(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-01
(45)【発行日】2024-10-09
(54)【発明の名称】特定の土地の香を含むスピリッツの製造方法およびスピリッツ
(51)【国際特許分類】
C12G 3/04 20190101AFI20241002BHJP
C12H 6/02 20190101ALI20241002BHJP
【FI】
C12G3/04
C12H6/02
(21)【出願番号】P 2023217499
(22)【出願日】2023-12-24
【審査請求日】2024-01-29
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521327367
【氏名又は名称】株式会社 GEEKSTILL
(74)【代理人】
【識別番号】100128532
【氏名又は名称】村中 克年
(72)【発明者】
【氏名】岸川 勇太
【審査官】手島 理
(56)【参考文献】
【文献】特許第7007535(JP,B1)
【文献】特開2021-023146(JP,A)
【文献】特開2023-100067(JP,A)
【文献】特開2002-125653(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12G
C12H
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定の土地に植生する植物を刈り取って一定期間原料用アルコールにボタニカル浸漬するボタニカル浸漬工程と、
前記原料用アルコールの浸漬液の半分を常圧蒸留する常圧蒸留工程と、
前記原料用アルコールの浸漬液の残り半分を減圧蒸留する減圧蒸留工程と、
前記常圧蒸留して得る蒸留液と、前記減圧蒸留して得る蒸留液とを混合してブレンド蒸留液を得る混合工程とを有することを特徴とする特定の土地の香を含むスピリッツの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載する特定の土地の香を含むスピリッツの製造方法において、
さらに前記混合工程で得るブレンド蒸留液を水で希釈してアルコール度数を調整する加水調整工程を有することを特徴とする特定の土地の香を含むスピリッツの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は特定の土地の香を含むスピリッツの製造方法およびスピリッツに関し、特に特定の土地に植生する植物に固有の香を含むスピリッツを得る場合に適用して有用なものである。
【背景技術】
【0002】
植物が植生する土地はその土壌、気候、地形等に起因する固有の香を有する。したがって、特定の土地に植生する植物は、その土地に固有の香を含んでいると考えられる。そこで、特定の植物から前記香を抽出してスピリッツに混入できれば特定の土地、地域を表す香を含むスピリッツを製造することができ、例えば特定の地番の故郷の香を再現して楽しむということができるようになる
と考えられる。
【0003】
植物の香を含むスピリッツとして本発明者が提案した特許文献1に記載するブドウの花の香を有するクラフトジンが公知となっている。ただ、これはブドウの花の香を対象としたもので、特定の土地の香の再現を実現するものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記従来技術に鑑み、特定の土地の香を含むスピリッツの製造方法およびスピリッツを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成すべく、スピリッツを利用したボタニカル浸漬液中の香を効率良く抽出する方法を探索したところ、ボタニカル浸漬液の種類、換言すれば香を抽出する対象となる植物によって蒸留の際の適切な圧力があるという知見を得た。
【0007】
本発明は、かかる新規な知見を基礎として前記目的を達成するものである。そこで、本発明の第1の態様に係る特定の土地の香を含むスピリッツの製造方法は、
特定の土地に植生する植物を刈り取って一定期間原料用アルコールにボタニカル浸漬するボタニカル浸漬工程と、
前記原料用アルコールの浸漬液の半分を常圧蒸留する常圧蒸留工程と、
前記原料用アルコールの浸漬液の残り半分を減圧蒸留する減圧蒸留工程と、
前記常圧蒸留して得る蒸留液と、前記減圧蒸留して得る蒸留液とを混合してブレンド蒸留液を得る混合工程とを有することを特徴とする。
【0008】
本発明の第2の態様に係る特定の土地の香を含むスピリッツの製造方法は、
第1の態様に記載する特定の土地の香を含むスピリッツの製造方法において、
さらに前記混合工程で得るブレンド蒸留液を水で希釈してアルコール度数を調整する加水調整工程を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、例えば思い入れが深い故郷等の地番等で特定される土地に植生する植物の香を抽出して原料用アルコールの中に溶け込ませることができるので、特定の土地の香を飲料として楽しむことができる。すなわち、特定の土地の地番等と紐づけた香のスピリッツを提供することができる。ここで、ボタニカル蒸留の蒸留液は、原料となる植物の半分を常圧蒸留、残り半分を減圧蒸留により得ているので、植物の種類にかかわらずいずれにしても効率よく香を抽出させることができる。
【0011】
また、耕作放棄地に植生する植物を刈り取って原料とすることにより当該耕作放棄地に植生する雑草を有効利用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施の形態を示すブロック線図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。
【0014】
図1は本発明の実施の形態を示すブロック線図である。同図に示すように、本形態に係るクラフトジンの製造方法は、ボタニカル浸漬工程S1、常圧蒸留工程S2、減圧蒸留工程S3、混合工程S4および加水調整工程S5の各工程を有する。
【0015】
ボタニカル浸漬工程S1では、特定の土地に植生する植物を刈り取って一定期間原料用アルコールにボタニカル浸漬する。ここで特定の土地とは、例えば地図上の区分で特定される土地、自宅の庭の土地、耕作放棄地等、植物が植生している土地であれば、任意の土地とこの土地に紐付けられて当該土地を表す情報が一体となったものであればそれ以外の特別な限定はない。かかる土地は、その土壌、気候、地形等に起因する固有の香を有するからである。また、浸漬する期間は、浸漬する植物からその成分が原料用アルコール中に抽出される期間を確保できれば浸漬する植物の種類、量等によって適宜決定することができる。多くの場合1週間から1月程度が適当である。また、例えば花が咲く時期や花が散った時期等も香を決定する要素として評価することができる。原料用アルコールのアルコール濃度には特別な限定はないが、本形態では47%のものを用いた。
【0016】
常圧蒸留工程S2では、ボタニカル浸漬工程S1で一定期間原料用アルコールにボタニカル浸漬した原料である植物の浸漬液の半分を常圧(=1Pa程度)で蒸留する。一方、ボタニカル浸漬工程S1で一定期間原料用アルコールにボタニカル浸漬した原料である植物の浸漬液の残りの半分は、減圧蒸留工程S3で1Pa未満の圧力下で減圧蒸留する。この場合の減圧蒸留の圧力としては、0.1~0.08(Pa)程度が適切であり、0.09(Pa)が最適である。
【0017】
このように、浸漬液の半分を常圧蒸留、残りの半分を減圧蒸留するのは、植物の種類によって常圧蒸留の方が、より効率良く浸漬する植物の香を含む成分を抽出することができる場合と、逆に減圧蒸留の方が、より効率良く浸漬する植物の香を含む成分を抽出することができる場合との2つの場合があることが分かったからである。本形態の如く、ボタニカル浸漬液を半分づつ分けて常圧または減圧蒸留することで効率よく原料である植物の成分を浸漬液中に抽出させることができる。
【0018】
混合工程S4では、常圧蒸留工程S2および減圧蒸留工程S3でそれぞれ蒸留して得る蒸留液同士を混合してブレンド蒸留液を製造する。最後に加水調整工程S5において、混合工程S4で得るブレンド蒸留液を水で希釈してアルコール度数を調整する。この場合のアルコール度数は、例えば40~50%が適当である。かくして特定の土地の香を含むクラフトジン(スピリッツ)を得ること47ができる。
【0019】
なお、最終製品であるスピリッツのアルコール度数によっては加水調整工程S5は必ずしも必要ではない。混合工程S4で得るスピリッツを最終製品とすれば良いからである。
【0020】
本形態における原料用アルコールは、47%のものを使用したので、これは蒸留工程を経ることで80%程度のアルコール濃度となる。したがって本形態では
40~50%のスピリッツを得るため最後の加水調整工程S5で加水調整を行っている。
【符号の説明】
【0021】
S1 ボタニカル浸漬工程
S2 常圧蒸留工程
S3 減圧蒸留工程
S4 混合工程
S5 加水調整工程
【要約】
【課題】 特定の土地の香を含むスピリッツの製造方法を提供する。
【解決手段】 特定の土地に植生する植物を刈り取って一定期間原料用アルコールにボタニカル浸漬するボタニカル浸漬工程S1と、前記原料用アルコールの浸漬液の半分を常圧蒸留する常圧蒸留工程S2と、前記原料用アルコールの浸漬液の残り半分を減圧蒸留する減圧蒸留工程S3と、前記常圧蒸留して得る浸漬液と、前記減圧蒸留して得る浸漬液とを混合してブレンド浸漬液を得る混合工程S4と、前記混合工程で得るブレンド浸漬液を水で希釈してアルコール度数を調整する加水調整工程S5とを有する。
【選択図】
図1