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特許7564414卵巣卵胞の成長と発育の促進及び排卵誘発剤の製造におけるサリドロシドの使用
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  • 特許-卵巣卵胞の成長と発育の促進及び排卵誘発剤の製造におけるサリドロシドの使用 図1
  • 特許-卵巣卵胞の成長と発育の促進及び排卵誘発剤の製造におけるサリドロシドの使用 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-01
(45)【発行日】2024-10-09
(54)【発明の名称】卵巣卵胞の成長と発育の促進及び排卵誘発剤の製造におけるサリドロシドの使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/7028 20060101AFI20241002BHJP
   A61P 15/08 20060101ALI20241002BHJP
   C12N 5/071 20100101ALN20241002BHJP
【FI】
A61K31/7028
A61P15/08
C12N5/071
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2024042697
(22)【出願日】2024-03-18
【審査請求日】2024-03-19
(31)【優先権主張番号】202310417094.1
(32)【優先日】2023-04-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521212269
【氏名又は名称】中国農業大学
(74)【代理人】
【識別番号】100216471
【弁理士】
【氏名又は名称】瀬戸 麻希
(72)【発明者】
【氏名】張華
(72)【発明者】
【氏名】牟▲ろう▼
(72)【発明者】
【氏名】楊雪氷
【審査官】関 景輔
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/038454(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2019-0027640(KR,A)
【文献】国際公開第2006/021930(WO,A2)
【文献】RUI JI et al.,Salidroside alleviates oxidative stress and apoptosis via AMPK/Nrf2 pathway in DHT-induced human granulosa cell line KGN,Archives of Biochemistry and Biophysics,2022年,Vol.715,p.1-13,Article 109094
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/7028
A61P 15/08
C12N 5/071
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/CABA/BIOSIS/FSTA(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
卵巣血管新生率を増加させる製剤の製造におけるサリドロシドの使用。
【請求項2】
卵胞の血管透過性を向上させる製剤の製造におけるサリドロシドの使用。
【請求項3】
ゴナドトロピンに対する卵巣の感受性を向上させる製剤の製造におけるサリドロシドの
使用。
【請求項4】
剰排卵後の卵母細胞排出量を増加させるための薬物の製造におけるサリドロシドの使
用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬分野に関し、特に、生殖補助分野におけるサリドロシド及びその誘導体
、ならびに構造類似体の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
卵巣は、ヒトを含む哺乳類の雌性が自分の遺伝学的子孫を獲得する最も重要な器官であ
り、その主要な機能には、子孫を出産するために必要な卵母細胞の排出と、女性の正常な
内分泌バランスを維持するホルモンの産生が含まれる。しかし、体の中で最も早く老化が
起こる器官である卵巣は、女性が30歳を過ぎるとその機能が徐々に低下し、女性の閉経
期(約48歳)の到来とともに終了する。一方、現代社会の生活環境や医療水準の進歩に
より、人間身体の寿命は徐々に延びており、そのため、卵巣機能の早期低下は閉経後の女
性の身体的及び精神的健康に多くの隠れた危険をもたらしている。
【0003】
女性の卵巣の老化の主な原因は、加齢とともに卵胞の数が大幅に減少し、卵巣内の限ら
れた卵胞リソースの発育能力が大幅に低下することである。卵巣では、成長中の卵胞から
優勢卵胞への発育を促進する重要な物質はゴナドトロピン(FSH)であり、FSHが卵
巣内の血管系を通って卵巣に継続的に輸送され、顆粒膜細胞の増殖を促進し、それによっ
て卵胞の発育と排卵を促進する。
【0004】
人間の臨床では、生理的な卵巣老化や病的な卵巣疾患により、多くの女性が卵胞発育障
害による排卵障害に悩まされており、これが不妊症につながる。また、生殖補助臨床では
、ゴナドトロピンに対する卵巣応答が不良(poor ovarian response
、POR)の患者には現在の排卵誘発戦略が効果がないことが多く、このため、卵胞の発
育を改善し、卵胞ホルモン応答を促進する薬物の開発には、重要な社会的及び経済的価値
がある。
【0005】
定常状態で存在するほとんどの成人器官の血管系とは異なり、雌性の哺乳類の卵巣は成
人後も継続的に血管新生を起こし、血管新生によって構築された卵胞血管は卵胞の発育、
そして最終的には排卵を直接媒介し、促進する。したがって、卵胞の発育中に、血管新生
によって生成される卵胞の血管網が健全かつ効率的であるかどうかが、女性の排卵と生殖
能力を直接決定する。小分子の天然化合物であるサリドロシドは、さまざまな虚血性疾患
における血管の成長を促進するような優れた効果がある。その化学式は次のとおりである

【0006】
しかし、サリドロシドが卵巣の血管関連機能を改善し、それによってゴナドトロピンに
対する卵巣の応答を改善し、卵胞の発育を促進し、それによって卵巣機能を改善できるか
どうかはまだ不明である。
【発明の概要】
【0007】
以上に鑑み、本発明の目的は、サリドロシド(C1420)の生殖に関する使用
を提供することである。具体的には、以下の通りである。
【0008】
ゴナドトロピン応答性向上剤、顆粒膜細胞増殖アゴニスト及び血管機能向上剤を提供し
、また、卵巣機能の改善、雌性の生殖に関する健康の改善、及び雌性の生殖能力の向上に
おける使用を提供し得る。
【0009】
本発明は、卵巣機能の改善、雌性の生殖能力の向上、雌性の健康の改善のための薬物の
製造におけるサリドロシドの使用を提供し、好ましい実施例では、前記卵巣機能の改善は
、顆粒膜細胞の増殖効率の向上、成長中の卵胞の発育の促進、卵巣血管新生率の増加、及
び卵胞の血管透過性の向上を含み、別の好ましい実施例では、前記卵巣機能の改善は、ゴ
ナドトロピンに対する卵巣の感受性の向上を含む。
【0010】
別の特定実施例では、前記雌性の生殖に関する健康の改善は、卵巣のゴナドトロピン応
答性の向上、顆粒膜細胞増殖の促進、及び成長中の卵胞の血管新生の増加、及び卵胞の血
管透過性の向上を含む。
【0011】
別の特定実施例では、前記生殖力の向上は、高齢雌性の妊娠率及び子孫出生率の向上を
含む。
【0012】
本発明の目的はまた、排卵誘発補助薬の製造に関連する方法におけるサリドロシドの使
用を提供し、好ましい実施例では、前記排卵誘発補助は、過剰排卵後の卵母細胞排出量を
増加させることを含む。
【0013】
本発明のいくつかの特定実施例では、サリドロシドを実験対象として、主に卵巣血管新
生の促進と卵胞の血管透過性の向上により、顆粒膜細胞の増殖を促進し、それによって成
長中の卵胞の発育を促進して高齢雌性の卵巣機能を改善し、生殖能力を向上させる作用を
有することが確認されている。また、サリドロシドは排卵誘発関連ホルモンを補助し、排
卵効率を向上させ得ることが確認されている。
【0014】
具体的には、本発明による技術的解決手段は、以下のものを含む。
【0015】
卵巣機能の改善、雌性の生殖能力の向上、雌性の健康の改善のための薬物の製造におけ
るサリドロシドの使用を提供する。
【0016】
さらに、前記生殖能力の向上は、高齢雌性の妊娠率及び子孫出生率の向上を含む。
【0017】
別の態様では、卵巣顆粒膜細胞の増殖効率を向上させる製剤の製造におけるサリドロシ
ドの使用を提供する。
【0018】
別の態様では、成長中の卵胞の発育を促進する製剤の製造におけるサリドロシドの使用
を提供する。
【0019】
別の態様では、卵巣血管新生率を増加させる製剤の製造におけるサリドロシドの使用を
提供する。
【0020】
別の態様では、卵胞の血管透過性を向上させる製剤の製造におけるサリドロシドの使用
を提供する。
【0021】
別の態様では、ゴナドトロピンに対する卵巣の感受性を向上させる製剤の製造における
サリドロシドの使用を提供する。
【0022】
別の態様では、排卵誘発補助薬の製造におけるサリドロシドの使用を提供する。
【0023】
好ましくは、前記排卵誘発補助は、過剰排卵後の卵母細胞排出量を増加させることを含
む。
【0024】
さらに好ましくは、上記の使用における製剤又は薬物は、薬学的に許容され得る担体を
さらに含む。
【発明の効果】
【0025】
本発明の有益な効果は以下のとおりである。
1)天然の小分子化合物のサリドロシドが初めて発見されており、サリドロシドは、卵
巣ゴナドトロピン応答性向上剤、顆粒膜細胞増殖アゴニスト、及び血管機能向上剤であり
、成長中の卵胞から排卵前の卵胞への発育を促進し、それによって卵巣の老化を改善し、
高齢雌性の妊娠率と子孫出生率を増加させ、雌性の健康を改善することに用いられる。
2)本発明はまた、排卵誘発補助薬の製造におけるサリドロシドの使用を開示する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】サリドロシドによる高齢マウスの顆粒膜細胞の増殖促進を図示しており、主に、サリドロシド(300mg/kg.BW)を注射した後、ゴナドトロピン(0.5IU/g)を加えて処理した結果、顆粒膜細胞の増殖率が著しく増加することによって示される。
図2】サリドロシドによる老齢マウスの生殖能力の大幅な向上を図示しており、主に、サリドロシド(300mg/kg.BW)を体内に1週間注射して、成体雄マウスと一緒にケージに入れてから5日後、妊娠率が増加し(A)、子孫の出生数が増加する(B)ことによって示される。
図3】サリドロシドによる高齢マウスの卵巣血管新生促進を図示しており、主に、サリドロシド(300mg/kg.BW)を体内に注射した後、卵胞の血管新生能力が顕著に増強し、先端細胞の数が顕著に増加し(AとB)、先端細胞の偽足の長さと数がいずれも顕著に増加する(C)ことによって示される。
図4】サリドロシドによる高齢マウスの卵胞の血管透過性の向上を図示しており、主に、サリドロシド(300mg/kg.BW)を体内に注射した後、卵胞内に入るエバンスブルーの量が顕著に増加する(AとB)ことによって示される。
図5】サリドロシドによるゴナドトロピンの排卵誘発効率の向上を図示しており、主に、思春期前のマウスにサリドロシド(200mg/kg.BW)を注射した後、卵胞の発育速度が速くなり(A)、黄体の数が増え(BとC)、過剰排卵後、マウスの排卵数が著しく増え(D)、しかもマウスの体重に明らかな変化がない(E)ことによって示される。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下は、本発明の好ましい実施形態であり、なお、当業者にとっては、本発明の原理か
ら逸脱することなく、いくつかの改良及び修正が加えられてもよく、これらの改良及び修
正も本発明の保護範囲とみなされるべきである。
【0028】
本発明は、分子構造式がC1420であるサリドロシドを体内に注射した後、薬
物による卵巣卵胞発育、顆粒膜細胞増殖、卵巣排卵率及び卵巣血管成長への影響を測定し
た。その結果、サリドロシドによる処理は、卵胞顆粒膜細胞の増殖を顕著に促進して卵胞
の発育を促進でき、排卵率を向上させ、しかも、卵巣血管の成長を促進することを示した
【0029】
上記の結果は、サリドロシドが卵巣血管新生関連経路の調節に関与し、卵胞血管の再生
プロセスを媒介して卵胞の発育を調節することを示唆しているので、さらに、本発明は、
血管特異的内因性蛍光トレーサーマウスを使用し、サリドロシドを採取して腹腔内に注射
して、卵胞の成長に対するその効果を調べた。
【0030】
実験の結果、適量のサリドロシドの腹腔内注射が卵胞の発育と卵巣の血管新生を有意に
促進できることを示している。組織透明化技術と組み合わせた内因性蛍光レポーターマウ
スを使用したところ、サリドロシドによる処理後、卵巣血管密度が大幅に増加し、出芽率
が大幅に増加したことがわかった。
【0031】
高齢マウスを用いたマウス臨床検証試験を行ったところ、サリドロシドで処理したマウ
スの妊娠率と産子数がいずれも対照群に比べて有意に高いことが分かった。本発明の特定
実施例では、比較試験に関しては、各試験群では、所望の違いを除いて、残りの試験環境
及び原材料は全て同じにされた。
【0032】
以下は、卵巣老化の改善、高齢雌性の妊娠率及びその子孫出生率の増加、及び雌性の健
康の改善における本発明によるサリドロシドの使用、ならびに排卵誘発補助薬の製造にお
けるサリドロシドの使用についてさらに説明する。
実施例1:サリドロシドによる卵巣機能の改善、雌性の生殖能力の向上、雌性健康の改
【0033】
試薬1:H
試薬2:サリドロシド(粉末)
本発明に記載の試薬は、サリドロシドと無機溶媒とを別々に包装することができ、使用
時にサリドロシドを無機溶媒HOに溶解させて、濃度が200~400mg/mlの作
動液を調製し、光を避けて小分けして-20℃の冷蔵庫に保管し、具体的に使用する際に
は、100mg/mlを採用した。
実験操作は以下のとおりである。
1)実験マウスを2つの群、それぞれ対照群とサリドロシド群に分け、1群あたりC5
7BL/6バックグラウンドを持つ11月齢の雌マウス10匹とした。
2)作動試薬を-20℃の冷蔵庫から取り出し、室温に置いて十分に溶解してから使用
できるようにした。
3)腹腔内注射によって薬物処理を行い、投与量を300mg/kg.BWとし、1日
に1回、1週間持続できるようにした。
4)薬物処理後、被験マウスの体重を定期的に計量することにより、実験マウスの健康
状態を判定した。被験マウスの体重が変わらない或いは低速で増加する場合は被験マウス
の状態が良好であることを示し、被験マウスの体重が明らかに減少する場合は適度に薬物
の投与量を下げてもよい。
5)薬物処理1週間後、ゴナドトロピン(0.5IU/g)を投与し、46時間後にマ
ウスの卵巣を摘出して、卵胞顆粒膜細胞増殖率を統計したところ、卵胞顆粒膜細胞増殖率
が有意に増加したことが示された(図1)。
6)薬物処理1週間後、健康な成体雄マウスと同一のケージに5日間(1回の発情周期
)保持したところ、サリドロシド群のマウスの妊娠率と産子数はいずれも大幅に増加した
図2)。
実験では、適量のサリドロシドによる処理後、卵巣卵胞顆粒膜細胞の増殖を大幅に促進
することができ、それによって高齢マウスの成長中の卵胞が排卵前卵胞に発育するのを助
け、それによって高齢雌性哺乳類の生殖能力を向上させ、妊娠率と子孫の数を増加させ、
生殖機能の老化を改善する。
実施例2:サリドロシドによる卵巣血管改善機能
【0034】
試薬1:H
試薬2:サリドロシド(粉末)
本発明に記載の試薬は、サリドロシドと無機溶媒とを別々に包装することができ、使用
時にサリドロシドを無機溶媒HOに溶解させて、濃度が200~400mg/mlの作
動液を調製し、光を避けて小分けして-20℃の冷蔵庫に保管し、具体的に使用する際に
は、100mg/mlを採用した。
実験操作は以下のとおりである。
1)実験マウスを2つの群、それぞれ対照群とサリドロシド群に分け、1群あたりC5
7BL/6バックグラウンドTek-Cre;mTmGを持つ11月齢の雌マウス10匹
とした。
2)作動試薬を-20℃の冷蔵庫から取り出し、室温に置いて十分に溶解してから使用
できるようにした。
3)腹腔内注射によって薬物処理を行い、投与量を300mg/kg.BWとし、1日
に1回、1週間持続できるようにした。
4)薬物処理後、被験マウスの体重を定期的に計量することにより、実験マウスの健康
状態を判定した。被験マウスの体重が変わらない或いは低速で増加する場合は被験マウス
の状態が良好であることを示し、被験マウスの体重が明らかに減少する場合は適度に薬物
の投与量を下げてもよい。
5)薬物処理1週間後、マウスの卵巣を摘出して、組織透明化技術及び高解像度3Dイ
メージング技術を組み合わせて卵巣の血管を分析した。
6)薬物処理1週間後、マウスの卵巣血管新生能力は著しく増強され、主に、卵胞及び
間質の先端細胞密度が著しく増加し、先端細胞が突き出した偽足の数及び長さも著しく増
加したことによって示された(図3)。
7)薬物処理1週間後、マウスにエバンスブルー(50mg/kg.BW)の尾静脈注
射を行い、15分後に卵巣を摘出して個々の卵胞を分離し、蛍光顕微鏡下で卵胞の形態を
記録し、その蛍光強度を統計した結果、サリドロシドが高齢マウスの卵胞の血管透過性を
著しく向上させたことが示された(図4)。
実験では、適量のサリドロシドによる処理後、卵巣の血管新生を大幅に促進し、卵胞の
血管透過性を改善し、それによって卵胞のゴナドトロピン応答性を促進し、卵胞の発育を
促進することが明らかになった。
実施例3:サリドロシドによる排卵誘発
【0035】
試薬1:H
試薬2:サリドロシド(粉末)
本発明に記載の試薬は、サリドロシドと無機溶媒とを別々に包装することができ、使用
時にサリドロシドを無機溶媒HOに溶解させて、濃度が100~300mg/mlの作
動液を調製し、小分けして-20℃の冷蔵庫に保管し、具体的に使用する際には、50m
g/mlを採用した。
実験操作は以下のとおりである。
1)実験マウスを2つの群、それぞれ対照群とサリドロシド群に分け、1群あたり18
dpp C57BL/6バックグラウンドを持つ雌マウス5匹とした。
2)作動試薬を-20℃の冷蔵庫から取り出し、室温に置いて十分に溶解してから使用
できるようにした。
3)腹腔内注射によって薬物処理を行い、投与量を200mg/kg.BWとし、1日
に1回、7日間持続した後、卵巣を摘出して、卵巣の形態と卵胞の数に対して統計を行う
か、又は投薬中止後に過剰排卵を行い、すなわちゴナドトロピン(0.5IU/g)を投
与し、46時間後にヒト絨毛性ゴナドトロピン(0.5IU/g)を投与し、16時間後
にマウスの卵管膨大部の卵母細胞を採取して、形態検査と計数統計を行った。
4)薬物処理後、被験マウスの体重を定期的に計量することにより、実験マウスの健康
状態を判定した。被験マウスの体重が変わらない或いは低速で増加する場合は被験マウス
の状態が良好である(図5)ことを示し、被験マウスの体重が明らかに減少する場合は適
度に薬物の投与量を下げてもよい。
5)薬物処理7日間後、原始卵胞と一次卵胞の数は大幅に減少したが、二次卵胞、胞状
卵胞、及び総卵胞の数は大幅に増加し、このことから、サリドロシドが卵胞の発育を促進
できることが明らかになった(図5)。
6)薬物で7日間処理して過剰排卵を行った後、治療群の黄体数が増え、排卵数が大幅
に増え、卵母細胞の形態が正常であることがわかった。(図5)。
実験では、適量のサリドロシドによる処理後、出産適齢期のマウスの排卵誘発効果が大
幅に改善され、つまり排卵数が増加し、卵母細胞の形態が正常であることがわかった。
【0036】
当業者は、本明細書の内容を参考にして、プロセスパラメータを適切に改良して実現す
ることができる。特に、類似したすべての置換及び変更は当業者にとって自明であり、こ
れらはすべて本発明に含まれるものとみなされる。本発明に記載の処理方針及びその関連
用途は、実施例によって説明されており、当業者であれば、本発明の内容、精神及び範囲
から逸脱することなく、本明細書に記載された処理方針及びその関連用途を変更したり、
適切に変更及び組み合わせたりして、本発明の技術を実施及び適用することが明らかであ
る。
【要約】      (修正有)
【課題】卵胞の発育を改善し、卵胞ホルモン応答を促進する方法および医薬組成物を提供する。
【解決手段】本発明は、サリドロシドの使用を提供する。サリドロシドは、卵巣顆粒膜細胞の増殖効率を向上させ、成長中の卵胞の発育を促進し、卵巣血管新生率を増加させ、卵胞の血管透過性を向上させる。また、成長中の卵胞から優勢卵胞への発育を促進するゴナドトロピン(FSH)に対する卵巣の感受性を向上させ、最終的に排卵を促進し、生殖能力を向上させる。
【選択図】図4
図1
図2
図3
図4
図5