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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-01
(45)【発行日】2024-10-09
(54)【発明の名称】給湯装置
(51)【国際特許分類】
   F23N 5/24 20060101AFI20241002BHJP
   F23N 5/02 20060101ALI20241002BHJP
   F24D 17/00 20220101ALI20241002BHJP
   F24H 1/14 20220101ALI20241002BHJP
   F24H 15/112 20220101ALI20241002BHJP
   F24H 15/215 20220101ALI20241002BHJP
   F24H 15/219 20220101ALI20241002BHJP
   F24H 15/365 20220101ALI20241002BHJP
   F24H 15/395 20220101ALI20241002BHJP
【FI】
F23N5/24 104
F23N5/02 350D
F24D17/00 P
F24H1/14 B
F24H15/112
F24H15/215
F24H15/219
F24H15/365
F24H15/395
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020212285
(22)【出願日】2020-12-22
(65)【公開番号】P2022098720
(43)【公開日】2022-07-04
【審査請求日】2023-11-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000004709
【氏名又は名称】株式会社ノーリツ
(74)【代理人】
【識別番号】100089004
【弁理士】
【氏名又は名称】岡村 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】山西 健太
(72)【発明者】
【氏名】▲浜▼上 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】岡田 英幸
(72)【発明者】
【氏名】早瀬 久貴
(72)【発明者】
【氏名】西村 和裕
【審査官】礒部 賢
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-233255(JP,A)
【文献】特開平10-160252(JP,A)
【文献】実開平01-172663(JP,U)
【文献】特開平05-196229(JP,A)
【文献】特開2004-044912(JP,A)
【文献】特開2013-002785(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24H 1/00 - 15/493
F23N 1/00 - 5/26
F24D 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
必要燃焼量に応じて燃焼させる領域が変更されるように複数の燃焼領域に区分された燃焼部と、前記燃焼部への燃料の供給流量を必要燃焼量に応じて調整する燃料供給部と、前記燃焼部に燃焼用空気を供給する燃焼ファンと、フィンアンドチューブ型の熱交換器を有する熱交換部と、前記熱交換部に湯水を供給する給水部と、前記熱交換部から湯水を出湯する出湯部と、前記給水部の給水温度を検知する給水温度検知手段と、前記出湯部の出湯温度を検知する出湯温度検知手段と、前記燃焼部の燃焼熱を利用して前記熱交換部で加熱した湯水を出湯する加熱運転を制御する制御部を備えた給湯装置において、
前記制御部は、予め定められた判定条件であって、前記給水温度検知手段の検知温度が判定基準温度以下であることが含まれる判定条件の下での前記加熱運転の熱効率に基づいて前記熱交換部の閉塞状態を判定する閉塞状態判定機能を備えたことを特徴とする給湯装置。
【請求項2】
前記判定条件には、判定基準数以上の前記燃焼領域で燃焼させることと、前記燃料供給部による燃料の供給流量の変動幅が判定基準範囲内であることが含まれることを特徴とする請求項1に記載の給湯装置。
【請求項3】
出湯された湯水を前記給水部に戻して循環させるための即湯循環ユニットが装備され、前記制御部は、循環させる湯水を加熱するための前記加熱運転において前記閉塞状態判定機能を実行することを特徴とする請求項1又は2に記載の給湯装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃焼式の給湯装置に関し、特に燃焼熱を利用して湯水を加熱するフィンアンドチューブ型の熱交換器の熱交換における不具合発生前に、その予兆を検知するように構成された給湯装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば特許文献1の給湯装置のように、算出したエネルギー効率と基準値との比較によって故障の初期症状(予兆)を検知する技術が知られている。故障の症状が悪化する前に部品交換、給湯装置買い替えなどの対応策を講じることができるので、給湯装置を使用できない不便な状態を回避することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-163871号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
燃焼式の給湯装置においても上記特許文献1のように、燃焼熱を利用して湯水を加熱する加熱運転の熱効率と基準値との比較によって、燃焼熱を利用して湯水を加熱する熱交換部の閉塞故障、閉塞予兆を検知することが検討されている。熱交換部の閉塞状態(煤、酸化生成物の付着、スケールの付着による熱交換能力の低下)に応じた熱効率になるので、熱交換部の閉塞故障、閉塞予兆を検知することが可能になる。
【0005】
熱効率は、投入した熱量に対する湯水の加熱に使用された熱量の割合なので、加熱運転中に算出することができる。しかし、熱効率は、熱交換部の閉塞状態だけでなく、入水温度、燃焼量に応じて変動する。また、加熱運転開始直後は出湯温度を調整するために燃焼量が変動して安定しない。それ故、熱交換部の閉塞故障、閉塞予兆を誤検知する虞がある。
【0006】
本発明の目的は、熱交換部の閉塞故障、閉塞予兆の誤検知を防ぐことができる給湯装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明の給湯装置は、必要燃焼量に応じて燃焼させる領域が変更されるように複数の燃焼領域に区分された燃焼部と、前記燃焼部への燃料の供給流量を必要燃焼量に応じて調整する燃料供給部と、前記燃焼部に燃焼用空気を供給する燃焼ファンと、フィンアンドチューブ型の熱交換器を有する熱交換部と、前記熱交換部に湯水を供給する給水部と、前記熱交換部から湯水を出湯する出湯部と、前記給水部の給水温度を検知する給水温度検知手段と、前記出湯部の出湯温度を検知する出湯温度検知手段と、前記燃焼部の燃焼熱を利用して前記熱交換部で加熱した湯水を出湯する加熱運転を制御する制御部を備えた給湯装置において、前記制御部は、予め定められた判定条件であって、前記給水温度検知手段の検知温度が判定基準温度以下であることが含まれる判定条件の下での前記加熱運転の熱効率に基づいて前記熱交換部の閉塞状態を判定する閉塞状態判定機能を備えたことを特徴としている。
【0008】
上記構成によれば、予め定められた判定条件の下での加熱運転時に、この加熱運転の熱効率に基づいて熱交換部の閉塞状態を判定する。従って、閉塞状態判定機能の実行を、判定条件を満たす加熱運転時に限定することによって、熱効率の変動要因を除外することができる。それ故、一定の判定条件の下で算出した熱効率に基づいて熱交換部の閉塞状態を判定することができるので、熱効率の変動要因に起因する熱交換部の閉塞故障、閉塞予兆の誤検知を防ぐことができる。
【0009】
また、判定条件には、給水温度検知手段の検知温度が判定基準温度以下であることが含まれているので、加熱前の給水温度が判定基準温度よりも高い場合を除外することができる。一般的に、給水温度が高い程、必要燃焼量が減少して熱交換部の熱交換能力が低下するが、この給水温度による熱効率の変動要因を除外することができるので、熱効率の変動要因に起因する閉塞故障、閉塞予兆の誤検知を防ぐことができる。
【0010】
請求項の発明の給湯装置は、請求項の発明において、前記判定条件には、判定基準数以上の前記燃焼領域で燃焼させることと、前記燃料供給部による燃料の供給流量の変動幅が判定基準範囲内であることが含まれることを特徴としている。
上記構成によれば、燃焼させる燃焼領域数が判定基準数未満の燃焼量が少ない場合と、燃料の供給流量の変動に応じて燃焼量が大きく変動する場合を除外することができる。燃焼量が少ない場合に熱交換部の熱交換能力が低下し、燃焼量の変動に応じて熱効率が変動するので、これらの熱効率の変動要因を除外することにより、熱効率の変動要因に起因する閉塞故障、閉塞予兆の誤検知を防ぐことができる。
【0011】
請求項の発明の給湯装置は、請求項1又は2の発明において、出湯された湯水を前記給水部に戻して循環させるための即湯循環ユニットが装備され、前記制御部は、循環させる湯水を加熱するための前記加熱運転において前記閉塞状態判定機能を実行することを特徴としている。
上記構成によれば、即湯循環ユニットによって循環させる湯水の加熱運転においても閉塞状態判定機能を実行する。この加熱運転においても、一定の判定条件の下で算出した熱効率に基づいて熱交換部の閉塞状態を判定することができるので、熱効率の変動要因に起因する熱交換部の閉塞故障、閉塞予兆の誤検知を防ぐことができる。特に即湯循環ユニットが装備され、給水温度が高いため燃焼量が少ない加熱運転が非常に多く行われる場合に、熱交換部の閉塞予兆、閉塞故障の誤検知を効果的に防ぐことができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の給湯装置によれば、熱効率の変動要因に起因する閉塞故障、閉塞予兆の誤検知を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施例1に係る燃焼式の給湯装置の説明図である。
図2】給湯装置の制御部の構成と通信経路の説明図である。
図3】給湯装置の加熱運転の工程説明図である。
図4】実施例に係る熱交換部故障予兆検知制御のフローチャートである。
図5】本発明の実施例2に係る即湯循環ユニットを装備した燃焼式の給湯装置の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態について実施例に基づいて説明する。
【実施例1】
【0015】
燃焼式の給湯装置1は、通常、屋外に設置される。給湯装置1は、図1に示すように、燃焼部2と熱交換部3と給水部4と出湯部5を有し、燃焼部2で発生した燃焼熱を利用して熱交換部3において給水部4から供給される湯水を加熱して出湯部5に出湯する加熱運転を行うように構成されている。燃焼部2には、燃料ガス(天然ガス又はプロパンガス)を供給するための燃料供給部6が接続されている。
【0016】
燃焼部2の近傍には、この燃焼部2に燃焼用空気を供給すると共に、燃焼によって発生した燃焼熱の媒体である燃焼ガスを熱交換部3に送り込んで排気口7から外部に排気させるために、燃焼ファン8が装備されている。燃焼部2は、燃料供給部6から供給される燃料ガスと燃焼用空気を混合して燃焼させる複数の燃焼領域として、例えば第1~第4燃焼領域2a~2dに区分され、必要熱量を発生させるための必要燃焼量に応じて燃焼させる領域が変更される。
【0017】
燃料供給部6は、第1~第4燃焼領域2a~2dに対応する第1~第4ガス電磁弁6a~6dと、燃焼部2に供給する燃料流量を調整する燃料流量調整弁6eを有する。燃料供給部6は、燃料流量を調整すると共に、これら第1~第4燃焼領域2a~2dに対して燃料ガスの供給/停止を個別に切り替え可能に構成されている。
【0018】
熱交換部3は、フィンアンドチューブ型の第1熱交換器3aと、複数の湯水通路で構成された第2熱交換器3bを有する。第1熱交換器3aは、燃焼直後の高温の燃焼ガスの顕熱を回収して湯水を加熱する。第2熱交換器3bは、顕熱が回収されて温度が下がった燃焼ガス(燃焼排気)の潜熱を回収して上水を加熱する。
【0019】
この第2熱交換器3bでは、燃焼ガスに含まれる水分が凝縮して凝縮水が生じる。この凝縮水は、燃焼ガスの成分を含んで強い酸性になっている。それ故、そのまま排水することは不適切なので、中和剤として例えば炭酸カルシウム粒が収容された中和槽9aに導入され、中和されてから排水される。第2熱交換器3bで潜熱が回収されて温度が下がった燃焼ガスは、排気口7から外部に排気される。
【0020】
中和槽9aには、第2熱交換器3bの下側に配設されたドレンパン3cに落下した凝縮水を中和槽9aに導く導入通路9bと、中和した凝縮水を給湯装置1の外部に排水する排水通路9cが接続されて中和部9が形成されている。この中和槽9aの上端部には、凝縮水の水位(所定水位)を検知する水位検知手段として1対の電極棒9dが装備されている。1対の電極棒9dの間に電圧を印加しておき、所定水位になって凝縮水に触れた1対の電極棒9dの間に凝縮水を介して電流が流れることにより、所定水位が検知される。
【0021】
給水部4は、上水源から供給される上水を第2熱交換器3bに供給する給水通路4aと、給水通路4aから分岐され且つ流量調整弁10を備えた給水分岐通路4bを有する。第2熱交換器3bで加熱された湯水は、第1熱交換器3aに導入されてさらに高温に加熱される。第1熱交換器3aで加熱された湯水は出湯通路5aに供給される。この出湯通路5aに給水分岐通路4bが接続されて形成された出湯部5において、加熱された湯水と上水が混合されて温度調整され、給湯通路11の給湯先の例えば給湯栓11aに給湯される。
【0022】
燃焼部2の第1燃焼領域2aは、加熱運転を開始したときに点火して最初に燃焼させる点火領域である。この第1燃焼領域2aに対応する位置に、放電によって火花を発生させる点火装置14と、点火確認のために第1燃焼領域2aの火炎を検知するための第1フレームロッド15aが配設されている。
【0023】
第1燃焼領域2aに隣接させた第2燃焼領域2bは、燃焼量を増加させて燃焼熱の発生を増加させるために、第1燃焼領域2aから最初に燃焼領域を拡大させる火移り領域である。この第2燃焼領域2bに対応する位置に、第2燃焼領域2bの火炎を検知するための第2フレームロッド15bが配設されている。第3、第4燃焼領域2c,2dにも燃焼領域を拡大させることによって、燃焼量を増加させることができる。尚、第3、第4燃焼領域2c,2dの火炎を検知するために、第3、第4燃焼領域2c,2dに対応するフレームロッドが配設されていてもよい。
【0024】
給水通路4aには、熱交換部3に供給される上水の給水流量を検知する給水流量センサ4cと、給水温度を検知する給水温度センサ4d(給水温度検知手段)が配設されている。出湯通路5aには熱交換部3で加熱された湯水の出湯温度を検知する出湯温度センサ5b(出湯温度検知手段)が配設されている。この出湯通路5aの給水分岐通路4bとの接続部よりも下流側には、上水と混合されて温度が調整された湯水の給湯温度を検知するための給湯温度センサ5cが配設されている。
【0025】
給湯装置1は、給水流量と給水温度と出湯温度に基づいて給湯設定温度の給湯を行うために、加熱運転を制御する制御部16を備えている。給湯設定温度は、制御部16に接続された操作端末17の操作によって設定される。加熱運転において、制御部16は、例えば給湯設定温度と給水流量と給水温度に基づいて必要な燃焼量(必要熱量)を算出する。そして制御部16は、必要熱量を発生させるために、燃焼部2の燃焼させる燃焼領域と、燃焼ファン8の目標回転数と、燃料供給部6の燃料流量を設定する。また、制御部16は、給湯温度が給湯設定温度に近づくように流量調整弁10の開度を調整して、上水と加熱された湯水の混合比率を調整する。
【0026】
図2に示すように、制御部16は、各種制御プログラムを実行する演算部16aと、各種制御プログラム、制御パラメータ等を記憶しておく記憶部16bと、通信部16cを有する。演算部16aは、給湯装置1の内蔵機器及び操作端末17と通信する通信部16cを介して流量調整弁10及び燃料供給部6の弁類と、燃焼ファン8を制御すると共に、給水温度センサ4d等のセンサ類の検知信号、操作端末17の操作内容を受信する。
【0027】
操作端末17は、例えばホームネットワーク構築機能を備えた通信ゲートウェイ18を介して外部の通信網19(インターネット)に接続されている。この通信網19には、給湯装置1を含めて現在設置されている給湯装置及び他の機器に関する情報を管理するために、給湯装置1の施工、保守を行うサービスショップ又は製造メーカが設置した管理サーバ20が接続されている。これにより、制御部16は管理サーバ20と通信が可能となっている。尚、通信部16c又は操作端末17が通信網19に直接接続されていてもよい。
【0028】
給湯使用開始によって、給水流量センサ4cにより検知される給水流量が所定の最低流量以上になると、加熱運転が開始される。図3に示すように、加熱運転は、プリパージ工程と点火工程と燃焼工程とポストパージ工程に分けられている。プリパージ工程では、燃焼ファン8の目標回転数が掃気回転数(例えば3000rpm)に設定され、燃焼ファン8が掃気回転数で所定のプリパージ時間(例えば5秒間)駆動される。これにより、燃焼部2と熱交換部3に滞留している空気が排気口7から排気されると共に、停止していた燃焼ファン8の回転数が掃気回転数程度まで増加する。
【0029】
次に点火工程に移行して、第1燃焼領域2a(点火領域)に対応する第1ガス電磁弁12aが開かれ、目標回転数が点火回転数(例えば2500rpm)に設定され、燃焼ファン8が点火回転数で駆動される。そして、第1燃焼領域2aに点火するために点火装置14が駆動される。第1燃焼領域2aの火炎が第1フレームロッド15aによって検知(点火確認)されると、燃焼工程に移行する。
【0030】
次に、燃焼工程において、算出した必要熱量を供給可能なように、燃焼部2の燃焼させる燃焼領域と、燃焼ファン8の目標回転数と、燃料供給部6の燃料流量が設定される。そして、燃焼ファン8が目標回転数で駆動されると共に、燃焼させる燃焼領域に対応する燃料ガス電磁弁が開かれて設定した燃料流量で燃料が供給され、必要熱量を発生させて給湯設定温度の給湯が行われる。
【0031】
給湯使用終了により給水流量が所定の最低流量未満になると、ポストパージ工程に移行する。ポストパージ工程は、開いているガス電磁弁が全て閉じられて燃焼部2の燃焼が停止され、目標回転数が掃気回転数に設定され、燃焼ファン8が掃気回転数でポストパージ時間(例えば10秒)駆動される。これにより、燃焼ガスが燃焼部2と熱交換部3に残留しないように排気される。最後に燃焼ファン8が停止されて、加熱運転が終了する。
【0032】
給湯装置1の設置時には、給湯装置1が正常に作動することを確認するために試運転を行う。制御部16は、この試運転時の加熱運転データを設置当初の初期データとして記憶部16b又は管理サーバ20の記憶領域に記憶しておく。
【0033】
加熱運転において、熱交換部3の特に第1熱交換器3aでは、外側(燃焼ガスの通路)に例えば煤や酸化生成物が少しずつ付着し、内側(湯水の通路)には湯水に含まれているミネラルが徐々に付着する。そのため、燃焼ガスと湯水の間の熱交換が阻害され、加熱運転の熱効率が徐々に低下する。
【0034】
例えば、熱効率が予め設定された閉塞故障基準熱効率(例えば50%)まで低下した場合に、熱交換部3の閉塞故障が発生したと判定して燃焼を禁止し、その旨をユーザと、管理サーバ20を介して例えばサービスショップに報知する。この故障発生を知ったユーザ又はサービスショップは、点検、修理を手配する。
【0035】
給湯装置1のユーザにとって、燃焼の禁止によって給湯装置1が突然使用できなくなってしまうので、好ましくない。そこで、制御部16は熱交換部3の閉塞故障と判定する前に、熱交換部3の閉塞故障の予兆を検知した場合に、管理サーバ20を介して熱交換部3の閉塞故障の予兆があることをサービスショップに報知して点検を促す。熱交換部3の閉塞故障の予兆検知の判定は、予め設定された一定の判定条件の下での加熱運転の熱効率に基づいて行われる。
【0036】
熱交換部3の閉塞故障、閉塞予兆の検知には、誤検知を防ぐことができるように、熱交換部3の状態を反映する正確な熱効率を算出することが要求されている。それ故、判定条件には、燃料流量の変動幅が判定基準範囲内であること、燃焼部2の燃焼中の燃焼領域数が判定基準数以上であること、加熱前の給水温度が判定基準温度以下であることが含まれている。この熱交換部3の閉塞故障、閉塞予兆を検知する閉塞状態判定機能について、制御部16による図4の熱交換部閉塞故障予兆検知制御のフローチャートに基づいて説明する。図中のSi(i=1,2,・・・)はステップを表す。
【0037】
加熱運転が開始されると、プリパージ工程で滞留していた空気を排気して新鮮な空気を導入し、次の点火工程で点火装置14によって燃焼部2に点火した後、燃焼工程が開始されると共に熱交換部閉塞故障予兆検知制御が開始される。
【0038】
S1において、燃焼工程開始から所定時間経過するまで各種流量、各種温度のデータを取得しながら待機してS2に進む。加熱運転開始直後は出湯温度を調整するために燃焼量が変動するので、燃焼量が安定するまで待機するステップである。所定時間は実験等に基づいて予め設定され、例えば20秒である。取得するデータには、例えば給水流量、燃料流量、給水温度、出湯温度が含まれ、記憶部16bに記憶される。
【0039】
次にS2において、熱効率算出期間内の熱効率を算出するためのデータを取得してS3に進む。このとき取得するデータは、熱効率算出期間として例えばS1の所定時間の最後の5秒間の給水流量、燃料流量、給水温度、出湯温度、燃料流量の変動幅、燃焼中の燃焼領域数である。
【0040】
S3において、燃料流量の変動幅は判定基準範囲内か否か判定する。正確な熱効率算出のために燃焼量が安定していることが必要なので、燃料流量が安定しているか否か判定するステップである。S3の判定がNoの場合は、判定条件を満たしていない加熱運転なのでS1に戻る。S3の判定がYesの場合はS4に進む。
【0041】
S4において、燃焼部2の燃焼中の燃焼領域数が判定基準数以上か否か判定する。燃焼中の燃焼領域数は燃焼量が小さい程少数になり、燃焼中の燃焼領域数が少ない場合に熱効率が低下する傾向があるので、この燃焼中の燃焼領域数が少ない場合(例えば2以下の場合)を除外するためのステップである。S4の判定がNoの場合は、判定条件を満たしていない加熱運転なのでS1に戻る。S4の判定がYesの場合はS5に進む。
【0042】
S5において、給水温度センサ4dの検知温度(給水温度)が判定基準温度以下か否か判定する。給水温度が高い程、上昇させる温度(加熱前後の温度差)が小さくなって熱効率が低下する傾向があるので、この給水温度が判定基準温度(例えば25℃)よりも高い場合を除外するためのステップである。S5の判定がNoの場合は、判定条件を満たしていない加熱運転であり、給水温度がこの加熱運転中に変動する可能性は低い。それ故、熱交換部3の閉塞故障、閉塞予兆の検知の判定をせずに、この熱交換部閉塞故障予兆検知制御を終了する。S5の判定がYesの場合はS6に進む。
【0043】
S6において、出湯温度、給水温度、給水流量、燃料流量に基づいて熱効率を算出してS7に進む。熱効率は、燃料流量に基づいて算出される投入熱量に対して、出湯温度と給水温度の差温(上昇させた温度)に給水流量を乗じて算出される加熱に使用された熱量の割合で計算される。例えば熱交換部3として第1、第2熱交換器3a,3bを有する給湯装置1では、給湯装置1の設置当初の熱効率が95%程度になる。
【0044】
S7において、S6で算出した熱効率が閉塞予兆基準熱効率未満か否か判定する。閉塞予兆基準熱効率は、熱交換部3の閉塞故障となる閉塞故障基準熱効率よりも高い熱効率(例えば60%)に設定され、熱交換部3の閉塞故障の発生前に、対応策を講じることができるようにしている。S7の判定がNoの場合は、閉塞予兆が検知されなかったとして、加熱運転を継続したまま、この熱交換部閉塞故障予兆検知制御を終了する。S7の判定がYesの場合はS8に進む。
【0045】
S8において、S6で算出した熱効率が閉塞故障基準熱効率未満か否か判定する。S8の判定がYesの場合はS9に進み、S9において熱交換部3の閉塞故障を検知したことを報知して、加熱運転を終了させると共に熱交換部閉塞故障予兆検知制御を終了する。一方、S8の判定がNoの場合にはS10に進み、S10において熱交換部3の閉塞予兆を検知したことを報知して、加熱運転を継続したまま熱交換部閉塞故障予兆検知制御を終了する。
【0046】
閉塞故障の検知及び閉塞予兆の検知は、管理サーバ20を介して例えばサービスショップに報知され、点検、修理等の対応を促す。尚、熱交換部閉塞故障予兆検知制御が終了する前に加熱運転が終了した場合には、その時点で熱交換部閉塞故障予兆検知制御を終了する。
【実施例2】
【0047】
上記実施例1を部分的に変更した給湯装置1について説明する。実施例1と同等の部分には実施例1と同じ符号を付して説明を省略する。
図5に示すように、給湯装置1には、給湯栓11aを開くとすぐに加熱された湯水が給湯されるように、即湯循環ユニット21が装備されている。即湯循環ユニット21は、循環ポンプ22と、逆止弁23と、エアセパレータ24と、膨張タンク25を有する。循環ポンプ22は、出湯通路5aに接続された給湯通路11の湯水を給水部4の給水通路4aに供給する(戻す)ことによって、湯水を循環させる。エアセパレータ24は、循環する湯水に混ざったエアを分離する。膨張タンク25は、循環する湯水の熱膨張を吸収する。
【0048】
例えば、給湯していないときに、制御部16が、循環ポンプ22を駆動して給湯装置1と即湯循環ユニット21の間で湯水を循環させることによって、給水流量が所定の最低流量以上になると加熱運転が開始される。この循環する湯水は、加熱運転によって燃焼部2の燃焼熱を利用して熱交換部3で加熱されて給湯通路11に供給され、給湯通路11の湯水を一定温度に維持する。
【0049】
この循環する湯水を加熱する加熱運転においても、実施例1の給湯する場合と同様に閉塞状態判定機能が実行される。例えば、旅行等で長時間不在になるため給湯機会がない場合に即湯循環ユニット21の作動をOFFにしておき、帰宅後に即湯循環ユニット21の作動をONにしたときに、湯水を循環させて加熱運転が行われる。この場合、循環開始時の湯水の温度は高くないので、給湯栓11aからの給湯と同じように、加熱運転の熱効率に基づいて熱交換部3の閉塞予兆、閉塞故障の検知を行うことができる。
【0050】
一方、即湯循環ユニット21が連続して又は間欠的に湯水を循環させて、給湯装置1が加熱運転を行っている場合には、給水通路4aの湯水の温度(給水温度)が高いため、燃焼量が少なくなって熱効率が低下する。この熱効率には熱交換部3の実際の閉塞状態が正確には反映されないので、熱交換部3の閉塞予兆、閉塞故障を誤検知する虞がある。
【0051】
しかし、予め設定された一定の判定条件として、図4のS3の燃料流量変動幅とS4の燃焼中の燃焼領域数とS5の給水温度について夫々判定基準を満たした場合の加熱運転の熱効率に基づいて、閉塞予兆、閉塞故障の検知を行うので、誤検知を回避することができる。特に即湯循環ユニット21が装備され、給水温度が高いため燃焼量が少ない加熱運転の実行が非常に多い場合に、熱効率に基づく熱交換部3の閉塞予兆、閉塞故障の誤検知を効果的に防ぐことができる。
【0052】
上記給湯装置1の作用、効果について説明する。
給湯装置1の制御部16は、予め定められた判定条件の下での加熱運転時に、この加熱運転の熱効率に基づいて熱交換部3の閉塞状態を判定する。従って、閉塞状態判定機能の実行を、判定条件を満たす加熱運転時に限定することによって、熱効率の変動要因を除外することができる。それ故、一定の判定条件の下で算出した熱効率に基づいて熱交換部3の閉塞状態を判定することができるので、熱効率の変動要因に起因する熱交換部3の閉塞故障、閉塞予兆の誤検知を防ぐことができる。
【0053】
一般的に、給水温度が高い程、必要燃焼量が減少して熱交換部3の熱交換能力が低下する。そして、加熱前の給水温度が判定基準温度よりも高い場合を除外することにより、給水温度による熱効率の変動要因を除外することができるので、熱効率の変動要因に起因する閉塞故障、閉塞予兆の誤検知を防ぐことができる。
【0054】
一般的に、燃焼量が少ない場合に熱交換部3の熱交換能力が低下し、燃焼量の変動に応じて熱効率が変動する。燃焼させる燃焼領域数が判定基準数未満の燃焼量が少ない場合と、燃料の供給流量の変動に応じて燃焼量が大きく変動する場合を除外することにより、熱効率の変動要因を除外することができるので、熱効率の変動要因に起因する閉塞故障、閉塞予兆の誤検知を防ぐことができる。
【0055】
制御部16は、即湯循環ユニット21によって循環させる湯水の加熱運転においても、閉塞状態判定機能を実行する。この加熱運転においても、一定の判定条件の下で算出した熱効率に基づいて熱交換部3の閉塞状態を判定することができるので、熱効率の変動要因に起因する熱交換部3の閉塞故障、閉塞予兆の誤検知を防ぐことができる。特に即湯循環ユニット21が装備され、給水温度が高いため燃焼量が少ない加熱運転が非常に多く行われる場合に、熱交換部3の閉塞予兆、閉塞故障の誤検知を効果的に防ぐことができる。その上、管理サーバ20への故障予兆の誤検知情報の送信を防いで通信量を低減することができる。
【0056】
閉塞故障基準熱効率を試運転時の初期データの所定割合(例えば初期データの50%)とし、閉塞予兆基準熱効率を試運転時の初期データの所定割合(例えば初期データの60%)として、初期データに基づいて熱交換部3の閉塞故障、閉塞予兆を検知するようにしてもよい。その他、当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱することなく、上記実施形態に種々の変更を付加した形態で実施可能であり、本発明はそのような変更形態を包含するものである。
【符号の説明】
【0057】
1 :給湯装置
2 :燃焼部
2a :第1燃焼領域(点火領域)
2b :第2燃焼領域(火移り領域)
2c :第3燃焼領域
2d :第4燃焼領域
3 :熱交換部
3a :第1熱交換器
3b :第2熱交換器
3c :ドレンパン
4 :給水部
4a :給水通路
4b :給水分岐通路
4c :給水流量センサ
4d :給水温度センサ(給水温度検知手段)
5 :出湯部
5a :出湯通路
5b :出湯温度センサ(出湯温度検知手段)
5c :給湯温度センサ
6 :燃料供給部
6a~6d :第1~第4ガス電磁弁
6e :燃料流量調整弁
7 :排気口
8 :燃焼ファン
9 :中和部
9a :中和槽
9b :導入通路
9c :排水通路
10 :流量調整弁
11 :給湯通路
11a :給湯栓
14 :点火装置
15a :第1フレームロッド
15b :第2フレームロッド
16 :制御部
16a :演算部
16b :記憶部
16c :通信部
17 :操作端末
18 :通信ゲートウェイ
19 :通信網
20 :管理サーバ
21 :即湯循環ユニット
22 :循環ポンプ
23 :逆止弁
24 :エアセパレータ
25 :膨張タンク
図1
図2
図3
図4
図5