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特許7564383運転技能評価システム、情報処理装置、車両及びコンピュータプログラム並びにコンピュータプログラムを記録した記録媒体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】運転技能評価システム、情報処理装置、車両及びコンピュータプログラム並びにコンピュータプログラムを記録した記録媒体
(51)【国際特許分類】
   G09B 19/00 20060101AFI20241001BHJP
   G09B 19/16 20060101ALI20241001BHJP
【FI】
G09B19/00 H
G09B19/16
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2023559280
(86)(22)【出願日】2021-11-11
(86)【国際出願番号】 JP2021041457
(87)【国際公開番号】W WO2023084664
(87)【国際公開日】2023-05-19
【審査請求日】2023-10-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000419
【氏名又は名称】弁理士法人太田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 颯
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 能英瑠
【審査官】西村 民男
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-163345(JP,A)
【文献】特開2021-156601(JP,A)
【文献】特開2021-47633(JP,A)
【文献】特開2020-192824(JP,A)
【文献】特開2017-191133(JP,A)
【文献】特開2015-143936(JP,A)
【文献】特開2012-198345(JP,A)
【文献】特開2010-285954(JP,A)
【文献】国際公開第2018/096688(WO,A1)
【文献】国際公開第2007/077867(WO,A1)
【文献】「スマ保『運転力』診断」アプリ取扱説明書 Version 3.0.0 [オンライン],三井住友海上火災保険株式会社,2014年10月01日,https://www.ms-ins.com/sumaho/pdf/unten-01.pdf,[2019年04月24日検索]
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09B 1/00- 9/56
17/00-19/26
23/00-29/14
G01C 21/00-21/36
23/00-25/00
G08G 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の運転状態及び挙動のデータに基づいて前記車両のドライバの運転技能を評価する運転技能評価システムにおいて、
一つ又は複数のプロセッサと、前記一つ又は複数のプロセッサと通信可能に接続された一つ又は複数のメモリと、を備え、
前記プロセッサは、
前記車両の周囲環境又は前記ドライバの運転状態の少なくともいずれか一方を所定の判定条件と比較することにより、前記ドライバの運転操作が制限される状況か否かを判定し、
前記制限される状況に基づいて前記運転技能の評価方法を調整し、
前記運転技能の評価を行う、運転技能評価システム。
【請求項2】
前記プロセッサは、
所定の基本評価方法に基づいて前記ドライバによるステアリング操作及び加減速操作を評価することで前記運転技能の評価を行うように構成され、
前記制限される状況に基づいて前記運転技能の評価基準を調整する、請求項1に記載の運転技能評価システム。
【請求項3】
前記プロセッサは、
所定の基本評価方法に基づいて前記ドライバによるステアリング操作及び加減速操作を評価することで前記運転技能の評価を行うように構成され、
前記制限される状況に応じて前記基本評価方法を調整する、請求項1に記載の運転技能評価システム。
【請求項4】
前記プロセッサは、
前記制限される状況に応じて、前記基本評価方法における前記ドライバによるステアリング操作又は加減速操作の評価項目の重み付けを調整する、請求項3に記載の運転技能評価システム。
【請求項5】
前記プロセッサは、
前記制限される状況に応じて、所定の基本評価方法における前記ドライバによるステアリング操作又は加減速操作の評価項目のいずれかを除外する、請求項3に記載の運転技能評価システム。
【請求項6】
前記プロセッサは、
前記制限される状況に応じて、前記基本評価方法とは異なる個別評価方法を用いる、請求項3に記載の運転技能評価システム。
【請求項7】
前記プロセッサは、
前記運転技能の評価対象の全走行区間に対する前記制限される状況にあった区間の割合に応じて評価方法を調整する、請求項1に記載の運転技能評価システム。
【請求項8】
前記プロセッサは、
前記運転技能の評価対象の全走行区間に対する前記制限される状況にあった区間の割合が所定の閾値以下の場合、前記制限される状況にあった区間を除外して前記運転技能の評価を行う、請求項7に記載の運転技能評価システム。
【請求項9】
前記プロセッサは、
前記運転技能の評価対象の全走行区間に対する前記制限される状況にあった区間の割合が所定の閾値を超えるの場合、前記制限される状況にあった区間の前記運転技能の評価への寄与率を、前記制限される状況にない区間の前記運転技能の評価への寄与率よりも小さくして前記運転技能の評価を行う、請求項7に記載の運転技能評価システム。
【請求項10】
前記プロセッサは、
前記運転技能の評価の結果を通知する際に、前記評価の結果の確度を表す情報を通知する、請求項1に記載の運転技能評価システム。
【請求項11】
前記プロセッサは、
前記運転技能の評価の結果を通知する際に、前記運転技能の評価方法の調整原因又は調整内容に関する情報を通知する、請求項1に記載の運転技能評価システム。
【請求項12】
前記プロセッサは、
前記運転技能の評価の結果を通知する際に、過去に同じ走行シーンで運転操作の制限を受けた状況での前記運転技能の評価の結果と比較した結果を合わせて通知する、請求項1に記載の運転技能評価システム。
【請求項13】
前記プロセッサは、
前記運転技能の評価の結果を通知する際に、前記制限を受けた状況での特定の運転操作が適切に行われていたと評価される場合、当該運転操作の評価結果が高評価であることを通知する、請求項1に記載の運転技能評価システム。
【請求項14】
前記プロセッサは、複数のドライバの運転時の前記車両の挙動及び操作状態のデータ、前記車両の周囲環境のデータ、前記運転操作が制限される状況の種類の情報、車種の情報並びに運転技能の評価結果のデータを記録した運転記録データベースと通信可能に構成され、
前記プロセッサは、前記運転記録データベースに記録されたデータのうち、前記ドライバが運転する前記車両と同種の車両を、運転技能が同レベルの他のドライバが運転したときのデータを参照して、前記運転操作が制限される状況の判定又は前記運転技能の評価の少なくとも一方を行う、請求項1に記載の運転技能評価システム。
【請求項15】
車両の運転状態及び挙動のデータに基づいて前記車両のドライバの運転技能を評価する情報処理装置において、
一つ又は複数のプロセッサと、前記一つ又は複数のプロセッサと通信可能に接続された一つ又は複数のメモリと、を備え、
前記プロセッサは、
前記車両の周囲環境又は前記ドライバの運転状態の少なくともいずれか一方を所定の判定条件と比較することにより、前記ドライバの運転操作が制限される状況か否かを判定し、
前記制限される状況に基づいて前記運転技能の評価方法を調整し、
前記運転技能の評価を行う、情報処理装置。
【請求項16】
車両の周囲環境を検出する周囲環境検出部と、
前記車両のドライバの運転状態の情報を取得するドライバ情報取得部と、
前記車両の挙動及び操作状態を検出する車両状態検出部と、
前記車両の周囲環境又は前記ドライバの運転状態の少なくともいずれか一方を所定の判定条件と比較することにより、前記ドライバの運転操作が制限される状況か否かを判定する運転操作制限判定部と、
前記制限される状況に基づいて前記ドライバの運転技能の評価方法を調整し、前記運転技能の評価を行う運転技能評価部と、
を備えた、車両。
【請求項17】
車両の運転状態及び挙動のデータに基づいて前記車両のドライバの運転技能を評価する運転技能評価システムに適用されるコンピュータプログラムであって、
一つ又は複数のプロセッサに、
前記車両の周囲環境又は前記ドライバの運転状態の少なくともいずれか一方を所定の判定条件と比較することにより、前記ドライバの運転操作が制限される状況か否かを判定することと、
前記制限される状況に基づいて前記運転技能の評価方法を調整することと、
前記運転技能の評価を行うことと、
を含む処理を実行させる、コンピュータプログラム。
【請求項18】
請求項17に記載のコンピュータプログラムを記録した記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ドライバの運転技能を評価する運転技能評価システム及びコンピュータプログラム並びにコンピュータプログラムを記録した記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
ドライバの運転技能を評価し、評価結果をドライバにフィードバックするシステムが知られている。運転技能の評価結果をドライバにフィードバックすることにより、ドライバに運転行動の改善を促すことが期待される。
【0003】
例えば特許文献1には、車両が所望の目的地までの所定区間を実際に走行した場合における走行状況を表す実走行挙動データ、及びこの車両が所望の目的地までの所定区間を実際に走行したものと仮定した場合における理想的な走行状況を推定した推定挙動データに基づいて、その車両の運転者の操作にのみ起因する運転操作の状況を抽出し、その抽出結果に基づく運転操作データを生成し、運転者の運転技能を評価する運転技能評価装置が開示されている
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-298979号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1等に開示された運転技能を評価する従来の装置は、ドライバの運転操作が制限される状況を考慮せずにドライバの運転技能を評価している。例えば特許文献1に記載の運転技能評価装置は、所望の目的地までの所定区間の道路形状を表す道路形状データに基づいて理想的な走行状況を推定した推定挙動データを生成し、実走行挙動データと推定挙動データとを比較することによりドライバの運転技能を評価している。このため、他車両や道路状態等により正常な運転操作が妨げられる状況や、ドライバの体調等により正常な運転操作が困難となる状況が生じていたとしても、そのような状況を考慮することなく運転技能が評価されることになる。
【0006】
本開示は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本開示の目的とするところは、ドライバの運転操作が制限される状況を考慮した適切な運転技能の評価結果を得ることができる運転技能評価システム、情報処理装置、車両及びコンピュータプログラム並びにコンピュータプログラムを記録した記録媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示のある観点によれば、車両の運転状態及び挙動のデータに基づいて車両のドライバの運転技能を評価する運転技能評価システムであって、一つ又は複数のプロセッサと、一つ又は複数のプロセッサと通信可能に接続された一つ又は複数のメモリと、を備え、プロセッサは、車両の周囲環境又はドライバの運転状態の少なくともいずれか一方を所定の判定条件と比較することにより、ドライバの運転操作が制限される状況か否かを判定し、制限される状況に基づいて運転技能の評価方法を調整し、運転技能の評価を行う運転技能評価システムが提供される。
【0008】
上記課題を解決するために、本開示の別の観点によれば、車両の運転状態及び挙動のデータに基づいて前記車両のドライバの運転技能を評価する情報処理装置であって、一つ又は複数のプロセッサと、前記一つ又は複数のプロセッサと通信可能に接続された一つ又は複数のメモリと、を備え、プロセッサは、前記車両の周囲環境又は前記ドライバの運転状態の少なくともいずれか一方を所定の判定条件と比較することにより、前記ドライバの運転操作が制限される状況か否かを判定し、前記制限される状況に基づいて前記運転技能の評価方法を調整し、前記運転技能の評価を行う情報処理装置が提供される。
【0009】
上記課題を解決するために、本開示のさらに別の観点によれば、車両の周囲環境を検出する周囲環境検出部と、前記車両のドライバの運転状態の情報を取得するドライバ情報取得部と、前記車両の挙動及び操作状態を検出する車両状態検出部と、前記車両の周囲環境又は前記ドライバの運転状態の少なくともいずれか一方を所定の判定条件と比較することにより、前記ドライバの運転操作が制限される状況か否かを判定する運転操作制限判定部と、前記制限される状況に基づいて前記運転技能の評価方法を調整し、前記ドライバの前記運転技能の評価を行う運転技能評価部と、を備えた車両が提供される。
【0010】
上記課題を解決するために、本開示のさらに別の観点によれば、車両の運転状態及び挙動のデータに基づいて車両のドライバの運転技能を評価する運転技能評価システムに適用されるコンピュータプログラムであって、一つ又は複数のプロセッサに、車両の周囲環境又はドライバの運転状態の少なくともいずれか一方を所定の判定条件と比較することにより、ドライバの運転操作が制限される状況か否かを判定することと、制限される状況に基づいて運転技能の評価方法を調整することと、運転技能の評価を行うことと、を含む処理を実行させるコンピュータプログラム及び当該コンピュータプログラムを記録した記録媒体が提供される。
【発明の効果】
【0011】
以上説明したように本開示によれば、ドライバの運転操作が制限される状況を考慮した適切な運転技能の評価結果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本開示に係る運転技能評価システムを搭載した車両の構成例を示す模式図である。
図2】本開示の一実施形態に係る運転技能評価システムの構成例を示すブロック図である。
図3】第1の実施の形態に係る運転技能評価システムによる運転技能評価処理のメインルーチンを示すフローチャートである。
図4】ドライバの運転操作が制限される状況の例を示す説明図である。
図5】先行車両の速度が遅い状況の判定条件を示す説明図である。
図6】後続車両の煽りを受けている状況の判定条件を示す説明図である。
図7】道路に障害物がある状況の判定条件を示す説明図である。
図8】路面状態が悪い状況の判定条件を示す説明図である。
図9】ドライバが疲労状態にある状況の判定条件を示す説明図である。
図10】ドライバが時間に余裕がない状況の判定条件を示す説明図である。
図11】第1の実施の形態による運転技能の評価方法の調整処理のフローチャートである。
図12】外的要因による運転技能の評価方法の調整処理のフローチャートである。
図13】内的要因による運転技能の評価方法の調整処理のフローチャートである。
図14】運転技能の評価結果を通知する画面表示の例を示す説明図である。
図15】運転技能の評価結果を通知する画面表示の変形例を示す説明図である。
図16】第2の実施の形態による運転技能の評価方法の調整処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照しながら、本開示の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0014】
<<1.第1の実施の形態>>
<1-1.運転技能評価システム>
まず、図1及び図2を参照して、本開示の第1の実施の形態に係る運転技能評価システム10の構成例を説明する。図1は、運転技能評価システム10を搭載した車両1を示す模式図であり、図2は、運転技能評価システム10の構成の一例を示すブロック図である。
【0015】
運転技能評価システム10は、周囲環境センサ11、車内撮影カメラ13、生体センサ15、車両状態センサ17、車両位置検出センサ19、入力装置21、出力装置23及び情報処理装置50を備えている。これらの周囲環境センサ11、車内撮影カメラ13、生体センサ15、車両状態センサ17、車両位置検出センサ19、入力装置21及び出力装置23は、専用線又はCAN(Controller Area Network)等の通信バスを介して、情報処理装置50と通信可能に接続されている。
【0016】
周囲環境センサ11は、車両1の周囲環境の情報を検出する一つ又は複数のセンサからなる。図1に示した車両1では、周囲環境センサ11は、前方撮影カメラ11LF,11RF、後方撮影カメラ11R及びLiDAR11Sにより構成される。前方撮影カメラ11LF,11RF及び後方撮影カメラ11Rは、車両1の前方あるいは後方を撮影し、画像データを生成する。前方撮影カメラ11LF,11RF及び後方撮影カメラ11Rは、CCD(Charged-Coupled Devices)又はCMOS(Complementary Metal-Oxide-Semiconductor)等の撮像素子を備え、生成した画像データを情報処理装置50へ送信する。
【0017】
前方撮影カメラ11LF,11RFは、左右一対のカメラを含むステレオカメラとして構成され、後方撮影カメラ11Rは、いわゆる単眼カメラとして構成されているが、それぞれステレオカメラあるいは単眼カメラのいずれであってもよい。車両1は、前方撮影カメラ11LF,11RF及び後方撮影カメラ11R以外に、例えばサイドミラーに設けられて左後方又は右後方を撮影するカメラを備えていてもよい。
【0018】
LiDAR11Sは、光学波を送信するとともに当該光学波の反射波を受信し、光学波を送信してから反射波を受信するまでの時間に基づいて物体及び物体までの距離を検知する。LiDAR11Sは、検出データを情報処理装置50へ送信する。車両1は、周囲環境の情報を取得するための周囲環境センサとして、LiDAR11Sの代わりに、又はLiDAR11Sと併せて、ミリ波レーダ等のレーダセンサ、超音波センサのうちのいずれか一つ又は複数のセンサを備えていてもよい。
【0019】
車内撮影カメラ13は、車両1のドライバの情報を検出する一つ又は複数のセンサからなる。車内撮影カメラ13は、CCD又はCMOS等の撮像素子を備え、車内を撮影し、画像データを生成する。本実施形態において、車内撮影カメラ13は、車両1のドライバを撮影可能に配置される。車内撮影カメラ13は、生成した画像データを情報処理装置50へ送信する。設置される車内撮影カメラ13は1つのみであってもよく、複数であってもよい。
【0020】
生体センサ15は、ドライバの生体情報を検出し、検出データを情報処理装置50へ送信する。生体センサ15は、例えばドライバの心拍を検出するための電波式のドップラーセンサであってもよく、ドライバの脈拍を検出するための非装着型の脈拍センサであってもよい。また、生体センサ15は、ドライバの心拍又は心電図を計測するためにステアリングホイールに埋設された電極組であってもよい。また、生体センサ15は、ドライバが座席に着座している着座状態での座圧分布を計測するために運転席のシートに埋設された圧力計測器であってもよい。また、生体センサ15は、ドライバの心拍又は呼吸を計測するためにシートベルトの位置の変化を検出する変位センサであってもよい。また、生体センサ15は、ドライバの位置の情報を検出するためのTOF(Time of Flight)センサであってもよい。また、生体センサ15は、ドライバの皮膚の表面温度を計測するためのサーモグラフィであってもよい。
【0021】
また、生体センサ15は、ドライバに装着されてドライバの生体情報を検出する装着型のセンサであってもよい。装着型の生体センサ15としては、例えば腕時計型、あるいは、頭部又は腕部装着型のウェアラブル機器であってもよい。これらのウェアラブル機器は、ドライバの心拍や脈拍、血圧、体温等の生体情報を検出する機能を有していてもよい。装着型の生体センサ15は、直接的に又はCAN(Controller Area Network)あるいはLIN(Local Inter Net)等の通信手段を介して情報処理装置50と接続されていてもよい。あるいは、装着型の生体センサ15は、Blutooth(登録商標)、NFC(Near Field Communication)、wifi(wireless fidelity)又は無線LAN(Local Area Network)等の無線通信手段を介して情報処理装置50と通信可能に構成されていてもよい。
【0022】
車両状態センサ17は、車両1の挙動及び操作状態を示す情報を計測する装置である。車両状態センサ17は、例えば車速センサ、加速度センサ及び角速度センサのうちの少なくとも一つを含む。車速センサは、例えば車両1の駆動軸の回転速度を検出する。加速度センサは、少なくとも車体前後方向の加速度である前後加速度及び車幅方向の加速度である横加速度を検出する。加速度センサは、さらに、車体高さ方向の加速度である上下加速度を検出してもよい。角速度センサは、車体前後方向の軸回り回転角(ロール角)、車幅方向の軸回りの回転角(ピッチ角)及び車体高さ方向の軸回りの回転角(ヨー角)それぞれの変化速度を検出する。角速度センサは、ヨー角の変化速度を検出するヨーレートセンサであってもよい。
【0023】
また、車両状態センサ17は、舵角センサ、アクセルペダルセンサ及びブレーキペダルセンサを含む。舵角センサは、ステアリングホイールの回転角度又は操舵輪の舵角を検出する。アクセルペダルセンサ及びブレーキペダルセンサは、それぞれアクセルペダル又はブレーキペダルの踏み込み量を検出する。
【0024】
車両状態センサ17により計測されるデータは、情報処理装置50に送信される。車両状態センサ17は、車速センサ、加速度センサ、角速度センサ、舵角センサ、アクセルペダルセンサ及びブレーキペダルセンサ以外に、車両1の挙動又は操作状態を検出可能なセンサを含んでいてもよい。
【0025】
車両位置検出センサ19は、GPS(Global Positioning System)に代表されるGNSS(Global Navigation Satellite System)に用いられるセンサであり、衛星から送信される衛星信号を受信し、衛星信号に含まれる車両1の位置情報を情報処理装置50へ送信する。なお、車両位置検出センサ19は、GPS以外に、車両1の位置を特定する他の衛星システムからの衛星信号を受信するアンテナを備えていてもよい。
【0026】
入力装置21は、ユーザの操作入力を受け付け、情報処理装置50へ送信する。入力装置21は、例えばタッチパネル式のディスプレイであってもよく、ダイヤル式の操作機器であってもよい。あるいは、入力装置21は、乗員の音声により入力を受け付ける音声認識装置であってもよく、ジェスチャにより入力を受け付ける画像認識装置であってもよい。
【0027】
出力装置23は、ドライバの運転技能の評価結果をフィードバックするための出力機器である。出力装置23は、光学パネル等の画像表示装置を備えている。出力装置23は、スピーカを含んでいてもよい。
【0028】
情報処理装置50は、例えばCPU(Central Processing Unit)等の一つ又は複数のプロセッサと、当該プロセッサと通信可能に接続されたRAM(Random Access Memory)又はROM(Read Only Memory)等の一つ又は複数のメモリを備えて構成される。情報処理装置50の一部又は全部は、ファームウェア等の更新可能なもので構成されてもよく、また、プロセッサからの指令によって実行されるプログラムモジュール等であってもよい。
【0029】
情報処理装置50は、一つ又は複数のプロセッサがコンピュータプログラムを実行することでドライバの運転技能を評価する装置として機能する。当該コンピュータプログラムは、情報処理装置50が実行すべき後述する動作をプロセッサに実行させるためのコンピュータプログラムである。プロセッサにより実行されるコンピュータプログラムは、情報処理装置50に備えられた記憶部(メモリ)53として機能する記録媒体に記録されていてもよく、情報処理装置50に内蔵された記録媒体又は情報処理装置50に外付け可能な任意の記録媒体に記録されていてもよい。
【0030】
コンピュータプログラムを記録する記録媒体としては、ハードディスク、フロッピーディスク及び磁気テープ等の磁気媒体、CD-ROM(Compact Disk Read Only Memory)、DVD(Digital Versatile Disk)及びBlu-ray(登録商標)等の光記録媒体、フロプティカルディスク等の磁気光媒体、RAM及びROM等の記憶素子、及びUSB(Universal Serial Bus)メモリ等のフラッシュメモリ、その他のプログラムを格納可能な媒体であってよい。
【0031】
なお、情報処理装置50は、車両1に設置された装置であってもよく、スマートホン等の携帯可能な機器により構成されてもよい。
【0032】
<1-2.情報処理装置の構成>
続いて、情報処理装置50の構成を説明する。以下、運転技能の評価対象のドライバが運転する車両1を「自車両」と称する場合がある。
【0033】
情報処理装置50は、処理部51及び記憶部53を備えている。処理部51は、周囲環境検出部61、ドライバ情報取得部63、車両状態検出部65、運転操作制限判定部67、運転技能評価部69及び通知処理部71を備える。処理部51は、一つ又は複数のCPU等のプロセッサにより構成され、周囲環境検出部61、ドライバ情報取得部63、車両状態検出部65、運転操作制限判定部67、運転技能評価部69及び通知処理部71の各部は、プロセッサによるプログラムの実行により実現される機能である。ただし、周囲環境検出部61、ドライバ情報取得部63、車両状態検出部65、運転操作制限判定部67、運転技能評価部69及び通知処理部71の一部が、アナログ回路により構成されていてもよい。
【0034】
記憶部53は、RAM又はROM等の一つ又は複数の記憶素子を含んで構成される。記憶部53は、処理部51により実行されるプログラムやプログラムの実行に用いられる種々のパラメータの他、取得されたデータ、演算結果のデータ等を記憶する。
【0035】
また、情報処理装置50には、高精度地図データベース41及び運転記録データベース43が接続されている。高精度地図データベース41は、少なくとも道路形状や走行車線の数の情報を含む地図データを記録したデータベースである。
【0036】
運転記録データベース43は、複数のドライバの過去の運転データを記録したデータベースである。運転記録データベース43には、車両状態センサ17により計測される車両1の挙動及び操作状態のデータ、個々のドライバを識別する情報、地図データ上の走行地点のデータ、車両1の周囲環境のデータ、ドライバの生体情報の検出データ、運転操作が制限される状況の種類の情報、車種の情報並びに運転技能の評価結果が互いに関連付けられて記録されている。
【0037】
なお、高精度地図データベース41及び運転記録データベース43は、それぞれ車両1に搭載されていてもよく、移動体通信手段を介して通信可能な外部サーバ等に備えられていてもよい。
【0038】
以下、処理部51の周囲環境検出部61、ドライバ情報取得部63、車両状態検出部65、運転操作制限判定部67、運転技能評価部69及び通知処理部71それぞれの機能を簡単に説明した後、各部による処理動作を詳細に説明する。
【0039】
(周囲環境検出部)
周囲環境検出部61は、車両1の周囲環境を検出する処理を実行する。具体的に、周囲環境検出部61は、周囲環境センサ11から送信される検出データに基づいて車両1の周囲に存在する障害物及び道路形状あるいは走行車線を検出する。周囲環境検出部61は、検出した障害物の種類、サイズ、位置、速度、自車両1から障害物までの距離、及び自車両1と障害物との相対速度等の障害物に関する情報を求める。検出される障害物は、走行中の他車両や駐車車両、歩行者、自転車、側壁、縁石、建造物、電柱、交通標識、交通信号機、自然物その他の自車両1の周囲に存在するあらゆる物体を含む。また、周囲環境検出部61は、例えば白線や側壁、縁石等により認識される。
【0040】
(ドライバ情報取得部)
ドライバ情報取得部63は、車内撮影カメラ13から送信される画像データに基づいて車両1のドライバを特定する処理を実行する。なお、ドライバ情報取得部63は、ドライバ又は乗員がタッチパネル等の入力機器を介して入力した情報に基づいて車両1のドライバを特定してもよい。また、ドライバ情報取得部63は、車内撮影カメラ13から送信される画像データに基づいて、ドライバの視線の向きを検出する。さらに、ドライバ情報取得部63は、生体センサ15から送信される検出データに基づいて、ドライバの生体情報を取得する。ドライバの視線の向き及び生体情報は、ドライバの運転状態の情報の一部を構成する。
【0041】
(車両状態検出部)
車両状態検出部65は、車両1の挙動及び操作状態を検出する処理を実行する。具体的に、車両状態検出部65は、車両状態センサ17から送信される検出データに基づいて、車両1の速度、加速度、加加速度又はヨーレート等の車両1の挙動や、ステアリングホイール、アクセルペダル及びブレーキペダルの操作状態を検出する。
【0042】
(運転操作制限判定部)
運転操作制限判定部67は、周囲環境検出部61により検出された車両1の周囲環境の情報と、ドライバ情報取得部63により取得されたドライバの運転状態の情報とに基づいて、ドライバによる車両1の運転操作が制限される状況を判定する処理を実行する。具体的に、運転操作制限判定部67は、車両1の周囲環境又はドライバの運転状態の少なくともいずれか一方を所定の判定条件と比較することにより、ドライバの運転操作が制限される状況であるかを判定する。車両1の周囲環境に起因してドライバの運転操作が制限される場合、当該状況は、ドライバの運転状態によらない外的要因により運転操作が制限される状況と言うことができる。一方、ドライバの運転状態に起因してドライバの運転操作が制限される場合、当該状況は、ドライバの内的要因により運転操作が制限される状況と言うことができる。運転操作制限判定部67は、車両1の周囲環境及びドライバの運転状態以外の情報を用いて、ドライバの運転操作が制限される状況にあるか否かを判定してもよい。
【0043】
(運転技能評価部)
運転技能評価部69は、ドライバの運転技能を評価する処理を実行する。本実施形態において、運転技能評価部69は、運転操作制限判定部67により判定されるドライバの運転操作が制限される状況に基づいて運転技能の評価方法を調整し、運転技能の評価を行う。運転技能評価部69は、あらかじめ設定された評価方法を用いて運転技能の評価を行う。第1の実施の形態では、運転技能評価部69は、ドライバの運転操作が制限される状況でない走行区間については、基本評価方法にしたがって運転技能スコアを算出する一方、ドライバの運転操作が制限される走行区間については、運転操作が制限される状況に応じて評価方法を調整する。これにより、ドライバの運転技能によらない運転操作の影響を小さくして、適切な運転技能の評価結果が得られるようになっている。
【0044】
(通知処理部)
通知処理部71は、運転技能の評価結果をフィードバックする処理を実行する。例えば通知処理部71は、出力装置23を駆動して、運転技能の評価結果を画面に表示する。通知処理部71は、運転技能の評価結果を音声又は音によりドライバに通知してもよい。通知処理部71は、運転技能の評価結果をフィードバックする際に、評価方法を調整した場合の調整原因を併せて通知する。本実施形態では、評価方法を調整した場合、通知処理部71は、評価方法の調整方法、運転技能の評価結果の確度及び調整区間を併せて通知する。
【0045】
<1-3.情報処理装置の処理動作>
ここまで、運転技能評価システム10及び情報処理装置50の構成を説明した。続いて、情報処理装置50の処理動作を具体的に説明する。
【0046】
図3は、情報処理装置50の処理部51による運転技能評価処理のメインルーチンを示すフローチャートである。
【0047】
まず、運転技能評価システム10が起動すると、処理部51のドライバ情報取得部63は、車両1のドライバを特定する処理を実行する(ステップS11)。例えばドライバ情報取得部63は、車内撮影カメラ13から送信される画像データに基づいて運転席に座るドライバの顔を認識する処理を実行する。ドライバ情報取得部63は、特定したドライバの識別情報を記憶部53に記録する。ドライバ情報取得部63は、入力装置21に入力されるドライバの情報に基づいてドライバを特定してもよい。
【0048】
次いで、処理部51は、ドライバの運転技能を評価する処理(以下、「運転技能評価処理」ともいう)の実行を開始するか否かを判定する(ステップS13)。運転技能評価処理の実行を開始する条件は特に限定されるものではない。例えばドライバによる車両1の運転開始から運転終了までの間に運転技能評価処理が実行される場合、処理部51は、運転システムの起動時に運転技能評価処理を開始すると判定してもよい。あるいは、処理部51は、車内撮影カメラ13や運転席に設置された荷重センサ等の出力信号に基づいてドライバが運転席に着座したことを検知したときに運転技能評価処理の実行を開始すると判定してもよい。
【0049】
また、あらかじめ設定された特定の区間を走行する際に運転技能評価処理が実行されるように設定されている場合、処理部51は、車両位置検出センサ19から送信される車両1の位置が特定の区間に差し掛かったときに、運転技能評価処理を開始すると判定してもよい。また、ドライバ等の乗員が任意に運転技能評価処理の開始及び終了のタイミングを設定可能になっている場合、処理部51は、設定された運転技能評価処理の開始のタイミングが到来したときに運転技能評価処理の実行を開始すると判定してもよい。
【0050】
運転技能評価処理の実行を開始すると判定しない場合(S13/No)、処理部51は、ステップS13の判別処理を繰り返し実行する。運転技能評価処理の実行を開始すると判定した場合(S13/Yes)、ドライバ情報取得部63は、ドライバの運転状態の記録を開始する(ステップS15)。具体的に、ドライバ情報取得部63は、車内撮影カメラ13から送信される画像データに基づいてドライバの視線の向きを検出する処理を開始する。また、ドライバ情報取得部63は、生体センサ15から送信される検出データに基づいて、ドライバの生体情報を取得する処理を開始する。ドライバ情報取得部63は、検出したドライバの運転状態の情報を時系列のデータとして記憶部53に記録する。
【0051】
次いで、処理部51の周囲環境検出部61は、車両1の周囲環境の記録を開始する(ステップS17)。具体的に、周囲環境検出部61は、周囲環境センサ11から送信される検出データに基づいて車両1の周囲に存在する障害物及び道路形状あるいは走行車線を検出する処理を開始する。また、周囲環境検出部61は、車両位置検出センサ19から送信される車両1の位置情報を取得し、周囲環境の情報とともに時系列のデータとして記憶部53に記録する。
【0052】
次いで、処理部51の車両状態検出部65は、車両1の挙動及び操作状態の記録を開始する(ステップS19)。具体的に、車両状態検出部65は、車両状態センサ17から送信される検出データに基づいて、車両1の速度、加速度、加加速度又はヨーレート等の車両1の挙動、及びステアリングホイール、アクセルペダル及びブレーキペダルの操作状態を検出する。本実施形態では、車両1の挙動の情報として、車両1の前後ジャーク(加加速度)及びヨー角加速度が記録される。前後ジャークは、加速度センサにより検出される加速度を時間微分することにより求められる。加速度は、車速センサにより検出される車両1の速度を時間微分することにより求めることもできる。ヨー角加速度は、ヨーレートを時間微分することにより求められる。車両状態検出部65は、車両1の挙動及び操作状態の情報を時系列のデータとして記憶部53に記録する。
【0053】
次いで、処理部51の運転技能評価部69は、記録された車両1の挙動の時系列データに基づいて、ドライバの運転技能を評価する(ステップS21)。例えば運転技能評価部69は、任意に設定された走行区間の終了後に、当該走行区間に記録された車両1の挙動の時系列データに基づいてドライバの運転技能を評価する。走行区間は、例えば車両1の運転開始から運転終了までの区間として設定される。ただし、走行区間は、走行継続時間として設定されていてもよく、走行距離として設定されていてもよく、特定の位置間の区間として設定されていてもよい。
【0054】
ステップS21では、ドライバの運転操作が制限される状況を考慮せずに、記録されている車両1の挙動の時系列データを用いて運転技能スコアyを算出する。本実施形態において、基本評価方法に用いる運転技能スコアyの算出式の一例を下記式(1)に示す。
y=a*x1+b*x2 …(1)
y:運転技能スコア
x1:一定距離当たりのヨー角加速度の平均値
x2:一定距離当たりの前後ジャーク(加加速度)の平均値
【0055】
上記式(1)における「a*x1」の項は、主にドライバによるステアリング操作の運転技能を反映した評価項目に相当する。また、「b*x2」の項は、主にドライバによるアクセルペダル及びブレーキペダルの操作の運転技能を反映した評価項目に相当する。上記式(1)では、ヨー角加速度及び前後ジャークの値がそれぞれ小さいほど、運転技能スコアyの値が大きくなるように各項の係数a,bが設定される。つまり、車両1の挙動が安定しているほど、運転技能が高く評価される計算結果が得られるように設定されている。例えば運転記録データベース43に記録されている複数のドライバの運転データのうち、運転操作が制限されない状況で記録された運転データを用いて算出される運転技能スコアyが概ね0~100点の間の値となるように、係数a,bが設定されてもよい。
【0056】
例えば運転技能評価部69は、評価対象の走行区間を一定距離ごと、あるいは、直進区間及びカーブ区間ごと、さらには、交差点で停車するごとに区切り、それぞれの区間ごとに運転技能スコアy1,y2,...,ynを算出する。そして、運転技能評価部69は、評価対象の全走行区間の運転技能スコアy1,y2,...,ynの平均値を、総合スコアYとする。
【0057】
次いで、処理部51の運転操作制限判定部67は、ドライバによる車両1の運転操作が制限される状況を判定する(ステップS23)。運転操作制限判定部67は、記録されている車両1の周囲環境の情報及びドライバの運転状態の情報の時系列データに基づいて、ドライバの運転状態によらない外的要因及びドライバの運転状態による内的要因の観点からドライバの運転操作が制限される状況を判定する。
【0058】
図4は、ドライバの運転操作が制限される状況の例を示す説明図である。
外的要因によりドライバの運転操作が制限される状況として、先行車両の速度が遅い状況、後続車両の煽りを受けている状況、道路に障害物がある状況、あるいは路面状態が悪い状況が例示されている。運転操作制限判定部67は、主として車両1の周囲環境及びドライバの運転状態の情報に基づいて、外的要因によりドライバの運転操作が制限される状況にあるか否かを判定する。また、内的要因によりドライバの運転操作が制限される状況として、ドライバが疲労状態にある状況、あるいは時間に余裕がない状況が例示されている。運転操作制限判定部67は、主としてドライバの運転状態の情報に基づいて、内的要因によりドライバの運転操作が制限される状況にあるか否かを判定する。
【0059】
図5図10は、ドライバの運転操作が制限される状況それぞれの判定条件を示す。
図5は、先行車両の速度が遅い状況の判定条件を示す。例えば運転操作制限判定部67は、自車両1と先行車両との車間距離が、運転記録データベース43に記録されている普段の運転時の車間距離よりも近い状況が所定時間以上継続している区間を、先行車両の速度が遅い状況にあったと判定する。普段の運転時の車間距離は、例えば同じドライバの過去の運転データのうち、運転操作が制限されていない状況で記録された車間距離の平均値であってよい。同じドライバの過去の運転データが存在しない場合、普段の運転時の車間距離は、他のドライバの過去の運転データのうち、運転操作が制限されていない状況で記録された車間距離の平均値であってもよい。他のドライバの過去の運転データを参照する場合、自車両1の車種と同じサイズあるいは出力の車種を、運転技能が同レベルのドライバが運転したときの運転データを参照することにより、自車両1のドライバが自車両1を初めて運転する場合であっても、当該ドライバが自車両1の運転操作が制限される状況を高い精度で判定することができる。
【0060】
また、運転操作制限判定部67は、自車両1に対する先行車両の相対速度が閾値以下である区間を、先行車両の速度が遅い状況にあったと判定する。相対速度の閾値は、任意の値に設定されてよい。また、運転操作制限判定部67は、ブレーキ操作の頻度が高い区間を、先行車両の速度が遅い状況にあったと判定する。例えば任意に設定される所定の単位時間又は単位距離当たりのブレーキペダルの踏み込み回数が所定の閾値以上の場合に、ブレーキ操作の頻度が高いと判定することができる。ブレーキペダルの踏み込み回数の閾値は任意に設定されてよいが、運転記録データベース43に記録されている同じドライバ又は他のドライバの過去の運転データのうち、運転操作が制限されていない状況での道路形状に起因しないブレーキ操作の頻度を基準に設定されてもよい。
【0061】
また、運転操作制限判定部67は、ドライバが先行車両を注視する頻度が高い区間を、先行車両の速度が遅い状況にあったと判定する。例えば任意に設定される所定の単位時間又は単位距離当たりの先行車両の注視回数が所定の閾値以上の場合に、ブレーキ操作の頻度が高いと判定することができる。先行車両の注視回数の閾値は任意に設定されてよいが、運転記録データベース43に記録されている同じドライバ又は他のドライバの過去の運転データのうち、運転操作が制限されていない状況での先行車両の注視回数を基準に設定されてもよい。ドライバが先行車両を注視していることは、例えばドライバの視線の向きが先行車両の方を向いているか否かにより判別することができる。
【0062】
なお、図5に示した先行車両の速度が遅い状況の判定条件は一例であり、判定条件の具体的内容は適宜変更されてもよく、また、さらに他の判定条件が設定されていてもよい。
【0063】
図6は、後続車両の煽りを受けている状況の判定条件を示す。例えば運転操作制限判定部67は、自車両1と後続車両との車間距離が、運転記録データベース43に記録されている普段の運転時の車間距離よりも近い状況が所定時間以上継続している区間を、後続車両の煽りを受けている状況にあったと判定する。普段の運転時の車間距離は、上述した自車両1と先行車両との車間距離と同様に、同じドライバ又は他のドライバの過去の運転データのうち、運転操作が制限されていない状況で記録された車間距離の平均値であってよい。また、運転操作制限判定部67は、自車両1に対する後続車両の相対速度が閾値以上である区間を、後続車両の煽りを受けている状況にあったと判定する。相対速度の閾値は、任意の値に設定されてよい。
【0064】
また、運転操作制限判定部67は、後続車両がいる状況で、ドライバが特定の運転操作を行っていた区間を、後続車両の煽りを受けている状況にあったと判定する。例えば運転操作制限判定部67は、自車両1の速度が、運転記録データベース43に記録されている普段の運転時の車速よりも速い区間を、後続車両から煽りを受けている状況にあったと判定する。普段の運転時の車速は、例えば同じドライバの過去の運転データのうち、運転操作が制限されていない状況で記録された同じ制限速度の道路を走行する際の車速の平均値であってよい。同じドライバの過去の運転データが存在しない場合、普段の運転時の車間距離は、他のドライバの過去の運転データのうち、運転操作が制限されていない状況で記録された同じ制限速度の道路を走行する際の車速の平均値であってもよい。
【0065】
また、運転操作制限判定部67は、ドライバがステアリングホイールの回転方向を頻繁に切り替える蛇行運転を行っていた区間や急加速及び急減速を繰り返していた区間を、後続車両から煽りを受けている状況にあったと判定してもよい。例えばステアリングホイールの回転方向を切り替える時間間隔が所定の時間未満で所定回数以上の回転方向の切り替えを行った場合に、ドライバが蛇行運転を行っていたと判定することができる。また、加速度が所定の閾値を超える状態と減速度が所定の閾値を超える状態とが所定の時間間隔未満で所定回数以上繰り返された場合に、ドライバが急加速及び急減速を繰り返していたと判定することができる。それぞれの閾値は任意に設定されてよい。
【0066】
また、運転操作制限判定部67は、後続車両がいる状況で、ドライバがバックミラーを注視する頻度が高い区間を、後続車両の煽りを受けている状況にあったと判定する。例えば任意に設定される所定の単位時間又は単位距離当たりのバックミラーの注視回数が所定の閾値以上の場合に、バックミラーを注視する頻度が高いと判定することができる。バックミラーの注視回数の閾値は任意に設定されてよいが、運転記録データベース43に記録されている同じドライバ又は他のドライバの過去の運転データのうち、運転操作が制限されていない状況でのバックミラーの注視回数を基準に設定されてもよい。ドライバがバックミラーを注視していることは、例えばドライバの視線の向きがバックミラーの方を向いているか否かにより判別することができる。なお、バックミラーの代わりに、あるいは、バックミラーと併せてサイドミラーを注視する回数をカウントしてもよい。
【0067】
また、運転操作制限判定部67は、後続車両がいる状況で、自車両1のドライバがイライラしている区間を、後続車両の煽りを受けている状況にあったと判定する。例えば車内撮影カメラ13から送信される画像データに基づいて、ドライバが舌打ちをしていたりイライラした表情を表わしていたりする場合に、ドライバがイライラしていると判定することができる。また、マイクロフォンによりドライバの発声する音声を取得し、イライラしている様子を表す発言をしている場合に、ドライバがイライラしていると判定してもよい。
【0068】
また、ドライバがイライラしていることは、生体センサ15から送信される検出データに基づいて判別することができる。具体的に、ドライバの心拍数が上昇している場合、血圧が上昇している場合、又は体温が上昇している場合のうちの少なくとも一つの条件が成立している場合に、ドライバがイライラしていると判定することができる。あるいは、車内撮影カメラ13から送信される画像データに基づいて、ドライバの体温の上昇や発汗量の増加を判別して、ドライバがイライラしていると判定してもよい。
【0069】
なお、図6に示した後続車両から煽りを受けている状況の判定条件は一例であり、判定条件の具体的内容は適宜変更されてもよく、また、さらに他の判定条件が設定されていてもよい。
【0070】
図7は、道路に障害物がある状況の判定条件を示す。例えば運転操作制限判定部67は、周囲環境センサ11により進行方向前方の道路上に障害物が検出されてから、当該障害物の存在地点を自車両1が通過するまでの区間を、道路に障害物がある状況であったと判定する。障害物は、進行方向前方を走行する先行車両以外の落下物や駐車車両、歩行者、自転車等であり、例えば周囲環境センサ11により、速度が所定の閾値未満の物体として認識される。
【0071】
また、運転操作制限判定部67は、ドライバが道路形状に一致しないステアリング操作を行った区間を、道路に障害物がある状況であったと判定する。道路形状は、周囲環境センサ11により検出される検出データに基づいて特定されてもよく、高精度地図データベース41に記録された地図上での車両1の現在位置及び進行方向に基づいて特定されてもよい。例えば運転操作制限判定部67は、特定された道路形状の曲率半径に基づいて想定されるステアリングホイールの回転角度の変化と、実際に操作された操舵角の変化とを比較して、回転角度の差分が所定の閾値を超える区間を、道路に障害物があったものと判定する。
【0072】
また、運転操作制限判定部67は、自車両1が他の機器又は他車両から、自車両1の前方の障害物の情報を取得した場合、当該障害物の前後の所定の区間を、道路に障害物がある状況であったと判定する。具体的に、運転操作制限判定部67は、路車間通信や移動体通信手段を介して外部の機器から提供される障害物情報として、自車両1の進行方向の障害物の情報が含まれていた場合、あるいは、先行車両又は対向車両との車車間通信により、自車両1の進行方向の障害物の情報を取得した場合に、当該障害物の前後の所定の区間を、道路に障害物がある状況であったと判定する。
【0073】
なお、図7に示した道路上に障害物がある状況の判定条件は一例であり、判定条件の具体的内容は適宜変更されてもよく、また、さらに他の判定条件が設定されていてもよい。
【0074】
図8は、路面状態が悪い状況の判定条件を示す。例えば運転操作制限判定部67は、車車間通信により先行車両から路面状態が悪いことを示す情報提供を受けた場合、当該情報提供を受けている区間を、路面状態が悪い状況であったと判定する。例えば先行車両が車輪のスリップ率や車体上下方向の加速度の変動に基づいて路面が滑りやすい状態であるかあるいは路面の凹凸が激しい状態であることを判定した場合に、自車両1は先行車両から当該情報を取得する。
【0075】
また、運転操作制限判定部67は、先行車両との車間距離が開いているにもかかわらず、自車両1の車速が、運転記録データベース43に記録されている普段の運転時の車速よりも遅い区間を、路面状態が悪い状況にあったと判定する。普段の運転時の車速は、例えば同じドライバ又は他のドライバの過去の運転データのうち、運転操作が制限されていない状況で記録された同じ制限速度の道路を走行する際の車速の平均値であってよい。
【0076】
また、運転操作制限判定部67は、ブレーキ操作のタイミングが、運転記録データベース43に記録されている普段の運転時のブレーキ操作のタイミングよりも早い区間を、路面状態が悪い状況にあったと判定する。ブレーキ操作のタイミングは、例えばカーブの進入時や交差点の進入時等のブレーキ操作が行われる交通シーンでのブレーキ操作の開始地点を比較することにより評価される。
【0077】
なお、図8に示した路面状態が悪い状況の判定条件は一例であり、判定条件の具体的内容は適宜変更されてもよく、また、さらに他の判定条件が設定されていてもよい。
【0078】
図9は、ドライバが疲労状態にある状況の判定条件を示す。例えば運転操作制限判定部67は、ドライバが眠気を催している区間を、ドライバが疲労状態にある状況にあったと判定する。ドライバが眠気を催していることは、例えば車内撮影カメラ13から送信される画像データに基づいてドライバの瞬きの回数やあくびの回数、頭部の揺れ等を計測することにより判定することができる。また、生体センサ15から送信されるドライバの心拍数やオトガイ筋の活動量等の生体情報に基づいて眠気を催していることを判定してもよい。さらには、ステアリングホイールの回転角度の変化から、約11Hzのステアリング操作が行っている場合に、ドライバが眠気を催していると判定してもよい。
【0079】
また、運転操作制限判定部67は、ドライバが休憩をせずに運転を継続した時間である連続運転時間が所定の閾値以上となっている区間を、ドライバが疲労状態にある状況にあったと判定する。連続運転時間は、例えば車両1のシステムが起動してからの経過時間であってもよく、ドライバ情報取得部63により同一のドライバが特定されている時間であってもよい。また、所定の閾値は、あらかじめ設定される一定の値であってもよく、それぞれのドライバの過去の運転時間と車内撮影カメラ13あるいは生体センサ15の検出データから推定される疲労度(眠気)とに基づいてドライバごとに設定される値であってもよい。
【0080】
また、運転操作制限判定部67は、ドライバの活動内容及び活動時間からドライバが疲労した状態にあると推定される区間を、ドライバが疲労状態にある状況にあったと判定する。ドライバの活動内容及び活動時間は、例えばBlutooth(登録商標)等の通信手段を介して情報処理装置50に接続されたスマートホンに記録されたスケジュール情報から取得される。また、運転操作制限判定部67は、活動内容及び活動時間に基づいて疲労度を推定する。例えば運転操作制限判定部67は、スポーツ又は仕事等の活動内容に応じて設定された疲労度の係数にそれぞれの活動時間をかけて算出される値を加算することにより疲労度を表す値を求め、当該疲労度を表す値が所定の閾値を超えている場合に、ドライバが疲労した状態にあると推定する。
【0081】
また、運転操作制限判定部67は、ドライバと同乗者との会話が少ない区間を、ドライバが疲労状態にある状況にあったと判定する。ドライバと同乗者が会話しているか否かは、例えば車内撮影カメラ13から送信される画像データに基づいて検出されるドライバ及び同乗者の口の動きや、マイクロフォンから入力される音声データに基づいて判定することができる。また、運転操作制限判定部67は、ドライバと同乗者との会話の回数や継続時間を計測し、単位時間当たりの会話の回数が減ったと判定される場合や、会話の継続時間が短くなったと判定される場合に、ドライバが疲労状態にあると判定する。会話の回数が減ったことや会話の継続時間が短くなったことを判定する具体的方法は特に限定されるものではなく、今回の運転期間中において相対評価してもよく、過去の運転データと比較し評価してもよい。
【0082】
なお、図9に示したドライバが疲労状態にある状況の判定条件は一例であり、判定条件の具体的内容は適宜変更されてもよく、また、さらに他の判定条件が設定されていてもよい。
【0083】
図10は、ドライバが時間に余裕がない状況の判定条件を示す。例えば運転操作制限判定部67は、直近の予定までの時間的余裕がない場合に、ドライバが時間に余裕がない状況にあったと判定する。直近の予定は、例えばBlutooth(登録商標)等の通信手段を介して情報処理装置50に接続されたスマートホンに記録されたスケジュール情報から取得される。運転操作制限判定部67は、例えば取得した予定の開始時刻及び予定の開催場所までの距離に基づいて、ドライバが時間に余裕があるか否かを判定することができる。
【0084】
また、運転操作制限判定部67は、ドライバの運転状態が、運転記録データベース43に記録されている普段の運転状態よりも急いでいると判定される場合に、ドライバが時間に余裕がない状況にあったと判定する。例えば後続車両がいない状況において、普段の運転よりも車速が速い状態が継続していた場合に、ドライバが時間に余裕がない状況にあったと判定する。
【0085】
なお、図10に示したドライバが時間に余裕がない状況の判定条件は一例であり、判定条件の具体的内容は適宜変更されてもよく、また、さらに他の判定条件が設定されていてもよい。
【0086】
また、図5図10に例示した状況以外にも、運転操作が制限される状況を判定する判定条件が設定されていてよい。例えば運転操作が制限される状況として記録されていない状況であるにもかかわらず、運転技能の評価(総合スコアY)の高い複数のドライバの多くが低い評価結果となる状況が、運転操作が制限される状況として判定されるように、運転記録データベース43を介して複数の車両1間で情報共有されてもよい。この場合、運転操作制限判定部67は、多くのドライバの評価結果が低くなる状況での周囲環境及び車両状態の情報を、運転操作が制限されない状況での周囲環境及び車両状態の情報と比較することにより、当該状況を運転操作が制限される状況と判定するための条件を抽出する。このようにして、新たに運転操作が制限される状況が追加されることにより、予期されない運転操作が制限される状況を検知して、適切な運転技能の評価結果を得ることができる。
【0087】
運転操作制限判定部67は、図5図10に例示した判定条件を参照して、運転技能強化処理を開始してから運転技能を評価した走行区間中において、ドライバの運転操作が制限される状況にあった区間を判定する。運転操作制限判定部67は、運転操作が制限される状況にあったと判定された区間について、それぞれ具体的な状況の内容の情報を関連付けて記録する。
【0088】
図3に戻り、運転技能評価部69は、ドライバの運転操作が制限された状況に基づいて運転技能の評価方法を調整し、ステップS21で算出した評価結果の調整を行う(ステップS25)。本実施形態では、運転技能評価部69は、ドライバの運転操作が制限されるそれぞれの状況に応じて、総合スコアYに基づく運転技能の評価基準を調整する第1の調整方法、上記式(1)を用いた基本評価方法の評価項目を調整する第2の調整方法、又は基本評価方法とは異なる個別評価方法による評価を行う第3の調整方法、のいずれか一つ又は複数の方法により評価方法を調整する。
【0089】
図11は、運転技能の評価方法の調整処理を示すフローチャートである。
まず、運転技能評価部69は、運転操作が制限された走行区間のなかに、図5図8に示した外的要因により運転操作が制限された走行区間があるか否かを判定する(ステップS31)。外的要因により運転操作が制限された走行区間がない場合(S31/No)、そのままステップS35へ進む一方、外的要因により運転操作が制限された走行区間がある場合(S31/Yes)、運転技能評価部69は、外的要因による評価方法の調整を行うルーチンを実行する(ステップS33)。
【0090】
図12は、外的要因による評価方法の調整を行うルーチンを示すフローチャートである。まず、運転技能評価部69は、評価対象の全走行区間に対する、外的要因により運転操作が制限された走行区間の割合R1に応じて所定の基準スコア(評価基準)Y0を調整する(第1の調整方法)(ステップS41)。
【0091】
基準スコアY0は、例えば上記式(1)により算出される総合スコアYが基準スコア(評価基準)Y0以下のときにドライバに対して注意や警告が通知されるようにするための閾値として用いられる設定値である。具体的には、図5図8に示した他車両や道路形状に起因する外的要因によりドライバの運転操作が制限される場合、基準スコアY0を下げることによってドライバ自身に原因がない場合に注意や警告が通知されにくくする。例えばドライバの運転操作が制限される状況が存在しない場合において総合スコアYが50点(基準スコアY0)以下のときに注意や警告が通知されるように設定されている場合、運転技能評価部69は、上記割合R1に応じて基準スコアY0を下げる。
【0092】
例えば運転技能評価部69は、上記割合R1に5をかけた値を50から引いて調整後の基準スコアY0とする。これにより、外的要因により運転操作が制限される場合において総合スコアYが基準スコアY0以下になる可能性が低下し、注意や警告が通知されにくくなる。したがって、運転技能の評価結果に対するドライバの信頼度が低下することを防ぐことができる。
【0093】
次いで、運転技能評価部69は、運転操作が制限された走行区間のなかに、加減速操作が制限された走行区間があるか否かを判定する(ステップS43)。例えば運転技能評価部69は、先行車両が急減速及び急加速を繰り返していた等、あらかじめ設定された判定条件を満たしている場合、運転技能評価部69は、加減速操作が制限される状況にあったと判定する。なお、加減速操作が制限される状況にあったか否かを判定する条件は、上記の例に限られるものではなく適宜設定されていてよい。
【0094】
加減速操作が制限された走行区間がない場合(S43/No)、そのままステップS47に進む一方、加減速操作が制限された走行区間がある場合(S43/Yes)、運転技能評価部69は、加減速操作が制限された走行区間については、前後ジャークに関する評価項目「b*x2」の重みが小さくなるように式(1)を調整する(第2の調整方法)(ステップS45)。より具体的には、基本評価方法での各評価項目「a*x1」、「b*x2」の重みの割合が5:5である場合、それぞれの評価項目の重みの割合を5:4や5:3等に変更して重み付けを調整したり、5:0として前後ジャークの評価項目「b*x2」が運転技能スコアyに反映されないようにする。これにより、外的要因により制限される加減速操作が運転技能スコアyに反映される度合いが低くなって、制限を受けない運転操作に基づいて運転技能の評価結果が得られやすくなる。したがって、運転技能の評価結果に対するドライバの信頼度が低下することを防ぐことができる。
【0095】
次いで、運転技能評価部69は、運転操作が制限された走行区間のなかに、ステアリング動作が制限された走行区間があるか否かを判定する(ステップS47)。例えば運転技能評価部69は、落下物を回避するステアリング操作を行った等、あらかじめ設定された判定条件を満たしている場合、運転技能評価部69は、ステアリング操作が制限される状況にあったと判定する。なお、ステアリング操作が制限される状況にあったか否かを判定する条件は、上記の例に限られるものではなく適宜設定されていてよい。
【0096】
ステアリング操作が制限された走行区間がない場合(S47/No)、そのままステップS51に進む一方、ステアリング操作が制限された走行区間がある場合(S47/Yes)、運転技能評価部69は、ステアリング操作が制限された走行区間については、ヨー角速度に関する評価項目「a*x1」の重みが小さくなるように式(1)を調整する(第2の調整方法)(ステップS49)。より具体的には、基本評価方法での各評価項目「a*x1」、「b*x2」の重みの割合が5:5である場合、それぞれの評価項目の重みの割合を4:5や3:5等に変更して重み付けを調整したり、0:5としてヨー角速度の評価項目「a*x1」が運転技能スコアyに反映されないようにする。これにより、外的要因により制限されるステアリング操作が運転技能スコアyに反映される度合いが低くなって、制限を受けない運転操作に基づいて運転技能の評価結果が得られやすくなる。したがって、運転技能の評価結果に対するドライバの信頼度が低下することを防ぐことができる。
【0097】
次いで、運転技能評価部69は、運転操作が制限された走行区間のなかに、あらかじめ設定された個別評価方法で運転技能を評価する走行区間があるか否かを判定する(ステップS51)。例えば渋滞中の高速道路を走行する場合にはできる限り停車及び発進を繰り返さずに低速走行を継続することが渋滞の緩和のためには望ましい。この場合、上記式(1)のうちのヨー角速度の評価項目「a*x1」を用いるよりも、先行車両との相対速度を評価する方が、走行シーンに適した運転技能の評価結果が得られる。したがって、運転技能評価部69は、高速道路を走行中に図5に示した先行車両の速度が遅い状況となっていた走行区間がある場合に、個別評価方法で運転技能を評価する走行区間があると判定する。
【0098】
あらかじめ設定された個別評価方法で運転技能を評価する走行区間がない場合(S51/No)、外的要因による評価方法の調整を行うルーチンを終了する。一方、あらかじめ設定された個別評価方法で運転技能を評価する走行区間がある場合(S51/Yes)、運転技能評価部69は、当該区間の運転技能を評価するために用いる式を、あらかじめ設定された式に変更し(第3の調整方法)(ステップS53)、外的要因による評価方法の調整を行うルーチンを終了する。上記の例では、高速道路を走行中に図5に示した先行車両の速度が遅い状況となっていた区間については、上記式(1)を用いた基本評価方法とは異なる、下記式(2)を用いた個別評価方法でドライバの運転技能を評価するように設定されている。
y=100-b*x2-c*x3 …(2)
x2:一定距離当たりの前後ジャーク(加加速度)の平均値
x3:一定距離当たりの先行車両との相対速度の平均値
【0099】
上記式(2)における「b*x2」及び「c*x3」の項は、ともにドライバによるアクセルペダル及びブレーキペダルの操作の運転技能を反映した評価項目に相当する。「b*x2」の項は、停車及び発進動作の頻度が反映された値となり、「c*x3」の項は、先行車両と同程度の車速を維持できている度合が反映された値となる。上記式(2)では、前後ジャークの値及び相対速度の値がそれぞれ小さいほど、運転技能スコアyの値が大きくなるように各項の係数b,cが設定される。基本評価方法に用いられる式(1)と同様に、運転記録データベース43に記録された運転データのうち、運転操作が制限されない運転データを用いて算出される運転技能スコアyが概ね0~100点の間の値となるように、係数b,cが設定されてもよい。
【0100】
なお、個別評価方法で運転技能を評価する走行区間は上記の例に限られるものではなく、任意に設定されていてよい。例えば渋滞時以外にも駐車操作時、障害物の回避操作時用に設定された個別評価方法が用いられてもよい。また、それぞれの個別評価方法で用いる式は、それぞれの走行シーンに応じて必要とされる運転技能が適切に評価されるように適宜設定される。
【0101】
図11に戻り、次いで、運転技能評価部69は、運転操作が制限された走行区間のなかに、図9図10に示した内的要因により運転操作が制限された走行区間があるか否かを判定する(ステップS35)。内的要因により運転操作が制限された走行区間がない場合(S35/No)、そのままステップS39へ進む一方、内的要因により運転操作が制限された走行区間がある場合(S35/Yes)、運転技能評価部69は、内的要因による評価方法の調整を行うルーチンを実行する(ステップS37)。
【0102】
図13は、内的要因による評価方法の調整を行うルーチンを示すフローチャートである。まず、運転技能評価部69は、運転操作が制限された走行区間のなかに、図9に示した判定条件を満たす、ドライバが疲労状態にあった走行区間があるか否かを判定する(ステップS61)。ドライバが疲労状態にあった走行区間がない場合(S61/No)、そのままステップS65に進む。一方、ドライバが疲労状態にあった走行区間がある場合(S61/Yes)、運転技能評価部69は、運転記録データベース43に記録された運転データを参照し、ドライバが疲労状態にある状況で制限される運転操作を特定して、当該運転操作に対応する評価項目の重みが小さくなるように式(1)を調整する(第2の調整方法)(ステップS63)。
【0103】
具体的に、運転技能評価部69は、運転記録データベース43に記録された運転データから、ドライバが疲労状態にあるときの運転操作とドライバが疲労状態にないときの運転操作とを比較して、ドライバが疲労状態にあるときの運転操作の変化の傾向を判定する。そして、運転技能評価部69は、ドライバが疲労状態にある状況で制限される運転操作を特定し、当該運転操作が減速動作であれば前後ジャークの評価項目「b*x2」の重みが小さくなるようにし、当該運転操作がステアリング操作であればヨー角速度の評価項目「a*x1」の重みが小さくなるようにする。これにより、ドライバの疲労時に制限される運転操作が運転技能スコアyに反映される度合いが低くなって、制限を受けない運転操作に基づいて運転技能の評価結果が得られやすくなる。したがって、運転技能の評価結果に対するドライバの信頼度が低下することを防ぐことができる。
【0104】
次いで、運転技能評価部69は、運転操作が制限された走行区間のなかに、図10に示した判定条件を満たす、ドライバが時間に余裕がない状況にあった走行区間があるか否かを判定する(ステップS65)。ドライバが時間に余裕がない状況にあった走行区間がない場合(S65/No)、そのまま内的要因による評価方法の調整を行うルーチンを終了する。一方、ドライバが時間に余裕がない状況にあった走行区間がある場合(S65/Yes)、運転技能評価部69は、該当する走行区間については、すべての評価方法の調整の設定をキャンセルし、評価方法の調整を行わないようにして(ステップS67)、内的要因による評価方法の調整を行うルーチンを終了する。ドライバが時間に余裕がない状況にあった走行区間についての評価方法を調整することは、時間に余裕がない状態で危険な運転をしてしまうことを正当化することにつながる。このため、本実施形態では、ドライバが時間に余裕がなく、普段よりも車速が大きかったり、信号無視や強引な運転をするおそれがある場合には、すべての評価方法の調整を行わないように設定される。
【0105】
あるいは、運転技能評価部69は、評価対象の全走行区間のうち、ドライバが時間に余裕がない状況にあったと判定された走行区間を除外して、運転技能を評価してもよい。一方、ドライバが時間に余裕がない状況にあった走行区間を除外する場合、当該走行区間の運転技能スコアyの構成比をゼロとしつつ、他の走行区間の運転技能スコアyの構成比の和を100(%)に維持する。これにより、算出される運転技能の評価結果から、運転操作が制限された区間の評価が除外され、運転技能の評価結果の確度を高めることができる。
【0106】
図11に戻り、次いで、運転技能評価部69は、ステップS33,S37での調整結果を反映した評価方法で、調整後の評価結果を算出する(ステップS39)。具体的に、運転操作が制限される走行区間ごとに、そのときの状況に応じた方法で評価方法を調整した運転技能スコアyを算出し、運転操作が制限されない走行区間の運転技能スコアyも含めた全走行区間の運転技能スコアy1,y2,...,ynの平均値を、調整後の総合スコアY´とする。これにより、ドライバの運転操作が制限される状況での運転操作の影響を低減した運転技能の評価結果を得ることができる。
【0107】
図3に戻り、処理部51の通知処理部71は、算出した評価結果をドライバにフィードバックする処理を実行する(ステップS27)。例えば通知処理部71は、出力装置23を駆動して、運転技能の評価結果を画面に表示する。
【0108】
図14は、運転技能の評価結果を通知する画面表示の例を示す。図14に示した画面表示の例は、総合スコア(Y)、全走行区間、評価方法を調整した走行区間、評価方法の調整原因及び評価方法の調整方法の情報を含む。運転技能の評価結果をドライバにフィードバックする際に、通知する情報の一部又は全部を音声で出力してもよい。これにより、ドライバは、運転操作が制限された理由とともに当該理由で運転操作が制限された状態での運転技能の評価結果であることを知ることができ、ドライバ自身の運転技能の評価が適切に行われていることを知ることができる。評価方法を調整した走行区間を表示する際に、併せて当該走行区間を走行中の画像データを表示したり、あるいは、再生操作可能にしたりしてもよい。
【0109】
また、図14に例示した画面表示の例は、運転技能の評価結果(総合スコア)の確度を表す情報を含む。確度は、例えば運転操作が制限される状況にあるか否かの判定の確度を表す情報であってもよい。この場合、確度は、ステップS23で運転操作が制限される状況であると判定されたときの周囲環境のデータやドライバの運転状態のデータと、運転記録データベース43に記録されている運転データのうち、同じように運転操作が制限される状況と判定された運転データとの類似度を示す情報であってもよい。データの類似度は、道路形状や車線数、路面状態、他車両の相対位置及び相対速度、障害物の有無、ドライバの体調等の複数のデータ項目の一致度として求められてもよいが、任意の計算方法が設定されてもよい。運転技能の評価結果の確度を通知することにより、運転技能の評価が適切に行われていることをドライバが知ることができ、運転技能評価システム10に対する信頼度を高めることができる。
【0110】
また、通知処理部71は、総合スコアYが、運転操作が制限される状況に応じて調整された基準スコアY0(評価基準)以下のときにドライバに対して注意又は警告を通知する。注意又は警告の通知は、画面表示又は音声出力の少なくとも一方の手段により行われてよい。また、通知処理部71は、総合スコアYの代わりにそれぞれの走行区間の運転技能スコアyが基準スコアY0(評価基準)以下のときに、該当する走行区間とともに注意又は警告を通知してもよい。
【0111】
また、通知処理部71は、運転技能の評価結果を通知する際に、総合スコアYの値や評価結果の確度等の評価結果の内容に応じて音色や音量を変化させてもよい。例えば通知処理部71は、総合スコアYの値が大きいほど心地よい音色の音を発生させる。総合スコアYの値が大きいほど楽音の種類の数が多い和音を発生させてもよい。また、通知処理部71は、評価結果の確度が高いほど音量を大きくしてもよい。これにより、運転中のドライバに対して運転技能の評価結果をフィードバックする際に、視覚を通じて認識させるのではなく聴覚を通じて直感的に認識させることができ、安全運転を損なうことなく運転技能をフィードバックすることができる。
【0112】
また、通知処理部71は、運転技能の評価結果を通知する際に、運転操作が制限された状況での特定の運転操作が適切に行われていたと評価される場合、当該運転操作の評価結果が高評価であることを通知してもよい。具体的に、通知処理部71は、上記のステップS33又はステップS37で重みを下げた評価項目に対応する運転操作(加減速操作又はステアリング操作)について、重みを下げる前の評価項目「a*x1」又は「b*x2」の値を、運転操作が制限されない状況での評価項目「a*x1」又は「b*x2」の値と比較する。そして、通知処理部71は、評価項目「a*x1」又は「b*x2」の値と、運転操作が制限されない状況での評価項目「a*x1」又は「b*x2」の値との差が所定の判定閾値未満の場合に、運転操作が制限された状況であっても当該運転操作の評価結果が高いと判定し、ドライバに通知する。これにより、ドライバは、運転操作が制限された状況においても当該運転操作を適切に行うことができたことを知ることができ、運転技能を向上させるモチベーションを高めることができる。
【0113】
また、図15は、運転技能の評価結果を通知する画面表示の変形例を示す。通知処理部71は、運転技能の評価結果を通知する際に、過去に同じ走行シーンで同じ車種の車両1の運転時に運転操作が制限された状況での運転技能の評価結果と比較し、当該比較結果を合わせて通知してもよい。具体的に、通知処理部71は、運転記録データベース43に記録されている運転データを参照し、評価対象の全走行区間のうちの運転操作が制限された走行区間の周囲環境の情報と同じ周囲環境の走行区間で運転操作が制限された運転データの記録があるか否かを判定する。また、通知処理部71は、過去の運転データの記録がある場合、今回運転操作が制限された状況での評価結果(運転技能スコアy)と過去に運転操作が制限された状況での評価結果(運転技能スコアy)とを比較する。そして、通知処理部71は、今回の評価結果と併せて過去の評価結果を表示するとともに、運転技能の評価が上がったか下がったかを表示する。
【0114】
また、図15に示すように、運転記録データベース43に記録された運転データのうち、同じドライバが同じ調整原因で運転操作が制限されたときの運転技能スコアyと比較して今回の運転技能スコアyが上昇した場合、通知処理部71は、評価方法を調整した区間の運転操作の評価結果が高評価であることを通知してもよい。これにより、ドライバは、特定の運転操作が制限された状況における運転操作の上達を知ることができ、運転技能を向上させるモチベーションを高めることができる。図15に示した例では、「同じ調整原因の走行区間での運転技能スコアが前回より向上しました!」とテキスト表示されているが、当該区間の運転技能スコアを表示してもよく、音声又は効果音により通知してもよい。
【0115】
その際に、同じドライバの過去の運転データの記録がある場合には、当該ドライバの評価結果と比較を行う一方、同じドライバの過去の運転データの記録がない場合には、他のドライバが同じ走行シーンで運転操作が制限された状況での評価結果と比較を行ってもよい。
【0116】
運転技能の評価結果のフィードバックを行った後、処理部51は、運転技能評価処理を停止するか否かを判定する(ステップS29)。例えばドライバによる車両1の運転開始から運転終了までの間に運転技能評価処理が実行される場合、処理部51は、運転技能の評価結果のフィードバックを完了したことにより運転技能評価処理の実行を停止すると判定してもよい。あるいは、処理部51は、車内撮影カメラ13や運転席に設置された荷重センサ等の出力信号に基づいてドライバが運転席から離座したことを検知したときに運転技能評価処理の実行を停止すると判定してもよい。運転技能評価処理を停止すると判定した場合(S29/Yes)、処理部51は、運転技能評価処理を停止させる。
【0117】
一方、あらかじめ設定された特定の区間を走行する際に運転技能評価処理が実行されるように設定されている場合や乗員が任意に運転技能評価処理の実行時期を設定可能になっている場合等には、運転技能の評価結果をフィードバックした後においても運転技能評価処理が継続される。この場合(S29/No)、ステップS13に戻り、処理部51は、運転技能評価処理を開始すると判定されるまで待機し、運転技能評価処理を開始すると判定された場合(S13/Yes)、ここまでに説明した各ステップの処理を繰り返し実行する。
【0118】
以上説明したように、本開示の第1の実施の形態に係る運転技能評価システム10は、車両1の周囲環境又はドライバの運転状態の少なくともいずれか一方を所定の判定条件と比較することにより、ドライバの運転操作が制限される状況か否かを判定し、運転操作が制限される状況である場合には、当該状況に基づいて運転技能の評価方法を調整して評価を行う。したがって、ドライバの運転状態によらない外的要因あるいはドライバの運転状態に起因する内的要因により運転操作が制限される場合、運転技能の評価結果への影響が小さくされ、適切な運転技能の評価結果を得ることができる。
【0119】
また、本実施形態に係る運転技能評価システム10は、運転操作が制限される状況に基づいて運転技能の評価基準(基準スコア)を調整する(第1の調整方法)。これにより、外的要因により運転操作が制限される場合において総合スコアYが基準スコアY0以下になる可能性が低下し、注意や警告が通知されにくくなる。したがって、運転技能の評価結果に対するドライバの信頼度が低下することを防ぐことができる。
【0120】
また、本実施形態に係る運転技能評価システム10は、運転操作が制限される状況に応じて、ドライバによるステアリング操作又は加減速操作の評価項目の重み付けを調整し、あるいは、評価項目のいずれかを除外して運転技能を評価する(第2の調整方法)。これにより、外的要因により制限される運転操作が運転技能スコアyに反映される度合いが低くなって、制限を受けない運転操作に基づいて運転技能の評価結果が得られやすくなる。したがって、運転技能の評価結果に対するドライバの信頼度が低下することを防ぐことができる。
【0121】
また、本実施形態に係る運転技能評価システム10は、運転操作が制限される状況に応じて、基本評価方法とは異なる個別評価方法で運転技能を評価する(第3の調整方法)。これにより、それぞれの走行シーンに適した評価方法を用いて運転技能の評価結果を得ることができる。
【0122】
また、本実施形態に係る運転技能評価システム10は、運転技能の評価結果を通知する際に、評価結果の確度を表す情報を通知する。これにより、運転技能の評価が適切に行われていることをドライバが知ることができ、運転技能評価システム10に対する信頼度を高めることができる。
【0123】
また、本実施形態に係る運転技能評価システム10は、運転技能の評価結果を通知する際に、運転技能の評価方法の調整原因又は調整内容に関する情報を通知する。これにより、ドライバは、運転操作が制限された理由とともに当該理由で運転操作が制限された状態での運転技能の評価結果であることを知ることができ、ドライバ自身の運転技能の評価が適切に行われていることを知ることができる。
【0124】
また、本実施形態に係る運転技能評価システム10は、運転技能の評価結果を通知する際に、過去に同じ走行シーンで運転操作の制限を受けた状況での運転技能の評価結果と比較した結果を合わせて通知する。また、本実施形態に係る運転技能評価システム10は、運転技能の評価結果を通知する際に、運転操作の制限を受けた状況での特定の運転操作が適切に行われていたと評価される場合、当該運転操作の評価結果が高評価であることを通知する。これにより、ドライバは、特定の運転操作が制限された状況における運転操作の上達を知ることができ、運転技能を向上させるモチベーションを高めることができる。
【0125】
また、本実施形態に係る運転技能評価システム10は、運転記録データベース43に記録された運転データのうち、自車両1と同種の車両を、運転技能が同レベルの他のドライバが運転したときの運転データを参照して、運転操作が制限される状況の判定又は運転技能の評価の少なくとも一方を行う。これにより、ドライバが普段運転している車両とは異なる車種の車両1を運転する場合であっても、普段運転している車両と同じ基準で運転技能を評価することができる。
【0126】
<<2.第2の実施の形態>>
続いて、本開示の第2の実施の形態に係る運転技能評価システム10を説明する。本実施形態では、運転技能評価部69は、評価対象の全走行区間に対する運転操作が制限された走行区間の割合に基づいて評価方法を調整する。
【0127】
本実施形態に係る運転技能評価システム10の基本的構成は、第1の実施の形態で説明した運転技能評価システム10の構成と同一であってよい。ただし、本実施形態に係る運転技能評価システム10では、情報処理装置50の運転技能評価部69による評価方法の調整処理が、第1の実施の形態に係る情報処理装置50の運転技能評価部69による評価方法の調整処理と異なっている。以下、本実施形態に係る運転技能評価システム10について、第1の実施の形態に係る運転技能評価システム10と異なる点を説明する。
【0128】
図16は、本実施形態における運転技能の評価方法を調整する処理のフローチャートを示す。図16に示すフローチャートは、図3に示したフローチャートにおいて評価方法を調整するステップS25のルーチンを示している。
【0129】
まず、運転技能評価部69は、図3に示したフローチャートのステップS23において運転操作が制限された状況にあったと判定された走行区間の距離の和を算出する(ステップS71)。次いで、運転技能評価部69は、評価対象の全走行区間の距離に対する運転操作が制限された走行区間の距離の割合Rを算出する(ステップS73)。
【0130】
次いで、運転技能評価部69は、算出した割合Rが所定の閾値R0以上であるか否かを判定する(ステップS75)。運転操作が制限された走行区間の割合が大きすぎると運転技能の評価結果の確度が低くなって評価結果に対する信頼度が低下することから、運転操作が制限された走行区間が評価対象に含まれることを許容する範囲として、当該割合Rの閾値R0が任意の値に設定される。例えば閾値R0は20~30%の範囲内の値であってよいが、この範囲に限定されるものではない。
【0131】
算出した割合Rが所定の閾値R0以下の場合(S75/Yes)、運転技能評価部69は、運転操作が制限された走行区間を除外して運転技能を評価するように設定する(ステップS77)。例えば評価対象の全走行区間の運転技能スコアy1,y2,...,ynの平均値を総合スコアYとする場合、運転操作が制限された走行区間が存在しない場合には各区間の運転技能スコアyの構成比の和が100(%)となるように構成比を均等割りする。一方、運転操作が制限された走行区間を除外する場合、当該走行区間の運転技能スコアyの構成比をゼロとしつつ、他の走行区間の運転技能スコアyの構成比の和を100(%)に維持する。これにより、算出される運転技能の評価結果から、運転操作が制限された区間の評価が除外され、運転技能の評価結果の確度を高めることができる。
【0132】
一方、算出した割合Rが所定の閾値R0を超える場合(S75/No)、運転技能評価部69は、運転操作が制限された走行区間の評価の寄与率を下げて運転技能を評価するように設定する(ステップS79)。例えば評価対象の全走行区間の運転技能スコアy1,y2,...,ynの平均値を総合スコアYとする場合、各区間の運転技能スコアyの構成比の和を100(%)で維持しつつ、該当区間の構成比を小さくすることにより運転操作が制限された走行区間の評価の寄与率を下げる。これにより、算出される運転技能の評価結果への、運転操作が制限された区間の評価の寄与率が小さくなる一方で、運転操作が制限された状況での運転技能の評価を含めた評価結果を得ることができる。
【0133】
構成比を小さくする度合いは、例えば全走行区間の距離に対する、運転操作が制限されるそれぞれの走行区間の距離の割合rが大きいほど構成比を小さくする度合いが大きくなるように設定されてよい。
【0134】
次いで、運転技能評価部69は、ステップS77,S79での調整結果を反映した評価方法で、調整後の評価結果を算出する(ステップS81)。具体的に、運転技能評価部69は、運転操作が制限された走行区間及び制限されない走行区間を含む全走行区間の運転技能スコアy1,y2,...,ynを算出するとともに、運転操作が制限される走行区間の運転技能スコアyの寄与率を低下するかあるいは除外し、運転技能スコアy1,y2,...,ynの平均値を調整後の総合スコアY´とする。これにより、ドライバの運転操作が制限される状況での運転操作の影響を低減した運転技能の評価結果を得ることができる。
【0135】
なお、本実施形態において評価対象の全走行区間のそれぞれの走行区間の運転技能スコアyを算出する際に、第1の実施の形態で説明したように運転操作が制限された状況に応じて評価方法を調整してもよい。
【0136】
以上説明したように、第2の実施の形態に係る運転技能評価システム10は、評価対象の全走行区間の距離に対する、運転操作が制限される走行区間の割合Rに応じて運転技能の評価方法を調整する。第2の実施の形態に係る運転技能評価システム10であっても、第1の実施の形態に係る運転技能評価システム10と同様の効果を得ることができる。
【0137】
また、本実施形態に係る運転技能評価システム10は、当該割合Rが所定の閾値R0以下の場合、運転操作が制限された区間の評価を除外して運転技能の評価結果を求める。これにより、運転技能の評価結果の確度を高めることができる。また、運転技能評価システム10は、当該割合Rが所定の閾値R0を超える場合、運転操作が制限された走行区間の評価の寄与率を下げて運転技能を評価する。これにより、ライバの運転操作が制限される状況での運転操作の影響を低減した運転技能の評価結果を得ることができる。
【0138】
なお、第2の実施の形態で説明した例では、評価対象の全走行区間に対する運転操作が制限された走行区間の割合Rに応じて、当該走行区間の評価の寄与率を低下させ又は当該走行区間の評価を除外していたが、本実施形態の評価方法の調整方法は上記の例に限定されない。例えば運転操作が制限された走行区間の運転技能スコアyを、運転操作が制限されなかった走行区間の運転技能スコアyと比較し、運転操作が制限されなかったと仮定した場合の運転技能スコアを推定してもよい。その際に、運転操作が制限されなかった走行区間のうち、運転操作が制限された走行区間の道路形状に類似する区間の運転技能スコアyから、運転操作が制限されなかったと仮定した場合の運転技能スコアを推定してもよい。
【0139】
以上、添付図面を参照しながら本開示の好適な実施形態について詳細に説明したが、本開示の技術はかかる例に限定されない。本開示の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0140】
1:車両(自車両)、10:運転技能評価システム、11:周囲環境センサ、13:車内撮影カメラ、15:生体センサ、17:車両状態センサ、19:車両位置検出センサ、21:入力装置、23:出力装置、41:高精度地図データベース、43:運転記録データベース、50:情報処理装置、51:処理部、53:記憶部、61:周囲環境検出部、63:ドライバ情報取得部、65:車両状態検出部、67:運転操作制限判定部、69:運転技能評価部、71:通知処理部、Y:総合スコア、Y0:基準スコア、y:運転技能スコア
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16