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特許7564365シリアルバスシステム用の加入者局およびシリアルバスシステムでの通信方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】シリアルバスシステム用の加入者局およびシリアルバスシステムでの通信方法
(51)【国際特許分類】
   H04L 12/407 20060101AFI20241001BHJP
   H04L 25/02 20060101ALI20241001BHJP
   H04L 7/00 20060101ALI20241001BHJP
   G06F 13/38 20060101ALI20241001BHJP
   G06F 13/42 20060101ALI20241001BHJP
【FI】
H04L12/407
H04L25/02 V
H04L7/00 620
G06F13/38 320A
G06F13/42 310
G06F13/42 350Z
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2023529945
(86)(22)【出願日】2021-10-07
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-27
(86)【国際出願番号】 EP2021077636
(87)【国際公開番号】W WO2022106113
(87)【国際公開日】2022-05-27
【審査請求日】2023-07-12
(31)【優先権主張番号】102020214535.0
(32)【優先日】2020-11-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100161908
【弁理士】
【氏名又は名称】藤木 依子
(72)【発明者】
【氏名】ムッター,アルトゥール
(72)【発明者】
【氏名】ハートビヒ,フロリアン
(72)【発明者】
【氏名】ベイラー,フランツ
【審査官】前田 健人
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-518485(JP,A)
【文献】国際公開第2020/089008(WO,A1)
【文献】特表2015-536067(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 12/28-12/406
H04L 25/02
H04L 7/00
G06F 13/38
G06F 13/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリアルバスシステム(1)用の加入者局(10;30)であって、
前記バスシステム(1)の加入者局(10;20;30)と少なくとも1つの他の加入者局(10;20;30)との通信を制御するため、および前記バスシステム(1)のバス(40)から受信された信号(VDIFF)を評価するための通信制御デバイス(11;31)であり、第1の通信フェーズ(451)におけるビット時間(t_bt1)が、第2の通信フェーズ(452)におけるビット時間(t_bt2)とは異なり得る、通信制御デバイス(11;31)を備え、
前記通信制御デバイス(11;31)が、他の加入者局(10;20;30)によって生成された送信信号(TxD_TC)に基づく、前記バス(40)から受信された前記信号(VDIFF)を、所定のフレーム(450;450A)に従ってサンプリングして評価するように設計されており、
前記所定のフレーム(450;450A)内で、前記第2の通信フェーズ(452)から前記第1の通信フェーズ(451)への遷移を示す所定のフィールド(1520;1521)が、前記所定のフィールド(1520;1521)の開始とそれに続く立ち下がりエッジとの間に、論理値1を有する2つまたは3つのビットを有し、
前記通信制御デバイス(11;31)が、前記バス(40)から受信された前記信号(VDIFF)からサンプリングしたフレームを、前記バス(40)から受信された前記信号(VDIFF)において前記フィールドの前記開始とそれに続く前記立ち下がりエッジとの間で論理値1を有する1つのビットのみがサンプリングされたか2つの連続するビットがサンプリングされたかに関係なく、所定のフレーム(450;450A)として、したがって前記所定のフィールド(1520;1521)に関して有効として評価するように設計されており、
前記通信制御デバイス(11;31)が、前記所定のフィールド(1520;1521)の前記立ち下がりエッジで同期を実行するように設計されている、
加入者局(10;30)。
【請求項2】
前記所定のフィールド(1520)が、前記第1の通信フェーズ(451)の前記ビット時間(t_bt1)を有する4つのビットを有し、
前記所定のフィールド(1520)が、論理値1101を有するビットシーケンスを有し、
前記通信制御デバイス(11;31)が、前記バス(40)から受信された前記信号(VDIFF)内の論理値1を有するビットをサンプリングした後、前記フィールドの前記開始とそれに続く前記立ち下がりエッジとの間で、前記バス(40)から受信された前記信号(VDIFF)内で論理値0でサンプリングされ、予想される前記ビットシーケンス1101の遅くとも第3のビットに関してサンプリングされる次のビットを、予想される前記ビットシーケンス1101の第3のビット(AL1)として評価するように設計されている、
請求項1に記載の加入者局(10;30)。
【請求項3】
前記通信制御デバイス(11;31)が、前記所定のフィールド(1520)の1のビット(DAH)が論理的な1としてサンプリングされなかった場合、前記バス(40)から受信された前記信号(VDIFF)からサンプリングしたフレームを誤りとして評価するように設計されている、請求項に記載の加入者局(10;30)。
【請求項4】
前記通信制御デバイス(11;31)が、前記所定のフィールド(1520)の前記第1のビット(DAH)が論理的な1としてサンプリングされる場合、ハード同期をアクティブにするように設計されている、請求項に記載の加入者局(10;30)。
【請求項5】
前記通信制御デバイス(11;31)が、前記所定のフィールド(1520)の前記第1のビット(DAH)も2のビット(AH1)も論理的な1としてサンプリングされなかった場合、前記バス(40)から受信された前記信号(VDIFF)からサンプリングしたフレームを誤りとして評価するように設計されている、請求項に記載の加入者局(10;30)。
【請求項6】
前記所定のフィールド(1520)の前記第1のビット(DAH)が論理的な0としてサンプリングされ、前記所定のフィールド(1520)の前記第2のビット(AH1)が論理的な1としてサンプリングされた場合、または
前記所定のフィールド(1520)の前記第1のビット(DAH)が論理的な1としてサンプリングされ、前記所定のフィールド(1520)の前記第2のビット(AH1)が論理的な0としてサンプリングされた場合、
前記通信制御デバイス(11;31)が、前記バス(40)から受信された前記信号(VDIFF)からサンプリングしたフレームを、前記所定のフィールド(1520)に関して誤りとしてではなく有効として評価するように設計されている、
請求項5に記載の加入者局(10;30)。
【請求項7】
前記通信制御デバイス(11;31)が、前記所定のフィールド(1520)の前記第1のビット(DAH)が論理的な1としてサンプリングされる場合、または前記所定のフィールド(1520)の前記第2のビット(AH1)が論理的な1としてサンプリングされる場合、ハード同期または同期をアクティブにするように設計されている、請求項5または6に記載の加入者局(10;30)。
【請求項8】
前記所定のフィールド(1521)が、前記第1の通信フェーズ(451)の前記ビット時間(t_bt1)を有する5つのビットを有し、
前記所定のフィールド(1521)が、論理値11101を有するビットシーケンスを有し、
前記通信制御デバイス(11;31)が、前記バス(40)から受信された前記信号(VDIFF)内の前記ビットシーケンスの前記第2のビットに関して論理値1を有するビットをサンプリングした後、前記バス(40)から受信された前記信号(VDIFF)内で論理値0でサンプリングされ、予想される前記ビットシーケンス11101の遅くとも第4のビットに関してサンプリングされる次のビットを、予想される前記ビットシーケンス11101の第4のビット(AL1)として評価するように設計されている、
請求項に記載の加入者局(10;30)。
【請求項9】
前記通信制御デバイス(11;31)が、前記バス(40)から受信された前記信号(VDIFF)からサンプリングしたフレームにおいて、前記所定のフィールド(1521)の前記第1のビット(DAH)の前記サンプリングされた値を無視し、前記所定のフィールド(1521)の前記第3のビット(AH1)に関して任意の値を誤りでないと評価するように設計されており、
前記通信制御デバイス(11;31)が、前記所定のフィールド(1521)の前記第2のビット(AH1)が論理的な0としてサンプリングされた場合、前記バス(40)から受信された前記信号(VDIFF)からサンプリングしたフレームを誤りとして評価するように設計されている、
請求項8に記載の加入者局(10;30)。
【請求項10】
前記通信制御デバイス(11;31)が、前記所定のフィールド(1521)の前記第2のビット(AH1)が論理的な1としてサンプリングされる場合、ハード同期をアクティブにするように設計されている、請求項8または9に記載の加入者局(10;30)。
【請求項11】
前記バスシステム(1)の前記バス(40)に送信信号(TxD)を送信するため、および/または前記バスシステム(1)の前記バス(40)から信号(VDIFF)を受信するための送信/受信デバイス(12;32)をさらに備える、
請求項1から10のいずれか一項に記載の加入者局(10;30)。
【請求項12】
前記通信制御デバイス(11;31)が、前記送信信号(TxD)を生成するように設計されており、
前記通信制御デバイス(11)が、前記送信信号(TxD)でのパルス幅変調によって、前記送信/受信デバイス(12;32)がその動作モードを前記第1の通信フェーズ(451)で送信するための動作モード(B_451)に、または第2の通信フェーズ(452)で送信するための動作モード(B_452_TX;B_452_RX)に切り替えなければならないことを前記送信/受信デバイス(12;32)に通知するように設計されている、
請求項11に記載の加入者局(10;30)。
【請求項13】
前記第1の通信フェーズ(451)において、ドミナントバスレベル(401)から、前記ドミナントバスレベル(401)によって上書き可能であるレセシブバスレベル(402)への前記バス(40)での遷移を加速するための信号改良モジュール(125)をさらに備え、
前記加入者局(10;30)が前記バス(40)上への前記送信信号(TxD)の送信側であり、前記送信/受信デバイス(12;22;32)が、前記通信制御デバイス(11;31)が前記第2の通信フェーズ(452)で前記送信信号(TxD)を前記バスシステム(1)の前記バス(40)に送信する動作モード(452_TX)から、前記通信制御デバイス(11;31)が前記第1の通信フェーズ(451)で前記送信信号(TxD)を前記バスシステム(1)の前記バス(40)に送信する動作モード(B_451)に切り替わる場合、前記送信/受信デバイス(12;22;32)が、前記第2の通信フェーズ(452)の前記バスレベルの1つから前記第1の通信フェーズ(451)の前記レセシブバスレベルへの前記遷移を加速するために前記信号改良モジュール(125)をさらにアクティブにするように設計されている、
請求項11または12に記載の加入者局(10;30)。
【請求項14】
前記所定のフレーム(450)が、CAN FDと互換性があるように構成されており、
前記第1の通信フェーズ(451)において、前記バスシステム(1)の前記加入者局(10、20、30)のどれが、後続の前記第2の通信フェーズ(452)で前記バス(40)への少なくとも一時的に排他的で衝突のないアクセスを得るかが交渉される、
請求項1から13のいずれか一項に記載の加入者局(10;30)。
【請求項15】
バス(40)と、
前記バス(40)を介して相互にシリアル通信することができるように互いに接続されており、そのうちの少なくとも1つの加入者局(10;30)が、請求項1から14のいずれか一項に記載の加入者局(10;30)である少なくとも2つの加入者局(10;20;30)とを備えた、
バスシステム(1)。
【請求項16】
シリアルバスシステム(1)での通信方法であって、前記バスシステム(1)の加入者局(10;30)によって実施され、前記加入者局(10;30)が、通信制御デバイス(11;31)を有し、
前記通信制御デバイス(11;31)によって、前記バスシステム(1)の前記加入者局(10;20;30)と少なくとも1つの他の加入者局(10;20;30)との通信を制御するステップと、前記バスシステム(1)のバス(40)から受信された信号(VDIFF)を評価するステップであり、第1の通信フェーズ(451)におけるビット時間(t_bt1)が、第2の通信フェーズ(452)におけるビット時間(t_bt2)とは異なり得る、ステップとを含み、
前記通信制御デバイス(11;31)が、他の加入者局(10;20;30)によって生成された送信信号(TxD_TC)に基づく、前記バス(40)から受信された前記信号(VDIFF)を、所定のフレーム(450;450A)に従ってサンプリングして評価し、
前記所定のフレーム(450;450A)内で、前記第2の通信フェーズ(452)から前記第1の通信フェーズ(451)への遷移を示す所定のフィールド(DAS)が、開始とその後の立ち下がりエッジとの間に、論理値1を有する2つまたは3つのビットを有し、
前記通信制御デバイス(11;31)が、前記バス(40)から受信された前記信号(VDIFF)からサンプリングしたフレームを、前記バス(40)から受信された前記信号(VDIFF)において前記フィールドの前記開始とそれに続く前記立ち下がりエッジとの間で論理値1を有する1つのみのビットがサンプリングされたか2つの連続するビットがサンプリングされたかに関係なく、所定のフレーム(450;450A)として、したがって前記所定のフィールド(1520;1521)に関して有効として評価するように設計されており、
前記通信制御デバイス(11;31)が、前記所定のフィールド(1520;1521)の前記立ち下がりエッジで同期を実行する、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高いデータレート、高い融通性、および高いエラーロバスト性で動作するシリアルバスシステム用の加入者局およびシリアルバスシステムでの通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば車両でのセンサと制御機器との間の通信用バスシステムは、技術的設備または車両の機能の数に応じて、大きいデータ量の伝送を可能にすべきである。ここで、多くの場合、データを送信側から受信側に従来よりも速く伝送することができ、必要に応じて大きなデータパケットも伝送可能であることが求められる。
【0003】
現在、車両ではバスシステムが導入段階であり、このバスシステムでは、CAN FDを使用したCANプロトコル仕様として、規格ISO11898-1:2015でのメッセージとしてデータが伝送される。メッセージは、センサ、制御機器、送信機などのバスシステムのバス加入者間で伝送される。このために、メッセージは、2つの通信フェーズ間で切り替えられるフレームでバスに送信される。第1の通信フェーズ(調停)では、バスシステムのどの加入者局が、後続の第2の通信フェーズ(データフェーズまたは使用データの送信)でフレームをバスに送信してよいかが交渉される。CAN FDは、多くの製造業者によって、車両において最初の段階では500kbit/sの調停ビットレートおよび2Mbit/sのデータビットレートで使用される。したがって、バスでの伝送中に、低速の動作モードと高速の動作モードとを切り替えなければならない。
【0004】
第2の通信フェーズでさらに高いデータレートを可能にするために、CAN FD用の後継バスシステムが現在開発されており、これは、CAN XLと呼ばれ、現在、組織CAN in Automation(CiA)において標準化されている。CAN XLは、CANバスを介する純粋なデータ輸送に加えて、機能的安全性(Safety)、データセキュリティ(Security)、サービス品質(QoS=Quality of Service)など他の機能もサポートすべきである。これらは、自律走行車で必要とされる基本的な特性である。
【0005】
CAN XLは、データフェーズにおいて、高いビットレート、例えば最大15Mbit/sまたはさらには20Mbit/sをサポートすべきである。これを達成するために、動作モードを切り替えることができる送信/受信デバイスが使用されて、データフェーズにおいて必要な高いビットレートを達成する。一方、調停フェーズでのビットレートは、調停を可能にするために約500kbit/sのままである。データフェーズで特に高いビットレートを使用できるようにするために、現在CAN XL用に標準化されている送信/受信デバイスは、それらの動作モードを切り替えることができる。動作モード切替えの通知のためにさらなるポート(ピン)が必要とされないように、MICIモジュール(MICI=Media Independent CAN Interface)が、通信制御デバイス、特にそのプロトコルコントローラと送信/受信デバイスとの間で使用される。
【0006】
CAN XLでは、通信制御デバイス、特にそのプロトコルコントローラは、送信/受信デバイスに、送信/受信デバイスがその動作モードを低速から高速、または高速から低速に切り替えなければならないことを通知する。通知のために、通信制御デバイス、特にそのプロトコルコントローラ、またはダウンストリームのMICIモジュールは、PWM符号化とも呼ばれるパルス幅変調による符号化を使用する。送信/受信デバイスは、CANバス上で差分電圧として個々のビットをドライブできるようにするためにPWM復号化を実行する。
【0007】
問題は、通信制御デバイスでのPWM符号化、および送信/受信デバイスでの対応するPWM復号化に時間がかかることである。したがって、送信を行う通信制御デバイスから受信を行う通信制御デバイスまでの伝播時間は、調停フェーズ中よりもデータフェーズ中およびデータフェーズの末尾でのADHビットにおいて長い。CAN XLフレームでのデータフェーズから調停フェーズへの遷移時に提供されるDASフィールド中、現在はバスを介して伝送されるメッセージの受信側(受信ノード)にすぎない加入者局は、送信を行う加入者局(送信ノード)と受信ノードとの間での短縮された伝播時間に同期しなければならない。しかし、DASフィールドでこのために提供されるビットは、伝播時間の短縮により早期に終了することがある。それにより、受信ノードはあらゆる状況下でこのビットを確実にサンプリングできるわけではなく、したがって正しく同期することもできない。
【0008】
その結果、データフェーズから調停フェーズに切り替わるときの短縮された伝播時間により生じる受信ノードでの位相誤差が残る。それにより、CAN XLプロトコルは機能しない、または高い信頼性でありロバストな通信は可能でない。
【0009】
さらに、受信ノードが、DASフィールドでのAH1ビットを0としてサンプリングしたときに、現在送信されているフレームのフォーマットエラーを認識することが可能である。これにより、フレームは、受信ノードで無効として破棄される。これは系統的なエラーであり、特定のビットレート設定はCAN XLでは可能でなく、他のビットレート設定はロバストに機能しないことを意味する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、本発明の課題は、前述した問題を解決するシリアルバスシステム用の加入者局およびシリアルバスシステムでの通信方法を提供することである。特に、特定のビットレートに関する例外なく高いデータレートにおいておよびフレーム当たりの使用データ量の増加時にも通信の高いエラーロバスト性を実現可能である、シリアルバスシステム用の加入者局およびシリアルバスシステムでの通信方法が提供される。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この課題は、請求項1の特徴を備えるシリアルバスシステム用の加入者局によって達成される。加入者局は、バスシステムの加入者局と少なくとも1つの他の加入者局との通信を制御するため、およびバスシステムのバスから受信された信号を評価するための通信制御デバイスであり、第1の通信フェーズにおけるビット時間が、第2の通信フェーズにおけるビット時間とは異なり得る、通信制御デバイスを備え、通信制御デバイスが、他の加入者局によって生成された送信信号に基づく、バスから受信された信号を、所定のフレームに従ってサンプリングして評価するように設計されており、所定のフレーム内で、第2の通信フェーズから第1の通信フェーズへの遷移を示す所定のフィールドが、所定のフィールドの開始とそれに続く立ち下がりエッジとの間に、論理値1を有する2つまたは3つのビットを有し、通信制御デバイスが、バスから受信された信号からサンプリングしたフレームを、フィールドの開始とそれに続く立ち下がりエッジとの間で論理値1を有する1つのビットのみがサンプリングされたか2つの連続するビットがサンプリングされたかに関係なく、所定のフレームとして、したがって所定のフィールドに関して有効として評価するように設計されており、通信制御デバイスが、所定のフィールドの立ち下がりエッジで同期を実行するように設計されている。
【0012】
加入者局では、DASフィールドに関するサンプリング規則がデータフェーズの最後に実装され、それにより、DASフィールドでのCAN XL受信ノードがロバストに同期することができる。したがって、同期は、ビットタイミング構成または送信信号のパルス幅変調(PWM)の構成に依存しなくなる。ここで、第2の通信フェーズ(データフェーズ)後のビットレート切替えは、第2の通信フェーズ(データフェーズ)から第1の通信フェーズ(調停フェーズ)への遷移時にも非常に高い信頼性で機能する。
【0013】
したがって、加入者局で、CAN XLでの高い信頼性でありロバストな通信が可能にされる。これは、クロック許容差、PWMシンボル長、ビットタイミング設定、またはバスシステムの他のパラメータなどのシステムパラメータの極端な設定においても当てはまる。
【0014】
さらに、有利には、前述の課題を解決するための加入者局の上述した構成は、複雑ではなく、したがって安価に実現可能である。
したがって、バスシステムにおける加入者局により、第1の通信フェーズで、CANから知られている調停を維持し、しかしCANまたはCAN FDに比べて伝送レートをさらに大幅に向上させることが可能である。
【0015】
加入者局によって実施される方法は、バスシステム内にさらに少なくとも1つのCAN加入者局および/または少なくとも1つのCAN FD加入者局があり、これらがCANプロトコルおよび/またはCAN FDプロトコルに従ってメッセージを送信する場合にも使用することができる。
【0016】
加入者局の有利なさらなる形態は、従属請求項に記載されている。
一実施形態によれば、所定のフィールドは、第1の通信フェーズのビット時間を有する4つのビットを有し、所定のフィールドは、論理値1101を有するビットシーケンスを有し、通信制御デバイスは、バスから受信された信号内の論理値1を有するビットをサンプリングした後、フィールドの開始とそれに続く立ち下がりエッジとの間で、バスから受信された信号内で論理値0でサンプリングされ、予想されるビットシーケンス1101の遅くとも第3のビットに関してサンプリングされる次のビットを、予想されるビットシーケンス1101の第3のビットとして評価するように設計されている。
【0017】
ここで、通信制御デバイスは、所定のフィールドの第1のビットが論理的な1としてサンプリングされなかった場合、バスから受信された信号からサンプリングしたフレームを誤りとして評価するように設計されていてもよい。さらに、通信制御デバイスは、所定のフィールドの第1のビットが論理的な1としてサンプリングされる場合、ハード同期をアクティブにするように設計されていてもよい。
【0018】
さらに、通信制御デバイスは、所定のフィールドの第1のビットも第2のビットも論理的な1としてサンプリングされなかった場合、バスから受信された信号からサンプリングしたフレームを誤りとして評価するように設計されていてもよい。ここで、通信制御デバイスは、所定のフィールドの第1のビットが論理的な0としてサンプリングされ、所定のフィールドの第2のビットが論理的な1としてサンプリングされた場合、または所定のフィールドの第1のビットが論理的な1としてサンプリングされ、所定のフィールドの第2のビットが論理的な0としてサンプリングされた場合、バスから受信された信号からサンプリングしたフレームを、所定のフィールドに関して誤りとしてではなく有効として評価するように設計されていてもよい。ここで、通信制御デバイスは、所定のフィールドの第1のビットが論理的な1としてサンプリングされる場合、または所定のフィールドの第2のビットが論理的な1としてサンプリングされる場合、ハード同期または同期をアクティブにするように設計されていてもよい。
【0019】
別の形態によれば、所定のフィールドは、第1の通信フェーズのビット時間を有する5つのビットを有する。ここで、所定のフィールドは、可能であれば論理値11101を有するビットシーケンスを有し、通信制御デバイス(11;31)は、バスから受信された信号内のビットシーケンスの第2のビットに関して論理値1を有するビットをサンプリングした後、バスから受信された信号内で論理値0でサンプリングされ、予想されるビットシーケンスの遅くとも第4のビットに関してサンプリングされる次のビットを、予想されるビットシーケンスの第4のビットとして評価するように設計されている。
【0020】
さらに、通信制御デバイスは、バスから受信された信号からサンプリングしたフレームにおいて、所定のフィールドの第1のビットのサンプリングされた値を無視し、所定のフィールドの第3のビットに関して任意の値を誤りでないと評価するように設計されていてもよく、通信制御デバイスは、所定のフィールドの第2のビットが論理的な0としてサンプリングされた場合、バスから受信された信号からサンプリングしたフレームを誤りとして評価するように設計されている。さらに、通信制御デバイスは、所定のフィールドの第2のビットが論理的な1としてサンプリングされる場合、ハード同期をアクティブにするように設計されていてもよい。
【0021】
可能であれば、加入者局は、バスシステムのバスに送信信号を送信するため、および/またはバスシステムのバスから信号を受信するための送信/受信デバイスをさらに備える。ここで、通信制御デバイスは、送信信号を生成するように設計されていてもよく、通信制御デバイスは、送信信号でのパルス幅変調によって、送信/受信デバイスがその動作モードを第1の通信フェーズで送信するための動作モードに、または第2の通信フェーズで送信するための動作モードに切り替えなければならないことを送信/受信デバイスに通知するように設計されている。
【0022】
さらに、加入者局は、第1の通信フェーズにおいて、ドミナントバスレベルから、ドミナントバスレベルによって上書き可能であるレセシブバスレベルへのバスでの遷移を加速するための信号改良モジュールをさらに備えることができ、加入者局がバス上への送信信号の送信側であり、送信/受信デバイスが、通信制御デバイスが第2の通信フェーズで送信信号をバスシステムのバスに送信する動作モードから、通信制御デバイスが第1の通信フェーズで送信信号をバスシステムのバスに送信する動作モードに切り替わる場合、送信/受信デバイスは、第2の通信フェーズのバスレベルの1つから第1の通信フェーズのレセシブレベルへの遷移を加速するために信号改良モジュールをさらにアクティブにするように設計されていてもよい。
【0023】
所定のフレームが、CAN FDと互換性があるように構成されていることが可能であり、第1の通信フェーズにおいて、バスシステムの加入者局のどれが、後続の第2の通信フェーズでバスへの少なくとも一時的に排他的で衝突のないアクセスを得るかが交渉される。
【0024】
前述した加入者局はバスシステムの一部でよく、バスシステムは、バスと、バスを介して相互にシリアル通信することができるように互いに接続されている少なくとも2つの加入者局とを含む。ここで、少なくとも2つの加入者局のうちの少なくとも1つは、前述した加入者局である。
【0025】
前述の課題は、請求項16に記載のシリアルバスシステムでの通信方法によっても達成される。方法は、バスシステムの加入者局によって実施され、加入者局が、通信制御デバイスを有し、方法が、通信制御デバイスによって、バスシステムの加入者局と少なくとも1つの他の加入者局との通信を制御するステップと、バスシステムのバスから受信された信号を評価するステップであり、第1の通信フェーズにおけるビット時間が、第2の通信フェーズにおけるビット時間とは異なり得る、ステップとを含み、通信制御デバイスが、他の加入者局によって生成された送信信号に基づく、バスから受信された信号を、所定のフレームに従ってサンプリングして評価し、所定のフレーム内で、第2の通信フェーズから第1の通信フェーズへの遷移を示す所定のフィールドが、所定のフィールドの開始とその後の立ち下がりエッジとの間に、論理値1を有する2つまたは3つのビットを有し、通信制御デバイスが、バスから受信された信号からサンプリングしたフレームを、バスから受信された信号においてフィールドの開始とそれに続く立ち下がりエッジとの間で論理値1を有する1つのみのビットがサンプリングされたか2つの連続するビットがサンプリングされたかに関係なく、所定のフレームとして、したがって所定のフィールドに関して有効として評価するように設計されており、通信制御デバイスが、所定のフィールドの立ち下がりエッジで同期を実行する。
【0026】
方法は、加入者局に関して上述したものと同じ利点を提供する。
本発明のさらなる可能な実装形態は、例示的実施形態に関して上述もしくは後述する特徴または実施形態の明示的に言及していない組合せも含む。ここで、当業者は、本発明のそれぞれの基本形態への改良または補完として個別の態様を追加することもできる。
【0027】
以下、添付図面を参照し、例示的実施形態に基づいて、本発明をより詳細に述べる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】第1の例示的実施形態によるバスシステムの簡略ブロック図である。
図2】第1の例示的実施形態による、バスシステムの加入者局が送信することができるメッセージの構造を説明するための図である。
図3】第1の例示的実施形態によるバスシステムの加入者局の簡略的な概略ブロック図である。
図4】第1の例示的実施形態による、加入者局におけるバス信号CAN-XL_HおよびCAN-XL_Lの時間プロファイルを示す図である。
図5】第1の例示的実施形態による、加入者局におけるバス信号CAN-XL_HおよびCAN-XL_Lの差分電圧VDIFFの時間プロファイルを示す図である。
図6】加入者局がメッセージの送信側であるときの、第1の例示的実施形態による加入者局のポートへのフレームの送信時に生じる信号の時間プロファイルを示し、メッセージの送信時に第1の通信フェーズから第2の通信フェーズへの送信/受信デバイスの動作モードの切替えが行われている図である。
図7】加入者局がメッセージの送信側であるときの、第1の例示的実施形態による加入者局のポートへのフレームの送信時に生じる信号の時間プロファイルを示し、メッセージの送信時に第1の通信フェーズから第2の通信フェーズへの送信/受信デバイスの動作モードの切替えが行われている図である。
図8】加入者局がメッセージの送信側であるときの、第1の例示的実施形態による加入者局のポートへのフレームの送信時に生じる信号の時間プロファイルを示し、メッセージの送信時に第1の通信フェーズから第2の通信フェーズへの送信/受信デバイスの動作モードの切替えが行われている図である。
図9】加入者局がメッセージの送信側であるときの、第1の例示的実施形態による加入者局のポートへのフレームの送信時に生じる信号の時間プロファイルを示し、メッセージの送信時に第2の通信フェーズから第1の通信フェーズへの送信/受信デバイスの動作モードの切替えが行われている図である。
図10】加入者局がメッセージの送信側であるときの、第1の例示的実施形態による加入者局のポートへのフレームの送信時に生じる信号の時間プロファイルを示し、メッセージの送信時に第2の通信フェーズから第1の通信フェーズへの送信/受信デバイスの動作モードの切替えが行われている図である。
図11】加入者局がメッセージの送信側であるときの、第1の例示的実施形態による加入者局のポートへのフレームの送信時に生じる信号の時間プロファイルを示し、メッセージの送信時に第2の通信フェーズから第1の通信フェーズへの送信/受信デバイスの動作モードの切替えが行われている図である。
図12】別の加入者局がメッセージの送信側であり、ここで図9図11に従って信号を生成する場合、受信ノードがその受信ポートで受信信号として見る信号状態の時間プロファイルを示す図である。
図13】別の加入者局がメッセージの送信側であり、ここで図9図11に従って信号を生成する場合、受信ノードがその受信ポートで受信信号として予想する信号状態の時間プロファイルを示す図である。
図14】第2の例示的実施形態によるバスシステムの加入者局の概略ブロック図である。
図15】第3の例示的実施形態によるバスシステムの加入者局の概略ブロック図である。
図16】第3の例示的実施形態によるバスシステムの加入者局によって送信することができるメッセージの構造を具体的に説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図面中、特に指示のない限り、同一の要素または機能的に同一の要素には同じ参照符号が付されている。
図1は、例としてバスシステム1を示し、バスシステム1は、特に基本的には、以下に述べるように、CANバスシステム、CAN FDバスシステム、CAN XLバスシステム、および/またはそれらの変形システムのために設計されている。バスシステム1は、特に自動車や航空機などの車両、または病院などで使用することができる。
【0030】
図1では、バスシステム1は、多数の加入者局10、20、30を有し、多数の加入者局10、20、30は、それぞれが、第1のバスワイヤ41および第2のバスワイヤ42を備えたバス40に接続されている。バスワイヤ41、42は、CAN_HおよびCAN_LまたはCAN-XL_HおよびCAN-XL_Lと呼ばれてもよく、送信状態での信号に関して、ドミナントレベルのカップリング後またはレセシブレベルもしくは他のレベルの生成後に電気信号伝送に使用される。バス40を介して、信号の形式でのメッセージ45、46を個々の加入者局10、20、30間でシリアル伝送可能である。図1のギザギザの黒いブロック矢印によって示されるように、バス40での通信中にエラーが発生した場合、任意選択でエラーフレーム47(エラーフラグ)が送信されてもよい。加入者局10、20、30は、例えば自動車の制御機器、センサ、表示装置などである。
【0031】
図1に示されるように、加入者局10は、通信制御デバイス11、送信/受信デバイス12、および位相誤差補償モジュール15を有する。加入者局20は、通信制御デバイス21、送信/受信デバイス22、および任意選択で位相誤差補償モジュール25を有する。加入者局30は、通信制御デバイス31、送信/受信デバイス32、および位相誤差補償モジュール35を有する。加入者局10、20、30の送信/受信デバイス12、22、32は、図1には図示されていないが、それぞれバス40に直接接続されている。
【0032】
通信制御デバイス11、21、31は、それぞれの加入者局10、20、30と、バス40に接続されている加入者局10、20、30のうちの少なくとも1つの他の加入者局とのバス40を介した通信をそれぞれ制御する働きをする。
【0033】
通信制御デバイス11、31は、例えば修正されたCANメッセージ45である第1のメッセージ45の作成および読取りを行う。ここで、修正されたCANメッセージ45は、図2を参照してより詳細に述べるCAN XLフォーマットに基づいて構成されており、CAN XLフォーマットでは、それぞれの位相誤差補償モジュール15、35が使用される。さらに、通信制御デバイス11、31は、必要に応じて、CAN XLメッセージ45またはCAN FDメッセージ46を送信/受信デバイス32に対して提供する、または送信/受信デバイス32から受信するように実装されていてもよい。この場合にも、それぞれの位相誤差補償モジュール15、35が使用される。したがって、通信制御デバイス11、31は、第1のメッセージ45または第2のメッセージ46の作成および読取りを行い、ここで、第1および第2のメッセージ45、46は、それらのデータ伝送規格が異なり、すなわちこの場合にはCAN XLまたはCAN FDである。
【0034】
通信制御デバイス21は、ISO11898-1:2015に準拠した従来のCANコントローラのように、すなわちCAN FD許容の従来型CANコントローラまたはCAN FDコントローラのように実装されていてもよい。さらに、任意選択で位相誤差補償モジュール25があり、位相誤差補償モジュール15、35と同じ機能を有する。通信制御デバイス21は、第2のメッセージ46、例えばCAN FDメッセージ46の作成および読取りを行う。CAN FDメッセージ46には、0~64データバイトが含まれていることがあり、これらはさらに、従来型CANメッセージよりも明らかに速いデータレートで伝送される。特に、通信制御デバイス21は、従来のCAN FDコントローラのように実装されている。
【0035】
送信/受信デバイス22は、ISO11898-1:2015に準拠した従来のCANトランシーバ、またはCAN FDトランシーバのように実装されていてもよい。送信/受信デバイス12、32は、必要に応じて、関連する通信制御デバイス11、31に対してCAN XLフォーマットに従ってメッセージ45を提供する、もしくは現在のCAN FDフォーマットに従ってメッセージ46を提供するように、または関連する通信制御デバイス11、31からメッセージを受信するように実装されていてもよい。
【0036】
2つの加入者局10、30を用いて、CAN XLフォーマットでのメッセージ45の作成および伝送、ならびにそのようなメッセージ45の受信を実現可能である。
図2は、メッセージ45に関してCAN XLフレーム450を示し、CAN XLフレーム450は、通信制御デバイス11によって送信/受信デバイス12のために、バス40への送信用に提供される。この場合、通信制御デバイス11は、図2にも示されているように、この例示的実施形態ではCAN FDと互換性があるものとしてフレーム450を作成する。同じことが、加入者局30の通信制御デバイス31および送信/受信デバイス32にも同様に当てはまる。
【0037】
図2によれば、バス40でのCAN通信のためのCAN XLフレーム450は、異なる通信フェーズ451、452、すなわち調停フェーズ451およびデータフェーズ452に分割されている。フレーム450は、スタートビット(SOF)の後に、調停フィールド453、通信フェーズ451、452間の切替えのためのADSフィールド1510を有する制御フィールド454、データフィールド455、チェックサムフィールド456、ならびに通信フェーズ452、451間の切替えのためのDASフィールド1520があるフレーム終端フィールド457を有する。その後、フレーム終了フィールドEOFが続く。
【0038】
調停フェーズ451において、調停フィールド453での例えばビットID28~ID18を有する識別子(ID)を用いて、どの加入者局10、20、30がメッセージ45、46を最高の優先順位で送信したいか、したがって後続の時間に関して後続のデータフェーズ452で送信するためにバスシステム1のバス40への排他的なアクセスを得るかが、ビット毎に加入者局10、20、30間で交渉される。調停フェーズ451では、CANおよびCAN-FDと同様に物理層が使用される。物理層は、既知のOSIモデル(オープンシステム相互接続モデル)のビット伝送層または層1に対応する。
【0039】
フェーズ451中の重要な点は、既知のCSMA/CR法が使用されることであり、CSMA/CR法は、より優先順位の高いメッセージ45、46が破壊されることなく、加入者局10、20、30がバス40に同時にアクセスすることを許可する。これにより、さらなるバス加入者局10、20、30がバスシステム1に比較的容易に追加され得、これは非常に有利である。
【0040】
CSMA/CR法により、バス40にいわゆるレセシブ状態が存在することになり、このレセシブ状態は、バス40で他の加入者局10、20、30がドミナント状態で上書きされ得る。レセシブ状態では、個々の加入者局10、20、30で高抵抗挙動が生じており、これは、バス回路の寄生と組み合わさって、より長い時定数をもたらす。これは、今日のCAN-FD物理層の最大ビットレートに対する、実際の車両での使用において現在約2メガビット/秒の制限を導く。
【0041】
データフェーズ452では、制御フィールド454の一部に加えて、データフィールド455からのCAN-XLフレームの使用データまたはメッセージ45、ならびにチェックサムフィールド456が送信される。その後、DASフィールド1520が続き、DASフィールド1520は、データフェーズ452からデータフェーズ451に切り替えて戻すために使用される。
【0042】
加入者局10が送信側として調停に勝ち、したがって加入者局10が送信側として送信のためにバスシステム1のバス40への排他的アクセスを有したときに初めて、メッセージ45の送信側は、バス40へのデータフェーズ452のビットの送信を開始する。
【0043】
ごく一般に、CANまたはCAN FDと比較して、CAN XLを用いるバスシステムでは以下:
a)CANおよびCAN FDのロバスト性および使いやすさに寄与する実証済みの特性、特に識別子を用いたフレーム構造およびCSMA/CR法による調停の採用および場合によっては適応、
b)特に毎秒約10メガビットへの正味データ伝送レートの増加、
c)特に約2キロバイトまたは任意の他の値への、フレーム当たりの使用データのサイズの増加、
の異なる特性が実現され得る。
【0044】
図2に示されるように、加入者局10は、第1の通信フェーズとしての調停フェーズ451において、部分的に、特にFDFビット(これを含む)まで、ISO11898-1:2015に従ってCAN/CAN-FDから知られているフォーマットを使用する。それに対し、加入者局10は、FDFビット以降、第1の通信フェーズと、第2の通信フェーズであるデータフェーズ452とにおいて、以下で述べるCAN XLフォーマットを使用する。
【0045】
この例示的実施形態では、CAN XLとCAN FDとに互換性がある。ここで、CAN FDから知られている、以下でXLFビットと呼ばれるresビットが、CAN FDフォーマットからCAN XLフォーマットに切り替えるために使用される。したがって、CAN FDとCAN XLとのフレームフォーマットは、resビットまたはXLFビットまで同じである。受信側は、resビットにおいて初めて、どのフォーマットでフレーム450が送信されるかを認識する。CAN XL加入者局、すなわちここでは加入者局10、30は、CAN FDもサポートする。
【0046】
11ビットの識別子ID28~ID18が使用される図2に示されるフレーム450の代替として、任意選択で、29ビットの識別子が使用されるCAN XL拡張フレームフォーマットも可能である。CAN XL拡張フレームフォーマットは、FDFビットまでは、ISO11898-1:2015からの既知のCAN FD拡張フレームフォーマットと同一である。
【0047】
図2によれば、フレーム450は、SOFビットからFDFビット(これを含む)まで、ISO11898-1:2015に準拠したCAN FDベースフレームフォーマットと同一である。したがって、既知の構造は、本明細書でさらには説明しない。図2において下側の線が太い線分で示されているビットは、フレーム450でドミナントまたは「0」として送信される。図2において上側の線が太い線分で示されているビットは、フレーム450でレセシブまたは「1」として送信される。CAN XLデータフェーズ452では、レセシブレベルとドミナントレベルの代わりに対称的な「1」と「0」のレベルが使用される。
【0048】
一般に、フレーム450の生成には2つの異なるスタッフィング規則が使用される。調停フィールド453でのFDFビットの前まではCAN FDの動的ビットスタッフィング規則が適用され、したがって、連続する5つの同一のビットの後に反転スタッフビットが挿入されている。データフェーズ452で、FCPフィールドの前までは固定スタッフィング規則が適用され、したがって、固定数のビットの後に固定スタッフビットが挿入されている。代替として、ただ1つのスタッフビットの代わりに、2つ以上のビットが固定スタッフビットとして挿入されてもよい。
【0049】
フレーム450では、FDFビットの直後にXLFビットが続き、XLFビットは、その位置から、前述したようにCAN FDベースフレームフォーマットでの「resビット」に対応する。XLFビットは、1、すなわちレセシブとして送信されるとき、それによりフレーム450をCAN XLフレームとして識別する。CAN FDフレームの場合、通信制御デバイス11は、XLFビットを0、すなわちドミナントとして設定する。
【0050】
XLFビットの後、フレーム450でresXLビットが続き、resXLビットは、将来の使用のためのドミナントビットである。resXLは、フレーム450に関して、0、すなわちドミナントとして送信されなければならない。しかし、加入者局10がresXLビットを1、すなわちレセシブとして受信した場合、受信を行う加入者局10は、CAN FDメッセージ46でres=1に関して行われるのと同様に、例えばプロトコル例外状態になる。代替として、resXLビットは正反対に定義されていてもよく、すなわち、1、すなわちレセシブとして送信されることになる。この場合、受信を行う加入者局は、ドミナントresXLビットでプロトコル例外状態になる。
【0051】
resXLビットの後、フレーム450で、所定のビットシーケンスが符号化されるシーケンスADS(調停データスイッチ)が続く。このビットシーケンスは、調停フェーズ451のビットレート(調停ビットレート)からデータフェーズ452のビットレート(データビットレート)への単純で確実な切替えを可能にする。ADSフィールド1510の第1のビットは、ADHビットである。任意選択で、ADHビット内で送信/受信デバイス12、32の動作モードが切り替えられる。送信/受信デバイスの任意選択の動作モードの切替え、およびADHビット中のそれに関連するレベル変動にも関わらず、ADHビットは、少なくともその最後の部分、例えば最後の50%のビットでは論理的な1としてバスに送信される。ADHビットは、調停フェーズ451の最後のビットである。次の3つのビットDH1、DH2、およびDL1は、すでにデータビットレートで送信される。したがって、CAN XLでのビットDH1、DH2、およびDL1は、データフェーズ452の時間的に短いビットである。ビットDH1とDH2は、それぞれ論理値1を有する。最後のビットは、論理値0を有するビットDL1である。受信ノードは、ビットレート切替え後、ビットDL1の開始時の立ち下がりエッジに同期する。ADSフィールド1510は、第1の通信フェーズ451から第2の通信フェーズ452に遷移するために使用される。
【0052】
シーケンスADSの後に、フレーム450で、データフィールド455の内容を特徴付けるSDTフィールドが続く。SDTフィールドの内容は、データフィールド455に含まれている情報のタイプを提示する。例えば、SDTフィールドは、データフィールド455に「インターネットプロトコル」(IP)フレーム、またはトンネルされたイーサネットフレームもしくは他のフレームがあるかどうかを提示する。
【0053】
SDTフィールドにSECフィールドが続き、SECフィールドは、フレーム450がCANセキュリティプロトコルで保護されているか否かを提示する。SECフィールドは1ビット幅であり、SDTフィールドと同様に、データフィールド455に含まれている情報のタイプを提示する機能を有する。
【0054】
SECフィールドの後にDLCフィールドが続く。DLCフィールドにはデータ長コード(DLC=Data Length Code)が挿入され、データ長コードは、フレーム450のデータフィールド455内のデータバイト数を提示する。データフィールド455内のデータバイト数は、1からデータフィールド455の最大バイト数またはデータフィールド長までの任意の値を取ることができる。最大データフィールド長が特に2048ビットである場合、DLC=0が1バイトのデータフィールド長を意味し、DLC=2047が2048バイトのデータフィールド長を意味すると仮定して、データ長コード(DLC)は11ビットを必要とする。代替として、例えばCANの場合のように、長さ0のデータフィールド455が許可されていてもよい。この場合、DLC=0は、例えば、0バイトを有するデータフィールド長を符号化する。符号化可能な最大データフィールド長は、例えば11ビットでは、(211)-1=2047である。
【0055】
DLCフィールドの後、フレーム450でSBCビットカウンタフィールド(Stuff-Bit-Count)が続く。このフィールドでは、調停フィールド453で送信された動的スタッフビットの数が提示されている。受信ノードは、SBCビットカウンタフィールドの情報を使用して、受信ノードが正しい数の動的スタッフビットを受信したかどうかをチェックする。
【0056】
SBCビットカウンタフィールドの後には、プリフェイスCRCとも呼ばれるプリアンブルチェックサムPCRCが続く。プリアンブルチェックサムPCRCは、フレーム450のフレームフォーマット、すなわち、プリアンブルチェックサムPCRCの開始までのすべての動的スタッフビットおよび任意選択で固定スタッフビットを含む、プリアンブルチェックサムPCRCの開始までのSOFビットを備えた、フレーム450の開始からのすべての可変ビットを保護するためのチェックサムである。プリアンブルチェックサムPCRCの長さ、したがって巡回冗長検査(CRC)に従ったチェックサム多項式の長さは、所望のハミング距離に対応して選択することができる。
【0057】
プリアンブルチェックサムPCRCの後に、フレーム450で、フィールドVCID(Virtual CAN Bus ID)が続く。VCIDフィールドは、1バイトの長さを有する。VCIDフィールドには、仮想CANバスの番号が含まれている。
【0058】
フィールドVCIDの後、フレーム450で、フィールドAF(Acceptance Field)が続く。AFフィールドは、32ビットの長さを有する。AFフィールドには、アクセプタンスフィルタリング用のアドレスまたは他の値が含まれる。
【0059】
フィールドAFの後に、フレーム450で、データフィールド455(Data Field)が続く。データフィールド455はPバイトBからなり、ここで、Pは、前述したようにDLCフィールドに符号化されている。Pは、1以上の自然数である。
【0060】
データフィールド455の後に、フレーム450で、フレームチェックサムFCRCおよびFCPフィールドを備えたチェックサムフィールド456が続く。フレームチェックサムFCRCは、例えば32ビットを有するフレームチェックサムFCRCのビットからなる。フレームチェックサムFCRC、したがってCRC多項式の長さは、所望のハミング距離に対応して選択することができる。フレームチェックサムFCRCは、フレーム450全体を保護する。代替として、任意選択で、データフィールド455のみがフレームチェックサムFCRCによって保護されている。
【0061】
フレームチェックサムFCRCの後に、フレーム450でFCPフィールドが続き、ここで、FCP=フレームチェックパターンである。FCPフィールドは、特にビットシーケンス1100を備えた4つのビットからなる。受信ノードは、FCPフィールドを用いて、受信ノードが送信データストリームとビット同期しているかどうかをチェックする。さらに、受信ノードは、FCPフィールドの立ち下がりエッジに同期する。
【0062】
FCPフィールドの後に、フレーム終端フィールド457が続く。フレーム終端フィールド457は、2つのフィールド、すなわち、DASフィールド1520と、少なくとも1つのビットACKおよびビットACK-Dlmを備えた確認フィールドまたはACKフィールドとからなる。
【0063】
DASフィールド1520は、シーケンスDAS(Data Arbitration Switch;データ調停スイッチ)を含み、シーケンスDASに所定のビットシーケンスが符号化される。ビットシーケンスDAH、AH1、AL1は、データフェーズ452のデータビットレートから調停フェーズ451の調停ビットレートへの簡単で安全な切替えを可能にする。さらに、DASフィールド1520中、送信/受信デバイス12、32の動作モードは、任意選択で動作モードFASTから動作モードSLOWに切り替えられる。DASフィールド1520は、図2では、ビットDAH、AH1、AL1、AH2を有する。ビットAH2は、確認フィールド(ACK)に対するスペースホルダとして働く。DASフィールドは、少なくとも3つのビットを有する。図2の例では、シーケンスDASのビットシーケンスは、それぞれ論理値1を有する調停ビットDAHおよび調停ビットAH1を有する。DAHビット内で、物理層、すなわち送信/受信デバイス12、32の動作モードは、FAST_TXまたはFAST_RXからSLOWに切り替えられる。ビットAH1には、ビットAL1(論理的な0)およびビットAH2(論理的な1)が続く。2つのビットDAHおよびAH1により、送信/受信デバイス11の動作モード切替えに十分な時間があり、すべての加入者局10、30がAL2ビット(論理的な0)の開始時のエッジの前に1調停ビット時間よりも大幅に長いレセシブレベルを見ることが保証される。これにより、現在バスでの通信に再統合されているバスシステムの加入者局の確実な同期が保証される。
【0064】
フレーム終端フィールド457では、DASフィールド1520のシーケンス後に確認フィールド(ACK)が続く。確認フィールドで、フレーム450の正しい受信の肯定応答または否定応答のためのビットが設けられている。図2の例では、代替としてACKスロットとも呼ぶことができ、任意選択で複数のビットを有するACKビットと、ACKdlmビットとが設けられている。任意選択で、さらに、NACKビットおよびNACK-dlmビットもあり得る。受信を行う加入者局10、30は、フレーム450を正しく受信した場合、ACKビットをドミナントとして送信する。送信を行う加入者局は、ACKビットをレセシブとして送信する。したがって、ACKビットまたはACKスロットは、受信ノードからのフィードバックのためのプレースホルダである。したがって、フレーム450でバス40に元々送信されたビットが、受信を行う加入者局10、30によって上書きされ得る。ACK-dlmビットは、他のフィールドから分離するために使用されるレセシブビットとして送信される。NACKビットおよびNACK-dlmビットは、受信を行う加入者局がフレーム450の正しくない受信をバス40で通知できるようにするために使用される。これらのビットの機能は、ACKビットおよびACK-dlmビットの機能と同様である。
【0065】
フレーム終端フィールド457の後に、フレーム450で、終了フィールド(EOF=End of Frame)が続く。終了フィールド(EOF)のビットシーケンスは、フレーム450の最後を特徴付けるために使用される。終了フィールド(EOF)は、フレーム450の最後に8つのレセシブビットが送信されるようにする。これは、フレーム450内で生じ得ないビットシーケンスである。それにより、加入者局10、20、30によってフレーム450の終了が確実に認識され得る。
【0066】
終了フィールド(EOF)は、ACKビットでドミナントビットが見られたか、それともレセシブビットが見られたかに応じて異なる長さを有する。送信を行う加入者局がACKビットをドミナントとして受信したとき、終了フィールド(EOF)は7つのレセシブビットを有する。そうでない場合には、終了フィールド(EOF)は、5つだけのレセシブビットの長さである。
【0067】
終了フィールド(EOF)の後、フレーム450で、図2には図示されていないフレーム間スペース(IFS-Inter Frame Space)が続く。このフレーム間スペース(IFS)は、ISO11898-1:2015に対応したCAN FDの場合と同様に設計されている。
【0068】
図3は、通信制御デバイス11、送信/受信デバイス12、および通信制御デバイス11の一部である位相誤差補償モジュール15を備えた加入者局10の基本構造を示す。加入者局30は、図3に示されるのと同様に構成されているが、図1による位相誤差補償モジュール35は、通信制御デバイス31および送信/受信デバイス32から独立して配置されている。したがって、加入者局30について個別には述べない。
【0069】
図3によれば、加入者局10は、通信制御デバイス11および送信/受信デバイス12に加えて、通信制御デバイス11が割り当てられているマイクロコントローラ13と、システムASIC16(ASIC=特定用途向け集積回路)とを有する。システムASIC16は、代替として、加入者局10の電子回路アセンブリに必要な複数の機能が組み合わされたシステムベースチップ(SBC)であってもよい。システムASIC16には、送信/受信デバイス12に加えて、送信/受信デバイス12に電気エネルギーを供給するエネルギー供給デバイス17が設置される。通常、エネルギー供給デバイス17は、5Vの電圧CAN_Supplyを送達する。しかし、要件に応じて、エネルギー供給デバイス17は、異なる値を有する異なる電圧を送達することができる。追加または代替として、エネルギー供給デバイス17は、電源として設計されていてもよい。
【0070】
位相誤差補償モジュール15は、所定のDASフィールド1520および任意選択でさらに図2のADSフィールド1510をフレーム450に挿入する挿入ブロック151と、通知ブロック152とを有する。ブロック151、152については以下でより詳細に述べる。
【0071】
送信/受信デバイス12は、送信モジュール121および受信モジュール122、ならびに任意選択で信号改良モジュール125をさらに有する。以下では常に送信/受信デバイス12に言及するが、代替として、送信モジュール121の外部の別個のデバイスに受信モジュール122を設けることも可能である。送信モジュール121および受信モジュール122は、従来の送信/受信デバイス22と同様に構成されていてもよい。送信モジュール121は、特に、少なくとも1つの演算増幅器および/または少なくとも1つのトランジスタを有することができる。受信モジュール122は、特に、少なくとも1つの演算増幅器および/または少なくとも1つのトランジスタを有することができる。
【0072】
送信/受信デバイス12は、バス40、より正確に言うとCAN_HまたはCAN-XL_H用のバス40の第1のバスワイヤ41、およびCAN_LまたはCAN-XL_L用のバス40の第2のバスワイヤ42に接続されている。第1および第2のバスワイヤ41、42に電気エネルギー、特に電圧CAN-Supplyを供給するためのエネルギー供給デバイス17用の電圧供給が、少なくとも1つのポート43を介して行われる。接地またはCAN_GNDとの接続は、ポート44を介して実現されている。第1および第2のバスワイヤ41、42は、終端抵抗49で終端されている。
【0073】
第1および第2のバスワイヤ41、42は、見やすくするために図3にはこの接続を示していないが、送信/受信デバイス12において、送信機とも呼ばれる送信モジュール121だけでなく、受信機とも呼ばれる受信モジュール122にも接続されている。
【0074】
バスシステム1の動作時、送信モジュール121は、通信制御デバイス11の送信信号TXDまたはTxDを、バスワイヤ41、42に関する対応する信号CAN-XL_HおよびCAN-XL_Lに変換し、これらの信号CAN-XL_HおよびCAN-XL_Lを、バス40でCAN_HおよびCAN_L用のポートに送信する。
【0075】
受信モジュール122は、図4によるバス40から受信された信号CAN-XL_HおよびCAN-XL_Lから、受信信号RXDまたはRxDを生成し、図3に示されるように、これを通信制御デバイス11に転送する。アイドルまたはスタンバイ状態(IdleまたはStandby)を除いて、受信モジュール122を備えた送信/受信デバイス12は、通常動作では、送信/受信デバイス12がメッセージ45の送信側であるか否かに関係なく、バス40でのデータまたはメッセージ45、46の伝送を常にリッスンする。
【0076】
図4の例によれば、信号CAN-XL_HおよびCAN-XL_Lは、少なくとも調停フェーズ451において、CANから知られているようにドミナントおよびレセシブバスレベル401、402を有する。バス40に差分信号VDIFF=CAN-XL_H-CAN-XL_Lが生じ、これは、調停フェーズ451に関して図5に示されている。ビット時間t_bt1を有する信号VDIFFの個々のビットは、調停フェーズ451では例えば0.7Vの受信閾値T_aで認識され得る。データフェーズ452では、信号CAN-XL_HおよびCAN-XL_Lのビットは、調停フェーズ451よりも速く、すなわち短いビット時間t_bt2で送信される。これは、図6図9に基づいてより詳細に説明されている。したがって、データフェーズ452における信号CAN-XL_HおよびCAN-XL_Lは、少なくともそれらのビットレートがより速いという点において、従来の信号CAN_HおよびCAN_Lとは異なる。
【0077】
図4での信号CAN-XL_H、CAN-XL_Lに関する状態401、402のシーケンス、およびそこから得られる図5の電圧VDIFFのプロファイルは、加入者局10の機能を説明する目的のものにすぎない。バス状態401、402に関するデータ状態のシーケンスは、必要に応じて選択可能である。
【0078】
任意選択で存在する信号改良モジュール125は、SIC機能(SIC=Signal Improvement Capability;信号改良機能)を実行するように設計されている。SIC機能は、調停フェーズ451で、ドミナント(図5の401)からレセシブ(図5の402)へのバスワイヤ上の差分電圧VDIFFの遷移が加速されるようにする。信号改良モジュール125は、送信/受信デバイス12のTXD入力における0から1への遷移時にSIC機能をトリガする。SIC機能(SIC=Signal Improvement Capability;信号改良機能)は、ドミナントおよびレセシブ信号状態を有する第1の動作モードB_451(SLOW)中にのみアクティブである。
【0079】
言い換えると、送信モジュール121は、第1の動作モードB_451(SLOW)に切り替えられているとき、図4に従って、バス40のバスラインの2つのバスワイヤ41、42に関して異なるバスレベルを備えたバス状態402として第1のデータ状態を生成し、バス40のバスラインの2つのバスワイヤ41、42に関して同じバスレベルを備えたバス状態401として第2のデータ状態を生成する。
【0080】
さらに、送信モジュール121は、データフェーズ452を含む第2の動作モードB_452_TX(FAST_TX)における信号CAN-XL_H、CAN-XL_Lの時間プロファイルのために、より高いビットレートでビットをバス40に送信する。CAN-XL_HおよびCAN-XL_L信号は、データフェーズ452でさらに、CAN FDの場合とは異なる物理層を用いて生成され得る。それにより、データフェーズ452でのビットレートは、CAN FDの場合よりもさらに増加させることができる。データフェーズ452でフレーム450の送信側ではない加入者局は、その送信/受信デバイスで第3の動作モードB_452_RX(FAST_RX)を設定する。
【0081】
動作モードB_451から動作モードB_452_TX(FAST_TX)または動作モードB_452_RX(FAST_RX)への切替えを通知するために、通信制御デバイス11は、送信信号TxDのパルス幅変調(PWM)を行う。この目的のために、通信制御デバイス11は、CAN XLフレーム450の論理ビット毎に1つ以上のPWMシンボルを使用する。基本的に、PWMシンボルは2つのフェーズ、すなわち0フェーズと1フェーズとからなる。さらに、PWMシンボルは2つの等しいエッジ(例えば、2つの立ち上がりエッジ)によって区切られる。
【0082】
図3の位相誤差補償モジュール15、特にその挿入ブロック151は、加入者局10がフレーム450の送信側として動作するときに、DASフィールド1520および任意選択でさらに図2のADSフィールド1510をフレーム450に挿入するために使用される。さらに、位相誤差補償モジュール15、特にその通知ブロック152は、動作モードB_451(SLOW)、B_452_TX(FAST_TX)間の切替えに関して後述するように、パルス幅変調(PWM)を実行することができる。
【0083】
図6は、時間tにわたって、フレーム450の調停フェーズ451からデータフェーズ452への切替え、言い換えるとフェーズ451からフェーズ452への遷移の領域における、最終的に得られるデジタル送信信号TxDを示す。フレーム450では、ビットresXLの後、ADSフィールド1510が挿入される。送信信号TxDは、以下でより詳細に述べるように、フレーム450の送信側としての通信制御デバイス11によって、送信/受信デバイス12にシリアル送信される。ビットADH(これを含む)まで、フレーム450のビットはビット持続時間t_bt1を有する。データフェーズ452の最初のビットであるビットDH1から、フレーム450のビットはビット持続時間t_bt2を有する。図6の例では、ビット持続時間t_b2はビット持続時間t_bt1よりも短い。
【0084】
すでに図2およびまた図6に示されているように、本例示的実施形態では、ADHビットは論理値1で送信される。
図7は、時間tにわたって、通信制御デバイス11と送信/受信デバイス12との間のポートTXDでシリアルで生じる、送信信号TxDから得られる状態を示す。このために、通信制御デバイス11、例えば位相誤差補償モジュール15、特に通知ブロック152は、ADHビットおよびデータフェーズ452で、図6の送信信号TxDのパルス幅変調(PWM)を実行する。より正確に言うと、図6の送信信号TxDのパルス幅変調(PWM)は、ADHビットで始まる。ADHビットの前の調停フェーズ451では、送信信号TxDのパルス幅変調(PWM)は行われない。
【0085】
送信/受信デバイス12は、TXDポートでの信号のエッジの高い頻度により、調停フェーズの動作モードB_451から高速動作モードB_452_TX(FAST_TX)、B_452_RX(FAST_RX)の1つに切り替わるべきか、それともそこに留まるべきかを認識する。送信/受信デバイス12は、前に送信されたresXLビットの値で、動作モードB_452_TX(FAST_TX)または動作モードB_452_RX(FAST_RX)に切り替えるべきかどうかを認識する。追加または代替として、送信/受信デバイス12は、最初のPWMシンボルまたはS個の最初のPWMシンボルの値で、どの動作モードに切り替わるべきかを認識する。Sは、1以上の自然数である。ポートTXDでの信号は、実行されたPWM符号化により、TxD信号に対して時間T_V1だけ遅延される。通知ブロック152は、送信/受信デバイスが切り替えられる動作モードに対応して、最初のS個のPWMシンボルを生成する。したがって、最初のS個のPWMシンボルは、ADHビットの値に関係なく符号化される。追加または代替として、最初のS個のPWMシンボルを送信ノードで使用して、バス40上の差分電圧VDIFFを、ドミナント+2Vから、データフェーズ452での論理的な0に関する差分電圧VDIFF+1Vを介して、データフェーズ452での論理的な1に関する差分電圧VDIFF-1Vまで段階的に遷移させることを達成することができる。
【0086】
図7の例では、PWMシンボルSB_D0において、0フェーズが1フェーズよりも長く、これは、送信信号TxDでの論理値0を有するデータフェーズ452でのビットに対応する。一方、PWMシンボルSB_D1では、1フェーズが0フェーズよりも長く、これは、論理値1を有するビットに対応する。当然、PWMシンボルSB_D0、SB_D1は、異なる形で定義することもでき、特に前述したのとは正反対にすることもできる。
【0087】
さらに、図7の例では、ポートTXDでの信号における最初の2つのPWMシンボルは論理値0(SB_D0)を有する。送信/受信デバイス12、32は、最初の2つのPWMシンボルを評価して、どの動作モードに切り替わるべきかを決定する。図7の本例では、送信ノードの送信/受信デバイス12、32は、論理値0を有する2つのPWMシンボルにより、動作モードB_452_TX(FAST_TX)に切り替わるべきである。動作モードB_452_RX(FAST_RX)への切替えは、ADHビットでの最初の2つのPWMシンボルが少なくとも1つの他の値であることにより通知される。
【0088】
図7に示されるように、通信制御デバイス11、例えば位相誤差補償モジュール15、特に通知ブロック152は、ADHビットの後続のすべてのPWMシンボルが論理値1で送信されるように、図6の送信信号TxDのADHビットの後続のパルス幅変調(PWM)を実行する。したがって、ADHビットの第2の部分、すなわちデータフェーズ452に関する送信/受信デバイス12、32の動作モードB_452のタイプの通知後の部分には、シンボルSB_D1だけが存在する。
【0089】
図8は、図7のポートTXDでの状態から送信/受信デバイス12によって復号化された信号TxD_TCの時間プロファイルを示す。図8の例では、送信/受信デバイス12は、ビットADHにおいて、フレーム450がビット持続時間t_bt1のビットを有するその動作モードB_451を、フレーム450がビット持続時間t_bt2のビットを有する動作モードB_452_TX(FAST_TX)に切り替える。さらに、前述したように、フレーム450のビットは、動作モードB_451において、動作モードB_452_TXとは異なる物理層を用いてバス40に送信することができる。
【0090】
したがって、送信/受信デバイス12は、図7のポートTXDでの状態を、図8による信号TxD_TCに復号化する。ADHビットに関して、ADHビットの最初の部分ADH_0については論理値0が得られる。図8でのADHビットの第2の最後の部分ADH_1については論理値1が得られる。
【0091】
ポートTXDでのPWMシンボルSB_D0、SB_D1のそれぞれは、それぞれのPWMシンボルSB_D0、SB_D1の最後に復号化され得る。したがって、送信/受信デバイス12での復号化は、バス40にシリアル送信される信号TxD_TCに追加の遅延期間T_V2を挿入する。遅延期間T_V2は、図7に示されているように、PWMシンボルSB_D0、SB_D1のうちの1つのシンボル長の期間に等しい。送信を行う加入者局でのPWM符号化および復号化によって生成される位相誤差T_Pは、T_P=T_V1+T_V2である。
【0092】
送信/受信デバイス12は、図7のポートTXDでの状態を図8による信号TxD_TCに復号化した後、信号TxD_TCを、差分電圧VDIFFとしてバス40に送信する。信号TxD_TCに基づく差分電圧VDIFFは、バス40で受信ノードによって受信され得る。受信ノードでの関連の信号はここでは示されていない。
【0093】
データフェーズ452の後、送信信号TxDのパルス幅変調(PWM)が終了する。動作モードB_452_TX(FAST_TX)または動作モードB_452_RX(FAST_RX)から動作モードB_451(SLOW)への切替えは、PWM符号化をオフにすることによって、したがって多くのエッジがないことによって通知される。
【0094】
図9は、時間tにわたって、フレーム450のデータフェーズ452から調停フェーズ451への切替えの領域における、最終的に得られるデジタル送信信号TxDを示す。フレーム450では、ビットFCP3、FCP2、FCP1、FCP0の後にDASフィールド1520が挿入される。データフェーズ452の最後のビットであるビットFCP0(これを含む)まで、フレーム450のビットはまだビット持続時間t_bt2を有する。後続の調停フェーズ451の最初のビットであるビットDAHから、フレーム450のビットはビット持続時間t_bt1を有する。図6を参照してすでに説明したように、ここで述べる例におけるビット持続時間t_b2は、ビット持続時間t_bt1よりも短い。
【0095】
すでに図2およびまた図9に示されているように、本例示的実施形態では、DAHビットとそれに続くAH1ビットが、フレーム450において論理値1で送信される。
図10は、時間tにわたって、通信制御デバイス11と送信/受信デバイス12との間のポートTXDでシリアルで生じる、送信信号TxDから得られる状態を示す。すでに前述したように、通信制御デバイス11、例えば位相誤差補償モジュール15、特に通知ブロック152は、データフェーズ452で、図9の送信信号TxDのパルス幅変調(PWM)を実行する。前述したように、送信/受信デバイスにおけるPWM符号化およびその後のPWM復号化により、遅延T_V1、T_V2が生じる。
【0096】
図9の送信信号TxDのパルス幅変調(PWM)は、FCP0ビットで、すなわちDAHビットの前に終了する。調停フェーズ451では、すなわちFCP0ビットの後では、図10の信号TXDにより、送信信号TxDのパルス幅変調(PWM)は行われない。
【0097】
データフェーズ452の最後に、送信/受信デバイス12は、TXDポートでの信号の多くのエッジがないので、ここではより低い周波数で、データフェーズ452の動作モードから調停フェーズの動作モードB_451に切り替わるべきか、それともそこに留まるべきかを認識する。動作モードB_451では、送信/受信デバイス12は、図10の信号TxDのPWM復号化をもはや実行しない。それにより、図11の信号TxD_TCでのDAHビット中、データフェーズ452中に信号TxD_TCにおいて、信号TxDのPWM符号化およびPWM復号化によって含まれていた遅延T_P=T_V1+T_V2がなくなる。したがって、図11の信号TxD_TCでのAH1ビットは、T_P=T_V1+T_V2だけ早く終了し、これは、受信機でのT_Pの位相誤差をもたらす。
【0098】
図11の例では、送信/受信デバイス12は、データフェーズ452の動作モードB_452_TX(FAST_TX)を、フレーム450がビット持続時間t_bt1のビットを有する動作モードB_451に切り替える。さらに、前述したように、物理層を切り替えることができる。
【0099】
図12に示されているように、受信ノードでの通信制御デバイス11(プロトコルコントローラ)は、データフェーズ452中、送信ノードから受信されたデジタル信号RxDのエッジに同期される。図9図10を参照して前述したように、送信ノードがDAHビットからPWM符号化を停止すると、送信ノードから受信ノードまでの伝播時間は、T_P=T_V1+T_V2だけ短くなる。受信側(受信ノード)において突然もたらされるこの位相誤差は、位相ジャンプに相当する。しかし、受信ノードは、図13でのデジタル信号RxD_Eで示されるように、AH1ビットの終了がT_P=T_V1+T_V2だけ遅いことを予想している。
【0100】
位相ジャンプの結果、受信ノードに関して、図12による受信ノードでのAH1ビットは、図13の信号RxD_Eに従って受信ノードによって予想されるよりもT_P=T_V1+T_V2だけ早く終了する。この位相ジャンプを補償するために、加入者局10、20、30の位相誤差補償モジュール15および位相誤差補償モジュール25、35は、以下に述べるように対処する。
【0101】
受信ノード、より正確に言うとその通信制御デバイス11は、図13の信号RxD_Eにおける前の同期に従って、時点t_1、t_2で受信信号RxDをサンプリングする。サンプリング時点t_1は、DAHビットのサンプリング時点である。サンプリング時点t_2は、AH1ビットのサンプリング時点である。
【0102】
受信ノードとしての関連の加入者局10、20、30での位相誤差補償モジュール15、25、35は、DAHのビット位置から始まって、論理値1を有する1~2個の直接続いてサンプリングされるビットを許容する。その後、論理値0でサンプリングされる最初のビットが、AL1ビットとして受け入れられる。
【0103】
図12および図13の例では、受信ノードは、図12の信号RxDをビットシーケンスDAH、AL1としてサンプリングする。したがってAH1ビットはない。しかし、受信ノードの位相誤差補償モジュール15、25、35は、AH1ビットの欠如を許容する。
【0104】
ごく一般に、受信ノードの位相誤差補償モジュール15、25、35は、DAHビット後の最初の立ち下がりエッジがAL1ビットの開始を定義すると仮定している。すべての受信ノードは、図12での時点t_SYに対応するAL1ビットの開始時のエッジに同期する。
【0105】
さらに、論理的な1としてのDAHビットのサンプリング時、ハード同期がアクティブにされる。したがって、次のエッジでは、ハード同期、すなわちあらゆるサイズの位相誤差を修正することができる同期が実行される。図12に示されるように、時点t_SYでハード同期が実行される。
【0106】
さらに、受信ノードの位相誤差補償モジュール15、25、35は、論理的な0としてのDAHビットのサンプリングがフォーマットエラーとして評価されるように設計されている。この場合、そのようなサンプリングされたフレームは誤りとして評価される、および/または無効として破棄される。さらに、エラーフレーム47をバス40に送信することができる。
【0107】
これにより、受信ノードが、データフェーズ452から調停フェーズ451への切替え後の適切な同期によって、伝播時間短縮によって引き起こされる位相ジャンプと、AH1ビットの欠如の可能性とを補償することが保証される。
【0108】
前述したDASフィールドの変形形態によれば、DASフィールドは、その末尾に、上述した4つのビットよりも多くのビットを有することができる。しかし、正味データレートの最大化に関しては、4つのビットが有利である。
【0109】
追加または代替として、加入者局10、20、30のうちの少なくとも1つが、図13によるDAHビットのサンプリング点t_1まで安定したレセシブレベルがバス40上で設定されることを保証するように設計されることも可能である。
【0110】
このために、例えば送信/受信デバイス12において、前述した信号改良モジュール125は、動作モードB_451(SLOW)モードにおいてだけでなく、0から1へのTxD信号の遷移時にSIC機能(SIC=Signal Improvement Capability;信号改良機能)を実行するように設計されている。SIC機能を実行するためのこの第1のトリガ条件については前述した。追加または代替として、前述した信号改良モジュール125は、SIC機能の実行のための第2のトリガ条件を実現可能にするように設計することができる。
【0111】
SIC機能を実行するための第2のトリガ条件は、図9に示されるように、送信ノードの送信/受信デバイス12、22、32が動作モード452_TX(FAST_TX)から調停フェーズ451の動作モードB_451に変更されることである。その結果、信号改良モジュール125によって実行されるSIC機能により、データフェーズ452のバスレベルから調停フェーズ451のレセシブレベルへの遷移が加速される。SIC機能を実行するための第2のトリガ条件は、通信制御デバイス11が動作モードの変更を送信/受信デバイスに通知する方法に依存しない。
【0112】
これにより、有利には、受信ノードがDAHビットを論理的な1としてサンプリングすることができることを保証することができる。
信号改良モジュール125の上述した構成の別の利点は、SIC機能によるデータフェーズ452のレベルから調停フェーズ451のレセシブレベルへの加速された遷移によって、より大きなCANトポロジーの使用が可能にされることである。有利には、それにより、信号改良モジュール125は、トポロジーの設計時に上記のレベル遷移を個別に考慮する必要がないことも実現可能にする。
【0113】
送信/受信デバイス12、32の動作モードの切替えが行われない場合、図6の送信信号TxDに関する通知を符号化するためのパルス幅変調(PWM)も行われない。したがって、送信/受信デバイス12、32が送信ノードとして機能するとき、送信/受信デバイス12、32を差分電圧VDIFFとしてバス40にドライブする信号は、図6の送信信号TxDと同一である。PWM符号化が行われず、したがって復号化も行われないので、送信/受信デバイス12、32での送信信号TxD_TCと送信信号TxDとの間に位相誤差T_Pは一度も発生しない。
【0114】
図14は、第2の例示的実施形態による、位相誤差補償モジュール15Aを備える加入者局10Aを示す。加入者局10Aは、位相誤差補償モジュール15Aを除いて、前述の例示的実施形態による加入者局10と同様の構造を有する。
【0115】
位相誤差補償モジュール15Aは、加入者局10Aが受信ノードとして機能する場合、DAH=0の値を許容するように設計されている。
すなわち、図13によるDAHビットは信号RxD_Eにおいて実際には論理的な1であり得るが、図12の信号RxDではDAHビットが論理的な0としてサンプリングされ、したがって位相誤差補償モジュール15AはそのようなDAHビットを許容する。
【0116】
しかし、位相誤差補償モジュール15Aは、論理的な1としてのDAHビットのサンプリングもAH1ビットのサンプリングもフォーマットエラーとして評価されないように設計されている。この場合、そのようなサンプリングされたフレームは誤りとして評価される、および/または無効として破棄される。さらに、エラーフレーム47をバス40に送信することができる。
【0117】
さらに、論理的な1としてのDAHビットまたはAH1ビットのサンプリング時、ハード同期または同期がアクティブにされる。したがって、ここでも、図12の時点t_SYで、あらゆるサイズの位相誤差を修正することができる同期が行われる。
【0118】
また、このようにして、受信ノードとしての加入者局10Aが、データフェーズ452から調停フェーズ451への切替え後に、適切な同期によって、伝播時間短縮によって引き起こされる位相ジャンプと、AH1ビットの欠如の可能性とを補償することが保証される。
【0119】
第2の例示的実施形態における位相ジャンプのそのような補償の利点は、データフェーズ452のレベルから調停フェーズ451のレセシブレベルへのバス40での遷移のためにより多くの時間を利用可能であることである。
【0120】
図15は、第3の例示的実施形態による位相誤差補償モジュール15Bを備えた加入者局10Bを示す。加入者局10Bは、位相誤差補償モジュール15Bを除いて、第1の例示的実施形態による加入者局10と同様の構造を有する。
【0121】
位相誤差補償モジュール15Bは、加入者局10Bが受信ノードとして機能する場合、DAHビットを無視するように設計されている。さらに、位相誤差補償モジュール15Aは、加入者局10Bが送信ノードとして機能する場合、図16に示されるように、修正されたDASフィールド1521をフレーム450に挿入するように設計されている。
【0122】
修正されたDASフィールド1521は、5つのビットDAH、AH1、AH1B、AL1、AH2を有する。したがって、図2のDASフィールドとは異なり、DASフィールド1521は、フレームフォーマットに追加のビット、すなわちビットAH1Bを有する。
【0123】
さらに、位相誤差補償モジュール15Bは、加入者局10Bが受信ノードとして機能する場合、AH1のビット位置から始まって、論理値1を有する1~2個の直接続いてサンプリングされるビットを許容するように設計されている。AH1ビットを論理的な1としてサンプリングしたとき、位相誤差補償モジュール15Bは、ハード同期をアクティブにする。図12に示されるように、時点t_SYにおいてハード同期が実行される。
【0124】
しかし、位相誤差補償モジュール15Bは、論理的な0としてのAH1ビットのサンプリングがフォーマットエラーとして評価されるように設計されている。この場合、そのようなサンプリングされたフレームは誤りとして評価される、および/または無効として破棄される。さらに、エラーフレーム47をバス40に送信することができる。
【0125】
位相ジャンプのそのような補償の利点は、データフェーズ452のレベルから調停フェーズ451のレセシブレベル402へのバス40での遷移のためにより多くの時間を利用可能であることである。しかし、DASフィールド1521は、追加のビットAH1Bにより、制御ビットのより大きいオーバーヘッドを生成する。それにより、正味データレートは、前の例示的実施形態に比べて減少される。
【0126】
加入者局10、20、30、バスシステム1、およびそこで実施される方法の前述したすべての構成は、個別に、またはすべての可能な組合せで使用することができる。特に、前述した例示的実施形態のすべての特徴および/またはそれらの変形形態は、任意に組み合わせられ得る。追加または代替として、特に以下の変形形態が考えられる。
【0127】
CANバスシステムの例で本発明を前述してきているが、本発明は、異なる通信フェーズのために生成されるバス状態が異なる、2つの異なる通信フェーズが使用される各通信ネットワークおよび/または通信方法で使用されてもよい。特に、本発明は、イーサネットおよび/または100Base-T1イーサネット、フィールドバスシステムなどの他のシリアル通信ネットワークの開発に使用可能である。
【0128】
特に、例示的実施形態によるバスシステム1は、データを2つの異なるビットレートでシリアル伝送可能である通信ネットワークであってもよい。バスシステム1において、共通のチャネルへの加入者局10、20、30の排他的で衝突のないアクセスが少なくとも特定の期間にわたって保証されていることは、有利であるが、必須の前提条件ではない。
【0129】
当然、ADSフィールド1510は、例示的実施形態で述べた上記のビットADH~DH2よりも多くのビットを有することもできる。代替または追加として、DASフィールド1520は、例示的実施形態で述べた上記のビットDAH~AH2よりも多くのビットを有することができる。
【0130】
例示的実施形態のバスシステム1における加入者局10、20、30の数および配置は任意である。特に、バスシステム1での加入者局20は省略することができる。加入者局10または30のうちの1つまたは複数がバスシステム1に存在することが可能である。バスシステム1内のすべての加入者局が同一に設計されている、すなわち加入者局10のみまたは加入者局30のみが存在することも考えられる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16