(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】ストランド状又は板状の対象物の少なくとも1つの幾何学的パラメータを決定するための方法
(51)【国際特許分類】
G01B 15/02 20060101AFI20241001BHJP
G01N 21/41 20060101ALI20241001BHJP
G01N 21/17 20060101ALI20241001BHJP
【FI】
G01B15/02 C
G01N21/41 Z
G01N21/17 Z
(21)【出願番号】P 2023516627
(86)(22)【出願日】2021-08-02
(86)【国際出願番号】 EP2021071572
(87)【国際公開番号】W WO2022058081
(87)【国際公開日】2022-03-24
【審査請求日】2023-05-17
(31)【優先権主張番号】102020124263.8
(32)【優先日】2020-09-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】511082609
【氏名又は名称】シコラ アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100080182
【氏名又は名称】渡辺 三彦
(74)【代理人】
【識別番号】100142572
【氏名又は名称】水内 龍介
(72)【発明者】
【氏名】ボルテ ヒルマー
(72)【発明者】
【氏名】シコラ ハラルド
(72)【発明者】
【氏名】シュー トビアス コリャ
【審査官】眞岩 久恵
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第102018124175(DE,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0331414(US,A1)
【文献】特開平03-010826(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 15/00-15/08
G01N 21/00-21/01
G01N 21/17-21/61
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
まだ完全に固化しておらず、依然として流動性成分を有するストランド状又は板状の対象物(10)の少なくとも1つの幾何学的パラメータを決定する方法であって、
前記ストランド状又は板状の対象物(10)の屈折率とその完全な固化の過程で生じる収縮との関係を、前記ストランド状又は板状の対象物(10)に関して確認する、確認ステップと、
まだ完全に固化しておらず、依然として流動性成分を有する前記ストランド状又は板状の対象物(10)の前記屈折率及び前記少なくとも1つの幾何学的パラメータを決定する、決定ステップと、
前記ストランド状または板状の対象物(10)の完全固化状態における前記少なくとも1つの幾何学的パラメータを前記決定ステップで決定された前記屈折率の値と、前記確認ステップで確認された前記関係を考慮しつつ前記少なくとも1つの幾何学的パラメータと、から算出するステップと、
を有することを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つの幾何学的パラメータは、管(10)の直径(44)及び/又は壁厚(40、42)であり、
前記決定ステップにおいて、前記管(10)の前記屈折率とその完全な固化の過程で生じる収縮との前記関係が、前記管(10)の直径(44)及び/又は壁厚(40、42)に対して確認されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも1つの幾何学的パラメータは、前記管(10)の壁厚(40、42)であり、前記管(10)の光学的壁厚は、
テラヘルツ放射(32)が前記ストランド状または板状の対象物(10)に向かって放射され、前記ストランド状または板状の対象物(10)から反射して検出された前記テラヘルツ放射(32)から決定され、前記管(10)の屈折率は、前記管(10)の外径及び内径の比較と、決定された前記光学的壁厚と、から決定されることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ストランド状又は板状の対象物(10)は、押出システム(20)から供給され、前記少なくとも1つの幾何学的パラメータの決定中にその長手方向に沿って搬送されることを特徴とする、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記確認ステップにおいて、前記屈折率及び前記少なくとも1つの幾何学的パラメータを、前記ストランド状又は板状の対象物(10)の複数の時点及び/又は複数の位置で決定することにより、前記関係を確認することを特徴とする、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記確認ステップにおいて、少なくとも長手方向部分に沿って前記ストランド状又は板状の対象物(10)を完全に固化させることによって前記関係を確認し、完全な固化の間に前記屈折率及び前記少なくとも1つの幾何学的パラメータを複数回決定することを特徴とする、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記確認ステップにおいて、少なくとも1つの特性曲線の形で、前記関係を確認することを特徴とする、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記屈折率及び/又は前記少なくとも1つの幾何学的パラメータを決定するために、
前記テラヘルツ放射(32)が前記ストランド状又は板状の対象物(10)に向かって放射され、前記ストランド状又は板状の対象物(10)から反射された前記テラヘルツ放射(32)が検出され、検出された前記テラヘルツ放射(32)から前記屈折率及び/又は前記少なくとも1つの幾何学的パラメータが決定されることを特徴とする、
請求項3に記載の方法。
【請求項9】
前記テラヘルツ放射(32)は、変調された連続波テラヘルツ放射かつ/あるいは前記テラヘルツ放射(32)は、パルス変調テラヘルツ放射又は位相変調テラヘルツ放射であることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記少なくとも1つの幾何学的パラメータは、前記ストランド状又は板状の対象物(10)によって放射され、その後反射された前記テラヘルツ放射(32)の伝搬時間測定から決定されることを特徴とする、請求項8又は9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記テラヘルツ放射(32)を放射するための少なくとも1つの送信機と、前記ストランド状又は板状の対象物(10)によって放射され、その後反射された前記テラヘルツ放射(32)を検出するための少なくとも1つの検出器が、前記テラヘルツ放射(32)の放射及び検出中に前記ストランド状の対象物(10)の長手軸を中心に回転し、又は前記板状の対象物の表面に対して平行に変位することを特徴とする、請求項8から請求項10までいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
放射された前記テラヘルツ放射(32)が、検出前に、前記ストランド状又は板状の対象物(10)を透過し、前記ストランド状又は板状の対象物(10)の材料に起因する放射された前記テラヘルツ放射(32)の伝播時間変化と前記ストランド状又は板状の対象物(10)を透過した後に受信した伝搬時間変化とを用いて前記ストランド状又は板状の対象物(10)の前記屈折率が決定されることを特徴とする、請求項8から請求項11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
放射された前記テラヘルツ放射(32)は、前記ストランド状又は板状の対象物(10)を透過した後に反射器(34)によって反射され、検出の前に、前記ストランド状又は板状の対象物(10)を再び透過することを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、まだ完全に固化しておらず、流動性のある成分を有するストランド状又は板状の対象物の少なくとも1つの幾何学的パラメータを決定する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、ストランド状のプラスチック対象物は、押出システムで製造され、搬送方向に沿って、具体的には、周囲温度まで完全に冷却され、それに応じて完全に硬化又はそれぞれ固化するまで冷却セクションを通過して搬送される。押出システムから供給された直後、搬送セクションのさらなる領域では、このようなストランドはまだ完全に固化しておらず、それに応じて溶融塊の形態の流動性成分を依然として有している。
【0003】
国際公開第2016/139155号(特許文献1)及び独国特許出願公開第102018128248号明細書(特許文献2)から方法及び装置が知られており、この方法では、対象物にテラヘルツ放射を照射し、対象物によって反射されたテラヘルツ放射を受信することによって、ストランド状又は板状のプラスチック対象物の屈折率を決定することができる。これは対象物の断面、あるいはそれぞれ照射された部分における平均屈折率である。これに基づいて、対象物の幾何学的パラメータ、例えば、壁の厚さや 管の直径を、屈折率が当初不明であったとしても、確実に決定することができる。
【0004】
特に、対象物が押出システムから供給された直後に測定される場合、こうして確認された幾何学的パラメータは、当然ながら、対象物が完全に固化した状態における実際の幾何学的パラメータからずれることがある。対象物がすでに完全に固化しており、つまり実質的に流動性のある成分がない状態であれば、屈折率や幾何学的パラメータを後で決定する際に、より信頼性の高い結果が得られる可能性がある。一方、幾何学的パラメータを押出システムから供給された後にできるだけ早く決定したいという要求があり、例えば、パラメータが正しくない場合にできるだけ早く製造工程に介入することができ、したがって、不良品を最小限に抑えることができるようにするためである。
【0005】
したがって、後者が依然として流動性のある成分を有する場合に、まだ完全に固化していない状態のストランド状又は板状の対象物を測定する場合にも、完全に固化した状態のストランド状又は板状の対象物の幾何学的パラメータを既に決定できるようにする必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開第2016/139155号
【文献】独国特許出願公開第102018128248号明細書
【発明の概要】
【発明を解決しようとする課題】
【0007】
説明した先行技術に基づき、したがって、本発明の対象物は、ストランド状又は板状の対象物がまだ完全に固まっていない状態にあるときに、完全に固まった状態のストランド状又は板状の対象物の幾何学的パラメータに関して既に確かな説明をすることができるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、請求項1による方法によって対象物を達成する。有利な実施形態は、従属請求項、説明及び図に記載されている。
【0009】
序文で示したタイプの方法について、本発明は以下のステップによって対象物を達成する。
ストランド状又は板状の対象物の屈折率と、その完全な固化の過程で生じる収縮との間の関係を、ストランド状又は板状の対象物について確認する確認ステップと、
まだ完全に固化しておらず、流動性成分を依然として有するストランド状又は板状の対象物の屈折率及び少なくとも一つの幾何学的パラメータを決定する決定ステップと、
前記決定ステップで決定された屈折率の値と前記少なくとも1つの幾何学的パラメータとから、前記確認ステップで確認された関係を考慮しつつ、前記対象物の完全固化状態における前記少なくとも1つの幾何学的パラメータを算出するステップ。
【発明の効果】
【0010】
本発明により調べられたストランド状又は板状の対象物は、例えば生産システムから供給された加熱状態にあり、まだ周囲温度まで完全に冷却されていない状態である。したがって、まだ完全に固化しておらず、特にその内部には、まだ完全に固化していない、溶融塊の形態の流動性成分があり、さらに冷却すると固まるだけである。棒状又は板状の対象物がさらに冷却され、したがって固化する過程で、この結果、対象物の材料が収縮することになる。ストランド状又は板状の対象物は、ストランド又は板、例えばプラスチックストランド又はプラスチック板とすることができる。ストランド状又は板状の対象物を製造する生産システムは、例えば、押出システムであり得る。ストランド状又は板状対象物は、それに応じて、押出システムで押し出されたストランド状又は板状対象物とすることができる。ストランドは、一例として、管状であり得る。さらに、対象物は、本発明による少なくとも1つの幾何学的パラメータの決定中に、搬送方向に沿って、例えばその長手軸に沿って搬送され得る。
【0011】
本発明は、対象物の材料の屈折率と、帯状又は板状の対象物が完全に固化する過程での収縮過程との間に、数学的によく記述できる関係が存在するという発見に基づいている。研究により、屈折率は、対象物の凝固期間中、例えば管の肉厚や直径などの幾何学的パラメータに対してほぼ逆行する挙動を示すことが分かっている。固化が進むにつれて、つまり時間の経過とともに屈折率は上昇するが、直径や壁厚などの幾何学的パラメータはそれに応じて減少する。これについては、図面を参照しながら、以下により詳細に説明する。この関係は、それぞれの線状又は板状の対象物、特に材料の正確な組成に固有のものであることが、研究によりさらに示されている。しかし、特定の材料に対しては良好な再現性が示される。
【0012】
この発見に基づき、各場合において決定されるストランド状又は板状の対象物に対する本発明による方法の場合、確認ステップにおいて、ストランド状又は板状の対象物の屈折率と、その完全な固化までに生じる収縮過程との間の関係が確認される。例えば特性曲線の形で把握される関係は、本発明によれば、まだ完全に固化していない状態の材料の屈折率の決定を用いて、それでも予想される材料の収縮を推論するために利用される。この目的のために、まだ完全に固化しておらず、依然として流動性成分を有するストランド状又は板状の対象物の屈折率及び少なくとも1つの幾何学的パラメータが、決定ステップで決定される。ここで、対象物の完全に固化した状態における幾何学的パラメータの対応する(縮んだ)値は、まだ完全に固化していない状態で決定された幾何学的パラメータを用いて、先に確認された関係によって確立される予想される縮みから推論することができる。したがって、少なくとも1つの幾何学的パラメータは、本発明によれば、ストランド状又は板状の対象物が完全に固まった状態において、確認ステップで確認された関係を考慮しつつ、決定ステップで決定された屈折率の値と少なくとも1つの幾何学的パラメータから算出される。
【0013】
以下に詳しく説明するように、特にプラスチックの屈折率は、非線形に温度に大きく依存する。これは、固体から液体への移行時に特に大きく変化する。したがって、まだ完全に固化していない棒状又は板状の対象物について決定された幾何学的パラメータは、さらなる固化の過程で、特に棒状又は板状の対象物内でまだ固化していない溶融塊の割合に応じて変化する収縮によって、依然として変化する可能性がある。収縮の程度は、ストランド状又は板状の対象物の材料組成に大きく依存し、また、ストランド状又は板状の対象物の寸法に、より少ない程度ではあるが、依存する。従って、収縮が一定であるという先行技術でなされた仮定、及び完全には固化していない状態で決定された幾何学的パラメータのそれに基づく予測は、完全に固化した状態では十分に正確ではない。少なくとも1つの幾何学的パラメータの低温値の良好な予測を達成するために、本発明によれば、むしろ、各ストランド又は板状の対象物について、すなわち、それぞれの製品について、個別の収縮の程度が決定される。従って、それぞれの材料組成と対象物の寸法が考慮される。材料組成及び寸法に加えて、収縮率は、生産速度のような生産条件にも少なからず依存し得る。よって、例えば、溶融塊の割合、ひいては屈折率は、生産速度によって変化する。したがって、異なる生産速度の影響を認識するために、収縮の程度又はそれぞれ確認ステップで確認された関係を、それぞれの生産条件、すなわち例えば決定された生産速度について決定することも可能である。
【0014】
本発明によれば、各場合に決定される幾何学的パラメータは、従って、ストランド状又は板状の対象物のまだ完全に固化していない状態での初期の測定中であっても、完全に固化した状態でのその最終値において確実に予測することができる。この関係は、各場合に測定されるストランド状又は板状の対象物について記録され、好ましくはそれぞれの製造条件についても記録されるので、例えば材料の組成又は製造工程の他のパラメータにおける、認識されない可能性のある変化を含む変化は、本発明による決定の結果に対して誤った影響を与えることはない。
【0015】
収縮の程度を把握するためには、完全に固化した状態の対象物の材料の屈折率が既知であることが前提条件となる。これは、例えば、屈折率を決定するために以下に説明する方法の1つで決定することができるか、又は、十分な精度で既知である場合なら、各場合に対象物の現行の材料について既知であると仮定することができる。
【0016】
例えば管の肉厚や直径のような予想される幾何学的パラメータの収縮を予測するための本発明による方法では、関連する測定値は既に押出直後に押出ラインで記録することができ、例えば管の壁内に比例した溶融質量があるにもかかわらず、予想される最終値は22℃の標準温度に基づいて予測及び表示できるが、規格サイズへの規定のための実際の値として導入することも可能である。
【0017】
例えば、直径2.5mまでの管の押し出しは、1分間に数cmから約1mのクリープ速度で行われる。従来の測定システムでは、関連するパラメータを測定できるのは、押出ラインの終点で約30~50メートル後、つまり数時間後である。肉厚を予想される規格サイズに調整するための早期の測定と、管円周にわたるその均一性は、経済的にかなり重要である。一般的な押出機の生産能力は約400kg/hで、5000h/年の場合、200万kgの材料消費量が想定される。1ユーロ/kgをわずかに超える価格で、本発明による方法は、先行技術と比較して、年間10万から20万ユーロを容易に節約することができる。
【0018】
特に実用的な実施形態によれば、幾何学的パラメータは、管の直径及び/又は壁厚とすることができ、決定ステップにおいて、管の屈折率と、管の完全な固化の過程で生じる収縮との間の関係が、管の直径及び/又は壁厚で確認できる。特に、肉厚と直径の両方が幾何学的パラメータとして把握される場合、すなわち、屈折率と収縮率の間には、肉厚と直径の各場合に関係があることができる。 この実施形態は、幾何学的パラメータが異なると収縮の程度が異なることがあるという発見に基づくものである。これは、適切な研究によって確立されたものである。例として、完全な凝固の過程における直径の収縮は、肉厚の場合よりも2~3倍小さくなり得る。この理由は、特に、直径を特定する管の外側がすでに早い段階で冷却されて固化し、管の直径がそれほど大きく収縮しなくなる一方で、特に管内部には流動性成分がまだ存在しており、管内部も冷却されて外側よりも遅く固化するので、肉厚に大きな収縮が発生するからと推測される。実際には、相対的な収縮の程度は、例えば、直径については2~3%の領域にあり、一例として、肉厚については6~8%の領域にあることができる。これらの値は、材料、ストランド状又は板状の対象物の寸法、及びそれぞれの製造条件に応じて変化し得ることは言うまでもない。特に、管の直径が大きくなると、体積よりも表面積の方が小さくなるため、特に大きな管の場合、15%を超えるかなり大きな収縮率が生じる可能性がある。
【0019】
既に説明したように、ストランド状又は板状の対象物は、押出システムから供給されることができ、少なくとも1つの幾何学的パラメータを決定する間、その長手方向に沿って搬送することができる。
【0020】
さらなる実施形態によれば、確認ステップにおいて、屈折率及び少なくとも1つの幾何学的パラメータを、ストランド状又は板状の対象物の複数の時点及び/又は複数の位置で決定することにより、関係を確認することができる。このようにして、例えば関係を可視化する特性曲線などの支持値を取得することができる。そして、例えば、その支持値間を適宜補間することができる。なお、関係性を把握する数値の信頼性は、支持値の数が多いほど高くなることは言うまでもない。
【0021】
これに関するさらなる実施形態によれば、関係を確認する確認ステップでは、ストランド状又は板状の対象物を少なくとも長手方向に沿って完全に固化させることによって確認することができ、屈折率及び少なくとも1つの幾何学的パラメータは、完全に固化する間に複数回測定される。例えば、第1のステップにおいて、押出システムから供給されたストランド状又は板状の対象物を停止する、即ち、生産を中断し、その後、ストランド状又は板状の対象物が完全に固化するまで、複数の時点、例えば、実質的に継続的に、屈折率及び少なくとも1つの幾何学的パラメータを決定することが考えられる。
【0022】
既に説明したように、この関係は、確認ステップにおいて、少なくとも1つの特性曲線、好ましくは、ストランド状又は板状の対象物の収縮の程度を屈折率に対してプロットした特性曲線の形態で表すことができる。屈折率の決定と、決定ステップで生じる、まだ完全に固化していない鎖状又は板状の対象物の少なくとも1つの幾何学的パラメータの決定と、を用いて、特性曲線上の位置、したがって、完全に固化するまでまだ予想される収縮率を、簡単な方法で決定することができる。例えば、少なくとも1つの幾何学的パラメータを、完全凝固後の値で正規化することができる。その後、収縮の程度を屈折率の関数としてパーセントでプロットすることができる。
【0023】
例えば、管の肉厚と直径を幾何学的パラメータとして決定した場合、収縮度Swt(n)は、屈折率の関数として肉厚をパーセントで表すと、以下のように求められる。
【0024】
【0025】
ここで、wtendは管の完全凝固後の確定肉厚、wt(n)はまだ完全凝固していない状態での肉厚であり、決定ステップで決定される。
【0026】
直径の収縮度合いSd(n)(%)は、屈折率の関数として以下のように求められる。
【0027】
【0028】
ここで、dendは管が完全に固まった後の最終的な直径を示し、d(n)は管がまだ完全に固まっていない状態での直径を示し、決定ステップで記録されるものである。
【0029】
さらなる実施形態によれば、屈折率及び/又は少なくとも1つの幾何学的パラメータを決定するために、テラヘルツ放射をストランド状又は板状の対象物に向けて放射し、ストランド状又は板状の対象物で反射したテラヘルツ放射を検出し、屈折率を決定することを提供することが可能である。例えば鎖状又は板状の対象物の表面の領域において、及び/又は例えば管の直径又は壁厚のような少なくとも1つの幾何学的パラメータが、検出されたテラヘルツ放射、特に検出されたテラヘルツ放射の強度から決定する/されている。本実施形態の場合、テラヘルツ放射は、ストランド状又は板状の対象物に向けて放射される。テラヘルツ放射は、ストランド状又は板状の対象物に部分的に入射することができる。テラヘルツ放射は、線状又は板状の対象物の(外部及び任意で内部の)境界面で反射し、適切な検出器で検出される。テラヘルツ放射の周波数は、例えば、10GHz~3THzの周波数範囲にあることができる。いわゆるミリ波であってもよい。テラヘルツ放射を放射する送信機と、反射されたテラヘルツ放射を受信する検出器とは、実質的に同じ場所に配置することができる。これらは、例えば、送受信機に統合することができる。幾何学的パラメータ及び屈折率は、テラヘルツ放射を使用して、特にレーザーのような光学システムが困難なプロセス環境において、信頼できる方法で決定することができる。テラヘルツ放射を用いた屈折率又は幾何学的パラメータの決定は、例えば、国際公開第2016/139155号(特許文献1)又は独国特許出願公開第102018128248号明細書(特許文献2)に記載されている。それゆえ、これらの印刷物を参照することができる。
【0030】
テラヘルツ放射は、変調された連続波テラヘルツ放射、特に周波数変調された連続波テラヘルツ放射であり得る。テラヘルツ放射はまた、パルス変調テラヘルツ放射又は位相変調テラヘルツ放射であり得る。周波数変調は、周波数バースト又は複数の周波数バーストから構成され得る。特に、予め定義された周波数範囲を1回又は複数回横断する、いわゆる周波数掃引が生じ得る。いわゆる時間領域反射率測定法又は周波数領域反射率測定法は、例えば、パルス変調又は位相変調されたテラヘルツ放射として展開されることができる。また、1つの周波数スペクトルではなく、複数の離散的な周波数が送信されることも考えられる。
【0031】
少なくとも1つの幾何学的パラメータは、例えば、国際公開第2016/139155号(特許文献1)に記載されているように、ストランド状又は板状の対象物によって放射され、その後反射されるテラヘルツ放射の伝搬時間測定から決定することができる。
【0032】
さらなる実施形態によれば、テラヘルツ放射を放射するための少なくとも1つの送信機と、ストランド状又は板状の対象物によって放射され、その後反射されたテラヘルツ放射を検出するための少なくとも1つの検出器が、テラヘルツ放射の放射及び検出中に、ストランド状対象物の長手軸を中心に、好ましくは円形経路に沿って回転されるか、又は、板状の対象物の表面と平行に変位させられることを備えることが可能である。送信器と検出器からなる対を回転させるか、又は、それぞれ変位させることにより、少なくとも1つの幾何学的パラメータの値を、ストランド状又はそれぞれ板状の対象物の円周又はそれぞれ板幅にわたって分布させて記録することができる。例えば、この方法で、例えば押出成形の過程で起こりうる、いわゆるたるみ、すなわち、まだ完全に固化していない状態の材料が下方に流れることを確認することが可能である。ストランドの真円度は、この方法で確認することができる。これも同様に、国際公開第2016/139155号(特許文献1)に原理的に記載されている。もちろん、ストランド状又は板状の対象物の円周上又は表面に平行に分布する複数の送信機及び受信機の対を配置し、このようにして、円周上又は表面に平行に複数の測定値を確認することも考えられるであろう。
【0033】
さらなる実施形態によれば、放射されたテラヘルツ放射は、検出の前にストランド状又は板状の対象物を透過することができ、ストランド状又は板状の対象物の屈折率は、ストランド状又は板状の対象物の材質に起因して放射されストランド状又は板状の対象物を透過した後に受信したテラヘルツ放射の伝播時間変化を使って決定される。これは、国際公開第2016/139155号(特許文献1)において原理的に説明されている。したがって、この変化を引き起こすストランド状又は板状の対象物の材料定数、特に屈折率及び/又は誘電率は、ストランド状又は板状の対象物が放射経路に存在する場合、ストランド状又は板状の対象物のない放射経路に対する伝搬速度の確認された変化から推論することができる。
【0034】
さらなる実施形態によれば、放射されたテラヘルツ放射は、線状又は板状の対象物を透過した後に反射体によって反射され、検出の前に、線状又は板状の対象物を再び透過することが可能である。ところで、本実施形態の場合、テラヘルツ放射用の反射機は、送信機から放射されるテラヘルツ放射の放射方向において、鎖状又は板状の対象物の背後のテラヘルツ放射用の送信機と対向して配置される。反射機は、その長手軸がストランドの長手軸方向に走る円筒状に湾曲した反射機であり得る。反射機の曲率中心は、測定されるストランドの曲率中心と一致させることができる。つまり、中空円筒形の反射鏡の焦点線は、ストランドの長手方向軸と一致することになる。反射機によって受信機に戻された信号も評価に使用できるため、反射機は測定信号を増幅する。さらに、反射機は、特に多重反射の場合に、検出器又は検出器によって受信された異なる測定信号の識別をさらに向上させることができる。従って、反射機は、送信器又は検出器から離れた位置にある、又は、それぞれ直面している線状又は板状の対象物の前面及び背面を別々に評価することを可能にし、その結果、多重反射による障害を避けることができる。特に、反射機は、送信機から反射機への放射の経路上と、反射機から検出器への放射の戻り経路上と、の両方において、テラヘルツ放射の境界面における反射による測定を可能にする。例えば、送受信機から直接反射機へ移動して送受信機に戻る信号と、送受信機から直接反射機へ移動して反射機から出た後、背面ストランド壁、又は背面ストランド壁の内側と外側の境界面で反射して反射機へ戻り、反射機で再び反射して送受信機へ戻る信号の、伝播時間を比較することが可能である。この伝播時間の差から、ストランドの後方壁と反射機の位置、あるいは反射機に面したストランドの後方壁の肉厚、あるいはストランドの直径が既知であることから、距離を推測することができる。そして、反射機はさらなる送信機を模擬している。 つまり、送受信機と送受信機に面したストランドの境界面との間の多重反射によって、ストランドの後方壁からの元の受信信号が乱された場合にも、反射機の助けを借りて、反射機に面したストランドの側を確実に測定することができる。
【0035】
さらなる実施形態によれば、少なくとも1つの幾何学的パラメータは、管の壁厚とすることができ、管の光学的壁厚は、検出されたテラヘルツ放射から決定され、管の屈折率は、管の外径及び内径と決定された光学的壁厚との比較から決定される。既に説明したように、テラヘルツ放射は、少なくとも部分的にストランド状又は板状の対象物に透過する。それは少なくとも2つの境界面で反射される。この場合、これは、例えば、送信機に面する管の壁部の送信機に面する外面及び送信機から離れる方向に面する内面であることができる。放射のかなりの部分が、送信機から離れた位置にあるこの壁部分の内側からまだ出ていて、管によって区切られた中空空間を通過した後、送信機から離れた位置にある管の反対側の壁部分の送信機に面した内側で反射される可能性がある。これらの境界面で反射した放射成分は、すべて反射して検出器で受信することができる。これに基づいて、材料の屈折率の知識がなくても、管の壁部分の光学的壁厚を決定することができる。前述の実施形態は、最も単純な場合、すなわち、単純化のために、送信機に面した透過した壁部分と送信機から離れた位置にある管の反対側の壁部分が、管の内径と外径、特に内径と外径の差を考慮しながら同じ壁厚を有すると仮定すると、屈折率を計算できるという発見に基づくものである。この点で、管の内径又は外径が挙げられる場合、これは幾何学的内径及び幾何学的外径を意味する。管の内径及び/又は外径は、測定によって決定することができる。この目的のために、例えば独国特許出願公開第102018128248号明細書に説明されているように、様々な測定方法が考えられる。しかしながら、これらの直径の少なくとも1つ、例えば外径は、既知であると仮定することも可能である。さらに、管の上述の境界面における上記で説明した測定放射の反射により、管の中空空間に位置する空気の屈折率が既知であるため、反射した測定放射の評価に基づいて、内径を決定することも可能である。
【0036】
本発明の例示的な実施形態は、図を参照して以下により詳細に説明され、ここでは、以下の通りである。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】本発明による方法を実施するための装置を概略的に側面図である。
【
図2】
図1からのデバイスの断面的な部分表現を模式的に示している図である。
【
図3】屈折率の温度依存性を説明するために模式的に示した図である。
【
図4】最初の一連の測定(「管1」)について、各種パラメータの冷却挙動を模式的に示した図である。
【
図5】第2系列の測定(「管2」)について、各種パラメータの冷却挙動を模式的に示した図である。
【
図6】最初の一連の測定(「管1」)の幾何学的パラメータとしての肉厚に対する収縮の度合いの特性曲線を模式的に示した図である。
【
図7】第2系列の測定(「管2」)の幾何学的パラメータとしての収縮の度合いの特性曲線を模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
図中、特に断りのない限り、同じ参照符号は同じものを指している。
【0039】
ストランド10、本実施例ではプラスチック管10が
図1及び
図2に描かれており、この管10は、壁12と、管10によって区画された中空空間14と、中空空間14を区画する、断面が円形の外面16及び同様に断面が円形の内面18を有する。プラスチック管10は、本実施例では、押出システム20において押出機の助けを借りて押し出され、
図1において左から右に、適切な搬送装置によってその長手軸に沿って搬送される。押出システム20の押出機の管ヘッドから出た後、管10は最初に第1の冷却セクション22を通過し、このセクションで、押出システム20から出た、大きく加熱され、まだ完全に固化していない、すなわち、依然として流動性成分(溶融塊)を有する管10は冷却される。そのさらなる過程で、管10は測定装置24を通過し、そこで、管材料の屈折率及び管10の幾何学的パラメータ、例えば直径及び/又は壁厚が、以下にさらに詳細に説明する方法で決定される。測定装置24に続いて、管10はさらなる冷却セクション26を通過し、その中でさらなる冷却が行われる。管10が完全に固化した後、管10は、例えば長さ切断装置28において予め定められた長さに切断される。
【0040】
測定装置24の構造及び機能については、
図2を参照してより詳細に説明する。描かれている例では、測定装置24は、テラヘルツ放射のための送信器と検出器とが組み合わされた送受信機30から構成されている。送信機は、管10に向かってテラヘルツ放射32を放射する。テラヘルツ放射は、管10の異なる境界面及び送受信機30に対向して配置された反射機34で反射され、送受信機30に戻り、検出器により検出される。送受信機30は、さらに、ライン36を介して、評価装置38に接続されている。検出器によって受信された反射された放射は、対応する測定信号を生成し、ライン36を介して評価装置38に転送される。また、評価装置38は、例えば国際公開第2016/139155号(特許文献1)又は独国特許出願公開第102018128248号明細書(特許文献2)に記載されているように、検出器から受け取った測定信号に基づいてストランド材料の屈折率を決定することができる。
【0041】
例えば、管10の直径44及び壁厚40,42並びに屈折率は、管10がまだ完全に固化していない、すなわち依然として流動性成分を有する
図1に示す測定位置において、測定装置24を用いて決定される。送受信機30が、例として、管10に関する円形経路に沿って回転し、したがって、管10の円周上の異なる位置で、幾何学的パラメータ及び任意に、屈折率も決定することも可能である。その後、反射機34は、同様に管10について回転することもできる。しかしながら、反射機34を省くことも可能である。
【0042】
図3は、純粋なポリエチレンの例で,屈折率の温度依存性又は凝集状態依存性を示したものである。一方では、屈折率と温度又は凝集状態との間の関係は非線形であることがわかる。一方、屈折率は混合段階、すなわち固体状態と液体状態との間の移行時に特に大きく変化することがわかる。 温度を変化させたときの屈折率の経過から、さらに、室温から約100℃の間で屈折率はほとんど変化しないことがわかる。このことから、押出システムが停止しているとき、及び管10が冷却された後、平均的な屈折率が得られ、これは低温値に相当することが推論される。したがって、上記で説明したように、管の外部シェルが発する反射音の強度から把握することができる屈折率の低温値を、この管径について補正することも可能になった。その後の生産中、屈折率の低温値は、このように同様に示された方法で確認することができ、材料の変化は生産中に認識することができ、予想される収縮に関して新たに記録された屈折率に調整することができる。
【0043】
図3は、純ポリエチレンの屈折率の温度依存性を示している。一般に、管には添加剤を加えたHDPE(高密度ポリエチレン)が利用される。管は、好ましくはカーボンブラック(スート)を添加して黒く着色される。溶融塊の粘度は、さらなる添加剤によって決定され、したがって、溶融塊のたるみをできるだけ低く抑えるために、管ヘッドを出た後、溶融塊が管壁で最終的に冷却されるまでの粘性流動挙動を有する押出機内での高圧高温での最適な流動挙動を実現する。純粋なPEでは、材料の非常に幅広い特性が知られているが、添加剤を使用した一般的なHDPEには、限られた範囲内でしか移行することができない。ミリ波の融点、密度、屈折率、吸収率、そしてその温度依存性のすべてがそうである。これらの問題は、本発明による方法で対処することができる。
【0044】
図4には、
図1に示した押出システム20において、一例として押出成形された第1の中型管(「管1」)の肉厚、直径及び屈折率が、各場合において経時的にプロットされている。
図1に示す押出システム20で押し出された第2の小さいサイズの管(「管2」)の肉厚、直径及び屈折率は、各場合、同様に
図5に経時的にプロットされている。第1及び第2の管は、例えば、その材料組成及び/又はその寸法の点で異なることができる。ゼロ時点において、押出システム20は、実施された測定のために停止され、それに応じて、管は、もはやその長手方向軸に沿ってさらに搬送されない。その後、チューブが完全に固まるまで、つまり流動性成分を含まなくなるまで、より長い時間にわたって測定値を取得する。各場合、2つの測定値について、屈折率が肉厚又は直径に対して実質的に逆行する挙動を示すことが確認された。凝固が進むと屈折率は上昇するが、肉厚と直径の測定値はそれに応じて減少する。さらに、2つの異なる測定管の一連の測定値で、かなり異なる経過が示されていることがわかる。
【0045】
図6及び
図7は、本発明による方法で求めた特性曲線を示し、
図6に示す特性曲線は、
図4に記載されたデータを用いて把握し、
図7に示す特性曲線は、
図5に示したデータを用いて把握した。各場合において、それぞれのチューブの肉厚に対する収縮率と屈折率の関係を示している。
図6及び
図7に示す特性曲線を作成するために、肉厚は完全凝固後の値で正規化した。
図6及び
図7のy軸に各場合にプロットされた収縮の度合いを、肉厚についてx軸にプロットされた屈折率の関数としてパーセントで示すと、以下に従って得られる。上記で説明した変数を用いている。
【0046】
【0047】
本発明による確認ステップで作成されたこれらの特性曲線は、決定ステップで確認された、まだ完全に固まっていない管の屈折率及び肉厚の値を用いて、完全に固まった状態での肉厚を計算し、したがって、予測するために用いることができる。これは、直径についても同様の方法で行うことができる。完全に固化した状態での屈折率は、それぞれの材料組成について測定するか、既知であると仮定することができる。特に、決定ステップで決定した値を用いて、
図6及び
図7に示したそれぞれの特性曲線上の現在の位置を確定することが可能であり、これにより、それぞれの管が完全に固化するまでに予想されるさらなる収縮を、特性曲線から読み取ることができる。
【符号の説明】
【0048】
10 ストランド、管
12 壁
14 中空スペース
16 外面
18 内面
20 押出システム
22,26 冷却セクション
24 測定装置
28 切断装置
30 送受信機
32 テラヘルツ放射
34 反射機
36 ライン
38 評価装置
40,42 壁厚
44 直径