーン410は脱膨張時に過剰なバルーン材料を有さず、したがって、シースボディ402の管腔408内において医療デバイス420を支障なく挿入および除去することを可能にする。そうしたコンプライアントなバルーンは、シースボディ402の内面404へのバルーン410の結合中に管理を要する過剰なバルーン材料がないので、作製および加工がより容易である可能性がある。コンプライアントなバルーン410が膨張される時、(例えばシリンジを介してバルーン410に送達されてもよい)膨張用流体からの圧力によってバルーン材料が弾性変形して、カテーテルボディ422を密封し、それにより、動脈切開部から入ってくるもの(例えば血液および血餅など)に対して管腔が閉鎖される。
【0049】
他の態様において、バルーン410は非コンプライアントであるよう構成されてもよく、その場合バルーンは第一状態にある時にシース400内の表面に取り付けられる。いくつかの態様において、この表面はシースボディ402の内壁404であってもよい。他の態様において、コンプライアントなバルーンが取り付けられる表面は、(以下のセクションで詳述するように)追加的なバルーンスリーブであってもよい。非コンプライアントなバルーン410は、脱膨張時にシース400の管腔408内に座する(図6~8に示すとともに以下のセクションでも説明する)。非コンプライアントなバルーンは、定体積の流体が適切かつ予測可能な膨張特性を常にもたらすように用いられてもよい。いくつかの態様において、バルーン410が膨張されるたびに正しい体積の流体がバルーン410に提供されるようにするため、膨張用流体を含有する定容積シリンジがシース400とともに提供されてもよい。ある一定の態様において、シリンジ(そして任意で定容積シリンジ)が、本開示において説明するいずれかの内部バルーンシースとともにシースキットにおいて提供されてもよい。
【0050】
本開示のすべての内部バルーンシースについて、理解されるであろう点として、シースを患者の動脈切開部内にポジショニングする際に生じうる血液の進入を取り除くため、内部バルーンシースの管腔が灌注用流体でフラッシングされる。管腔のフラッシング後にバルーンが膨張される。バルーンが膨張すると、シースボディ内の管腔が患者の動脈切開部から密封される。本開示の全体にわたって理解されるであろう点として、「密封(seal)」は、血餅の形成を可能にしうるいかなる量の流体フローも排除するように管腔を実質的に密封することを意味するものとして受け取られるべきである。ゆえに、従来のイントロデューサシースと異なり、本開示は、処置中にシース管腔をフラッシングするための灌注用流体の一定フローを必要としない。さらに、医療デバイスのカテーテルとの締まりばめを介して管腔を密封するようにバルーンが伸展するので、シースボディの内径がカテーテルデバイスの最遠位端の外径より大きい限り、本発明のシースを任意の直径のカテーテルとともに用いることができる。
【0051】
図6に、本開示の1つの態様に基づく内部バルーンシース600の遠位区画の軸方向断面図を図示する。上記に説明した態様と同様に、シース600は、カテーテルボディ630を有する脈管内医療デバイスが通過するための管腔620を画定する内面615を有するシースボディ610を具備する。膨張可能バルーン640がシースボディ610の遠位端612にポジショニングされる。バルーン640は、コンプライアントであってもまたは非コンプライアントであってもよく、かつ、シースボディ610の縦軸605の周りで軸対称であってもまたは非対称であってもよく、その構成は上記に説明したとおりである。
【0052】
いくつかの態様において、バルーン640など遠位にポジショニングされたバルーンを膨張させるため、シースボディ610の壁内の膨張用管腔650もまたシース600に提供されてもよい。そうした膨張用管腔650は、シースボディ610の遠位端612からシース600の長さに沿って近位端(図示せず)まで延在してもよい。シース600の近位端は(図5Aおよび5Bに示したものと同様の)ハブに連結されてもよい。膨張用管腔650は、バルーン640とシースボディ610の内面615との間のインターフェイス部で、シースボディ610の壁内に形成された開口部655(または放射方向管腔655)を介してバルーン640の内部と流体連絡していてもよい。いくつかの態様において、バルーン640は、これも上記に説明したように、熱結合または溶剤結合を介してシースボディ610の内面615に取り付けられてもよい。これらの結合はバルーン640が破裂しないようにするために極めて重要である。ある一定の態様において、例えば局所的な灌注およびフラッシングのため、またはガイドワイヤが通過できるようにするためなど、他の目的のために、管腔650と同様の複数の管腔をシースボディ610が具備してもよい。
【0053】
図7に、図6における線X-X'について描かれたシース600の断面700を示す;同図には、シースボディ610の壁内に形成された膨張用管腔650が示されている。図7において、バルーン640は、脱膨張状態にある時にバルーン材料がシースボディ610の管腔620内にある、非コンプライアントな軸対称のバルーンとして示されている。しかし、上記に言及したように、任意のタイプのバルーン(コンプライアント、非コンプライアント、軸対称、非対称)が本開示の態様とともに用いられてよい。
【0054】
膨張用流体は例えばシリンジからハブのところで膨張用管腔650に提供され、それにより流体652は膨張用管腔650内に、そして開口部655を通ってバルーン640内に押しやられて、バルーンを膨張させる。本開示の諸態様において、膨張用流体は、非限定的に例えば空気、水、および生理食塩水などである生体適合性の任意の流体を含んでもよい。上記に言及したように、バルーン640は、膨張された時に、シースボディ610における開口部が医療デバイスのカテーテルボディ630の直径より小さくなるように、管腔620の直径を小さくする。バルーンは、膨張される際にカテーテルボディ630とシース600の内面615との間の空間を満たし、それによって血液の進入、停滞、および凝血を防ぐ。バルーン640は、フルに膨張すると、医療デバイスのカテーテルボディ630と接触してカテーテルボディ630上に圧縮力をかける。カテーテルとバルーンとのインターフェイス部の長さに沿った、バルーン640とカテーテルボディ630との間の摩擦力もまた、シース600に対するカテーテルボディ630のポジションを固定することを補助しうる。いくつかの態様において(例えば後述するようにバルーンがシースの内面に取り付けられていない時)、バルーンとシースとのインターフェイス部に沿った、バルーン640とシースボディ610の内面615との間の摩擦力もまた、シース600に対するカテーテルボディ630の位置を固定することを補助する。
【0055】
図8に、本開示の1つの態様に基づく内部バルーンシース800の1つの区画の軸方向断面を図示する。シース800は図6におけるシース600と同様の特徴を含むが、シース800におけるバルーン820はシースボディ810に沿ってポジショニングされており、図6のように遠位端にあるのではない。図8においてバルーン820は非コンプライアントであるものとして(かつ脱膨張状態にあるものとして)示されているが、理解されるであろう点として、バルーン820は上記に説明した任意の様式に構成されてよい。バルーン820は、開口部835より遠位および近位の位置において、熱結合または溶剤結合によってシースボディ810の内面815に取り付けられる。シース600に関して説明したように、開口部835は、バルーン820を膨張させるため膨張用管腔830をバルーン820に流体接続する。これらの結合はバルーンが破裂しないようにするために極めて重要である。理解されるであろう点として、図8の断面図に描写された構成は、少なくとも(i)バルーン820がシースボディ810の長さに沿ってどこに位置しているか;(ii)バルーン820の端部がシースボディ810の内壁にどのように付着されているか;および、(iii)バルーン820の長さに対する開口部835の位置;に応じてさまざまであってもよい。バルーンがシースボディの全長にわたるある一定の態様において、バルーンはシースボディ内の膨張用管腔を必要とせずにハブから直接膨張されてもよい。
【0056】
いくつかの態様において、シースボディの積層およびリフロー中にマンドレルを用いることによって、図6~8に関して説明したような膨張用管腔がシースボディ内に形成されてもよい。マンドレルはシースボディ610を構築する層の中に溶け込むことはないのでリフロー後に抜き取ることができ、それによって膨張用流体をバルーンまで通過させるための膨張用管腔が残る。膨張用管腔をバルーンに流体接続する開口部も、放射方向に配向したマンドレルがリフロー前にシースボディ内にポジショニングされそして後で除去される、同様の加工を用いて形成されてもよい。代替的に、開口部は、膨張用管腔が形成された後に打ち抜きされてシースボディから出されてもよい。とはいえ、関係する寸法および許容差のゆえに、膨張用管腔および開口部の形成に複雑な加工が伴ってもよいことが認識されるであろう。
【0057】
図9A~9Bに、本開示の1つの態様に基づく例示的な内部バルーンシース900を図示する。内部バルーンシース900はバルーンスリーブ910とアクセスシース920とを具備し、バルーンスリーブ910はアクセスシース920の管腔内に挿入可能であるインラインのスリーブを具備する。内部バルーンシース900は、カテーテル式医療デバイス930がそこを通って通過できるよう構成される。バルーンスリーブ910は、管腔911がそこを通って走行しているスリーブボディ912を具備する。バルーンスリーブ910の遠位端は膨張可能バルーン915を具備してもよい。バルーン915は、上記に説明したようないずれかの取り付け手段を用いてバルーンスリーブ910の遠位端の外面に取り付けられてもよい。任意のタイプのバルーン(上記に説明したように、コンプライアント、非コンプライアント、軸対称、非対称)が本開示の態様とともに用いられてよい。
【0058】
バルーンスリーブ910の近位端は、外部の流体の進入に対してバルーンスリーブ910の管腔911を密封する弁913を具備してもよい。いくつかの態様において、弁913は例えば止血弁を具備してもよい。バルーンスリーブ910の近位端はまた、管腔911および/またはバルーン915と流体連絡したサイドポート914も具備してもよい。ある一定の態様において、サイドポート914は、図6に示した膨張用管腔650など、スリーブボディ912内に形成された膨張用管腔を介してバルーン915と流体連絡してもよい。サイドポート914は、図5Aに関して上記に論じたようなサイドポート525、530に類似する。いくつかの態様において、バルーンスリーブ910上に複数のサイドポートが存在してもよい。加えて、ある一定の態様において、サイドポート914の近位端が、例えばTuohy-Borstアダプタなど流体の逆流を防ぐためのコネクタに連結されてもよい。
【0059】
いくつかの態様において、バルーンスリーブ910は、スリーブ910がカテーテル930とインラインになるように医療デバイスのカテーテル930と軸方向にアライメントされてもよい。この構成において、バルーンスリーブ910は、図9Aに描写されているように、医療デバイスのカテーテル930の周りに同軸上にアレンジされる。バルーンスリーブ910は、スリーブ910をカテーテル930に沿ってアクセスシース920内まで動かすかまたは移動することを可能にしながら、カテーテル930の周りにタイトにフィットしてもよい。ある一定の態様において、医療デバイスのカテーテル930は使用前にバルーンスリーブの管腔911にあらかじめ通されてもよい。いくつかの態様において、医療デバイスのカテーテルは、バルーンスリーブ910がカテーテル930の周りに同軸上にアレンジされた状態で製造されてもよい。
【0060】
アクセスシース920は図4~8に関して上記に説明したシースに類似する。アクセスシース920は、近位端924と、遠位端926と、近位端と遠位端との間に走行している管腔928とを有するシースボディ922を具備する。近位端924はハブ940に連結されてもよい。ハブ940は、図5Aに描写されているハブ520に類似しており、そして、その上にポジショニングされた少なくとも1つのサイドポート942を有してもよい。サイドポート942は、例えば灌注およびフラッシングのため、アクセスシース922の管腔928と流体連絡していてもよい。
【0061】
前述したように、脈管内医療デバイスの遠位端は通常、カテーテルボディと比較して最大の直径を有する。シースボディ922は、医療デバイスの遠位端が管腔928を通過できるよう管腔928の直径が充分に大きくあるように構成される。加えて、管腔928は、バルーンスリーブ910がそれを通過できるように、すなわち管腔928がバルーンスリーブ910の外径より大きい直径を有するように、構成されてもよい。本開示のある一定の態様において、管腔928の直径は、バルーンスリーブ910がアクセスシース920の管腔928内に挿入された時に、バルーンスリーブボディ912の外面とシースボディ922の内面との間に空間950が生じるような直径である。この空間は図4に関して上記に説明したものと類似する。いくつかの態様において、バルーンスリーブ910の軸方向長さはアクセススリーブ920の軸方向長さより長くてもよい。これにより、バルーンスリーブ910がアクセスシース920内に挿入された時にバルーンスリーブ910の近位端の少なくとも一部分がアクセスシース920のハブ940から突き出す。このことは、例えばバルーン915の膨張などのため、バルーンスリーブ910の近位端(およびそこに取り付けられたサイドポート)に容易にアクセスすることを可能にする。
【0062】
図9Bに、バルーンスリーブ910が医療デバイスのカテーテル930に沿ってアクセスシース920の管腔928内まで動かされた際の内部バルーンシース900の断面を示す。バルーンスリーブ910は、管腔928がサイドポート942を介して灌注用流体(例えば生理食塩水または水)でフラッシングされた後に、アクセスシース920内にポジショニングされると考えられる。図9Bにおいて、バルーン915は膨張状態にあるものとして示されている。バルーン915は側部管腔914を介して提供される膨張用流体で膨張されてもよい。図9Aには示していないが、これはバルーンスリーブボディ912内に形成された膨張用管腔を介したものであってもよい。上記に言及したように、バルーン915が膨張される時、(例えばシリンジを介してバルーン915に送達されてもよい)膨張用流体からの圧力によってバルーン材料が弾性変形してもよく、それはカテーテルボディ930に対する密封を生じさせ、それによって、動脈切開部から入ってくるもの(例えば血液および血餅など)に対して管腔が閉鎖される。バルーン915は膨張時に、全方向からアクセスシースボディ922の内面に放射方向の伸展力をかけ、それによってアクセスシース920に対するバルーンスリーブ910のポジションを効果的に固定する。いくつかの態様において、以下のセクションにおいて図13に関して説明するように、アクセスシース920はそうした圧縮力の影響下で変形する材料で作られてもよい。加えて、バルーン915は膨張時に、カテーテルの周りの全方向からカテーテルボディ930にもまた放射方向の圧縮力をかけ、それによってカテーテルボディ930を効果的にグリップして所定のポジションにロックする。
【0063】
図10Aに、バルーン915が膨張される前の、図9Bにおける線Y-Y'について描かれたインラインの内部バルーンシース900の断面1000を示す。図10Aは、医療デバイスのカテーテルボディ930の周りに同軸上にアレンジされたバルーンスリーブ910を示している。言及したように、バルーンスリーブ910は、カテーテルボディ930上でスライド可能でありながら、カテーテルボディ930の周りにタイトにフィットする。バルーンスリーブ910はアクセスシース922の管腔928内に挿入される。前述したように、いくつかの態様において、バルーンスリーブ912は、バルーンを膨張させるためバルーンスリーブ910の近位端上の膨張用ポート914をバルーン915に流体接続する膨張用管腔を具備してもよい。図10Aは、バルーンスリーブ910がアクセスシース920の管腔928内に挿入された後の、バルーンスリーブボディ912の外面とシースボディ922の内面との間の空間950を示している。バルーン915はバルーンスリーブ912と同軸上にアレンジされたものとして図示されているが、バルーンスリーブボディ912に対するバルーン915の任意の配向が用いられてよい。例えば、バルーン915はバルーンスリーブボディ915の外面の少なくとも1つの部分上にポジショニングされてもよい。
【0064】
図10Bに、バルーン915が膨張された後の、図9Bにおける線Y-Y'について描かれたインラインの内部バルーンシース900の断面1050を示す。バルーン915の膨張時に、バルーン材料は、(例えばシリンジを介してバルーン915に送達されてもよい)膨張用流体からの圧力によって弾性変形してもよく、それはアクセスシース922の内面に対する密封を生じさせる。図に見られるように、バルーン915は膨張すると空間950を占有し、それによってアクセスシース920の管腔928内への流体の進入(例えば血液および血餅など)を防ぐ。本開示の全体にわたって理解されるであろう点として、「密封」は、血餅の形成を可能にしうるいかなる量の流体フローも排除するように管腔を実質的に密封することを意味するものとして受け取られるべきである。バルーン915は膨張時に、全方向からアクセスシースボディ922の内面に放射方向の伸展力をかけ、それによってアクセスシース920に対するバルーンスリーブ910のポジションを効果的に固定する。いくつかの態様において、以下のセクションにおいて図13に関して説明するように、アクセスシース920はそうした圧縮力の影響下で変形する材料で作られてもよい。加えて、バルーン915は膨張時に、カテーテルの周りの全方向からカテーテルボディ930にもまた放射方向の圧縮力をかけ、それによってカテーテルボディ930を効果的にグリップして所定のポジションにロックする。
【0065】
図11A~11Bに、本開示の1つの態様に基づく例示的な内部バルーンシース1100を図示する。内部バルーンシース1100はバルーンスリーブ1110とアクセスシース1120とを具備する。図9A~9Bにおけるバルーンスリーブ910と異なり、図11A~11Bに示すバルーンスリーブ1100は医療デバイスのカテーテルとインラインにポジショニングされてはいない。バルーンスリーブ1100はスリーブボディ1112を具備する;スリーブボディ1112はその遠位端1113に位置するバルーン1115を有する。いくつかの態様において、バルーン1115はスリーブボディ1112に沿った任意のポイントに位置してもよい。スリーブボディ1112は、膨張のためバルーン1115に流体接続された中央管腔を有してもよい。バルーン1115は、用いられるバルーンスリーブボディ1112に対して任意の様式に配向されてもよい。例えば、バルーン1115はスリーブボディ1112の周りで対称的にアレンジされてもよく、または、バルーン1115はスリーブボディ1112の周りで非対称的にアレンジされてもよい。さらに、バルーン1115は、上記に説明したようないずれかの取り付け手段を用いてスリーブボディ1112の遠位端1113の外面に取り付けられてもよい。任意のタイプのバルーン(上記に説明したように、コンプライアント、非コンプライアント、軸対称、非対称)が本開示の態様とともに用いられてよい。
【0066】
バルーンスリーブ1110の近位端はスリーブハブ1116に連結されてもよく、そしてスリーブハブ1116には少なくとも1つのサイドポート1117が提供されてもよい。サイドポート1117はスリーブボディ1112内の中央管腔および/またはバルーン1115と流体連絡していてもよい。上記に説明したように、サイドポートは、シース1100が患者の動脈切開部内にポジショニングされた後にバルーン1115を膨張用流体で膨張させるための膨張用ポートとして用いられてもよい。ハブ1116には、例えばTuohy-Borstアダプタなど、流体の逆流を防ぐための追加的なアダプタを連結するためのコネクタポート1118もまた提供されてもよい。
【0067】
アクセスシース1120は、上記に説明したような図9Aにおけるアクセスシース920に類似する。アクセスシース1120は、近位端1124、遠位端1126、および近位端と遠位端との間に走行している管腔1128を有する、シースボディ1122を具備する。近位端1122はハブ1140に連結されてもよい。ハブ1140は、図5Aに描写されているハブ520に類似しており、そして、その上にポジショニングされた少なくとも1つのサイドポート1142を有してもよい。サイドポート1142は、例えば灌注および管腔1128のフラッシングのため、アクセスシース1120の管腔1128と流体連絡していてもよい。
【0068】
シースボディ1120は、医療デバイスの遠位端が通過できるよう管腔1128の直径が充分に大きくあるように構成される。加えて、管腔1128は、バルーンスリーブ1110と医療デバイスのカテーテルボディ1130との両方がそれを通過できるように、すなわち、スリーブボディ1112とカテーテルボディ1130との両方を組み合わせた外径より大きい直径を管腔1128が有するように、構成される。本開示のある一定の態様において、管腔1128の直径は、医療デバイスのカテーテル1130とバルーンスリーブ1110との両方がアクセスシース1120の管腔1128内に挿入された時に、バルーンスリーブボディ1112の外面と、カテーテルボディ1130の外面と、シースボディ1122の内面との間に、空間1150が生じるような直径である(後述の図12Aを参照)。この空間は図4に関して上記に説明したものと類似する。
【0069】
いくつかの態様において、バルーンスリーブ1110の軸方向長さはアクセススリーブ1120の軸方向長さより長くてもよい。これにより、図11Bに示すように、バルーンスリーブ1110がアクセスシース1120内に挿入された時にバルーンスリーブ1110の近位端の少なくとも一部分がアクセスシース1120のハブ1140から突き出す。このことは、例えばバルーン1115の膨張などのため、バルーンスリーブ1110の近位端(およびそこに取り付けられたサイドポート)に容易にアクセスすることを可能にする。
【0070】
図12Aに、バルーン1115が膨張される前の、図11Bにおける線Z-Z'について描かれた内部バルーンシース1100の断面1200を示す。バルーンスリーブ1110はアクセスシース1120の管腔1128内に挿入され、かつ、スリーブボディ1112を具備する;スリーブボディ1112は、その中を通って形成されバルーン1115と流体連絡した膨張用管腔を有する。いくつかの態様において、バルーンスリーブボディ1112は、バルーンを膨張させるためバルーンスリーブ1112の近位端上の膨張用ポート1117をバルーン1115に流体接続する膨張用管腔を具備してもよい。図12Aは、医療デバイスとバルーンスリーブ1110とがアクセスシース1120の管腔1128内に挿入された後の、シースボディ1120の内面と、カテーテルボディ1130の外面と、バルーンスリーブ1110の外面との間の空間1150を示している。バルーン1115はバルーンスリーブボディ1112の周りに同心状にアレンジされたものとして図示されているが、バルーンスリーブボディ1112に対するバルーン1115の任意の配向が用いられてよい。例えば、バルーン1115はバルーンスリーブボディ1115の外面の少なくとも1つの部分上にポジショニングされてもよい。
【0071】
図12Bに、バルーン1115が膨張された後の、図11Aにおける線Z-Z'について描かれた内部バルーンシース1100の断面1250を示す。バルーン1115の膨張時に、バルーン材料は、(例えばシリンジを介してバルーン1115に送達されてもよい)膨張用流体からの圧力によって弾性変形してもよく、それはカテーテルボディ1130に対する密封を生じさせる。図に見られるように、バルーン1115は膨張すると空間1150を占有し、それによってアクセスシース1120の管腔1128内への流体の進入(例えば血液および血餅など)を防ぐ。本開示の全体にわたって理解されるであろう点として、「密封」は、血餅の形成を可能にしうるいかなる量の流体フローも排除するように管腔を実質的に密封することを意味するものとして受け取られるべきである。バルーン1115は膨張時に、全方向からアクセスシースボディ1122の内面に放射方向の伸展力をかけ、それによってアクセスシース1120に対するバルーンスリーブ1110のポジションを効果的に固定する。加えて、バルーン1115は膨張時に、医療デバイスのカテーテルボディ1130をアクセスシース1120の内面に押さえ付けるようにカテーテルボディ1130に放射方向の圧縮力をかけ、それによってカテーテルボディ1130を効果的にグリップして所定のポジションにロックする。いくつかの態様において、以下のセクションにおいて図13に関して説明するように、アクセスシース1120はそうした伸展力の影響下で変形する材料で作られてもよい。
【0072】
図13に、本開示の1つの態様に基づく例示的な内部バルーンシース1300を図示する。内部バルーンシース1300は膨張可能バルーンスリーブ1310とアクセスシース1320とを具備する。バルーンスリーブ1310は、図9~12に関して上記に説明したバルーンスリーブ910、1110と類似してもよい。スリーブ1310は、近位端1312と遠位端1313とを有するスリーブボディ1311を具備する。スリーブボディ1311の外面の遠位端1313に膨張可能バルーン1315が取り付けられてもよい。近位端1312はハブ1316に連結されてもよく、そしてハブ1316に膨張用ポート1314が提供されてもよい。膨張用ポート1314は、膨張用ポート1314における膨張用流体の入力がバルーン1315を膨張させるように、1315と流体連絡するよう構成される。いくつかの態様において、膨張用ポート1314は、スリーブボディ1311の壁内に形成された膨張用管腔を介してバルーン1315に流体接続されてもよい。
【0073】
バルーン1315は、バルーンスリーブボディ1311に対して任意の様式に配向されてもよい。例えば、バルーン1315はスリーブボディ1311の周りで対称的にアレンジされてもよく、または、バルーン1315はスリーブボディ1311の周りで非対称的にアレンジされてもよい。さらに、バルーン1315は、上記に説明したようないずれかの取り付け手段を用いてバルーンスリーブ1310の遠位端1313の外面に取り付けられてもよい。任意のタイプのバルーン(上記に説明したように、コンプライアント、非コンプライアント、軸対称、非対称)が本開示の態様とともに用いられてよい。
【0074】
バルーンスリーブ1310と同様に、アクセスシース1320は図9~12に関して上記に説明したアクセスシース920、1120と類似してもよい。アクセスシース1320は、近位端1322、遠位端1323、および近位端と遠位端との間に走行している管腔1324を有する、シースボディ1321を具備する。近位端1322はハブ1325に連結されてもよい。ハブ1325は、その上にポジショニングされた少なくとも1つのサイドポート(図示せず)を有してもよく、そのサイドポートは、例えば灌注および管腔のフラッシングのため、アクセスシース1320の管腔1324と流体連絡していてもよい。
【0075】
シースボディ1321は、医療デバイスの遠位端が通過できるよう管腔1324の直径が充分に大きくあるように寸法決定される。加えて、管腔1324は、バルーンスリーブ1310の通過を可能にするように構成されてもよい。本開示のある一定の態様において、管腔1324の直径は、(医療デバイスのカテーテル1330とインラインにポジショニングされた)バルーンスリーブボディ1311がアクセスシース1320の管腔1324内に挿入された時に、バルーンスリーブボディ1311の外面とシースボディ1321の内面との間に空間が生じるような直径である。図13は、バルーンスリーブ1310を(図8~9にあるように)医療デバイスのカテーテル1330とインラインであるものとして描写しているが、代替的に、バルーンスリーブ1310は(図10~11にあるように)医療デバイスのカテーテル1330と隣り合っていてもよい。
【0076】
上記の態様において説明したように、バルーン1315が流体で膨張された時、バルーンは前述のバルーンスリーブボディ1311の外面とシースボディ1321の内面との間の空間を占有し、それによって患者の動脈切開部からの血液の進入から管腔1324を密封する。図13に描写した態様において、シースボディ1321は、バルーン1315のサイズが伸展した時に、膨張しているバルーン1315からの伸展力がバルーンと隣り合ったシースボディ1321の変形もまた生じさせるように、弾性変形することができる。このことは、アクセスシース1320における膨らみを生じさせ、それは患者体内に挿入された後の内部バルーンシース1300の軸方向の動きを防ぐ。ゆえに、患者の皮膚1305に対してハブ1325の位置を固定する縫合糸またはテープに加えて、バルーン1315の膨張時のアクセスシース1320における膨らみがシース1300のポジションをロックし、それによってシース1300を患者に対してさらに確実固定する。
【0077】
上記に説明したすべての態様において、シースが剛性材料を含んでもよい。剛性材料はポリエチレン(PE)材料またはポリウレタン(PU)材料であってもよい。ある一定の態様において、剛性材料は約40 ksi(285 MPa)の弾性率を有してもよい。Ksiは圧力の単位であり、平方インチあたり何千ポンドであるかを表す。いくつかの態様において、剛性材料は、オキシ塩化ビスマスまたは硫酸バリウムなど放射線不透過性の充填材を重量比5%~40%の濃度で含有する。いくつかの態様において、剛性材料は、ポリエーテルブロックアミド(PEBAXまたはPebaSlix(登録商標)など)、ポリエチレン材料、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)材料、高密度ポリエチレン(HDPE)材料、中密度ポリエチレン(MDPE)材料、低密度ポリエチレン(LDPE)材料、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルブロックアミド(PEBAXなど)、およびナイロンのいずれか1つであってもよい。ある一定の実施形態において、剛性材料はクラック耐性材料である。いくつかの態様において、剛性材料はまた、摩擦係数が低い材料であってもよい。加えて、上記に説明したすべての態様において、ハブもまた上記の剛性材料のいずれか1つを含んでもよい。概して、シースの強度は、剛性材料の弾性率に依存するとともに、シース壁の厚さにも依存する。弾性率がより低い剛性材料の場合、得られるシースはより厚い壁を必要とするであろう。逆に、弾性率がより高い剛性材料では、壁厚がより小さいシースが可能になる。
【0078】
上記に説明したすべての態様において、シースボディは、その内容全体が参照により本明細書に組み入れられる米国特許仮出願第62/777,598号に説明されているような同軸上の層状構造を具備してもよい。その構造の各層が異なるポリマーを含んでもよい。ポリマーの層状化は可撓性を維持しながらシースの強度を向上させ、それは本開示に詳述するような脈管内用途への適用に理想的である。ポリマーは、PEBAX(登録商標)7233SA、PEBAX(登録商標)7033SA、PEBAX(登録商標)6333SA、PEBAX(登録商標)5533SA、PEBAX(登録商標)3533SA、およびPEBAX(登録商標)2533SAのいずれか1つを含んでもよい。他の態様において、シースは、連続的にアレンジされた、それぞれ異なるポリマーを含むさまざまな区画を具備してもよい。そうしたアレンジメントは、シースボディの長さに沿ってさまざまに異なる機械的強度を提供しうる。ポリマーは前述した剛性材料のいずれかを含んでもよい。ある一定の態様において、シースボディは機械的強度を向上させるため組紐またはコイルで補強されてもよい;これらの構造は前述した剛性材料のいずれか1つで作られたワイヤで構築される。いくつかの態様において、シースボディの構造は、管状シースボディを、その強度を高めるフィーチャを用いてレーザー加工することによって強化されてもよい。
【0079】
さらに、上記に説明したすべての態様において、バルーンが可撓性材料を含んでもよい。可撓性材料は弾性率約40 ksiのポリエチレン材料またはポリウレタン材料を含んでもよい。いくつかの態様において、その材料は、ウレタン、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレン、架橋ポリエチレン、ポリエーテルブロックアミド(PEBA)、およびナイロンのいずれか1つであってもよい。いくつかの態様において、バルーンスリーブもまた、上記に定義したような可撓性材料を含んでもよい。
【0080】
加えて、上記に説明したすべての態様において、ハブが剛性材料を含んでもよい。剛性材料は弾性率約40 ksiのポリエチレン材料またはポリウレタン材料であってもよい。いくつかの実施形態において、剛性材料は、高密度ポリエチレン(HDPE)材料、中密度ポリエチレン(MDPE)材料、低密度ポリエチレン(LDPE)材料、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、およびポリエーテルブロックアミド(PEBAXなど)のいずれか1つであってもよい。ある一定の実施形態において、剛性材料はクラック耐性材料である。いくつかの実施形態において、剛性材料はまた、摩擦係数が低い材料であってもよい。
【0081】
上記に説明したすべての態様において、インターベンション用デバイスが内部バルーンシースを通過する際の摩擦を低減するため、バルーンにコーティングが適用されてもよい。ある一定の態様において、コーティングは親水性または疎水性であってもよい。いくつかの態様において、バルーンの望ましい膨張特性を実現するため、このコーティングの厚さが変動されてもよい。加えて、上記に説明したすべての態様において、バルーンと結合する見込みを向上させるためにシースの内面が前処理されてもよい。そうした前処理には、非限定的にプラズマ活性化またはコロナ処理が含まれうる。代替的に、または前述のコーティングに加えて、内部バルーンシース内への挿入前にカテーテル式医療デバイスそれ自体にコーティングが適用されてもよい。
【0082】
加えて、上記に説明したすべての態様において、シースボディは、シースボディに用いられるものより柔らかい材料で作られた遠位先端を追加的に具備してもよい;すなわち、遠位先端は、シースボディに用いられる材料より低い弾性率を有する材料を含んでもよい。いくつかの態様において、遠位先端は、患者の動脈切開部内にシースを挿入する助けとなるよう斜角がつけられてもよい。そうした遠位先端は、直径がより小さいカテーテル上に密封をもたらしてもよい。カテーテル上に密封をもたらすことにより、血液がシースボディに入って凝固することが防がれる。ある一定の態様において、遠位先端は、オキシ塩化ビスマスまたは硫酸バリウムなど放射線不透過性の充填材を重量比5%~40%の濃度で含有してもよい。
【0083】
図14に、本開示の1つの態様に基づく、上述に説明したいずれかのバルーンシースなどである内部バルーンシースを作製する例示的な方法1400を図示する。方法1400は、作製用にシースボディが利用可能になる段階1410で始まる。シースボディは押出または積層によって提供されてもよい。上記に説明したように、シースボディは縦軸を有し、かつ、開口近位端、開口遠位端、外面、および、近位端と遠位端との間で管腔を画定する内面を具備する。いくつかの態様において、同方法は管状シースを作製する段階を含んでもよい。ある一定の態様において、同方法は、医療デバイスがシースボディの管腔を通過することを可能にするため、例えば心臓ポンプなどのカテーテル式脈管内医療デバイスの遠位端の外径より大きい直径を備えたシースを作製する段階を含んでもよい。
【0084】
ある一定の態様において、同方法は、同軸上に積層された層状構造を具備してもよいシースボディを作製する段階を含んでもよい。さらに、いくつかの態様において、シースボディはコイルまたは組紐などの構造補強材を具備してもよい。そうした層状のかつ/または補強されたボディ構造は、内部バルーンシースを患者の動脈切開部内にポジショニングする際に受ける力など、より大きな押力にシースが耐えることを可能にする。いくつかの態様において、シースボディの構造は、管状シースボディを、その強度を高めるフィーチャを用いてレーザー加工することによって強化されてもよい。ある一定の態様において、バルーンと結合する見込みを向上させるためにシースボディの内面が(例えばプラズマ活性化またはコロナ処理を介して)前処理されてもよい。
【0085】
同方法は次に、シースボディ内に膨張可能バルーンが提供される段階1420に続く。いくつかの態様において、バルーンは押出またはブロー成形によって提供される。ある一定の態様において、同方法は、バルーンをシースボディの内壁に取り付ける段階であって、バルーンがシースボディの内径内に入っている段階を含む。いくつかの態様において、同方法は、シースボディの管腔内に挿入可能なバルーンスリーブにバルーンを取り付ける段階をさらに含む。いくつかの態様において、同方法は、シースボディの全長に沿って延在するバルーンを取り付ける段階を含む。他の態様において、同方法は、シースボディの長さの一部分に沿ってのみ延在するバルーンを取り付ける段階を含む。いくつかの態様において、同方法は、例えばシースボディの遠位端など、シースボディの内面の一部分においてのみバルーンを取り付ける段階を含む。他の態様において、同方法は、バルーンの全長に沿ってシースボディの内面(またはバルーンスリーブの外面)にバルーンを取り付ける段階を含む。さらに、いくつかの態様において、同方法は、シースボディ(またはバルーンスリーブ)の全周に沿ってバルーンを取り付ける段階を含む。他の態様において、同方法は、シースボディ(またはバルーンスリーブ)の円周の少なくとも一部分に沿ってバルーンを取り付ける段階を含む。
【0086】
加えて、いくつかの態様において、同方法は、シースの管腔を通り抜けている医療デバイスのカテーテルボディとインラインである(すなわちこれの周りで放射対称である)バルーンを取り付ける段階を含む。他の態様において、同方法は、シースの管腔を通り抜けている医療デバイスのカテーテルボディの周りで放射非対称であるバルーンを取り付ける段階を含む。
【0087】
図15に、本開示の1つの態様に基づく、上述に説明したいずれかのバルーンシースなどである内部バルーンシースを使用する例示的な方法1500を図示する。方法1500は、内部バルーンシースが患者の動脈切開部内にポジショニングされる段階1510で始まる。前述したように、上記に説明したシースのいずれも、シースボディの患者に近い端部上に形成された先端部を有してもよい。そうした先端部は、患者体内への挿入の助けとなるよう斜角がつけられてもよい。いくつかの態様において、シースボディは、シースを患者体内に挿入するために用いられる力などの大きな押力に、キンク、屈曲、または座屈をきたすことなく耐えられる積層構造を有してもよい。ある一定の態様において、患者体内への挿入前にシースの管腔内に拡張器が挿入されてもよい。拡張器は、シースのみでは貫通することが難しい患者身体の領域において、シースのポジショニングを補助する。挿入されたら、拡張器はシースの管腔から除去される。
【0088】
段階1520において、カテーテル式医療デバイスがシースの管腔内に挿入される。医療デバイスは、シースの遠位先端から出るまでシースボディの管腔内に進められ、そして患者の動脈切開部内にポジショニングされる。いくつかの態様において、医師は、医療デバイスのカテーテルボディの近位端に付着されたハブを把持することによって、医療デバイスのポジションを操作してもよい。所定のポジションになったら、カテーテルハブが、患者の外面上に位置するシースのハブに連結されてもよい。
【0089】
いくつかの態様において、シースは、上記に説明したように、シースボディの内面に取り付けられた内部バルーンを具備してもよい。他の態様において、バルーンは、医療デバイスのカテーテルボディに沿ってスライド可能式にアレンジされた追加的なバルーンスリーブ上に位置してもよい。シースが所定のポジションになりかつ医療デバイスが患者の動脈切開部内に挿入されたら、バルーンスリーブがカテーテルボディに沿って所定のポジションまでスライドされてもよい。バルーンスリーブはシースボディの内面とカテーテルボディの外面との間にポジショニングされる。ここでは簡潔さのため省略しているが、上記に説明した、シースおよび/またはバルーンスリーブに対する内部バルーンのさまざまな構成および取り付けが方法1500に適用可能である。
【0090】
上記に説明したように、シースボディの内面とカテーテルボディの外面との間に空間が存在してもよい。医療デバイスのポジショニング中の血液の停滞および凝固を防ぐため、医療デバイスが患者の動脈切開部内にポジショニングされたら、本発明の方法は、例えば生理食塩水または水などの灌注用流体でシースボディの管腔を(ひいては空間を)フラッシングする段階を任意で含んでもよい。そうした灌注用流体は、上記に説明したように、管腔に流体接続された灌注用サイドポートを介して管腔に提供されてもよい。
【0091】
段階1530において、シースの管腔内においてバルーンが膨張用流体で膨張され、それによって、管腔、および、シースボディの内面とカテーテルボディの外面との間の空間が、流体的に密封される。本開示の全体にわたって理解されるであろう点として、「密封」は、血餅の形成を可能にしうるいかなる量の流体フローも排除するように管腔を実質的に密封することを意味するものとして受け取られるべきである。膨張用流体は例えば生理食塩水、空気、または水を含んでもよい。そうした膨張用流体は、上記に説明したように、バルーンに流体接続された膨張用サイドポートを介してバルーンに提供されてもよい。いくつかの態様において、膨張用流体をバルーンに送達するためシースボディ内に膨張用管腔が提供されてもよい。
【0092】
バルーンは膨張すると、シースボディの内面およびカテーテルボディの外面と締まりばめを形成し、それによってカテーテルボディの軸方向の動きも防ぐ。そのようにして、バルーンは膨張後に医療デバイスを所定の位置に効果的にロックする。ある一定の態様において、バルーンの膨張はシースボディの弾性変形もまた引き起こし、それによって、膨張したバルーンに隣接したシースボディは患者の動脈切開部内で伸展して膨らみになる。そうした膨らみは、医療デバイスの使用中に患者の脈管構造内で内部バルーンシースのポジションをさらに固定し、それによってこれを確実固定する。
【0093】
望ましいのであれば、本明細書において論じた異なる段階が、異なる順序で、かつ/または互いに同時に、行われてもよい。さらに、望ましいのであれば、上述した段階のうち1つまたは複数が任意的であってもよく、または組み合わされてもよい。
【0094】
以上は本開示の原理を例示したものにすぎず、本発明のデバイスおよび方法は、限定ではなく例示の目的で提示される本説明の実施形態以外でも実施されうる。理解されるべき点として、本明細書に開示するデバイスおよび方法は、内部バルーンシースの製造における使用について示されているが、患者の脈管構造内に挿入するための単一直径の密封可能シースが脈管内手技中に必要とされる、他のシステムに適用されてもよい。
【0095】
当業者には、本開示の検討後にバリエーションおよび修正が考えられるであろう。本開示の諸特徴は、本明細書に説明する1つまたは複数の他の特徴との、任意の組み合わせおよび下位組み合わせ(複数の従属的な組み合わせおよび下位組み合わせを含む)において実施されてもよい。以上に説明または例証したさまざまな特徴は、そのコンポーネントも含めて、他のシステムに組み合わせまたは統合されてもよい。さらに、ある一定の特徴が省略されるかまたは実施されなくてもよい。
【0096】
変更、置換、および改変の例は当業者によって確認可能であり、かつ、本明細書に開示する情報の範囲から逸脱することなく行われうる。本明細書に挙げるすべての参照物は、その全内容が参照により組み入れられ、かつ本出願の一部をなす。
図1
図2
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図5
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図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図15