(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】車両制御装置
(51)【国際特許分類】
G08G 1/16 20060101AFI20241001BHJP
B60W 50/14 20200101ALI20241001BHJP
B60W 60/00 20200101ALI20241001BHJP
【FI】
G08G1/16 D
B60W50/14
B60W60/00
(21)【出願番号】P 2023566142
(86)(22)【出願日】2022-10-25
(86)【国際出願番号】 JP2022039632
(87)【国際公開番号】W WO2023105960
(87)【国際公開日】2023-06-15
【審査請求日】2024-02-02
(31)【優先権主張番号】P 2021197671
(32)【優先日】2021-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉本 成
(72)【発明者】
【氏名】大町 忠嗣
(72)【発明者】
【氏名】横井 真浩
(72)【発明者】
【氏名】諏訪部 光紀
(72)【発明者】
【氏名】手塚 雄貴
(72)【発明者】
【氏名】王 晨宇
【審査官】佐々木 佳祐
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-4210(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/16
B60W 50/14
B60W 60/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動運転および手動運転が可能な車両(10)に用いられる車両制御装置であって、
前記車両が走行する走行車線の進行方向における左右の車線境界線(L1,L2)を取得するとともに、前記車両の周辺情報を認識する周辺情報認識部(112)と、
前記自動運転の実行中において前記車両のドライバが操舵ハンドルを保持していない状態であるハンズオフ状態から、前記ドライバが前記操舵ハンドルを保持しているハンズオン状態への切り替えを要求するハンズオン要求を、報知装置(150)により報知する報知部(114)と、
前記周辺情報認識部による認識結果に応じて前記車両の制御内容を決定する制御決定部(115)と、
を備え、
前記制御決定部は、
前記制御内容として、前記ハンズオフ状態において、前記周辺情報認識部により取得された左右の前記車線境界線が互いに平行である場合には前記ハンズオフ状態を継続する制御を決定し、左右の前記車線境界線が非平行である場合には前記ハンズオン要求を報知する制御を決定
し、
前記制御決定部は、
前記周辺情報認識部により少なくとも一方の前記車線境界線が認識されないときには、前記ハンズオフ状態を継続すべきか否かを判定した上で、前記ハンズオフ状態を継続する制御、または前記ハンズオン要求を報知する制御、のいずれかを決定するハンズオフ継続判定処理を実行し、
前記制御決定部は、前記ハンズオフ継続判定処理において、
前記車両の速度が予め定められた第1速度閾値よりも小さく、かつ、前方の車両との間隔が予め定められた第1車間閾値よりも小さい場合には、前記ハンズオフ状態を継続する制御を決定する、車両制御装置。
【請求項2】
自動運転および手動運転が可能な車両(10)に用いられる車両制御装置であって、
前記車両が走行する走行車線の進行方向における左右の車線境界線(L1,L2)を取得するとともに、前記車両の周辺情報を認識する周辺情報認識部(112)と、
前記自動運転の実行中において前記車両のドライバが操舵ハンドルを保持していない状態であるハンズオフ状態から、前記ドライバが前記操舵ハンドルを保持しているハンズオン状態への切り替えを要求するハンズオン要求を、報知装置(150)により報知する報知部(114)と、
前記周辺情報認識部による認識結果に応じて前記車両の制御内容を決定する制御決定部(115)と、
を備え、
前記制御決定部は、
前記制御内容として、前記ハンズオフ状態において、前記周辺情報認識部により取得された左右の前記車線境界線が互いに平行である場合には前記ハンズオフ状態を継続する制御を決定し、左右の前記車線境界線が非平行である場合には前記ハンズオン要求を報知する制御を決定し、
前記制御決定部は、
前記周辺情報認識部により少なくとも一方の前記車線境界線が認識されないときには、前記ハンズオフ状態を継続すべきか否かを判定した上で、前記ハンズオフ状態を継続する制御、または前記ハンズオン要求を報知する制御、のいずれかを決定するハンズオフ継続判定処理を実行し、
前記制御決定部は、前記ハンズオフ継続判定処理において、
前記周辺情報認識部により少なくとも一方の前記車線境界線が破線であることが認識され、かつ、前方の車両との間隔が予め定められた第2車間閾値よりも小さい場合には、前記ハンズオフ状態を継続する制御を決定する
、車両制御装置。
【請求項3】
自動運転および手動運転が可能な車両(10)に用いられる車両制御装置であって、
前記車両が走行する走行車線の進行方向における左右の車線境界線(L1,L2)を取得するとともに、前記車両の周辺情報を認識する周辺情報認識部(112)と、
前記自動運転の実行中において前記車両のドライバが操舵ハンドルを保持していない状態であるハンズオフ状態から、前記ドライバが前記操舵ハンドルを保持しているハンズオン状態への切り替えを要求するハンズオン要求を、報知装置(150)により報知する報知部(114)と、
前記周辺情報認識部による認識結果に応じて前記車両の制御内容を決定する制御決定部(115)と、
を備え、
前記制御決定部は、
前記制御内容として、前記ハンズオフ状態において、前記周辺情報認識部により取得された左右の前記車線境界線が互いに平行である場合には前記ハンズオフ状態を継続する制御を決定し、左右の前記車線境界線が非平行である場合には前記ハンズオン要求を報知する制御を決定し、
前記制御決定部は、
前記周辺情報認識部により少なくとも一方の前記車線境界線が認識されないときには、前記ハンズオフ状態を継続すべきか否かを判定した上で、前記ハンズオフ状態を継続する制御、または前記ハンズオン要求を報知する制御、のいずれかを決定するハンズオフ継続判定処理を実行し、
前記制御決定部は、前記ハンズオフ継続判定処理において、
前記周辺情報認識部により少なくとも一方の前記車線境界線が前方の車両により隠蔽されていることが認識された場合には、前記前方の車両の走行軌跡を前記車線境界線の代替指標として適用した上で、前記車線境界線が互いに平行である場合には前記ハンズオフ状態を継続する制御を決定する
、車両制御装置。
【請求項4】
前記車両の前方を撮像する撮像装置(121)を備え、
前記周辺情報認識部は、前記撮像装置による撮像画像から前記車線境界線を取得する請求項1~請求項
3のうちいずれか一項に記載の車両制御装置。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2021年12月6日に出願された日本出願番号2021-197671号に基づくもので、ここにその記載内容を援用する。
【技術分野】
【0002】
本開示は、車両制御装置に関する。
【背景技術】
【0003】
自動運転および手動運転が可能な車両が知られている。例えば、特許文献1には、地図情報から自動運転するのは困難になるかもしれない領域(以下、「自動運転不調領域」という)に車両が近づいていることを検知して、自動運転から手動運転に切り替えるためにドライバに通知する技術が記載されている。通知する構成としては、ドライバが操舵ハンドルを保持していないハンズオフ状態から、ドライバが操舵ハンドルを保持しているハンズオン状態への切り替えを要求するハンズオン要求を出す構成が想定される。また、自動運転不調領域は、具体的には、分岐路や車線数増加路、交差点などが想定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【0005】
しかし、上記構成では、地図情報を用いて自動運転不調領域を判断しているため、地図情報を有さない車両には適応できなかった。また、地図情報を用いる場合でも、車線が引き直された場合には、地図情報が更新されるまで対応できずに、的確にハンズオン要求が出せないという問題が生じていた。本開示は、このような点に鑑みて創作されたものであり、その目的は、地図情報の有無に関わらずに、車両の進行方向の走行路を認識し、的確なハンズオン要求を出すことが可能な車両制御装置を提供することにある。
【0006】
本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
【0007】
本開示の一形態によれば、車両制御装置が提供される。この車両制御装置は、自動運転および手動運転が可能な車両に用いられる車両制御装置であって、前記車両が走行する走行車線の進行方向における左右の車線境界線を取得するとともに、前記車両の周辺情報を認識する周辺情報認識部と、前記自動運転の実行中において前記車両のドライバが操舵ハンドルを保持していない状態であるハンズオフ状態から、前記ドライバが前記操舵ハンドルを保持しているハンズオン状態への切り替えを要求するハンズオン要求を、報知装置により報知する報知部と、前記周辺情報認識部による認識結果に応じて前記車両の制御内容を決定する制御決定部と、を備え、前記制御決定部は、前記制御内容として、前記ハンズオフ状態において、前記周辺情報認識部により取得された左右の前記車線境界線が互いに平行である場合には前記ハンズオフ状態を継続する制御を決定し、左右の前記車線境界線が非平行である場合には前記ハンズオン要求を報知する制御を決定し、前記制御決定部は、前記周辺情報認識部により少なくとも一方の前記車線境界線が認識されないときには、前記ハンズオフ状態を継続すべきか否かを判定した上で、前記ハンズオフ状態を継続する制御、または前記ハンズオン要求を報知する制御、のいずれかを決定するハンズオフ継続判定処理を実行し、前記制御決定部は、前記ハンズオフ継続判定処理において、前記車両の速度が予め定められた第1速度閾値よりも小さく、かつ、前方の車両との間隔が予め定められた第1車間閾値よりも小さい場合には、前記ハンズオフ状態を継続する制御を決定する。
本開示の他の形態によれば、車両制御装置が提供される。この車両制御装置は、自動運転および手動運転が可能な車両に用いられる車両制御装置であって、前記車両が走行する走行車線の進行方向における左右の車線境界線を取得するとともに、前記車両の周辺情報を認識する周辺情報認識部と、前記自動運転の実行中において前記車両のドライバが操舵ハンドルを保持していない状態であるハンズオフ状態から、前記ドライバが前記操舵ハンドルを保持しているハンズオン状態への切り替えを要求するハンズオン要求を、報知装置により報知する報知部と、前記周辺情報認識部による認識結果に応じて前記車両の制御内容を決定する制御決定部と、を備え、前記制御決定部は、前記制御内容として、前記ハンズオフ状態において、前記周辺情報認識部により取得された左右の前記車線境界線が互いに平行である場合には前記ハンズオフ状態を継続する制御を決定し、左右の前記車線境界線が非平行である場合には前記ハンズオン要求を報知する制御を決定し、前記制御決定部は、前記周辺情報認識部により少なくとも一方の前記車線境界線が認識されないときには、前記ハンズオフ状態を継続すべきか否かを判定した上で、前記ハンズオフ状態を継続する制御、または前記ハンズオン要求を報知する制御、のいずれかを決定するハンズオフ継続判定処理を実行し、前記制御決定部は、前記ハンズオフ継続判定処理において、前記周辺情報認識部により少なくとも一方の前記車線境界線が破線であることが認識され、かつ、前方の車両との間隔が予め定められた第2車間閾値よりも小さい場合には、前記ハンズオフ状態を継続する制御を決定する。
本開示の他の形態によれば、車両制御装置が提供される。この車両制御装置は、自動運転および手動運転が可能な車両に用いられる車両制御装置であって、前記車両が走行する走行車線の進行方向における左右の車線境界線を取得するとともに、前記車両の周辺情報を認識する周辺情報認識部と、前記自動運転の実行中において前記車両のドライバが操舵ハンドルを保持していない状態であるハンズオフ状態から、前記ドライバが前記操舵ハンドルを保持しているハンズオン状態への切り替えを要求するハンズオン要求を、報知装置により報知する報知部と、前記周辺情報認識部による認識結果に応じて前記車両の制御内容を決定する制御決定部と、を備え、前記制御決定部は、前記制御内容として、前記ハンズオフ状態において、前記周辺情報認識部により取得された左右の前記車線境界線が互いに平行である場合には前記ハンズオフ状態を継続する制御を決定し、左右の前記車線境界線が非平行である場合には前記ハンズオン要求を報知する制御を決定し、前記制御決定部は、前記周辺情報認識部により少なくとも一方の前記車線境界線が認識されないときには、前記ハンズオフ状態を継続すべきか否かを判定した上で、前記ハンズオフ状態を継続する制御、または前記ハンズオン要求を報知する制御、のいずれかを決定するハンズオフ継続判定処理を実行し、前記制御決定部は、前記ハンズオフ継続判定処理において、前記周辺情報認識部により少なくとも一方の前記車線境界線が前方の車両により隠蔽されていることが認識された場合には、前記前方の車両の走行軌跡を前記車線境界線の代替指標として適用した上で、前記車線境界線が互いに平行である場合には前記ハンズオフ状態を継続する制御を決定する。
【0008】
ここで、「平行である」とは、厳密な意味での完全に一致する「平行」に限らず、当該技術分野の技術常識に照らして、通常、「平行」であると判断される範囲の同一性を有していれば、「平行である」と解釈する。上記構成によれば、周辺情報認識部により進行方向の左右の車線境界線が取得される。そして、制御決定部により、左右の車線境界線が平行であればハンズオフ状態を継続する制御が決定され、非平行であればハンズオン要求を報知する制御が決定される。左右の車線境界線が平行であれば、走行する道路が真っ直ぐに継続する、もしくは屈曲しつつもなだらかである場合などであり、こうした道路ではハンズオフ状態での自動走行が適応可能である。左右の車線境界線が平行でないときは、例えば、走行車線が分岐する場合、車線数が増加する場合、交差点に差し掛かる場合などが想定され、自動走行が不適応である。
【0009】
上記構成によれば、地図情報を有さない場合や、地図情報を有していても最新の情報に更新されていない場合であっても、認識された左右の車線境界線が平行であるか否かに応じて進行方向の走行路が、自動走行が適用可であるか適用不可であるかを認識することができ、自動運転実行中のハンズオフ状態において的確にハンズオン要求を出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
本開示についての上記目的およびその他の目的、特徴や利点は、添付の図面を参照しながら下記の詳細な記述により、より明確になる。その図面は、
【
図1】
図1は、本開示の第1実施形態における車両制御装置の概略構成を示すブロック図であり、
【
図2】
図2は、車両制御装置が実行するハンズオン要求を報知する処理を示すフローチャートであり、
【
図3】
図3は、左右のレーンマーカが平行でない例を説明するための図であり、分岐路を示す図であり、
【
図4】
図4は、左右のレーンマーカが平行でない例を説明するための図であり、車線数増加路を示す図であり、
【
図5】
図5は、左右のレーンマーカが平行でない例を説明するための図であり、交差点を示す図であり、
【
図6】
図6は、車両制御装置が実行するハンズオフ継続判定処理を示すフローチャートであり、
【
図7】
図7は、渋滞停止中の車両および先行車の状態を説明する図であり、
【
図8】
図8は、破線渋滞走行中の車両および先行車の状態を説明する図であり、
【
図9】
図9は、先行車がオフセット走行しているときの車両および先行車の状態を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施形態について
図1~
図9に基づいて説明する。
【0012】
A.第1実施形態:
A1.車両制御装置110の構成:
図1に示すように、車両10は、自動運転制御システム100を備える。車両10は、自動運転および手動運転が可能である。自動運転では、車両10の運転を操作するための操舵ハンドルがドライバによって操作されていなくても、自動的に車両10が操舵されて運転される。また、自動運転では、操舵はドライバにより行われ、加減速が自動的に制御される形態もある。手動運転では、ドライバによって操舵ハンドルが操作されることによって車両10が操舵され、また、ドライバによって車両10の加減速が制御されて運転される。
【0013】
本実施形態において、自動運転制御システム100は、車両制御装置110と、周辺センサ120と、内部センサ130と、自動運転制御部210と、駆動力制御ECU(Electronic Control Unit)220と、制動力制御ECU230と、操舵制御ECU240と、を備える。車両制御装置110と、自動運転制御部210と、駆動力制御ECU220と、制動力制御ECU230と、操舵制御ECU240とは、車載ネットワーク250を介して接続される。
【0014】
周辺センサ120は、自動運転に必要な車外の周辺情報を取得する。周辺センサ120は、カメラ121と物体センサ122とを備える。カメラ121は、車両10の前方を含む周囲を撮像して撮像画像を取得する。カメラ121は、例えば車内のフロントガラス中央近傍に配置される。カメラ121は、「撮像装置」に相当する。物体センサ122は、車両10の周囲の状況を検出する。物体センサ122として、例えば、レーザーレーダー、ミリ波レーダー、超音波センサ等の反射波を利用した物体センサが挙げられる。
【0015】
内部センサ130は、自車位置センサ131と、加速度センサ132と、車速センサ133と、ヨーレートセンサ134と、を備える。自車位置センサ131は、現在の車両10の位置を検出する。自車位置センサ131として、例えば、汎地球航法衛星システム(Global Navigation Satellite System(s)(GNSS))やジャイロセンサ等が挙げられる。
【0016】
加速度センサ132は、車両10の加速度を検出する検出器である。加速度センサ132は、例えば、車両10の前後方向の縦加速度を検出する縦加速度センサと、車両10の横加速度を検出する横加速度センサとを含む。車速センサ133は、車両10の現在の走行速度を計測する。ヨーレートセンサ134は、車両10の重心の鉛直軸周りのヨーレート(回転角速度)を検出する検出器である。ヨーレートセンサ134としては、例えばジャイロセンサを用いることができる。周辺センサ120および内部センサ130は、取得した各種データを車両制御装置110に送信する。
【0017】
報知装置150は、車両10の乗員(主にドライバ)に対して、画像や音声を用いて各種の情報を報知する装置である。報知装置150は、表示装置およびスピーカを含む。表示装置としては、例えば、HUD(Head-Up Display)や、インストルメントパネルに設けられた表示装置を用いることができる。なお、「画像」には、動画や文字列も含まれる。
【0018】
車両制御装置110は、走行経路設定部111と、周辺情報認識部112と、報知部114と、制御決定部115と、通信部116と、を備える。車両制御装置110は、中央処理装置(CPU)や、RAM、ROMにより構成されたマイクロコンピュータ等からなり、予めインストールされたプログラムをマイクロコンピュータが実行することによって、これらの各部の機能を実現する。ただし、これらの各部の機能の一部又は全部をハードウェア回路で実現してもよい。
【0019】
走行経路設定部111は、車両10の走行する目標走行経路を設定する。目標走行経路とは、前方のある地点までの単なる道順ではなく、走行車線や道路内における走行位置等の詳細な経路を含む。
【0020】
周辺情報認識部112は、周辺センサ120の検出信号を用いて車両10の周辺情報を認識する。より具体的には、周辺情報認識部112は、カメラ121が撮像した画像および物体センサ122の出力信号に基づき、走行している道路の進行方向にある左右の車線境界線(以下、「レーンマーカ」という)の存在とその位置を取得する。レーンマーカは、白線、黄色線、またはその他の色の線であってもよい。また、レーンマーカは、実線、破線のいずれであってもよいし、単線、複合線のいずれであってもよい。レーンマーカの取得は、公知の技術を用いて行うことができる。例えば、カメラ121が撮像した画像から、路面とレーンマーカとの輝度を検出し、輝度変換後の画像からエッジを抽出することが行うことができる。
【0021】
周辺情報認識部112は、さらに、信号機の存在とその位置や指示内容、他車両の存在、位置、大きさ、距離、進行方向、他車両のドライバの存在とその動作、他車両の周辺の人の存在、位置、等を周辺情報として認識する。周辺情報認識部112は、さらに、車線数、車線幅、各車線の中心座標、停止線位置、信号機位置、ガードレール位置、道路勾配、カーブや直線部の道路種別、カーブの曲率半径、カーブ区間の長さ等の情報を周辺情報として認識する。なお、周辺情報認識部112は、信号機や、外部サーバ等との無線通信によってこれらの情報の一部または全部を取得し、認識してもよい。
【0022】
報知部114は、画像表示および音声出力が可能な上記報知装置150を用いて、走行経路および車両位置情報等の種々の情報を乗員に報知する。報知部114は、ハンズオン要求の情報を、車両10の走行状況に応じて制御決定部115の処理に従って報知する。ハンズオン要求とは、自動運転の実行中においてドライバが操舵ハンドルを保持していない状態であるハンズオフ状態から、ドライバが操舵ハンドルを保持しているハンズオン状態への切り替えを要求するものである。
【0023】
制御決定部115は、周辺情報認識部112の認識結果に応じて、車両10の制御内容を決定し、車載ネットワーク250を通じて自動運転制御部210に車両10の制御を行うよう出力する。通信部116は、例えば、図示しないアンテナを通じて図示しない情報センターから、交通情報、天気情報、事故情報、障害物情報、交通規制情報等を取得する。通信部116は、車車間通信により、他車両から種々の情報を取得してもよい。また、通信部116は、路車間通信により、道路の各所に設けられた路側機から種々の情報を取得してもよい。
【0024】
自動運転制御部210は、中央処理装置(CPU)や、RAM、ROMにより構成されたマイクロコンピュータ等からなり、予めインストールされたプログラムをマイクロコンピュータが実行することによって、自動運転機能を実現する。自動運転制御部210は、例えば、走行経路設定部111が定めた経路に沿って走行するように、駆動力制御ECU220および制動力制御ECU230、操舵制御ECU240を制御する。自動運転制御部210は、例えば、車両10が隣車線に車線変更を行う場合に、車両10が走行している車線の基準線から隣車線の基準線を走行するように合流支援を行ってもよい。
【0025】
駆動力制御ECU220は、エンジンなど車両10の駆動力を発生するアクチュエータを制御する電子制御装置である。ドライバが手動で運転を行う場合、駆動力制御ECU220は、アクセルペダルの操作量に応じてエンジンや電気モータである動力源を制御する。一方、自動運転を行う場合、駆動力制御ECU220は、自動運転制御部210で演算された要求駆動力に応じて動力源を制御する。
【0026】
制動力制御ECU230は、車両10の制動力を発生するブレーキアクチュエータを制御する電子制御装置である。ドライバが手動で運転を行う場合、制動力制御ECU230は、ブレーキペダルの操作量に応じてブレーキアクチュエータを制御する。一方、自動運転を行う場合、制動力制御ECU230は、自動運転制御部210で演算された要求制動力に応じてブレーキアクチュエータを制御する。
【0027】
操舵制御ECU240は、車両10の操舵トルクを発生するモータを制御する電子制御装置である。ドライバが手動で運転を行う場合、操舵制御ECU240は、ステアリングハンドルの操作に応じてモータを制御して、ステアリング操作に対するアシストトルクを発生させる。これにより、ドライバが少量の力でステアリングを操作でき、車両10の操舵を実現する。一方、自動運転を行う場合、操舵制御ECU240は、自動運転制御部210で演算された要求操舵角に応じてモータを制御することで操舵を行う。
【0028】
A2.車両制御装置110による処理:
自動運転では、走行経路設定部111は、自車位置センサ131によって検出された現在位置と、車両10の周囲の他車両等の位置や速度等とに基づいて、数秒後までの車両10の走行プランを作成する。この走行プランには、数秒後までの車両10の操舵プラン及び加減速プラン等が含まれる。
【0029】
図2に示される処理は、車両10の走行中に所定時間ごとに繰り返し実行される。
図2に示すように、ステップ11(以下、ステップを「S」と略す)において、現在の車両10の運転状態が、ハンズオフ状態であるか否かが判断される。例えば、自動運転制御部210からの制御信号に基づいて、自動運転実行中のハンズオフ状態であるか否かが判断される。
【0030】
S11において、ハンズオフ状態であると判断された場合には(S11:YES)、S12に進み、周辺情報認識部112により、車両10の現在の走行車線の延長に相当し、かつ、車両10の進行方向の左右にあるレーンマーカL1,L2の存在とその位置データが取得される。以下、「車両10の進行方向の左右にあるレーンマーカL1,L2の存在とその位置データの取得」のことを、単に「レーンマーカL1,L2の取得」ともいう。
【0031】
レーンマーカL1,L2が取得されると、次に、S13において、左右両方のレーンマーカL1,L2が正常に取得されたか否かが判断される。左右両方のレーンマーカL1,L2が正常に取得されている場合には(S13:YES)、S14に進み、進行方向の左右のレーンマーカL1,L2が互いに平行であるか否かが判断される。ここで、「平行である」とは、厳密な意味での完全に一致する「平行」に限らず、当該技術分野の技術常識に照らして、通常、「平行」であると判断される範囲の同一性を有していれば、「平行である」と解釈する。また、「進行方向の」とは、現在位置よりも先の所定距離範囲内を定めてもよいし、現在の車速から推定して数秒後に到達する地点までの距離範囲を定めてもよい。
【0032】
左右のレーンマーカL1,L2が平行である場合には(S14:YES)、S15に進み、ハンズオフ状態が継続される。左右のレーンマーカL1,L2が平行である場合は、走行する道路が真っ直ぐに継続する、もしくは屈曲しつつもなだらかである場合などであり、こうした道路ではハンズオフ状態での自動走行が適応可能である。以下、こうした道路のことを、「自動走行適応道路」ともいう。よって、上記のように、左右のレーンマーカL1,L2が平行である場合には、自動走行適応道路である認識できるため、ハンズオフ状態を継続する。
【0033】
一方、左右のレーンマーカL1,L2が互いに平行でない、すなわち非平行である場合には(S14:NO)、S16に進み、報知装置150によりハンズオン要求が出される。具体的には、ディスプレイ上にハンズオン要求を表す画像を表示してもよいし、ハンズオン要求を知らせる音をスピーカから発してもよい。
【0034】
左右のレーンマーカL1,L2が平行でない場合とは、例えば、
図3に示すように走行車線が分岐する場合、
図4に示すように車線数が増加する場合、
図5に示すように交差点に差し掛かる場合などが想定され得る。このような、分岐路・車線数増加路・交差点などでは、緻密なハンドリング制御や安全確認が必要であり、ハンズオフ状態での自動走行は適応し難い。そのため、本制御では、S16においてハンズオン要求を出すようにしている。S15およびS16の処理の後、本処理ルーチンは終了する。以下、分岐路・車線数増加路・交差点などの自動走行が不適応な道路のことを、「自動走行不適応道路」ともいう。
【0035】
なお、車両10がレーンマーカL1,L2に区画された車線を継続して走行中であれば、S13において、基本的には、左右両方のレーンマーカL1,L2が正常に取得されるはずである。しかし、工事中などで進行方向のレーンマーカL1,L2が消えていたり、カメラの画角内に先行車11が存在するためにレーンマーカL1,L2が隠蔽されたり等の理由により、レーンマーカL1,L2の一方または両方が検出できない場合がある(S13:NO)。この場合には、S20に進み、ハンズオフ継続判定処理が実行される。なお、「レーンマーカL1,L2の一方または両方が検出できない」とは、カメラ121によりレーンマーカL1,L2自体が撮影できない場合の他、撮影はできるもののレーンマーカL1,L2の撮像部位が小さく、周辺情報認識部112において正確にレーンマーカL1,L2と認識できない場合も含む。
【0036】
A3.ハンズオフ継続判定処理(S20)の詳細:
ハンズオフ継続判定処理(S20)は、レーンマーカL1,L2の一方または両方が検出できない場合に、即座にハンズオン要求を出すのではなく、条件に応じてハンズオフ状態を継続すべきか否かを判定した上で制御を決定するものである。一時的にレーンマーカL1,L2が検出できない場合でも、ハンズオフ状態を継続しても問題のない場合がある。すなわち、このようなケースを想定した条件(本実施形態では、後述の第1条件~第3条件)に該当するか否かを判断した上で、ハンズオフを継続する制御または、ハンズオン要求を出す制御のうちいずれかを行う。条件等の詳細については、以下に制御フローチャートと併せて説明する。
【0037】
[第1条件判断]
図6は、車両制御装置110が実行するハンズオフ継続判定処理を示すフローチャートである。
図6に示すように、S21において、第1条件として、現在の車速Vが第1速度閾値V1より小さく、かつ、先行車11との車間距離Dが第1車間閾値D1よりも小さいか否かが判断される。車両10の現在の車速Vは、車速センサ133から取得できる。車両10と先行車11との車間距離Dは、自車位置センサ131および周辺センサ120から読み取られたデータを基に周辺情報認識部112により取得される。
【0038】
第1速度閾値V1は、車両10が停車中である(V=0)、もしくは、ほぼ停車に等しい程度の超低速走行であることを示す上限値に、予め検討され設定される。なお、完全に停止を判断基準とする場合には、第1速度閾値V1=0としても良い。また、具体例としては、例えば、第1速度閾値V1は0~1km/h程度に設定される。第1車間閾値D1は、渋滞中などで先行車11が通常走行時と比べてごく近い位置に存在していると想定される上限値に、予め検討され設定される。具体的には、例えば第1車間閾値D1は、3m以下に設定される。
【0039】
S21での処理は、渋滞のため先行車11が存在しており、車両10が停止、あるいは超低速走行している状態を検出することを想定している。すなわち、「渋滞のため先行車11が存在しており、車両10が停止、あるいは超低速走行している状態」であれば、第1条件を満たしている(S21:YES)ことを意味する。以下、この第1条件に該当する状態を「渋滞停止中」ともいう。S21では、換言すると、渋滞停止中であるか否かを判断している。
【0040】
図7は、渋滞停止中の車両10および先行車11の状態を説明する図である。
図7に示すように、渋滞停止中には、車両10の前方のごく近くに、カメラの画角θの全体を覆うようにして先行車11が存在する。このため、カメラ121によって画像を取得できずに、左右のレーンマーカL1,L2の一方もしくは両方が検出できないことが考えられる。
図7に示す例では、左右両方のレーンマーカL1,L2が検出不可である。
【0041】
このような渋滞停止中である場合には(S21:YES)、S22に進み、ハンズオフ状態が継続される。これは、レーンマーカL1,L2が取得できずに平行判定ができなかった場合でも、渋滞停止中であれば、ハンズオン要求を出す必要がなく、ハンズオフ状態を継続した方が良いためである。なお、S22のあと、先行車11との距離が所定距離離れる、または、自車が一定距離走行した後に、
図2に示すフローチャートによる制御が実行されるようにしてもよい。例えば、自車が一定距離走行した後であれば、先行車も同様に進んでいるはずであり、先行車との車間距離Dなどの状況が変化していると考えられるためである。
【0042】
[第2条件判断]
渋滞停止中ではない場合には(S21:NO)、S23に進み、第2条件として、レーンマーカL1,L2が破線であり、かつ、先行車11との車間距離Dが第2車間閾値D2よりも小さいか否かが判断される。第2車間閾値D2は、第1車間閾値D1よりも大きく設定され、具体的には例えば3m~5m程度である。
【0043】
S23での処理は、少なくとも一つのレーンマーカL1,L2が破線であり、かつ、渋滞のため先行車11が存在している状態を検出することを想定している。すなわち、「レーンマーカL1,L2が破線であり、かつ、渋滞のため先行車11が存在している状態」であれば、第2条件を満たしている(S23:YES)ことを意味する。以下、この条件に該当する状態を「破線渋滞走行中」ともいう。S23では、換言すると、破線渋滞走行中であるか否かを判断している。
【0044】
図8は、破線渋滞走行中の車両10および先行車11の状態を説明する図である。
図8に示すように、破線渋滞走行中では、
図7に示す渋滞停車中ほど車間距離は小さくないものの、車両10の前方近くに先行車11が存在する。このため、カメラ121から先の破線の画像を取得できずに、左右のレーンマーカL1,L2の一方もしくは両方が検出できないことが考えられる。
図8に示す例では、左のレーンマーカL1が破線であって、画角θのうち左側の一部が先行車11によって遮られているため、左のレーンマーカL1が検出不可である。
【0045】
破線渋滞走行中である場合には(S23:YES)、S22に進み、ハンズオフ状態が継続される。これは、レーンマーカL1,L2が取得できずに平行判定ができなかった場合であって、かつ、第1条件を満たさない場合でも、破線渋滞走行中であれば、ハンズオン要求を出す必要がなく、ハンズオフ状態を継続した方が良いためである。なお、S22のあと、破線の間隔分を車両10が走行後に、
図2に示すフローチャートによる制御が実行されるようにしてもよい。
【0046】
[第3条件判断]
破線渋滞走行中ではない場合には(S23:NO)、S24に進み、先行車11がオフセット走行をしているか否かが判断される。S24、S25において、第3条件について判断する。
図9は、先行車11がオフセット走行しているときの車両10および先行車11の状態を説明する図である。
図9に示すように、オフセット走行とは、車体が車線内に収まらず、一方のレーンマーカL1上に車体が乗った状態で走行していることを意味する。
【0047】
先行車11がオフセット走行をしているかは、自車位置センサ131および周辺センサ120から読み取られたデータを基に周辺情報認識部112により認識される。より具体的には、まず、直前の左右のレーンマーカL1,L2から車線幅が推定される。先行車11がオフセット走行を開始してレーンマーカL1,L2を隠蔽すると、先行車11の位置情報、車間距離、および画角を時系列に見たときに、見える車線幅の領域が狭くなるため、この変化を検出することによって、先行車11によるオフセット走行を推定できる。
【0048】
本実施形態では、
図9において、1台の先行車11のオフセット走行により一方のレーンマーカL1(
図9における左側)が隠蔽される例を示している。
図9に示すように、
図8に示す破線渋滞走行中よりも車間距離が大きい場合でも、先行車11のオフセット走行が一定時間続くと、カメラ121により先のレーンマーカL1,L2の画像を十分に撮影できないために、左右のレーンマーカL1,L2の一方もしくは両方が検出できないことが考えられる。
【0049】
先行車11がオフセット走行をしている場合には(S24:YES)、S25に進み、先行車走行軌跡Tと、レーンマーカL2とが平行であるか否かが判断される。このS25での平行判定では、先行車走行軌跡Tをレーンマーカの代替指標として適用された上で、左右の車線境界線が平行であるか否かが判定される。
図9に示す例では、先行車走行軌跡Tと、右側のレーンマーカL2との平行が判定される。先行車軌跡は、カメラ121により先行車11の位置を測定して記憶し、記憶されたデータを時系列に繋ぐことで算出される。
【0050】
先行車走行軌跡Tと、レーンマーカL2とが平行である場合には(S25:YES)、S22に進み、ハンズオフ状態が継続される。ここで、先行車11がオフセット走行しており、かつ、先行車走行軌跡TとレーンマーカL2が平行であれば、第3条件を満たしていることを意味する。以下、この第3条件を満たしている状態を「先行車オフセット走行中」ともいう。
【0051】
レーンマーカL1,L2が取得できずに平行判定ができなかった場合であって、第1条件および第2条件を満たさない場合であっても、第3条件を満たす場合には、先のレーンマーカL1,L2は平行であって自動走行適応道路が一定区間継続すると推定できる。こうした場合では、ハンズオン要求を出す必要がなく、ハンズオフ状態を継続した方が良いため、S22においてハンズオフ状態が継続される。
【0052】
なお、S24において先行車11がオフセット走行していないと判断された場合(S24: NO)、およびS25において先行車走行軌跡TとレーンマーカL2とが平行ではないと判断された場合(S25:NO)には、S26に進み、ハンズオン要求が出される。S22およびS26の処理の後、本処理ルーチンは終了する。上記フローチャートにおいて、S21~S25の判定処理が、「ハンズオフ状態を継続すべきか否かを判定する」処理に相当する。
【0053】
[効果]
(1)上記第1実施形態の車両制御装置110によれば、周辺センサ120および内部センサ130により検出された各種データに基づいて、周辺情報認識部112により進行方向の左右のレーンマーカL1,L2が取得される。そして、制御決定部115により、左右のレーンマーカL1,L2が平行であるか否かに基づいて走行路の形状が認識でき、ハンズオフ状態を継続するか否かが決定できる。
【0054】
すなわち、地図情報を有さない場合や、地図情報を有していても最新の情報に更新されていない場合であっても、実際に車両10が走行する前方の走行路が自動走行適応道路であるか、それとも自動走行不適応道路であるかを認識できる。そして、認識された走行路の情報に応じて、自動運転実行中のハンズオフ状態において的確にハンズオン要求を出すことができる。
【0055】
(2)上記第1実施形態の車両制御装置110では、S13において、左右両方のレーンマーカL1,L2が正常に取得されなかった場合に、ハンズオフ継続判定処理(S20)が実行される。左右両方のレーンマーカL1,L2が正常に取得されずにレーンマーカL1,L2の平行判定ができない場合には、基本的には先の走行路の認識ができないため、自動運転は止めるようにハンズオン要求を出すべきである。しかし、レーンマーカL1,L2の一方または両方が検出できずに平行判定ができない場合でも、渋滞停止中(第1条件)や渋滞低速走行中(第2条件)、先行車オフセット走行中(第3条件)などで一時的にレーンマーカL1,L2が見えないだけのような場合には、ハンズオン要求を出す必要がない。
【0056】
上記第1実施形態の車両制御装置110では、ハンズオフ継続判定処理(S20)を実行する。このため、レーンマーカL1,L2の一方または両方が検出できない場合に、即座にハンズオン要求を出すのではなく、条件に応じてハンズオフ状態を継続すべきか否かを判定した上で制御を決定することができる。したがって、不要なハンズオン要求が頻繁に出されてしまうことを抑制でき、ユーザの利便性を向上させることができる。
【0057】
(3)不要なハンズオン要求が出される場面はいくつか想定され得るが、なかでも、渋滞停止中(第1条件)や渋滞低速走行中(第2条件)における頻度が高い。よって、このように頻度の高い条件をチェックすることで、頻繁にハンズオン要求が出されることを効果的に抑制できる。
【0058】
(4)さらに、上記第1実施形態では、一般的に不要なハンズオン要求が出される頻度の高い条件から、第1条件~第3条件の順に見ているので、制御処理の効率を向上させることができる。
【0059】
(5)上記第1実施形態の車両制御装置110では、車両10が備えるカメラ121により撮像した画像を用いてレーンマーカL1,L2を認識している。このため、例えば先行車11が検出した情報を、ネットワークを経由して取得するような構成と比較して、リアルタイムでの道路情報をより精度良く取得できる。
【0060】
B.他の実施形態:
(B1)上記第1実施形態では、「車線境界」としてレーンマーカL1,L2を取得したが、レーンマーカL1,L2がない場合などでは、その他、「車線境界」として路肩、側溝、ガードレール、および縁石等を取得して平行判定に用いてもよい。
【0061】
(B2)上記第1実施形態では、第2条件の判断における例として、
図8に示すように左のレーンマーカL2が破線である例を示した。これに代えて、右のレーンマーカL1が破線であってもよいし、両方のレーンマーカL1,L2が破線であってもよく、同様にして判断できる。
【0062】
(B3)上記第1実施形態では、第3条件の判断における例として、先行車11が片方にオフセット走行する例を示した。これに代えて、複数車線であって、左右それぞれのレーンマーカL1,L2が2台の先行車11がオフセット走行することにより各々隠蔽されている場合でもよく、同様にして判断できる。この場合には、S25において、2台の先行車11の走行軌跡同士を平行判定すればよい。
【0063】
(B4)上記第1実施形態では、第1条件から第3条件の順に判断しているが、その順序は限定されない。第2条件や第3条件を先に判断してもよいし、各条件を連続させずに別個に判断する制御としてもよい。また、第1条件~第3条件のうち、少なくとも1つの条件を省略してもよい。
なお、本開示に記載の車両制御装置110及びそれら手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の車両制御装置110及びそれら手法は、一つ以上の専用ハードウェア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の車両制御装置110及びそれら手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと一つ以上のハードウェア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。