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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】着色組成物、及び、着色レジスト組成物
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/20 20060101AFI20241001BHJP
   C09B 29/033 20060101ALI20241001BHJP
   C09B 29/03 20060101ALI20241001BHJP
   C09B 5/24 20060101ALI20241001BHJP
   C09B 19/02 20060101ALI20241001BHJP
   C09B 3/14 20060101ALI20241001BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20241001BHJP
【FI】
G02B5/20 101
C09B29/033
C09B29/03
C09B5/24
C09B19/02
C09B3/14
G03F7/004 505
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2023097843
(22)【出願日】2023-06-14
(62)【分割の表示】P 2019029452の分割
【原出願日】2019-02-21
(65)【公開番号】P2023118756
(43)【公開日】2023-08-25
【審査請求日】2023-07-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000105947
【氏名又は名称】サカタインクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】辻 康人
(72)【発明者】
【氏名】米田 善紀
(72)【発明者】
【氏名】中川 朋樹
【審査官】内村 駿介
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-207306(JP,A)
【文献】特開2009-282251(JP,A)
【文献】特開2011-118367(JP,A)
【文献】特開2004-219809(JP,A)
【文献】特開2005-189720(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/20-5/28
C09B 29/033
C09B 29/03
C09B 5/24
C09B 19/02
C09B 3/14
G03F 7/004
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔料及びバインダー樹脂を含み、
前記顔料は、C.I.ピグメントオレンジ16及びC.I.ピグメントイエロー139からなる群より選ばれる1つ以上、
C.I.ピグメントブルー60、並びに、
C.I.ピグメントバイオレット29を含み、
前記C.I.ピグメントオレンジ16及びC.I.ピグメントイエロー139からなる群より選ばれる1つ以上の含有量は、前記顔料の全量に対して、5~45質量%であり、
前記バインダー樹脂は、酸価が40~200mgKOH/gである
ことを特徴とする着色組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の着色組成物を用いて製造される着色レジスト組成物。
【請求項3】
ブラックマトリックス、ブラックカラムスペーサー又は黒色隔壁材料として用いられる請求項1に記載の着色組成物、又は、請求項2に記載の着色レジスト組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着色組成物、及び、それを含有する着色レジスト組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ブラックマトリックス用着色組成物の用途は多岐にわたり、例えば、液晶やプラズマ等のフラットパネルディスプレイにおいては、画面の表示領域内の着色パターンの間隙や表示領域周辺部分の縁、また、TFTを用いた液晶ディスプレイではTFTの外光側等で遮光膜(ブラックマトリックス)を設けるために用いられている。そして、液晶ディスプレイでは主にバックライトからの漏れ光が、また、プラズマディスプレイでは主に各色光の混濁によるにじみが画面に写り込むのを防止して、表示特性(コントラスト及び色純度)を向上させるために役立っている。
【0003】
例えば、液晶ディスプレイのバックライトの白色光を着色光に変換するために利用されるカラーフィルターでは、通常、ブラックマトリクスを形成したガラスやプラスチックシート等の透明基板表面に、赤、緑、青の異なる色相の画素を順次、ストライプ状あるいはモザイク状等のパターンで形成する方法で製造されている。
【0004】
また、画像表示装置と位置入力装置を合わせたタッチパネルにおいても、同様に遮光膜としてブラックマトリクスが形成されたカラーフィルターが利用されており、これまでは、カバーガラスを挟んで、センサー基板と反対の側に形成することが一般的になされていた。しかし、タッチパネルの軽量化への要求が高まるにつれて、より軽量化が図れるよう、カバーガラスの同じ側に遮光膜とタッチセンサーを同時に形成する技術の開発が進んでいる。
【0005】
例えば、特許文献1では、色スペーサー形成用感光性着色組成物において、着色剤として特定の顔料とカーボンブラックを組み合わせて用い、かつ、カーボンブラックの含有割合を特定範囲にすることにより、遮蔽性等を付与する技術が開示されている。
【0006】
また、例えば、特許文献2では、光吸収特性の異なる顔料種を適切に組み合わせ、紫外領域と可視領域の光吸収のバランスを確保することで、遮光性と液晶の電圧保持率を維持する技術が開示されている。
【0007】
ところで、画像表示装置の液晶層を構成するブラックマトリックス等の着色組成物の耐溶剤性が低い場合には、画素パターンにクラックや欠けが生じたり、画素パターンから着色成分が溶出したりする問題が生じる。
上述した技術では、耐溶剤性については検討されておらず、耐溶剤性に優れたブラックレジストパターンを得ることができるブラックマトリックス着色組成物の開発が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2016-177190号公報
【文献】国際公開第2013/115268パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明の課題は、遮光性に優れ、かつ、耐溶剤性にも優れたブラックレジストパターンを得ることができる着色組成物、及び、それを含有する着色レジスト組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、顔料及びバインダー樹脂を含む着色組成物において、特定の顔料を組み合わせて用いることにより、優れた遮蔽性を有しつつ、耐溶剤性にも優れたブラックレジストパターンを作製することができる着色組成物が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、顔料及びバインダー樹脂を含み、上記顔料は、C.I.ピグメントオレンジ16及びC.I.ピグメントイエロー139からなる群より選ばれる1つ以上、並びに、C.I.ピグメントブルー60を含むことを特徴とするブラックマトリックス用着色組成物に関する。
【0012】
また、上記顔料は、C.I.ピグメントバイオレット23及びC.I.ピグメントバイオレット29からなる群より選ばれる1つ以上を更に含むことが好ましい。
また、本発明は、本発明の着色組成物を用いて製造される着色レジスト組成物でもある。
また、ブラックマトリックス、ブラックカラムスペーサー又は黒色隔壁材料として用いられる本発明の着色組成物、又は、本発明の着色レジスト組成物でもある。
以下、本発明の着色組成物、及び、それを含有する着色レジスト組成物について詳細に説明する。
【0013】
(顔料)
本発明の着色組成物は、顔料が、C.I.ピグメントオレンジ16及びC.I.ピグメントイエロー139からなる群より選ばれる1つ以上、並びに、C.I.ピグメントブルー60を含む。
上記顔料を用いることにより、遮光性に優れ、かつ、耐溶剤性にも優れたブラックレジストパターンを得ることができるブラックマトリックス用着色組成物とすることができる。耐溶剤性を付与する観点からは、上記顔料が、C.I.ピグメントイエロー139と、C.I.ピグメントブルー60を含むことが好ましい。
【0014】
C.I.ピグメントオレンジ16及びC.I.ピグメントイエロー139からなる群より選ばれる1つ以上の顔料の含有量は、遮光性の観点から、顔料の全量に対して、5~60質量%であることが好ましく、8~50質量%であることがより好ましく、10~45質量%であることが更に好ましく、10~40質量%であることが特に好ましい。
C.I.ピグメントブルー60の含有量は、遮光性の観点から、顔料の全質量に対して、5~70質量%であることが好ましく、10~60質量%であることがより好ましく、15~55質量%であることが更に好ましく、20~50質量%であることが特に好ましい。
【0015】
上記顔料は、C.I.ピグメントバイオレット23及びC.I.ピグメントバイオレット29からなる群より選ばれる1つ以上を更に含むことが好ましい。
上記顔料が、C.I.ピグメントバイオレット23及びC.I.ピグメントバイオレット29からなる群より選ばれる1つ以上を更に含むことにより、着色組成物により得られるブラックレジストパターンに優れた遮蔽性を付与することができる。
耐溶剤性を付与する観点から、上記顔料が、C.I.ピグメントバイオレット29を含むことがより好ましい。
【0016】
C.I.ピグメントバイオレット23及びC.I.ピグメントバイオレット29からなる群より選ばれる1つ以上の顔料の含有量は、遮光性の観点から、顔料の全量に対して、1~70質量%であることが好ましく、10~60質量%であることがより好ましい。
【0017】
本発明の着色組成物において、上記顔料は、全固形分に対して質量分率で、20~90質量%であることが好ましく、30~80質量%であることがより好ましい。
【0018】
本発明の着色組成物において、上記顔料は、本発明の効果を損なわない範囲において、カーボンブラック、赤色顔料、橙色顔料、青色顔料、緑色顔料等の他の顔料を含んでもよい。
【0019】
(バインダー樹脂)
本発明の着色組成物は、バインダー樹脂を含む。
上記バインダー樹脂としては、カラーフィルターに使用できる部材の樹脂であれば特に制限なく使用でき、アルカリ可溶性樹脂、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、光重合性化合物(光重合性樹脂、光重合性不飽和結合を分子内に1個以上有するモノマー、オリゴマー等)等が挙げられる。これらは単独又は2種以上混合して用いることができる。
本発明の着色組成物において、上記バインダー樹脂は、全固形分に対して質量分率で、1~40質量%であることが好ましく、3~25質量%であることがより好ましい。
【0020】
上記アルカリ可溶性樹脂としては、アルカリ可溶性共重合体、アルカリ可溶性カルド樹脂等が例示できる。
アルカリ可溶性共重合体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、マレイン酸モノアルキルエステル、シトラコン酸、無水シトラコン酸、シトラコン酸モノアルキルエステル等のカルボキシル基含有不飽和単量体と、スチレン、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、アリルアクリレート、アリルメタクリレート、ベンジルアクリレート、ベンジルメタクリレート、グリセロールモノアクリレート、グリセロールメタクリレート、ジシクロペンタジエン骨格を有するモノ(メタ)アクルレート、N-フェニルマレイミド、ポリスチレンマクロモノマーおよびポリメチルメタクリレートマクロモノマーよりなる群から選択される少なくとも1種を反応させて得られる共重合体、及び、エポキシアクリレート樹脂である。
【0021】
上記アルカリ可溶性カルド樹脂としては、フルオレンエポキシ(メタ)アクリル酸誘導体とジカルボン酸無水物及び/又はテトラカルボン酸二無水物との付加生成物であるフルオレン骨格を有するエポキシ(メタ)アクリレート酸付加物等を挙げることができる。
上記アルカリ可溶性樹脂は、単独または2種以上を併用して用いることができる。アルカリ可溶性樹脂は、塗膜形成性、アルカリ現像性の点から、酸価40~200mgKOH/g、重量平均分子量1000~5万であることが好ましい。
上記アルカリ可溶性樹脂は、要求される性能に応じて、適宜1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0022】
上記熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂としては、例えば、ブチラール樹脂、スチレン-マレイン酸共重合体、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン系樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル系樹脂、アルキッド樹脂、スチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ゴム系樹脂、環化ゴム、エポキシ樹脂、セルロース類、ポリブタジエン、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂等が挙げられる。
【0023】
上記光重合性樹脂としては、水酸基、カルボキシル基、アミノ基等の反応性の置換基を有する線状高分子にイソシアネート基、アルデヒド基、エポキシ基等を介して、(メタ)アクリル化合物、ケイヒ酸等の光架橋性基を導入した樹脂が用いられる。スチレン-無水マレイン酸共重合物やα-オレフィン-無水マレイン酸共重合物等の酸無水物を含む線状高分子をヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等の水酸基を有する(メタ)アクリル化合物によりハーフエステル化した重合物も用いられる。
【0024】
上記光重合性化合物において、上記光重合性不飽和結合を分子内に1個有するモノマーとしては、例えば、メチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、メチルアクリレート、ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート等のアルキルメタクリレート又はアクリレート;ベンジルメタクリレート、ベンジルアクリレート等のアラルキルメタクリレート又はアクリレート;ブトキシエチルメタクリレート、ブトキシエチルアクリレート等のアルコキシアルキルメタクリレート又はアクリレート;N,N-ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N-ジメチルアミノエチルアクリレート等のアミノアルキルメタクリレート又はアクリレート;ジエチレングリコールエチルエーテル、トリエチレングリコールブチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル等のポリアルキレングリコールアルキルエーテルのメタクリル酸エステル又はアクリル酸エステル;ヘキサエチレングリコールフェニルエーテル等のポリアルキレングリコールアリールエーテルのメタクリル酸エステル又はアクリル酸エステル;イソボニルメタクリレート又はアクリレート;グリセロールメタクリレート又はアクリレート;2-ヒドロキシエチルメタクリレート又はアクリレート等が挙げられる。
【0025】
上記光重合性化合物において、上記光重合性不飽和結合を分子内に2個以上有するモノマーとしては、例えば、ビスフェノールAジメタクリレート、1,4-ブタンジオールジメタクリレート、1,3-ブチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、グリセロールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタメタクリレート、ビスフェノールAジアクリレート、1,4-ブタンジオールジアクリレート、1,3-ブチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、グリセロールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等が挙げられる。
【0026】
(カーボンブラック)
本発明の着色組成物は、色味を調整する観点から、カーボンブラックを含むことができる。
上記カーボンブラックとしては、アセチレンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、及び、ケッチェンブラック等が挙げられる。
上記カーボンブラックの具体例としては、三菱化学社製のMA7、MA8、MA11、MA14、#1000、#2350等、オリオンエンジニアドカーボンズ社製のSpecialBlack350、SpecialBlack250、SpecialBlack550、NEROX2500、NEROX3500、NEROX305等、キャボット社製のMOGUL L、REGAL400R、TPK1101R、TPK1104R、TPK1227R等、コロンビヤンカーボン社製のRAVEN1200、RAVEN1250、RAVEN1255、RAVEN1190U、RAVEN1170、RAVEN1035、RAVEN1080U、RAVEN1060U、RAVEN1100U等が挙げられる。
なかでも、pHが5以下であり、カルボキシル基等の酸性基を有する酸性カーボンブラックが好ましい。また、粒子径が20~60nmであるものが好ましい。
上記を満たす酸性カーボンブラックとしては、NEROX2500、NEROX3500、TPK1101R、TPK1104R、TPK1227R等が挙げられる。
なお、上記粒子径は、顕微鏡観察によって測定または算出した平均一次粒子径を意味する。
【0027】
上記酸性カーボンブラックの含有量は特に限定されないが、例えば、本発明の着色組成物の全顔料の質量に対して、70質量%以下含有することが好ましい。上記酸性カーボンブラックの含有量が70質量%を超えると、電圧保持率の低下や、露光感度が低下することがある。
上記酸性カーボンブラックの含有量のより好ましい上限は、本発明の着色組成物の全顔料の質量に対して50質量%である。
なお、本発明の着色組成物は、上記酸性カーボンブラックを含まなくてもよい。
【0028】
本発明の着色組成物は、更に、顔料分散剤、後述する一般式(1)及び/又は(2)で表される顔料分散助剤、及び/又は銅フタロシアニンのスルホン化物(中和されていてもよい)である顔料分散助剤、及び/又はC.I.ピグメントイエロー138のスルホン化物(中和されていてもよい)である顔料分散助剤、バインダー樹脂、並びに、有機溶剤を含有することが好ましい。
【0029】
(顔料分散剤)
本発明の着色組成物は、顔料分散剤を含有することが好ましい。
上記顔料分散剤としては、塩基性基含有顔料分散剤であり、アニオン性界面活性剤、塩基性基含有ポリエステル系顔料分散剤、塩基性基含有アクリル系顔料分散剤、塩基性基含有ウレタン系顔料分散剤、塩基性基含有カルボジイミド系顔料分散剤、酸性基含有高分子顔料分散剤等を用いることができる。
これらの塩基性基含有顔料分散剤は、単独で用いてもよく、また、2種類以上の組み合わせを用いてもよい。中でも、良好な顔料分散性が得られる点から、塩基性基含有高分子顔料分散剤が好ましい。
【0030】
塩基性基含有高分子顔料分散剤の具体例としては、
(1)ポリアミン化合物(例えば、ポリアリルアミン、ポリビニルアミン、ポリエチレンポリイミン等のポリ(低級アルキレンアミン)等)のアミノ基および/またはイミノ基と、遊離のカルボキシル基を有するポリエステル、ポリアミドおよびポリエステルアミドよりなる群から選択される少なくとも1種との反応生成物(特開2001-59906号公報)、
(2)ポリ(低級)アルキレンイミン、メチルイミノビスプロピルアミン等の低分子アミノ化合物と、遊離のカルボキシル基を有するポリエステルとの反応生成物(特開昭54-37082号公報、特開平01-311177号公報)、
(3)ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基に、メトキシポリエチレングリコール等のアルコール類やカプロラクトンポリエステル等の水酸基を1個有するポリエステル類、2~3個のイソシアネート基反応性官能基を有する化合物、イソシアネート基反応性官能基と第3級アミノ基とを有する脂肪族または複素環式炭化水素化合物を順次反応させてなる反応生成物(特開平02-612号公報)、
(4)アルコール性水酸基を有するアクリレートの重合物に、ポリイソシアネート化合物とアミノ基を有する炭化水素化合物とを反応させた化合物、
(5)低分子アミノ化合物にポリエーテル鎖を付加させてなる反応生成物、
(6)イソシアネート基を有する化合物にアミノ基を有する化合物を反応させてなる反応生成物(特開平04-210220号公報)、
(7)ポリエポキシ化合物に遊離のカルボキシル基を有する線状ポリマーおよび2級アミノ基を1個有する有機アミン化合物を反応させた反応生成物(特開平09-87537号公報)、
(8)片末端にアミノ基と反応し得る官能基を有するポリカーボネート化合物とポリアミン化合物との反応生成物(特開平09-194585号公報)、
(9)メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、ステアリルアクリレート、ベンジルアクリレート等のメタクリル酸エステルまたはアクリル酸エステルから選択される少なくとも1種と、アクリルアミド、メタクリルアミド、N-メチロールアミド、ビニルイミダゾール、ビニルピリジン、アミノ基とポリカプロラクトン骨格を有するモノマー等の塩基性基含有重合モノマーの少なくとも1種と、スチレン、スチレン誘導体、その他の重合性モノマーの少なくとも1種との共重合体(特開平01-164429号公報)、
(10)塩基性基含有カルボジイミド系顔料分散剤(国際公開WO04/000950号公報)、
(11)3級アミノ基、4級アンモニウム塩機等の塩基性基を有するブロックと官能基を有していないブロックからなるブロック共重合体(特開2005-55814号の記載参照)
(12)ポリアリルアミンにポリカーボネート化合物をマイケル付加反応させて得られる顔料分散剤(特開平09-194585号公報)、
(13)ポリブタジエン鎖と塩基性窒素含有基とをそれぞれ少なくとも1つ有するカルボジイミド系化合物(特開2006-257243号公報)、
(14)分子内にアミド基を有する側鎖と、塩基性窒素含有基とをそれぞれ少なくとも1つ有するカルボジイミド系化合物(特開2006-176657号公報)等が挙げられる。
(15)エチレンオキサイド鎖とプロピレンオキサイド鎖を有する構成単位を有し、かつ四級化剤により四級化されたアミノ基を有するポリウレタン系化合物(特開2009-175613号公報)、
(16)分子内にイソシアヌレート環を有するイソシアネート化合物のイソシアネート基と、分子内に活性水素基を有し、かつ、カルバゾール環及び/又はアゾベンゼン骨格を有する化合物の活性水素基とを反応させて得られる化合物であって、該化合物の分子内の、イソシアヌレート環を有するイソシアネート化合物に由来するイソシアネート基と、イソシアネート基と活性水素基との反応により生じたウレタン結合及び尿素結合との合計に対するカルバゾール環とアゾベンゼン骨格の数が15~85%である化合物(特願2009-220836)。
(17)アミノ基を有するアクリレート重合物に、ポリエーテルまたは、ポリエステル側鎖を導入したグラフト共重合体。
【0031】
上記塩基性基含有高分子顔料分散剤の中でも、塩基性基含有ウレタン系高分子顔料分散剤、塩基性基含有ポリエステル系高分子顔料分散剤、塩基性基含有アクリル系高分子顔料分散剤がより好ましく、アミノ基含有ウレタン系高分子顔料分散剤、アミノ基含有ポリエステル系高分子顔料分散剤、アミノ基含有アクリル系高分子顔料分散剤がさらに好ましい。上記塩基性基含有高分子顔料分散剤の中でも、ポリエステル鎖、ポリエーテル鎖、およびポリカーボネート鎖よりなる群から選択される少なくとも1種を有する塩基性基(アミノ基)含有高分子顔料分散剤が特に好ましい。
【0032】
本発明の着色組成物において、上記顔料分散剤は、上記顔料100質量部に対して、1~200質量部であることが好ましく、5~100質量部であることがより好ましい。
【0033】
(顔料分散助剤)
本発明の着色組成物は、下記一般式(1)及び/又は(2)で表される顔料分散助剤、及び/又は銅フタロシアニンのスルホン化物(中和されていてもよい)である顔料分散助剤、及び/又はC.I.ピグメントイエロー138のスルホン化物(中和されていてもよい)である顔料分散助剤を含むことが好ましい。
【化1】
〔式中、X及びYは、同一若しくは異なって、F、Cl、Br、NO、CH又はOCHで置換されていてもよいフェニル基を表す。Mは、H、Na、K、NH又はNR(R、R、R及びRは、同一若しくは異なって、他の置換基で置換されていてもよい炭素数1~10の飽和若しくは不飽和の脂肪族炭化水素基、又は、他の置換基で置換されていてもよい炭素数6~10の芳香族炭化水素基を表す。)を表す。mは、1以上の整数を表す。〕
【0034】
上記顔料分散助剤は、上記顔料を分散させるために用いられる。
上記顔料を分散させる際に、上記顔料分散助剤と上記顔料分散剤とを併用することにより、優れた流動性、経時安定性を得ることができる。また、上記着色組成物を着色レジスト組成物として使用した場合、高い光学濃度を得ることが可能となる。
【0035】
上記一般式(1)、(2)中、Y及びZは、同一若しくは異なって、F、Cl、Br、NO、CH又はOCHで置換されていてもよいフェニル基を表す。Mは、H、Na、K、NH又はNRを表す。
上記一般式(1)、(2)の「NR」(M)に関して、R、R、R及びRは、同一若しくは異なって、他の置換基で置換されていてもよい炭素数1~10の飽和若しくは不飽和の脂肪族炭化水素基、又は、他の置換基で置換されていてもよい炭素数6~10の芳香族炭化水素基を表す。ここで、上記飽和若しくは不飽和の脂肪族炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基等のアルキル基;ビニル基、アリル基、1-ブテニル基等のアルケニル基;エチニル基、プロピニル基等のアルキニル基等が挙げられる。上記芳香族炭化水素基としては、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。また、上記他の置換基としては、水酸基、ハロゲン、カルボキシル基、アミノ基、低級アルキル基(炭素数1~5)等が挙げられる。
なお、上記R、R、R及びRは、1個が他の置換基で置換されていても、2個以上が他の置換基で置換されていてもよい。
更に、上記一般式(1)、(2)の「m」は1以上の整数である。
【0036】
上記化合物(顔料分散助剤)において、上記一般式(1)で表される化合物がエノール型、上記一般式(2)で表される化合物がケト型の互変異性体であり、上記顔料分散助剤には両化合物が含まれる。即ち、上記顔料分散助剤には、上記一般式(1)又は(2)で表される化合物の場合、及び、上記一般式(1)及び(2)で表される化合物の両方からなる場合のいずれも含まれる。
【0037】
このような顔料分散助剤は、新規な化合物であり、例えば、下記式(3)~(30)のモノアゾ化合物を濃硫酸、発煙硫酸、クロルスルホン酸又はそれらの混合液に溶解し、室温ないし80~90℃に加熱し、次いで多量の水で希釈して得た懸濁液を濾過後、水洗し、得られたフィルターケーキを乾燥、粉砕して製造することができ、市販品は存在しない。
【0038】
【化2-1】
【化2-2】
【化2-3】
【化2-4】
【0039】
これらの顔料分散助剤の中でも、良好な流動性と経時安定性を有するとともに、光学濃度がより高いレベルにある着色レジスト組成物を得ることができる点から、上記一般式(1)及び/又は(2)のYが2,5-ジクロロフェニル基であり、Zがフェニル基である下記一般式(31)で表される化合物(上記式(3)のモノアゾ化合物を用い、上記製法等により得られる化合物:エノール型)及び/又は下記一般式(32)で表される化合物(上記式(4)のモノアゾ化合物を用い、上記製法等により得られる化合物:ケト型)が好適である。
【0040】
【化3】
【0041】
本発明の着色組成物において、上記顔料分散助剤は、上記顔料100質量部に対して、30質量部以下であることが好ましく、0.1~20質量部であることがより好ましい。
上記顔料分散助剤は、上記顔料100質量部に対して、30質量部を超えたとしても、顔料分散効果が向上されないことがある。
【0042】
(有機溶剤)
本発明の着色組成物は、有機溶剤を含むことが好ましい。
上記有機溶剤としては、上記溶剤としては、常圧(1.013×10kPa)における沸点が70~300℃のエステル系有機溶剤、エーテル系有機溶剤、エーテルエステル系有機溶剤、ケトン系有機溶剤、芳香族炭化水素系有機溶剤、含窒素系有機溶剤等が好ましい。
【0043】
このような溶剤としては、具体的には、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル等のエーテル系有機溶剤類、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のエーテルエステル系有機溶剤類、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、2-ヘプタノン、δ-ブチロラクトン等のケトン系有機溶剤類、2-ヒドロキシプロピオン酸メチル、2-ヒドロキシプロピオン酸エチル、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオン酸エチル、3-メチル-3-メトキシブチルプロピオネート、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エステル、蟻酸n-アミル等のエステル系有機溶剤類、N-メチルピドリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等の含窒素系有機溶剤類等を例示でき、これら有機溶剤は単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0044】
これらの有機溶剤の中でも、沸点、溶解性、分散性、塗布性等の点で、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、シクロヘキサノン、2-ヘプタノン、2-ヒドロキシプロピオン酸エチル、3-メチル-3-メトキシブチルプロピオネート、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸メチル、蟻酸n-アミル等が好ましく、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートがより好ましい。
【0045】
(その他の添加剤)
本発明の着色組成物の製造法に応じて、光重合開始剤、熱重合禁止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤等の各種添加剤を適宜使用することができる。
上記光重合開始剤としては特に限定されないが、例えば、ベンゾフェノン、N,N’-テトラエチル-4,4’-ジアミノベンゾフェノン、4-メトキシ-4’-ジメチルアミノベンゾフェノン、ベンジル、2,2-ジエトキシアセトフェノン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、α-ヒドロキシイソブチルフェノン、チオキサントン、2-クロロチオキサントン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、t-ブチルアントラキノン、1-クロロアントラキノン、2,3-ジクロロアントラキノン、3-クロル-2-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、1,4-ナフトキノン、1,2-ベンゾアントラキノン、1,4-ジメチルアントラキノン、2-フェニルアントラキノン、トリアジン系光重合開始剤、オキシムエステル系光重合開始剤等を用いることができる。これらの光重合開始剤は単独で、または2種以上を併用して用いることがでる。
本発明の着色組成物において、上記光重合開始剤は、全固形分に対して質量分率で、0.1~10質量%であることが好ましく、0.5~4質量%であることがより好ましい。
【0046】
<着色組成物の製造方法>
以上の材料を用いて着色組成物を製造する方法の一例について説明する。
上記各色の顔料について、必要に応じて、バインダー樹脂、カーボンブラック、顔料分散剤、顔料分散助剤、有機溶剤及びその他の添加剤を加えて混合し、混合物を得る。
得られた混合物を、ロールミル、ニーダー、高速攪拌装置、ビーズミル、ボールミル、サンドミル、超音波分散機、高圧分散機等の各種分散機を用いて、混練し、分散処理し、各色の顔料分散組成物を得る。
次いで、得られた各色の顔料分散組成物を疑似黒色化となるように所定の組み合わせで配合し、必要に応じてバインダー樹脂、有機溶剤、その他の添加剤を加えて、高速撹拌機等の撹拌装置を用いて均一に混合した後、フィルターで濾過し、本発明の着色組成物を得る。上記製造方法において、バインダー樹脂は、顔料分散組成物の作製時に加えることができる。また、顔料分散組成物を作製後、着色組成物の作製時に加えることもできる。
【0047】
(共分散)
各顔料を疑似黒色化となるように配合した混合顔料、顔料分散剤、顔料分散助剤、有機溶剤、必要に応じてバインダー樹脂、更に必要に応じて、その他の添加剤からなる混合物を得る。得られた混合物を、ロールミル、ニーダー、高速攪拌装置、ビーズミル、ボールミル、サンドミル、超音波分散機、高圧分散機等の各種分散機を用いて、混練し、分散処理し、顔料分散組成物を得る。
次いで、得られた顔料分散組成物に、必要に応じてバインダー樹脂、有機溶剤、その他の添加剤を加えて、高速撹拌機等の撹拌装置を用いて均一に混合した後、フィルターで濾過し、本発明の着色組成物を得る。上記製造方法において、バインダー樹脂は、顔料分散組成物の作製時に加えることができる。
また、顔料分散組成物を作製後、着色組成物の作製時に加えることもできる。
【0048】
本発明の着色組成物は、25℃において測定した粘度が、2.0~20.0mPa・sであることが好ましい。
上記粘度が2.0mPa・s未満、又は、20.0mPa・sを超えると、塗工性に悪影響を与えることがある。
なお、上記粘度は、本発明の着色組成物をガラス瓶等に密栓し、1日保存した後のE型粘度計(東機産業社製)を用いて測定した粘度である。
【0049】
本発明の着色組成物は、経時安定性が、0.8~1.1であることが好ましい。
上記経時安定性が0.8未満、又は、1.1を超えると、塗工性、現像性に悪影響を与えることがある。
なお、上記経時安定性は、本発明の着色組成物をガラス瓶等に密栓し、室温(25℃)において1日保存した後の25℃における粘度と、本発明の着色組成物をガラス瓶等に密栓し、40℃において7日保存した後の25℃における粘度とをE型粘度計(東機産業社製)を用いて測定し、(40℃において7日保存した後の粘度)/(室温で1日保存した後の粘度)として求めたものである。
【0050】
次に、本発明の着色組成物を着色レジスト組成物として用いる例について説明する。
本発明の着色レジスト組成物は、本発明の着色組成物を含む。
本発明の着色レジスト組成物は、本発明の着色組成物に加えて、アルカリ可溶性樹脂、光重合性化合物、光重合開始剤、有機溶剤から構成され、必要に応じて重合禁止剤等の各種添加剤を適宜添加して得られるものが好ましい。
【0051】
<着色レジスト組成物の構成材料>
(着色組成物)
本発明の着色レジスト組成物は、本発明の着色組成物を用いて製造される。
本発明の着色組成物の含有量は、本発明の着色レジスト組成物の全固形分に対して質量分率で、20~90質量%であることが好ましく、30~80質量%であることがより好ましい。
【0052】
(顔料分散剤)
顔料分散剤としては、上記本発明の着色組成物で記載したものを好適に使用することができる。
本発明の着色レジスト組成物において、顔料分散剤の含有量は、使用する全顔料100質量部に対して、0.1~50質量部が好ましく、1~20質量部がより好ましい。
【0053】
(バインダー樹脂)
バインダー樹脂としては、本発明の着色組成物で記載したものを好適に使用することができる。
本発明の着色レジスト組成物において、バインダー樹脂の含有量は、本発明の着色レジスト組成物の固形分中に3~50質量%であることが好ましい。
【0054】
(光重合開始剤)
光重合開始剤としては、特に限定されないが、例えば、ベンゾフェノン、N,N’-テトラエチル-4,4’-ジアミノベンゾフェノン、4-メトキシ-4’-ジメチルアミノベンゾフェノン、ベンジル、2,2-ジエトキシアセトフェノン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、α-ヒドロキシイソブチルフェノン、チオキサントン、2-クロロチオキサントン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、t-ブチルアントラキノン、1-クロロアントラキノン、2,3-ジクロロアントラキノン、3-クロル-2-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、1,4-ナフトキノン、1,2-ベンゾアントラキノン、1,4-ジメチルアントラキノン、2-フェニルアントラキノン、トリアジン系光重合開始剤、オキシムエステル系光重合開始剤等を用いることができる。これらの光重合開始剤は単独で、または2種以上を併用して用いることがでる。
本発明の着色組成物において、上記光重合開始剤は、全固形分に対して質量分率で、0.1~10質量%であることが好ましく、0.5~6質量%であることがより好ましい。
【0055】
(光重合性モノマー)
光重合性モノマーとしては、エチレン性不飽和化合物等が用いられる。ここで使用されるエチレン性不飽和化合物は、重合性、架橋性等の点から、エチレン性不飽和結合を分子内に2個以上有する化合物であることが好ましい。これらの光重合性モノマーは単独で、または2種以上を併用して用いることができる。
【0056】
(有機溶剤)
有機溶剤としては、本発明の着色組成物で記載したものを好適に使用することができる。
本発明の着色レジスト組成物において、有機溶剤の含有量は、各材料の溶解性、顔料分散性、塗布性等の点から、本発明の着色レジスト組成物の全量に対して、5~90質量%であることが好ましい。
【0057】
(その他の添加剤)
本発明の着色レジスト組成物には、必要に応じて、熱重合禁止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤等の各種添加剤を適宜使用することができる。
【0058】
<本発明の着色レジスト組成物の製造方法>
本発明の着色レジスト組成物を製造する方法は、本発明の好ましい実施形態の一例であり、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、本発明の着色組成物に、バインダー樹脂、光重合性化合物、光重合開始剤、有機溶剤、その他添加剤を加え、攪拌装置等を用いて攪拌混合する方法が利用できる。
【0059】
本発明の着色レジスト組成物は、25℃において測定した粘度が、1.0~30.0mPa・sであることが好ましい。
上記粘度が1.0mPa・s未満、又は、30.0mPa・sを超えると、塗工性に悪影響を与えることがある。
なお、上記粘度は、本発明の着色レジスト組成物をガラス瓶等に密栓し、1日保存した後のE型粘度計(東機産業社製)を用いて測定した粘度である。
【0060】
本発明の着色レジスト組成物は、経時安定性が、0.8~1.2であることが好ましい。
上記経時安定性が0.8未満、又は1.2を超えると、塗工性、現像性に悪影響を与えることがある。なお、上記経時安定性は、本発明の着色レジスト組成物を遮光ガラス瓶等に密栓し、低温(5℃)で1日保存した後の25℃における粘度と、本発明の着色組成物を遮光ガラス瓶等に密栓し、低温(5℃)において7日保存した後の25℃における粘度とをE型粘度計(東機産業社製)を用いて測定し、(5℃において7日保存した後の粘度)/(5℃で1日保存した後の粘度)として求めたものである。
【0061】
本発明の着色レジスト組成物は、厚み1μmのレジストパターンを形成したときの光学濃度(OD値)が1.00以上であることが好ましく、1.20以上であることがより好ましい。
上記光学濃度(OD値)が1.25以上であれば、遮蔽性が充分であると言える。
なお、上記光学濃度(OD値)は、本発明の着色レジスト組成物を用いて1μmのレジストパターンを形成し、マクベス濃度計(TD-931、商品名、マクベス社製)で測定した値である。
【0062】
本発明の着色レジスト組成物は、厚み2μmの硬化塗膜を形成したときの耐溶剤性が0.6以下であることが好ましく、0.5以下であることがより好ましく、0.4以下であることがさらに好ましく、0.3以下であることが特に好ましく、0.2以下であることが最も好ましい。
なお、上記耐溶剤性は、厚み2μmの硬化塗膜を100℃に熱したN-メチルピロリドンに浸漬し、100℃のオーブン内で10分間保温した。その後、上記N-メチルピロリドンの吸光度を分光光度計(UV-2500PC)で測定し、最大ピークの吸光度を耐溶剤性の値とする。
【0063】
本発明の着色組成物及び着色レジスト組成物は、上述した特性を有するため、画像表示装置やタッチパネル等のブラックマトリックス、ブラックカラムスペーサー又は黒色隔壁材料として好適に用いることができる。
【発明の効果】
【0064】
本発明によれば、遮光性に優れ、かつ、耐溶剤性にも優れた着色組成物、及び、それを含有する着色レジスト組成物を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0065】
以下、実施例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明はその主旨と適用範囲を逸脱しない限りこれらに限定されるものではない。尚、特に断りのない限り、本実施例において、「部」および「%」は、それぞれ「質量部」および「質量%」を表す。
【0066】
以下の実施例、比較例で使用する着色組成物の材料は次の通りである。
<顔料>
P.V.23(C.I.ピグメントバイオレット23)
P.V.29(C.I.ピグメントバイオレット29)
P.V.32(C.I.ピグメントバイオレット32)
P.Y.139(C.I.ピグメントイエロー139)
P.Y.185(C.I.ピグメントイエロー185)
P.O.16(C.I.ピグメントオレンジ16)
P.O.64(C.I.ピグメントオレンジ64)
P.R.254(C.I.ピグメントレッド254)
P.B.60(C.I.ピグメントブルー60)
P.B.15:6(C.I.ピグメントブルー15:6)
<カーボンブラック>
TPK1104R(キャボット製、吸油量:38ml/100g、pH:2.7)
<バインダー樹脂>
BzMA/MAA(アルカリ可溶性樹脂、ベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体、理論酸価:120mgKOH/g、質量平均分子量:10000)
<顔料分散剤>
BYK-LPN-22102(ビックケミー社製、顔料親和性基を有するセグメントとバインダー相溶性基を有するセグメントとからなるアクリル系ブロック共重合体)
<顔料分散助剤>
100ml三角フラスコに濃硫酸を30ml仕込み、マグネチックスターラーで攪拌しながらピグメントレッド2(上記式(3)及び/又は(4)で表される化合物)を10g投入し、室温で30分攪拌した。1Lビーカーに水50gと氷50gの混合物を入れ、上記の反応物をこの氷水中に注ぎ、マグネチックスターラーで30分攪拌した。これを減圧下で濾過・水洗し、得られた固体を乾燥させて、顔料分散助剤1(上記一般式(31)及び/又は(32)で表される化合物:M=H)12gを得た。
<有機溶剤>
PGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)
【0067】
以下の実施例、比較例で使用する着色レジスト組成物の材料は次の通りである。
<バインダー樹脂>
SPC-3500(アルカリ可溶性樹脂、炭素=炭素不飽和結合含有、理論酸価:60mgKOH/g、質量平均分子量:11000)
<光重合開始剤>
イルガキュア907(BASF社製、2-メチル-1[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン)とイルガキュアOXE02(BASF社製、エタノン, 1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-, 1-(O-アセチルオキシム))の1対1混合物
<光重合性モノマー>
DPEHA(光重合性化合物、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート)
<有機溶剤>
PGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)
【0068】
<実施例1~10、比較例1~3の着色組成物の調製>
表1の組成(表1における各材料の使用量は質量%である)となるように各種材料を混合し、ビーズミルで一昼夜練肉し、実施例1~10、比較例1~3の着色組成物を調製した。
【0069】
<実施例11~20、比較例4~6の着色レジスト組成物の調製>
高速攪拌機を用いて、実施例1~10、比較例1~3の各着色組成物と他の材料とを表2の組成(表2における各材料の使用量は質量%である)になるように均一に混合した後、孔径3μmのフィルターで濾過し、実施例11~20、比較例4~6の着色レジスト組成物を得た。
【0070】
(評価試験)
実施例1~10、比較例1~3で得られた着色組成物、及び、実施例11~20、比較例4~6で得られた着色レジスト組成物について、下記の方法で流動性と経時安定性を評価し、その結果を表1及び2に示した。
また、実施例11~20、比較例4~6で得られた着色レジスト組成物を塗布してレジストパターンを形成し、その光学濃度及び耐溶剤性を評価し、その結果を表2に示した。
【0071】
<流動性>
実施例1~10、比較例1~3で得られた着色組成物について、それぞれガラス瓶に採り、密栓し室温(25℃)で1日保存した後、E型粘度計(東機産業社製)を用いて25℃における粘度[mPa・s]を測定し、流動性を評価した。
実施例11~20、比較例4~6で得られた着色レジスト組成物について、それぞれ遮光ガラス瓶に採り、密栓し低温(5℃)で1日保存した後、E型粘度計(東機産業社製)を用いて25℃における粘度[mPa・s]を測定し、流動性を評価した。
【0072】
<経時安定性>
実施例1~10、比較例1~3で得られた着色組成物について、それぞれガラス瓶に採り、本発明の着色組成物をガラス瓶等に密栓し、室温(25℃)において1日保存した後の25℃における粘度と、本発明の着色組成物をガラス瓶等に密栓し、40℃において7日保存した後の25℃における粘度とをE型粘度計(東機産業社製)を用いて測定し、(40℃において7日保存した後の粘度)/(室温で1日保存した後の粘度)として求めた。
また、実施例11~20、比較例4~6で得られた着色レジスト組成物について、遮光ガラス瓶等に密栓し、低温(5℃)で1日保存した後の25℃における粘度と、本発明の着色組成物を遮光ガラス瓶等に密栓し、低温(5℃)において7日保存した後の25℃における粘度とをE型粘度計(東機産業社製)を用いて測定し、(5℃において7日保存した後の粘度)/(5℃で1日保存した後の粘度)として求めたものである。
【0073】
<光学濃度(OD値)>
実施例11~20、比較例4~6の着色レジスト組成物をスピンコーターにて膜厚1μmとなるようにガラス基板上に塗布し、100℃で3分間プレベークした後、高圧水銀灯で露光し、更に230℃で30分間ポストベークを行い、ベタ部のみで形成されたブラックレジストパターンを得た。得られた各ベタ部のブラックレジストパターンの光学濃度(OD値)をマクベス濃度計(TD-931、商品名、マクベス社製)で測定した。
【0074】
<耐溶剤性>
実施例11~20、比較例4~6の着色レジスト組成物をスピンコーターにて膜厚1μmとなるようにガラス基板上に塗布し、100℃で3分間プレベークした後、高圧水銀灯で露光し、更に230℃で30分間ポストベークを行い、ベタ部のみで形成された硬化塗膜を得た。
得られた各ベタ部の硬化塗膜を、100℃に熱したN-メチルピロリドンに浸漬し、100℃のオーブン内で10分間保温した。その後、上記N-メチルピロリドンの吸光度を分光光度計(UV-2500PC)で測定し、最大ピークの吸光度を耐溶剤性の値とした。
【0075】
【表1】
【0076】
【表2】
【0077】
実施例に係る着色組成物及び着色レジスト組成物は、流動性及び経時安定性に優れることが確認された。
また、実施例に係る着色レジスト組成物は、OD値が1.25以上、かつ、耐溶剤性が0.60以下であり、遮光性と耐溶剤性とにおいて優れることが確認された。
実施例に係る着色組成物及び着色レジスト組成物は、上述した特性を有するため、画像表示装置やタッチパネル等のブラックマトリックス、ブラックカラムスペーサー又は黒色隔壁材料として好適に用いることができる。
一方で、比較例に係る着色組成物及び着色レジスト組成物では、遮光性に優れ、かつ、耐溶剤性にも優れるものはなかった。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明によれば、遮光性に優れ、かつ、耐溶剤性にも優れた着色組成物、及び、それを含有する着色レジスト組成物を提供できる。