(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-01
(45)【発行日】2024-10-09
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
H01F 17/06 20060101AFI20241002BHJP
【FI】
H01F17/06 F
(21)【出願番号】P 2020117117
(22)【出願日】2020-07-07
【審査請求日】2023-07-05
【審判番号】
【審判請求日】2023-12-14
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390028783
【氏名又は名称】株式会社フジックス
(74)【代理人】
【識別番号】100133411
【氏名又は名称】山本 龍郎
(74)【代理人】
【識別番号】100067677
【氏名又は名称】山本 彰司
(72)【発明者】
【氏名】中込 佑介
【合議体】
【審判長】岩間 直純
【審判官】井上 信一
【審判官】須原 宏光
(56)【参考文献】
【文献】実開平5-4419(JP,U)
【文献】特開2016-131290(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 17/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リング状部材の孔の中に棒材を通した状態で前記リング状部材と前記棒材とを互いに連結するコネクタであって、前記棒材を保持する棒材保持部と、前記リング状部材の一方の端面に係合する第一の突起部と、前記リング状部材の他方の端面に係合する第二の突起部と、を備え、前記第一の突起部が、前記リング状部材の軸線方向に延びる少なくとも一つの弾性脚部の自由端に形成され、前記棒材保持部と前記第二の突起部と前記弾性脚部とが一体に形成され、前記棒材保持部は
該棒材保持部の全長に亘って開口した棒材受入溝を備え、該棒材受入溝の軸線と交差する方向に前記棒材を押圧することで前記棒材受入溝内に前記棒材を圧入可能である、コネクタ。
【請求項2】
リング状部材の孔の中に棒材を通した状態で前記リング状部材と前記棒材とを互いに連結するコネクタであって、前記棒材を保持する棒材保持部と、前記リング状部材の一方の端面に係合する第一の突起部と、前記リング状部材の他方の端面に係合する第二の突起部と、を備え、前記第一の突起部が、前記リング状部材の軸線方向に延びる少なくとも一つの弾性脚部の自由端に形成され、前記棒材保持部と前記第二の突起部と前記弾性脚部とが一体に形成され、前記弾性脚部が前記自由端の反対側に固定端を備え、該固定端から前記自由端に近づくにつれて前記リング状部材の外方へ広がるように前記弾性脚部が形成されている、コネクタ。
【請求項3】
リング状部材の孔の中に棒材を通した状態で前記リング状部材と前記棒材とを互いに連結するコネクタであって、前記棒材を保持する棒材保持部と、前記リング状部材の一方の端面に係合する第一の突起部と、前記リング状部材の他方の端面に係合する第二の突起部と、を備え、前記第一の突起部が、前記リング状部材の軸線方向に延びる少なくとも一つの弾性脚部の自由端に形成され、前記棒材保持部と前記第二の突起部と前記弾性脚部とが一体に形成され、前記第二の突起部は、前記リング状部材の前記他方の端面に対して周方向に部分的に係合する、コネクタ。
【請求項4】
リング状部材の孔の中に棒材を通した状態で前記リング状部材と前記棒材とを互いに連結するコネクタであって、前記棒材を保持する棒材保持部と、前記リング状部材の一方の端面に係合する第一の突起部と、前記リング状部材の他方の端面に係合する第二の突起部と、を備え、前記第一の突起部が、前記リング状部材の軸線方向に延びる少なくとも一つの弾性脚部の自由端に形成され、前記棒材保持部と前記第二の突起部と前記弾性脚部とが一体に形成され、前記棒材保持部と前記弾性脚部との間に空間があり、該空間により、前記棒材保持部に前記棒材が保持された状態で、前記弾性脚部が前記リング状部材の内方へ撓むことができる、コネクタ。
【請求項5】
前記弾性脚部の弾性と前記第一及び第二の突起部の突出量とによって、前記リング状部材の前記孔の公差に対応可能とされている、請求項1~4のいずれか一項に記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタに関し、詳しくは、リング状部材の孔の中に棒材を通した状態で両者を互いに連結するコネクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ノイズ対策部品の一種としてフェライトコアが知られており、フェライトコアの典型例として、リング状のものが知られている。リング状のフェライトコアの孔の中に被覆電線を固定することで、被覆電線を介して電子機器等に出入りしようとするノイズをファライトコアが吸収する。
【0003】
フェライトコアを使用する場合、フェライトコアと被覆電線とを互いに結合させるためのコネクタが必要である(例えば、特許文献1参照)。このコネクタに要求される品質の一つとして、フェライトコアの孔の公差への適応性が挙げられる。すなわち、フェライトコアの種々のサイズに応じて様々な寸法のコネクタを準備することは当然であるが、各サイズのフェライトコアの孔には比較的大きな公差があるので、その公差に対応できるコネクタであることが求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実願平1-95370号(実開平3-34217号)のマイクロフィルム
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来、フェライトコアの孔の大きな公差に対応可能なコネクタは提供されていない。このため、補助的に結束バンドや接着剤を用いざるを得ないというのが実情である。
【0006】
本発明は、前記のような事情に鑑みてなされたもので、リング状部材の孔の中に棒材を通した状態でリング状部材と棒材とを互いに連結するコネクタであって、リング状部材の孔の公差への良好な適応性を有するコネクタを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明に係るコネクタは、リング状部材の孔の中に棒材を通した状態で前記リング状部材と前記棒材とを互いに連結するコネクタであって、前記棒材を保持する棒材保持部と、前記リング状部材の一方の端面に係合する第一の突起部と、前記リング状部材の他方の端面に係合する第二の突起部と、を備え、前記第一の突起部が、前記リング状部材の軸線方向に延びる少なくとも一つの弾性脚部の自由端に形成され、前記棒材保持部と前記第二の突起部と前記弾性脚部とが一体に形成され、前記棒材保持部は該棒材保持部の全長に亘って開口した棒材受入溝を備え、該棒材受入溝の軸線と交差する方向に前記棒材を押圧することで前記棒材受入溝内に前記棒材を圧入可能であることを特徴とする(請求項1)。なお、前記リング状部材は、内周面と外周面とが共に円筒状のものの他、内周面と外周面とが共に角筒状のものであってもよい。
【0008】
本発明に係るコネクタは、棒材保持部にて棒材を保持した状態で、リング状部材に対して結合される。棒材保持部に棒材を保持させるには、棒材受入溝の軸線と交差する方向に棒材を押圧することで、棒材受入溝内に棒材を圧入する。コネクタとリング状部材の結合に当たっては、弾性脚部の弾性を利用して第一の突起部を内方へと押圧しながら、コネクタを第一の突起部側からリング状部材の孔の中へと挿入する。第一の突起部がリング状部材を通過すると、弾性脚部の弾性により第一の突起部がリング状部材の一方の端面に係合する。同時に、第二の突起部がリング状部材の他方の端面に係合する。これにより、コネクタとリング状部材とが位置ずれ不能に結合する。本発明に係るコネクタによれば、弾性脚部の弾性及び/又は第一及び第二の突起部の突出量によって、リング状部材の孔の公差に対応できる。
【0009】
他の実施の一形態として、リング状部材の孔の中に棒材を通した状態で前記リング状部材と前記棒材とを互いに連結するコネクタであって、前記棒材を保持する棒材保持部と、前記リング状部材の一方の端面に係合する第一の突起部と、前記リング状部材の他方の端面に係合する第二の突起部と、を備え、前記第一の突起部が、前記リング状部材の軸線方向に延びる少なくとも一つの弾性脚部の自由端に形成され、前記棒材保持部と前記第二の突起部と前記弾性脚部とが一体に形成され、前記各弾性脚部が前記自由端の反対側に固定端を備え、該固定端から前記自由端に近づくにつれて前記リング状部材の外方へ広がるように前記各弾性脚部が形成されているコネクタとすることもできる(請求項2)。また、他の実施の一形態として、リング状部材の孔の中に棒材を通した状態で前記リング状部材と前記棒材とを互いに連結するコネクタであって、前記棒材を保持する棒材保持部と、前記リング状部材の一方の端面に係合する第一の突起部と、前記リング状部材の他方の端面に係合する第二の突起部と、を備え、前記第一の突起部が、前記リング状部材の軸線方向に延びる少なくとも一つの弾性脚部の自由端に形成され、前記棒材保持部と前記第二の突起部と前記弾性脚部とが一体に形成され、前記第二の突起部は、前記リング状部材の前記他方の端面に対して周方向に部分的に係合するコネクタとすることもできる(請求項3)。また、他の実施の一形態として、リング状部材の孔の中に棒材を通した状態で前記リング状部材と前記棒材とを互いに連結するコネクタであって、前記棒材を保持する棒材保持部と、前記リング状部材の一方の端面に係合する第一の突起部と、前記リング状部材の他方の端面に係合する第二の突起部と、を備え、前記第一の突起部が、前記リング状部材の軸線方向に延びる少なくとも一つの弾性脚部の自由端に形成され、前記棒材保持部と前記第二の突起部と前記弾性脚部とが一体に形成され、前記棒材保持部と前記弾性脚部との間に空間があり、該空間により、前記棒材保持部に前記棒材が保持された状態で、前記弾性脚部が前記リング状部材の内方へ撓むことができるコネクタとすることもできる(請求項4)。
【0010】
実施の一形態として、前記コネクタにおいて、前記弾性脚部の弾性と前記第一及び第二の突起部の突出量とによって、前記リング状部材の前記孔の公差に対応可能とされているコネクタとすることもできる(請求項5)。なお、前記各コネクタにおいて、前記リング状部材の典型例はフェライトコアであり、前記棒材の典型例は導線であり、前記コネクタが電気絶縁性を有する態様を例示する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施の一形態に係るコネクタの斜視図である。
【
図4】本発明の他の実施の一形態に係るコネクタの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
【0013】
本発明のコネクタは、リング状部材の孔の中に棒材を通した状態でリング状部材と棒材とを互いに連結するコネクタである。本発明のコネクタの実際の適用場面に限定はないが、例えば、好適な適用場面として、電子機器のノイズ対策部品としてのフェライトコアの孔の中に導線を固定する場合が挙げられる。すなわち、この場合、リング状部材がフェライトコアであり、棒材が導線であり、これらが電気絶縁性を有するコネクタで連結される。限定はされないが、導線の具体例として、基板実装用ジャンパー線を挙げることができる。導線の典型例は被覆電線であるが、本願においては、単線の銅ブスバーに絶縁性チューブや樹脂コーティングなどによる絶縁体を設けたものも被覆電線に含まれるものとする。
【0014】
図1~
図3に示すように、本実施の一形態のコネクタ10は、棒材Jを保持する棒材保持部11と、リング状部材Rの一方の端面R1に係合する第一の突起部12と、リング状部材Rの他方の端面R2に係合する第二の突起部13と、を備え、第一の突起部12が、リング状部材Rの軸線X方向に延びる弾性脚部14の自由端14bに形成される。コネクタ10は、合成樹脂を用いて成形され、棒材保持部11と弾性脚部14と第一及び第二の突起部12,13とを一体に備える。
図1~
図3のコネクタ10は、内周面S1も外周面S2も円筒状のリング状部材Rについて使用するコネクタの例である。
【0015】
図1~
図3のコネクタ10において、棒材保持部11は、断面C字状の複数(一例として三つ)の棒材受入溝15を有する。各棒材受入溝15の軸線は互いに平行に延びる。
各棒材受入溝15は、棒材保持部11の全長に亘って開口した開口部を有する。各棒材受入溝15の開口部に棒材Jの直線部を押圧することで、棒材保持部11の弾性で棒材受入溝15内に棒材Jが圧入される。
図1~
図3の例では、三つの棒材受入溝15が、リング状部材Rの孔Hの中に等角度間隔(
図2参照)で位置するように配設されている。
【0016】
図2において、各棒材受入溝15内に仮想線で棒材Jを図示してあるが、実線と仮想線が重ならないように棒材Jを実際よりも小さく図示してある。実際には、各棒材受入溝15と各棒材Jとの間の位置ずれが生ずることがないように、棒材保持部11の弾性によって各棒材Jがしっかりとグリップされる。
【0017】
なお、棒材保持部11については、出願人が所有する特許第5655250号の特許発明を適用することもできる。すなわち、互いに隣接する棒材受入溝15,15同士の間に絶縁隔壁を形成し、この絶縁隔壁の肉厚を、棒材受入溝15,15に受け入れられる棒状導電体(棒材J)に逆向きに流れる電流から生ずる磁束同士の間で磁束打消し作用が奏される肉厚とする。これにより、棒状導電体J,J間のノイズやインダクタンスが抑制される。
【0018】
弾性脚部14は、棒材保持部11と一体に形成される。弾性脚部14は、コネクタ10の内方に押圧されると、自身の弾性により外方への復元力を発揮する。この復元力により、リング状部材Rの孔Hの公差への対応が可能となる。弾性脚部14は一つのコネクタ10に少なくとも一つ備わっていればよいが、複数であってもよい。
【0019】
図1~
図3のコネクタ10は、弾性脚部14を複数、具体的には三つ備えた例である。三つの弾性脚部14は、リング状部材Rの円筒状の内周面S1に対して等角度間隔(
図2参照)で位置するように配設される。これにより、リング状部材Rへのコネクタ10の結合バランスが良好となる。
【0020】
図1~
図3の例では、各弾性脚部14は固定端14aと自由端14bとを有する。各弾性脚部14の固定端14aは棒材保持部11と一体になっている。各弾性脚部14は、自由端14bに近づくにつれて外方へ広がるように形成される。各弾性脚部14の自由端14bには、第一の突起部12が形成される。第一の突起部12には、斜めの切欠12aが形成されている。コネクタ10において、弾性脚部14の第一の突起部12を含む自由端14b側の全体としての輪郭はリング状部材Rの孔Hよりも大きい。各弾性脚部14の自由端14bをコネクタ10の内方へと押圧すると、弾性により外方への復元力が働く。この復元力と第一の突起部12の突出量とにより、リング状部材Rの孔Hの公差に対応できる。
棒材保持部11と弾性脚部14との間には空間があり、この空間により、棒材保持部11に棒材Jが保持された状態で、弾性脚部14がリング状部材Rの内方へ撓むことができる。この構成により、コネクタ10の棒材保持部11に棒材Jを保持させた状態で、コネクタ10をリング状部材Rに対して結合させることができる。
【0021】
第二の突起部13は、コネクタ10において、第一の突起部12とは反対側の端部に形成される。第二の突起部13は、棒材保持部11に一体に形成される。限定はされないが、第二の突起部13は、リング状部材Rの端面に対して等角度間隔で位置するように配設される。これにより、リング状部材Rへのコネクタ10の結合バランスが良好となる。
【0022】
図3に示すように、第一及び第二の突起部12,13は、リング状部材Rの軸線Xに対して直角な外方向へと突出する。第一及び第二の突起部12,13間の間隔は、リング状部材の軸線X方向の寸法Tに対応している。リング状部材Rにコネクタ10を結合させた状態において、第一の突起部12はリング状部材Rの一方の端面R1に係合し、第二の突起部13はリング状部材10の他方の端面R2に係合する。これにより、第一及び第二の突起部12,13は、リング状部材Rの軸線X方向へのコネクタ10の位置ずれを規制する。第一及び第二の突起部12,13の突出量は、リング状部材Rの孔Hの公差に対応できる突出量とする。
第一及び第二の突起部12,13は、リング状部材Rの各端面R1,R2に対して周方向に部分的に係合する。
【0023】
図1~
図3のコネクタ10の使用方法について説明する。手順としては、まず、コネクタ10の棒材保持部11に棒材Jを保持させ、次に、孔Hに棒材Jを通したリング状部材Rとコネクタ10とを互いに結合させる。
【0024】
棒材保持部11に棒材Jを保持させるには、各棒材受入溝15の開口部に各棒材Jの直線部を押圧する。これにより、棒材保持部11の弾性で棒材受入溝15内に棒材が圧入され、棒材保持部11に棒材Jがしっかりと保持される。
【0025】
リング状部材Rとコネクタ10とを互いに結合させるには、コネクタ10を弾性脚部14の自由端14b側からリング状部材Rの孔Hの中へと挿入する。前述の通り、コネクタ10において、弾性脚部14の自由端14b側の全体としての輪郭はリング状部材Rの孔Hよりも大きい。このため、各弾性脚部14の自由端14bをコネクタ10の内方へと押圧しながら、自由端14b側からリング状部材Rの孔Hの中へとコネクタ10を挿入する。これにより、各弾性脚部14の自由端14bに形成されている第一の突起部12がリング状部材Rの内面を擦りながらリング状部材Rの軸線X方向に移動する。
【0026】
第一の突起部12がリング状部材Rを通過すると、各弾性脚部14の弾性により第一の突起部12がリング状部材Rの半径方向の外方へと復帰する。これにより、各弾性脚部14がリング状部材Rの内面に圧接するとともに、第一の突起部12がリング状部材Rの一方の端面R1に係合する。それと同時に、第二の突起部13がリング状部材Rの他方の端面R2に係合する。これにより、リング状部材Rの軸線X方向へのコネクタ10の位置ずれが防止される。この状態が、リング状部材Rとコネクタ10の結合状態である。
【0027】
各弾性脚部14の弾性と、第一及び第二の突起部12,13の突出量とにより、リング状部材Rの孔Hの公差への対応が可能となる。しかも、第一及び第二の突起部12,13がリング状部材Rの内周面S1に対して等角度間隔で位置するので、リング状部材Rに対するコネクタ10の結合バランスも良好となる。
【0028】
次に、
図4~
図6を参照して、本発明の他の実施の一形態に係るコネクタについて説明する。
【0029】
図4~
図6のコネクタ20は、内周面S1も外周面S2も角筒状のリング状部材Rについて使用するコネクタの例である。このコネクタ20も、棒材Jを保持する棒材保持部21と、リング状部材Rの一方の端面R1に係合する第一の突起部22と、リング状部材Rの他方の端面R2に係合する第二の突起部23と、を備え、第一の突起部22が、リング状部材Rの軸線X方向に延びる弾性脚部24の自由端24bに形成される。コネクタ20は、合成樹脂を用いて全体としての輪郭がリング状部材Rの角筒状の孔Hに対応する形状に成形され、棒材保持部21と弾性脚部24と第一及び第二の突起部22,23とを一体に備える。
【0030】
図4~
図6のコネクタ20において、棒材保持部21は、断面C字状の複数(一例として六つ)の棒材受入溝25を有する。各棒材受入溝25の軸線は互いに平行に延びる。
各棒材受入溝25は、棒材保持部21の全長に亘って開口した開口部を有する。各棒材受入溝25の開口部に棒材Jの直線部を押圧することで、棒材保持部21の弾性で棒材受入溝25内に棒材Jが圧入される。
図4~
図6の例では、六つの棒材受入溝25が、リング状部材Rの略四角形の孔Hの中に2行3列又は3行2列状態で位置するように配設されている。
【0031】
図5において、各棒材受入溝25内に仮想線で棒材Jを図示してあるが、実線と仮想線が重ならないように棒材Jを実際よりも小さく図示してある。実際には、各棒材受入溝25と各棒材Jとの間の位置ずれが生ずることがないように、棒材保持部21の弾性によって各棒材Jがしっかりとグリップされる。
【0032】
図1~
図3の例と同様に、棒材保持部21については、出願人が所有する特許第5655250号の特許発明を適用することもできる。
【0033】
図5に示すように、コネクタ20は、棒材保持部21を挟む両側位置に、一対の側面26a,26bを備える。一対の側面26a,26bは、リング状部材Rへのコネクタ20の結合状態において、リング状部材Rの角筒状の孔Hの互いに対向する一対の内面H1,H2に接触又はごく僅かな間隔をおいて対面する。
【0034】
図4及び
図5に示すように、コネクタ20の一対の側面26a,26bの内の一方26aには凹陥部27が形成され、この凹陥部27内に弾性脚部24が配設される。弾性脚部24は、コネクタ20の内方に押圧されると、自身の弾性により外方への復元力を発揮する。この復元力により、リング状部材Rの孔Hの公差への対応が可能となる。弾性脚部24は一つのコネクタ20に少なくとも一つ備わっていればよいが、複数であってもよい。すなわち、例えば、コネクタ20の一対の側面26a,26bの内の他方26bにも凹陥部27を形成し、この凹陥部27内にも弾性脚部24を設ける構成としてもよい。
図4~
図6のコネクタ20は、弾性脚部24を一つだけ備えた例である。
【0035】
図4に示すように、弾性脚部24は固定端24aと自由端24bとを有する。弾性脚部24の固定端24aはコネクタ20の一対の側面26a,26bの一方26aと一体になっている。弾性脚部24の外面は、コネクタ20の一対の側面26a,26bの一方26aと面一となっている。弾性脚部24の自由端24bには、第一の突起部22が形成される。第一の突起部22には、斜めの切欠22aが形成されている。弾性脚部24の自由端24b側を凹陥部27内へと押圧すると、弾性により外方への復元力が働く。この復元力により、リング状部材Rの孔Hの公差に対応できる。
【0036】
図5と
図6とを総合すると分かるように、第二の突起部23は、コネクタ20において、第一の突起部22とは反対側の端部であって、第一の突起部22がある側面26aとは反対側の側面26b側に一体に形成される。
【0037】
図6に示すように、第一及び第二の突起部22,23は、リング状部材Rの軸線Xに対して直角な外方向へと突出する。第一及び第二の突起部22,23間の間隔は、リング状部材Rの軸線X方向の寸法Tに対応している。リング状部材Rにコネクタ20を結合させた状態において、第一の突起部22はリング状部材Rの一方の端面R1に係合し、第二の突起部23はリング状部材Rの他方の端面R2に係合する。これにより、第一及び第二の突起部22,23は、リング状部材Rの軸線X方向へのコネクタ20の位置ずれを規制する。第一及び第二の突起部22,23の突出量は、リング状部材Rの孔Hの公差に対応できる突出量とする。
【0038】
図4~
図6のコネクタ20の使用方法について説明する。手順としては、まず、コネクタ20の棒材保持部21に棒材Jを保持させ、次に、孔Hに棒材Jを通したリング状部材Rとコネクタ20とを互いに結合させる。
【0039】
棒材保持部21に棒材Jを保持させるには、各棒材受入溝25の開口部に各棒材Jの直線部を押圧する。これにより、棒材保持部21の弾性で棒材受入溝25内に棒材Jが圧入され、棒材保持部21に棒材Jがしっかりと保持される。
【0040】
リング状部材Rとコネクタ20とを互いに結合させるには、コネクタ20を弾性脚部24の自由端24b側からリング状部材Rの孔Hの中へと挿入する。すなわち、弾性脚部24の自由端24b側を凹陥部27内へと押し込みながら、自由端24b側からリング状部材Rの孔Hの中へとコネクタ20を挿入する。これにより、弾性脚部24の自由端24bに形成されている第一の突起部22がリング状部材Rの内面を擦りながらリング状部材Rの軸線X方向に移動する。
【0041】
第一の突起部22がリング状部材Rを通過すると、弾性脚部24の弾性により第一の突起部22がリング状部材Rの外方へと復帰する。これにより、第一の突起部22がリング状部材Rの一方の端面R1に係合する。それと同時に、第二の突起部23がリング状部材Rの他方の端面R2に係合する。これにより、リング状部材Rの軸線X方向へのコネクタ20の位置ずれが防止される。弾性脚部24の弾性と、第一及び第二の突起部22,23の突出量とにより、リング状部材Rの孔Hの公差への対応が可能となる。
【0042】
以上、本発明の実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。また、上述の実施の形態は、その目的及び構成等に特に矛盾や問題がない限り、互いの技術を流用して組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0043】
10,20 コネクタ
11,21 棒材保持部
12,22 第一の突起部
13,23 第二の突起部
14,24 弾性脚部
14b,24b 弾性脚部の自由端
J 棒材(導線)
R リング状部材(フェライトコア)
H リング状部材の孔
R1 リング状部材の一方の端面
R2 リング状部材の他方の端面
X リング状部材の軸線