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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】散乱最適化済み吸収体を有するレーダー
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/03 20060101AFI20241001BHJP
   G01S 13/931 20200101ALI20241001BHJP
   H01Q 17/00 20060101ALI20241001BHJP
   H01Q 1/42 20060101ALI20241001BHJP
   H01Q 1/32 20060101ALI20241001BHJP
【FI】
G01S7/03 246
G01S13/931
H01Q17/00
H01Q1/42
H01Q1/32 Z
【請求項の数】 15
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023090969
(22)【出願日】2023-06-01
(65)【公開番号】P2023177351
(43)【公開日】2023-12-13
【審査請求日】2023-07-31
(31)【優先権主張番号】22176818
(32)【優先日】2022-06-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】518405522
【氏名又は名称】アプティブ・テクノロジーズ・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】アルミン・タライ
(72)【発明者】
【氏名】ロベルト・レオナルディ
【審査官】東 治企
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0268693(US,A1)
【文献】特開2007-235287(JP,A)
【文献】特開2010-210297(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0338568(US,A1)
【文献】特開昭61-256801(JP,A)
【文献】特開2005-249659(JP,A)
【文献】特開2004-077399(JP,A)
【文献】国際公開第2021/024634(WO,A1)
【文献】特開平05-121923(JP,A)
【文献】特開2007-057483(JP,A)
【文献】特開2001-127523(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00-7/42
G01S 13/00-13/95
H01Q 1/00-1/52
H01Q 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
視野(2)を有する少なくとも1つのアンテナ(1)と、
少なくとも1つのRF吸収体(9)と、
前記少なくとも1つのアンテナ(1)および前記少なくとも1つのRF吸収体(9)を覆うレドーム(3)と、
を備え、
前記少なくとも1つのRF吸収体(9)は、少なくとも1つの散乱構造を備える上部表面(10)を備え、前記少なくとも1つの散乱構造は、レーダー波を前記視野(2)から外に向け直し、前記レドーム(3)および前記少なくとも1つのRF吸収体(9)とのレーダー波散乱相互作用を増加させるように構成され
前記少なくとも1つのRF吸収体(9)の前記上部表面(10)は、前記レドーム(3)内に少なくとも部分的に埋め込まれる、レーダーセンサ。
【請求項2】
前記散乱構造は、窪みおよび/または突出部である少なくとも1つの構造を備える、請求項1記載のレーダーセンサ。
【請求項3】
前記窪みおよび/または突出部の形状は、全方向性散乱形状である、請求項に記載のレーダーセンサ。
【請求項4】
前記窪みおよび/または突出部の形状は、非鏡面反射形状である、請求項2または3に記載のレーダーセンサ。
【請求項5】
前記窪みの形状は凹状であり、前記突出部の形状は凸状である、請求項2から4のいずれか一項に記載のレーダーセンサ。
【請求項6】
前記窪みの内側表面および/または前記突出部の外側表面は、予め規定された表面テキスチャ粗さまたは刻み目を備える、請求項2から5のいずれか一項に記載のレーダーセンサ。
【請求項7】
前記予め規定された表面テキスチャ粗さまたは刻み目は、前記少なくとも1つのアンテナ(1)によって放出される前記レーダー波の波長の1/10以下のスケールである、請求項に記載のレーダーセンサ。
【請求項8】
前記散乱構造は複数の構造を備え、前記複数の構造の一部は、異なる形状および/または異なる寸法を有する、請求項2から7のいずれか一項に記載のレーダーセンサ。
【請求項9】
前記レドーム(3)は、前記レドーム(3)の長さに沿って可変厚さを有する、請求項1からのいずれか一項に記載のレーダーセンサ。
【請求項10】
前記レドーム(3)は、前記少なくとも1つのアンテナに向く第1のエリアおよび前記少なくとも1つのRF吸収体(9)に向く第2のエリアを有し、
前記第1のエリアの前記レドーム(3)の第1の厚さは、前記第2のエリアの前記レドーム(3)の第2の厚さより大きい、請求項に記載のレーダーセンサ。
【請求項11】
前記第2の厚さは、前記RF吸収体(9)の構造変化に対応して可変である、請求項10に記載のレーダーセンサ。
【請求項12】
前記RF吸収体(9)は、前記少なくとも1つのアンテナ(1)の前記視野(2)の外側に配置される、請求項1から11のいずれか一項に記載のレーダーセンサ。
【請求項13】
前記RF吸収体(9)は、前記レドーム(3)に接続する、請求項1から11のいずれか一項に記載のレーダーセンサ。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか一項に記載のレーダーセンサを備える、車両。
【請求項15】
レーダーセンサを製造する方法であって、
逆散乱構造を有する少なくとも1つの場所を備える表面を有するレドーム(3)を成形するステップと、
前記逆散乱構造に対応する相補的形状を有する散乱構造を備える上部表面(10)を有する少なくとも1つのRF吸収体(9)を成形するステップと、
前記レドーム(3)の前記表面の前記対応する少なくとも1つの場所に前記少なくとも1つのRF吸収体(9)のそれぞれを設けるステップと、
を含み、
前記散乱構造および前記逆散乱構造は、窪みおよび/または突出部である少なくとも1つの構造を有する、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、レーダーセンサ、レーダーセンサを備える車両、レーダーセンサを製造する方法、およびレーダーセンサ用のRF吸収体に関する。
【背景技術】
【0002】
レーダーセンサは、典型的には、1つのレーダーアンテナまたはアンテナアレイとして複数のレーダーアンテナを含む。1つまたは複数のアンテナを保護するために、レドームが設けられることができる。
【0003】
レドームは、通常、射出成形プラスチック部品であり、アンテナを環境(例えば、埃、湿気等)から保護するためにアンテナの前に位置する。これらのレドームは、アンテナの計装化視野(FOV)の隣の無線周波数(RF)吸収アタッチメントを覆うこともできる。これらのいわゆる「吸収体」または「RF吸収体」は、幾つかの理由で設けられる。1つの理由について、それらは、アンテナの利得および位相パターン上のリップルを最小にすることができる。同様に、それらは、アンテナのFOVの外側に放射されるエネルギーの量を最小にすることができる。
【0004】
成形RF吸収体自体は、それらの通常は大きい誘電率値によって引き起こされる無視できない反射レベルを含む。したがって、現状技術において、RF吸収体は、アンテナに直接向くそれらの表面上で幾何学的に成形されて、アンテナに向かって後方反射されるエネルギーの量を最小にする。
【0005】
しかしながら、レーダーセンサは、レーダー波が内部で散乱するシナリオの影響を受け易い。レドームは、散乱に寄与することができ、RF吸収体と相互作用することなく、レドーム材料を通して、散乱したレーダー波をさらに誘導することができる。この誘導は、レーダーセンサの(または、アンテナの)FOVの外側にレーダーセンサを出る弱く減衰したレーダー波をもたらす。この誘導は、レーダー波が、レーダーセンサの意図する検知方向に対して後ろ方向に伝搬するように、レドーム材料の内部で反射される場合に、特に問題となる。
【0006】
そのように散乱したレーダー信号が、FOVの外側でおよび/またはレーダーセンサの背後でオブジェクトによって反射されると、偽検出またはゴースティングが起こる場合がある。セーフティクリティカルなシステム(例えば、車両)に配備されると、これらの偽検出またはゴースティング信号は、安全性リスクを負う。同様に、そのような複雑な散乱シナリオにさらされると、レーダーセンサの較正が難しくなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本開示は、上記で特定された技術的問題に対処する目的を有する。独立請求項の主題は、上記で特定された技術的問題を解決する。従属請求項は、さらなる好ましい実施形態を説明する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の第1の態様によれば、レーダーセンサは、視野を有する少なくとも1つのアンテナと、少なくとも1つのRF吸収体と、少なくとも1つのアンテナおよび少なくとも1つのRF吸収体を覆うレドームと、を備える。本明細書において、少なくとも1つのRF吸収体は、少なくとも1つの散乱構造を備える上部表面を備え、少なくとも1つの散乱構造は、レーダー波を視野から外に向け直し、レドームおよび少なくとも1つのRF吸収体とのレーダー波散乱相互作用を増加させるように構成される。
【0009】
本開示の第2の態様によれば、少なくとも1つのRF吸収体の上部表面は、レドーム内に少なくとも部分的に埋め込まれる。
【0010】
本開示の第3の態様によれば、散乱構造は、窪みおよび/または突出部である少なくとも1つの構造を備える。
【0011】
本開示の第4の態様によれば、窪みおよび/または突出部の形状は、全方向性散乱形状である。
【0012】
本開示の第5の態様によれば、窪みおよび/または突出部の形状は、非鏡面反射形状である。
【0013】
本開示の第6の態様によれば、窪みの形状は凹状であり、突出部の形状は凸状である。
【0014】
本開示の第7の態様によれば、窪みの内側表面および/または突出部の外側表面は、予め規定された表面テキスチャ粗さまたは刻み目を備える。
【0015】
本開示の第8の態様によれば、予め規定された表面テキスチャ粗さまたは刻み目は、少なくとも1つのアンテナによって放出されるレーダー波の波長の1/10以下のスケールである。
【0016】
本開示の第9の態様によれば、散乱構造は複数の構造を備え、複数の構造の一部は、異なる形状および/または異なる寸法を有する。
【0017】
本開示の第10の態様によれば、レドームは、その長さに沿って可変厚さを有する。
【0018】
本開示の第11の態様によれば、レドームは、少なくとも1つのアンテナに向く第1のエリアおよび少なくとも1つのRF吸収体に向く第2のエリアを有する。本明細書において、第1のエリアのレドームの第1の厚さは、第2のエリアのレドームの第2の厚さより大きい。
【0019】
本開示の第12の態様によれば、第2の厚さは、RF吸収体の構造変化に対応して可変である。
【0020】
本開示の第13の態様によれば、RF吸収体は、少なくとも1つのアンテナの視野の外側に配置される。
【0021】
本開示の第14の態様によれば、RF吸収体は、レドームに接続する。
【0022】
本開示の第15の態様によれば、車両は、先行する態様のいずれか1つの態様によるレーダーセンサを備える。
【0023】
本開示の第16の態様によれば、レーダーセンサを製造する方法は、逆散乱構造を有する少なくとも1つの場所を備える表面を有するレドームを成形するステップと、逆散乱構造に対応する相補的形状を有する散乱構造を備える上部表面を有する少なくとも1つのRF吸収体を成形するステップと、レドームの表面の対応する少なくとも1つの場所に少なくとも1つのRF吸収体のそれぞれを設けるステップと、を含む。本明細書において、散乱構造および逆散乱構造は、窪みおよび/または突出部である少なくとも1つの構造を有する。
【0024】
上記で要約した態様の結果として、散乱波および後方放射のエネルギーが低減される。さらなる利益として、この技術的な効果は、現状技術のレーダーセンサと比較すると、RF吸収体材料の量およびレーダーセンサのRCSを低減させながら達成される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】散乱挙動の例示のための現状技術によるレーダーセンサの断面図である。
図2】散乱挙動の例示のための本開示の一実施形態によるレーダーセンサの断面図である。
図3】全方向性散乱窪みの機能態様の例示のための本開示の一実施形態によるレーダーセンサの3D例示である。
図4】後方放射挙動の例示のための現状技術によるレーダーセンサの断面図である。
図5】後方放射挙動の例示のための本開示の一実施形態によるレーダーセンサの断面図である。
図6】入射エネルギーと比較した反射エネルギーの量を例示するための現状技術によるレーダーセンサの3D例示である。
図7】入射エネルギーと比較した反射エネルギーの量を例示するための本開示の一実施形態によるレーダーセンサの3D例示である。
図8】現状技術による平坦吸収体上部表面のRCSと本開示の一実施形態による吸収体上部表面のRCSとを比較するためのシミュレーション結果の図である。
図9】現状技術による例示的なレーダーセンサの方位角誤差のシミュレーション結果の図である。
図10】本開示の一実施形態による例示的なレーダーセンサの方位角誤差のシミュレーション結果の図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
アンテナから放出されるレーダー波は、検知用のレーダーセンサによって標的とされる環境に入る前にレドーム材料を通って伝わる。このレドーム材料は、レーダー波を、偏向させる、反射させる、または散乱させることができる。レドームと接触状態にあるRF吸収体は、レーダー波がレドーム材料内で散乱するシナリオに関わる。このシナリオは、「レーダーセンサ内部散乱シナリオ(radar sensor internal scattering scenario)」とも呼ばれ、複雑である可能性があり、レーダーセンサから異なる(かつ好ましくない)方向へレーダー波が放出することをもたらす可能性がある。このシナリオについての制御レベルは、達成される較正角度精度およびFOV外放射に相関する。
【0027】
特に、レドームがRF吸収体を覆うとき、RF吸収体は、アンテナに向かないレドームの表面(すなわち、「レドーム上部表面(radome top-surface)」)と、レドーム材料に向く(かつ/またはレドーム材料と接触状態にある)RF吸収体の表面(すなわち、「吸収体上部表面(absorber top-surface)」)と、の間の反射に関わる。レーダーセンサの各アンテナは、吸収体上部表面において異なる位置に関連する散乱シナリオを引き起こすことになる。
【0028】
現状技術は、レドームに向く吸収体上部表面が平坦であると考える。レドーム材料が吸収体上部表面と接触状態にあるとき、接触部は、「界面(interface)」とも呼ばれる。この平坦な吸収体上部表面または界面は、吸収体上部表面からレーダーセンサのFOV内に散乱するレーダー波をもたらす可能性がある。このFOVは、到来する(すなわち、ターゲットから反射された)レーダー波に関して散乱波について同じ方向(または仰角平面)に向けられるため、レドーム材料の内部での散乱は、FOVの内部でのさらなる歪み、そしてその結果、より悪い検知および較正結果をもたらす可能性がある。
【0029】
吸収体上部表面によるこれらの角度精度に関連する散乱問題に加えて、現状技術は、RF吸収体の周りを通過するより高い散乱レベルを可能にする場合がある。換言すれば、レーダー波は、誘導方式でレーダーセンサ内で(すなわち、レドーム上部表面と吸収体上部表面との間で)反射または散乱すること可能性があり、レーダー波がRF吸収体にわたってかつその周りに伝わることを可能にする。吸収体上部表面がレドーム材料に接続するとき、レドームはさらに、レーダー波の内部反射を可能にするガイドとして働く可能性がある。レーダーセンサを通して誘導されるレーダー波は、そのエッジで、同様に、レーダーセンサのFOVと反対の方向にレーダーセンサを出る可能性があり、いわゆる「後方放射」をもたらす。そのような散乱は、FOV外放射に基づくゴーストターゲット問題を引き起こす場合がある。ゴーストターゲットの検出は、セーフティクリティカルな検知システムにおいて、例えば、レーダーセンサが車両に統合されるときに、問題である。
【0030】
現状技術は、散乱最適化済み吸収体上部表面を覆わず、この上部表面は、レドームによって覆われる、かつ/または、レーダーセンサ内に組み立てられると、アンテナに向くレドームの表面(すなわち、「レドーム下部表面(radome bottom-surface)」)と接続することになる。
【0031】
したがって、本開示は、エネルギーが、吸収体上部表面によってレーダーセンサのFOV内に指向的に散乱されるときに、および、エネルギーが、RF吸収体の周りに散乱され、高レベルの後方放射をもたらすときに起こる技術的問題または欠点に対処する。
【0032】
独立請求項の主題は、上記で説明した欠点を克服する。従属請求項は、さらなる好ましい実施形態を説明する。本開示は、RF吸収体とのレーダー波散乱相互作用を増加させる吸収体上部表面の形状(または、RF吸収体とレドーム材料との間の界面の形状)を設けることによって欠点を克服する。
【0033】
RF吸収体は、レーダー波とRF吸収体との相互作用(の回数)を増加させるためにレーダー波を散乱させるため、より多くの散乱レーダー波エネルギーが吸収され得る。結果として、散乱した無線波散乱エネルギーおよび後方放射エネルギーの量が低減される。この低減は、方位角発見精度と仰角発見精度との両方を改善する。同時に、このRF吸収体形状は、考えられるゴーストターゲットのレーダーセンサによる検出を軽減するためにFOV外放射を改善する制御ファクタを可能にする。RF吸収体からの散乱したエネルギーが制御され得るため、レーダーセンサの計装化FOV内の歪みが最小にされ得ると共に、後方放射のエネルギーレベルが、ゴーストターゲット検出を防止するために制御され得る。これらの利益は、車両統合レベルに関して特に興味深い。
【0034】
本開示によれば、上記で説明した技術的問題または欠点は、RF吸収体をレドーム材料内に少なくとも部分的に埋め込むまたは押し出すことによって、および/または、1つまたは複数の散乱最適化済み窪みまたはインサートを吸収体上部表面内に適用することによって解決される。
【0035】
本開示の一実施形態として、レーダーセンサが提供され、レーダーセンサは、視野2を有する少なくとも1つのアンテナ1と、少なくとも1つのRF吸収体9と、少なくとも1つのアンテナ1および少なくとも1つのRF吸収体9を覆うレドーム3と、を備え、少なくとも1つのRF吸収体9は、少なくとも1つの散乱構造を備える上部表面10を備え、少なくとも1つの散乱構造は、レーダー波を視野2から外に向け直し、レドーム3および少なくとも1つのRF吸収体9とのレーダー波散乱相互作用を増加させるように構成される。本明細書において、RF吸収体9およびレドーム3の材料は異なる比誘電率を有する。特に、RF吸収体9の材料は、レドーム3の材料より高い比誘電率を有することができる。
【0036】
図1は、現状技術によるレーダーセンサおよびその散乱挙動の断面を示す。アンテナ基板上のレーダーアンテナ(アレイ)1は、所定の計装化FOV2を含むことができ、その計装化FOV2は、レーダーセンサの仰角平面の法線の周りで-75°から+75°以内の150°の広い方位角FOVとすることができる。一般に、アンテナによる放出放射は、±75°で停止するのではなく、±90°まで存在する可能性がある。レドーム3は、アンテナ1(およびそのセンサ)を環境から保護するためにアンテナ1を覆う。RF吸収体4は、レーダーセンサの一部として設けられ、FOV2の外側に配置されて、放出レーダー波によって照射されないものとするエリアに向かう放射を阻止する。このRF吸収体4は、アンテナ1に向かって配向したその表面(すなわち、「吸収体側部表面(absorber side-surface)」5)上に反射最小化形状を有する。さらに、RF吸収体4は、レドーム3に向くまたはレドーム3と接続する平坦吸収体上部表面6を有する。吸収体側部表面5および平坦吸収体上部表面6は、現状技術に従って成形される。
【0037】
図1に示される反射経路7および8は、反射経路が、レドーム上部表面とアンテナ基板と平坦吸収体上部表面6との間に存在することを示す。平坦吸収体上部表面6は、入射波がそこから生じる同じ仰角下でバウンシングエネルギーを主に通過させることになる。RF吸収体4の高い比誘電率(DK)値(例えば、DK≧10)のために、反射エネルギーの量は、無視できないことになる。その結果、RF吸収体からの反射エネルギーは、おそらくFOVの内部で位相歪みを付加することになり、レーダーセンサの方位角および仰角誤差を増加させる。
【0038】
図2は、本開示の一実施形態によるレーダーセンサの断面図を示し、RF吸収体9とのレーダー波散乱相互作用を増加させるために成形されたRF吸収体9を示す。このRF吸収体9は、2つの特性を含む:
a)RF吸収体9は、レドーム3内に部分的に移動される、押し出される、または埋め込まれる、かつ、
b)RF吸収体9は、散乱構造を有する吸収体上部表面10を有する。
【0039】
2つの特性の少なくとも一方は、上記で説明した欠点を解決するために適用され得る。
【0040】
本明細書において、特性a)は、レドーム3の残りの厚さと(その結果の)レドーム3の内部でレーダー波を伝えるための空間角度との両方を減少させる。これは、通過するレーダー波についてRF吸収体9とのさらなる相互作用を強制し、この望ましくない伝搬経路のエネルギーおよび(その結果)後方放射エネルギーを低減する。
【0041】
特性b)に関して、示される反射経路11および12は、散乱構造からの反射が、非鏡面(または拡散)反射挙動をもたらし、その反射挙動が、点線で示す、FOV2の外側である高い仰角平面内へのレーダー波の偏向を含むことを示す。さらに(また図3に示すように)、レーダー波散乱相互作用(相互作用点16として示す)の回数は、散乱構造によって増加し、それにより、この望ましくない伝搬経路のエネルギーを低減する。
【0042】
同様に、散乱構造を有する吸収体上部表面10を設けることによって、RF吸収体9を製造するために必要な材料の量は、平坦吸収体上部表面6を有するRF吸収体4と比較して低減され得る。特に、RF吸収体9との散乱相互作用を増加させながら、材料の量を50%だけ低減することが可能になる。
【0043】
図3は、本開示の一実施形態による、また、吸収体上部表面10によるさらなる機能に的を絞ったレーダーセンサの一部を示す。アンテナ1から生じた例示するレーダー波15は、レドーム上部表面で反射することができ、吸収体上部表面10に衝突する。例えば、1つまたは複数の全方向性および/または鏡面インサートおよび/または窪みを特徴とする、散乱構造の提案される表面形状の性質によって、レーダー波は、レドーム3に向けられる前にRF吸収体9上で2回以上反射することができる。この文脈で、用語「全方向性」は、吸収体上部表面10に接近する入射波が、負の符号を有する同じ角度下で反射され得るのではなく、反射エネルギーが、アンテナ1のFOV(例えば、アンテナ1の上方の完全な半球)の複数の(理想的には全ての)角度内に、分配され得ることを意味する。結果として、任意の単一方向への反射エネルギーは、低く(より低く)、レーダーセンサの較正に対するさらなる悪い影響をもたらさないとすることができる。吸収体上部表面10のこの構成によって、レーダー波とRF吸収体9との相互作用の回数は増加し、この望ましくない伝搬経路の振幅をさらに低減する。最終的に、放出レーダー波17は、FOVの外側の仰角に対してかつレーダーセンサを乱すことのないエネルギーレベルで反射することができる。
【0044】
したがって、本開示のさらなる好ましい実施形態として、少なくとも1つのRF吸収体9の上部表面10は、レドーム3内に少なくとも部分的に埋め込まれることができ、かつ/または、散乱構造は、窪みおよび/または突出部である少なくとも1つの(空間)構造を備えることができる。それにより、上部表面吸収体反射から生じる位相歪みが減少し、それは、レーダーセンサによる方位角および仰角の角度誤差を低減することができる。
【0045】
本開示のさらなる好ましい実施形態として、窪みの形状は凹状とすることができ、かつ/または、突出部の形状は凸状とすることができる。すなわち、窪みおよび/または突出部の形状(すなわち、空間構造の形状)は、全方向性散乱形状、非鏡面反射形状、凹形状、および/または、球インサートまたは半球カットアウトのような凸形状とすることができる。そのようなインサートまたはカットアウトは、反射エネルギーを1dBだけ低減することができる。窪みおよび/または突出部(すなわち空間構造)は、少なくとも1つのRF吸収体9内に延在する線形スロットまたは線形カットとすることもできる。
【0046】
本開示のさらなる好ましい実施形態として、窪みの内側表面および/または突出部の外側表面(すなわち、空間構造を記述する表面)は、予め規定された表面テキスチャ粗さ、刻み目、または凹凸を備えることができる。特に、予め規定された表面テキスチャ(粗さ、刻み目、または凹凸)は、少なくとも1つのアンテナ1によって放出されるレーダー波の波長の1/10(十分の一)以下のスケールとすることができる。すなわち、アンテナ2がレーダー波を所定の波長で放出することを考えると、十分な粗さ、刻み目、または凹凸は、波長(「ラムダ(lambda)」とも呼ばれる)を10で割った値以下の大きさの任意の構造によって達成され得る。それにより、全方向性および非鏡面散乱は、さらに小さいスケールで起こり、RF吸収体9との散乱相互作用をさらに増加させる。RF吸収体9による非鏡面散乱をさらに改善するために、吸収体上部表面10(すなわち、窪みまたはインサートの内部表面を含むまたは含まない)は、粗化され得る。
【0047】
本開示のさらなる好ましい実施形態として、散乱構造は、複数の(例えば、少なくとも2つの)(空間)構造を備えることができ、複数の(散乱)構造の一部は、異なる形状、異なる寸法、および/または異なるサイズを有することができる。本明細書において、その差は、放射方向またはアンテナ1の偏波によって理由付けられることができる。同様に、空間構造は、均一にまたは不規則に成形され得る。空間構造の好ましいサイズは、0.1mm(例えば、球インサートまたは半球カットアウトの直径あるいは線形スロットまたはカットの間隔/幅)とすることができる。形状および/またはサイズは、アンテナ1によって放出されるレーダー波の波長に応じて作られることもできる。この場合、形状および/またはサイズは、半波長(またはハーフラムダ)寸法決定に従うことができる。
【0048】
本開示のさらなる好ましい実施形態として、レドーム3および/またはRF吸収体9は、その(すなわち、RF吸収体9の)長さ(方向)に沿って可変厚さを有することができる。レドーム3の可変厚さは、レドーム上部表面からRF吸収体9の窪みに向かう、よりよい直接反射に対するものであるとすることができる。RF吸収体9の可変厚さは、RF吸収体9の下方に配置された構成要素を回避するかまたはそれを補償するためのものとすることができる。例えば、導波路が、RF吸収体9の下方に位置決めされ得、RF吸収体9の材料によってやはり覆われなければならない。同様に、吸収体側部表面5の形状は、RF吸収体9(または、吸収体側部表面5に近い窪み)がその形状に対して調整されることを必要とする場合がある。
【0049】
したがって、本開示のさらなる好ましい実施形態として、レドーム3は、少なくとも1つのアンテナに向く第1のエリアおよび少なくとも1つのRF吸収体9に向く第2のエリアを有することができ、第1のエリアのレドーム3の第1の厚さは、第2のエリアのレドーム3の第2の厚さより大きい。本開示のさらなる好ましい実施形態として、第2の厚さは、RF吸収体9の構造変化に対応して可変とすることができる。すなわち、厚さ可変性は、吸収体上部表面10が上記で説明した(空間)構造を有することによるとすることができる。したがって、RF吸収体9とレドーム3との間の界面は増加し、散乱最適化済み吸収体上部表面10の利点が、RF吸収体9との界面においてレドーム3の厚さを低減することに加えて得られる。
【0050】
本開示のさらなる好ましい実施形態として、RF吸収体9は、(少なくとも1つの)アンテナ1の視野2の外側に配置され得る。すなわち、RF吸収体9は、アンテナアレイの複数のアンテナのFOVの一部のFOVに干渉しない限り、アンテナアレイの複数のアンテナの一部のアンテナのFOVにやはり干渉することができる。それでも、RF吸収体9を、(例えば、特定のアプリケーションに基づいてそのFOVをさらに制限するために)アンテナ1のFOV2と交差するように位置決めすることが可能であるが、RF吸収体9が、アンテナ1のFOV2の外側に位置することが好ましい。この選好は、交差するRF吸収体9が、RF吸収体9との相互作用角度においてレーダーセンサに対する減衰を付加することになり、利得パターンに対して強いロールオフをもたらすからである。したがって、RF吸収体9を交差させることによってFOVを成形するのではなく、アプリケーション特有のFOVを有するアンテナ1を設計し、RF吸収体9を、アンテナ1のFOV2の外側に配置することが好ましい。
【0051】
本開示のさらなる好ましい実施形態として、RF吸収体9は、レドーム3と接続する(または、接触状態になる)ことができる。すなわち、RF吸収体9は、対応する形状または表面構造を有するレドーム3と機械的に結合され/レドーム3に機械的に結合され得る。それにより、既に複雑な散乱シナリオに対して予測し難いレーダー波屈折を付加する、レドーム3とRF吸収体9との間の空気ギャップが除去される。
【0052】
本開示の別の実施形態として、車両が提供され得、車両は、上記で説明したレーダーセンサを備える。
【0053】
本開示の別の実施形態として、レーダーセンサを製造する方法が提供され、方法は、逆散乱構造を有する少なくとも1つの場所を備える表面を有するレドーム3を(最初に)成形するステップと、(レドーム3の)逆散乱構造に対応する相補的形状を有する散乱構造を備える上部表面10を有する少なくとも1つのRF吸収体9を(第2に)成形するステップと、レドーム3の表面の対応する少なくとも1つの場所に少なくとも1つのRF吸収体9のそれぞれを設けるステップと、を含み、散乱構造および逆散乱構造は、窪みおよび/または突出部である少なくとも1つの(空間)構造を有する。
【0054】
本開示のさらなる好ましい実施形態として、レドーム3は、射出成形または3D印刷によって成形され得、少なくとも1つのRF吸収体9は、射出成形または3D印刷によって成形され得る。
【0055】
本明細書において、レドーム3とRF吸収体9との両方のために(射出)成形製造を使用するとき、レドーム3が最初に形成され、RF吸収体9が、形成プロセスの成形ダイとして既に形成されたレドーム3(すなわち、前記負の散乱構造)を使用することによって第2に形成されることが好ましい。しかしながら、レドーム3およびRF吸収体9を別々に(および、上記とは逆の順序で)形成することが可能である。その後、RF吸収体9は、レドーム3の表面上のその対応する場所にはめ込まれることができ、接着剤、圧力、または摩擦によって所定の場所に保持され得る。
【0056】
本開示の別の実施形態として、RF吸収体9は、上記で説明したようにレーダーセンサのために(しかし、組み立てられたシステム、例えば、上記で説明したレーダーセンサの一部としてではなく)設けられることができ、RF吸収体9は、窪みおよび/または突出部である少なくとも1つの構造を有する散乱構造を備える上部表面10を備える。本明細書において、上部表面10(または吸収体上部表面)は、レドーム3に向くまたはレドーム3と接続するように設計された表面とすることができる。
【0057】
(後方放射)
図4は、現状技術によるレーダーセンサの断面を示す。本明細書において、後方放射13は、平坦吸収体上部表面6を含む反射経路として示される。後方放射13は、アンテナのFOV2の外側に向けられる。図4に示すように、レーダー波は、方位角>90°でそのエッジにおいてレーダーセンサを出る(後方放射13と呼ばれる)前に、レドーム上部表面と平坦吸収体上部表面6との間で反射する。アンテナ1の設計に応じて、後方放射13についてのエネルギーレベルは、レーダーセンサが車両に統合されると、偽陽性検出を引き起こすのに十分に高い可能性がある。したがって、後方放射13を反射するアンテナのFOV2の外側のターゲットは、アンテナのFOV2内に位置決めされるものとして現れるゴーストターゲットとして採取される場合がある。
【0058】
図4と対照的に、図5は、本開示の一実施形態によるレーダーセンサの断面を示す。本明細書において、後方放射14は、吸収体上部表面10を含む反射経路として示される。RF吸収体9は、レドーム3内で(少なくとも部分的に)移動される、押し出される、またはそこに埋め込まれるため、レーダー波は、レドーム上部表面と吸収体上部表面との間で、複数回;すなわち、上記図4を参照して説明したシナリオの場合よりも頻繁に跳ね返る。跳ね返りの回数の増加は、RF吸収体9との相互作用の回数の増加を含み、相互作用するたびにレーダー波のエネルギーを低減する。結果として、後方反射波は、より低いエネルギーレベルを有する。1つまたは複数の窪みまたはインサートは、同様にそれに寄与する。したがって、(少なくとも部分的に)RF吸収体9をレドーム3内に挿入または移動させること、および/または、吸収体上部表面10にわたって1つまたは複数の窪みを設けることは共に、RF吸収体9の上方でレドーム3の内部で伝わるレーダー波についての空間角度を低減することになり、また、RF吸収体9との散乱相互作用の回数を増加させることになる。
【0059】
(散乱相互作用)
図6は、入射エネルギーと比較した反射エネルギーの量を例示するための現状技術によるレーダーセンサを示す。平坦吸収体上部表面6を有する(成形)RF吸収体4は、入射波のエネルギーの一部を吸収する。しかしながら、全てのエネルギーがRF吸収体4によって吸収されるわけではない。これは、RF吸収体4の方を指す矢印(入射波を示す)よりわずかに小さいだけであるRF吸収体4から外方を指す矢印(反射波を示す)によって図6に示される。
【0060】
図7は、入射エネルギーと比較した反射エネルギーの量を例示するための本開示の実施形態によるレーダーセンサを示す。本明細書において、吸収体上部表面10(1つまたは複数のインサートまたは窪みを備える)を有する(成形)RF吸収体9は、RF吸収体9との散乱相互作用(の回数)を増加させる(すなわち、図3を参照して上記で説明したように)。それにより、図6に示すRF吸収体4と比較して、より多くのエネルギーが、RF吸収体9によって吸収される。この効果は、RF吸収体4の方を指す矢印(入射波を示す)より著しく小さいRF吸収体4から外方を指す矢印(反射波を示す)によって図7に示される。
【0061】
1つまたは複数のインサートまたは窪みを備える吸収体上部表面10を有するRF吸収体9の改善された吸収は、レーダーセンサのレーダー断面積(RCS)が低減される効果も有する。したがって、接近波(例えば、車両のフェイシア(fascia)からのマルチバウンス反射によって引き起こされる)のエネルギーが、低減されることもできる。
【0062】
例えば、車両に適用されると、レーダーシステムのレーダー前面は、接近波を反射することができ、それにより、フェイシアがレーダーセンサの前にあると、マルチバウンス反射に関わる。レーダー前面は、レーダーセンサのサイズおよび/または表面積が増加するにつれて、著しく大きくなる可能性がある特定のRCSを有する。接近波の反射に寄与することは、同様にレーダーシステムのFOV内へのマルチバウンスを引き起こし、したがって、レーダーシステムがフェイシアの背後に統合されると、角度誤差を増加させる。本開示による吸収体上部表面10は、レーダー前面によるRCSを低減し、それにより、フェイシアの背後に統合されたときのレーダーセンサによる角度精度を改善する。
【0063】
(シミュレーション結果)
図8は、平坦吸収体上部表面6(すなわち、現状技術による)のRCSと吸収体上部表面10(すなわち、本開示の一実施形態による)のRCSとを比較するシミュレーション結果を示す。特に、図8は、RF吸収体およびレドーム単位セル(unit cell)によるシミュレートされたRCSをdB/(mm)単位で示し、単位セルは、フルレーダーセンサの小面積カットアウトである。フルレーダーセンサは、そのような単位セルの多くによって構成されることになる。したがって、そのような(カットアウトされた)単位セルをシミュレートすることから導出される結果は、フルレーダーシステムに適用可能である。単位セルは、単一(空間)構造、例えば、単一窪みまたは単一突出部を含む部分とすることができる。より小さいRCSがよりよいため、散乱最適化済み吸収体上部表面10を特徴とするシミュレートされた単位セルが、平坦吸収体上部表面6を特徴とする単位セルをしのぐことが図8において見られることができる。これは、レーダーアプリケーションにおいて典型的に使用される周波数をカバーする76GHzと77GHzとの間の周波数帯について当てはまる。
【0064】
図9および図10は、現状技術によるレーダーセンサおよび本開示の一実施形態によるレーダーセンサの方位角誤差のシミュレーション結果を示し比較する。これらのシミュレーションについて、例示的な角度誤差限界は、±75°の方位角について±0.5°に設定される。両方の吸収体上部表面6および10について、3つの仰角平面、すなわち、-4°、0°、および+4°がシミュレートされた。
【0065】
2つの図を比較することからわかるように、図10の散乱最適化済み吸収体上部表面10は、この限界が達成されるカバレッジの範囲を改善するまたは広げる。換言すると、図9のシミュレートされた平坦吸収体上部表面6は、散乱最適化済み吸収体上部表面10と比べて早期に(すなわち、0°に近い、または、±75°のFOVからさらに離れた方位角において)角度誤差限界を(平均して)超える。
【0066】
特に、平坦吸収体上部表面6は、-65°と-70°との間の方位角において±0.5°の誤差限界を妥当性確認するが、散乱最適化済み吸収体上部表面10は、-70°以下の方位角において誤差限界を妥当性確認する。これは、この比較シミュレーションの場合、レーダーセンサのFOVの範囲の負の端部における方位角値についての角度誤差が低減され、より広い範囲の全FOVにわたるよりよい検出を可能にすることを意味する。
【0067】
同様に、凡例に示すように、3つの仰角平面についてのFOVのカバレッジは、-4°仰角について90.07%カバレッジから92.72%カバレッジまで、0°仰角について93.38%カバレッジから96.69%カバレッジまで、そして、+4°仰角について92.72%カバレッジから96.03%カバレッジまで改善される。したがって、±0.5°の誤差限界におけるFOVカバレッジは、平坦吸収体上部表面6と比較して、散乱最適化済み吸収体上部表面10によって、平均して約3%だけ改善される。
【0068】
要約すると、吸収体上部表面10の非平坦かつ散乱最適化済み形状の適用は、望ましくないレーダー波をFOVから外に向け直し、レドーム3および散乱最適化済みRF吸収体9とのレーダー波(散乱)相互作用を増加させることによって、望ましくない伝搬経路のエネルギーを低減する。
【符号の説明】
【0069】
1 アンテナ
2 視野
3 レドーム
4 RF吸収体
5 吸収体側部表面
6 平坦吸収体上部表面
7 反射経路
8 反射経路
9 RF吸収体、散乱最適化済みRF吸収体
10 上部表面、吸収体上部表面、散乱最適化済み吸収体上部表面
11 反射経路
12 反射経路
13 後方放射
14 後方放射
15 レーダー波
16 相互作用点
17 放出レーダー波
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10