(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-01
(45)【発行日】2024-10-09
(54)【発明の名称】衣服用の冷却装置
(51)【国際特許分類】
A41D 13/002 20060101AFI20241002BHJP
A41D 13/005 20060101ALI20241002BHJP
【FI】
A41D13/002 105
A41D13/005 103
(21)【出願番号】P 2024043853
(22)【出願日】2024-03-19
【審査請求日】2024-07-22
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和6年2月10日に、株式会社クロスが、下記宣伝用チラシの紙面に掲載した。 「Cross-fan EX」宣伝用チラシ 令和6年3月3日に、株式会社クロスが、下記展示会に出品した。 スイカ研究大会2024 (尾花沢市文化体育施設サルナート(山形県尾花沢市若葉町1丁目4-27)) 令和6年3月8日~9日に、株式会社クロスが、下記展示会に出品した。 北関東マルテーフェア (マロニエプラザ大展示場(栃木県宇都宮市元今泉6-1-37)) 令和6年1月19日~3月18日に、株式会社クロスがファン装置を取引先に提示し、チラシの画像データを提供した。
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521022163
【氏名又は名称】株式会社クロス
(74)【代理人】
【識別番号】100163706
【氏名又は名称】釜谷 直樹
(72)【発明者】
【氏名】辻 勝彦
(72)【発明者】
【氏名】辻 宏恵
(72)【発明者】
【氏名】鳥飼 亨
【審査官】岡澤 洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2023-056164(JP,A)
【文献】特開2023-106237(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D 13/002
A41D 13/005
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペルチェ素子を備えるペルチェ冷却部によって衣服の内部を冷却するように構成された衣服用の冷却装置であって、
前記冷却装置は、少なくともファンを用いて前記ペルチェ素子を放熱させるように構成されたファン冷却部を有し、
前記冷却装置は、前記ファンの吸気穴または排気穴に、指が入らないようにガードするファンガード部を有し、
前記ファンガード部を熱伝導性の良い金属で構成することにより、前記ファンガード部を前記ペルチェ素子の放熱のためのヒートシンクとして用いられるように構成されている
ことを特徴とする衣服用の冷却装置。
【請求項2】
前記ペルチェ冷却部は、前記ペルチェ素子よって冷却される冷却プレートを有し、
前記冷却装置は、前記冷却プレートを使用者の身体に接触させるか、または、前記冷却プレートにより前記衣服の内部で冷気を発生させるようにして、前記使用者の身体を冷却するように構成されている
ことを特徴とする請求項1記載の衣服用の冷却装置。
【請求項3】
前記冷却装置は、前記使用者の衣服に取り付け可能に構成され、
前記冷却装置は、前記ファン冷却部によって前記衣服内に空気を取り込むことで前記使用者の身体から出た汗を蒸発させて気化熱による冷却効果を得るとともに、前記ペルチェ冷却部によって前記使用者の身体を冷却させる構成を有し、
前記冷却装置は、前記衣服に前記
冷却装置を取り付けるための取付け部を備えた筐体部を有し、
前記筐体部により、前記ファン冷却部と前記ペルチェ冷却部は保持され、
前記筐体部は、前記吸気穴および前記排気穴を有し、
前記ファン冷却部のファンにより、前記吸気穴から空気を取り込み、前記排気穴から前記衣服内に空気を放出させるように構成されている
ことを特徴とする請求項2記載の衣服用の冷却装置。
【請求項4】
前記排気穴には、前記
冷却装置の内部に指等が入らないようにした排気穴ガードを有していて、
前記排気穴ガードが前記ファンガード部の構成を有し、
前記排気穴ガードは、前記ペルチェ冷却部を保持するペルチェ冷却部保持部を有し、
前記ペルチェ冷却部のペルチェ素子の発熱側の部分が前記ペルチェ冷却部保持部に固定されて、前記ペルチェ冷却部保持部を介して前記ペルチェ冷却部が放熱されるように構成されている
ことを特徴とする請求項3記載の衣服用の冷却装置。
【請求項5】
前記排気穴ガードは、前記
冷却装置の排気側に膨出するよう構成され、
前記ペルチェ冷却部保持部は前記
排気穴ガードの略頂部であって前記ファン冷却部の略軸心の位置に設けられていて、
前記ペルチェ冷却部の排気側には、前記ペルチェ冷却部の吸熱側の部分と結合された前記冷却プレートが設けられている
ことを特徴とする請求項4記載の衣服用の冷却装置。
【請求項6】
前記ファン冷却部の排気側には、前記ファンとともに回転し、前記ファンより小径の小径ファンを有しており、
前記小径ファンのよって、前記ペルチェ冷却部保持部の吸気側に風を送るよう構成されている
ことを特徴とする請求項5記載の衣服用の冷却装置。
【請求項7】
前記ペルチェ冷却部保持部の吸気側の部分に放熱フィンを有している
ことを特徴とする請求項6記載の衣服用の冷却装置。
【請求項8】
前記冷却プレートは、前記
排気穴ガードの略頂部より一段凹んだ位置に設けられている
ことを特徴とする請求項5記載の衣服用の冷却装置。
【請求項9】
前記
冷却装置は、接続ケーブルで結ばれ、前記
冷却装置に電源を供給するコントローラを有し、
前記コントローラは、バッテリーと前記ファン冷却部と前記ペルチェ冷却部の駆動する能力を切り換える制御部を有し、
前記制御部に制御されて、前記ファン冷却部と前記ペルチェ冷却部はPWM駆動されるように構成されている
ことを特徴とする請求項1乃至請求項8記載の冷却装置。
【請求項10】
前記吸気穴は略網状に構成され前記
冷却装置の内部に指等が入らないようにした吸気穴ガードを有していて、
吸気穴ガードの略中心部には、前記
冷却装置の作動状態を表示する作動表示部を有している
ことを特徴とする請求項1乃至請求項8記載の衣服用の冷却装置。
【請求項11】
前記
冷却装置を前記衣服に取り付けるための前記取付け部は、前記筐体部の吸気側に形成された本体取付け部と取付けリングから構成され、
前記吸気穴は略網状に構成され前記冷却装置の内部に指等が入らないようにした吸気穴ガードを有していて、
前記本体取付け部は、前記吸気穴ガードの外周部に位置する雄ネジ部を外周面に有する本体筒状部と、
前記本体筒状部の排気側に形成された本体フランジ部を有し、
前記取付けリングは、雌ネジ部を内周面に有するリング筒状部と、
前記リング筒状部の排気側に形成されたリングフランジ部を有し、
前記衣服に設けられた取付け穴に、前記衣服の裏面側から前記本体筒状部を挿入し、前記衣服の表面に露出した前記本体筒状部に前記取付けリングのリング筒状部を螺合することによって、前記取付け穴を前記本体フランジ部と前記リングフランジ部で挟持することにより、前記
冷却装置を前記衣服に取り付けるよう構成されている
ことを特徴とする
請求項3を引用する請求項4乃至請求項8記載の衣服用の冷却装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は衣服用の冷却装置に関する。より詳細には、衣服の内部を冷却するように構成された衣服用の冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、衣服の内部を冷却するように構成された衣服用の冷却装置が求められている。
【0003】
このような装置として、特許文献1にて開示されたファン装置、ファン付きウェアおよびファン本体取り付け具がある。これは、空調服(登録商標)として知られるものであって、ウェア本体の少し背面側の左右の脇腹の部分であって、腕とウェア本体の略中間の位置に設けられた2つの平面状のファン取り付け孔にそれぞれファン装置を取り付け、ファン装置が取り込んだ大量の外気を身体又は下着の表面と略平行に流通させることにより、身体から出た汗を蒸発させて、身体を冷却するというものである。
【0004】
そして、ウェア本体に設けられた取り付け孔に挿通される筒状部と、筒状部の軸方向の一端から筒状部の軸方向に直交する方向に突出するフランジ部と、を有するファン本体と、筒状部の外側からフランジ部との間でウェア本体の取り付け孔の縁部を挟み込んだ状態でファン本体に装着されるファン取り付け手段と、を備え、ファン取り付け手段は、筒状部の外周に全周を覆うように取り付けられるとともに、周方向に2つに分割された分割体により構成されるリング部材と、2つの分割体の周方向端部同士を固定する固定部材と、を備え、取り付け孔に挿通された筒状部の外周に取り付けた2つの分割体を、固定部材により固定することで、ファン本体をウェア本体に固定するように構成されている。
【0005】
また、このような装置として、特許文献2にて開示された熱交換ユニット及びそれを備えたウェアがある。これは、ペルチェ素子を利用しつつ、着衣者の身体を快適に冷房又は暖房できるようにするウェアであって、熱交換ユニットは、ウェアの生地に取り付けられ、ウェア内部とウェア外部とを仕切る仕切板と、仕切板に装着されるペルチェ素子と、仕切板のウェア内部側に設けられ、ペルチェ素子の一方の面の熱を伝導させる第1熱伝導部材と、第1熱伝導部材で熱交換された空気をウェア内部側に拡散させる第1のファンと、仕切板のウェア外部側に設けられ、ペルチェ素子の他方の面の熱を伝導させる第2熱伝導部材と、第2熱伝導部材で熱交換された空気をウェア外部側に放出させる第2のファンと、を備えるものである。
【0006】
また、このような装置として、特許文献3にて開示された空気調和ユニット及びそれを備えたウェアがある。これは、ペルチェ素子を利用しつつ、着衣者の身体を快適に冷房又は暖房できるようにしたものであって、熱交換プレートをユーザーの肩胛骨の間から腰に至る部分に直接的または間接的に接触させて、その部分を効率的に冷却または加熱ができるようにしたものである。
【0007】
そして、この空気調和ユニット及びそれを備えたウェアは、ペルチェ素子を利用してユーザーの身体を効率的に冷房又は暖房できるようにしたものであって、ユーザーの身体を冷房または暖房するための空気調和ユニットは、ペルチェ素子と、ペルチェ素子の一方の面に接合する金属板と、金属板よりも面積が大きく、金属板に接合した状態で身体側に配置される金属製の熱交換プレートと、ペルチェ素子の他方の面に配置されるヒートシンクと、ヒートシンクに対向して配置され、ヒートシンクの熱を外部に放出させるファンと、ヒートシンク及びファンを覆う状態に装着されるファンカバーと、を備えるものである。
【0008】
特に、夏場に冷房目的で空気調和ユニットをウェアに装着すると、身体の皮膚温度は約33℃であるのに対し、金属製の熱交換プレートは皮膚温度よりも低い温度であることが多い。そのため、着衣時には、身体が熱交換プレートに触れることにより、一定の涼感をユーザーに与えることができる。ただし、着衣時に得られる涼感は一時的なものであり、ペルチェ素子が駆動されていない場合には、熱交換プレートは、身体の皮膚温度と同じ温度まで次第に上昇していくことになる。一方、着衣後に直ぐにペルチェ素子を駆動すると、熱交換プレートが温度上昇し始める前にペルチェ素子は、熱交換プレートを冷却し始める。そのため、熱交換プレートの温度上昇を抑えることができる。つまり、夏の冷房目的で使用するときには、熱交換プレートの温度上昇を抑えるようにペルチェ素が熱交換プレートの熱を吸熱すれば良い。したがって、上述した空気調和ユニットは、ペルチェ素子の消費電力量を増加させることなく、着衣時からユーザーに涼感を与えることが可能であり、しかもその涼感を長時間継続させることができるという利点があるというものである。
【0009】
また、このような装置として、非特許文献1にて開示された冷蔵服(登録商標)がある。この装置は、ベストの背面に設けられたファン取り付け孔にファンを取り付け、外気を取り込無ことで気化熱による冷却効果を得るとともに、ファンとは別体のペルチェ素子の技術で冷える平面状のプレートを使用者の背中に密着させて、環境温度からマイナス15度の温度で、背中を継続して冷やすというものである。
【0010】
そして、このような装置として、非特許文献2にて開示されたペルチェ式急速冷却ファンがある。この装置は、本発明の出願人により開発されたものであり、ファン冷却部のファンにより、筐体部の吸気孔から外気を取り込み、筐体部の排気穴から前記身体に外気を放出させるように構成され、ペルチェ冷却部は、ペルチェ素子を挟んで身体側の面に冷却プレート、吸気側の面に放熱板を有していて、ファンにより取り込まれた外気により放熱板の熱を放熱させ、ペルチェ素子により冷却プレートを冷却させるように構成されている。また、冷却プレートは、身体側に向かって筐体部から膨出するように構成されている。
【0011】
そのため、ファン装置とファン装置用ウェアの組合せにより、使用者が身体を動かさないときには、取り込まれた外気が身体に放出される力によりファン装置用ウェアのたわみ分をファン装置が移動して、冷却プレートは身体から離間して冷たい状態となって間接的に身体を冷却し、身体を動かしたときにはたわみ分が減少し、身体に外気が放出される力に抗してファン装置が身体の方に移動して、冷却プレートが身体に直接接触して身体を冷却し、また身体を動かさないと、冷却プレートは身体から離間して冷たい状態になるように構成されているので、継続して使用しても、涼感やひんやり感を維持できるというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】特開2023-21758号公報
【文献】特開2020-97799号公報
【文献】特開2022-63478号公報
【非特許文献】
【0013】
【文献】「冷蔵服2」[令和6年3月3日検索]、インターネット〈https://www.thanko.jp/view/item/000000004137〉
【文献】ペルチェ式急速冷却ファン「Cross-fan X」[令和6年3月3日検索]、インターネット〈https://www.makuake.com/project/cross-fan/〉
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、ファン装置が取り込んだ大量の外気を流通させることにより、身体から出た汗を蒸発させて、身体を冷却することはできるが、それ以上の冷却はできないという不都合があった。
【0015】
また、特許文献2に記載の技術では、熱交換された空気をファンによりウェア内部側に拡散させることはできるが、外気を取り込むことはできず、身体から出た汗が蒸発しても、その湿気を含んだ空気を外部に放出できないため、汗が蒸発することにより身体を冷却する効果は望めないという不都合があった。
【0016】
また、特許文献3に記載の技術では、夏場に冷房目的で空気調和ユニットをウェアに装着した場合、ファンはヒートシンクの熱を外部に放出させる構成となっているが、外気を取り込む構成にはなっていないため、ユーザーの身体を冷房するときに、ファンによって身体から出た汗を蒸発させて、ユーザーの身体を気化熱で冷却させることができないという不都合があった。
【0017】
また、非特許文献1に記載の技術では、非特許文献1に記載があるように平面状のプレートを使用者の背中に密着させて、背中を継続して冷やしている。そうすると、ペルチェ素子を作動させた当初は、プレートは外気温に対して大きな温度差があっても、身体は大きな発熱体であり、背中に密着させて継続して使用した場合、ペルチェ素子で冷却しても熱交換プレートと身体の温度との温度差は小さくなっていき、当初得られたひんやり感は徐々に失われてしまうという不都合があった。
【0018】
また、非特許文献2に記載の技術では、放熱板の大きさが小型のものであって、ペルチェ素子の発熱を放熱させるのに限度があり、冷却プレートの冷却にも限度があるという不都合があった。
【0019】
本発明の目的は、ペルチェ素子の発熱を効率よく放熱することができるペルチェ素子を用いた冷却部を有する衣服用の冷却装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、上記の課題を解決するために、以下の構成を採用した。
【0021】
本発明は、ペルチェ素子を備えるペルチェ冷却部とファンを備えるファン冷却部を有する冷却装置に関する。
そして、ペルチェ素子を備えるペルチェ冷却部によって衣服の内部を冷却するように構成された衣服用の冷却装置であって、冷却装置は、少なくともファンを用いてペルチェ素子を放熱させるように構成されたファン冷却部を有し、冷却装置は、ファンの吸気穴または排気穴に、指が入らないようにガードするファンガード部を有し、ファンガード部を熱伝導性の良い金属で構成することにより、ファンガード部をペルチェ素子の放熱のためのヒートシンクとして用いられるように構成されていることを特徴とする。
【0022】
また、ペルチェ冷却部は、ペルチェ素子よって冷却される冷却プレートを有し、冷却装置は、冷却プレートを使用者の身体に接触させるか、または、冷却プレートにより衣服の内部で冷気を発生させるようにして、使用者の身体を冷却するように構成されていることを特徴とする。
【0023】
また、冷却装置は、使用者の衣服に取り付け可能に構成され、冷却装置は、ファン冷却部によって衣服内に空気を取り込むことで使用者の身体から出た汗を蒸発させて気化熱による冷却効果を得るとともに、ペルチェ冷却部によって使用者の身体を冷却させる構成を有し、冷却装置は、衣服に冷却装置を取り付けるための取付け部を備えた筐体部を有し、筐体部により、ファン冷却部とペルチェ冷却部は保持され、筐体部は、吸気穴および排気穴を有し、ファン冷却部のファンにより、吸気穴から空気を取り込み、排気穴から衣服内に空気を放出させるように構成されていることを特徴とする。
【0024】
また、排気穴には、冷却装置の内部に指等が入らないようにした排気穴ガードを有していて、排気穴ガードがファンガード部の構成を有し、排気穴ガードは、ペルチェ冷却部を保持するペルチェ冷却部保持部を有し、ペルチェ冷却部のペルチェ素子の発熱側の部分がペルチェ冷却部保持部に固定されて、ペルチェ冷却部保持部を介してペルチェ冷却部が放熱されるように構成されていることを特徴とする。
【0025】
また、排気穴ガードは、冷却装置の排気側に膨出するよう構成され、ペルチェ冷却部保持部は排気穴ガードの略頂部であってファン冷却部の略軸心の位置に設けられていて、ペルチェ冷却部の排気側には、ペルチェ冷却部の吸熱側の部分と結合された冷却プレートが設けられていることを特徴とする。
【0026】
また、ファン冷却部の排気側には、ファンとともに回転し、ファンより小径の小径ファンを有しており、小径ファンのよって、ペルチェ冷却部保持部の吸気側に風を送るよう構成されていることを特徴とする。
【0027】
また、ペルチェ冷却部保持部の吸気側の部分に放熱フィンを有していることを特徴とする。
【0028】
また、冷却プレートは、排気穴ガードの略頂部より一段凹んだ位置に設けられていることを特徴とする。
【0029】
また、冷却装置は、接続ケーブルで結ばれ、冷却装置に電源を供給するコントローラを有し、コントローラは、バッテリーとファン冷却部とペルチェ冷却部の駆動する能力を切り換える制御部を有し、制御部に制御されて、ファン冷却部とペルチェ冷却部はPWM駆動されるように構成されていることを特徴とする。
【0030】
また、吸気穴は略網状に構成され冷却装置の内部に指等が入らないようにした吸気穴ガードを有していて、吸気穴ガードの略中心部には、冷却装置の作動状態を表示する作動表示部を有していることを特徴とする。
【0031】
そして、冷却装置を衣服に取り付けるための取付け部は、筐体部の吸気側に形成された本体取付け部と取付けリングから構成され、吸気穴は略網状に構成され冷却装置の内部に指等が入らないようにした吸気穴ガードを有していて、本体取付け部は、吸気穴ガードの外周部に位置する雄ネジ部を外周面に有する本体筒状部と、本体筒状部の排気側に形成された本体フランジ部を有し、取付けリングは、雌ネジ部を内周面に有するリング筒状部と、リング筒状部の排気側に形成されたリングフランジ部を有し、衣服に設けられた取付け穴に、衣服の裏面側から本体筒状部を挿入し、衣服の表面に露出した本体筒状部に取付けリングのリング筒状部を螺合することによって、取付け穴を本体フランジ部とリングフランジ部で挟持することにより、冷却装置を衣服に取り付けるよう構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、上述の特徴を有することから、下記に示すことが可能となる。
【0033】
ペルチェ素子を備えるペルチェ冷却部によって衣服の内部を冷却するように構成された衣服用の冷却装置であって、冷却装置は、少なくともファンを用いてペルチェ素子を放熱させるように構成されたファン冷却部を有し、冷却装置は、ファンの吸気穴または排気穴に、指が入らないようにガードするファンガード部を有し、ファンガード部を熱伝導性の良い金属で構成することにより、ファンガード部をペルチェ素子の放熱のためのヒートシンクとして用いられるように構成されているので、ペルチェ素子の放熱を効率よく行うことが可能となった。
【0034】
ペルチェ冷却部は、ペルチェ素子よって冷却される冷却プレートを有し、冷却装置は、冷却プレートを使用者の身体に接触させるか、または、冷却プレートにより衣服の内部で冷気を発生させるようにして、使用者の身体を冷却するように構成されているので、衣服の内部を効率よく冷却することが可能となった。
【0035】
冷却装置は、使用者の衣服に取り付け可能に構成され、冷却装置は、ファン冷却部によって衣服内に空気を取り込むことで使用者の身体から出た汗を蒸発させて気化熱による冷却効果を得るとともに、ペルチェ冷却部によって使用者の身体を冷却させる構成を有し、冷却装置は、衣服に冷却装置を取り付けるための取付け部を備えた筐体部を有し、筐体部により、ファン冷却部とペルチェ冷却部は保持され、筐体部は、吸気穴および排気穴を有し、ファン冷却部のファンにより、吸気穴から空気を取り込み、排気穴から衣服内に空気を放出させるように構成されているので、使用者の身体を気化熱による冷却させることが可能となった。
【0036】
また、排気穴には、冷却装置の内部に指等が入らないようにした排気穴ガードを有していて、排気穴ガードがファンガード部の構成を有し、排気穴ガードは、ペルチェ冷却部を保持するペルチェ冷却部保持部を有し、ペルチェ冷却部のペルチェ素子の発熱側の部分がペルチェ冷却部保持部に固定されて、ペルチェ冷却部保持部を介してペルチェ冷却部が放熱されるように構成されているので、衣服の内部にある排気穴ガードによりペルチェ素子の放熱がされ、また、ペルチェ冷却部は排気穴ガードに保持されているので、効率よく放熱することが可能となった。
【0037】
また、排気ガードは、冷却装置の排気側に膨出するよう構成され、ペルチェ冷却部保持部は排気穴ガードの略頂部であってファン冷却部の略軸心の位置に設けられていて、ペルチェ冷却部の排気側には、ペルチェ冷却部の吸熱側の部分と結合された冷却プレートが設けられているので、身体に近い位置に冷却プレートを配置できて、効果的に身体を冷却させることが可能となった。
【0038】
また、ファン冷却部の排気側には、ファンとともに回転し、ファンより小径の小径ファンを有しており、小径ファンのよって、ペルチェ冷却部保持部の吸気側に風を送るよう構成されているので、ペルチェ冷却部保持部の吸気側の部分に風を送り冷却することが可能となった。
【0039】
また、ペルチェ冷却部保持部の吸気側の部分に放熱フィンを有しているので、放熱フィンにより効率よくペルチェ冷却部保持部を冷却することが可能となった。
【0040】
また、冷却プレートは、排気穴ガードの略頂部より一段凹んだ位置に設けられているので、冷却プレートを使用者の身体により容易に当接したり離間したりすることが可能となった。
【0041】
また、冷却装置は、接続ケーブルで結ばれ、冷却装置に電源を供給するコントローラを有し、コントローラは、バッテリーとファン冷却部とペルチェ冷却部の駆動する能力を切り換える制御部を有し、制御部に制御されて、ファン冷却部とペルチェ冷却部はPWM駆動されるように構成されているので、ファン冷却部とペルチェ冷却部を省電力で効率よく駆動させることが可能となった。
【0042】
また、吸気穴は略網状に構成され冷却装置の内部に指等が入らないようにした吸気穴ガードを有していて、吸気穴ガードの略中心部には、冷却装置の作動状態を表示する作動表示部を有しているので、冷却装置の駆動状態が、外部から視認できるようになった。
【0043】
そして、冷却装置を取り付けるための取付け部は、筐体部の吸気側に形成された本体取付け部と取付けリングを有し、吸気穴は略網状に構成され前記冷却装置の内部に指等が入らないようにした吸気穴ガードを有していて、本体取付け部は、吸気穴ガードの外周部に位置する雄ネジ部を外周面に有する本体筒状部と、本体筒状部の排気側に形成された本体フランジ部を有し、取付けリングは、雌ネジ部を内周面に有するリング筒状部と、リング筒状部の排気側に形成されたリングフランジ部を有し、空冷衣服に設けられた取付け穴に、空冷衣服の裏面側から本体筒状部を挿入し、空冷衣服の表面に露出した本体筒状部に取付けリングのリング筒状部を螺合することによって、取付け穴を本体フランジ部とリングフランジ部で挟持することにより、冷却装置を空冷衣服に取り付けるよう構成されているので、空冷衣服に冷却装置を取り付けやすいものとなった。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【
図1】本発明のファン装置の使用例を示す模式図である。
【
図2】本発明のファン装置とウェア100との組み合わせを示す斜視図である。
【
図3】本発明のファン装置の構成を示す斜視図である。
【
図4】本発明のファン装置の構成を示す斜視図である。
【
図5】本発明のファン装置の構成を示す分解斜視図である。
【
図6】本発明のファン装置の構成を示す断面図である。
【
図7】本発明のファン装置の構成を意匠図的に示した六面図である。
【
図8】本発明のファン装置の要部を意匠図的に示した六面図である。
【
図9】本発明のファン装置の要部を意匠図的に示した六面図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について、詳細に説明する。
なお、以下の説明においては、ファン装置用ウェアに取り付けたファン装置により使用者が身体を冷却している状態で、使用者の身体の方向を排気側または身体側、その反対の方向を吸気側と呼ぶこととする。
【0046】
ここで、本発明のファン装置1(冷却装置)は、ウェア100(衣服)に設けられた取付け穴(取付け穴)を塞ぐように取付けられ、ファン装置によってファン装置用ウェア内に外気を吸気して取り込み、使用者の身体から出た汗を蒸発させて身体を冷却するとともに、ペルチェ素子82(ペルチェ素子)を備えるペルチェ冷却部8(ペルチェ冷却部)により身体を冷却するように構成されている。
以下、図面を参照して、本発明のファン装置1について詳細を説明する。
【0047】
図1乃至
図9を用いて、本発明のファン装置1の実施形態について、説明する。
図1はファン装置1が装着されているウェア100を着用している使用者(使用者)Uを模式的に背面方向から見た図であり、
図2は本発明のファン装置1とウェア100との組み合わせの構成を模式的に示す図である。
【0048】
図1に示すように、ウェア100は使用者Uの上半身を覆う概略長袖の作業服の形状をしており、ウェア100の下端部はゴム等により使用者Uの腰回りに密着するように構成されている。ウェア100は通気性の少ない服地で構成されている。ウェア100の下端部近傍で、使用者Uの少し背面側の左右の脇腹近傍には、図視されない取付け穴が設けられ、この取付け穴を塞ぐようにファン装置1、1が取り付けられている。ファン装置1、1により吸気され取り込まれた外気は、ウェア100を膨らませて、外気をウェア100の内部に行き渡るようにして、使用者U(使用者)の身体(身体)から出た汗を蒸発させて身体を冷却させ、首元や袖口から排出される。
【0049】
図2に示すように、ファン装置1、1には電源(バッテリー)を内蔵するコントローラ(コントローラ)Cからの接続ケーブル(接続ケーブル)が接続され、接続ケーブルを介してファン装置1、1に電源等が供給される。コントローラCには、図示されない制御部(制御部)を有し、ファン装置1、1を制御して、ファン装置1、1をPWM(Pulse Width Modulation)駆動させて、ファン装置1、1の冷却能力を調整できるように構成されている。
なおここで、ファン装置1、1のそれぞれにバッテリー等の電源を搭載させて、コントローラCなしでそれぞれ単独で作動するようにしてもよいし、または、コントロール部と電源部を分けて、それぞれ別々に構成にするようにしてもよい。
【0050】
次に
図3乃至
図6を参照して、ファン装置1の構成について説明する。
図3は、ファン装置1の外形を示し、(A)は排気側から見た斜視図、(B)は吸気側から見た斜視図であり、
図4は、ファン装置1をウェア100に取り付ける前の状態を示す斜視図である。
【0051】
図3(A)(B)および
図4に示すように、ファン装置1は取付けリング2(取付け部)(取付けリング)とファン装置本体3とを有していて、取付けリング2はファン装置本体3の吸気側に着脱可能に構成されている。ファン装置本体2は、略円筒状に構成された本体筒状部4(筐体部)と、本体筒状部4から横方向に膨出した本体制御部5を有している。本体筒状部4の吸気側と排気側にはそれぞれ、ファン装置1内部に指等が入らないようにした略網状に構成された吸気ガード部6(取付け部)(本体取付け部)と排気ガード部7(ファンガード部)(排気穴ガード)を有している。
【0052】
図3(A)に示すように、排気ガード部7は、排気側に膨出する略網状の排気ガード71で覆われた排気穴72(排気穴)が形成され、頂部にはペルチェ冷却部8の冷却プレート81(冷却プレート)の排気側の面が、頂部から一段凹んだ位置になるように固定されている。
本体制御部5は平らな略箱形形状をして、コントローラCからの接続ケーブルを接続するための接続プラグ51と図示されない駆動プリント基板を有している。
【0053】
図4は、
図3(B)から、取付けリング2を外した状態を示している。
図3(B)および
図4に示すように、吸気ガード部6は、吸気側に略網状の吸気ガード61(吸気ガード)で覆われた吸気穴62(吸気穴)が形成され、吸気ガード61の外周の排気側には吸気筒状部63(本体筒状部)と吸気フランジ部64(本体フランジ部)が形成されている。また、吸気筒状部63の外周面に雄ネジ部65(雄ネジ部)を有している。そして、吸気ガード61の中心部にはファン装置1の作動状態を示す作動表示部66(作動表示部)が設けられている。
【0054】
図4に示すように、取付けリング2は、薄い円筒状の形状で、内周面に雌ネジ部21(雌ネジ部)が設けられたリング円筒部22(リング円筒部)を有し、リング円筒部21の排気側にはリングフランジ部23(リングフランジ部)が設けられている。また、リング円筒部21の外周部には外周方向に突出した複数の突起を有し、取付けリング2を回転させるために指をかけるためのリング手がかり部24が形成されている。
【0055】
図4に示すように、吸気筒状部63は吸気側に突出しているので、ウェア100の裏側から、ウェア100の取付け穴に吸気筒状部63を嵌合させると、ウェア100の表側に吸気筒状部63が現れる。そして、この吸気筒状部63に取付けリング2を螺合させれば、ウェア100は吸気フランジ部64とリングフランジ部23に挟持されることになる。すなわち、このファン装置1では、ファン装置本体3をウェア100に仮固定した状態で、取付けリング2を回転させ螺合させれば取付けが完了するので、ファン装置1のウェア100への取付けを容易にすることができるものとなった。
【0056】
図5はファン装置本体4の分解斜視図であり、
図6はウェア100に取り付けられた状態のファン装置1を、
図3(A)の断面AAで切断したときの模式的な断面図である。すなわち、
図6は、本体制御部5のある方向から見た、ファン装置1の軸心を含む面でファン装置1を切断したときの断面図であるが、説明のための模式的なものである。
図5および
図6に示すように、ファン装置1は、排気側にペルチェ素子82を有するペルチェ冷却部8、内部にファン冷却部9(ファン冷却部)を有している。なお、
図6においては、説明のため、ファン冷却部9は断面とせず、主要な要部のみの側面図を示しており、また、ファン冷却部9の取付け部の構成についても、省略して示している。
【0057】
図5および
図6を用いて、ファン装置1とファン装置本体3の内部の構成等を、以下、詳しく説明する。
図5および
図6に示すように、本体筒状部4の吸気側に吸気ガード部6が取り付けられ、一体となるように構成されている。また、本体筒状部4の排気側に突出して、4か所の本体筒状部取付け部41、41、41、41が設けられていて、排気ガード部7が取り付けられるよう構成されている。
【0058】
排気ガード部7は、アルミダイカスト等の熱伝導率の高い金属から構成され、排気側頂部には四角い凹部であるペルチェ収納部73(ペルチェ冷却部保持部)が形成され、ペルチェ冷却部8が収納されるよう構成されている。また、排気ガード71の中央部には、4か所の排気ガード取付け部74、74、74、74が設けられ、それぞれに軸心と平行な方向に貫通穴が開いている。
【0059】
ファン冷却部9はモーター付きファン部91とファン固定部92を有している。ファン固定部92は、4か所のファン取付け部93、93、93、93が設けられ、それぞれに軸心と平行な方向に貫通穴が開いている。モーター付きファン部91は、ファン固定部92の吸気側に大きな径の大径ファン94(ファン)、排気側に小さな径の小径ファン95(小径ファン)を有している。
【0060】
ペルチェ冷却部8は、冷却プレート81、ペルチェ素子82、ペルチェ断熱枠83、およびペルチェ保持枠84を有している。また、排気ガード部7のペルチェ収納部73の中央部には、四角く平らに一段凹んだペルチェ素子収納凹部75が設けられている。ペルチェ素子82は、所定厚で略正方形の薄い箱形の形状をしており、ペルチェ素子82の放熱部がペルチェ素子収納凹部75にすっぽりと収納される構成となっている。
【0061】
ペルチェ素子収納凹部75に収納されたペルチェ素子82の周囲を四角い枠状で樹脂でできたペルチェ断熱枠83で取り囲み、ペルチェ素子82の吸熱部に冷却プレート81が載置される。そして、冷却プレート81とペルチェ断熱枠83の周囲に樹脂でできたペルチェ保持枠84が嵌め込まれる。
【0062】
ペルチェ保持枠84の四隅には、吸気側に突出する保持枠取付け部85、85、85、85が設けられ、それぞれに軸心と平行な方向で吸気側方向から排気側に伸びる図示されない穴が開いている。ここで、図示されない4本のタッピンネジを用いて、ファン取付け部93、93、93、93と排気ガード取付け部74、74、74、74の貫通穴を順番に貫通させ、保持枠取付け部85、85、85、85の穴にねじ込んで結合させる。
【0063】
このようにすることによって、ファン冷却部9とペルチェ冷却部8は、排気ガード部7に固着される。そして、ファン冷却部9はファン装置本体3の内部の中空の部分に保持され、ペルチェ素子82は冷却プレート81を介して、排気ガード部7のペルチェ素子収納凹部75に押し付けられ、密着させられる。
【0064】
ペルチェ素子82の吸熱側と冷却プレート81の間、放熱側とペルチェ素子収納凹部75の間は密着し、シリコン・グリス等の熱伝導グリスが塗布されており、効率よく冷却プレート81が冷却され、排気ガード部7から放熱される。すなわち、ペルチェ冷却部8は、熱伝導率の高い金属から構成された排気ガード部7を、放熱のためのヒートシンクとして用いるよう構成されている。また、ペルチェ素子82の吸熱側および冷却プレート81と、ペルチェ収納部73の間はペルチェ断熱枠83とペルチェ保持枠84により仕切られて、排気ガード部7とは断熱がされているように構成されている。
【0065】
ここで、大径ファン94により取り込まれた大量の外気により、排気ガード部7は効率よく冷却される。ところで、大径ファン94の中央部の排気側の部分は、大径ファン94による風が届きにくく、空気が動かず、空気溜まりのような状態となり、十分にペルチェ素子82の中心部を冷却できていないことを、発明者は発見した。このような状態の場合、ペルチェ素子82の放熱側の中心部が十分放熱されないため、大きく発熱し、その結果、冷却プレート81を十分に冷却できなくなってしまうことになる。本実施形態では、この問題に対して、新たな構成を加えて解決したので、以下、説明する。
【0066】
図5におよび
図6示すように、ファン冷却部9には、大径ファン94と同軸で一緒に回転する小径ファン95を、大径ファン94の中心部の排気側に設けてある。そして、小径ファン95の起こす風によって、空気溜まりのような現象を解消した。更に、ペルチェ収納部73の吸気側の面に、たくさんの突起からなる放熱フィン76(放熱フィン)を設け、効率よく冷却できるように構成した。
【0067】
そして、このように構成して冷却させることによりペルチェ素子82の中心部の発熱は大きく減少し、ペルチェ素子82の放熱側の温度が下がったため、吸熱側の冷却温度を大きく低下させることができた。その結果、冷却プレート81の温度を、環境温度と比べ、概略-30度まで低下させることに成功した。
【0068】
ここで、ペルチェ冷却部8、ファン冷却部9および作動表示部66は、本体制御部5に結線され、電力が供給されて駆動される。本体制御部5はコントローラCと接続ケーブルとしてUSB Type-Cケーブルで接続され、コントローラCの制御部に制御される。そして、本体制御部5に内蔵される図示されない駆動プリント基板のPWM駆動回路により駆動されるため、ペルチェ冷却部8およびファン冷却部9はそれぞれ出力を9段階に切り替え可能に構成されている。そのため、ファン装置1を使用する環境等の状態に合わせて、駆動状態の微妙な調整が可能となり、またPWM駆動のよって、省電力で駆動させることができるようになった。
【0069】
また、吸気ガード部6の中央部に設けられた作動表示部66は、ファン装置1の作動しているときに作動表示部66は、適宜付けられたロゴマークのようなマークを点灯させ、ファン装置1が作動してことを示すよう、ここでは構成されている。しかしここで、マークだけでなく、ペルチェ冷却部8やファン冷却部9の出力状態等の駆動状態を詳しく表示するよう構成してもよいことは、勿論である。このようにして、コントローラCをウェア100から取り出さなくても、外部からファン装置1の駆動状態を確認することができるようになった。
【0070】
図7乃至
図9は、ファン装置1を意匠図的に表現した図であって、
図7は取付けリング2をファン装置本体3に取り付けてあるときの状態を示し、
図8および
図9は取付けリング2を取り外したときのファン装置本体3、取付けリング2をそれぞれ示している。
すなわち、
図7乃至
図9は、本体制御部5を下方に配置し、排気側から見た図を意匠図的に表現した六面図であって、それぞれ(A)は正面図、(B)は背面図、(C)は上面図、(D)は底面図、(E)は左側面図、そして(F)は右側面図を表している。
ここで、
図7(B)および
図8(B)において、中央部に設けられた作動表示部66のマークは、意匠図であるので、その記載を図から外している。
【0071】
それでは、本実施形態のファン装置1を装着したウェア100を着用したとき、使用者Uがどのような冷感を得られるのかについて、以下、説明する。
1つ目の効果は、気化熱による冷却効果、2つ目は冷風による冷却効果、そして3つ目の効果は、接触による冷却効果である。以下、順を追って説明していく。
【0072】
まず、1つ目の気化熱による冷却効果であるが、これは従来からある、ファン装置1から押し出された空気の流れが、使用者Uの身体の汗を蒸発させ、気化熱によって身体を冷却する効果である。本実施形態のファン装置1は、従来のものより強力な構成となっているが、いずれにせよ、気化熱による冷却効果には限度がある。
【0073】
次に、冷風による冷却効果である。これは一見矛盾している。本実施形態のファン装置1では、ファン装置1で取り込んだ空気によってペルチェ素子82を放熱させ、冷却プレート81を冷却させる。そうすると、放熱によって空気が温まり、冷却によって冷やされるので、均してみれば、冷風にはならず冷却効果も生じないのではという考えである。
【0074】
発明者は、ファン装置1の開発にあたり、いろいろな方に実際に使用していただいた。そうすると、保冷剤を有するファン付き衣服と同様、着用して30分ほど経つとじんわり冷えてきて、体全体が冷える感じとなる。また、内部の空気が噴き出す首元も涼しく感じる。これは、気化熱だけによるものと比べて、明らかに差がある。という感想を、皆さん述べていた。
【0075】
これは、次のようなことではないかと、発明者は考えている。冷却プレート81は強力に冷やされて、冷却プレート81に接する空気を冷気に変える。そして、冷却プレート81は排気穴72の中央部に位置し、しかも、排気ガード71は身体側に膨出し冷却プレート81は身体に近い位置にある。ファン装置1は軸流ファンであり、噴き出した空気の流れの中の、主に中央部の空気が冷却プレート81により冷やされる冷気となる。噴き出した空気の流れは身体に突き当たり、中央部の冷気は身体に近い部分の空気の層となって、身体に沿ってウェア100と使用者Uの身体の間を流通していく。
【0076】
そうすると、身体に沿って流れる層状の空気の流れの中で身体に近い部分が、冷却プレート81で冷やされた冷気が中心となり、身体に沿って広がっていく。そして、時間を少し掛けて、冷たい冷気の層が使用者Uの身体全体を覆い、襟元や袖口等から排出される。このようにして、使用者Uは、冷風による冷却効果を得ているのでは、というものである。
いずれにせよ、本実施形態のファン装置1によって、確かに使用者は、冷風による冷却効果を得られるようになった。
【0077】
最後に、接触による冷却効果について説明する。ここで、接触といっても、冷却プレート81が常に使用者Uの身体に接触しているわけではないので、詳しく説明する。
ファン装置1をオンにすると、ファン装置1が身体に空気を放出される力により、ウェア100が撓んでファン装置1が身体から浮き上がるような形に移動する。そうすると、冷却プレート81は身体から離間するので、大きな発熱体である身体から離れ、ペルチェ素子82により十分に冷却され、冷風による冷却効果を生じる。またここで、冷却プレート81上には、空気が冷やされて結露が付着する。
【0078】
そして、使用者Uが腕を上げたり体をひねったりして身体を動かしたときには、撓みが身体の動きに引っ張られて減少することにより、身体に外気を放出される力に抗してファン装置1が身体の方に移動する。すると、十分に冷却された冷却プレート81が身体に接触することになり、使用者Uは大きな涼感を得ることができる。なお、ここで使用者Uはウェア100を下着等を着た上から使用するが、使用者Uが身体を動かしたときには、冷却プレート81上の結露が使用者Uの着ている下着等に付着し、この結露が取り込まれた空気により蒸発し、使用者Uはより大きな涼感が得られる。
【0079】
そして、使用者Uが体を動かすのをやめれば、ファン装置1は再び身体から浮き上がるようにして離間し、冷却プレート81はペルチェ素子82本来の冷却力により素早く冷却される。そしてまた、身体を動かしたときには、十分に冷却された冷却プレート81が身体に接触し、涼感やひんやり感を得られる。それゆえ、継続して使用しても、涼感やひんやり感を維持できるものとなる。
【0080】
ここで、
図6に示すように、冷却プレート81は排気ガード部7の頂部から一段凹んだ位置に設けられているので、冷却プレート81は使用者Uの身体から離間しやすいように構成されている。
そして、以上説明したように、使用者Uは、ファン装置1を装着したウェア100を着用したときに、気化熱による冷却効果と冷風による冷却効果、そして接触による冷却効果を得られるようになった。
【0081】
なお、本実施形態では、ウェア100の形状を使用者Uの上半身を覆う概略長袖の作業服の形状のものとしたが、これに限定されない。半袖や袖なしのものであってもいいことは、勿論である。また例えば、現在、市販されている様々な形のファン付きウェアの形のものでもよいことは、勿論である。
【0082】
なお、本発明はその上位概念として、以下のような表現をすることもできる。
ペルチェ素子を備えるペルチェ冷却部とファンを備えるファン冷却部を有する冷却装置において、ファン冷却部は、ファンを用いてペルチェ素子を放熱させるように構成され、冷却装置は、ファンの吸気穴または排気穴に、指が入らないようにガードするファンガード部を有し、ファンガード部を熱伝導性の良い金属で構成することにより、ペルチェ素子の放熱のためのヒートシンクとして用いるように構成したことを特徴とする冷却装置。
【0083】
そして更に、次のように続けることもできる。
冷却装置は、使用者の身体を冷却する冷却装置であって、ペルチェ冷却部は、ペルチェ素子よって冷却される冷却プレートを有し、冷却装置は、冷却プレートを使用者の身体に接触させるか、または、冷却プレートにより冷気を発生させるようにして、使用者の身体を冷却するように構成されていることを特徴とする冷却装置。
【0084】
すなわち、本発明は、ペルチェ素子を使用したワインクーラー等の世の中で使用される様々な冷却装置に適用できるものである。そして、ファンガード部は、風が通っていくところであり、また、表面積も大きい。これを金属で構成し、ヒートシンクとしてペルチェ素子を放熱させれば、効果的であるし、また、部品点数も削減することができるものである。
【0085】
本発明のファン装置は、前述しかつ図面に示した実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形実施が可能である。
例えば、上述した実施の形態においては、使用者Uが作業を行う場合について説明したが、これに限定されない。例えば、サイクリングや釣り等のレジャーやスポーツ等を行う場合等でも、便利に使用できるものである。
【符号の説明】
【0086】
U 使用者
C コントローラ
1 ファン装置
2 取付けリング
21 雌ネジ部
22 リング円筒部
23 リングフランジ部
24 リング手がかり部
3 ファン装置本体
4 本体筒状部
41 本体筒状部取付け部
5 本体制御部
6 吸気ガード部
61 吸気ガード
62 吸気穴
63 吸気筒状部
64 吸気フランジ部
65 雄ネジ部
66 作動表示部
7 排気ガード部
71 排気ガード
72 排気穴
73 ペルチェ収納部
74 排気ガード取付け部
75 ペルチェ素子収納凹部
76 放熱フィン
8 ペルチェ冷却部
81 冷却プレート
82 ペルチェ素子
83 ペルチェ断熱枠
84 ペルチェ保持枠
9 ファン冷却部
91 モーター付きファン部
92 ファン固定部
93 排気ガード取付け部
94 大径ファン
95 小径ファン
100 ウェア
【要約】
【課題】ペルチェ素子の発熱を効率よく放熱することができるペルチェ素子を用いた冷却部を有する衣服用の冷却装置を提供する。
【解決手段】 ペルチェ素子を備えるペルチェ冷却部によって衣服の内部を冷却するように構成された衣服用の冷却装置であって、冷却装置は、少なくともファンを用いてペルチェ素子を放熱させるように構成されたファン冷却部を有し、冷却装置は、ファンの吸気穴または排気穴に、指が入らないようにガードするファンガード部を有し、ファンガード部を熱伝導性の良い金属で構成することにより、ファンガード部をペルチェ素子の放熱のためのヒートシンクとして用いられるように構成されているので、ペルチェ素子の発熱を効率よく放熱することができるものとなった。
【選択図】
図6