(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-01
(45)【発行日】2024-10-09
(54)【発明の名称】熱交換器の製造方法
(51)【国際特許分類】
B21D 53/08 20060101AFI20241002BHJP
F28F 1/02 20060101ALI20241002BHJP
F28D 1/053 20060101ALI20241002BHJP
F28F 1/30 20060101ALI20241002BHJP
【FI】
B21D53/08 P
F28F1/02 A
F28D1/053 A
F28F1/30 Z
(21)【出願番号】P 2023058570
(22)【出願日】2023-03-31
【審査請求日】2024-03-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】酒井 皓平
(72)【発明者】
【氏名】的場 由朗
(72)【発明者】
【氏名】小田 貴也
(72)【発明者】
【氏名】清水 基史
【審査官】永井 友子
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-262485(JP,A)
【文献】特開2013-221713(JP,A)
【文献】特開2020-169734(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第112444146(CN,A)
【文献】中国実用新案第205748069(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 53/08
F28F 1/02
F28D 1/053
F28F 1/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の扁平管(20)と、それぞれが複数の板状のフィン(30)からなる第1フィン群(41)及び第2フィン群(42)とを備え、複数の上記フィン(30)のそれぞれには、該フィン(30)の外縁に開口端(33)を有するスロット(32)が複数形成され、複数の上記扁平管(20)のそれぞれが、上記第1フィン群(41)を構成する各上記フィン(30)の上記スロット(32)と、上記第2フィン群(42)を構成する各上記フィン(30)の上記スロット(32)とに挿し込まれた熱交換器(10)の製造方法であって、
上記第1フィン群(41)を構成する上記フィン(30)の上記スロット(32)に上記扁平管(20)を挿し込み、上記第1フィン群(41)と複数の上記扁平管(20)からなる組立体(50)を形成する第1工程と、
上記第2フィン群(42)を構成する上記フィン(30)の上記スロット(32)の上記開口端(33)が上側に位置する姿勢で上記第2フィン群(42)を配置し、上記組立体(50)を上記扁平管(20)が下側に位置する姿勢で配置し、上記第2フィン群(42)を構成する上記フィン(30)の上記スロット(32)に上記組立体(50)の上記扁平管(20)を上方から挿し込む第2工程とを含む
熱交換器の製造方法。
【請求項2】
上記第1工程では、上記第1フィン群(41)を構成する上記フィン(30)の上記スロット(32)の上記開口端(33)が上側に位置する姿勢で上記第1フィン群(41)を配置し、上記第1フィン群(41)を構成する上記フィン(30)の上記スロット(32)に上記扁平管(20)を上方から挿し込み、
上記第1工程において形成された上記組立体(50)を、上記扁平管(20)が上側に位置する姿勢から上記扁平管(20)が下側に位置する姿勢に反転させる反転工程を、上記第2工程の前に行う
請求項1に記載の熱交換器の製造方法。
【請求項3】
上記第2工程では、下面が平坦な押付け面(66)である押付け部材(65)を用い、上記扁平管(20)が下側に位置する姿勢で配置された上記組立体(50)の上記フィン(30)の上側の外縁に上記押付け部材(65)の上記押付け面(66)を接触させ、上記押付け部材(65)によって上記組立体(50)を押し下げることにより、上記第2フィン群(42)を構成する上記フィン(30)の上記スロット(32)に上記組立体(50)の上記扁平管(20)を上方から挿し込む
請求項1又は2に記載の熱交換器の製造方法。
【請求項4】
上記第2工程において用いられる上記押付け部材(65)は、それぞれの下面が上記押付け面(66)を構成する複数の押付けブロック(67)を備える
請求項3に記載の熱交換器の製造方法。
【請求項5】
上記第2工程は、上記扁平管(20)が下側に位置する姿勢で配置された上記組立体(50)の撓みを矯正する矯正工程を含み、
上記第2工程では、撓みを矯正された状態の上記組立体(50)の上記扁平管(20)を、上記第2フィン群(42)を構成する上記フィン(30)の上記スロット(32)に上方から挿し込む
請求項1又は2に記載の熱交換器の製造方法。
【請求項6】
上記矯正工程は、上記組立体(50)を水平方向から挟み込むことによって上記組立体(50)の水平方向の撓みを矯正する第1矯正工程を含む
請求項5に記載の熱交換器の製造方法。
【請求項7】
上記第1矯正工程では、上記組立体(50)を、上記扁平管(20)の配列方向の両側から挟み込むと共に、上記フィン(30)の配列方向の両側から挟み込む
請求項6に記載の熱交換器の製造方法。
【請求項8】
上記第2工程では、下面が平坦な押付け面(66)である押付け部材(65)を用い、上記扁平管(20)が下側に位置する姿勢で配置された上記組立体(50)の上記フィン(30)の上側の外縁に上記押付け部材(65)の上記押付け面(66)を接触させ、上記押付け部材(65)によって上記組立体(50)を押し下げることにより、上記第2フィン群(42)を構成する上記フィン(30)の上記スロット(32)に上記組立体(50
)の上記扁平管(20)を上方から挿し込み、
上記矯正工程は、上記組立体(50)を上記押付け部材(65)の上記押付け面(66)に押し付けることによって、上記組立体(50)の上下方向の撓みを矯正する第2矯正工程を含む
請求項5に記載の熱交換器の製造方法。
【請求項9】
上記第2矯正工程では、上記組立体(50)における上記扁平管(20)の両方の端部を持ち上げることによって、上記組立体(50)を上記押付け部材(65)の上記押付け面(66)に押し付ける
請求項8に記載の熱交換器の製造方法。
【請求項10】
上記第2矯正工程では、上記組立体(50)における上記扁平管(20)の両方の端部と上記扁平管(20)の伸長方向の中間部とを持ち上げることによって、上記組立体(50)を上記押付け部材(65)の上記押付け面(66)に押し付ける
請求項8に記載の熱交換器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、熱交換器の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、偏平な形状の伝熱管(扁平管)と、板状のフィンとを備えた熱交換器が開示されている。この熱交換器において、上下に配列された複数の伝熱管のそれぞれは、風上側の部分が上流側平板フィンの偏平溝に挿し込まれ、風下側の部分が下流側平板フィンの偏平溝に挿し込まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したように、特許文献1は、扁平管の風上側と風下側にフィン群を個別に配置した構造の熱交換器を開示する。しかし、このような構造の熱交換器を製造する具体的な方法が、十分に検討されていなかった。
【0005】
本開示の目的は、扁平管と二つのフィン群とを備えた熱交換器を製造することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1の態様は、複数の扁平管(20)と、それぞれが複数の板状のフィン(30)からなる第1フィン群(41)及び第2フィン群(42)とを備え、複数の上記フィン(30)のそれぞれには、該フィン(30)の外縁に開口端(33)を有するスロット(32)が複数形成され、複数の上記扁平管(20)のそれぞれが、上記第1フィン群(41)を構成する各上記フィン(30)の上記スロット(32)と、上記第2フィン群(42)を構成する各上記フィン(30)の上記スロット(32)とに挿し込まれた熱交換器(10)の製造方法を対象とする。この態様の熱交換器(10)の製造方法は、上記第1フィン群(41)を構成する上記フィン(30)の上記スロット(32)に上記扁平管(20)を挿し込み、上記第1フィン群(41)と複数の上記扁平管(20)からなる組立体(50)を形成する第1工程と、上記第2フィン群(42)を構成する上記フィン(30)の上記スロット(32)の上記開口端(33)が上側に位置する姿勢で上記第2フィン群(42)を配置し、上記組立体(50)を上記扁平管(20)が下側に位置する姿勢で配置し、上記第2フィン群(42)を構成する上記フィン(30)の上記スロット(32)に上記組立体(50)の上記扁平管(20)を上方から挿し込む第2工程とを含む。
【0007】
第1の態様の製造方法では、第1工程と第2工程が行われる。第1工程では、第1フィン群(41)と扁平管(20)を組み合わせることによって、組立体(50)が形成される。第2工程において、第2フィン群(42)は、スロット(32)の開口端(33)が上向きとなる姿勢で配置され、組立体(50)は、扁平管(20)が下側に位置する姿勢で配置される。第2工程では、第2フィン群(42)を構成するフィン(30)のスロット(32)に対して、組立体(50)の扁平管(20)が上方から挿し込まれる。その結果、扁平管(20)と、第1フィン群(41)と、第2フィン群(42)とが組み合わされる。
【0008】
本開示の第2の態様は、上記第1の態様において、上記第1工程では、上記第1フィン群(41)を構成する上記フィン(30)の上記スロット(32)の上記開口端(33)が上側に位置する姿勢で上記第1フィン群(41)を配置し、上記第1フィン群(41)を構成する上記フィン(30)の上記スロット(32)に上記扁平管(20)を上方から挿し込み、上記第1工程において形成された上記組立体(50)を、上記扁平管(20)が上側に位置する姿勢から上記扁平管(20)が下側に位置する姿勢に反転させる反転工程を、上記第2工程の前に行うものである。
【0009】
第2の態様の第1工程では、第1フィン群(41)を構成するフィン(30)のスロット(32)に対して、扁平管(20)が上方から挿し込まれる。この態様では、第1工程と第2工程の間に反転工程が行われる。反転工程では、第1工程で形成された組立体(50)が、扁平管(20)が上側に位置する姿勢から扁平管(20)が下側に位置する姿勢に反転させられる。
【0010】
本開示の第3の態様は、上記第1又は第2の態様において、上記第2工程では、下面が平坦な押付け面(66)である押付け部材(65)を用い、上記扁平管(20)が下側に位置する姿勢で配置された上記組立体(50)の上記フィン(30)の上側の外縁に上記押付け部材(65)の上記押付け面(66)を接触させ、上記押付け部材(65)によって上記組立体(50)を押し下げることにより、上記第2フィン群(42)を構成する上記フィン(30)の上記スロット(32)に上記組立体(50)の上記扁平管(20)を上方から挿し込むものである。
【0011】
第3の態様の第2工程では、組立体(50)を押付け部材(65)で押し下げることによって、第2フィン群(42)を構成するフィン(30)のスロット(32)に、組立体(50)の扁平管(20)が挿し込まれる。
【0012】
本開示の第4の態様は、上記第3の態様において、上記第2工程において用いられる上記押付け部材(65)は、それぞれの下面が上記押付け面(66)を構成する複数の押付けブロック(67)を備えるものである。
【0013】
第4の態様の第2工程では、複数の押付けブロック(67)を備えた押付け部材(65)によって、組立体(50)が押し下げられる。
【0014】
本開示の第5の態様は、上記第1又は第2の態様において、上記第2工程は、上記扁平管(20)が下側に位置する姿勢で配置された上記組立体(50)の撓みを矯正する矯正工程を含み、上記第2工程では、撓みを矯正された状態の上記組立体(50)の上記扁平管(20)を、上記第2フィン群(42)を構成する上記フィン(30)の上記スロット(32)に上方から挿し込むものである。
【0015】
第5の態様の第2工程では、撓みを矯正された状態の組立体(50)が、第2フィン群(42)と組み合わされる。そのため、組立体(50)の扁平管(20)を、第2フィン群(42)を構成するフィン(30)のスロット(32)に挿し込む過程で、扁平管(20)によってフィン(30)が潰される可能性を低減できる。
【0016】
本開示の第6の態様は、上記第5の態様において、上記矯正工程は、上記組立体(50)を水平方向から挟み込むことによって上記組立体(50)の水平方向の撓みを矯正する第1矯正工程を含むものである。
【0017】
第6の態様の第1矯正工程では、扁平管(20)が下側に位置する姿勢で配置された組立体(50)の水平方向の撓みが矯正される。
【0018】
本開示の第7の態様は、上記第6の態様において、上記第1矯正工程では、上記組立体(50)を、上記扁平管(20)の配列方向の両側から挟み込むと共に、上記フィン(30)の配列方向の両側から挟み込むものである。
【0019】
第7の態様の第1矯正工程において、組立体(50)は、扁平管(20)の配列方向の両側と、フィン(30)の配列方向の両側のそれぞれから挟み込まれる。その結果、扁平管(20)が下側に位置する姿勢で配置された組立体(50)の水平方向の撓みが矯正される。
【0020】
本開示の第8の態様は、上記第5~第7のいずれか一つの態様において、上記第2工程では、下面が平坦な押付け面(66)である押付け部材(65)を用い、上記扁平管(20)が下側に位置する姿勢で配置された上記組立体(50)の上記フィン(30)の上側の外縁に上記押付け部材(65)の上記押付け面(66)を接触させ、上記押付け部材(65)によって上記組立体(50)を押し下げることにより、上記第2フィン群(42)を構成する上記フィン(30)の上記スロット(32)に上記組立体(50)の上記扁平管(20)を上方から挿し込み、上記矯正工程は、上記組立体(50)を上記押付け部材(65)の上記押付け面(66)に押し付けることによって、上記組立体(50)の上下方向の撓みを矯正する第2矯正工程を含むものである。
【0021】
第8の態様の第2工程では、組立体(50)を押付け部材(65)で押し下げることによって、第2フィン群(42)を構成するフィン(30)のスロット(32)に、組立体(50)の扁平管(20)が挿し込まれる。また、第2矯正工程では、組立体(50)が押付け部材(65)の押付け面(66)に押し付けられる。その結果、扁平管(20)が下側に位置する姿勢で配置された組立体(50)の上下方向の撓みが矯正される。
【0022】
本開示の第9の態様は、上記第8の態様において、上記第2矯正工程では、上記組立体(50)における上記扁平管(20)の両方の端部を持ち上げることによって、上記組立体(50)を上記押付け部材(65)の上記押付け面(66)に押し付けるものである。
【0023】
第9の態様の第2矯正工程において、組立体(50)は、扁平管(20)の両方の端部が持ち上げられる。その結果、組立体(50)が押付け部材(65)の押付け面(66)に押し付けられ、組立体(50)の上下方向の撓みが矯正される。
【0024】
本開示の第10の態様は、上記第8の態様において、上記第2矯正工程では、上記組立体(50)における上記扁平管(20)の両方の端部と上記扁平管(20)の伸長方向の中間部とを持ち上げることによって、上記組立体(50)を上記押付け部材(65)の上記押付け面(66)に押し付けるものである。
【0025】
第10の態様の第2矯正工程において、組立体(50)は、扁平管(20)の両方の端部と、扁平管(20)の伸長方向の中間部とが持ち上げられる。その結果、組立体(50)が押付け部材(65)の押付け面(66)に押し付けられ、組立体(50)の上下方向の撓みが矯正される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図2】
図2は、
図1のA-A断面を示す熱交換器の断面図である。
【
図4】
図4は、熱交換器の製造方法を示す工程図である。
【
図5】
図5は、第1工程における第1フィン群を示す概略斜視図である。
【
図6】
図6は、第1工程における第1フィン群と扁平管の正面図である。
【
図7】
図7は、第1工程において形成された組立体の概略斜視図である。
【
図8】
図8は、第1工程において形成された組立体の正面図である。
【
図9】
図9は、反転工程における反転の過程を示す組立体の正面図である。
【
図11】
図11は、第2工程における組立体と押付け部材の平面図である。
【
図12】
図12は、第2工程における組立体と挟持部材の平面図である。
【
図13】
図13は、第1矯正工程における組立体と挟持部材の平面図である。
【
図16】
図16は、第2工程において組立体を下方へ移動させる過程を示す、
図10に相当する断面図である。
【
図17】
図17は、第2工程の途中における組立体と第2フィン群を示す、
図10に相当する断面図である。
【
図18】
図18は、第2工程において組立体と第2フィン群の組み合わせを完了した状態を示す、
図10に相当する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
実施形態について説明する。本実施形態は、熱交換器(10)の製造方法である。
【0028】
-熱交換器-
本実施形態の製造方法によって製造される熱交換器(10)について説明する。この熱交換器(10)は、冷凍サイクルを行う空気調和機の冷媒回路に設けられ、冷媒回路を流れる冷媒を空気と熱交換させる。
【0029】
図1及び
図2に示すように、熱交換器(10)は、一つのコア(15)と、二つの第1ヘッダ集合管(16,17)とを備える。コア(15)は、複数の扁平管(20)と、複数のフィン(30)とを備える。扁平管(20)、フィン(30)、及びヘッダ集合管(16,17)の材質は、いずれもアルミニウムまたはアルミニウム合金である。
【0030】
〈ヘッダ集合管〉
二つのヘッダ集合管(16,17)のそれぞれは、細長い筒状の部材である。なお、ここに示すヘッダ集合管(16,17)の形状と構造は、単なる一例である。
図1に示す熱交換器(10)では、コア(15)の左側に第1ヘッダ集合管(16)が配置され、コア(15)の右側に第2ヘッダ集合管(17)が配置される。
【0031】
〈扁平管〉
図2に示すように、扁平管(20)は、厚さよりも幅が長い扁平な形状の管である。この扁平管(20)は、その伸長方向と直交する断面が、角の丸い長方形状、又は両端が円弧となる長円形状である。
【0032】
図1に示すように、コア(15)において、複数の扁平管(20)は、それぞれの伸長方向(軸方向)が概ね水平方向となり、且つそれぞれの幅方向に沿った側面が互いに向かい合う姿勢で配置される。また、複数の扁平管(20)は、互いに一定の間隔をおいて上下に並んで配置される。
【0033】
コア(15)を構成する各扁平管(20)は、その一端部が第1ヘッダ集合管(16)に挿入され、その他端部が第2ヘッダ集合管(17)に挿入される。各ヘッダ集合管(16,17)は、ロウ付けによって扁平管(20)と接合される。
【0034】
図2に示すように、扁平管(20)には、複数の流路(21)が形成される。各流路(21)は、扁平管(20)の伸長方向に沿って延びる真っ直ぐな流路である。扁平管(20)では、複数の流路(21)が、扁平管(20)の幅方向に並んでいる。各流路(21)は、扁平管(20)の両方の端面に開口する。各流路(21)は、ヘッダ集合管(16,17)の内部空間と連通する。
【0035】
〈フィン〉
図3に示すように、フィン(30)は、細長い板状の部材である。フィン(30)の一方の長辺は、フィンの長手方向の一端から他端まで連続した直線状の連続縁部(31)である。
【0036】
フィン(30)には、複数のスロット(32)が形成される。スロット(32)は、扁平管(20)を挿し込むための細長い切欠きである。各スロット(32)は、フィン(30)の短辺方向(連続縁部(31)に直交する方向)に延びる。各スロット(32)は、フィン(30)の外縁に開口する。言い換えると、各スロット(32)は、フィン(30)の外縁に開口端(33)を有する。具体的に、各スロット(32)は、フィン(30)の他方の長辺(言い換えると、連続縁部(31)とは反対側の長辺)に開口する。
【0037】
フィン(30)において、複数のスロット(32)は、フィン(30)の長辺方向(連続縁部(31)と平行な方向)に、互いに一定の間隔をおいて形成される。一つのフィン(30)に形成されたスロット(32)の数は、コア(15)を構成する扁平管(20)の数と同じである。
【0038】
各スロット(32)は、管導入部(32a)と管保持部(32b)に区分される。管導入部(32a)は、開口端(33)に連続する部分である。管導入部(32a)の幅(連続縁部(31)と平行な方向の長さ)は、開口端(33)へ向かって次第に拡大する。管保持部(32b)は、フィン(30)の短辺方向に延びる細長い部分である。管保持部(32b)の幅(連続縁部(31)と平行な方向の長さ)は、実質的に一定である。また、管保持部(32b)の幅は、扁平管(20)の厚さよりも僅かに狭い。
【0039】
フィン(30)では、隣り合うスロット(32)の間の部分に、伝熱促進用の切り起こし(34)が形成される。
【0040】
なお、第1フィン群(41)を構成するフィン(30)の形状と、第2フィン群(42)を構成するフィン(30)の形状とは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。例えば、第1フィン群(41)を構成するフィン(30)と、第2フィン群(42)を構成するフィン(30)とで、切り起こし(34)の形状が異なっていてもよい。
【0041】
〈コア〉
図1及び
図2に示すように、コア(15)は、扁平管(20)と、第1フィン群(41)と、第2フィン群(42)とを備える。
【0042】
第1フィン群(41)と第2フィン群(42)のそれぞれは、複数のフィン(30)によって構成される。各フィン群(41,42)を構成するフィン(30)の数は、同じであるのが望ましいが、異なっていてもよい。各フィン群(41,42)において、複数のフィン(30)は、互いに向かい合う姿勢で、互いに一定の間隔をおいて配置される。各フィン群(41,42)では、各フィン(30)の対応するスロット(32)が、フィン(30)の配列方向に一列に並んでいる。
【0043】
第1フィン群(41)は、
図2における扁平管(20)の前側に配置される。第1フィン群(41)を構成する各フィン(30)は、連続縁部(31)が前側を向き、スロット(32)の開口端(33)が後側を向く姿勢で配置される。第1フィン群(41)を構成するフィン(30)のスロット(32)には、扁平管(20)のうち前側の部分が入り込む。第1フィン群(41)を構成するフィン(30)は、ロウ付けによって扁平管(20)に接合される。
【0044】
第2フィン群(42)は、
図2における扁平管(20)の後側に配置される。第2フィン群(42)を構成する各フィン(30)は、スロット(32)の開口端(33)が前側を向き、連続縁部(31)が後側を向く姿勢で配置される。第2フィン群(42)を構成するフィン(30)のスロット(32)には、扁平管(20)のうち後側の部分が入り込む。第2フィン群(42)を構成するフィン(30)は、ロウ付けによって扁平管(20)に接合される。
【0045】
-熱交換器の製造方法-
上述した構造の熱交換器(10)の製造方法について説明する。本実施形態の熱交換器(10)の製造方法では、コア組立工程と、ヘッダ取付工程と、接合工程とが順に行われる。
【0046】
コア組立工程は、扁平管(20)と、第1フィン群(41)と、第2フィン群(42)を組み合わせてコア(15)を形成する工程である。コア組立工程については、後ほど詳しく説明する。
【0047】
ヘッダ取付工程は、コア組立工程において形成されたコア(15)に、第1ヘッダ集合管(16)及び第2ヘッダ集合管(17)を取り付ける工程である。ヘッダ取付工程では、コア(15)を構成する各扁平管(20)の一方の端部が第1ヘッダ集合管(16)に挿し込まれ、コア(15)を構成する各扁平管(20)の他方の端部が第2ヘッダ集合管(17)に挿し込まれる。
【0048】
接合工程は、フィン(30)及びヘッダ集合管(16,17)と扁平管(20)とを、ロウ付けによって接合する工程である。接合工程では、ヘッダ集合管(16,17)を取り付けられた状態のコア(15)が、加熱炉等に収容されて加熱される。その結果、ロウ材が溶融し、フィン(30)及びヘッダ集合管(16,17)が扁平管(20)に接合される。
【0049】
-コア組立工程-
図4に示すように、コア組立工程では、第1工程と、反転工程と、第2工程とが順に行われる。第2工程では、矯正工程が行われる。矯正工程では、第1矯正工程と第2矯正工程とが行われる。
【0050】
〈第1工程〉
第1工程は、第1フィン群(41)と扁平管(20)を組み合わせて組立体(50)を形成する工程である。第1工程では、コア(15)を構成する扁平管(20)の全てが、第1フィン群(41)と組み合わされる。従って、第1工程では、完成品である熱交換器(10)を構成する扁平管(20)の全てが、第1フィン群(41)と組み合わされる。
【0051】
図5に示すように、第1工程では、第1フィン群(41)を構成する全てのフィン(30)が、互いに向かい合う姿勢で、互いに一定の間隔をおいて配列される。なお、
図5では、フィン(30)の切り起こし(34)の図示を省略している。各フィン(30)は、連続縁部(31)が下側となり、スロット(32)の開口端(33)が上側になる姿勢で配置される。また、複数のフィン(30)は、それぞれの対応するスロット(32)が、フィン(30)の配列方向に一列に並ぶように配置される。第1フィン群(41)を構成するフィン(30)は、
図5に示す姿勢を保つために、枠状またはトレイ状の部材に囲われる。
【0052】
図5に示す状態の第1フィン群(41)において、一列に並んだ各フィン(30)のスロット(32)は、スロット列(35)を形成する。この状態の第1フィン群(41)には、一つのフィン(30)に形成されたスロット(32)の数と同数のスロット列(35)が形成される。
【0053】
図6に示すように、第1工程では、第1フィン群(41)の各スロット列(35)に扁平管(20)が一本ずつ挿し込まれる。扁平管(20)は、対応するスロット列(35)を形成するスロット(32)に対して、扁平管(20)の幅方向が概ね鉛直方向となり、且つ扁平管(20)の伸長方向がフィン(30)の配列方向に沿う姿勢で、上から下に向かって挿し込まれる。
【0054】
その結果、
図7及び
図8に示すように、第1フィン群(41)と扁平管(20)が組み合わされた組立体(50)が形成される。第1工程が終了した時点において、組立体(50)は、フィン(30)の連続縁部(31)が下側に位置し、扁平管(20)が上側に位置する姿勢となっている。なお、
図7では、フィン(30)の切り起こし(34)の図示を省略している。
【0055】
〈反転工程〉
反転工程は、第1工程において形成された組立体(50)の姿勢を反転させる工程である。
【0056】
上述したように、第1工程が終了した時点において、組立体(50)は、扁平管(20)が上側に位置する姿勢となっている。
図9に示すように、反転工程では、組立体(50)を、扁平管(20)が上側に位置する姿勢から、扁平管(20)が下側に位置する姿勢に反転させる。反転工程では、図外のアーム状の部材で組立体(50)を保持し、このアーム状の部材を180°回転させることによって、組立体(50)の姿勢を反転させる。
【0057】
〈第2工程〉
第2工程は、組立体(50)と第2フィン群(42)を組み合わせてコア(15)を形成する工程である。第2工程では、組立体(50)の撓みを矯正する矯正工程が行われ、撓みを矯正された状態の組立体(50)が第2フィン群(42)と組み合わされる。
【0058】
〔第2フィン群の配置〕
第2工程において、第2フィン群(42)を構成するフィン(30)は、第1工程における第1フィン群(41)のフィン(30)と同様に配列される(
図5を参照)。具体的に、第2工程では、第2フィン群(42)を構成する全てのフィン(30)が、互いに向かい合う姿勢で、互いに一定の間隔をおいて配列される。各フィン(30)は、連続縁部(31)が下側となり、スロット(32)の開口端(33)が上側になる姿勢で配置される。また、複数のフィン(30)は、それぞれの対応するスロット(32)が、フィン(30)の配列方向に一列に並ぶように配置される。
【0059】
図10に示すように、第2フィン群(42)は、平板状の台部材(60)の上に載せられる。また、第2フィン群(42)を構成するフィン(30)は、
図5に示す姿勢を保つために、枠状またはトレイ状の部材に囲われる。この状態の第2フィン群(42)において、一列に並んだ各フィン(30)のスロット(32)は、スロット列(35)を形成する。この状態の第2フィン群(42)には、一つのフィン(30)に形成されたスロット(32)の数と同数のスロット列(35)が形成される。
【0060】
〔組立体の配置〕
図10に示すように、第2工程では、反転工程を経た組立体(50)が、第2フィン群(42)の上方に配置される。組立体(50)は、扁平管(20)が下側に位置する姿勢で、第2フィン群(42)の上方に配置される。この状態において、組立体(50)の各扁平管(20)は、対応する第2フィン群(42)のスロット列(35)と向かい合う。
【0061】
〔押付け部材〕
第2工程において、組立体(50)は、押付け部材(65)の下方に配置される。
図11に示すように、押付け部材(65)は、上方から見て組立体(50)の全体を覆う平板状の部材である。押付け部材(65)の下面は、平坦な押付け面(66)である。押付け面(66)は、組立体(50)の第1フィン群(41)を構成するフィン(30)の連続縁部(31)と向かい合う(
図10を参照)。
【0062】
〔挟持部材〕
図12に示すように、第2工程において、組立体(50)は、四つの挟持部材(71~74)に囲まれる。組立体(50)は、第1フィン群(41)を構成する各フィン(30)の一方の端部が第1挟持部材(71)と向かい合い、各フィン(30)の他方の端部が第2挟持部材(72)と向かい合う。また、組立体(50)は、各扁平管(20)の一方の端面が第3挟持部材(73)と向かい合い、各扁平管(20)の他方の端面が第4挟持部材(74)と向かい合う。
【0063】
第1挟持部材(71)と第2挟持部材(72)のそれぞれは、水平方向に延びる細長い部材である。第1挟持部材(71)と第2挟持部材(72)のそれぞれは、組立体(50)と向かい合う面が、実質的に鉛直面である。
【0064】
図10及び
図12において、第1挟持部材(71)は、組立体(50)の左側に配置され、第1フィン群(41)を構成するフィン(30)の左端と向かい合う。また、
図10及び
図12において、第2挟持部材(72)は、組立体(50)の右側に配置され、第1フィン群(41)を構成するフィン(30)の右端と向かい合う。
【0065】
第3挟持部材(73)と第4挟持部材(74)のそれぞれは、水平方向に延びる細長い部材である。
図14にも示すように、第3挟持部材(73)と第4挟持部材(74)のそれぞれは、挟持部(73a,74a)と支持部(73b,74b)とを備える。挟持部(73a,74a)は、組立体(50)と向かい合う面が、実質的に鉛直面である。支持部(73b,74b)は、挟持部(73a,74a)から組立体(50)側に向かって突出する部分である。支持部(73b,74b)の上面は、実質的に水平面である。
【0066】
図12において、第3挟持部材(73)は、組立体(50)の前側に配置される。第3挟持部材(73)は、挟持部(73a)が扁平管(20)の端面と向かい合い、支持部(73b)が扁平管(20)の端部の下方に位置する(
図14を参照)。また、
図12において、第4挟持部材(74)は、組立体(50)の後側に配置される。第4挟持部材(74)は、挟持部(74a)が扁平管(20)の端面と向かい合い、支持部(74b)が扁平管(20)の端部の下方に位置する(
図14を参照)。
【0067】
〔第1矯正工程〕
第1矯正工程は、扁平管(20)が下側に位置する姿勢で配置された組立体(50)の水平方向の撓みを矯正する工程である。
【0068】
ここで、組立体(50)において、第1フィン群(41)のスロット列(35)に挿し込まれた扁平管(20)は、摩擦力によって第1フィン群(41)に保持される。そのため、組立体(50)は、第1フィン群(41)と扁平管(20)が相対的に変位することによって、水平方向に撓むおそれがある。そこで、第1矯正工程では、組立体(50)の水平方向の撓みを矯正する。
【0069】
図12に示すように、第1矯正工程では、第2挟持部材(72)が組立体(50)に押し付けられる。その結果、
図13に示すように、組立体(50)は、第1挟持部材(71)と第2挟持部材(72)によって、
図13における左右の両側から挟み込まれる。このように、組立体(50)は、第1挟持部材(71)と第2挟持部材(72)によって、扁平管(20)の配列方向(言い換えると、フィン(30)の長手方向)の両側から挟み込まれる。なお、
図12及び
図13では、押付け部材(65)の図示を省略している。
【0070】
また、
図12に示すように、第1矯正工程では、第3挟持部材(73)と第4挟持部材(74)のそれぞれが、組立体(50)に押し付けられる。その結果、
図13に示すように、組立体(50)は、第3挟持部材(73)と第4挟持部材(74)によって、
図13における前後の両側から挟み込まれる。このように、組立体(50)は、第3挟持部材(73)と第4挟持部材(74)によって、フィン(30)の配列方向(言い換えると、扁平管(20)の伸長方向)の両側から挟み込まれる。
【0071】
第1矯正工程では、扁平管(20)が下側に位置する姿勢の組立体(50)が、第1挟持部材(71)と第2挟持部材(72)によって扁平管(20)の配列方向の両側から挟み込まれると共に、第3挟持部材(73)と第4挟持部材(74)によってフィン(30)の配列方向の両側から挟み込まれる。その結果、扁平管(20)が下側に位置する姿勢で配置された組立体(50)の水平方向の撓みが矯正される。
【0072】
〔第2矯正工程〕
第2矯正工程は、扁平管(20)が下側に位置する姿勢で配置された組立体(50)の上下方向の撓みを矯正する工程である。
【0073】
ここで、扁平管(20)が下側に位置する姿勢で配置された組立体(50)は、フィン(30)が弾性変形することによって、扁平管(20)の配列方向(
図10の左右方向)の中央付近が下側に下がるように湾曲するおそれがある。また、扁平管(20)が下側に位置する姿勢で配置された組立体(50)が上側に湾曲した状態になる場合もある。
【0074】
組立体(50)が湾曲すると、各扁平管(20)の幅方向が鉛直方向に対して傾く。そのため、扁平管(20)を第2フィン群(42)のスロット列(35)に上方から真っ直ぐに差し込めなくなり、その結果、第2フィン群(42)のフィン(30)が潰れるおそれがある。そこで、第2矯正工程では、組立体(50)の上下方向の撓みを矯正する。
【0075】
図14に示すように、第2矯正工程では、第3挟持部材(73)及び第4挟持部材(74)が上方へ移動し、支持部(73b,74b)の上面が扁平管(20)の端部に当たる。
図15に示すように、四つの挟持部材(71~74)によって水平方向に挟み込まれた状態の組立体(50)は、第3挟持部材(73)及び第4挟持部材(74)によって持ち上げられ、押付け部材(65)の押付け面(66)に押し付けられる。押付け部材(65)の押付け面(66)は、平坦な水平面である。そのため、組立体(50)を押付け部材(65)に押し付けると、第1フィン群(41)を構成するフィン(30)の連続縁部(31)が押付け面(66)に沿って真っ直ぐになり、組立体(50)の上下方向の撓みが矯正される。
【0076】
〔組立体と第2フィン群の組み合わせ〕
組立体(50)は、水平方向と上下方向の撓みを矯正された状態で、第2フィン群(42)と組み合わされる。
【0077】
図16に示すように、組立体(50)は、四つの挟持部材(71~74)によって水平方向に挟み込まれると共に、押付け部材(65)の押付け面(66)に押し付けられた状態で、下方へ移動する。
【0078】
組立体(50)が下方へ移動すると、
図17に示すように、組立体(50)の各扁平管(20)の下側の部分が、対応する第2フィン群(42)のスロット列(35)に入り込む。その後、組立体(50)は、押付け部材(65)によって、更に下方に押し下げられる。その結果、
図18に示すように、組立体(50)の各扁平管(20)が第2フィン群(42)の対応するスロット列(35)に入り込み、組立体(50)が第2フィン群(42)と組み合わされる。このようにして、扁平管(20)と第1フィン群(41)と第2フィン群とで構成されたコア(15)が形成される。
【0079】
-実施形態の特徴(1)-
本実施形態の熱交換器(10)の製造方法では、第1工程と第2工程とが行われる。第1工程では、第1フィン群(41)と扁平管(20)を組み合わせることによって、組立体(50)が形成される。第2工程において、第2フィン群(42)は、スロット(32)の開口端(33)が上向きとなる姿勢で配置され、組立体(50)は、扁平管(20)が下側に位置する姿勢で配置される。第2工程では、第2フィン群(42)を構成するフィン(30)のスロット(32)に対して、組立体(50)の扁平管(20)が上方から挿し込まれる。その結果、扁平管(20)と、第1フィン群(41)と、第2フィン群(42)とが組み合わされる。
【0080】
本実施形態の製造方法の第1工程では、第1フィン群(41)を構成するフィン(30)のスロット(32)に対して、扁平管(20)が上方から挿し込まれる。そのため、
図5に示すように配列された第1フィン群(41)のフィン(30)を例えば安定した台状の部材の上に設置し、その状態の第1フィン群(41)の各スロット列(35)に扁平管(20)を挿し込むことができる。そのため、第1フィン群(41)と扁平管(20)を組み合わせる際に、第1フィン群(41)の各フィン(30)を整列された姿勢に確実に保つことができ、第1フィン群(41)の各スロット列(35)に扁平管(20)を容易に挿し込むことできる。
【0081】
-実施形態の特徴(2)-
本実施形態の製造方法の第1工程において形成された組立体(50)は、扁平管(20)が上側に位置する姿勢となっている。本実施形態の製造方法では、反転工程を行い、組立体(50)を扁平管(20)が下側に位置する姿勢に反転させた後に、第2工程を行う。
【0082】
第2工程では、扁平管(20)が下側に位置する姿勢の組立体(50)を押付け部材(65)で押し下げることによって、組立体(50)の扁平管(20)が第2フィン群(42)のスロット列(35)に挿し込まれる。この第2工程では、
図5に示すように配列された第2フィン群(42)のフィン(30)が安定した台部材(60)の上に設置され、その状態の第2フィン群(42)のスロット列(35)に対して、組立体(50)の扁平管(20)が上方から挿し込まれる。
【0083】
そのため、組立体(50)と第2フィン群(42)を組み合わせる際に、第2フィン群(42)の各フィン(30)を整列された姿勢に確実に保つことができ、第2フィン群(42)の各スロット列(35)に扁平管(20)を容易に挿し込むことできる。
【0084】
-実施形態の特徴(3)-
本実施形態の製造方法の第2工程では、組立体(50)の撓みを矯正する矯正工程が行われ、撓みを矯正された状態の組立体(50)が第2フィン群(42)と組み合わされる。
【0085】
ここで、組立体(50)が撓むと、組立体(50)を構成する各扁平管(20)の相対的な位置が、組立体(50)が撓んでいない状態における正規の位置から変化する。従って、組立体(50)が撓んでいると、組立体(50)の扁平管(20)を、対応する第2フィン群(42)のスロット列(35)の上方に正確に位置させることができない。そのため、撓んだ状態の組立体(50)を第2フィン群(42)と組み合わせると、組立体(50)の扁平管(20)が対応する第2フィン群(42)のスロット列(35)に上方から真っ直ぐに挿し込まれず、第2フィン群(42)のフィン(30)が扁平管(20)によって潰されるおそれがある。
【0086】
これに対し、本実施形態の製造方法の第2工程では、撓みを矯正された状態の組立体(50)が、第2フィン群(42)と組み合わされる。そのため、組立体(50)の扁平管(20)を、対応する第2フィン群(42)のスロット列(35)に上方から真っ直ぐに挿し込むことができる。従って、本実施形態の製造方法によれば、組立体(50)を第2フィン群(42)と組み合わせる際に、第2フィン群(42)のフィン(30)が扁平管(20)によって潰される可能性を低減できる。
【0087】
特に、本実施形態の製造方法の矯正工程では、第1矯正工程において、扁平管(20)が下側に位置する姿勢の組立体(50)の水平方向の撓みが矯正され、第2矯正工程において、扁平管(20)が下側に位置する姿勢の組立体(50)の上下方向の撓みが矯正される。そのため、本実施形態の製造方法の第2工程では、水平方向の撓みと上下方向の撓みとの両方を矯正された組立体(50)を、第2フィン群(42)と組み合わせることができる。従って、本実施形態によれば、組立体(50)を第2フィン群(42)と組み合わせる際に、第2フィン群(42)のフィン(30)が扁平管(20)によって潰される可能性を、確実に低減できる。
【0088】
-実施形態の変形例-
本実施形態の熱交換器(10)の製造方法には、下記のような変形例を適用できる。
【0089】
〈第1変形例〉
図19に示すように、第2工程で用いられる押付け部材(65)は、複数の押付けブロック(67)を備えていてもよい。
図19に示す押付け部材(65)は、二つの押付けブロック(67)を備える。二つの押付けブロック(67)は、それぞれの下面が平坦な押付け面(66)を構成する。二つの押付けブロック(67)は、組立体(50)における扁平管(20)の配列方向(
図19における左右方向)に並んで配置される。
【0090】
押付け部材(65)の押付け面(66)は、製造対象の熱交換器(10)よりも大きい。そのため、大型の熱交換器(10)を製造する場合に単一部材からなる押付け部材(65)を用いる場合は、大型の押付け部材(65)の剛性を確保する必要があるため、押付け部材(65)の重量が嵩むおそれがある。そこで、本変形例のように押付け部材(65)を複数の押付けブロック(67)によって構成すると、各押付けブロック(67)の剛性を確保しつつ各押付けブロック(67)の重量を抑えることができるため、押付け部材(65)全体の重量を軽減できる。
【0091】
〈第2変形例〉
図20に示すように、第2矯正工程では、第3挟持部材(73)と、第4挟持部材(74)と、中間支持部材(75)とによって、組立体(50)を押付け部材(65)に押し付けてもよい。中間支持部材(75)は、組立体(50)を構成する扁平管(20)の伸長方向(
図20における前後方向)と直交する方向に延びる部材である。中間支持部材(75)は、組立体(50)を構成する扁平管(20)の伸長方向の中央部に当接する。中間支持部材(75)は、第3挟持部材(73)及び第4挟持部材(74)と連動して上方へ移動し、第3挟持部材(73)及び第4挟持部材(74)と共に組立体(50)を持ち上げる。
【0092】
扁平管(20)が長い場合は、扁平管(20)が下側に位置する姿勢で組立体(50)を配置した状態において、扁平管(20)が無視できない程度に湾曲するおそれがある。その場合に、第3挟持部材(73)及び第4挟持部材(74)によって扁平管(20)の端部を支持すると共に、中間支持部材(75)によって扁平管(20)の伸長方向の中央部を支持すると、第2矯正工程において、扁平管(20)を真っ直ぐな状態に矯正できる。その結果、扁平管(20)が長い場合であっても、扁平管(20)が下側に位置する姿勢で配置された組立体(50)の上下方向の撓みを確実に矯正できる。
【0093】
〈第3変形例〉
上記第2工程では、組立体(50)の下方に配置された第2フィン群(42)を上方へ移動させることによって、組立体(50)の扁平管(20)を第2フィン群(42)のスロット列(35)に挿し込んでもよい。また、上記第2工程では、組立体(50)を下方へ移動させると同時に、第2フィン群(42)を上方へ移動させることによって、組立体(50)の扁平管(20)を第2フィン群(42)のスロット列(35)に挿し込んでもよい。このように、本実施形態の第2工程では、組立体(50)と、組立体(50)の下方に配置された第2フィン群(42)とを相対的に近づけることによって、組立体(50)の扁平管(20)が第2フィン群(42)のスロット列(35)に挿し込まれる。
【0094】
以上、実施形態および変形例を説明したが、特許請求の範囲の趣旨および範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。また、以上の実施形態、変形例、その他の実施形態に係る要素を適宜組み合わせたり、置換したりしてもよい。また、明細書および特許請求の範囲の「第1」、「第2」、「第3」…という記載は、これらの記載が付与された語句を区別するために用いられており、その語句の数や順序までも限定するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0095】
以上説明したように、本開示は、熱交換器の製造方法について有用である。
【符号の説明】
【0096】
10 熱交換器
20 扁平管
30 フィン
32 スロット
33 開口端
41 第1フィン群
42 第2フィン群
50 組立体
65 押付け部材
66 押付け面
67 押付けブロック
【要約】
【課題】扁平管と二つのフィン群とを備えた熱交換器を製造する。
【解決手段】熱交換器(10)の製造方法において、第1工程と第2工程とが行われる。第1工程では、第1フィン群(41)を構成するフィン(30)のスロット(32)に扁平管(20)を挿し込むことによって、組立体(50)が形成される。第2工程において、組立体(50)は、扁平管(20)が下側に位置する姿勢で配置される。第2工程では、組立体(50)の扁平管(20)が、第2フィン群(42)を構成するフィン(30)のスロット(32)に上方から挿し込まれる。
【選択図】
図16