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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-01
(45)【発行日】2024-10-09
(54)【発明の名称】曲げ加工装置、チャック装置
(51)【国際特許分類】
   B21D 7/024 20060101AFI20241002BHJP
   B25J 15/08 20060101ALI20241002BHJP
【FI】
B21D7/024 E
B25J15/08 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020072206
(22)【出願日】2020-04-14
(65)【公開番号】P2021169101
(43)【公開日】2021-10-28
【審査請求日】2023-02-22
(73)【特許権者】
【識別番号】592253345
【氏名又は名称】中部エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000992
【氏名又は名称】弁理士法人ネクスト
(72)【発明者】
【氏名】須藤 竹史
【審査官】黒石 孝志
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0165687(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2012-0094621(KR,A)
【文献】国際公開第2018/066627(WO,A1)
【文献】特開平11-33969(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 7/024
B25J 15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺状の部材を曲げ加工する曲げ加工装置であって、
型と、
長手辺の延びる方向を所定の第1方向に向けて配置された前記部材に対して、長手辺の端を把持するチャック部と、
前記チャック部に把持された前記部材を曲げ加工する場合に、前記チャック部を前記型の形状に沿って回動させるチャック可動部と、
前記部材が曲げ加工された後に、前記第1方向において前記部材において、前記チャック部により把持された位置よりも内側の部位をカットするカット部と、を備え、
前記チャック部は、
本体部と、
前記本体部に設けられており、先端が相対的に離間することで前記部材を把持できない離間位置から、前記先端が相対的に近接することにより前記部材を把持可能な近接位置との間で摺動可能な爪部と、
前記爪部の先端を前記離間位置と前記近接位置との間で変化させるように、前記爪部を前記本体部から摺動させる爪部可動部と、を有し、
前記本体部は、前記爪部の先端が位置する側の端面である先側端面を有し、
前記爪部は、少なくとも3つあり、その爪部のそれぞれは、前記先側端面を通る法線を中心とする仮想円上において所定の角度毎の中心角で各把持面が位置するように前記先側端面の外周縁部側に取り付けられ、
前記爪部の各先端は、前記離間位置から前記近接位置に変化する場合に、前記本体部の前記先側端面の前記外周縁部側から前記部材に向けて所定の傾斜角度で傾いた状態で前記本体部から離れるように摺動する曲げ加工装置。
【請求項2】
前記爪部は、棒形状である請求項1に記載の曲げ加工装置。
【請求項3】
前記爪部可動部は、
前記先側端面を通る法線の延びる方向で軸部を直動運動させるシリンダと、
前記軸部の直動運動に応じて、前記爪部の先端を前記離間位置と前記近接位置との間で変化させるように前記爪部を摺動させる機構部と、を有する請求項1又は2に記載の曲げ加工装置。
【請求項4】
前記カット部は、前記型が位置する側から前記チャック部により把持された部材側に向けて前進する請求項1~3のいずれか一項に記載の曲げ加工装置。
【請求項5】
前記傾斜角度は、前記先側端面を通る法線の方向を基準として0度以上、かつ60度以下の角度である請求項1~4のいずれか一項に記載の曲げ加工装置。
【請求項6】
前記チャック可動部は、前記チャック部に対して前記第1方向の引っ張り力を加えながら、前記各チャック部を回動させる請求項1~5のいずれか一項に記載の曲げ加工装置。
【請求項7】
長尺状の部材を曲げ加工する曲げ加工装置に適用され、長手辺の延びる方向を所定の第1方向に向けて配置された前記部材に対して、長手辺の端を把持するチャック装置であって、
本体部と、
前記本体部に設けられており、先端が相対的に離間することで前記部材を把持できない離間位置から、前記先端が相対的に近接することにより前記部材を把持可能な近接位置との間で摺動可能な爪部と、
前記爪部の先端を前記離間位置と前記近接位置との間で変化させるように、前記爪部を前記本体部から摺動させる爪部可動部と、を有し、
前記本体部は、前記爪部の先端が位置する側の端面である先側端面を有し、
前記爪部は、少なくとも3つあり、その爪部のそれぞれは、前記先側端面を通る法線を中心とする仮想円上において所定の角度毎の中心角で各把持面が位置するように前記先側端面の外周縁部側に取り付けられ、
前記爪部の各先端は、前記離間位置から前記近接位置に変化する場合に、前記本体部の前記先側端面の前記外周縁部側から前記部材に向けて所定の傾斜角度で傾いた状態で前記本体部から離れるように摺動するチャック装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部材を曲げ加工する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、長尺状の部材を型に沿って曲げ加工する曲げ加工装置が記載されている。具体的には、曲げ加工装置は、部材の端を把持するチャック部を備えており、チャック部により部材の端を把持した状態で、チャック部を型に近づける方向に回動させることにより部材を曲げ加工する。
【0003】
一般的に、曲げ加工装置は、曲げ加工を施した部材に対して端部をカット部により切断した後、部材を払い出す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-177852号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
部材を曲げ加工する際に、チャック部が型に向けて近づくように回動することにより、チャック部の位置が変化する。このとき、カット部とチャック部とが干渉しないように、部材においてカット部が部材をカットする位置を、部材の把持される位置よりも内側にする必要があった。その結果、部材における被把される位置からカット部によりカットされる位置までの寸法が長くなるため、部材からカットされる量が多くなり、ひいては、歩留まりが低くなることが懸念される。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みたものであり、長尺状の部材を曲げ加工して製品を生産する際に、製品の歩留まりを高めることができる曲げ加工装置、及び曲げ加工装置に適用されるチャック装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明に係る曲げ加工装置では、型と、長手辺の延びる方向を所定の第1方向に向けて配置された部材に対して、長手辺の端を把持するチャック部と、チャック部に把持された部材を曲げ加工する場合に、チャック部を型の形状に沿って回動させるチャック可動部と、部材が曲げ加工された後に、第1方向において部材において、チャック部により把持された位置よりも内側の部位をカットするカット部と、を備え、チャック部は、本体部と、本体部に設けられており、先端が相対的に離間することで部材を把持できない離間位置から、先端が相対的に近接することにより部材を把持可能な近接位置との間で摺動可能な爪部と、爪部の先端を離間位置と近接位置との間で変化させるように、爪部を本体部から摺動させる爪部可動部と、を有し、本体部は、爪部の先端が位置する側の端面である先側端面を有し、爪部は、少なくとも3つあり、その爪部のそれぞれは、先側端面を通る法線を中心とする仮想円上において所定の角度毎の中心角で各把持面が位置するように先側端面の外周縁部側に取り付けられ、爪部の各先端は、離間位置から近接位置に変化する場合に、本体部の先側端面の外周縁部側から部材に向けて所定の傾斜角度で傾いた状態で本体部から離れるように摺動する。
【0008】
上記構成では、部材に対して曲げ加工が施される場合に、部材の一端を把持するチャック部が型の形状に沿って回動される。このとき、爪部の各先端は、本体部の先側端面の外周縁部側から部材に向けて所定の傾斜角度で傾いた状態で本体部から離れるように摺動することにより、離間位置から近接位置に変化し、部材の端を把持する。そのため、爪部が、先端を部材に対して垂直に近づくように摺動する構成と比べて、部材の被把される位置周囲の空間における爪部の占有率の増加を抑制できる。これにより、部材におけるカットされる位置を第1方向において部材の把持される位置に近づけることができるため、部材からカットされる部位を小さくすることができ、ひいては製品の歩留まりを高めることができる。
【0009】
本発明は、曲げ加工装置として捉える以外にも、このような曲げ加工装置に適用されるチャック装置としても捉えることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、曲げ加工において、カットされる部材の量を減らすことができ、ひいては製品の歩留まりを高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】曲げ加工装置の正面図。
図2】曲げ加工装置の平面図。
図3】型の正面図。
図4】型の平面図。
図5】チャックユニットの構成を説明する図。
図6】チャックユニットの構成を説明する図。
図7】部材の被把持位置とチャックユニットの移動経路との関係を説明する図。
図8】比較例における部材の被把持位置とチャックユニットの移動経路との関係を説明する図。
図9】チャックユニットにより部材に加えられる力を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<第1実施形態>
本実施形態に係る曲げ加工装置の実施形態を、図を用いて説明する。本実施形態では、曲げ加工装置は、部材として、車両用の金属製フレームを曲げ加工する装置である。具体的には、部材は、横断面がチャンネル形状(凹形状)である車両用フレームである。
【0013】
図1は、曲げ加工装置100を前方側から見た正面図である。図2は、曲げ加工装置100を上方から見た平面図である。曲げ加工装置100は、ベース90と、支持体91,92,93,94,95と、型80と、カットユニット85a,85bと、クランプユニット60a,60bと、チャックユニット10a,10bと、チャック可動ユニット50a,50bと、とを備えている。
【0014】
本実施形態において、曲げ加工装置100の幅に沿った方向を第1方向D1と称す。曲げ加工装置100の奥行に沿った方向を第2方向D2と称す。曲げ加工装置100の高さに沿った方向を第3方向D3と称す。曲げ加工装置100を前方から見た場合に、第1方向D1において左右を区別する場合に、左側D11及び右側D12と称す。第2方向D2において前後を区別する場合に、前側D21及び後側D22と称す。第3方向D3において上下を区別する場合に、上側D31及び下側D32と称す。
【0015】
ベース90は、第1方向D1と第2方向D2とにそれぞれ延びる薄板形状であり、不図示のメインフレームに固定されることで、曲げ加工装置100をメインフレームに固定する。ベース90には、5つの支持体91,92,93,94,95が取り付けられている。具体的には、ベース90における第1方向D1の中心には、第1支持体91が取り付けられている。ベース90において、第1支持体91を基準として第1方向D1の両側の位置には、第2支持体92と、第3支持体93とが取り付けられている。第1方向D1において、第2支持体92と第3支持体93よりも外側には、第4支持体94と、第5支持体95とがベース90に取り付けられている。例えば、第1~第5支持体91~95は、金属製のフレームやブラケットにより構成されている。
【0016】
第1~第3支持体91~94には、部材Wの両端部を3次元に曲げ加工するための型80が取り付けられている。図3は、型80の前面図であり、図4は、型80の平面図である。型80は、部材Wを位置決めする位置決め部81と、左側曲げ部82と、右側曲げ部83とにより構成されている。
【0017】
位置決め部81は、型80において第1方向D1の中央の部位である。位置決め部81は、第3方向D3において所定距離だけ離間して位置する上側ガイドレール811、中央保持レール812、及び下側ガイドレール812により構成されている。型80は、上側ガイドレール811、中央保持レール812及び下側ガイドレール813の延びる向きを第1方向D1に沿わした状態で、第1~第3支持体91~94に固定されている。
【0018】
左側曲げ部82は、型80において、位置決め部81よりも左側D11の部位である。左側曲げ部82は、第3方向D3において所定距離だけ離間して位置する第1曲げレール821、及び第2曲げレール822により構成されている。第1曲げレール821は、下側D32に向く曲げ面821aを有している。曲げ面821aは、右側D12から左側D11に移行するに従い、上側D31に曲がった曲面となっている。第2曲げレール822は、第1曲げレール822よりも下側D32に位置しており、前側D21に向く曲げ面822aを有している。図4では破線により示すように、曲げ面822aは、右側D12から左側D11に移行するに従い、後側D22に曲がった曲面となっている。
【0019】
右側曲げ部83は、型80において、位置決め部81よりも右側D12の部位である。右側曲げ部83は、第3方向D3において所定距離だけ離間して位置する第3曲げレール831、及び第4曲げレール832により構成されている。第3曲げレール831は、下側D32に向く曲げ面831aを有している。曲げ面831aは、左側D11から右側D12に移行するに従い、上側D31に曲がった曲面となっている。第4曲げレール832は、第3曲げレール831よりも下側D32に位置しており、前側D21を向く曲げ面832aを有している。図4では、破線で示すように曲げ面832aは、左側D11から右側D12に移行するに従い、後側D22に曲がった曲面となっている。
【0020】
上記構成の型80では、位置決め部81における各レール811,812,813の間に、第1方向D1に沿って延び、かつ部材Wの側壁部が挿入可能な溝84,85が形成されている。これにより、直線状に延びる部材Wの側壁部を、位置決め部81の溝84,85に挿入することにより、部材Wを、長手辺の延びる方向を第1方向D1に向けた状態で型80に位置決めすることができる。
【0021】
第2支持体92には、型80に位置決めされた部材Wを、クランプする左側クランプユニット60aが取り付けられている。左側クランプユニット60aは、部材Wを前側D21側から後側D22に向けて押し付けるクランプ体61と、このクランプ体61を部材Wから離れた位置から部材に近づける位置に変化させるクランプ可動部62とを有している。具体的には、クランプ可動部62は、油圧又は空気圧をロッドの直動運動に変換するシリンダを有しており、シリンダのロッドの直動運動に応じて、クランプ体61を第2方向D2と第3方向D3とにより規定される平面で回動させる。
【0022】
第3支持体93には、型80に位置決めされた部材Wをクランプする右側クランプユニット60bが取り付けられている。右側クランプユニット60bは、左側クランプユニット60aと同様に、クランプ体61と、クランプ可動部62とを有している。
【0023】
第1方向D1において、第4,第5支持体94,95よりも外側には、型80に位置決めされた部材Wの両端を把持する左側チャックユニット10a及び右側チャックユニット10bが配置されている。各チャックユニット10a,10bは、部材Wを把持するための3つの爪部を有している。各爪部は、先端が相対的に離間している離間位置と、先端が相対的に近接することにより部材Wを把持可能な近接位置との間で変化する。各爪部のうち、1つは、先端を部材Wの両側壁部の間に挿入させることで部材を内側から支持し、2つの爪部は、先端を部材Wの外側角部に当接させることで部材Wを外側から支持する。
【0024】
本実施形態では、曲げ加工装置100のホームポジションでは、各チャックユニット10a,10bは、爪部を離間位置とした状態で、第1方向D1で所定距離だけ離間した位置に配置されている。ホームポジションは、曲げ加工装置100の起動スイッチが操作されていない状態での各部の初期位置である。起動スイッチが操作された場合、左側チャックユニット10aは、型80に位置決めされた部材Wにおける左側D11の端に位置する被把持位置P11を把持する。右側チャックユニット10bは、型80に位置決めされた部材Wにおける右側D12の端に位置する被把持位置P12を把持する。なお、チャックユニット10の詳細な構成については後述する。
【0025】
左側チャックユニット10aには、左側チャックユニット10aを回動させる左側チャック可動ユニット50aが取り付けられている。本実施形態では、左側チャック可動ユニット50aは、曲げ加工装置100の不図示のメインフレームに可動可能に取り付けられている。具体的には、左側チャック可動ユニット50aは、油圧又は空気圧をロッドの直動運動に変化させる第1,第2シリンダと、第1チャック機構部と、第2チャック機構部とを有している。第1チャック機構部は、第1シリンダのロッドの直動運動を、左側チャックユニット10aにおける第1方向D1と第2方向D2とにより規定される平面での回動運動に変換する。第2チャック機構部は、第2シリンダのロッドの直動運動を、左側チャックユニット10aにおける第1方向D1と第3方向D3とにより規定される平面での回動運動に変換する。
【0026】
以下では、第1方向D1と第2方向D2とにより規定される平面を、第1平面D1_D2と称す。第1方向D1と第3方向D3とにより規定される平面を、第2平面D1_D3と称す。
【0027】
右側チャックユニット10bには、右側チャックユニット10bを回動させる右側チャック可動ユニット50bが取り付けられている。本実施形態では、右側チャック可動ユニット50bの構成は、左側チャック可動ユニット50aと同様、第1,第2シリンダと、第1チャック機構部と、第2チャック機構部とを有しているため、その説明を省略する。
【0028】
本実施形態では、各チャック可動ユニット50a,50bは、各チャックユニット10a,10bに対して第1方向D1での引っ張り力を与えた状態で、各チャックユニット10a,10bを回動させる。
【0029】
第4支持体94には、曲げ加工された部材Wの左側D11に位置するカット位置を切断する左側カットユニット85aが取り付けられている。左側カットユニット85aは、型80よりも後側D22に位置している。左側カットユニット85aは、部材Wをカットするための刃物部を有するカット部86と、カット部86を第2方向で直動運動させるカット可動機構87とを有している。カット可動機構87は、油圧又は空気圧をロッドの直動運動に変換するシリンダを有している。上記構成の左側カットユニット85aでは、カット部86が後側D22から前側D21に向けて直動運動することにより、部材Wを、第1方向D1において被把持位置P11よりも内側のカット位置で切断する。
【0030】
第5支持体95には、曲げ加工された部材Wの右側D12に位置するカット位置を切断する右側カットユニット85bが取り付けられている。右側カットユニット85bは、型80よりも後側D22に位置している。右側カットユニット85bは、左側カットユニット85a同様、カット部86と、カット可動機構87とを有しており、その説明を省略する。上記構成の右側カットユニット85bでは、カット部86が後側D22から前側D21に向けて直動運動することにより、部材Wを、第1方向D1において被把持位置P12よりも内側のカット位置で切断する。
【0031】
曲げ加工装置100において、各シリンダによるロッドの直動駆動は、不図示の制御装置により制御されている。制御装置は、各シリンダの駆動順序を規定するプログラムを記憶したメモリを有している。例えば、作業者が不図示の操作盤に設けられた起動スイッチを操作したことを契機に、制御装置は、プログラムに規定された順序で各シリンダを駆動させる。
【0032】
次に、曲げ加工装置100を用いて行われる部材Wの曲げ加工を説明する。
作業者は、部材Wにおける長手辺の延びる方向を第1方向D1に向けた状態で、部材Wの側壁部の先端を型80の各溝84,84に挿入して、部材Wを型80に位置決めする。作業者が起動スイッチを操作したことを契機に、制御装置は、各チャックユニット10a,10bに部材Wの各被把持位置P11,P12を把持させて、第1方向D1での部材Wの動きを規制する。また、制御装置は、各クランプユニット60a,60bにより、部材Wをクランプさせることにより、第2方向D2での部材Wの動きを規制する。
【0033】
次に、制御装置は、各チャック可動ユニット50a,50bを動作させて、各チャックユニット10a,10bを第1平面D1_D2上で後側D22に向けて回動させる。これにより、部材Wの左端は、第2曲げレール822の曲げ面822aの曲面形状に沿って後側D22に曲げられ、部材Wの右端は、第4曲げレール832の曲げ面832aの曲面形状に沿って後側D22に曲げられる。
【0034】
次に、制御装置は、各チャック可動ユニット50a,50bを動作させて、各チャックユニット10a,10bを第2平面D1_D3上で上側D31に向けて回動させる。これにより、部材Wの左端は、第1曲げレール821の曲げ面821aの曲面形状に沿って上側D31に曲げられ、部材Wの右端は、第3曲げレール831の曲げ面831aの曲面形状に沿って上側D31に曲げられる。
【0035】
制御装置は、各カットユニット85a,85bのカット部86を、後側D22から前側D21に前進させる。制御装置は、カット部86により、部材Wをカット位置で切断させる。
【0036】
上記構成の曲げ加工装置100において、各チャックユニット10a,10bの位置は、ホームポジションから各カットユニット85a,85bの移動経路に近づく位置に変化している。そのため、各チャックユニット10a,10bが、各カットユニット85a,85bの移動経路に侵入しないように、部材Wのカット位置を、第1方向D1で被把持位置P11,P12よりも内側にずらす必要がある。この場合、第1方向D1における、被把持位置P11,P12からカット位置までの距離が長くなることにより、部材Wからカットされる被カット部分が大きくなることが懸念される。そこで、本実施形態では、部材Wを把持する各チャックユニット10a,10bの形状を工夫することにより、被カット部分が大きくならないようにしている。
【0037】
次に、チャックユニット10a,10bの構成を説明する。なお、右側チャックユニット10bの構成は、左側チャックユニット10aと同じであるため、左側チャックユニット10aの構成のみを説明し、右側チャックユニット10bの構成の説明は省略する。図5は、爪部が離間位置にある場合の左側チャックユニット10aの断面視であり、図6は、爪部が近接位置にある場合の左側チャックユニット10aの断面図である。なお、図5図6は、左側チャックユニット10aの1つの爪部を基準とする断面視であり、説明上、他の2つの爪部については図示を簡略化又は省略して示している。
【0038】
図5図6に示すように、左側チャックユニット10aは、爪部30に加えて、本体部20と、爪部可動部40と、を有している。本体部20は、円形状の断面である第1筒部21と、第1筒部21よりも半径の小さい円形状の断面である第2筒部22とを有している。第1筒部21は、爪部30が摺動する側に先側端面21aを有している。第2筒部22は、第1筒部21と反対側に後側端面22aを有している。以下では、第1筒部21の中心(即ち、先側端面21a)を通る法線を「法線L」と称す。
【0039】
第1筒部21の内部には、各爪部30の摺動をガイドするガイド溝23が形成されている。具体的には、ガイド溝23は、法線Lに対して所定の傾斜角度Aで傾斜する摺動面23aを有している。図5図6では図示していないが、第1筒部21の内部には、不図示の2つの爪部30の摺動をガイドするガイド溝23が形成されている。
【0040】
本実施形態では、摺動面23aの傾斜角度Aは、法線Lの延びる方向を基準として0度以上、かつ60度以下の角度としている。より好ましくは、摺動面23aの傾斜角度Aは、法線Lの延びる方向を基準として0度以上、かつ45度以下の角度であってもよい。
【0041】
第2筒部22の内部には、爪部可動部40(後述するリンク保持部)の摺動をガイドするガイド開口24が形成されている。ガイド開口24は、後側端面22aを開口し、法線Lの延びる方向に連続する空間である。
【0042】
爪部30は、棒形状の基部31により構成されている。基部31の先端には、部材Wの被把持位置P11に当接する把持面32が形成されている。本実施形態では、各爪部30は、法線Lを中心とする仮想円上に各把持面32が位置するように、本体部20内に取り付けられている。具体的には、各爪部30は、法線Lを中心とする仮想円上において120度毎の中心角で各把持面32が位置するように先側端面21aの外周縁部側に取り付けられている。
【0043】
爪部可動部40は、スライダ41と、リンク42と、リンク保持部43と、シリンダ44とを有している。シリンダ44は、ロッド45の直動方向を法線Lの延びる方向に向けた状態で第2筒部22の後側端面22aに接続されている。ロッド45には、リンク保持部43が接続されている。リンク保持部43は、第2筒部22のガイド開口24内に法線Lの延びる方向で摺動可能に収容されている。リンク保持部43には、回動ピン47を介してリンク42の一端が回動可能に接続されている。リンク42の他端には、回動ピン46を介してスライダ41が回動可能に接続されている。
【0044】
左側チャックユニット10aのホームポジションでは、シリンダ44のロッド45が引き込み位置となっており(図5)、リンク保持部43及びリンク保持部43に接続されたリンク42により、スライダ41は、ガイド溝23に沿って第1筒部21の外周縁部側に引き寄せられている。即ち、各爪部30の把持面32は離間位置に位置している。
【0045】
曲げ加工装置100の起動スイッチが操作されることにより、シリンダ44のロッド45が直動運動を開始し、ロッド45の先端が引き込み位置から押出し位置まで変化する(図6)。このとき、リンク保持部43及びリンク保持部43に接続されたリンク42により、スライダ41がガイド溝23に沿って、第1筒部21の外周縁部側から先側端面21aの方向に摺動する。これにより、爪部30の把持面32は離間位置から近接位置までその位置を変化させる。ここで、摺動面23aは法線Lの延びる方向に対して傾斜角度Aとなっているため、爪部30の把持面32は、離間位置から近接位置に変化する場合に、本体部20の外周縁部側から部材Wに向けて所定の傾斜角度Aで傾いた状態で本体部20から離れるように摺動する。
【0046】
次に、部材Wの被把持位置周辺での爪部30の位置を、図7を用いて説明する。
図7は、部材Wを把持する左側チャックユニット10aを、第1平面D1_D2で後側D22に向けて回動させた場面を示す。図7において、左側カットユニット85aの移動経路Rをハッチングにより示している。
【0047】
左側チャックユニット10aは、第1平面D1_D2で後側D22に向けて回動したことにより後側D22で左側カットユニット85aの移動経路Rに近づいている。ここで、左側チャックユニット10aにおける本体部20よりも前(右側D12)には、先側端面21aから法線Lに対して傾斜角度Aだけ傾斜した各爪部30しかない。そのため、破線により示す部材Wの被把持位置P11の周囲の空間SP1には、爪部30の先端のみが位置している。言い換えると、空間SP1において、左側チャックユニット10aの占有率は低くなっている。これにより、左側カットユニット85aを移動経路Rに近づける向きに回動させる場合でも、被把持位置P11からカット位置までの距離を短くすることができる。図7では、部材Wからカットされる被カット部分WCの長さ寸法がH1となっている。
【0048】
図8は、比較例として示すチャックユニット101を、部材Wを把持した状態で、第1平面D1_D2で後側D22に向けて回動させた場面を示す。比較例として示すチャックユニット101は、第3方向D3で部材Wを挟む把持部を有している。
【0049】
チャックユニット101は、第1平面D1_D2で後側D22に向けて回動したことにより、本体部102の後側D22の部位が左側カットユニット85aの移動経路Rに近づいている。ここで、チャックユニット101では、部材Wの被把持位置の周囲の空間SP1には、把持部に加えて、この把持部を保持する本体部102が位置している。言い換えると、空間SP1でのチャックユニット101の占有率は、図7に示した左側チャックユニット10aの占有率よりも高くなっている。これにより、チャックユニット101における後側D22の部位と、左側カットユニット85aの移動経路Rとが干渉しないように、被把持位置P11からカット位置までの距離を長くする必要がある。そのため、比較例では、部材Wからカットされる被カット部分WCの長さ寸法がH2(>H1)となっている。
【0050】
なお、左側チャックユニット10aを第2平面D1_D3において上側D31に向けて回動させる場合も、図7図8を用いて説明したのと同様の理由により、被把持位置P11からカット位置までの距離を短くすることができる。これにより、部材Wからカットされる被カット部分WCを小さくできる。
【0051】
次に、図9を用いて、部材Wを曲げ加工する際に、部材Wに加わる力の関係を説明する。図9では、部材Wを曲げ加工する際に、左側チャックユニット10aにより部材Wの被把持位置P11に加わる力を、第1平面D1_D2での力F1,F2,F3に分解して示している。力F1,F2,F3は、3つの爪部30のそれぞれにより部材Wに加えられる力のうち、第1平面D1_D2での成分である。
【0052】
左側チャックユニット10aにより部材Wに加えられる力F1,F2,F3は、右側D12に向く力であるため、各力F1,F2,F3の合成力は、右側D12に向く力となる。そのため、図9に示すように、左側チャックユニット10aには、第1平面D1_D2において、右側D12に向く合成力Fsamが生じる。
【0053】
部材Wには、左側チャックユニット10aから第1平面D1_D2に平行な向きでの引張力FTが加えられている。ここで、引張力FTは、左側チャックユニット10aを支点する力であるため、左側チャックユニット10aが回動しても、引張力FTは、合成力Fsamに対して常に逆向きの力となる。言い換えると、部材Wに対して引張力FTを加えた状態で、左側チャックユニット10aを回動させる場合でも、合成力Fsamが引張力FTに抗う力となる。このため、左側チャックユニット10aにより部材Wに引張力FTを加えた状態で、左側チャックユニット10aを回動させる場合でも、左側チャックユニット10aの爪部30が部材Wからはずれにくくなる。
【0054】
なお、右側チャックユニット10bに対しても、図9を用いて説明したのと同様の理由から、右側チャックユニット10bにより部材Wに引張力FTを加えた状態で、右側チャックユニット10bを回動させる場合でも、爪部30が部材Wからはずれにくくなる。
【0055】
本実施形態では、チャックユニット10a,10bがチャック部及びチャック装置の一例であり、チャック可動ユニット50a,50bがチャック可動部の一例である。カットユニット85a,85bがカット部の一例である。スライダ41、リンク42、リンク保持部43が機構部の一例である。
【0056】
以上説明した本実施形態では、以下の効果を奏することができる。
曲げ加工装置100が備える各チャックユニット10a,10bは、本体部20と、本体部20に設けられており、先端が離間位置と近接位置との間で摺動可能な爪部30と、爪部30の先端を離間位置と近接位置との間で変化させるように、爪部を本体部20から摺動させる爪部可動部40と、を有している。爪部30は、先端が離間位置から近接位置に変化する場合に、本体部20の外周縁部側から部材に向けて所定の傾斜角度Aで傾いた状態で本体部20から離れるように摺動する。
【0057】
上記構成では、部材Wに対して曲げ加工が施される場合に、部材Wの一端を把持する各チャックユニット10a,10bが型80の形状に沿って回動される。このとき、爪部30が本体部20の外周縁部から部材に向けて所定の傾斜角度Aで摺動することにより、爪部30の先端が離間位置から近接位置に変化し、部材Wを被把持位置P11で把持する。そのため、爪部30が、先端を部材Wに対して垂直に近づけるように摺動させる場合と比べて、部材Wの被把持位置P11の周囲の空間におけるチャックユニット10a,10bの占有率の増加を抑制できる。これにより、各カットユニット85a,85bのカット位置を第1方向D1において部材Wの被把持位置P11に近づけることができるため、部材Wにおける被把持位置側の端からカット位置までの長さ寸法を短縮することができ、ひいては歩留まりを高めることができる。
【0058】
・爪部30は、棒形状である。これにより、爪部30の先端が近接位置に位置する場合に、部材Wの被把持位置周辺での空間におけるチャック部の占有面積をいっそう低くすることができる。
【0059】
・本体部20は、爪部30が位置する側の端面である先側端面21aを有し、爪部可動部40は、先側端面21aを通る法線Lの延びる方向でロッド45を直動運動させるシリンダ44と、ロッド45の直動運動に応じて、爪部30の先端を離間位置と被把持位置との間で変化させるように爪部を摺動させるスライダ41、リンク42、及びリンク保持部43を有している。これにより、シリンダ44のロッド45の直動動作が、爪部30の摺動運動に変換されるため、チャックユニット10a,10bの体格が法線Lに交わる方向で大きくなるのを極力抑制することができる。その結果、部材Wの被把持位置P11,P12周辺での空間におけるチャックユニット10a,10bの占有面積をいっそう低くすることができる。
【0060】
・爪部30は、本体部20に3つ設けられている。これにより、3つの爪部30により部材Wを3か所で把持することで、部材Wを確実に把持することができるとともに、部材Wの被把持位置P11,P12周辺での空間におけるチャックユニット10a,10bの占有面積をいっそう低くすることができる。
【0061】
・各チャック可動ユニット50a,50bは、各チャックユニット10a,10bに対して引っ張り力を加えながら、各チャックユニット10a,10bを第2方向D2及び第3方向D3に回動させる。これにより、爪部30に対して引張力に抗う力を生じさせた状態で各チャックユニット10a,10bを回動させることができる。その結果、部材Wが各チャックユニット10a,10bからはずれにくくなり、曲げ加工の精度を高めることができる。
【0062】
<その他の実施形態>
本実施形態では、その要旨を変更しない範囲で様々な変形例が存在する。
・曲げ加工装置100は、部材Wの一方の側のみを曲げ加工する場合、チャックユニットを1つだけ備えていてもよい。この場合において、曲げ加工装置100は、部材Wに対して曲げ加工を行う側の端をチャックユニット10により把持すればよい。
【0063】
・チャックユニット10は、爪部を法線Lの延びる方向に対して傾斜角度Aで傾いた状態で摺動させればよく、爪部を4つ以上有していてもよい。また、爪部の形状は棒形状でなくともよい。
【0064】
・曲げ加工装置100は、部材Wを第1平面D1_D2及び第2平面D1_D3で曲げ加工する装置に限らない。曲げ加工装置100は、部材Wを第1平面D1_D2又は第2平面D1_D3で曲げ加工する装置であってもよい。
【符号の説明】
【0065】
10a,10b…チャックユニット,20…本体部,30…爪部,40…爪部可動部,50a,50b…チャック可動ユニット,85a,85b…カットユニット,100…曲げ加工装置,W…部材,WC…被カット部分
図1
図2
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図4
図5
図6
図7
図8
図9