(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】遠位バルーン機構を備える穿刺装置
(51)【国際特許分類】
A61B 18/14 20060101AFI20241001BHJP
A61B 17/34 20060101ALI20241001BHJP
【FI】
A61B18/14
A61B17/34
(21)【出願番号】P 2023501823
(86)(22)【出願日】2021-07-12
(86)【国際出願番号】 IB2021056256
(87)【国際公開番号】W WO2022013714
(87)【国際公開日】2022-01-20
【審査請求日】2023-02-28
(32)【優先日】2020-07-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】522368684
【氏名又は名称】ボストン サイエンティフィック メディカル デバイス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】ディチッコ、マシュー
(72)【発明者】
【氏名】デイビス、ガレス
(72)【発明者】
【氏名】ウルバンスキ、ジョン ポール
(72)【発明者】
【氏名】モリヤマ、エドゥアルド
(72)【発明者】
【氏名】ライアン、パトリック
(72)【発明者】
【氏名】モク、ダニエル ウイング ファイ
【審査官】槻木澤 昌司
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-536891(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0029750(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0243081(US,A1)
【文献】特表2008-512212(JP,A)
【文献】特表2004-501720(JP,A)
【文献】特表2008-513125(JP,A)
【文献】特表2016-524949(JP,A)
【文献】特開2017-060825(JP,A)
【文献】米国特許第05312341(US,A)
【文献】特表2008-508951(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 18/12-18/14
A61B 17/34
A61M 25/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組織内に穴を形成するための装置であって、
遠位先端に穿刺部分を有
し、電気絶縁層を含む長尺状部材と、
前記長尺状部材の遠位部において前記長尺状部材の外周の周りに配設されている少なくとも1つの膨張可能要素と、
前記長尺状部材の近位端から前記膨張可能要素まで延びて、前記膨張可能要素に連通している管腔と、
を備え
、
前記膨張可能要素は、前記電気絶縁層の下に配置されている、装置。
【請求項2】
前記穿刺部分が、前記組織にエネルギーを送達することが可能なエネルギー送達装置を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記少なくとも1つの膨張可能要素がバルーンである、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記バルーンが円筒形である、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記バルーンが球形である、請求項3に記載の装置。
【請求項6】
前記バルーンが円錐形である、請求項3に記載の装置。
【請求項7】
前記バルーンがセミコンプライアント材料で構成されている、請求項3に記載の装置。
【請求項8】
前記バルーンが直径4mmまで膨張する、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記バルーンがノンコンプライアント材料で構成されている、請求項3に記載の装置。
【請求項10】
前記バルーンが直径25mmまで膨張する、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記長尺状部材がコアワイヤを含み、前記管腔が前記コアワイヤを包囲するように配設されている、請求項1に記載の装置。
【請求項12】
前記長尺状部材がコアワイヤを含み、前記管腔が前記コアワイヤの外表面上に配設されている1個の管腔チューブである、請求項1に記載の装置。
【請求項13】
前記装置が少なくとも1つの放射線不透過性マーカを更に備える、請求項1に記載の装置。
【請求項14】
前記少なくとも1つの放射線不透過性マーカが前記膨張可能要素よりも近位側に配設されている、請求項
13に記載の装置。
【請求項15】
前記少なくとも1つの放射線不透過性マーカが前記膨張可能要素よりも遠位側に配設されている、請求項
13に記載の装置。
【請求項16】
前記装置が2つの放射線不透過性マーカを備え、一方の放射線不透過性マーカが前記膨張可能要素よりも近位側に配設され、他方の放射線不透過性マーカが前記膨張可能要素よりも遠位側に配設されている、請求項
13に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、より容易かつより安全にシースが中隔を貫通することを可能にする手段を有する、経中隔穿刺装置に関する。より詳細には、本発明は、遠位膨張可能要素を有する経中隔穿刺装置を使用して、心房中隔に穿刺を施して穴を形成するための、装置及び方法に関する。遠位膨張可能要素は、シースの貫通前に中隔を拡張するために、又は、穿刺装置を肺静脈内に係留して、ガイドレールとして機能させることにより、予測不能なシースの跳ね上がりを防止するために、使用することができる。
【背景技術】
【0002】
特定の医療処置は、心臓の組織を貫通する穴又はチャネルを作り出すことが可能な、医療装置の使用を必要とする。具体的には、心臓の中隔を穿刺することにより、多くの心臓処置が実施される左心房への直接的な経路が形成される。左心房へのアクセスを得る、1つのそのような装置は、経中隔穿刺装置であり、これは、一部の装置では、高周波エネルギーを発生機から組織に送達して、穴を形成する。ユーザは、心臓の中隔上に位置している卵円窩上の標的位置に、穿刺装置を位置決めして、標的位置へのエネルギーの送達を開始するために発生機を作動させる。高周波エネルギーを組織に送達することにより、エネルギー送達装置と接触している細胞の、細胞内液の蒸発が生じる。最終的には、このことにより、標的組織部位に、空隙、穴、又はチャネルが生じる。
【発明の概要】
【0003】
心臓の左心房へのアクセスを得るために経中隔処置を実行する場合、医師は、典型的には、シース及びダイレータを使用して、経中隔穿刺装置を支持する。穿刺が完了すると、シースとダイレータとのアセンブリは、穿刺装置を包み込みながら押し出され、中隔内の穴を通って、左心房内に押し込まれる。場合によっては、シースとダイレータとの間の移行部が、組織境界で詰るか又は引っ掛かる可能性があるため、医師によっては、中隔を貫通させることが出来ない場合がある。このことにより、シースは、中隔を貫通することが困難となり、場合によっては貫通することが不可能となる虞がある。
【0004】
シースの貫通が困難であるという問題は、弾性の中隔、動脈瘤性の中隔、若しくは肥厚した中隔を有する患者において、又はアブレーションを繰り返し受けている患者において、より顕著である。シースに中隔を貫通させるためには、追加的な中隔のテンティング、及び機械的な力を必要とし得る。この過剰な力は、シースが組織を貫通する瞬間に、シースを前方に「ジャンピング」させる場合があり、このことにより、大動脈起始部、左心耳、左心房壁、肺静脈又は肺動脈の、偶発的な穿孔が生じる虞がある。追加的なテンティング時の圧力上昇、並びに、左心房の心臓構造の偶発的な穿孔は、心臓の周りの心膜腔内での水分貯留を引き起こす、生命を脅かす合併症である心タンポナーデを引き起こす虞がある。この流体の蓄積が、心臓を圧迫することにより、心臓に入ることが可能な血液の量が低減する。
【0005】
これらの合併症を考慮すると、穿刺装置が、左心房壁の偶発的な穿孔のリスクを増大させることなく、安全かつ容易にシースが中隔を貫通することを可能にする手段を備える、新規な穿刺装置を提供する必要性が存在している。
【0006】
本発明を容易に理解することができるように、添付図面において、本発明の実施形態が例として示される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】膨張可能要素を有する穿刺装置の遠位部を示す図。
【
図2a】膨張可能要素を拡大させる前に、形成済み穴を通して前進させた後の、穿刺装置を示す図。
【
図2b】膨張可能要素が、組織を拡張するように拡大されている状態の、穿刺装置を示す図。
【
図3】膨張可能要素が、肺静脈内で拡大されることにより、アンカーを作り出している状態の、穿刺装置を示す図。
【
図4a】膨張可能要素が、電気絶縁材料の層の外側に存在している、穿刺装置の長手方向断面を示す図。
【
図4b】管腔が電気絶縁層を包囲している、穿刺装置の横断面を示す図。
【
図4c】電気絶縁層の外側に1つの管腔が存在している、穿刺装置の横断面を示す図。
【
図5a】膨張可能要素が、電気絶縁材料の層の下に存在している、穿刺装置の長手方向断面を示す図。
【
図5b】管腔がコアワイヤを包囲している、穿刺装置の横断面を示す図。
【
図5c】コアワイヤの外側に1つの管腔が存在している、穿刺装置の横断面を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
経中隔穿刺時に、中隔を穿刺して穴を形成した後、シースとダイレータとのアセンブリは、その穴を通して前進させられる。ダイレータは、シースが貫通できるように、穴を拡張する。しかしながら、場合によっては、シースとダイレータとの間の移行部が、組織境界で行き詰るか又は引っ掛かる可能性があるため、医師によっては、中隔を貫通させることができない場合がある。このことにより、シースは、中隔を貫通することが困難となる虞があり、場合によっては貫通することが不可能となる虞がある。この困難を克服するためには、追加的なテンティング及び機械的な力を必要とし得る。この過剰な力は、シースが中隔を貫通できた時点で、前方へのシースの「ジャンピング」を引き起こす場合がある。シースのジャンピングは、左心房壁内に穿孔を引き起こす場合があり、このことは、追加的な機械力との組み合わせで、心タンポナーデを引き起こす虞がある。
【0009】
シースの跳ね上がりによる、左心房壁を不用意に穿孔する問題は、膨張可能な遠位要素を穿刺装置に設けることによって解決される。膨張可能な遠位要素は、シースとダイレータとの間の移行部でシースが引っ掛かることなく貫通可能となるように、中隔内の穴を拡張するために使用できる。あるいは、膨張可能な遠位要素は、肺静脈内に医師が穿刺装置を係留することを可能にする。その場合、穿刺装置は、貫通中のシースの予期せぬ移動を防止する、ガイドレールとして使用することができ、それにより、シースが前方にジャンピングする場合には、シースは、このガイドレールに沿って跳ね上がることになり、左心房壁を不用意に穿刺することがない。
【0010】
広範な一態様では、本発明の実施形態は、組織内に穴を形成するための装置であって、遠位先端に穿刺部分を有する、長尺状部材と、長尺状部材の外周の周りに配設され、長尺状部材の遠位部に配設されている、少なくとも1つの膨張可能要素と、長尺状部材の近位端から膨張可能要素まで延びている管腔であって、膨張可能要素と連通している管腔とを備える、装置を含む。
【0011】
この広範な態様の特徴として、穿刺部分は、組織にエネルギーを送達することが可能なエネルギー送達装置を含む。
この広範な態様の別の特徴として、少なくとも1つの膨張可能要素は、バルーンである。いくつかの実施形態では、バルーンは円筒形である。代替的実施形態では、バルーンは球形である。別の実施形態では、バルーンは円錐形である。いくつかの実施形態では、バルーンは、セミコンプライアント材料で構成されている。この実施形態の別の特徴として、バルーンは、直径4mmまで膨張する。代替的実施形態では、バルーンは、ノンコンプライアント材料で構成されている。この実施形態の特徴として、バルーンは、直径25mmまで膨張する。
【0012】
この広範な態様の別の特徴は、穿刺装置の長尺状部材が、絶縁層を含むことである。いくつかの実施形態では、絶縁層は、膨張可能要素を包み込むように配設されている。代替的実施形態では、絶縁層は、膨張可能要素の下に配設されている。
【0013】
この広範な態様の特徴として、長尺状部材は、コアワイヤを含む。いくつかの実施形態では、管腔は、コアワイヤを包囲するように配設されている。代替的実施形態では、管腔は、コアワイヤの外表面上に配設されている1つの管腔チューブである。
【0014】
この広範な態様の別の特徴として、本装置は、少なくとも1つの放射線不透過性マーカを更に備える。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの放射線不透過性マーカは、膨張可能要素よりも近位側に配設されている。別の実施形態では、少なくとも1つの放射線不透過性マーカは、膨張可能要素よりも遠位側に配設されている。代替的実施形態では、本装置は2つの放射線不透過性マーカを備え、一方の放射線不透過性マーカは膨張可能要素よりも近位側に配設され、他方の放射線不透過性マーカは膨張可能要素よりも遠位側に配設されている。
【0015】
本発明の更なる広範な態様では、組織内の穴を拡張するための方法は、膨張可能要素を備える穿刺装置を、組織上の標的位置に前進させる工程と、穿刺装置を使用して標的位置を穿刺する工程と、穴を通して穿刺装置を前進させる工程と、穿刺装置の膨張可能要素を、穴内に存在するように位置決めする工程と、穴が拡張するように膨張可能要素を膨張させる工程とを含む。
【0016】
この広範な態様の特徴として、本方法は、膨張可能要素を膨張させる工程の前に、膨張可能要素に対して配設されている少なくとも1つの放射線不透過性マーカを使用して、膨張可能要素の位置を可視化して確認する工程を更に含む。
【0017】
本発明の更なる広範な態様では、心臓構造内に穿刺装置を係留するための方法は、膨張可能要素を備える穿刺装置を、組織上の標的位置に前進させる工程と、穿刺装置を使用して標的位置を穿刺する工程と、穿刺装置が心臓構造内に位置決めされるように、穴を通して穿刺装置を前進させる工程と、膨張可能要素が穿刺装置のためのアンカーとして機能するように、膨張可能要素を膨張させる工程とを含む。
【0018】
この広範な態様の特徴として、本方法は、膨張可能要素を膨張させる工程の前に、膨張可能要素に対して配設されている少なくとも1つの放射線不透過性マーカを使用して、膨張可能要素の位置を可視化して確認する工程を更に含む。
【0019】
これから具体的に図面を詳細に参照していくが、示されている詳細は、例であり、本発明の特定の実施形態の例示的考察のみを目的としている点に注意されたい。本発明の少なくとも1つの実施形態を詳細に説明する前に、本発明は、その適用において、以下の説明に記載されているか若しくは図面に示されている、構造の詳細及び構成要素の配置に限定されるものではない点を理解されたい。本発明は、他の実施形態が可能であり、又は、様々な方式で実施若しくは実行することが可能である。また、本明細書で採用されている表現及び用語は、説明を目的とするものであり、限定するものと見なされるべきではない点も理解されたい。
【0020】
図1は、経中隔穿刺により左心房にアクセスするために使用することが可能な、例示的な穿刺装置100の一実施形態を示す。穿刺装置100、例えばピッグテールワイヤ又はJ型先端ワイヤは、患者の心臓の心房中隔などの組織に、エネルギーを送達するように構成されている。穿刺装置100は、エネルギー(すなわち、高周波エネルギー)を組織に送達することが可能な、電極などのエネルギー送達装置120を備える。代替的実施形態では、穿刺装置100は、鋭利な遠位先端(図示せず)などの、機械的穿刺機構を備え得る。バルーンなどの膨張可能要素130が、穿刺装置100の遠位部で、穿刺装置100の外周の周りに配設されている。代替的実施形態では、遠位部に配設されている複数の膨張可能要素(図示せず)が存在し得る。
【0021】
膨張可能要素130は、セミコンプライアント材料又はノンコンプライアント材料で構成することができ、材料の選択は、装置の用途に依存している。例えば、セミコンプライアント膨張可能要素130は、穿刺装置100がシース貫通時のガイドレールとして機能するように、穿刺装置100を肺静脈などの心臓要素内に係留するために使用することができる。セミコンプライアント膨張可能要素130は、例えば、Pebax(登録商標)、加工ナイロン(例えば、Grilamid(登録商標)及びVestamid(登録商標))、ポリエチレンテレフタレート(PET)、又はウレタンで構成することができる。あるいは、穿刺後に中隔を拡張して、容易かつ安全にシースが横断可能となるように穴を拡大するために、ノンコンプライアント膨張可能要素130を使用することもできる。ノンコンプライアント膨張可能要素130は、例えば、ナイロン12、ポリアミド、又はPETで構成することができる。膨張可能要素130の形状も、同様に様々であり得る。膨張可能要素130が、穿刺装置100を係留するために使用される実施形態では、膨張可能要素130は、球形又は円筒形とすることができる。膨張可能要素130が、穴を拡張するために使用される代替的実施形態では、膨張可能要素は、球形、円筒形、又は円錐形とすることができる。
【0022】
穿刺装置100は、膨張可能要素130の位置決めを補助するための手段を備え得る。穿刺装置100は、膨張可能要素130に対して配置されている、1つ以上の放射線不透過性マーカ140を備え得る。例えば、放射線不透過性マーカ140は、心臓内の構造に対する膨張可能要素130の位置決めについての情報を医師に提供するために、膨張可能要素130よりも近位側及び遠位側に配置することができる。
【0023】
上記のように、穿刺装置100は、中隔を拡張するために使用することができ、この穿刺装置は、シース(図示せず)が、前方への力又はテンティングを必要とせずに、容易に貫通することが可能となるように、中隔内の穴のサイズを拡大する。更には、穿刺装置100は、拡張要素を備えているため、先行技術において既知の、独立型の(別個又は内蔵型の)ダイレータは必要ではなく、中隔貫通時に引っ掛かることが判明している、ダイレータとシースとの間の移行領域が排除される。別の実施形態では、穿刺装置100の膨張可能要素130は、膨張可能要素130の剛性が維持され、膨張可能要素130上への中隔210の力に抵抗しつつ、穴を外向きに拡大及び拡張させることを確実にするために、ノンコンプライアント材料で構成することができる。膨張可能要素130は、穿刺される中隔組織の拡張を容易にするために、直径4~10mmの範囲といった、十分なサイズまで膨張する。ここで
図2aを参照すると、穿刺装置100は、穴又は通路220を作り出すエネルギーを、中隔210の組織に送達する。この時間中、膨張可能要素130は、非膨張状態にある。穿刺装置100は、穴220を通して押し込まれ、穴220内に(非膨張状態の)膨張可能要素130が存在するように位置決めされる。一実施例では、装置の位置決めは、放射線不透過性マーカ140の使用によって達成することができ、これらのマーカ140は、膨張可能要素130よりも近位側及び遠位側に配置されるように位置決めすることができ、蛍光透視法などの様々な画像化技術を使用して、医師は、マーカ140を可視化することが可能である。一方の放射線不透過性マーカが右心房内に、他方が左心房内に同時にあれば、膨張可能要素130は正しい位置にある。次いで、膨張可能要素130は、正しい位置にあると、膨張されて拡大する。この拡大は、
図2bに示されるように、中隔210内の穴220を拡張させることになる。
【0024】
穿刺装置100は、心臓要素内に係留することによって、左心房内にシースを前進させるためのガイドレールとして使用することができる。例えば、穿刺が形成されると、穿刺装置100を、左心房の肺静脈内に係留することができる。別の実施形態では、穿刺装置100の膨張可能要素130は、心臓構造に損傷を与えないように、セミコンプライアント材料で構成することができる。膨張可能要素130は、心臓構造内での係留を容易にするために、十分なサイズまで、好ましくは直径20~30mmの範囲内、例えば直径25mmまで膨張し得る。中隔内への穿刺の形成が完了すると、穿刺装置100は、膨張可能要素130が非膨張状態にある状態で、左心房内に押し通される。次いで、
図3に示すように、穿刺装置100は前進して肺静脈310内に入り、そこで膨張可能要素130が膨張することにより、係留点を作り出す。シースは、穴を通って穿刺装置100に沿って前進させられる。穿刺装置100を係留して、ガイドレールとして使用することにより、シースが左心房内に前進する際の、予期せぬジャンピング又は移動が防止されることになる。穿刺装置100を肺静脈310内に位置決めする場合、穿刺装置100上の膨張可能要素130の場所を示すために、1つ以上の放射線不透過性マーカ140を、様々な可視化方法(すなわち、蛍光透視法)と併せて使用することができる。例えば、放射線不透過性マーカ140は、膨張可能要素130よりも近位側に配設することができ、放射線不透過性マーカ140が肺静脈310内にあると、医師は、膨張可能要素130が肺静脈310内に配置されていると知ることになる。代替的実施形態では、放射線不透過性マーカ140は、膨張可能要素130よりも遠位側に配設することができる。あるいは、1つの放射線不透過性マーカ140を膨張可能要素130よりも遠位側に配設する一方で、別の放射線不透過性マーカ140を膨張可能要素130よりも近位側に配設することもできる。
【0025】
穿刺装置100の長手方向断面が、
図4aに示される。穿刺装置100は、組織にエネルギーを送達するように構成されている、ピッグテールワイヤ又はJ型先端ワイヤとすることができる。穿刺装置100は、体管腔を通って前進しながら困難な生体構造の中をぬって進む能力を提供するために、可撓性であるべきであり、困難な生体構造又は蛇行した生体構造の中を通して操作することができる。穿刺装置100はまた、穿刺装置100を包み込みながらシースが前進していくことを可能にするために、十分に剛性であるべきである。いくつかの実施形態では、穿刺装置100の本体は、コアワイヤ410で構成することができる。コアワイヤ410は、エネルギーが、エネルギー発生機から穿刺装置の長さに沿って送達され、遠位先端のエネルギー送達装置から組織に送達されることが可能となるように、導電性材料で構成することができ、そのような材料としては、ニチノール又はステンレス鋼を挙げることができる。コアワイヤ410は、電気絶縁層420を有し得るものであり、エネルギー送達装置は、遠位先端の一部分を露出させたままにすることによって作り出すことができる。電気絶縁層420は、スプレーコーティング又は熱収縮ラップとして適用することができる。電気絶縁層420用の材料は、例えば、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)又はポリイミドとすることができる。
図4a~
図4cに示されるものなどの、いくつかの実施形態では、膨張可能要素130は、電気絶縁層420を包み込むように配置することができる。膨張可能要素130は、例えば、膨張可能要素130と連通している管腔430を介して、生理食塩水を注入することによって拡大させることができる。管腔430は、
図4bに示すように、コアワイヤ410の外周を包囲するように配設することができる。代替的実施形態では、管腔430は、電気絶縁材料420の外側上の1個の管腔として配設することができ、この実施形態は
図4cに示されている。
【0026】
本発明の代替的実施形態を、
図5a~
図5cに見ることができる。膨張可能要素430は、電気絶縁層420の下に配置することができる。
図5aは、穿刺装置100の長手方向断面を示す。膨張可能要素130は、膨張可能要素130の膨張又は拡大が電気絶縁層420によって妨害されないように、電気絶縁層420の下に配置されている。例えば、絶縁層420は、膨張可能要素130を配設することが可能な間隙を残すように、適用することができる。あるいは、いくつかの実施形態では、絶縁層420は、膨張可能要素130が外向きに拡大することが可能となるように、切断することもできる。ここで
図5bを参照すると、いくつかの実施形態では、膨張可能要素130と連通している管腔430は、コアワイヤ410の外周を包囲するように配設することができる。あるいは、管腔430は、
図5cに見られるように、コアワイヤ410の外側上の1個の管腔として配設することもできる。
【0027】
穿刺装置100の近位端の一実施例が、
図6に示されている。いくつかの実施形態では、穿刺装置100の近位端は、発生機などのエネルギー源にコアワイヤ410を電気的に接続するように構成され得るハブ510に連結することができる。一実施形態では、ハブ510は、例えば溶接又はろう付けにてコアワイヤ410の端部に接続されている導電性ワイヤ520を含み得る。導電性ワイヤ520の他方の端部は、エネルギー源に対して電気的に接続するためにバナナプラグ540を挿入することが可能な、バナナジャックなどのコネクタ530に接続することができる。この接続により、エネルギー源から、プラグ540、ジャック530、及び導電性ワイヤ520を介して、コアワイヤ410及びエネルギー送達装置120に、並びに最終的には組織に、エネルギーを送達することが可能となる。ハブ510は更に、膨張可能要素の管腔430と連通しているチューブ550を含み得る。このチューブは、その一方において、シリンジなどの流体供給源570に動作可能に連結されるように(560)構造化することができる。この連結は、Tuohy-Borstアダプタの形態とすることができる。
【0028】
上述の本発明の実施形態は、例示のみを意図している。それゆえ、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定されることが意図されている。
明確化のために別個の実施形態の文脈で説明されている、本発明の特定の特徴はまた、単一の実施形態において組み合わせて提供することもできる点が理解されよう。逆に、簡略化のために単一の実施形態の文脈で説明されている本発明の様々な特徴もまた、別個に、又は任意の好適な部分的組み合わせで提供することができる。
【0029】
本発明を、その特定の実施形態に関連して説明してきたが、多くの代替形態、修正形態、及び変形形態が当業者には明らかとなる点が明白である。したがって、添付の特許請求の範囲の広義の範囲内に収まる、全てのそのような代替形態、修正形態、及び変形形態を包含することが意図されている。本明細書で言及される全ての刊行物、特許、及び特許出願は、個別の刊行物、特許、又は特許出願のそれぞれが、具体的かつ個別に、参照により本明細書に組み込まれるように示された場合と同程度に、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。更には、本出願における、いずれの参考文献の引用又は特定も、そのような参考文献が本発明に対する先行技術として利用可能であることの承認として解釈されるべきではない。