(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】静電マイクロポンプ及び静電マイクロポンプを製造するプロセス
(51)【国際特許分類】
F04B 43/04 20060101AFI20241001BHJP
H10N 30/853 20230101ALI20241001BHJP
H10N 30/20 20230101ALI20241001BHJP
F04B 45/047 20060101ALI20241001BHJP
B81B 3/00 20060101ALI20241001BHJP
B81C 1/00 20060101ALI20241001BHJP
【FI】
F04B43/04 Z
H10N30/853
H10N30/20
F04B45/047 Z
B81B3/00
B81C1/00
(21)【出願番号】P 2023515684
(86)(22)【出願日】2020-09-09
(86)【国際出願番号】 EP2020075208
(87)【国際公開番号】W WO2022053132
(87)【国際公開日】2022-03-17
【審査請求日】2023-05-02
(73)【特許権者】
【識別番号】500341779
【氏名又は名称】フラウンホーファー-ゲゼルシャフト・ツール・フェルデルング・デル・アンゲヴァンテン・フォルシュング・アインゲトラーゲネル・フェライン
(74)【代理人】
【識別番号】100085660
【氏名又は名称】鈴木 均
(74)【代理人】
【識別番号】100149892
【氏名又は名称】小川 弥生
(74)【代理人】
【識別番号】100185672
【氏名又は名称】池田 雅人
(72)【発明者】
【氏名】ライストナー,ヘンリー
(72)【発明者】
【氏名】ヴァッケルレ,マルティン
(72)【発明者】
【氏名】リヒター,マルティン
(72)【発明者】
【氏名】ヴィーラント,ロベルト
【審査官】岸 智章
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05542821(US,A)
【文献】特開2002-240285(JP,A)
【文献】特開2006-289944(JP,A)
【文献】特開2010-268412(JP,A)
【文献】特開2013-224995(JP,A)
【文献】特開2007-242607(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0048520(US,A1)
【文献】特開2005-307876(JP,A)
【文献】特表平09-507279(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 43/04
F04B 45/047
B81B 3/00
B81C 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電マイクロポンプ(100、200)であって、
ダイヤフラムと第1の電極構造体(109、210)とを備えるダイヤフラム装置(180、230、1310、1710、1910)と、
入口逆止弁(160、260)と出口逆止弁(170、270)とを備えるバルブ装置(120、220、1550)であって、
前記ダイヤフラム装置及び前記バルブ装置が
、前記静電マイクロポンプのポンプチャンバ(110、207、1580、1730)を少なくとも部分的に囲むバルブ装置と、
前記第1の電極構造体と共に
前記静電マイクロポンプの静電駆動部を形成するように配置された第2の電極構造体であって、前記静電駆動部が前記ダイヤフラムを撓ませるように構成された第2の電極構造体(108、211)と、
前記静電マイクロポンプの前記第1の電極構造体
及び前記第2の電極構造
体の間に配置された少なくとも1つのスティクション防止バンプ(105、208)と、を備え、
前記静電マイクロポンプの非作動状態において、前記第1の電極構造体と前記第2の電極構造体との間の間隔が、前記ポンプチャンバの周辺領域から前記ポンプチャンバの
中央領域(190、290、405)に向かって変動し、前記周辺領域が前記
中央領域を囲み、
ステータ構造体であって、前記ダイヤフラム装置が
前記バルブ装置と前記ステータ構造体(240、1740、1920)との間に配置され、前記ステータ構造体及び前記ダイヤフラム装置が
前記静電マイクロポンプの電極チャンバ(212、930、1750、1810)を囲むようになっており、前記ステータ構造体が前記第2の電極構造体の少なくとも一部である導電層を備えたステータ構造体と、
前記電極チャンバを前記静電マイクロポンプの環境と接続するように構成された
前記ステータ構造体の通気口(550、1720、1890)であって、
前記通気口が前記電極チャンバの汚染を防止するように構成される通気口と、
を備える静電マイクロポンプ。
【請求項2】
前記第1の電極構造体及び/又は前記第2の電極構造体が可変高さ形状(107、209、560、1780)を備え、前記第1の電極構造体と前記第2の電極構造体との間の間隔を前記ポンプチャンバの前記周辺領域から前記中央領域に向かって増加させる、請求項1に記載の静電マイクロポンプ。
【請求項3】
前記少なくとも1つのスティクション防止バンプが、前記可変高さ形状に対向する前記第2の電極構造体に配置された、請求項
2に記載の静電マイクロポンプ。
【請求項4】
前記第1の電極構造体と前記第2の電極構造体との間の前記間隔が、前記ポンプチャンバの前記周辺領域から前記中央領域に向かって複数のステップで段階的に増加する、請求項1から3のいずれか一項に記載の静電マイクロポンプ。
【請求項5】
前記周辺領域において、前記第1の電極構造体及び前記第2の電極構造体に機械的接触を提供し、前記第1の電極構造体と前記第2の電極構造体との間の電気的貫通の発生を防止する絶縁層(104、205、610)によって、前記第1の電極構造体及び前記第2の電極構造体が互いに絶縁される、請求項1から4のいずれか一項に記載の静電マイクロポンプ。
【請求項6】
前記静電駆動部が、前記第1の電極構造体と前記第2の電極構造体との間の電圧に基づいて前記ポンプチャンバ内の圧力及び/又は前記ポンプチャンバの容積を変化させるように構成された、請求項1から5のいずれか一項に記載の静電マイクロポンプ。
【請求項7】
前記バルブ装置が層装置であり、
前記入口逆止弁及び前記出口逆止弁が前記バルブ装置に対して面内に配置され、
前記入口逆止弁及び前記出口逆止弁の両方が、入口トンネル(130)と、弁フラップ(140)と、出口トンネル(150)と、デッドボリューム(206)とを備え、前記入口トンネル、開状態の前記弁フラップ、及び前記出口トンネルを通るように流体の流れを導くように構成され、かつ、前記入口逆止弁を通る前記流体の流れの方向が前記出口逆止弁を通る前記流体の流れの方向と反対である、請求項1から6のいずれか一項に記載の静電マイクロポンプ。
【請求項8】
前記ダイヤフラム装置が、前記第1の電極構造体の少なくとも一部である導電層を備える、請求項1から7のいずれか一項に記載の静電マイクロポンプ。
【請求項9】
前記バルブ装置が半導体層のスタックを備え、前記バルブ装置の主面に垂直な480μm~540μmの厚さを備え、
かつ/又は前記ダイヤフラム装置が、前記バルブ装置の主面に垂直な10μm~120μmの厚さの半導体層を備える、請求項1から8のいずれか一項に記載の静電マイクロポンプ。
【請求項10】
前記静電駆動部が、作動されると、前記ダイヤフラム装置を前記ステータ構造体に向かって撓ませて前記ポンプチャンバを膨張させ、流体が前記入口逆止弁を通って前記ポンプチャンバ内に流れるように構成された、請求項1から9のいずれか一項に記載の静電マイクロポンプ。
【請求項11】
前記静電駆動部が、作動されると、前記ダイヤフラム装置を撓ませ、導電性又は非導電性の流体が前記入口逆止弁を通って前記ポンプチャンバ内に流れることを可能にするように構成された、請求項10に記載の静電マイクロポンプ。
【請求項12】
前記ステータ構造体がシリコン層を備え、前記バルブ装置の主面に垂直な450μmの厚さを備える、請求項1から11のいずれか一項に記載の静電マイクロポンプ。
【請求項13】
前記ステータ構造体が、前記ダイヤフラム装置と比較してより高い剛性を有する、請求項1から12のいずれか一項に記載の静電マイクロポンプ。
【請求項14】
前記通気口が前記電極チャンバの汚染を防止するように構成されたフィルタ(1850)及び/又はバッファボリューム(1860)を備える、請求項1から13のいずれか一項に記載の静電マイクロポンプ。
【請求項15】
前記ダイヤフラム装置の前記ダイヤフラムが事前に撓んでいる、請求項1から14のいずれか一項に記載の静電マイクロポンプ。
【請求項16】
前記ダイヤフラム装置が、前記静電駆動部の非作動状態で前記ステータ構造体との機械的接触を接触領域内で形成するように事前に撓んでおり、前記静電駆動部が作動状態で前記接触領域を増加させるように適合された、請求項15に記載の静電マイクロポンプ。
【請求項17】
前記第1の電極構造体の前記導電層及び前記第2の電極構造体の前記導電層が、導電性材料、又は金属材料の導電性を有する高濃度にドープされた半導体材料で作られた、請求項1から16のいずれか一項に記載の静電マイクロポンプ。
【請求項18】
静電マイクロポンプを製造するプロセスであって、
ダイヤフラムと第1の電極構造体とを備えるようにダイヤフラム装置を配置するステップと、
入口逆止弁と出口逆止弁とを備えるようにバルブ装置を配置するステップであって、
前記ダイヤフラム装置及び前記バルブ装置がポンプチャンバを少なくとも部分的に囲むようにするステップと、
前記第1の電極構造体と共に前記ダイヤフラムを撓ませる静電駆動部を形成するように第2の電極構造体を配置するステップと、
前記第1の電極構造体と前記第2の電極構造体との間に少なくとも1つのスティクション防止バンプを配置するステップであって、
前記静電マイクロポンプの非作動状態において、前記第1の電極構造体と前記第2の電極構造体との間の間隔が、前記ポンプチャンバの周辺領域から前記ポンプチャンバの
中央領域に向かって変動し、前記周辺領域が前記
中央領域を囲むようにするステップと、
ステータ構造体を配置するステップであって、
前記ダイヤフラム装置が前記バルブ装置と前記ステータ構造体との間に配置され、
前記ステータ構造体及び前記ダイヤフラム装置が電極チャンバを囲み、かつ、
前記ステータ構造体が、前記第2の電極構造体の少なくとも一部である導電層を備えるようにするステップと、
前記電極チャンバを前記静電マイクロポンプの環境と接続する通気口を配置し、前記通気口が前記電極チャンバの汚染を防止するようにするステップと、
を含む、静電マイクロポンプを製造するプロセス。
【請求項19】
前記ステータ構造体を配置することが、
第1の層であって、前記第1の層の第1の主面上に可変高さ形状と絶縁溝とを有する前記第1の層を配置するステップと、
前記ステータ構造体を配置するために、前記第1の層の
前記第1の主面上に絶縁層を形成するステップと、を含む、請求項18に記載の静電マイクロポンプを製造するプロセス。
【請求項20】
前記ダイヤフラム装置を配置することが、
第2の層を設けるステップと、
前記第1の層の前記第1の主面を前記第2の層の第1の主面に取り付けて、前記第1の層の前記可変高さ形状と前記第2の層の前記第1の主面との間に電極チャンバを形成するステップと、
前記ダイヤフラム装置を配置するために、少なくとも前記電極チャンバの反対側の領域において、前記第1の主面に平行な前記第2の層
の第2の主面を薄くするステップと、をさらに含む、請求項19に記載の静電マイクロポンプを製造するプロセス。
【請求項21】
前記第1の層の
前記第1の主面上に可変高さ形状を生成する前記ステップが、前記第1の層に少なくとも1つの通気口を配置するステップであって、前記通気口が前記電極チャンバを前記静電マイクロポンプの環境と接続するようにするさらなるステップを含む、請求項20に記載の静電マイクロポンプを製造するプロセス。
【請求項22】
前記第1の層に少なくとも1つの通気口を配置する前記ステップが、前記通気口に少なくとも1つのフィルタ及び/又はバッファボリュームを配置するさらなるステップを含む、請求項21に記載の静電マイクロポンプを製造するプロセス。
【請求項23】
前記バルブ装置を配置することが、
第1の基板を、前記第1の基板の第1の主面上の第1の溝構造と共に形成するステップと、
第2の基板を、前記第2の基板の第1の主面上の第2の溝構造と共に形成するステップと、
前記第1の基板の溝構造を有する前記第1の主面を前記第2の基板の溝構造を有する前記第1の主面に取り付けることによって基板のスタックを提供するステップであって、
第1及び/又は第2の溝構造が基板の前記スタック内に少なくとも1つのキャビティを形成するようにするステップと、
基板の前記スタック
の第1の主面及び/又
は第2の主面を薄くするステップと、
前記少なくとも1つのキャビティにおいて、前記第1の主面に平行な
前記第1の主面及び
前記第2の主面から基板の前記スタックを窪ませて、入口トンネル及び出口トンネル並びにその間の弁フラップを形成し、前記入口トンネル、開状態の前記弁フラップ、及び前記出口トンネルを通るように流体の流れを導くように構成し、
前記バルブ装置を生成するために、前記入口逆止弁を通る流体の流れの方向が、前記出口逆止弁を通る流体の流れの方向と反対であるステップとによって入口逆止弁及び出口逆止弁を製造することを含む、請求項18から22のいずれか一項に記載の静電マイクロポンプを製造するプロセス。
【請求項24】
第2の電極構造体を配置することが、電極材料又は絶縁体材料を堆積させるためのウェハ接合プロセスの実行又は堆積プロセスの実行を含む、請求項18から23のいずれか一項に記載の静電マイクロポンプを製造するプロセス。
【請求項25】
少なくとも1つのスティクション防止バンプを配置することが、
第1の層の前記第1の主面上、及び/又は
前記第1の主面に平行
な第2の層の第1の主面
上及び/若しくは第2の主面上、及び/又は
前記ダイヤフラム装置に対向する前記バルブ装置の主面上において、
前記ポンプチャンバの領域に前記少なくとも1つのスティクション防止バンプを形成することを含む、請求項18から24のいずれか一項に記載の静電マイクロポンプを製造するプロセス。
【請求項26】
前記ダイヤフラム装置及び前記バルブ装置がポンプチャンバを形成するように前記ダイヤフラム装置を前記バルブ装置に取り付けるステップと、
前記絶縁溝
で第1の層をダイシングするステップと、
前記ダイヤフラム装置
の第1の層
の第2の主面上、及び
前記ダイヤフラム装置
の第2の層
の第1の主面上、又は
前記バルブ装置
の表面上に
導電層を堆積させるステップと、
マイクロポンプを製造するために前記第2の層をダイシングするステップと、を含む、請求項
19から25のいずれか一項に記載のマイクロポンプを製造するプロセス。
【請求項27】
前記第1の層の前記第2の主面上に導電層を堆積する前に、前記ダイヤフラム装置の前記第1の層の前記第2の主面を薄くするステップを含む、請求項26に記載の静電マイクロポンプを製造するプロセス。
【請求項28】
前記ダイヤフラム装置を前記バルブ装置に取り付ける前記ステップが、
前記第2の層によって配置された前記ダイヤフラム装置を事前に撓ませるステップと、
前記ダイヤフラム装置を前記バルブ装置に取り付けるステップと、を含む、請求項26から27に記載のマイクロポンプを製造するプロセス。
【請求項29】
前記ダイヤフラム装置を前記バルブ装置に取り付ける前記ステップが、
前記静電駆動部の非作動状態において、前記第1の層の機械的接触を接触領域内で形成するように、前記第2の層によって配置された前記ダイヤフラム装置を事前に撓ませるステップであって、前記静電駆動部が、作動状態において前記
接触領域を増加させるように適合されたステップと、
前記ダイヤフラム装置を前記バルブ装置に取り付けるステップと、を含む、請求項26から28のいずれか一項に記載のマイクロポンプを製造するプロセス。
【請求項30】
前記第1の電極構造体の前記導電層及び前記第2の電極構造体の前記導電層が、導電性材料、又は金属材料の導電性を有する高濃度にドープされた半導体材料で作られた、請求項18から29に記載のマイクロポンプを製造するプロセス。
【請求項31】
静電マイクロポンプ(100、200)であって、
ダイヤフラムと第1の電極構造体(109、210)とを備えるダイヤフラム装置(180、230、1310、1710、1910)と、
入口逆止弁(160、260)と出口逆止弁(170、270)とを備えるバルブ装置(120、220、1550)であって、
前記ダイヤフラム装置及び前記バルブ装置が
前記静電マイクロポンプのポンプチャンバ(110、207、1580、1730)を少なくとも部分的に囲むバルブ装置と、
前記第1の電極構造体と共に
前記静電マイクロポンプの静電駆動部を形成するように配置された第2の電極構造体(108、211)であって、前記静電駆動部が前記ダイヤフラムを撓ませるように構成された第2の電極構造体と、
前記静電マイクロポンプの前記第1の電極構造体
及び前記第2の電極構造体
の間に配置された少なくとも1つのスティクション防止バンプ(105、208)であって、
前記静電マイクロポンプの非作動状態において、前記第1の電極構造体と前記第2の電極構造体との間の間隔が、前記ポンプチャンバの周辺領域から前記ポンプチャンバの
中央領域(190、290、405)に向かって変動し、前記周辺領域が前記
中央領域を囲むスティクション防止バンプと、
ステータ構造体であって、前記ダイヤフラム装置が前記バルブ装置と前記ステータ構造体(240、1740、1920)との間に配置され、前記ステータ構造体及び前記ダイヤフラム装置が
前記静電マイクロポンプの電極チャンバ(212、930、1750、1810)を囲むようになっており、前記ステータ構造体が、前記第2の電極構造体の少なくとも一部である導電層を備えるステータ構造体と、
前記電極チャンバを前記静電マイクロポンプの環境と接続するように構成された
前記ステータ構造体の通気口(550、1720、1890)であって、
前記通気口が蛇行部(1830)、高い流れ抵抗、及び/又は毛細管停止部(1820)を使用することにより前記電極チャンバの汚染を防止するように構成される通気口と、
を備える静電マイクロポンプ。
【請求項32】
静電マイクロポンプ(100、200)であって、
ダイヤフラムと第1の電極構造体(109、210)とを備えるダイヤフラム装置(180、230、1310、1710、1910)と、
入口逆止弁(160、260)と出口逆止弁(170、270)とを備えるバルブ装置(120、220、1550)であって、
前記ダイヤフラム装置及び前記バルブ装置が
前記静電マイクロポンプのポンプチャンバ(110、207、1580、1730)を少なくとも部分的に囲むバルブ装置と、
前記第1の電極構造体と共に
前記静電マイクロポンプの静電駆動部を形成するように配置された第2の電極構造体(108、211)であって、
前記静電駆動部が前記ダイヤフラムを撓ませるように構成された第2の電極構造体と、
前記静電マイクロポンプの前記第1の電極構造体
及び前記第2の電極構造体
の間に配置された少なくとも1つのスティクション防止バンプ(105、208)であって、
前記静電マイクロポンプの非作動状態において、前記第1の電極構造体と前記第2の電極構造体との間の間隔が、前記ポンプチャンバの周辺領域から前記ポンプチャンバの
中央領域(190、290、405)に向かって変動し、前記周辺領域が前記
中央領域を囲むスティクション防止バンプと、
ステータ構造体であって、前記ダイヤフラム装置が前記バルブ装置と前記ステータ構造体(240、1740、1920)との間に配置され、前記ステータ構造体及び前記ダイヤフラム装置が
前記静電マイクロポンプの電極チャンバ(212、930、1750、1810)を囲むようになっており、前記ステータ構造体が、前記第2の電極構造体の少なくとも一部である導電層を備えるステータ構造体と、
前記電極チャンバを前記静電マイクロポンプの環境と接続するように構成された
前記ステータ構造体の通気口(550、1720、1890)であって、
前記通気口がフィルタ(1850)及び/又はバッファボリューム(1860)を備えることにより前記電極チャンバの汚染を防止するように構成された通気口と、
を備える、静電マイクロポンプ。
【請求項33】
静電マイクロポンプ(100、200)であって、
ダイヤフラムと第1の電極構造体(109、210)とを備えるダイヤフラム装置(180、230、1310、1710、1910)と、
入口逆止弁(160、260)と出口逆止弁(170、270)とを備えるバルブ装置(120、220、1550)であって、前記ダイヤフラム装置及び前記バルブ装置が
前記静電マイクロポンプのポンプチャンバ(110、207、1580、1730)を少なくとも部分的に囲むバルブ装置と、
前記第1の電極構造体と共に
前記静電マイクロポンプの静電駆動部を形成するように配置された第2の電極構造体(108、211)であって、前記静電駆動部が前記ダイヤフラムを撓ませるように構成された第2の電極構造体と、
前記静電マイクロポンプの前記第1の電極構造体
及び前記第2の電極構造体
の間に配置された少なくとも1つのスティクション防止バンプ(105、208)と、
ステータ構造体であって、前記ダイヤフラム装置が
前記バルブ装置と前記ステータ構造体(240、1740、1920)との間に配置され、前記ステータ構造体及び前記ダイヤフラム装置が
前記静電マイクロポンプの電極チャンバ(212、930、1750、1810)を囲むようになっており、前記ステータ構造体が前記第2の電極構造体の少なくとも一部である導電層を備えるステータ構造体と、を備え、
前記静電マイクロポンプの非作動状態において、前記第1の電極構造体と前記第2の電極構造体との間の間隔が、前記ポンプチャンバの周辺領域から前記ポンプチャンバの
中央領域(190、290、405)に向かって変動し、前記周辺領域が前記
中央領域を囲み、かつ、
前記ダイヤフラム装置の前記ダイヤフラムが事前に撓んでいる、
静電マイクロポンプ。
【請求項34】
静電マイクロポンプ(100、200)であって、
ダイヤフラムと第1の電極構造体(109、210)とを備えるダイヤフラム装置(180、230、1310、1710、1910)と、
入口逆止弁(160、260)と出口逆止弁(170、270)とを備えるバルブ装置(120、220、1550)であって、
前記ダイヤフラム装置及び前記バルブ装置がポンプチャンバ(110、207、1580、1730)を少なくとも部分的に囲むバルブ装置と、
前記第1の電極構造体と共に静電駆動部を形成するように配置された第2の電極構造体(108、211)であって、前記静電駆動部が前記ダイヤフラムを撓ませるように構成された第2の電極構造体と、
前記第1の電極構造体と前記第2の電極構造体との間に配置された少なくとも1つのスティクション防止バンプ(105、208)と、
ステータ構造体であって、前記ダイヤフラム装置が前記バルブ装置と前記ステータ構造体(240、1740、1920)との間に配置され、前記ステータ構造体及び前記ダイヤフラム装置が電極チャンバ(212、930、1750、1810)を囲むようになっており、前記ステータ構造体が、前記第2の電極構造体の少なくとも一部である導電層を備えるステータ構造体と、を備え、
前記静電マイクロポンプの非作動状態において、前記第1の電極構造体と前記第2の電極構造体との間の間隔が、前記ポンプチャンバの周辺領域から前記ポンプチャンバの
中央領域(190、290、405)に向かって変動し、前記周辺領域が前記
中央領域を囲み、かつ、
前記ダイヤフラム装置の前記ダイヤフラムが事前に撓んでおり、接触領域で前記静電駆動部の不作動状態において前記ステータ構造体と機械的接触を形成し、前記静電駆動部が作動状態で前記接触領域を増加させるように適合された、
静電マイクロポンプ。
【請求項35】
静電マイクロポンプ(100、200)であって、
ダイヤフラムと第1の電極構造体(109、210)とを備えるダイヤフラム装置(180、230、1310、1710、1910)と、
入口逆止弁(160、260)と出口逆止弁(170、270)とを備えるバルブ装置(120、220、1550)であって、
前記ダイヤフラム装置及び前記バルブ装置が前記静電マイクロポンプのポンプチャンバ(110、207、1580、1730)を少なくとも部分的に囲むバルブ装置と、
前記第1の電極構造体と共に前記静電マイクロポンプの静電駆動部を形成するように配置された第2の電極構造体(108、211)であって、前記静電駆動部が前記ダイヤフラムを撓ませるように構成された第2の電極構造体と、
前記静電マイクロポンプの前記第1の電極構造体及び前記第2の電極構造体の間に配置された少なくとも1つのスティクション防止バンプ(105、208)であって、
前記静電マイクロポンプの非作動状態において、前記第1の電極構造体と前記第2の電極構造体との間の間隔が、前記ポンプチャンバの周辺領域から前記ポンプチャンバの中央領域(190、290、405)に向かって変動し、前記周辺領域が前記中央領域を囲むスティクション防止バンプと、
ステータ構造体であって、前記ダイヤフラム装置が前記バルブ装置と前記ステータ構造体(240、1740、1920)との間に配置され、前記ステータ構造体及び前記ダイヤフラム装置が前記静電マイクロポンプの電極チャンバ(212、930、1750、1810)を囲むようになっており、前記ステータ構造体が、前記第2の電極構造体の少なくとも一部である導電層を備えるステータ構造体と、
前記電極チャンバを前記静電マイクロポンプの環境と接続するように構成された前記ステート構造体の通気口(550、1720、1890)であって、
前記通気口が前記電極チャンバの汚染を防止するように構成され、1μmの直径を有する通気口と、
を備える静電マイクロポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明による実施形態は、マイクロメカニカルアクチュエータに関する。本発明によるさらなる実施形態は、マイクロメカニカルポンプに関する。本発明によるさらなる実施形態は、静電マイクロメカニカルポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
垂直静電アクチュエータは、特徴的な電圧以上の静電力が電極間隔及び機械的復元力の静水圧を上回るため、動作中に不安定性を示す。電極の非動作距離が調整される場合、この非線形性はアクチュエータの動作に利用され、動作電圧を低下させ、使用エネルギーを少なくする。さらに、静電アクチュエータの動作は、電気的短絡さらには電気的破壊を防止するために、電界における電極及び/又は側壁の不動態化又は絶縁を常に必要とする。
静電力は短距離であるため、静電駆動マイクロポンプのストロークは比較的小さい。撓ませる力は、電極間距離に二次的に比例する。例えば、既知のマイクロポンプのストロークはわずか5μmになり得るが、この結果、行程容積もわずか約40nlとなる。デッドボリュームが大きいと圧縮率が非常に小さくなる。既知のマイクロポンプは気泡耐性がなく、空気などの圧縮性媒体には適していないため、マイクロポンプは実際には実用的ではない。
さらに、既知のマイクロポンプは、必要とされる200V以上の高い供給電圧を使用する際に対電極とダイヤフラムとの電気的接触や短絡を防止するために、人手で組み立てられる。人手でチップを組み立てるのは全く不経済である。
【0003】
一方で、シリコン製の静電駆動マイクロポンプは圧電駆動マイクロポンプと比較して多くの利点を有し得る。
・標準的なMEMS製造工場における完全なウェハレベル加工で圧電体の接着がない
・すべてのプロセスステップは、ウェハレベルでの確立されたシリコン微細加工技術である
・圧電体配置、接着剤投与、接着剤ガーデニングなどによる製造公差がない
・すべての機械部品はシリコン製でセラミックを使用しないため、長期動作中の疲労や微小クラックがない
・材料はシリコンのみ(PZT圧電体のようにPbがなく、RoHSを満足している)
・推定800℃までの非常に高い温度での動作が可能(シリコンのみの場合、電気的界面の材料による)
・圧電体がないため、ヒステリシスが発生しない
・静電容量2nF(圧電体の場合)に対し100pF:エネルギー消費が小さい
【0004】
・小型化の可能性:
○圧電駆動ではセラミックのピック&プレースに限定されるため、3×3mm2より小さいものは実現できない
○静電駆動ポンプは、さらに小さいもの(2×2mm2、おそらく1×1mm2まで)が実現することができ、ピック&プレースの必要はない
○静電作動のストローク(200Vで約5μm)は、チップサイズからほぼ独立している。圧電駆動の場合、ストロークはチップサイズにも依存する。
・2×2mm2マイクロポンプ:
○8インチのウェハにつき8000個のマイクロポンプ
○200wspwを超える場合の製造コストは約10セント
圧電駆動ポンプと比較して静電駆動マイクロポンプの利点は非常に多いが、静電駆動マイクロポンプは市販されていない。
短絡のリスクを最小限に抑えながら、ウェハレベルで製造されるように構成された静電マイクロポンプを実現することが求められている。本発明は、既知の静電駆動マイクロポンプの欠点を克服し、上述の利点を可能にするものである。
【発明の概要】
【0005】
一般に、既知の静電駆動マイクロポンプの欠点を克服するために、静電的に作動されるダイヤフラムの行程容積はかなり高く、かつブロッキング圧力は十分高くするべきである。次に、プロセスによって、ポンプチャンバのデッドボリュームが十分小さいバルブユニットを作動ユニットに適合させて高い圧縮比が達成可能となるべきである。さらに、ポンプは、電気的に分離又は絶縁された電極に対して完全なウェハレベルで組み立てることが可能となるべきである。次に、ウェハをポンプチップにダイシングした後、電極にアクセスする必要があり、エッジでの短絡の危険が生じないようにすべきである。
【0006】
本発明による一実施形態は、ダイヤフラムと第1の電極構造体とを含むダイヤフラム装置を備える静電マイクロポンプである。静電マイクロポンプは、入口逆止弁及び出口逆止弁を含むバルブ装置をさらに備え、ダイヤフラム装置及びバルブ装置は、少なくとも部分的にポンプチャンバを囲む。静電マイクロポンプは、第1の電極構造体と共に静電駆動部を形成するように配置された第2の電極構造体をさらに備える。静電駆動部は、ダイヤフラムを撓ませるように構成される。マイクロポンプは、第1の電極構造体と第2の電極構造体との間に配置された少なくとも1つのスティクション防止バンプをさらに備え、マイクロポンプの非動作状態では、第1の電極構造体と第2の電極構造体との間の間隔は、ポンプチャンバの周辺領域からポンプチャンバの中央領域に向かって変動し、周辺領域は中央領域を取り囲む。
マイクロポンプの動作状態では、ダイヤフラムは、第1の電極構造体及び第2の電極構造体によって形成された静電駆動部によって撓むように構成される。
少なくとも1つのスティクション防止バンプは、ダイヤフラムが第2の電極構造体に固着するのを防止するために、第1の電極構造体と第2の電極構造体との間に配置される。
【0007】
好ましい実施形態では、第1の電極構造体及び/又は第2の電極構造体は可変高さ形状を備え、第1の電極構造体と第2の電極構造体との間の間隔をポンプチャンバの周辺領域から中央領域に向かって増加させる。
2つの電極構造体の少なくとも一方の可変高さ形状は、ポンプチャンバ及び/又はポンプチャンバの行程容積を拡大するように構成される。さらに、可変高さ形状は、第1の電極構造体と第2の電極構造体との間の最短距離を減少させ、その結果、静電駆動部の必要な電圧及び/又はエネルギー使用量を低減させ得る。
対電極の可変高さ形状は、機械的なストッパを形成するため、理論的には行程容積に対する効果は限られている。したがって、動作電圧を低下させ、かつ、行程容積を減少させずむしろ増加させる高さ形状を選択することが重要である。
作動状態における電極間、すなわち可動電極と剛性電極との間の容積は、非作動状態における電極間の容積の約半分の値とすることができる。
【0008】
一実施形態によれば、少なくとも1つのスティクション防止バンプは、可変高さ形状に対向する第1又は第2の電極構造体に配置される。
少なくとも1つのスティクション防止バンプは、第1の電極構造体でもダイヤフラム装置でもない第2の電極構造体に配置されてもよい。少なくとも1つのスティクション防止バンプは、可変高さ形状に対向する第2の電極構造体に配置されてもよい。スティクション防止バンプは、例えば、供給電圧が引き込み電圧を超える場合、及び/又は、例えば、ダイヤフラムが静水圧によって対電極に押し付けられる場合に、第1の電極構造体と第2の電極構造体との間の固着(スティッキング)の発生のリスクを低減する。少なくとも1つのスティクション防止バンプは、引き込み電圧を超えた場合の静電固着、及び静水圧によって引き起こされるファンデルワールス固着の両方の発生を低減する。
可変高さ形状に対向するように、例えば平坦な表面にスティクション防止バンプを配置することにより、スティクション防止バンプの容易な配置又は生成が可能となり、かつ可変高さ形状の精度がスティクション防止バンプの生成によって影響されないようにすることができる。
静電作動を使用する1つの問題は、静電固着である。高電圧が印加されると、2つの部分は互いに接触する。そうした状況では、絶縁層内に非常に高い電界が発生し、(この高電界によって駆動される)電荷が2つの部分の境界を超えて絶縁層内に緩和され得る。その後、電圧を解除すると、電荷が絶縁層に留まって静電固着を発生する。その状況を克服するために、1つの有望な戦略は、例えばスティクション防止バンプによって高電界が印加される接触面積を減少させることである。スティクション防止バンプの機能は、硬質材同士の接触面積を減少させ、電荷が緩和され得る面積を減少させることである。静電固着は、バンプとの接触面積とポンプなしの接触面積との比によって低減される。さらに、有益な比率によってファンデルワールス固着も低減される。さらに、アクチュエータ又はマイクロポンプのバイポーラ(例えば、-200V~200V)駆動電圧も、静電固着の影響を低減する。
【0009】
バンプの設計に関して、以下の境界条件がある。バンプの高さはアクチュエータのストロークを減少させるため、この高さは可能な限り小さくすべきである。エッチング技術に関しては、10ナノメートル~200ナノメートルの高さが実現可能である。これらの領域で電荷緩和を回避するには、小さな間隙で十分である。
すべてのバンプの接触面積は、(固着を低減するために、)バンプなしの接触面積と比較してはるかに小さくなければならない。しかしながら、すべてのバンプの合計の接触面積が小さすぎると、全体の力がこの小さい面積に集中し、バンプの機械的安定性を超える可能性がある。バンプへの静電圧縮力によってバンプが損傷を受ける可能性がある。そのために、この接触領域は、加えられ得る最大機械的応力を大幅に下回るように選択されるべきである。単結晶シリコンの場合、この値は約4GPaであり、酸化シリコンではより小さい値となる。
【0010】
実施形態によれば、第1の電極構造体と第2の電極構造体との間の間隔は、ポンプチャンバの周辺領域から中央領域に向かって複数のステップで段階的に増加する。
ポンプ及び/又は電極チャンバの周辺領域から中央領域に向かって段階的に増加する高さ形状は、第1の電極構造体と第2の電極構造体との間の最短距離を減少させることができ、その結果、供給電圧の必要量が低下するため、マイクロポンプのエネルギー使用量が低減され、高電圧生成のための小型で確立された回路の使用が可能になる。
好ましい実施形態では、周辺領域において、第1の電極構造体及び第2の電極構造体に機械的接触を提供し、第1の電極構造体と第2の電極構造体との間の電気的貫通の発生を防止する絶縁層によって、第1の電極構造体及び第2の電極構造体が互いに絶縁される。
第1の電極構造体及び第2の電極構造体がダイヤフラムを撓ませるための静電駆動部を形成するので、第1の電極構造体と第2の電極構造体との間に電気的貫通が発生すると、ダイヤフラムを撓ませるための静電力が小さくなり得る。すなわち、2つの電極構造体間の電気的貫通は好ましくなく、2つの電極構造体間の絶縁層によって防止される。
【0011】
好ましい実施形態では、静電駆動部は、第1の電極構造体と第2の電極構造体との間の電圧に基づいて、ポンプチャンバ内の圧力及び/又はポンプチャンバの容積を変化させるように構成される。
第1及び第2の電極構造体によって形成された静電駆動部はポンプチャンバに圧力を加え、その力は、第1の電極構造体と第2の電極構造体との間の電圧に依存する。第1の電極構造体と第2の電極構造体との間の電圧は小さなステップで変更することができるため、マイクロポンプは、ポンプチャンバの容積及び/又は圧力を小さなステップで意図的に設定できる実用的な装置となる。
【0012】
好ましい実施形態では、バルブ装置は層装置である。入口逆止弁及び出口逆止弁は、バルブ装置に対して面内に配置される。入口逆止弁と出口逆止弁の両方は、入口トンネルと、弁フラップと、出口トンネルと、デッドボリュームとを備え、入口トンネル、開状態の弁フラップ、及び出口トンネルを通るように流体の流れを導くように構成される。入口逆止弁を通る流体の流れの方向は、出口逆止弁を通る流体の流れの方向と反対である。
静電マイクロポンプは、少なくとも1つの入口逆止弁と、少なくとも1つの出口逆止弁とを備える。迅速かつ/又は安価な製造に到達するために、入口逆止弁及び出口逆止弁は層装置に配置されてもよく、入口逆止弁及び出口逆止弁はこの層と同一面内に配置される。バルブ装置の複雑さをさらに低減するために、入口逆止弁及び出口逆止弁に同じ又は類似の逆止弁を使用することができ、入口逆止弁の入口トンネルは、出口逆止弁の入口トンネルの反対方向を向いている。
好ましい実施形態では、ダイヤフラム装置は、第1の電極構造体の少なくとも一部である導電層を備える。
ダイヤフラム装置のダイヤフラムが非導電性材料で作られる場合、ダイヤフラム装置は、第1の電極構造体の一部である追加の導電層を備える。
好ましい実施形態では、バルブ装置は半導体層のスタックを備え、バルブ装置の主面に垂直な例えば480μm~540μmの厚さを備え、かつ/又はダイヤフラム装置は、ダイヤフラム装置の主面に垂直な例えば10μm~120μmの厚さの半導体層を備える。
【0013】
好ましい実施形態では、バルブ装置は、第2の電極構造体の少なくとも一部である導電層を備える。本発明の一実施形態は、ダイヤフラム装置をバルブ装置に取り付けることによって実現することができる。ダイヤフラム装置及びバルブ装置の両方は、第1の電極構造体又は第2の電極構造体の少なくとも一部である導電層を備えるか、又はそのような導電性材料で作られる。ポンプチャンバは、バルブ装置及びダイヤフラム装置によって形成される。
好ましい実施形態では、静電駆動部は、作動されると、ダイヤフラムをバルブ装置に向かって撓ませてポンプチャンバを圧縮し、流体がポンプチャンバから出口逆止弁を通って環境に流れるように構成される。
一実施形態によれば、ポンプチャンバから出口逆止弁を通って流れる流体は非導電性流体である。
非導電性流体は、ポンプチャンバを形成する第1の電極構造体と第2の電極構造体との間の電気的貫通の発生を防止する。電気的貫通はポンプチャンバを圧縮する力を低下させるため、好ましくない。
好ましい実施形態では、バルブ装置はシリコン層などの半導体層のスタックを備え、バルブ装置の主面に垂直な例えば480μm~540μmの厚さを備え、かつ/又はダイヤフラム装置は、バルブ装置の主面に垂直な例えば10μm~120μmの厚さのシリコン層などの半導体層を備える。
【0014】
一実施形態によれば、静電ポンプはステータ構造体を備える。ダイヤフラム装置は、ステータ構造体及びダイヤフラム装置が電極チャンバを取り囲むように、バルブ構造体とステータ構造体との間に配置される。ステータ構造体は、第2の電極構造体の少なくとも一部である導電層を備える。
静電マイクロポンプは、ステータ構造体と、ダイヤフラム装置と、バルブ装置とを備えてもよい。ステータ構造体はダイヤフラム装置に取り付けられ、電極チャンバを形成する。ダイヤフラム装置はさらにバルブ構造体に取り付けられてポンプチャンバを形成し、ダイヤフラム装置はステータ構造体とバルブ装置との間にある。本実施形態では、ダイヤフラム装置は第1の電極構造体を備え、ステータ構造体は第2の電極構造体を備える。
一実施形態では、静電駆動部は、作動されると、ダイヤフラム装置をステータ構造体に向かって撓ませてポンプチャンバを膨張させ、流体が入口逆止弁を通ってポンプチャンバ内に流れるように構成される。
静的駆動部は、第1及び第2の電極構造体、すなわちステータ構造体及びダイヤフラム装置によって形成される。ステータ構造体は作動時も機械的に安定したままであり、ダイヤフラム装置はステータ構造体に向かって撓むため、電極チャンバは圧縮されポンプチャンバは膨張する。ポンプチャンバが膨張するとポンプチャンバ内の圧力が低下するため、流体が環境から入口逆止弁を通ってポンプチャンバに流入する。
【0015】
一実施形態によれば、入口逆止弁を通ってポンプチャンバ内に流れる流体は導電性又は非導電性流体である。
本発明のマイクロポンプが別個の電極チャンバと別個のポンプチャンバとを備える場合、第1及び第2の電極構造体は電極チャンバを形成する。この場合、ポンプチャンバ内を流れる流体は両電極構造体に接触しないため、流体の導電率は静電マイクロポンプのポンプ性能に影響を与えない。
一実施形態によれば、ステータ構造体はシリコン層などの半導体層を備え、バルブ装置の主面に垂直な例えば450μmの厚さを備える。
好ましい実施形態では、ステータ構造体はダイヤフラム装置と比較して高い剛性を備える。
剛性のあるステータ構造体、又は少なくともダイヤフラム装置よりも剛性のあるステータ構造体を有する静電マイクロポンプは、作動されると、ステータ構造体が安定又は機械的に安定したままである一方でダイヤフラム装置が可動部分となるという利点を有する。
【0016】
一実施形態によれば、静電マイクロポンプは、電極チャンバを静電マイクロポンプの環境と流体接続するように構成された通気口を備える。
電極チャンバを環境と接続する通気口は、電極チャンバと環境との間の圧力平衡器として作用する。この場合、大気圧は、ダイヤフラムのゼロ位置、すなわち非作動状態の位置を変化させない。すなわち、平坦なダイヤフラムによって高い圧縮比を達成でき、ダイヤフラムが移動するときに電極チャンバ内に背圧が発生しない。
好ましい実施形態では、通気口は、蛇行部、高い流れ抵抗、又は毛細管停止部を使用することによって電極チャンバの汚染を防止するように構成される。
電極チャンバの汚染は、ダイヤフラムの移動性を低下させる可能性があり、電極チャンバの容積を減少させる可能性があり、かつ/又は第1の電極構造体と第2の電極構造体との間の電気的貫通を引き起こす可能性があり、ダイヤフラムを撓ませるのに2つの電極構造体の間に必要な電圧及び/又は静電力を増加させる。蛇行部、高い流れ抵抗、及び/又は毛細管停止部などの様々な方法は電極チャンバの汚染を防止する。
一実施形態によれば、通気口は、電極チャンバの汚染を防止するように構成されたフィルタ及び/又はバッファボリュームを備える。
電極チャンバの代わりに汚染されるバッファボリューム及び/又は汚染を除去するフィルタを使用することにより、電極チャンバの汚染をさらに防止することができる。
【0017】
一実施形態によれば、ダイヤフラム装置のダイヤフラムは事前に撓んでいる。
通気口を使用する代わりに、ダイヤフラム装置を事前に撓ませてもよい。事前に撓ませたダイヤフラム装置は、第1の電極構造体と第2の電極構造体との間の距離をさらに減少させ、電極チャンバを圧縮し、ポンプチャンバを膨張させるのに必要な力及び/又は電圧を低減させることができる。ダイヤフラム装置は、真空中でステータ構造体に接合されてもよい。事前の撓みの程度は、加える真空に依存してもよい。
好ましい実施形態では、ダイヤフラム装置は、接触領域における静電駆動部の非作動状態でステータ構造体と機械的接触を形成するように事前に撓んでおり、静電駆動部は作動状態で接触領域を増加させるように適合される。
静電力は、第1の電極構造体と第2の電極構造体との間の距離に二次的に依存する。事前に撓ませたダイヤフラム装置は、電極構造体間の距離を減少させ、ダイヤフラム装置を撓ませるのに必要な供給電圧をはるかに少なくし得る。ステータ構造体に接触する事前に撓ませたダイヤフラム装置のさらなる利点は、電極チャンバの高さが増加され得ること、すなわち、マイクロポンプが作動されるときにポンプチャンバの容積が増加されることである。
【0018】
好ましい実施形態では、第1の電極構造体の導電層及び第2の電極構造体の導電層は、金属材料などの導電性材料、又は金属材料の導電性を有するホウ素若しくはリン光体及びシリコンなどの高濃度ドープ半導体材料で作られる。
本発明によるさらなる実施形態は、それぞれの方法を生み出す。
しかしながら、方法は、対応する装置と同じ考慮に基づくことに留意されたい。さらに、方法は、特徴又は機能のいずれかによって補足され、装置に関して個別にかつ組み合わせて本明細書に記載され得る。
以下では、本開示の実施形態が、図面を参照してより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】一実施形態による、3つの層を備える静電マイクロポンプの概略側面図である。
【
図2】一実施形態による、4つの層を備える静電マイクロポンプの概略側面図である。
【
図3】一実施形態による、静電マイクロポンプを製造するステップによって提供される第1の層及び第2の層の概略側面図である。
【
図4】マイクロポンプを製造するための一実施形態による、第2の層を最初にエッチングしたときに得られ得る第2の層の概略側面図、及びエッチングマスクの上面図である。
【
図5】マイクロポンプを製造するための一実施形態による、通気口有り又は無しで第2の層を2回目にエッチングしたときに得られ得る第2の層の概略側面図、及びエッチングマスクの上面図である。
【
図6】マイクロポンプを製造するための一実施形態による、第1の層及び第2の層を酸化したときに得られ得る絶縁された第1の層及び絶縁された第2の層の概略側面図である。
【
図7】マイクロポンプを製造するための一実施形態による、絶縁された第2の層内のスティクション防止バンプをエッチングしたときに得られ得る、スティクション防止バンプを有する絶縁された第2の層の概略側面図、及びドットパターンを有するエッチングマスクの上面図である。
【
図8】マイクロポンプを製造するための一実施形態による、絶縁された第1の層のフレーム領域をエッチング除去したときに得られ得る絶縁された第1の層の概略側面図、及びフレーム形状を有するエッチングマスクの上面図である。
【
図9a】マイクロポンプを製造するための一実施形態による、絶縁された第1の層を絶縁された第2の層に取り付けたときに得られ得るチップレベルでのアクチュエータ装置の概略側面図である。
【
図9b】マイクロポンプを製造するための一実施形態による、絶縁された第1の層のウェハを絶縁された第2の層のウェハに取り付けたときに得られ得るウェハレベルでの複数のアクチュエータ装置の概略側面図である。
【
図10】マイクロポンプを製造するための一実施形態による、アクチュエータ装置の主面から絶縁層を除去したときに得られ得るアクチュエータ装置の概略側面図である。
【
図11】マイクロポンプを製造するための一実施形態による、アクチュエータ装置の第1の層を薄くしたときに得られ得るアクチュエータ装置の概略側面図である。
【
図12】マイクロポンプを製造するための一実施形態による、アクチュエータ装置の第1の層を有する主面上に導電性材料を堆積させたときに得られ得るアクチュエータ装置の概略側面図である。
【
図13】マイクロポンプを製造するための一実施形態による、周辺領域から導電性材料を除去したときに得られ得るアクチュエータ装置の概略側面図である。
【
図14】一実施形態による、アクチュエータ装置を試験するように構成されたウェハ試験装置の概略側面図である。
【
図15a】一実施形態によるアクチュエータ装置の概略側面図である。
【
図15b】一実施形態による、アクチュエータ装置の全ループ変形例の概略側面図である。
【
図15c】一実施形態によるマイクロポンプの概略側面図である。
【
図16】実施形態による静電マイクロポンプ設計のシミュレートされた値の表を示す。
【
図17】一実施形態による、通気口を有するマイクロポンプの概略側面図である。
【
図18a】一実施形態による、バッファボリューム及び毛細管停止部を有する通気口の概略上面図である。
【
図18b】一実施形態による、断面が縮小された通気口の概略上面図である。
【
図18c】一実施形態による、蛇行部を有する通気口の概略上面図である。
【
図18d】一実施形態による、フィルタを有する通気口の概略上面図である。
【
図18e】一実施形態による、バッファボリュームを有する通気口の概略上面図である。
【
図19a】一実施形態による、非作動状態における事前撓みダイヤフラムを有するマイクロポンプの概略側面図である。
【
図19b】一実施形態による、作動状態における事前撓みダイヤフラムを有するマイクロポンプの概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下では、本発明の種々の実施形態及び態様について説明する。また、さらなる実施形態が添付の特許請求の範囲によって定義される。
特許請求の範囲によって定義される任意の実施形態は、本明細書に記載の詳細、特徴、及び機能のいずれかによって補足され得ることに留意されたい。また、本明細書に記載の実施形態は個別に使用され、かつ、特許請求の範囲に含まれる詳細、特徴、及び機能のいずれかによって任意選択的に補足され得る。
また、本明細書に記載の個々の態様は、個別に又は組み合わせて使用され得ることに留意されたい。したがって、前記個々の態様のうちの別のものに詳細を追加することなく、前記態様の各々に詳細が追加され得る。本開示は、静電マイクロポンプで使用可能な特徴を明示的又は暗黙的に記載することにも留意されたい。したがって、本明細書に記載のいずれの特徴も、静電マイクロポンプの文脈で使用され得る。さらに、方法に関連して本明細書で開示される特徴及び機能も、そのような機能を実行するように構成された装置で使用され得る。
さらに、装置に関して本明細書に開示された任意の特徴及び機能は、対応する方法で使用され得る。言い換えれば、本明細書に開示された方法は、装置に関して説明された特徴及び機能のいずれかによって補足され得る。
本発明は、以下に記載される詳細な説明及び本発明の実施形態の添付の図面からより完全に理解されるが、これらは本発明を記載される特定の実施形態に限定するものと解釈されるべきではなく、説明及び理解のためのものにすぎない。
【0021】
図1は、一実施形態による、3つの層101、102、103を備える静電マイクロポンプ100の概略側面図を示す。層101、102、103を1つの層として説明しているが、それらのうちの1つ又は複数が、同じ又は異なる材料の複数の積層によって形成されてもよい。層101、層102及び層103は、例えばシリコン材料などの半導体材料を含んでもよい。層101、層102及び層103は、任意の適切な厚さを含んでもよく、好ましい値は、すなわち約±50%、±30又は±20%の許容範囲内の層厚で、例えば層101は450μm、層102は30~90μm、層103は10~120μmであってもよい。
層101の主面は、入口逆止弁160及び出口逆止弁170を備えるバルブ装置120を形成するために層102の主面に取り付けられる。入口逆止弁160及び出口逆止弁170は、バルブ装置120に対して面内に配置される。入口逆止弁160及び出口逆止弁170は同様の構造を有してもよく、開状態において流体が反対方向に流れることを可能にする。
【0022】
層101及び102は、互いに取り付けられたときに弁160及び170を形成する特定の構造を備えてもよい。例えば、層101及び102によって形成された構造は、開口並びに入口トンネル130及び/又は出口トンネル150などの流体を導く流路などのうちの1つ又は複数を備えてもよい。例えば、例えば弁フラップ140などの部品のいくつかは、流体の流れ及び/又は流体の圧力に応答して撓み可能であってもよい。例えば、デッドボリューム106などの一部の部分は、撓み可能部品の撓みを可能にする空の空間によって形成されてもよい。
バルブ装置120の主面は、ダイヤフラム装置180の第1の主面185に取り付けられる。
【0023】
ダイヤフラム装置180は、ダイヤフラム装置180の第1の主面185上の絶縁層104、例えば二酸化ケイ素層又は窒化ケイ素層によってバルブ装置120から絶縁され得る層103を備える。凹部195は、
図14に関連して説明されるように、例えばダイシングを容易にするのに使用される絶縁間隙の跡であってもよい。
バルブ装置120とダイヤフラム装置180の両方は、電極構造体を備えてもよい。ダイヤフラム装置180は第1の電極構造体109を備え、バルブ装置120は第2の電極構造体108を備え、第1の電極構造体は絶縁層104によって第2の電極構造体から絶縁されている。第1の電極構造体109及び第2の電極構造体108は、ダイヤフラム装置180を撓ませるように構成された静電駆動部を形成する。電極構造体は、
図1に示すように別個の層であってもよいが、例えば、例えば金属材料若しくはドープされた半導体材料又はこれらの組合せなどの導電性材料を含むように少なくとも1つの層の材料を提供することによって実施されてもよい。
【0024】
入口弁160及び出口弁170を備えるマイクロポンプ100の中央領域190において、層103又はダイヤフラム装置180の第1の主面185は、階段状可変高さ形状(プロファイル)107と、1つ又は複数のスティクション防止バンプ105とを備える。ダイヤフラム装置180の第1の主面185上の可変高さ形状107によって少なくとも部分的に得られるダイヤフラム装置180とバルブ装置120の層との間の距離は、ポンプチャンバ110と呼ばれ得るボリュームを生成し得る。代替的又は追加的に、スティクション防止バンプ105は、ポンプチャンバ110の反対側、すなわちバルブ装置120にも配置されてもよい。
【0025】
静電マイクロポンプ100は、第1の電極構造体109と第2の電極構造体108との間に電圧を印加することにより作動するように構成される。電極構造体間の電圧は、ポンプチャンバ110を圧縮する力を生成する。力は、第1の電極構造体109と第2の電極構造体108との間の距離に二次的に依存する。
階段状可変高さ形状107は、特に事前撓みなしの膜構造を実施するときに一定の距離の高さ形状でポンプチャンバを圧縮するのに必要な電圧及び/又はエネルギー使用量と比較して、ポンプチャンバ110を圧縮するのに必要な電圧及び/又はエネルギー使用量を低減し得る。電極構造体108、109間の電圧が高く、引き込み電圧よりも高い場合、ダイヤフラム装置180がバルブ装置120に接触し得るように、第1の電極構造体109は第2の電極構造体108に引き付けられる。ダイヤフラム装置180のバルブ装置120への固着(スティッキング)を防止するために、少なくとも1つのスティクション防止バンプ105は、第1の電極構造体109と第2の電極構造体108との間に配置される。例えば、
図1のスティクション防止バンプ105は、入口逆止弁及び出口逆止弁を含む領域190内のダイヤフラム装置180上に配置される。しかしながら、1つ又は複数のスティクション防止バンプ105が、代替又は追加として、例えば層102及びバルブ装置120のそれぞれにおいて可変高さ形状に対向するように配置されてもよい。
【0026】
マイクロポンプ100の静電駆動部を作動させることによって、ダイヤフラム装置180はポンプチャンバ110を圧縮しながらバルブ装置120に向かって引き付けられる。ポンプチャンバ110の圧縮により、ポンプチャンバ110内の圧力が上昇し、出口逆止弁170の弁フラップ140が開き、流体がポンプチャンバ110から出口逆止弁170を通って環境に流出できるようになる。
第1の電極構造体109と第2の電極構造体108との間の電圧を低下させると、ダイヤフラム装置180は、ポンプチャンバ110を膨張させながら、その初期位置又はゼロ位置に向かって、又はその中に戻るように移動し得る。ポンプチャンバ110の膨張により、入口逆止弁160の弁フラップ140が開き、流体が環境から入口逆止弁160を通ってポンプチャンバ110に流入できるようになる。同時に、弁フラップ140によって出口トンネル150を通る流体の流れを遮断することによって、逆止弁170は出口トンネルを通る流体の流れを遮断し得る。
【0027】
図1の静電マイクロポンプ100は、従来技術のマイクロポンプと比較していくつかの利点を有する。ポンプチャンバ110の階段状可変高さ形状107は、従来技術のマイクロポンプの供給電圧と比較して、低い供給電圧で動作し得る。この低い供給電圧は、依然として高電圧範囲内にあるとはいえ、従来技術のマイクロポンプの供給電圧と比較すれば低いと考えられる。この低い供給電圧により、静電マイクロポンプ100のエネルギー使用量が低減し、小型で確立された高電圧回路の使用が可能となる。
さらなる利点として、静電マイクロポンプ100を動作させることはある程度の背圧を克服し得る。背圧は、ダイヤフラム装置180の動きを妨げる。供給電圧の増加により、背圧に打ち勝つ静電圧が増加する。
空気などの非導電性流体のための静電マイクロポンプ100は圧縮比が高く、
図2のマイクロポンプ200などの導電性流体のための静電マイクロポンプよりも圧縮比が高くなり得るが、これはダイヤフラム装置
180の撓みがポンプチャンバ110を向いており、追加のデッドボリューム106を減少させ得るためである。
【0028】
図2は、一実施形態による、4つの層201~204を備える静電マイクロポンプ200の概略側面図を示す。層201~204を1つの層として説明しているが、それらのうちの1つ又は複数が、同じ又は異なる材料の複数の積層によって形成されてもよい。層201~204は、例えばシリコン材料などの半導体材料を含んでもよい。層201~204は、それぞれ例えば450μm、30~90μm、10~120μm及び450μmの厚さであり、場合によっては例えば±50%、±30又は±20%の許容範囲内であってもよい。
領域295は、例えば
図1との関連で説明したように、ダイシングを容易にするために使用又は生成されたトレンチ構造の跡であってもよい。
層201の主面は、
図1のバルブ装置120と同様のバルブ装置220を形成するために層202の主面に取り付けられる。バルブ装置220は、層装置に配置された入口逆止弁260及び出口逆止弁270を備え、入口逆止弁260及び出口逆止弁270の入口トンネルは、
図1の入口逆止弁160及び出口逆止弁170と同様に、反対方向を向いている。
【0029】
バルブ装置220の主面は、層203及び第1の電極構造体210を備えるダイヤフラム装置230の第1の面285に取り付けられる。バルブ装置220及びダイヤフラム装置230は、入口逆止弁260及び出口逆止弁270を備えるマイクロポンプ200の少なくとも中央領域290にポンプチャンバ207を形成するように取り付けられる。
ダイヤフラム装置230は、バルブ装置220とステータ構造体240との間に配置される。ステータ構造体は、層204と、第2の電極構造体211とを備える。層204の第1の主面245は、絶縁層205によって絶縁されている。絶縁された層204は、ダイヤフラム装置230の第2の主面288に取り付けられている。
層204の第1の面245は、入口逆止弁260、出口逆止弁270、及び階段状可変高さ形状209を少なくとも部分的に含む、マイクロポンプ200の中央領域290において、階段状可変高さ形状209と、少なくとも1つのスティクション防止バンプ208とを含む。ダイヤフラム装置230の第2の主面288及びステータ構造体240の第1の主面245は、階段状可変高さ形状209を含む領域290において電極チャンバ212を形成する。
【0030】
第1の電極構造体210及び第2の電極構造体211は、ダイヤフラム装置230を撓ませるために静電駆動部を形成する。電極構造体は、
図2に示すように別個の層であってもよいが、例えば、例えば金属材料若しくはドープされた半導体材料又はこれらの組合せなどの導電性材料を含むように少なくとも1つの層の材料を提供することによって実施されてもよい。
作動時、第1の電極構造体210と第2の電極構造体211との間に電圧が印加されると、ダイヤフラム装置230がステータ構造体240に向かって撓む。ステータ構造体240はダイヤフラム装置230よりも剛性が高いため、ダイヤフラム装置230が例えばステータ構造体240に向かって撓む一方でステータ構造体は撓まないと考えることができる。マイクロポンプ200が作動されると、ダイヤフラム装置230は電極チャンバ212を圧縮し、ポンプチャンバ207を膨張させる。ポンプチャンバ207の膨張により入口逆止弁260が開き、流体が環境から入口逆止弁260を通って流入できるようになる。
【0031】
第1の電極構造体210と第2の電極構造体211との間の電圧を低下させると、ダイヤフラム装置230はその初期位置又はゼロ位置に向かって、又はそこに戻るように撓み、電極チャンバ212が膨張しポンプチャンバ207が圧縮され得る。ポンプチャンバ207の圧縮により、ポンプチャンバ207内の圧力が上昇し、出口逆止弁270が開き、流体がポンプチャンバ207から出口逆止弁270を通って環境に流出できるようになる。同時に、弁フラップで入口トンネルを遮断することによって、入口逆止弁260は、入口トンネルを通る流体の流れを遮断し得る。
図1の高さ形状107と同様の階段状可変高さ形状209は、第1の電極構造体210と第2の電極構造体211との間の距離を減少させ、一定の距離の高さ形状を有するポンプチャンバを備えるマイクロポンプと比較してダイヤフラム装置230を撓ませるのに必要な電圧及び/又はエネルギー使用量を低減させる。
ダイヤフラム装置230のステータ構造体240への固着は、
図1のスティクション防止バンプ105と同様の少なくとも1つのスティクション防止バンプ208によって防止される。スティクション防止バンプ又は追加のスティクション防止バンプ208は、層204の可変高さ形状に対向して、ダイヤフラム装置230の第2の面288に配置されてもよい。
【0032】
非導電性流体を圧送するように構成された
図1のマイクロポンプ100とは異なり、静電マイクロポンプ200は、流体が電極構造体に接触しないため、導電性流体と非導電性流体の両方を圧送するように構成される。
図1のポンプチャンバ110は、第1の電極構造体109と第2の電極構造体108とによって形成される。ポンプチャンバ110内の導電性流体は、
図1の第1の電極構造体109と第2の電極構造体108との間に電気的貫通を引き起こし得る。これに対して、
図2では、静電マイクロポンプ200が導電性流体及び非導電性流体の両方を圧送するように構成される。第1の電極構造体210及び第2の電極構造体211は電極チャンバ212を形成し、流体はポンプチャンバ207内を流れる。ポンプチャンバ207と電極チャンバ212との間には流体接続がないため、静電マイクロポンプ200は導電性流体も圧送することができる。
【0033】
さらなる実施形態で説明するように、必要な供給電圧及び/又はエネルギー使用量は、電極チャンバ212を環境と流体接続して電極チャンバ212内の圧力補償を可能にする通気口によってさらに低減され得る。
静電マイクロポンプは、気泡耐性がある場合は合理的になり得るし、ウェハレベルで完全に製造することができ、短絡のリスクなしに電気的に接続することができる。ダイヤフラムを備える静電マイクロポンプは、圧電駆動マイクロポンプと同様に実際の使用に適しているが、圧電マイクロポンプと比較していくつかの追加の利点を持つ。
例えば、静電ダイヤフラムを有する静電マイクロポンプは、エネルギー消費が低い。ダイヤフラムを有する静電駆動マイクロポンプの電荷容量(capacity to be charged)は、圧電駆動マイクロポンプの電荷容量よりも約1オーダー小さくてもよい。
【0034】
同等の層材料で組み立てられ、圧電セラミック駆動部によって駆動されるマイクロポンプと比較すると、実施形態は、静電駆動部がシリコン駆動部などの半導体駆動部の場合は温度膨張を1つだけ有するが、圧電セラミック駆動装置の場合は追加の温度膨張を有さないため、温度安定性がより高いポンプが可能となる。
本開示の主題は、静電駆動部の電界力が温度によって変化しないため、圧電セラミック駆動部と比較して温度への付随性がより高いことである。対照的に、圧電セラミックの分極は、キュリー温度に達するとなくなる。
本開示の主題は、静電駆動部が、欠陥のある多結晶圧電セラミック及び接着剤とは対照的に例えば理想的には弾性単結晶シリコンを含むため、機械的抵抗がより高いことである。
圧電セラミック駆動部によって駆動されるマイクロポンプと比較すると、本出願の主題は、静電駆動部がフロントエンド製造プラントのMEMS標準プロセスによって製造することが可能なため、製造が容易なことである。
本出願の主題は、静電駆動部及び電極表面の物理的原理が独立して、有利には短い距離でスケーリングできるため、小型化が可能なことである。
本出願の主題は、静電駆動部の製造のプロセスステップがほとんどなくかつ/又はサプライチェーン参加者がほとんどいないため、サプライチェーンコストが低く、経済的なことである。
図1及び
図2のマイクロポンプの実施形態を紹介した後、以下の図を参照して、マイクロポンプの実施形態の製造ステップを説明する。
【0035】
図3は、
図2のマイクロポンプ200などの静電マイクロポンプを製造するための一実施形態の第1のステップによって得られた第1の層及び第2の層の概略側面図を示す。第1のステップは、第1の層301及び第2の層302を提供することである。第1のステップ、第2のステップなどの用語は、必ずしも最初のステップを示すものではなく、ステップを区別するために使用される。同様に、このような表現によってステップの順序は必ずしも限定されない。
第1の層301は、
図2のダイヤフラム装置230と同様のダイヤフラム装置になり、第2の層302は、
図2のステータ構造体240と同様のステータ構造体になり得る。
例えば、両方の層は、理想的には研磨された単結晶シリコンで作られたウェハの一部であってもよく、Xは所与の層の研磨された表面を表す。シリコンウェハと同様に、両方のウェハは、表303に示すようにP+又はN+ドープされてもよい。したがって、両方の層がN+又はP+ドープされてもよく、又は第1の層がN+ドープ、第2の層がP+ドープされてもよい。
両方のウェハは、例えば、例えば750μmの厚さ及び例えば0.001~0.1オームセンチメートルの抵抗率を有する片面研磨(SSP)8インチの高濃度にドープされたウェハであってもよい。エッチングプロセスなどのさらなるプロセスのための調整マーキング又は接合マーキングなどのマーキングが、ウェハの研磨面に適用されてもよい。
【0036】
図4は、
図2のマイクロポンプ200などの静電マイクロポンプを製造するための一実施形態による、第2の層302を最初にエッチングすることによって得られ得る第2の層302の概略側面図を示す。
図4は、研磨された主面において第2の層302をエッチングするのに使用されるように構成されたエッチングマスクの上面図をさらに示す。
第2の層は、後にダイシングされるマイクロポンプの中心領域となることが意図されたウェハの領域405において、例えば、円形のポンプチャンバ又はその中の段差を生成するために円形形状を有し得るマスク420を使用して、例えば約3μmの深さでエッチングされる。エッチングの深さ及び/又はマスクの形状は、ウェハ属性及び/又はポンプ要件などによって異なり得る。エッチングされた領域405は、
図2の階段状可変高さ形状209と同様の階段状可変高さ形状の第1のステップとなる。
【0037】
図5は、
図2のマイクロポンプ200などの静電マイクロポンプを製造するための一実施形態による、第2の層302を2回目にエッチングすることによって得られ得る第2の層302の概略側面図を示す。
図5は、第2の層302を2回目にエッチングするのに使用されるように構成された様々なエッチングマスク510、520、530、540の上面図をさらに示す。
図4の第2の層302は、後にダイシングされるマイクロポンプの中心領域となることが意図されたウェハの領域505において、例えば、
図4のマスク420の形状と同様の形状、例えば円形形状を有するマスク510を使用して、研磨された主面上で、約3μmの深さで再びエッチングされる。エッチングされた領域505及び/又はマスク510は、
図4の中央領域405及び/又はマスク420とは直径が異なる。エッチングされた領域505は、エッチングされた領域405と共に、
図2の階段状可変高さ形状209と同様の階段状可変高さ形状560を形成する。
【0038】
あるいは、第2の層302は、マスク520、マスク530又はマスク540によって研磨された主面上でエッチングされてもよい。マスク520、530及び540は、通気口550を有する円形チャンバをエッチング又は形成するように構成されている点で同様である。通気口550は、電極チャンバを静電マイクロポンプの環境と接続するように構成される。
エッチングマスク520及び530は、通気口の異なる角度の例を示している。エッチングマスク540は、1よりも多い例えば4つのマイクロポンプを形成するために、それぞれの通気口550を有する、1よりも多い例えば4つの電極チャンバをエッチングするように構成される。エッチングプロセスは、SPTS非スイッチングプロセス管理を使用してもよい。エッチングされるチャンバの深さは、ウェハごとに異なり得る。
【0039】
図6は、
図2の静電マイクロポンプ200などの静電マイクロポンプを製造するための一実施形態による、第1の層301及び第2の層302を酸化することによって得られ得る絶縁された第1の層301及び絶縁された第2の層302の概略側面図を示す。
第1の層301及びエッチングされた第2の層302の両方の層が酸化され、それらの両方の主面に酸化物層が形成される。酸化物層の目標厚さは例えば400nmであり、これにより2つの電極構造体間の絶縁層として作用し、例えば200V未満の電圧値で電極構造体間の電気的貫通を防止する。酸化プロセスにより、
図2の絶縁酸化物層205と同様の絶縁酸化物層610が層302及び301の主面の両側に形成される。
【0040】
図7は、
図2の静電マイクロポンプ200などの静電マイクロポンプを製造するための一実施形態による、エッチングされた第2の層302の可変高さ形状560上で絶縁酸化物層610にスティクション防止バンプ708をエッチングすることによって得られ得るスティクション防止バンプ708を有する絶縁された第2の層302の概略側面図を示す。
図7は、スティクション防止バンプ708をエッチングするのに使用されるように構成されたエッチングマスク710の上面図をさらに示す。スティクション防止バンプ708をエッチングするのに使用されるエッチングマスク710は、ドットパターン730を有する円形形状720を備える。
スティクション防止バンプ708は、KOHを使用するドライエッチングプロセス又はウェットエッチングプロセスによって、非常に小さい目標深さ(例えば20nm~200nmの間。スティクション防止
バンプ708の目標直径は、例えば20μm)でエッチングされてもよい。スティクション防止バンプ708は、
図2のスティクション防止バンプ208と同様である。
【0041】
図8は、
図2のマイクロポンプ200などのマイクロポンプを製造するための一実施形態による、絶縁された第1の層301のフレーム領域830をエッチング除去したときに得られ得る絶縁された第1の層301の概略側面図を示す。例えば、フレーム形状820を有するエッチングマスク810を使用することによって、第1の層301の研磨された表面上の例えば36μmの深さのフレーム領域830がエッチング除去される。
第1の層301のフレーム領域830をエッチング除去又は薄くすることにより、第1の層をダイシングプロセスに向けて準備する。例えば、ダイシング・バイ・シンニング・プロセスのドライエッチングプロセスにより、36μm程度の深さをエッチングしてもよい。
さらに、フレーム領域830は、隣接するダイヤフラム装置間に絶縁間隙を提供し、製造プロセスにおいてマイクロポンプをウェハレベルで試験できるようにする。
【0042】
図9a及び
図9bは、
図2のマイクロポンプ200などのマイクロポンプを製造するための一実施形態による、絶縁された第1の層301を絶縁された第2の層302に取り付けたときに得られ得るアクチュエータ装置の概略側面図を示す。
図9aは、チップレベル910のアクチュエータ装置の概略側面図を示し、
図9bは、ウェハレベル940の複数のアクチュエータ装置の概略側面図を示す。
第2の層302の階段状高さ形状560及びスティクション防止バンプ708を有する主表面は、第1の層301のエッチングされた主表面に取り付けられる。第1及び第2の層301、302は、例えば1050℃のウェハ接合を例えば4時間行うことにより取り付けられる。第1及び第2の層301、302は、
図2の電極チャンバ212と同様の電極チャンバ930を形成する。
第1の層301及び第2の層302は、アクチュエータ装置920を形成するために互いに接合される。2つの層301、302は、ウェハレベル940で互いに接合され、個々のチップ910はまだダイシングされていない。
アクチュエータ装置920は、その主面の両方に絶縁酸化物層610を備えてもよい。
【0043】
図10は、
図2のマイクロポンプ200などのマイクロポンプを製造するための一実施形態による、アクチュエータ装置
920の主面から絶縁層610を除去することによって得られ得るアクチュエータ装置の概略側面図を示す。
酸化物層の除去は、HF-Dipなどの湿式化学プロセスによって行われてもよい。アクチュエータ装置920の主面の絶縁層を除去することにより、第1の層及び/又は第2の層301、302との電気的接触を形成することができる。
【0044】
図11は、
図2のマイクロポンプ200などのマイクロポンプを製造するための一実施形態による、アクチュエータ装置920の第1の層301を薄くしたときに得られ得るアクチュエータ装置
920の概略側面図を示す。第1の層301からダイヤフラムを形成するために、すなわち、層301を撓み可能にし、かつ、撓んだときに破損しないように機械的に十分に安定させるために、第1の層301の厚さを減少させる。例えば、第1の層301は、例えば750μmから例えば30μmまで薄くしてもよい。
例えば、薄くするプロセスは、第1の層301を750μmから100μmまで研削し、次いで化学機械研磨(CMP)を適用して例えば50μmの厚さに到達させることによって行われてもよい。残りの例えば20μmは、ドライエッチングによってエッチング除去され得る。第1の層301は、厚さが
図2のダイヤフラム装置230と同じ範囲にあるダイヤフラムとなる。
第1の層301から形成されたダイヤフラムが非導電性ダイヤフラムである場合、ダイヤフラム上への電極構造体の堆積が推奨される。
【0045】
図12は、
図2のマイクロポンプ200などのマイクロポンプを製造するための一実施形態による、アクチュエータ装置920の第1の層301を有する主面上に導電性材料1210を堆積させることによって得られ得るアクチュエータ装置920の概略側面図を示す。
堆積は、例えば、アクチュエータ装置920の第1の層301から形成されたダイヤフラムを有する表面上に、アルミニウムなどの導電性材料1210をスパッタリングすることによって行ってもよい。導電性材料1210は、
図2のダイヤフラム装置230の第2の電極構造体210として作用してもよい。
スパッタリングプロセスは、第1の層301から形成されたダイヤフラムの真上だけではなく、アクチュエータ装置920の表面全体に導電性材料1210を堆積させ得るため、
図13に示すように、ダイヤフラム間の導電性材料1210を除去することが好ましい。
【0046】
図13は、
図2のマイクロポンプ200などのマイクロポンプを製造するための一実施形態による、ダイヤフラムを含まないマイクロポンプの周辺領域から導電性材料を除去することによって得ることができるアクチュエータ装置の概略側面図を示す。
後にダイシングされるマイクロポンプの周辺領域、すなわち第1の層301から形成されたダイヤフラムの間から導電性材料1210を除去することは、隣接するダイヤフラムからダイヤフラムを絶縁することである。導電性材料の除去は、スプレーコーティング及び湿式化学エッチングによって行ってもよい。
第1の層301及び導電層1210は、層203及び第2の電極構造体210によって形成された
図2のダイヤフラム装置230と同様のダイヤフラム装置1310を形成する。
ダイヤフラム装置1310は隣接するダイヤフラム装置1310から絶縁されてもよく、これにより、
図14に示すようにウェハ試験装置1400におけるウェハレベルでの試験が可能となる。例えば、跡195及び/又は295となり得るトレンチを形成してもよい。
【0047】
図14は、アクチュエータ装置920をウェハレベルで試験するように構成された、ウェハ試験装置1400の概略側面図を示す。試験装置1400は、試験中にアクチュエータ装置920を保持するように構成されたチャック1450を備える。試験装置1400は、アクチュエータ装置920を試験するように構成されたプローブ1420又はウェハプローブをさらに備える。
試験は、アクチュエータ装置920の第2の層302をチャック1450に取り付けることを含み、アクチュエータ装置920は、第2の層302のウェハ及び複数のダイヤフラム装置1310を備える。
試験は、プローブ1420をダイヤフラム装置1310上に1つずつ配置することと、アクチュエータ装置920又はダイヤフラム装置1310に試験電圧を印加することによってアクチュエータ装置920を試験又はプロービングすることとをさらに含む。
ダイヤフラム装置1310は、ダイヤフラム装置1310を含まず、後にダイシングされるマイクロポンプの周辺領域で絶縁間隙1480によって隣接するダイヤフラム装置1310から絶縁される。
【0048】
側壁絶縁部又は絶縁間隙1480は、本発明のマイクロポンプの本質的な特徴と考えることができる。側壁絶縁部は、2つの電極表面の間の絶縁部及び/又は少なくとも1つの電極表面の周りのフレームであり、分離部のエッチング及び酸化などの後続の層変換によって、並びに/又はPECVD、PVDなどの物理的及び/若しくは化学的プロセスを使用して絶縁層を堆積することによって生成される。
アクチュエータ又はダイヤフラム装置1310の絶縁及び分離は、製造プロセスを高速化するという利点を有し、ウェハレベルベースの測定による試験を可能にする。
静電マイクロポンプは、隣接するダイヤフラム装置1310から絶縁を行わない既知のマイクロポンプとは異なる。マイクロポンプ100などの本実施形態では、隣接するダイヤフラム装置1310からの絶縁が実施される。隣接するダイヤフラム装置1310からの絶縁は、
図2のマイクロポンプ200などの導電性液体用のマイクロポンプの製造において、わずかに変更された形態で実施することもできる。
アクチュエータ装置920の上述の製造は、アクチュエータ装置920のいわゆる短ループ変形例を生成するものである。あるいは、アクチュエータ装置920の全ループ変形例もある。全ループ変形例の製造の一部を
図15a~
図15cに示す。
【0049】
図15aは、階段状高さ形状560とスティクション防止バンプ708とを有する第2の層302の主面を第1の層301に取り付けることによって形成されたアクチュエータ装置920の概略側面図を示す。第2の層302は、
図15aに示すように既にダイシングされていてもよいし、
図15bに示すように、薄くしたフレーム領域によってダイシングに向けて準備されていてもよい。
【0050】
図15bは、アクチュエータ装置920の全ループ変形例の概略側面図を示し、第1の層301は全領域で薄くされ、階段状高さ形状560の領域1510でさらに薄くされている。第1の層301は導電性材料を含んでもよい。エッチング1510は、電圧が印加されずダイヤフラムが圧力平衡される場合のポンプチャンバ高さを画定する。マイクロポンプの良好な圧縮比を達成し、ポンプが気泡耐性を持てるようにするために、このポンプチャンバ高さは非常に小さく選択されるべきである。この高さ(1510の深さ)は、静電マイクロポンプの重要な設計パラメータと考えることができる。高い気泡耐性又は高いガス背圧が要求される場合、このポンプチャンバ高さは非常に小さく(ドライエッチング又はKOHエッチングなどのエッチング技術に応じて)選択することができる。例えば、50ナノメートル~1μmである。
ポンプチャンバの高さが低いときの欠点は、ポンプチャンバ内の流体抵抗が高くなることである。そのために、流体(液体又は気体)に高い流量が要求される場合、ポンプチャンバ高さ1510はアクチュエータストロークに応じて1μmから最大20μmまで選択することができる。ポンプチャンバが高いほど流体抵抗は小さくなり、ポンプ速度は高くなるが、圧縮比と気泡耐性は低下する。
【0051】
図15cはマイクロポンプ1570の概略側面図を示す。
図2のマイクロポンプ200と同様のマイクロポンプ1570を製造することは、バルブ装置1550をアクチュエータ装置920に取り付けることによって得られる。マイクロポンプ1570のポンプチャンバ1580は、二重エッチングされた領域1510及びバルブ装置1550によって形成される。
短ループ変形例と全ループ変形例との間のいくつかの違いを認識することができる。短ループ変形例では、層301から生成されたダイヤフラムが隣接するダイヤフラムからダイシングされ、かつ/又は絶縁されるが、全ループ変形例では、ステータ構造体が隣接するステータ構造体からダイシングされ、かつ/又は絶縁される。
さらに、全ループ変形例では、ポンプチャンバ1580は第1の層301にエッチングされるが、ショートループ変形例ではそうする必要はなく、ポンプチャンバはダイヤフラム装置及びバルブ装置によって形成される。
さらに、全ループ変形例では、アクチュエータ装置920をバルブ装置に取り付け、例えば接合するが、短ループ変形例ではそうする必要はない。
【0052】
図16は、静電駆動マイクロポンプ設計のシミュレートされた可能な実装形態の表を示す。例示的なシミュレートされた実施形態は本発明を限定するものではなく、静電駆動マイクロポンプは膨大な範囲のチップサイズで製造することができる。
図16は、10×10mm
2から1×1mm
2までの異なるチップサイズのシミュレーション結果を示す。ポンプチャンバ及び作動チャンバは円形であり、正方形のチップ縁部までの最小距離は100μmである。結果は二次的なチップサイズに関連して説明されているが、チップはその側面でアスペクト比が異なっていてもよく、例えば1:1とは異なり、例えば長方形形状であってもよい。あるいは、楕円形若しくは円形又はそれらとは異なる任意の他の形状が実施されてもよい。
静電駆動マイクロポンプ設計の重要な属性の可能な値を以下に列挙する。
【0053】
バルブユニットのデッドボリュームを計算するために、(KOHエッチングされた)確立された圧電マイクロポンプのデータを使用した。3×3mm2未満のチップサイズについては、デッドボリュームが小さいドライエッチングされた弁を想定した。
このシミュレーションでは、設計の直径及び厚さは、約30~53kPaのブロッキング圧力を有するように適合された。スイッチング電圧及びブロッキング圧力は、Fraunhofer EMFTで既に実現されている基準設計と比較された。作動間隙チャンバの高さはすべての設計について5μmが選択されており、スイッチング電圧及び行程容積を増減させることでより高い又はより低い値に変動させることができる。
シミュレーションの1つの関連する結果は、圧縮比及び作動ダイヤフラムの剛性によってポンプが達成できる最小及び最大空気圧である。この理論は、静電駆動ポンプのこのシミュレーションにおいて適合されている。バルブの毛細管圧を考慮すると、気泡耐性マイクロポンプは、10kPa近く又は10kPaを超える空気背圧を有するべきであると推定することができる。これにより、上記の表によれば、1.5×1.5mm2までのチップサイズを有し、液体及び気体を圧送するだけでなく気泡耐性もある静電作動マイクロポンプを実現できると結論付けることができる。最適化された作動チャンバ(シミュレーションではまだ実装されていない)を用いれば、この目標は1×1mm2の設計でも達成され得る。
【0054】
チップサイズが2×2mm2以下の静電マイクロポンプは、例えば使い捨てのラボ・オン・チップシステム又はスマート電子薬物ピルに使用できる低コストで持続可能かつ使い捨ての装置に向けた大きなステップである。
・低コスト:8インチウェハでは8000個近くの2×2mm2ポンプが実現でき、これにより、例えば週当たり100個を超えるウェハのスタートといった非常に大量での製造コストが10セントを下回り、安価で有利となる。また、圧電素子が使用されないので、このポンプにはピック&プレースや接着が必要でなくなる。
・持続可能な使い捨て装置:シリコン層のスタックのみからなるシリコンマイクロポンプは、圧電PZTの鉛のような有毒物質を全く含まない。シリコン及び酸化ケイ素は、砂と同じ材料と、その上の金又はアルミニウムのような非常に薄い金属層とからなる。これにより、この装置を廃棄物にすることは問題なく、完全に持続可能な構成要素となる。
【0055】
図17は、通気口1720を有する、
図2のマイクロポンプ200と同様のマイクロポンプ1700の概略側面図を示す。マイクロポンプは、バルブ装置1760と、ダイヤフラム装置1710と、ステータ構造体1740とを備える。バルブ装置1760の主面はダイヤフラム装置1710の主面に取り付けられ、ポンプチャンバ1730を形成する。ポンプチャンバに対向するダイヤフラム装置の主面はステータ構造体1740に取り付けられる。ステータ構造体は、階段状可変高さ形状1780と、通気口1720とを備える。ダイヤフラム装置1710は、バルブ装置1760とステータ構造体1740との間にある。ダイヤフラム装置は、ステータ構造体1740と共に電極チャンバ1750を形成する。ステータ構造体1740の通気口1720は、電極チャンバ1750を環境と接続する。
【0056】
通気口1720の利点は、電極チャンバ1750内の圧力が常に周囲圧力であること、すなわちダイヤフラムのゼロ位置が例えば大気圧の変動に依存しないことである。
通気口のさらなる利点は平坦なダイヤフラムである。仮にポンプチャンバの高さが0であれば、最大圧縮比が達成される。しかしながら特定のポンプチャンバ高さが必要であり、そうでなければ、ポンプチャンバ内の流れ抵抗が非常に高くなってしまう。
通気口の利点は、ダイヤフラムの圧力が常に平衡であり、大気圧がダイヤフラムのゼロ位置を変化させず、平坦なダイヤフラムによって高い圧縮比を達成でき、ダイヤフラムが移動するときに電極チャンバ内に背圧が発生しないという事実を含む。
しかしながら、通気口の使用は、製造、加工、ソーイング中、及び/又は動作による汚染のリスクにつながり得る。汚染は、粒子輸送又はベローズ粒子輸送の形態で、又は凝縮した水分の形態で現れ得る。
図18は、通気口の欠点を回避するために適用される設計措置を示す。
図18で適用される設計措置は、個別に適用してもよいし、組み合わせてもよい。
【0057】
図18aは、毛細管停止部を有する通気口の概略上面図を示す。電極チャンバ1810は通気口1890を介して環境と接続され、通気口はバッファボリューム1860と組み合わせた毛細管停止部1820を備える。
図18b及び
図18cの措置は、著しい空気流が通気口を流れることができず、ダイヤフラムが移動するストローク時間中に粒子を吸い込めないように、通気口1890の流れ抵抗を増加させている。ストローク時間は、ポンプ設計及び媒体の粘度に応じて1ms~100msの間であってもよい。
図18bは、断面が縮小された通気口の概略上面図を示す。主に通気口の断面1840を縮小することによって流れ抵抗を増加させている。
図18cは、蛇行部を有する通気口の概略上面図を示す。通気距離を増加させ、蛇行部1830を適用することによって流れ抵抗を増加させている。
図18dは、フィルタを有する通気口1890の概略上面図を示す。横方向フィルタ1850が通気口1890に設けられており、粒子に対する最も簡単な措置の1つとなり得る。
図18eは、行程容積よりもかなり大きいバッファボリューム1860を有し、例えば4つのバッファボリュームを有する通気口又は電極チャンバ1810の概略上面図を示す。この場合、環境との直接的な体積交換はなく、周囲空気がバッファボリューム1860に入るだけである。バッファボリュームは、対電極又は非移動電極構造体における深さのエッチングによって実現することができる。
【0058】
図18で説明した構造を組み合わせることも可能である。これらの構造はまた、マイクロポンプの層に垂直に面する通気口をドライエッチングすることによって横方向に実現されてもよい。層に垂直な孔は箔で覆うことができるが、側孔はソーイング、ダイシングプロセスによって汚染される可能性がある。
例えば、1μmの直径を有する通気口は、間に広がる毛細管停止部を有し、おそらく汚染のリスクを大幅に低減する。同時に、例えば、直径1μmの狭い穴は、1μmを超える粒子が電極チャンバに入るのを防止する。平坦なダイヤフラム、高い圧縮比、及び大気圧補正の選択などの通気口の主な利点が得られる。
さらに、ポンピング周波数が十分に高い場合、高速移動中に電極チャンバ内に蓄積する過圧を使用して、マイクロポンプの背圧能力を高めることができる。
【0059】
図19は、
図19aに示す非作動状態、及び
図19bに示す作動状態における、事前撓みダイヤフラム1910を有する
図2のマイクロポンプと同様のマイクロポンプの概略側面図を示す。
図19aにおいて、事前撓みダイヤフラム1910とステータ構造体1920との間の距離は、電極チャンバの中央領域において最小である。場合によっては、事前撓みダイヤフラム1910はステータ構造体1920に接触してもよい。ステータ構造体1920は通気口を備えていない。ダイヤフラム1910の撓みは、ウェハ接合中の負圧によってもたらされる。ダイヤフラム1910のプレート剛性と共にウェハ接合中の真空を使用して、ダイヤフラム1910の撓み率を規定の方法で調整することができる。電極チャンバの圧力と大気圧との間の圧力比の賢明な選択、並びにダイヤフラムの表面及び厚さの選択によって事前撓みが発生し得るが、接触はダイヤフラムを作動させることによってのみ確立されることに留意することが重要である。この場合、事前撓みダイヤフラムが非作動状態でステータ構造体に接触するマイクロポンプと比較すると、動作電圧はわずかに高くなるが、行程容積はわずかに大きい。
【0060】
これにより、通気口が必要とされないという利点がもたらされ、すなわち、研磨からのスラリーなどが出る加工中、毛細管力を介して浸入するソーダストなどが出るダイシング中、空気を吸い込んだり吸い出したりするためのベローズ粒子が出ない空気中での動作中、また、通気口に浸透する水滴などの特別な動作条件下においても、粒子汚染のリスクがないことを意味する。
ウェハ接合中に負圧によってダイヤフラム1910を事前に撓ませることのさらなる利点は、湾曲した曲げ線である。湾曲した曲げ線により、断面的に平坦なステータ構造体と共に形状的ウェッジ1940が形成され、移動ウェッジ効果が発生して駆動電圧が低下する。
【0061】
図19bに示すように、マイクロポンプを作動させると、ダイヤフラム1910はステータ構造体1920に向かって引き付けられ、その結果、ダイヤフラム装置1910は中央領域でステータ構造体1920に接触し、ウェッジ1940は中央領域から周辺領域に向かって移動する。
事前撓みダイヤフラムの計画又は設計中に、真空又は低圧の使用によって事前に撓ませたダイヤフラムが非常に強く撓んでいるためにプレート理論のフック領域を離れて剛性が高くなることを考慮に入れなければならない。
接合プロセス中の真空又は圧力を使用して事前撓みを調整することができ、必要に応じて、ダイヤフラムのプレート剛性によって電極チャンバの形状を調整することができる。
【0062】
図20は、厚さが例えば40μm及び辺の長さが例えば5mmのシリコンダイヤフラムを有するZengerleらの既知の静電マイクロポンプ2000を示す。このマイクロポンプは、水などの非圧縮性流体において、0.3バールに相当する約30kPaの背圧に打ち勝つことができる。そのダイヤフラムが真空によって事前に負荷がかけられている場合、電極チャンバはかなり多くの空間を必要とする。
Zengerleポンプでは、ダイヤフラム層とステータ構造体との間の距離は例えば5μmである。Zengerleポンプの欠点は、例えばわずか40nlの低容量であり、例えば少なくとも200ボルトの高電圧が必要であり、かつ通気チャンバを使用することである。
移動ウェッジの利点は、ウェッジ領域の電界強度が高いために必要な電圧が低いことと、移動ウェッジを巻くことによってボリュームストロークが大きいこととを含む。欠点としては、事前撓みダイヤフラムがない場合と比較して行程容積が小さいことである。
ウェハ接合中の負圧の調整により、他の形態の構造が可能になる。事前撓みダイヤフラムのゼロ距離は、負圧及び電極チャンバの設計によって調整することができる。これにより、移動ウェッジポンプと通常のポンプとの混合形態を実現することができる。
【0063】
既知のマイクロポンプ2000は、現在の出願とは製造及び機能が異なる。
まず、既知のマイクロポンプの、層3と絶縁層8のダイヤフラムの撓みは電極又はアクチュエータチャンバ10内で層2に向かって、かつポンプチャンバ19から離れて発生する。
さらなる違いは、既知のマイクロポンプの電気絶縁が絶縁層8及び電気的貫通保護スペーサ9によってもたらされることである。
さらなる違いは、ソーイング及び/又はダイシングが側壁絶縁を破壊するため、既知のマイクロポンプの側壁絶縁は実用的ではなく、ダイシング後に個々のピースを1つずつ加工することによってのみ可能であることである。
さらに、供給電圧を低下させるために電極構造体間の距離を調整することがない。また、スティクション防止バンプも既知のマイクロポンプにはない。
【0064】
実施の代替案
いくつかの態様を装置の文脈で説明したが、これらの態様は対応する方法の説明も表すことは明らかであり、ブロック又はデバイスは方法ステップ又は方法ステップの特徴に対応する。同様に、方法ステップの文脈で説明される態様はまた、対応する装置の対応するブロック又は項目又は特徴の説明を表す。