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  • 特許-アンダートレッド用ゴム組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-01
(45)【発行日】2024-10-09
(54)【発明の名称】アンダートレッド用ゴム組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 9/00 20060101AFI20241002BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20241002BHJP
   B60C 11/00 20060101ALI20241002BHJP
   B60C 9/20 20060101ALI20241002BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20241002BHJP
   C08L 15/00 20060101ALI20241002BHJP
【FI】
C08L9/00
B60C1/00 A
B60C11/00 D
B60C9/20 G
C08K3/36
C08L15/00
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023057959
(22)【出願日】2023-03-31
【審査請求日】2024-04-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 誠人
(72)【発明者】
【氏名】郷原 櫻子
【審査官】▲高▼橋 理絵
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-219224(JP,A)
【文献】特開2019-151738(JP,A)
【文献】特開2019-026757(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2020-0021129(KR,A)
【文献】特開2013-177113(JP,A)
【文献】特開2023-069115(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K 3/00- 13/08
C08L 1/00-101/14
B60C 1/00- 19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソプレン系ゴム40質量%~90質量%と、変性ブタジエンゴムおよび/または変性スチレンブタジエン10質量%~40質量%とを含むゴム成分100質量部に対して、CTAB吸着比表面積が60m2/g~100m2/gであるシリカが25質量部~60質量部配合されたことを特徴とするアンダートレッド用ゴム組成物。
【請求項2】
前記ゴム成分100質量部に対して、CTAB吸着比表面積が40m2/g~120m2/gであるカーボンブラックが20質量部~70質量部配合されたことを特徴とする請求項1に記載のアンダートレッド用ゴム組成物。
【請求項3】
前記変性ブタジエンゴムのガラス転移温度が-85℃以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のアンダートレッド用ゴム組成物。
【請求項4】
前記変性ブタジエンゴムのシス-1,4結合含有率が95%以上であることを特徴とする請求項1または2に記載のアンダートレッド用ゴム組成物。
【請求項5】
シランカップリング剤が配合され、前記シリカの配合量に対する前記シランカップリング剤の配合量の割合が3.0質量%~10.0質量%であることを特徴とする請求項1または2に記載のアンダートレッド用ゴム組成物。
【請求項6】
タイヤ周方向に延在して環状をなすトレッド部と、前記トレッド部の両側に配置された一対のサイドウォール部と、これらサイドウォール部のタイヤ径方向内側に配置された一対のビード部とを備え、前記一対のビード部間に装架された少なくとも1層のカーカス層と、前記トレッド部における前記カーカス層の外周側に配置された複数層のベルト層とを有し、前記トレッド部がタイヤ踏面を構成するキャップトレッド層とその内周側に配置されるアンダートレッド層とを積層して構成されたタイヤであって、前記アンダートレッド層が請求項1または2に記載のアンダートレッド用ゴム組成物で構成されたことを特徴とするタイヤ。
【請求項7】
前記アンダートレッド層を構成するアンダートレッドゴムの23℃における100%伸長時の引張応力M100UT〔単位:MPa〕と、前記ベルト層においてベルトコードを被覆するコートゴムの23℃における100%伸長時の引張応力M100B〔単位:MPa〕との比M100UT/M100Bが0.4~1.0であることを特徴とする請求項6に記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主としてタイヤのアンダートレッド層に用いることを意図したアンダートレッド用ゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤにおいては、環境負荷を低減するために走行時の燃費性能を向上することが求められている。そのため、空気入りタイヤの各部を構成するゴム組成物の発熱を抑制することが行われている。近年、燃費性能の更なる改善のために、例えば、空気入りタイヤのアンダートレッドゴム層を構成するゴム組成物(アンダートレッド用ゴム組成物)について発熱を抑制することが検討されている。
【0003】
ゴム組成物の発熱性の指標としては、一般に動的粘弾性測定による60℃におけるtanδ(以下、「tanδ(60℃)」という。)が用いられ、ゴム組成物のtanδ(60℃)が小さいほど発熱性が小さくなる。そして、ゴム組成物のtanδ(60℃)を小さくする方法として、例えば加硫剤の配合量を増加することや、カーボンブラック等の充填材の配合量を少なくすることが挙げられる(例えば特許文献1を参照)。しかしながら、これらの方法では、アンダートレッド用ゴム組成物として求められる破断伸びが十分に確保できず、タイヤにおいて操縦安定性や高速耐久性が必ずしも十分に得られない虞があった。そのため、アンダートレッド用ゴム組成物において、良好な低発熱性(tanδ(60℃))を確保しながら、操縦安定性や高速耐久性を改善する更なる対策が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013‐177113号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、良好な低発熱性を確保しながら、操縦安定性や高速耐久性を改善し、これら性能をバランスよく高度に両立することを可能にしたアンダートレッド用ゴム組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成する本発明のアンダートレッド用ゴム組成物は、イソプレン系ゴム40質量%~90質量%と、変性ブタジエンゴムおよび/または変性スチレンブタジエン10質量%~40質量%とを含むゴム成分100質量部に対して、CTAB吸着比表面積が60m2/g~100m2/gであるシリカが25質量部~60質量部配合されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明のアンダートレッド用ゴム組成物は、上述の配合からなることで、良好な低発熱性を確保しながら、操縦安定性や高速耐久性を改善することができる。具体的には、ゴム成分としてイソプレン系ゴムと変性ブタジエンゴムおよび/または変性スチレンブタジエンゴムとを上述の配合比率で併用することで低発熱性と高速耐久性をバランスよく向上することができる。また、このゴム成分に対して大粒径のシリカ(CTAB吸着比表面積が60m2/g~100m2/g)を適度な量で配合しているので低発熱性を向上することができる。これらの協働により、良好な低発熱性を確保しながら、操縦安定性や高速耐久性を改善しこれら性能をバランスよく両立することができる。
【0008】
本発明においては、ゴム成分100質量部に対して、CTAB吸着比表面積が40m2/g~120m2/gであるカーボンブラックが20質量部~70質量部配合されることが好ましい。前述の大粒径シリカに加えて、充填剤として特定の粒径のカーボンブラックを適度に配合することで加工性(ゴムのまとまり、他部材との粘着性など)を向上することができる。
【0009】
本発明においては、変性ブタジエンゴムのガラス転移温度が-85℃以下であることが好ましい。また、変性ブタジエンゴムのシス-1,4結合含有率が95%以上であることが好ましい。このように特定の条件を満たす変性ブタジエンゴムを用いることで、上述の低発熱性および高速耐久性を向上する効果を高めることができ、良好な低発熱性を確保しながら、操縦安定性や高速耐久性を改善するには有利になる。
【0010】
本発明においては、シランカップリング剤を配合することができ、その際、シリカの配合量に対するシランカップリング剤の配合量の割合を3.0質量%~10.0質量%にすることが好ましい。これによりシリカの分散を良好にすることができ、低発熱性と高速耐久性を向上するには有利になる。
【0011】
本発明のアンダートレッド用ゴム組成物は、タイヤのアンダートレッド層に好適に用いることができる。具体的には、本発明のアンダートレッド用ゴム組成物を使用するタイヤは、タイヤ周方向に延在して環状をなすトレッド部と、前記トレッド部の両側に配置された一対のサイドウォール部と、これらサイドウォール部のタイヤ径方向内側に配置された一対のビード部とを備え、前記一対のビード部間に装架された少なくとも1層のカーカス層と、前記トレッド部における前記カーカス層の外周側に配置された複数層のベルト層とを有し、トレッド部がタイヤ踏面を構成するキャップトレッド層とその内周側に配置されるアンダートレッド層とを積層して構成されているとよく、このようなタイヤにおいて、アンダートレッド層を本発明のアンダートレッド用ゴム組成物で構成することが好ましい。このようにして本発明のアンダートレッド用ゴム組成物からなるアンダートレッド層を備えたタイヤは、本発明のアンダートレッド用ゴム組成物の優れた物性により、良好な低発熱性を確保しながら、操縦安定性や高速耐久性を改善することができる。
【0012】
このとき、アンダートレッド層を構成するアンダートレッドゴムの23℃における100%伸長時の引張応力M100UT〔単位:MPa〕と、ベルト層においてベルトコードを被覆するコートゴムの23℃における100%伸長時の引張応力M100B〔単位:MPa〕との比M100UT/M100Bが0.4~1.0であるが好ましい。このように本発明のアンダートレッド用ゴム組成物を用いるアンダートレッド層(アンダートレッドゴム)と、その内周側に配置されたベルト層(ベルトコートゴム)との引張応力(M100)の関係を適正化することで、低発熱性および高速耐久性を向上するには有利になる。
【0013】
尚、本発明において、「CTAB吸着比表面積」は、ISO 5794に準拠して測定するものとする。「ガラス転移温度」は、示差走査熱量測定(DSC)により20℃/分の昇温速度条件により得られたサーモグラムから転移域の中点の温度として測定することができる。「シス-1,4結合含有率」は、ブタジエンの結合様式であるシス-1,4-結合、トランス-1,4-結合、および1,2-ビニル結合のうちの、シス-1,4-結合の割合であり、赤外分光分析(ハンプトン法)により測定するものとする。「23℃における100%伸長時の引張応力」は、JIS K6251に準拠して3号型ダンベル試験片を用い、引張速度500mm/分、温度23℃の条件で測定した値である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明のアンダートレッド用ゴム組成物を使用する空気入りタイヤの一例を示す子午線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の構成について添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0016】
図1に示すように、本発明のアンダートレッド用ゴム組成物が使用される空気入りタイヤは、トレッド部1と、このトレッド部1の両側に配置された一対のサイドウォール部2と、サイドウォール部2のタイヤ径方向内側に配置された一対のビード部3とを備えている。図1において、符号CLはタイヤ赤道を示す。図1は子午線断面図であるため描写されないが、トレッド部1、サイドウォール部2、ビード部3は、それぞれタイヤ周方向に延在して環状を成しており、これにより空気入りタイヤのトロイダル状の基本構造が構成される。以下、図1を用いた説明は基本的に図示の子午線断面形状に基づくが、各タイヤ構成部材はいずれもタイヤ周方向に延在して環状を成すものである。
【0017】
左右一対のビード部3間にはカーカス層4が装架されている。このカーカス層4は、タイヤ径方向に延びる複数本の補強コードを含み、各ビード部3に配置されたビードコア5の廻りにタイヤ幅方向内側から外側に折り返されている。また、ビードコア5の外周上にはビードフィラー6が配置され、このビードフィラー6がカーカス層4の本体部と折り返し部とにより包み込まれている。一方、トレッド部1におけるカーカス層4の外周側には複数層(図1では2層)のベルト層7が埋設されている。各ベルト層7は、複数本の補強コード(ベルトコード)がベルトコートゴムで被覆されて構成される。複数本の補強コードは、各層においてタイヤ周方向に対して傾斜して配列され、且つ、層間で補強コードが互いに交差するように配置される。これらベルト層7において、補強コード(ベルトコード)のタイヤ周方向に対する傾斜角度は例えば10°~40°の範囲に設定される。更に、ベルト層7の外周側にはベルト補強層8(ベルト層7の全幅を覆うフルカバー8aとベルト層7の端部を局所的に覆うエッジカバー8bの2層)が設けることができる。ベルト補強層8は、タイヤ周方向に配向する有機繊維コードを含む。ベルト補強層8において、有機繊維コードはタイヤ周方向に対する角度が例えば0°~5°に設定されている。
【0018】
トレッド部1におけるカーカス層4の外周側にはトレッドゴム層10が配され、サイドウォール部2におけるカーカス層4の外周側(タイヤ幅方向外側)にはサイドゴム層20が配され、ビード部3におけるカーカス層4の外周側(タイヤ幅方向外側)にはリムクッションゴム層30が配されている。トレッドゴム層11は、物性の異なる2種類のゴム層(トレッド部1の踏面を構成するキャップトレッド11と、その内周側に配置されたアンダートレッド12)をタイヤ径方向に積層した構造を有する。
【0019】
本発明のアンダートレッド用ゴム組成物が使用されるタイヤは、上記のような空気入りタイヤ(その内部に空気、窒素等の不活性ガスまたはその他の気体が充填されるタイヤ)であることが好ましいが、非空気式タイヤであってもよい。非空気式タイヤの場合、本発明のアンダートレッド用ゴム組成物は、路面に当接する部分(空気入りタイヤにおけるキャップトレッド層11に相当する部位)の内周側に配置されたゴム層(空気入りタイヤにおけるアンダートレッド層12に相当する部位)に用いることができる。本発明が適用されるタイヤは、トレッド部1(トレッドゴム層10)がキャップトレッド11とアンダートレッド12とで構成されていれば、他の部位の基本構造は上述の構造に限定されるものではない。
【0020】
本発明のアンダートレッド用ゴム組成物において、ゴム成分はジエン系ゴムであり、イソプレン系ゴムと変性ブタジエンゴムおよび/または変性スチレンブタジエンゴムとを必ず含む。これらゴムを併用することで、破断伸びを良好に維持しながら、低発熱性を改善するには有利になる。
【0021】
イソプレン系ゴムとしては、各種天然ゴム、エポキシ化天然ゴム、各種合成ポリイソプレンゴムを挙げることができる。これらイソプレン系ゴムの中でも、特に、天然ゴムを好適に用いることができる。イソプレン系ゴムの含有量は、ゴム成分100質量%中40質量%~90質量%、好ましくは50質量%~90質量%、より好ましくは60質量%~90質量%である。このような量のイソプレン系ゴム(特に天然ゴム)を含むことで、破断伸びや低発熱性をバランスよく向上することができる。イソプレン系ゴムの配合量が40質量%未満であると破断伸びが低下する。イソプレン系ゴムの配合量が90質量%を超えると低発熱性が悪化する。
【0022】
本発明のアンダートレッド用ゴム組成物において、ゴム成分は、上述のイソプレン系ゴムと共に、後述の変性ブタジエンゴムおよび/または後述の変性スチレンブタジエンゴムを含有する。即ち、本発明のアンダートレッド用ゴム組成物は、ゴム成分としてイソプレン系ゴムおよび変性ブタジエンゴムの2種を含有するか、イソプレン系ゴムおよび変性スチレンブタジエンゴムの2種を含有するか、イソプレン系ゴムと変性ブタジエンゴムと変性スチレンブタジエンゴムとの3種を含有する。特に、イソプレン系ゴム(天然ゴム)と変性ブタジエンゴムとを組み合わせて用いることが好ましい。このとき、変性ブタジエンゴムおよび/または変性スチレンブタジエンゴムの含有量(の合計)は、ゴム成分100質量%中10質量%~40質量%、好ましくは15質量%~35質量%、より好ましくは20質量%~35質量%である。このような量の変性ブタジエンゴムおよび/または変性スチレンブタジエンゴムを含むことで、硬度や低発熱性をバランスよく向上することができる。即ち、アンダートレッド用ゴム組成物の発熱性を抑えつつ、硬度を高く保つことで、タイヤにおいては高速走行時にベルトのせり上がりを抑制し、特にベルトセパレーションに対する耐久性を向上するには有利になる。変性ブタジエンゴムおよび/または変性スチレンブタジエンゴムの配合量が10質量%未満であると低発熱性が悪化する。変性ブタジエンゴムおよび/または変性スチレンブタジエンゴムの配合量が90質量%を超えると破断伸びが低下する。変性ブタジエンゴムおよび変性スチレンブタジエンゴムを含有する場合、個々の含有量は特に限定されないが、ゴム成分100質量%中に変性ブタジエンゴムを10質量%~35質量%、変性スチレンブタジエンゴムを10質量%~35質量%含有しているとよい。
【0023】
変性ブタジエンゴムとは、ヘテロ原子を有しシリカ表面のシラノール基と反応性を有する官能基で分子末端の両方または片方を変性したブタジエンゴムである。ヘテロ原子として、酸素、窒素、ケイ素、硫黄等が挙げられ、なかでも窒素またはケイ素が好ましい。このような官能基としては、例えば、ポリオルガノシロキサン基、ヒドロキシル基含有ポリオルガノシロキサン構造、アルコキシシリル基、ヒドロキシル基、アルデヒド基、カルボキシル基、アミノ基、イミノ基、エポキシ基、アミド基、チオール基、エーテル基から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。これらの中でも、ポリオルガノシロキサン基、ヒドロキシル基含有ポリオルガノシロキサン構造、アルコキシシリル基、ヒドロキシル基、アミノ基が好ましい。また、これら官能基のうち複数(例えば、アミノ基およびアルコキシシリル基の2種等)を組み合わせたものであってもよい。このような変性ブタジエンゴムを用いることで、後述の大粒径のシリカとの親和性が良好になり、破断伸びや低発熱性をバランスよく向上するには有利になる。
【0024】
変性ブタジエンゴムとしては、ガラス転移温度Tgが好ましくは-85℃以下、より好ましくは-110℃~-90℃であるものを好適に用いることができる。このようなガラス転移温度を有することで、破断強度、破断伸びを向上することができる。変性ブタジエンゴムのガラス転移温度Tgが-85℃を超えると破断伸びや低発熱性を向上する効果が十分に見込めなくなる。
【0025】
変性ブタジエンゴムは、シス-1,4結合含有率が好ましくは95%以上、より好ましくは96%~99%であるとよい。このようにシス-1,4結合含有率が大きいことで破断強度、破断伸びを向上するには有利になる。シス-1,4結合含有率が95%未満であると破断強度や破断伸びが低下する。尚、ブタジエンゴムのシス-1,4結合含有率の増減は、触媒等、通常の方法で適宜調製することができる。
【0026】
変性ブタジエンゴムの重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)から求められる分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは1.5~3.5、より好ましくは2.0~3.3であるとよい。このように、変性ブタジエンゴムの分子量分布を適正化することで、ゴム物性がより良好になり、低発熱性を良好に維持しながら、タイヤにした時の操縦安定性や高速耐久性を効果的に向上することができる。変性ブタジエンゴムの分子量分布(Mw/Mn)が1.5未満であると押出加工性が低下する。変性ブタジエンゴムの分子量分布(Mw/Mn)が3.5を超えると低発熱性が低下する。尚、「重量平均分子量Mw」と「数平均分子量Mn」は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により標準ポリスチレン換算により測定するものとする。
【0027】
変性ブタジエンゴムは、ネオジム系触媒により合成されたブタジエンゴム(Nd‐BR)を上述の官能基で変性したものであるとよい。他の触媒(例えばニッケル、コバルト、チタン等)で重合されたブタジエンゴムを用いても所望の効果を得ることは出来るが、低発熱性、破断強度、破断伸びを両立するという観点においてはNd‐BRが好ましく用いられる。尚、ネオジム系触媒を用いて重合されたブタジエンゴム(Nd‐BR)は、公知の材料であり、ネオジム単体、ネオジムと他の金属類との化合物、有機ネオジム化合物等のネオジム系触媒を用いて重合されたブタジエンゴムである。これらネオジム系触媒によって合成されたブタジエンゴムは高分子量かつ分子量分布がシャープであるという特性を有する。Nd‐BRとしては、市販されているものを利用することができる。
【0028】
変性スチレンブタジエンゴムは、ヘテロ原子を有しシリカ表面のシラノール基と反応性を有する官能基で分子末端の両方または片方を変性したスチレンブタジエンゴムである。ヘテロ原子として、酸素、窒素、ケイ素、硫黄等が挙げられ、なかでも窒素またはケイ素が好ましい。このような官能基としては、例えば、ポリオルガノシロキサン基、ヒドロキシル基含有ポリオルガノシロキサン構造、アルコキシシリル基、ヒドロキシル基、アルデヒド基、カルボキシル基、アミノ基、イミノ基、エポキシ基、アミド基、チオール基、エーテル基から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。これらの中でも、ポリオルガノシロキサン基、ヒドロキシル基含有ポリオルガノシロキサン構造、アルコキシシリル基、ヒドロキシル基、アミノ基が好ましい。また、これら官能基のうち複数(例えば、アミノ基およびアルコキシシリル基の2種等)を組み合わせたものであってもよい。このような変性ブタジエンゴムを用いることで、後述の大粒径のシリカとの親和性が良好になり、破断伸びや低発熱性をバランスよく向上するには有利になる。
【0029】
変性スチレンブタジエンゴムとしては、ガラス転移温度Tgが好ましくは-75℃~-45℃、より好ましくは-75℃~-55℃であるものを好適に用いることができる。変性スチレンブタジエンゴムが、このようなガラス転移温度を有することで低発熱性を改善することができる。変性スチレンブタジエンゴムのガラス転移温度Tgが-75℃を未満であると破断強度を向上する効果が十分に見込めなくなる。変性スチレンブタジエンゴムのガラス転移温度Tgが-45℃を超えると低発熱性の更なる改善効果が十分に見込めなくなる。
【0030】
本発明において使用される変性スチレンブタジエンゴムのスチレン含有量は好ましくは5質量%~25質量%、より好ましくは5質量%~20質量%であるとよい。また、変性スチレンブタジエンゴムのビニル含有量は好ましくは15質量%~50質量%、より好ましくは20質量%~45質量%であるとよい。このようにスチレン含有量やビニル含有量が適度な範囲であることでシリカとシランの反応率が向上し、低発熱性を改善することができる。変性スチレンブタジエンゴムのスチレン含有量が5質量%未満であると破断強度を向上する効果が十分に見込めなくなる。変性スチレンブタジエンゴムのスチレン含有量が25質量%を超えると低発熱性を改善する効果が十分に見込めなくなる。変性スチレンブタジエンゴムのビニル含有量が15質量%未満であると低発熱性を向上する効果が十分に見込めなくなる。変性スチレンブタジエンゴムのビニル含有量が50質量%を超えると破断伸びを向上する効果が十分に見込めなくなる。尚、変性スチレンブタジエンゴムのスチレン含有量およびビニル含有量は、赤外分光分析(ハンプトン法)により測定するものとする。スチレンブタジエンゴムにおけるスチレン含有量やビニル含有量の増減は、触媒等、通常の方法で適宜調製することができる。
【0031】
本発明のアンダートレッド用ゴム組成物を構成するゴム成分は、少なくとも上述のイソプレン系ゴム(特に天然ゴム)、変性ブタジエンゴム、変性スチレンブタジエンゴムを含むが、任意で他のジエン系ゴムを含有することができる。他のジエン系ゴムとしては、タイヤ用ゴム組成物に一般的に使用可能なゴムを用いることができる。例えば、未変性のブタジエンゴム、未変性のスチレンブタジエンゴム等を例示することができる。また、イソプレン系ゴムとして天然ゴムを採用した場合、他のジエン系ゴムとしてイソプレンゴムを併用することもできる。これら他のジエン系ゴムは、単独または任意のブレンドとして使用することができる。
【0032】
本発明において、上述のゴム成分に対して充填剤としてシリカが必ず配合される。本発明で使用されるシリカとしては、例えば湿式法シリカ、乾式法シリカあるいは表面処理シリカなどのタイヤ用ゴム組成物に通常使用されるシリカを使用することができる。但し、シリカのCTAB吸着比表面積は60m2/g~100m2/g、好ましくは70m2/g~90m2/g、より好ましくは75m2/g~85m2/gに限定される。このように粒径が大きいシリカを用いることで、低発熱性および耐摩耗性を向上することができる。シリカのCTAB吸着比表面積が60m2/g未満であると低発熱性が悪化する。シリカのCTAB吸着比表面積が100m2/gを超えると耐摩耗性が低下する。上述の条件を満たすシリカであれば、市販されているものの中から適宜選択して使用してもよく、通常の製造方法により得られたシリカを使用することもできる。
【0033】
シリカの配合量は、上述のゴム成分100質量部に対して3質量部~60質量部、好ましくは5質量部~50質量部、より好ましくは10質量部~50質量部である。このようにシリカを適度な量で配合することで、タイヤにしたときの低発熱性、操縦安定性、高速耐久性をバランスよく向上することができる。シリカの配合量が3質量部未満であると破断伸びが低下する。シリカの配合量が60質量部を超えると低発熱性が悪化する。
【0034】
本発明においては、充填剤として上述のシリカの他にカーボンブラックを配合することもできる。本発明で使用されるカーボンブラックとしては、タイヤ用ゴム組成物に通常使用されるカーボンブラックのうち、CTAB吸着比表面積が好ましくは40m2/g~120m2/g、より好ましくは70m2/g~100m2/gであるカーボンブラックを使用するとよい。このようなカーボンブラックを用いることで、タイヤにしたときの低発熱性、操縦安定性、高速耐久性をバランスよく向上するには有利になる。カーボンブラックのCTAB吸着比表面積が40m2/g未満であると耐摩耗性が低下する。カーボンブラックのCTAB吸着比表面積が120m2/gを超えると低発熱性が悪化する。
【0035】
上記のようにシリカに加えてカーボンブラックを使用する場合、シリカおよびカーボンブラックの配合量の合計は、上述のゴム成分100質量部に対して好ましくは40質量部~95質量部、より好ましくは45質量部~90質量部にするとよい。このようにシリカおよびカーボンブラックを適度な量で配合することで、タイヤにしたときの低発熱性、操縦安定性、高速耐久性をバランスよく向上するには有利になる。シリカおよびカーボンブラックの配合量の合計が40質量部より少ない場合、破断強度が低下し、高速耐久性が悪化する。シリカおよびカーボンブラックの配合量の合計が95質量部を超えると低燃費性が悪化し、破断伸びが低下する。
【0036】
更に、シリカおよびカーボンブラックを併用するにあたって、カーボンブラックの配合量Mcに対するシリカの配合量Msの比Ms/Mcを好ましくは0.05~0.7、より好ましくは0.1~0.6にするとよい。このようにシリカおよびカーボンブラックを適度なバランスで配合し、特に充填剤中のシリカ量を低く抑えることで、大粒径シリカを配合することによるtanδ(60℃)の悪化を抑制し、破断伸びや低発熱性をバランスよく向上することができる。カーボンブラックの配合量に対するシリカの配合量の比Ms/Mcが0.7を超えると加工性(ゴムのまとまり、他部材との粘着性など)が悪化する。
【0037】
本発明のゴム組成物は、シリカおよびカーボンブラック以外の他の充填剤を配合することができる。他の充填剤としては、例えば、クレー、タルク、炭酸カルシウム、マイカ、水酸化アルミニウム等のタイヤ用ゴム組成物に一般的に用いられる材料を例示することができる。
【0038】
本発明のアンダートレッド用ゴム組成物では、上述のシリカを配合するにあたって、シランカップリング剤を配合してもよい。シランカップリング剤を配合することにより、ゴム成分(ジエン系ゴム)に対するシリカの分散性を向上することができる。シランカップリング剤としては、例えば、ビス-(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラサルファイド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジサルファイド、3-トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾールテトラサルファイド、γ-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-オクタノイルチオプロピルトリエトキシシラン等を例示することができる。これらのなかでも、特に、分子中にテトラスルフィド結合を有するものを好適に用いることができる。シランカップリング剤の配合量は、シリカの配合量に対し、好ましくは3.0質量%~10.0質量%、より好ましくは4.0質量%~9.0質量%にするとよい。シランカップリング剤の配合量がシリカの配合量の3.0質量%未満であると、配合量が微量であるため、シランカップリング剤を配合することによる効果が十分に見込めなくなる。シランカップリング剤の配合量がシリカ配合量の10質量%を超えるとシランカップリング剤どうしが縮合し、ゴム組成物における所望の硬度や強度を得ることが難しくなる。
【0039】
本発明のアンダートレッド用ゴム組成物には、上記以外の他の配合剤を添加することができる。他の配合剤としては、加硫または架橋剤、加硫促進剤、老化防止剤、液状ポリマーなど、一般的にタイヤ用ゴム組成物に使用される各種配合剤を例示することができる。これら配合剤の配合量は本発明の目的に反しない限り、従来の一般的な配合量にすることができる。また、混練機としは、通常のゴム用混練機械、例えば、バンバリーミキサー、ニーダー、ロール等を使用することができる。
【0040】
本発明のアンダートレッド用ゴム組成物は、上述のようにタイヤのアンダートレッド層に好適に用いることができ、本発明のアンダートレッド用ゴム組成物からなるアンダートレッド層を備えたタイヤは、本発明のアンダートレッド用ゴム組成物の優れた物性により、良好な低発熱性を確保しながら、操縦安定性や高速耐久性を改善することができる。このように本発明のアンダートレッド用ゴム組成物がタイヤに用いられた際に、アンダートレッド層を構成するアンダートレッドゴム(つまり本発明のアンダートレッド用ゴム組成物の加硫物)の23℃における100%伸長時の引張応力M100UT〔単位:MPa〕と、ベルト層7においてベルトコードを被覆するコートゴムの23℃における100%伸長時の引張応力M100B〔単位:MPa〕との比M100UT/M100Bが好ましくは0.4~1.0、より好ましくは0.5~0.9であるとよい。このように本発明のアンダートレッド用ゴム組成物が使用されたアンダートレッド層と、その内周側に配置されたベルト層7(コートゴム)との引張応力(M100)の関係を適正化することで、低発熱性を確保しながら、操縦安定性や高速耐久性を改善するには有利になる。比M100UT/M100Bが0.4未満であると低発熱性、操縦安定性、高速耐久性を改善する効果が限定的になる。比M100UT/M100Bが1.0を超えると低発熱性、操縦安定性、高速耐久性を改善する効果が限定的になる。
【0041】
以下、実施例によって本発明を更に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例
【0042】
タイヤサイズが245/45R18であり、図1に示す基本構造を有し、アンダートレッド用ゴム組成物の配合と、アンダートレッドゴムおよびベルトコートゴムの23℃における100%伸長時の引張応力(M100UT、M100B)およびその比M100UT/M100Bが表1~2のように設定された標準例1、比較例1~7、実施例1~10のタイヤ(試験タイヤ)を製造した。
【0043】
尚、アンダートレッド用ゴム組成物の配合について、すべての例で共通する配合は表3にまとめて示した。表1~2には、各例で使用したベルトコートゴムの種類を併せて記載した。ベルトコートゴムの種類は、表4に記載したコートゴムA~Bの番号を記載し、これらコートゴムA~Bの配合は表4に示した通りである。
【0044】
表1~2,4に示した引張応力(M100UT、M100B)は、アンダートレッドゴムおよびコートゴムを使用し、JIS K6251に準拠して3号型ダンベル試験片を作成し、引張速度500mm/分、温度23℃の条件で測定した値(単位:MPa)である。
【0045】
各試験タイヤを用いて、下記に示す方法により、操縦安定性、低転がり抵抗性、高速耐久性の評価を行った。
【0046】
操縦安定性
各試験タイヤをリムサイズ18×7Jのホイールに組み付けて、空気圧を240kPaとし、排気量2000ccの試験車両に装着し、舗装路面からなるテストコースにて、操縦安定性についてテストドライバーによる官能評価を行った。評価結果は、標準例1の結果を3点(基準)とする5段階で評価した。この点数が大きいほど操縦安定性が優れていることを意味する。
【0047】
低転がり抵抗性
各試験タイヤをリムサイズ18×7Jのホイールに組み付けて、室内ドラム試験機(ドラム径:1707.6mm)を用いて、ISO28580に準拠し、空気圧210kPa、荷重4.82kN、速度80km/hの条件で転がり抵抗を測定した。評価結果は、測定値の逆数を用いて、標準例1を100とする指数で示した。この指数値が大きいほど転がり抵抗が低く、低転がり抵抗性に優れることを意味する。
【0048】
ベルトセパ耐久性
各試験タイヤをリムサイズ18×7Jのホイールに組み付けて、内圧350kPaで酸素を封入した状態で温度70℃の条件下で7日間保管した。このように前処理が行われた試験タイヤを、空気圧230kPaを充填して室内ドラム試験機(ドラム径:1707.6mm)に装着し、JATMA最大負荷能力の88%の荷重を負荷し、速度100km/hの条件で、12時間、30kmを走行する走行試験を実施した。走行後にタイヤを切開し、ベルト幅方向端部における幅方向へのセパレーション長さを測定した。評価結果は、測定値の逆数を用い、標準例1の値を100とする指数で示した。この指数値が大きいほどセパレーション長さが小さく、ベルトエッジセパレーションに対する耐久性に優れることを意味する。
【0049】
【表1】
【0050】
【表2】
【0051】
【表3】
【0052】
表1~3において使用した原材料の種類を下記に示す。
・NR:天然ゴム、TSR20
・BR1:日本ゼオン社製 Nipol 1220(コバルト触媒により合成された未変性のブタジエンゴム、ガラス転移温度Tg=-105℃、シス-1,4結合含有率:98モル%)
・BR2:日本ゼオン社製 Nipol 1250H(リチウム触媒により合成された変性ブタジエンゴム、変性基:N-メチルピロリドン、ガラス転移温度Tg=-93℃、シス-1,4結合含有率:35モル%)
・BR3:JSR社製 ENEOS BR511(ネオジム触媒により合成された変性ブタジエンゴム、ガラス転移温度Tg=-78℃、シス-1,4結合含有率:25モル%)
・BR4:JSR社製 ENEOS BR54(ネオジム触媒により合成された変性ブタジエンゴム、ガラス転移温度Tg=-107℃、変性基:ヒドロカルビルオキシシラン化合物、シス-1,4結合含有率:96モル%)
・SBR:JSR社製 ENEOS HPR940
・CB1:カーボンブラック(等級:ISAF)、東海カーボン社製 シースト6(CTAB吸着比表面積:109m2/g)
・CB2:カーボンブラック(等級:HAF)、東海カーボン社製 シースト3(CTAB吸着比表面積:82m2/g)
・CB3:カーボンブラック(等級:FEF)、東海カーボン社製 シーストF(CTAB吸着比表面積:47m2/g)
・シリカ1:Evonik社製 ULTRASIL VN3GR(CTAB吸着比表面積:175m2/g)
・シリカ2:Solvay社製 ZEOSIL 115GR(CTAB吸着比表面積:115m2/g)
・シリカ3:Solvay社製 Zeosil 1185GR(CTAB吸着比表面積:80m2/g)
・シランカップリング剤:Evonik industries AG社製 Si69
・タッキファイヤー:日立化成社製 ヒタノール1502Z
・酸化亜鉛:正同化学工業社製 酸化亜鉛3種
・老化防止剤:NOCIL LIMITED社製 PILFLEX 13
・ステアリン酸:日新理化社製 ステアリン酸50S
・硫黄:四国化成工業社製 ミュークロンOT‐20
・加硫促進剤:三新化学工業社製 サンセラーNS‐G
【0053】
【表4】
【0054】
表4において使用した原材料の種類を下記に示す。
・NR:天然ゴム、天然ゴム、RSS#3
・CB:カーボンブラック(等級:HAF)、東海カーボン社製 シースト300
・タッキファイヤー:日立化成社製 ヒタノール1502Z
・酸化亜鉛:正同化学工業社製 酸化亜鉛3種
・老化防止剤:NOCIL LIMITED社製 PILFLEX 13
・ステアリン酸コバルト:アイレック社製 ステアリン酸コバルト
・硫黄:四国化成工業社製 ミュークロンOT‐20
・加硫促進剤:三新化学工業社製 サンセラーNS‐G
【0055】
表1~2から明らかなように、実施例1~10は、標準例1に対して、操縦安定性、低転がり抵抗性、ベルトセパ耐久性を向上し、これら性能をバランスよく両立した。一方、比較例1は、シリカのCTAB比表面積が大きいため、操縦安定性およびベルトセパ耐久性が悪化した。比較例2は、シリカのCTAB比表面積が大きいため、操縦安定性およびベルトセパ耐久性が悪化した。比較例3は、未変性のブタジエンゴムが用いられているため、ベルトセパ耐久性が低下した。比較例4は、シリカの配合量が少ないため、ベルトセパ耐久性が低下した。比較例5は、シリカの配合量が多いため、操縦安定性およびベルトセパ耐久性が低下した。比較例6は、イソプレン系ゴム(天然ゴム)の配合量が多く、未変性のブタジエンゴムの配合量が少ないため、ベルトセパ耐久性が低下した。比較例7は、イソプレン系ゴム(天然ゴム)の配合量が少なく、未変性のブタジエンゴムの配合量が多いため、操縦安定性およびベルトセパ耐久性が低下した。
【0056】
本開示は、以下の発明を包含する。
発明[1] イソプレン系ゴム40質量%~90質量%と、変性ブタジエンゴムおよび/または変性スチレンブタジエン10質量%~40質量%とを含むゴム成分100質量部に対して、CTAB吸着比表面積が60m2/g~100m2/gであるシリカが3質量部~60質量部配合されたことを特徴とするアンダートレッド用ゴム組成物。
発明[2] 前記ゴム成分100質量部に対して、CTAB吸着比表面積が40m2/g~120m2/gであるカーボンブラックが20質量部~70質量部配合されたことを特徴とする発明[1]に記載のアンダートレッド用ゴム組成物。
発明[3] 前記変性ブタジエンゴムのガラス転移温度が-85℃以下であることを特徴とする発明[1]または[2]に記載のアンダートレッド用ゴム組成物。
発明[4] 前記変性ブタジエンゴムのシス-1,4結合含有率が95%以上であることを特徴とする発明[1]~[3]のいずれかに記載のアンダートレッド用ゴム組成物。
発明[5] シランカップリング剤が配合され、前記シリカの配合量に対する前記シランカップリング剤の配合量の割合が3.0質量%~10.0質量%であることを特徴とする発明[1]~[4]のいずれかに記載のアンダートレッド用ゴム組成物。
発明[6] タイヤ周方向に延在して環状をなすトレッド部と、前記トレッド部の両側に配置された一対のサイドウォール部と、これらサイドウォール部のタイヤ径方向内側に配置された一対のビード部とを備え、前記一対のビード部間に装架された少なくとも1層のカーカス層と、前記トレッド部における前記カーカス層の外周側に配置された複数層のベルト層とを有し、前記トレッド部がタイヤ踏面を構成するキャップトレッド層とその内周側に配置されるアンダートレッド層とを積層して構成されたタイヤであって、前記アンダートレッド層が発明[1]~[5]のいずれかに記載のアンダートレッド用ゴム組成物で構成されたことを特徴とするタイヤ。
発明[7] 前記アンダートレッド層を構成するアンダートレッドゴムの23℃における100%伸長時の引張応力M100UT〔単位:MPa〕と、前記ベルト層においてベルトコードを被覆するコートゴムの23℃における100%伸長時の引張応力M100B〔単位:MPa〕との比M100UT/M100Bが0.4~1.0であることを特徴とする発明[6]に記載のタイヤ。
【符号の説明】
【0057】
1 トレッド部
2 サイドウォール部
3 ビード部
4 カーカス層
5 ビードコア
6 ビードフィラー
7 ベルト層
8 ベルトカバー層
10 トレッドゴム層
11 キャップトレッド層
12 アンダートレッド層
20 サイドゴム層
30 リムクッションゴム層
CL タイヤ赤道
【要約】
【課題】良好な低発熱性を確保しながら、操縦安定性や高速耐久性を改善し、これら性能をバランスよく高度に両立することを可能にしたアンダートレッド用ゴム組成物を提供する。
【解決手段】イソプレン系ゴム40質量%~90質量%と、変性ブタジエンゴムおよび/または変性スチレンブタジエン10質量%~40質量%とを含むゴム成分100質量部に対して、CTAB吸着比表面積が60m2/g~100m2/gであるシリカを3質量部~60質量部配合する。
【選択図】図1
図1