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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-01
(45)【発行日】2024-10-09
(54)【発明の名称】空気分離装置
(51)【国際特許分類】
   F25J 3/04 20060101AFI20241002BHJP
【FI】
F25J3/04 101
F25J3/04 104
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2024022972
(22)【出願日】2024-02-19
【審査請求日】2024-02-19
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591036572
【氏名又は名称】レール・リキード-ソシエテ・アノニム・プール・レテュード・エ・レクスプロワタシオン・デ・プロセデ・ジョルジュ・クロード
(74)【代理人】
【識別番号】100229851
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 亜季
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 献児
【審査官】目代 博茂
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-187086(JP,A)
【文献】特開昭63-220080(JP,A)
【文献】特開平05-280862(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0020165(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0078000(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25J1/00-5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料空気が温端から導入され、冷端から導出される主熱交換器と、
前記主熱交換器から導出された原料空気が導入される中圧精留塔と、
前記中圧精留塔から蒸気流が導入され、凝縮し還流液として導出する窒素凝縮器と、
前記中圧精留塔から導出される酸素富化液が導入される低圧精留塔と、
前記窒素凝縮器から導出される酸素富化ガスを、前記主熱交換器で熱交換させた後で、膨張させて冷却する酸素タービンと、
前記低圧精留塔から導出される窒素ガスを、少なくとも前記主熱交換器で熱交換させ、所定圧に圧縮し冷却し、再び前記主熱交換器で冷却させた後で、膨張する窒素タービンと、を備え、
前記酸素タービンの入口温度が、前記窒素タービンの入口温度より低い、空気分離装置。
【請求項2】
前記低圧精留塔から導出される酸素含有流体が導入される粗アルゴン塔と、
前記粗アルゴン塔から蒸気流が導入され、凝縮して還流液として導出する粗アルゴン凝縮器と、を備える請求項1に記載の空気分離装置。
【請求項3】
前記低圧精留塔から導出され、少なくとも前記主熱交換器を介して窒素ガスとして取り出す窒素ガス配管ラインと、
前記窒素ガス配管ラインの前記熱交換器より下流から分岐し、再び前記主熱交換器の温端から導入され、中間部から導出され、前記窒素タービンで膨張され、前記窒素ガス配管ラインへ合流する、あるいは再び前記主熱交換器を介して窒素ガスとして取り出す窒素ガス分岐配管ラインと、
前記窒素ガス分岐配管ラインから分岐され、前記主熱交換器へ導入されないようにバイパスし、前記窒素ガス分岐配管ラインへ合流するバイパスラインと、
前記バイパスラインに流通される窒素ガスの量を調整する調整弁と、を備える、請求項1に記載の空気分離装置。
【請求項4】
前記低圧精留塔から導出され、少なくとも前記主熱交換器を介して窒素ガスとして取り出す窒素ガス配管ラインと、
前記窒素ガス配管ラインの前記熱交換器より下流から分岐し、再び前記主熱交換器の温端から導入され、中間部から導出され、前記窒素タービンで膨張され、前記窒素ガス配管ラインへ合流する、あるいは再び前記主熱交換器を介して窒素ガスとして取り出す窒素ガス分岐配管ラインと、
前記窒素ガス分岐配管ラインに設けられ、窒素ガスを所定圧に昇圧する窒素ブースターと、
前記窒素ブースターで昇圧された窒素ガスを冷却する第二冷却装置と、を備える、請求項1に記載の空気分離装置。
【請求項5】
前記主熱交換器の内部で、前記窒素ガス分岐配管ラインから分岐し、前記主熱交換器の冷端から導出されて、前記中圧精留塔へ窒素ガスを導入するためのリサイクル窒素ラインを、さらに備える、請求項3または4に記載の空気分離装置。
【請求項6】
前記窒素ガス分岐配管ラインに設けられ、窒素ガスを所定圧に昇圧する第二窒素ブースターと、
前記窒素ガス分岐配管ラインに設けられ、前記第二窒素ブースターで昇圧された窒素ガスを冷却する第二冷却装置と、をさらに備える、請求項3または4に記載の空気分離装置。
【請求項7】
前記中圧精留塔から導出される酸素富化液が冷端から導入され温端から導出されるサブクーラを、さらに備える、請求項1または2に記載の空気分離装置。




【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気分離装置に関する。例えば、窒素とアルゴン等の希ガスが分離されうる深冷空気分離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
空気成分を窒素、アルゴン、酸素などへ深冷空気分離法で分離する場合、中圧塔、低圧塔、粗アルゴン塔等の複数の精留塔を備えた複式精留システムが適用される。特に窒素やアルゴンの回収率を高めると同時にガス圧縮に係る動力を最小化して供給を最適化する場合、低圧精留塔から導出される低圧窒素ガスの圧力を高めて低圧窒素ガスを圧縮する窒素圧縮機の入口圧力を上げ、窒素圧縮機の負荷を小さくする。この時、低圧精留塔の圧力は高められるので、その底部から導出される酸素ガスを膨張タービンで膨張して、空気分離装置の熱バランスを維持するのに必要な寒冷を発生させることができる(例えば、特許文献1、2)。
【0003】
空気分離装置から製造される製品ガスは、貯蔵や輸送のために液体で供給されることが求められる。ガスの液化に係る寒冷を発生させる方法としては、原料空気の一部を膨張させる方法(例えば、特許文献3)や、中圧塔から導出される窒素ガスをリサイクルして膨張させる方法(例えば、特許文献4)が知られている。しかしながら、これらの方法は、低圧塔底部にたまる液体酸素を蒸発させるために中圧精留塔に導入される中圧空気、または中圧精留塔の頂部にたまる中圧窒素の一部を使用することになるから、精留塔内の蒸気流を減少させ、窒素またはアルゴンの回収を低下させる問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許公開第2019293347号
【文献】米国特許公開第2023358468号
【文献】国際特許公開第2021/230911号
【文献】特開昭63-187086号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、空気から分離された酸素ガスを膨張させることで寒冷を生じさせる空気分離装置であって、希ガスや窒素の回収率を低下させることなく、酸素製品の製造や液化窒素や液化アルゴンのような液製品の製造に要する寒冷を窒素タービンで供給することで、熱バランスを維持することができる空気分離装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の空気分離装置は、主熱交換器(1)、中圧精留塔(2)、低圧精留塔(4)、粗アルゴン塔(5)、窒素凝縮器(3)、粗アルゴン凝縮器(6)、酸素タービン(9)、窒素圧縮機(10)、窒素タービン(8)を備える。
窒素タービン(8)は、窒素圧縮機(10)から供給される窒素ガスを膨張する。酸素タービン(9)の入口温度が、窒素タービン(8)の入口温度より低いことを特徴とする。例えば、主熱交換器(1)の第一中間部(1a)から導出されて酸素タービン(9)へ送られるガスの温度が、主熱交換器(1)の第二中間部(1b)から導出されて窒素タービン(8)へ送られるガスの温度よりも低い。主熱交換器(1)から酸素タービン(9)に接続される配管の取り出しノズルの位置(1a)は、窒素タービン(8)に接続される配管の取り出しノズルの位置(1b)よりも低温側に配置されてもよい。また、窒素タービン(8)の入口温度が酸素タービン(9)の入口温度より高くなるように、主熱交換器(1)の温端にある窒素ガスの配管から窒素タービン入口配管へバイパス配管(L431a)が設けられていてもよい。
空気分離装置は、第一窒素ブースター(14)を備え、第一窒素ブースター(14)は膨張タービン(81)によって駆動されてもよい。
空気分離装置は、第二窒素ブースター(17)を備え、第二窒素ブースター(17)は酸素タービン(9)によって駆動されてもよい。
空気分離装置は、窒素圧縮機(10)から供給される圧縮された窒素ガスの一部を主熱交換器(1)で冷却して、中圧精留塔(2)に供給する構成であってもよい。
空気分離装置は、中圧精留塔(2)から導出される液(例えば、酸素富化液)を、低圧精留塔(4)または粗アルゴン凝縮器(6)から導出されるガスによって冷却するサブクーラ(7)を備えていてもよい(図6参照)。
空気分離装置において、低圧精留塔(4)あるいは窒素凝縮器(3)の冷媒貯留部(32)の気相から導出される酸素ガスは、低圧精留塔(4)から導出される窒素ガスまたは粗アルゴン凝縮器(6)から導出される酸素富化ガスと混合されてから、酸素タービン(9)で膨張されてもよい。主熱交換器(1)は、設計温度、圧力、流量に応じた構造の最適化や、輸送性の向上のため、複数に分割された構造であってもよい。
【0007】
上記構成により以下の作用効果を奏する。酸素タービン(9)は、製品ガスを製造するために必要な寒冷を常時発生させるが、膨張比は低圧精留塔(4)の圧力と、膨張ガスを主熱交換器(1)を介して大気に放出するに足るだけの大気圧付近の低圧力の比になるから、せいぜい2から5倍程度の膨張比しかとれない。それにもかかわらず空気分離装置に必要な低温ガスを供給しなければならないから、酸素タービン(9)の入口温度は低くなる。
一方、主熱交換器(1)から導出される低圧窒素ガス(LP GAN)は、窒素圧縮機(10)を介して供給されるが、その出口圧力は自由に高めることができるので、膨張比を大きくすることができる。即ち、製品ガスの液化に要するような大量の寒冷を供給するには、この窒素圧縮機(10)と窒素タービン(8)の構成が適切である。
しかしながら、製品ガスの液化は貯蔵や輸送用なので、必ずしも常時稼働が求められるわけではない。そこで本開示の空気分離装置では、酸素タービン(9)の入口温度を窒素タービン(9)よりも低くなるように構成することで、酸素タービン(9)をベースロード寒冷源とし、窒素タービン(8)を変動寒冷源とした。こうすることで、定常的なガス製造に必要な寒冷を酸素タービン(9)で供給しつつ、さらなる寒冷が必要な場合に窒素タービン(8)を稼働することで、柔軟に製品ガス及び液需要に応えることができる。さらに酸素タービン(9)がより低温を供給することで、主熱交換器(1)の低温側の熱バランスが保たれ、窒素タービン(9)の入口温度を高めることができ、より効率的に寒冷を供給することができる。
【0008】
本開示の空気分離装置(A1、A2,A3,A4,A5、A6)は、
原料空気(Feed air)が温端から導入され、冷端から導出される主熱交換器(1)と、
前記主熱交換器(1)の冷端から導出された原料空気が、その底部(21)へ導入される中圧精留塔(2)と、
前記中圧精留塔(2)の上部(23)から蒸気流が導入され、凝縮し還流液として導出する窒素凝縮器(3)と、
前記中圧精留塔(2)の底部(21)から導出される酸素富化液が、その精留部(42)へ導入される、および/または前記中圧精留塔(2)の上部(23)から導出される蒸気流が、その頂部(43)へ導入される低圧精留塔(4)と、
前記窒素凝縮器(3)の冷媒貯留部(32)の気相から導出される酸素富化ガスを、前記主熱交換器(1)で熱交換させた後で、膨張させて冷却する酸素タービン(9)と、
前記低圧精留塔(4)の頂部(43)から導出される窒素ガスを、少なくとも前記主熱交換器(1)で熱交換させ、窒素圧縮機(10)で所定圧に圧縮し、冷却装置(11)で冷却し、再び前記主熱交換器(1)で冷却させた後で、膨張する窒素タービン(8)と、
を備えていてもよい。
【0009】
前記空気分離装置(A1、A2、A3、A4、A5)は、
前記低圧精留塔(4)の精留部(42)から導出される酸素含有流体が、その底部(51)へ導入される粗アルゴン塔(5)と、
前記粗アルゴン塔(5)の上部から蒸気流が導入され、凝縮して還流液として導出する粗アルゴン凝縮器(6)と、
前記中圧精留塔(2)の底部(21)から導出される酸素富化液が冷端から導入され温端から導出される、および/または前記中圧精留塔(2)の上部(23)から導出される蒸気流が冷端から導入され温端から導出される、および/または前記低圧精留塔(4)の頂部(43)から導出される窒素ガスが温端から導入され冷端から導出されるサブクーラ(7)と、
を備えていてもよい。
【0010】
前記空気分離装置(A1、A2、A3、A4、A5、A6)は、
原料空気(Feed air)を前記主熱交換器(1)を介して前記中圧精留塔(2)へ導入するための原料空気ライン(L1)と、
前記中圧精留塔(2)の底部(21)から導出される酸素富化液を前記サブクーラ(7)を介して前記低圧精留塔(4)の精留部(42)へ導入するための酸素富化液配管ライン(L21)と、
前記酸素富化液配管ライン(L21)の前記サブクーラ(7)より下流から分岐され、前記粗アルゴン凝縮器(6)の冷媒貯留部(61)へ導入するための酸素富化液分岐配管ライン(L211)と、
前記中圧精留塔(2)の上部(23)から導出される液化窒素を前記サブクーラ(7)を介して前記低圧精留塔(4)の頂部(43)へ導入するための液化窒素配管ライン(L23)と、
前記液化窒素配管ライン(L23)の前記サブクーラ(7)より下流から分岐し、一部の液化窒素を導出する液化窒素分岐配管ライン(L231)と、
前記窒素凝縮器(3)の冷媒貯留部(32)の冷媒(酸素富化液)を、液化酸素(LOX)として取り出すための液化酸素取出ライン(L31)と、
前記窒素凝縮器(3)の冷媒貯留部(32)の上部気相から導出され、前記主熱交換器(1)の中間へ導入され温められて導出され、前記酸素タービン(9)で膨張され、再び前記主熱交換器(1)の冷端から導入され温端から導出され、酸素ガスとして取り出すための酸素取出ライン(L32)と、
前記低圧精留塔(4)の精留部(42)から導出され、前記粗アルゴン塔(5)の底部(51)へ酸素含有流体を導入するための酸素含有流体配管ライン(L421)と、
前記低圧精留塔(4)の頂部(43)から導出され、前記サブクーラ(7)と前記主熱交換器(1)を介して窒素ガス(GAN)として取り出す窒素ガス配管ライン(L43)と、
前記窒素ガス配管ライン(L43)の前記熱交換器(1)より下流から分岐し、再び前記主熱交換器(1)の温端から導入され、中間部から導出され、前記窒素タービン(8)で膨張され、前記窒素ガス配管ライン(L43)へ合流する、あるいは再び前記主熱交換器(1)を介して窒素ガスとして取り出す窒素ガス分岐配管ライン(L431)と、
前記粗アルゴン塔(5)の底部(51)から導出され、前記低圧精留塔(4)の精留部(42)の酸素含有流体配管ライン(L421)の導出位置よりも下方へ底部流体を導入するための粗アルゴン塔底部流体配管ライン(L51)と、
前記粗アルゴン塔(5)の上部の蒸気流あるいは還流液を導出するためのアルゴン取出ライン(L53)と、
前記粗アルゴン凝縮器(6)の冷媒貯留部(62)の上部気相から導出され、酸素富化液配管ライン(L21)より上方の前記低圧精留塔(4)の精留部(42)へ導入するための粗アルゴン凝縮器配管ライン(L62)と、
を備えていてもよい。
【0011】
前記窒素ガス配管ライン(L43)の主熱交換器(1)の温端より下流と前記窒素ガス分岐配管ライン(L431)との間の前記窒素ガス配管ライン(L43)に、窒素ガスを圧縮する圧縮機(10)と、圧縮した窒素ガスを冷却する冷却装置(11)が設けられていてもよい。
【0012】
低圧精留塔(4)の精留部(42)から粗アルゴン塔(5)に導入される流体を酸素含有流体と称し、原料空気導入段より低いところ(例えば窒素精留塔の底部)から導出される液体を酸素富化液と称する。酸素含有流体は、液、気液混合であってもよい。
【0013】
前記空気分離装置(A2)は、
前記窒素ガス分岐配管ライン(L431)から分岐され、前記主熱交換器(1)へ導入されないようにバイパスし、前記窒素ガス分岐配管ライン(L431)へ合流するバイパスライン(L431a)と、
前記バイパスライン(L431a)に流通される窒素ガスの量を調整する調整弁(V1)と、
を備えていてもよい。
前記空気分離装置(A2)は、
前記窒素タービン(8)へ導入される窒素ガスの温度を測定する温度測定部(12)を備えていてもよい。
前記温度測定部(12)は、前記バイパスライン(L431a)、前記窒素ガス分岐配管ライン(L431)、または前記バイパスライン(L431a)と前記窒素ガス分岐配管ライン(L431)との合流点より下流側のラインのいずれに設けられていてもよい。
前記調整弁(V1)は、前記温度測定部(12)で測定された温度結果に基づいて(例えば、所定温度範囲内に維持される、閾値以上あるいは以下のとき)、前記バイパスライン(L431a)に流通される窒素ガスの量を調整してもよい。
【0014】
前記空気分離装置(A3、A4、A5)は、
前記窒素ガス分岐配管ライン(L431)に設けられ、窒素ガスを所定圧に昇圧する窒素ブースター(14)と、
前記窒素ブースター(14)で昇圧された窒素ガスを冷却する第二冷却装置(15)と、
前記第二冷却装置(15)で冷却され、再び前記主熱交換器(1)へ導入され、中間から導出され、窒素ガスを膨張する膨張タービン(81)と、
を備えていてもよい。
【0015】
上記構成によれば、窒素ブースタータービン構成による寒冷発生である。即ち、低圧窒素ガスの一部は、窒素圧縮機(10)で圧縮された後に、膨張タービン(81)によって駆動されるブースター(14)よってさらに昇圧されてから、膨張される。この昇圧プロセスは、膨張タービン(81)における圧力差を大きくすることで、流量あたりの発生寒冷量を高めることができ、結果的に寒冷発生に要する窒素モル流量を低減することができる。
【0016】
前記空気分離装置(A4、A5)は、
前記主熱交換器(1)の内部で、前記窒素ガス分岐配管ライン(L431)から分岐し、前記主熱交換器(1)の冷端から導出されて、前記中圧精留塔(2)の精留部(22)あるいはその上部(23)へ窒素ガスを導入するためのリサイクル窒素ライン(L431b)と、
前記リサイクル窒素ライン(L431b)に設けられる弁(V2)と、
を備えていてもよい。
【0017】
上記構成によれば、窒素圧縮機(10)から供給される窒素ガスの一部を主熱交換器(1)で冷却して、中圧精留塔(2)に供給する。空気分離装置において液製造する場合、原料空気の一部を液化して中圧精留塔(2)または低圧精留塔(4)に導入するが、液化分だけ精留塔内の蒸気流が低減するため、製品の収率の面では不利になる。これを解決するために、窒素ガスを中圧精留塔(2)に再導入することで蒸気流を増し、製品ガスの収率を維持することができる。
【0018】
前記空気分離装置(A5)は、
前記第一窒素ブースター(14)より上流の前記窒素ガス分岐配管ライン(L431)に設けられ、窒素ガスを所定圧に昇圧する第二窒素ブースター(17)と、
前記第一窒素ブースター(14)より上流の前記窒素ガス分岐配管ライン(L431)に設けられ、前記第二窒素ブースター(17)で昇圧された窒素ガスを冷却する第二冷却装置(18)と、
を備えていてもよい。
前記第二窒素ブースター(17)は、前記酸素タービン(9)によって駆動されてもよい。
【0019】
上記構成によれば、第二窒素ブースター(17)が酸素タービン(9)によって駆動される。即ち、低圧窒素ガスの一部は、窒素圧縮機(10)で圧縮された後に、酸素タービン(9)によって駆動される第二窒素ブースター(17)よってさらに昇圧されてから、膨張される。この昇圧プロセスは、膨張タービンにおける圧力差を大きくすることで、流量あたりの発生寒冷量を高めることができ、結果的に寒冷発生に要する窒素モル流量を低減することができる。
【0020】
上記サブクーラ(7)は、中圧精留塔(2)から導出される液を低圧精留塔(4)または粗アルゴン凝縮器(6)から導出されるガスによって冷却する。こうすることで、液が低圧精留塔(4)に導入される際に減圧によって蒸発する量が減り、還流液として精留に貢献する液量が増えるので、精留効率を向上させることができる。
【0021】
上記窒素凝縮器(3)の冷媒貯留部(32)の気相から導出される酸素ガスは、酸素タービン(9)に導入される前に、窒素ガスや酸素富化液と混合することができる。こうすることで、酸素タービン(9)で膨張するガス流を増やして発生させる寒冷を増やすことができ、また酸素タービン(9)における酸素による燃焼などの安全リスクを下げることができる。サブクーラ(7)で冷媒貯留部(32)から取り出された液化酸素(LOX)をサブクールしてもよい(図6参照)。
【0022】
前記空気分離装置(A1、A2、A3、A4、A5、A6)は、
流量測量器、圧力測定器、温度測定器、液レベル測定器などの各種計測器と、
制御弁、仕切弁などの各種弁と、
各要素間を連結する配管と、
を有していてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】実施形態1の空気分離装置を示す図である。
図2】実施形態2の空気分離装置を示す図である。
図3】実施形態3の空気分離装置を示す図である。
図4】実施形態4の空気分離装置を示す図である。
図5】実施形態5の空気分離装置を示す図である。
図6】実施形態6の空気分離装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に本開示のいくつかの実施形態について説明する。以下に説明する実施形態は、本開示の一例を説明するものである。本開示は以下の実施形態になんら限定されるものではなく、本開示の要旨を変更しない範囲において実施される各種の変形形態も含む。なお、以下で説明される構成の全てが本開示の必須の構成であるとは限らない。上流や下流は流体(液、ガス)の流れ方向を基準にしている。
【0025】
(実施形態1)
実施形態1の第一空気分離装置A1を図1を用いて説明する。
第一空気分離装置A1は、主熱交換器(1)、中圧精留塔(2)、低圧精留塔(4)、粗アルゴン塔(5)、窒素凝縮器(3)、粗アルゴン凝縮器(6)、酸素タービン(9)、窒素圧縮機(10)、窒素タービン(8)を備える。
主熱交換器1は、温端から導入された原料空気を冷却し、冷端から導出する。冷却された原料空気は、原料空気配管ラインL1を介して中圧精留塔2へ導入される。
中圧精留塔2は、底部21と、精留部22と、頂部23を備える。原料空気配管ラインL1は、底部21に接続される。
底部21に貯留された酸素富化液は、酸素富化液配管ラインL21を介して、サブクーラ7で熱交換された後で、低圧精留塔4の精留部42へ送られる。サブクーラ7で熱交換された後酸素富化液の一部は、酸素富化液分岐配管ラインL211を介して、粗アルゴン凝縮器6の冷媒貯留部61へ導入される。
頂部23の液化窒素の一部は、液化窒素配管ラインL23を介して、サブクーラ7で熱交換された後で、低圧精留塔4の頂部43へ送られる。液化窒素分岐配管ラインL231は、液化窒素配管ラインL23のサブクーラ7より下流から分岐し、液化窒素として取り出すラインである。
【0026】
窒素凝縮器3は、中圧精留部2の頂部23の上方に設けられる。窒素凝縮器3は、中圧精留塔2の頂部23から導出された窒素ガス(蒸気流)の一部が還流配管ラインを介して導入され、冷媒である酸素富化液との熱交換によって冷却(凝縮)し液化される。液化された液化窒素は還流液として中圧精留塔2の頂部23へ戻る。
【0027】
液化酸素取出ラインL31は、窒素凝縮器3の冷媒貯留32から冷媒(酸素富化液)を、液化酸素(LOX)として取り出すためのラインである。
【0028】
低圧精留塔4は、精留部42と、頂部43を備える。底部は、窒素凝縮器3の冷媒貯留部32と兼用であってもよい。
低圧精留塔4の精留部42から導出される酸素含有流体は、酸素含有流体配管ラインL421を介して、粗アルゴン塔5の底部51へ導入される。
【0029】
粗アルゴン塔5は、底部51、精留部52、頂部53を備える。
粗アルゴン塔底部流体配管ラインL51は、粗アルゴン塔5の底部51から導出され、低圧精留塔4の精留部42の酸素含有流体配管ラインL421の導出位置よりも下方へ底部流体を導入するためのラインである。
アルゴン取出ラインL53は、粗アルゴン塔5の上部の蒸気流あるいは還流液(粗アルゴン含有流体)を導出するための配管ラインである。
【0030】
粗アルゴン凝縮器6は、粗アルゴン塔5の上部の蒸気流が導入され、凝縮して還流液として導出する。
粗アルゴン凝縮器配管ラインL62は、粗アルゴン凝縮器6の冷媒貯留部62の上部気相から導出され、酸素富化液配管ラインL21より上方の低圧精留塔4の精留部42へ導入するためのラインである。
【0031】
サブクーラ7は、中圧精留塔2の底部21から導出される酸素富化液が温端から導入され冷端から導出される。また、サブクーラ7は、中圧精留塔2の上部23から導出される蒸気流が温端から導入され冷端から導出される。また、サブクーラ7は、低圧精留塔4の頂部43から導出される窒素ガスが冷端から導入され温端から導出される。
【0032】
酸素タービン9は、窒素凝縮器3の冷媒貯留部32の気相から導出される酸素ガスを、主熱交換器1で熱交換させた後で、膨張させて冷却する。
酸素取出ラインL32は、窒素凝縮器3の冷媒貯留部32の上部気相から導出され、主熱交換器1の中間へ導入され温められて導出され、酸素タービン9で膨張され、再び主熱交換器1の冷端から導入され温端から導出され、製品酸素ガスとして取り出すためのラインである。
【0033】
窒素タービン8は、低圧精留塔4の頂部43から導出される窒素ガスを、サブクーラ7および主熱交換器1で熱交換させ、窒素圧縮機10で所定圧に圧縮し、冷却装置11で冷却し、再び主熱交換器1で冷却させた後で、膨張する。
低圧精留塔4の頂部43から導出される窒素ガスは、窒素ガス配管ラインL43を介して、サブクーラ7および主熱交換器1を介して低圧窒素ガスとして取り出される。
窒素ガス配管ラインL43には、主熱交換器1の温端より下流側に、窒素圧縮機10と、冷却装置11が設けられている。
窒素ガス分岐配管ラインL431は、窒素ガス配管ラインL43の前記冷却装置11より下流から分岐し、再び主熱交換器1の温端から導入され、中間部から導出され、窒素タービン8で膨張され、窒素ガス配管ラインL43へ合流するラインである。
【0034】
本実施形態1では、酸素タービン9の入口温度が、窒素タービン8の入口温度より低くするために、主熱交換器1の第一中間部1aから導出されて酸素タービン9へ送られるガスの温度が、主熱交換器1の第二中間部1bから導出されて窒素タービン8へ送られるガスの温度よりも低い。例えば、主熱交換器1から酸素タービン9に接続される配管の取り出しノズルの位置(第一中間部1a)は、窒素タービン8に接続される配管の取り出しノズルの位置(第二中間部1b)よりも低温側に配置される。
【0035】
(実施形態2)
実施形態2の空気分離装置A2を図2を用いて説明する。実施形態1と同じ符号は、同じ機能を有するので、説明を省略する場合がある。空気分離装置A2は、バイパスラインL431a、調節弁V1、温度測定部12を備える。
バイパスラインL431aは、主熱交換器1の熱バランスを調整するために配置されており、窒素ガス分岐配管ラインL431から分岐され、主熱交換器1へ導入されないようにバイパスし、窒素ガス分岐配管ラインL431へ合流するラインである。
温度測定部12は、窒素タービン8へ導入される窒素ガスの温度を測定する。本実施形態では、温度測定部12は、バイパスラインL431aと窒素ガス分岐配管ラインL431との合流点より下流側のラインに設けられる。
調整弁V1は、温度測定部12で測定された温度が、酸素タービン9の入口温度(不図示の設置されている温度計の温度値)よりも高くなるように、バイパスラインL431aに流通される窒素ガスの量を調整する。
【0036】
窒素タービン8の入口温度が酸素タービン9の入口温度より高くなるように、主熱交換器1の温端にある窒素ガスの配管から窒素タービン入口配管へバイパス配管L431aが設けられており、温度調整可能に構成される。
【0037】
(実施形態3)
実施形態3の空気分離装置A3を図3を用いて説明する。実施形態1と同じ符号は、同じ機能を有するので、説明を省略する場合がある。空気分離装置A3は、窒素ブースター14と冷却装置15を備える。
窒素ブースター14は、主熱交換器1より上流の窒素ガス分岐配管ラインL431に設けられ、窒素ガスを所定圧に昇圧する。
第二冷却装置15は、窒素ブースター14で昇圧された窒素ガスを所定温度へ冷却する。
膨張タービン81は、第二冷却装置15で冷却され、再び主熱交換器1の温端からへ導入され、中間から導出された窒素ガスを膨張する。
【0038】
(実施形態4)
実施形態4の空気分離装置A4を図4を用いて説明する。実施形態3と同じ符号は、同じ機能を有するので、説明を省略する場合がある。空気分離装置A4は、リサイクル窒素ラインL431bを備える。
リサイクル窒素ラインL431bは、主熱交換器1の内部で、窒素ガス分岐配管ラインL431から分岐し、主熱交換器1の冷端から導出されて、中圧精留塔2の精留部22あるいはその上部23へ窒素ガスを導入するためのラインである。
弁V2は、リサイクル窒素ラインL431bに設けられ、リサイクル窒素ガスの導入開始、停止、導入量の調節を行う。
【0039】
(実施形態5)
実施形態5の空気分離装置A5を図5を用いて説明する。実施形態4と同じ符号は、同じ機能を有するので、説明を省略する場合がある。空気分離装置A5は、第二窒素ブースター17と第二冷却装置18を備える。
第二窒素ブースター17は、第一窒素ブースター14より上流の窒素ガス分岐配管ラインL431に設けられ、窒素ガスを所定圧に昇圧する。
第二冷却装置18は、第一窒素ブースター14より上流で前記第二窒素ブースター17より下流の窒素ガス分岐配管ラインL431に設けられ、第二窒素ブースター17で昇圧された窒素ガスを所定温度に冷却する。
第二窒素ブースター17は、酸素タービン9によって駆動される。
【0040】
(実施形態6)
実施形態6の空気分離装置A6を図6を用いて説明する。実施形態1と同じ符号は、同じ機能を有するので、説明を省略する場合がある。空気分離装置A6は、粗アルゴン塔、粗アルゴン凝縮器を備えていない構成である。
酸素配管ラインL31は、サブクーラ7の冷端へ導入され、温端から導出される配管ラインである。
【0041】
(実施例)
実施形態3の空気分離装置の物理シミュレーションの結果を示す。
原料空気が温度20.0℃、圧力9.4barA、流量1000Nm/hで主熱交換器の温端から導入され、-163℃まで冷却されて中圧精留塔に導入される。
中圧精留塔は、頂部に窒素凝縮器を備え、頂部の窒素ガスを凝縮して中圧精留塔頂部に返すが、その一部の液化窒素424Nm/hを導出してサブクーラで-184℃まで冷却し、低圧精留塔の頂部に供給する。中圧精留塔の底部からは、酸素濃度36.4%の酸素富化液が576Nm/hで導出され、サブクーラで-170℃まで冷却された後に、低圧精留塔の中間または粗アルゴン凝縮器の低温側に導入される。
低圧精留塔の塔頂部からは、低圧窒素ガスが781Nm/hで導出され、サブクーラおよび主熱交換器を通じて18℃、2.4barAで導出される。低圧精留塔の底部からは、酸素濃度99%の酸素ガスが211Nm/hで導出され、主熱交換器で-126℃まで加温された後、酸素タービンで2.5barAから1.28barAまで膨張される。この時、酸素タービンは1.7kWの仕事を外部に出力し、酸素ガスは-149℃まで冷却される。酸素ガスは主熱交換器に再導入され、加温されてから主熱交換器の温端から導出される。
粗アルゴン塔の底部にはアルゴンを10%、酸素を90%含むガスが299Nm/hで導入され、精留されて塔頂部から8Nm/hのアルゴンが導出される。粗アルゴン塔の底部からは291Nm/hの液が低圧精留塔に返される。
この条件の下、低圧窒素ガスの約1%に相当する8Nm/hを液化して液化窒素を製造するために必要な寒冷は1.1kWであり、酸素タービンによる寒冷発生量の65%に相当する。その寒冷を発生するために、20℃、10barA、75Nm/hの窒素ガスを-119℃まで冷却し、窒素タービンで2.6barAまで膨張され、-164℃まで冷却される。その後にサブクーラから供給される低圧窒素ガスと合流して主熱交換器に導入される。窒素タービンは上記液化に要する寒冷を発生することができるので、液化窒素を導出しても空気分離装置の寒冷バランスを維持することができる。
【0042】
上記実施態様の構成は、酸素タービンの入口温度が-126℃である一方、窒素タービンの入口温度は-119℃で、7℃高い温度での導出が可能となってる。タービンサイクルでは、より高い温度でガス膨張をする方が外部への仕事量を大きくできるが、低温域のガス冷却に必要な寒冷を供給ができなくなる可能性がある。本実施態様では、酸素タービンでベースロードの寒冷を供給しつつ、窒素タービンで製品ガスの液化等のために更なる寒冷が必要となる場合に、酸素タービンとの相乗効果から、酸素タービン入口温度より高い温度で窒素ガスを膨張することで、効率よく寒冷を発生させることができる。
さらに本構成では中圧精留塔の蒸気流に貢献する原料空気や中圧窒素を使用しないので、製品窒素や製品アルゴンの収率に影響を及ぼさない。例えば原料空気を寒冷源に使用する場合、原料空気の7%程度が寒冷発生のために膨張タービンで膨張されて精留に寄与しなくなり、7%程度窒素またはアルゴンの収率に影響があったので、その影響をなくしたという点でも本実施の効果は著しい。
【0043】
(別実施形態)
(1)特に明示していないが、各配管ラインに圧力調整装置、流量制御装置などが設置され、圧力調整または流量調整が行われていてもよい。
(2)特に明示していないが、各ラインに制御弁、仕切弁などが設置されていてもよい。
(3)特に明示していないが、各塔に圧力調整装置、温度測定装置などが設置され、圧力調整または温度調整が行われていてもよい。
【符号の説明】
【0044】
1 熱交換器
2 中圧精留塔
3 窒素凝縮器
4 低圧精留塔
5 粗アルゴン塔
6 粗アルゴン凝縮器
8 窒素タービン
9 酸素タービン
10 窒素圧縮機
11 冷却装置
【要約】
【課題】空気から分離された酸素ガスを膨張させることで寒冷を生じさせる空気分離装置であって、希ガスや窒素の回収率を低下させることなく、酸素製品の製造や液化窒素や液化アルゴンのような液製品の製造に要する寒冷を窒素タービンで供給することで、熱バランスを維持することができる空気分離装置を提供する。
【解決手段】空気分離装置は、主熱交換器1、中圧精留塔2、低圧精留塔4、粗アルゴン塔5、窒素凝縮器3、粗アルゴン凝縮器6、酸素タービン9、窒素圧縮機10、窒素タービン8を備える。窒素タービン8は、窒素圧縮機10から供給される窒素ガスを膨張する。酸素タービン9の入口温度が、窒素タービン8の入口温度より低いことを特徴とする。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6