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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-01
(45)【発行日】2024-10-09
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20241002BHJP
【FI】
H02M7/48 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021141344
(22)【出願日】2021-08-31
(65)【公開番号】P2023034885
(43)【公開日】2023-03-13
【審査請求日】2023-01-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】山根 千英
(72)【発明者】
【氏名】小栗 昭彦
(72)【発明者】
【氏名】藤原 正英
(72)【発明者】
【氏名】大下 和広
(72)【発明者】
【氏名】万本 和輝
【審査官】佐藤 匡
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-041415(JP,A)
【文献】特開2012-213264(JP,A)
【文献】特開2016-111747(JP,A)
【文献】特開2011-228456(JP,A)
【文献】特開2011-124310(JP,A)
【文献】特開2018-137411(JP,A)
【文献】特開2020-072142(JP,A)
【文献】特開2005-340573(JP,A)
【文献】特開2011-198519(JP,A)
【文献】特開昭63-062258(JP,A)
【文献】特開平07-045920(JP,A)
【文献】特開平09-053032(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
H01F 30/10
B23K 9/073
H01B 1/00,1/02
H05K 3/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パワー半導体を有する電力変換回路(110,130)と、
コア(201)と巻線(202)とを有するリアクトル(121)と、
基板(71)と、
を備え、
前記電力変換回路と前記リアクトルとが同一の前記基板に実装されており、
前記基板は、基材と、前記基材に接合されている銅箔とを有し、
前記基材は、ガラスエポキシ又はガラスコンポジットであり、
前記巻線のうち、前記コアに巻きつけられる線(202a)は、20℃における電気抵抗率(Ω・m)が銅よりも高い物質から成る線であり、アルミニウム線である、
電力変換装置(100)。
【請求項2】
前記リアクトルは、さらに、前記電力変換回路に接続される接続部を有し、
前記接続部は、銅から成る、
請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記リアクトルは、さらに、前記電力変換回路に接続される接続部(203)を有し、
前記接続部は、めっき付きのアルミニウムから成る、
請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記リアクトルのインダクタンスは、定格電流時に1mH以下である、
請求項1から3のいずれかに記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記リアクトルには、10A以上の電流が流れる、
請求項1から4のいずれかに記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記リアクトルには、100A以下の電流が流れる、
請求項5に記載の電力変換装置。
【請求項7】
前記基板は、基材と、前記基材に接合されている銅箔とを有し、
前記銅箔の厚さが、30μm以上、75μm以下である、
請求項1から6のいずれかに記載の電力変換装置。
【請求項8】
電源電圧が、単相又は3相の、200V以上、240V以下である、
請求項1から7のいずれかに記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1(特開2018-148629号公報)に、電力変換装置の構成部品であるコンデンサとリアクトルとを同一の基板に実装する発明が示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、電力変換回路とリアクトルとを同一の基板に実装すると、電源品質が悪い場合、あるいは、スイッチング速度を高速化する場合、リアクトルの発熱が大きくなってしまう。リアクトルの発熱量が大きくなると、耐熱性能が高い基板を使わなければならなくなるが、それでは電力変換装置の製造コストが上がる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
第1観点の電力変換装置は、電力変換回路と、リアクトルと、基板とを備えている。電力変換回路は、パワー半導体を有する。リアクトルは、コアと巻線とを有する。電力変換回路とリアクトルとは、同一の基板に実装されている。リアクトルの巻線のうち、コアに巻きつけられる線は、20℃における電気抵抗率(Ω・m)が銅よりも高い物質から成る線である。
【0005】
ここでは、電力変換装置において従来から一般的に用いられているリアクトルに代えて、発熱量が抑えられるリアクトルを採用している。具体的には、20℃における電気抵抗率が銅よりも高い物質から成る線が、巻線のうち少なくともコアに巻きつけられる線として使われているリアクトルが、第1観点の電力変換装置において採用されている。この電力変換装置によれば、リアクトルの発熱量が小さく抑えられるため、耐熱性能が良い高価な基板を使う必要がなくなり、電力変換装置の製造コストを抑えることができる。
【0006】
第2観点の電力変換装置は、第1観点の電力変換装置であって、リアクトルの巻線のうちコアに巻きつけられる線は、アルミニウム線である。
【0007】
ここでは、20℃における電気抵抗率(Ω・m)が銅線の1.5倍以上であるアルミニウム線を、リアクトルの巻線のうち少なくともコアに巻きつけられる線として使用している。このようなリアクトルを採用しているため、この電力変換装置では、リアクトルの発熱量が小さく抑えられている。
【0008】
第3観点の電力変換装置は、第1観点又は第2観点の電力変換装置であって、リアクトルは、さらに、電力変換回路に接続される接続部を有する。接続部は、銅から成る。
【0009】
ここでは、リアクトルの接続部が銅から成るため、従来の電力変換装置と同様に、ハンダによって容易にリアクトルを電力変換回路に接続することができる。
【0010】
第4観点の電力変換装置は、第1観点又は第2観点の電力変換装置であって、リアクトルは、さらに、電力変換回路に接続される接続部を有する。接続部は、めっき付きのアルミニウムから成る。
【0011】
ここでは、リアクトルの接続部がめっき付きのアルミニウムであるので、めっき部分をハンダによって容易に電力変換回路に接続することができる。例えば、アルミニウム線に銅メッキを施した部分をリアクトルの接続部とすれば、リアクトルを容易に電力変換回路に接続することができる。
【0012】
第5観点の電力変換装置は、第1観点から第4観点のいずれかの電力変換装置であって、リアクトルのインダクタンスは、定格電流時に1mH以下である。
【0013】
第6観点の電力変換装置は、第1観点から第5観点のいずれかの電力変換装置であって、リアクトルには、10A以上の電流が流れる。
【0014】
第7観点の電力変換装置は、第6観点の電力変換装置であって、リアクトルには、100A以下の電流が流れる。
【0015】
第8観点の電力変換装置は、第1観点から第7観点のいずれかの電力変換装置であって、基板は、基材と、その基材に接合されている銅箔とを有する。銅箔の厚さは、30μm以上、75μm以下である。
【0016】
第9観点の電力変換装置は、第1観点から第8観点のいずれかの電力変換装置であって、基板は、基材と、その基材に接合されている銅箔とを有する。基材は、ガラスエポキシ又はガラスコンポジットである。
【0017】
第10観点の電力変換装置は、第1観点から第9観点のいずれかの電力変換装置であって、電源電圧が、単相又は3相の、200V以上、240V以下である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】電力変換装置を含む空気調和装置の概略構成図である。
図2】空気調和装置の室外ユニットの横断面図である。
図3】室外ユニットの送風機室側の前板及び機械室側の前板を取り外した状態を示す前面図である。
図4】電力変換装置の電気回路の概略構成図である。
図5】プリント基板における主要部品の概略配置図である。
図6】リアクトルの側面図である。
図7】リアクトルの上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(1)空気調和装置の全体構成
図1は、冷凍サイクルを行う空気調和装置1の概略構成図である。
【0020】
空気調和装置1は、蒸気圧縮式の冷凍サイクルを行うことによって、建物等の室内の冷房及び暖房を行う装置である。空気調和装置1は、主として、室外ユニット2と、室内ユニット4とが接続されることによって構成されている。ここで、室外ユニット2と室内ユニット4とは、液冷媒連絡管5及びガス冷媒連絡管6を介して接続されている。
【0021】
(1-1)室内ユニット
室内ユニット4は、室内に設置されており、冷媒回路10の一部を構成している。室内ユニット4は、主として、室内熱交換器41を有している。
【0022】
室内熱交換器41は、冷房運転時には冷媒の蒸発器として機能して室内空気を冷却し、暖房運転時には冷媒の放熱器として機能して室内空気を加熱する熱交換器である。室内熱交換器41の液側は液冷媒連絡管5に接続されており、室内熱交換器41のガス側はガス冷媒連絡管6に接続されている。
【0023】
室内ユニット4は、室内ユニット4内に室内空気を吸入して、室内熱交換器41において冷媒と熱交換させた後に、供給空気として室内に供給するための室内ファン42を有している。すなわち、室内ユニット4は、室内熱交換器41を流れる冷媒の加熱源又は冷却源としての室内空気を室内熱交換器41に供給するファンとして、室内ファン42を有している。ここでは、室内ファン42として、室内ファン用モータ42aによって駆動される遠心ファンや多翼ファン等が使用されている。
【0024】
室内ユニット4は、室内ユニット4を構成する各部の動作を制御する室内側制御部40を有している。そして、室内側制御部40は、室内ユニット4の制御を行うために設けられたマイクロコンピュータやメモリ等を有しており、リモコン(図示せず)との間で制御信号等のやりとりを行ったり、室外ユニット2との間で制御信号等のやりとりを行うことができるようになっている。
【0025】
(1-2)室外ユニット
室外ユニット2は、室外に設置されており、冷媒回路10の一部を構成している。室外ユニット2は、主として、圧縮機21と、四路切換弁22と、室外熱交換器23と、冷媒ジャケット29と、膨張弁26と、液側閉鎖弁27と、ガス側閉鎖弁28とを有している。
【0026】
圧縮機21は、冷凍サイクルの低圧の冷媒を高圧になるまで圧縮する機器である。圧縮機21は、後述の電力変換装置100を通じて電源供給される圧縮機用のモータ21aによって、ロータリ式やスクロール式等の容積式の圧縮要素(図示せず)を回転駆動する密閉式構造となっている。圧縮機21は、吸入側に吸入管31が接続されており、吐出側に吐出管32が接続されている。吸入管31は、圧縮機21の吸入側と四路切換弁22とを接続する冷媒管である。吐出管32は、圧縮機21の吐出側と四路切換弁22とを接続する冷媒管である。
【0027】
四路切換弁22は、冷媒回路10における冷媒の流れの方向を切り換えるための切換弁である。四路切換弁22は、冷房運転時には、室外熱交換器23を圧縮機21において圧縮された冷媒の放熱器として機能させ、かつ、室内熱交換器41を室外熱交換器23において放熱した冷媒の蒸発器として機能させる冷房サイクル状態への切り換えを行う。四路切換弁22は、暖房運転時には、室内熱交換器41を圧縮機21において圧縮された冷媒の放熱器として機能させ、かつ、室外熱交換器23を室内熱交換器41において放熱した冷媒の蒸発器として機能させる暖房サイクル状態への切り換えを行う。
【0028】
室外熱交換器23は、冷房運転時には室外空気を冷却源とする冷媒の放熱器として機能し、暖房運転時には室外空気を加熱源とする冷媒の蒸発器として機能する熱交換器である。
【0029】
膨張弁26は、冷房運転時には、室外熱交換器23において放熱した冷凍サイクルの高圧の冷媒を冷凍サイクルの低圧まで減圧する弁である。また、膨張弁26は、暖房運転時には、室内熱交換器41において放熱した冷凍サイクルの高圧の冷媒を冷凍サイクルの低圧まで減圧する弁である。
【0030】
冷媒ジャケット29は、冷媒回路10を循環する冷媒によって、後述の電装品ユニット70を構成する電装品のうち発熱が大きく冷却が必要な被冷却素子(パワー半導体であるダイオードD1~D6やスイッチング素子SW1~SW6)を冷却する熱交換器である。具体的には、液冷媒管35を流れる冷媒によって、冷媒ジャケット29は被冷却素子の冷却を行う。液冷媒管35は、室外熱交換器23と液冷媒連絡管5とを接続する冷媒管である。冷媒ジャケット29は、冷房運転時には室外熱交換器23において放熱した後の冷凍サイクルの高圧の冷媒(室外熱交換器23と膨張弁26との間を流れる冷媒)によって被冷却素子を冷却する熱交換器として機能し、暖房運転時には膨張弁26よって減圧された後の冷凍サイクルの低圧の冷媒(膨張弁26と室外熱交換器23との間を流れる冷媒)によって被冷却素子を冷却する熱交換器として機能する。
【0031】
液側閉鎖弁27及びガス側閉鎖弁28は、外部の機器・配管(具体的には、液冷媒連絡管5及びガス冷媒連絡管6)との接続口に設けられた弁である。液側閉鎖弁27は、液冷媒管35の端部に設けられている。ガス側閉鎖弁28は、第2ガス冷媒管34の端部に設けられている。
【0032】
室外ユニット2は、室外ユニット2内に室外空気を吸入して、室外熱交換器23において冷媒と熱交換させた後に、外部に排出するための室外ファン36を有している。ここでは、室外ファン36として、室外ファン用モータ36aによって駆動されるプロペラファン等が使用されている。
【0033】
室外ユニット2は、室外ユニット2を構成する各部の動作を制御する室外側制御部20を有している。そして、室外側制御部20は、室外ユニット2の制御を行うために設けられたマイクロコンピュータやメモリ等を有しており、室内ユニット4の室内側制御部40との間で制御信号等のやりとりを行うことができるようになっている。なお、室外側制御部20は、後述の電装品ユニット70に設けられている。
【0034】
(1-3)冷媒連絡管
冷媒連絡管5、6は、空気調和装置1を建物等の設置場所に設置する際に、現地にて施工される冷媒管であり、設置場所や室外ユニットと室内ユニットとの組み合わせ等の設置条件に応じて種々の長さや管径を有するものが使用される。
【0035】
以上のように、室外ユニット2と、室内ユニット4と、冷媒連絡管5、6とが接続されることによって、空気調和装置1の冷媒回路10が構成されている。
【0036】
(1-4)制御部
空気調和装置1は、室内側制御部40と室外側制御部20とから構成される制御部8によって、室外ユニット2及び室内ユニット4の各機器の制御を行うことができるようになっている。すなわち、室内側制御部40と室外側制御部20とによって、上記の冷房運転や暖房運転等の冷凍サイクル運転を含む空気調和装置1全体の運転制御を行う制御部8が構成されている。制御部8は、主としてコンピュータにより実現されるものである。制御部8は、制御演算装置と記憶装置とを備える。制御演算装置には、CPU又はGPUといったプロセッサを使用できる。制御演算装置は、記憶装置に記憶されているプログラムを読み出し、このプログラムに従って所定の画像処理や演算処理を行う。さらに、制御演算装置は、プログラムに従って、演算結果を記憶装置に書き込んだり、記憶装置に記憶されている情報を読み出したりすることができる。
【0037】
(2)室外ユニットの詳細構成
次に、図2及び図3を用いて、室外ユニット2の詳細構成について説明する。なお、以下の説明において、「上」、「下」、「左」、「右」や「前面」、「側面」、「背面」、「天面」、「底面」等の方向や面を示す文言は、特にことわりのない限り、図3に示される室外ユニット2を前面とした場合における方向や面を意味する。
【0038】
室外ユニット2は、ユニットケーシング50の内部空間を鉛直方向に延びる仕切板57で左右に分割することによって送風機室S1と機械室S2とを形成した構造を有するものである。室外ユニット2は、ユニットケーシング50の背面及び側面の一部から室外空気を内部へと吸い込んだ後に、ユニットケーシング50の前面から空気を排出するように構成されている。室外ユニット2は、主として、ユニットケーシング50と、冷媒回路構成部品と、室外ファン36と、複数の電装品が設けられた電装品ユニット70とを有している。冷媒回路構成部品は、上述したように、圧縮機21、四路切換弁22、室外熱交換器23、膨張弁26、冷媒ジャケット29、閉鎖弁27、28、及び、これらの機器を接続する冷媒管を含む。
【0039】
ユニットケーシング50は、略直方体状に形成されており、主として、冷媒回路構成部品21~28と、室外ファン36と、電装品ユニット70とを収容している。ユニットケーシング50は、底板51と、送風機室側の側板52と、機械室側の側板53と、送風機室側の前板54と、機械室側の前板55と、天板56とを有している。
【0040】
電装品ユニット70は、ユニットケーシング50の前面寄りに位置するように、機械室S2内に配置されている。電装品ユニット70は、室外ユニット2内の機器の制御等に使用される複数の電装品が設けられたユニットであり、室外側制御部20が設けられている。電装品ユニット70は、主として、プリント基板71と、圧縮機用のモータ21aへの電源供給に使用される被冷却素子、リアクトル121、コンデンサ122、室外側制御部20などを含む複数の電装品と、を有している。複数の電装品は、鉛直面に水平に配置されたプリント基板71の主面71a(室外ユニット2の前面側を向く面)に実装されている。
【0041】
冷媒ジャケット29は、液冷媒管35のU字曲げされた部分の長手方向に沿う縦長形状の部材であり、プリント基板71上に支持されている。冷媒ジャケット29は、上下方向に折り返すようにU字曲げされた液冷媒管35が装着された構造を有している。冷媒ジャケット29は、プリント基板71の主面71aに実装された被冷却素子を前面側から覆うように配置されており、被冷却素子に熱的に接触している。被冷却素子は、後述するコンバータ回路110のダイオードD1~D6、インバータ回路130のスイッチング素子SW1~SW6及び還流ダイオードRD1~RD6などである。
【0042】
なお、ここでは図示を省略するが、四路切換弁22や膨張弁26等の冷媒回路構成部品もユニットケーシング50内に配置されている。また、電力変換装置100や冷媒ジャケット29を含む電装品ユニット70の詳細な構成については、後述する。
【0043】
(3)空気調和装置の基本動作
次に、空気調和装置1の基本動作について、図1を用いて説明する。空気調和装置1は、基本動作として、冷媒ジャケット29による被冷却素子の冷却を行いつつ、冷房運転及び暖房運転を行う。冷房運転及び暖房運転は、制御部8によって行われる。
【0044】
(3-1)冷房運転
冷房運転時には、四路切換弁22が冷房サイクル状態(図1の実線で示される状態)に切り換えられる。
【0045】
冷媒回路10において、冷凍サイクルの低圧のガス冷媒は、圧縮機21に吸入され、冷凍サイクルの高圧になるまで圧縮された後に吐出される。
【0046】
圧縮機21から吐出された高圧のガス冷媒は、四路切換弁22を通じて、室外熱交換器23に送られる。
【0047】
室外熱交換器23に送られた高圧のガス冷媒は、室外熱交換器23において、室外ファン36によって冷却源として供給される室外空気と熱交換を行って放熱して、高圧の液冷媒になる。
【0048】
室外熱交換器23において放熱した高圧の液冷媒は、冷媒ジャケット29に送られる。
【0049】
冷媒ジャケット29に送られた高圧の液冷媒は、被冷却素子と熱交換を行って加熱される。このとき、被冷却素子は、冷媒ジャケット29を流れる高圧の液冷媒の流量及び温度に応じて、冷却されることになる。
【0050】
冷媒ジャケット29において加熱された高圧の液冷媒は、膨張弁26に送られる。
【0051】
膨張弁26に送られた高圧の液冷媒は、膨張弁26によって冷凍サイクルの低圧まで減圧されて、低圧の気液二相状態の冷媒になる。膨張弁26で減圧された低圧の気液二相状態の冷媒は、液側閉鎖弁27及び液冷媒連絡管5を通じて、室内熱交換器41に送られる。
【0052】
室内熱交換器41に送られた低圧の気液二相状態の冷媒は、室内熱交換器41において、室内ファン42によって加熱源として供給される室内空気と熱交換を行って蒸発する。これにより、室内空気は冷却され、その後に、室内に供給されることで室内の冷房が行われる。
【0053】
室内熱交換器41において蒸発した低圧のガス冷媒は、ガス冷媒連絡管6、ガス側閉鎖弁28及び四路切換弁22を通じて、再び、圧縮機21に吸入される。
【0054】
(3-2)暖房運転
暖房運転時には、四路切換弁22が暖房サイクル状態(図1の破線で示される状態)に切り換えられる。
【0055】
冷媒回路10において、冷凍サイクルの低圧のガス冷媒は、圧縮機21に吸入され、冷凍サイクルの高圧になるまで圧縮された後に吐出される。
【0056】
圧縮機21から吐出された高圧のガス冷媒は、四路切換弁22、ガス側閉鎖弁28及びガス冷媒連絡管6を通じて、室内熱交換器41に送られる。
【0057】
室内熱交換器41に送られた高圧のガス冷媒は、室内熱交換器41において、室内ファン42によって冷却源として供給される室内空気と熱交換を行って放熱して、高圧の液冷媒になる。これにより、室内空気は加熱され、その後に、室内に供給されることで室内の暖房が行われる。
【0058】
室内熱交換器41で放熱した高圧の液冷媒は、液冷媒連絡管5及び液側閉鎖弁27を通じて、膨張弁26に送られる。
【0059】
膨張弁26に送られた高圧の液冷媒は、膨張弁26によって冷凍サイクルの低圧まで減圧されて、低圧の気液二相状態の冷媒になる。膨張弁26で減圧された低圧の気液二相状態の冷媒は、冷媒ジャケット29に送られる。
【0060】
冷媒ジャケット29に送られた低圧の気液二相状態の冷媒は、被冷却素子と熱交換を行って加熱される。このとき、被冷却素子は、冷媒ジャケット29を流れる低圧の気液二相状態の冷媒の流量(すなわち、冷媒循環量)及び温度に応じて、冷却されることになる。
【0061】
冷媒ジャケット29において加熱された低圧の気液二相状態の冷媒は、室外熱交換器23に送られる。
【0062】
室外熱交換器23に送られた低圧の気液二相状態の冷媒は、室外熱交換器23において、室外ファン36によって加熱源として供給される室外空気と熱交換を行って蒸発して、低圧のガス冷媒になる。
【0063】
室外熱交換器23で蒸発した低圧の冷媒は、四路切換弁22を通じて、再び、圧縮機21に吸入される。
【0064】
(4)室外ユニットの電装品ユニットの構成
上述のように、室外ユニット2の電装品ユニット70は、プリント基板71と、プリント基板71に実装される複数の電装品と、冷却が必要な電装品(被冷却素子)を冷やすための冷媒ジャケット29とを有する。プリント基板71及びプリント基板71に実装される電装品の一部は、圧縮機用のモータ21aへの電源供給を行う電力変換装置100を構成する。
【0065】
(4-1)電力変換装置
電力変換装置100は、交流電源102から供給される電力を所定の周波数に変換してからモータ21aに印加する。モータ21aは、三相交流モータである。電力変換装置100は、図4に示すように、主として、交流を直流に変換する電力変換回路であるコンバータ回路110と、リアクトル121と、コンデンサ122と、直流を交流に変換する電力変換回路であるインバータ回路130と、制御回路150とを有している。これらの回路110,130,150は、プリント基板71のパターンやプリント基板71に実装される電装品によって構成されている。リアクトル121およびコンデンサ122も、各回路110,130,150が形成されているプリント基板71に実装される。プリント基板71は、ハーネスを介して交流電源102に接続される。
【0066】
(4-1-1)交流電源
交流電源102は、電力変換装置100及びモータ21aに電力を供給するものである。具体的には、交流電源102は、いわゆる商用の三相交流電源であり、50Hz又は60Hz等の周波数を有する交流電圧を供給する。交流電源102の電源電圧は、単相又は3相の、200V以上、240V以下である。
【0067】
(4-1-2)コンバータ回路
コンバータ回路110は、交流電源102に接続されており、交流電源102が出力した交流電圧を全波整流して直流電圧に変換するものである。コンバータ回路110は、パワー半導体である6つのダイオードD1~D6がブリッジ状に結線されたダイオードブリッジ回路により構成される。ダイオードD1及びD2と、ダイオードD3及びD4と、ダイオードD5及びD6とは、それぞれ直列に接続される。ダイオードD1及びD2の接続点は、交流電源102のR相の出力に接続される。また、ダイオードD3及びD4の接続点は、交流電源102のS相の出力に接続される。また、ダイオードD5及びD6の接続点は、交流電源102のT相の出力に接続される。コンバータ回路110は、交流電源102から出力された交流電圧を整流する。
【0068】
(4-1-3)リアクトル
リアクトル121は、コンバータ回路110とインバータ回路130との間に設けられ、コンバータ回路110及びインバータ回路130と直列に接続される。リアクトル121は、図6及び図7に示すように、主として、コア201と、巻線202と、ターミナル203と、ピン121aとを有する。図5に示すように、電力変換回路であるコンバータ回路110やインバータ回路130と、リアクトル121とは、同一のプリント基板71に実装されている。リアクトル121は、ターミナル203及び複数のピン121aを介してプリント基板71に固定される。
【0069】
リアクトル121の巻線202のうち、コア201に巻きつけられる線202aは、20℃における電気抵抗率(Ω・m)が銅よりも高い物質から成る線である。ここでは、リアクトル121の巻線202として、アルミニウム線を採用している。アルミニウム線は、20℃における電気抵抗率(Ω・m)が銅線の1.5倍以上である。銅の20℃における電気抵抗率は、約1.7×10-8(Ω・m)である。ここでは、巻線202として用いたアルミニウム線の材料であるアルミニウムとして、20℃における電気抵抗率が2.6×10-8(Ω・m)~2.9×10-8(Ω・m)であるものを採用している。
【0070】
リアクトル121の接続部であるターミナル203は、銅めっき付きのアルミニウムから成る薄板部材である。ターミナル203は、プリント基板71のパターン(銅箔)に半田付けされ、コンバータ回路110やインバータ回路130に接続される。
【0071】
リアクトル121のインダクタンスは、定格電流時に1mH以下である。
【0072】
リアクトル121には、20A以上、100A以下の電流が流れる。
【0073】
(4-1-4)コンデンサ
コンデンサ122は、コンバータ回路110とインバータ回路130との間に設けられ、コンバータ回路110及びインバータ回路130と並列に接続される。コンデンサ122は、一端がリアクトル121を介してコンバータ回路110の正側出力端子に接続され、他端がコンバータ回路110の負側出力端子に接続される。そして、コンデンサ122の両端に生じた直流電圧が、インバータ回路130の入力ノードに接続される。ここでは、コンデンサ122として、フィルムコンデンサを採用している。
【0074】
(4-1-5)インバータ回路
インバータ回路130は、ゲート制御信号の入力に基づいて、コンバータ回路110で整流された電圧を所定の周波数の交流電圧に逆変換してモータ21aに印加するものである。ここでは、インバータ回路130は、入力ノードがコンデンサ122に並列に接続される。インバータ回路130は、三相交流をモータ21aに出力するために、パワー半導体である6個のスイッチング素子SW1~SW6を備えている。詳しくは、インバータ回路130は、2つのスイッチング素子を互いに直列接続してなる3つのスイッチングレグを備え、各スイッチングレグにおいて上アームのスイッチング素子SW1,SW3,SW5と下アームのスイッチング素子SW2,SW4,SW6との接続点が、それぞれモータ21aの各相(U相,V相,W相)のコイルに接続される。また、各スイッチング素子SW1~SW6には、還流ダイオードRD1~RD6が逆並列に接続される。そして、インバータ回路130は、これらのスイッチング素子SW1~SW6のオンオフ動作によって、入力された電圧をスイッチングし、三相交流電圧に変換してモータ21aへ供給する。なお、このオンオフ動作の制御は、制御回路150により実行される。また、各スイッチング素子SW1~SW6は、例えば、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBT)により実現される。
【0075】
(4-1-6)制御回路
制御回路150は、電力変換装置100における各種制御を実行するものである。具体的には、制御回路150は、主としてマイコンから成り、インバータ回路130の各スイッチング素子SW1~SW6のオンオフ動作を制御して、圧縮機21のモータ21aを駆動する。
【0076】
(4-1-7)プリント基板
プリント基板71は、両面基板であり、板厚が1.6mmのガラスエポキシ基板である。プリント基板71は、ガラス布にエポキシ樹脂を含侵させた材料で製造されている基材(ガラスエポキシ材)と、その基材に接合されている銅箔とを有する。銅箔の厚さは、30μm以上、75μm以下である。ここでは、35μm~40μmの厚みの銅箔が基材に接合されている。プリント基板71は、NEMA規格がFR-4の、一般的な耐熱性を有する基板である。
【0077】
(4-2)冷媒ジャケット
冷媒ジャケット29は、上述のとおり、プリント基板71上に支持される部材であり、コンバータ回路110のダイオードD1~D6、インバータ回路130のスイッチング素子SW1~SW6及び還流ダイオードRD1~RD6などを冷却する。
【0078】
(5)電力変換装置の特徴
(5-1)
上記の空気調和装置1の室外ユニット2において圧縮機用のモータ21aに対して設けられている電力変換装置100では、リアクトル121が、コンバータ回路110やインバータ回路130とともに、同一のプリント基板71に実装されている。そして、従来から電力変換装置において一般的に用いられている銅線を巻線とするリアクトルではなく、電力変換装置100では、アルミニウム線を巻線202とする、発熱量が抑えられるリアクトル121、を採用している。具体的には、20℃における電気抵抗率が銅よりも高いアルミニウム線が巻線202として使われているリアクトル121が、電力変換装置100において採用されている。この電力変換装置100によれば、リアクトル121の発熱量が小さく抑えられるため、耐熱性能が良い高価なプリント基板を使う必要がなくなり、電力変換装置100の製造コストが抑えられている。具体的には、電力変換装置100においては、NEMA規格がFR-4の、一般的な耐熱性を有するプリント基板71が採用されている。
【0079】
言い換えると、アルミニウム線を巻線202とし、巻線202の抵抗値を上げることによって発熱量が抑えられるリアクトル121を、電力変換装置100で採用している。これにより、電源歪みによる高周波の電圧歪みに起因するリアクトル121の異常発熱が抑えられている。巻線202の抵抗値が上がると、電源歪みの波形が鈍り、リアクトル121の異常発熱が生じ難くなる。
【0080】
また、スイッチング速度を高速化する場合も、従来の銅線を巻線として使っているリアクトルでは異常発熱する恐れがあるが、電力変換装置100では、リアクトル121の異常発熱が抑えられる。
【0081】
(5-2)
電力変換装置100では、20℃における電気抵抗率(Ω・m)が銅線の1.5倍以上であるアルミニウム線を、リアクトル121の巻線202として使用している。このようなリアクトル121を採用しているため、この電力変換装置100では、リアクトルの発熱量がかなり小さく抑えられている。
【0082】
(5-3)
電力変換装置100では、リアクトル121の接続部であるターミナル203が、銅めっき付きのアルミニウムである。したがって、銅めっき部分をハンダによって容易にプリント基板71の銅箔から成るパターンに接続することができる。
【0083】
(6)変形例
(6-1)
上記の電力変換装置100では、リアクトル121の接続部であるターミナル203が、銅めっき付きのアルミニウムである。これに代えて、リアクトル121のターミナルとして、銅から成る板部材を用いてもよい。この場合も、従来の電力変換装置と同様に、容易にリアクトルをプリント基板に半田付けし、コンバータ回路やインバータ回路に接続させることができる。
【0084】
(6-2)
上記の電力変換装置100では、リアクトル121の接続部であるターミナル203が、銅めっき付きのアルミニウムであるが、銅以外のめっきを付けたアルミニウムを採用してもよい。
【0085】
(6-3)
上記の電力変換装置100では、リアクトル121の巻線202の全体をアルミニウム線にしているが、巻線のうちコアに巻きつけられる線だけをアルミニウム線にしてもよい。
【0086】
(6-4)
上記の電力変換装置100では、リアクトル121の巻線202をアルミニウム線にしているが、20℃における電気抵抗率(Ω・m)が銅よりも高い物質から成る線であれば、そのようなアルミニウム線以外の線を採用してもよい。
【0087】
(6-5)
上記の電力変換装置100では、1つのリアクトル121を採用しており、リアクトル121に流れる電流が20A以上、100A以下である。この構成に代えて、2以上のリアクトルを用いる電力変換装置とした場合には、各リアクトルを流れる電流が10A以上、20A以下になることがある。
【0088】
なお、電力変換装置のプリント基板への入力電流は、いずれの場合も16A以上、100A以下である。
【0089】
(6-6)
上記の電力変換装置100では、プリント基板71の基材として、ガラス布にエポキシ樹脂を含侵させた材料で製造されている基材(ガラスエポキシ材)を採用している。上記のプリント基板71は、NEMA規格がFR-4の、一般的な耐熱性を有する基板である。
【0090】
このプリント基板71に代えて、切り揃えたガラス繊維を重ねてエポキシ樹脂を含侵させたガラスコンポジットを基材とするプリント基板を、電力変換装置において採用してもよい。例えば、NEMA規格がCEM-3のガラスコンポジット基板を採用する電力変換装置としても、製造コストが抑えられる。
【0091】
(6-7)
以上、本開示の実施形態を説明したが、特許請求の範囲に記載された本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。
【符号の説明】
【0092】
71 プリント基板(基板)
100 電力変換装置
110 コンバータ回路(電力変換回路)
121 リアクトル
130 インバータ回路(電力変換回路)
201 リアクトルのコア
202 リアクトルの巻線
203 リアクトルのターミナル(接続部)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0093】
【文献】特開2018-148629号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7