(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】ポリオール含有組成物、発泡性ポリウレタン組成物、及びポリウレタンフォーム
(51)【国際特許分類】
C08G 18/00 20060101AFI20241001BHJP
C08G 18/20 20060101ALI20241001BHJP
C08G 18/22 20060101ALI20241001BHJP
C08G 18/24 20060101ALI20241001BHJP
C08G 18/09 20060101ALI20241001BHJP
C08G 101/00 20060101ALN20241001BHJP
【FI】
C08G18/00 F
C08G18/20
C08G18/22
C08G18/24
C08G18/00 H
C08G18/09 020
C08G101:00
(21)【出願番号】P 2023196875
(22)【出願日】2023-11-20
(62)【分割の表示】P 2020048416の分割
【原出願日】2020-03-18
【審査請求日】2023-11-21
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【氏名又は名称】田口 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100129746
【氏名又は名称】虎山 滋郎
(72)【発明者】
【氏名】梶田 倫生
(72)【発明者】
【氏名】小野 裕一朗
【審査官】三宅 澄也
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-533912(JP,A)
【文献】特開2016-124912(JP,A)
【文献】特表2014-517118(JP,A)
【文献】特表2016-514177(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイソシアネートと反応させてポリウレタンフォームを得るためのポリオール含有組成物であって、ポリオール、発泡剤、及び触媒を含有し、
前記触媒は、カルボン酸カリウム塩
と、カルボン酸アンモニウム塩
と、窒素原子を有する複素環式化合物
と、ビスマス及びスズからなる群から選択される少なくとも1種の金属塩
とを含有し、
前記カルボン酸アンモニウム塩におけるアンモニウムイオンが、トリエチルメチルアンモニウムイオン、テトラメチルアンモニウムイオン、ヒドロキシブチルトリメチルアンモニウムイオン、及びヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムイオンからなる群から選択される少なくとも1種であり、
前記窒素原子を有する複素環式化合物が、イミダゾール誘導体であ
り、
前記発泡剤が、ハイドロフルオロオレフィンを含有する、ポリオール含有組成物。
【請求項2】
前記カルボン酸カリウム塩におけるカルボン酸が、2-エチルヘキサン酸、2,2-ジメチルプロパン酸、酢酸、及びギ酸からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載のポリオール含有組成物。
【請求項3】
前記カルボン酸カリウム塩におけるカルボン酸の炭素数が5以上である、請求項1又は2に記載のポリオール含有組成物。
【請求項4】
前記カルボン酸アンモニウム塩におけるカルボン酸が、2-エチルヘキサン酸、2,2-ジメチルプロパン酸、酢酸、及びギ酸からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1~3のいずれか1項に記載のポリオール含有組成物。
【請求項5】
前記カルボン酸アンモニウム塩におけるカルボン酸の炭素数が5以上である、請求項1~4のいずれか1項に記載のポリオール含有組成物。
【請求項6】
前記カルボン酸アンモニウム塩が、2,2-ジメチルプロパン酸テトラメチルアンモニウム塩である、請求項1~5のいずれか1項に記載のポリオール含有組成物。
【請求項7】
前記ビスマス及びスズからなる群から選択される少なくとも1種の金属塩が、炭素数5以上のカルボン酸の金属塩である、請求項1~6のいずれか1項に記載のポリオール含有組成物。
【請求項8】
前記ビスマス及びスズからなる群から選択される少なくとも1種の金属塩が、2-エチルヘキサン酸の金属塩である、請求項1~7のいずれか1項に記載のポリオール含有組成物。
【請求項9】
前記イミダゾール誘導体が、1位及び2位がそれぞれ独立に炭素数4以下のアルキル基で置換されたイミダゾールである、請求項1~8のいずれか1項に記載のポリオール含有組成物。
【請求項10】
前記イミダゾール誘導体が、1,2-ジメチルイミダゾール及び1-イソブチル-2-メチルイミダゾールからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1~9のいずれか1項に記載のポリオール含有組成物。
【請求項11】
前記イミダゾール誘導体が、1,2-ジメチルイミダゾールである、請求項1~10のいずれか1項に記載のポリオール含有組成物。
【請求項12】
請求項1~1
1のいずれか1項に記載のポリオール含有組成物と、ポリイソシアネートとを含む発泡性ポリウレタン組成物。
【請求項13】
イソシアネートインデックスが250以上である、請求項1
2に記載の発泡性ポリウレタン組成物。
【請求項14】
請求項1
2又は1
3に記載の発泡性ポリウレタン組成物を、反応及び発泡させてなる、ポリウレタンフォーム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリオール含有組成物、発泡性ポリウレタン組成物、及びポリウレタンフォームに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタンフォームは、その優れた断熱性及び接着性から、例えば、マンションなどの集合住宅、戸建住宅、学校の各種施設、商業ビルなどの建築物の断熱材として用いられている。ポリウレタンフォームは、建築物の施工現場において、ポリオール含有組成物とポリイソシアネートとを混合して発泡させ、スプレー装置などを使用して天井や壁、屋根などの対象物に吹き付けることで得られる。
【0003】
ポリオール含有組成物には、触媒として樹脂化触媒及び三量化触媒等が配合されている。樹脂化触媒は、ポリオール等とイソシアネートとの反応を促進する触媒であり、三量化触媒は、イソシアネートが互いに反応することでイソシアヌレートの生成を促進し、イソシアヌレートの比率を高める触媒である。
触媒が配合されたポリオール含有組成物は、保管中に触媒と発泡剤が反応して触媒性能の低下、発泡性の低下を引き起こすことがある。発泡剤は、従前においてはハイドロフルオロカーボン(HFC)が広く使用されていたが、発泡剤として地球温暖化係数が低いハイドロフルオロオレフィン(HFO)への切り替えが進んでいる。ハイドロフルオロオレフィンは、発泡剤の中でも、特に触媒と反応しやすい傾向があり、触媒性能の低下及び発泡性の低下が一層生じやすくなる。
このような問題を解決する方法として、三量化触媒と樹脂化触媒との配合量を特定する方法(例えば、特許文献1参照)、及び所定の構造を有する三量化触媒を用いる方法(例えば、特許文献2参照)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-30975号公報
【文献】国際公開2018/105730号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のポリオール含有組成物では、HFOなどの発泡剤と触媒とが反応して触媒が失活し、ポリオール含有組成物の安定性が低くなることがあり、安定性と、発泡性の向上とを両立することが難しい。
【0006】
そこで、本発明は、触媒が失活することを抑制して、優れた安定性及び良好な発泡性を両立するポリオール含有組成物、発泡性ポリウレタン組成物及びポリウレタンフォームを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意検討の結果、ポリオール含有組成物中の触媒として、カルボン酸カリウム塩、カルボン酸アンモニウム塩、窒素原子を有する複素環式化合物、及び遷移金属塩を含有させることで、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。すなわち、本発明は以下の[1]~[20]を提供する。
[1]ポリイソシアネートと反応させてポリウレタンフォームを得るためのポリオール含有組成物であって、ポリオール、発泡剤、及び触媒を含有し、
前記触媒は、カルボン酸カリウム塩、カルボン酸アンモニウム塩、窒素原子を有する複素環式化合物、及び遷移金属塩を含有するポリオール含有組成物。
[2]前記カルボン酸カリウム塩におけるカルボン酸が、2-エチルヘキサン酸、2,2-ジメチルプロパン酸、酢酸、及びギ酸からなる群から選択される少なくとも1種である、[1]に記載のポリオール含有組成物。
[3]前記カルボン酸カリウム塩におけるカルボン酸の炭素数が5以上である、[1]又は[2]に記載のポリオール含有組成物。
[4]前記カルボン酸アンモニウム塩におけるカルボン酸が、2-エチルヘキサン酸、2,2-ジメチルプロパン酸、酢酸、及びギ酸からなる群から選択される少なくとも1種である、[1]~[3]のいずれか1項に記載のポリオール含有組成物。
[5]前記カルボン酸アンモニウム塩におけるカルボン酸の炭素数が5以上である、[1]~[4]のいずれか1項に記載のポリオール含有組成物。
[6]前記カルボン酸アンモニウム塩におけるアンモニウムイオンが4級アンモニウムイオンである、[1]~[5]のいずれか1項に記載のポリオール含有組成物。
[7]前記カルボン酸アンモニウム塩におけるアンモニウムイオンが、トリエチルメチルアンモニウムイオン、テトラメチルアンモニウムイオン、ヒドロキシブチルトリメチルアンモニウムイオン、及びヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムイオンからなる群から選択される少なくとも1種である、[1]~[6]のいずれか1項に記載のポリオール含有組成物。
[8]前記カルボン酸アンモニウム塩が、2,2-ジメチルプロパン酸テトラメチルアンモニウム塩である、[1]~[7]のいずれか1項に記載のポリオール含有組成物。
[9]前記遷移金属塩における遷移金属が、ビスマス及びスズからなる群から選択される少なくとも1種である、[1]~[8]のいずれか1項に記載のポリオール含有組成物。
[10]前記遷移金属塩が、炭素数5以上のカルボン酸の金属塩である、[1]~[9]のいずれか1項に記載のポリオール含有組成物。
[11]前記遷移金属塩における遷移金属が、ビスマスである、[1]~[10]のいずれか1項に記載のポリオール含有組成物。
[12]前記遷移金属塩が、2-エチルヘキサン酸の金属塩である、[1]~[11]のいずれか1項に記載のポリオール含有組成物。
[13]前記複素環式化合物が、イミダゾール誘導体である、[1]~[12]のいずれか1項に記載のポリオール含有組成物。
[14]前記イミダゾール誘導体が、1位及び2位がそれぞれ独立に炭素数4以下のアルキル基で置換されたイミダゾールである、[1]~[13]のいずれか1項に記載のポリオール含有組成物。
[15]前記イミダゾール誘導体が、1,2-ジメチルイミダゾール及び1-イソブチル-2-メチルイミダゾールからなる群から選択される少なくとも1種である、[1]~[14]のいずれか1項に記載のポリオール含有組成物。
[16]前記イミダゾール誘導体が、1,2-ジメチルイミダゾールである、[1]~[15]のいずれか1項に記載のポリオール含有組成物。
[17]前記発泡剤が、ハイドロフルオロオレフィンを含有する、[1]~[16]のいずれか1項に記載のポリオール含有組成物。
[18][1]~[17]のいずれか1項に記載のポリオール含有組成物と、ポリイソシアネートとを含む発泡性ポリウレタン組成物。
[19]イソシアネートインデックスが250以上である、[18]に記載の発泡性ポリウレタン組成物。
[20][18]又は[19]に記載の発泡性ポリウレタン組成物を、反応及び発泡させてなる、ポリウレタンフォーム。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、優れた安定性及び良好な発泡性を両立するポリオール含有組成物、発泡性ポリウレタン組成物及びポリウレタンフォームを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。
[ポリオール含有組成物]
本発明のポリオール含有組成物は、ポリイソシアネートと反応させてポリウレタンフォームを得るためのポリオール含有組成物であって、ポリオール、発泡剤、及び触媒を含有し、前記触媒は、カルボン酸カリウム塩、カルボン酸アンモニウム塩、窒素原子を有する複素環式化合物、及び遷移金属塩を含有する。本発明のポリオール含有組成物は、触媒として、カルボン酸カリウム塩、カルボン酸アンモニウム塩、窒素原子を有する複素環式化合物、及び遷移金属塩を含有することで、優れた安定性及び良好な発泡性を両立することができる。
以下、本発明のポリオール含有組成物中の各成分について詳細に説明する。
【0010】
<ポリオール>
本発明のポリオール含有組成物はポリウレタンフォームの原料としてポリオールを含有する。
本発明に用いるポリオールとしては、例えば、ポリラクトンポリオール、ポリカーボネートポリオール、芳香族ポリオール、脂環族ポリオール、脂肪族ポリオール、ポリエステルポリオール、ポリマーポリオール、及びポリエーテルポリオール等が挙げられる。
【0011】
ポリラクトンポリオールとしては、例えば、ポリプロピオラクトングリコール、ポリカプロラクトングリコール、及びポリバレロラクトングリコール等が挙げられる。
ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、及びノナンジオール等の水酸基含有化合物と、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等との脱アルコール反応により得られるポリオール等が挙げられる。
【0012】
芳香族ポリオールとしては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、フェノールノボラック、及びクレゾールノボラック等が挙げられる。
脂環族ポリオールとしては、例えば、シクロヘキサンジオール、メチルシクロヘキサンジオール、イソホロンジオール、ジシクロへキシルメタンジオール、及びジメチルジシクロへキシルメタンジオール等が挙げられる。
脂肪族ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、及びヘキサンジオール等が挙げられる。
【0013】
ポリエステルポリオールとしては、例えば、多塩基酸と多価アルコールとを脱水縮合して得られる重合体、ε-カプロラクトン、及びα-メチル-ε-カプロラクトン等のラクトンを開環重合して得られる重合体、及びヒドロキシカルボン酸と前記多価アルコール等との縮合物が挙げられる。
多塩基酸としては、例えば、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、イソフタル酸(m-フタル酸)、テレフタル酸(p-フタル酸)、及びコハク酸等が挙げられる。また、多価アルコールとしては、例えば、ビスフェノールA、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、ジエチレングリコール、1,6-ヘキサングリコール、及びネオペンチルグリコール等が挙げられる。
また、ヒドロキシカルボン酸としては、例えば、ひまし油、ひまし油とエチレングリコールの反応生成物等が挙げられる。
【0014】
ポリマーポリオールとしては、例えば、芳香族ポリオール、脂環族ポリオール、脂肪族ポリオール、及びポリエステルポリオール等に対し、アクリロニトリル、スチレン、メチルアクリレート、及びメタクリレート等のエチレン性不飽和化合物をグラフト重合させた重合体、ポリブタジエンポリオール、及び多価アルコールの変性ポリオール又はこれらの水素添加物等が挙げられる。
【0015】
多価アルコールの変性ポリオールとしては、例えば、原料の多価アルコールにアルキレンオキサイドを反応させて変性したもの等が挙げられる。
多価アルコールとしては、例えば、グリセリン及びトリメチロールプロパン等の三価アルコール、ペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニトール、ソルビタン、ジグリセリン、ジペンタエリスリトール等、ショ糖、グルコース、マンノース、フルクト-ス、メチルグルコシド及びその誘導体等の四~八価のアルコール、フロログルシノール、クレゾール、ピロガロール、カテコ-ル、ヒドロキノン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、1,3,6,8-テトラヒドロキシナフタレン、及び1,4,5,8-テトラヒドロキシアントラセン等のポリオール、ひまし油ポリオール、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの(共)重合体及びポリビニルアルコール等の多官能(例えば官能基数2~100)ポリオール、フェノールとホルムアルデヒドとの縮合物(ノボラック)が挙げられる。
【0016】
多価アルコールの変性方法は特に限定されないが、アルキレンオキサイド(以下、「AO」ともいう)を付加させる方法が好適に用いられる。AOとしては、炭素数2~6のAO、例えば、エチレンオキサイド(以下、「EO」ともいう)、1,2-プロピレンオキサイド(以下、「PO」ともいう)、1,3-プロピレオキサイド、1,2-ブチレンオキサイド、及び1,4-ブチレンオキサイド等が挙げられる。
これらの中でも性状や反応性の観点から、PO、EO及び1,2-ブチレンオキサイドが好ましく、PO及びEOがより好ましい。AOを2種以上使用する場合(例えば、PO及びEO)の付加方法としては、ブロック付加であってもランダム付加であってもよく、これらの併用であってもよい。
【0017】
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、活性水素を2個以上有する低分子量活性水素化合物等の少なくとも1種の存在下に、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、テトラヒドロフラン等のアルキレンオキサイドの少なくとも1種を開環重合させて得られる重合体が挙げられる。活性水素を2個以上有する低分子量活性水素化合物としては、例えば、ビスフェノールA、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、1,6-ヘキサンジオール等のジオール類、グリセリン、トリメチロールプロパン等のトリオール類、エチレンジアミン、及びブチレンジアミン等のアミン類等が挙げられる。
【0018】
本発明に使用するポリオールとしては、ポリエステルポリオール、及びポリエーテルポリオールが好ましい。また、水酸基を2個有するポリオールが好ましい。中でも、難燃性を高める観点から、芳香族環を有するポリエステルポリオールである芳香族ポリエステルポリオールが好ましい。芳香族ポリエステルポリオールとしては、イソフタル酸(m-フタル酸)、テレフタル酸(p-フタル酸)等の芳香族環を有する多塩基酸と、ビスフェノールA、エチレングリコール、及び1,2-プロピレングリコール等の2価アルコールとを脱水縮合して得られるものがより好ましい。
【0019】
ポリオールの水酸基価は、20~300mgKOH/gが好ましく、30~250mgKOH/gがより好ましく、50~220mgKOH/gがさらに好ましい。ポリオールの水酸基価が前記上限値以下であるとポリオール含有組成物の粘度が下がりやすく、取り扱い性等の観点で好ましい。一方、ポリオールの水酸基価が前記下限値以上であるとポリウレタンフォームの架橋密度が上がることにより強度が高くなる。
なお、ポリオールの水酸基価は、JIS K 1557-1:2007に従って測定可能である。
【0020】
<触媒>
本発明のポリオール含有組成物は、触媒として、カルボン酸カリウム塩、カルボン酸アンモニウム塩、窒素原子を有する複素環式化合物、及び遷移金属塩を含有する。本発明のポリオール含有組成物は、触媒として前記4種を含有することで、触媒による発泡剤の分解性を抑制し、かつ、触媒の活性を高めて発泡性を向上させることができる。
【0021】
《カルボン酸カリウム塩》
本発明のポリオール含有組成物は、カルボン酸カリウム塩を含有する。カルボン酸カリウム塩は、三量化触媒であり、ポリイソシアネートの三量化体によるイソシアヌレート結合を形成しやすくなる。
本発明において、カルボン酸カリウム塩におけるカルボン酸は、炭素数1以上であればよいが、炭素数5以上であることが好ましい。該カルボン酸は、好ましくは脂肪族カルボン酸であり、より好ましくは飽和脂肪族カルボン酸である。該カルボン酸の炭素数は、例えば20以下であるが、好ましくは12以下、より好ましくは8以下である。また、該カルボン酸は、直鎖状であってもよいし、分岐構造を有していてもよいが、分岐構造を有することが好ましい。分岐構造を有すると、立体障害によりハイドロフルオロオレフィンなどの発泡剤との反応性が低くなりやすくなるため、ポリオール含有組成物の安定性が向上する。
【0022】
カルボン酸カリウム塩は、中でも、下記一般式(1)で表されるカルボン酸カリウム塩であることが好ましい。下記一般式(1)で表されるカルボン酸カリウム塩は、適度な立体障害を有しているため発泡剤を分解する反応を抑制でき、また、触媒活性の低下も防ぐことができる。
【0023】
【化1】
(一般式(1)中、R
1及びR
2は、それぞれ独立にアルキル基を表し、R
3は水素原子又はアルキル基を表す。また、K
+はカリウムイオンを表す。)
【0024】
一般式(1)中のR1及びR2は、それぞれ独立にアルキル基を表し、具体的には炭素数1~6のアルキル基が好ましく、炭素数1~4のアルキル基がより好ましく、炭素数1~2のアルキル基がさらに好ましい。なお、アルキル基は直鎖状であってもよいし、分岐構造を有してもよい。
また、R3は水素原子又はアルキル基を表し、アルキル基は炭素数1~6が好ましい。また、R3は、アルキル基が好ましく、炭素数1~4のアルキル基がさらに好ましく、炭素数1~2のアルキル基がよりさらに好ましい。
R1、R2及びR3の炭素数が前記下限値以上であると、立体障害が大きくなるためハイドロフルオロオレフィンを分解する反応を抑制することができる。一方、R1、R2及びR3の炭素数が前記上限値以下であると、立体障害が大きくなりすぎないため反応性が遅くなることを防ぐことができる。
【0025】
カルボン酸カリウム塩におけるカルボン酸の好ましい具体例としては、2-エチルヘキサン酸、2,2-ジメチルプロパン酸、酢酸、及びギ酸からなる群から選択される少なくとも1種である。また、上記一般式(1)で示すとおりのカルボン酸も好ましく、中でも、2,2-ジメチルプロパン酸、2-エチルヘキサン酸がより好ましく、2-エチルヘキサン酸がさらに好ましい。
なお、本発明において前記カルボン酸カリウム塩は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0026】
ポリオール含有組成物中のカルボン酸カリウム塩の配合量は、ポリオール100質量部に対して、1.0~10.0質量部が好ましく、1.5~8.0質量部がより好ましく、1.8~7.0質量部がさらに好ましい。カルボン酸カリウム塩の配合量が前記下限値以上であるとポリイソシアネートの三量化が生じやすくなり、得られるポリウレタンフォームの難燃性が向上する。一方、カルボン酸カリウム塩の配合量が前記上限値以下であると反応の制御がし易くなる。
【0027】
《カルボン酸アンモニウム塩》
本発明のポリオール含有組成物は、カルボン酸アンモニウム塩を含有する。カルボン酸アンモニウム塩は、三量化触媒であり、ポリイソシアネートの三量化体によるイソシアヌレート結合を形成しやすくなる。
本発明において、カルボン酸アンモニウム塩におけるカルボン酸は、炭素数1以上であればよいが、炭素数5以上であることが好ましい。該カルボン酸は、好ましくは脂肪族カルボン酸であり、より好ましくは飽和脂肪族カルボン酸である。該カルボン酸の炭素数は、例えば20以下であるが、好ましくは12以下、より好ましくは8以下である。また、該カルボン酸は、直鎖状であってもよいし、分岐構造を有していてもよいが、分岐構造を有することが好ましい。分岐構造を有すると、立体障害によりハイドロフルオロオレフィンなどの発泡剤との反応性が低くなりやすくなるため、ポリオール含有組成物の安定性が向上する。
【0028】
カルボン酸アンモニウム塩は、中でも、下記一般式(2)で表されるカルボン酸アンモニウム塩であることが好ましい。下記一般式(2)で表されるカルボン酸アンモニウム塩は、適度な立体障害を有しているため発泡剤を分解する反応を抑制でき、また、触媒活性の低下も防ぐことができる。
【0029】
【化2】
(一般式(2)中、R
4及びR
5は、それぞれ独立にアルキル基を表し、R
6は水素原子又はアルキル基を表す。また、M
+はアンモニウムイオンを表す。)
【0030】
一般式(2)中のR4及びR5は、それぞれ独立にアルキル基を表し、具体的には炭素数1~6のアルキル基が好ましく、炭素数1~4のアルキル基がより好ましく、炭素数1~2のアルキル基がさらに好ましい。なお、アルキル基は直鎖状であってもよいし、分岐構造を有してもよい。
また、R6は水素原子又はアルキル基を表し、アルキル基は炭素数1~6が好ましい。また、R6は、アルキル基が好ましく、炭素数1~4のアルキル基がさらに好ましく、炭素数1~2のアルキル基がよりさらに好ましい。
R4、R5及びR6の炭素数が前記下限値以上であると、立体障害が大きくなるためハイドロフルオロオレフィンを分解する反応を抑制することができる。一方、R4、R5及びR6の炭素数が前記上限値以下であると、立体障害が大きくなりすぎないため反応性が遅くなることを防ぐことができる。
M+はアンモニウムイオンを表し、アンモニウムイオンの詳細は後述する通りである。
【0031】
カルボン酸アンモニウム塩におけるカルボン酸の好適な具体例としては、2-エチルヘキサン酸、2,2-ジメチルプロパン酸、酢酸、及びギ酸からなる群から選択される少なくとも1種である。また、一般式(2)で示すとおりのカルボン酸も好ましく、2-エチルヘキサン酸、2,2-ジメチルプロパン酸がより好ましく、2,2-ジメチルプロパン酸であることがさらに好ましい。
なお、本発明において前記カルボン酸アンモニウム塩は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0032】
カルボン酸アンモニウム塩におけるアンモニウムイオンとしては、4級アンモニウムイオンであることが好ましく、テトラアルキルアンモニウムイオン又はヒドロキシアルキルトリアルキルアンモニウムイオンであることがより好ましく、テトラアルキルアンモニウムイオンであることがさらに好ましい。
【0033】
テトラアルキルアンモニウムイオンにおける各アルキル基は、例えば炭素数1~4のアルキル基、好ましくは炭素数1~2のアルキル基、より好ましくはメチル基である。
テトラアルキルアンモニウムイオンの具体例としては、テトラメチルアンモニウムイオン、及びトリエチルメチルアンモニウムイオン等が挙げられる。
【0034】
ヒドロキシアルキルトリアルキルアンモニウムイオンにおける各アルキル基は、例えば炭素数1~4のアルキル基、好ましくはメチル基、エチル基、又はブチル基である。また、ヒドロキシアルキル基は、アルキル基における水素原子のうちいずれか1つがヒドロキシ基に置換された基であり、例えば炭素数1~4、好ましくは炭素数2~4、より好ましくは炭素数3又は4である。ヒドロキシアルキル基としては、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ヒドロキシブチル基などが挙げられる。
ヒドロキシアルキルトリアルキルアンモニウムイオンの具体例としては、例えば、ヒドロキシブチルトリメチルアンモニウムイオン、ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムイオン、及びヒドロキシエチルトリメチルアンモニウムイオン等が挙げられる。
【0035】
カルボン酸アンモニウム塩におけるアンモニウムイオンは、トリエチルメチルアンモニウムイオン、テトラメチルアンモニウムイオン、ヒドロキシブチルトリメチルアンモニウムイオン、及びヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムイオンからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、トリエチルメチルアンモニウムイオン、テトラメチルアンモニウムイオン、及びヒドロキシブチルトリメチルアンモニウムイオンからなる群から選択される少なくとも1種であることがより好ましく、テトラメチルアンモニウムイオンがさらに好ましい。
【0036】
また、カルボン酸アンモニウム塩の好適な具体例としては2,2-ジメチルプロパン酸テトラメチルアンモニウム塩、2-エチルヘキサン酸トリエチルメチルアンモニウム塩、2-エチルヘキサン酸ヒドロキシブチルトリメチルアンモニウム塩が挙げられる。この中では、ポリイソシアネートの三量化体によるイソシアヌレート結合を形成しやすくなる観点から、2,2-ジメチルプロパン酸テトラメチルアンモニウム塩が好ましい。
なお、本発明において前記カルボン酸アンモニウム塩は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0037】
ポリオール含有組成物中のカルボン酸アンモニウム塩の配合量は、ポリオール100質量部に対して、2.0~20質量部が好ましく、2.5~15質量部がより好ましく、3.0~8.0質量部がさらに好ましい。カルボン酸アンモニウム塩の配合量が前記下限値以上であるとポリイソシアネートの三量化が生じやすくなり、得られるポリウレタンフォームの難燃性が向上する。一方、カルボン酸アンモニウム塩の配合量が前記上限値以下であると反応の制御がし易くなる。
【0038】
《遷移金属塩》
本発明のポリオール含有組成物は、樹脂化触媒として遷移金属塩を含有する。ポリオール含有組成物は、遷移金属塩を樹脂化触媒として含有すると、発泡剤に対する分解性を抑制し、安定性を高めつつ、ポリオールとポリイソシアネートとを反応させやすくなる。
【0039】
本発明において用いる遷移金属塩としては、例えば、ビスマス、スズ、亜鉛、銅、鉄及び鉛などからなる金属塩が挙げられ、中でも、ビスマス又はスズからなる金属塩が好ましく、ビスマスからなる金属塩がより好ましい。
【0040】
遷移金属塩は、有機酸金属塩であることが好ましく、より好ましくは炭素数5以上のカルボン酸の金属塩である。該カルボン酸は、炭素数5以上であることで、発泡剤、特にハイドロフルオロオレフィンに対して、ポリオール含有組成物の安定性が良好となる。また、該カルボン酸の炭素数は、触媒活性などの観点から、18以下が好ましく、12以下がさらに好ましい。該カルボン酸は、脂肪族カルボン酸であることが好ましく、飽和脂肪族カルボン酸がより好ましい。該カルボン酸は、直鎖であってもよいし、分岐構造を有してもよいが、分岐構造を有することが好ましい。
カルボン酸の具体例としては、オクチル酸(2-エチルヘキサン酸)、ラウリル酸、バーサチック酸、ペンタン酸及び酢酸などが挙げられ、これらのなかではオクチル酸が好ましい。すなわち、遷移金属塩は、2-エチルヘキサン酸の金属塩が好ましい。
カルボン酸の金属塩としては、カルボン酸のビスマス塩、カルボン酸のスズ塩が好ましく、中でもオクチル酸のビスマス塩が好ましい。また、カルボン酸の金属塩は、アルキル金属のカルボン酸塩であってもよい。例えばカルボン酸スズ塩はジアルキルスズカルボン酸塩などであってもよく、好ましくはジオクチルスズカルボン酸塩などである。
カルボン酸の金属塩の具体例としては、ビスマストリオクテート、ジオクチルスズバーサテート、ジブチルスズジラウレート、ジオクチルスズジラウレート、ジオクチル酸スズ及びジオクチル酸鉛等が挙げられ、好ましくはビスマストリオクテート、ジオクチルスズバーサテート、より好ましくはビスマストリオクテートである。
【0041】
ポリオール含有組成物中の遷移金属塩の配合量は、ポリオール100質量部に対して、2~25質量部が好ましく、3~20質量部がより好ましく、4~15質量部が更に好ましく、5~12質量部がより更に好ましい。遷移金属塩の配合量が前記下限値以上であると、発泡性ポリウレタン組成物の硬化反応スピードを向上させることができる。一方、遷移金属塩の配合量が前記上限値以下であると反応の制御がし易くなる。
【0042】
《窒素原子を有する複素環式化合物》
本発明のポリオール含有組成物は、樹脂化触媒として窒素原子を有する複素環式化合物を含有する。ポリオール含有組成物は、窒素原子を有する複素環式化合物を樹脂化触媒として含有すると、ハイドロフルオロオレフィンの影響を受けにくく、安定性を高めつつ、ポリオールとポリイソシアネートとを反応させやすくなる。
【0043】
本発明において用いる窒素原子を有する複素環式化合物に特に制限はないが、複素環中に窒素原子を含む化合物が好ましく、例えば、複素環中に窒素原子を含む4~8員環の複素環化合物がより好ましく、より具体的には、イミダゾール誘導体、ピリジン誘導体、ピペラジン誘導体等が挙げられる。これらの中でもイミダゾール誘導体が好ましい。
イミダゾール誘導体が、1位および2位がそれぞれ独立に炭素数8以下のアルキル基で置換されたイミダゾールであり、アルキル基は好ましくは炭素数6以下、より好ましくは炭素数4以下である。また、アルキル基の炭素数は1以上であるとよい。イミダゾール誘導体の好適な具体例は、下記一般式(3)で表される。
【0044】
【化3】
(一般式(3)中、R
7及びR
8は、それぞれ独立に炭素数1~8のアルキル基を表す。)
【0045】
前記一般式(3)におけるR7及びR8は、それぞれ独立に炭素数1~8のアルキル基を表し、炭素数1~6のアルキル基が好ましく、炭素数1~4のアルキル基がより好ましい。R7及びR8のアルキル基の炭素数が前記下限値以上であると、立体障害が大きくなりハイドロフルオロオレフィンなどの発泡剤の影響を受けにくくなるため好ましい。一方、R4及びR5のアルキル基の炭素数が前記上限値以下であると、極端に立体障害が大きくならないためポリオールとポリイソシアネートとの反応を速やかに進行させることが可能になる。なお、アルキル基はそれぞれ直鎖状であってもよいし、分岐構造を有してもよい。
一般式(3)で表されるイミダゾール誘導体としては、1,2-ジメチルイミダゾール、1-エチル-2-メチルイミダゾール、1-メチル-2-エチルイミダゾール、1,2-ジエチルイミダゾール、及び1-イソブチル-2-メチルイミダゾールが挙げられ、中でも、ハイドロフルオロオレフィン存在下での触媒の活性を向上させる観点と反応を速やかに進行させる観点から、1,2-ジメチルイミダゾール、1-イソブチル-2-メチルイミダゾールが好ましい。また、安定性をより高める観点からは1,2-ジメチルイミダゾールがより好ましい。
【0046】
ポリオール含有組成物中の窒素原子を有する複素環式化合物の配合量は、ポリオール100質量部に対して、4.0~15質量部が好ましく、5.0~13質量部がより好ましく、5.5~10質量部が更に好ましい。窒素原子を有する複素環式化合物の配合量が前記下限値以上であるとウレタン結合の形成が生じやすくなり、反応が速やかに進行する。一方、窒素原子を有する複素環式化合物の配合量が前記上限値以下であると、反応速度が制御しやすくなるため好ましい。
【0047】
<発泡剤>
本発明のポリオール含有組成物は、発泡剤を含有する。発泡剤は、ハイドロフルオロオレフィンを含有することが好ましい。本発明では、発泡剤としてハイドロフルオロオレフィンを用いた場合であっても、発泡剤の安定性が高く、かつ触媒活性が低下しにくい。ハイドロフルオロオレフィンとしては、例えば、炭素数が3~6個程度であるフルオロアルケン等を挙げることができる。ハイドロフルオロオレフィンは塩素原子を有するハイドロクロロフルオロオレフィンであってもよく、したがって、炭素数が3~6個程度であるクロロフルオロアルケン等であってもよい。
より具体的には、トリフルオロプロペン、HFO-1234等のテトラフルオロプロペン、HFO-1225等のペンタフルオロプロペン、HFO-1233等のクロロトリフルオロプロペン、クロロジフルオロプロペン、クロロトリフルオロプロペン、及びクロロテトラフルオロプロペン等が挙げられる。より具体的には、1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234ze)、1,1,3,3-テトラフルオロプロペン、1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペン(HFO-1225ye)、1,1,1-トリフルオロプロペン、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロペン(HFO-1225zc)、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロブト-2-エン、1,1,2,3,3-ペンタフルオロプロペン(HFO-1225yc)、1,1,1,2,3-ペンタフルオロプロペン(HFO-1225yez)、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HFO-1233zd)、及び1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロブト-2-エン等が挙げられる。これらの中ではHFO-1233zdが好ましい。
これらのハイドロフルオロオレフィンは、単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0048】
ハイドロフルオロオレフィンの配合量は、ポリオール100質量部に対して、20~50質量部が好ましく、質量部がより好ましく、22~45質量部が更に好ましく、25~40質量部がより更に好ましい。ハイドロフルオロオレフィンの配合量が前記下限値以上であると発泡が促進され、得られるポリウレタンフォームの密度を低減することができる。一方、ハイドロフルオロオレフィンの配合量が前記上限値以下であると発泡が過度に進行することを抑制することができる。
【0049】
本発明のポリオール含有組成物は、ハイドロフルオロオレフィン以外の発泡剤を含有してもよい。ハイドロフルオロオレフィン以外の発泡剤としては、例えば、水、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、及びシクロヘプタン等の低沸点の炭化水素、ジクロロエタン、プロピルクロリド、イソプロピルクロリド、ブチルクロリド、イソブチルクロリド、ペンチルクロリド、及びイソペンチルクロリド等の塩素化脂肪族炭化水素化合物、ジイソプロピルエーテル等のエーテル化合物等の有機系物理発泡剤、窒素ガス、酸素ガス、アルゴンガス、及び二酸化炭素ガス等の無機系物理発泡剤等が挙げられる。これらの中でも、取扱い性の観点から、水、酸素ガス、及び二酸化炭素ガスが好ましく、イソシアネートインデックスを調整する観点、及び取扱い容易性の観点から水が好ましい。
【0050】
ポリオール含有組成物中のハイドロフルオロオレフィン以外の発泡剤の配合量は、ポリオール100質量部に対して、0.1~10質量部が好ましく、0.3~5質量部がより好ましく、0.4~1質量部が更に好ましい。発泡剤の配合量が前記下限値以上であると発泡が促進され、得られるポリウレタンフォームの密度を低減することができる。一方、発泡剤の配合量が前記上限値以下であると発泡が過度に進行することを抑制することができる。
【0051】
<フィラー>
本発明のポリオール含有組成物は、フィラーを含有することが好ましい。フィラーは、ポリオール含有組成物において固体分として含まれるものであり、一般的にポリオール含有組成物において粒状、粉状として存在する成分である。
フィラーは、常温(23℃)、常圧(1気圧)において、固体であり、かつポリオール含有組成物において溶解しない成分であればよい。
フィラーとしては、固体難燃剤を使用することが好ましい。固体難燃剤としては、赤燐系難燃剤、ホウ素含有難燃剤、臭素含有難燃剤、リン酸塩含有難燃剤、塩素含有難燃剤、アンチモン含有難燃剤、金属水酸化物、及び及び針状フィラー等が好ましい。
【0052】
<赤燐系難燃剤>
赤燐系難燃剤は、赤燐単体からなるものでもよいが、赤燐に樹脂、金属水酸化物、金属酸化物などを被膜したものでもよいし、赤燐に樹脂、金属水酸化物、金属酸化物などと混合したものでもよい。赤燐を被膜し、または赤燐と混合する樹脂は、特に限定されないがフェノール樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、アニリン樹脂、及びシリコーン樹脂などの熱硬化性樹脂が挙げられる。被膜ないし混合する化合物としては、難燃性の観点から、金属水酸化物が好ましい。金属水酸化物は、後述するものを適宜選択して使用するとよい。
【0053】
<ホウ素含有難燃剤>
本発明で使用するホウ素含有難燃剤としては、ホウ砂、酸化ホウ素、ホウ酸、ホウ酸塩等が挙げられる。酸化ホウ素としては、例えば、三酸化二ホウ素、三酸化ホウ素、二酸化二ホウ素、三酸化四ホウ素、五酸化四ホウ素等が挙げられる。
ホウ酸塩としては、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、周期表第4族、第12族、第13族の元素およびアンモニウムのホウ酸塩等が挙げられる。具体的には、ホウ酸リチウム、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム、ホウ酸セシウム等のホウ酸アルカリ金属塩、ホウ酸マグネシウム、ホウ酸カルシウム、ホウ酸バリウム等のホウ酸アルカリ土類金属塩、ホウ酸ジルコニウム、ホウ酸亜鉛、ホウ酸アルミニウム、ホウ酸アンモニウム等が挙げられる。
ホウ素含有難燃剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
本発明に使用するホウ素含有難燃剤は、ホウ酸塩であることが好ましく、ホウ酸亜鉛がより好ましい。
【0054】
<臭素含有難燃剤>
臭素含有難燃剤としては、分子構造中に臭素を含有し、常温、常圧で固体となる化合物であれば特に限定されないが、例えば、臭素化芳香環含有芳香族化合物等が挙げられる。
臭素化芳香環含有芳香族化合物としては、ヘキサブロモベンゼン、ペンタブロモトルエン、ヘキサブロモビフェニル、デカブロモビフェニル、デカブロモジフェニルエーテル、オクタブロモジフェニルエーテル、ヘキサブロモジフェニルエーテル、ビス(ペンタブロモフェノキシ)エタン、エチレンビス(ペンタブロモフェニル)、エチレンビス(テトラブロモフタルイミド)、テトラブロモビスフェノールA等のモノマー系有機臭素化合物が挙げられる。
【0055】
また、臭素化芳香環含有芳香族化合物は、臭素化合物ポリマーであってもよい。具体的には、臭素化ビスフェノールAを原料として製造されたポリカーボネートオリゴマー、このポリカーボネートオリゴマーとビスフェノールAとの共重合物等の臭素化ポリカーボネート、臭素化ビスフェノールAとエピクロルヒドリンとの反応によって製造されるジエポキシ化合物などが挙げられる。さらには、臭素化フェノール類とエピクロルヒドリンとの反応によって得られるモノエポキシ化合物等の臭素化エポキシ化合物、ポリ(臭素化ベンジルアクリレート)、臭素化ポリフェニレンエーテルと臭素化ビスフェノールAと塩化シアヌールとの臭素化フェノールの縮合物、臭素化(ポリスチレン)、ポリ(臭素化スチレン)、架橋臭素化ポリスチレン等の臭素化ポリスチレン、架橋または非架橋臭素化ポリ(-メチルスチレン)等が挙げられる。
また、ヘキサブロモシクロドデカンなどの臭素化芳香環含有芳香族化合物以外の化合物であってもよい。
これら臭素含有難燃剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。また、上記した中では、臭素化芳香環含有芳香族化合物が好ましく、中でも、エチレンビス(ペンタブロモフェニル)などのモノマー系有機臭素化合物が好ましい。
【0056】
<リン酸塩含有難燃剤>
リン酸塩含有難燃剤としては、例えば、各種リン酸と周期表IA族~IVB族の金属、アンモニア、脂肪族アミン、芳香族アミン、環中に窒素を含む複素環式化合物から選ばれる少なくとも一種の金属または化合物との塩からなるリン酸塩が挙げられる。
リン酸としては、特に限定されないが、モノリン酸、ピロリン酸、ポリリン酸等が挙げられる。
周期表IA族~IVB族の金属として、リチウム、ナトリウム、カルシウム、バリウム、鉄(II)、鉄(III)、アルミニウム等が挙げられる。
前記脂肪族アミンとして、メチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン、ピペラジン等が挙げられる。芳香族アミンとしては、アニリン、o-トリイジン、2,4,6-トリメチルアニリン、アニシジン、3-(トリフルオロメチル)アニリン等が挙げられる。環中に窒素を含む複素環式化合物として、ピリジン、トリアジン、メラミン等が挙げられる。
【0057】
リン酸塩含有難燃剤の具体例としては、例えば、第三リン酸アルミニウム等のモノリン酸塩、ピロリン酸塩、ポリリン酸塩等が挙げられる。ここで、ポリリン酸塩としては、特に限定されないが、例えば、ポリリン酸アンモニウム、ポリリン酸ピペラジン、ポリリン酸メラミン、ポリリン酸アンモニウムアミド、ポリリン酸アルミニウム等が挙げられる。
リン酸塩含有難燃剤は、上記したものから1種もしくは2種以上を使用することができる。
【0058】
<塩素含有難燃剤>
塩素含有難燃剤は、難燃性樹脂組成物に通常用いられるものが挙げられ、例えば、ポリ塩化ナフタレン、クロレンド酸、「デクロランプラス」の商品名で販売されるドデカクロロドデカヒドロジメタノジベンゾシクロオクテンなどが挙げられる。
【0059】
<アンチモン含有難燃剤>
アンチモン含有難燃剤としては、例えば、酸化アンチモン、アンチモン酸塩、ピロアンチモン酸塩等が挙げられる。酸化アンチモンとしては、例えば、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン等が挙げられる。アンチモン酸塩としては、例えば、アンチモン酸ナトリウム、アンチモン酸カリウム等が挙げられる。ピロアンチモン酸塩としては、例えば、ピロアンチモン酸ナトリウム、ピロアンチモン酸カリウム等が挙げられる。
アンチモン含有難燃剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。本発明に使用する好ましいアンチモン含有難燃剤は三酸化アンチモンである。
【0060】
<金属水酸化物>
本発明に使用する金属水酸化物としては、例えば、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化鉄、水酸化ニッケル、水酸化ジルコニウム、水酸化チタン、水酸化亜鉛、水酸化銅、水酸化バナジウム、水酸化スズ等が挙げられる。金属水酸化物は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0061】
<針状フィラー>
本発明に使用する針状フィラーとしては、例えば、チタン酸カリウムウィスカー、ホウ酸アルミニウムウィスカー、マグネシウム含有ウィスカー、珪素含有ウィスカー、ウォラストナイト、セピオライト、ゾノライト、エレスタダイト、ベーマイト、棒状ヒドロキシアパタイト、ガラス繊維、炭素繊維、グラファイト繊維、金属繊維、スラグ繊維、石膏繊維、シリカ繊維、アルミナ繊維、シリカアルミナ繊維、ジルコニア繊維、窒化硼素繊維、硼素繊維、ステンレス繊維等が挙げられる。
これらの針状フィラーは、一種もしくは二種以上を使用することができる。
【0062】
本発明に使用する針状フィラーのアスペクト比(長さ/直径)の範囲は、5~50の範囲であることが好ましく、10~40の範囲であればより好ましい。なお、当該アスペクト比は、走査型電子顕微鏡で50個の針状フィラーを観察してその長さと幅を測定して求めることができる。
【0063】
また、フィラーとしては、上記した難燃剤以外の無機充填剤が配合されてもよい。無機充填剤として、アルミナ、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化錫、フェライト類、塩基性炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸バリウム、ドーソナイト、ハイドロタルサイト、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、ケイ酸カルシウム、タルク、クレー、マイカ、モンモリロナイト、ベントナイト、活性白土、イモゴライト、セリサイト、ガラスビーズ、シリカバルン、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、グラファイト、炭素バルン、木炭粉末、各種金属粉、硫酸マグネシウム、チタン酸ジルコン酸鉛、硫化モリブデン、炭化ケイ素、各種磁性粉、フライアッシュ等を適宜使用できる。無機充填剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0064】
本発明のポリオール含有組成物におけるフィラーの含有量は、ポリオール100質量部に対して、20~120質量部が好ましく、40~100質量部がより好ましく、45~90質量部がさらに好ましい。20質量部以上とすることで、得られるポリウレタンフォームの機械強度、難燃剤などを向上させやすくなる。また、120質量部以下とすることで、フィラーによって発泡が阻害されにくくなる。
【0065】
(液状難燃剤)
本発明のポリオール含有組成物は液状難燃剤を含有することが好ましい。液状難燃剤とは、常温(23℃)、常圧(1気圧)にて液体となる難燃剤である。液状難燃剤の具体例としては、リン酸エステルが挙げられる。ポリウレタン組成物原料液剤に液状難燃剤を含有させることで、本発明のポリウレタン組成物原料液剤が保管中に沈殿を生じにくいものとなり、本発明のポリウレタン組成物の難燃性をより向上させやすくなる。液状難燃剤は、難燃性向上の観点から、上記したフィラー、特に固体難燃剤と併用することがより好ましい。
【0066】
リン酸エステルとしては、モノリン酸エステル、縮合リン酸エステル等を使用することが好ましい。モノリン酸エステルとしては、例えば、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリ(2-エチルヘキシル)ホスフェートなどのトリアルキルホスフェート、トリス(β-クロロプロピル)ホスフェートなどのハロゲン含有リン酸エステル、トリブトキシエチルホスフェートなどのトリアルコキシホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、トリス(イソプロピルフェニル)ホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、ジフェニル(2-エチルヘキシル)ホスフェートなどの芳香環含有リン酸エステル、モノイソデシルホスフェート、ジイソデシルホスフェートなどの酸性リン酸エステル等が挙げられる。
【0067】
縮合リン酸エステルとしては、例えば、トリアルキルポリホスフェート、レゾルシノールポリフェニルホスフェート、ビスフェノールAポリクレジルホスフェート、ビスフェノールAポリフェニルホスフェートなどの芳香族縮合リン酸エステルが挙げられる。
縮合リン酸エステルの市販品としては、例えば、大八化学工業株式会社製の「CR-733S」、「CR-741」、「CR747」、ADEKA社製の「アデカスタブPFR」、「FP-600」等が挙げられる。
【0068】
液状難燃剤は、上記したものの中から1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、本発明のポリオール含有組成物と、イソシアネートとの混合物の粘度を低下させてポリウレタンフォームの製造を容易にする観点、及びポリウレタンフォームの難燃性を向上させる観点から、モノリン酸エステルが好ましく、トリス(β-クロロプロピル)ホスフェートがより好ましい。
【0069】
ポリオール含有組成物におけるリン酸エステルの配合量は、ポリオール100質量部に対して、20~60質量部が好ましく、25~55質量部がより好ましく、30~50質量部がさらに好ましい。20質量部以上とすることで、得られるポリウレタンフォームの難燃剤を向上させやすくなる。また、60質量部以下とすることで、リン酸エステルによって発泡が阻害されにくくなる。
【0070】
<整泡剤>
本発明のポリオール含有組成物は、必要に応じて、ポリオール含有組成物とイソシアネートとの混合物を発泡しやすくさせることを目的に整泡剤を含有してもよい。
整泡剤としては、例えば、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル等のポリオキシアルキレン整泡剤、オクタメチルシクロテトラシロキサン及びオルガノポリシロキサン等のシリコーン整泡剤等の界面活性剤等が挙げられる。これらの整泡剤は、単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0071】
本発明のポリオール含有組成物における整泡剤の含有量は、ポリオール100質量部に対して、0.1~10質量部が好ましく、1~8質量部がより好ましく、2~5質量部が更に好ましい。整泡剤の配合量が前記下限値以上であるとポリオール含有組成物とポリイソシアネートとの混合物を発泡させやすくなるため均質なポリウレタンフォームを得ることが可能になる。また、整泡剤の配合量が前記上限値以下であると製造コストと得られる効果のバランスが最適になる。
【0072】
<その他成分>
ポリオール含有組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で必要に応じて、フェノール系、アミン系、イオウ系等の酸化防止剤、熱安定剤、金属害防止剤、帯電防止剤、安定剤、架橋剤、滑剤、軟化剤、顔料等から選択される1種以上の添加剤を含むことができる。
【0073】
<ポリオール含有組成物の製造方法>
本発明のポリオール含有組成物の製造方法に特に制限はなく、例えば、各成分を20~40℃程度でホモディスパー等を用いて30秒~20分程度撹拌することにより製造することができる。
【0074】
[発泡性ポリウレタン組成物及びポリウレタンフォーム]
本発明の発泡性ポリウレタン組成物は、本発明のポリオール含有組成物と、ポリイソシアネートとを含むものである。本発明のポリウレタンフォームは、ポリオール含有組成物とポリイソシアネートとを混合したものを、反応及び発泡させた反応生成物である。
本発明で使用する発泡性ポリウレタン組成物は、一般的に2液型であり、別々に保管した本発明のポリオール含有組成物と、ポリイソシアネートとを混合して、反応及び発泡させてポリウレタンフォームを得るとよい。なお、ポリイソシアネートには、上記した添加剤などのポリイソシアネート以外の成分が必要に応じて配合されていてもよい。
【0075】
<ポリイソシアネート>
ポリイソシアネートとしては、例えば、芳香族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、及び脂肪族ポリイソシアネート等が挙げられる。
芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ジメチルジフェニルメタンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、及びポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート等が挙げられる。
【0076】
脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば、シクロヘキシレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、及びジメチルジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等が挙げられる。
【0077】
脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、メチレンジイソシアネート、エチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0078】
これらの中でも、使いやすさの観点、及び入手容易性の観点から、芳香族ポリイソシアネートが好ましく、ジフェニルメタンジイソシアネートがより好ましい。ポリイソシアネートは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
また、ポリイソシアネートは、ポリオール含有組成物と混合する前に、ポリイソシアネートに配合される公知の添加剤が適宜配合されてもよい。
【0079】
なお、ポリオール含有組成物と、ポリオール含有組成物に混合されるポリイソシアネートは、互いに体積が実質的に同じであることが好ましい。具体的には、ポリオール含有組成物に対する、ポリイソシアネートの体積比は、0.8~1.2が好ましく、0.9~1.1がより好ましく、0.95~1.05がさらに好ましい。
【0080】
<イソシアネートインデックス>
本発明の発泡性ポリウレタン組成物におけるイソシアネートインデックスに特に制限はないが、250以上が好ましい。イソシアネートインデックスが前記下限値以上であると、ポリオールに対するポリイソシアネートの量が過剰になりポリイソシアネートの三量化体によるイソシアヌレート結合が生成し易くなる結果、ポリウレタンフォームの難燃性が向上する。また、不燃性を付与することも可能になる。さらに、上記下限値以上とすると、上記した少なくとも4種の触媒を併用することも相俟って、イソシアヌレート結合を十分に有するポリウレタンフォーム、すなわち、難燃性と断熱性とを高い水準で兼ね備えるポリウレタンフォームを製造しやすい。これら観点から、イソシアネートインデックスは、270以上がより好ましく、300以上さらに好ましい。
また、イソシアネートインデックスは、1000以下が好ましく、800以下がより好ましく、600以下がさらに好ましい。イソシアネートインデックスが前記上限値以下であると、得られるポリウレタンフォームの難燃性と製造コストとのバランスが良好になる。
【0081】
なお、イソシアネートインデックスは、以下の方法により計算することができる。
イソシアネートインデックス
=ポリイソシアネートの当量数÷(ポリオールの当量数+水の当量数)×100
ここで、各当量数は以下のとおり計算することができる。
・ポリイソシアネートの当量数=ポリイソシアネートの使用量(g)×NCO含有量(質量%)/NCOの分子量(モル)×100
・ポリオールの当量数=OHV×ポリオールの使用量(g)÷KOHの分子量(ミリモル)
OHVはポリオールの水酸基価(mgKOH/g)である。
・水の当量数=水の使用量(g)/水の分子量(モル)×水のOH基の数
上記各式において、NCOの分子量は42(モル)、KOHの分子量は56100(ミリモル)、水の分子量は18(モル)、水のOH基の数は2とする。
【0082】
<ポリウレタンフォームの製造方法>
ポリウレタンフォームの製造方法に特に制限はないが、ポリイソシアネートとポリオール含有組成物とを混合して得た発泡性ポリウレタン組成物を発泡し、かつ硬化させるとよい。具体的には、ポリイソシアネートとポリオール含有組成物とを衝突混合させ、スプレーガン等を用いて吹付施工することが好ましい。
本発明においては、ポリイソシアネートとポリオール含有組成物とを混合した後、金型、枠材等の容器へ注入して発泡かつ硬化させることによりポリウレタンフォームを得てもよい。
【0083】
<ポリウレタンフォームの用途>
本発明のポリウレタンフォームの用途は特に限定されないが難燃性及び断熱性に優れているため、建築物の壁、天井、屋根、床等の建築物に好適に用いることができる。また、建築物の構造材の間に生じる目地や穴を含め、建築物に生じる任意の開口部を埋める部材として好適に用いることもできる。
【実施例】
【0084】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0085】
(1)ポリオール含有組成物
〔ポリオール〕
・p-フタル酸ポリエステルポリオール(川崎化成工業社製、製品名:マキシモールRLK-087、水酸基価=200mgKOH/g)
【0086】
〔触媒〕
・三量化触媒、2,2-ジメチルプロパン酸テトラメチルアンモニウム塩(エアープロダクツ社製、製品名:DABCO TMR7)濃度約45質量%
・三量化触媒、2-エチルヘキサン酸トリエチルメチルアンモニウム塩(サンアプロ株式会社製、製品名:U-CAT 18X)濃度約100質量%
・三量化触媒、2-エチルヘキサン酸ヒドロキシブチルトリメチルアンモニウム塩(花王社製、製品名:カオライザー No.420)濃度約100質量%
・樹脂化アミン触媒 1,2-ジメチルイミダゾール(花王社製、製品名:カオライザー No.390)濃度65~75質量%
・樹脂化アミン触媒、1,2-ジメチルイミダゾール(東ソー社製、製品名:TOYOCAT(登録商標)-DM70)濃度65~75質量%
・樹脂化アミン触媒、1-イソブチル-2-メチルイミダゾール(エアープロダクツ社製、製品名:DABCO NC-IM)濃度約100質量%
・樹脂化金属触媒、2-エチルヘキサン酸ビスマス(日東化成社製、製品名:Bi28)濃度81~90質量%
・樹脂化金属触媒、ジオクチル(2-エチルヘキシル)スズバーサテート(日東化成社製、製品名:ネオスタン U-830)濃度約99質量%
・三量化金属触媒、2-エチルヘキサン酸カリウム塩(エアープロダクツ社製、製品名:DABCO K-15)濃度70~80質量%
・三量化アミン触媒、酢酸テトラメチルアンモニウム塩(東ソー社製、製品名:TOYOCAT(登録商標)-TRX)濃度60~70質量%
・樹脂化アミン触媒、N,N,N',N'',N''-ペンタメチルジエチレントリアミン(東ソー社製、製品名:TOYOCAT(登録商標)-TT)濃度約100質量%
【0087】
〔発泡剤〕
・ハイドロフルオロオレフィン(ハネウェルジャパン株式会社製、製品名:ソルティスLBA、トランス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン)
・水
【0088】
〔液状難燃剤〕
・トリス(β-クロロプロピル)ホスフェート(大八化学社製、製品名:TMCPP)
【0089】
〔フィラー〕
・ウォラストナイト(SiO2・CaO)(キンセイマテック社製、製品名:SH-1250)
【0090】
(2)ポリイソシアネート
・4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4’-MDI)(万華化学ジャパン株式会社製、製品名:PM200)
【0091】
<実施例1~12、比較例1~6>
表1に示した配合にしたがってポリオール含有組成物を調製した。
【0092】
〔発泡性の評価〕
上記方法により調製したポリオール含有組成物とポリイソシアネートとを表1に記載の配合にしたがって混合させて、下記の条件にて、吹付機により石膏ボードにウレタンフォーム厚みが1mm以下になるように、飛散させるように吹き付け、吹き付け後の表面硬化時間(タックフリータイム)を測定した。前記表面硬化時間をt1とし、t1が、27秒未満であった場合を「◎」、27秒以上30秒以下であった場合を「〇」、30秒を超えた場合を「×」とした。結果を表1に示す。
<条件>
・吹付機:グラコ社製吹付装置H-25
・設定(ヒーター及び圧力設定)
イソシアネートヒーター:38℃
プレミクスヒーター:38℃
ホースヒーター:38℃
圧力:ミストが広域な円形になるよう適宜調整
・基材:石膏ボード(厚み12.5mm)
・基材温度:0℃±1℃
・環境温度:0℃±1℃
【0093】
〔安定性の評価〕
上記のポリオール含有組成物を耐圧容器に入れ、45℃の恒温槽で2日間保管した。その後、上記方法により同様に吹き付けを実施し、吹き付け後の表面硬化時間を測定した。前記表面硬化時間をt2とし、t1との差が、4秒未満であった場合を「◎」、4秒以上6秒以下であった場合を「〇」、6秒を超えた場合を「×」とした。結果を表1に示す。
【0094】
【表1】
ポリオール中の括弧内の数値は水酸基価(mgKOH/g)を表す。
各触媒の質量部は、製品としての質量部を表す。
【0095】
以上の実施例の結果から明らかなように、カルボン酸カリウム塩、カルボン酸アンモニウム塩、窒素原子を有する複素環式化合物、及び遷移金属塩を併用することで、発泡剤と触媒とが反応して触媒が失活することを抑制し、ポリオール含有組成物の安定性が高くなり、優れた安定性及び良好な発泡性を両立することができた。
これに対し、上記4種の触媒のうち、1種でも含有されていないポリオール含有組成物は、発泡性、安定性のうち少なくとも一方が損なわれていた。