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特許7564524ベーパーチャンバー製造用金属部材、その製造方法及びベーパーチャンバーの製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-01
(45)【発行日】2024-10-09
(54)【発明の名称】ベーパーチャンバー製造用金属部材、その製造方法及びベーパーチャンバーの製造方法
(51)【国際特許分類】
   F28D 15/02 20060101AFI20241002BHJP
【FI】
F28D15/02 106G
F28D15/02 101H
F28D15/02 102A
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2023118678
(22)【出願日】2023-07-04
(65)【公開番号】P2023139145
(43)【公開日】2023-10-03
【審査請求日】2023-07-04
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518297514
【氏名又は名称】KMT技研株式会社
(72)【発明者】
【氏名】小松 信夫
【審査官】古川 峻弘
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/149223(WO,A1)
【文献】特表2011-530059(JP,A)
【文献】特開2013-041115(JP,A)
【文献】特開平07-105755(JP,A)
【文献】特開2009-076591(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28D 15/00-15/06
H05K 7/20
H01L 23/34-23/473
C23F 1/00- 1/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属からなる第1の部材と、当該第1の部材と作動流体が封入される密閉空間を形成する金属からなる第2の部材を備えるベーパーチャンバーを製造する際に、少なくとも前記第1の部材を形成するものとして使用するベーパーチャンバー製造用金属部材であって、
前記ベーパーチャンバー製造用金属部材は、前記密閉空間を形成する側から第1の金属層、親水性アクリルモノマー又は親水性メタクリルモノマーを反応性希釈剤の量に対して10重量%から90重量%使用し、5重量部以上、60重量部以下のUVを反射する金属微粉末を添加したフォトレジストを硬化させ、部分的に形成されるエッチング保護層、メッキにより形成される第2の金属層を順に備えることを特徴とするベーパーチャンバー製造用金属部材。
【請求項2】
請求項1に記載のベーパーチャンバー製造用金属部材において、
前記第2の金属層の外側にエッチングストップ層を備えることを特徴とするベーパーチャンバー製造用金属部材。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のベーパーチャンバー製造用金属部材において、
前記エッチング保護層が導電性を有することを特徴とするベーパーチャンバー製造用金属部材。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載のベーパーチャンバー製造用金属部材において、
部分的に形成される前記エッチング保護層が連続して形成されることを特徴とするベーパーチャンバー製造用金属部材。
【請求項5】
請求項1又は請求項2に記載のベーパーチャンバー製造用金属部材において、
部分的に形成される前記エッチング保護層が孤立して形成されることを特徴とするベーパーチャンバー製造用金属部材。
【請求項6】
金属からなる第1の部材と、当該第1の部材と作動流体が封入される密閉空間を形成する金属からなる第2の部材を備えるベーパーチャンバーを製造する際に、少なくとも前記第1の部材を形成するものとして使用するベーパーチャンバー製造用金属部材の製造方法であって、
金属板を第1の金属層として、前記第1の金属層の一方の面の前記密閉空間を形成する領域の内側に親水性アクリルモノマー又は親水性メタクリルモノマーを反応性希釈剤の量に対して10重量%から90重量%使用し、5重量部以上、60重量部以下のUVを反射する金属微粉末を添加したフォトレジストを硬化させることにより、部分的にエッチング保護層を形成し、
前記エッチング保護層側の面に、第2の金属層をメッキにより設けることを特徴とするベーパーチャンバー製造用金属部材の製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載のベーパーチャンバー製造用金属部材の製造方法において、
前記第2の金属層の外側にエッチングストップ層を設けることを特徴とするベーパーチャンバー製造用金属部材の製造方法。
【請求項8】
請求項6に記載のベーパーチャンバー製造用金属部材の製造方法において、
前記第1の金属層の前記密閉空間を形成する領域の内側に、親水性アクリルモノマー又は親水性メタクリルモノマーを反応性希釈剤の量に対して10重量%から90重量%使用し、5重量部以上、60重量部以下のUVを反射する金属微粉末を添加したフォトレジストを塗布し、所定の箇所の前記フォトレジストを硬化させ、未硬化の前記フォトレジストを除去することにより、前記エッチング保護層を形成することを特徴とするベーパーチャンバー製造用金属部材の製造方法。
【請求項9】
請求項6に記載のベーパーチャンバー製造用金属部材の製造方法において、
前記第1の金属層の前記密閉空間を形成する領域の内側の所定の箇所に、シルクスクリーン、インクジェト又はディスペンサーによりインクを塗布し、前記インクを硬化させることにより、前記前記エッチング保護層を形成することを特徴とするベーパーチャンバー製造用金属部材の製造方法。
【請求項10】
請求項6に記載のベーパーチャンバー製造用金属部材の製造方法において、
前記エッチング保護層に導電性付与し、第1の金属層及び部分的に形成される前記エッチング保護層の面にメッキにより第2の金属層を設けることを特徴とするベーパーチャンバー製造用金属部材の製造方法。
【請求項11】
請求項6乃至請求項10のいずれか1項に記載のベーパーチャンバー製造用金属部材の製造方法において、
前記エッチング保護層を連続して形成することを特徴とするベーパーチャンバー製造用金属部材の製造方法。
【請求項12】
請求項6乃至請求項10のいずれか1項に記載のベーパーチャンバー製造用金属部材製造方法において、
前記エッチング保護層を孤立して形成することを特徴とするベーパーチャンバー製造用金属部材の製造方法。
【請求項13】
金属からなる第1の部材と、当該第1の部材と作動流体が封入される密閉空間を形成する金属からなる第2の部材を備えるベーパーチャンバーの製造方法であって、
前記密閉空間を形成する側から第1の金属層、親水性アクリルモノマー又は親水性メタクリルモノマーを反応性希釈剤の量に対して10重量%から90重量%使用し、5重量部以上、60重量部以下のUVを反射する金属微粉末を添加したフォトレジストを硬化させることにより部分的に形成されるエッチング保護層、メッキにより形成される第2の金属層を順に備えるベーパーチャンバー製造用金属部材の前記第1の金属層の前記密閉空間を形成する領域以外に外枠エッチング保護層を形成し、
前記外枠エッチング保護層の内側の前記第1の金属層側をエッチングし、前記第1の金属層の全て及び部分的に形成される前記エッチング保護層により被覆されない前記第2の金属層の一部を除去し、
前記外枠エッチング保護層及び部分的に形成される前記エッチング保護層を除去し、
片面に凹部が形成される部材を前記第1の部材とし、前記第2の部材により前記第1の部材の凹部を密閉することにより前記密閉空間を形成することを特徴とするベーパーチャンバーの製造方法。
【請求項14】
請求項13に記載のベーパーチャンバーの製造方法において、
前記ベーパーチャンバー製造用金属部材の前記第2の金属層の外側にエッチングストップ層を設け、
前記エッチングにより、部分的に形成される前記エッチング保護層により被覆されない前記第2の金属層の全てを除去することを特徴とするベーパーチャンバーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作動流体が封入される密閉空間を形成する金属からなるベーパーチャンバーを製造する際に使用するベーパーチャンバー製造用金属部材、その製造方法及びベーパーチャンバーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子デバイスの小型化および高性能化が加速されている。高性能化に伴い、半導体素子や集積回路から発生する熱量も増大しており、その熱量の効率的な冷却方法が電子デバイスの更なる小型化と高性能化を押し進める上での課題となっている。
【0003】
半導体の放熱方法として、半導体のバック面にダイボンド材として高熱伝導ペーストやはんだを用い、熱をコールドプレートに導く方法がある。また、半導体のアクティブ面にサーマルビアを形成し、電子回路基板を介して、はんだ付けによりヒートコンダクターに導く方法もある。スマートフォンに代表されるモバイル機器では、実装の厚さに制限があり、現在ではグラファイトシートが使用されることもある。
【0004】
放熱能力の向上のため、ヒートパイプの原理を用いた平板状の放熱デバイスであるベーパーチャンバーの導入も検討されている。しかしながら、スマートフォンでは、ケースの厚みが制約されることからベーパーチャンバーの厚さは、0.3mm以下が要求され、実現されていない(非特許文献1)。
【0005】
ベーパーチャンバーは、ヒートパイプの原理を用いた平面放熱デバイスで、熱を放散させるヒートスプレターである。ベーパーチャンバーの内部は減圧された密閉空間があり、熱を移動させるための作動流体が封入されている。作動流体が熱源によって加熱されると、作動流体は潜熱を吸収して蒸発する。蒸気は密閉空間内に拡散し、ヒートシンクに接している上部内壁面に到達すると冷却され、潜熱を放出して液体に戻る。ベーパーチャンバーの内壁または密閉空間内には、毛細管力を発生させるウイックと呼ばれる構造体が配置されており、液体に戻った作動流体は毛細管現象によって移動する。ウイックは、作動流体を熱源方向に誘導するような形状をしており、再度作動流体が吸熱を行って蒸発するといったサイクルが繰り返される。これにより、小さな熱源から発生した熱を、広い面積に拡散させることができる。
【0006】
ベーパーチャンバーは、作動流体を循環させることで放熱を行っているため、ウイックの構造設計は、ベーパーチャンバーの性能を大きく左右する。ベーパーチャンバーに関する先行技術には、次のようなものがある。例えば、特許文献1には、複数の中間板を密閉空間内に積層して配置することで毛細管流路を形成したベーパーチャンバーが記載されている。各中間板には、微細な穴が流路として設けられており、作動流体が、毛細管現象によって熱源まで誘導される構造となっている。
【0007】
特許文献2には、密閉空間内の上下に突起を設けたベーパーチャンバーが記載されている。金属板を掘り起こすことによって、起立させた板状のフィンを所定の間隔で設けることで、コンテナとー体化したウイックを形成することができるという特徴がある。
【0008】
特許文献3には、アルミニウム製の筐体に、溶解した銅の粉未を噴射することでウイックを形成するベーパーチャンバーが記載されている。当該ベーパーチャンバーは、溶射成形によってウイックを形成するため、前述したものと比較すると、微細な構造物を形成する工程を経なくてもよいという特徴がある。
【0009】
特許文献4には、作動流体を循環させる密閉空間を作ったのち、金属により被覆されたウイックを金属メッキにより作製するものである。
【0010】
特許文献5では、作動流体を循環させる密閉空間をエッチング、若しくはプレス加工で形成することが記載されている。特許文献6には、エッチングにより密閉空間を形成し、さらに密閉空間の壁面に細かな凹部をエッチングにより設けることも提案されている。
【0011】
特許文献7には、エッチングされる金属層の下部に部分的にエッチングストップ層を設け、その下部の金属層の一部をエッチングすることで、ウイックを形成する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】特開2010-28055号公報
【文献】特開2007-3164号公報
【文献】特開2011-102691号公報
【文献】特開2015-10765号公報
【文献】特開2017-172871号公報
【文献】特開2018-128208号公報
【文献】国際公開2020/149223号
【0013】
【文献】Apple、iPhoneにモバイル端末用ベーパーチャンバーを採用か 熱伝導性を上げ、さらに効率の良い冷却システムを導入へ May25.2017 Correiente.Top
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
半導体の高機能化と小型化により、半導体チップの発熱が問題となっており、より効率の良い放熱の方法が必要となっている。前述の通り、半導体の裏面から熱を逃がす方法が主に用いられている。半導体のバック面に放熱グリース、銀ペーストやはんだといった接合材を介し、ヒートコンダクターやヒートシンクに接続するものが多用されている。しかしながら、上記の方法では、素子からヒートシンクまでの距離や接合材の熱伝導性により熱抵抗が高くなる。より効率の良い放熱機構が求められている。
【0015】
ヒートパイプの原理を利用するベーパーチャンバーは、半導体の冷却に適している。ベーパーチャンバーを携帯電話のような薄型のモバイルに使用するには、より薄いベーパーチャンバーが求められる。ベーパーチャンバーの冷却能力は、作動流体の移動を容易にする形状のウイックに依存する。作動流体の毛細管現象による移動を容易に行うウイックを形成しなければならない。
【0016】
薄いベーパーチャンバーを得るためには、金属部材をエッチングすることにより密閉空間を形成する凹部を設けることが有効な方法である、ウイックの形成もエッチングにより行うこととなる。特許文献6では、1回目のハーフエッチングにより溝を形成し、形成された溝をさらにハーフエッチングすることによりウイックを形成している、ハーフエッチングにより均一なエッチング深さを制御することは困難である。
【0017】
特許文献7では、第1の金属層と第2の金属層の間に開口を有するエッチングストップ層を設け、エッチングにより第1の金属層を除去し、エッチングストップ層の開口部に接する第2の金属層の一部をエッチングすることでウイックを設ける方法が開示されている。しかし、開口部を有するエッチングストップ層を設ける方法が煩雑である。
【0018】
上述のように、金属部材の一方の面からエッチングを行い、金属部材に密閉空間を形成する凹部を設けるものであって、従来に比べ、簡易に凹部の壁面にウイックを設けることができるベーパーチャンバーの製造方法がもとめられている。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明に係るベーパーチャンバー製造用金属部材は、金属からなる第1の部材と、当該第1の部材と作動流体が封入される密閉空間を形成する金属からなる第2の部材を備えるベーパーチャンバーを製造する際に、少なくとも前記第1の部材を形成するものとして使用するベーパーチャンバー製造用金属部材であって、前記ベーパーチャンバー製造用金属部材は、前記密閉空間を形成する側から第1の金属層、親水性アクリルモノマー又は親水性メタクリルモノマーを反応性希釈剤の量に対して10重量%から90重量%使用し、5重量部以上、60重量部以下のUVを反射する金属微粉末を添加したフォトレジストを硬化させ、部分的に形成されるエッチング保護層、メッキにより形成される第2の金属層を順に備えることを特徴とする。
【0020】
また、本発明に係るベーパーチャンバー製造用金属部材において、前記第2の金属層の外側にエッチングストップ層を備えると好適である。
【0021】
また、本発明に係るベーパーチャンバー製造用金属部材において、 前記エッチング保護層が導電性を有すると好適である。
【0022】
また、本発明に係るベーパーチャンバー製造用金属部材において、部分的に形成される前記エッチング保護層が連続して形成されると好適である。
【0023】
また、本発明に係るベーパーチャンバー製造用金属部材において、部分的に形成される前記エッチング保護層が孤立して形成されると好適である。
【0024】
本発明に係るベーパーチャンバー製造用金属部材の製造方法は、金属からなる第1の部材と、当該第1の部材と作動流体が封入される密閉空間を形成する金属からなる第2の部材を備えるベーパーチャンバーを製造する際に、少なくとも前記第1の部材を形成するものとして使用するベーパーチャンバー製造用金属部材の製造方法であって、金属板を第1の金属層として、前記第1の金属層の一方の面の前記密閉空間を形成する領域の内側に親水性アクリルモノマー又は親水性メタクリルモノマーを反応性希釈剤の量に対して10重量%から90重量%使用し、5重量部以上、60重量部以下のUVを反射する金属微粉末を添加したフォトレジストを硬化させることにより、部分的にエッチング保護層を形成し、前記エッチング保護層側の面に、第2の金属層をメッキにより設けることを特徴とする。
【0025】
また、本発明に係るベーパーチャンバー製造用金属部材の製造方法において、前記第2の金属層の外側にエッチングストップ層を設けると好適である。
【0026】
また、本発明に係るベーパーチャンバー製造用金属部材の製造方法において、前記第1の金属層の前記密閉空間を形成する領域の内側に、親水性アクリルモノマー又は親水性メタクリルモノマーを反応性希釈剤の量に対して10重量%から90重量%使用し、5重量部以上、60重量部以下のUVを反射する金属微粉末を添加したフォトレジストを塗布し、所定の箇所の前記フォトレジストを硬化させ、未硬化の前記フォトレジストを除去することにより、前記エッチング保護層を形成すると好適である。
【0027】
また、本発明に係るベーパーチャンバー製造用金属部材の製造方法において、前記第1の金属層の前記密閉空間を形成する領域の内側の所定の箇所に、シルクスクリーン、インクジェト又はディスペンサーによりインクを塗布し、前記インクを硬化させることにより、前記前記エッチング保護層を形成すると好適である。
【0028】
また、本発明に係るベーパーチャンバー製造用金属部材の製造方法において、前記エッチング保護層に導電性付与し、第1の金属層及び部分的に形成される前記エッチング保護層の面にメッキにより第2の金属層を設けると好適である。
【0029】
また、本発明に係るベーパーチャンバー製造用金属部材の製造方法において、前記エッチング保護層を連続して形成すると好適である。
【0030】
また、本発明に係るベーパーチャンバー製造用金属部材の製造方法において、前記エッチング保護層を孤立して形成すると好適である。
【0031】
本発明に係るベーパーチャンバーの製造方法は、金属からなる第1の部材と、当該第1の部材と作動流体が封入される密閉空間を形成する金属からなる第2の部材を備えるベーパーチャンバーの製造方法であって、前記密閉空間を形成する側から第1の金属層、親水性アクリルモノマー又は親水性メタクリルモノマーを反応性希釈剤の量に対して10重量%から90重量%使用し、5重量部以上、60重量部以下のUVを反射する金属微粉末を添加したフォトレジストを硬化させることにより部分的に形成されるエッチング保護層、メッキにより形成される第2の金属層を順に備えるベーパーチャンバー製造用金属部材の前記第1の金属層の前記密閉空間を形成する領域以外に外枠エッチング保護層を形成し、前記外枠エッチング保護層の内側の前記第1の金属層側をエッチングし、前記第1の金属層の全て及び部分的に形成される前記エッチング保護層により被覆されない前記第2の金属層の一部を除去し、前記外枠エッチング保護層及び部分的に形成される前記エッチング保護層を除去し、片面に凹部が形成される部材を前記第1の部材とし、前記第2の部材により前記第1の部材の凹部を密閉することにより前記密閉空間を形成することを特徴とする。
【0032】
また、本発明に係るベーパーチャンバーの製造方法において、前記ベーパーチャンバー製造用金属部材の前記第2の金属層の外側にエッチングストップ層を設け、前記エッチングにより、部分的に形成される前記エッチング保護層により被覆されない前記第2の金属層の全てを除去すると好適である。
【発明の効果】
【0033】
本発明により、冷却効率の良い薄型のベーパーチャンバーを提供できる。また、本発明のベーパーチャンバーの製造工程を簡略化することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1A】は本発明の実施の形態に係るベーパーチャンバーの断面を示す。
図1B】は本発明の実施の形態に係る他のベーパーチャンバーの断面を示す。
図2A】は本発明の実施の形態1に係るベーパーチャンバー製造用金属部材の断面を示す。
図2B】は本発明の実施の形態1に係るベーパーチャンバー製造用金属部材に形成されるエッチング保護層の平面を示す。
図2C】は本発明の実施の形態1に係る他のベーパーチャンバー製造用金属部材に形成されるエッチング保護層の平面を示す。
図2D】は本発明の実施の形態1に係る他のベーパーチャンバー製造用金属部材に形成されるエッチング保護層の平面を示す。
図2E】は本発明の実施の形態1に係る他のベーパーチャンバー製造用金属部材に形成されるエッチング保護層の平面を示す。
図3】は本発明の実施の形態2に係るベーパーチャンバー製造用金属部材の断面を示す。
図4】は本発明の実施の形態3に係るベーパーチャンバー製造用金属部材の断面を示す。
図5】は本発明の実施の形態に係るベーパーチャンバー製造用金属部材の製造方法のエッチング保護層塗布工程を示す。
図6】は本発明の実施の形態に係るベーパーチャンバー製造用金属部材の製造方法の他のエッチング保護層塗布工程を示す。
図7】は本発明の実施の形態1に係るベーパーチャンバーの製造方法外枠エッチング保護層塗布工程を示す。
図8】は本発明の実施の形態1に係るベーパーチャンバーの製造方法のエッチング工程を示す。
図9】は本発明の実施の形態1に係るベーパーチャンバーの製造方法のエッチング保護層除去工程を示す。
図10】は本発明の実施の形態2に係るベーパーチャンバーの製造方法のエッチング保護層除去工程を示す。
図11】は本発明の実施の形態3に係るベーパーチャンバーの製造方法のエッチング保護層除去工程を示す。
図12A】は本発明の実施の形態に係るベーパーチャンバー製造用金属部材の多面付けにおける作動流体封入路を示す。
図12B】は本発明の実施の形態に係るベーパーチャンバー製造用金属部材の多面付けにおける他の作動流体封入路を示す。
図13A】は本発明の実施の形態に係る他のベーパーチャンバー製造用金属部材に形成される外枠エッチング保護層の平面を示す。
図13B】は本発明の実施の形態に係る他のベーパーチャンバー製造用金属部材に形成される外枠エッチング保護層の平面を示す。
図14】は本発明の実施の形態3に係るベーパーチャンバーの製造方法のエッチングストップ層除去工程を示す。
図15】は本発明の実施の形態1に係るベーパーチャンバーの製造方法のエッチング保護層除去後の凹部壁面端部を示す。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明の実施形態に係るベーパーチャンバー1の断面を図1示す。ベーパーチャンバー1は、金属からなる第1の部材2、及び第1の部材2と作動流体が封入される密閉空間4を形成する金属からなる第2の部材3を備える。密閉空間4は、第1の部材2に形成される凹部を第2の部材3により密閉することにより形成される。密閉空間4には作動流体が封入される。第1の部材2に形成される凹部の周辺に、第2の部材3を接着させることにより第1の部材2を密閉する。
【0036】
ベーパーチャンバー1を構成する第1の部材2の下面2aには、冷却対象物である半導体のようなデバイスが接触して接続される。デバイスにより構成されるモバイルの形態及び使用状態によっては、第1の部材2ではなく、デバイスは第2の部材3に接触して接続されることもある。密閉空間4に封入される作動流体は、冷却対象物であるデバイスの熱により、液体から気体に気化する。作動流体の気化熱によりデバイスが冷却される。気化した作動流体は、密閉空間4内をデバイスと接触しない側に移動する。デバイスと接触しない密閉空間4に移動した作動流体は冷却されて液体となる。液体となった作動流体は、第1の部材2の密閉空間4を形成する凹部の内面に形成される流路を通って、デバイス側に移動し、デバイスの熱により気化する。第1の部材2の凹部内面に形成されるウイックが流路となる。作動流体の気化及び液化を繰り返すことで、ベーパーチャンバー1の冷却能力が発揮される。
【0037】
ベーパーチャンバー1は、デバイスと接触してデバイスを冷却する気化部、及び接触せずに気化した作動流体を冷却して液化する液化部を備える。形状は特に限定されず、電子機器内の熱源と熱誘導路によって形状をデザインすることができ、作動流体の流路幅も実用に沿って任意に設計できる。ベーパーチャンバー1の熱源であるデバイスとの接触面は、接触面積を大きくすることが望ましい。ベーパーチャンバー1は気化部及び液化部を備える必要があり、冷却対象であるデバイスの大きさにより、ベーパーチャンバー1の大きさは変化する。例えば、ベーパーチャンバー1は、幅1mm以上かつ長さは3mm以上、幅100mm未満かつ長さは300mm未満が好ましい。幅1mm未満かつ長さは3mm未満では、十分なベーパーチャンバー1の密閉空間4が確保できず冷却効果が不十分である。幅100mm以上かつ長さ300mm以上の場合は、作動流体の移動が迅速に行われず、冷却効果が不十分である。ベーパーチャンバー1は、少なくとも1つの密閉空間4を備えるが、複数以上であっても構わない。各々の密閉空間4は、気化部及び液化部を備える。
【0038】
ベーパーチャンバー1の密閉空間4の平面形状は直線、曲線により形成され、曲線は渦巻き状又は放射状であっても構わない。熱源から全方向に均一に放熱したい場合、密閉空間4を渦巻き状、若しくは放射状に形成することが好ましい。
【0039】
図1Aでは、ベーパーチャンバー1を構成する第1の部材2に凹部が形成されているが、図1Bのように第2の部材3にも凹部が形成されていても構わない。
【0040】
作動流体は水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン等の沸点が50℃以上、120℃以下の液体が好ましい。特に、衛生上安全であることから水が好ましい。水とはイオン交換水、RO水、蒸留水等の純水である。
【0041】
第1の部材2を製造するために使用されるベーパーチャンバー製造用金属部材、その製造方法及びベーパーチャンバー製造用金属部材を使用するベーパーチャンバーの製造方法について以下に述べる。
【0042】
(実施の形態1)
実施の形態1に係るベーパーチャンバー製造用金属部材の断面を図2Aに示す。実施の形態1に係るベーパーチャンバー製造用金属部材は、第1の金属層5、第1の金属層5の片面に部分的に形成されるエッチング保護層6、及び第1の金属層5並びに部分的に形成されるエッチング保護層6に接する第2の金属層7を備える。ベーパーチャンバー製造用金属部材の平面の大きさは、ベーパーチャンバー1の大きさと同等又はそれ以上でなければならない。外形は直線から形成される矩形であっても、曲線を含むものであっても構わない。1つのベーパーチャンバー製造用金属部材から複数以上のベーパーチャンバー1を製造する場合、ベーパーチャンバー製造用金属部材はそれに見合う大きさとなる。
【0043】
第1の金属層5は、ベーパーチャンバー1が使用される温度で、熱伝導率が10W/m・K以上の金属が使用可能である。化学的に腐食させることにより、一部を除去するエッチングが容易にできる、銅、銅モリブデン合金、アルミニウム等の金属が第1の金属層5を構成する金属として好ましい。第1の金属層5の厚さは9μm以上、10000μm以下が好ましい。9μm未満では、エッチング工程時間が短く制御が困難であり、10000μmを超える場合、形成されるベーパーチャンバー1が厚くなる。加工性を考慮すると、50μmから500μmが好適である。第1の金属層5は、銅、銅モリブデン合金、アルミニウム等の金属であって、9μm以上、10000μm以下の厚さの板が使用できる。特に、第1の金属層5は、めっきやエッチングといった加工性と熱伝導率の観点から銅が好ましい。銅はエッチングし易く、熱伝導率が高い。
【0044】
第1の金属層5の片面に部分的に形成されるエッチング保護層6は、第1の金属層5をエッチングするときに第2の金属層7がエッチングされないように保護することができれば、どのようなものであっても構わない。エッチング保護層6の厚さは、0.1μm以上、30μm以下が好ましい。0.1μm未満では、エッチング保護層6にピンホールが発生し易く、エッチング工程で使用されるエッチング液に溶解もしくは剥離するおそれがある。30μmを超えると、第2の金属層7をメッキにより形成するときに、第2の金属層7の第1の金属層5の反対面に凹凸ができ、平滑性が保てなくなり、ベーパーチャンバー1と冷却対象となるデバイスの密着が悪くなり、冷却効果が低下する。
【0045】
部分的に形成されるエッチング保護層6の平面図を図2B及び図2Cに示す。形状は特に制限されないが、図2B及び図2Cはベーパーチャンバー製造用金属部材が矩形の場合を示す。図2Bでは、部分的に形成されるエッチング保護層6は、矩形の長辺方向に短冊のように形成される。エッチング保護層6である短冊と短冊の間は、ベーパーチャンバー1が形成されるとき、液化した作動流体が毛細管現象により移動する流路となる。したがって、短冊の間隔は液化した作動流体が毛細管現象により移動できる流路の幅となる。エッチング保護層6は、このベーパーチャンバー製造用金属部材が、ベーパーチャンバー1の製造に使用されたとき、製造されるベーパーチャンバー1の気化部及び液化部を構成する箇所に設けられる。短冊は、直線として示すが、曲線であっても構わない。また、複数の短冊状のエッチング保護層6の幅は、相違しても構わない。さらに、長さ方向に幅が増減しても構わない。この場合、エッチング保護層6は、ベーパーチャンバー製造用金属部材の端部から対向する端部に連続して設けられる。
【0046】
図2Cは、ベーパーチャンバー製造用金属部材の端部から対向する端部に、エッチング保護層6が孤立して設けられる場合を示す。図2Cに示すように、エッチング保護層6が円形である場合、円形の径は3μm以上、300μm以下が好ましい。円形のエッチング保護層6の径は相違しても構わない。円形でなくても正方形、長方形、楕円等、どのような形状であっても構わない。また、孤立したエッチング保護層6の大きさ、形状が相違しても構わない。孤立するエッチング保護層6の中心の間隔は、3.5μm以上、300μm以下が好ましい。円形の径が3μm未満で中心の間隔が3.5μm未満の場合は、エッチング保護層6の形成が難しい。図2Cでは、部分的に形成されるエッチング保護層6は、ベーパーチャンバー製造用金属部材の端部から対向する端部に孤立して設けられる。ベーパーチャンバー1が形成されるとき、孤立したエッチング保護層6以外の部分が、液化した作動流体が毛細管現象により移動する流路となる。したがって、エッチング保護層6が設けられる箇所以外の間隔は、液化した作動流体が毛細管現象により移動できる流路の幅となる。
【0047】
図2Aは、実施の形態1に係るベーパーチャンバー製造用金属部材の断面を示すが、図2BのA-A線断面図及び図2CのB-B線断面図を示している。
【0048】
図2Dは、ベーパーチャンバー製造用金属部材の端部から対向する端部に連続して設けられるエッチング保護層6に、孤立してレジストが設けられない場合を示す。孤立してレジストが設けられない形状は、図2Dに示すような円形でなくても正方形、長方形、楕円等、どのような形状であっても構わない。また、孤立してレジストが設けられない形状の大きさが相違しても構わない。孤立してレジストが設けられない形状の面積は1平方マイクロメートル以上、90000平方マイクロメートル以下が好ましい。1平方マイクロメートル未満の場合は、レジストの形成が難しく、また、エッチング工程で使用されるエッチング液が、金属層7に接触することが難しい。
【0049】
エッチング保護層6の形成は、図5に示すように、金属板である第1の金属層5の片面にフォトレジスト層9を塗布し、塗布されたフォトレジスト層9の部分的に形成すべきエッチング保護層6に該当する箇所のフォトレジスト層9にUVを照射し、UVが照射されたフォトレジスト層9を硬化させ、未硬化のフォトレジスト層9を現像液により溶解させて除去する現像を行う。UVを照射するとき、硬化させるフォトレジスト層9以外の箇所をマスクし、UVを照射しない。フォトレジストを塗布するのではなく、感光性ドライフィルムを貼付しても構わない。
【0050】
フォトレジストは、(メタ)アクリレート化合物であるベースポリマー、光重合性モノマー、ダイマー及びオリゴマーである反応性希釈剤、光重合開始剤、重合促進剤。必要に応じてシリカ、硫酸バリウムやタルク等のフィラー、着色顔料、消泡レベリング剤、重合禁止材、有機溶剤、エポキシ硬化剤等を含む。ベースポリマーは、60重量%以下、反応性希釈剤は5重量%以上、光重合開始剤は1重量%以上、10重量%以下配合することが好ましい。
【0051】
ベースポリマーは、例えば、ノボラック型エポキシ樹脂のエポキシ基にアクリル酸を付加し、光架橋性基を有するエポキシアクリレートを合成し、次に、一段階目の反応で生じた水酸基にテトラヒドロ無水フタル酸などの酸無水物を反応させることで側鎖にカルボキシル基を有するアルカリ水溶液溶解性樹脂を得る。このカルボキシル基含有ノボラック型エポキシアクリレートは、カルボキシル基が分子内に残るため、苛性ソーダのようなアルカリ水溶液に溶解する可剥製フォトレジストのベースポリマーとなる。ベースポリマーの出発樹脂として、ノボラック型、ビスフェノール型、脂肪族型等のエポキシアクリレートのほか、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、アクリルアクリレートが例示できる。
【0052】
反応性希釈剤は、UV照射による光重合反応によって、自身も硬化して固体となる、分子内に(メタ)アクリレート基を持つモノマーやオリゴマーであり、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、アクリルアクリレート、ポリエステルアクリレート等である。反応性希釈剤は、フォトレジストの粘度を低減させ塗布し易くし、UV照射後のフォトレジストの架橋密度を上げる目的で使用される。
【0053】
光重合開始剤は、UVを吸収してラジカルを発生させ、重合を開始させる反応剤で、ベンゾフェノン系、アセトフェノン系、ベンゾインエーテル系、チオキサントン等である。
【0054】
フォトレジストは、UVを照射することにより、ベースポリマー及び反応性希釈剤の末端アクリレート基同士が結合し、架橋することで硬化する。未硬化のフォトレジストは、炭酸ナトリウム等の弱アルカリ性溶液等に溶解することで除去される。硬化したフォトレジストは部分的に形成されるエッチング保護層6となる。
【0055】
フォトレジストは、光の照射により発色する発色剤、フォトレジストの長期保存を可能とする安定剤、フォトレジストの存在を確認できる染料、塗布を容易とする有機溶剤等を含んでも構わない。第1の金属層5及び第2の金属層7との密着を上げるために、フォトレジストに含まれる反応性希釈剤として、2-ヒドロキシエチルアクリレート,2-ヒドロキシプロピルアクリレート,N-ビニルピロリドン,メラミンアクリレート又はこれらのアクリレートに対応するメタクリレート類等の親水性アクリルモノマー又は親水性メタクリルモノマーを反応性希釈剤の量に対して10重量%から90重量%使用することが好ましい。10重量%未満では、フォトレジストにより形成されるエッチング保護層6は、第1の金属層5及び第2の金属層7との密着が十分でなく、90重量%を超えるとエッチング液に溶解してしまう。
【0056】
エッチング保護層6は、スクリーン、インクジェット又はディスペンサーによる塗布によって形成されても構わない。スクリーン、インクジェット又はディスペンサーによる塗布とは、部分的に形成されるエッチング保護層6を必要な箇所にスクリーンインク、インクジェットインク又はディスペンサーにより吐出されるインクを塗布することである。フォトレジストによりエッチング保護層6を設けることに比べ、現像が必要でなく、工程が簡略となる。エッチング保護層6を形成するインクはエッチング工程において、第2の金属層7を保護することができれば、どのようなものでも構わない。エッチング後にインクにより形成されたエッチング保護層6を除去する。エッチング保護層6を除去した後、第2の金属層7の面を粗面化することで、ウイックの形成がし易い。エッチング保護層6を第2の金属層7に接して残しても構わない。
【0057】
スクリーン印刷に使用されるインクは、溶剤を含む場合、乾燥によりインクを固化させる。熱硬化タイプは加熱して硬化させる。UV硬化タイプはUVを照射することにより硬化させる。
【0058】
インクジェット印刷に使用されるインキは、市販のインクジェット用インク、UV硬化タイプはUVを照射することにより硬化させる。熱硬化タイプであっても構わない。
【0059】
スクリーンインク、インクジェットインク又はディスペンサーにより吐出されるインクは、UV硬化タイプとして、前述のフォトレジストが使用可能である。インクはUV未硬化部を除去する必要がない。例えば、前述のカルボキシル基含有ノボラック型エポキシアクリレートのカルボキシル基と反応するエポキシ樹脂を配合すると、カルボキシル基とグリシジル基が反応し、耐熱性が向上し塗膜も強固になり、アルカリ水溶液に溶解しない永久レジストが得られる。インクとして永久レジストを使用して、UV照射により硬化させても構わない。
【0060】
エッチング保護層6を形成するスクリーンインク、インクジェットインク又はディスペンサーにより吐出されるインクは、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂としても構わない。熱可塑性樹脂とは、ポリエステル、ポリウレタン、アクリル樹脂等であり、溶剤又は水に溶解又は分散させて使用しても構わない。また、塗布前に硬化剤を混合し、塗布後に常温又は加熱により硬化させて、熱硬化樹脂としても構わない。
【0061】
第1の金属層5及び部分的に形成されるエッチング保護層6に接して、第2の金属層7を設ける。第2の金属層7は、銅、銅モリブデン合金、アルミニウム等の金属であって、厚さは1μm以上、200μm以下が好ましい。1μm未満であると、形成されるベーパーチャンバー1の密閉空間4に形成されるウイックが小さく、液化した作動流体の移動速度が遅くなり、冷却効率が悪い。200μm以上では、ベーパーチャンバー1の製造時の工程であるエッチングの作業効率が悪く、生産性が著しく低下する。さらに加工性を考慮すると、2μm以上、50μm以下が好適である。
【0062】
第2の金属層7は、メッキにより形成することが好ましい。メッキにより第2の金属層7を設けるためには、エッチング保護層6に導電性を付与することが好ましい。エッチング保護層6に導電性を付与するために、エッチング保護層6に銀、ニッケル、銅等の金属微粉末を添加する。エッチング保護層6を形成するために、使用するフォトレジスト、スクリーン印刷インク、インクジェット印刷インクまたはディスペンサーにより吐出されるインクに金属微粉末を添加して、金属微粉末を添加したフォトレジスト又はインクを第1の金属層5の一方の面に塗布し、エッチング保護層6として形成する。金属微粉末は、粒径が5.0μm以下であることが好ましい。5.0μm以下とすることで、エッチング保護層6の薄膜化に対応することができる。金属微粉末は、エッチング保護層6の金属微粉末以外の成分量に対して、1重量部以上、80重量部以下含まれることが好ましい。1重量部未満では、第2の金属層7をメッキにより形成するときに、エッチング保護層6の面への金属の形成が不十分となる。80重量部を超えると、エッチング保護層6の強度が低下し、工程中に欠落するおそれがある。
【0063】
塗布された導電性を付与したフォトレジスト又はインクは、溶媒を含む場合は乾燥され、及びUV照射、加熱等の工程により硬化され、エッチング保護層6を形成する。UV照射による硬化が最も作業効率として好適である。UV硬化タイプの導電性を付与したエッチング保護層6を形成するフォトレジストは、前述のフォトレジストと同様の構成である。フォトレジストは、(メタ)アクリレート化合物であるベースポリマー、光重合性モノマー、ダイマー及びオリゴマーである反応性希釈剤、光重合開始剤、重合促進剤。必要に応じてシリカ、硫酸バリウムやタルク等のフィラー、着色顔料、消泡レベリング剤、重合禁止材、有機溶剤、エポキシ硬化剤等を含み、ベースポリマーは、60重量%以下、反応性希釈剤は5重量%以上、光重合開始剤は1重量%以上、10重量%以下、及び金属微粉末を含む。
【0064】
UV照射によりエッチング保護層6を硬化させる場合、金属微粉末により反射するUVの散乱により、UV照射時に金属微粉末の影となるところにも、UVが照射されることによりフォトレジストを硬化させることができる。金属微粉末は、エッチング保護層6に1重量部以上、80重量部以下含まれることが好ましい。1重量部未満では、第2の金属層7をメッキにより形成するときに、エッチング保護層6の面への金属の形成が不十分となる。80重量部を超えると、エッチング保護層6の強度が低下し、工程中に欠落するおそれがある。また、UV照射によるフォトレジスト、スクリーン印刷インク、インクジェット印刷インクまたはディスペンスにより塗布されるインクの硬化が十分に行われないおそれがある。さらに加工性を考慮すると5重量部以上、60重量部以下が好適である。
【0065】
エッチング保護層6に導電性を付与するために、エッチング保護層6にカーボンを添加しても構わない。カーボンとは炭素微粉末、炭素繊維、グラファイト等の炭素からなり、導電性を有するものである。カーボンの添加量は、エッチング保護層6のカーボン以外の成分量に対して、1重量部以上、80重量部以下含まれることが好ましい。さらに、5重量部以上、60重量部以下が好適である。
【0066】
第1の金属層5並びに部分的に形成されるエッチング保護層6に接する第2の金属層7をメッキにより設けるには、以下の方法による。金属層7を設けるメッキは、電気メッキである。エッチング保護層6が非導電性の場合は、第2の金属層7をメッキにより形成する前に、エッチング保護層6への無電解メッキ等によりエッチング保護層6の表面の導電化が必要である。エッチング保護層6が導電性の場合は、導電化は必要なく、直接電気メッキを行うことができ、工程の簡略化及び品質の安定化を行うことができる。金属層7として銅メッキを行う場合、一般に広く行われている工法が使用できる。エッチング保護層6はアルカリ液で溶解ないし剥離するので、酸性浴でメッキを行う必要があり、硫酸銅浴によるめっきが好ましい。
【0067】
図2Aに示す実施の形態1に係るベーパーチャンバー製造用金属部材により、ベーパーチャンバー1を製造するために、ベーパーチャンバー1を構成する第1の部材2を形成する。図7に示すように、第1の金属層5の密閉空間4を形成する領域以外に、外枠エッチング保護層10を形成する。
【0068】
外枠エッチング保護層10は、第1の金属層5の面にフォトレジストを塗布、又は感光性ドライフィルムを貼付し、外枠エッチング保護層10を形成する箇所以外をマスクにより遮蔽し、UV照射することで、外枠エッチング保護層10を硬化させ、未硬化のフォトレジスト又は感光性ドライフィルムを現像することにより除去する。
【0069】
外枠エッチング保護層10を形成した後、第1の金属層5側をエッチングする。図8に示すように、外枠エッチング保護層10を設けない部分の第1の金属層5は、エッチングにより除去される。また、エッチング保護層6が形成されない第2の金属層7の一部がエッチングにより除去される。エッチングにより除去される第2の金属層7の深さは、0.5μm以上、50μm以下である。
【0070】
一度のエッチングにより、第1の金属層5の全て、及び第2の金属層7の一部をエッチングすることができる。特許文献6に開示されるベーパーチャンバーの製造方法では、第1の金属層5のエッチングと第2の金属層7の一部のエッチングを別個に2回行わなければならない。各々のエッチングはいずれもハーフエッチングであり、エッチング条件の設定は煩雑である。本願発明に係るベーパーチャンバー製造用金属部材を使用するベーパーチャンバーの製造方法では、一度のエッチングによりベーパーチャンバー1を構成する第1の部材2を得ることができる。
【0071】
第1の金属層5及び第2の金属層7が銅の場合、エッチングは塩化第二鉄溶液もしくは塩化第二銅溶液により行う。塩化第二鉄溶液は、40ボーメ、比重1.385(20℃)、塩化第二鉄520g/l以上、塩酸1-2%が用いられるが、これに限るものではない。
【0072】
エッチング後、外枠エッチング保護層10及びエッチング保護層6を除去し、図9の第1の部材2を得る。得られた第1の部材2の凹部を図1Aに示すように、第2の部材3を接合することにより密封し、密閉空間4を備えるベーパーチャンバー1を得ることができる。エッチング保護層6は、エッチング後に除去するが、残すことで強度付与等の役割があれば、除去せずに残しても構わない。
【0073】
図8に示すように、エッチングによりエッチング保護層6により被覆されていない第2の金属層7の一部が除去される。このとき、第1の金属層5が除去されて形成される凹部の壁面が、エッチング保護層6の端部と一致していれば図8のように、凹部が形成される。しかし、エッチング保護層6が凹部の壁面の下部に及ぶ可能性がある。この場合、エッチング保護層6を除去すると、凹部の壁面の第1の金属層5側の端部と第2の金属層7の間に隙間が形成される。このような隙間は、ベーパーチャンバー1の強度を小さくする可能性があり、避けることが好ましい。
【0074】
インクによりエッチング保護層6を形成するとき、エッチングにより形成される第1の金属層5の凹部の領域の際には、硬化したフォトレジストを除去するとき、除去されないような永久レジストからなるエッチング保護層6を設け、他の箇所は除去可能なフォトレジスト又は樹脂等によるエッチング保護層6を設ける。エッチング後、除去可能なエッチング保護層6を除去した後の状態を図15に示す。除去可能なエッチング保護層6を除去したが、凹部の壁面下部の第1の金属層5と第2の金属層7の間に除去されなかったエッチング保護層6が残存する。第1の金属層5の凹部の壁面の端部と第2の金属層7の間に隙間が形成され、ベーパーチャンバー1の強度を低下させることがない。
【0075】
エッチング保護層6の除去は、エッチング保護層6を形成するフォトレジスト又はインクの除去に適した方法で行う。アルカリ剥離または溶解可能なフォトレジスト又はインクの場合、水酸化ナトリウムもしくは水酸化カリウム溶液が用いられ、溶剤剥離可能なフォトレジスト又はインクの場合、極性溶剤や炭化水素系溶剤が使用される。フォトレジストまたインクを除去できる溶液又は溶剤により、エッチング保護層6を溶解又は剥離することで除去する。
【0076】
エッチング保護層6を除去した後、さらに微細なウイックを作成するため、粗面化処理を行っても構わない。粗面化処理には、市販の粗化処理剤が使用でき、メック社エッチボンドCZ、マクダーミッド・パフォーマンス・ソリューションズ・ジャパン株式会社のマルチボンドシリーズ等の粗化処理剤により、図9に示される凹部の内面を処理する。粗面化処理により、凹部内面に微細な凹凸を付与する。付与された凹凸の凹部を伝って液体となった作動流体の移動が可能となり、ウイックの役割を担うことができる。粗面化処理により微細な凹凸の形成により、密閉空間4内の表面積が増大し、冷却能力が向上するという効果もある。
【0077】
図2Eに示すのは、凹部を形成する領域全体にエッチング保護層6を形成する場合である。このベーパーチャンバー製造用金属部材をエッチングすると、第1の金属層5がエッチングにより除去された後、エッチング保護層6が全面にあり、第2の金属層7はエッチングされない。エッチング保護層6を除去した後、全面に現れる第2の金属層7の面を粗面化処理する。第2の金属層7の面を粗面化処理することで、第2の金属層7の面に微細な凹凸を付与する。付与された微細な凹凸の凹部を伝って液体となった作動流体の移動が可能となり、ウイックの役割を担うことができる。
【0078】
第1の部材2と第2の部材3の接合は、リフロー装置、レーザー加熱装置又はボックスオーブンが使用できる。接合材は、熱伝導性が良好で、ベーパーチャンバー1の作動時の内圧で破壊されないものであれば、使用可能であり、はんだ、有機系接着剤が例示できる。はんだは、通常一般に用いるSnAgCu系やSnPb等が使用できるが、低温はんだや高温はんだも使用できる。はんだ付けの方法は、手付によるもの、はんだペーストを用いるメタルマスク印刷し、リフロー炉やレーザー光での加熱によるもの、フローソルダーによるものが例示できる。必要に応じ治具やロボットを使って第1の部材2と第2の部材3を治具等で密着固定することもできる。第1の部材2と第2の部材3との接合は、ベーパーチャンバーンバー1の作動時にベーパーチャンバー1が破損しない程度であればどのような方法により行っても構わない。
【0079】
第2の部材3は金属であって、ベーパーチャンバー1が使用される温度で、熱伝導率が10W/m・K以上の金属が使用可能である。銅、銅モリブデン合金、アルミニウム等である。第2の部材3として金属板を使用する場合、厚さは9μm以上、10000μm以下が好ましい。
【0080】
第2の部材3は、金属板ではなく、第1の部材2のように凹部が形成された金属部材を使用しても構わない。第2の部材3は第1の部材2と同一であっても構わない。
【0081】
作動流体の密閉空間4への封入は、ヒートパイプや他のベーパーチャンバーと同様に、一般的な方法で封入できる。必要に応じて冷却しながら充填口から作動流体を注入し、充填口を物理的につぶし、さらにはんだ付けやろう付け、溶接等で封止するものである。充填口は第1の部材2又は第2の部材3に設けてもよいし、第1の部材2及び第2の部材3の両方に形成してもよい。作動流体を封入することによりベーパーチャンバー1は完成する。
【0082】
ベーパーチャンバー1は、その一部が発熱体であるデバイスと接触する気化部となり、一部は気化した作動流体が液化する液化部となる。液化した作動流体は気化部に戻らなければならない。液化した作動流体は、第2の金属層7のエッチングされた溝を流路として移動することにより気化部に戻る。溝は狭い幅で形成されており、作動流体は毛細管現象により移動することで迅速に気化部に戻ることができる。エッチングにより形成される第2の金属層7の溝は、毛細管現象を生じさせる程度の幅に形成される。
【0083】
(実施の形態2)
実施の形態2に係るベーパーチャンバー製造用金属部材を図3に示す。実施の形態2に係るベーパーチャンバー製造用金属部材は、実施の形態1に係るベーパーチャンバー製造用金属部材の第2の金属層7の面にエッチングストップ層8を備えるものである。エッチングストップ層8を構成する金属は、ニッケル、アルミニウム、錫、銀、銅、はんだ等である。第1の金属層5及び第2の金属層7を同時にエッチングするエッチング液によりエッチングされない金属である。エッチングストップ層8の厚さは、0.1μm以上、200μm以下が好ましく、さらに0.5μm以上、100μm以下が好ましい。0.1μmより薄いと、ピンホール等によりエッチングストップ層8として機能をしない。また、200μmを超えると、冷却能力が劣る。
【0084】
実施の形態2に係るベーパーチャンバー製造用金属部材は、実施の形態1のベーパーチャンバー製造用金属部材の第2の金属層7の面にエッチングストップ層8を設けており、第1の金属層5、エッチング保護層6及び第2の金属層7は、実施の形態1と同様である。ベーパーチャンバー製造用金属部材の製造方法も実施の形態1と同様である。
【0085】
第2の金属層7の面へのエッチングストップ層8の形成は、電気めっきにより行われる。エッチングストップ層8は、第1の金属層5及び第2の金属層7をエッチングするエッチング液に不溶あれば使用できるが、ニッケル、アルミニウム、錫、銀、銅、はんだ等が使用できる。第1の金属層5及び第2の金属層7が銅で、エッチングストップ層8がニッケルの場合、エッチング液は、塩酸第二鉄もしくは塩酸第二銅溶液である。
【0086】
実施の形態2に係るベーパーチャンバー製造用金属部材は、実施の形態1に係るベーパーチャンバー製造用金属部材と同様に、図7に示すように、外枠エッチング保護層10を形成する。外枠エッチング保護層10を形成した後、金属層5側からエッチングを行う。外枠エッチング保護層10を設けない部分の第1の金属層5は、エッチングにより除去される。また、エッチング保護層6が形成されない第2の金属層7はエッチングによりエッチングストップ層8に至るまで除去される。外枠エッチング保護層10及びエッチング保護層6を除去した状態を図10に示す。第2の金属層7はエッチングストップ層8まで除去される。エッチング液は第1の金属層5の全て、及び第2の金属層7のエッチング保護層6により被覆されない第2の金属層7は、エッチングストップ層8に至るまでを腐食し、除去される。
【0087】
外枠エッチング保護層10及びエッチング保護層6を除去したベーパーチャンバー製造用金属部材を第1の部材2として、第2の部材3により、第1の部材2の凹部を密閉することにより密閉空間4を備えるベーパーチャンバー1を製造する。この方法は実施の形態1と同様である。
【0088】
実施の形態1のベーパーチャンバー製造用金属部材により、ベーパーチャンバー1を構成する第1の部材を製造する場合、第2の金属層7の全てをエッチングにより除去することができないため、エッチングを行うエッチング液、エッチング温度及びエッチング時間を調整することにより、第2の金属層7のエッチングを一部に留めなければならない。この調整は工程上煩雑である。エッチングストップ層8を設けることにより、第2の金属層7の全てを除去することが可能となり、エッチングの条件調整が容易となり、エッチング時間を短縮することが可能となる。
【0089】
第2の金属層7の全てをエッチングストップ層8まで除去するため、エッチングにより除去されない第2の金属層7により形成される溝は実施の形態1よりも深くなり。その深さは第2の金属層7の厚さと同一となる。実施の形態1の溝よりも深い溝は、より多い量の液化した作動流体の移動を可能にする。実施の形態2に係るベーパーチャンバー1は、実施の形態1に係るベーパーチャンバー1よりも迅速に液化した作動流体を液化部から気化部に移動させることが可能であり、ベーパーチャンバー1の冷却能力を向上させることができる。
【0090】
(実施の形態3)
実施の形態3に係るベーパーチャンバー製造用金属部材を図4に示す。実施の形態3に係るベーパーチャンバー製造用金属部材は、実施の形態2に係るベーパーチャンバー製造用金属部材のエッチングストップ層8の面に第3の金属層11が備えられる。第1の金属層5、エッチング保護層6、第2の金属層7及びエッチングストップ層8は実施の形態2と同様である。第3の金属層11を設けること以外は、ベーパーチャンバー製造用金属部材の製造方法は、実施の形態2と同様である。
【0091】
第3の金属層11は、ベーパーチャンバー1が使用される温度で、熱伝導率が10W/m・K以上の金属が使用可能である。第3の金属層11は、銅、銅モリブデン合金、アルミニウム等の金属であって、9μm以上、10000μm以下の厚さである。第3の金属層11は、エッチングストップ層8の面に、メッキにより形成される。また、金属板を接着剤により、エッチングストップ層8の面に貼り合わせても構わない。
【0092】
実施の形態3に係るベーパーチャンバー製造用金属部材を実施の形態2と同様にエッチングする。エッチングにより得られる第1の部材2を図11に示す。エッチングストップ層8の非エッチング側に第3の金属層11を備えること以外、実施の形態2と同様である。実施の形態2と同様にベーパーチャンバー1を製造する。
【0093】
実施の形態3により得られるベーパーチャンバー1は、実施の形態2により得られるベーパーチャンバー1に比べ、エッチングストップ層8の外面に第3の金属層11を備えることにより、ベーパーチャンバー1の強度を増すことできる。
【0094】
図11は、第1の金属層5の全て及びエッチング保護層6により被覆されない第2の金属層7のエッチングストップ層8までをエッチングにより除去した状態を示している。この後、さらに第2の金属層7により被覆されないエッチングストップ層8をエッチングにより除去しても構わない。図14にエッチングストップ層8を除去する工程を示す。エッチングストップ層8のエッチングは、第1の金属層5、第2の金属層7及び第3の金属層11を腐食しないエッチング液により行う。
【0095】
エッチングストップ層8を除去することにより、第3の金属層11が露出する。露出する第3の金属層11の面を粗面化処理することで、第3の金属層11の露出する面に微細な凹凸を形成し、微細な凹部によるウイックを形成することができる。
【0096】
実施の形態1乃至実施の形態3について、ペーパーチャンバー1を構成する第1の部材を製造するとき、図12Aに示すように、1枚の金属板である第1の金属層5から、ベーパーチャンバー1を構成する第1の部材2を多面付けで製造することができる。大判のベーパーチャンバー製造用金属部材を作成することにより、ベーパーチャンバー1を多面付けで製造することが可能となる。例えば、ベーパーチャンバー1の5×3倍から100×80倍の大きさのベーパーチャンバー製造用金属部材を多面付けにより製造することにより、ベーパーチャンバー1の製造コストを低減することができる。
【0097】
図12A及び図12Bに示すように、第1の部材2を多面付けで製造できる大判の金属板を金属層5として、ベーパーチャンバー製造用金属部材を製造する。このような多面付けの場合、ベーパーチャンバー1を製造するとき、作動流体を密閉空間4に封入するために作動流体封入路12を、第1の金属層5及び第2の金属層7をエッチングする際に、第1の金属層5の面をエッチングすることによりにより設けることができる。作動流体を封入する作動流体封入路12は、図12A又は図12Bのように密閉空間4を形成する凹部に接して設けられる。
【0098】
図13A及び図13Bは、第1の部材の変形例である。図13Aは、第1の金属層5をエッチングし、凹部を形成するとき、凹部を渦巻き状に形成するものである。図13Aの黒色部分に外枠エッチング保護層10を形成し、凹部を渦巻き状としてエッチングにより形成することができる。図13Bは、金属層5をエッチングし、凹部を形成するとき、凹部を放射状に形成するものである。図13Bの黒色部分に外枠エッチング保護層10を形成することで、凹部を放射状としてエッチングにより形成することができる。デバイスから全方向に均一に放熱したい場合、密閉空間4を渦巻き状若しくは放射状に形成することが好ましい。
【符号の説明】
【0099】
1:ベーパーチャンバー
2:第1の部材
3:第2の部材
4:密閉空間
5:第1の金属層
6:エッチング保護層
7:第2の金属層
8:エッチングストップ層
9:フォトレジスト層
10:外枠エッチング保護層
11:第3の金属層
12:作動流体封入路
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12A
図12B
図13A
図13B
図14
図15