(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-01
(45)【発行日】2024-10-09
(54)【発明の名称】針組立体
(51)【国際特許分類】
A61M 25/06 20060101AFI20241002BHJP
【FI】
A61M25/06 500
(21)【出願番号】P 2020191105
(22)【出願日】2020-11-17
【審査請求日】2023-09-28
(31)【優先権主張番号】P 2020129403
(32)【優先日】2020-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000135036
【氏名又は名称】ニプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001966
【氏名又は名称】弁理士法人笠井中根国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100103252
【氏名又は名称】笠井 美孝
(74)【代理人】
【識別番号】100147717
【氏名又は名称】中根 美枝
(72)【発明者】
【氏名】阪本 慎吾
【審査官】鈴木 洋昭
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-514275(JP,A)
【文献】特開2015-171451(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内針ハブを含む内針ユニットと外針ハブを含む外針ユニットが離脱可能に連結されて、内針が外針に対して引抜可能に挿通されており、該内針の引抜きに伴って針先へ移動して該針先を保護するプロテクタが該内針に装着されている針組立体において、
前記内針ユニットが前記プロテクタの収納スペースを有する収納ハウジングを備えており、
該収納スペースの周壁を貫通する挿入窓が形成されて、該プロテクタが該挿入窓を通じて該収納スペースへ挿入可能とされている針組立体。
【請求項2】
内針ハブを含む内針ユニットと外針ハブを含む外針ユニットが離脱可能に連結されて、内針が外針に対して引抜可能に挿通されており、該内針の引抜きに伴って針先へ移動して該針先を保護するプロテクタが該内針に装着されている針組立体において、
前記内針ユニットが前記プロテクタの収納スペースを有する収納ハウジングを備えており、
該収納ハウジングを前記外針ハブへ解除可能に連結する連結部材が該収納ハウジングの長さ方向の中間部分に配されており、
該プロテクタを該収納ハウジング内で支持する当接面が、該連結部材を跨いだ軸方向両側に設けられている針組立体。
【請求項3】
内針ハブを含む内針ユニットと外針ハブを含む外針ユニットが離脱可能に連結されて、内針が外針に対して引抜可能に挿通されており、該内針の引抜きに伴って針先へ移動して該針先を保護するプロテクタが該内針に装着されている針組立体において、
前記内針ユニットが前記プロテクタの収納スペースを有する収納ハウジングを備えており、
該収納ハウジングには前記外針ハブに対する係止部を備えた連結部材が組み付けられており、
該係止部が該収納ハウジングの外周側へ移動することで該連結部材による該収納ハウジングと該外針ハブとの連結状態が解除可能とされており、
該収納ハウジングには該係止部を少なくとも周方向一方の側において覆う側方カバー部が設けられている針組立体。
【請求項4】
前記係止部を周方向の両側において覆う一対の前記側方カバー部が設けられており、
該一対の側方カバー部を該係止部よりも先端側で相互に連結する先端連結部が設けられている請求項
3に記載の針組立体。
【請求項5】
内針ハブを含む内針ユニットと外針ハブを含む外針ユニットが離脱可能に連結されて、内針が外針に対して引抜可能に挿通されており、該内針の引抜きに伴って針先へ移動して該針先を保護するプロテクタが該内針に装着されている針組立体において、
前記内針ユニットが前記プロテクタの収納スペースを有する収納ハウジングを備えており、
該収納ハウジングには前記外針ハブに対する係止部を備えた連結部材が組み付けられており、
該係止部が該収納ハウジングの外周側へ移動することで該連結部材による該収納ハウジングと該外針ハブとの連結状態が解除可能とされており、
該係止部の外周側を覆う外周カバー部が該内針ユニットに設けられている針組立体。
【請求項6】
内針ハブを含む内針ユニットと外針ハブを含む外針ユニットが離脱可能に連結されて、内針が外針に対して引抜可能に挿通されている針組立体において、
前記外針ハブの内腔には、ディスク弁と、該ディスク弁の基端側に位置して該ディスク弁を開閉する押し子とが配されている一方、
前記内針ハブの先端側には該外針ハブの基端開口部に挿入される挿入筒部が設けられており、該挿入筒部が該押し子の外周にまで延びている針組立体。
【請求項7】
内針ハブを含む内針ユニットと外針ハブを含む外針ユニットが離脱可能に連結されて、内針が外針に対して引抜可能に挿通されている針組立体において、
前記内針ハブが、軸方向での相対移動で伸縮可能に内外挿された複数の筒状体を有しており、
最内周の該筒状体が前記外針ハブへ離脱可能に係合されている一方、
最外周の該筒状体には、前記内針の基端が取り付けられていると共に、最内周の該筒状体の基端部の外周面を径方向で位置決めする位置決め部が設けられている針組立体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、輸液や採血、血液透析等を行う際に穿刺される針組立体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、輸液や採血、血液透析等の処置を行う際の医療用具として、内針ユニットと外針ユニットを備えた針組立体が知られている。このような針組立体では、穿刺後に引き抜かれた内針による誤穿刺等を防止するために、引き抜かれた内針を保護するプロテクタを採用する場合がある。プロテクタを備えた針組立体は、例えば特開2004-24622号公報(特許文献1)や特表2005-507712号公報(特許文献2)に開示されている。
【0003】
このような針組立体では、内針を外針に貫通させた状態で血管等へ穿刺した後、外針ユニットを患者へ留置したままで内針を引き抜いて、内針ユニットを外針ユニットから離脱させるように操作される。特許文献2には、針(内針)が挿通されたアームの隙間よりも基端側まで針先が引き抜かれると、アームが開位置へ自動的に移動して、アームに設けられたフィンガが針の先端側を覆うことで針先の再露出が自動的に防止されると共に、外針ユニットを構成するハブと内針ユニットを構成するハブトラップとのアームによる連結が自動的に解除される構造が、開示されている。また、特許文献2には、引き抜かれた針の全体が入れ子式で伸長可能なシースに収容される構造も開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-24622号公報
【文献】特表2005-507712号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、針組立体は、針先をプロテクタによって確実に保護して、針先の再露出やそれに伴う誤穿刺等を防ぐために、作動の確実性が要求される。即ち、内針が引き抜かれて針先がプロテクタによって保護された状態において、内針ユニットが外針ユニットから容易に且つ確実に離脱可能とされると共に、プロテクタによる針先の保護状態が確実に維持されることが求められる。また、内針を引き抜く途中で針先がプロテクタによって保護される前には、内針ユニットが外針ユニットから誤って離脱せず、針先が露出しないようにする必要がある。
【0006】
ところが、特許文献1に示された従来構造の針組立体では、内針ユニットに意図しない大きな力が作用したり、内針ユニットと外針ユニットの連結部分が患者の体表面等に接したりすると、意図しない作動をしたり、操作に対応する作動が実行されなかったりすることも考えられた。
【0007】
また、特許文献2は、針先保護用のプロテクタが内針ハブに一体的に設けられた構造について開示するものであって、別体のプロテクタが内針ハブに収容された構造の針組立体への適用は考慮されていない。
【0008】
本発明の解決課題は、作動の信頼性向上に寄与し得る、新規な構造の針組立体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下、本発明を把握するための好ましい態様について記載するが、以下に記載の各態様は、例示的に記載したものであって、適宜に互いに組み合わせて採用され得るだけでなく、各態様に記載の複数の構成要素についても、可能な限り独立して認識及び採用することができ、適宜に別の態様に記載の何れかの構成要素と組み合わせて採用することもできる。それによって、本発明では、以下に記載の態様に限定されることなく、種々の別態様が実現され得る。
【0010】
第1の態様は、内針ハブを含む内針ユニットと外針ハブを含む外針ユニットが離脱可能に連結されて、内針が外針に対して引抜可能に挿通されており、該内針の引抜きに伴って針先へ移動して該針先を保護するプロテクタが該内針に装着されている針組立体において、前記内針ユニットが前記プロテクタの収納スペースを有する収納ハウジングを備えており、該収納ハウジングは該収納スペースから先端側に延びる内針挿通孔を備えており、軸方向投影において該プロテクタが該内針挿通孔の外周側まで延在しているものである。
【0011】
本態様に従う構造とされた針組立体によれば、プロテクタが内針挿通孔よりも外周側まで延在することによって、プロテクタが内針挿通孔を通過し得ず、プロテクタが内針挿通孔を通じて先端側へ露出するのを防ぐことができる。それゆえ、プロテクタによって保護された内針の針先が、プロテクタとともに内針挿通孔を通じて収納ハウジングから先端側へ突出するのを防ぐことができ、針先の再露出が防止される。
【0012】
第2の態様は、内針ハブを含む内針ユニットと外針ハブを含む外針ユニットが離脱可能に連結されて、内針が外針に対して引抜可能に挿通されており、該内針の引抜きに伴って針先へ移動して該針先を保護するプロテクタが該内針に装着されている針組立体において、前記内針ユニットが前記プロテクタの収納スペースを有する収納ハウジングを備えており、該収納ハウジングは該収納スペースから先端側に延びる内針挿通孔を備えており、該プロテクタが相互に対向する一対のアーム部を有して幅方向に開放されており、該一対のアーム部の幅方向寸法に比して該内針挿通孔の幅方向寸法が小さいものである。
【0013】
本態様に従う構造とされた針組立体によれば、針先を覆う部分を備えたプロテクタのアーム部の幅寸法に比して、内針挿通孔の幅寸法が小さくされていることから、仮に針先が幅方向に開放されたプロテクタから幅方向で外側へ露出したとしても、針先は内針挿通孔に入ることなく収納スペース内に留まる。それゆえ、針先の先端側への再露出が防止されて、誤穿刺などが回避される。
【0014】
第3の態様は、内針ハブを含む内針ユニットと外針ハブを含む外針ユニットが離脱可能に連結されて、内針が外針に対して引抜可能に挿通されており、該内針の引抜きに伴って針先へ移動して該針先を保護するプロテクタが該内針に装着されている針組立体において、前記内針ユニットが前記プロテクタの収納スペースを有する収納ハウジングを備えており、該収納スペースの周壁を貫通する挿入窓が形成されて、該プロテクタが該挿入窓を通じて該収納スペースへ挿入可能とされているものである。
【0015】
本態様に従う構造とされた針組立体によれば、収納スペースの周壁を貫通する挿入窓からプロテクタを収納スペースへ挿入可能であることから、収納スペースの先端側と基端側の壁部にはプロテクタが通過可能な孔を形成する必要がない。それゆえ、プロテクタが収納スペースから先端側又は基端側へ移動するのを防ぐことができて、プロテクタによって保護された針先の針軸方向への意図しない露出が防止される。
【0016】
第4の態様は、内針ハブを含む内針ユニットと外針ハブを含む外針ユニットが離脱可能に連結されて、内針が外針に対して引抜可能に挿通されており、該内針の引抜きに伴って針先へ移動して該針先を保護するプロテクタが該内針に装着されている針組立体において、前記内針ユニットが前記プロテクタの収納スペースを有する収納ハウジングを備えており、該収納ハウジングを前記外針ハブへ解除可能に連結する連結部材が該収納ハウジングの長さ方向の中間部分に配されており、該プロテクタを該収納ハウジング内で支持する当接面が、該連結部材を跨いだ軸方向両側に設けられているものである。
【0017】
本態様に従う構造とされた針組立体によれば、プロテクタが収納ハウジング内の連結部材を跨いだ軸方向両側において当接面によって支持されることから、プロテクタの収納ハウジングに対する傾動が当接面によって抑制される。これにより、プロテクタに対して意図しない傾動方向の力が作用しても、連結部材がプロテクタに押されて移動することがなく、連結部材による内針ユニットと外針ユニットの連結状態が安定して保持される。
【0018】
第5の態様は、内針ハブを含む内針ユニットと外針ハブを含む外針ユニットが離脱可能に連結されて、内針が外針に対して引抜可能に挿通されており、該内針の引抜きに伴って針先へ移動して該針先を保護するプロテクタが該内針に装着されている針組立体において、前記内針ユニットが前記プロテクタの収納スペースを有する収納ハウジングを備えており、該収納ハウジングには前記外針ハブに対する係止部を備えた連結部材が組み付けられており、該係止部が該収納ハウジングの外周側へ移動することで該連結部材による該収納ハウジングと該外針ハブとの連結状態が解除可能とされており、該収納ハウジングには該係止部を少なくとも周方向一方の側において覆う側方カバー部が設けられているものである。
【0019】
本態様に従う構造とされた針組立体によれば、内針ユニットと外針ユニットを連結する連結部材の係止部が、側方カバー部によって周方向の少なくとも一方を覆われていることから、例えば係止部が患者の体表面に接するなどして拘束されたり、接触による意図しない力が係止部に作用したりするのを防ぐことができる。それゆえ、係止部による内針ユニットと外針ユニットの連結状態の保持や解除が、より高い信頼性をもって実現される。なお、側方カバー部は、係止部よりも外周側まで突出していることが望ましく、より好適には、連結部材が収納ハウジングの外周側へ移動しても、側方カバー部が係止部よりも外周側に突出した状態とされる。
【0020】
第6の態様は、第5の態様に記載された針組立体であって、前記係止部を周方向の両側において覆う一対の前記側方カバー部が設けられており、該一対の側方カバー部を該係止部よりも先端側で相互に連結する先端連結部が設けられているものである。
【0021】
本態様に従う構造とされた針組立体によれば、一対の側方カバー部によって係止部が周方向の両側において覆われていることから、係止部に対する意図しない接触がより効果的に防止される。また、一対の側方カバー部を連結する先端連結部が係止部よりも先端側に配されることによって、係止部に対する先端側からの接触が先端連結部によって阻止される。
【0022】
一対の側方カバー部が先端連結部によって相互に連結されることにより、一対の側方カバー部の変形剛性が大きくされて、一対の側方カバー部の変形や損傷が防止される。
【0023】
第7の態様は、内針ハブを含む内針ユニットと外針ハブを含む外針ユニットが離脱可能に連結されて、内針が外針に対して引抜可能に挿通されており、該内針の引抜きに伴って針先へ移動して該針先を保護するプロテクタが該内針に装着されている針組立体において、前記内針ユニットが前記プロテクタの収納スペースを有する収納ハウジングを備えており、該収納ハウジングには前記外針ハブに対する係止部を備えた連結部材が組み付けられており、該係止部が該収納ハウジングの外周側へ移動することで該連結部材による該収納ハウジングと該外針ハブとの連結状態が解除可能とされており、該係止部の外周側を覆う外周カバー部が該内針ユニットに設けられているものである。
【0024】
本態様に従う構造とされた針組立体によれば、内針ユニットと外針ユニットを連結する連結部材の係止部が、外周カバー部によって外周側を覆われていることから、例えば、接触による意図しない力が係止部に作用したりするのを防ぐことができる。それゆえ、内針ユニットと外針ユニットの連結状態に寄与する係止部の信頼性の向上が図られる。
【0025】
第8の態様は、内針ハブを含む内針ユニットと外針ハブを含む外針ユニットが離脱可能に連結されて、内針が外針に対して引抜可能に挿通されている針組立体において、前記外針ハブの内腔には、ディスク弁と、該ディスク弁の基端側に位置して該ディスク弁を開閉する押し子とが配されている一方、前記内針ハブの先端側には該外針ハブの基端開口部に挿入される挿入筒部が設けられており、該挿入筒部が該押し子の外周にまで延びているものである。
【0026】
本態様に従う構造とされた針組立体によれば、内針ハブの挿入筒部が押し子の外周に達する位置まで外針ハブに差し入れられることから、外針ハブの長さを押し子の後方側へ過度に大きくする必要等もなく、外針ハブと内針ハブが軸方向のより広い範囲で内外挿状態で組み合わされて、外針ハブと内針ハブの相対的な傾斜が低減される。
【0027】
第9の態様は、第1~第8の何れか1つの態様に記載された針組立体であって、前記内針ハブは、外周へ突出するフランジ状部を備えた前記外針ハブの基端部に軸方向で突き当てられる当接部を備えており、該外針ハブの該フランジ状部が該当接部よりも外周側に突出しているものである。
【0028】
本態様に従う構造とされた針組立体によれば、例えば、内針ハブを親指と中指で挟んで把持した状態で、人差指によって外針ハブを先端側へ押し出す払い出し操作を行う際に、外針ハブのフランジ状部が内針ハブの当接部よりも外周に突出していることによって、払い出し操作を行いやすくなる。
【0029】
第10の態様は、第1~第9の何れか1つの態様に記載された針組立体であって、前記内針ハブが、使用者によって把持される第1の筒状体と、該第1の筒状体に対して軸方向で変位可能に挿入される第2の筒状体と、該第2の筒状体に対して軸方向で変位可能に挿入される第3の筒状体とを、備えて、該内針ハブが該第1の筒状体と第2の筒状体と第3の筒状体の相対的な変位によって軸方向で伸長変形可能とされており、該第2の筒状体には軸方向に延びるスリット状の側孔が設けられ、該第3の筒状体には外周へ向けて突出する規制突起が設けられて、該第3の筒状体の該規制突起が該第2の筒状体の該側孔に挿入されており、該規制突起が該側孔の内面に係合されることで該第2の筒状体と該第3の筒状体の相対的な軸方向の変位量が制限されているものである。
【0030】
本態様に従う構造とされた針組立体によれば、規制突起が側孔の内面に軸方向で係合されることにより、第2の筒状体と第3の筒状体の軸方向における相対変位量を制限することができる。しかも、第2の筒状体の内周面に突出する突起と第3の筒状体の外周面に突出する突起との係合によって第2の筒状体と第3の筒状体の軸方向での相対変位量を制限する場合に比して、幅寸法を小さくすることができる。
【0031】
第11の態様は、内針ハブを含む内針ユニットと外針ハブを含む外針ユニットが離脱可能に連結されて、内針が外針に対して引抜可能に挿通されている針組立体において、前記内針ハブが、軸方向での相対移動で伸縮可能に内外挿された複数の筒状体を有しており、最内周の該筒状体が前記外針ハブへ離脱可能に係合されている一方、最外周の該筒状体には、前記内針の基端が取り付けられていると共に、最内周の該筒状体の基端部の外周面を径方向で位置決めする位置決め部が設けられているものである。
【0032】
本態様に従う構造とされた針組立体によれば、内針ハブを構成する複数の筒状体間のガタツキを抑えることができる。特に穿刺前の収縮状態で、内針の基端が取り付けられた最内周の筒状体の基端部の外周面が、最外周の筒状体によって位置決めされることから、内針の針先のガタツキが効率的に抑えられると共に、最内周の筒状体の基端部を内周面において位置決めする場合に比して最内周の筒状体を小径化することもできて、全体サイズを小さくすることも容易になる。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、針組立体において作動の信頼性向上に寄与し得る。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】本発明の第1の実施形態としての針組立体を示す斜視図
【
図4】
図1に示す針組立体の縦断面図であって、
図5中のIV-IV断面に相当する図
【
図9】
図1に示す針組立体の斜視図であって、内針を引き抜いて内針ユニットと外針ユニットを分離させた状態を示す図
【
図11】
図9に示す針組立体の横断面図であって、
図10のXI-XI断面に相当する図
【
図12】本発明の第2の実施形態としての針組立体を示す斜視図
【
図13】
図12に示す針組立体の縦断面図であって、
図15中のXIII-XIII断面に相当する図
【
図16】
図12の針組立体にキャップを装着した状態を示す縦断面図
【
図20】
図12に示す針組立体の斜視図であって、内針を引き抜いた状態を示す図
【
図22】本発明の第3の実施形態としての針組立体を示す断面図
【
図23】
図22の針組立体の拡大断面図であって、XXIII-XXIII断面に相当する図
【
図24】本発明の別の1実施形態としての針組立体を示す断面図
【
図25】
図24に示す針組立体の断面図であって、内針を引き抜いた状態を示す図
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
【0036】
図1~
図8には、本発明の第1実施形態としての針組立体10が示されている。針組立体10は、外針ユニット12と内針ユニット14が相互に離脱可能に連結された構造を有している。外針ユニット12は、外針16の基端側に外針ハブ18が固定された構造を有している。なお、以下の説明において、軸方向とは、外針16及び内針40(後述)の針軸方向となる
図4中の左右方向を言う。また、先端側とは、後述する内針40の針先42側となる
図4中の左側を言うと共に、基端側とは、使用者が把持して操作する側となる
図4中の右側を言う。また、原則として、上下方向とは
図2中の上下方向を、左右方向とは
図2中の左右方向を、それぞれ言う。
【0037】
より詳細には、外針16は、軸方向に貫通する内腔を備えたチューブ状とされている。外針16は、金属製であってもよいが、好適には樹脂によって形成される。この場合に、外針16は、透明又は半透明とされることがより望ましい。外針16は、好適には、可撓性を有している。外針16の先端部分における外周面は、例えば先端側に向けて次第に小径化するテーパ面とされてもよく、これにより患者への穿刺抵抗を軽減することができる。また、外針16の先端部分における周壁には1個又は複数の貫通孔が設けられてもよく、これにより外針16に対する流体の流通効率の向上が図られ得る。
【0038】
外針ハブ18は、全体として軸方向に延びる略筒形状とされており、本実施形態では、略円筒形状の周壁20を備えている。周壁20の先端部分における内周面には、略円筒形状のカシメピン22が固着されており、周壁20に先端側から挿入された外針16の基端部分が周壁20とカシメピン22との間に挟まれて、必要に応じて接着や溶着されることにより、外針16の基端側に外針ハブ18が固定されている。
【0039】
外針ハブ18の基端側開口部24には、周方向の略全周に亘って外周側に突出するフランジ状部26が設けられており、当該フランジ状部26の外周面にはねじ山が設けられている。これにより、外針ハブ18に対してルアーロック式のシリンジやコネクタ等が、雄ねじ状のフランジ状部26に螺合されて接続可能とされている。本実施形態では、フランジ状部26における周上の一部において、軸方向に延びる位置決め溝28が設けられている。
【0040】
本実施形態では、外針ハブ18の内部に、止血弁機構30が収容状態で組み込まれている。止血弁機構30は、ディスク弁32と押し子34と押し子ガイド36とを備えている。なお、後述するように、内針40を引き抜く際に、外針ハブ18における止血弁機構30より先端側の領域に外針16を通じて逆流した血液が収容されることから、外針ハブ18の周壁20が少なくとも止血弁機構30の配設位置より先端側において透明とされることで、使用者等がフラッシュバックを外部から確認可能となる。フラッシュバックの確認は、外針16が透明または半透明とされている場合において、外針16の内腔を流れる血液を目視で確認することによって行うこともできる。
【0041】
ディスク弁32は、ゴムやエラストマ等の弾性体から形成されており、中央にスリット38が形成されている。ディスク弁32は、先端面の外周端が周壁20の内周面に設けられた段差に重ね合わされている。また、ディスク弁32の基端側には、筒状の押し子ガイド36が周壁20に内嵌固定されており、ディスク弁32が前述の段差と押し子ガイド36との間に挟まれて、軸方向で位置決めされている。押し子ガイド36の内周には、筒状の押し子34が配されており、押し子ガイド36に対して先端側へ移動可能とされている。
【0042】
このような止血弁機構30は、ディスク弁32のスリット38が閉じることにより、外針ハブ18の内腔を遮断状態とすると共に、押し子ガイド36に案内されて先端側へ移動した押し子34が、スリット38を押し開くことにより、外針ハブ18の内腔を連通状態とする。
【0043】
外針ユニット12には、内針ユニット14が離脱可能に連結されている。内針ユニット14は、外針16に対して引抜可能に挿通された内針40を備えている。内針40は、例えばステンレス鋼、アルミニウム、チタン又はそれらの合金等の公知の材料によって形成されており、本実施形態では中空針とされている。なお、内針40は中実針であってもよい。内針40の先端は、先鋭状の針先42とされている。
【0044】
内針40の基端側には、内針ハブ44が固定されている。内針ハブ44は、全体として軸方向に延びる略筒形状とされており、本実施形態では、内針ハブ44が、軸方向に延びる複数(3つ)の筒状体が略同心的に内外挿された多重筒構造とされている。即ち、内針ハブ44は、最も外周側に位置する第1の筒状体46と、径方向の中間に位置する第2の筒状体48と、最も内周側に位置する第3の筒状体50とを含んで構成されている。第1~3の筒状体46,48,50は、軸方向で伸縮可能に内外挿されたテレスコピック構造をもって組み合わされている。
【0045】
第1の筒状体46は、基端部分に固定筒部52を備えている。固定筒部52は、小径の略円筒形状とされており、内針40の基端部分が挿入又は圧入されて必要に応じて接着や溶着されることにより、内針40の基端部分に固定されている。固定筒部52の外周側には収容筒部54が設けられており、第1の筒状体46が固定筒部52の形成部分において、二重筒構造とされている。内針ハブ44は、少なくとも収容筒部54において透明とされることが好適であり、針組立体10の穿刺時に内針40を逆流した血液が収容筒部54に収容されるのを目視することにより、フラッシュバックによって内針40の血管への穿刺を確認することができる。収容筒部54の基端側の開口部には通気フィルタ56が設けられており、血液の収容筒部54への収容時に、収容筒部54内の空気が通気フィルタ56を通じて排出されると共に、収容筒部54からの血液の漏れが通気フィルタ56により防止されている。
【0046】
第1の筒状体46は、軸方向で形状や径寸法が異ならされており、先端部分が矩形断面を有する矩形筒部58とされている。最も外周側に位置する第1の筒状体46に矩形筒部58が設けられることで、使用者が矩形筒部58の外周面に手の指先を添えることにより安定して把持する(例えば親指と中指で両側から挟むように持つ)ことができる。また、使用者が矩形筒部58に指先を添えることにより、内針40の引抜操作や人差指の指先での外針ハブ18の先端側への払い出し操作などを行い易い。なお、第1の筒状体46の先端側の外面形状は矩形に限るものではないが、第1の筒状体46は指で挟むように把持できる一対の把持部を備えることが好ましい。
【0047】
矩形筒部58は、先端部分が左右方向の一方側へ拡がる外周カバー部60を備えている。外周カバー部60は、先端部分が軸方向に対して略平行に広がっていると共に、基端部分が先端へ向けて左右方向の外側へ傾斜して、軸方向に対する交差方向に広がっている。例えば、矩形筒部58を把持する手指を傾斜形状とされた外周カバー部60の根元に添えることにより、特に穿刺時のより安定した把持が実現される。外周カバー部60の先端には、周方向の一部(
図4中の上方)において略矩形の切欠き62が形成されている。
【0048】
第1の筒状体46における矩形筒部58と収容筒部54の軸方向間に位置する軸方向の中間部分は、円形断面を有する円筒部64とされている。円筒部64の外径寸法は、収容筒部54の外径寸法より大きくされており、円筒部64の基端に設けられた基端壁部66から収容筒部54と固定筒部52が基端側へ突出している。
【0049】
矩形筒部58又は円筒部64の内周面には、内周側に突出する第1の先端側係合爪68が設けられている。本実施形態では、一対の第1の先端側係合爪68,68が、それぞれ半周以下の周方向寸法をもって周方向に延びており、左右方向(
図4中の上下方向)において相互に対向して形成されている。また、基端壁部66における一対の第1の先端側係合爪68,68と周方向で対応する位置には、基端壁部66を軸方向に貫通する一対の貫通孔70,70が形成されている。これにより、第1の筒状体46を射出成形で形成する場合には、貫通孔70を、第1の先端側係合爪68を形成するための型抜き用の孔として利用することも可能である。
【0050】
第2の筒状体48は、軸方向の略全長に亘って略一定の径寸法を有していると共に、第1の筒状体46よりも短い軸方向寸法を有しており、本実施形態では第1の筒状体46の円筒部64と略等しい軸方向寸法とされている。第2の筒状体48における基端には、外周側に突出する第2の基端側係合爪72が設けられている。第2の筒状体48における先端には、内周側に突出する第2の先端側係合爪74が設けられている。本実施形態では、第2の基端側係合爪72及び第2の先端側係合爪74が、周方向の全周に亘って環状に形成されている。
【0051】
第3の筒状体50は、全体として軸方向で径寸法が異ならされた段付きの筒形状とされており、軸方向に貫通する内孔76を備えている。第3の筒状体50は、先端部分が比較的に大径とされた収納ハウジングとしての大径筒部78とされていると共に、大径筒部78よりも基端側が、大径筒部78の基端において内周側へ広がる環状壁部80を介して大径筒部78と連続する小径筒部82とされている。大径筒部78は、周上の一部が平面部84とされた優弧状断面の外周形状を有しており、小径筒部82は、略円形断面の外周形状を有している。
【0052】
第3の筒状体50における内孔76の内法寸法は軸方向で異ならされており、小径筒部82よりも、大径筒部78において大きくされている。本実施形態では、大径筒部78の内周形状が略矩形とされていると共に、小径筒部82の内周形状が円形とされている。そして、大径筒部78の内腔によって、本実施形態の収納スペース86が構成されている。収納スペース86は、略直方体形状の空間であって、軸方向及び上下方向(
図5中の上下方向)において、後述するプロテクタ94よりも僅かに大きな内法寸法を有している。また、収納スペース86は、左右方向(
図4中の上下方向)において、プロテクタ94の後壁部96と略同じ大きさとされている。
【0053】
第3の筒状体50における大径筒部78よりも先端側には、挿入筒部88が設けられている。挿入筒部88は、略円筒形状とされており、外周面が先端側へ向けて小径となるルアーテーパーを備えている。挿入筒部88は、収納スペース86の先端側の壁部を構成して収納ハウジングの一部とされており、中央部分には軸方向に貫通する内針挿通孔90が形成されている。内針挿通孔90は、円形断面の孔であって、収納スペース86に連通されている。内針挿通孔90は、直径が小径筒部82の内径寸法と略同じとされており、収納スペース86よりも径方向の内法寸法及び孔断面積が小さくされている。内針挿通孔90は、内針40が隙間をもって挿通可能であると共に、後述するプロテクタ94が通過不可能な孔断面積乃至は断面形状とされている。
【0054】
小径筒部82の基端には、外周側に突出する第3の基端側係合爪92が設けられている。本実施形態では、第3の基端側係合爪92が周方向の全周に亘って環状に形成されている。
【0055】
小径筒部82の軸方向寸法は、第2の筒状体48の軸方向寸法と略等しくされている。大径筒部78の軸方向寸法は、第1の筒状体46における矩形筒部58の軸方向寸法よりも大きくされている。また、大径筒部78の外径寸法は、第2の筒状体48の外径寸法よりも大きくされていると共に、第1の筒状体46の内径寸法よりも小さくされている。小径筒部82の外径寸法は、第2の筒状体48の内径寸法よりも小さくされている。
【0056】
第1の筒状体46と第2の筒状体48と第3の筒状体50は、相互に内外挿されている。即ち、第1の筒状体46の円筒部64に第2の筒状体48が内挿されていると共に、第2の筒状体48に第3の筒状体50の小径筒部82が内挿されている。第3の筒状体50の大径筒部78は、第2の筒状体48よりも先端側に位置して、第1の筒状体46の矩形筒部58の内周に収容されている。
【0057】
内外挿状態で配された第1~第3の筒状体46,48,50は、第1の筒状体46の第1の先端側係合爪68と第2の筒状体48の第2の基端側係合爪72とが軸方向で離隔して重なり合う位置に配されていると共に、第2の筒状体48の第2の先端側係合爪74と第3の筒状体50の第3の基端側係合爪92とが軸方向で離隔して重なり合う位置に配されている。そして、第1の筒状体46が第2の筒状体48に対して基端側へ変位すると、第1の先端側係合爪68と第2の基端側係合爪72が軸方向で相互に当接して係止され、第1の筒状体46の第2の筒状体48に対する基端側への相対変位量が制限される。また、第2の筒状体48が第3の筒状体50に対して基端側へ変位すると、第2の先端側係合爪74と第3の基端側係合爪92が軸方向で相互に当接して係止され、第2の筒状体48の第3の筒状体50に対する基端側への相対変位量が制限される。要するに、第1~第3の筒状体46,48,50を備える内針ハブ44は、テレスコピック構造によって初期状態からの伸長が許容されている。また、第1~第3の筒状体46,48,50は、相互に軸方向の抜けが防止されている。
【0058】
内針ハブ44を基端側へ引いて内針40を外針16から引き抜く際に、内針40の基端に固定された第1の筒状体46が第2の筒状体48及び第3の筒状体50に対して基端側へ移動すると、内針ハブ44が軸方向の長さが長くなった伸長状態となる。そして、伸長状態の内針ハブ44において、内針40の針先42が第3の筒状体50の大径筒部78に収容され、内針40の全体が内針ハブ44に収容されるようになっている。
【0059】
内針ハブ44が伸長可能な構造とされていることから、内針ハブ44によって内針40を全長にわたって覆うフルカバータイプの保護ハウジングを構成しつつ、内針40の穿刺時には、内針ハブ44の軸方向長さを短くすることができて、針組立体10の小型化が図られ、穿刺時の取り回しの邪魔にもなり難い。しかも、第1~第3の筒状体46,48,50が後述するプロテクタ94の収納部分よりも基端側において内外挿されて収縮状態とされていることから、プロテクタ94の収納部分において複数の筒状体が内外挿状態で配される場合よりも、内針ハブ44の小径化が図られる。
【0060】
本実施形態では、第1の筒状体46の基端壁部66に貫通孔70,70が形成されていることにより、第1の筒状体46及び第2の筒状体48を第3の筒状体50から引き出して内針ハブ44を伸長させる際に、外気が内針ハブ44の内部へ速やかに導入される。それゆえ、内針ハブ44の内部が大きな陰圧となり難く、第1の筒状体46及び第2の筒状体48の第3の筒状体50からの引出操作をスムーズに行うことができる。
【0061】
内針ハブ44の伸長状態において針先42が位置する大径筒部78には、プロテクタ94が収容されている。プロテクタ94は、例えば、ばね鋼等の金属素板をプレス加工して形成されており、弾性変形可能とされている。より具体的には、プロテクタ94は、矩形板状とされて貫通孔を備える後壁部96と、後壁部96の左右両側(
図4中の上下方向両側)から先端に向けて延び出すアーム部としての一対の弾性腕部98a,98bとを、備えている。弾性腕部98a,98bは、それぞれ略矩形平板状とされており、左右方向において相互に離隔して対向していると共に、先端に向けて次第に接近する向きで傾斜している。弾性腕部98a,98bの先端には、それら弾性腕部98a,98bの対向方向内側へ向けて突出する保護壁部100がそれぞれ一体形成されている。保護壁部100の具体的な形状は、後述するように内針40の針先42を覆って保護し得るものであれば特に限定されないが、例えば、弾性腕部98から先端へ向けて傾斜しながら突出している。保護壁部100の突出先端には、基端側へ向けて折り返された内針案内片102が一体形成されている。また、プロテクタ94は、長さ寸法(後壁部96からの延び出し長さ寸法)が相互に異ならされた長い弾性腕部98aと短い弾性腕部98bを備えており、弾性腕部98a,98bの先端に設けられた保護壁部100,100の軸方向における位置が相互に異なっている。これにより、プロテクタ94の初期形状において、保護壁部100,100は、軸方向で相互に重なっている。プロテクタ94は、後壁部96の左右両側において弾性腕部98a,98bが先端側へ向けて延び出していると共に、後壁部96の上下両側には先端側へ延び出す部分が設けられておらず、全体としてプロテクタ94の幅方向となる上下方向の両側において開放された構造を有している。もっとも、後壁部96の上下少なくとも一方において先端側へ延び出す部分を設けて、内針40が挿通されるようにしてもよいし、後述する針先42のプロテクタ94への収容状態において針先42の上下外側を覆うようにしてもよい。
【0062】
プロテクタ94は、
図4に示すように、収納ハウジングとしての大径筒部78の内腔である収納スペース86に配されており、後壁部96の貫通孔に挿通された内針40が、一対の弾性腕部98a,98bの保護壁部100,100の間に挿通されている。プロテクタ94は、内針40が保護壁部100,100の間に挿通されることによって、弾性腕部98a,98bの先端部分が相互に離隔する方向に押し広げられている。これにより、内針40に装着されたプロテクタ94において、弾性腕部98a,98bの弾性に基づく形状復元力が、保護壁部100,100を相互に接近させる方向の付勢力として作用している。そして、保護壁部100,100(内針案内片102,102)が内針40の外周面に当接していることによって、プロテクタ94が内針40に対して装着されていると共に、保護壁部100,100の接近方向への移動が阻止されている。内針40が保護壁部100,100の間に挿通された状態において、弾性腕部98a,98bは、相互に略平行となっている。
【0063】
プロテクタ94を収納する大径筒部78には、周壁を貫通する挿通孔104が形成されている。挿通孔104は、略矩形断面で左右方向(
図4中の上下方向)に延びており、大径筒部78の長さ方向(軸方向)の中間部分に形成されている。
【0064】
挿通孔104には、内針ユニット14と外針ユニット12とを解除可能な態様で連結する連結部材106が挿通されている。連結部材106は、内針ハブ44とは別体として形成されており、挿通孔104に挿通される挿通部108と、内針ユニット14と外針ユニット12を連結する係止部110とを、備えている。係止部110は、挿通部108の一方の端部(
図4中の上端)に一体的に設けられている。なお、連結部材106は、挿通孔104に挿入されて内針ハブ44に組み付けられることから、内針ユニット14の一部として把握することも可能である。
【0065】
挿通部108は、略小判形の板状とされており、挿通孔104と略等しい軸方向寸法及び幅方向寸法を有している。挿通部108には、板厚方向(軸方向)で貫通する略矩形の連通孔112が形成されている。連通孔112の内周形状は、大径筒部78の内周形状と対応する略矩形状とされている。連結部材106が挿通孔104に挿通された状態(針組立体10の使用前の状態)において、大径筒部78の内腔と連通孔112とが相互に連通して収納スペース86を構成している。なお、挿通部108において係止部110が設けられる側と反対側の端部において、幅方向両側には、挿通孔104の開口周縁部よりも幅方向外方に突出する抜止突部114,114が形成されている(
図7参照)。
【0066】
また、係止部110は、挿通部108よりも幅寸法が小さくされており、第1の筒状体46における矩形筒部58よりも先端側にまで延び出している。この係止部110の先端には、内周側に突出する爪状部116が設けられている。爪状部116は略三角形の断面を有しており、爪状部116の先端側端面118と基端側端面120とが、それぞれ内周側に向かって相互に接近する方向に傾斜する傾斜面とされている。
【0067】
このような構造とされた連結部材106の挿通部108が、大径筒部78の挿通孔104に挿通されることにより、収納スペース86の周壁が大径筒部78と挿通部108の協働によって形成されている。そして、収納スペース86に配されたプロテクタ94は、少なくとも軸方向長さが長い弾性腕部98aにおいて、基端部分と先端部分の両方が大径筒部78の内周に配されていると共に、軸方向の中間部分が連結部材106の挿通部108の内周に配されている。要するに、収納スペース86に配されたプロテクタ94の長い弾性腕部98aは、連結部材106の挿通部108を軸方向に貫通して、挿通部108を跨いで先端側と基端側の両側へ突出している。
【0068】
収納スペース86の周壁の一部には、挿入窓124が形成されている。挿入窓124は、大径筒部78の周方向の一部(平面部84)を貫通する矩形の開口部であって、本実施形態では、挿通孔104の貫通方向に開口して形成されている。挿入窓124は、軸方向の中間部分において挿通孔104と重なっており、挿通孔104に対して軸方向の両側に広がって形成されている。挿入窓124は、上下方向の幅寸法が、挿通孔104よりも小さくされている。従って、挿通孔104に連結部材106の挿通部108が挿通されると、挿入窓124は、挿通部108よりも基端側と先端側に分けられる。なお、挿入窓124の幅寸法は、プロテクタ94の幅寸法よりも大きくされている。本実施形態では、挿入窓124の幅寸法は、
図6に示すように、内周側の端部において収納スペース86の幅寸法と略同じとされていると共に、外周側の端部において収納スペース86の幅寸法よりも大きくされており、外周側となる
図6中の左方に向けて次第に大きくなっている。これにより、プロテクタ94は、挿入窓124を通じて収納スペース86へ容易に挿入可能とされる。
【0069】
プロテクタ94は、大径筒部78に連結部材106が組み付けられた状態で、挿入窓124を通じて収納スペース86へ挿入される。内針40が挿通される前の初期状態のプロテクタ94は、弾性腕部98a,98bが相互に接近しており、先端の軸方向投影面積が小さい状態で収納スペース86へ挿入される。初期状態のプロテクタ94は、収納スペース86の先端側に開口する内針挿通孔90に対して、軸方向投影において外周側まで延在しており、内針挿通孔90を通過して先端側へ抜けることがない。本実施形態では、初期状態のプロテクタ94の先端部分(保護壁部100,100)が、軸方向投影において内針挿通孔90よりも外周側まで延在しており、プロテクタ94の先端部分が内針挿通孔90に入ることもない。なお、プロテクタ94の後壁部96は、小径筒部82の内腔よりも外周側まで延在していることから、プロテクタ94が小径筒部82の内腔に入ることもない。換言すれば、収納スペース86に対して軸方向両側の孔を通じてプロテクタ94を軸方向に挿入することが不可能な構造とされており、プロテクタ94は収納スペース86の側方に開口する挿入窓124を通じて収納スペース86へ挿入される。挿入窓124の開口形状は、プロテクタ94が通過可能であれば、矩形に限定されるものではなく、例えば長円形などであってもよい。挿入窓124の開口面積は、プロテクタ94が通過可能であれば特に限定されない。
【0070】
そして、例えば、収納スペース86の先端側の壁部を貫通する内針挿通孔90を通じて先端側から挿入された治具等によってプロテクタ94の弾性腕部98a,98b(保護壁部100,100)の間を押し広げながら、内針40をプロテクタ94に挿通することにより、プロテクタ94が収納スペース86に配された状態で内針40に装着される。収納スペース86に配されたプロテクタ94は、内針40が後壁部96の貫通孔に挿通されていることによって、挿入窓124を通じて外部へ抜けないようになっている。もっとも、例えばプロテクタ94が挿入窓124を通じて収納スペース86へ差し入れられた後で、挿入窓124を覆う蓋が大径筒部78に取り付けられて、挿入窓124が蓋で塞がれることにより、挿入窓124を通じたプロテクタ94の離脱が防止されるようにもできる。
【0071】
収納スペース86において内針40によって押し広げられたプロテクタ94は、弾性腕部98a,98bが収納スペース86の内面に押し当てられて当接している。長い弾性腕部98aは、先端部分と基端部分の両方が大径筒部78に当接していると共に、先端部分と基端部分の間に位置する軸方向の中間部分が連結部材106に当接している。短い弾性腕部98bは、基端部分が大径筒部78に当接していると共に、先端部分が連結部材106に当接している。プロテクタ94の弾性腕部98a,98bが連結部材106の挿通部108の内周面に当接していることにより、挿通孔104が延びる軸直角方向において連結部材106の移動が阻止されており、連結部材106がプロテクタ94によって大径筒部78に対して位置決めされている。また、プロテクタ94は、後述する当接面126a,126bを含む収納スペース86の内面に当接することによって、大径筒部78内で支持されている。なお、長い弾性腕部98aが連結部材106において係止部110が位置する側に配置されていると共に、短い弾性腕部98bが大径筒部78の挿入窓124が開口する側に配置されている。
【0072】
本実施形態では、長い弾性腕部98aが、挿通部108に対する基端側と先端側において、大径筒部78の内周面を構成する当接面126a,126bに当接しており、軸方向の両端部分を外れた中間部分において挿通部108の内周面に当接している。これにより、仮にプロテクタ94を傾動させる向きの力が加わったとしても、プロテクタ94の傾動が大径筒部78への当接によって制限され、連結部材106がプロテクタ94によって押されて係止部110側へ移動することがない。従って、プロテクタ94に傾動方向(こじり方向)の意図しない力が加わったとしても、連結部材106による内針ユニット14と外針ユニット12の連結状態が安定して維持される。このように、本実施形態では、大径筒部78の内周面における連結部材106の挿通部108を跨いだ先端側と基端側に、内針40に装着されたプロテクタ94を当接支持する当接面126a,126bが設けられている。なお、当接面126a,126bは、大径筒部78において、挿入窓124の形成部分と反対側に設けられており、例えば、挿入窓124を型抜き用の孔として利用して形成することができる。
【0073】
このような構造とされた内針ユニット14は、外針ユニット12に対して基端側から組み付けられており、連結された外針ユニット12と内針ユニット14によって針組立体10が構成されている。針組立体10において、内針ユニット14の内針40が外針ユニット12の外針16に挿通されており、内針40の針先42が外針16よりも先端側へ突出している。外針16の先端部分が先端に向けて小径となるテーパ形状とされており、外針16の先端の内径が内針40の外径よりも小さくされている。これにより、外針16の先端部分が内針40の外周面に押し当てられて、外針16と内針40が摩擦抵抗等によって位置決めされ、がたつきが抑えられている。
【0074】
外針ユニット12と内針ユニット14は、複数の構造によって相互に連結されている。即ち、内針ユニット14を構成する第3の筒状体50の先端に設けられた挿入筒部88が、外針ハブ18の基端側開口部24に挿入されることにより、内針ユニット14の先端部が外針ユニット12の基端部に連結されている。なお、挿入筒部88と基端側開口部24との径方向間は、外針ハブ18からの挿入筒部88の軸方向での離脱性などを考慮して、ゼロタッチまたは適切な隙間が設定されることが望ましい。また、内針ハブ44に連結された連結部材106の係止部110が、外針ハブ18の基端部分の外周面に重ね合わされることにより、外針ハブ18の基端部分が挿入筒部88と係止部110の間で径方向に挟持されて、内針ユニット14と外針ユニット12が連結されている。
【0075】
また、係止部110の爪状部116が外針ハブ18のフランジ状部26を乗り越えてフランジ状部26の先端側に位置することにより、内針ユニット14の外針ユニット12に対する基端側への抜けが、爪状部116とフランジ状部26の軸方向の係止によって防止されている。これらにより、内針ユニット14と外針ユニット12が連結状態とされる。なお、連結部材106の大径筒部78に対する外周側への移動は、収納スペース86内に配されたプロテクタ94によって阻止されている。それゆえ、係止部110の爪状部116と外針ハブ18のフランジ状部26の係止は、内針40がプロテクタ94の保護壁部100,100間に挿通された状態において解除されない。
【0076】
大径筒部78の周方向における係止部110の両側には、一対の側方カバー部128,128が配されている。側方カバー部128は、略板状とされており、挿通孔104の開口周縁部において大径筒部78に一体形成されて、大径筒部78の外周へ突出している。側方カバー部128は、係止部110の上下方向の端面を広い範囲にわたって覆い得るように、係止部110と対応する形状とされており、具体的には、上下方向視において外周へ延び出してから屈曲して先端側へ延び出す略L字状とされている。側方カバー部128は、後述する内針40の引抜き後に連結部材106が
図4中の上方へ移動しても、係止部110よりも
図4中の上側に突出した状態とされる上下幅寸法で形成されている。本実施形態では、係止部110の幅寸法が挿通孔104の開口の上下幅寸法よりも小さいことから、側方カバー部128は、挿通孔104の開口周縁部における上下方向の中間部分から突出しており、係止部110に近接して配置されている。
【0077】
また、挿通孔104の外周側には、第1の筒状体46の矩形筒部58に設けられた外周カバー部60が配されており、外周カバー部60が挿通孔104に挿通された連結部材106(係止部110)の一部を大径筒部78の外周側において覆っている。なお、外周カバー部60の先端部に設けられた切欠き62には、側方カバー部128,128の一部が差し入れられている。切欠き62が設けられていることにより、側方カバー部128,128の軸方向の長さ及び上下方向の高さを延ばすことができるため、側方カバー部128,128が係止部110を覆う領域を広くすることができ、係止部110に指等が接触してしまう事態を生じ難くすることができる。
【0078】
このように、外針ユニット12と内針ユニット14の連結機能を有する係止部110が、側方カバー部128と外周カバー部60とによって覆われていることにより、例えば接触によって係止部110に意図しない外力が及ぼされるのを防ぐことができる。それゆえ、係止部110による内針ユニット14と外針ユニット12の連結状態が安定して実現される。
【0079】
大径筒部78には、先端部分において外周へ突出してから先端側へ延び出す略L字状の回転防止リブ130が設けられている。回転防止リブ130が外針ハブ18のフランジ状部26に設けられた位置決め溝28に差し入れられて、回転防止リブ130と位置決め溝28の内面とが周方向で係止されることにより、大径筒部78と外針ハブ18の相対回転が防止されている。回転防止リブ130は、大径筒部78において挿通孔104を周方向に外れた部位に設けられていることが望ましく、これによって、構造の小型化や簡略化が図られる。尤も、回転防止リブは、例えば、大径筒部78に対して周方向で位置決めされた連結部材106の係止部110に設けることもできる。
【0080】
外針ユニット12と内針ユニット14の連結状態において、プロテクタ94を装着された内針40は、外針ユニット12の内腔へ基端側から挿通されて、ディスク弁32のスリット38を貫通して挿通されていると共に、外針16に挿通されて、針先42が外針16よりも先端側まで突出している。
【0081】
本実施形態に係る針組立体10の使用方法について、
図9~
図11を参照しながら説明する。先ず、使用者(医療従事者)は、外針16に挿通された内針40を患者の血管に穿刺する。外針16は、内針40に外挿されていることから、内針40の血管への穿刺によって、内針40とともに血管へ穿刺される。使用者は、内針ハブ44の収容筒部54への血液の浸入(フラッシュバック)等によって内針40の血管への穿刺を確認した後、内針ハブ44における矩形筒部58の両側面を一方の手の指で把持して、内針40を基端側へ引き抜く。この際に、使用者は、外針ハブ18を一方の手の指で先端側へ押し出す払い出し操作を行ったり、外針ハブ18を他方の手の指で押さえる等して、外針ハブ18を血管への留置状態に保持する。係止部110が患者の体表面に対して略平行となる左右方向で外方へ突出していることから、使用者が外針ハブ18の天面(
図5中の上面)側に指を置いて払い出し操作を行う際に、係止部110が操作の邪魔にならず、外針ユニット12と内針ユニット14の連結解除がより確実に達成される。
【0082】
血管に穿刺された外針16から内針40が引き抜かれると、外針16の内腔に血液が浸入することから、外針16及び外針ハブ18の先端部分へのフラッシュバックによって、外針16の血管への穿刺を確認することができる。また、内針40がディスク弁32から引き抜かれることにより、外針ハブ18の内腔がディスク弁32によって遮断されて、外針ハブ18へ浸入した血液が外針ハブ18の基端開口から外部へ漏出しないようになっている。
【0083】
内針40を基端側へ引き抜くと、内針ハブ44の最外周に位置する第1の筒状体46が基端側へ移動し、第1の筒状体46と第2の筒状体48と第3の筒状体50によるテレスコピック構造とされた内針ハブ44が伸長する。要するに、内針40の基端側への引抜きによって、第1の筒状体46と第2の筒状体48が第3の筒状体50に対して順に基端側へ引き出されて、内針ハブ44の軸方向長さが長くなる。
【0084】
最も基端側まで引き抜かれた内針40は、全長にわたって内針ハブ44に収容されており、フルカバータイプの保護ハウジングが内針ハブ44によって構成されている。
【0085】
第1の筒状体46と第2の筒状体48を第3の筒状体50に対して最も基端側まで引き出した状態において、内針40の針先42は、プロテクタ94の内部(保護壁部100,100よりも基端側で弾性腕部98a,98bの対向間)に位置しており、内針案内片102,102よりも基端側に位置している(
図10参照)。換言すれば、プロテクタ94は、内針40の基端側への引抜きに伴って、内針40の針先42へ移動する。そして、内針40の外周面とプロテクタ94の保護壁部100,100(内針案内片102,102)との当接が解除されて、保護壁部100,100が弾性腕部98a,98bの弾性による付勢力に従って相互に接近方向へ移動する。このような内針40の引抜きに伴うプロテクタ94の変形によって、針先42の先端側が保護壁部100,100によって覆われて、針先42が保護壁部100,100によって保護されると共に、内針40に先端側へ向けた力が作用しても、針先42が保護壁部100,100に当接して先端側へ再露出しない。なお、本実施形態のプロテクタ94は、保護壁部100,100の先端に内針案内片102,102が折曲げによって形成されていることにより、内針40の外周面に対するプロテクタ94のかじり等が防止されて、内針案内片102,102の間に挟まれた内針40をスムーズに引き抜くことができる。また、プロテクタ94の幅寸法(
図5中の上下方向の寸法)が、収納スペース86の同方向における内法寸法よりも小さいことにより、弾性腕部98a,98bの接近が収納スペース86の壁面への引っ掛かりによって阻害されるのを防止することができる。
【0086】
針先42を保護するプロテクタ94の先端部分である保護壁部100,100は、内針挿通孔90の収納スペース86への開口を、プロテクタ94の幅方向(
図11中の上下方向)において覆っている。即ち、本実施形態では、保護壁部100,100の幅方向寸法に対して、内針挿通孔90の幅方向寸法が小さくされている。これにより、針先42が幅方向の両側に開放された構造を有するプロテクタ94に対して保護壁部100,100を幅方向外側へ外れた位置まで移動して、針先42がプロテクタ94から露出したとしても、針先42がプロテクタ94の幅方向外側において内針挿通孔90に入ることがない。それゆえ、針先42は、収納スペース86内に留められて外部に露出することがなく、収納スペース86の先端側の壁部によって確実に保護される。
【0087】
内針40が保護壁部100,100の間から基端側へ引き抜かれた後のプロテクタ94は、内針40による弾性腕部98a,98bの押し広げが解除されることから、内針40が挿通されていない初期状態の形状に復元する。従って、内針40が引き抜かれて針先42がプロテクタ94によって保護された状態において、プロテクタ94が軸方向投影において内針挿通孔90の外周側まで延在しており、特に、プロテクタ94の先端部分が軸方向投影において内針挿通孔90よりも外周側まで延在している。それゆえ、針先42を覆って保護した状態のプロテクタ94は、内針挿通孔90に入ることがなく、プロテクタ94によって保護された針先42は、内針挿通孔90を通じて先端側へ再露出することがない。
【0088】
図11において薄墨で着色して示すプロテクタ94の先端部分の軸方向の投影像は、内針挿通孔90の全体を覆う大きさや配置とされていてもよいが、内針挿通孔90を部分的に覆う大きさや配置とされていてもよい。即ち、例えば、弾性腕部98a,98bによって針先42の移動が制限される弾性腕部98a,98bの対向方向(プロテクタ94の高さ方向)において、内針挿通孔90の収納スペース86への開口の端部が、プロテクタ94の軸方向投影を外れた外側に位置していてもよい。要するに、プロテクタ94が内針挿通孔90の周上の少なくとも一部において内針挿通孔90よりも外周まで延在していれば、プロテクタ94の内針挿通孔90を通じた先端側への露出が防止され得る。
【0089】
プロテクタ94が初期状態の形状に復元すると、弾性腕部98a,98bが相互に接近するように移動して、収納スペース86の内周面に対する弾性腕部98a,98bの当接が解除される。これにより、プロテクタ94による連結部材106と第3の筒状体50(大径筒部78)の位置決めが解除されて、連結部材106が大径筒部78に対して挿通孔104の延伸方向へ移動可能となる。また、第1の筒状体46が第3の筒状体50に対して基端側へ移動していることから、外周カバー部60は、係止部110の外周を覆う初期位置から基端側へ移動しており、係止部110の外周への移動を妨げない。
【0090】
なお、プロテクタ94は、初期形状に復元しても、連結部材106の連通孔112に挿通されていることから、連結部材106の大径筒部78に対する移動量がプロテクタ94によって制限されており、連結部材106が大径筒部78から離脱しないようになっている。また、挿通部108に設けられた抜止突部114,114が、挿通孔104の開口周縁部において大径筒部78に当接することによっても、連結部材106の大径筒部78からの抜けが防止される。
【0091】
内針40が第3の筒状体50に対して最も基端側まで引き抜かれた状態から、第1の筒状体46を更に基端へ引くと、内針ユニット14が外針ユニット12に対して基端側へ分離する。即ち、第1の筒状体46に及ぼされた基端側へ引く力が、第3の筒状体50及び連結部材106に伝達されると、第3の筒状体50及び連結部材106は外針ユニット12に対して基端側へ移動し、連結部材106の係止部110に設けられた爪状部116がフランジ状部26に押し当てられる。爪状部116の基端側端面120が傾斜面とされていることから、爪状部116の基端側端面120がフランジ状部26に押し当てられると、連結部材106には係止部110を外周側(
図4中の上側)へ移動させる方向の分力が作用する。この分力によって、第3の筒状体50に対する位置決めを解除された連結部材106が挿通孔104の延伸方向で外周側に移動して、爪状部116がフランジ状部26を乗り越え、内針ユニット14の外針ユニット12に対する連結が解除されて基端側への分離が許容される。このように、係止部110を外周側へ引き出すなどの特別な操作を要することなく、内針ユニット14を外針ユニット12に対して基端側へ引くだけの簡単な操作によって、係止部110による外針ユニット12と内針ユニット14の軸方向の連結が簡単に解除されるようになっている。
【0092】
これにより、外針ユニット12が患者の血管に穿刺された状態で留置されると共に、内針ユニット14は、内針40の全体が内針ハブ44に収容されて、特に針先42がプロテクタ94によって保護された安全な状態で、外針ユニット12から取り外される。そして、外針ハブ18に対してシリンジや輸液ラインなどの図示しないオスコネクタが接続されると、押し子34がオスコネクタによって先端側へ押し込まれてディスク弁32を押し広げ、オスコネクタが外針ユニット12の内腔を介して血管に接続される。
【0093】
内針ユニット14を外針ユニット12から離脱させる際に、フランジ状部26を乗り越える係止部110の外周側への移動は、患者の体表面への当接による摩擦抵抗等に起因する阻害が回避されている。即ち、係止部110の周方向側面が第3の筒状体50に設けられた側方カバー部128によって覆われており、係止部110の周方向側面が患者の体表面等に接し難くなっている。それゆえ、係止部110の周方向側面が患者の体表面等に押し当てられて係止部110の移動を妨げられる不具合が生じ難く、係止部110とフランジ状部26の係止状態が安定して解除される。特に本実施形態の側方カバー部128は、爪状部116がフランジ状部26を乗り越える位置まで移動した係止部110よりも外周側まで突出していることから、係止部110の移動が完了するまで係止部110の体表面等への接触が側方カバー部128によって防止され、係止部110の移動が最後までスムーズに実行される。
【0094】
図12~
図15には、本発明の第2実施形態としての針組立体140が示されている。針組立体140は、外針ユニット12と内針ユニット142が相互に離脱可能に連結された構造を有している。以下の説明において、前記実施形態と実質的に同一の部材及び部位については、図中に同一の符号を付すことにより、説明を省略する。
【0095】
内針ユニット142は、内針40の基端側に内針ハブ144が固定された構造を有している。内針ハブ144は、第1実施形態の内針ハブ44と同様に、複数の筒状体が略同心的に内外挿された多重筒構造とされている。即ち、内針ハブ144は、最も外周側に位置する第1の筒状体146と、径方向の中間に位置する第2の筒状体148と、最も内周側に位置する第3の筒状体150とを含んで構成されている。第1~第3の筒状体146,148,150は、内外挿状態で組み合わされて、軸方向で相対的に変位可能とされている。これにより、内針ハブ144は、第1~第3の筒状体146,148,150の軸方向での相対変位によって軸方向で伸長変形可能とされた入れ子構造(テレスコピック構造)を有している。
【0096】
本実施形態の第1の筒状体146は、第1実施形態の第1の筒状体46のような矩形筒部58を備えていない。第1の筒状体146は、左右両側面にそれぞれ平面状とされた一対の把持部152,152を備えている。把持部152には、上下方向に延びて左右外側へ突出する複数の滑止め154が軸方向に所定の間隔で設けられている。そして、使用者は、例えば中指と親指で左右の把持部152,152を摘まむようにして第1の筒状体146を把持することができる。本実施形態では、第1の筒状体146において、把持部152,152間の左右方向の幅寸法が、把持部152を軸方向に外れた他の部分よりも小さくされており、把持部152,152を手指で摘まんで把持し易くなっている。
【0097】
第1の筒状体146には、外周へ突出する係止突部156が設けられている。係止突部156は、
図13に示すように、把持部152よりも先端側に設けられている。係止突部156は、
図12,
図14に示すように、第1の筒状体146の下端には設けられていない。本実施形態では、第1の筒状体146の下端に平面状の平坦部158が設けられており、平坦部158が係止突部156が設けられた軸方向位置まで達することで、係止突部156が下端には設けられないC環状とされている。第1の筒状体146における係止突部156よりも先端側は、周方向の一部が外周カバー部60とされていると共に、他の部分が外針ハブ18におけるフランジ状部26よりも小径とされた当接部159を備えている。第1の筒状体146の上端には、ロゴやマーク等の表記が付されていることが望ましい。即ち、内針40の針先42に形成された傾斜状面は、穿刺時に患者の皮膚と反対側に位置して、特に重力方向上方を向くようにする方が穿刺しやすい。それゆえ、第1の筒状体146の上端にロゴやマーク等の表記を設けることにより、第1の筒状体146の上端が患者の皮膚と反対側に位置する穿刺に適した正しい状態で、使用者が第1の筒状体146を把持するように誘導することができる。なお、適当な大きさの平坦面が第1の筒状体146の上端に設けられて、当該平坦面にロゴやマーク等が設けられていてもよい。
【0098】
第1の筒状体146の基端部には、内針固定部材160が取り付けられている。内針固定部材160は、第1の筒状体146の基端部に嵌め合わされて、第1の筒状体146の基端開口を塞ぐ蓋状の部材とされている。内針固定部材160は、内針40の基端部が挿入されて固定される小径筒状の固定筒部162と、固定筒部162の基端から延び出して固定筒部162の外周側で第1の筒状体146に内嵌される嵌着部164とを、備えている。また、内針固定部材160には、固定筒部162の基端側開口を覆う通気フィルタ56が設けられている。この内針固定部材160によって、内針40の基端部分に内針ハブ144が固定されている。
【0099】
第2の筒状体148は、
図14,
図15に示すように、基端部に第2の基端側係合爪72を備えている。また、第2の筒状体148は、第1実施形態の第2の筒状体48に設けられていた第2の先端側係合爪74を備えていない。第2の筒状体148は、
図14に示すように、上下方向で対向する部分に一対の側孔166,166を備えている。側孔166は、軸方向へ直線的に延びるスリット状の貫通孔とされている。
【0100】
第3の筒状体150は、
図14,
図15に示すように、先端部分が挿入筒部168とされている。挿入筒部168は、略円筒形状とされており、直径に比して軸方向長さが長く、外周面が先端側へ向けて小径となるルアーテーパーを備えている。挿入筒部168は、大径筒部78とともに収納ハウジングを構成しており、軸方向に貫通する内針挿通孔170が形成されている。内針挿通孔170は、円形断面の穴であって、基端開口において収納スペース86に連通されている。本実施形態の内針挿通孔170は、軸方向の途中に先端側へ向けて拡開するテーパ状部172が設けられており、テーパ状部172よりも先端側が基端側よりも大径とされた押し子挿入部174とされている。このため、挿入筒部168は、基端側が厚肉とされて、変形剛性が強くなっている。そして、外針ハブ18の内腔に配された押し子34の基端部が、内針挿通孔170の押し子挿入部174に挿入されている。換言すれば、本実施形態では、挿入筒部168の先端部分が、押し子34と径方向で重なる位置まで軸方向で先端側へ延び出している。このように、挿入筒部168が外針ハブ18内面に対してより先端側まで至る長い範囲で近傍に配置されることにより、外針ユニット12と内針ユニット142の相対的な傾斜が低減される。また、押し子34の基端部が挿入筒部168に対して僅かに離れて或いは接した状態で挿入されることにより、押し子34の軸方向に対する傾きを抑えられる。なお、内針挿通孔170におけるテーパ状部172よりも基端側は、第1実施形態の内針挿通孔90と同様に、プロテクタ94が通過不可能な大きさ及び形状とされている。
【0101】
第3の筒状体150の基端部には、
図14に示すように、上下方向において外周へ向けて突出する規制突起としての第3の基端側係合爪176,176が一体形成されている。第3の基端側係合爪176は、第3の筒状体150の径方向両側へ向けて突出する一対が設けられている。第3の基端側係合爪176は、先端面が軸方向に対して略直交して広がる平面とされている。第3の基端側係合爪176は、第2の筒状体148に形成された側孔166に対応する周方向幅寸法を有している。そして、第3の基端側係合爪176は、内周側から側孔166に挿入されており、側孔166に沿って軸方向に移動可能とされている。なお、第3の基端側係合爪176は、側孔166の左右内面に対して接しながら摺動してもよいし、側孔166の左右内面から離れた状態で移動可能とされていてもよい。
【0102】
第3の筒状体150は、周方向において係止部110の両側に位置する一対の側方カバー部128,128を備えており、それら側方カバー部128,128の先端部が先端連結部178によって相互に連結されている。先端連結部178は、一対の側方カバー部128,128と一体形成されており、軸方向に対して略直交して広がる板状とされている。先端連結部178は、係止部110よりも先端側に位置している。本実施形態の先端連結部178は、側方カバー部128の先端部の左右方向の全体にわたって設けられているが、例えば左右方向において部分的に設けられていてもよい。このように一対の側方カバー部128,128の先端部分が先端連結部178によって相互に連結されていることにより、一対の側方カバー部128,128の強度の向上が図られる。更に、一対の側方カバー部128,128の間に配される係止部110の先端側が、先端連結部178によって覆われることから、係止部110に先端側から触れ難くなって、係止部110と外針ハブ18との係止が意図せずに解除されるのを防ぐことができる。
【0103】
第1~第3の筒状体146,148,150は、第1の筒状体146に第2の筒状体148が挿入されると共に、第2の筒状体148に第3の筒状体150が挿入されて、入れ子状に組み合わされている。そして、第2の筒状体148の第2の基端側係合爪72が、第1の筒状体146の第1の先端側係合爪68よりも基端側に位置し、且つ第1の先端側係合爪68に対して軸方向の投影においてオーバーラップする位置に配置されている。第3の筒状体150の第3の基端側係合爪176は、第2の筒状体148に形成された側孔166に挿入されており、側孔166の内面に対して軸方向及び周方向で重なる位置に配置されている。
【0104】
本実施形態では、第3の基端側係合爪176が側孔166に挿入されることから、第2の先端側係合爪74と第3の基端側係合爪92を備える第1の実施形態に比して、内針ハブ144において使用者が手で把持する部分の左右方向の幅寸法を小さくすることができる。これにより、持ちやすく使用時の操作性に優れた内針ハブ144を実現することができる。また、第3の基端側係合爪176が設けられる上下方向においても、第3の基端側係合爪176が側孔166に挿入される構造であることから、大型化を防ぐことができる。
【0105】
なお、側孔166と第3の基端側係合爪176が設けられる径方向は、上下方向に限定されるものではなく、例えば、側孔166と第3の基端側係合爪176は左右方向に設けられていてもよいし、上下方向と左右方向の両方に対して傾斜する方向に設けられていてもよい。また、側孔166と第3の基端側係合孔176は、各3つ以上が設けられていてもよい。側孔166と第3の基端側係合孔176は、各1つであってもよいが、側孔166の内面と第3の基端側係合孔176との係合時の反力をバランスよく作用させるために、各複数がそれぞれ周方向で分散して配されていることが望ましい。
【0106】
使用前の針組立体140は、
図16に示すように、針先42を覆うキャップ180が第1の筒状体146に取り付けられている。キャップ180は、例えば硬質の樹脂によって形成されており、
図17~
図19にも示すように、先端側に底を備える略有底円筒形状とされている。キャップ180は、
図16に示すように、針ハブ18,144の外周を覆う基端部分が、針16,40を覆う先端部分よりも大径とされた段付き筒状とされていると共に、基端部分の周方向の一部には、係止部110、外周カバー部60、側方カバー部128などを収容する膨出部182が設けられている。キャップ180は、大径の基端部分が略一定の内径寸法及び外径寸法で延びていると共に、小径の先端部分が先端に向けて小径となるテーパ筒状とされている。
【0107】
キャップ180の基端開口部には、4つの係止爪184が設けられている。係止爪184は、
図16~
図19に示すように、キャップ180の内周面に突出しており、第1の筒状体146の係止突部156が係止爪184を乗り越えて先端側へ挿入されることによって、針組立体140のキャップ180に対する基端側への抜けが、係止突部156との軸方向での係止によって制限される。
【0108】
キャップ180における各係止爪184よりも先端側には、内周へ突出するリブ186がそれぞれ設けられている。係止爪184とリブ186は、軸方向に離れて設けられており、係止爪184とリブ186の間には内周へ向けて開口する嵌合溝188が形成されている。そして、
図16に示すように、第1の筒状体146の係止突部156が嵌合溝188に嵌め合わされることにより、キャップ180と針組立体140が軸方向の両側で位置決めされている。これにより、キャップ180は、先端底部が針先42から離れた位置において針先42を覆う状態で、針組立体140に取り付けられる。また、4つのリブ186の内周側へ外針ハブ18のフランジ状部26が嵌め入れられており、キャップ180と針組立体140の相対的な傾斜が低減されている。外針ハブ18とリブ186の当接位置は、係止突部156の嵌合溝188への嵌合位置に対して先端側へ離れており、針組立体140とキャップ180は、軸方向で離れた2か所において相互に接していることによって、相対的な傾斜をより効果的に抑えられている。
【0109】
4つの係止爪184は、周方向で略等間隔に設けられており、上下に各2つが配されている。下側の2つの係止爪184,184は、リブ186が軸方向の先端側だけでなく、周方向の片側にも延び出している。下側の係止爪184と周方向で隣接するリブ186は、第1の筒状体146の係止突部156がC環状とされて周方向で部分的に形成されていないことから、係止突部156と干渉しない。また、係止突部156の周方向端面が下側の係止爪184と隣接するリブ186に周方向で係止されることによって、キャップ180が針組立体140に対して周方向で位置決めされて、回転を阻止されている。なお、一対の側方カバー部128,128がキャップ180の膨出部182の内面に周方向で当接することによっても、キャップ180の針組立体140に対する回転阻止が実現されている。
【0110】
針組立体140の使用時には、先ず、使用者が、キャップ180から針組立体140を基端側へ引き抜いて、針先42を露出させる。そして、露出した針先42を患者の血管へ穿刺し、内針40とともに外針16を血管へ挿入する。内針40が血管に穿刺されると、血液が内針40の内腔を通じて内針固定部材160と通気フィルタ56の間の空間(チャンバー)へ流入する。当該空間への血液の流入(フラッシュバック)を目視で確認することにより、内針40が血管へ適切に穿刺されていることを把握できる。
【0111】
次に、使用者は、
図20,
図21に示すように、内針40を外針16から基端側へ引き抜く。即ち、一方の手で外針ハブ18を把持しながら、他方の手で内針ハブ144の第1の筒状体146を基端側へ引くことにより、内針40を外針16から引き抜く。第1の筒状体146を基端側へ引くと、第1の筒状体146が第2の筒状体148に対して基端側へ変位して、第1の先端側係合爪68が第2の基端側係合爪72に対して軸方向で係合され、その後は第1の筒状体146と第2の筒状体148が一体的に基端側へ変位する。更に、第2の筒状体148が第3の筒状体150に対して基端側へ変位すると、側孔166内を基端側へ移動した第3の基端側係合爪176が側孔166の先端側内面に係合される。このように、第1の筒状体146が第2の筒状体148に対して基端側へ相対変位して内針ハブ144が伸長変形した後、第2の筒状体148が第3の筒状体150に対して基端側へ相対変位して、内針ハブ144が更に伸長変形する(
図21参照)。内針ハブ144の伸長変形に際して、第1の先端側係合爪68と第2の基端側係合爪72の係合によって、第1の筒状体146と第2の筒状体148の軸方向の相対変位量が制限されて、第1の筒状体146と第2の筒状体148の分離が阻止されている。また、内針ハブ144の伸長変形に際して、側孔166の内面と第3の基端側係合爪176との係合によって、第2の筒状体148と第3の筒状体150の軸方向の相対変位量が制限されて、第2の筒状体148と第3の筒状体150の分離が阻止されている。
【0112】
このように、内針ハブ144の伸長方向の変形が、第1の先端側係合爪68と第2の基端側係合爪72の係合と、側孔166の内面と第3の基端側係合爪176の係合とによって制限されている。また、本実施形態では、内針ハブ144の伸長状態からの収縮を制限するストッパは設けられておらず、内針ユニット142を基端側へ引き抜く際に、ストッパによる抵抗が第1~第3の筒状体146,148,150の相対変位を妨げないようにされている。もっとも、内針ハブ144の収縮方向の変形を制限するストッパが、例えば、第1~第3の筒状体146,148,150の軸方向の相対変位を係合などの手段で制限することによって設けられていてもよい。
【0113】
第1の筒状体146と第2の筒状体148は、周方向の相対回転が許容されている。第2の筒状体148と第3の筒状体150は、第3の基端側係合爪176が側孔166の内面に周方向で係合されることによって、周方向の相対回転が制限されている。
【0114】
内針40は、伸長変形した内針ハブ144に全体が収容されて、特に針先42が外部に露出しなくなる。本実施形態では、第2の筒状体148に側孔166が開口しているが、内針40の針先42は、側孔166よりも先端側で第3の筒状体150に収容されることから、針先42が側孔166の開口部分に位置することはない。
【0115】
内針40を外針16から引き抜く前に、内針ハブ144の第1の筒状体146の把持部152,152を中指と親指で挟んだ状態で、同じ手の人差指によって外針ハブ138のフランジ状部26を先端側へ向けて押し出して、外針16の先端を内針40の先端位置に近づける払い出し操作を行う場合がある。本実施形態の針組立体140では、フランジ状部26に基端側から突き当てられる第1の筒状体146の先端部が、フランジ状部26よりも小径の当接部159を備えており、フランジ状部26の上部が当接部159よりも外周側である上方へ突出している。それゆえ、使用者は、フランジ状部26の上部を人差指で押しやすく、払い出し操作を行いやすい。
【0116】
なお、プロテクタ94による針先42の保護や、内針ユニット142と外針ユニット12の自動的な分離機構、留置された外針ユニット12の使用方法などは、第1実施形態と実質的に同一であることから、ここでは説明を省略する。
【0117】
図22,
図23には、本発明の第3実施形態としての針組立体190が示されている。針組立体190は、外針ユニット12と内針ユニット192が相互に離脱可能に連結された構造を有している。
【0118】
内針ユニット192は、内針40の基端側に内針ハブ194が設けられた構造を有している。内針ハブ194は、前記実施形態の内針ハブ44,142と同様に多重筒構造とされており、最外周の第1の筒状体196と、第1の筒状体196に内挿される第2の筒状体148と、第2の筒状体148に内挿される第3の筒状体198とを有している。
【0119】
前記実施形態と同様に伸縮可能なテレスコピック構造を有する内針ハブ194は、収縮状態において、最外周の筒状体である第3の筒状体198の大径筒部78が第2の筒状体148よりも先端側で第1の筒状体196に収容されており、最内周の筒状体である第1の筒状体196の内周面と第3の筒状体198の外周面が重ね合わされている。
【0120】
相互に重ね合わされた第1の筒状体196と第3の筒状体198の先端部分は、第1位置決め機構によって位置決めされている。第1位置決め機構は、
図23に示すように、第1の筒状体196の内周面に開口して軸方向へ延びる一対の凹溝200,200に対して、第3の筒状体198の外周面に突出して軸方向へ延びる一対の突条202,202が挿入されることにより、構成されている。
【0121】
凹溝200は、第1の筒状体196の内面に開口して上下両側に設けられており、略一定の矩形断面で軸方向に延びている。突条202は、第3の筒状体198の外面の上下両側に突出しており、凹溝200の断面よりも小さい略一定の矩形断面で軸方向に延びている。そして、突条202が凹溝200に挿入されており、第1の筒状体196と第3の筒状体198の相対的な傾動や左右方向の移動が、突条202と凹溝200の内面との係止によって制限されている。従って、第1の筒状体196と第3の筒状体198のがたつきが抑制される。突条202と凹溝200が軸方向に延びていることから、内針ハブ194の伸長に際して第1の筒状体196と第3の筒状体198が軸方向に相対変位する場合に、突条202の凹溝200への挿入による位置決めが維持される。それゆえ、第1の筒状体196と第3の筒状体198の軸方向での相対的な移動に際して、第1の筒状体196と第3の筒状体198のがたつきが、突条202と凹溝200によって防止される。
【0122】
挿通孔104が開口する左方(
図23中の右方)において、第1の筒状体196には内周へ向けて突出する第1突起204が設けられている。第1突起204は、左右方向に対して直交して広がる平面を備えており、当該平面が第3の筒状体198における挿通孔104の開口縁部に重ね合わされることによっても、第1の筒状体196と第3の筒状体198が位置決めされている。本実施形態では、上下方向で相互に対向する位置に一対の第1突起204,204が設けられており、それら一対の第1突起204,204が挿通孔104の上下両側において第3の筒状体198に重ね合わされている。それゆえ、第1の筒状体196と第3の筒状体198がより強く位置決めされて、第1の筒状体196と第3の筒状体198のがたつきが一層抑えられる。なお、第1突起204は軸方向に延びていることから、内針ハブ194を伸長変形させる際の第1の筒状体196と第3の筒状体198のがたつきが第1突起204,204によって抑えられて、内針ハブ194をスムーズに伸長変形させることが可能になる。
【0123】
第1の筒状体196の内周面には、第1突起204と反対側の右方(
図23中の左方)において突出する第2突起206が設けられている。第2突起206は、左右方向に対して直交して広がる平面と、上下方向に対して直交して広がる平面とを備えている。また、連結部材106の挿通部108には、第2突起206が重ね合わされる部分に凹部208が設けられている。凹部208の内面は、上述した第2突起206の2つの平面と対応する平面を備えており、第2突起206と対応する断面形状とされている。そして、第2突起206が凹部208へ挿入されて、第2突起206の各平面が凹部208の内面における対応する平面にそれぞれ重ね合わされる。これにより、第2突起206を備えた第1の筒状体196と、凹部208を備えた連結部材106とが、第2突起206と凹部208の内面との接触によって相対的な移動を制限され、がたつきを抑えられている。
【0124】
また、本実施形態では、
図22に示すように、第3の筒状体198の基端部が第2の筒状体148よりも基端側へ突出している。そして、第3の筒状体198の基端部が第1の筒状体196に固定された内針固定部材210の先端凹所212に挿入されることによって、第1の筒状体196と第3の筒状体198の基端部分を相互に位置決めする位置決め部としての第2位置決め機構が構成されている。
【0125】
内針固定部材210は、内針40の基端部に固定される小径筒状の固定筒部52と、固定筒部52の先端から一体的に延び出して固定筒部52の外周において第1の筒状体196に内嵌される嵌着部164とを、備えている。嵌着部164から更に先端へ向けて突出する先端筒部214が一体で設けられており、先端筒部214の内周に先端凹所212が形成されている。
【0126】
第3の筒状体198における第2の筒状体148よりも基端へ突出した基端部は、内針ハブ194の収縮状態において、第1の筒状体196に固定された内針固定部材210の先端凹所212に挿入されている。これにより、内針ハブ194の収縮状態において、第1の筒状体196と第3の筒状体198は、相対的な軸直角方向の移動や傾動が先端筒部214と第3の筒状体198の基端部との当接によって制限され、基端部分において第1の筒状体196と第3の筒状体198を位置決めする第2位置決め機構が構成されている。
【0127】
第3の筒状体198の基端部の外周面と先端筒部214の内周面は、重ね合わせ面間に隙間を有していてもよいし、締め代をもって相互に嵌め合わされていてもよい。もっとも、第3の筒状体198が先端筒部214に嵌め合わされる場合には、内針ハブ194を伸ばす際に、第1の筒状体196と第3の筒状体198の軸方向の相対移動が第3の筒状体198と先端筒部214の嵌合によって妨げられないように締め代又は当接力が設定される。
【0128】
本実施形態では、第1の筒状体196と第3の筒状体198が第1位置決め機構と第2位置決め機構を備えることにより、第1の筒状体196と第3の筒状体198のがたつきが抑制される。特に、第1位置決め機構が先端部分に設けられ、第2位置決め機構が基端部分に設けられることから、第1の筒状体196と第3の筒状体198の相対的な傾動が効果的に抑えられて、内針40を引き抜く際に内針ハブ194をスムーズに伸ばすことができる。また、第2位置決め機構は、第3の筒状体198の外周面を位置決めするものであることから、第3の筒状体198を大径化する必要もなく、径方向サイズを抑えることも可能になる。
【0129】
第1位置決め機構の具体的な構造は、第3実施形態の具体例によって限定されない。例えば、第1の筒状体の内周面に突条を設け、第3の筒状体の外周面に凹溝を設けて、突条が凹溝に挿入されることで、第1位置決め機構を構成してもよい。また、第2位置決め機構は、必ずしも内針固定部材によって構成されるものに限定されない。例えば、第1の筒状体の内周面に突出する環状又は複数の突起を一体的に或いは別部材の嵌め合わせによって設けて、当該突起の内周へ第3の筒状体の基端部が挿入されることにより、第2位置決め機構が構成されるようにもできる。第2位置決め機構を内針の基端に固着される部材や通気フィルタを備える部材以外によって構成してもよいことは、言うまでもない。
【0130】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明はかかる実施形態における具体的な記載によって限定的に解釈されるものでなく、当業者の知識に基づいて種々なる変更、修正、改良などを加えた態様で実施可能である。
【0131】
前記実施形態のような幅方向に開放された構造のプロテクタ94を採用する場合には、保護壁部100,100を備えるプロテクタ94の先端部分は、内針挿通孔90の収納スペース86への開口よりも幅方向の外側まで延在していることが望ましいが、プロテクタ94の先端部分は、内針挿通孔90の収納スペース86への開口を幅方向において実質的に覆っていればよく、例えば、内針40が挿入され得ない程度の隙間は許容される。具体的には、例えば、内針挿通孔90の収納スペース86への開口の幅寸法に対するプロテクタ94の先端部分の幅寸法の差が内針40の直径よりも小さくされていれば、プロテクタ94の先端部分の幅寸法が、内針挿通孔90の収納スペース86への開口よりも小さくされていてもよい。なお、プロテクタ94の作動が収納スペース86の内面によって阻害されないように、プロテクタ94の幅寸法は収納スペース86の同方向における内法寸法よりも小さくされることが望ましく、プロテクタ94が収納スペース86内で幅方向に移動し得る。このような場合には、収納スペース86内におけるプロテクタ94の幅方向での位置に関わらず、内針挿通孔90がプロテクタ94の先端部分によって幅方向において覆われた状態が維持されるように、内針挿通孔90とプロテクタ94の先端部分との幅寸法が設定される。
【0132】
前記実施形態では、収納スペース86の周壁を貫通する挿入窓124を通じてプロテクタ94が収納スペース86へ挿入されるようになっていたが、挿入窓124は必須ではない。例えば、大径筒部78が先端側の部材と基端側の部材とを固定して構成される分割構造体とされており、固定前の先端側の部材と基端側の部材との間にプロテクタ94を配することで、それら先端側の部材と基端側の部材との固定をもってプロテクタ94を収納スペース86に収納することもできる。これによれば、収納スペース86の先端側と基端側に設けられた内針挿通孔90と小径筒部82の内腔とが、何れもプロテクタ94の軸方向投影よりも小さくされていても、挿入窓124を設けることなくプロテクタ94を収納スペース86に収納することができる。
【0133】
前記実施形態では、プロテクタ94の保護壁部100,100(内針案内片102,102)が内針40の外周面に対して直接に接していたが、例えば、国際公開第2016/080525号のように、プロテクタ94の保護壁部100,100が内針40に取り付けられた筒状のスリーブに接することで、当該スリーブを介して内針40に装着されていてもよい。
【0134】
前記実施形態のプロテクタ94は、一対の弾性腕部98a,98bが交差することなく対向して延びていたが、例えば一対の弾性腕部は、相互に交差する方向で延びていてもよい。
【0135】
前記実施形態の内針ハブ44は、複数の筒状体からなるテレスコピック構造によって、内針40を全長にわたって覆うフルカバータイプの保護ハウジングを構成するようになっていたが、例えば蛇腹構造を有する1つの筒状体によって構成された内針ハブによって、フルカバータイプの保護ハウジングを構成することもできる。また、内針40の先端部分を部分的に覆う部分カバータイプの保護ハウジングも採用可能である。
【0136】
具体的には、例えば、
図24に示す針組立体220のように、部分カバータイプの保護ハウジングを有する内針ユニット222を備えた構造とすることもできる。内針ユニット222は、内針ハブ224の先端側に収納ハウジング226が配された構造とされている。内針ハブ224は、全体として略円筒状とされており、内針40の基端部に固定された針ハブ本体228と、針ハブ本体228の基端開口部に取り付けられて通気フィルタ56を備えたキャップ部材230とを、備えている。針ハブ本体228の内部には、内針40の基端部が固定される小径筒状の固定筒部52が一体形成されている。針ハブ本体228における固定筒部52よりも先端側は、先端へ向けて開放された有底筒状とされて、収納ハウジング226が挿入されている。収納ハウジング226は、第2実施形態の第3の筒状体150に設けられた収納ハウジングと同様に大径筒部78と挿入筒部168を備えており、内部にはプロテクタ94が収容されている。収納ハウジング226は、針ハブ本体228に対して軸方向で分離可能とされている。
【0137】
このような構造とされた針組立体220は、前記実施形態と同様に、内針40及び外針16の血管への穿刺後に、内針40が外針16から基端側へ引き抜かれる。即ち、外針16が血管から抜けないように外針ユニット12を押さえながら、内針ハブ224を基端側へ引くと、内針40及び内針ハブ224が収納ハウジング226に対して基端側へ移動し、収納ハウジング226とプロテクタ94が内針40の先端側へ移動する。そして、前記実施形態と同様に、内針40の針先42がプロテクタ94に収容されることにより、収納ハウジング226と外針ハブ18との連結部材106による連結が解除され、内針ユニット222が外針ユニット12から分離する。外針ユニット12から分離した内針ユニット222は、
図25に示すように、内針40の先端部分がプロテクタ94及び収納ハウジング226によって覆われている一方で、収納ハウジング226と内針ハブ224の間において内針40が露出している。このように、本発明は、内針40を部分的に覆う部分保護タイプの保護ハウジングを備える針組立体220にも適用可能である。
【0138】
側方カバー部は、係止部110に対して周方向の片側だけに設けられていてもよい。外周カバー部は、係止部110の外周への移動を妨げないように、第1の筒状体46に設けられていることが望ましいが、例えば、第3の筒状体50に設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0139】
10 針組立体(第1実施形態)
12 外針ユニット
14 内針ユニット
16 外針
18 外針ハブ
20 周壁
22 カシメピン
24 基端側開口部
26 フランジ状部
28 位置決め溝
30 止血弁機構
32 ディスク弁
34 押し子
36 押し子ガイド
38 スリット
40 内針
42 針先
44 内針ハブ
46 第1の筒状体
48 第2の筒状体
50 第3の筒状体
52 固定筒部
54 収容筒部
56 通気フィルタ
58 矩形筒部
60 外周カバー部
62 切欠き
64 円筒部
66 基端壁部
68 第1の先端側係合爪
70 貫通孔
72 第2の基端側係合爪
74 第2の先端側係合爪
76 内孔
78 大径筒部(収納ハウジング)
80 環状壁部
82 小径筒部
84 平面部
86 収納スペース
88 挿入筒部(収納ハウジング)
90 内針挿通孔
92 第3の基端側係合爪
94 プロテクタ
96 後壁部
98 弾性腕部(アーム部)
100 保護壁部
102 内針案内片
104 挿通孔
106 連結部材
108 挿通部
110 係止部
112 連通孔
114 抜止突部
116 爪状部
118 先端側端面
120 基端側端面
124 挿入窓
126 当接面
128 側方カバー部
130 回転防止リブ
140 針組立体(第2実施形態)
142 内針ユニット
144 内針ハブ
146 第1の筒状体
148 第2の筒状体
150 第3の筒状体
152 把持部
154 滑止め
156 係止突部
158 平坦部
159 当接部
160 内針固定部材
162 固定筒部
164 嵌着部
166 側孔
168 挿入筒部
170 内針挿通孔
172 テーパ状部
174 押し子挿入部
176 第3の基端側係合爪
178 先端連結部
180 キャップ
182 膨出部
184 係止爪
186 リブ
188 嵌合溝
190 針組立体(第3実施形態)
192 内針ユニット
194 内針ハブ
196 第1の筒状体
198 第3の筒状体
200 凹溝
202 突条
204 第1突起
206 第2突起
208 凹部
210 内針固定部材
212 先端凹所
214 先端筒部
220 針組立体(別の1実施形態)
222 内針ユニット
224 内針ハブ
226 収納ハウジング
228 針ハブ本体
230 キャップ部材