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  • 特許-研磨パッド 図1
  • 特許-研磨パッド 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-01
(45)【発行日】2024-10-09
(54)【発明の名称】研磨パッド
(51)【国際特許分類】
   B24B 37/24 20120101AFI20241002BHJP
   B24B 37/26 20120101ALI20241002BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20241002BHJP
【FI】
B24B37/24 C
B24B37/26
H01L21/304 622F
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020051075
(22)【出願日】2020-03-23
(65)【公開番号】P2020163562
(43)【公開日】2020-10-08
【審査請求日】2023-02-16
(31)【優先権主張番号】P 2019067953
(32)【優先日】2019-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005359
【氏名又は名称】富士紡ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100156199
【弁理士】
【氏名又は名称】神崎 真
(72)【発明者】
【氏名】松岡 立馬
(72)【発明者】
【氏名】栗原 浩
(72)【発明者】
【氏名】鳴島 さつき
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼見沢 大和
【審査官】亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-035108(JP,A)
【文献】特開2006-156876(JP,A)
【文献】特開2000-354952(JP,A)
【文献】特開2014-038916(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0375544(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 37/00 - 37/34
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬質ウレタンからなる研磨層の研磨面に、同心円状に設けた複数の円形溝と、格子状に交差した複数の直線溝とが形成された研磨パッドにおいて、
隣接する円形溝と円形溝との溝ピッチが5mmを超え、10mm以下であり、
かつ、円形溝と円形溝との間に形成された円形ランド部のランド幅と円形溝の溝ピッチとを基にして以下の(式1)によって求めた円形ランド部の面積率と、直線溝と直線溝との間に形成された直線ランド部のランド幅と直線溝の溝ピッチとを基にして以下の(式2)によって求めた直線ランド部の面積率とを乗じたランド面積比率が0.70~0.92となっており、さらに、上記直線ランド部のランド幅が33~58mmに設定されていることを特徴とする研磨パッド。
円形ランド部の面積率=円形ランド部のランド幅/円形溝の溝ピッチ・・・(式1)
直線ランド部の面積率=直線ランド部のランド幅/直線溝の溝ピッチ・・・(式2)
【請求項2】
上記円形溝の溝幅は0.4~0.8mmに設定されていることを特徴とする請求項1に記載の研磨パッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は研磨パッドに関し、より詳しくは、硬質ウレタンからなる研磨層の研磨面に、同心円状に設けた複数の円形溝と、格子状に交差した複数の直線溝とを形成した研磨パッドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光学材料や半導体基板、ハードディスク用のガラス基板といった被研磨物を研磨するために研磨パッドが用いられており、このような研磨パッドとしてポリウレタンなどの硬質ウレタンからなる研磨層を備え、当該研磨層の研磨面に、同心円状に設けた複数の円形溝と、格子状に交差した複数の直線溝とが形成された研磨パッドが知られている(特許文献1、2)。
上記研磨パッドを用いて被研磨物の研磨を行う場合、被研磨物と研磨パッドとの間に液状のスラリーを供給するようになっており、このとき上記円形溝は上記スラリーを保持する保持溝として機能し、上記直線溝は研磨屑や使用後のスラリーを排出する排出溝として機能する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-156876号公報
【文献】特開2013-35108号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記円形溝と直線溝とは、スラリーの保持機能と排出機能とがバランスするように形成することが望ましいが、円形溝と円形溝との溝ピッチが狭い場合、円形溝と円形溝との間に形成されるランド部が狭くなって剛性を維持できず、研磨性能に影響を及ぼす恐れがあった。
このような問題に鑑み、本発明はより研磨性能の向上した研磨パッドを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち請求項1の発明における研磨パッドは、硬質ウレタンからなる研磨層の研磨面に、同心円状に設けた複数の円形溝と、格子状に交差した複数の直線溝とが形成された研磨パッドにおいて、
隣接する円形溝と円形溝との溝ピッチが5mmを超え、10mm以下であり、
かつ、円形溝と円形溝との間に形成された円形ランド部のランド幅と円形溝の溝ピッチとを基にして以下の(式1)によって求めた円形ランド部の面積率と、直線溝と直線溝との間に形成された直線ランド部のランド幅と直線溝の溝ピッチとを基にして以下の(式2)によって求めた直線ランド部の面積率とを乗じたランド面積比率が0.70~0.92となっており、さらに、上記直線ランド部のランド幅が33~58mmに設定されていることを特徴としている。
円形ランド部の面積率=円形ランド部のランド幅/円形溝の溝ピッチ・・・(式1)
直線ランド部の面積率=直線ランド部のランド幅/直線溝の溝ピッチ・・・(式2)
【発明の効果】
【0006】
上記発明によれば、円形溝と円形溝との間に形成される円形ランド部の剛性を維持しつつ、円形溝によるスラリーの保持機能と直線溝による排出機能とをバランスよく機能させることができ、良好な研磨性能を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本実施例にかかる研磨パッドの平面図。
図2】溝と溝との関係を説明する断面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図示実施例について本発明を説明すると、図1は本発明にかかる研磨パッド1を示し、光学材料や半導体基板、ハードディスク用のガラス基板といった被研磨物を研磨するために用いられる。
上記研磨パッド1は略円盤状を有した硬質ウレタンからなる研磨層を有し、被研磨物を研磨する研磨面には、同心円状に設けた複数の円形溝2と、格子状に交差した複数の直線溝3とが形成されている。
研磨層を構成する硬質ウレタンは、ポリオール成分とイソシアネート成分との反応中間体であるウレタンプレポリマーを用い、ジアミン類又はジオール類等の硬化剤(鎖延長剤)、発泡剤、触媒等を添加混合して得られるポリウレタンポリウレア樹脂を硬化させるプレポリマー法により製造される。
図示しないが、上記研磨パッド1は両面テープ等によって研磨装置の研磨定盤に固定され、上記被研磨物は支持定盤に真空吸着されるようになっている。そして上記研磨定盤および支持定盤を駆動手段によって相対的に回転させながら、上記支持定盤を研磨定盤の中心位置から半径方向に往復動させることで、上記研磨パッド1と被研磨物とが相対的に回転しながら摺動し、被研磨物の研磨が行われる。
その際、研磨パッド1と被研磨物との間には、所要の薬品中に砥粒の混合された液状のスラリーが供給されるようになっており、上記研磨パッド1による機械的な研磨と、上記スラリーによる化学的な研磨とが行われるようになっている。
このような構成を有する研磨装置自体は従来公知であり、これ以上の詳細な説明については省略する。なお、上記構成を有する研磨装置の他、例えば支持定盤を駆動させず、研磨定盤の回転により支持定盤が連れ回るようにした研磨装置など、その他の構成を有した研磨装置も使用可能である。
【0009】
次に、本実施例の研磨パッド1の研磨層の製造方法としては、例えば、少なくともプレポリマーとしてのウレタン結合含有イソシアネート化合物、硬化剤、中空体を準備する準備工程;少なくとも、上記ウレタン結合含有イソシアネート化合物、硬化剤を混合して成形体成形用の混合液を得る混合工程;上記成形体成形用混合液からポリウレタンポリウレア樹脂成形体を成形する成形体成形工程;および上記ポリウレタンポリウレア樹脂成形体から、上記研磨面を有する研磨層を形成する研磨層形成工程、を含むことが挙げられる。
【0010】
上記準備工程として、上記研磨パッド1の製造には、ポリウレタンポリウレア樹脂成形体の原料として、例えば、ウレタン結合含有イソシアネート化合物、硬化剤、中空体が用いられる。更にポリオール化合物を上記成分とともに用いてもよく、本発明の効果を損なわない範囲で、上記以外の成分を併せて用いてもよい。
【0011】
上記準備工程で準備される上記ウレタン結合含有イソシアネート化合物は、下記ポリイソシアネート化合物とポリオール化合物とを、通常用いられる条件で反応させることにより得られる化合物であり、ウレタン結合とイソシアネート基を分子内に含むものである。また、本発明の効果を損なわない範囲内で、他の成分がウレタン結合含有イソシアネート化合物に含まれていてもよい。
上記ウレタン結合含有イソシアネート化合物としては、市販されているものを用いてもよく、ポリイソシアネート化合物とポリオール化合物とを反応させて合成したものを用いてもよい。上記反応に特に制限はなく、ポリウレタン樹脂の製造において公知の方法および条件を用いて付加重合反応すればよい。
例えば、40℃に加温したポリオール化合物に、窒素雰囲気にて撹拌しながら50℃に加温したポリイソシアネート化合物を添加し、30分後に80℃まで昇温させ更に80℃にて60分間反応させるといった方法で製造することが出来る。
【0012】
まず、上記ポリイソシアネート化合物とは、分子内に2つ以上のイソシアネート基を有する化合物を意味する。またポリイソシアネート化合物としては、分子内に2つ以上のイソシアネート基を有していれば特に制限されるものではない。
例えば、分子内に2つのイソシアネート基を有するジイソシアネート化合物としては、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート(2,6-TDI)、2,4-トリレンジイソシアネート(2,4-TDI)、ナフタレン-1,4-ジイソシアネート、ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート(MDI)、4,4’-メチレン-ビス(シクロヘキシルイソシアネート)(水添MDI)、3,3’-ジメトキシ-4,4’-ビフェニルジイソシアネート、3,3’-ジメチルジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、キシリレン-1,4-ジイソシアネート、4,4’-ジフェニルプロパンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、プロピレン-1,2-ジイソシアネート、ブチレン-1,2-ジイソシアネート、シクロヘキシレン-1,2-ジイソシアネート、シクロヘキシレン-1,4-ジイソシアネート、p-フェニレンジイソチオシアネート、キシリレン-1,4-ジイソチオシアネート、エチリジンジイソチオシアネート等を挙げることができる。
さらに、ポリイソシアネート化合物としては、ジイソシアネート化合物が好ましく、中でも2,4-TDI、2,6-TDI、MDIがより好ましく、2,4-TDI、2,6-TDIが特に好ましい。
これらのポリイソシアネート化合物は、単独で用いてもよく、複数のポリイソシアネート化合物を組み合わせて用いてもよい。
【0013】
次に上記ポリオール化合物とは、分子内に2つ以上のアルコール性水酸基(OH)を有する化合物を意味する。
上記ウレタン結合含有イソシアネート化合物の合成に用いられるポリオール化合物としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール(DEG)、ブチレングリコール等のジオール化合物、トリオール化合物等;ポリ(オキシテトラメチレン)グリコール(又はポリテトラメチレンエーテルグリコール)(PTMG)等のポリエーテルポリオール化合物;エチレングリコールとアジピン酸との反応物やブチレングリコールとアジピン酸との反応物等のポリエステルポリオール化合物;ポリカーボネートポリオール化合物、ポリカプロラクトンポリオール化合物等を挙げることができる。
また、エチレンオキサイドを付加した3官能性プロピレングリコールを用いることもできる。これらの中でも、PTMG、又はPTMGとDEGの組み合わせが好ましい。
上記ポリオール化合物は単独で用いてもよく、複数のポリオール化合物を組み合わせて用いてもよい。
【0014】
ここで、NCO基1個当たりのPP(プレポリマー)の分子量を示すプレポリマーのNCO当量としては、200~800であることが好ましく、300~700であることがより好ましく、400~600であることがさらにより好ましい。
具体的に上記プレポリマーのNCO当量は以下のようにして求めることができる。
プレポリマーのNCO当量=(ポリイソシアネート化合物の質量部+ポリオール化合物の質量部)/[(ポリイソシアネート化合物1分子当たりの官能基数×ポリイソシアネート化合物の質量部/ポリイソシアネート化合物の分子量)-(ポリオール化合物1分子当たりの官能基数×ポリオール化合物の質量部/ポリオール化合物の分子量)]
【0015】
上記硬化剤(鎖伸長剤ともいう)としては、例えば、ポリアミン化合物および/又はポリオール化合物を用いることができる。
ポリアミン化合物とは、分子内に2つ以上のアミノ基を有する化合物を意味し、脂肪族や芳香族のポリアミン化合物、特にはジアミン化合物を使用することができる。
例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミン、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジアミン、3,3’-ジクロロ-4,4’-ジアミノジフェニルメタン(メチレンビス-o-クロロアニリン)(以下、MOCAと略記する。)、MOCAと同様の構造を有するポリアミン化合物等を挙げることができる。
また、ポリアミン化合物が水酸基を有していてもよく、このようなアミン系化合物として、例えば、2-ヒドロキシエチルエチレンジアミン、2-ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシエチルエチレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、2-ヒドロキシプロピルエチレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシプロピルエチレンジアミン等を挙げることができる。
ポリアミン化合物としては、ジアミン化合物が好ましく、MOCA、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホンがより好ましく、MOCAが特に好ましい。
ポリアミン化合物は、単独で用いてもよく、複数のポリアミン化合物を組み合わせて用いてもよい。
ポリアミン化合物は、他の成分と混合し易くするためおよび/又は後の成形体形成工程における気泡径の均一性を向上させるために、必要により加熱した状態で減圧下脱泡することが好ましい。減圧下での脱泡方法としては、ポリウレタンの製造において公知の方法を用いればよく、例えば、真空ポンプを用いて0.1MPa以下の真空度で脱泡することができる。
硬化剤(鎖伸長剤)として固体の化合物を用いる場合は、加熱により溶融させつつ、減圧下脱泡することができる。
【0016】
また、硬化剤としてのポリオール化合物としては、ジオール化合物やトリオール化合物等の化合物であれば特に制限なく用いることができる。また、プレポリマーを形成するのに用いられるポリオール化合物と同一であっても異なっていてもよい。
具体例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオールなどの低分子量ジオール、ポリ(オキシテトラメチレン)グリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどの高分子量のポリオール化合物などが挙げられる。
上記ポリオール化合物は単独で用いてもよく、複数のポリオール化合物を組み合わせて用いてもよい。
【0017】
ここで、上記ウレタン結合含有イソシアネート化合物の末端に存在するイソシアネート基に対する、硬化剤に存在する活性水素基(アミノ基および水酸基)の当量比であるR値が、0.60~1.40となるよう、各成分を混合する。R値は、0.65~1.30が好ましく、0.70~1.20がより好ましい。
【0018】
上記中空体とは、空隙を有する微小球体を意味する。微小球体には、球状、楕円状、およびこれらに近い形状のものが含まれる。中空体の例としては、熱可塑性樹脂からなる外殻(ポリマー殻)と、外殻に内包される低沸点炭化水素とからなる未発泡の加熱膨張性微小球状体や未発泡の加熱膨張性微小球状体を加熱膨張させたものが挙げられる。
上記ポリマー殻としては、特開昭57-137323号公報等に開示されているように、例えば、アクリロニトリル-塩化ビニリデン共重合体、アクリロニトリル-メチルメタクリレート共重合体、塩化ビニル-エチレン共重合体などの熱可塑性樹脂を用いることができる。同様に、ポリマー殻に内包される低沸点炭化水素としては、例えば、イソブタン、ペンタン、イソペンタン、石油エーテル等を用いることができる。
なお、上記中空体を用いる他、水発泡等の化学的発泡や機械的な撹拌による発泡を用いて気泡を形成しても良く、これらの方法を組み合わせても良い。
【0019】
次に混合工程について説明すると、当該混合工程では、上記準備工程で準備した、プレポリマーとしてのウレタン結合含有イソシアネート化合物、硬化剤および中空体を、混合機内に供給して攪拌・混合する。混合工程は、上記各成分の流動性を確保できる温度に加温した状態で行われる。
混合順序に特に制限はないが、ウレタン結合含有イソシアネート化合物と中空体とを混合した混合液と、硬化剤および必要に応じて他の成分を混合した混合液とを用意し、両混合液を混合器内に供給して混合撹拌することが好ましい。このようにして、成形体成形用の混合液が調製される。
【0020】
次に成形体成形工程では、上記混合工程で調製された成形体成形用混合液を50~100℃の型枠内に流し込み、プレポリマー、硬化剤が反応してポリウレタンポリウレア樹脂を形成することにより該混合液は硬化し、ポリウレタンポリウレア樹脂成形体を成形する。
【0021】
そして、研磨層形成工程では、上記成形体成形工程により得られたポリウレタンポリウレア樹脂成形体をシート状にスライスするとともに、スライスした樹脂シートを円形に裁断する。
このようにして得られた円盤状の樹脂シートの一方の面が上記研磨面となり、当該研磨面に対して所要のカッターを用いて切削加工等を行うことで、任意のピッチ、幅、深さを有する上記同心円状の円形溝2や、格子状の直線溝3を形成することができ、これにより本実施例の研磨パッド1が得られることとなる。
【0022】
図2は、上記研磨パッド1に形成された隣接する円形溝2と円形溝2との関係を示した断面図となっている。なお、ここでは隣接する円形溝2と円形溝2について説明するが、直線溝3と直線溝3との関係を説明する図としても利用することができる。
本実施例において、隣接する円形溝2と円形溝2との溝ピッチは、溝における研磨パッド1の例えば中心側の端面を基準に測定するようになっており、本実施例における円形溝2の溝ピッチは5mmを超え10mm以下となる寸法となるように設けられている。また各円形溝2の溝幅は0.4~0.8mm、深さは0.6mmに形成されている。
上記円形溝2の溝ピッチを規定したことで、円形溝2と円形溝2との間に形成される円形ランド部4、すなわち研磨の際に被研磨物と接触する部分の寸法は、4.2~9.6mmの範囲で設定されることとなる。
具体的に、溝ピッチを5.6mm、円形溝2の溝幅を0.4mmとした場合、円形ランド部4のランド幅は5.2mmとなる。
【0023】
一方、隣接する直線溝3と直線溝3の溝ピッチは、100mmよりも小さく、35~60mmの範囲で設定することができ、また直線溝3の溝幅は2mm、深さは0.6mmに形成されている。
この場合においても、溝ピッチを規定したことで、直線溝3と直線溝3との間に形成される直線ランド部5のランド幅が33~58mmの範囲で設定されることとなる。直線溝の溝ピッチが100mm以上の場合、スラリーや研磨屑が排出されにくくなり、研磨傷が発生しやすくなる傾向にある。
【0024】
そして本実施例では、上記円形溝2の溝ピッチを5mmを超え10mm以下となる寸法で設けるとともに、上記円形ランド部4のランド幅と直線ランド部5のランド幅との関係について、以下のように規定することにより良好な研磨結果が得られることが、以下の実験により明らかとなった。
本実施例の研磨パッド1において、研磨面全体の面積に対する、上記ランド部の形成された面積の割合をランド面積比率とした場合、本実施例の研磨パッド1は、ランド面積比率が0.70~0.92となるように形成されたものとなっている。
【0025】
具体的に、上記ランド面積比率の算出方法について説明すると、最初に円形溝2のランド面積率(円形ランド部4の面積率)および直線溝3のランド面積率(直線ランド部5の面積率)を以下のように算出する。
円形溝2のランド面積率=円形溝2のランド幅/円形溝2の溝ピッチ・・・(式1)
直線溝3のランド面積率=直線溝3のランド幅2/直線溝3の溝ピッチ2・・・(式2)
この式1、式2に基づき、上記研磨パッド1全体におけるランド面積比率を以下のように算出する。
ランド面積比率=円形溝2のランド面積率×直線溝3のランド面積率・・・(式3)
【0026】
【表1】
【0027】
上記表1は、上記ランド面積比率に基づいて、本発明にかかる実施例1~4と、比較例1~4とにかかる研磨パッド1の研磨性能を、以下に示す条件で実験を行った結果を示すものである。
上記実施例1~4および比較例1~4には、同じ素材からなる研磨層を有する研磨パッド1を用い、当該研磨パッド1の研磨面に、表1に示す溝ピッチや溝幅で円形溝2や直線溝3を形成したものとなっている。
【0028】
上記実施例および比較例に用いる研磨パッド1は、以下のようにして製造した。
2,4-トリレンジイソシアネート(TDI)、ポリ(オキシテトラメチレン)グリコール(PTMG)及びジエチレングリコール(DEG)を反応させてなるNCO当量460のウレタンプレポリマー100部に、外殻部分がアクリロニトリル-塩化ビニリデン共重合体からなり、殻内にイソブタンガスが内包された粒子の大きさが15~25μmの膨脹させた中空微粒子2.8部を添加混合し、ウレタンプレポリマー混合液を得た。得られたウレタンプレポリマー混合液を第1液タンクに仕込み、80℃で保温した。また、第1液タンクとは別に、硬化剤として3,3’-ジクロロ-4,4’-ジアミノジフェニルメタン(メチレンビス-o-クロロアニリン)(MOCA)を25.5部及びポリプロピレングリコール8.5部を第2液タンクに入れ、120℃で加熱溶融させて混合して硬化剤溶融液を得た。
【0029】
次に、第1液タンク、第2液タンクのそれぞれの液体を、注入口を2つ備えた混合機のそれぞれの注入口から注入し、攪拌混合して混合液を得た。なお、この際に、ウレタンプレポリマー中の末端に存在するイソシアネート基に対する硬化剤に存在するアミノ基及び水酸基の当量比を表わすR値が0.90となるように、混合割合を調整した。
【0030】
得られた混合液を、100℃に予熱した型枠に注型して、30分間、110℃にて一次硬化させた。形成されたブロック状の成形物を型枠から抜き出し、オーブンにて130℃で2時間二次硬化し、ポリウレタンポリウレア樹脂成形体を得た。得られたポリウレタンポリウレア樹脂成形体を25℃まで放冷した後、再度オーブンにて120℃で5時間加熱してから、1.3mm厚にスライス処理を施し発泡ポリウレタンシート(研磨層)を得た。
その後、研磨層の表面に、以下に示す実施例1~4または比較例1~4の通りに、同心円状の円形溝及び格子状の直線溝を形成し、さらに研磨に用いない裏面に両面テープを貼り付けて、研磨パッドとした。
【0031】
実施例1の研磨パッド1には、円形溝2を溝ピッチ5.6mm、溝幅0.4mm、溝深さ0.6mm、ランド幅5.2mmで形成し、直線溝3を溝ピッチ35mm、溝幅2mm、溝深さ0.6mm、ランド幅33mmで形成した。その結果、実施例1のランド面積比率は0.83であった。
実施例2の研磨パッド1には、円形溝2を溝ピッチ5.6mm、溝幅0.8mm、溝深さ0.6mm、ランド幅4.8mmで形成し、直線溝3を溝ピッチ35mm、溝幅2mm、溝深さ0.6mm、ランド幅33mmで形成した。その結果、実施例2のランド面積比率は0.76であった。
実施例3の研磨パッド1には、円形溝2を溝ピッチ5.6mm、溝幅0.4mm、溝深さ0.6mm、ランド幅5.2mmで形成し、直線溝3を溝ピッチ60mm、溝幅2mm、溝深さ0.6mm、ランド幅58mmで形成した。その結果、実施例3のランド面積比率は0.87であった。
実施例4の研磨パッド1には、円形溝2を溝ピッチ5.6mm、溝幅0.8mm、溝深さ0.6mm、ランド幅4.8mmで形成し、直線溝3を溝ピッチ60mm、溝幅2mm、溝深さ0.6mm、ランド幅58mmで形成した。その結果、実施例4のランド面積比率は0.80であった。
【0032】
比較例1の研磨パッド1には、円形溝2を溝ピッチ2.8mm、溝幅0.4mm、溝深さ0.6mm、ランド幅2.4mmで形成し、直線溝3を溝ピッチ35mm、溝幅2mm、溝深さ0.6mm、ランド幅33mmで形成した。その結果、比較例1のランド面積比率は0.76であった。
比較例2の研磨パッド1には、円形溝2を溝ピッチ2.8mm、溝幅0.8mm、溝深さ0.6mm、ランド幅2.0mmで形成し、直線溝3を溝ピッチ35mm、溝幅2mm、溝深さ0.6mm、ランド幅33mmで形成した。その結果、比較例2のランド面積比率は0.63であった。
比較例3の研磨パッド1には、円形溝2を溝ピッチ11.2mm、溝幅0.4mm、溝深さ0.6mm、ランド幅10.8mmで形成し、直線溝3を溝ピッチ35mm、溝幅2mm、溝深さ0.6mm、ランド幅33mmで形成した。その結果、比較例3のランド面積比率は0.86であった。
比較例4の研磨パッド1には、円形溝2を溝ピッチ11.2mm、溝幅0.4mm、溝深さ0.6mm、ランド幅10.8mmで形成し、直線溝3を溝ピッチ120mm、溝幅2mm、溝深さ0.6mm、ランド幅118mmで形成した。その結果、比較例4のランド面積比率は0.93であった。
【0033】
実験では、研磨装置として荏原製作所製F-REX300Xを用い、被研磨物としての窒化タンタル膜基板の表面の研磨を行った。また研磨装置の保持定盤の回転数を70rpm、研磨定盤の回転数を71rpmに設定し、研磨圧力3.5psiで研磨パッド1を被研磨物に押し当てながら研磨を行った。
また研磨パッド1と被研磨物との間には、スラリーとして富士フイルム製CuBM用スラリーを、20℃、200ml/minの割合で供給した。
ドレッサは3M社製A188を使用した。また、パッドブレークは32N20分、コンディショニングはEx-situ 35N 4スキャンで行った。
【0034】
そして、上記研磨装置を用いて60秒間研磨を行い、研磨された被研磨物について研磨レートを以下のように測定した。
研磨試験前後の基板上の窒化タンタル膜について、基板上の全体にわたってランダムに121箇所を選定し、それらの箇所における研磨試験前後の厚さを測定した。
測定した厚さに基づいて、研磨試験前の厚さの平均値及び研磨試験後の厚さの平均値を算出し、これらの平均値の差をとることにより研磨された厚みの平均値を算出した。
そして、得られた研磨された厚みの平均値を研磨時間で除することにより研磨レート(Å/min)を求めた。なお、厚さ測定は、光学式膜厚膜質測定器(KLAテンコール社製、型番「ASET-F5x」)のDBSモードにて測定した。
【0035】
上記実験の結果、表1に示すように実施例1~4については、研磨レートが950を超えており、いずれも良好な研磨結果を得ることができたのに対し、上記比較例1~4は良好な研磨結果が得られなかった。
理由としては、実施例2と比較例1とを比較すると、ランド面積比率が同じであるものの、比較例1の円形溝2の溝ピッチが5mm以下であることから、研磨中における円形ランド部4の剛性が維持できなかったものと推察される。
これと同様、比較例2は円形溝2の溝ピッチが5mm以下、かつランド面積比率が0.70未満であったため、良好な研磨レートが得られなかったものと推察される。
また、比較例3は、ランド面積比率が0.83であるものの、円形溝2の溝ピッチが10mmより大きいことから、スラリーが十分保持されなくなったため、良好な研磨レートが得られなかったものと推察される。
さらに、比較例4は、ランド面積比率が0.92より大きいことから、円形溝2によるスラリーの保持能力と直線溝3によるスラリーの排出機能のバランスが悪く、また円形溝2の溝ピッチが10mmより大きいことから、スラリーが十分保持されなくなったため、良好な研磨レートが得られなかったものと推察される。
【符号の説明】
【0036】
1 研磨パッド 2 円形溝
3 直線溝 4 円形ランド部
5 直線ランド部
図1
図2