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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-01
(45)【発行日】2024-10-09
(54)【発明の名称】半導体装置及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/78 20060101AFI20241002BHJP
   H01L 29/06 20060101ALI20241002BHJP
   H01L 29/739 20060101ALI20241002BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20241002BHJP
【FI】
H01L29/78 652J
H01L29/78 652C
H01L29/78 652M
H01L29/78 652F
H01L29/78 652K
H01L29/78 652Q
H01L29/06 301F
H01L29/06 301V
H01L29/78 655B
H01L29/78 655G
H01L29/78 653A
H01L29/78 652D
H01L29/78 658A
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020105121
(22)【出願日】2020-06-18
(65)【公開番号】P2021197525
(43)【公開日】2021-12-27
【審査請求日】2023-06-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000006220
【氏名又は名称】ミツミ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】矢田郷 昌稔
(72)【発明者】
【氏名】白石 尚寛
(72)【発明者】
【氏名】近藤 勝則
(72)【発明者】
【氏名】渡部 憲佳
【審査官】戸川 匠
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/022989(WO,A1)
【文献】特開2018-139335(JP,A)
【文献】特開2017-157733(JP,A)
【文献】国際公開第2018/147466(WO,A1)
【文献】特開2014-075483(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/78
H01L 29/06
H01L 29/739
H01L 21/336
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の主面と、前記第1の主面とは反対側の第2の主面とを備えた第1導電型の半導体基板と、
前記第1の主面に設けられた第1のトレンチと、
前記第1の主面に設けられた第2のトレンチと、
前記第1の主面に設けられた第3のトレンチと、
前記第1の主面に設けられた第4のトレンチと、
前記第1のトレンチと前記第2のトレンチとの間で前記第1の主面に設けられた第2導電型の第1の半導体層と、
前記第1の主面の前記第1の半導体層との間で前記第1のトレンチを挟む位置に設けられ、前記第1のトレンチに接する第1導電型の第2の半導体層と、
前記第2の半導体層の下に設けられ、前記第2の半導体層及び前記第1のトレンチに接する第2導電型の第3の半導体層と、
前記第3の半導体層の下に設けられ、前記第3の半導体層に接し、かつ前記第1のトレンチから離間している第1導電型の第4の半導体層と、
前記第1の主面の前記第1の半導体層との間で前記第2のトレンチを挟む位置に設けられた第2導電型の第5の半導体層と、
前記第1のトレンチの内壁に設けられた第1の絶縁膜と、
前記第1の絶縁膜を介して前記第1のトレンチ内に設けられ、前記第3の半導体層に対向する第1のゲートトレンチ電極と、
前記第2のトレンチの内壁に設けられた第2の絶縁膜と、
前記第3のトレンチの内壁に設けられた第3の絶縁膜と、
前記第4のトレンチの内壁に設けられた第4の絶縁膜と、
前記第2の絶縁膜を介して前記第2のトレンチ内に設けられた第1のエミッタトレンチ電極と、
前記第1のゲートトレンチ電極に接続されたゲート電極と、
前記第1のエミッタトレンチ電極と、前記第2の半導体層と、前記第3の半導体層と、前記第5の半導体層とに接続されたエミッタ電極と、
前記第2の主面に設けられたコレクタ電極と、
前記第3の半導体層の上に設けられ、前記第3の半導体層及び前記第3のトレンチに接し、前記第2の半導体層から離間し、前記エミッタ電極に接続された第1導電型の第6の半導体層と、
前記第3の絶縁膜を介して前記第3のトレンチ内に設けられ、前記第3の半導体層に対向し、前記ゲート電極に接続された第2のゲートトレンチ電極と、
前記第4の絶縁膜を介して前記第4のトレンチ内に設けられ、前記エミッタ電極に接続された第2のエミッタトレンチ電極と、
を有し、
前記第1のトレンチは、前記第2のトレンチと前記第3のトレンチとの間にあり、
前記第2のトレンチは、前記第1のトレンチと前記第4のトレンチとの間にあり、
前記第3の半導体層は、前記第3のトレンチにも接し、
前記第4の半導体層は、前記第3のトレンチからも離間し、
前記第5の半導体層は、前記第4のトレンチにも接し、
前記第3のトレンチ、前記第1のトレンチ、前記第2のトレンチ及び前記第4のトレンチは、ストライプ状に等間隔で配置され、
前記第1の半導体層は、電気的にフローティングである半導体装置。
【請求項2】
前記第5の半導体層の下に設けられ、前記第5の半導体層に接する第1導電型の第の半導体層を有する請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第の半導体層は、前記第2のトレンチから離間している請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第1の半導体層の深さは、前記第1のトレンチの深さ以上である請求項1乃至3のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第5の半導体層の深さは、前記第3の半導体層の深さと等しい請求項1乃至4のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記第5の半導体層の深さは、前記第3の半導体層の深さより大きく、前記第1の半導体層の深さ以下である請求項1乃至4のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記第1のトレンチと前記第2のトレンチとの間で前記第1の主面に設けられた第5のトレンチと、
前記第5のトレンチの内壁に設けられた第5の絶縁膜と、
前記第5の絶縁膜を介して前記第5のトレンチ内に設けられ、前記エミッタ電極に接続された第3のエミッタトレンチ電極と、
を有し、
前記第1のトレンチ、前記第5のトレンチ及び前記第2のトレンチは、ストライプ状に等間隔で配置され、
前記第1の半導体層は、隣り合う前記第1のトレンチと前記第5のトレンチとの間と、隣り合う前記第2のトレンチと前記第5のトレンチとの間とに設けられている請求項1乃至のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記第1のトレンチと前記第2のトレンチとの間で前記第1の主面に複数の前記第5のトレンチが設けられており、
前記第5のトレンチごとに、前記第5の絶縁膜と、前記第3のエミッタトレンチ電極とが設けられており、
前記第1のトレンチ、複数の前記第5のトレンチ及び前記第2のトレンチは、ストライプ状に等間隔で配置され、
前記第1の半導体層は、隣り合う2個の前記第5のトレンチとの間にも設けられている請求項に記載の半導体装置。
【請求項9】
隣り合う2個の前記第5のトレンチの間で前記第1の主面に設けられた第6のトレンチと、
前記第6のトレンチの内壁に設けられた第6の絶縁膜と、
前記第6の絶縁膜を介して前記第6のトレンチ内に設けられ、前記ゲート電極に接続された第3のゲートトレンチ電極と、
を有し、
複数の前記第5のトレンチ及び前記第6のトレンチは、ストライプ状に等間隔で配置され、
前記第1の半導体層は、隣り合う前記第5のトレンチと前記第6のトレンチとの間に設けられている請求項8に記載の半導体装置。
【請求項10】
第1の主面と、前記第1の主面とは反対側の第2の主面とを備えた第1導電型の半導体基板の前記第1の主面に、第1のトレンチ第2のトレンチ、第3のトレンチ及び第4のトレンチを形成する工程と、
前記第1のトレンチと前記第2のトレンチとの間で前記第1の主面に第2導電型の第1の半導体層を形成する工程と、
前記第1の主面の前記第1の半導体層との間で前記第1のトレンチを挟む位置に、前記第1のトレンチに接する第1導電型の第2の半導体層を形成する工程と、
前記第2の半導体層の下に、前記第2の半導体層及び前記第1のトレンチに接する第2導電型の第3の半導体層を形成する工程と、
前記第3の半導体層の下に、前記第3の半導体層に接し、かつ前記第1のトレンチから離間している第1導電型の第4の半導体層を形成する工程と、
前記第1の主面の前記第1の半導体層との間で前記第2のトレンチを挟む位置に第2導電型の第5の半導体層を形成する工程と、
前記第1のトレンチの内壁に第1の絶縁膜を形成する工程と、
前記第1のトレンチ内に前記第1の絶縁膜を介して前記第3の半導体層に対向する第1のゲートトレンチ電極を形成する工程と、
前記第2のトレンチの内壁に第2の絶縁膜を形成する工程と、
前記第2のトレンチ内に前記第2の絶縁膜を介して第1のエミッタトレンチ電極を形成する工程と、
前記第3のトレンチの内壁に第3の絶縁膜を形成する工程と、
前記第4のトレンチの内壁に第4の絶縁膜を形成する工程と、
前記第1のゲートトレンチ電極に接続されるゲート電極を形成する工程と、
前記第1のエミッタトレンチ電極と、前記第2の半導体層と、前記第3の半導体層と、前記第5の半導体層とに接続されるエミッタ電極を形成する工程と、
前記第2の主面にコレクタ電極を形成する工程と、
前記第3の半導体層の上に、前記第3の半導体層及び前記第3のトレンチに接し、前記第2の半導体層から離間し、前記エミッタ電極に接続される第1導電型の第6の半導体層を形成する工程と、
前記第3の絶縁膜を介して前記第3のトレンチ内に、前記第3の半導体層に対向し、前記ゲート電極に接続される第2のゲートトレンチ電極を形成する工程と、
前記第4の絶縁膜を介して前記第4のトレンチ内に、前記エミッタ電極に接続される第2のエミッタトレンチ電極を形成する工程と、
を有し、
前記第1のトレンチは、前記第2のトレンチと前記第3のトレンチとの間にあり、
前記第2のトレンチは、前記第1のトレンチと前記第4のトレンチとの間にあり、
前記第3の半導体層は、前記第3のトレンチにも接し、
前記第4の半導体層は、前記第3のトレンチからも離間し、
前記第5の半導体層は、前記第4のトレンチにも接し、
前記第3のトレンチ、前記第1のトレンチ、前記第2のトレンチ及び前記第4のトレンチは、ストライプ状に等間隔で配置され、
前記第1の半導体層は、電気的にフローティングである半導体装置の製造方法。
【請求項11】
前記エミッタ電極を形成する工程の前に、前記第2の半導体層と、前記第5の半導体層との上に絶縁膜を形成する工程と、
前記絶縁膜と、前記第2の半導体層とに前記第3の半導体層に到達する第1の開口部を形成する工程と、
前記絶縁膜に前記第5の半導体層に到達する第2の開口部を形成する工程と、
を有し、
前記エミッタ電極は、前記第1の開口部を通じて前記第2の半導体層と、前記第3の半導体層とに接続され、前記第2の開口部を通じて前記第5の半導体層に接続される請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項12】
前記第4の半導体層を形成する工程は、前記第1の開口部を通じて第1導電型の不純物のイオン注入を行う工程を有する請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項13】
前記第1導電型の不純物のイオン注入により、少なくとも一部が前記第5の半導体層と重なる第1導電型の第の半導体層が形成される請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項14】
前記第の半導体層は、前記第2のトレンチから離間する請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(insulated gate bipolar transistor:IGBT)において、P型のチャネル領域の下方にチャネル領域の下面の全体に接するように高濃度のN型半導体層を設けた半導体装置が公知である(特許文献1)。高濃度のN型半導体層を設けることで飽和電圧を下げることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第3288218号公報
【文献】特許第5089191号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
高濃度のN型半導体層が設けられた従来の半導体装置では、IGBTのMOS構造の閾値電圧等の特性がばらつきやすい。
【0005】
本開示の目的は、飽和電圧を調整しやすく、特性のばらつきを抑制できる半導体装置及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一形態に係る半導体装置は、第1の主面と、前記第1の主面とは反対側の第2の主面とを備えた第1導電型の半導体基板と、前記第1の主面に設けられた第1のトレンチと、前記第1の主面に設けられた第2のトレンチと、前記第1の主面に設けられた第3のトレンチと、前記第1の主面に設けられた第4のトレンチと、前記第1のトレンチと前記第2のトレンチとの間で前記第1の主面に設けられた第2導電型の第1の半導体層と、前記第1の主面の前記第1の半導体層との間で前記第1のトレンチを挟む位置に設けられ、前記第1のトレンチに接する第1導電型の第2の半導体層と、前記第2の半導体層の下に設けられ、前記第2の半導体層及び前記第1のトレンチに接する第2導電型の第3の半導体層と、前記第3の半導体層の下に設けられ、前記第3の半導体層に接し、かつ前記第1のトレンチから離間している第1導電型の第4の半導体層と、前記第1の主面の前記第1の半導体層との間で前記第2のトレンチを挟む位置に設けられた第2導電型の第5の半導体層と、前記第1のトレンチの内壁に設けられた第1の絶縁膜と、前記第1の絶縁膜を介して前記第1のトレンチ内に設けられ、前記第3の半導体層に対向する第1のゲートトレンチ電極と、前記第2のトレンチの内壁に設けられた第2の絶縁膜と、前記第3のトレンチの内壁に設けられた第3の絶縁膜と、前記第4のトレンチの内壁に設けられた第4の絶縁膜と、前記第2の絶縁膜を介して前記第2のトレンチ内に設けられた第1のエミッタトレンチ電極と、前記第1のゲートトレンチ電極に接続されたゲート電極と、前記第1のエミッタトレンチ電極と、前記第2の半導体層と、前記第3の半導体層と、前記第5の半導体層とに接続されたエミッタ電極と、前記第2の主面に設けられたコレクタ電極と、前記第3の半導体層の上に設けられ、前記第3の半導体層及び前記第3のトレンチに接し、前記第2の半導体層から離間し、前記エミッタ電極に接続された第1導電型の第6の半導体層と、前記第3の絶縁膜を介して前記第3のトレンチ内に設けられ、前記第3の半導体層に対向し、前記ゲート電極に接続された第2のゲートトレンチ電極と、前記第4の絶縁膜を介して前記第4のトレンチ内に設けられ、前記エミッタ電極に接続された第2のエミッタトレンチ電極と、を有し、前記第1のトレンチは、前記第2のトレンチと前記第3のトレンチとの間にあり、前記第2のトレンチは、前記第1のトレンチと前記第4のトレンチとの間にあり、前記第3の半導体層は、前記第3のトレンチにも接し、前記第4の半導体層は、前記第3のトレンチからも離間し、前記第5の半導体層は、前記第4のトレンチにも接し、前記第3のトレンチ、前記第1のトレンチ、前記第2のトレンチ及び前記第4のトレンチは、ストライプ状に等間隔で配置され、前記第1の半導体層は、電気的にフローティングである。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、飽和電圧を調整しやすく、特性のばらつきを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1の実施形態に係る半導体装置における半導体層及びトレンチ電極のレイアウトを示す図である。
図2】第1の実施形態に係る半導体装置を示す断面図である。
図3】第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その1)である。
図4】第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その2)である。
図5】第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その3)である。
図6】第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その4)である。
図7】第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その5)である。
図8】第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その6)である。
図9】第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その7)である。
図10】第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その8)である。
図11】第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その9)である。
図12】第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その10)である。
図13】第1の実施形態の変形例に係る半導体装置を示す断面図である。
図14】Vce-Ic特性を示す図である。
図15】キャリア濃度に関するシミュレーションの結果を示す図である。
図16】第2の実施形態に係る半導体装置を示す断面図である。
図17】第3の実施形態に係る半導体装置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施形態について添付の図面を参照しながら具体的に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省くことがある。また、以下の説明において、基板の表面に平行で互いに直交する2つの方向をX方向、Y方向とし、基板の表面に垂直な方向をZ方向とする。
【0010】
(第1の実施形態)
先ず、第1の実施形態について説明する。第1の実施形態は、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(insulated gate bipolar transistor:IGBT)を含む半導体装置に関する。図1は、第1の実施形態に係る半導体装置における半導体層及びトレンチ電極のレイアウトを示す図である。図2は、第1の実施形態に係る半導体装置を示す断面図である。図2は、図1中のII-II線に沿った断面図に相当する。
【0011】
第1の実施形態に係る半導体装置100は、図1に示すように、第1の主面10Aと、第1の主面10Aとは反対側の第2の主面10Bとを備えたN型の半導体基板10を有する。半導体基板10は、例えばシリコン基板である。第1の主面10Aに、複数のゲート用のトレンチ21と、複数のエミッタ用のトレンチ22とが形成されている。トレンチ21及び22は、例えばY方向に延びる。例えば、2本のトレンチ21が対をなし、2本のトレンチ22が対をなし、トレンチ21の対と、トレンチ22の対とがX方向に交互に配置されている。X方向で隣り合う2本のトレンチ21の間の距離と、X方向で隣り合う2本のトレンチ22の間の距離と、X方向で隣り合うトレンチ21とトレンチ22との間の距離とが等しい。つまり、トレンチ21とトレンチ22とを区別しない場合、第1の主面10Aには、複数のトレンチがX方向に等間隔でストライプ状に形成されている。X方向で隣り合う2本のトレンチ21の間に第1領域R1が画定され、X方向で隣り合うトレンチ21とトレンチ22との間に第2領域R2が画定され、X方向で隣り合う2本のトレンチ22の間に第3領域R3が画定されている。第1の実施形態では、X方向に、・・・、第3領域R3、第2領域R2、第1領域R1、第2領域R2、第3領域R3、第2領域R2、第1領域R1、・・・のように、第1領域R1と第3領域R3とが交互に配置され、第1領域R1と第3領域R3との間に1つの第2領域R2が配置されている。
【0012】
第1領域R1では、第1の主面10AにN型半導体層12が設けられている。N型半導体層12は、半導体基板10よりも高濃度でN型不純物を含有する。N型半導体層12は、第1の主面10Aに露出し、トレンチ21に接している。N型半導体層12の下にP型半導体層13が設けられている。P型半導体層13は、N型半導体層12及びトレンチ21に接している。Z方向で、P型半導体層13の下端は、トレンチ21の下端よりも上方にある。P型半導体層13のN型半導体層12との界面の近傍に、P型半導体層17が形成されている。P型半導体層17は、N型半導体層12及びP型半導体層13にわたって形成されていてもよく、N型半導体層12とP型半導体層13との界面を含むように形成されていてもよい。P型半導体層17は、トレンチ21から離間している。P型半導体層17は、P型半導体層13よりも高濃度でP型不純物を含有する。Z方向で、P型半導体層17の下端は、P型半導体層13の下端よりも上方にある。P型半導体層13の下にN型半導体層14が設けられている。N型半導体層14は、半導体基板10よりも高濃度、かつN型半導体層12よりも低濃度でN型不純物を含有する。N型半導体層14は、P型半導体層13に接し、トレンチ21から離間している。
【0013】
第2領域R2では、第1の主面10AにP型半導体層11が設けられている。P型半導体層11はトレンチ21及びトレンチ22に接している。例えば、Z方向で、P型半導体層11の下端は、トレンチ21の下端よりも上方にある。例えば、P型半導体層11の深さは、トレンチ21の深さ以上である。P型半導体層11は、P型半導体層13よりも低濃度でP型不純物を含有する。
【0014】
第3領域R3では、第1の主面10AにP型半導体層15が設けられている。例えば、P型半導体層15は、P型半導体層13と同程度の濃度でP型不純物を含有する。P型半導体層15は、第1の主面10Aに露出し、トレンチ22に接している。例えば、Z方向で、P型半導体層15の下端は、P型半導体層13の下端と同じ位置にあってもよく、P型半導体層13の下端よりも下方にあってもよい。例えば、Z方向で、P型半導体層15の下端は、P型半導体層11の下端と同じ位置にあってもよく、P型半導体層11の下端よりも上方にあってもよい。P型半導体層15の深さは、P型半導体層13の深さと等しくてもよく、P型半導体層13の深さより大きく、かつP型半導体層11の深さ以下であってもよい。P型半導体層18がP型半導体層15の内部に形成されている。P型半導体層18は、P型半導体層15よりも高濃度でP型不純物を含有する。例えば、P型半導体層18は、P型半導体層17と同程度の濃度でP型不純物を含有する。P型半導体層15の下にN型半導体層16が設けられている。N型半導体層16は、半導体基板10よりも高濃度でN型不純物を含有する。例えば、N型半導体層16は、N型半導体層14と同程度の濃度でN型不純物を含有する。N型半導体層16は、少なくとも一部がP型半導体層15と重なり、P型半導体層15に接し、トレンチ22から離間している。
【0015】
トレンチ21及び22の内壁に絶縁膜30が設けられている。第1の主面10Aの上には絶縁膜31が設けられている。すなわち、絶縁膜31は、P型半導体層11及びN型半導体層12を覆っている。絶縁膜30及び31は、例えば熱酸化膜である。トレンチ21内には、絶縁膜30を介してゲートトレンチ電極41が設けられている。ゲートトレンチ電極41は絶縁膜30を介してP型半導体層13に対向する。トレンチ22内には、絶縁膜30を介してエミッタトレンチ電極42が設けられている。ゲートトレンチ電極41及びエミッタトレンチ電極42は、例えば多結晶シリコンを用いて形成されている。絶縁膜31はゲートトレンチ電極41及びエミッタトレンチ電極42の上にも形成されている。
【0016】
絶縁膜30のトレンチ21内の部分はゲート絶縁膜として機能する。第1領域R1内では、N型半導体層12、P型半導体層13及びN型の半導体基板10がトレンチ21内の絶縁膜30に沿って並んでおり、P型半導体層13がチャネル領域として機能する。すなわち、第1領域R1と、絶縁膜30と、ゲートトレンチ電極41によりMOS構造が構成されている。
【0017】
絶縁膜31の上に層間絶縁膜50が設けられている。層間絶縁膜50は、例えばBPSG(borophosphosilicate glass)膜である。層間絶縁膜50、絶縁膜31及びN型半導体層12に、P型半導体層17に到達する開口部51が形成されている。開口部51により、N型半導体層12が2つに分割されている。層間絶縁膜50、絶縁膜31及びP型半導体層15に、P型半導体層18に到達する開口部52が形成されている。層間絶縁膜50の上にエミッタ電極(エミッタパッド)61が設けられている。エミッタ電極61は、開口部51を通じてN型半導体層12及びP型半導体層13に接触し、開口部52を通じてP型半導体層15及び18に接触している。エミッタ電極61は、例えばアルミニウムを用いて形成されている。
【0018】
第2の主面10BにP型半導体層63が設けられ、P型半導体層63の上方にN型半導体層62が設けられている。N型半導体層62は、P型半導体層63に接している。N型半導体層62は、半導体基板10よりも高濃度でN型不純物を含有する。第2の主面10Bの上に、すなわちP型半導体層63の下方にコレクタ電極64が設けられている。コレクタ電極64は、P型半導体層63に接している。コレクタ電極64は、例えばP型半導体層63から下方に向かって順に積層されたAl、Ti、Ni及びAuの積層膜を用いて形成されている。コレクタ電極64は、P型半導体層63から下方に向かって順に積層されたAl、Ti、Ni及びAgの積層膜など、他の材料を使用してもよい。
【0019】
各ゲートトレンチ電極41は、例えば半導体装置100の外周の近傍に引き出され、図示しないゲート電極(ゲートパッド)に共通に接続されている。半導体装置100の全体で給電の遅延時間が均等になるように、ゲートトレンチ電極41とゲート電極との間に、適宜シャント(抵抗)が設けられていてもよい。ゲート電極は、例えばアルミニウムを用いて形成されている。各エミッタトレンチ電極42は、例えば半導体装置100の外周の近傍に引き出され、エミッタ電極(エミッタパッド)61に接続されている。
【0020】
P型半導体層11は、エミッタ電極61、コレクタ電極64及びゲート電極と直接接続はされていないため、電気的にフローティングである。
【0021】
なお、図示を省略しているが、半導体装置100の外周部には、いわゆるガードリング構造が設けられており、耐圧が保持される。
【0022】
次に、第1の実施形態に係る半導体装置100の製造方法について説明する。図3図12は、第1の実施形態に係る半導体装置100の製造方法を示す断面図である。
【0023】
まず、図3に示すように、第1の主面10Aと、第2の主面10Bとを備えた半導体基板10を準備し、P型不純物のイオン注入及びその後の熱処理により、第2領域R2となる領域において第1の主面10AにP型半導体層11を形成する。
【0024】
次に、図4に示すように、第1の主面10Aに、複数のゲート用のトレンチ21と、複数のエミッタ用のトレンチ22とを形成する。トレンチ21及びトレンチ22の形成では、例えば、第1の主面10Aの上にフォトレジストのマスクを形成し、このマスクを用いて半導体基板10のエッチングを行う。X方向で隣り合う2本のトレンチ21の間に第1領域R1が画定され、X方向で隣り合うトレンチ21とトレンチ22との間に第2領域R2が画定され、X方向で隣り合う2本のトレンチ22の間に第3領域R3が画定される。
【0025】
次に、図5に示すように、トレンチ21及び22の内壁に絶縁膜30を形成する。絶縁膜30は、第1の主面10Aの上にも形成する。絶縁膜30は、例えば熱酸化により形成することができる。
【0026】
次に、図6に示すように、トレンチ21内に絶縁膜30を介してゲートトレンチ電極41を形成し、トレンチ22内に絶縁膜30を介してエミッタトレンチ電極42を形成する。
【0027】
なお、P型半導体層11は、絶縁膜30の形成等における加熱により所定の深さに形成することができる。
【0028】
次に、図7に示すように、絶縁膜30の、半導体基板10上の部分と、P型半導体層11上の部分とを除去する。すなわち、第1領域R1内のP型半導体層13、N型半導体層12が形成される領域と、第3領域R3内のP型半導体層15が形成される領域と、第2領域R2内のP型半導体層11が形成された領域との上から絶縁膜30を除去する。そして、これら絶縁膜30を除去した領域にイオン注入用の絶縁膜31を形成する。イオン注入用の絶縁膜31は、絶縁膜30よりも薄い絶縁膜である。絶縁膜31は、例えば熱酸化により形成することができる。絶縁膜31は、ゲートトレンチ電極41及びエミッタトレンチ電極42の上にも形成される。その後、P型不純物のイオン注入により、第1領域R1内にP型半導体層13を形成し、第3領域R3内にP型半導体層15を形成する。P型半導体層13及びP型半導体層15は同時に形成することができる。P型半導体層13及びP型半導体層15を互いに異なる工程で形成してもよい。次いで、N型不純物のイオン注入により、第1領域R1内にN型半導体層12を形成する。絶縁膜31は、これらイオン注入の際に半導体基板10及びP型半導体層11の表面を保護する。
【0029】
次に、図8に示すように、絶縁膜31の上に層間絶縁膜50を形成する。
【0030】
次に、図9に示すように、層間絶縁膜50、絶縁膜31及びN型半導体層12に、P型半導体層13に到達する開口部51を形成し、層間絶縁膜50及び絶縁膜31に、P型半導体層15に到達する開口部52を形成する。開口部51及び開口部52は同時に形成することができる。開口部51及び開口部52の形成では、例えば、層間絶縁膜50の上にフォトレジストのマスクを形成し、このマスクを用いて層間絶縁膜50、絶縁膜31、N型半導体層12及びP型半導体層15のエッチングを行う。開口部52はP型半導体層15に入り込む。開口部51がP型半導体層13に入り込んでもよい。
【0031】
次に、図10に示すように、第1領域R1内のN型半導体層14及びP型半導体層17と、第3領域R3内のN型半導体層16及びP型半導体層18とを形成する。これら半導体層の形成では、N型半導体層14、N型半導体層16を形成するためのN型不純物のイオン注入を、それぞれ第1領域R1内、第3領域R3内に行う。次いで、P型半導体層17、P型半導体層18を形成するためのP型不純物のイオン注入を、それぞれ第1領域R1内、第3領域R3内に行う。そして、これらイオン注入の後に熱処理を行う。このようにして、N型半導体層14、N型半導体層16、P型半導体層17及びP型半導体層18を形成することができる。N型半導体層14の少なくとも一部がP型半導体層13と重なり、N型半導体層16の少なくとも一部がP型半導体層15と重なる。
【0032】
次に、図11に示すように、層間絶縁膜50の上にエミッタ電極61を形成する。エミッタ電極61は、開口部51を通じてN型半導体層12及びP型半導体層13に接触し、開口部52を通じてP型半導体層15及び18に接触する。
【0033】
次に、図12に示すように、N型不純物のイオン注入により、第2の主面10BにN型半導体層62を形成する。更に、P型不純物のイオン注入により、第2の主面10BにP型半導体層63を形成する。次いで、第2の主面10Bの上に、コレクタ電極64を形成する。
【0034】
また、図示を省略するが、各ゲートトレンチ電極41に接続されるゲート電極を形成する。
【0035】
例えば、P型半導体層17、P型半導体層18、N型半導体層14及びN型半導体層16の形成後で、エミッタ電極61の形成前に、半導体装置100の外周の近傍において層間絶縁膜50にエミッタトレンチ電極42に到達する開口部(図示せず)を形成してもよい。エミッタ電極61は、この開口部を通じてエミッタトレンチ電極42に接続できる。
【0036】
ここで、第1の実施形態に係る半導体装置100の効果について説明する。
【0037】
第1の実施形態に係る半導体装置100では、N型半導体層14がホールバリア層として機能する。また、N型半導体層14がトレンチ21から離間している。従って、第1領域R1のMOS構造の閾値電圧等の特性がN型半導体層14の影響を受けにくい。すなわち、第1の実施形態によれば、MOS構造の特性のばらつきを抑制することができる。
【0038】
第1領域R1に隣接して第2領域R2が設けられ、第2領域R2にフローティングのP型半導体層11が設けられている。このため、電子注入促進(injection enhancement:IE)効果により、良好なIGBTの静特性が得られる。また、P型半導体層11とP型半導体層13とを別工程で形成でき、例えばP型半導体層11をP型半導体層13よりも深く形成できる。このため、第1領域R1に良好なMOS特性を得ながら、優れた耐圧を得ることができる。
【0039】
第1領域R1との間で第2領域R2を挟むように第3領域R3が設けられ、第2領域R2と第3領域R3との間に、トレンチ22が設けられている。トレンチ22内にゲートトレンチ電極41が設けられた場合、ゲート容量の増大により、安全動作領域(short circuit safe operation area:SCSOA)及びスイッチング特性が悪化するおそれがある。第1の実施形態では、トレンチ22内に、エミッタ電極61に接続されたエミッタトレンチ電極42が設けられているため、ゲート容量の増大に伴う特性の低下を回避できる。
【0040】
トレンチ21とトレンチ22とを区別しない場合、第1の主面10Aには、複数のトレンチがX方向に等間隔でストライプ状に配置される。このため、トレンチの密度の均一性が高く、トレンチを形成する際のエッチングの加工ばらつきを抑制できる。加工ばらつきの抑制により、半導体装置100の歩留まりを向上し、また、電気的特性のばらつきを低減できる。
【0041】
第3領域R3に、エミッタ電極61に接続されたP型半導体層15がN型の半導体基板10と接するようにして設けられている。このため、IGBTのスイッチング動作時に速やかにキャリアを排出することが可能となり、スイッチング特性を向上することができる。
【0042】
更に、P型半導体層15の深さに応じて飽和電圧Vce(sat)を調整することができる。図2に示す断面図では、P型半導体層15の深さがP型半導体層13の深さと等しいが、P型半導体層15の深さがP型半導体層13の深さよりも大きくてもよい。図13は、第1の実施形態の変形例に係る半導体装置を示す断面図である。
【0043】
第1の実施形態の変形例に係る半導体装置101では、P型半導体層15の深さが、P型半導体層13の深さより大きく、P型半導体層11の深さ以下である。N型半導体層16は、その全体がP型半導体層15と重なるように形成されている。他の構成は第1の実施形態と同様である。
【0044】
半導体装置100と半導体装置101とを比較すると、MOS特性が同等であるとともに、半導体装置100の飽和電圧Vce(sat)が半導体装置101の飽和電圧Vce(sat)よりも低い。本願発明者らが第1の実施形態、その変形例に倣った半導体装置を作製し、それぞれについてコレクタ-エミッタ間電圧Vceとコレクタ電流Icとの関係(Vce-Ic特性)を実際に測定した結果を図14に示す。図14に示すように、第1の実施形態と、その変形例との間で閾値電圧は同等であった。一方、定格のコレクタ電流Icを流したときのコレクタ-エミッタ間電圧Vce(飽和電圧Vce(sat))は第1の実施形態において変形例よりも小さかった。
【0045】
また、本願発明者らが第1の実施形態、その変形例について行ったキャリア濃度に関するシミュレーションの結果を図15に示す。このシミュレーションでは、第1領域R1の平面視でN型半導体層14を含む部分と、第3領域R3の平面視でN型半導体層16を含む部分とについてZ方向での正孔の濃度分布を計算した。図15中の実線は、第1実施形態の第1領域R1についてのシミュレーション結果を示し、破線は、第1実施形態の第3領域R3についてのシミュレーション結果を示し、一点鎖線は、変形例の第1領域R1についてのシミュレーション結果を示し、二点鎖線は、変形例の第3領域R3についてのシミュレーション結果を示す。
【0046】
図15に示すように、第1の実施形態では、変形例と比較して、第1領域R1及び第3領域R3の両方において、正孔濃度が高いというシミュレーション結果が得られた。これは、変形例よりもP型半導体層15が浅く形成された第1の実施形態において、一種のキャリア蓄積効果がもたらされているためであると考えられる。
【0047】
このように、MOS特性から独立して、P型半導体層15の深さに応じて飽和電圧Vce(sat)を調整することができる。なお、P型半導体層15の深さがP型半導体層13の深さと等しい場合、P型半導体層15とP型半導体層13とを同時に形成することができる。その一方で、P型半導体層15とP型半導体層13とを別工程で形成することで、所望のMOS特性を得ながら、飽和電圧Vce(sat)を調整することができる。
【0048】
N型半導体層16はトレンチ22から離間していることが好ましい。これは、より優れたIE効果を引き出し、飽和電圧Vce(sat)を更に下げて半導体装置100の効率を向上できるためである。
【0049】
P型半導体層11の深さはトレンチ21の深さ以上であることが好ましい。これは、トレンチ21の下端における電界集中を緩和しやすくなるためである。
【0050】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。第2の実施形態は、主として、第1領域R1、第2領域R2、第3領域R3の配置の点で第1の実施形態と相違している。図16は、第2の実施形態に係る半導体装置を示す断面図である。
【0051】
第2の実施形態に係る半導体装置200では、第1の主面10Aに、複数のゲート用のトレンチ21と、複数のエミッタ用のトレンチ22とに加えて、複数のエミッタ用のトレンチ25が形成されている。トレンチ25は、例えばY方向に延びる。第1の実施形態と同様に、トレンチ21の対と、トレンチ22の対とがX方向に交互に配置されている。また、隣り合うトレンチ21の対と、トレンチ22の対との間に、2本ずつトレンチ25が配置されている。X方向で隣り合う2本のトレンチ21の間の距離と、X方向で隣り合う2本のトレンチ22の間の距離と、X方向で隣り合う2本のトレンチ25の間の距離と、X方向で隣り合うトレンチ21とトレンチ25との間の距離と、X方向で隣り合うトレンチ22とトレンチ25との間の距離とが等しい。つまり、トレンチ21とトレンチ22とトレンチ25とを区別しない場合、第1の主面10Aには、複数のトレンチがX方向に等間隔でストライプ状に形成されている。第1の実施形態と同様に、X方向で隣り合う2本のトレンチ21の間に第1領域R1が画定され、X方向で隣り合う2本のトレンチ22の間に第3領域R3が画定されている。第2領域R2は、X方向で隣り合うトレンチ21とトレンチ25との間と、X方向で隣り合う2本のトレンチ25の間と、X方向で隣り合うトレンチ25とトレンチ22との間に画定されている。第2の実施形態では、X方向に、・・・、第3領域R3、3つの第2領域R2、第1領域R1、3つの第2領域R2、第3領域R3、3つの第2領域R2、第1領域R1、・・・のように、第1領域R1と第3領域R3とが交互に配置され、第1領域R1と第3領域R3との間に3つの第2領域R2が配置されている。
【0052】
第2領域R2では、第1の主面10AにP型半導体層11が設けられている。P型半導体層11は、X方向で当該第2領域R2を画定する2つのトレンチ(トレンチ21、トレンチ22又はトレンチ25)に接している。
【0053】
トレンチ25の内壁にも絶縁膜30が設けられている。トレンチ25内には、絶縁膜30を介してエミッタトレンチ電極45が設けられている。エミッタトレンチ電極45は、例えば多結晶シリコンを用いて形成されている。エミッタトレンチ電極45は、エミッタトレンチ電極42と同様に、例えば半導体装置100の外周の近傍に引き出され、エミッタ電極(エミッタパッド)61に接続されている。
【0054】
他の構成は第1の実施形態と同様である。
【0055】
第2の実施形態によっても、第1の実施形態と同様の効果が得られる。また、IE効果がより向上し、飽和電圧Vce(sat)をより低減することができる。
【0056】
なお、隣り合うトレンチ21の対と、トレンチ22の対との間に配置されるトレンチ25の数は限定されず、トレンチ25の数は1本でもよく、3本以上であってもよい。
【0057】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態について説明する。第3の実施形態は、主として、第1領域R1、第2領域R2、第3領域R3の配置の点で第2の実施形態と相違している。図17は、第3の実施形態に係る半導体装置を示す断面図である。
【0058】
第3の実施形態に係る半導体装置300では、第1の主面10Aに、複数のゲート用のトレンチ21と、複数のエミッタ用のトレンチ22と、複数のエミッタ用のトレンチ25とに加えて、複数のゲート用のトレンチ26が形成されている。トレンチ26は、例えばY方向に延びる。第2の実施形態と同様に、トレンチ21の対と、トレンチ22の対とがX方向に交互に配置されている。また、隣り合うトレンチ21の対と、トレンチ22の対との間に、2本ずつトレンチ25が配置されている。更に、隣り合う2本のトレンチ25の間に1本のトレンチ26が配置されている。X方向で隣り合う2本のトレンチ21の間の距離と、X方向で隣り合う2本のトレンチ22の間の距離と、X方向で隣り合うトレンチ21とトレンチ25との間の距離と、X方向で隣り合うトレンチ25とトレンチ26との間の距離と、X方向で隣り合うトレンチ22とトレンチ25との間の距離とが等しい。つまり、トレンチ21とトレンチ22とトレンチ25とトレンチ26とを区別しない場合、第1の主面10Aには、複数のトレンチがX方向に等間隔でストライプ状に形成されている。第2の実施形態と同様に、X方向で隣り合う2本のトレンチ21の間に第1領域R1が画定され、X方向で隣り合う2本のトレンチ22の間に第3領域R3が画定されている。第2領域R2は、X方向で隣り合うトレンチ21とトレンチ25との間と、X方向で隣り合うトレンチ25とトレンチ26との間と、X方向で隣り合うトレンチ26とトレンチ22との間に画定されている。第3の実施形態では、X方向に、・・・、第3領域R3、4つの第2領域R2、第1領域R1、4つの第2領域R2、第3領域R3、4つの第2領域R2、第1領域R1、・・・のように、第1領域R1と第3領域R3とが交互に配置され、第1領域R1と第3領域R3との間に4つの第2領域R2が配置されている。
【0059】
第2領域R2では、第1の主面10AにP型半導体層11が設けられている。P型半導体層11は、X方向で当該第2領域R2を画定する2つのトレンチ(トレンチ21、トレンチ22、トレンチ25又はトレンチ26)に接している。
【0060】
トレンチ26の内壁にも絶縁膜30が設けられている。トレンチ26内には、絶縁膜30を介してゲートトレンチ電極46が設けられている。ゲートトレンチ電極46は、例えば多結晶シリコンを用いて形成されている。ゲートトレンチ電極46は、ゲートトレンチ電極41と同様に、例えば半導体装置100の外周の近傍に引き出され、図示しないゲート電極(ゲートパッド)に接続されている。
【0061】
他の構成は第2の実施形態と同様である。
【0062】
第3の実施形態によっても、第2の実施形態と同様の効果が得られる。また、IGBTの特性に影響するMOS構造におけるゲート容量の増加を避けながら入力容量を増加させることができる。これにより、ゲートノイズを低減できる。
【0063】
以上、好ましい実施の形態等について詳説したが、上述した実施の形態等に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施の形態等に種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0064】
10:半導体基板
10A、10B:主面
11、13、15、17、18、63:P型半導体層
12、14、16、62:N型半導体層
21、22、25、26:トレンチ
30、31:絶縁膜
41、46:ゲートトレンチ電極
42、45:エミッタトレンチ電極
50:層間絶縁膜
61:エミッタ電極
64:コレクタ電極
100、101、200、300:半導体装置
R1、R2、R3:領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17