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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】竪型射出成形装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/13 20060101AFI20241001BHJP
   B29C 45/10 20060101ALI20241001BHJP
【FI】
B29C45/13
B29C45/10
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2023150911
(22)【出願日】2023-09-19
【審査請求日】2024-05-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000227054
【氏名又は名称】日精樹脂工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067356
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 容一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100160004
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 憲雅
(74)【代理人】
【識別番号】100120558
【弁理士】
【氏名又は名称】住吉 勝彦
(74)【代理人】
【識別番号】100148909
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧澤 匡則
(72)【発明者】
【氏名】依田 穂積
(72)【発明者】
【氏名】花岡 俊
【審査官】正木 裕也
(56)【参考文献】
【文献】特開2023-081415(JP,A)
【文献】特開昭48-007048(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/13
B29C 45/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
型締軸が鉛直であって下型へ上型を型締めする型締装置と、前記下型を載せて型締め位置と製品取出し位置の間を移動するターンテーブルと、射出軸が鉛直であって前記型締装置の上に配置され前記下型と前記上型からなる金型へ樹脂材料を射出する射出装置とを備える竪型射出成形装置であって、
前記射出装置は、互いに平行に配置される左右一対の第1加熱筒及び第2加熱筒と、これらの第1加熱筒及び第2加熱筒の下に接続され前記第1加熱筒からの樹脂材料と前記第2加熱筒からの樹脂材料を合流し1個のノズルから射出するY字アダプターとを有し
射出容量が十分に大きい加熱筒を、射出容量が前記加熱筒の1/2である前記第1加熱筒と射出容量が前記加熱筒の1/2である前記第2加熱筒に置き換えることにより前記第1加熱筒及び前記第2加熱筒の長さを小さくするようにしたことを特徴とする竪型射出成形装置。
【請求項2】
請求項1記載の竪型射出成形装置であって、
前記射出装置は、前記第1加熱筒と前記Y字アダプターとの間に介在させる第1逆止弁と、前記第2加熱筒と前記Y字アダプターとの間に介在させる第2逆止弁とをさらに有し、
前記第1加熱筒で射出する樹脂材料が前記第2加熱筒へ逆流することを前記第2逆止弁で防止し、前記第2加熱筒で射出する樹脂材料が前記第1加熱筒へ逆流することを前記第1逆止弁で防止するようにしたことを特徴とする竪型射出成形装置。
【請求項3】
求項2記載の竪型射出成形装置であって、
前記第1逆止弁及び前記第2逆止弁は、筒状の弁箱と、この筒状の弁箱の上部開口に嵌めた上穴開き板と、前記弁箱の下部開口に嵌めた下穴開き板と、前記弁箱に昇降自在に収納される球とからなり、
前記上穴開き板は、中央に前記球より小径の穴を有し、
前記下穴開き板は、中央に前記球より小径の穴を有し、加えてこの穴を囲う位置にサブ穴を有し、前記下穴開き板の前記穴が前記球で塞がれたときに、前記サブ穴を通って樹脂材料の流れが維持されるようにしたことを特徴とする竪型射出成形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、竪型射出成形装置の改良技術に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂材料を金型へ射出して樹脂成形品(以下、製品と記す。)を得る射出成形装置は、広く実用に供されている。
射出成形装置には、横型射出成形装置と竪型射出成形装置とがある。竪型射出成形装置には、ターンテーブルを有するターンテーブル方式の竪型射出成形装置が知られている(例えば、特許文献1(図1)参照)。
【0003】
特許文献1を次図に基づいて説明する。
図8は従来のターンテーブル方式の竪型射出成形装置の側面図である。
図8に示すように、この竪型射出成形装置101は、ベッド102の上にターンテーブル103を備え、このターンテーブル103を挟むようにしてベッド102に型締装置104を備える。そして、型締装置104の上に射出装置105が備えられている。
【0004】
型締装置104の型締軸106と、射出装置105の射出軸107とが、共に鉛直であると共に共通の軸である。
ターンテーブル103において、型締軸106に重なる部位が型締め位置109となり、回転軸111を中心に対称の部位が製品を取出す製品取出し位置112となる。
【0005】
型締軸106に沿って上型113と第1下型114が配置される。このときに、製品取出し位置112に第2下型115が配置される。
この第1下型114に上型113が合わされ、型締装置104で型締され、射出装置105の加熱筒116から樹脂材料が射出される。
【0006】
樹脂材料が固まったら上型113が上げられ、ターンテーブル103が180°回され、第1下型114が製品取出し位置112に移り、製品が取出される。ターンテーブル103の回転により、第2下型115が型締め位置109に移る。この第2下型115と上型113で次の射出成形が行われる。
【0007】
ターンテーブル方式には、樹脂材料の射出と製品の取出とが同時並行的に行われるため、生産効率が高まるという利点がある。
ところで、製品が大型になると、射出装置105が大きくなる。具体的には、加熱筒116の外径が大きくなり且つ加熱筒116の軸長が大きくなる。
軸長が大きくなると、竪型射出成形装置101の高さH1が大きくなる。
【0008】
竪型射出成形装置101を設置する建屋の天井が低い場合には、高さH1が大きな竪型射出成形装置101は設置することができない。
この場合は、高さが小さな射出成形装置が必要となる。ターンテーブル方式で且つ高さが小さな射出成形装置は、各種実用化されている(例えば、特許文献2(図4)参照)。
【0009】
特許文献2を次図に基づいて説明する。
図9は従来のターンテーブル方式の別の射出成形装置の正面図である。
図9に示すように、この射出成形装置121は、ベッド122の上にターンテーブル123を備え、このターンテーブル123を挟むようにしてベッド122に型締装置124を備える。そして、型締装置124の横に射出装置125が設けられている。
【0010】
型締装置124の型締軸126は鉛直であり、射出装置125の射出軸127は水平である。製品の大型化に伴って射出装置125の軸長が大きくなっても、射出成形装置121の高さH2は殆ど変わらず、高さH2は小さなままとすることができる。
よって、特許文献2により、製品が大型化するにも拘わらず天井が低い建屋に設置することができる射出成形装置121が提供される。
【0011】
しかし、特許文献2の射出成形装置121には、次に述べる欠点がある。
製品の大型化に伴って射出成形装置121の水平長さL2が大きくなる。水平長さL2が大きくなると、いわゆる床専有面積が大きくなる。床専有面積が大きくなると、一定の床面積の建屋に、必要な基数の射出成形装置121が設置できなくなる。射出成形装置121の基数が少なくなると、生産性が低下する。
【0012】
図8に示す竪型射出成形装置101であれば、水平長さL1は十分に小さく、一定の床面積の建屋に、必要な基数を容易に設置することができる。
そこで、十分に大きな射出容積を確保しつつ、高さH1を小さくすることができるターンテーブル方式の竪型射出成形装置が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】特許第5781675号公報
【文献】特開平8-174594号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、十分に大きな射出容積を確保しつつ、高さを小さくすることができる縦型射出装置を備えたターンテーブル方式の竪型射出成形装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、ターンテーブル方式の竪型射出成形装置について高さを小さくすることを、種々試みた。この試み中で、1本の加熱筒を2本の加熱筒にすることで、射出容積を確保しつつ、射出成形装置の高さを小さくすることができると、知見するに至った。この知見の過程を次図で説明する。
【0016】
図1(a)に示す加熱筒128は、射出容積が十分に大きい。加熱筒128の軸長さ、すなわち高さはHaである。
このような加熱筒128を2本の加熱筒に置き換えることを検討する。
【0017】
図1(b)に示すように、第1加熱筒53Lと第2加熱筒53Rに置き換える。第1加熱筒53Lは、加熱筒128に対して射出容積が1/2となるため、径と長さが小さくなる。第2加熱筒53Rも同様である。
【0018】
ただし、第1加熱筒53Lの出口と第2加熱筒53Rの出口に、合流用のアダプターを接続する必要がある。有力なアダプターは、T字アダプター130である。
T字アダプター130により、第1加熱筒53Lから射出した樹脂材料と第2加熱筒53Rから射出した樹脂材料とを、合わせてノズルから射出することができる。
【0019】
ただし、T字アダプター130には、次に述べる長所と短所とがある。
T字アダプター130は、高さ寸法hbが小さくなるという長所がある。
一方、第1水平流路131を流れる樹脂材料と第2水平流路132を流れる樹脂材料とが左右から直接衝突し、樹脂材料の流れが乱れるという短所がある。
【0020】
樹脂材料の流れを考慮すると、第1水平流路131や第2水平流路132の面は平滑であることが望まれる。しかし、T字アダプター130は、ホーニング加工が施し難い構造をしている。
【0021】
T字アダプター130を分割するとホーニング加工は可能となるが、少なくとも2箇所、好ましくは4箇所分割する必要があり、分割部はフランジやねじで結合する必要がある。結果、T字アダプター130の構造が複雑になる。
【0022】
以上に述べた短所を克服するために、本発明者らは、図1(c)に想到した。
図1(c)に示すように、アダプターをY字アダプター80とした。
ただし、Y字アダプター80には次に述べる短所と長所とがある。
【0023】
Y字アダプター80の高さhcは、T字アダプター130の高さhbより大きくなることが欠点である。
【0024】
結果、図1(a)~(c)に示すように、Y字アダプター80に第1加熱筒53Lを加えた高さHcは、T字アダプター130に第1加熱筒53Lを加えた高さHbより大きくはなるものの、加熱筒128の高さHaより十分に小さくなる。
【0025】
図1(c)に示すY字アダプター80の長所を、図2(a)、(b)に基づいて詳しく説明する。
図2(a)は本発明に係るY字アダプターの断面図であり、図2(b)はホーニング加工を説明する図である。
【0026】
図2(a)に示すように、Y字アダプター80は2つの入口と1つの出口とを有する部材であり、第1加熱筒53Lの先端(下端)と第2加熱筒53Rの先端(下端)にボルト等で接続されるV字部81と、このV字部81から下がるI字部82とからなる。V字部81とI字部82とでY字形が構成される。
【0027】
V字部81とI字部82は、分離可能とされ、ねじ結合又はフランジ結合により、一体化される。
I字部82には、ねじ部83の他、ノズル53aが形成される。
【0028】
V字部81には、第1加熱筒53Lに繋がる第1下がり流路84と、この第1下がり流路84の下端から斜めに延びる第1斜め流路85と、第2加熱筒53Rに繋がる第2下がり流路86と、この第2下がり流路86の下端から斜めに延びる第2斜め流路87とを有する。
【0029】
鉛直軸に対する第1斜め流路85の傾斜角θは、好ましくは45°とする。傾斜角θが45°を大きく超えると樹脂材料同士の衝突が懸念され、傾斜角θが45°を大きく下回ると高さ寸法が増加する。樹脂材料同士の衝突が回避され且つ高さ寸法の増加が許容範囲に収まれば、傾斜角θは45°とは異なる値に設定することは差し支えない。
第2斜め流路87についても同様である。
【0030】
図2(b)に示すように、第1下がり流路84及び第2下がり流路86は、上部が開口しているため、上から回転砥石89を挿入することができる。結果、第1下がり流路84及び第2下がり流路86の面は、ホーニング加工され、平滑になる。
【0031】
第1斜め流路85の下方延長線88及び第2斜め流路87の下方延長線88は、V字部81の肉に干渉しない。結果、下から回転砥石89を挿入することができる。
【0032】
以上に説明したように、図2(a)、(b)に示すY字アダプター80によれば、第1斜め流路85を流れる樹脂材料と第2斜め流路を流れる樹脂材料とが直接衝突することはなく、円滑に合流する。すなわち、樹脂材料の流れが乱れないという長所がある。
また、第1斜め流路85と第2斜め流路87に容易にホーニング加工などの仕上げ加工を施すことができるという第2の長所がある。
【0033】
以上の知見に基づき完成した発明は、以下に述べるとおりである。
請求項1に係る発明は、型締軸が鉛直であって下型へ上型を型締めする型締装置と、前記下型を載せて型締め位置と製品取出し位置の間を移動するターンテーブルと、射出軸が鉛直であって前記型締装置の上に配置され前記下型と前記上型からなる金型へ樹脂材料を射出する射出装置とを備える竪型射出成形装置であって、
前記射出装置は、互いに平行に配置される左右一対の第1加熱筒及び第2加熱筒と、これらの第1加熱筒及び第2加熱筒の下に接続され前記第1加熱筒からの樹脂材料と前記第2加熱筒からの樹脂材料を合流し1個のノズルから射出するY字アダプターとを有し
射出容量が十分に大きい加熱筒を、射出容量が前記加熱筒の1/2である前記第1加熱筒と射出容量が前記加熱筒の1/2である前記第2加熱筒に置き換えることにより前記第1加熱筒及び前記第2加熱筒の長さを小さくするようにしたことを特徴とする。
【0034】
請求項2に係る発明は、請求項1記載の竪型射出成形装置であって、
前記射出装置は、前記第1加熱筒と前記Y字アダプターとの間に介在させる第1逆止弁と、前記第2加熱筒と前記Y字アダプターとの間に介在させる第2逆止弁とをさらに有し、
前記第1加熱筒で射出する樹脂材料が前記第2加熱筒へ逆流することを前記第2逆止弁で防止し、前記第2加熱筒で射出する樹脂材料が前記第1加熱筒へ逆流することを前記第1逆止弁で防止するようにしたことを特徴とする。
【0035】
請求項3に係る発明は、請求項2記載の竪型射出成形装置であって、
前記第1逆止弁及び前記第2逆止弁は、筒状の弁箱と、この筒状の弁箱の上部開口に嵌めた上穴開き板と、前記弁箱の下部開口に嵌めた下穴開き板と、前記弁箱に昇降自在に収納される球とからなり、
前記上穴開き板は、中央に前記球より小径の穴を有し、
前記下穴開き板は、中央に前記球より小径の穴を有し、加えてこの穴を囲う位置にサブ穴を有し、前記下穴開き板の前記穴が前記球で塞がれたときに、前記サブ穴を通って樹脂材料の流れが維持されるようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0036】
請求項1に係る発明では、ターンテーブル方式の竪型射出成形装置において、上へ延びる加熱筒を、左右一対の第1加熱筒及び第2加熱筒で構成した。1本の加熱筒を2本に分けることで、第1加熱筒及び第2加熱筒の高さを大幅に小さくすることができる。射出容積は、第1加熱筒の射出容積と第2加熱筒の射出容積の和となり、十分な大きさが確保できる。
【0037】
加えて、Y字アダプターで、第1加熱筒からの樹脂材料と第2加熱筒からの樹脂材料を合流し1個のノズルから射出するようにしたため、樹脂材料同士の強い衝突が回避され、円滑な射出が行える。
結果、請求項1により、十分に大きな射出容積を確保しつつ、高さを小さくすることができる縦型射出装置を備えたターンテーブル方式の竪型射出成形装置が提供される。
【0038】
請求項2に係る発明では、第1加熱筒とY字アダプターとの間に第1逆止弁を介在させ、第2加熱筒とY字アダプターとの間に第2逆止弁を介在させた。
結果、第1加熱筒で射出する樹脂材料が第2加熱筒へ逆流することを第2逆止弁で防止することができると共に、第2加熱筒で射出する樹脂材料が第1加熱筒へ逆流することを第1逆止弁で防止することができる。
【0039】
請求項3に係る発明では、第1逆止弁及び第2逆止弁の構成要素の一つである下穴開き板に、サブ穴を設けた。
結果、下穴開き板の中央の穴が球で塞がれたときに、サブ穴を通って樹脂材料の流れが維持される。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】(a)~(c)は本発明を完成するに至った経緯を説明する図である。
図2】(a)は本発明に係るY字アダプターの断面図であり、(b)はホーニング加工を説明する図である。
図3】本発明に係る竪型射出成形装置の全体構成を示す図である。
図4図3の4-4線矢視図である。
図5】竪型射出成形装置の作用を説明する図である。
図6】(a)、(b)は竪型射出成形装置の一要素である射出装置の作用を説明する図である。
図7】(a)はY字アダプターの変更例を示す図であり、(b)は逆止弁の作用を説明する図である。
図8】従来のターンテーブル方式の竪型射出成形装置の側面図である。
図9】従来のターンテーブル方式の別の射出成形装置の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、シリンダにおいて、「伸動」は、ピストンロッドを前進させてシリンダ全長が伸びることを意味し、「縮動」はピストンロッドを後退させてシリンダ全長が縮むことを意味する。
【実施例
【0042】
図3に示すように、竪型射出成形装置10は、型締軸20aが鉛直であって、下型13と上型14とからなる金型12を型締めする型締装置20と、射出軸50aが鉛直であって、型締装置20の上に且つ鉛直に配置される射出装置50とを、主要素とする装置である。
【0043】
型締装置20は、床(又は機台)16に固定されるベッド21と、このベッド21に固定される圧受盤22と、この圧受盤22に載せられるターンテーブル23と、圧受盤22より下に配置され圧受盤22に設けたハーフナット位置調整手段24で昇降される牽引盤79と、型締シリンダ33を含む牽引盤79の下に配置されるハーフナット26と、圧受盤22より上に配置され圧受盤22に設けた型開閉手段27で昇降される可動盤28と、この可動盤28から下げられ圧受盤22及び牽引盤79を貫通するタイバー31と、ハーフナット位置調整手段24や型締シリンダ33や型開閉手段27等へ圧油を供給するポンプモータユニット32を備えている。
【0044】
ハーフナット位置調整手段24は、ハーフナット位置調整油圧シリンダ24Aが好適である。同様に、型締手段25は型締シリンダ33が好ましく、型開閉手段27は、型開閉油圧シリンダ27Aが好ましい。
【0045】
なお、圧受盤22は、ボルト等を緩めることでベッド21から外すことができる。よって、本発明における「固定」は、完全固定の他、分離可能に結合されている形態を含む。
また、ハーフナット位置調整手段24や型開閉手段27を、ベッド21に設けることは差し支えない。
【0046】
型締手段25は、例えば、上に開口する型締シリンダ33を有する。この型締シリンダ33に圧受盤22から下へ延びるピストン部34を収納する。型締シリンダ33とピストン部34との間に圧油室35が形成される。圧油室35に圧油が供給されると、牽引盤79が下がる。
【0047】
タイバー31は、下端部に係合部36が設けられている。この係合部36は、例えば、鋸歯部である。以下、係合部36を鋸歯部36と読み替える。
ハーフナット26は係合部としての鋸歯部36に係合する(噛み合う)半割ナットである。ハーフナット26は、牽引盤79に設けたハーフナット開閉手段37で開閉される。ハーフナット開閉手段37はハーフナット開閉油圧シリンダ37Aが好ましい。
【0048】
鋸歯部36は、歯が竹の節(ふし)のように、等ピッチで並んでいるものが好ましい。歯は、矩形断面、台形断面、三角断面の何れでもよい。ハーフナット26には対応する歯が設けられている。
【0049】
タイバー31及びハーフナット26は、丈夫で硬い鋼で造られる。鋼同士の接触を円滑にするため、鋸歯部36とハーフナット26との間にグリース潤滑を施す。鋸歯部36より高い位置にて、タイバー31の外周面に給脂する。グリースは流れ落ちて、鋸歯部36に達する。給脂は、自動、手動の何れでもよい。
【0050】
好ましくは、ハーフナット26の作動を監視するハーフナット作動監視機構38を、ハーフナット26の近傍に設ける。しかし、型開閉手段27及びハーフナット位置調整手段24の位置制御が精密に行えることを条件に、ハーフナット作動監視機構38を省くことは差し支えない。
【0051】
ハーフナット作動監視機構38は、近接スイッチ、リミットスイッチなど任意のセンサが使用できる。そのうちで、近接スイッチは、相手金属が一定距離内に接近したときに「物体あり」、相手金属が一定距離を超えて離れているときに「物体なし」と判別する非接触型センサである。ハーフナット26は廃グリースで濡れているが、非接触型センサであれば、誤検出の心配がない。その上、安価である。よって、近接スイッチが推奨される。
【0052】
好ましくは、ハーフナット26の下に且つ床16上に、廃グリースを受けるトレイ41を配置する。トレイ41は皿状の容器である。定期的又は随時、トレイ41を引き出し、溜まった廃グリースを処理することにより、床16上の汚れを防止する。
【0053】
好ましくは、ベッド21をカバー42で囲う。このカバー42は安全カバーの役割を果たす。ベッド21をカバー42で囲うことにより、型締装置20の外観性が高まる。ただし、安全柵等で代替できるため、カバー42は必須ではない。
【0054】
射出装置50は、可動盤28に立てられた射出装置移動手段51と、この射出装置移動手段51で支持される射出台52と、この射出台52で支持されつつ下へ延びる第1加熱筒53L及び第2加熱筒53Rと、これらの先端(図では下端)に接続するY字アダプター80と、射出台52に設けられピストンロッドが上へ延びる射出手段54と、この射出手段54で支持される第1スクリュー駆動台55L及び第2スクリュー駆動台55Rと、これらの第1スクリュー駆動台55L及び第2スクリュー駆動台55Rで支持される第1スクリュー回転機構56L及び第2スクリュー回転機構56Rと、これらの第1スクリュー回転機構56L及び第2スクリュー回転機構56Rから下へ延ばされ第1加熱筒53L及び第2加熱筒53Rへ進入する第1スクリュー57L及び第2スクリュー57Rとからなる。
【0055】
便宜的に第1加熱筒53L及び第2加熱筒53Rの長手中心軸を、射出軸50aとした。
Y字アダプター80は、第1加熱筒53Lからの樹脂材料と、第2加熱筒53Rからの樹脂材料を合流し1個のノズル53aから射出する役割を果たす。
【0056】
第1スクリュー回転機構56L及び第2スクリュー回転機構56Rは、例えば油圧モータである。
【0057】
射出装置移動手段51は射出装置移動油圧シリンダ51Aが好ましく、射出手段54は射出シリンダ54Aが好ましい。
【0058】
更に好ましくは、可動盤28上に第1加熱筒53L及び第2加熱筒53Rを囲うパージングカバー64を設ける。また、可動盤28に上型エジェクタ60を設ける。この上型エジェクタ60は、上型14まで延びるエジェクタピン61と、このエジェクタピン61を移動するピン移動手段62とからなり、上型14に残るランナを突き落とす役割を果たす。ピン移動手段62はピン移動油圧シリンダ62Aが好ましいが、電動シリンダとすることも可能である。
【0059】
図4は、図3の4-4線矢視図である。
図4に示すように、タイバー31は、三角形の頂点に各々配置されている。うち、1本のタイバー31が、ターンテーブル23の回転中心を構成する。
製品取出し位置17にて、下型13から製品を取出す。空になった下型13はターンテーブル23を180°回転させることにより、型締め位置18に移される。
製品取出し作業と型締め作業とが並行して行えるため、ターンテーブル23を採用することにより、生産性を高めることができる。
【0060】
図3の型締装置20において、ハーフナット26を開いて、鋸歯部36から分離する。次に、型開閉手段27を伸動して、可動盤28を上昇させる。可動盤28が上昇することに伴って、下型13から上型14が分離すると共にタイバー31が上昇する。
また、射出装置50において、射出装置移動手段51を伸動して、射出台52を上昇させる。射出台52が上昇することに伴って、第1加熱筒53L及び第2加熱筒53Rが上昇する。
【0061】
以上の結果を、図5に示す。
最大型開状態が示される図5に示すように、タイバー31の下端部31aが、牽引盤79内まで上昇した。結果、タイバー31を十分に短くすることができる。タイバー31が短ければ、タイバー31が軽くなると共に材料の節約が図れる。
すなわち、従来の技術では、常時、タイバー31の下端部31aが、牽引盤79の外に出るような構造が、好まれる。これに対して、図5であれば、タイバー31を大幅に短くすることができた。
【0062】
タイバー31が短くなると、型締装置20の高さが小さくなる。型締装置20の高さが小さくなると、竪型射出成形装置10の高さが小さくなる。
すなわち、1本の加熱筒を2本の第1加熱筒56Lと第2加熱筒56Rに変更したことで射出装置50の高さが小さくなり、タイバー31が短くなることで型締装置20の高さが小さくなり、合わせて竪型射出成形装置10の高さが増々小さくなる。
【0063】
また、第1加熱筒53L及び第2加熱筒53Rを上げて、溜まった樹脂材料を排出するパージジング作業を行うことがある。このパージング作業は捨てショット工程とも呼ばれる。捨てショット工程では、ノズル53aから樹脂材料が飛び出るが、パージングカバー64で飛散を防止する。作業者は、随時又は適宜、パージングカバー64を開放して、溜まっている樹脂材料を取出す。
本発明によれば、ノズル53aを囲うパージングカバー64を、可動盤28上に容易に配置することができる。
【0064】
竪型射出成形装置10においては、型締装置20の作動と、射出装置50の作動が並行して実施される。
先ず、型締装置20の作動を説明する。
図5にて、型開閉手段27を縮動して、可動盤28、上型14及びタイバー31を下げる。上型14が下型13に当たった時点でタイバー31等の下降は終了する。
【0065】
鋸歯部36とハーフナット26との位相にずれがある。この位相がゼロになるように、ハーフナット位置調整手段24で牽引盤79を僅かに上げ下げする。調整が終わったら、ハーフナット開閉手段37を伸動して、鋸歯部36にハーフナット26を噛み合わせる。
万一、噛み合わせが不良であれば、そのことがハーフナット作動監視機構38で検出される。噛み合わせ不良であれば、射出成形作業を中断して、対策を講じる。
【0066】
噛み合わせ不良が検出されなければ、図3にて、型締シリンダ33の圧油室35へ圧油を供給する。すると、牽引盤79が下がり、タイバー31が引き下げられ、可動盤28が下がる。以上により、金型12が型締めされる。
【0067】
次に、射出装置50の作動を、図5及び図6に基づいて説明する。
図5にて、第1スクリュー回転機構56L及び第2スクリュー回転機構56Rにより、第1スクリュー57L及び第2スクリュー57Rは所定方向に所定速度で回転している。ホッパ65を介して、樹脂材料が第1加熱筒53L及び第2加熱筒53Rへ供給される。樹脂材料は、第1スクリュー57Lの溝及び第2スクリュー57Rの溝を通って下降する。樹脂材料は加熱、混練されることで、可塑状態になる。
【0068】
樹脂材料は、第1加熱筒53L及び第2加熱筒53R内において、第1スクリュー57L及び第2スクリュー57Rの下に溜まる。この溜まりからの反力により、第1スクリュー57L及び第2スクリュー57Rは徐々に上昇する。第1スクリュー57L及び第2スクリュー57Rの断面積にスクリューの移動量を乗じて得た値が計量値となる。この計量値が所定値に達したら、可塑化・計量工程が終了する。
【0069】
図6(a)は可塑化・計量工程が終わったときの形態を示す図であり、図6(a)にて、射出装置移動手段51を縮動する。
図6(b)に示すように、ノズル53aが上型14の所定位置に当たる。次に、射出手段54を縮動して、第1スクリュー57L及び第2スクリュー57Rを前進(下降)させる。前進する第1スクリュー57L及び第2スクリュー57Rで樹脂材料を上型14へ射出する。
【0070】
また、ベッド21をカバー42で囲ったため、型締装置20の外観性を高めることができる。反面、ハーフナット26を目視で点検することが難しくなった。
本発明では、ハーフナット作動監視機構38でハーフナット26の作動を監視するようにしたので、目視点検が不要となり、安定して型締装置20の運転が維持される。
【0071】
また、型締装置20と、可動盤28の上に且つ鉛直に配置される射出装置50とから竪型射出成形装置10を構成する。
仮に、型締装置20において、ハーフナット26が可動盤28上にあると、ハーフナット26に射出装置50(特に第1加熱筒53L及び第2加熱筒53R)が干渉するため、射出装置50を可動盤28の上に配置することが難しくなる。無理に配置すると、可動盤28回りの構造が複雑になる。
この点、本発明によれば、可動盤28の上が空いているため、可動盤28の上に射出装置50を容易に配置することができる。射出装置50に加えて、可動盤28にパージングカバー42や上型エジェクタ60等を配置することができる。
【0072】
図2(a)、(b)で説明したY字アダプター80の改良形態を、図7(a)、(b)に基づいて説明する。
図7(a)に示すように、Y字アダプター80は、ノズル53aを塞ぐニードル91と、このニードル91を昇降するためにV字部81に設けた弁開閉油圧シリンダ92とを備える。
【0073】
射出成形は、金型のキャビティへ樹脂材料を射出する射出工程と、射出された樹脂材料に背圧を付与する保圧工程と、第1スクリュー57L及び第2スクリュー57Rを回転しつつ後退させて樹脂材料を計量する計量工程とを、この順で実施する。
計量工程中は、ニードル91でノズル53aを閉じ状態にする。
射出工程の開始時に、ニードル91を上昇し、ノズル53aを開状態にして、射出を行う。
保圧工程中も、ニードル91は上昇したままとする。
保圧が完了したら、ニードル91を下げて、ノズル53aを塞ぐ。
【0074】
なお、ニードル91のストローク(開閉に伴う移動距離)は、ニードル91の外径の1.0~2.0倍程度で差し支えない。この程度であれば、弁開閉油圧シリンダ92は大きくならない。
【0075】
好ましくは、第1加熱筒53LとV字部81との間に第1逆止弁93Lを介在させ、第2加熱筒53RとV字部81との間に第2逆止弁93Rを介在させる。
【0076】
図7(b)に示すように、第1逆止弁93Lは、筒状の弁箱94と、この筒状の弁箱94の上部開口にねじ込み等で嵌めた上穴開き板95と、弁箱94の下部開口にねじ込み等で嵌めた下穴開き板96と、弁箱94に昇降自在に収納される球97とからなる。上穴開き板95は中央に穴95aを有する。下穴開き板96は中央の穴96aに加えて、この穴96aを囲う位置にサブ穴96bを有する。
【0077】
球97は、球97の上下の圧力差に応じて弁箱94内を上下する。球97の下側の圧力が勝るときには、球97は上昇して穴95aを塞ぎ、樹脂材料の逆流を防止する。
球97の上側の圧力が勝ると球97は下降して順流を許容する。仮に球97が最大限下降して穴96aを塞いでも樹脂材料はサブ穴96bを通って流れるため、順流が維持される。
第2逆止弁93Rについても同様である。
【0078】
何らかの理由で樹脂材料が、第1斜め流路85から第2斜め流路87へ向かうことがある。このときには、第2逆止弁93Rが弁閉状態となり、逆流を防止する。同様に、第2斜め流路87から第1斜め流路5へ向かうことがある。このときには、第1逆止弁93Lが弁閉状態となり、逆流を防止する。
【0079】
なお、第1スクリュー回転機構56L及び第2スクリュー回転機構56Rは、油圧モータとしたが、電動モータや減速機付き電動モータであってもよい。
【0080】
また、係合部36は、鋸歯部の他、タイバー31の外周に形成した粗面、段部、凹部であってもよく、鋸歯形状に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明は、型締軸が鉛直である型締装置と、この型締装置の上に鉛直に配置される射出装置とで構成される竪型射出成形装置に好適である。
【符号の説明】
【0082】
10…竪型射出成形装置、12…金型、13…下型、14…上型、17…製品取出し位置、18…型締め位置、20…型締装置、20a…型締軸、21…ベッド、22…圧受盤、23…ターンテーブル、24…ハーフナット位置調整手段、25…型締手段、26…ハーフナット、27…型開閉手段、28…可動盤、31…タイバー、31a…タイバーの下端部、36…係合部(鋸歯部)、50…射出装置、50a…射出軸、53a…ノズル、53L…第1加熱筒、53R…第2加熱筒、79…牽引盤、80…Y字アダプター、81…V字部、8…I字部、85…第1斜め流路、87…第2斜め流路、88…下方延長線。
【要約】
【課題】十分に大きな射出容積を確保しつつ、高さを小さくすることができるターンテーブル方式の竪型射出成形装置を提供する。
【解決手段】型締軸(20a)が鉛直である型締装置(20)と、下型(13)を載せて型締め位置(18)と製品取出し位置(17)の間を移動するターンテーブル(23)と、射出軸(50a)が鉛直である射出装置(50)とを備える竪型射出成形装置(10)であって、射出装置(50)は、左右一対の第1加熱筒(53L)及び第2加熱筒(53R)と、これらの第1加熱筒(53L)及び第2加熱筒(53R)の下に接続され前記第1加熱筒(53L)からの樹脂材料と前記第2加熱筒(53R)からの樹脂材料を合流し1個のノズル(53a)から射出するY字アダプター(80)とを有している。
【選択図】図3
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9