(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】フレキシブル接触要素を備える磁気研削治具
(51)【国際特許分類】
B24B 3/36 20060101AFI20241001BHJP
B24B 3/54 20060101ALI20241001BHJP
B24D 15/08 20060101ALI20241001BHJP
【FI】
B24B3/36 E
B24B3/54
B24D15/08 Z
(21)【出願番号】P 2023515582
(86)(22)【出願日】2021-09-08
(86)【国際出願番号】 EP2021074644
(87)【国際公開番号】W WO2022053477
(87)【国際公開日】2022-03-17
【審査請求日】2023-05-02
(31)【優先権主張番号】102020123500.3
(32)【優先日】2020-09-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】522359121
【氏名又は名称】ホール 1993 ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】ホール ティモ
(72)【発明者】
【氏名】ホール オットマー
【審査官】亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-104718(JP,A)
【文献】特開平05-038666(JP,A)
【文献】特開2012-228750(JP,A)
【文献】特開平02-160462(JP,A)
【文献】特開2010-260160(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 3/00 - 3/60
B24D 15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
特に、磁化可能ブレード(2a)を含む研削又は研磨される切削工具(2)を磁力によって保持するため、並びに、前記切削工具(2)を例えば回転式研削機(3)などの研削及び/又は研磨工具に対して位置決めするための、磁気研削治具(1)であって、
前記磁気研削治具(1)が、少なくとも1つのフレキシブル接触要素(4)を含み、
前記少なくとも1つのフレキシブル接触要素(4)に、前記切削工具(2)の磁気吸引された前記ブレード(2a)が意図されたとおりに接触するよう構成されて
おり、
前記磁気研削治具(1)が、前記接触要素(4)が配置される本体(5)を備え、
前記磁気研削治具(1)の位置決め平面(E)を向く前記本体(5)の一側部であって当該位置決め平面(E)と鋭角(90°-α1)をなす一側部が、前記接触要素(4)が配置される前記磁気研削治具(1)の接触側部(8)をなす、磁気研削治具(1)。
【請求項2】
前記接触要素(4)が、プラスチックで、好ましくはエラストマーで、好ましくは天然ゴム又はシリコーンゴムの加硫物で作られている、請求項1に記載の磁気研削治具(1)。
【請求項3】
前記接触要素(4)は、ショアA硬度が1から90の範囲内、好ましくは20から40の範囲内である、請求項1又は2に記載の磁気研削治具(1)。
【請求項4】
前記磁気研削治具(1)の前記本体(5)が、部分的に又は全体的に、木材及び/又はプラスチック及び/又は金属からなる、請求項1~3のいずれか一項に記載の磁気研削治具(1)。
【請求項5】
前記接触要素(4)は、前記磁気研削治具(1)の前記本体(5)及び/又は磁石(6)よりも高い柔軟性を有する、請求項4に記載の磁気研削治具(1)。
【請求項6】
前記接触要素(4)は、前記接触側部(8)を部分的に覆うか、又は前記接触側部(8)の表面全体を覆う、請求項4又は5に記載の磁気研削治具(1)。
【請求項7】
前記磁気研削治具(1)は、前記磁力を発生させるための少なくとも1つの磁石(6)を備え、
前記接触要素(4)は、前記磁気研削治具(1)の磁石(6)のうちの1つ、複数若しくは全てを部分的に又は全面的に覆う、請求項1~6のいずれか一項に記載の磁気研削治具(1)。
【請求項8】
前記接触要素(4)は、磁気吸引された前記切削工具(2)の作用により弾性変形するよう構成されており、好ましくは、これにより、前記接触要素(4)に接触している前記切削工具(2)の前記ブレード(2a)の一部について、凹んだ形状が形成されるように構成されている、請求項1~7のいずれか一項に記載の磁気研削治具(1)。
【請求項9】
前記接触要素(4)は、磁気吸引された前記切削工具(2)と、前記磁気研削治具(1)の本体(5)及び/又は前記磁気研削治具(1)の少なくとも1つの磁石(6)との間の接触が、部分的に又は完全に防止されるように構成されている、請求項1~8のいずれか一項に記載の磁気研削治具(1)。
【請求項10】
前記接触要素(4)が、前記切削工具(2)の前記ブレード(2a)のための平面状の接触面を有する、請求項1~9のいずれか一項に記載の磁気研削治具(1)。
【請求項11】
前記接触要素(4)は、
研削角度(α1,α2)の量を示す少なくとも1つのマーキングを有し、
前記マーキングは、好ましくは、前記接触要素(4)の前記接触面内の凹部として形成され、
前記マーキングは、特に好ましくは、前記接触面内の中央に配置される、請求項
10に記載の磁気研削治具(1)。
【請求項12】
前記磁気研削治具(1)は複数の接触要素(4)を備え、
前記複数の接触要素(4)は、好ましくは前記磁気研削治具(1)の
前記本体(5)の異なる接触側部(8)、好ましくは互いに反対方向に向く接触側部(8)に配置され、
前記複数の接触要素(4)は、前記磁気研削治具(1)の
前記位置決め平面(
E)と、好ましくは異なる鋭角(
90°-α1,
90°-α2)をなす、請求項1~11のいずれか一項に記載の磁気研削治具(1)。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載の磁気研削治具(1)と、回転式研削機(3)
と、を備えるセット。
【請求項14】
請求項1~12のいずれか一項に記載の磁気研削治具(1)を用いて切削工具(2)を研削又は研磨する方法であって、
a)前記磁気研削治具(1)をベース(U)の上に配置するステップAと、
b)磁化可能ブレード(2a)と当該磁化可能ブレード(2a)の上に配置された刃先(2b)とを有する切削工具(2)を準備するステップBと、
c)前記ブレード(2a)が磁気吸引されて、好ましくは表面全体にわたって、前記接触要素(4)と接触するように、前記磁気研削治具(1)の磁場内に前記ブレード(2a)を配置するステップCと、
d)研削及び/又は研磨工具を使用して、好ましくは回転式研削機(3)を用いて、前記切削工具(2)の前記刃先(2b)を研削又は研磨するステップDと、を含む方法。
【請求項15】
前記ステップCにおいて、前記ブレード(2a)が前記ベース(U)から離間されるように及び/又は前記刃先(2b)が前記ベース(U)から離れる方向を向くように、前記ブレード(2a)を配置する、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、研削又は研磨される磁化可能ブレードを有する切削工具を磁力によって保持するための、並びに、回転式研削機などの研削及び/又は研磨工具に対して切削工具を位置決めするための磁気研削治具に関する。
【背景技術】
【0002】
請求項1の前半部(プリアンブル)に記載の一般的な磁気研削治具は、ドイツ実用新案公報第202020001180号明細書から知られている。回転式研削機は、例えば、欧州特許出願公開第3278928号明細書から知られている。
【0003】
従来技術から知られている磁気研削治具は、特定のブレード寸法に適合され、2つの接触側部を備えている。ブレード高さがより高いブレードは磁気研削治具の一方の接触側部に接触するよう意図され、平面状のベースに後ろ向きに支持され、これにより、研削又は研磨される切削工具の刃先が磁気研削治具の上端を越えて突出し、回転式研削機での処理のためにアクセス可能となっている。ブレード高さがより低いブレードについては、磁気研削治具の他方の接触側部に段部が設けられており(
図10及び
図11)、この段部にブレードの背部が当接することで、刃先が磁気研削治具の上端を越えて突出し、回転式研削機での処理のためにアクセス可能となっている。ブレードを後方側で支持するための段部は、研削又は研磨処理中にブレードに強い力が加わった場合でも磁気研削治具上に確実に保持することを保証するために、この磁気研削治具において必要である。
【発明の概要】
【0004】
本発明の根底にある問題は、より汎用性のあるかたちで使用することができ、かつ異なるサイズ及び幾何学的形状のブレードを確実に磁気研削治具上に位置決めできる磁気研削治具を提供することである。
【0005】
この課題を解決するために、本発明は、請求項1に記載の磁気研削治具を提供する。本発明による磁気研削治具は、特に、磁化可能ブレードを含む研削又は研磨される切削工具を磁力によって保持するため、並びに、この切削工具を例えば回転式研削機などの研削及び/又は研磨工具に対して位置決めするために役立つ。本発明によれば、磁気研削治具は少なくとも1つのフレキシブル接触要素を備え、このフレキシブル接触要素に切削工具の磁気吸引されたブレードが意図されたとおりに接触するように構成されている。
【0006】
従来技術と比較した本発明の主な利点は、フレキシブル接触要素が磁気研削治具上におけるブレードの静摩擦を大幅に増加させることである。磁気研削治具上におけるブレードの静摩擦は、磁気的保持力と接触要素の静摩擦係数によって主に定義される。フレキシブル接触要素は、特に金属製の磁化可能ブレードに対して非常に大きい静摩擦係数を有する。磁化可能ブレードとの比較におけるフレキシブル接触要素の静摩擦係数は、通常、例えば、木材、プラスチック又は金属で作られた磁気研削治具の本体の静摩擦係数よりもかなり大きい。接触要素は、その柔軟性(軟らかさ)により、ブレードの表面に理想的に適合し、そして必要に応じてむらを補正しつつブレードとの広範囲な接触を保証する。これによって接触要素とブレードとの間の静摩擦がさらに向上する。フレキシブル接触要素により、後方側での支持や段部がなくても磁力のみで切削工具のブレードを磁気研削治具上に保持することができる。研削又は研磨処理の過程において研削及び/又は研磨工具によってブレードに力が加えられた場合でも、ブレードは磁気研削治具上の意図された保持位置に固定されたままである。したがって、フレキシブル接触要素は磁気研削治具の静摩擦及び保持特性を大幅に向上させる。フレキシブル接触要素によって、磁気研削治具と切削工具のブレードとの間の相対移動が防止される。これによりブレードへの傷などの損傷が防止される。さらに、フレキシブル接触要素は切削工具のブレードが磁気研削治具の本体に磁気吸引される際の衝撃の減衰を保証する。この場合、フレキシブル接触要素は、磁気研削治具の本体上に対するより良い装着音及びより良い装着感を保証する。
【0007】
接触要素はプラスチック、好ましくはエラストマー、好ましくは天然ゴム又はシリコーンゴム(シリコーン)の加硫物で作られていると有利であり得る。シリコーンは静摩擦及び減衰特性に優れ、安価に入手できる材料である。本出願については、シリコーン製の接触要素が最適であることが分かっている。但し、フレキシブル接触要素は、例えば、ゴムコーティング又は加硫された表面又はスプレーコーティングを有する金属板であってもよい。
【0008】
接触要素は、ショアA硬度が1から90の範囲、好ましくは20から40の範囲であることが有用であり得る。原理的には、接触要素の静摩擦係数はショアA硬度の低下とともに増加する。一方、接触要素の耐荷能力及び寸法安定性はショアA硬度の増加とともに増加する。例えば20から40の範囲、特に20から30の範囲の低ショアA硬度を有する接触要素が本発明の目的に最適であることが分かっている。ショアA硬度は、好ましくは、DIN EN ISO868、DIN ISO7619-1及びASTM D2240-00に従って測定される。
【0009】
磁気研削治具が、接触要素が配置される本体を有し、好ましくは、磁気研削治具の本体が、部分的に又は全体的に、木材及び/又はプラスチック及び/又は金属から作られていることが有用であり得る。
【0010】
接触要素は、磁気研削治具の本体及び/又は磁石よりも柔軟性が大きいことが有用であり得る。このように、接触要素は、ブレードと磁気研削治具の本体及び/又は磁石との間の接触衝撃を減衰させる。
【0011】
磁気研削治具が、接触要素が配置される少なくとも1つの接触側部を有し、接触要素が、接触側部を部分的に覆うか、又は接触側部の表面全体を覆うことが有利であり得る。このようにして、ブレードと磁気研削治具の本体との意図しない接触を防止することができる。さらに、接触要素を着色して磁気研削治具の本体上の装飾要素として使用することができる。
【0012】
磁気研削治具が磁力を発生させるための少なくとも1つの磁石を有し、接触要素が、磁気研削治具における1つ、複数若しくはすべての磁石を部分的に覆うか、又はその表面全体を(好ましくは、磁石が見えないように)覆うことが、実用的であり得ることが分かっている。このようにして、ブレードと磁石との意図しない接触を防止することができる。
【0013】
接触要素は、磁気吸引された切削工具の作用により弾性変形して、好ましくは、接触要素と接触している切削工具のブレードの一部に対する凹んだ形状(Negativform)を形成することが有益であり得る。特に、これによって切削工具の磁気吸引されたブレードが接触要素の弾性変形の下で接触要素内に押し付けられることが可能となり、したがって、必要に応じて、接触要素上に摩擦的にだけでなく能動的にも保持されることが可能となる。特に、磁気吸引されたブレードの背部が接触要素を横切って延在する場合、ブレードの背部は接触要素内に「食い込む」ことができる。ブレードの後方側を支える段部がブレードの背部の下方に形成されてもよい。このようにして、ブレードは、研削又は研磨工具によって大きい力が加えられた場合でも、本発明による磁気研削治具で確実に保持することができる。この目的のために、接触要素が磁気研削治具の本体の平面接触側部から突出して、磁気研削治具の本体が磁気吸引されたブレードによる接触要素の弾性変形を妨げないように構成されていることが有用であり得る。
【0014】
接触要素は、磁気吸引される切削工具と磁気研削治具の本体及び/又は磁気研削治具の少なくとも1つの磁石との間の接触を部分的に又は完全に防止するように構成されていることが好適であり得る。これにより、切削工具の磁気吸引されるブレードが傷ついたりその他の損傷を受けたりすることが防止される。
【0015】
接触要素は、切削工具のブレードのための平面状の接触面を有することが有用であり得る。これにより、ブレードを接触面に対して自由に配置することができる。
【0016】
接触要素が好ましくは研削角度の量を示す少なくとも1つのマーキングを有し、マーキングが好ましくは接触要素の接触面内の凹部として形成され、マーキングが特に好ましくは接触面の中央に配置されることが有用であり得る。このマーキングにより、ユーザによる磁気研削治具の操作が容易となる。特に、複数の異なる接触側部を有する磁気研削治具の場合、マーキングによって、ユーザは適切な研削角度を有する接触側部を見つけ易くなる。
【0017】
磁気研削治具は複数の接触要素を備え、複数の接触要素は、好ましくは磁気研削治具の本体の異なる接触側部、好ましくは互いに反対方向に向く接触側部に配置され、複数の接触要素は、磁気研削治具の設置平面と、好ましくは異なる鋭角をなすことが有用であり得る。研削角度、好ましくは接触要素の表面(又は接触面)とベースに対して垂直に整列された平面との間で測定される研削角度は、好ましくは15°から20°の範囲である。回転式研削機の研削平面は、通常、ベースに対して垂直な面に整列する。接触要素の接触面とベースとの間の角度は好ましくは70°から75°の範囲である。
【0018】
本発明の別の態様は、前述の実施形態の1つによる磁気研削治具と、回転式研削機、好ましくは欧州特許出願公開第3278928号明細書に記載の回転式研削機とを備えるセットに関する。このような回転式研削機はベース上で回転するように移動可能であり、少なくとも1つの端面研削又は研磨面を有する。
【0019】
本発明のさらに別の態様は、前述の実施形態の1つによる磁気研削治具を使用して切削工具を研削又は研磨する方法に関し、当該方法は、
・磁気研削治具をベースの上に配置するステップAと、
・磁化可能ブレードとその上に配置された刃先とを有する切削工具を準備するステップBと、
・ブレードが磁気吸引されて、好ましくは表面全体にわたって、接触要素と接触するように、磁気研削治具の磁場内にブレードを配置するステップCと、
・研削及び/又は研磨工具を使用して、好ましくは回転式研削機を用いて、切削工具の刃先を研削又は研磨するステップDと、を含む。
【0020】
ステップAは、好ましくは、水平に整列された平面状のベース、例えば、テーブル天板又はキッチンカウンター天板を要する。ステップBにおける磁化可能ブレードを有する切削工具は、例えば、ステンレス鋼ブレードを有する従来のキッチン用ナイフである。ステップCでは、好ましくは、
図6に示すように、磁化可能ブレードのブレードは、好ましくは、ブレードの背部がベースを向き、ブレードの刃先がベースから離れる方向を向くように、接触面に平行に整列される。この状態で、ブレードが磁気研削治具によって磁気吸引されると、ブレード表面を有するブレードのみが、理想的には表面全体にわたって、接触要素と平面的に接触することとなり、その結果、研削又は研磨のための刃先へのアクセスが可能となる。ステップDにおける研削は、好ましくは、必須ではないが、回転式研削機を用いて実行される。端面研削又は研磨面を有する回転式研削機は、平面状のベース上を回転運動で水平方向に移動し、研削又は研磨面が垂直面内に整列した状態で切削工具のブレードの刃先との接触が保たれる。回転式研削機の移動方向はブレードの延在方向と略平行である。研削角度は、ブレードが接触要素と接触して保持される平面と、研削又は研磨面の垂直面とによって画定される。回転式研削機は、とりわけ、欧州特許出願公開第3278928号明細書から知られている。
【0021】
ステップCにおいて、ブレードがベースから離間されるように及び/又は刃先がベースから離れる方向を向くようにブレードを配置することが有利であり得る。これにより、加工のためにブレードに容易にアクセスすることが可能となる。
【0022】
磁気研削治具の接触要素は、好ましくは、以下の特徴のうちの少なくとも1つを有する。
・接触要素は、プラスチック、好ましくはエラストマー、好ましくは天然ゴム又はシリコーンゴム(シリコーン)の加硫物で作られている。
・接触要素は、ショアA硬度が1から90の範囲、好ましくは20から40の範囲である。
・接触要素は、柔軟性の圧縮弾性率が0.1から30MPaの範囲、好ましくは0.2から10MPaの範囲、より好ましくは0.25から2MPaの範囲である。
・接触要素は、0.1から2mmの範囲の厚さ、好ましくは0.2から1mmの範囲の厚さ、より好ましくは0.3から0.5mmの範囲の厚さを有する。
・接触要素は少なくとも1つの平面状の接触面を有し、好ましくは異なる接触角を有する好ましくは複数の平面状の接触面を有する。
・接触要素は平面状の設置面を有し、当該平面状の設置面により接触要素が磁気研削治具の本体に取り付けられ、設置面は、好ましくは接触面に対して平行に整列している。
・接触要素は、磁気研削治具の本体及び/又は磁石にしっかりと結合され、好ましくは接着される。
・接触要素は直方体として構成される。
・接触要素はマーキングを有し、マーキングは好ましくは凹部として接触面に導入される。
・接触要素は矩形の輪郭を有する。
・接触要素は、磁気研削治具の本体の接触側部を部分的に又は表面全体にわたって覆う。
・接触要素は、磁気研削治具の本体内の少なくとも1つの磁石収容開口部を部分的に又は表面全体にわたって覆う又は閉じる。
・接触要素は、好ましくは接触面において、鋼、特にステンレス鋼に対する静摩擦係数が0.2を超える、好ましくは0.4を超える、好ましくは0.6を超える、特に好ましくは0.8を超える。
・接触要素は、磁気研削治具の本体及び/又は磁石よりも大きい静摩擦係数を有する。
・接触要素は透明、半透明又は不透明である。
・接触要素は顔料で着色される。
・接触要素は、底部の及び/又は埋め込まれた及び/又は頂部の装飾を有する。
・接触要素は滑り止め面を有する。
・接触要素は、磁気研削治具の本体及び/又は磁石のコーティングとして形成される。
【0023】
接触要素は、磁気研削治具の本体及び/又は磁石の上に成形される。磁気研削治具の本体は、好ましくは、以下の特徴のうちの少なくとも1つを有する。
・本体は、50mmから150mmの範囲の長さ、好ましくは80mmから120mmの範囲の長さを有する。
・本体は、15mmから30mmの範囲の高さ、好ましくは20mmから25mmの範囲の高さを有する。
・本体は、40mmから80mmの範囲の幅、好ましくは50mmから60mmの範囲の幅を有する。
・本体は、少なくとも部分的に、木材及び/又はプラスチック及び/又は金属で作られる。
・本体は、接触要素と(好ましくは垂直に)交差する第1の断面平面において台形の断面を有し、この断面は好ましくは下側に向かって先細りである。
・本体は、接触要素と交差しない第2の断面平面内において矩形の断面を有し、第2の断面平面は好ましくは第1の断面平面に対し垂直に整列されている。
・本体は、上面から見て及び/又は底面から見て、矩形の輪郭を有する。
・本体は、好ましくは接触側部において、少なくとも1つの磁石を収容するための少なくとも1つの開口部を有し、この開口部は好ましくは円筒状であり、好ましくは接触側部に対して垂直に磁気研削治具の本体内に加工される。
・本体は下側よりも上側が大きい。
・本体は、頂部から底部に向かって、好ましくは徐々に先細りになっている。
・本体はもっぱら平面状の側部を有する。
・本体は、底部を画定する少なくとも1つの縁部よりも上部を画定する少なくとも1つの縁部において、より面取りされている又は丸みを帯びている。
【0024】
磁気研削治具の磁石は、以下の特徴のうちの少なくとも1つを有することが好ましい。
・磁石は永久磁石である。
・磁石は円筒状の外側輪郭を含む。
・磁石は、磁気研削治具の本体内の収容部にぴったりと嵌合される。
・磁石は、少なくとも1つの平面状の端面を備える。
・磁石は、端面において、磁気研削治具の本体と面一である。
・磁石は、端面上の接触要素によって部分的に覆われている又は完全に隠されている。
・磁気研削治具の各接触側部には、複数の、好ましくは同一の磁石がある。
・磁石の保持力は、好ましくは0.1kgから10kgの範囲、好ましくは0.2kgから5kgの範囲、特に好ましくは0.5kgから4kgの範囲である。
【0025】
磁気研削治具の設置部は、好ましくは、以下の特徴のうちの少なくとも1つを有する。
・設置部は、ヘッドと、ヘッドから突出するシャフトとを備える。
・設置部のシャフトは、少なくとも1つの周縁保持リブを備える。
・設置部はプラスチック製プラグとして構成される。
・設置部のシャフトは、磁気研削治具の本体に固定可能な少なくとも1つの保持部を備える。
・保持部はもみの木の形状に構成されている。
・保持部は断面において鋸歯状構造を有する。
・保持部はくさび形である。
・保持部は、ヘッドから離れる方向を向くシャフトの端部に向かって先細りである。
・シャフトの側面は、挿入方向、すなわち、ヘッドから離れる方を向くシャフトの端部に向かう方向において、反対方向よりも、シャフトの軸に対して小さい角度で傾斜している。
・シャフトを本体の対応する開口部に挿入するための力は、シャフトをこの開口部から再び引き抜くのに必要な力よりも小さい。
・設置部は、プラスチック、好ましくはエラストマー、好ましくは天然ゴム又はシリコーンゴム(シリコーン)の加硫物で作られている。
・設置部は、ショアA硬度が20から80の範囲、好ましくは40から60の範囲である。
【0026】
さらなる好ましい実施形態は、特許請求の範囲、明細書及び図面に開示された特徴の組み合わせから得られる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の第1の実施形態による磁気研削治具の側面図を示し、隠れている部品は破線で示す。
【
図3】
図1及び
図2に記載の磁気研削治具と、研削又は研磨される切削工具と、回転式研削機の形態である研削及び/又は研磨工具とを備えるアレンジメントの概略図を示し、ブレードの背部がベースから離間し、切削工具の刃先がベースから離れる方向に向くように、切削工具のブレードが磁気研削治具のフレキシブル接触要素と磁気的に接触して保持されている。
【
図4】本発明の第2の実施形態による磁気研削治具の側面図を示し、隠れている部品は破線で示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明による磁気研削治具1は、磁化可能ブレード2aを有する研削又は研磨される切削工具2を磁力によって保持するため、並びに、切削工具2を回転式研削機3などの研削及び/又は研磨工具に対して位置決めするために役立つ。本発明によれば、磁気研削治具1は少なくとも1つのフレキシブル接触要素4を備え、この接触要素4に、切削工具2の磁気吸引されたブレード2aが意図されたとおりに接触するように構成されている。磁気研削治具1は、切削工具2及びそのブレード2aから独立して請求され、したがって、明細書及び特許請求の範囲は、
図3及び
図6に明確に示されているように、切削工具2のブレードが接触要素4に平面的に接触するような磁気研削治具1の使用の例に基づいている。使用の例では、理想的には、切削工具2の磁気吸引されたブレード2aのみが、表面又は表面全体にわたって接触要素4と接触し、切削工具2と磁気研削治具1の本体5又は磁石6とのいかなる接触も除外される。
【0029】
磁気研削治具1は、特に、キッチンナイフの形の切削工具2を位置決めするように構成されている。キッチンナイフは多くの場合、略平面状のブレードを有するステンレス鋼のブレード2aと、わずかに湾曲した片側の刃先2bとを有する。但し、原理的には、キッチンナイフとは別に他の切削工具2も本発明による磁気研削治具1で位置決めすることが可能である。
【0030】
したがって、切削工具2及びブレード2aの形状は決定的なものではない。本発明による磁気研削治具1の利点はまさしく、異なるブレードサイズ及び幾何学的形状に対して普遍的に使用できるという事実にある。
【0031】
以下、図面を参照しながら好適な実施形態について説明する。
【0032】
【0033】
以下、
図1から
図3、
図6を参照して本発明の第1の実施形態による磁気研削治具1について説明する。
【0034】
磁気研削治具1は、
図1に示すように略直方体状の本体5を備え、この本体は、接触要素4と垂直方向に交差する断面平面(シート平面又は紙面に平行)において台形の断面を有する。
【0035】
各例において、本体5の下側にはフレキシブルな設置部7がコーナー領域に配置され、本体5の下側の対応する開口部内に摩擦的に挿入される。各設置部7はプラスチック製プラグとして構成され、ヘッドと、このヘッドからもみの木状構造で突出するシャフトとを備え、個々の保持リブは断面において鋸歯状構造を有する。保持リブはくさび形であり、ヘッドから突出するシャフトの端部に向かって先細りになっている。シャフトの側面とこの側面に取り付けられた保持リブとは、挿入方向、すなわち、ヘッドから離れる方を向くシャフトの端部に向かう方向において、反対方向よりも、シャフト軸に対して小さい角度で傾斜している。したがって、シャフトを本体5の対応する開口部に挿入するための力は、シャフトをこの開口部から再び引き抜くのに必要な力よりも小さい。プラスチック製プラグは好ましくはシリコーンで作られており、ショアA硬度が好ましくは40から60の範囲である。
【0036】
設置部7が本体5の下側の円筒状凹部内に挿入されてそこに摩擦的に配置された状態において、これらの設置部7のわずかに丸いヘッドが磁気研削治具1の本体5の下側を越えて突出して、磁気研削治具1を平坦なベースU上にセットアップするための設置平面Eを画定する(
図3及び
図6参照)。
【0037】
磁気研削治具1の本体5は、好ましくは未処理の又はニス塗布された木材(例えば、オーク、クルミ、ブナ、又はトウヒ)で作られ、好ましくはもっぱら平面状の側部を有する。本体5の下側の縁部は、好ましくは本体5の他の縁部よりも弱く面取り又は丸くされている。
【0038】
第1の実施形態において、磁気研削治具1の本体5は、長さLが約82mm(上端で測定)であり、高さHが約22mmであり、幅Bが約56mmである。設置部7を含めると磁気研削治具1の高さH1は約25mmである。
【0039】
また、磁気研削治具1の位置決め平面Eを向く、これと例えば70°の鋭角(90°-α1)をなす本体5の側部は、磁気研削治具1の接触側部8をなす。磁気研削治具1のこの側部において形成される研削角度α1は20°であり、接触側部8と位置決め平面Eに垂直に整列する垂直研削平面Sとの間の角度に対応し、そして、垂直研削平面S内において、回転式研削機3の研削又は研磨面が位置する及び移動する。この実施形態では、接触側部8とは反対の側にある本体5の側部は研削平面Sに平行に整列している。
【0040】
本体5の接触側部8には、2つの、好ましくは円筒状のボアが形成されており、それに対応する形状を有する円筒状の磁石6がボア内にぴったりと嵌合されて挿入され、端面で本体5の接触側部8と面一となるように構成されている。
【0041】
本体5の接触側部8とボア内に挿入された磁石6の外側を向く端面とは、その表面全体にわたって、矩形の輪郭を有するフレキシブルなシリコーン接触要素4によって覆われこれが接着される。接触要素4は厚さが例えば0.5mmの範囲であり、ショアA硬度が例えば30である。接触要素4は本体5とは反対を向く側では切削工具2のブレード2aのための平面状の接触面を形成し、この接触面に対して、切削工具2が磁気研削治具1の本体5に接触することのないようブレードが理想的には表面全体にわたって当接することができる。オプションで、それぞれの接触角α1の量(「20°」)を示すためのマーキングが接触要素4の接触面上に設けられ、これは例えば、接触要素4の中央に凹部として加工される。インプリントの形態のマーキングも可能である。
【0042】
本発明の方法による磁気研削治具1を用いて切削工具2を研削及び研磨するために、磁気研削治具1を設置部7により平面状のベースUの上に配置する(ステップA)。ステンレス鋼のブレードを有するキッチンナイフなどの、磁化可能ブレード2aと刃先2bとを備える準備された切削工具2が(ステップB)、ブレードが接触要素4の接触面に平行に整列し、磁気吸引されたブレード2aのみが(表面全体で)接触要素4と表面接触するように、切削工具2の磁化可能ブレード2aが意図されたとおりに磁気研削治具1の磁場内に配置される。刃先2bはベースUから離れる方向を向き、ブレード2aはベースUから離間する。したがって、ブレード2aは、磁気研削治具1の磁石力のみによって接触要素4に接触して保持される。フレキシブル接触要素4は、磁力の影響を受けたブレード2aによって、接触要素4のフレキシブルな復元力とブレード2aにかかる磁気研削治具1の磁力との間で力の平衡に達するまで、弾性変形される。これに対応してソフトでフレキシブルな接触要素4によって、磁気吸引されたブレード2aが接触要素4内に押し付けられる。ブレードの背面が接触要素4を横切って延在する場合、接触要素4の弾性変形によりブレード2aの後方側おいて段部が形成され、これにより、接触要素4に接触して保持されたブレード2aは移動が一層困難となる。この状態で、切削工具2のブレード2aは、少なくとも1つの端面研削又は研磨面を有する回転式研削機3で機械加工される。回転式研削機3は、平坦なベースU上を水平方向に転がり、研削又は研磨面が垂直面に整列した状態で切削工具2のブレード2aの刃先2bと接触するよう保たれる。回転式研削機3の移動方向はブレードの延在方向に略平行である。研削角度αは、接触要素4と意図されたとおりに接触して保持されたブレードが延在する平面と、回転式研削機3の研削又は研磨面の垂直面とによって画定される。
【0043】
【0044】
図4及び
図5を参照して以下に記載する第2の実施形態において、磁気研削治具1は第1の実施形態と実質的に同一の特徴を含むが以下に説明する点で異なる。第1の実施形態と異なり、第2の実施形態の磁気研削治具1は、本体5における互いに反対の方向を向く側部において2つの異なる接触側部8を備え、各接触側部8は各自のフレキシブル接触要素4で完全に覆われる。各接触要素4は、それによって覆われる磁気研削治具1の本体5の接触側部8と全く同じサイズである。したがって、磁力によって吸引された切削工具2のブレード2aは各接触要素4のみに接触し、例えば、磁気研削治具1の本体5又はその中に配置された磁石6には接触しない。研削角度α1,α2は、本体5の2つの接触側部8について異なるように形成される。例えば、研削角度α1は20°であり、研削角度α2は15°である。
【0045】
第2の実施形態において、磁気研削治具1の本体5は、長さLが約112mm(上端で測定)であり、高さHが約22mmであり、幅Bが約56mmである。設置部7を含めると磁気研削治具1の高さH1は約25mmである。
【符号の説明】
【0046】
1 磁気研削治具
2 切削工具(ナイフ)
2a ブレード
2b 刃先
3 回転式研削機
4 接触要素
5 本体
6 磁石
7 設置部
8 接触側部
E 設置平面
S 研削平面
U ベース